説明

水性分散体及びその利用

【課題】 疎水性重合体に対して良好な塗工性を有し、低透湿性でヒートシール性能が良好なシール層を形成させることが可能な、また金属材料に対して耐湿性能に優れた防錆層を形成させることが可能な、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の水性分散体を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリル酸含量が5〜30重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)と、該共重合体(A)100重量部に対し5〜500重量部の割合の酸価が100〜700mgKOH/gのダイマー酸又はその誘導体(B)と、水とを含有し、且つ、該共重合体(A)が、そのカルボキシル基を基準にして40〜500モル%の低級脂肪族アミン、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物等で水中に分散されてなる水性分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性、製膜性に優れたエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の水性分散体及びその利用に関する。とくに包装材料のヒートシール材料あるいは金属材料の防錆塗料として有用な水性分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材フィルムにヒートシール性能を付与するために、あるいは金属材料の防錆の目的で、種々の重合体の水性分散体が塗布されている。例えば基材フィルムにヒートシール層を形成させるためにアクリル系やEVA系の水性分散体が使用されることがあるが、水性分散体の調製時に界面活性剤のような水分散剤を用いるため、基材フィルムに塗布した後に塗膜中に水分散剤が残留するという問題があった。このような問題を回避するため、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体を塩基により水に分散させた水性分散体が広く使用されているが、用途によっては透湿性が低く、またより高いヒートシール強度を有する塗膜を形成するものが求められていた。例えば二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)に塗布してシーラント層を形成する場合に、使用分野によってはヒートシール強度のより一層の向上が求められており、また透湿性の低いものが求められていた。またこのようなエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の水性分散体を金属材料の防錆塗料として用いる場合には、より耐湿性に優れた防錆塗料が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上述の要請を満たすためになされたものであって、その目的とするところは、分散性、製膜性に優れ、しかもOPPフィルム等の基材フィルムに塗布した場合に、ヒートシール強度が大きく、透湿性の低いシール層を形成することが可能な水性分散体を提供することにある。本発明の別の目的は、金属材料に塗布した場合に、耐湿性に優れた防錆層を形成することが可能な水性分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、(メタ)アクリル酸含量が5〜30重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)と、該共重合体(A)100重量部に対し5〜500重量部の割合の酸価が100〜700mgKOH/gのダイマー酸又はその誘導体(B)と、水とを含有し、且つ、該共重合体(A)が、該共重合体(A)のカルボキシル基を基準にして40〜500モル%の低級脂肪族アミン、アルカリ金属化合物もしくはアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属化合物もしくはアルカリ土類金属イオンで水中に分散されてなる水性分散体に関する。本発明はまた、このような水性分散体を熱可塑性樹脂、金属材料、ガラスなどの基材に塗布、乾燥して得られる積層体に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、分散性、製膜性に優れた水性分散体を提供することができる。このような水性分散体は、疎水性の重合体、例えばOPPフィルムなどに対して濡れ性が改善されているので良好な塗工性を得ることができ、またダイマー酸又はその誘導体(B)の種類及び配合量を適宜選択することにより、基材、とくにOPPフィルムに塗布した場合に優れたヒートシール強度を示し、また透湿性の低いシール層を形成することができる。上記水性分散体はまた、金属材料に対しても良好な塗工性を有しており、ダイマー酸又はその誘導体(B)の種類及び配合量を適宜選択することにより、耐湿性能に優れた防錆層を形成させることができる。さらにガラスに塗布した場合においても、高い接着力で塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の水性分散体の原料として、(メタ)アクリル酸含量が5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%、一層好ましくは15〜25重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)が用いられる。(メタ)アクリル酸含量が前記範囲より少ない共重合体を用いると、安定な水性分散液を得ることが難しく、一方、その含量が30重量%を越えるような共重合体を使用した場合には、一時的には分散するものの、直ちに凝集してしまい、貯蔵安定性に優れた水性分散液を得ることは難しい。尚、本発明で(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0007】
このような共重合体にはまた、エチレンと(メタ)アクリル酸のほかに他の単量体が共重合されたものであってもよい。このような他の単量体としては、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチルのような不飽和エステル、一酸化炭素などを例示することができる。このような他の単量体は、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下の割合で含有されていてもよい。
【0008】
上記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体として、酸の種類、(メタ)アクリル酸含量及び/又はメルトフローレートなどが異なる2種以上の共重合体を使用することができる。とくに平均(メタ)アクリル酸含量が10〜30重量%、とくに15〜25重量%となるように、(メタ)アクリル酸含量の異なる2種以上のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体を用いると、その平均(メタ)アクリル酸含量と同じ(メタ)アクリル酸含量の1種のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体を用いた水性分散体に比較して、粘度の低減された水性分散体を得ることができ、したがって固形分濃度を高めることができるので好ましい。とくに(メタ)アクリル酸含量が8重量%以上15重量%未満のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体と(メタ)アクリル酸含量が15〜30重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体を、その平均(メタ)アクリル酸含量が上記範囲となるような割合で使用するのが好ましい。この場合、前者と後者の(メタ)アクリル酸含量差は、好ましくは1重量%以上、とくに好ましくは3〜10重量%である。
【0009】
原料のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体としては、水性分散体の製造の容易性、分散安定性、水性分散体から得られる塗膜の物性等を考慮すると、JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜2000g/10分、とくに10〜1000g/10分のものが好適である。
【0010】
本発明においては、上記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体と共に、酸価が100〜700mgKOH/g、好ましくは150〜500mgKOH/gのダイマー酸又はその誘導体(B)が使用される。ダイマー酸は、炭素数8〜22の直鎖状又は分岐状の不飽和脂肪酸を2量化することによって得られるものである。具体的には3−オクテン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、リノール酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、リノレン酸、あるいはこれらの2種以上の混合物等を原料とすることができる。また工業的に入手可能なこれら不飽和カルボン酸の混合物であるトール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸などを原料とするものであってもよい。これらダイマー酸としては、モノマー酸やトリマー酸を少量含有するものであってもよく、例えばダイマー酸含量が65〜100重量%、好ましくは80〜100重量%、モノマー酸が0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、トリマー酸が0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%のものを好適に使用することができる。またダイマー酸の誘導体としては、酸無水物、部分エステル化物、部分酸ハロゲン化物、水素添加物などを挙げることができる。
工業的に入手可能なダイマー酸としては、例えばハリダイマー200、300(ハリマ化成(株)製)、パーサダイム228、216、エンボール1018、1019、1061、1062(コグニス(株)製)、水素添加ダイマー酸としては例えば、プリボール1029(Unichema社製)、エンボール1008(コグニス(株)製)などを挙げることができ、いずれも本発明において使用することができる。酸価が上記範囲のダイマー酸又はその誘導体を使用することにより、水分散性良好な水性分散体を得ることができ、しかもそのような水性分散体を疎水性重合体、例えばOPPフィルムなどに塗布した場合に濡れ性を高め、塗工性を改善することができ、またヒートシール強度が大きく、透湿性の低いシール層を形成させることができる。また金属材料に塗布した場合において、耐湿性能に優れる防錆塗膜を形成させることができる。ダイマー酸又はその誘導体としてはまた、水性分散体の使用目的によっても異なるが、環球法軟化点が、70〜150℃、とくに75〜140℃程度のものを使用するのが好ましい。
【0011】
本発明の水性分散体は、上記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)又は上記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)及びダイマー酸又はその誘導体(B)を、低級脂肪族アミン、アルカリ金属化合物もしくはアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属化合物もしくはアルカリ土類金属イオンなどの塩基を用いて水中に分散してなるものである。水性分散体の使用目的によっても異なるが、ダイマー酸又はその誘導体(B)は、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは10〜400重量部の割合で使用される。
【0012】
本発明において上記低級脂肪族アミンなる用語は、アンモニアを包含する意で用いられるものであって、好ましくは一般式RNH3−m(式中、RはC2n+1−基又はHO−C2k−基、但しnは1、2、3又は4、kは1、2又は3、mは0、1、2又は3)で示されるものを挙げることができる。より具体的には、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノn−プロピルアミン、ジn−プロピルアミン、トリn−プロピルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低級脂肪族モノアミンを代表例として例示することができる。これらの中では、とくにアンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが好ましい。
【0013】
上記アルカリ金属化合物もしくはアルカリ金属イオンにおけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウムなどであり、とくにナトリウム又はカリウムが好ましい。また上記アルカリ土類金属化合物もしくはアルカリ土類金属イオンにおけるアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどを挙げることができる。
【0014】
低級脂肪族アミン、アルカリ金属化合物もしくはアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属化合物もしくはアルカリ土類金属イオンは、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)のカルボキシル基基準で、40〜500モル%、好ましくは50〜300モル%となるような割合で使用される。上記アルカリ土類金属化合物もしくはアルカリ土類金属イオンを使用する場合には、低級脂肪族アミン又はアルカリ金属化合物もしくはアルカリ金属イオンと併用することが好ましい。また水分散性を大きく損なわない範囲において、亜鉛等の多価金属の化合物又はイオンを併用することもできる。上記の中では、耐湿性、耐水性に優れた塗膜を得るためには、アンモニア等の低級脂肪族アミンを使用するのが好ましい。
【0015】
本発明の水性分散体は、次のような方法により製造することができる。すなわち水と、固形分濃度が5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%となる量の上記した性状のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)及びダイマー酸又はその誘導体(B)と、該共重合体のカルボキシル基を基準にして上記のようなイオン量となる低級脂肪族アミン、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物と、場合により上記多価金属の化合物とを、剪断力をかけることが可能な反応装置、例えば撹拌機付きのオートクレーブ中、100℃以上、好ましくは130〜200℃の温度で剪断力をかけながら反応させることによって得ることができる。反応時間は、反応温度やその他反応条件によっても異なるが、30〜300分程度である。アルカリ金属化合物としては、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩などを例示することができる。またアルカリ土類金属化合物又はその他の多価金属化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩などの使用が好ましい。
【0016】
また本発明では、上記のような方法以外にも、予め調製したエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)のアルカリ金属アイオノマー又はアルカリ土類金属アイオノマーとダイマー酸又はその誘導体(B)及び必要に応じて他のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を、水中で剪断力をかけながら分散させる方法により本発明の水性分散体を製造することができる。
【0017】
上記のようにして調製される本発明の水性分散体としては、分散安定性、塗工性、塗布膜の均一性などを考慮すると、平均粒径が1〜5000nm、とくに5〜3000nm、Brookfield粘度計で測定した23℃の粘度が、1〜10000mPa・s、とくに5〜5000mPa・s、PHが8〜12、好ましくは8.5〜11.5の範囲となるものが好ましい。
【0018】
本発明の水性分散体には、任意に種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、可塑剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、接着剤、架橋剤、発泡剤、粘度調整剤、界面活性剤、筆記性改良剤、無機充填剤などを挙げることができる。
【0019】
本発明の水性分散体は、ヒートシール性能の付与、防錆塗膜の形成など種々の目的で、種々の基材に塗布、乾燥させることにより、これらの性能が付与された積層体を得ることができる。基材としては、高、中、低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体又はそのアイオノマー、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンのようなオレフィン重合体又は共重合体、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ABS型樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物のようなスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のようなポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル及びこれらの任意割合の混合物などの熱可塑性重合体、天然ゴム、合成ゴムのようなゴム材料、フェノール樹脂、ポリウレタンのような熱硬化性樹脂、鉄、銅、アルミニウム、ステンレスのような金属、ガラス、セラミックス、木材、紙、レーヨン、皮革等の天然素材などを例示することができる。熱可塑性重合体にあっては、フィルム、シート、中空成形品、射出成形品、織布、不織布、合成皮革など種々の成形品に適用することができる。基材として、フィルム、シート、織布、不織布、合成皮革、紙などの扁平状基材を使用することにより、基材上にヒートシール層が形成された積層体を容易に得ることができる。本発明の水性分散体は、極性材料に対しては勿論のことオレフィン系重合体やスチレン系重合体などの疎水性材料に対しても、濡れ性が優れているので、塗工性よく水性分散体を塗布することができる。例えばポリオレフィンフィルム、代表的にはOPPフィルムに本発明の水性分散体を塗布、乾燥して得られるフィルムは、透湿性が低く、良好なヒートシール性能を有しており、各種包装材料として好適に使用することができる。また金属材料に本発明の水性分散体を塗布、乾燥して得られる積層体は、防錆性、とくに耐湿防錆性に優れており、防錆性の要求される用途に好適に使用することができる。さらにガラスに本発明の水性分散体を塗布、乾燥して得られる積層体は、塗膜接着性に優れており、ガラス向け接着剤、ガラス向けインクなどの分野で使用することができる。
【0020】
本発明の水性分散体はまた、他の重合体の水性分散体により改質され、あるいは他の重合体の水性分散体の改質を目的として、他の重合体水性分散液と任意割合で配合することができる。一般には固形分換算(重量比)で10/90〜90/10、とくに20/80〜80/20の割合で配合するのがよい。
【0021】
このような他の重合体水性分散液としては、pHが7以上のもの、あるいはアンモニア水等でpHを7以上にしたものであって、本発明の水性分散液と混合したときにゲル化しないようなものを選択する必要がある。またその固形分濃度が2〜60%、好ましくは5〜50%程度のものであって、その平均粒子径が1〜10000nm、好ましくは5〜5000nmのものを選択することが望ましい。
【0022】
このような他の重合体水性分散体としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、水溶性アクリル樹脂、アクリルアミド樹脂、メタアクリルアミド樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタアクリロニトリル樹脂、スチレン、アクリル酸共重合体、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、プロピレン・エチレン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、EPDM、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の水性分散体を挙げることができる。これらは勿論、2種以上使用してもよい。
【0023】
基材に本発明の水性分散体を塗布するには、公知の方法、例えばロールコーティング、リバースロールコーター、ドクターコーター、刷毛塗り、スプレー塗布などのコーティング方式やスクリーン印刷、グラビア印刷、彫刻ロール印刷、フレキソ印刷などの印刷方式を採用することができる。基材には、接着性等を改良する目的で下塗り剤を塗布しておいてもよく、またコロナ処理等の表面処理を施しておいてもよい。乾燥塗膜の厚みは任意であるが、厚みが1〜300μm、好ましくは5〜200μmとなるように塗布し、これを乾燥させればよい。
【実施例】
【0024】
次に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に束縛されるものではない。尚、実施例に用いた原料及び水性分散体の物性評価方法を以下に示す。
【0025】
[水性分散体原料]
(1)ベースポリマー
BP−1:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量20重量%、メルトフローレート(MFR)300g/10分)
BP−2:エチレン・アクリル酸共重合体(アクリル酸含量20重量%、MFR300g/10分)
(2)イオン源
アンモニア水溶液:濃度29重量%(関東化学(株)製)
(3)ダイマー酸
DA−1:ダイマー酸(ハリマ化成(株)製HD270S、酸価193mgKOH/g)
DA−2:ダイマー酸(ハリマ化成(株)製HD700、酸価195mgKOH/g)
【0026】
[水性分散体物性評価方法]
(1)pH
(株)堀場製作所製pH METER F−12を用いて測定した。
(2)粘度
Brookfield粘度計を用いて23℃で測定した。単位(mPa・s)
(3)粒径
(株)堀場製作所製LB−500を用いて測定した。メジアン径を粒径とした。単位(nm)
【0027】
(4)透湿性能評価
OA紙(王子製紙(株)製上質紙、製品名Golden、厚さ50μm)上に、水性分散体を厚さの目標 μでNo.18バーコーターを用いて塗布し、100℃で2分乾燥した。得られた塗工紙につき、JIS K7129に準じ、湿度90%、温度50℃の条件で透湿性の評価を実施した。単位(g/m・h)
【0028】
(6)ヒートシール性能(HS性能)評価
コロナ処理した厚さ50μmのOPPフィルムに、水性分散体を厚さの目標10μでNo.18バーコーターを用いて塗布し、100℃で3分乾燥した。得られたOPPフィルム2枚を、塗布面同士が接触するように重ね合わせ、温度120℃、圧力2kg/cm、シール時間0.5秒の条件でヒートシールしてからヒートシール強度を測定した。単位(g/15mm)
【0029】
[実施例1]
ベースポリマー(BP−1)63g、ダイマー酸(DA−1)7g、イオン交換水272g、アンモニア水溶液12.0gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体1を得た。
【0030】
[実施例2]
ベースポリマー(BP−1)49g、ダイマー酸(DA−1)21g、イオン交換水272g、アンモニア水溶液12.0gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体2を得た。
【0031】
[実施例3]
ベースポリマー(BP−1)63g、ダイマー酸(DA−2)7g、イオン交換水272g、アンモニア水溶液12.0gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体3を得た。
【0032】
[実施例4]
ベースポリマー(BP−1)49g、ダイマー酸(DA−1)21g、イオン交換水272g、アンモニア水溶液12.0gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体4を得た。
【0033】
[実施例5]
ベースポリマー(BP−2)63g、ダイマー酸(DA−1)7g、イオン交換水270g、アンモニア水溶液14.3gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体5を得た。
【0034】
[実施例6]
ベースポリマー(BP−2)49g、ダイマー酸(DA−1)21g、イオン交換水270g、アンモニア水溶液14.3gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体6を得た。
【0035】
[実施例7]
ベースポリマー(BP−2)63g、ダイマー酸(DA−2)7g、イオン交換水270g、アンモニア水溶液14.3gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体7を得た。
【0036】
[実施例8]
ベースポリマー(BP−2)49g、ダイマー酸(DA−2)21g、イオン交換水270g、アンモニア水溶液14.3gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体8を得た。
【0037】
[比較例1]
ベースポリマー(BP−1)70g、イオン交換水272g、アンモニア水溶液12.0gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体9を得た。
【0038】
[比較例2]
ベースポリマー(BP−2)70g、イオン交換水270g、アンモニア水溶液14.3gをオートクレーブに加え、温度150℃、攪拌速度1200rpmで1.5時間攪拌した。その後水道水で冷却し、固形分濃度20重量%の水性分散体10を得た。
【0039】
上記水性分散体1〜10における原料の使用割合及び水性分散体の物性を測定した結果を表1に示す。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸含量が5〜30重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)と、該共重合体(A)100重量部に対し5〜100重量部の割合の酸価が100〜700mgKOH/gのダイマー酸又はその誘導体(B)と、水とを含有し、且つ、該共重合体(A)が、該共重合体(A)のカルボキシル基を基準にして40〜500モル%の低級脂肪族アミン、アルカリ金属化合物もしくはアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属化合物もしくはアルカリ土類金属イオンで水中に分散されてなる水性分散体。
【請求項2】
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)のメルトフローレート(JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重)が1〜2000g/10分である請求項1記載の水性分散体。
【請求項3】
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(A)が2種以上のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体混合成分からなり、その平均(メタ)アクリル酸含量が10〜30重量%である請求項1又は2記載の水性分散体。
【請求項4】
2種以上のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体混合成分が、(メタ)アクリル酸含量が8重量%以上15重量%未満のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体と(メタ)アクリル酸含量が15〜30重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の混合成分である請求項3記載の水性分散体。
【請求項5】
低級脂肪族アミンが、一般式RNH3−m(式中、RはC2n+1−基又はHO−C2k−基、但しnは1、2、3又は4、kは1、2又は3、mは0、1、2又は3)で示されるものである請求項1〜4記載の水性分散体。
【請求項6】
請求項1〜5の水性分散体を塗布、乾燥して得られる塗膜層。
【請求項7】
基材に請求項1〜5の水性分散体を塗布、乾燥してなる積層体。
【請求項8】
基材が、熱可塑性樹脂、金属又はガラスである請求項7記載の積層体。

【公開番号】特開2006−8724(P2006−8724A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183345(P2004−183345)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】