説明

水性または水溶性溶媒中での合金ナノ結晶の合成

本発明は、ナノ結晶およびその製造方法に関し、特に本発明は、三元以上の合金ナノ結晶およびかかる構造を水性または水溶性溶媒中で製造する方法に関する。本発明の幾つかの実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法は、少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体(例えばNaHSe、ZnCl、およびCdCl)を提供するステップ、およびナノ結晶構造を水性または水溶性溶媒中で形成するステップを含む。幾つかの場合、ナノ結晶前駆体溶液は、水溶性リガンド(例えばグルタチオン、GSH)を含むこともできる。少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶(例えばZnCd1−xSe)それ自体を形成することができ、水溶性リガンドは、該三元以上の合金ナノ結晶の表面の少なくとも一部分を被覆することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ナノ結晶およびその製造方法に関し、特に本発明は、合金ナノ結晶およびかかる構造を水性または水溶性溶媒中で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ナノ結晶は、ナノメートル尺度の寸法を有する物質の結晶状粒子である。特に興味深いのは、半導体ナノ結晶または量子ドットとして知られるクラスのナノ結晶であり、これらは光電子、レーザー、および生体撮像を含む様々な適用分野で特に有用となる特性を示す。量子閉じ込め効果が理由となり、半導体ナノ結晶は、ナノ結晶のサイズ、形状、および/または組成に依存して光学特性を示すことができる。ナノ結晶によって、材料の特性が物質の分子形態およびバルク形態両方の特性を含むクラスの材料が得られる。これらのナノ結晶が吸収波長で照射を受ける場合、エネルギーは、光子の形態、およびナノ結晶のサイズに特徴的な色の発光として放出される。放出される生成光子は、一般に同じ材料のバルク形態から放出される光子よりも短い波長を示す。したがって、小型のナノ結晶は、一般により短い発光光子波長を示す。例えばセレン化カドミウム(CdSe)のナノ結晶は、その結晶のサイズが2〜6ナノメートルの範囲にわたって変わる場合、可視スペクトル全域で発光することができる。
【0003】
半導体ナノ結晶の別の態様は、均一なサイズの結晶が、励起波長に関わらず一般に狭く対称な発光スペクトルを可能にすることである。したがって異なるサイズのナノ結晶が使用される場合、共通の励起源から異なる発光色が同時に得られる。この能力は、診断用手段、例えば生体標識および診断における蛍光プローブとしてのナノ結晶の潜在可能性に寄与する。
【0004】
結晶サイズを変えることなくナノ結晶の蛍光色を調整する別の戦略は、コア/シェル複合物および合金ナノ結晶を用いることにより実現している。しかしこれらのナノ結晶の多くは、十分な長期的安定性、および水性または水溶性溶液における十分な蛍光を示すものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、一般に安定な蛍光ナノ結晶、特に青色発光のナノ結晶を生成するための新規な合成方法または戦略を開発するという主な目標が依然残っている。制御可能な組成および特性を有するナノ結晶の新規な合成方法は、様々な適用分野にとって重要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
合金ナノ結晶、およびかかる構造を水性または水溶性溶媒中で製造する方法が提供される。
【0007】
一態様では、本発明は一連の方法を提供する。一実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法は、少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を提供するステップ、該少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造を水性または水溶性溶媒中で形成するステップ、少なくとも第3ナノ結晶前駆体および水溶性リガンドを提供するステップ、および該少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶を水性または水溶性溶媒中で形成するステップを含み、該リガンドは、該三元以上の合金ナノ結晶の表面の少なくとも一部分を被覆する。
【0008】
別の実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法は、少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造を含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液を提供するステップ、該ナノ結晶前駆体溶液と、少なくとも第3ナノ結晶前駆体を含むナノ結晶前駆体溶液とを混合するステップ、および該少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶を形成するステップを含む。
【0009】
別の実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法は、少なくとも第1ナノ結晶前駆体を含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液を提供するステップ、少なくとも第2ナノ結晶前駆体および水溶性リガンドを含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液を提供するステップ、該第1ナノ結晶前駆体溶液と第2ナノ結晶前駆体溶液とを混合するステップ、該少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造を形成するステップ、該ナノ結晶構造を含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液と、少なくとも第3ナノ結晶前駆体および該水溶性リガンドを含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液とを混合するステップ、および該少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶を形成するステップを含み、該水溶性リガンドは、該三元以上の合金ナノ結晶の表面の少なくとも一部分を被覆する。
【0010】
別の実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法は、少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を提供するステップ、該少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造を摂氏100度以下の温度で形成するステップ、少なくとも第3ナノ結晶前駆体を提供するステップ、および該少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶を摂氏100度以下の温度で形成するステップを含み、該三元以上の合金ナノ結晶の量子収率は、水溶液中10%以上である。
【0011】
別の実施形態では、ナノ結晶の調製方法は、少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を提供するステップ、該少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶を水性または水溶性溶媒中で形成するステップを含み、該ナノ結晶は、400ナノメートルと500ナノメートルとの間の範囲の電磁放射線を放射し、該ナノ結晶は、水溶液中少なくとも10%の量子収率を有する。
【0012】
別の態様では、本発明は一連の構造を提供する。一実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶構造は、少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶、および該三元以上の合金ナノ結晶表面の少なくとも一部分上の水溶性リガンドのコーティングを含み、該ナノ結晶およびコーティングは、6ナノメートル未満の少なくとも1つの断面寸法を有する三元以上の合金ナノ結晶構造を形成し、該三元以上の合金ナノ結晶構造は、400ナノメートルと500ナノメートルとの間の範囲の電磁放射線を放射し、水溶液中少なくとも10%の量子収率を有する。
【0013】
別の実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶構造は、少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体の反応生成物を含む三元以上の合金ナノ結晶、および該三元以上の合金ナノ結晶表面の少なくとも一部分上の、アミン末端水溶性リガンドの0.5nm以下の厚さのコーティングとを含み、該ナノ結晶およびコーティングは、400ナノメートルと500ナノメートルとの間の範囲の電磁放射線を放射し、水溶液中少なくとも10%の量子収率を有する三元以上の合金ナノ結晶構造を形成する。
【0014】
別の実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶構造は、少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶、および該三元以上の合金ナノ結晶表面の少なくとも一部分上の、グルタチオンを含むコーティングを含む。
【0015】
本発明の他の利点および新規特徴は、本発明の様々な非限定的な実施形態の以下の詳細な説明を、添付の図と共に考慮することによって明らかになろう。本明細書および参照によって組み込まれる文献が、相反しかつ/または矛盾する開示を含む場合、本明細書がそれらを統制するものとする。参照によって組み込まれる2つ以上の文献が、互いに相反しかつ/または矛盾する開示を含む場合、後の有効日を有する文献がそれらを統制するものとする。
【0016】
一定基準を定めるために描かれたものではない概略的な添付の図を参照することによって、本発明の非限定的な実施形態を例示的に記載する。図においてそれぞれ同一であるか、またはほぼ同一の例示成分は、一般に単一の数字で表される。明瞭化のために、各図において全ての成分に標識が付されるとは限らず、示される本発明の各実施形態の全ての成分に標識が付されるとも限らず、ここでは当業者が例示によって本発明を理解できる必要は必ずしもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
詳細な説明
本発明は、ナノ結晶およびその製造方法に関し、特に本発明は、三元以上の合金ナノ結晶およびかかる構造を水性または水溶性溶媒中で製造する方法に関する。本発明の幾つかの実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法は、少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体(反応してナノ結晶を形成することができる種、例えばNaHSe、ZnCl、およびCdCl)を提供するステップ、およびナノ結晶構造を水性または水溶性溶媒中で形成するステップとを含む。幾つかの場合、ナノ結晶前駆体溶液は、水溶性リガンド(例えばグルタチオン、GSH)を含むこともできる。少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶(例えばZnCd1−xSe)それ自体を形成することができ、水溶性リガンドは、該三元以上の合金ナノ結晶の表面の少なくとも一部分を被覆することができる。有利には、本明細書に記載のナノ結晶の形成方法は、低温(例えば摂氏100度未満)で実施することができ、幾つかの実施形態では有機溶媒を使用する必要がない。本発明の別の態様は、本明細書に記載の前駆体の反応生成物を含むナノ結晶を含む。本発明者らはこれらの方法を適用して、400〜500nmの間で調整可能な発光および水溶液中25%を超える量子収率を有する青色発光ナノ結晶を調製した。これらのナノ結晶は高水溶性であり、細胞培養、検出適用、蛍光共鳴エネルギー移動を含む様々な適用分野、および発光デバイスにおいて使用することができる。
【0018】
本明細書で使用される「三元」ナノ結晶は、3つの(一般に無機)元素から生成されるナノ結晶を意味する。「三元以上」とは、かかる3つ以上の元素を含むことができるようなナノ結晶を意味し、例えば四元ナノ結晶は、かかる4つの元素を含む。「量子収率」は物理的パラメータであり、その意味は当技術分野で周知である。
【0019】
本発明者らは、三元以上の合金ナノ結晶を生成するための新規な水性または水溶性合成方法を開発した。これらの方法によって、ナノ結晶上にコーティングを形成できる水溶性リガンドの使用が可能となり、したがって、有機溶媒中で容易には合成することができない、独特の特性を有する新規ナノ結晶構造を形成することができる。例えば幾つかの場合、これらの方法によって、水溶性リガンドの薄いコーティング(例えば1nm未満の厚さ)を有する三元以上の合金ナノ結晶の形成が可能となる。幾つかの実施形態では、水性または水溶性溶媒中で合成された三元以上の合金ナノ結晶は、有機溶媒中で合成されたナノ結晶(約6nmの断面寸法を有することがある)と比べてサイズが小さい(例えば4nm未満の断面寸法を有する)。
【0020】
主に組成ZnCd1−xSeのナノ結晶(即ち量子ドット)を記載しているが、本明細書に記載の方法は、HgCd1−xTeおよびPbCd1−xTeナノ結晶などの様々な材料組成の三元以上の合金ナノ結晶の大規模生成に拡張することができる。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶を水性または水溶性溶液中で調製する方法が提供される。幾つかの場合、三元以上の合金ナノ結晶の形成は、最初に少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶前駆体構造を水性または水溶性溶媒中で形成することを含む。例えば第1および第2のナノ結晶前駆体が反応して、少なくとも二元ナノ結晶前駆体を形成することができる。幾つかの実施形態では、二元ナノ結晶前駆体は半導体ナノ結晶であってよく、即ち第1および/または第2のナノ結晶前駆体は、半導体材料を含むことができる。溶媒または溶液の状況下、本明細書で使用される「水溶性」には、当技術分野における通常の意味、即ち微量を超える量が水に溶ける(水と混和する)という意味が付与される。例えば、「水溶性」溶媒または溶液の少なくとも1体積%または少なくとも5体積%(全混合流体に対して)が水と混和する。
【0022】
本発明のナノ結晶(ナノ結晶前駆体を含む)は、任意の適切な材料組成を有することができる。例えば本発明のナノ結晶は、元素周期表の第2、7、8、9、10、11、12、13、14、15、および16族から選択される1つまたは複数の元素から構成され得る。これらの族は、当業者に知られているIUPAC認証命名法に従って定義される。幾つかの場合、半導体などのナノ結晶は、第12〜16族化合物から少なくとも部分的に構成され得る。半導体材料は、例えば第12〜16族化合物、第13〜14族化合物、または第14族元素であってよい。元素周期表の第12族からの適切な元素には、亜鉛、カドミウム、または水銀が含まれ得る。第13族からの適切な元素には、例えばガリウムまたはインジウムが含まれ得る。半導体ナノ結晶に使用することができる第14族からの元素には、例えばケイ素、ゲルマニウム、または鉛が含まれ得る。半導体材料に使用することができる第15族からの適切な元素には、例えば窒素、リン、ヒ素、またはアンチモンが含まれ得る。第16族からの適切な元素には、例えば硫黄、セレン、またはテルルが含まれ得る。
【0023】
本発明のナノ結晶前駆体は、反応してナノ結晶(または本明細書で同義に使用されるナノ結晶構造)を形成することができる任意の適切な種を含むことができ、例えばNaHSe、ZnCl、およびCdClは、ZnCd1−xSeナノ結晶に対するナノ結晶前駆体として使用することができる。多様なナノ結晶前駆体を使用して、本発明のナノ結晶(またはナノ結晶前駆体構造)を形成することができる。例えば第1、第2、第3、もしくは第4またはそれ以上のナノ結晶前駆体が第12族元素(例えばZn、Cd、またはHg)を含む場合、第12族前駆体には、即ち第12族金属酸化物、第12族金属ハロゲン化物、または第12族金属有機錯体が含まれ得る。かかる第12族構造の非限定的な例には、酢酸亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、炭酸亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸カドミウム、アセチルアセトンカドミウム、ヨウ化カドミウム、臭化カドミウム、塩化カドミウム、フッ化カドミウム、炭酸カドミウム、硝酸カドミウム、酸化カドミウム、過塩素酸カドミウム、リン化カドミウム、硫酸カドミウム、酢酸水銀、ヨウ化水銀、臭化水銀、塩化水銀、フッ化水銀、シアン化水銀、硝酸水銀、酸化水銀、過塩素酸水銀、硫酸水銀、およびそれらの混合物が含まれる。
【0024】
別の例では、第1、第2、第3、またはそれ以上のナノ結晶前駆体の1つまたは複数が、第16族元素(例えば硫黄、セレン、テルル、またはそれらの合金)を含む場合、第16族前駆体には、S粉末、Se粉末、Te粉末、トリメチルシリル硫黄、トリメチルシリルセレン、またはトリメチルシリルテルルが含まれ得る。
【0025】
三元以上の合金ナノ結晶の前駆体(例えばナノ結晶前駆体構造)として作用することができる二元半導体ナノ結晶の例には、それらに限定されるものではないが、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、Al、AlSe、AlTe、Ga、GaSe、GaTe、In、InSe、InTe、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TiN、TiP、TiAs、およびTiSbが含まれる。特定の組成物を一部分選択して、所望の光学特性を提供することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、リガンド、例えばグルタチオンなどの水溶性リガンドの存在下で、第1ナノ結晶前駆体を第2ナノ結晶前駆体に添加することができる。本明細書で使用される「水溶性リガンド」は、少なくとも部分的に水溶性(水混和性)のリガンドである。即ち「水溶性リガンド」の微量を超える量(例えば少なくとも約1%)が、水溶性(水混和性)であってよい。以下により詳細に論じるように、様々な水溶性リガンドを使用することができる。第1および第2のナノ結晶前駆体は、二元ナノ結晶前駆体構造を形成することができ、水溶性リガンドは、少なくとも部分的にナノ結晶の表面を被覆する(即ちナノ結晶表面上にリガンドの外層を形成する)ことができる。例えば水溶性リガンドは、ナノ結晶前駆体構造の表面の15%超、30%超、50%超、75%超、90%超、または約100%を被覆することができる。幾つかの場合、水溶性リガンドは、ナノ結晶表面の全体または一部分上に単層(例えば自己組織化単層(SAM))を形成することができる。さらにまたは代案として、2つ以上の化学構造のリガンドを、ナノ結晶前駆体溶液に添加することができる。リガンドは、ナノ結晶表面の全体または一部分上に、例えば混合SAMを形成することができる。有利には、リガンドの存在下で第1および第2のナノ結晶前駆体からナノ結晶前駆体構造を形成することは、幾つかの場合、三元以上の合金ナノ結晶を形成する助けとなり得る。即ち三元以上の合金ナノ結晶の構造特性、発光特性、および/または収率は、ナノ結晶前駆体構造の形成中にリガンドを添加することによって、および/または2つ以上の合成ステップ中(即ちナノ結晶前駆体構造を形成し、その前駆体構造から三元以上の合金ナノ結晶を形成するステップ中)にリガンドを添加することによって利益を得ることができる。幾つかの場合、ナノ結晶前駆体溶液中のリガンドの存在は、即ち高pH(例えばpH9)でナノ結晶前駆体を安定化し、不溶性水酸化物の形成を防止することができる。
【0027】
二元以上の合金ナノ結晶(例えばナノ結晶前駆体)を、少なくとも第3ナノ結晶前駆体を含有する1つまたは複数のナノ結晶前駆体溶液と混合して、三元以上の合金ナノ結晶を形成することができる。三元以上の合金ナノ結晶は、少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体の反応生成物であってよい。三元以上の合金ナノ結晶は、水性または水溶性溶媒中で形成することができ、少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体から構成することができる。幾つかの場合、三元以上の合金ナノ結晶は、低温(例えば100℃以下、95℃以下、または85℃以下)で形成される。
【0028】
他の実施形態では、少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を、水性または水溶性溶媒中で混合して、三元以上の合金ナノ結晶、即ち少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体の反応生成物を形成することができる。幾つかの場合このことは、二元ナノ結晶前駆体構造を沈殿させる必要なしに実施することができる。例えば、少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体は、ナノ結晶前駆体構造を沈殿させることなく、水性または水溶性溶媒中でナノ結晶前駆体構造(例えば二元以上のナノ結晶)を形成することができ、第3ナノ結晶前駆体をその溶媒に添加して、三元以上の合金ナノ結晶を形成することができる(即ち適切に溶媒を加熱/冷却する)。時に、溶媒中に水溶性リガンドが存在してもよく、三元以上の合金ナノ結晶の表面の少なくとも一部分を、そのリガンドで被覆することができる。
【0029】
幾つかの場合、三元以上の合金ナノ結晶は、二元以上の合金ナノ結晶前駆体構造から形成されたコア、およびそのコアの周りの、少なくとも第3のナノ結晶前駆体から形成されたシェルを含む。他の場合には、三元以上の合金ナノ結晶は、同じ構造を有するコアおよびシェル部分を含み、即ち三元以上の合金ナノ結晶は、実質的に均質である。換言すれば、ナノ結晶前駆体(例えば二元ナノ結晶の場合には第1および第2のナノ結晶前駆体、または三元ナノ結晶の場合には第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体)の分布は、ナノ結晶内で実質的に均質になり得る。
【0030】
三元以上の合金ナノ結晶は、上記の材料の合金または混合物を含む組成を有することができる。三元合金ナノ結晶は、一般式A1−xM、A1−xM、A1−xMA、またはA1−xMAを有することができ、四元合金ナノ結晶は、一般式A1−x1−y、A1−x1−y、A1−x1−y、またはA1−x1−yを有することができ、指数xは、0.001と0.999の間、0.01と0.99の間、0.05と0.95の間、または0.1と0.9の間の値を有することができる。幾つかの場合、xは、約0.2、約0.3、または約0.4から約0.7、約0.8、または約0.9の間の値を有することができる。幾つかの特定の実施形態では、xは、0.01と0.1の間または0.05と0.2の間の値を有することができる。指数yは、0.001と0.999の間、0.01と0.99の間、0.05と0.95の間、または0.1と0.9の間、または約0.2と約0.8の間の値を有することができる。この状況下のAおよびMの識別は、以下の種の例示的列挙および本明細書の他の開示から理解されよう。幾つかの実施形態では、AおよびMは、元素周期表の第2、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16族から選択することができる。例えば幾つかの特定の実施形態では、Aおよび/またはAは、第2、7、8、9、10、11、12、13、および/または14族から選択することができると同時に、M(例えばMおよび/またはM)は、例えば元素周期表の第15および/または16族から選択される。
【0031】
三元合金ナノ結晶の非限定的な例には、ZnSSe、ZnSeTe、ZnSTe、CdSSe、CdSeTe、CdSTe、HgSSe、HgSeTe、HgSTe、ZnCdS、ZnCdSe、ZnCdTe、ZnHgS、ZnHgSe、ZnHgTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、ZnPbS、ZnPbSe、ZnPbTe、CdPbS、CdPbSe、CdPbTe、AlGaAs、InGaAs、InGaP、およびAlGaAsが含まれる。四元ナノ結晶合金の非限定的例には、ZnCdSSe、ZnHgSSe、ZnCdSeTe、ZnHgSeTe、CdHgSSeまたはCdHgSeTe、ZnCdSeTe、ZnCdSeS、HgCdSeS、HgCdSeTe、GaInpAs、AlGaAsP、InGaAlP、およびInGaAsPが含まれる。これらのナノ結晶は、使用される前駆体の比を調節することによって、適切なバンドギャップを有することができる。三元以上の合金ナノ結晶は、それより高次の合金ナノ結晶構造を調製するためにそのままで使用することができ、または前駆体として作用することができる。
【0032】
幾つかの場合、少なくとも第3のナノ結晶前駆体を含有するナノ結晶前駆体溶液は、リガンド、例えばグルタチオンなどの水溶性リガンドを含むこともできる。ナノ結晶前駆体溶液を二元以上のナノ結晶前駆体構造と混合すると、三元以上の合金ナノ結晶を形成することができ、水溶性リガンドによって、該三元以上の合金ナノ結晶の表面の少なくとも一部分を被覆することができる。例えば水溶性リガンドは、ナノ結晶前駆体構造の表面の15%超、30%超、50%超、75%超、90%超、または100%を被覆することができる。幾つかの場合、水溶性リガンドは、ナノ結晶表面の全体または一部分上に単層(例えば自己組織化単層(SAM))を形成することができる。幾つかの場合、2つ以上の化学構造のリガンドを、ナノ結晶前駆体溶液に添加することができる。リガンドは、ナノ結晶表面の全体または一部分上に、例えば混合SAMを形成することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、ZnCd1−xSe、HgCd1−xTe、およびPbCd1−xTeなどの組成を有する三元合金ナノ結晶は、水性または水溶性溶媒中で調製することができる。ナノ結晶は、グルタチオンなどの水溶性リガンドで被覆することができ、ナノ結晶は、即ちナノ結晶の組成を変えることによって400nmと500nmの間で調整可能な蛍光発光(即ちZnCd1−xSeナノ結晶について)または600nmと800nmの間で調整可能な蛍光発光(即ちHgCd1−xTeおよびPbCd1−xTeナノ結晶について)を有することができる。調製されたままのGSHで被覆したナノ結晶は、水溶液中、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、または35%以上の量子収率(QY)を有することができる。幾つかの実施形態では、ナノ結晶は、例えば20〜32nmの間の狭い帯域幅を有する電磁放射線を放射する。有利には、GSHで被覆したZnCd1−xSe、HgCd1−xTe、およびPbCd1−xTeナノ結晶は、高水溶性であり、生体適合性であり得る。3nmもの小さいサイズを有する調製されたままのナノ結晶は、実質的に単分散することができる。幾つかの場合、対象となる被分析物は、これらのナノ結晶上のリガンドと、即ちアミノ基またはカルボキシル基との結合によって容易に結合することができる。GSHで被覆したZnCd1−xSeナノ結晶は、即ち生体撮像適用のための(例えば生体材料および/または化学材料のための蛍光タグとして)、青色(ZnXCd1−xSe)または赤色(HgCd1−xTeおよびPbCd1−xTe)の蛍光ラベルとして重要である。
【0034】
本発明の作用実施例を定義する一実施形態では、第1ナノ結晶前駆体Znを含有する第1水性前駆体溶液を、第2ナノ結晶前駆体Seを含む第2水性ナノ結晶前駆体溶液と混合した。混合物は、水溶性リガンド、グルタチオンも含有していた。ZnSeナノ結晶前駆体構造の成長は、混合物を95℃に加熱した直後に開始することができる。調製されたままのZnSeナノ結晶の蛍光発光ピークは、90分で350nmから370nmに変化し、量子収率は2%から7%に増加した。量子収率はpH9の水中で測定した。
【0035】
370nmの発光を有する調製されたままのZnSeナノ結晶の吸収および蛍光スペクトルを図1に示す。図1に例示の実施形態では、ZnSe蛍光発光の量子収率および帯域幅は、それぞれ7%および19nmであり、それらはバンドギャップ発光で占められていた。さらに加熱すると、最も高い可能性としてはグルタチオンと大型ZnSeナノ結晶との間の幾何学的不一致に起因して、発光ピークはより長い波長に変化し続けたが、量子収率は減少し始めた。有利にはGSHで被覆したZnSeナノ結晶によって、時間を要することがあり、ナノ結晶の不可逆的凝集を生じる恐れもある調製後の処理なしに、7%の量子収率が実現した。
【0036】
幾つかの実施形態では、二元ナノ結晶(例えばZnSe)は、三元以上の合金ナノ結晶の調製のための前駆体として使用することができる。第3ナノ結晶前駆体、例えばCdは、二元前駆体ナノ結晶に組み込むことができる。幾つかの場合、二元ナノ結晶前駆体溶液(例えばZnSeなどのナノ結晶前駆体を含む溶液)を、95℃で0、30、60、または90分間(即ち他の全ての反応条件は一定)加熱した後に第3ナノ結晶前駆体を導入することができる。加熱時間は、反応生成物、即ち三元以上の合金ナノ結晶の質、収率、および/または他の特性に影響を与え得る。例えば特定の一実施形態では、二元前駆体を30分間加熱した後、第3ナノ結晶前駆体Cdをその二元前駆体ナノ結晶ZnSeに添加することによって、最良の質の合金ナノ結晶を得た。第3ナノ結晶前駆体を添加した後、得られた溶液を95℃で4〜6時間加熱し、400と500nmとの間で調整可能な範囲を有し、水溶液中10〜27%の範囲の量子収率を有する三元合金ナノ結晶(例えばZnCd1−xSe)を生成した。別の特定の実施形態では、第3ナノ結晶前駆体(例えばPb(NOまたはHg(CHCOO))を二元ナノ結晶前駆体(例えばCdTe)に添加した後、その二元ナノ結晶前駆体溶液を加熱することによって、最良の質の三元合金ナノ結晶を得た。第3ナノ結晶前駆体の添加後、得られた溶液を95℃で1〜3時間加熱し、600〜800nmの間で調整可能な範囲を有し、水溶液中10〜30%の範囲の量子収率および50nm未満の帯域幅を有する三元合金ナノ結晶(例えばPbCd1−xTeまたはHgCd1−xTe)を生成した。したがって、加熱時間ならびに合成中(即ち幾つかの成分の添加前または添加後の加熱)のステップの連続は、反応生成物の質、収率、および/または他の特性に影響を与え得る。したがって、1つの条件を変えると同時に他の諸条件を一定に保つことによって、適切な反応条件を選択することができる。
【0037】
本発明の三元以上の合金ナノ結晶は、ナノ結晶が400nmと500nmの間、または600〜800nmの間の範囲の電磁放射線を放射するように、即ちナノ結晶の相対組成(例えば成分のモル分率)を変えることによって、および/またはナノ結晶のサイズを変えることによって(例えば前駆体溶液の加熱に可能な時間を変えることによって)調整することができる。例えば428nmの発光と共に30nm未満の帯域幅を有する幾つかのナノ結晶に関して、例えばあるナノ結晶は、415nmと443nmの間の発光を有することができる。他の場合には、ナノ結晶は448nmまたは474nmの発光を有し、その結果該ナノ結晶は、400および500nmの間の範囲の電磁放射線を放射する。本明細書の特徴的特性などの発光の記述は、ナノ結晶の全電磁放射線発光の少なくとも10%が記載の波長範囲内に存在することを意味する。あるいは他の実施形態では、ナノ結晶の全発光の少なくとも10%、20%、35%、50%、75%、または90%が、その範囲内に存在する。例えばGSHで被覆したZn0.4Cd0.6Se合金ナノ結晶の吸収および蛍光スペクトルの発生を、図2に示した実施形態に示す。Cdを添加すると、Cdは、即ちCdSeの高い結合定数に起因してZnSeナノ結晶の表面上に急速に堆積することができる。ZnSe(図2A)の蛍光は、CdSe(図2B)の層を添加することによって大部分がクエンチされ、吸収スペクトルのバンドギャップは360nmから405nmに変化した。さらに加熱すると、バンドギャップはより長い波長に変化し続け、蛍光発光は赤に変化し、蛍光強度が増大した。1時間の加熱後(図2C)、バンドギャップおよび蛍光発光ピークは40nmから445nmに変化し、スペクトルはバンドエッジ発光が占めるようになった。4時間の加熱後(図2D)、蛍光発光ピークは20nmから465nmに変化した。ピークは、追加で2時間加熱した後に2nm未満だけ赤に変化し、より長い波長の広範なトラップ発光の尾は殆ど検出不可能となり、合金ナノ結晶の組成が均一になったことを示した。
【0038】
ZnCd1−xSe合金ナノ結晶中のCdの相対モル分率を制御するために、異なるモル比のCd前駆体を含む前駆体溶液を、ZnSeナノ結晶と、即ちZnSe前駆体の加熱後の同じ時点で混合することができ、その混合物は同じ時間加熱することができる。一実施形態では、GSHで被覆したZnCd1−xSe合金ナノ結晶の蛍光発光には、トラップ発光が含まれなくなり、4時間の加熱後に安定した。Zn0.75Cd0.25Se、Zn0.62Cd0.38Se、およびZn0.4Cd0.6Seナノ結晶の蛍光スペクトルを、それぞれ図1(b)、1(c)、および1(d)に示す。この3つの合金ナノ結晶の蛍光ピークは、それぞれ428、448、および474nmで28、30、および32mnという狭い帯域幅であった。Zn0.75Cd0.25Se、Zn0.62Cd0.38Se、およびZn0.4Cd0.6Seナノ結晶について水中(pH9)で測定した量子収率は、それぞれ12%、20%、および22%であった。27%の量子収率を有するZn0.4Cd0.6Se合金ナノ結晶も合成した。ZnCd1−xSe合金ナノ結晶中のZnモル分率(x)は、ICP−MS、元素分析によって決定した。図3は、様々な組成を有するZnCd1−xSe合金ナノ結晶の蛍光ピーク発光および量子収率を示している。
【0039】
有利には、ZnCd1−xSe合金ナノ結晶は、発光特性(即ち量子収率および帯域幅)の有意な変化なしに、pH8.5〜11を有する水溶液中で7カ月を超えて安定であり、pH7〜8を有する溶液中で少なくとも3日間安定であり得る。したがって三元以上の合金の量子ドットは、以下により詳細に論じるように、細胞ならびに他の生体材料および/または化学材料を用いる使用に適している。
【0040】
別の実施形態では、第1および第2のナノ結晶前駆体CdおよびZnを、第3ナノ結晶前駆体Seの添加前に予め混合した(即ちCdZnナノ結晶前駆体を形成した)。成長および精製の際、Zn前駆体の見かけのモル分率が0.8であったにも関わらず、最終ナノ結晶においてはCdSeが主な成分であった(元素分析のデータに基づく)。この観測結果は、Cdに対するSe前駆体の親和性と、Znと結合するSeの親和性との間の著しい差によって説明することができる(即ちZnSeの水溶度は、CdSeよりもかなり高く、ZnSeおよびCdSeのKspは、それぞれ10−26および10−33であった)。得られたナノ結晶の分光学的特徴は、純粋なCd前駆体で調製した、GSHで被覆したCdSeナノ結晶の分光学的特徴と非常に類似していた。幾つかの実施形態では、調整可能な合金組成を有するZnCd1−xSeナノ結晶の形成において、第1および第2前駆体としてCdおよびZnを使用する手法が、第1および第2前駆体としてZnおよびSeを使用する手法ほど適切ではなかったという結論を得た。
【0041】
したがって当業者は、調整可能な適切な合金組成を得るために、適切な材料、材料の組合せ、および反応条件を、即ち材料の物理的特性(例えば結合親和性およびバンドギャップ)に基づいて、日常的な実験を使用して決定することができる。例えば幾つかの場合、一般には、即ち実験条件下で第1および第2のナノ結晶を混合してナノ結晶前駆体構造を形成し、次いで実験条件下でナノ結晶前駆体構造を少なくとも第3ナノ結晶前駆体と混合して第1の三元以上の合金ナノ結晶を形成することによって、第1、第2、および/または第3のナノ結晶前駆体の混合順序を選択することができる。第1、第2、および/または第3のナノ結晶前駆体は、即ち成分の相対的な結合親和性およびバンドギャップに基づいて選択することができる。次いで三元以上の合金ナノ結晶の特性(例えば収率、サイズ、量子収率、発光帯域幅等)を測定することができる。類似の実験条件下で、異なる一組のナノ結晶前駆体(例えば第2および第3のナノ結晶前駆体)を選択し、混合してナノ結晶前駆体構造を形成することができ、次いでそれをもう1つのナノ結晶前駆体(例えば第1ナノ結晶前駆体)と混合して、第2の三元以上の合金ナノ結晶を形成することができる。第2構造の特性を測定し、第1構造の特性と比較して、第1、第2、および/または第3のナノ結晶前駆体の適切な混合順序を決定することができる。類似の手法を使用して、第1、第2、第3、またはそれ以上のナノ結晶前駆体に適する材料を決定することもできる。
【0042】
最高QY(7%)を有するGSHで被覆したZnSeナノ結晶で物理的特徴付けを実施すると、370nmの蛍光発光ピークを示した。GSHで被覆したZn0.75Cd0.25Se、Zn0.62Cd0.38Se、およびZn0.4Cd0.6Se合金ナノ結晶も、詳細に調査した。
【0043】
幾つかの場合、本明細書に記載の方法を使用して製造した三元以上の合金ナノ結晶は、有機溶媒中で製造した結晶構造とは異なる結晶構造を有する。例えば、水性または水溶性溶媒中で形成したナノ結晶は、立方晶構造(例えば亜鉛ブレンドの立方晶構造)を有することができるが、有機溶媒中で形成された類似の組成を有する構造は、六方晶構造(例えばウルツ鉱結晶構造)を有することができる。図4は、亜鉛ブレンド立方晶構造を有する、GSHで被覆したZnSeおよびZnCd1−xSe合金ナノ結晶の粉末X線回折(XRD)図形を示している。幾つかの場合、これらのナノ結晶の結晶構造は、チオールで被覆した他の幾つかのナノ結晶またはGSHで被覆したCdTeナノ結晶と類似している。Znモル分率が1から0.4に減少するにつれて、XRDピークは小角度に変化した。GSHで被覆したZn0.4Cd0.6Se(図4(d))のXRDピークは、GSHで被覆したCdSeナノ結晶のXRDピークと類似していた。ピーク(111)の帯域幅およびシェラーの式に基づいて、ZnSe、Zn0.75Cd0.25Se、Zn0.62Cd0.38Se、およびZn0.4Cd0.6Seナノ結晶の断面寸法(例えばコア寸法)を算出すると、それぞれ2.6、2.7、2.8、および2.7nmであった。XRDピークの広がりへの複合ナノ結晶の効果を考慮すれば、合金ナノ結晶の実際の断面寸法は、算出したサイズ(均質な結晶格子の想定値に基づいた)よりもわずかに大きいはずである。したがってZn0.75Cd0.25Se、Zn0.62Cd0.38Se、およびZn0.4Cd0.6Se合金ナノ結晶は、約3〜4nmの断面寸法(例えばコア寸法)を有することができる。かかるナノ結晶の水性または水溶性溶媒中での合成は、単分散ナノ結晶、即ち実質的に類似の断面寸法(例えば幅±1nm、長さ±1nm、および/またはコア寸法±1nm)を有するナノ結晶を生成することができる。例えば幾つかの場合、形成されたナノ結晶の50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、または95%超が単分散することができる。
【0044】
図5は、GSHで被覆したZnSeナノ結晶(図5(a))およびZn0.4Cd0.6Se合金ナノ結晶(図5(b))の高解像度TEM顕微鏡写真を示している。図5に例示の実施形態では、ナノ結晶は、約3〜4nmの第1断面寸法(例えば長さ)および約2〜3nmの第2断面寸法(例えば幅)を有していた。別の実施形態では、合成したナノ結晶の90%超が、3.3±0.5nmの幅および3.9±0.5nmの長さを有していた。Zn0.4Cd0.6Se合金ナノ結晶は、ZnSeナノ結晶よりもわずかに大きかった。幾つかの場合、調製したままのGSHで被覆した合金ナノ結晶の水溶液中でのサイズ分布は、動的光散乱(DLS)によって測定して4〜6nmであった。即ち、DLS粒経はナノ結晶子サイズおよびコーティングの厚さを反映していたので、三元以上の合金ナノ結晶およびリガンドのコーティングを含む幾つかのナノ結晶構造は、4〜6nmの間の断面寸法を有していた。
【0045】
他の実施形態では、まずナノ結晶前駆体構造CdTeを、即ち第1および第2のナノ結晶前駆体、例えばCdClおよびHTeから水性または水溶性溶媒中で形成することによって、三元合金ナノ結晶PbCd1−xTeおよびHgCd1−xTeを生成することができる。第3ナノ結晶前駆体、例えばPb(NOまたはHg(CHCOO))をナノ結晶前駆体構造に添加して、それぞれPbCd1−xTeまたはHgCd1−xTeを形成することができる。幾つかの場合、水溶性リガンド(例えばグルタチオン)を、ナノ結晶前駆体構造の形成中、および/または三元以上の合金ナノ結晶の形成中に提供して、即ちグルタチオンで被覆したPbCd1−xTeおよびHgCd1−xTeナノ結晶を生成することができる。これらの構造、即ち0.01〜0.1の範囲のx値を有する幾つかの構造に関して、600〜800nmの間の調整可能な範囲および水溶液中10〜30%の間の量子収率を有することができる。図6は、Pb0.1Cd0.9Teナノ結晶およびHgCd1−xTeナノ結晶(但しx=0.02、0.05、および0.1)の量子収率および発光波長を示す。PbCd1−xTeおよびHgCd1−xTeナノ結晶の合成が関与する幾つかの特定の場合において、xは、合金ナノ結晶中の成分の適切な量であった。
【0046】
三元以上の合金ナノ結晶は、様々な形状および/またはサイズを有するように合成することができる。例えばナノ結晶は、実質的に球状、長円形、または棒状であってよい。三元以上の合金ナノ結晶は、100nm未満、50nm未満、20nm未満、10nm未満、6nm未満、または3nm未満の少なくとも1つの断面寸法を有することができる。幾つかの場合、三元以上の合金ナノ結晶のサイズは、リガンド(例えば水溶性リガンド)のコーティングと組み合わせて測定することができる。ナノ構造およびコーティングの組合せは、100nm未満、50nm未満、20nm、10nm未満、6nm未満、または3nm未満の断面寸法を有することができる。幾つかの場合、ナノ構造およびコーティングの組合せは、3nmと6nmの間、4nmと6nmの間、または4nmと7nmの間の断面寸法を有することができる。ナノ結晶のサイズおよび/または寸法は、顕微鏡検査技術(例えばTEMおよびDLS)を使用して代表的な数の粒子のサイズを測定することによって決定できる。
【0047】
半導体ナノ結晶の発光波長は、ナノ結晶のサイズおよび/または組成などの因子によって左右され得る。これらの発光はそれ自体、ナノ結晶の粒経および/または組成を変えることによって制御することができる。例えば構造ZnCd1−xSeを有する三元合金ナノ結晶については、ZnおよびCd成分の割合を変えることによって、ナノ結晶の発光を変えることができる。例えばZn0.75Cd0.25Se、Zn0.62Cd0.38Se、およびZn0.4Cd0.6Seナノ結晶は、それぞれ428、448、および474nmの発光を有するように合成することができる。
【0048】
本発明の三元以上の合金ナノ結晶が放射する電磁放射線は、例えば約100mn未満、好ましくは約80nm未満、より好ましくは約60nm未満、より好ましくは約50nm未満、より好ましくは約40nm未満、より好ましくは約30nm未満、より好ましくは約20nm未満、およびより好ましくは15nm未満にわたる非常に狭い帯域幅を有することができる。幾つかの場合、本発明の三元以上の合金ナノ結晶が放射する電磁放射線は、10nmと20nmの間、20nmと25nmの間、25nmと30nmの間、30nmと35nmの間、または28nmと32nmの間などの狭い波長を有することができる。
【0049】
ナノ結晶は、例えば分光的に観測し測定し得る特徴的な発光スペクトルを発光することができる。したがって幾つかの場合、多くの異なるナノ結晶は、発光シグナルの有意な重複なしに同時に使用することができる。ナノ結晶の発光スペクトルは、対称であるか、またはほぼ対称であり得る。幾つかの蛍光分子とは違い、ナノ結晶の励起波長は広範な周波数を有することができる。したがって、単一の励起波長、例えば可視スペクトルの「青」領域または「紫」領域に対応する波長を使用して、それぞれが異なる発光波長を有することができるナノ結晶の集団を同時に励起することができる。したがって、例えば多数の化学的または生物学的アッセイに対応する多数のシグナルを同時に検出し、記録することができる。
【0050】
幾つかの場合、三元以上の合金ナノ結晶の形成は、ナノ結晶前駆体構造(例えば二元ナノ結晶)および/または三元以上の合金ナノ結晶を水性または水溶性溶媒中で形成することを含む。例えば第1、第2、第3、第4、またはそれ以上の前駆体の1つまたは複数は、水性または水溶性前駆体溶液の形態で存在することができる。時に水性または水溶性溶媒は、例えば不活性雰囲気下(例えばアルゴン、窒素、ヘリウム、キセノン等)で実質的にO(g)を含まない、実質的に無酸素の水であってよい。他の場合、溶媒はアルコールを含むことができ、例えば溶媒の20%超、40%超、60%超、80%超、または約100%(重量)をアルコールで構成することができる。本発明での使用に適したアルコールの非限定的な例には、1〜4個の炭素原子を含有するアルコール、即ちメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、およびt−ブタノールを含むC〜Cアルコールが含まれる。幾つかの場合、4つを上回る炭素を有するアルコールを使用することができる。有利には、三元以上の合金ナノ結晶は、本発明の幾つかの実施形態において有機溶媒および/または界面活性剤を使用せずに調製することができる。即ち水溶性リガンドで被覆されたナノ結晶が水性または水溶性溶媒中で合成される場合、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)などの界面活性剤は必要ない。結果として、有機溶媒中では容易に合成することができない独特の特性を有する新規ナノ結晶構造を形成することができる。例えば、三元以上の合金ナノ構造の水性または水溶性溶媒中での合成は、リガンドの薄いコーティング(例えば幾つかの場合、1nm未満の厚さ)をナノ結晶の表面の少なくとも一部分上に形成することを可能にする。三元以上の合金ナノ結晶の水性合成は、有機溶媒中で合成したものよりも小さいナノ結晶(即ちより小さい断面寸法を有するナノ結晶)をもたらすこともできる。
【0051】
ナノ結晶前駆体および/または三元以上の合金ナノ結晶を含むナノ結晶構造は、水性または水溶性溶媒中、様々な時間で加熱することができる。幾つかの場合、ナノ結晶前駆体が溶液中で加熱される時間に依存して、様々な質の合金ナノ結晶を得ることができる。幾つかの場合、少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造は、少なくとも第3ナノ結晶前駆体を導入する前に約30分以下、約60分以下、または約90分以下加熱することができる(例えば100℃以下の温度で)。有利には、水性または水溶性溶媒中でのナノ結晶の合成は、有機溶媒中でのナノ結晶の合成(300℃を超える温度を要することがある)よりも低い反応温度を必要とする。さらに、水性または水溶性溶媒中でナノ結晶を合成する場合、長時間のアニーリング(例えば〜30時間)は必要ない。
【0052】
核生成の後、所望のサイズに達するまでナノ結晶を成長させ、次いで即ち反応温度を下げることによってクエンチすることができる。反応物の成長段階中のナノ結晶サイズおよびナノ結晶サイズ分布は、サンプルの吸収または発光ピークの位置および/または線幅をモニタすることによって見積もることができる。温度および前駆体濃度などの、スペクトルの変化に応答する反応パラメータの動的改変は、これらの特徴の調整を可能にすることができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、二元および/または三元以上の合金ナノ結晶は、ナノ結晶表面の少なくとも一部分上にリガンドのコーティングを含むことができる。幾つかの場合、リガンドは水溶性リガンドであってよい。この状況下では、「水溶性」という用語は、当技術分野で一般に使用されているように本明細書で使用され、水性または水溶性環境におけるナノ結晶の分散を指す。「水溶性」とは、例えば各材料が分子レベルで分散することを意味するものではない。ナノ結晶は、幾つかの異なる材料から構成することができ、さらには不可欠な粒子として「水溶性」である。
【0054】
水溶性リガンドは、カルボキシ、アミン、アミド、イミン、アルデヒド、ヒドロキシル基等、およびそれらの組合せなどの官能基を含むことができる。かかる官能基は、本発明のナノ結晶のコーティング(または少なくとも部分的コーティング)の末端基を定義することができる。即ちコーティングは、特定の官能基が、一次的または排他的にナノ結晶に対して外向きにもたらされ、標準の化学的または生物学的相互作用でナノ結晶と相互作用する実体が、最初にまたは一次的にその官能基と接触するようにナノ結晶の表面に集められ、または自動的に集まることができる。例えば、本発明のナノ結晶上のアミン末端コーティングは、ナノ結晶との標準の化学的または生物学的相互作用で、ある種に一次的または排他的にアミン官能基をもたらすことになる。
【0055】
幾つかの実施形態では、あるクラスの水溶性リガンドには、チオール、例えばグルタチオン、チオプロニン、2−メルカプトエタノール、1−チオグリセロール、L−システイン、L−システインエチルエステル、2−メルカプトエチルアミン、チオグリコール酸、2−(ジメチルアミノ)エタンチオール、N−アセチル−L−システイン、ジチオトレイトール、および/またはそれらの誘導体が含まれる。幾つかの場合、これらのおよび他のリガンドは、ナノ結晶の表面上に密集構造(例えばSAM)を形成することができる。
【0056】
幾つかの特定の実施形態では、生体適合性のある水溶性リガンドは、細胞(例えば哺乳類または細菌の細胞)との相互作用および/または核酸、ポリペプチド等を含む生体材料に使用されるナノ結晶を被覆するのに特に適している。例えばグルタチオンで被覆した三元以上の合金ナノ結晶は、他の水溶性ナノ結晶よりも生体適合性があり細胞毒性が少ない。幾つかの場合、ナノ結晶の水性合成に組み込むことができる水溶性リガンドは、有機または有機金属の合成経路で調製されたナノ結晶よりも生体適合性があり細胞毒性が少ない水溶性ナノ結晶を生成することができる。
【0057】
リガンドはナノ結晶と相互作用して、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合などのナノ結晶との結合を形成することができる。この相互作用は、ファンデルワールス相互作用を含むこともできる。時にリガンドは、化学的または物理的吸着によってナノ結晶と相互作用する。
【0058】
幾つかの実施形態では、コーティングを適切に官能化して、ナノ結晶に所望の特性(例えば表面特性)を付与することができる。例えばコーティングは、ナノ結晶の特性を変えるまたは改良することができる化合物、官能基、原子、または材料を含むように官能化または誘導体化することができる。幾つかの実施形態では、コーティングは、被分析物と特異的に相互作用して共有結合を形成できる官能基を含むことができる。幾つかの実施形態では、コーティングは、懸濁培地との相溶性(即ち幾つかのpH範囲での、例えば水安定性)、光安定性、および生体適合性などの特性を変えるまたは改良することができる化合物、原子、または材料を含むことができる。幾つかの場合、コーティングは、ナノ結晶の表面に対して親和性を保持するように選択された官能基を含むことができる。
【0059】
本発明の幾つかの実施形態では、三元以上の合金ナノ結晶上のリガンド(例えば水溶性リガンド)の薄いコーティングを調製することができる。例えばコーティングは、10nm以下、5nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、または0.3nm以下の厚さを有することができる。薄いコーティングは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を含む適用など、非常に小さいナノ結晶構造(例えば6nm未満)を必要とする適用に特に適している。このような場合、水溶性コーティングを有するナノ結晶は、即ちタンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−DNA相互作用、およびタンパク質構造変化を研究するためのFRET適用に使用することができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、コーティングは、被分析物と相互作用して、共有結合(例えば炭素−炭素、炭素−酸素、酸素−ケイ素、硫黄−硫黄、リン−窒素、炭素−窒素、金属−酸素、または他の共有結合)、イオン結合、水素結合(例えばヒドロキシル、アミン、カルボキシル、チオール、および/または類似の官能基の間)、配位結合(例えば金属イオンと単座または多座リガンドとの間の錯体形成またはキレート化)などの、被分析物との結合を形成することができる。相互作用は、ファンデルワールス相互作用を含むこともできる。一実施形態では、相互作用は、被分析物との共有結合の形成を含む。コーティングは、生体分子の複数の対の間の結合事象を介して被分析物と相互作用することもできる。例えばコーティングは、標的被分析物上のアビジンまたはストレプトアビジンなどの相補的実体と特異的に結合するビオチンなどの実体を含むことができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、被分析物は、化学的または生物学的被分析物であってよい。「被分析物」という用語は、分析される任意の化学的、生化学的、または生物学的実体(例えば分子)を指すことができる。幾つかの場合、本発明のナノ結晶は、被分析物に対して高い特異性を有することができ、例えば化学的、生物学的爆薬センサ、または少量の有機生物活性剤(例えば軍事、除草剤、殺虫剤等の薬物、薬剤)であってよい。幾つかの実施形態では、被分析物は、ナノ結晶の少なくとも一部分と相互作用することができる官能基を含む。例えば官能基は、共有結合などの結合を形成することによって物質のコーティングと相互作用することができる。
【0062】
コーティングは、被分析物の結合部位として作用する官能基を含むこともできる。結合部位は、媒体中、例えば溶液中でもう1つの生物分子または化学分子と結合することができる生体分子または化学分子を含むことができる。例えば結合部位は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモン等を含む生体分子の複数の対の間で生じる相互作用を介して、被分析物と生物学的に結合することができる。幾つかの例には、抗体/ペプチドの一対、抗体/抗原の一対、抗体フラグメント/抗原の一対、抗体/抗原フラグメントの一対、抗体フラグメント/抗原フラグメントの一対、抗体/ハプテンの一対、酵素/基質の一対、酵素/阻害剤の一対、酵素/補因子の一対、タンパク質/基質の一対、核酸/核酸の一対、タンパク質/核酸の一対、ペプチド/ペプチドの一対、タンパク質/タンパク質の一対、小分子/タンパク質の一対、グルタチオン/GSTの一対、抗−GFP/GFP融合タンパク質の一対、Myc/Maxの一対、マルトース/マルトース結合タンパク質の一対、炭水化物/タンパク質の一対、炭水化物誘導体/タンパク質の一対、金属結合タグ/金属/キレート、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレートの一対、ペプチド/NTAの一対、レクチン/炭水化物の一対、レセプター/ホルモンの一対、レセプター/エフェクターの一対、相補的核酸/核酸の一対、リガンド/細胞表面レセプターの一対、ウィルス/リガンドの一対、タンパク質A/抗体の一対、タンパク質G/抗体の一対、タンパク質L/抗体の一対、Fcレセプター/抗体の一対、ビオチン/アビジンの一対、ビオチン/ストレプトアビジンの一対、薬物/標的の一対、亜鉛フィンガー/核酸の一対、小分子/ペプチドの一対、小分子/タンパク質の一対、小分子/標的の一対、炭水化物/タンパク質の一対、例えばマルトース/MBP(マルトース結合タンパク質)、小分子/標的の一対、または金属イオン/キレート剤の一対が含まれる。幾つかの場合、ナノ結晶は、薬物発見などの適用、幾つかの化合物の単離または精製に使用することができ、かつ/またはアッセイもしくはハイスループットスクリーニング技術に組み入れることができる。
【0063】
以下の実施例は、本発明の幾つかの実施形態を例示するためのものであるが、限定的なものと解釈されるべきではなく、本発明の完全な範囲を実証するものではない。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
この実施例は、本発明の一実施形態に従って、グルタチオンで被覆したZnSeナノ結晶を水溶液中で合成する方法を示すものである。高純度の化学物質を、Lancaster(L−グルタチオン、水酸化ナトリウム、塩化亜鉛、塩化カドミウム、2−プロパノール)またはSigma−Aldrich(セレン粉末(200メッシュ)、水酸化ホウ素ナトリウム)から購入した。
【0065】
ZnSeナノ結晶の合成は、塩化亜鉛とセレン化水素ナトリウム(sodium hydroselenide)との反応に基づくものであった。反応全てを、アルゴン雰囲気下の無酸素水中で実施した。水酸化ホウ素ナトリウムとセレン粉末とを水中で混合することによって、セレン化水素ナトリウムを調製した。セレン粉末をNaBHで完全に還元した後、新しく調製したNaHSe溶液を、ZnClおよびグルタチオン(GSH)を含有するpH11.5のもう1つの溶液に激しく撹拌しながら添加した。Zn、Se、およびGSHの量は、全体積500ml中、それぞれ5、2、および6mmolであった。得られた混合物を95℃に加熱した直後、GSHで被覆したZnSeナノ結晶の成長が起こった。ナノ結晶の蛍光発光は、60分成長させた後、350nmから370nmに変化した。調製されたままのナノ結晶(370nmの発光を有する)が沈殿し、2−プロパノールで数回洗浄した。ペレット化ナノ結晶を、真空下、室温で終夜乾燥した。最終生成物は、粉末状態で水に再溶解することができた。
【0066】
調製されたままのZnSeナノ結晶の蛍光発光ピークは、90分で350nmから370nmに変化し、量子収率は2%から7%に増加した。370nmの発光を有する調製されたままのZnSeナノ結晶の吸収および蛍光スペクトルを図1に示す。ZnSe蛍光発光の量子収率および帯域幅は、それぞれ7%および19nmであり、それらはバンドギャップ発光で占められていた。さらに加熱すると、可能性としてはグルタチオンと大型ZnSeナノ結晶との間の幾何学的不一致に起因して、発光ピークはより長い波長に変化し続けたが、量子収率は減少し始めた。有利にはGSHで被覆したZnSeナノ結晶によって、時間を要することがあり、ナノ結晶の不可逆的凝集を生じる恐れもある調製後の処理なしに、7%の量子収率が実現した。
【0067】
水溶液中のナノ結晶サンプルの吸収および蛍光スペクトルを、それぞれAgilent 8453 UV−Vis分光器およびJobin Yvon Horiba Fluorolog蛍光分光器で、室温で記録した。ナノ結晶の蛍光量子収率を、470nm励起でのナノ結晶および参照(塩基性エタノール中フルオレセイン溶液、量子収率=97%)の統合蛍光強度から決定した。スペクトル測定用のナノ結晶サンプルを全て希釈して、470nmで0.1の吸収率を得た。
【0068】
この実施例は、GSHで被覆したZnSeナノ結晶が、本発明の幾つかの実施形態に従って水溶液中で調製できることを示している。
【0069】
(実施例2)
この実施例は、本発明の別の実施形態に従って、グルタチオンでキャップしたZnCd1−xSe合金ナノ結晶を水溶液中で合成する方法を示すものである。カドミウムイオンをZnSe前駆体ナノ結晶に導入することによって、ZnCd1−xSe合金ナノ結晶を調製した。95℃で30分加熱した後、調製されたままのZnSe前駆体ナノ結晶の蛍光発光は360nmであった。当量のGSHと事前に混合したCdCl(1〜7mmol)を、ZnSeナノ結晶前駆体溶液に滴加した。次いで溶液のpHを、適切な量の1MのNaOH溶液で11.5に調節した。95℃で4時間加熱した後、得られたZnCd1−xSe合金ナノ結晶が必要最少量の2−プロパノールで沈殿し、その後必要最少量の脱イオン水に再懸濁した。この手順を5回反復することによって過剰の塩を除去し、精製したナノ結晶を粉末状態に真空乾燥した。
【0070】
合金ナノ結晶中のCdモル分率を制御するために、異なるモル比のCd前駆体を、ZnSeナノ結晶に同時に導入し、同じ時間加熱した。Zn0.75Cd0.25Se、Zn0.62Cd0.38Se、およびZn0.4Cd0.6Seナノ結晶の蛍光スペクトルを、それぞれ図1(b)、1(c)、および1(d)に示す。Zn0.75Cd0.25Se、Zn0.62Cd0.38Se、およびZn0.4Cd0.6Se合金ナノ結晶の蛍光ピークは、それぞれ428、448、および474nmに位置し、28、30、および32nmの非常に狭い帯域幅を有していた。これらのナノ結晶構造の量子収率は、水溶液中(pH9、25℃)、それぞれ12%、20%、および22%であった。別の実施形態では、27%の量子収率を有するZn0.4Cd0.6Seナノ結晶を、水溶液中で合成した。ZnCd1−xSe合金ナノ結晶中のZnモル分率(x)を、ICP−MS元素分析で決定した。図3は、様々な組成を有するZnCd1−xSe合金ナノ結晶の蛍光ピーク発光および量子収率を示している。有利には合金ナノ結晶は、発光特性の有意な変化なしに、pH8.5〜11の水溶液中で7カ月を超えて安定であり、pH7〜8で少なくとも3日間安定であった。
【0071】
この実施例は、高度に安定な三元以上の合金ナノ結晶が、本発明の幾つかの実施形態に従って水溶液中で合成できることを示している。
【0072】
本発明の幾つかの実施形態を本明細書に記載し例示してきたが、当業者には、本明細書に記載の機能を実行し、かつ/またはその結果物および/または1つまたは複数の利点を得るための様々な他の手段および/または構造が容易に想定され、かかる変更および/または改変のそれぞれは、本発明の範囲内に含まれるとみなされる。より具体的には、本明細書に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の技術が使用される1つまたは複数の特定の適用に応じて変わることを、当業者は容易に理解されよう。当業者は、日常的な実験だけを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識し、またはそれを確定できるであろう。したがって、前記実施形態は例示のみによって提示され、本発明は、特に記載され特許請求される以外に、添付の請求項およびその等価物の範囲内で実施できると理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載の個々の特徴、系、物質、材料、キット、および/または方法を対象とする。さらに、2つ以上のかかる特徴、系、物質、材料、キット、および/または方法の任意の組合せは、かかる特徴、系、物質、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない場合に本発明の範囲内に含まれる。
【0073】
本明細書で定義され使用される全ての定義は、辞書による定義、参照によって組み込まれる文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味を超えて理解されるべきである。
【0074】
本明細書で使用される不定冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求の範囲において、反するものを明示されない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解されるべきである。
【0075】
本明細書で使用される用語「および/または」は、本明細書および特許請求の範囲において、そのように等位結合した要素、即ちある場合には接続的に存在し、他の場合には非接続的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」で例示された多数の要素も同様に、即ちそのように等位結合した要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「および/または」節によって特に同定された要素以外に、特に同定されたそれらの要素に関連するか否かに関わらず、場合によっては他の要素が存在することができる。したがって非限定的な例として、参照「Aおよび/またはB」は、「含む」などのオープンエンド用語と共に使用される場合、一実施形態ではAのみ(場合によってはB以外の要素を含む)、別の実施形態ではBのみ(場合によってはA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(場合によっては他の要素を含む)等を指すことができる。
【0076】
本明細書で使用されるように、本明細書および特許請求の範囲における「または」は、先に定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば一覧の要素を分類する場合、「または」または「および/または」は包括的なものとして解釈されるべきであり、即ち要素の数または一覧の少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、場合によっては一覧以外のさらなる要素を含む。「〜のただ1つ」もしくは「〜の厳密に1つ」などの反するものを明示した用語、または特許請求の範囲で使用される場合の「〜からなる」のみ、要素の数または一覧の厳密に1つの要素を含むことを指すものとする。一般に、本明細書で使用される用語「または」は、「いずれか」、「〜の1つ」、「〜の1つのみ」、または「〜の厳密に1つ」などの排除用語が先行する場合のみ、代替の排除を示す(即ち「一方または他方であり両方ではない」)と解釈されるべきである。「〜から本質的になる」が特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するべきである。
【0077】
本明細書で使用されるように、本明細書および特許請求の範囲で、1つまたは複数の要素の一覧の参照における用語「少なくとも1つ」は、要素一覧の要素の任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素一覧の中に特に列挙されたそれぞれおよび全ての要素の少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素一覧の要素の任意の組合せを排除するものではないと理解されるべきである。この定義は、「少なくとも1つ」という句が指す要素一覧の中で特に同定された要素以外に、特に同定されたそれらの要素に関係するか否かに関わらず、場合によっては幾つかの要素が存在できることをも可能にする。したがって非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも一方」(または同等には「AまたはBの少なくとも一方」、または同等には「Aおよび/またはBの少なくとも一方」)は、一実施形態ではBが存在しない、場合によっては2つ以上を含む少なくとも1つのA(場合によってはB以外の要素を含む)、別の実施形態ではAが存在しない、場合によっては2つ以上を含む少なくとも1つのB(場合によってはA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、場合によっては2つ以上を含む少なくとも1つのA、および場合によっては2つ以上を含む少なくとも1つのB(場合によっては他の要素)等を指すことができる。
【0078】
2つ以上のステップまたは動作を含む本明細書で特許請求される任意の方法において、反するものが明示されない限り、本方法のステップまたは動作の順序は、本方法のステップまたは動作が引用された順序に必ずしも限定される必要がないことも理解されるべきである。
【0079】
特許請求の範囲ならびに先の本明細書では、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」、「から構成される」などの全ての移行句はオープンエンドであり、即ちそれらを含むがそれに限定されないこと意味すると理解されるべきである。移行句「からなる」および「本質的にからなる」のみ、米国特許審査手続便覧、第2111.03項に記載のようにそれぞれクローズドまたはセミクローズドとすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による、グルタチオンで被覆したナノ結晶の吸収および蛍光スペクトルを示し、
【図2】図2は、本発明の別の実施形態による、Cd注入前のZnSe前駆体ナノ結晶、およびCd注入および加熱後のZn0.4Cd0.6Se合金ナノ結晶の吸収および蛍光スペクトルを示し、
【図3】図3は、本発明の別の実施形態による、異なる組成のZCd1−xSeナノ結晶についての蛍光ピーク発光波長および量子収率を示し、
【図4】図4は、本発明の別の実施形態による、グルタチオンで被覆したナノ結晶の粉末X線回折図形を示し、
【図5】図5は、本発明の別の実施形態による、ZnSeおよびZn0.4Cd0.6Seナノ結晶の高解像度TEM画像を示し、
【図6】図6は、本発明の別の実施形態による、一連のナノ結晶の量子収率および発光波長を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を提供するステップ、
前記少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造を水性または水溶性溶媒中で形成するステップ、
少なくとも第3ナノ結晶前駆体および水溶性リガンドを提供するステップ、および
前記少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶を水性または水溶性溶媒中で形成するステップを含み、前記リガンドが前記三元以上の合金ナノ結晶の表面の少なくとも一部分を被覆する、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法。
【請求項2】
前記三元以上の合金ナノ結晶が不活性雰囲気下で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三元以上の合金ナノ結晶が水中で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ結晶構造が100℃以下の温度で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記三元以上の合金ナノ結晶が100℃以下の温度で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造が、水溶性リガンドの存在下で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記三元以上の合金ナノ結晶が水溶性リガンドの存在下で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶性リガンドがアミン末端基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶性リガンドがグルタチオンまたはその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記三元以上の合金ナノ結晶が立方晶構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記三元以上の合金ナノ結晶が、ZnCd1−xSe、HgCd1−xTe、またはPbCd1−xTeの組成を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記三元以上の合金ナノ結晶が実質的に均質である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記三元以上の合金ナノ結晶および前記水溶性リガンドのコーティングが、6ナノメートル未満の断面寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記三元以上の合金ナノ結晶上の前記水溶性リガンドのコーティングが、0.5nm以下の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記三元以上の合金ナノ結晶が、400nmと500nmとの間の範囲の電磁放射線を放射する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記三元以上の合金ナノ結晶が、600nmと800nmとの間の範囲の電磁放射線を放射する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記三元以上の合金ナノ結晶の発光が30nm未満の帯域幅を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記三元以上の合金ナノ結晶の発光が50nm未満の帯域幅を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記三元以上の合金ナノ結晶が、水溶液中25%を超える量子収率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造を含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液を提供するステップ、
前記ナノ結晶前駆体溶液と、少なくとも第3ナノ結晶前駆体を含むナノ結晶前駆体溶液とを混合するステップ、および
前記少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶を形成するステップ
を含む、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法。
【請求項21】
少なくとも第1ナノ結晶前駆体を含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液を提供するステップ、
少なくとも第2ナノ結晶前駆体および水溶性リガンドを含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液を提供するステップ、
前記第1ナノ結晶前駆体溶液と第2ナノ結晶前駆体溶液とを混合するステップ、
前記少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造を形成するステップ、
前記ナノ結晶構造を含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液と、少なくとも第3ナノ結晶前駆体および前記水溶性リガンドを含む水性または水溶性ナノ結晶前駆体溶液とを混合するステップ、および
前記少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶を形成するステップを含み、前記水溶性リガンドが前記三元以上の合金ナノ結晶の表面の少なくとも一部分を被覆する、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法。
【請求項22】
少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を提供するステップ、
前記少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶構造を、摂氏100度以下の温度で形成するステップ、
少なくとも第3のナノ結晶前駆体を提供するステップ、および
前記少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶を、摂氏100度以下の温度で形成するステップを含み、前記三元以上の合金ナノ結晶の量子収率が、水溶液中10%以上である、三元以上の合金ナノ結晶の調製方法。
【請求項23】
少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を提供するステップ、
前記少なくとも第1および第2のナノ結晶前駆体を含むナノ結晶を水性または水溶性溶媒中で形成するステップを含み、前記ナノ結晶が、400ナノメートルと500ナノメートルとの間の範囲の電磁放射線を放射し、前記ナノ結晶が水溶液中少なくとも10%の量子収率を有する、ナノ結晶の調製方法。
【請求項24】
少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶、および
前記三元以上の合金ナノ結晶表面の少なくとも一部分上の水溶性リガンドのコーティングを含み、前記ナノ結晶およびコーティングが、6ナノメートル未満の少なくとも1つの断面寸法を有する三元以上の合金ナノ結晶構造を形成し、前記三元以上の合金ナノ結晶構造が、400ナノメートルと500ナノメートルとの間の範囲の電磁放射線を放射し、水溶液中少なくとも10%の量子収率を有する、三元以上の合金ナノ結晶構造。
【請求項25】
少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体の反応生成物を含む三元以上の合金ナノ結晶、および
前記三元以上の合金ナノ結晶表面の少なくとも一部分上の、アミン末端水溶性リガンドの0.5nm以下の厚さのコーティングを含み、前記ナノ結晶およびコーティングが、400ナノメートルと500ナノメートルとの間の範囲の電磁放射線を放射し、水溶液中少なくとも10%の量子収率を有する三元以上の合金ナノ結晶構造を形成する、三元以上の合金ナノ結晶構造。
【請求項26】
少なくとも第1、第2、および第3のナノ結晶前駆体を含む三元以上の合金ナノ結晶、および
前記三元以上の合金ナノ結晶表面の少なくとも一部分上の、グルタチオンを含むコーティングを含む、三元以上の合金ナノ結晶構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−527437(P2009−527437A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551236(P2008−551236)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/002065
【国際公開番号】WO2007/102799
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508201466)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (13)
【Fターム(参考)】