説明

水平撹拌気相反応器で製造されるポリオレフィン材料の分子量分布の拡大法

【課題】ポリマーの分子量分布を広げ且つ制御することができる重合プロセスの提供。
【解決手段】オレフィン重合プロセスは、反応器の前部に注入される高活性触媒を用いて1つを超える重合反応器内の1つを超える重合ゾーンにおいて少なくとも1つのオレフィンモノマーを気相重合して、固体ポリマー粒子を得ることを含む。本発明のプロセスによれば、水素とオレフィンとの異なる比を反応器に加えることにより、非常に異なる分子量の製造につながるので、得られるポリマーの分子量分布が広がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの重合、特に、触媒成分を用いてアルファ-オレフィンとエチレンを共重合して撹拌水平反応器で製造されるポリマーの分子量分布を広げ且つ制御すること含むプロピレンの気相重合に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、非常に多くの種類の熱可塑性オレフィンポリマーの製造が周知であり、日常的に、チーグラナッタ触媒系に基づいて商業的に実施されている。チーグラナッタ触媒を用いるオレフィンポリマーに有用な商業的な製造プロセスは、不活性炭化水素希釈剤を用いる複雑なスラリープロセスから、液体プロピレン希釈剤を用いる効率的なバルクプロセスに、ガス状オレフィンモノマーを重合させることから固体ポリマーが直接形成される更に効率的な気相プロセスまで進展してきた。
典型的に用いられた気相プロセスには、水平垂直撹拌副流動床反応器系、流動床系、マルチゾーン循環反応器系が含まれる。これらのプロセスで製造される熱可塑性オレフィンポリマーには、エチレンとC3-C10+アルファ-オレフィンモノマーのポリマーが含まれ、また、そのようなモノマーの2つ以上のコポリマー、例えば、統計的(ランダム)コポリマー又は多相コポリマー(ゴム変性コポリマー又はインパクトコポリマー)が含まれる。
結晶性ポリプロピレンセグメントを含有するプロピレンポリマーは、有利には気相で製造される。このようなプロピレンポリマーには、モノマー単位のほとんど全てがプロピレンであるポリプロピレンホモポリマー、プロピレンと50モルパーセント(50モル%)までのエチレン又はC4+オレフィンモノマーの1つ以上とのコポリマーが含まれる。通常、プロピレン/エチレンコポリマーは、約30wt.%まで、典型的には約20wt.%までのエチレンモノマー単位を含有する。望ましい使用によっては、このようなコポリマーは、エチレンモノマー単位のランダム分布又は統計的分布を有してもよく、ホモポリマー鎖とランダムコポリマー鎖の密接な混合物、典型的にはゴム変性コポリマー又はインパクトコポリマーと呼ばれるものから構成されてもよい。このようなゴム変性コポリマー又はインパクトコポリマーにおいて、典型的には高エチレン含量ランダムコポリマーは、エラストマー成分又はゴム成分として機能して、合わせたポリマー材料の衝撃特性を変える。
【0003】
オレフィンポリマー、特にプロピレンポリマーの分子量は、典型的には、重合ガス混合物に水素を用いて調節される。より高濃度の水素が結果としてより低分子量になる。しばしば多分散性と呼ばれるポリマー組成の分子量分布は、ポリマー特性に影響を与え得る。
水平撹拌反応器において、分布の平均値は、入口水素流量を調整して、反応器の排ガス中の水素とプロピレンとの比を一定に保つことによって制御され得る。平均鎖長と気相の水素とプロピレンとの比の間に直接関連がある。分布幅の広さに関しては、制御することができないが、操作のプロセス条件が何であれ僅かに変化することが実験から示されている。そのように、分子量分布幅の広さによって影響される最終のポリマー特性は、固有の反応器制限のために変化させることができない。それ故、本発明の目的は、水平撹拌反応器で製造されたポリマーの分子量分布を広げることに取り組むことである。水平撹拌反応器に沿って水素勾配を適用することによって、分子量分布が広げられ且つ大きな範囲の多分散指数で制御され得る。
異なる物理的性質を有するポリマー成分を含有するポリマー組成物は、望ましい特性を有することがわかった。従って、個々のポリマーの異なる量を多峰性分布で含有する全ポリマー組成物は、結果としてポリマー成分のいずれとも異なる特性を有するポリマーになり得る。多峰性ポリマーを製造する従来の方法は、物理的手段、例えばブレンダー又はブレンド押出機によって個々のポリマーをブレンドすることである。多峰性生成物組成を得るより効率的な方法は、生成物を直接重合反応器で製造することである。このようなその場製造において、物理的ブレンドによって製造することができるものよりも有利な特性を生じる、より密接な混合物が何度も製造され得る。
【0004】
多峰性生成物を製造するには、典型的には、重合が異なる時間の異なる条件で行われるか又はそのプロセス中で行われるプロセスが必要である。マルチ反応器連続プロセスをシミュレートするために単一反応器をバッチプロセスで用いることができるが、典型的なバッチプロセスは商業的に有用でない。マルチ反応器系を用いることができるが、2つ以上の反応容器を用いる。
気相又は蒸気相オレフィン重合プロセスは、一般的には“Polypropylene Handbook” pp. 293-298, Hanser Publications, NY (1996)に開示され、より詳細には“Simplified Gas-Phase Polypropylene Process Technology” Petrochemical Review, March, 1993に記載されている。これらの文献の記載は、本願明細書に含まれるものとする。
気相反応器系はプラグ流反応器として機能し、生成物が反応器を通過するので逆混合せず且つ反応器の一方の部分の状態が反応器のもう一方の部分の状態と異なることになる。逆混合系の一例は、米国特許第4,003,712号明細書及び同第6,284,848号明細書に記載されるような流動床反応器又は米国特許第6,689,845号明細書に記載されるようなマルチゾーン系である。実質的なプラグ流系の一例は、米国特許第3,957,448号明細書; 同第3,965,083号明細書; 同第3,971,768号明細書; 同第3,970,611号明細書; 同第4,129,701号明細書; 同第4,101,289号明細書; 同第4,130,699号明細書; 同第4,287,327号明細書; 同第4,535,134号明細書; 同第4,640,963号明細書; 同第4,921,919号明細書, 同第6,069,212号明細書, 同第6,350,054号明細書; 同第6,590,131号明細書に記載されるような水平撹拌副流動床系である。このような特許の全ての記載は、本願明細書に含まれるものとする。重合中の異なる時間に異なる条件が用いられるマルチ反応器連続プロセスをシミュレートするために単一反応器をバッチプロセスで用いることができるが、典型的なバッチプロセスは商業的に有用でない。
【0005】
用語プラグ流反応器は、混合がフロー流に対して実質的に直角でのみ生じるような流量で強制混合しない連続流体フロープロセスを行うための反応器を意味する。プロセス流の撹拌は、特に微粒子の成分が存在する場合には、望ましいものであり得る; 行われる場合には、撹拌は逆混合が実質的にないような方法で行われる。拡散は常にある混合につながることから完全なプラグ流を達成させることができず、プロセスフロー状況は乱流であり、層流ではない。完全なプラグ流条件が実際には達成されないので、プラグ流反応器系は、実質的にプラグ流条件下で作動させるとしばしば記載されている。通常、プラグ流反応器は、水平に又は垂直に配置することができ、広いより長いように(縦の寸法と横の寸法との比が1を超え、好ましくは2を超える)設計され、プロセス流の前方に位置する末端が反応器頭部又は前部と呼ばれ、出口ポート又は取り出し部が反応器の反対側又は後部に位置する。
製造プロセス条件によっては、オレフィンポリマーの種々の物理的性質が制御され得る。変動させることができる典型的な条件としては、温度、圧力、滞留時間、触媒成分濃度、分子量制御調整剤(例えば水素)濃度等が含まれる。
気相オレフィン重合プロセス、特にプロピレン重合プロセスにおいて、固体チタン含有触媒成分とアルキルアルミニウム助触媒成分から構成されるチーグラナッタ触媒系が用いられる。ポリプロピレン結晶性の量を制御することを必要とするプロピレン重合において、通常、追加の調整剤成分が全触媒系に組み込まれる。
【0006】
重合反応速度を記載するために用いられる典型的な動力学モデルは、モノマーと活性部位濃度に関する反応速度の一次不活性化速度(kd)と一次依存性を仮定する単純化モデルである。従って、
kp = kp0 * e(-kd*t)
ここで、kpは、重合速度(gプロピレン/h*バール*mg Ti)であり、kp0は、プロセスがラインアウトしたときの(t=0)初期重合速度であり、kdは、一次不活性化速度である。
米国特許第3,957,448号明細書及び同第4,129,701号明細書には、触媒成分と助触媒成分が反応器に沿って異なる位置で導入され得る水平撹拌床気相オレフィン重合反応器が記載されている。
米国特許第6,900,281号明細書には、1つを超える外部電子供与体が気相重合反応系に添加されるオレフィン重合系が記載されている。
米国特許5,994,482号明細書には、供与体と助触媒が液体プールと気相反応器双方に添加されるコポリマー合金を製造することが記載されている。
Shimizu, et al., J. Appl. Poly. Sci., Vol. 83, pp. 2669-2679 (2002)には、液体プール重合におけるチーグラナッタ触媒不活性化でのアルキルアルミニウムとアルコキシシランの影響が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に異なる重合ゾーンの間で、生成物組成が制御され得るオレフィン重合プロセスが求められている。また、撹拌水平反応器中で製造されるポリマーの分子量分布を広げ且つ制御することができる重合プロセスが求められている。
本発明は、反応器内に水素勾配を生成する重合プロセスを含む。次に、非常に異なる分子量のポリマーが得られ、広がった分子量分布につながる。これらの“水素勾配”条件下に単一反応器で製造されるホモポリマーは、より良好な加工性と既知のプロセスより高い溶融強度を示した。
本発明は、フローパターンがアルキル、電子供与体、エチレン等を含む、プロセスの複数成分の重合を含む、ほとんどがプラグ流タイプであるタイプの反応器に関する個々の適用を有する。
分子量分布を広げることによって、ポリマーのいくつかの最終特性が他の特性に対して有害に影響せずに増強される。更に、本発明のプロセスは、新規な条件下にプロセスを作動させることによって新規な生成物(又は増強された生成物)を製造することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
オレフィン重合プロセスは、反応器の前部で注入される高活性触媒を用いる1つを超える重合ゾーンにおいて少なくとも1つのオレフィンモノマーを重合して、固体ポリマー粒子を得ることを含む。本発明のプロセスによれば、水素とオレフィンとの異なる比を反応器に適用することにより、非常に異なる分子量の製造につながるので、分子量分布が広がる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のプロセスにおいて、プロピレン又はプロピレンとエチレン又は他のアルファ-オレフィンとの混合物を含むオレフィンモノマーを、モノマー供給及び適切な高活性重合触媒を用いて重合反応器において重合する。好ましい実施態様において、本発明のプロセスは、複数の重合ゾーンにおいて少なくとも1つのアルミニウムアルキル助触媒と組み合わせて固体のチタン含有成分を含む高活性チーグラナッタ触媒系を用いる。
【0010】
本発明のプロセスは、1つ以上の反応器の1つを超える重合ゾーンにおいて少なくとも1つのオレフィンモノマーを重合することを含む。プロセスは、第1の重合ゾーンにオレフィンモノマーの1つ以上の流れを導入することによって開始する。各流れは、0モル%〜約70モル%、好ましくは約0モル%〜約30モル%の水素濃度を有する。
【0011】
1つ以上のオレフィン流を第1の重合ゾーンへ導入した後、オレフィンモノマーの1つ以上の流れを次の重合ゾーンに導入する第2の工程が行われる。前のように、各流れは、0モル%〜約70モル%、好ましくは約0モル%〜約30モル%の水素濃度を有する。本発明のプロセスによれば、製造されるオレフィンのタイプ及び製造業者によって望まれる分子量分布の程度によっては1つ以上の追加の重合ゾーンがあってもよい。
【0012】
重合が行われると、5〜約20の多分散性を有するポリマー生成物が最後の重合ゾーンから取り出される。
【0013】
本発明の他の実施態様において、プロピレンは第1の反応ゾーンにおいて重合し、プロピレンとエチレンの混合物は次の重合ゾーンにおいて重合する。このような重合は、重合されるオレフィンのタイプによって、同じ温度で行われても異なる温度で行われてもよい。更に、このような重合は、助触媒、例えばシランを用いて行われ得る。このような実施態様において、プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を第1の助触媒と第1の反応ゾーンにおいて重合し、プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を異なる助触媒(又は第1の助触媒と異なる助触媒の組み合わせ)が導入される次の重合ゾーンにおいて重合する。
【0014】
好ましくは、本発明のオレフィン重合プロセスは、オレフィンモノマーと触媒成分を添加することができ且つポリマー粒子を形成することができる撹拌床を含有する1つ以上の反応容器を備える装置において行われる。本発明によれば、各反応器が複数の重合ゾーンを有してもよく、各容器が独立して個別の重合ゾーンであってもよい。複数のゾーンが単一反応容器において用いられる場合、反応器は区画に分けられ、一方の区画からもう一方の区画まで取り出しバリヤの方向に自由ポリマー粒子移動を可能にしつつ、反応器の各区画が区画間の蒸気混合を制御する分割構造によって物理的に分離される。
【0015】
反応容器は、触媒成分と急冷液体を添加する1つ以上のバルブ制御ポートを含み、触媒成分と急冷液体がポリマー粒子を形成する床の中と上に直接添加される;
【0016】
本発明の好ましい実施態様によれば、オレフィンモノマーと急冷液体が反応容器に供給される反応容器におけるバルブ制御ポートの1つ以上に再循環ガス供給系が接続されている。好ましい再循環ガス供給系には、1)反応器で最上部に沿って反応器排ガスを除去するための手段と; 2)急冷液体、ポリマー微粒子及び触媒成分を重合モノマーと水素から分離するための第1の分離器と; 及び3)重合モノマーと水素を個別の再循環流へ分離するための第2の分離器とが含まれる。
【0017】
装置は、更に、オレフィンモノマーと水素ガスが反応容器に導入されるポリマー床の下に位置する1つ以上のバルブ制御ポートと固体ポリマー生成物が取り出される反応器の出口端に位置する取り出しバリヤとを備えている。取り出しバリヤから固体ポリマー生成物を取り出すためのデバイスと適切な添加剤を固体ポリマー生成物を添加する仕上げ装置は、取り出しバリヤに接続されている。最後に、加熱と機械的剪断によって添加剤をポリマーに組み込むとともに加熱したポリマーをダイによって押し出して、分離したペレットを形成するための押出機を用いて、製造が完了する。
【0018】
本発明のプロセスに従って作動する水平撹拌反応器において、反応器の前部に触媒を注入し、重合して、固体ポリマー粒子を得る。異なる分子量の鎖でできた重合粒子は、反応器の後部に引き出される。ポリマー生成物の平均鎖長の制御は、反応器への種々の点での水素の注入によって達成される。より高い水素とプロピレンとの比が、より短い鎖長を有するポリマーを生成する。
【0019】
先行技術のプロセス設計によれば、水平反応器に沿った気相水素とプロピレンとの比は、ほぼ一定である。本発明のプロセスにおいて、異なる水素とプロピレンとの比を反応器に適用することにより、非常に異なる分子量の製造につながるので、最終生成物の分子量分布が広がる。
【0020】
本発明の一実施態様において、ほとんどの水素自由流れ(ガス又は液体)は、反応器の前部に供給され、より高い水素濃度を有する流れ(ガス又は液体)は、反応器の後部に供給される。次に、非常に高い分子量ポリマーが反応器の第1の部分に製造され、低分子量ポリマーが同じ反応器の第2の部分に製造される。このことが、最終生成物の分子量分布を広げることにつながる。この分布の微調整は、反応器の前部と後部においてそれぞれ水素とC3との比を変化させることによって達成され得る。
【0021】
本発明のプロセスに従って製造される所定の鎖の長さと濃度は、種々のデバイス(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定することができ、分子量分布(又は鎖長分布)の形でしばしば表される。このタイプの分布は、平均値と幅の広さ(多分散指数とも呼ばれる)が特徴であり、双方の値がポリマーの最終特性に重要である。水平撹拌反応器に沿って水素勾配を適用することによって、分子量分布が広げられ、多分散指数の大きな範囲において制御され得る。
【0022】
本発明で用いられるように、重合ゾーンが個別の重合反応容器であってもよく、実質的にプラグ流反応器内の異なる位置に存在してもよく、温度又は水素、モノマー及び触媒調整剤の組成が異なる重合条件がある。例示として、米国特許第6,900,281号明細書に記載されるような実質的なプラグ流重合反応器は、物理的に分離された反応ゾーンを必要としないが、重合条件は、記載される反応器の前部と後部の間で異なってもよい。
【0023】
本発明のプロセスによれば、単一反応器又は複数の反応器系において、反応器内の異なる位置又はゾーンで水素が添加されてもよい。典型的には、水素を含まないプロピレンを第1の重合反応器の前方(又は最初の重合ゾーン)に添加する。次第に高くなる濃度の水素を含有するプロピレン流を、同じ反応器内の次の重合ゾーンに、即ち、重合反応器の更に下に添加してもよい。1つを超える反応器がある場合には、次第に高くなる濃度の水素を含有するプロピレン流が次の反応器に添加されてもよい。水素の次第に高くなる濃度を含有するこのようなプロピレン流は、第2の反応器の前方に添加される必要はないが、このような反応器に沿って添加され得る。
【0024】
オレフィンの重合について、本発明に有用な高活性担持(HAC)チタン含有成分は、典型的には、炭化水素不溶性マグネシウム含有化合物に担持されている。プロピレンのようなアルファ-オレフィンの重合について、固体遷移金属成分は、典型的には、立体特異性を促進する電子供与体化合物を含有する。このような担持チタン含有オレフィン重合触媒成分は、典型的には、ハロゲン化チタン(IV)、有機電子供与体化合物及びマグネシウム含有化合物を反応させることによって形成される。必要により、このような担持チタン含有反応生成物は、更に処理されてもよく、追加の電子供与体又はルイス酸化学種による化学処理によって変性されてもよい。
【0025】
適切なマグネシウム含有化合物には、ハロゲン化マグネシウム; 塩化マグネシウム又は臭化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウムと有機化合物、例えばアルコール又は有機酸エステル、又は1、2又は13族の金属の有機金属化合物との反応生成物; マグネシウムアルコラート; 又はマグネシウムアルキルが含まれる。
【0026】
担持固体チタン含有触媒の例は、塩化マグネシウム、アルコキシ塩化マグネシウム又はアリールオキシ塩化マグネシウムと、ハロゲン化チタン、例えば四塩化チタンとを反応させ、更に電子供与体化合物を取り込むことによって調製される。好ましい調製において、マグネシウム含有化合物を適合する液状媒質、例えば、炭化水素に溶解するか、又はスラリーにして、適切な触媒成分粒子を得る。エチレン重合触媒は、シリカ、アルミナ又はシリカアルミナのようなオキシド上に担持され得る。
【0027】
気相プロセスにおいて典型的に使われる重合触媒系は、高活性担持固体チタンベースの触媒成分と、トリアルキルアルミニウム活性化剤又は助触媒成分と、外部調整剤又は供与体成分を含んでいる。別々には、触媒成分は、不活性であり; 従って、触媒と活性化剤成分は、プロピレンに懸濁され、供給ラインにおいてポリマー形成を開始せずに個別の流れとして反応器に供給され得る。適切な固体担持チタン触媒系は、米国特許第4,866,022号明細書、同第4,988,656号明細書、同第5,013,702号明細書、同第4,990,479号明細書及び同第5,159,021号明細書に記載されており、これらの明細書の記載は、本願明細書に含まれるものとする。これらの可能な固体触媒成分は、本発明に有用な、多くの可能な固体のマグネシウム含有のハロゲン化チタンベースの炭化水素不溶性触媒成分を単に例示するものであり、当該技術において既知である。本発明は、特定の触媒成分に限定されない。
【0028】
本発明の典型的な担持触媒において、マグネシウムとチタンの原子比は、約1:1を超え、約30:1までの範囲にあり得る。より好ましくは、マグネシウムとチタン比は、約10:1〜約20:1の範囲にある。内部電子供与体成分は、典型的には、固体担持触媒成分にチタン化合物中チタン1グラム原子当たり約1モルまで、好ましくはチタン化合物中チタン1グラム原子当たり約0.5〜約2.0モルの範囲にある合計量で組み込まれる。内部供与体の典型的な量は、チタン1グラム原子当たり少なくとも0.01モル、好ましくは約0.05を超え、典型的にはチタン1グラム原子当たり約0.1モルを超える。また、典型的には、内部供与体の量は、チタン1グラム原子当たり1モル未満、典型的にはチタン1グラム原子当たり約0.5モルより少ない。
【0029】
固体チタン含有成分は、好ましくは、約1〜約6wt.%のチタン、約10〜約25wt.%のマグネシウム、及び約45〜約65wt.%のハロゲンを含有する。典型的な固体触媒成分は、約1.0〜約3.5wt.%のチタン、約15〜約21wt.%のマグネシウム及び約55〜約65wt.%の塩素を含有する。
【0030】
使われる固体触媒成分の量は、重合技術の選択、反応器サイズ、重合すべきモノマー、及び当業者に既知の他の要因によって変動し、以下に記載されている実施例に基づいて決定され得る。典型的には、本発明の触媒は、製造されるポリマー1グラムに対して触媒約0.2〜0.01ミリグラムの範囲にある量で用いられる。
【0031】
本発明に有用であり得る内部電子供与体材料は、このような成分の形成中に固体担持触媒成分に組み込まれる。典型的には、このような電子供与体材料は、固体マグネシウム含有材料のチタン(IV)化合物による処理中に、一緒に、又は個別の工程で添加される。最も典型的には、四塩化チタンと内部電子供与体調整剤材料の溶液は、マグネシウム含有材料と接触させる。このようなマグネシウム含有材料は、典型的には、分離した粒子の形であり、遷移金属や有機化合物のような他の材料を含有し得る。
【0032】
好ましい電子供与体化合物には、芳香族酸エステルが含まれる。モノ-又はジカルボン酸、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ-、アルキル-、アルコキシ-、アリール-、又はアリールオキシ-置換芳香族モノ-又はジカルボン酸の電子供与体が好ましい。これらの中で、アルキル基が炭素原子1〜約6個を含有する安息香酸又はハロ安息香酸のアルキルエステル、例えば、メチルベンゾエート、メチルブロモベンゾエート、エチルベンゾエート、エチルクロロベンゾエート、エチルブロモベンゾエート、ブチルベンゾエート、イソブチルベンゾエート、ヘキシルベンゾエート、シクロヘキシルベンゾエートが好ましい。他の好ましいエステルには、エチルp-アニセート又はメチルp-トルエートが含まれる。特に好ましい芳香族エステルは、アルキル基が炭素原子約2〜約10個を含有するジアルキルフタレートである。好ましいフタレートの例は、ジイソブチルフタレート、ジエチルフタレート、エチルブチルフタレート、d-n-ブチルフタレートである。他の有用な内部供与体は、置換ジエーテル化合物、置換コハク酸エステル、置換グルタル酸、置換マロン酸、置換フマル酸又はマレイン酸である。
【0033】
助触媒成分は、好ましくは、ハロゲンを含まない有機アルミニウム化合物である。適切なハロゲンを含まない有機アルミニウム化合物としては、例えば、式AlR3(ここで、Rは、炭素原子1〜10個を有するアルキル基を示す)のアルキルアルミニウム化合物、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)が挙げられる。
【0034】
好適なアルキル基、R、の例としては、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、デシル、テトラデシル、及びエイコシルが挙げられる。アルミニウムアルキルが好ましく、最も好ましくは、1アルキル基当たり炭素原子1〜約6個を含有するトリアルキルアルミニウム、特に、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム又はこれらの組み合わせが用いられる。より活性でないアルミニウムアルキル成分とより活性なアルミニウムアルキル成分との組み合わせを必要とする本発明の態様において、トリエチルアルミニウムは好ましい活性成分であり、より活性でない成分としてはトリ-n-ブチルアルミニウム(TNBA)、トリ-n-ヘキシルアルミニウム(TNHA)、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)等が含まれる。
【0035】
本発明のプロセスにおいて、1つ以上の重合ゾーンにおける助触媒成分としてアルキルアルミニウム化合物の混合物を用いることができる。アルキルのこのような混合物は、重合ゾーンにおいて製造される生成物の特性を制御するために使用し得る。好ましくないが、望ましい場合には、1つ以上のハロゲン基又はヒドリド基を有するアルミニウムアルキル、例えばエチルアルミニウムジクロリドを使うことができ、ジエチルアルミニウムクロリドは助触媒成分において用いることができる。
【0036】
オレフィンモノマーは、再循環ガスと急冷液体系によって反応器に供給することができ、未反応モノマーが排ガスとして除去され、部分的に凝結されて新鮮な供給モノマーと混合され、反応容器に注入される。急冷液体は、温度を制御するためにプロセス流に注入される。プロピレン重合において、急冷液体は、液体プロピレンであり得る。他のオレフィン重合反応において、急冷液体は、液体炭化水素、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン又はヘキサン、好ましくはイソブタン又はイソペンタンであり得る。用いられる個々の反応器系によっては、ポリマー粒子床より上の又はその中の反応容器に急冷液体を注入することができる。反応容器に注入した後、過剰の急冷液体は分離器によって反応器から除去される。次に、急冷液体は、再循環ラインを介して反応器に再導入される。
【0037】
本発明のプロセスの一構成において、分離器から来る急冷液体から水素を除去するために第2の分離器を第1の分離器の後に添加する。好ましい第2の分離器は、ストリッパ装置である。再循環した急冷液体をストリッパによってモノマーの水素を含まない流れと水素の実質的にモノマーを含まない流れに分離する。次に、モノマーの水素を含まない流れを反応プロセスの前方の反応容器に再導入することができ、水素をプロセスの後部に送って、プロセス内の水素勾配を維持する。
【0038】
水素勾配の制御は、水素自由流れで供給されるノズルの数を利用することによって行われる。従って、ストリッパにおいて“処理される”液体の量は、水素自由流れで供給されるノズルの数によって変動する。ストリッパは、また、水素自由流れにおける水素の量、それ故反応器内の勾配を制御するために使用し得る。
【0039】
ある適用において、米国特許第6,057,407号明細書に記載されるように追加の外部調整剤としてジエチル亜鉛(DEZ)のようなアルキル亜鉛化合物を添加して、高MFRポリマーを製造することができ、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。より少ない量の水素が高MFRポリマーを製造するのに必要とされることから、テトラエチルオルトシリケート(テトラエトキシシランとしても知られる)(TEOS)と組み合わせた少量のDEZの使用が有益であり得る。少量のDEZによって、高MFRポリマーをより低い水素濃度且つより高い収率で製造させることができる。
【0040】
アルファ-オレフィン重合においてこの助触媒系の活性と立体特異性を最適化するために、1つ以上の外部調整剤、典型的には電子供与体、例えば、シラン、鉱酸、硫化水素の有機金属カルコゲニド誘導体、有機酸、有機酸エステル又はこれらの混合物を使うことが好ましい。
【0041】
上述した助触媒系のための外部調整剤として有用な有機電子供与体は、酸素、シリコン、窒素、硫黄、及び/又はリンを含有する有機化合物である。このような化合物としては、有機酸、有機酸無水物、有機酸エステル、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、シラン、アミン、アミンオキシド、アミド、チオール、種々のリン酸エステル及びアミド等が挙げられる。有機電子供与体の混合物も用いることができる。
【0042】
上述した助触媒系は、有利には且つ好ましくは、脂肪族又は芳香族シラン外部調整剤を含有する。上述した助触媒系に有用な好ましいシランとしては、炭素原子1〜約20個を有する炭化水素部分を含有するアルキル-、アリール-、及び/又はアルコキシ-置換シランが挙げられる。式: SiY4 (式中、Y基は、各々が同じか又は異なり、炭素原子1〜約20個を含有するアルキル基又はアルコキシ基である)を有するシランが特に好ましい。好ましいシランとしては、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン及びシクロヘキシルメチルジメトキシシランが挙げられる。シランの混合物を用いることができる。
【0043】
電子供与体は、生成物におけるアイソタクチックポリマーとアタクチックポリマー(沸騰ヘプタン抽出又は核磁気共鳴(nmr)5年間分析によって測定されることができる)の相対量を制御することによって、コントロール立体規則性にチーグラナッタ触媒系によって使われる。より立体規則性のアイソタクチックポリマーは、典型的にはより結晶性であり、曲げ弾性率の大きい材料につながる。このような高度に結晶性のアイソタクチックポリマーは、また、重合中に触媒と組み合わせた電子供与体の低水素応答の結果としてより低いメルトフローレートを示す。本発明の好ましい電子供与体は、チーグラナッタ触媒と組み合わせて立体規則性調節剤として用いられる外部電子供与体である。それ故、本明細書に用いられる用語“電子供与体”は、詳しくは外部電子供与体材料を意味し、外部供与体とも呼ばれる。
【0044】
好ましくは、適切な外部電子供与体材料には、有機シリコン化合物が含まれ、典型的には、式、Si(OR)n R'4-n、(式中、R及びR'は、独立してC1-C10アルキル基及びシクロアルキル基より選ばれ、n=1-4である)を有するシランである。好ましくは、R基及びR'基は、独立して、C2〜C6アルキル基及びシクロアルキル基、例えば、エチル、イソブチル、イソプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等より選ばれる。適切なシランの例としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、ジイソプロピルジメトキシシラン(DIPDMS)、ジイソブチルジメトキシシラン(DIBDMS)、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン(IBIPDMS)、イソブチルメチルジメトキシシラン(IBMDMS)、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMDMS)、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン(DTBDMS)、n-プロピルトリエトキシシラン(NPTEOS)、イソプロピルトリエトキシシラン(IPTEOS)、オクチルトリエトキシシラン(OTEOS)等が挙げられる。外部電子供与体としての有機シリコン化合物の使用は、例えば、米国特許第4,218,339号明細書; 同第4,395,360号明細書; 同第4,328,122号明細書; 同第4,473,660号明細書に記載され、これらの明細書のすべての記載は本願明細書に含まれるものとする。電子供与体として一般的に広範囲の化合物が知られるが、具体的な触媒は、特に適合し且つ通常の実験によって決定され得る個々の化合物又は化合物のグループを有し得る。
【0045】
アルファ-オレフィンの重合又は共重合に典型的な触媒系は、本発明の担持チタン含有触媒又は触媒成分と助触媒としてアルキルアルミニウム化合物を、典型的には電子供与体であり、好ましくはシランである少なくとも1つの外部調整剤と一緒に組み合わせることによって形成される。典型的には、このような触媒系に有用なアルミニウムとチタンとの原子比は、約10〜約500、好ましくは約30〜約300である。典型的には、充分なアルキルアルミニウムを重合系に添加して、チタン含有成分を完全に活性化する。
【0046】
本発明のプロセスにおいて、第1の重合ゾーンにおけるアルミニウムとチタンとの比は、典型的には少なくとも10、典型的には少なくとも20であり、選ばれるプロセス条件に必要とされるように約300までの範囲であり得る。添加助触媒に対するAl/Ti比は、第1の重合ゾーンにおいて添加されるより少なくても多くてもよい。この比は、最初に添加されるチタン含有成分量に比例して添加されるアルキルアルミニウム量に基づいて算出される。次の重合ゾーンにおいて添加される助触媒に典型的なAl/Ti比は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、典型的には少なくとも30である。
【0047】
このような触媒系に典型的なアルミニウムと電子供与体とのモル比(例えば、Al/Si)は、約1〜約60である。このような触媒系に典型的なアルミニウムとシランとの化合物のモル比は、約1.5を超え、好ましくは2.5を超え、より好ましくは約3である。この比は200まで又はそれ以上の範囲にある場合があり、典型的には約150までの範囲にあり、好ましくは120を超えない。典型的な範囲は、約1.5〜約20である。過度に高いAl/Si又は低いシラン量は、低アイソタクチック粘着性粉末のような操作可能性の問題を引き起こすことになる。
【0048】
用いられる本発明のチーグラナッタ触媒又は触媒成分の量は、重合又は共重合技術の選択、反応器サイズ、重合又は共重合すべきモノマー、及び当業者に既知の他の要因によって変動し、以下に記載される実施例に基づいて決定され得る。典型的には、本発明の触媒又は触媒成分は、製造されるポリマー又はコポリマー1グラムに対して触媒約0.2〜0.02ミリグラムの範囲にある量で用いられる。
【0049】
本発明のプロセスは、エチレンと炭素原子3個以上を含有するアルファ-オレフィン、例えば、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、又はこれらの混合物又はエチレンを有するこれらの混合物の重合又は共重合に有用である。典型的なオレフィンモノマーとしては、C14までのアルファ-オレフィン、好ましくはC8までのアルファ-オレフィン、より好ましくはC6までのアルファ-オレフィンが挙げられる。本発明のプロセスは、特にプロピレン又はその混合物と約50モルパーセント(好ましくは約30モルパーセントまで)のエチレン又は高級アルファ-オレフィンとの立体規則性重合又は共重合に効果的である。本発明によれば、分枝鎖結晶性ポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーは、少なくとも1つのアルファ-オレフィンと上記の触媒又はラジカル発生化合物を有する触媒成分とを適切な重合又は共重合条件下で接触させることによって調製される。このような条件としては、重合又は共重合の温度及び時間、モノマーの圧力、触媒の汚染の回避、ホモポリマー又はコポリマーの分子量を制御する添加剤の使用、及び当業者に周知の他の条件が挙げられる。
【0050】
使われる重合又は共重合プロセスに関係なく、重合又は共重合は、かなりの重合又は共重合速度を確実にし且つ過度に長い反応器滞留時間を避けるのに充分に高いが、過剰に急速な重合又は共重合速度のために著しく高レベルのステレオランダム生成物の製造を生じるほど高くない温度で行わなければならない。一般に、温度は、約0o〜約120℃の範囲にあり、良好な触媒性能及び高生成率を達成する観点から約20℃〜約95℃の範囲が好ましい。より好ましくは、本発明の重合は、約50℃〜約80℃の範囲にある温度で行われる。
【0051】
本発明のオレフィン重合又は共重合は、ほぼ大気圧又はそれを超えるモノマー圧で行われる。一般に、モノマー圧は約1.2〜約40バール(120〜4000kPa)の範囲にあるが、気相重合又は共重合において、モノマー圧は、重合又は共重合すべきアルファ-オレフィンの重合又は共重合温度で蒸気圧より低くなってはならない。
【0052】
重合又は共重合時間は、一般的には、連続プロセスにおいて対応する平均滞留時間を有するバッチプロセスにおいて約1/2〜数時間の範囲になる。約1〜約4時間の範囲にある重合又は共重合時間は、オートクレーブ型反応に典型的である。
【0053】
本発明の触媒又は触媒成分のプレポリマー化又は封入は、アルファ-オレフィンの重合又は共重合において用いられる前に行われ得る。特に有用なプレポリマー化手順は、米国特許第4,579,836号明細書に記載され、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。
本発明の触媒又は触媒成分が有用である気相重合又は共重合プロセスの例としては、撹拌床反応器及び流動床反応器系が挙げられ、米国特許第3,957,448号明細書; 同第3,965,083号明細書; 同第3,971,768号明細書; 同第3,970,611号明細書; 同第4,129,701号明細書; 同第4,101,289号明細書; 同第4,535,134号明細書; 同第4,640,963号明細書; 同第6,069,212号明細書、同第6,284,848号明細書、同第6,350,054号明細書; 同第6,590,131号明細書に記載されており、これらのすべての明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。典型的な気相オレフィン重合又は共重合反応器系は、オレフィンモノマーと触媒成分を添加することができ且つポリマー粒子を形成する撹拌床を含有する少なくとも1つの反応容器を備える。典型的には、触媒成分は、単一反応容器又は第1の反応容器において1つ以上のバルブ制御ポートを通って一緒に又は別々に添加される。オレフィンモノマーは、典型的には、排ガスとして除去される未反応モノマーと新鮮な供給モノマーが混合され且つ反応容器に注入される再循環ガスシステムを通って反応器に供給される。インパクトコポリマーの製造については、第1の反応器内で第1のモノマーから形成されるホモポリマーを、第2の反応器における第2のモノマーと反応させる。液体モノマーであり得る急冷液体は、温度を制御するために再循環ガスシステムを通って重合又は共重合するオレフィンに添加し得る。
【0054】
反応器にはその中に含有される複数の部分に触媒又は触媒成分を導入するための手段が含まれ、それによってポリマー固体を形成する撹拌副流動床の中に及び上に直接触媒と急冷液体の制御された導入を可能にするとともにこのような床の中と上の蒸気相からのモノマーを重合させる。プロセスにおいて製造される固体ポリマーが増えるのにつれて、反応器長さを移動し、反応器の出口端に位置する取り出しバリヤを通過することによって連続して取り出される。
【0055】
反応器は、必要により、区画に分けられてもよく、反応器の各区画は、区画間で蒸気の混合を制御するのに役に立つが、一方の区画からもう一方の区画に取り出しの方向に自由ポリマー粒子の移動を可能にするように構成された分割構造によって物理的に分けられている。各区画は1つ以上の重合部分を含むことができ、必要により、部分間で全体的な逆混合を防止又は阻止する堰又は他の適切に成形されたバッフルによって分けられていてもよい。
【0056】
モノマー又はモノマー混合物と水素を主に又は完全にポリマー床の下に導入し、急冷液体を床の表面に導入する。排ガスの流れからできる限り完全にポリマー微粒子を取り出した後、反応器の最上部に沿って反応器排ガスを除去する。このような反応器排ガスを分離ゾーンに導き、それによって急冷液体がそれ以後のポリマー微粒子と触媒成分の一部と共に、重合モノマーと水素から少なくとも部分的に分離される。次に、モノマーと水素を、ポリマー床の表面の下に通常は位置する反応器の種々の重合部分に沿って隔置された入口に再循環する。それ以後のポリマー微粒子を含む急冷液体の一部を分離ゾーンから取り除き、大部分において、反応器区画の最上部に沿って隔置された入口に戻される。新鮮な急冷液体がこのために導入される必要がないように触媒希釈のための触媒構成ゾーンにポリマー微粒子と触媒成分を含まない分離された急冷液体の第2のごく一部を供給することができる。触媒成分と急冷液体を異なる速度で重合部分の1つ以上に導入して、重合温度とポリマー生成率の制御を援助するために反応器が準備され得る。触媒成分は、床の表面上に添加されても表面の下に添加されてもよい。
【0057】
重合のための全体の反応器の温度範囲は、重合される具体的なモノマー及びそこから望まれる市販用の製品に左右され、そのこと自体は当業者に周知である。一般に、用いられる温度範囲は、約40℃〜床の軟化温度で変動する。マルチ反応器系においては、それらのゾーンのポリマー特性を制御するために各反応器において異なる重合温度を用いることができる。
【0058】
プロセスの再循環系は、反応器と共に、本質的に等圧に作動させるように設計される。即ち、好ましくは、再循環系と反応器の変化は±70 kPaの圧力を超えず、より好ましくは±35 kPaを超えず、これは動作から予想される正常な圧力変化である。
【0059】
全重合圧力は、存在する不活性ガス圧力と共にモノマー圧、気化された急冷液体圧及び水素圧から構成され、このような全圧は、大気圧を超え約600psig(4200kPa)まで変動し得る。全圧力を占めている成分の個々の分圧によって、重合が生じる速度、分子量、及び製造されるポリマーの分子量分布が決定される。
【0060】
重合又は共重合技術に関係なく、重合又は共重合は、有利には、酸素、水及び触媒毒として作用する他の材料を除外する条件下で行われる。また、本発明によれば、重合又は共重合は、ポリマー又はコポリマーの分子量を制御する添加剤の存在下に行われ得る。典型的には、このために水素が当業者に周知の方法で使われる。通常は必要とされないが、重合又は共重合の完了時に、又は重合又は共重合を終結するか又は本発明の触媒又は触媒成分を少なくとも一時的に不活性化することが望まれる場合に、触媒を水、アルコール、アセトン、又は他の適切な触媒不活性化剤と当業者に既知の方法で接触させることができる。
【0061】
本発明のプロセスに従って製造される生成物は、通常固体の主にアイソタクチックポリアルファ-オレフィンである。ホモポリマー又はコポリマーの収量が使われる触媒量に相対して充分に多いので、触媒残留物を分離せずに有用な生成物を得ることができる。更に、ステレオランダム副生成物のレベルが充分に低いので有用な生成物をその分離をせずに得ることができる。開発た触媒の存在下に製造されるポリマー又はコポリマーの生成物は、押出、射出成形、熱成形及び他の一般の技術によって有用な製品に製造することができる。
【0062】
本発明に従って製造されたプロピレンポリマーは、主にプロピレンの高結晶性ポリマーを含有する。実質的なポリプロピレン結晶含量を有するプロピレンポリマーは、現在当該技術において周知である。“アイソタクチック”ポリプロピレンとして記載される結晶性プロピレンポリマーがいくつかの非結晶性ドメインが組み入れられている結晶性ドメインを含有することは長く認識されている。非結晶性は、完全なポリマー結晶形成を防止する規則性アイソタクチックポリマー鎖の欠陥によるものであり得る。
【0063】
重合の後、ポリマー粉末は、典型的には個別チャンバ又はブローボックスを通って、当該技術に既知の方法で重合反応器から取り出され、好ましくは、ポリマー仕上げ装置に移され、適切な添加剤がポリマーに組み込まれ、押出機において、典型的には機械的剪断と熱添加によって、上記溶融温度に加熱され、ダイによって押出され、分離したペレットに形成される。押出機によって処理される前に、ポリマー粉末を空気と水蒸気と接触させて、残存する触媒化学種を不活性化することができる。
【実施例】
【0064】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、限定されない。
本発明のプロセスを用いる12日間実験によって、2つの反応器内で所定のセットのホモポリマーを製造した。実施例は、第1の反応器において高分子量材料を、第2の反応器において低分子量材料を製造した。
【0065】
実施例の前に各反応器についてMFRに関する所定のセットの規格を定め、これらの要求を満たすために実験プラントを処理した。全体で12の異なる材料を指定した(5つの単峰性と7つの二峰性)。
【0066】
単峰性材料の製造について、各反応器における水素比が操作変数として用いられている、各反応器を離れる粉末のメルトフローレート(MFR)を制御することが決定された。二峰性ポリマーの製造について、同じタイプの制御方式の第1の反応器を用いた。最後の粉末MFRは、2つの反応器の製造スプリットを利用することによって制御された。すべての二峰性例において、第2の反応器における水素比は、一定に設定され且つ対応する単峰性値に等しくした。
【0067】



【0068】

【0069】

【0070】

【0071】
本発明のプロセスの第2の6日間実験を行った。
各反応器についてMFRに関する所定の規格セットを、実験期間の前に定め、パイロットプラントが、できる限り厳密にこれらの要求を満たすように行った。全体で7つの異なる材料を指定した(2つの単峰性と5つの二峰性)。
MFR測定と製造制御に関して、以下の方法を用いた:
非常に低いMFRポリマー(0.1未満)については、MFR測定を21.6kgとして行った。
低いMFR材料(0.1〜0.4)については、MFR測定を5kgとして行った。再び、一定の変換係数(4)をMFR2.16を算出するために適用した。
二峰性生成物については、必要な生産スプリットを決定するとともに最後のMFRの評価を得るために1/aモデルを用いた。
【0072】
【数1】

【0073】
式中、p1 = 質量画分ポリマー1、aは経験的に決定されたパラメーターである。
単峰性材料の製造については、各反応器を出る粉末のMFRを制御することが決められ、各反応器内の水素比を操作変数として用いた。二峰性ポリマーの製造については、第1の反応器の同じタイプの制御方法を用いた。最後の粉末MFRは、2つのリアクタの生産スプリットによって制御した。第2の反応器において可能な生産速度として最大が必要とされることから、ほとんどの場合、生産スプリットは“制御されなかった”。言い換えれば、すべては、R2/R1生産スプリットを最大にするために行われた。すべての二峰性の場合において、第2の反応器の水素比は、一定に設定され、対応する単峰性値に等しいものであった。
【0074】
実験については、反応器の前部を再循環ガスの代わりに新鮮な気化されたプロピレンで供給し、ドームの下で2つの再循環ガスノズルを閉じ、反応器の最後のゾーンまで再循環ガスフローを増加させることが決定された。
【0075】
主な知見は以下のようにまとめることができる:
非常に低いMFR(MFR2.16を用いて約0.037)の製造は、2つのリアクタにおいて水素を含まずに行った。塊又は糸状のものは見られなかった。時間とともにMFRの連続するわずかな低下が認められたが、重要ではなかった。触媒生産性に関して、水素を含まない実験は、通常の実験と比較して2つだけ減少につながった。二峰性ポリマー製造に関して、このキャンペーン中に製造された生成物のMFRは、目標より大きい。
【0076】
実験
Al/Mg=4
Al/Si=6

【0077】

【0078】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の反応器の1つを超える重合ゾーンにおいて少なくとも1つのオレフィンモノマーの重合を含むオレフィン重合プロセスであって:
a)オレフィンモノマーの1つ以上の流れを第1の重合ゾーンに導入する工程であって、各流れが0モル%〜約70モル%の水素濃度を有する、前記工程;
b) 0モル%〜約70モル%の水素濃度を有するオレフィンモノマーの1つ以上の流れを次の重合ゾーンに導入する工程; 及び
c)最後の重合ゾーンから約5〜約20の多分散度を有するポリマー生成物を取り出す工程
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
1つ以上の追加の重合ゾーンを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
オレフィンが、プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
プロピレンを第1の反応ゾーンにおいて重合させ、プロピレンとエチレンの混合物を次の重合ゾーンにおいて重合させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を第1の反応ゾーンにおいて第1の温度で重合させ、プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を次の重合ゾーンにおいて異なる温度で重合させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を第1のシランを有する第1の反応ゾーンにおいて重合させ、プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を異なるシラン(又は第1のシランと異なるシランとの組み合わせ)が導入されている次の重合ゾーンにおいて重合させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を第1の助触媒を有する第1の反応ゾーンにおいて重合させ、プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を異なる助触媒(又は第1の助触媒と異なる助触媒との組み合わせ)が導入されている次の重合ゾーンにおいて重合させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
1つ以上の反応器の1つを超える重合ゾーンにおいて少なくとも1つのオレフィンモノマーの重合を含むオレフィン重合プロセスであって、重合プロセスが:
a)オレフィンモノマーと触媒成分を添加することができ且つポリマー粒子を形成する撹拌床を含有する1つ以上の反応容器;
b)触媒成分と急冷液体が添加される反応容器における1つ以上のバルブ制御ポートであって、触媒成分と急冷液体がポリマー粒子を形成する床の中と上に直接添加される、前記ポート;
c)オレフィンモノマーと急冷液体が反応容器に供給される反応容器における1つ以上のバルブ制御ポートに接続される再循環ガス供給系であって:
1)反応器で最上部に沿って反応器排ガスを除去するための手段;
2)急冷液体、ポリマー微粒子及び触媒成分を重合モノマーと水素から分離するための第1の分離器; 及び
3)重合モノマーと水素を個別の再循環流に分離するための第2の分離器
を備える、前記再循環ガス供給系;
d)オレフィンモノマーと水素ガスが反応容器に導入されるポリマー床の下に位置する1つ以上のバルブ制御ポート;
e)固体ポリマー生成物が取り出される反応器の出口端に位置する取り出しバリヤ;
f)取り出しバリヤから固体ポリマー生成物を取り出すためのデバイス;
g)適切な添加剤を固体ポリマー生成物に添加するための仕上げ装置; 及び
h)添加剤を加熱及び機械的剪断によってポリマーに組み込み且つ加熱したポリマーをダイによって押し出して、分離したペレットを形成する押出機
を備える装置において行われる、前記プロセスであって;
1) 0モル%〜約70モル%の水素濃度を有するオレフィンモノマーの1つ以上の流れを第1の重合ゾーンに導入する工程;
2) 0モル%〜約70モル%の水素濃度を有するオレフィンモノマーの1つ以上の流れを次の重合ゾーンに導入する工程; 及び
3)約5〜約20の多分散度を有するポリマー生成物を最後の重合ゾーンから取り出す工程
を含む、前記プロセス。
【請求項9】
プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を第1の反応ゾーンにおいて第1の温度で重合させ、プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を次の重合ゾーンにおいて異なる温度で重合させる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を、第1のシランを有する第1の反応ゾーンにおいて重合させ、プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を、異なるシラン(又は第1のシランと異なるシランとの組み合わせ)が導入されている次の重合ゾーンにおいて重合させる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を第1の助触媒を有する第1の反応ゾーンにおいて重合させ、プロピレン又はプロピレンとエチレンの混合物を異なるシラン(又は第1の助触媒と異なる助触媒との組み合わせ)が導入されている次の重合ゾーンにおいて重合させる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項12】
反応器が区画に分けられ、一方の区画からもう一方の区画まで自由ポリマー粒子移動を可能にしつつ反応器の各区画が区画間の蒸気の混合を制御する分割構造によって物理的に分離されている、請求項8に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−518700(P2012−518700A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551043(P2011−551043)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/001089
【国際公開番号】WO2010/096033
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(509230757)イネオス ユーエスエイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (13)
【Fターム(参考)】