水性組成物および方法
開示されているように、水性組成物が作用物質応答性化学系または生物系に加えられたときに、該系に作用物質特異的効果をもたらすことができる該水性組成物を調製する方法。この組成物は、水性培地が検出可能な作用物質活性を獲得するまで、該作用物質から生じる低周波数時間領域信号に該水性培地を曝露することによって調製される。例示的な組成物は、パクリタキセル信号、または治療用オリゴヌクレオチド、例えば、GAPDHアンチセンスRNAおよびPCSK9アンチセンスRNAから生じる信号に曝露することによって調製される。また、該組成物の活性を確認する方法、および該組成物を調製してその活性を試験する方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年12月17日に出願された米国仮特許出願第61/287,559号の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、化学系、生化学系、または生物系に対する作用物質の効果を模倣するのに有効な水性組成物、ならびにこの組成物を作製し、使用し、かつ試験するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
化学および生化学の分野で受け入れられている1つのパラダイムは、化学または生化学エフェクタ作用物質(effector agent)、例えば分子が、イオン力、電荷力、分散力などのさまざまな物理化学的な力を介して、あるいは共有結合または電荷誘導結合の切断または形成を介して、標的生物系と相互作用するというものである。これらの力は、エフェクタ作用物質の存在が標的生物系の状態または応答に影響を与える電界効果、例えば、静電気および磁場効果を伴うと思われる。
【0004】
このパラダイムによって生じる1つの問題は、エフェクタと標的との間の相互作用が、エフェクタ自体を必要とするか否か、あるいは少なくとも一部の極めて重要なエフェクタ−標的相互作用が、エフェクタ分子に関連した電界効果をこのエフェクタ分子からの信号で刺激することによって達成することができるか否かである。エフェクタ−分子シグナルと生物学的標的との間の相互作用を調べるために行われた研究が、参照により本明細書に組み入れられる、共有の特許文献1および特許文献2に報告されている。これらの出願には、該出願に詳述されている装置および方法にしたがった多数の生物学的に活性な化合物(エフェクタ)について記録された低周波数時間領域信号が、生物学的標的系での化合物特異的効果の誘導に使用された研究が記載されている。
【0005】
2006年7月13日に公開された特許文献1に、複数の研究が開示され、これらの研究では、(a)L(+)アラビノースで記録された低周波数時間領域信号が、図30C〜図30Fを参照して、この出願の47〜50頁に説明されているように、araC−PBAD細菌オペロンを誘導することが示された;(b)公知の除草剤であるグリホサート(glyphosphate)中の活性成分で記録された低周波数信号が、図31、図32A、および図32Bを参照して、この出願の50〜51頁に説明されているように、豆苗の茎の成長を実質的に阻害することが示された;(c)ジベレリン酸、植物ホルモンで記録された低周波数信号が、図33を参照して、この出願の51〜53頁で説明されているように、生きている豆苗の茎の平均長さを有意に増大させることが示された;および(d)フェプロペプチン、プロテアソーム阻害剤で記録された低周波数信号が、図34を参照してこの出願の53〜54頁で説明されているように、20Sプロテオソーム酵素(proteosome enzyme)の活性を低下させることが示された。
【0006】
2008年5月9日公開の特許文献2に、複数の研究が詳述され、これらの研究では、この出願に開示されている方法にしたがって生成された抗腫瘍化合物パクリタキセルの低周波数時間領域信号が、この信号によって生成された電磁場に数週間にわたって動物が曝露されたときに、膠芽腫細胞が注入された動物で腫瘍の増殖を減少させる効果があることが示された。
【0007】
上記の研究の発見の中には、生化学的または生物学的標的系を変換する(影響を与える)作用物質特異的時間領域信号の能力を、多数の戦略によって最適化できることが含まれる。これらの戦略の1つでは、1つ以上のスコアリングアルゴリズムによって記録された時間領域信号をスコアリングして、最も高いスペクトル情報を含む信号を識別する。このスコアリングを使用して、最も強い変換の効果をもたらす可能性が高い記録された時間領域信号をスクリーニングする。この戦略の改善点は、記録中に様々なレベルのホワイトノイズまたはDCオフセットを注入して、最も高いスペクトル情報に対して得られる信号をスコアリングすることによって、多数の様々な磁気−信号注入条件のそれぞれで時間領域信号を記録することである。これらの戦略は、上記の両方のPCT出願に詳述されている。
【0008】
該’654出願(特許文献2)に開示されている第3の戦略は、特に、記録された時間領域信号が、動物系の変換、例えば、被験体の疾患状態の処置を目的とする適用例に対してデザインされている。この戦略では、動物系の少なくとも一部の極めて重要な生物学的応答要素を含むin vitro標的系を効率的に変換する能力について時間領域信号をスクリーニングする。この戦略は、多数の候補信号を、実際の変換効果について容易にスクリーニングして、最適な変換信号を識別できるという利点を有する。この戦略は、最も高いスコアリング信号をin vitro変換スクリーニングの候補として使用して、上記の信号スコアリング法の一方または両方と組み合わせるのが好ましい。
【0009】
多数の研究グループが、それぞれ別々に、界面で生成される構造水を含む、純水サンプルおよび溶質を含む水サンプル中のクラスター水の構造および安定性について報告した。例えば、ペンシルベニア州立大学に最近まで所属していたDr.Rustum Roy、(rustumroy.com);ワシントン大学のDr.Gerald Pollack(www.depts.washington.edu/bioe/people/core/pollack.html));ロンドン・サウスバンク大学のDr.Martin Chaplin(1.lsbu.ac.uk/wate);およびDr.Emilio Del Guidice(.isi.it/progetti/workshop−complexity09/pres_DelGiudice.pdf)のウエブサイトに掲載されている研究を参照されたい。これらのグループの発見の中には、水が電磁放射線と相互作用して、多数の物理的器具および分光器によって検出できる安定な巨視的構造を生成することがある;(例えば、del Guidice、E.ら、Physical Review、74:022105−1(2006);Pollack,G.、uwtv.org/programs/displayevent.aspx?rID=22222;Chai,B.ら、J.Phys.Chem B、2009、113:13953−13958;Rao,M.L.ら、Current Science Research Communications、98(1):1500、June,2010を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2006/073491号
【特許文献2】国際公開第2008/063654A2号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
一態様では、本発明は、水性抗腫瘍組成物であって、(i)この組成物が培養中のヒト膠芽腫細胞に添加され、標準的な培養条件下で24時間の培養期間にわたって培養されたときに、このヒト膠芽腫細胞の成長を阻害する該組成物の能力、および/または(ii)パクリタキセル応答性腫瘍を有する被験体に投与されたときにこのような腫瘍の増殖を阻害する該組成物の能力によって証明される、検出可能なパクリタキセル活性を水性培地が獲得するまで、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、または他の癌細胞阻害化合物を含まない該水性培地を、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号で処理することによって生成される、水性抗腫瘍組成物を含む。
【0012】
この組成物中の水性培地は、機械的に破壊された水性培地、気泡を含む界面水性培地、または機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地とすることができる。
【0013】
この組成物は、1〜100μMのパクリタキセル濃度の単位で表される活性を有し得る。この組成物の抗腫瘍活性は、信号に関連した水構造を破壊する処理、例えば、該組成物を70℃以上の温度に加熱することによって、または該組成物を氷点下に冷却することによって無効にすることができる。この組成物は、0.5〜10容積%のエタノールを含み得る。
【0014】
また、上記の組成物を形成する方法であって、
(a)電磁コイル装置のサンプル領域内に水性培地を配置するステップと、
(b)培養中の腫瘍細胞、例えば、膠芽腫細胞の増殖の阻害、またはin vivoでの腫瘍、例えば、動物モデルに移植された膠芽腫細胞の増殖の阻害に該水性培地を有効にするのに十分な時間にわたって、1G(ガウス)〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号を該装置に供給することによって生成される磁場に該水性培地を曝露するステップと、を含む、方法も開示される。
【0015】
この方法のステップ(b)に使用される低周波数時間領域信号は、
(i)磁気シールドおよび電磁シールドの両方を有するサンプル容器に、パクリタキセルまたはその類似体の水性サンプルを配置するステップであって、前記サンプルが、低周波数分子信号の信号源として機能し;前記磁気シールドが、極低温容器の外部にある、ステップと、
(ii)前記極低温容器内のサンプル源放射線から構成される1つ以上の時間領域信号を記録するステップと、
(iii)パクリタキセル応答系が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に前記信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、前記パクリタキセル応答系でパクリタキセルの効果を模倣できる信号を、ステップ(ii)で記録された前記信号から識別するステップと、によって生成することができる。
【0016】
このサンプル中のパクリタキセルまたはその類似体の濃度が10−11〜10−19Mとすることができ、装置のサンプル領域内に配置される前に、サンプルを処理して:(i)機械的に破壊されたサンプル培地、(ii)気泡を含む界面サンプル培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面サンプル培地、または(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物の1つを形成することができる。
【0017】
この方法は、ステップ(b)の前および/または後で、水性培地を処理して:(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、または(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物の1つを形成するステップをさらに含み得る。
【0018】
また、上記の水性組成物の癌細胞阻害活性を確認する方法も開示される。1つの例示的な方法では、水性培地が信号に曝露されたときに生成される水構造を検出できる分光分析によって組成物を調べ、サンプルで観察されるスペクトル特性、例えば、スペクトルのピーク周波数および振幅が、同様に調製された水性組成物のピーク周波数および振幅に類似しているかを確認する。水中の凝縮領域または電磁場誘導領域の特徴付けに使用されている方法は、(i)紫外線(UV)または紫外線−可視光(UV−Vis)吸収分光法(例えば、Chai,B.ら、J.Phys Chem A.2009,112:2242−2247を参照されたい)、(ii)フーリエ変換赤外線(FTIR)吸収分光法(例えば、Amrein,A.ら、J.Phys Chem、1988 92(19):5455−5466を参照されたい)含むIR分光法(例えば、Roy,R.、Materials Res.Innov、2005,9(4):1433およびRao,M.ら、Materials Letters、2008,62(10−11):1487−1490)、および(iii)ラマン分光法(例えば、前記のRoy)である。代替のアプローチでは、水性培地における水構造を、原子間力顕微鏡(AFM)によって分析し、既知の活性を有する水性組成物のAFMプロットと比較することができる。AFMによって水構造を分析する方法は、例えば、Michaelides,A.ら、Nature Mater.6,597(2007)およびPan,D.ら、Phys.Rev.Lett.101,155709(2008)に記載されている。
【0019】
より一般的な態様では、本発明は、組成物が作用物質応答性化学系または生物系に加えられたときに、このような系に作用物質特異的効果をもたらすことができる水性組成物を形成する方法を含む。この方法は、
(a)電磁コイル装置のサンプル領域内に水性培地を配置するステップと、
(b)作用物質応答系に対する1つ以上の作用物質特異的効果の模倣に該水性培地を有効にするのに十分な時間にわたって、1G(ガウス)〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、低周波数時間領域作用物質特異的信号を該装置に供給することによって生成される磁場に該水性培地を曝露するステップと、を含む。
【0020】
ステップ(b)で使用される低周波数時間領域信号は、
(i)磁気シールドおよび電磁シールドの両方を有するサンプル容器に作用物質の水性サンプルを配置するステップであって、該サンプルが、低周波数分子信号の信号源として機能し;該磁気シールドが、極低温容器の外部にある、ステップと、
(ii)該極低温容器内のサンプル源放射線から構成される1つ以上の時間領域信号を記録するステップと、
(iii)作用物質応答系が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に該信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、該作用物質応答系で該作用物質の効果を模倣できる信号を、ステップ(ii)で記録された信号から識別するステップと、によって生成される。
【0021】
サンプル中の作用物質の濃度は、10−10〜10−16μMとすることができ、サンプルは、装置のサンプル領域内に配置する前に、サンプルを処理して、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地を形成することができる。
【0022】
この方法は、ステップ(b)の前および/または後で、水性培地を処理して、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、または(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物の1つを調製するステップを含む。例えば、この方法は、ステップ(b)の前および/または後で、水性培地を機械的に撹拌して、機械的に破壊された水性培地を形成するステップをさらに含み得る。
【0023】
作用物質は、例えば、(i)パクリタキセル、(ii)パクリタキセルの類似体、または(iii)治療用オリゴヌクレオチド、例えば、GAPDHアンチセンスRNAまたはPCSK9アンチセンスRNAとすることができる。
【0024】
関連する態様では、本発明は、オリゴヌクレオチドを含まない水性培地を、この水性培地が治療用オリゴヌクレオチドに関連した検出可能な活性を獲得するまで、該治療用オリゴヌクレオチドから生じる低周波数時間領域信号で処理することによって生成される水性組成物を含む。処理信号が生じる治療用オリゴヌクレオチドは、例えば、GAPDHアンチセンスRNAまたはPCSK9アンチセンスRNAとすることができる。
【0025】
組成物中の水性培地は、機械的に破壊された水性培地、気泡を含む界面水性培地、または機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地とすることができる。
【0026】
組成物は、0.5〜10容量%のエタノールを含み得る。組成物の作用物質特異的活性は、(i)該組成物を70℃以上の温度に加熱することによって、または(ii)該組成物を氷点下に冷却することによって無効にすることができる。
【0027】
また、(a)水中の凝縮構造を検出できる分光分析によって組成物のスペクトルを生成するステップと、この生成したスペクトルが、そのスペクトル成分が既知の作用物質特異的効果を有する同様に調製された水性組成物のスペクトルに類似しているかを決定するステップと、によって上記の組成物の作用物質特異的活性を確認する方法も開示される。水中の凝縮領域の検出の特徴付けに使用されている方法は、(i)紫外線およびUV−Vis分光法、(ii)FTIR分光法含むIR分光法、および(iii)ラマン分光法であり、これらは全て上記されている。
【0028】
水性組成物が哺乳動物被験体に薬学的有効量投与されたときに、この被験体に作用物質特異的な薬学的効果をもたらすことを目的とする該水性組成物を生成するシステムがさらに開示される。このシステムは、(a)水性培地を作用物質特異的特性を有する水性組成物に変換するのに有効な条件下で、該水性培地を低周波数時間領域作用物質特異的信号で処理するためのコイル装置と、(b)該水性組成物のスペクトルを生成し、この水性組成物のスペクトル特性を、既知の活性を有する水性培地のスペクトル特性と比較することができる分光器と、を備えている。適切な分光器には、(i)UVまたはUV−Visスペクトロメータ、(ii)好ましくはフーリエ変換強化能力を備えたIRスペクトロメータ、および(iii)ラマンスペクトロメータが含まれる。
【0029】
一実施形態では、装置(a)は、(i)作用物質特異的時間領域信号源と、(ii)該装置の容器ホルダ内の水性培地を含む容器を受け取るための電磁変換コイル装置と、(iii)水性培地を該作用物質特異的組成物に変換するのに十分な期間にわたって、該装置のサンプル領域の容器内の水性培地で生成されると計算された源−信号電流、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を有する磁場を該装置に供給するための、該信号源と該装置との間の電子インターフェイスと、を備えている。
【0030】
別の実施形態では、装置(a)は、(i)作用物質の溶液または懸濁物を含む第1の容器を、未処理の水性培地を含む第2の容器に近接して配置できる信号伝達環境を内部で画定する電磁コイル、および(ii)7.83Hzの振動数を有する電流を該コイルに供給するための手段であって、所与の期間、例えば、18〜24時間にわたって、コイル環境内で2つの容器が近接した状態で該コイルにこのような電流を供給することで、第2の容器内の水性培地を、作用物質応答性化学系または生物系に作用物質特異的効果をもたらすことができる水性倍地に変換するのに有効である、手段を備えている。
【0031】
システムは、(i)例えば、ボルテックス装置によって機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地の1つを生成するために水性培地を処理する装置をさらに備えることができる。
【0032】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、本発明の以下の詳細な説明を添付の図面を参照しながら読めば、より十分に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号の生成に使用される信号記録装置の線図である。
【図2】図2は、図1の信号記録装置の構成要素を示す線図である。
【図3】図3は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号の生成で実行される信号の記録および処理のフロー図である。
【図4】図4は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号を処理するデータフローのハイレベルフロー図を示している。
【図5】図5は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号のスコアリングに使用されるヒストグラム−ビンアルゴリズムのフロー図である。
【図6】図6は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号のスコアリングに使用できる別のアルゴリズムにしたがった電力スペクトル密度アルゴリズムのフロー図である。
【図7】図7は、時間領域信号を水性サンプルに加えて、一定時間にわたる、または選択されたエンドポイントでのサンプルの変化を分光光度的に記録するための変換/曝露装置を例示している。
【図8A】図8A〜図8Cは、本発明の組成物の調製に使用される一般的な変換/曝露システム(図8A)、このシステムに使用される減衰器の回路図(図8B)、およびこのシステムの動作特性(図8C)を例示している。
【図8B】図8A〜図8Cは、本発明の組成物の調製に使用される一般的な変換/曝露システム(図8A)、このシステムに使用される減衰器の回路図(図8B)、およびこのシステムの動作特性(図8C)を例示している。
【図8C】図8A〜図8Cは、本発明の組成物の調製に使用される一般的な変換/曝露システム(図8A)、このシステムに使用される減衰器の回路図(図8B)、およびこのシステムの動作特性(図8C)を例示している。
【図9】図9A〜図9Cは、フーリエサブトラクション(Fourier subtraction)によってノイズが除去された2つのパクリタキセル信号の周波数領域スペクトル(図9Aおよび図9B)、および周波数スペクトルの一部に対する作用物質特異的スペクトル特性を示す2つの信号の相互相関(図9C)を示している。
【図10】図10は、事前にパクリタキセル信号に曝露された培養倍地で24時間培養した後の培養下のU87グリオーマ細胞の生存度を示す棒グラフである。
【図11】図11は、26日間の処置期間にわたる動物におけるU87 MG細胞腫瘍の増殖に対する:未処置(X、細い線)、ホワイトノイズ(X、太い線);パクリタキセルビヒクルのみで処置(三角形、細い線)、パクリタキセルで処置(三角形、太い線);およびタキサン信号に曝露された水で処置(四角形)の効果をプロットしている。
【図12A】図12A〜図12Dは、pCSK9に対するアンチセンスからの信号への曝露によって調製された水性組成物の経口投与後の脂質プロフィールの変化を示す棒グラフである。
【図12B】図12A〜図12Dは、pCSK9に対するアンチセンスからの信号への曝露によって調製された水性組成物の経口投与後の脂質プロフィールの変化を示す棒グラフである。
【図12C】図12A〜図12Dは、pCSK9に対するアンチセンスからの信号への曝露によって調製された水性組成物の経口投与後の脂質プロフィールの変化を示す棒グラフである。
【図12D】図12A〜図12Dは、pCSK9に対するアンチセンスからの信号への曝露によって調製された水性組成物の経口投与後の脂質プロフィールの変化を示す棒グラフである。
【図13】図13は、本発明の態様にしたがって水性組成物を調製し、試験するためのシステムの模式図で示している。
【図14】図14は、本発明にしたがって調製される水性組成物の活性の確認に使用されるステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
以下の用語は、特段の記載がない限り以下の意味を有するものとする。
【0035】
「電磁シールド」は、例えば、標準的なファラデー電磁シールド、または電磁放射線の通過を減少させる他の方法を指す。
【0036】
「時間領域信号」または「時系列信号」は、時間と共に変化する一過性の信号特性を有する信号を指す。
【0037】
「低周波数」は、DC〜約50kHzの範囲の周波数を指す。低周波数時間流域信号は、0〜50kHzの範囲、典型的には0〜20kHzの範囲の主周波数成分を有する信号を指す。
【0038】
「サンプル源放射線」は、サンプルの分子運動から生じる磁束または電磁束放出、あるいは分子運動している2つ以上の分子間の短期または長期の相互作用によって生じる電磁場を指す。サンプル源放射線が、注入された磁場刺激の存在下で生成される場合は、サンプル源放射線は、「注入された磁場刺激に重ね合わせられたサンプル源放射線」とも呼ばれる。
【0039】
「刺激磁場」または「磁場刺激」は、(i)0〜1G(ガウス)のサンプルで選択された磁場を生成すると計算される電圧レベルで注入されるホワイトノイズ、(ii)0〜1Gのサンプルで選択された磁場を生成すると計算される電圧レベルで注入されるDCオフセット、および(iii)(i)と(ii)の組み合わせを含み得る多数の電磁信号の1つを、サンプルの周囲の磁気コイルに注入する(印加する)ことによって生成される磁場を指す。注入されたノイズおよび/またはオフセットは、様々な磁場条件での複数の時間領域信号を生成する際に、徐々にまたは体系的に変更することができる。
【0040】
変換コイルに時間領域信号を供給することによってサンプルで生成される「磁場強度」は、注入コイルの形状および巻数、コイルに印加される電流、ならびに注入コイルとサンプルとの間の距離が分かっている既知の電磁関係を用いて、後述する既知の方法にしたがって容易に計算することができる。
【0041】
「選択された刺激磁場条件」は、ホワイトノイズまたはDCオフセット信号に印加される選択された電圧、あるいは加えられる掃引刺激磁場の選択された掃引範囲、掃引周波数、および電圧を指す。
【0042】
「ホワイトノイズ」は、ランダムノイズまたは同時多重周波数を有する信号、例えば、ホワイト・ランダム・ノイズまたは決定論的ノイズを意味する。「ガウス性ホワイトノイズ」は、ガウス出力分布を有するホワイトノイズを意味する。「定常ガウス性ホワイトノイズ」は、予測可能な未来成分(future component)を有していないランダムガウス性ホワイトノイズを意味する。「構造ノイズ」は、エネルギーをスペクトルの1つの領域から別の領域に移動させる対数特性を有し得るホワイトノイズであるか、または構造ノイズは、振幅を一定に維持したままランダム時間要素を提供するようにデザインすることができる。これらの2つは、予測可能な未来成分を有していない真にランダムなノイズと比較して、ピンクノイズおよび均一ノイズを表す。「均一ノイズ」は、ガウス分布ではなく長方形の分布を有するホワイトノイズを意味する。
【0043】
「周波数領域スペクトル」は、時間領域信号のフーリエ周波数プロットを指す。
【0044】
「スペクトル成分」は、周波数、振幅、および/または位相領域で測定できる時間領域信号の範囲内の単一または反復品質を指す。スペクトル成分は、典型的には、周波数領域に存在する信号を指す。
【0045】
「ファラデーケージ」は、望ましくない電磁放射線をアースする電気経路を提供して、電磁環境を静穏化する電磁シールド構造を指す。
【0046】
「信号解析スコア」は、後述するスコアリングアルゴリズムの1つによる時間領域信号の解析に基づいたスコアを指す。
【0047】
「最適化作用物質特異的時間領域信号」は、最大またはほぼ最大の信号解析スコアを有する時間領域信号を指す。
【0048】
「in vitro系」は、ウイルス、細菌、または多細胞植物もしくは動物から単離された、または由来する受容体および構造タンパク質を含め、1つ以上の生化学成分、例えば、核酸またはタンパク質成分を有する生化学系を指す。in vitro系は、典型的には、水性培地、例えば、生理学的緩衝液中で単離された、または部分的に単離された1つ以上のin vitro成分を含む溶液または懸濁物である。この用語はまた、培養培地中に細菌または真核細胞を含む細胞培養系も指す。
【0049】
「哺乳動物系」は、哺乳動物を指し、ヒト疾患のモデルとして役立ち得る実験動物、例えば、マウス、ラット、もしくは霊長類、またはヒト患者を含む。
【0050】
「化学系、生化学系、または生物系」は、作用物質特異的信号による変換に対する作用物質特異的応答、または本発明の信号曝露水性組成物の添加に応答する作用物質特異的応答を立証できる系を指す。化学系または生化学系は、例えば、水溶液もしくは懸濁物中の1つ以上の化学成分もしくは生化学成分、または細胞を含まない系の細胞成分を含み得る。生物系は、in vitro細胞培養系またはin vivo動物系を含み得る。
【0051】
「作用物質特異的効果」は、化学系、生化学系、または生物系が、化学または生化学作用物質(エフェクタ)に曝露されたときに観察される効果を指す。生物学的in vitro系に対する作用物質特異的in vitro効果の例には、例えば、系の成分の凝集状態の変化、作用物質の標的、例えば、受容体との結合、および培養中の細胞の増殖または分化の変化が含まれる。
【0052】
「1G〜10−8Gの範囲内の選択された磁場強度」は、1G〜10−8Gの選択された定磁場強度、または少なくとも一部が1G〜10−8Gの範囲内である選択された範囲、例えば、10−5〜10−9Gの範囲内である複数の漸増磁場強度を生成すると計算された一連の信号電流によって生成される磁場である、磁場強度を生成すると計算された時間領域信号電流が加えられる1つ以上の電磁コイルによって生成される磁場強度を指す。
【0053】
「水性培地」は、作用物質特異的信号を受け取るのに適した水相を有する液体培地であり、水性培地には、水、塩溶液、エマルション、泡状物質、ゲル、懸濁物、およびペーストが含まれる。水性培地は、最大50重量%の他の溶媒、例えば、エタノールを含み得る。例示的な水性培地には、滅菌された超純水または生理食塩水、例えば、患者への非経口注入に適した緩衝等張液が含まれ、このような水性培地は、水性培地成分が、静脈投与用に調製または希釈されたときに0.1〜10%、好ましくは0.5〜5容量%のエタノールを含むように、0.1〜50%の体積濃度のエタノールをさらに含み得る。エタノールの存在は、組成物の安定性を向上させるように作用し得る。水性培地懸濁物には、後述するように、微粒子またはナノ粒子、例えば、リポソームなどの水性懸濁物が含まれ得る。
【0054】
「機械的に破壊された水性培地」は、例えば、ボルテックス、例えば、10〜30秒の強いボルテックス、軽打、または超音波処理によって機械的な破壊の力を受けた水性培地を指す。この破壊の力は、気体の非存在下で加えることができるが、空気などの気体の存在下で加えられるのが好ましい。
【0055】
「界面水性培地」は、本発明にしたがって、界面を含む水性培地が低周波数作用物質特異的信号に曝露されたときに水構造を形成できる気体/液体または固体/液体の界面の中心を提供することができる微小気泡または他の構造、例えば、懸濁粒子を含むように調製または処理された水性培地を指す。気体界面水性培地は、例えば、気体、例えば、空気、酸素、窒素、もしくはアルゴンを水性培地中で気泡化することによって、または水性培地の機械的撹拌、例えば、気体の存在下でのボルテックス、超音波処理、もしくは他の機械的撹拌によって、または気体ナノ粒子もしくは気体発生化合物、例えば、炭酸水素塩の添加によって調製される。水性倍地中の気泡の量および安定性は、添加剤、例えば、薬学的に許容され得る界面活性剤の添加によって促進され得る。1つの界面水性培地は、米国特許第7,011,702号および同第6,262,128号に記載されているように、発泡ポリマー、例えば、セルロースを含む水性培地を気泡化することによって形成される泡状物質である。多数の懸濁性ナノ粒子、例えば、水中油型エマルション中の超音波処理脂質粒子、ラテックス粒子、タンパク質殻気体もしくは液体充填ナノ粒子(protein−shell gas− or liquid−filled nanoparticle)、およびリポソームもしくは脂質小胞が公知である。リポソーム、例えば、大きい単層リポソームの懸濁物を、米国特許第5,030,453号および同第5,059,421号、ならびにこれらの特許に引用されている参考文献に記載されているような既知の方法にしたがって調製することができる。リポソーム封入ヒドロゲルを、米国特許第7,619,565号に記載されているように調製することができる。
【0056】
「機械的に破壊された界面水性培地」は、機械的に破壊され、かつ界面気泡を含み、例えば、通常の気圧の空気の存在下での強いボルテックスによって調製することができる。
【0057】
「パクリタキセルまたはその類似体」は、限定されるものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、およびテセタキセル(tesetaxel)を含め、イチイ属の植物によって生産されるジテルピン(diterpine)化合物のクラス、およびその化学的類似体を指す。
【0058】
「タキサン様化合物」または「パクリタキセル様化合物」は、チューブリンポリマーの形成の促進および/または形成されたチューブリンポリマーの安定化をもたらす作用機構によって機能する化合物を指す。この定義には、タキサン化合物およびエピチロン(epithilone)、例えば、エポチロンA〜F、およびその類似体、例えば、イクサベピロン(エピチロンB)が含まれる。これらの化合物は、タキサンのように、αβチューブリンヘテロ二量体サブユニットに結合することが知られており、一旦結合すると、ヘテロ二量体の解離速度が低下する。エポチロンBは、GTPの非存在下で、チューブリンの微小管への重合を誘導することも示されている。これは、細胞質全体にわたる微小管の束の形成によって引き起こされる。最後に、エポチロンBはまた、G2−M移行期で細胞周期を停止させて、細胞毒性、最終的に細胞アポトーシスももたらす(Balog,D.M.;Meng,D.;Kamanecka,T.;Bertinato,P.;Su,D.−S.;Sorensen,E.J.;Danishefsky,S.J.Angew.Chem.1996,108,2976)。しかしながら、マクロファージ合成炎症性サイトカインおよび一酸化窒素の活性化のような、パクリタキセルで知られている一部のエンドトキシン様特性は、エポチロンBでは観察されない。
【0059】
「治療用オリゴヌクレオチド」は、典型的には、1つ以上の選択された細胞タンパク質の発現を阻害または活性化することによって、細胞環境に存在するときに治療の役割を果たすことができる一本鎖(ss)または二本鎖(ds)RNA、DNA、または改変された主鎖または塩基を有するオリゴヌクレオチド類似体を指す。治療用オリゴヌクレオチドは、典型的には、長さが10〜50のヌクレオチド塩基、好ましくは15〜30塩基であり、例えば、(i)相補配列DNAまたはRNAに結合して、DNAからのRNAの転写またはRNAのタンパク質への翻訳を阻害する、あるいは転写プロセシングエラー、例えば、エキソンスキッピングを誘導することができる一本鎖アンチセンス化合物として、(ii)低分子干渉RNA(siRNA)として機能して特定の遺伝子の発現を妨害する二本鎖DNAとして、(iii)遺伝子発現を活性化させるように機能する低分子二本鎖RNA、および(iv)選択された標的mRNAで遺伝子サイレンサとして機能する一本鎖マイクロRNAとして機能し得る。例示的な治療用オリゴヌクレオチドには:いずれも後述するGAPDHアンチセンスRNAおよびPCSK9アンチセンスRNAが含まれる。
【0060】
「タキサン信号」または「パクリタキセル信号」は、タキサン化合物、例えば、パクリタキセルで記録された低周波数時間領域信号を指し、本明細書で詳述されるように、信号に曝露される条件下でタキサン様特異的効果を誘導することができる。
【0061】
「治療用オリゴヌクレオチド信号」は、治療用オリゴヌクレオチド化合物、例えば、GAPDHアンチセンスRNAまたはPCSK9アンチセンスRNAで記録された低周波数時間領域信号を指す。
【0062】
「水信号」は、作用物質信号、例えば、タキサン信号を記録するために使用された条件と同じ条件下で、純水のサンプルで記録された低周波数時間領域信号を指す。
【0063】
「タキサン信号に曝露された水」は、本明細書に詳述される条件下でタキサン信号に曝露された水性培地を指す。
【0064】
「治療用オリゴヌクレオチド信号に曝露された水」は、本明細書に詳述される条件下で治療用オリゴヌクレオチド信号に曝露された水性培地を指す。
【0065】
「水信号に曝露された水」または「ホワイトノイズに曝露された水」はそれぞれ、本明細書に詳述される条件下で水信号またはホワイトノイズ信号に曝露された水、例えば、超純水のサンプルを指す。
【0066】
化学系、生化学系、または生物系を「変換する」は、このような系を作用物質特異的信号に曝露して、このような系における作用物質特異的効果を達成することを指す。後述する1つのモデル変換系は、例えば、増殖率の低下、または選択された細胞成分の発現の刺激もしくは阻害によって、そのモデル変換系の細胞が作用物質特異的信号に応答できる細胞培養系である。
【0067】
水性培地を作用物質特異的信号に「曝露する」は、本発明にしたがって、作用物質から記録された低周波数信号によって生成される電磁場に水性培地を入れることを意味する。
【0068】
水性組成物は、この組成物が化学系、生化学系、または生物系に対して少なくとも1つの作用物質特異的効果を与えることができる場合、このような系に作用物質特異的効果をもたらすことができる化学または生化学作用物質の作用を「模倣」すると言える。
【0069】
「所与の化学または生化学作用物質の濃度の単位で表される組成物の活性」は、この組成物が、この化学または生化学作用物質の少なくとも1つの効果について、この作用物質の所与の濃度でこの作用物質の溶液または懸濁物と同じ活性を有することを意味する。したがって、例えば、0.01〜10μMの濃度のパクリタキセルの単位で表されるパクリタキセル活性を有する組成物は、その阻害する能力については、パクリタキソール応答癌細胞の懸濁物と同じ活性を有する、あるいは動物のタキソール応答腫瘍の増殖を阻害するその能力については、0.01〜10μMの濃度のパクリタキセルの溶液と同じ活性を有することを意味する。
【0070】
(II.作用物質特異的信号を生成するための装置)
選択された作用物質のサンプルから時間領域信号を生成するための記録装置が、本明細書に組み入れられる、共有の国際公開第2008/063654号に詳述されている。装置およびスコアリングアルゴリズムの特定の好ましい実施形態を以下に記載する。
【0071】
本装置は、刺激信号を生成するコイルおよび応答を測定するグラジオメータに近接した磁気的に遮蔽されるファラデーケージ内にサンプルを配置して使用される。刺激信号は、刺激コイルによって注入され、この信号は、望ましい最適な信号が生成されるまで変調することができる。次いで、ファラデーケージおよび刺激コイルによって生成される磁場により外部干渉から遮蔽された分子電磁応答信号を、グラジオメータおよびSQUIDによって検出し、測定する。次いで、この信号を増幅して、任意の適切な記録器または測定器に送信する。
【0072】
図1は、電磁放射線の検出用の装置および処理システムの一実施形態を示している。装置700は、処理ユニット704に接続された検出ユニット702を備えている。処理ユニット704は、検出ユニット702の外部に示されているが、処理ユニットの少なくとも一部は、検出ユニット内に配置することができる。
【0073】
図1の断面図に示されている検出ユニット702は、互いに入れ子状または同心円状の複数の構成要素を備えている。サンプルチャンバまたはファラデーケージ706は、金属ケージ708の中に収容されている。サンプルチャンバ706および金属ケージ708のそれぞれは、アルミニウム材料から形成することができる。サンプルチャンバ706は、真空中に維持することができ、設定温度に制御される温度とすることができる。金属ケージ708は、低域通過フィルタとして機能するように構成されている。
【0074】
一連の平行な加熱コイルまたは要素710が、サンプルチャンバ706と金属ケージ708との間にあり、このサンプルチャンバ706を取り囲んでいる。1つ以上の温度センサ711も、加熱要素710およびサンプルチャンバ706に近接して配設されている。例えば、4つの温度センサを、サンプルチャンバ706の外周の異なる位置に配置することができる。加熱要素710および温度センサ(複数可)711は、サンプルチャンバ706の内部を一定の温度に維持するように構成することができる。
【0075】
シールド712は、金属ケージ708を取り囲んでいる。シールド712は、サンプルチャンバ706に追加の磁場シールドまたは隔離を提供するように構成されている。シールド712は、鉛または他の磁気シールド材料から形成することができる。このシールド712は、サンプルチャンバ706および/または金属ケージ708によって十分なシールドが提供されている場合は任意選択である。
【0076】
G10絶縁体を備えた極低温層716がシールド712を取り囲んでいる。極低温層は、液体ヘリウムとすることができる。極低温層716(極低温デュアー瓶とも呼ばれる)は、動作温度が4K(−269.15℃)である。外側シールド718が、極低温層716を取り囲んでいる。この外側シールド718は、ニッケル合金から形成され、磁気シールドとなるように構成されている。検出ユニット702によって提供される磁気シールドの総量は、デカルト座標系の3つの直交する平面において最大約−100dB、最大−100dB、および最大−120dBである。
【0077】
上記の様々な要素は、空隙または誘電障壁(不図示)によって互いに電気的に絶縁されている。また、これらの要素が、描きやすくするために互いに対して正確な縮尺ではないことをも理解されたい。
【0078】
サンプルホルダ720は、サンプルチャンバ706内に手動で、または機械的に配置することができる。サンプルホルダ720は、下げる、上げる、またはサンプルチャンバ706の上部から取り出すことができる。サンプルホルダ720は、渦電流を誘導しない材料から形成されており、固有の分子回転を殆どまたは全く示さない。一例として、サンプルホルダ720は、高品質のガラス、すなわちPyrex(登録商標)から形成することができる。
【0079】
検出ユニット702は、固体サンプル、液体サンプル、または気体サンプルに対応するように構成されている。検出ユニット702では、様々なサンプルホルダを利用することができる。例えば、サンプルのサイズによって、大きめのサンプルホルダを利用することができる。別の例として、サンプルが空気と反応する場合、サンプルホルダは、サンプルを封入する、またはサンプルの周囲に気密シールを形成するように構成することができる。なお別の例では、サンプルが気体状態である場合、サンプルは、サンプルホルダ720を用いずにサンプルチャンバ706の内部に導入することができる。このようなサンプルの場合、サンプルチャンバ706は、真空に維持される。サンプルチャンバ706の上部の真空シール721は、真空の維持および/またはサンプルホルダ720の収容に役立つ。
【0080】
検知コイル722および検知コイル724は、検出コイルとも呼ばれ、それぞれが、サンプルホルダ720の下および上に設けられている。検知コイル722、724のコイルの巻線は、約50キロヘルツ(kHz)の範囲、25kHzの中心周波数、8.8MHzの自己共振周波数で直流(DC)で動作するように構成されている。検知コイル722、724は、二次誘導の形態であり、約100%の結合を達成するように構成されている。一実施形態では、コイル722、724は、概ね長方形であり、G10固定装置によって所与の位置に保持されている。コイル722、724は、二次誘導グラジオメータとして機能する。
【0081】
ヘルムホルツコイル726および728は、本明細書で説明されるように、シールド712と金属ケージ708との間に垂直に配置することができる。コイル726および728のそれぞれは、互いに独立して上げる、または下げることができる。コイル726および728は、磁場刺激生成コイルとも呼ばれ、室温または周囲温度である。コイル726、728によって発生するノイズは、約0.10ガウスである。
【0082】
サンプルからの放射線とコイル722、724との間の結合の程度は、サンプルホルダ720をコイル722、724に対して再配置することによって、あるいはコイル726、728の一方または両方をサンプルホルダ720に対して再配置することによって変更することができる。
【0083】
処理ユニット704は、コイル722、724、726、および728に電気的に結合されている。処理ユニット704は、磁場刺激、例えば、コイル726、728によってサンプルに注入されるガウス性ホワイトノイズ刺激を指定する。処理ユニット104はまた、注入される磁場刺激と混合されるサンプルの電磁放射線によるコイル722、724の誘導電圧も受け取る。
【0084】
図2は、図12の704に示されている処理ユニットのブロック図である。二相ロックイン増幅器202は、コイル726、728への第1の磁場信号(例えば、「x」またはノイズ刺激信号)および超電導量子干渉素子(SQUID)206のノイズ消去コイルへの第2の磁場信号(例えば、「y」またはノイズ消去信号)を供給するように構成されている。増幅器202は、外部基準なしにロックするように構成されており、Perkins Elmerのモデル7265DSPロックイン増幅器とすることができる。この増幅器は、「仮想モード」で動作し、このモードでは、初期基準周波数にロックし、次いで自由に動作して「ノイズ」にロックできるように基準周波数を除去する。
【0085】
磁場刺激発生器、例えば、アナログガウス性ホワイトノイズ刺激発生器200は、増幅器202に電気的に結合されている。この発生器200は、増幅器202を介してコイル726、728で、選択された磁場刺激、例えば、アナログガウス性ホワイトノイズ刺激を発生するように構成されている。一例として、この発生器200は、General Radioによって製造されたモデル1380とすることができる。
【0086】
インピーダンス変圧器204は、SQUID206および増幅器202との間に電気的に結合されている。インピーダンス変圧器204は、SQUID206と増幅器202との間でインピーダンスを一致させるように構成されている。
【0087】
SQUID206は、低温直接要素SQUIDである。一例として、SQUID206は、Tristan Technologies社(San Diego、CA.)から入手可能なモデルLSQ/20 LTS dC SQUIDとすることができる。あるいは、高温または交流SQUIDを使用することができる。コイル722、724(例えば、グラジオメータ)とSQUID206の組み合わせ(まとめてSQUID/グラジオメータ検出アセンブリと呼ばれる)は、
【0088】
【数1】
の磁場測定感度を有する。コイル722、724の誘導電圧は、SQUID206によって検出され、増幅される。SQUID206の出力は、約0.2〜0.8マイクロボルトの範囲の電圧である。
【0089】
SQUID206の出力は、SQUIDコントローラ208への入力である。SQUIDコントローラ208は、SQUID206の動作状態を制御し、さらに検出信号を調整するように構成されている。一例として、SQUIDコントローラ208は、Tristan Technologies社によって製造されたiMC−303 iMAG多重チャンネルSQUIDコントローラとすることができる。
【0090】
SQUIDコントローラ208の出力は、増幅器210へ入力される。増幅器210は、0〜100dBの範囲の利得を提供するように構成されている。SQUID206でノイズ消去ノードがオンにされると、約20dBの利得が得られる。SQUID206がノイズ消去を全く行われないと、約50dBの利得が得られる。
【0091】
増幅信号は、レコーダまたは記憶装置212へ入力される。レコーダ212は、アナログ増幅信号をデジタル信号に変換して、このデジタル信号を記憶するように構成されている。一実施形態では、レコーダ212は、1Hz当たり8600のデータポイントを記憶し、2.46メガビット/秒を処理することができる。一例として、レコーダ212は、Sonyのデジタル・オーディオ・テープ(DAT)レコーダとすることができる。DATレコーダを用いて、生の信号またはデータセットを、所望に応じて表示または特定の処理のためにサードパーティに送信することができる。
【0092】
低域通過フィルタ214は、レコーダ212からのデジタル化されたデータセットをフィルタリングする。低域通過フィルタ214は、アナログフィルタであり、Butterworthフィルタとすることができる。カットオフ周波数は、約50kHzである。
【0093】
次に、帯域通過フィルタ216が、フィルタリングされたデータセットをフィルタリングする。帯域通過フィルタ216は、DC〜50kHzの帯域幅のデジタルフィルタとなるように構成されている。帯域通過フィルタ216は、様々な帯域幅に調整することができる。
【0094】
帯域通過フィルタ216の出力は、フーリエ変換プロセッサ218に入力される。フーリエ変換プロセッサ218は、時間領域にあるデータセットを周波数領域にあるデータセットに変換するように構成されている。フーリエ変換プロセッサ218は、高速フーリエ変換(FFT)タイプの変換を実行する。
【0095】
フーリエ変換されたデータセットは、相関および比較プロセッサ220への入力である。レコーダ212の出力はまた、プロセッサ220への入力である。プロセッサ220は、データセットを以前に記録されたデータセットと関連付け、閾値を決定し、ノイズ消去を実行する(SQUID206によってノイズ消去が提供されない場合)ように構成されている。プロセッサ220の出力は、サンプルの分子低周波数電磁放射線のスペクトルを表す最終データセットである。
【0096】
グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)などのユーザインタフェース(UI)222はまた、少なくともフィルタ216およびプロセッサ220に接続されて、信号処理パラメータを指定する。フィルタ216、プロセッサ218、およびプロセッサ220は、ハードウエア、ソフトウエア、またはファームウエアとして実施することができる。例えば、フィルタ216およびプロセッサ218は、1つ以上の半導体チップで実施することができる。プロセッサ220は、コンピュータデバイスで実施されるソフトウエアとしても良い。
【0097】
この増幅器は、「仮想モード」で動作し、このモードでは、初期基準周波数にロックし、次いで自由に動作し、「ノイズ」にロックできるように基準周波数を除去する。アナログノイズ発生器(General Radioによって生産され、真のアナログノイズ発生器)は、ヘルムホルツおよびノイズ消去コイルのそれぞれに対して、20dBおよび45dBの減衰を必要とする。
【0098】
ヘルムホルツコイルは、バランスが1%の100分の1である約1立方インチのスイートスポットを有し得る。代替の実施形態で、ヘルムホルツコイルは、垂直方向および回転方向(垂直軸の回り)の両方に移動させることができ、かつ平行からパイ形に離隔させることもできる。一実施形態では、SQUID、グラジオメータ、および駆動用変圧器(コントローラ)はそれぞれ、1.8、1.5、および0.3マイクロヘンリーの値を有する。ヘルムホルツコイルは、スイートスポットにおいて1アンペア当たり0.5ガウスの感度を有し得る。
【0099】
確率応答には、約10〜15マイクロボルトが必要であろう。ガウス性ホワイトノイズ刺激を注入することにより、システムは、SQUIDデバイスの感度が上げる。SQUIDデバイスは、ノイズのない約5フェムトテスラの感度を有していた。このシステムは、ノイズを注入し、この確率共鳴応答を使用することによって、感度を25〜35dB改善することができ、これは、ほぼ1,500%の上昇に等しい。
【0100】
システムからの信号を受信して記録すると、コンピュータ、例えば、メインフレームコンピュータ、スーパーコンピュータ、または高性能コンピュータは、前処理および後処理の両方を実行し、前処理は、カリフォルニア州リッチモンドのSystat Softwareによって開発されたAutoSignalソフトウエアを利用して実行され、後処理は、Flexproソフトウエア製品を利用して実行される。Flexproは、Dewetron社によって提供されるデータ(統計)解析ソフトウエアである。次の式または選択肢は、AutosignalおよびFlexpro製品で使用することができる。
【0101】
装置によって実行される信号検出および処理のフローチャートが図3に示されている。注目サンプルである場合、典型的には、少なくとも4つの信号検出またはデータランが実行される:サンプルなしでの時刻t1での第1のデータラン、サンプルありでの時刻t2での第2のデータラン、サンプルありでの時刻t3での第3のデータラン、およびサンプルなしでの時刻t4での第4のデータラン。2つ以上のデータランからのデータセットの実行および収集により、最終(例えば、関連付けられた)データセットの精度が上がる。第4のデータランでは、システムのパラメータおよび条件は、一定に保たれる(例えば、温度、増幅量、コイルの位置、ガウス性ホワイトノイズおよび/またはDCオフセット信号など)。
【0102】
ブロック300で、適切なサンプル(または、第1または第4のデータランの場合、サンプルが存在しない)が、装置、例えば、装置700に配置される。ガウス性ホワイトノイズまたはDCオフセット刺激が注入されていない所与のサンプルは、約0.001マイクロテスラまたはそれ以下の振幅で、DC〜50kHz範囲の電磁放射線を放射する。このような低い放射線を捕捉するために、ブロック301でガウス性ホワイトノイズ刺激および/またはDCオフセットが注入される。
【0103】
ブロック302で、コイル722、724は、サンプルの放射および注入された磁気刺激を表す誘導電圧を検出する。誘導電圧は、データランの期間にわたって時間の関数である一連の電圧値(振幅および位相)の連続的な流れを含む。データランは、長さが2〜20分であり得、したがってデータランに対応するデータセットは、時間の関数である2〜20分の電圧値を含む。
【0104】
ブロック304で、注入された磁気刺激は、誘導電圧が検出されると消去される。このブロックは、SQUID206のノイズ消去機能がオフの場合には省略される。
【0105】
ブロック306で、データセットの電圧値が、ブロック304でノイズが消去されるか否かによって、20〜50dB増幅される。そしてブロック308で、増幅されたデータセットが、アナログからデジタルへ(A/D)変換され、レコーダ212に記憶される。デジタル化されたデータセットは、数百万行のデータを含み得る。
【0106】
取得されたデータセットが記憶されると、ブロック310で、サンプルに対して少なくとも4つのデータランが実行された(例えば、少なくとも4つのデータセットが取得された)か否かについて確認される。所与のサンプルに対して4つのデータセットが得られていれば、ブロック312で低域通過フィルタリングが行われる。そうでない場合は、次のデータランが開始される(ブロック300に戻る)。
【0107】
デジタル化されたデータセットの低域通過フィルタリング(ブロック312)および帯域通過フィルタリング(ブロック314)が行われたら、データセットは、フーリエ変換ブロック316で周波数領域に変換される。
【0108】
次に、ブロック318で、類似のデータセットが、各データポイントで互いに関連付けられる。例えば、第1のデータラン(例えば、ベースラインまたは周囲ノイズのデータラン)に対応する第1のデータセットと、第4のデータラン(例えば、別のノイズのデータラン)に対応する第4のデータセットとが互いに関連付けられる。所与の周波数における第1のデータセットの振幅値が、この所与の周波数における第4のデータセットの振幅値と同じである場合は、この所与の周波数に対する相関値または数値は、1.0であろう。あるいは、相関値の範囲は、0〜100の範囲に設定することができる。このような相関または比較は、第2および第3のデータラン(例えば、サンプルのデータラン)についても行われる。取得されたデータセットが記憶されているため、残りのデータランが完了してから、それらのデータセットにアクセスすることができる。
【0109】
関連付けられた各データセットに対して所定の閾値レベルが適用されて、統計的に意味のない相関値が排除される。データランの長さ(データランが長ければ長いほど、取得されるデータの精度が向上する)、およびサンプルの実際の放射スペクトルの他のタイプのサンプルに対する類似性によって、様々な閾値を使用することができる。閾値レベルに加えて、相関値が平均化される。閾値および相関の平均化を使用すると、注入されたガウス性ホワイトノイズ刺激成分が、得られる相関データセットで非常に小さくなる。
【0110】
2つのサンプル・データ・セットが、1つの相関サンプル・データ・セットに改善され、2つのノイズ・データ・セットが、1つの相関ノイズ・データ・セットに改善されると、相関ノイズ・データ・セットが、相関サンプル・データ・セットから減じられる。得られるデータセットは、最終データセット(例えば、サンプルの放射スペクトルを表すデータセット)である(ブロック320)。
【0111】
1Hz当たり8600のデータポイントがあり得、最終データセットがDC〜50kHzの周波数範囲に対してデータポイントを有し得るため、最終データセットは、数億行のデータを含み得る。データの各行は、周波数、振幅、位相、および相関値を含み得る。
【0112】
(III.変換のための最適な時間領域信号を同定する方法)
上記の装置および方法にしたがって生成される作用物質特異的信号は、例えば、in vitro系または哺乳動物系を変換するために使用される場合は、最適なエフェクタ活性についてさらに選択することができる。共有の国際公開第2008/063654A3号に詳述されているように、所与の作用物質で得られた時間領域信号における作用物質依存性信号の特徴は、様々な磁場刺激条件、例えば、ガウス性ホワイトノイズ刺激の振幅および/またはDCオフセットに対する様々な電圧レベルに対するサンプルの時間領域信号を記録することによって最適化することができる。次いで、記録された信号が、処理されて信号の特徴が明らかにされ、後述するように最適な信号解析スコアを有する1つ以上の時間領域信号が選択される。最適化またはほぼ最適化された時間領域信号の選択は、系、例えば、in vitro生物系の変換、または水性培地の最適化時間領域信号への曝露が、非最適化時間領域信号への曝露よりも強く、かつより予測可能な応答を与えることが分かったため有用である。すなわち、最適化(またはほぼ最適化)時間領域信号の選択は、標的系がサンプル信号によって変換される場合、あるいは水性培地が信号に曝露される場合に、信頼性の高い検出可能なサンプル効果の達成に有用である。
【0113】
作用物質特異的信号は、典型的には、オリゴヌクレオチド作用物質について以下に例示されるように、選択された作用物質、例えば、生物学的または生化学的作用物質を適切な水性培地、例えば、純水にまず溶解または懸濁することによって記録される。可溶性が低い作用物質、例えば、タキサンでは、この作用物質を、両方のパクリタキセルについて以下に例示されているように、適切なビヒクル、例えば、Cremophor EL(商標)または適切な可溶化剤または懸濁剤を含む他のビヒクルに懸濁することができる。
【0114】
作用物質の濃度は、典型的には、10−3〜10−24M、好ましくは約10−10〜10−16μMの範囲に調整される。サンプルは、記録の前に処理して:(i)機械的に破壊されたサンプル培地、(ii)気泡を含む界面サンプル培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面サンプル培地の1つを調製することができる。機械的な破壊の処理は、例えば、5〜30秒の強いボルテックスによって行うことができ、このボルテックスが気体の存在下で行われると、気泡が懸濁した界面培地も得られる。サンプルは、典型的には、4〜37℃、好ましくは室温、すなわち約24℃で記録される。
【0115】
一般に、サンプルに加えられる注入ホワイトノイズおよびDCオフセット電圧は、例えば、0〜1G(ガウス)の計算された磁場をサンプル容器に生成する、あるいは注入ノイズ刺激は、好ましくは、検出しようとする分子電磁放射線よりも約30〜35デシベル高い、例えば、70〜80dbmの範囲である。記録されるサンプル数、すなわち時間領域信号が記録されるノイズレベルの間隔の数は、典型的には、10〜100またはそれ以上の範囲で変化し、いずれの場合も、十分に小さい間隔であれば、良好な最適信号を識別することができる。例えば、ノイズ発生器レベルの電力利得は、50の20mVの間隔で変動し得る。
【0116】
あるいは、ガウス性ホワイトノイズおよび/またはDCオフセット以外の刺激信号を、記録された時間領域信号の最適化のために使用することができる。このような信号の例には、様々な正弦波周波数、矩形波、規定された非線形構造を含む時系列データ、またはSQUID出力自体のスキャニングが含まれる。これらの信号は、さらに刺激信号を修正するために、オフ状態とオン状態との間でそれら自体がパルス化されても良い。磁気シールドによって自然に生じるホワイトノイズを、刺激信号源として使用しても良い。
【0117】
上記の国際公開第2008/063654号に、上記のように生成される時間領域信号をスコアリングするための5つの方法:(A)ヒストグラムビン法、(B)自己相関信号のFFTの生成、(C)FFTの平均化、(D)相互相関閾値の使用、および(E)位相空間比較、が記載されている。これらのうち、効果的な変換信号の最も有望な予測方法は、ヒストグラムビン法(A)および拡張自己相関(EAC)法(B)である。これらの2つの好ましい方法を以下に説明する。
【0118】
(A.スペクトル情報を生成するヒストグラム法)
図4は、スペクトル情報を生成するヒストグラム法のハイレベルのデータフローチャートである。SQUIDから取得されたデータ(ボックス2002)または記憶されたデータ(ボックス2004)は、16ビットまたは24ビットのWAVデータとして保存され(ボックス2006)、倍精度浮動小数点データに変換される(ボックス2008)。変換されたデータは、生の波形として保存される(ボックス2010)、または表示される(ボックス2012)。次いで、変換されたデータは、図5に関連して以下に記載され、フーリエ解析と書かれたボックス2014によって示されるアルゴリズムに送られる。ヒストグラムは、2016で表示することができる。
【0119】
図5は、ヒストグラム・スコアリング・アルゴリズムの全体の流れを示している。時間領域信号は、ADC(アナログ/デジタル変換器)から得られ、2102に示されたバッファに記憶される。このサンプルは、SampleDuration秒の長さであり、1秒に付きSampleRateサンプルでサンプリングされ、SampleCount(SampleDuration*SampleRate)サンプルが得られる。信号から回収され得るFrequencyRangeは、Nyquistによって定義されるようにSampleRateの半分として定義される。したがって、時系列信号が毎秒10,000サンプルでサンプリングされると、FrequencyRangeは、0Hz〜5kHzとなる。使用できる1つのフーリエアルゴリズムは、Radix 2 Real高速フーリエ変換(RFFT)であり、これは、216までの2のべき乗の選択可能な周波数領域分解能(FFTSize)を有する。FrequencyRangeが8kHz以下に維持される限りは、1ヘルツに付き少なくとも1つのスペクトルビンを有する十分な分解能を実現するために、8192のFFTSizeが選択される。SampleDurationは、信頼できる結果を保証するために、SampleCount>(2*)FFTSize*10のように十分な長さにするべきである。
【0120】
このFFTは、1回にFFTSizeのサンプルにしか実行できないため、プログラムは、最終スペクトルを得るために、サンプルに対してFFTを順次実行し、結果を平均しなければならない。各FFTに対してFFTSizeのサンプルをスキップすることが選択されると、1/FFTSize^0.5の統計誤差が生じる。しかしながら、FFT入力にFFTSizeの半分がオーバーラップすることが選択されると、この誤差は、1/(0.81*2*FFTSize)^0.5に減少する。これにより、誤差が0.0110485435から0.0086805556まで減少する。誤差および相関解析全般についての追加情報は、BendatおよびPiersol著、「Engineering Applications of Correlation and Spectral Analysis」、1993を参照されたい。
【0121】
所与のウインドウでFFTを実行する前に、データ・テーパリング・フィルタを適用して、サンプリングエイリアシングによるスペクトルの漏れを回避することができる。このフィルタは、例として、矩形(フィルタなし)、ハミング(Hamming)、ハニング(Hanning)、バートレット(Bartlett)、ブラックマン(Blackman)およびブラックマン/ハリス(Blackman/Harris)の中から選択することができる。
【0122】
例示的な方法では、ボックス2104に示されているように、1回に実行される時間領域サンプルの数であり、かつFFTで出力される離散的周波数の数でもある変数FFTSizeに対して8192が選択されている。FFTSize=8192は、分解能、またはサンプリングレートによって決まる範囲内のビン数であることに留意されたい。離散的RFFT(実FFT)が何回実行されるかを決める変数nは、SampleCountをFFTビンの数であるFFTSize*2で除すことによって設定される。アルゴリズムが意味をなす結果を生成するために、この数nは、少なくとも10〜20であるべきであり(しかし、他のバルブ(valve)も可能である)、より弱い信号をピックアップするためにはより大きい数が好ましいであろう。このことは、所与のSampleRateおよびFFTSizeに対して、SampleDurationが十分な長さでなければならないことを示唆する。ボックス2104にも示すように、0からnまでをカウントするカウンタmは、ゼロに初期化される。
【0123】
プログラムはまず、3つのバッファ:各ビン周波数でのカウントを累積するFFTSizeのヒストグラムビン用のバッファ2108;各ビン周波数での平均出力用のバッファ2110、および各mについてのFFTSizeのコピーされたサンプルを含むバッファ2112、を確立する。
【0124】
プログラムは、ヒストグラムおよび配列を初期化し(ボックス2113)、2114で波形データのFFTSizeのサンプルをバッファ2112にコピーし、波形データに対してRFFTを実行する(ボックス2115)。FFTは、最大の振幅が1となるように正規化され(ボックス2116)、すべてのFFTSizeのビンに関する平均出力が、正規化信号から決定される(ボックス2117)。各ビン周波数に対して、その周波数でのFFTからの正規化値がバッファ2108の各ビンに加えられる(ボックス2118)。
【0125】
次いで、ボックス2119で、プログラムは、上記から計算した平均出力に対する各ビン周波数における出力を調べる。その出力が、平均出力の特定の因子ε(0〜1)の範囲内である場合は、16で、その出力がカウントされ、対応するビンがヒストグラムバッファ内で増分される。そうでない場合、その出力は廃棄される。
【0126】
平均出力が比較されるのは、このFFTの場合だけに対してであることに留意されたい。低速であるが拡張されたアルゴリズムは、ヒストグラムのレベルを設定する前に、データを2回通過させ、全ての時間に対して平均を計算することがある。εとの比較は、周波数ビンにとって有意に十分な出力値を表すのを容易にする。あるいは広義では、εを利用する式は、「この時点でこの周波数の信号が存在するか?」という質問に答えるのに役立つ。その答えがイエスである場合は、2つの事項:(1)この1回だけこのビンに到達する定常ノイズ、または(2)ほぼ毎回発生する真に低レベルの周期的信号、の一方に起因し得る。したがって、ヒストグラムカウントは、ノイズヒットを除去し、そして低レベル信号ヒットを強める。したがって、平均化およびε因子により、有意と考えられる最小の出力レベルを選択することが可能となる。
【0127】
ボックス2120で、カウンタmが増分され、mがnに等しくなるまで(ボックス2121)、上記のプロセスが、WAVデータのn個のセットのそれぞれに対して反復される。各サイクルで、各ビンについての平均出力が、2118で関連するビンに加えられ、各ヒストグラムビンが、2114で出力振幅条件が満たされたとき1だけ増分される。
【0128】
n個のサイクルのデータの全てが考慮されたときは、各ビンの平均出力は、各ビンの蓄積された合計平均出力をサイクルの総数nで除すことによって決定され(ボックス2122)、この結果が表示される(ボックス2123)。例えば、DC=0または60Hzの周波数で構造ノイズが存在する場合を除き、各ビンの平均出力は、ある程度小さい数となる。
【0129】
この方法で関係する設定は、ノイズ刺激利得およびεの値である。この値は、平均値を超えるある事象を区別するために使用される出力値を決定する。出力は、平均出力よりも大きくなり得ないため、1の値では、事象が一切検出されない。εがゼロに接近するにつれて、実質的に全ての値が、ビンに入れられることになる。0〜1の値、典型的には、構造ノイズに対する合計ビンカウントの約20〜50%のビンカウント数となる値では、εは、最大「スペクトル特性」を有する、すなわち確率共鳴事象が、純粋ノイズよりも余程好ましいであろうことを意味する。
【0130】
したがって、磁場刺激入力に対する電力利得を、例えば、0〜1Vの間で50mVの増分で体系的に増加させることができ、各出力設定で、明確なピークを有するヒストグラムが観測されるまでεを調節することができる。例えば、処理されるサンプルが、20秒の時間間隔を表す場合は、それぞれの異なる出力およびεに対する合計処理時間は約25秒となる。明確な信号が観測された場合、最適なヒストグラム、すなわち最大数の識別可能なピークを有するヒストグラムが生成されるまで、出力設定またはε、あるいはこれらの両方を改善することができる。
【0131】
このアルゴリズム下では、多数のビンが満たされ、関連するヒストグラムが、低周波数のノイズ(例えば、環境ノイズ)の一般的な発生による低周波数について表示され得る。したがって、このシステムは、所与の周波数未満(例えば、1kHz未満)のビンを単に無視できるが、それでもなお、より高い周波数で十分なビンの値を表示し、サンプル間の固有の信号シグネチャを決定することができる。
【0132】
あるいは、ε変数の目的が、各サイクルで決定された異なる平均出力レベルに対応することであるため、プログラムは、それ自体が、平均出力レベルをεの最適値に関連付ける所定の機能を使用してεを自動的に調節することができる。
【0133】
同様に、プログラムは、最適なピーク高さまたは特性がヒストグラムで観測されるまで、各出力設定におけるピーク高さを比較し、ノイズ刺激出力設定を自動的に調節することができる。
【0134】
εの値は、すべての周波数について固定値とすることができるが、εの周波数依存値を利用して、例えば、DC〜1,000までの低周波数で観測され得るより高い値の平均エネルギーに調節することも企図されている。周波数依存ε因子は、例えば、多数の低周波数FFT領域を平均し、より高い周波数で観測される値と同等の値に平均値を「調節」するεの値を決定することによって求めることができる。
【0135】
(B.拡張自己相関(EAC))
信号解析スコアを決定する第2の好ましい方法では、選択されたノイズ刺激で記録された時間領域信号を自己相関し、自己相関信号の高速フーリエ変換(FFT)を使用して信号解析プロット、すなわち周波数領域での信号のプロットを生成する。次いで、FFTを使用して、選択された周波数範囲、例えば、DC〜1kHzまたはDC〜8kHzの範囲にわたって平均のノイズレベルを超えるスペクトル信号の数をスコアリングする。
【0136】
図6は、この第2の実施形態にしたがって、記録された時間領域信号のスコアリングで実行されるステップのフローチャートである。時間領域信号が、上記のようにサンプリングされ、デジタル化され、そしてフィルタリングされ(ボックス402)、磁場刺激レベルの利得は、404と同様に初期レベルに設定される。1つのサンプル合成物402に対する典型的な時間領域信号は、標準的な自己相関アルゴリズムを使用して408で自己相関され、自己相関関数のFFTは、標準FFTアルゴリズムを使用して410で生成される。
【0137】
FFTプロットは、412で、自己相関FFTで観察される平均ノイズよりも統計的に大きいスペクトルのピークの数をカウントすることによってスコアリングされ、このスコアは、414で計算される。このプロセスは、ピークスコアが記録されるまで、すなわち所与の信号のスコアが磁気刺激利得の増加とともに低下し始めるまで、ステップ416および406が繰り返される。ピークスコアは、418で記録され、プログラムまたはユーザが、422で時間領域信号のファイルからピークスコアに対応する信号を選択する(ボックス420)。
【0138】
上記のように、この実施形態は、手動モードで実行され、この手動モーでは、ユーザが、増分における磁気刺激設定を手動で調整し、手動でFFTスペクトルプロットから解析し(ピークのカウント)、ピークスコアを使用して1つ以上の最適な時間領域信号を識別する。あるいは、これらのステップの1つ以上の態様を自動化することもできる。
【0139】
関連した方法では、時間領域信号を、FFTによって周波数領域に変換し、例えば、同じサンプルからの周波数領域信号の対を相互相関させる。相互相関信号は、例えば、上記の同じサンプルからの周波数領域信号の第2の対を相互相関させることによって生成される第2の周波数領域信号と相互相関させることによりさらに強化しても良い。したがって、同じサンプルからの4つの時間領域信号がそれぞれ、周波数領域に変換され、それぞれが相互相関した2つの対に分割され、次いで再び相互相関させて、そのサンプルの最終周波数領域スペクトルを生成する。次いで、この信号を、所与のノイズ閾値よりも高いピークの数によってスコアリングすることができ、トップスコアリング2倍相互相関信号の生成に使用される4つの時間領域信号のいずれかを、後述する変換法または曝露法に利用することができる。
【0140】
1つの例示的な方法では、パクリタキセル時間領域信号を、最終濃度が6mg/mlとなるようにCremophorEL(商標)529mlおよび無水エタノール69.74ml中に懸濁されたパクリタキセルのサンプルからの低周波数信号を記録することによって得た。この信号を、10〜241mVのノイズレベル設定で、1mVの増分で、注入DCオフセットと共に記録した。この注入ノイズレベル範囲に対する合計241の時間領域信号を得て、これらを、詳細が上述された拡張自己相関アルゴリズムによって解析し、さらなるin vitro試験用の8つの時間領域パクリタキセル誘導信号が得られた。生物学的応答系(後述)でタキソール特異的作用をもたらすのに有効であり、かつ同様に後述されるように、本発明にしたがってパクリタキセル特異的水性組成物の調製に使用されると有効である例示的なパクリタキセル信号として、これらの中から、指定された信号M2(3)を選択した。
【0141】
図9A〜図9Cは、フーリエサブトラクションによってノイズが除去された2つのパクリタキセル信号の周波数領域スペクトル(図9Aおよび図B)、および3510〜3650Hzの周波数スペクトルの部分に対する作用物質特異的スペクトル特性を示す2つの信号の相互相関(図9C)を示している。図9Cから分かるように、約3の縦座標値に一致するノイズ閾値が与えられた場合、この領域におけるパクリタキセル信号は、7つのピークによって特徴付けられる。0〜20kHzの全領域でスペクトル特性を示すように拡張されている図9A〜図9Cに示されているスペクトルは、固有の作用物質特異的ピークに対する信号の周波数スペクトルの検査および多数のこのようなピークを含む時間領域信号の選択によって、いかに最適時間領域信号を選択できるかを例示している。
【0142】
上記のように記録され、処理され、そして選択された時間領域信号は、コンパクトディスクまたはデジタルもしくはアナログ信号の任意の他の適切な記憶媒体に記憶させることができ、信号変換動作中に変換系に供給される。コンパクトディスクに記憶される信号は、より一般的には、実体的なデータ記憶媒体の表現であり、この記憶媒体には、この信号が1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に供給されるときに、化学系または生化学系を変換できる磁場の生成、または本発明にしたがった作用物質特異的水性組成物の調製に有効な低周波数時間領域信号が記憶される。試験された特定の信号は、パクリタキセルサンプルから生じたものであったが、あらゆるタキサン様化合物が、変換形態で同じ機構の作用を有する信号を生成するはずであることを理解されたい。
【0143】
上記の方法によって生成され、選択される時間領域信号の1つのクラスには、パクリタキセルについて上で詳述されているように、タキサン化合物またはタキサン様化合物から生じる信号が含まれる。本発明で企図される治療用化合物の別の一般的なクラスは、一本鎖(ss)および二本鎖(ds)RNA、DNA、ならびにssおよびdsオリゴヌクレオチド類似体、例えば、モルホリノ、ホスホロチオエート、ならびに様々な主鎖修飾および/または塩基修飾を有するホスホン酸塩類似体を含む治療用オリゴヌクレオチドである。これらの化合物は、細胞環境に存在すると、典型的には、1つ以上の選択された細胞タンパク質の発現を阻害または活性化することによって治療的役割を果たす。
【0144】
(IV.変換/曝露装置およびプロトコル)
このセクションでは、本発明の水性組成物の調製において、上記のセクションI〜IIIに記載された方法にしたがって生成され、選択された低周波数時間領域信号に水性培地を曝露する機器および方法論を記載する。本明細書で使用される用語「変換器」または「変換装置」または「変換/曝露装置」または「曝露装置」は、この装置の磁場環境に配置される生物系の変換における変換モード、あるいは本発明にしたがった水性培地の曝露による本発明の水性培地の調製に使用される曝露モードで機能できる装置を指すことを理解されたい。
【0145】
(A.変換/曝露装置および方法)
図7に500で示されている1つの一般型の変換/曝露装置は、変換に応答して系の光学特性の変化を検出する、あるいは印加時間領域信号の曝露に応答して水性組成物の変化を検出するようにデザインされている。この装置は、この装置における変換/曝露ステーションとして機能する光学的に透明なセル502、ならびにサンプルからのビームの吸収および/または放出を検出する、電磁ビーム源504および光検出器506を含む分光光度計を備えている。1つの例示的なサンプルセルは、容量70μLの水晶キュベットである。このセルの反対側の端部領域に位置する変換コイル510は、コイル間に均一な磁場強度を発生させるようにAmerican Magnetics社によってデザインされ、製造されたものであり、2つのコイルのリード線が512、514で示されている。例示的な実施形態では、各コイルは、直径が約7.82mmの空芯を備え、エナメル被覆された、50巻の#39ゲージ(awg)の角銅マグネットワイヤからなる。適切なスペクトロメータには、(i)UVもしくはUV−Vis吸収スペクトロメータ、(ii)FTIR能力を備えたものを含む、IR吸収スペクトロメータ、または(iii)ラマンスペクトロメータが含まれ、これらは全て上で参照されている。
【0146】
変換/曝露装置の別の一般的な実施形態では、いくつかのヘルムホルツコイル対を、互いに直交するように構成しても良い。この構成は、サンプルに加えられる磁場の構造をより柔軟に制御することができるであろう。例えば、静磁場は、1つの軸に沿って加えることができ、変動磁場を別の軸に沿って加えることができる。上記の変換/曝露装置は、サンプルが配置される領域の環境からの無制御外来磁場を最小限にするためにシールドエンクロージャ内に配置される。シールドの一実施形態では、変換機器は、この変換機器よりも少なくとも3倍大きい、遥かに大きなエンクロージャ内に配置される。この大きな容器は、接地された銅メッシュで覆われている。このような容器は、一般的には「ファラデーケージ」と呼ばれている。銅メッシュは、約10kHzよりも大きい外部環境電磁信号を減衰させる。
【0147】
シールドの第2の実施形態では、変換機器は、シートアルミニウムまたは構造的不連続が最小限の他の固体導体から形成された大きなエンクロージャ内に配置される。このような容器は、約1kHzよりも大きい外部環境電磁信号を減衰させる。
【0148】
シールドの第3の実施形態では、変換機器は、この変換機器よりも少なくとも5倍大きい、3つの直交ヘルムホルツコイル対の非常に大きなセット内に配置される。フラックスゲート電磁センサ容器が、ヘルムホルツコイル対の幾何学的中心の近傍に位置し、変換機器からやや離れている。フラックスゲートセンサからの信号は、フィードバック装置、例えば、Lindgren社のMagnetic Compensation Systemへの入力であり、フィードバック電流を使用してヘルムホルツコイルを駆動し、ヘルムホルツコイル内の領域をゼロ磁場にする。ヘルムホルツコイル対は、非常に大きいため、この領域も、相応に大きい。さらに、変換機器は、比較的小さいコイルを使用するため、それらの磁場は、フラックスゲートセンサと干渉するほどには外側に広がらない。ヘルムホルツコイル対のこのようなセットは、0.001Hz〜1kHzの外部環境電磁信号を減衰させる。
【0149】
シールドの第4の実施形態では、変換機器は、上述のように銅メッシュまたはアルミニウムエンクロージャのいずれかの中に配置することができ、このエンクロージャ自体は、上述のヘルムホルツコイル対のセット内に配置される。このような構成は、それらの組み合わせられた範囲にわたって外部環境電磁信号を減衰させることができる。
【0150】
上記の変換/曝露装置のそれぞれは、装置の変換/曝露ステーションで時間領域信号を信号関連磁場に変換するための構成要素を含むシステムまたは装置の一部を構成する。図8Aは、変換ステーション566の両端にある一対の変換コイル562、564から構成された変換器560を備えた一般的な転換/曝露システム548を例示している。上述のように、変換ステーションは、作用物質特異的信号に検出可能な方式で応答できる応答システム、あるいは本発明にしたがって曝露される水性培地を受け取る。この図に示されている変換器は、スペクトロメータ構成要素568、570も備えている。
【0151】
システムの制御ユニット550は、入力装置552からのユーザ入力を受け取り、ディスプレイ553で入力情報およびシステムの状態を表示するようにデザインされている。下の図8Cに示されているように、ユーザ入力は、典型的には、以下で考察されるように、磁場強度もしくは範囲、または変換もしくは曝露動作の最中に加えられる磁場強度を指定する情報、様々なタイミング変数、例えば、磁場増分および磁場サイクル時間の他、変換/曝露の合計時間を指定する情報を含む。この入力に基づいて、制御ユニットは、選択された時間にわたって望ましい変換もしくは曝露の磁場強度を達成するために、システムにおける信号増幅および減衰構成要素に適用される設定を計算する。
【0152】
システム内の記憶された時間領域信号源は、554で示されている。時間領域信号がCDもしくは他の記憶媒体に記録される場合、この信号源は、媒体およびメディアプレーヤーを含み、図示されているように、制御ユニットによって作動される。あるいは、信号源が、無線受信機またはインターネット接続によって遠隔ステーションから送信される場合は、この信号源は、遠隔信号源および受信機または接続を有する。この信号源は、同様にユニット552の制御下の従来の前置増幅器/増幅器556に接続されており、前置増幅器/増幅器556は、同様にユニット550の制御下の減衰器558に増幅された信号電圧を出力する。図8Bを参照して以下を読むと分かるように、減衰器の目的は、増幅器556からの信号電圧出力を信号電流出力に変換し、変換コイルへのこの出力電流を減衰させて、選択された範囲の磁場強度または選択された磁場を生成する。減衰器は、非常に低い磁場強度、例えば、1−5G〜10−8Gの範囲の磁場強度を有する選択された磁場を生成するように設定することができるが、生成可能な磁場強度の範囲は、これよりも遥かに大きい、例えば、1Gまたは10−8Gとしても良い。制御ボックス、増幅器/前置増幅器、および減衰器は、本明細書ではまとめて、信号源と電磁コイル装置との間の電子インターフェイスとも呼ぶ。
【0153】
一般的な一実施形態では、システムは、増幅器、前置増幅器、および減衰器に電圧および電流設定を供給して、約50の増分で約1G〜10−8Gの増分磁場を達成するためにユーザによって設定され、各増分の設定は、1〜5秒間維持され、システムは、ユーザが選択した変換期間、例えば、20分から数日間にわたって磁場強度の範囲を連続的に繰り返す。
【0154】
信号は、図示されているように、別個のチャネルを介して電磁コイル562および564に供給される。一実施形態では、Sony Model CDP CE375 CDプレーヤーが使用される。このプレーヤーのチャネル1は、Adcom Pre Amplifier Model GFP 750のCD入力1に接続される。チャネル2は、Adcom Pre Amplifier Model GFP 750のCD入力2に接続される。CDは、それぞれのチャネルからの同一の信号を再生するために記録される。あるいは、CDは、それぞれのチャネルからの異なる信号を再生するために記録され得る。ガウス性ホワイトノイズ源を、ホワイトノイズ変換制御として使用される信号源554の代わりとすることができる。本明細書では図示されていないが、システムは、状態、例えば、変換ステーション内の温度を監視するための様々なプローブを備えても良い。
【0155】
図8Aの減衰器558の実施形態の回路図は、図8Bに示されているように、電力増幅器572、例えば、National Semiconductor LM675 Power Operational Amplifierを含む。電力増幅器572は、広い帯域幅および低い入力オフセット電圧を供給し、その他の利点として、DCまたはAC用途に適している。電力増幅器572は、ピン1を介して入力電圧588に接続され、この入力電圧588は、直接、または入力を分割するように機能する1つ以上の抵抗器(582、584)を介してグランド580に接続されている。ピン2は、抵抗器600を介してグランドに接続されている。DC電源576、例えば、コンデンサ578および594と並列である、安定化されフィルタリングされた24ボルトDC電源は、ピン3およびピン5で電力増幅器572に接続されている。増幅器の出力(ピン4)は、インダクタ598、例えば、8.5Ωインダクタに接続されている。
【0156】
このような回路の典型的な減衰は、約90dBである。しかしながら、小さい抵抗器、例えば、400Ω抵抗器596を介したグランド600へのインダクタ150の接続は、さらなる減衰をもたらし、システムが、低い出力電流を生成することが可能となり、さらに他の利点ももたらされる。システムは、抵抗器596の値を変化させることによって減衰を変動させることができ、これにより出力電流が変動する。加えて、システムは、インダクタ598とグランド600との間に直列に低域通過RCフィルタを配置して、回路内で自然発生するあらゆる音によって生じる自励発振を排除または最小限にすることができる。
【0157】
より一般的には、信号電圧ではなく信号電流によって生成され、かつ/または1G〜10−8Gの選択された範囲内、例えば、10−3〜10−8G、または10−6〜10−8Gを生成すると計算された、増分される磁場による変換/曝露は、信号電圧によって生成される磁場および/または一定の磁場強度および/または約10−5Gを超える磁場強度を利用する従来の方法と比較して改善された変換/曝露法である。
【0158】
図8Aの変換/曝露システム548の動作特性が、図8Cに例示されており、この図では、制御ユニット、信号源、前置増幅器および増幅器、および減衰器は、まとまってシステムの電子インターフェイスを構成し、点線のボックス550で示されている。この図の変換システム560は、例えば、図7のコイル構造、またはその変更形態とすることができる。この図から分かるように、制御ユニットは、552でユーザ入力によって、指定された磁場強度または変換コイルで望ましい増分される磁場強度範囲に初期設定され(ボックス602)、望ましい磁場増分およびサイクル時間もユーザによって設定される(ボックス604)。例えば、ユーザは、一定の磁場強度、典型的には、1G〜10−8G、例えば、10−5、10−6、10−7、または10−8G、または1G〜10−8Gの磁場強度の増分範囲、例えば、1G〜10−8Gまたは10−5〜10−8Gの範囲を指定することができる。一定の磁場強度の場合、ユーザは、望ましい「オン」および「オフ」期間ならびに変換の合計期間、例えば、1 24時間の変換合計期間にわたって5分の「オン」と1分の「オフ」を入力することができる。増分する磁場強度範囲が、初期に選択される場合、ユーザは、磁場強度増分および合計増分時間、例えば、10分の合計サイクル時間に対して、それぞれ12秒の増分時間で、1G〜10−8Gにわたって50の等しい増分をさらに指定する。増分される磁場強度の操作では、制御ユニットは、好ましくは、標的が各サイクル内で増分される磁気パルスの離散パルスに曝露されるように、ぞれぞれの増分される「オン」間隔の間に短い「オフ」間隔、例えば、1ミリ秒を入れるように動作する。
【0159】
1つの好ましい変換コイルの構成は、変換/曝露ステーションの両側に並置された2つの電磁コイルからなっている。加えられる時間領域信号の電流レベルの関数であるコイル環境内の磁場強度は、公知の方法、例えば、図のボックス606に示され、Applications of Maxwell’s Equations,Cochran,J.F.およびHeinrich,B.、Dec,2004の122〜142頁に詳述されている方法によって計算することができる。この計算は、制御ユニットで、606で行われる。好ましい一実施形態では、公称10−8Gで始まり、一連の1〜99ステップで、1Gの公称最大磁場強度に達し、この時点で同じ範囲にわたる磁場パルスの新しいサイクルが始まる、計算された磁場強度を生成するために、コイルに加えられる信号電流は、磁場強度の0.5〜99.5dBの増分で1〜5秒ごとに増分される。連続した等しい強度の磁場パルス間の間隔は、好ましくは、1〜100秒の範囲である。
【0160】
変換/曝露パラメータ、すなわちシステムが曝露される、選択される変換/曝露条件は、(i)加えられる時間領域信号の電流、(ii)加えられる信号の期間、および(iii)加えられる信号のスケジューリングである。加えられる電流は、僅かにゼロよりも大きい値から最大約1000mAの範囲とすることができる。変換の合計時間は、2、3分から最大数日間とすることができる。
【0161】
図8Cに608で示されているボックスは、図8Aに示されているように、信号源、前置増幅器、増幅器、および減衰器を含む。これらの構成要素は、制御ユニットに記憶される望ましい電流、電流増分、サイクル、および合計変換時間を供給するために、制御ユニットによって作動され、制御される。減衰器からの電流出力は、図示されているように変換コイル(複数可)560に送らされ、変換/曝露ステーションで望ましい磁場強度を生成する。変換事象の過程を、標的系の光学(または他の測定可能な)変化における変化によって監視することができる場合、この情報は、制御ユニットの構成要素610に送られ、この情報を、構成要素606へのフィードバックによって変換条件を制御するために使用することができ、かつ/または変換/曝露条件を手動で制御するためにユーザに表示することができる。
【0162】
(V.パクリタキセル信号から生成される水性医薬組成物の調製および作用物質特異的活性)
一態様では、本発明は、水性培地が検出可能なパクリタキセル活性を獲得するまで、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、または他の癌細胞抑制化合物を含まない水性培地を、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号で処理することによって調製された水性抗腫瘍組成物を含む。作用物質特異的活性は、(i)標準的な培養条件下で、24時間の培養期間にわたって、この組成物が培養中のU87 MGヒト膠芽腫細胞に添加されたときにこのU87細胞の増殖を阻害し、かつ/または(ii)このような腫瘍を有する被験体に投与されたときにパクリタキセル応答性腫瘍の増殖を阻害する、この組成物の能力によって証明される。このセクションは、水性培地が細胞培養培地である組成物、および水性培地が超純水である組成物などの例示的な組成物の調製、ならびに組成物の作用物質特異的活性について記載する。
【0163】
(A.パクリタキセル信号組成物の調製)
DME培地(4,500mgs/lのD−グルコースが添加されたInvitrogen SKU#10313−021(Carlsbad,CA)培地)を35mlガラスバイアルに入れ、室温にした。この培地を、Vortexミキサー(VWR,Westchester,PA)を最大の設定にして20秒間ボルテックスし、磁場発生用のソレノイドコイルを有する変換/曝露装置のサンプルステーションに配置した。
【0164】
培地を含むバイアルを、3つの選択された範囲:1G〜10−1G(範囲1);10−2G〜10−3G(範囲2)、および10−5G〜10−6G(範囲3)の1つの範囲で磁場強度を生成すると計算された電流レベルで、20分間、上記のタキサンM2(3)信号に曝露させた。それぞれの選択された範囲では、タキサンM2(3)信号は、それぞれ1秒で0.5dBの増分で、上部から底部、そして底部から上部へと、2つの磁場強度の両極端の間で交互した。したがって、例えば、範囲1では、初期減衰器の設定は、1Gの磁場強度を生成し、次いで、1秒/ステップで、0.5dBステップで減少し、低い10−1Gの範囲に達すると、サイクルが繰り返され、20分間にわたって行われるように計算された。
【0165】
20分の曝露期間の終了時に、バイアルをコイルステーションから取り外して、同じ曝露前ボルテックス条件下で20秒間、再びボルテックスした。曝露された培地を、後述する細胞培養培地研究で即座に使用した。
【0166】
タキサン信号水性培地は、超純水(2倍希釈)を細胞培養培地の代わりに使用して、上で指定した3つの範囲のそれぞれの範囲内で、20分のタキサン信号の曝露の前および後の20秒のボルテックスステップを含む同一の方法によって調製した。
【0167】
(B.パクリタキセル信号細胞培養組成物中でのヒト膠芽腫細胞の増殖の阻害)
U87 MGヒト膠芽腫細胞は、American Type Culture Collection(ATCC,Rockville MD,USA)から購入した。これらの細胞を、4,500mg/lのD−グルコースとPen/Strepp/Gluおよび非必須アミノ酸が添加された完全DMEM増殖培地(Invitrogen)で増殖させた。これらの細胞を、細胞培養フラスコ(75ml)に播種し、5%CO2の十分に加湿された大気中で37℃で培養した。細胞がコンフルエンスに達したら、後述するように増殖させ、かつ/または保存した。
【0168】
増殖のために、培地を取り出し、付着した細胞を、PBSで2回洗浄し、次いで細胞が脱離するまでトリプシンで処置した。新鮮な培地を添加し、細胞懸濁物を、新しい培養フラスコに入れた。保存のために、該細胞を5%DMSOが添加された95%完全増殖培地で凍結させた。
【0169】
信号の変換のために、約100μlの2,500のU−87細胞を、96ウェルマイクロタイタープレートの6つのウェルのそれぞれに添加し、37℃で一晩定着させた。ウェルの培地を除去して、100μlの新鮮な培地(6ウェル)、または選択させた磁場設定でタキサン信号に曝露された新鮮な培地と交換した。次いで、プレートを、5%CO2の十分に加湿された大気中で、37℃でインキュベートした。
【0170】
新鮮な培地の添加から24時間後に、10μlのAlamarBlue死細胞検出試薬(viability dye)を、5つの群のそれぞれの6つのウェルに添加し、生細胞カウントの指標として全蛍光を測定した。生細胞カウントを、細胞増殖阻害の指標として、未処置ウェルの平均細胞数に対する細胞のパーセンテージに変換した。図10に示されている研究結果は、24時間後に、タキサン信号が曝露された培地中の細胞増殖が、約20%の阻害の範囲で、有意な細胞増殖阻害効果を受けたことを示している。
【0171】
(C.パクリタキセル信号超純水組成物中でのマウスの膠芽腫の処置)
タキサン信号に曝露された水の動物モデルの膠芽腫を抑制する能力を調べた。この研究では、8匹のマウスの9つの群のそれぞれに、右側腹部に7.355×106のU−87膠芽腫細胞を注入し、動物に細胞を接種してから1日後、または腫瘍が75〜100mm3に達してから、様々な方式の処置を開始した。処置群を以下の表1に示す。
【0172】
パクリタキセルをまず、CremaphorELとエタノールの1:1(v/v)の混合物中に溶解し、4℃で保存した。1.5mg/mlの濃度にする薬物の最終希釈を、使用の直前に0.9%NaClで行った。群3および群4では、パクリタキセルを、動物の体重1kg当たり15mgの用量で5日連続して尾静脈に静脈投与した。各動物に実際に投与された量は、上記のパクリタキセル製剤約0.2mlであった。
【0173】
群5および群6の動物には、範囲1の磁場で、セクションVIIで記載されたように調製された、タキサン信号に曝露された水20ml/kg(または約0.5ml)を投与した。曝露された水組成物を、腫瘍細胞を動物に接種してから1日目(群5)、または腫瘍の体積が75〜100mm3に達してから(群6)、調製の直後に強制経口投与した。群7の動物は、腫瘍を有していなかったが、M2(3)水で処置した。群8および群9の動物はそれぞれ、群5および群6の動物と同様に処置したが、動物に投与した曝露水は、超純水をホワイトノイズ信号に曝露することによって調製した点は異なる。投与は、26日目までの残りの研究期間の間、1日1回行った。
【0174】
全ての群に対して、腫瘍体積をキャリパー連続測定により1日おきに測定して腫瘍の幅および長さを決定し、式:腫瘍体積=(長さ×幅2)/2から腫瘍の体積を概算した。
【0175】
表1.処置群
【0176】
【表1】
ここで、研究の結果を考察する。図11は、未処置動物群(群1、X、細い線);ホワイトノイズ水で処置した動物(群8および群9、X、太い線);パクリタキセルビヒクルで処置した動物(群2、三角形、細い線)、パクリタキセルで処置した動物(群3および群4、三角形、太い線);およびタキサン水で処置した動物(群5および群6、四角形、太い線)の腫瘍体積の24日間にわたるプロットである。パクリタキセルで観察された結果と同様に、研究期間の腫瘍体積の増加は、未処置群(約650mm3)では、タキサン信号に曝露された水で処置した動物の2倍以上であった。
【0177】
これらの研究は、予備的ではあるが、細胞培養培地および超純水の両方を含む水性培地が作用物質特異的信号の影響を受け得ることを実証している上記の細胞培養の研究に一致しているため、培地自体が、たとえ信号が除去された後でも信号に類似した効果をもたらすことができる。
【0178】
(VI.オリゴヌクレオチドから得られる治療用信号および組成物)
別の態様では、本発明は、オリゴヌクレオチドを含まない水性培地を、この水性培地が治療用オリゴヌクレオチドに関連した検出可能な活性を獲得するまで、治療用オリゴヌクレオチドから生じた低周波数時間領域信号で処理することによって調製される水性組成物を含む。この信号および組成物が得られる例示的な治療用オリゴヌクレオチドには、GAPDHアンチセンスRNAまたはPCSK9アンチセンスRNAが含まれる。オリゴヌクレオチド特異的信号を生成する方法および水性組成物を調製する方法、ならびに4つの異なる組成物の作用物質特異的活性の実証が、以下のサブセクションAおよびBに示されている。
【0179】
(A.GAPDHアンチセンスRNA)
腫瘍細胞は、解糖速度の増加を特徴的に示し、一部の癌では、この増加は、高レベルのグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に起因する。例えば、GAPDH遺伝子発現のレベルは、通常の頸部組織と比較して、3つの子宮頸癌細胞系(HeLa、CUMC−3、およびCUMC−6)に大幅に増加していることが報告されている(Kim,J.W.ら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.1999 Dec;9(6):507−13)。この研究はまた、GAPDHアンチセンスが、細胞増殖の低下をもたらし、これと同時にコロニー形成効率が低下したことを示した。培養癌細胞に対するGAPDHアンチセンスのこの効果は、DNA断片化の増大を含むアポトーシスプロセスに関連していた。
【0180】
(GAPDHアンチセンスRNAシグナルの生成および組成物の調製)
配列番号1で示されている配列を有するGAPDHアンチセンスRNA分子を水に溶解して10−15μMの最終濃度にして、この溶液を信号記録の直前に20秒間、ボルテックスした。信号記録は、上のセクションIIIに記載されているように行った。非標的配列(配列番号2)を有するコントロールGAPDHアンチセンスRNAを同様に調製し、その信号を記録した。高スコア時間領域信号を使用して、パクリタキセルの研究に関する上のセクションVIIAに記載されているように培養培地を処置した。
【0181】
(方法および結果)
培養の48時間後に、アンチセンス信号処理培養培地で増殖中の細胞が、培養培地を非標的配列信号で処理することによって調製された培養培地でのコントロール細胞増殖の100%のレベルに対して78%のGAPDH活性を示した。
【0182】
(B.PCSK9アンチセンスRNA)
前駆タンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)の機能喪失突然変異は、肝細胞膜上のLDL−Rの密度を増加させ、LDLの血漿からの除去速度を速め、かつLDLのレベルを低下させることが分かっている。したがって、PCSK9合成の阻害またはPCSK9のLDL−Rへの結合の阻害をもたらす戦略は、血漿コレステロールレベルを低下させるはずであると期待され、この効果が、PCSK9に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびPCSK9に対するポリクローナル抗体で実証された。
【0183】
(PCSK9アンチセンスRNAシグナルの生成および組成物の調製)
配列番号3によって示される配列を有するPCSK9アンチセンスRNA分子を水に溶解して10−15μMの最終濃度にして、この溶液を信号記録の直前に20秒間、ボルテックスした。コントロール、非標的配列は、上の配列番号2を有する。信号記録は、上のセクションIIIに記載されているように行った。高スコア時間領域信号を使用して、信号−水組成物を調製した。
【0184】
(方法および結果)
12〜13週齢のC57BL/6Jマウスを、それぞれ5匹の2つの群:2倍希釈水が与えられたコントロール群および信号活性化水が与えられた処置群に分けた。投与は、時間0と12時間後に0.5mlの強制経口投与によって行った。24時間後に、動物を屠殺し、脂質化学検査のために血液を採取し、標準的な方法にしたがって肝pCSK9 mRNAについてアッセイするために肝臓を取り出した。
【0185】
図12Aに示されているように、コントロール(100%)に対して表されるLDLcのレベルは、1日目に64%に低下し、5匹のコントロール動物および5匹の処置動物についての個々の値は、図12Bに示されている。HDLcのレベルは、図12Cに示されているように1日目以降、実質的に一定に維持された。トリグリセリドのレベルは、図12Dの個々のコントロール動物および処置動物に見られるように、全体的な低下を示した。pCSK9 mRNAの劇的なノックダウン(約90%)が、数匹の動物で観察される一方、殆どノックダウン効果を示さない動物もいた。
【0186】
(VII.医薬組成物を調製して、その活性を確認するシステム)
本発明の一部を構成する他のものは、水性組成物を哺乳動物被験体に薬学的有効量投与したときに、この被験体に対して作用物質特異的な薬学的効果をもたらすことを目的とする該水性組成物を調製するシステムであり、例示的な1つのシステムが、図13に730で示されており、このシステムは、選択された電流レベルで薬物誘導時間領域信号を出力する電子ユニット732、および本発明の薬物信号組成物を調製するために水性培地を活性化させ、この組成物の活性を試験するための活性化ユニット734を備えている。
【0187】
Voyager(商標)ユニットと呼ばれるユニット732は、図8A〜図8Cを参照して上記した制御ユニット550と実質的に同じ構成要素を備え、その中には、ディスプレイ736、ユーザ入力用のキー738、ならびに活性化ユニットで選択された磁場強度の磁場を生成するように計算された電流レベルを有する信号出力に低周波数時間領域信号を変換する回路およびソフトウエアが含まれる。このユニットには、複数のカードリーダー、例えば、それぞれが適切な記憶媒体を有する薬物信号カード742を受け取るリーダー740が含まれ、この記憶媒体には、上で詳述されたように生成され選択された、選択された薬物低周波数時間領域信号が記憶されている。例えば、カード740の1つは、上記のin vitroおよびin vivo研究で利用されたようなパクリタキセル時間領域信号を含み得る。別の一般的な実施形態では、薬物信号カードおよびカードリーダーは、信号記憶CD−ROMおよび1つ以上の内部CD−ROMプレーヤーによって、または要求された薬物誘導低周波数時間領域信号を、例えば、電話またはインターネット回線を介して受け取るのに適したトランシーバによって置き換えられる。
【0188】
Voyager制御ユニットの出力は、遮蔽線744を介して活性化ユニット734に接続されており、遮蔽線744は、活性化ユニット内の活性化ステーション502の内部に望ましい磁場を生成するために使用される導線コイル510に接続された導体512、514にユニットを接続している。このステーションは、水性培地、例えば、本発明の薬物信号組成物に活性化される超純水またはリポソーム懸濁物を含む容器またはバイアルを受け取れる寸法である。コイル巻線は、図7を参照して上記した巻線と同様であるが、内部にサンプルが保持される単一ソレノイドコイルとしても良い。コイル(複数可)は、活性化ステーション内に均一の磁場を生成するようにデザインされている。システムは、薬物信号への曝露の前および/または後で薬物信号内容物を撹拌するための卓上型ボルテックス装置を追加的に備えても良い。
【0189】
このシステムを使用すると、薬剤師または医師は、要求されると、1サンプル当たり約10〜30分未満の時間で新しい薬物信号組成物を容易に調製することができる。例えば、複数の患者の処置で大量に必要な場合は、システムは、1回量の組成物をバッチ形式で調製できる複数の曝露ステーションを備えても良いし、または複数回量に適した量の組成物を調製するように大きくしても良い。
【0190】
組成物が調製されたら、その薬物等価活性を、分光分析手段、例えば、それぞれが構造水に関連したスペクトル特性を検出できる紫外線分光法、フーリエ変換(FT)赤外線分光法、および/またはラマン分光法によって確認することができる(Rao,M.L.ら、Current Science、98(11):1500 June,2010)。このアプローチでは、様々な既知の活性を有する一連の信号成分のそれぞれのUV、赤外線、および/またはラマンスペクトルが、既知のサンプルスペクトルに対して比較できる標準として役立つように事前に生成される。あるいは、装置は、水構造における変化を検出できる原子間力顕微鏡(AFM)を備えることもできる。分光計は、光源504と光検出器506によって図面に模式的に示されている。
【0191】
UV−Vis(可視)分光法は、例えば、Chai,B.ら、J.Phys Chem A.2008,112:2242−2247に記載されている方法にしたがって、UV分光計で行うことができる。この文献に記載されているように、吸収スペクトル測定を、単一ビームHewlett−Packard(Model 8452A)ダイオードアレイ分光光度計で行う。内寸で長さが12.5mm、幅が2mm、そして高さが45mmのUV水晶微小方形キュベット(Sigma Aldrich)を使用する。キュベットの送信域は、17nm〜2.7μmである。キュベットの光路長は2mmである。表示されるスペクトルは、少なくとも10回のスキャンの平均である。
【0192】
IR分光法は、例えば、Roy,R.、Materials Res.Innov、2005,9(4):1433およびRao,M.ら、Materials Letters、2008,62(10−11):1487−1490に記載されているように、従来の手段によって行うことができる。IR分光計は、例えば、Amrein,A.ら、J.Phys Chem、1988 92(19): 5455−5466に記載されているように、フーリエ変換赤外線吸収(FTIR)分光法を行うために備えることができる。ラマン分光法は、公知のラマン分光法器具を用いて行われ、別のラマンスペクトルを、例えば、785nmと532nmで得ることができる。
【0193】
図14は、システム内で調製される水性組成物の作用物質特異的活性を決定または確認するためにシステムで行われるステップのフロー図である。この図に762で示されているように、システムは、スペクトル、例えば、UV、UV−Vis、IR、またはラマン、既知の作用物質特異的活性を有する水性組成物について事前に記録されたスペクトルのファイルを備えている。したがって、例えば、このファイルは、パクリタキセル信号に対して様々な曝露条件下で生産された水性組成物について得られ、かつ、例えば、培養細胞系中でのパクリタキセル活性について試験された多数のスペクトルを含み得る。したがって、それぞれのスペクトルは、所与の試験された活性に一致する。
【0194】
システムで新たに生成された試験サンプルのスペクトルを記録したら、SX事前記録スペクトルのそれぞれを、766で連続的に回収し、764で試験スペクトルに対して整合させる。この整合は、従来の曲線製合法によって、例えば、差スペクトルを生成して、この差スペクトルの1つ以上の特徴、例えば、選択された周波数のピーク高さの比を定量することによって行うことができる。764で、事前記録されたスペクトルSXに最適な整合が確認されたら、最適なスペクトルに一致する活性が、信号印加組成物の活性化を決定または確認するためにユーザに表示される。
【0195】
より一般的には、本発明は、(a)(i)紫外線分光法、(ii)赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法の1つによって本発明の組成物のスペクトルを測定し、そして(b)測定したスペクトルが、そのスペクトル成分および振幅が既知の癌細胞阻害活性を有するスペクトルに類似しているかを決定することによって、本発明の信号組成物の作用物質特異的活性を確認する方法を包含する。
【0196】
本発明は、水性組成物が哺乳動物被験体に薬学的有効量投与されたときに、この被験体に作用物質特異的な薬学的効果をもたらすことを目的とする該水性組成物を調製するシステムをさらに提供する。このシステムは、(a)水性培地を作用物質特異的特性を有する水性組成物に変換することができる条件下で、該水性培地を作用物質特異的信号で処理するための装置;および(b)(i)紫外線分光法、(ii)フーリエ変換赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法の1つによってこの組成物のスペクトルを生成し、これにより、測定したスペクトルが、そのスペクトル成分および振幅が既知の作用物質特異的効果を有するスペクトルに類似しているかを確認できる分光器を備えている。
【0197】
システムは、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地の1つを調製するために水性培地を処理するための装置をさらに備えても良い。例えば、この装置は、組成物を機械的に破壊するためのボルテックス装置とすることができる。
【0198】
本発明の特定の実施形態および例は、例示目的で上記したが、当業者が理解できるような様々な等価の変更形態も本発明の範囲内で可能である。具体的には、本明細書に記載される変換方法にしたがって、化学系、生化学系、または生物系を作用物質特異的時間領域信号に曝露することによって該系に信号特異的効果をもたらす方法を、該系の標的成分に直接作用させても良いし、または、たとえ信号が停止された後でも、標的系の水性培地が信号特異的効果を生成するように変更される機構によって間接的に作用させても良いし、あるいはこれらの2つ機構を組み合わせても良いことを理解できよう。変更された状態機構の重要な意味は、対象の変換信号への比較的短時間の曝露が、例えば、1〜24時間にわたって長期の薬物効果をもたらすことができることである。
【0199】
本明細書に記載された本発明の教示は、必ずしも上記のシステムに適用しなければならないわけではなく、他のシステムにも適用することができる。上記の様々な実施形態の要素および作用を組み合わせてさらなる実施形態を提供することもできる。
【0200】
添付の出願書類に列記され得る全てを含む、上記の特許、出願、および他の参考文献はいずれも、参照により本明細書に組み入れられるものとする。必要に応じて、本発明の態様を変更して、上記の様々な参考文献のシステム、機能、および概念を利用して、本発明のなおさらなる実施形態を提供することもできる。
【0201】
配列表
配列番号1:GAPDHを標的とするアンチセンス鎖
5’−AAA GUU GUC AUG GAU GAC CTT−3’
配列番号2:非標的コントロールのアンチセンス鎖
5’−GGG UUG CGC UUA CUU ACG ATT−3’
配列番号3:PCSK9を標的とするアンチセンス鎖
5’−UCC GAA UAA ACU CCA GGC CTA−3’
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年12月17日に出願された米国仮特許出願第61/287,559号の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、化学系、生化学系、または生物系に対する作用物質の効果を模倣するのに有効な水性組成物、ならびにこの組成物を作製し、使用し、かつ試験するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
化学および生化学の分野で受け入れられている1つのパラダイムは、化学または生化学エフェクタ作用物質(effector agent)、例えば分子が、イオン力、電荷力、分散力などのさまざまな物理化学的な力を介して、あるいは共有結合または電荷誘導結合の切断または形成を介して、標的生物系と相互作用するというものである。これらの力は、エフェクタ作用物質の存在が標的生物系の状態または応答に影響を与える電界効果、例えば、静電気および磁場効果を伴うと思われる。
【0004】
このパラダイムによって生じる1つの問題は、エフェクタと標的との間の相互作用が、エフェクタ自体を必要とするか否か、あるいは少なくとも一部の極めて重要なエフェクタ−標的相互作用が、エフェクタ分子に関連した電界効果をこのエフェクタ分子からの信号で刺激することによって達成することができるか否かである。エフェクタ−分子シグナルと生物学的標的との間の相互作用を調べるために行われた研究が、参照により本明細書に組み入れられる、共有の特許文献1および特許文献2に報告されている。これらの出願には、該出願に詳述されている装置および方法にしたがった多数の生物学的に活性な化合物(エフェクタ)について記録された低周波数時間領域信号が、生物学的標的系での化合物特異的効果の誘導に使用された研究が記載されている。
【0005】
2006年7月13日に公開された特許文献1に、複数の研究が開示され、これらの研究では、(a)L(+)アラビノースで記録された低周波数時間領域信号が、図30C〜図30Fを参照して、この出願の47〜50頁に説明されているように、araC−PBAD細菌オペロンを誘導することが示された;(b)公知の除草剤であるグリホサート(glyphosphate)中の活性成分で記録された低周波数信号が、図31、図32A、および図32Bを参照して、この出願の50〜51頁に説明されているように、豆苗の茎の成長を実質的に阻害することが示された;(c)ジベレリン酸、植物ホルモンで記録された低周波数信号が、図33を参照して、この出願の51〜53頁で説明されているように、生きている豆苗の茎の平均長さを有意に増大させることが示された;および(d)フェプロペプチン、プロテアソーム阻害剤で記録された低周波数信号が、図34を参照してこの出願の53〜54頁で説明されているように、20Sプロテオソーム酵素(proteosome enzyme)の活性を低下させることが示された。
【0006】
2008年5月9日公開の特許文献2に、複数の研究が詳述され、これらの研究では、この出願に開示されている方法にしたがって生成された抗腫瘍化合物パクリタキセルの低周波数時間領域信号が、この信号によって生成された電磁場に数週間にわたって動物が曝露されたときに、膠芽腫細胞が注入された動物で腫瘍の増殖を減少させる効果があることが示された。
【0007】
上記の研究の発見の中には、生化学的または生物学的標的系を変換する(影響を与える)作用物質特異的時間領域信号の能力を、多数の戦略によって最適化できることが含まれる。これらの戦略の1つでは、1つ以上のスコアリングアルゴリズムによって記録された時間領域信号をスコアリングして、最も高いスペクトル情報を含む信号を識別する。このスコアリングを使用して、最も強い変換の効果をもたらす可能性が高い記録された時間領域信号をスクリーニングする。この戦略の改善点は、記録中に様々なレベルのホワイトノイズまたはDCオフセットを注入して、最も高いスペクトル情報に対して得られる信号をスコアリングすることによって、多数の様々な磁気−信号注入条件のそれぞれで時間領域信号を記録することである。これらの戦略は、上記の両方のPCT出願に詳述されている。
【0008】
該’654出願(特許文献2)に開示されている第3の戦略は、特に、記録された時間領域信号が、動物系の変換、例えば、被験体の疾患状態の処置を目的とする適用例に対してデザインされている。この戦略では、動物系の少なくとも一部の極めて重要な生物学的応答要素を含むin vitro標的系を効率的に変換する能力について時間領域信号をスクリーニングする。この戦略は、多数の候補信号を、実際の変換効果について容易にスクリーニングして、最適な変換信号を識別できるという利点を有する。この戦略は、最も高いスコアリング信号をin vitro変換スクリーニングの候補として使用して、上記の信号スコアリング法の一方または両方と組み合わせるのが好ましい。
【0009】
多数の研究グループが、それぞれ別々に、界面で生成される構造水を含む、純水サンプルおよび溶質を含む水サンプル中のクラスター水の構造および安定性について報告した。例えば、ペンシルベニア州立大学に最近まで所属していたDr.Rustum Roy、(rustumroy.com);ワシントン大学のDr.Gerald Pollack(www.depts.washington.edu/bioe/people/core/pollack.html));ロンドン・サウスバンク大学のDr.Martin Chaplin(1.lsbu.ac.uk/wate);およびDr.Emilio Del Guidice(.isi.it/progetti/workshop−complexity09/pres_DelGiudice.pdf)のウエブサイトに掲載されている研究を参照されたい。これらのグループの発見の中には、水が電磁放射線と相互作用して、多数の物理的器具および分光器によって検出できる安定な巨視的構造を生成することがある;(例えば、del Guidice、E.ら、Physical Review、74:022105−1(2006);Pollack,G.、uwtv.org/programs/displayevent.aspx?rID=22222;Chai,B.ら、J.Phys.Chem B、2009、113:13953−13958;Rao,M.L.ら、Current Science Research Communications、98(1):1500、June,2010を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2006/073491号
【特許文献2】国際公開第2008/063654A2号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
一態様では、本発明は、水性抗腫瘍組成物であって、(i)この組成物が培養中のヒト膠芽腫細胞に添加され、標準的な培養条件下で24時間の培養期間にわたって培養されたときに、このヒト膠芽腫細胞の成長を阻害する該組成物の能力、および/または(ii)パクリタキセル応答性腫瘍を有する被験体に投与されたときにこのような腫瘍の増殖を阻害する該組成物の能力によって証明される、検出可能なパクリタキセル活性を水性培地が獲得するまで、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、または他の癌細胞阻害化合物を含まない該水性培地を、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号で処理することによって生成される、水性抗腫瘍組成物を含む。
【0012】
この組成物中の水性培地は、機械的に破壊された水性培地、気泡を含む界面水性培地、または機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地とすることができる。
【0013】
この組成物は、1〜100μMのパクリタキセル濃度の単位で表される活性を有し得る。この組成物の抗腫瘍活性は、信号に関連した水構造を破壊する処理、例えば、該組成物を70℃以上の温度に加熱することによって、または該組成物を氷点下に冷却することによって無効にすることができる。この組成物は、0.5〜10容積%のエタノールを含み得る。
【0014】
また、上記の組成物を形成する方法であって、
(a)電磁コイル装置のサンプル領域内に水性培地を配置するステップと、
(b)培養中の腫瘍細胞、例えば、膠芽腫細胞の増殖の阻害、またはin vivoでの腫瘍、例えば、動物モデルに移植された膠芽腫細胞の増殖の阻害に該水性培地を有効にするのに十分な時間にわたって、1G(ガウス)〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号を該装置に供給することによって生成される磁場に該水性培地を曝露するステップと、を含む、方法も開示される。
【0015】
この方法のステップ(b)に使用される低周波数時間領域信号は、
(i)磁気シールドおよび電磁シールドの両方を有するサンプル容器に、パクリタキセルまたはその類似体の水性サンプルを配置するステップであって、前記サンプルが、低周波数分子信号の信号源として機能し;前記磁気シールドが、極低温容器の外部にある、ステップと、
(ii)前記極低温容器内のサンプル源放射線から構成される1つ以上の時間領域信号を記録するステップと、
(iii)パクリタキセル応答系が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に前記信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、前記パクリタキセル応答系でパクリタキセルの効果を模倣できる信号を、ステップ(ii)で記録された前記信号から識別するステップと、によって生成することができる。
【0016】
このサンプル中のパクリタキセルまたはその類似体の濃度が10−11〜10−19Mとすることができ、装置のサンプル領域内に配置される前に、サンプルを処理して:(i)機械的に破壊されたサンプル培地、(ii)気泡を含む界面サンプル培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面サンプル培地、または(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物の1つを形成することができる。
【0017】
この方法は、ステップ(b)の前および/または後で、水性培地を処理して:(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、または(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物の1つを形成するステップをさらに含み得る。
【0018】
また、上記の水性組成物の癌細胞阻害活性を確認する方法も開示される。1つの例示的な方法では、水性培地が信号に曝露されたときに生成される水構造を検出できる分光分析によって組成物を調べ、サンプルで観察されるスペクトル特性、例えば、スペクトルのピーク周波数および振幅が、同様に調製された水性組成物のピーク周波数および振幅に類似しているかを確認する。水中の凝縮領域または電磁場誘導領域の特徴付けに使用されている方法は、(i)紫外線(UV)または紫外線−可視光(UV−Vis)吸収分光法(例えば、Chai,B.ら、J.Phys Chem A.2009,112:2242−2247を参照されたい)、(ii)フーリエ変換赤外線(FTIR)吸収分光法(例えば、Amrein,A.ら、J.Phys Chem、1988 92(19):5455−5466を参照されたい)含むIR分光法(例えば、Roy,R.、Materials Res.Innov、2005,9(4):1433およびRao,M.ら、Materials Letters、2008,62(10−11):1487−1490)、および(iii)ラマン分光法(例えば、前記のRoy)である。代替のアプローチでは、水性培地における水構造を、原子間力顕微鏡(AFM)によって分析し、既知の活性を有する水性組成物のAFMプロットと比較することができる。AFMによって水構造を分析する方法は、例えば、Michaelides,A.ら、Nature Mater.6,597(2007)およびPan,D.ら、Phys.Rev.Lett.101,155709(2008)に記載されている。
【0019】
より一般的な態様では、本発明は、組成物が作用物質応答性化学系または生物系に加えられたときに、このような系に作用物質特異的効果をもたらすことができる水性組成物を形成する方法を含む。この方法は、
(a)電磁コイル装置のサンプル領域内に水性培地を配置するステップと、
(b)作用物質応答系に対する1つ以上の作用物質特異的効果の模倣に該水性培地を有効にするのに十分な時間にわたって、1G(ガウス)〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、低周波数時間領域作用物質特異的信号を該装置に供給することによって生成される磁場に該水性培地を曝露するステップと、を含む。
【0020】
ステップ(b)で使用される低周波数時間領域信号は、
(i)磁気シールドおよび電磁シールドの両方を有するサンプル容器に作用物質の水性サンプルを配置するステップであって、該サンプルが、低周波数分子信号の信号源として機能し;該磁気シールドが、極低温容器の外部にある、ステップと、
(ii)該極低温容器内のサンプル源放射線から構成される1つ以上の時間領域信号を記録するステップと、
(iii)作用物質応答系が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に該信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、該作用物質応答系で該作用物質の効果を模倣できる信号を、ステップ(ii)で記録された信号から識別するステップと、によって生成される。
【0021】
サンプル中の作用物質の濃度は、10−10〜10−16μMとすることができ、サンプルは、装置のサンプル領域内に配置する前に、サンプルを処理して、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地を形成することができる。
【0022】
この方法は、ステップ(b)の前および/または後で、水性培地を処理して、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、または(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物の1つを調製するステップを含む。例えば、この方法は、ステップ(b)の前および/または後で、水性培地を機械的に撹拌して、機械的に破壊された水性培地を形成するステップをさらに含み得る。
【0023】
作用物質は、例えば、(i)パクリタキセル、(ii)パクリタキセルの類似体、または(iii)治療用オリゴヌクレオチド、例えば、GAPDHアンチセンスRNAまたはPCSK9アンチセンスRNAとすることができる。
【0024】
関連する態様では、本発明は、オリゴヌクレオチドを含まない水性培地を、この水性培地が治療用オリゴヌクレオチドに関連した検出可能な活性を獲得するまで、該治療用オリゴヌクレオチドから生じる低周波数時間領域信号で処理することによって生成される水性組成物を含む。処理信号が生じる治療用オリゴヌクレオチドは、例えば、GAPDHアンチセンスRNAまたはPCSK9アンチセンスRNAとすることができる。
【0025】
組成物中の水性培地は、機械的に破壊された水性培地、気泡を含む界面水性培地、または機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地とすることができる。
【0026】
組成物は、0.5〜10容量%のエタノールを含み得る。組成物の作用物質特異的活性は、(i)該組成物を70℃以上の温度に加熱することによって、または(ii)該組成物を氷点下に冷却することによって無効にすることができる。
【0027】
また、(a)水中の凝縮構造を検出できる分光分析によって組成物のスペクトルを生成するステップと、この生成したスペクトルが、そのスペクトル成分が既知の作用物質特異的効果を有する同様に調製された水性組成物のスペクトルに類似しているかを決定するステップと、によって上記の組成物の作用物質特異的活性を確認する方法も開示される。水中の凝縮領域の検出の特徴付けに使用されている方法は、(i)紫外線およびUV−Vis分光法、(ii)FTIR分光法含むIR分光法、および(iii)ラマン分光法であり、これらは全て上記されている。
【0028】
水性組成物が哺乳動物被験体に薬学的有効量投与されたときに、この被験体に作用物質特異的な薬学的効果をもたらすことを目的とする該水性組成物を生成するシステムがさらに開示される。このシステムは、(a)水性培地を作用物質特異的特性を有する水性組成物に変換するのに有効な条件下で、該水性培地を低周波数時間領域作用物質特異的信号で処理するためのコイル装置と、(b)該水性組成物のスペクトルを生成し、この水性組成物のスペクトル特性を、既知の活性を有する水性培地のスペクトル特性と比較することができる分光器と、を備えている。適切な分光器には、(i)UVまたはUV−Visスペクトロメータ、(ii)好ましくはフーリエ変換強化能力を備えたIRスペクトロメータ、および(iii)ラマンスペクトロメータが含まれる。
【0029】
一実施形態では、装置(a)は、(i)作用物質特異的時間領域信号源と、(ii)該装置の容器ホルダ内の水性培地を含む容器を受け取るための電磁変換コイル装置と、(iii)水性培地を該作用物質特異的組成物に変換するのに十分な期間にわたって、該装置のサンプル領域の容器内の水性培地で生成されると計算された源−信号電流、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を有する磁場を該装置に供給するための、該信号源と該装置との間の電子インターフェイスと、を備えている。
【0030】
別の実施形態では、装置(a)は、(i)作用物質の溶液または懸濁物を含む第1の容器を、未処理の水性培地を含む第2の容器に近接して配置できる信号伝達環境を内部で画定する電磁コイル、および(ii)7.83Hzの振動数を有する電流を該コイルに供給するための手段であって、所与の期間、例えば、18〜24時間にわたって、コイル環境内で2つの容器が近接した状態で該コイルにこのような電流を供給することで、第2の容器内の水性培地を、作用物質応答性化学系または生物系に作用物質特異的効果をもたらすことができる水性倍地に変換するのに有効である、手段を備えている。
【0031】
システムは、(i)例えば、ボルテックス装置によって機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地の1つを生成するために水性培地を処理する装置をさらに備えることができる。
【0032】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、本発明の以下の詳細な説明を添付の図面を参照しながら読めば、より十分に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号の生成に使用される信号記録装置の線図である。
【図2】図2は、図1の信号記録装置の構成要素を示す線図である。
【図3】図3は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号の生成で実行される信号の記録および処理のフロー図である。
【図4】図4は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号を処理するデータフローのハイレベルフロー図を示している。
【図5】図5は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号のスコアリングに使用されるヒストグラム−ビンアルゴリズムのフロー図である。
【図6】図6は、本発明に利用される作用物質特異的時間領域信号のスコアリングに使用できる別のアルゴリズムにしたがった電力スペクトル密度アルゴリズムのフロー図である。
【図7】図7は、時間領域信号を水性サンプルに加えて、一定時間にわたる、または選択されたエンドポイントでのサンプルの変化を分光光度的に記録するための変換/曝露装置を例示している。
【図8A】図8A〜図8Cは、本発明の組成物の調製に使用される一般的な変換/曝露システム(図8A)、このシステムに使用される減衰器の回路図(図8B)、およびこのシステムの動作特性(図8C)を例示している。
【図8B】図8A〜図8Cは、本発明の組成物の調製に使用される一般的な変換/曝露システム(図8A)、このシステムに使用される減衰器の回路図(図8B)、およびこのシステムの動作特性(図8C)を例示している。
【図8C】図8A〜図8Cは、本発明の組成物の調製に使用される一般的な変換/曝露システム(図8A)、このシステムに使用される減衰器の回路図(図8B)、およびこのシステムの動作特性(図8C)を例示している。
【図9】図9A〜図9Cは、フーリエサブトラクション(Fourier subtraction)によってノイズが除去された2つのパクリタキセル信号の周波数領域スペクトル(図9Aおよび図9B)、および周波数スペクトルの一部に対する作用物質特異的スペクトル特性を示す2つの信号の相互相関(図9C)を示している。
【図10】図10は、事前にパクリタキセル信号に曝露された培養倍地で24時間培養した後の培養下のU87グリオーマ細胞の生存度を示す棒グラフである。
【図11】図11は、26日間の処置期間にわたる動物におけるU87 MG細胞腫瘍の増殖に対する:未処置(X、細い線)、ホワイトノイズ(X、太い線);パクリタキセルビヒクルのみで処置(三角形、細い線)、パクリタキセルで処置(三角形、太い線);およびタキサン信号に曝露された水で処置(四角形)の効果をプロットしている。
【図12A】図12A〜図12Dは、pCSK9に対するアンチセンスからの信号への曝露によって調製された水性組成物の経口投与後の脂質プロフィールの変化を示す棒グラフである。
【図12B】図12A〜図12Dは、pCSK9に対するアンチセンスからの信号への曝露によって調製された水性組成物の経口投与後の脂質プロフィールの変化を示す棒グラフである。
【図12C】図12A〜図12Dは、pCSK9に対するアンチセンスからの信号への曝露によって調製された水性組成物の経口投与後の脂質プロフィールの変化を示す棒グラフである。
【図12D】図12A〜図12Dは、pCSK9に対するアンチセンスからの信号への曝露によって調製された水性組成物の経口投与後の脂質プロフィールの変化を示す棒グラフである。
【図13】図13は、本発明の態様にしたがって水性組成物を調製し、試験するためのシステムの模式図で示している。
【図14】図14は、本発明にしたがって調製される水性組成物の活性の確認に使用されるステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
以下の用語は、特段の記載がない限り以下の意味を有するものとする。
【0035】
「電磁シールド」は、例えば、標準的なファラデー電磁シールド、または電磁放射線の通過を減少させる他の方法を指す。
【0036】
「時間領域信号」または「時系列信号」は、時間と共に変化する一過性の信号特性を有する信号を指す。
【0037】
「低周波数」は、DC〜約50kHzの範囲の周波数を指す。低周波数時間流域信号は、0〜50kHzの範囲、典型的には0〜20kHzの範囲の主周波数成分を有する信号を指す。
【0038】
「サンプル源放射線」は、サンプルの分子運動から生じる磁束または電磁束放出、あるいは分子運動している2つ以上の分子間の短期または長期の相互作用によって生じる電磁場を指す。サンプル源放射線が、注入された磁場刺激の存在下で生成される場合は、サンプル源放射線は、「注入された磁場刺激に重ね合わせられたサンプル源放射線」とも呼ばれる。
【0039】
「刺激磁場」または「磁場刺激」は、(i)0〜1G(ガウス)のサンプルで選択された磁場を生成すると計算される電圧レベルで注入されるホワイトノイズ、(ii)0〜1Gのサンプルで選択された磁場を生成すると計算される電圧レベルで注入されるDCオフセット、および(iii)(i)と(ii)の組み合わせを含み得る多数の電磁信号の1つを、サンプルの周囲の磁気コイルに注入する(印加する)ことによって生成される磁場を指す。注入されたノイズおよび/またはオフセットは、様々な磁場条件での複数の時間領域信号を生成する際に、徐々にまたは体系的に変更することができる。
【0040】
変換コイルに時間領域信号を供給することによってサンプルで生成される「磁場強度」は、注入コイルの形状および巻数、コイルに印加される電流、ならびに注入コイルとサンプルとの間の距離が分かっている既知の電磁関係を用いて、後述する既知の方法にしたがって容易に計算することができる。
【0041】
「選択された刺激磁場条件」は、ホワイトノイズまたはDCオフセット信号に印加される選択された電圧、あるいは加えられる掃引刺激磁場の選択された掃引範囲、掃引周波数、および電圧を指す。
【0042】
「ホワイトノイズ」は、ランダムノイズまたは同時多重周波数を有する信号、例えば、ホワイト・ランダム・ノイズまたは決定論的ノイズを意味する。「ガウス性ホワイトノイズ」は、ガウス出力分布を有するホワイトノイズを意味する。「定常ガウス性ホワイトノイズ」は、予測可能な未来成分(future component)を有していないランダムガウス性ホワイトノイズを意味する。「構造ノイズ」は、エネルギーをスペクトルの1つの領域から別の領域に移動させる対数特性を有し得るホワイトノイズであるか、または構造ノイズは、振幅を一定に維持したままランダム時間要素を提供するようにデザインすることができる。これらの2つは、予測可能な未来成分を有していない真にランダムなノイズと比較して、ピンクノイズおよび均一ノイズを表す。「均一ノイズ」は、ガウス分布ではなく長方形の分布を有するホワイトノイズを意味する。
【0043】
「周波数領域スペクトル」は、時間領域信号のフーリエ周波数プロットを指す。
【0044】
「スペクトル成分」は、周波数、振幅、および/または位相領域で測定できる時間領域信号の範囲内の単一または反復品質を指す。スペクトル成分は、典型的には、周波数領域に存在する信号を指す。
【0045】
「ファラデーケージ」は、望ましくない電磁放射線をアースする電気経路を提供して、電磁環境を静穏化する電磁シールド構造を指す。
【0046】
「信号解析スコア」は、後述するスコアリングアルゴリズムの1つによる時間領域信号の解析に基づいたスコアを指す。
【0047】
「最適化作用物質特異的時間領域信号」は、最大またはほぼ最大の信号解析スコアを有する時間領域信号を指す。
【0048】
「in vitro系」は、ウイルス、細菌、または多細胞植物もしくは動物から単離された、または由来する受容体および構造タンパク質を含め、1つ以上の生化学成分、例えば、核酸またはタンパク質成分を有する生化学系を指す。in vitro系は、典型的には、水性培地、例えば、生理学的緩衝液中で単離された、または部分的に単離された1つ以上のin vitro成分を含む溶液または懸濁物である。この用語はまた、培養培地中に細菌または真核細胞を含む細胞培養系も指す。
【0049】
「哺乳動物系」は、哺乳動物を指し、ヒト疾患のモデルとして役立ち得る実験動物、例えば、マウス、ラット、もしくは霊長類、またはヒト患者を含む。
【0050】
「化学系、生化学系、または生物系」は、作用物質特異的信号による変換に対する作用物質特異的応答、または本発明の信号曝露水性組成物の添加に応答する作用物質特異的応答を立証できる系を指す。化学系または生化学系は、例えば、水溶液もしくは懸濁物中の1つ以上の化学成分もしくは生化学成分、または細胞を含まない系の細胞成分を含み得る。生物系は、in vitro細胞培養系またはin vivo動物系を含み得る。
【0051】
「作用物質特異的効果」は、化学系、生化学系、または生物系が、化学または生化学作用物質(エフェクタ)に曝露されたときに観察される効果を指す。生物学的in vitro系に対する作用物質特異的in vitro効果の例には、例えば、系の成分の凝集状態の変化、作用物質の標的、例えば、受容体との結合、および培養中の細胞の増殖または分化の変化が含まれる。
【0052】
「1G〜10−8Gの範囲内の選択された磁場強度」は、1G〜10−8Gの選択された定磁場強度、または少なくとも一部が1G〜10−8Gの範囲内である選択された範囲、例えば、10−5〜10−9Gの範囲内である複数の漸増磁場強度を生成すると計算された一連の信号電流によって生成される磁場である、磁場強度を生成すると計算された時間領域信号電流が加えられる1つ以上の電磁コイルによって生成される磁場強度を指す。
【0053】
「水性培地」は、作用物質特異的信号を受け取るのに適した水相を有する液体培地であり、水性培地には、水、塩溶液、エマルション、泡状物質、ゲル、懸濁物、およびペーストが含まれる。水性培地は、最大50重量%の他の溶媒、例えば、エタノールを含み得る。例示的な水性培地には、滅菌された超純水または生理食塩水、例えば、患者への非経口注入に適した緩衝等張液が含まれ、このような水性培地は、水性培地成分が、静脈投与用に調製または希釈されたときに0.1〜10%、好ましくは0.5〜5容量%のエタノールを含むように、0.1〜50%の体積濃度のエタノールをさらに含み得る。エタノールの存在は、組成物の安定性を向上させるように作用し得る。水性培地懸濁物には、後述するように、微粒子またはナノ粒子、例えば、リポソームなどの水性懸濁物が含まれ得る。
【0054】
「機械的に破壊された水性培地」は、例えば、ボルテックス、例えば、10〜30秒の強いボルテックス、軽打、または超音波処理によって機械的な破壊の力を受けた水性培地を指す。この破壊の力は、気体の非存在下で加えることができるが、空気などの気体の存在下で加えられるのが好ましい。
【0055】
「界面水性培地」は、本発明にしたがって、界面を含む水性培地が低周波数作用物質特異的信号に曝露されたときに水構造を形成できる気体/液体または固体/液体の界面の中心を提供することができる微小気泡または他の構造、例えば、懸濁粒子を含むように調製または処理された水性培地を指す。気体界面水性培地は、例えば、気体、例えば、空気、酸素、窒素、もしくはアルゴンを水性培地中で気泡化することによって、または水性培地の機械的撹拌、例えば、気体の存在下でのボルテックス、超音波処理、もしくは他の機械的撹拌によって、または気体ナノ粒子もしくは気体発生化合物、例えば、炭酸水素塩の添加によって調製される。水性倍地中の気泡の量および安定性は、添加剤、例えば、薬学的に許容され得る界面活性剤の添加によって促進され得る。1つの界面水性培地は、米国特許第7,011,702号および同第6,262,128号に記載されているように、発泡ポリマー、例えば、セルロースを含む水性培地を気泡化することによって形成される泡状物質である。多数の懸濁性ナノ粒子、例えば、水中油型エマルション中の超音波処理脂質粒子、ラテックス粒子、タンパク質殻気体もしくは液体充填ナノ粒子(protein−shell gas− or liquid−filled nanoparticle)、およびリポソームもしくは脂質小胞が公知である。リポソーム、例えば、大きい単層リポソームの懸濁物を、米国特許第5,030,453号および同第5,059,421号、ならびにこれらの特許に引用されている参考文献に記載されているような既知の方法にしたがって調製することができる。リポソーム封入ヒドロゲルを、米国特許第7,619,565号に記載されているように調製することができる。
【0056】
「機械的に破壊された界面水性培地」は、機械的に破壊され、かつ界面気泡を含み、例えば、通常の気圧の空気の存在下での強いボルテックスによって調製することができる。
【0057】
「パクリタキセルまたはその類似体」は、限定されるものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、およびテセタキセル(tesetaxel)を含め、イチイ属の植物によって生産されるジテルピン(diterpine)化合物のクラス、およびその化学的類似体を指す。
【0058】
「タキサン様化合物」または「パクリタキセル様化合物」は、チューブリンポリマーの形成の促進および/または形成されたチューブリンポリマーの安定化をもたらす作用機構によって機能する化合物を指す。この定義には、タキサン化合物およびエピチロン(epithilone)、例えば、エポチロンA〜F、およびその類似体、例えば、イクサベピロン(エピチロンB)が含まれる。これらの化合物は、タキサンのように、αβチューブリンヘテロ二量体サブユニットに結合することが知られており、一旦結合すると、ヘテロ二量体の解離速度が低下する。エポチロンBは、GTPの非存在下で、チューブリンの微小管への重合を誘導することも示されている。これは、細胞質全体にわたる微小管の束の形成によって引き起こされる。最後に、エポチロンBはまた、G2−M移行期で細胞周期を停止させて、細胞毒性、最終的に細胞アポトーシスももたらす(Balog,D.M.;Meng,D.;Kamanecka,T.;Bertinato,P.;Su,D.−S.;Sorensen,E.J.;Danishefsky,S.J.Angew.Chem.1996,108,2976)。しかしながら、マクロファージ合成炎症性サイトカインおよび一酸化窒素の活性化のような、パクリタキセルで知られている一部のエンドトキシン様特性は、エポチロンBでは観察されない。
【0059】
「治療用オリゴヌクレオチド」は、典型的には、1つ以上の選択された細胞タンパク質の発現を阻害または活性化することによって、細胞環境に存在するときに治療の役割を果たすことができる一本鎖(ss)または二本鎖(ds)RNA、DNA、または改変された主鎖または塩基を有するオリゴヌクレオチド類似体を指す。治療用オリゴヌクレオチドは、典型的には、長さが10〜50のヌクレオチド塩基、好ましくは15〜30塩基であり、例えば、(i)相補配列DNAまたはRNAに結合して、DNAからのRNAの転写またはRNAのタンパク質への翻訳を阻害する、あるいは転写プロセシングエラー、例えば、エキソンスキッピングを誘導することができる一本鎖アンチセンス化合物として、(ii)低分子干渉RNA(siRNA)として機能して特定の遺伝子の発現を妨害する二本鎖DNAとして、(iii)遺伝子発現を活性化させるように機能する低分子二本鎖RNA、および(iv)選択された標的mRNAで遺伝子サイレンサとして機能する一本鎖マイクロRNAとして機能し得る。例示的な治療用オリゴヌクレオチドには:いずれも後述するGAPDHアンチセンスRNAおよびPCSK9アンチセンスRNAが含まれる。
【0060】
「タキサン信号」または「パクリタキセル信号」は、タキサン化合物、例えば、パクリタキセルで記録された低周波数時間領域信号を指し、本明細書で詳述されるように、信号に曝露される条件下でタキサン様特異的効果を誘導することができる。
【0061】
「治療用オリゴヌクレオチド信号」は、治療用オリゴヌクレオチド化合物、例えば、GAPDHアンチセンスRNAまたはPCSK9アンチセンスRNAで記録された低周波数時間領域信号を指す。
【0062】
「水信号」は、作用物質信号、例えば、タキサン信号を記録するために使用された条件と同じ条件下で、純水のサンプルで記録された低周波数時間領域信号を指す。
【0063】
「タキサン信号に曝露された水」は、本明細書に詳述される条件下でタキサン信号に曝露された水性培地を指す。
【0064】
「治療用オリゴヌクレオチド信号に曝露された水」は、本明細書に詳述される条件下で治療用オリゴヌクレオチド信号に曝露された水性培地を指す。
【0065】
「水信号に曝露された水」または「ホワイトノイズに曝露された水」はそれぞれ、本明細書に詳述される条件下で水信号またはホワイトノイズ信号に曝露された水、例えば、超純水のサンプルを指す。
【0066】
化学系、生化学系、または生物系を「変換する」は、このような系を作用物質特異的信号に曝露して、このような系における作用物質特異的効果を達成することを指す。後述する1つのモデル変換系は、例えば、増殖率の低下、または選択された細胞成分の発現の刺激もしくは阻害によって、そのモデル変換系の細胞が作用物質特異的信号に応答できる細胞培養系である。
【0067】
水性培地を作用物質特異的信号に「曝露する」は、本発明にしたがって、作用物質から記録された低周波数信号によって生成される電磁場に水性培地を入れることを意味する。
【0068】
水性組成物は、この組成物が化学系、生化学系、または生物系に対して少なくとも1つの作用物質特異的効果を与えることができる場合、このような系に作用物質特異的効果をもたらすことができる化学または生化学作用物質の作用を「模倣」すると言える。
【0069】
「所与の化学または生化学作用物質の濃度の単位で表される組成物の活性」は、この組成物が、この化学または生化学作用物質の少なくとも1つの効果について、この作用物質の所与の濃度でこの作用物質の溶液または懸濁物と同じ活性を有することを意味する。したがって、例えば、0.01〜10μMの濃度のパクリタキセルの単位で表されるパクリタキセル活性を有する組成物は、その阻害する能力については、パクリタキソール応答癌細胞の懸濁物と同じ活性を有する、あるいは動物のタキソール応答腫瘍の増殖を阻害するその能力については、0.01〜10μMの濃度のパクリタキセルの溶液と同じ活性を有することを意味する。
【0070】
(II.作用物質特異的信号を生成するための装置)
選択された作用物質のサンプルから時間領域信号を生成するための記録装置が、本明細書に組み入れられる、共有の国際公開第2008/063654号に詳述されている。装置およびスコアリングアルゴリズムの特定の好ましい実施形態を以下に記載する。
【0071】
本装置は、刺激信号を生成するコイルおよび応答を測定するグラジオメータに近接した磁気的に遮蔽されるファラデーケージ内にサンプルを配置して使用される。刺激信号は、刺激コイルによって注入され、この信号は、望ましい最適な信号が生成されるまで変調することができる。次いで、ファラデーケージおよび刺激コイルによって生成される磁場により外部干渉から遮蔽された分子電磁応答信号を、グラジオメータおよびSQUIDによって検出し、測定する。次いで、この信号を増幅して、任意の適切な記録器または測定器に送信する。
【0072】
図1は、電磁放射線の検出用の装置および処理システムの一実施形態を示している。装置700は、処理ユニット704に接続された検出ユニット702を備えている。処理ユニット704は、検出ユニット702の外部に示されているが、処理ユニットの少なくとも一部は、検出ユニット内に配置することができる。
【0073】
図1の断面図に示されている検出ユニット702は、互いに入れ子状または同心円状の複数の構成要素を備えている。サンプルチャンバまたはファラデーケージ706は、金属ケージ708の中に収容されている。サンプルチャンバ706および金属ケージ708のそれぞれは、アルミニウム材料から形成することができる。サンプルチャンバ706は、真空中に維持することができ、設定温度に制御される温度とすることができる。金属ケージ708は、低域通過フィルタとして機能するように構成されている。
【0074】
一連の平行な加熱コイルまたは要素710が、サンプルチャンバ706と金属ケージ708との間にあり、このサンプルチャンバ706を取り囲んでいる。1つ以上の温度センサ711も、加熱要素710およびサンプルチャンバ706に近接して配設されている。例えば、4つの温度センサを、サンプルチャンバ706の外周の異なる位置に配置することができる。加熱要素710および温度センサ(複数可)711は、サンプルチャンバ706の内部を一定の温度に維持するように構成することができる。
【0075】
シールド712は、金属ケージ708を取り囲んでいる。シールド712は、サンプルチャンバ706に追加の磁場シールドまたは隔離を提供するように構成されている。シールド712は、鉛または他の磁気シールド材料から形成することができる。このシールド712は、サンプルチャンバ706および/または金属ケージ708によって十分なシールドが提供されている場合は任意選択である。
【0076】
G10絶縁体を備えた極低温層716がシールド712を取り囲んでいる。極低温層は、液体ヘリウムとすることができる。極低温層716(極低温デュアー瓶とも呼ばれる)は、動作温度が4K(−269.15℃)である。外側シールド718が、極低温層716を取り囲んでいる。この外側シールド718は、ニッケル合金から形成され、磁気シールドとなるように構成されている。検出ユニット702によって提供される磁気シールドの総量は、デカルト座標系の3つの直交する平面において最大約−100dB、最大−100dB、および最大−120dBである。
【0077】
上記の様々な要素は、空隙または誘電障壁(不図示)によって互いに電気的に絶縁されている。また、これらの要素が、描きやすくするために互いに対して正確な縮尺ではないことをも理解されたい。
【0078】
サンプルホルダ720は、サンプルチャンバ706内に手動で、または機械的に配置することができる。サンプルホルダ720は、下げる、上げる、またはサンプルチャンバ706の上部から取り出すことができる。サンプルホルダ720は、渦電流を誘導しない材料から形成されており、固有の分子回転を殆どまたは全く示さない。一例として、サンプルホルダ720は、高品質のガラス、すなわちPyrex(登録商標)から形成することができる。
【0079】
検出ユニット702は、固体サンプル、液体サンプル、または気体サンプルに対応するように構成されている。検出ユニット702では、様々なサンプルホルダを利用することができる。例えば、サンプルのサイズによって、大きめのサンプルホルダを利用することができる。別の例として、サンプルが空気と反応する場合、サンプルホルダは、サンプルを封入する、またはサンプルの周囲に気密シールを形成するように構成することができる。なお別の例では、サンプルが気体状態である場合、サンプルは、サンプルホルダ720を用いずにサンプルチャンバ706の内部に導入することができる。このようなサンプルの場合、サンプルチャンバ706は、真空に維持される。サンプルチャンバ706の上部の真空シール721は、真空の維持および/またはサンプルホルダ720の収容に役立つ。
【0080】
検知コイル722および検知コイル724は、検出コイルとも呼ばれ、それぞれが、サンプルホルダ720の下および上に設けられている。検知コイル722、724のコイルの巻線は、約50キロヘルツ(kHz)の範囲、25kHzの中心周波数、8.8MHzの自己共振周波数で直流(DC)で動作するように構成されている。検知コイル722、724は、二次誘導の形態であり、約100%の結合を達成するように構成されている。一実施形態では、コイル722、724は、概ね長方形であり、G10固定装置によって所与の位置に保持されている。コイル722、724は、二次誘導グラジオメータとして機能する。
【0081】
ヘルムホルツコイル726および728は、本明細書で説明されるように、シールド712と金属ケージ708との間に垂直に配置することができる。コイル726および728のそれぞれは、互いに独立して上げる、または下げることができる。コイル726および728は、磁場刺激生成コイルとも呼ばれ、室温または周囲温度である。コイル726、728によって発生するノイズは、約0.10ガウスである。
【0082】
サンプルからの放射線とコイル722、724との間の結合の程度は、サンプルホルダ720をコイル722、724に対して再配置することによって、あるいはコイル726、728の一方または両方をサンプルホルダ720に対して再配置することによって変更することができる。
【0083】
処理ユニット704は、コイル722、724、726、および728に電気的に結合されている。処理ユニット704は、磁場刺激、例えば、コイル726、728によってサンプルに注入されるガウス性ホワイトノイズ刺激を指定する。処理ユニット104はまた、注入される磁場刺激と混合されるサンプルの電磁放射線によるコイル722、724の誘導電圧も受け取る。
【0084】
図2は、図12の704に示されている処理ユニットのブロック図である。二相ロックイン増幅器202は、コイル726、728への第1の磁場信号(例えば、「x」またはノイズ刺激信号)および超電導量子干渉素子(SQUID)206のノイズ消去コイルへの第2の磁場信号(例えば、「y」またはノイズ消去信号)を供給するように構成されている。増幅器202は、外部基準なしにロックするように構成されており、Perkins Elmerのモデル7265DSPロックイン増幅器とすることができる。この増幅器は、「仮想モード」で動作し、このモードでは、初期基準周波数にロックし、次いで自由に動作して「ノイズ」にロックできるように基準周波数を除去する。
【0085】
磁場刺激発生器、例えば、アナログガウス性ホワイトノイズ刺激発生器200は、増幅器202に電気的に結合されている。この発生器200は、増幅器202を介してコイル726、728で、選択された磁場刺激、例えば、アナログガウス性ホワイトノイズ刺激を発生するように構成されている。一例として、この発生器200は、General Radioによって製造されたモデル1380とすることができる。
【0086】
インピーダンス変圧器204は、SQUID206および増幅器202との間に電気的に結合されている。インピーダンス変圧器204は、SQUID206と増幅器202との間でインピーダンスを一致させるように構成されている。
【0087】
SQUID206は、低温直接要素SQUIDである。一例として、SQUID206は、Tristan Technologies社(San Diego、CA.)から入手可能なモデルLSQ/20 LTS dC SQUIDとすることができる。あるいは、高温または交流SQUIDを使用することができる。コイル722、724(例えば、グラジオメータ)とSQUID206の組み合わせ(まとめてSQUID/グラジオメータ検出アセンブリと呼ばれる)は、
【0088】
【数1】
の磁場測定感度を有する。コイル722、724の誘導電圧は、SQUID206によって検出され、増幅される。SQUID206の出力は、約0.2〜0.8マイクロボルトの範囲の電圧である。
【0089】
SQUID206の出力は、SQUIDコントローラ208への入力である。SQUIDコントローラ208は、SQUID206の動作状態を制御し、さらに検出信号を調整するように構成されている。一例として、SQUIDコントローラ208は、Tristan Technologies社によって製造されたiMC−303 iMAG多重チャンネルSQUIDコントローラとすることができる。
【0090】
SQUIDコントローラ208の出力は、増幅器210へ入力される。増幅器210は、0〜100dBの範囲の利得を提供するように構成されている。SQUID206でノイズ消去ノードがオンにされると、約20dBの利得が得られる。SQUID206がノイズ消去を全く行われないと、約50dBの利得が得られる。
【0091】
増幅信号は、レコーダまたは記憶装置212へ入力される。レコーダ212は、アナログ増幅信号をデジタル信号に変換して、このデジタル信号を記憶するように構成されている。一実施形態では、レコーダ212は、1Hz当たり8600のデータポイントを記憶し、2.46メガビット/秒を処理することができる。一例として、レコーダ212は、Sonyのデジタル・オーディオ・テープ(DAT)レコーダとすることができる。DATレコーダを用いて、生の信号またはデータセットを、所望に応じて表示または特定の処理のためにサードパーティに送信することができる。
【0092】
低域通過フィルタ214は、レコーダ212からのデジタル化されたデータセットをフィルタリングする。低域通過フィルタ214は、アナログフィルタであり、Butterworthフィルタとすることができる。カットオフ周波数は、約50kHzである。
【0093】
次に、帯域通過フィルタ216が、フィルタリングされたデータセットをフィルタリングする。帯域通過フィルタ216は、DC〜50kHzの帯域幅のデジタルフィルタとなるように構成されている。帯域通過フィルタ216は、様々な帯域幅に調整することができる。
【0094】
帯域通過フィルタ216の出力は、フーリエ変換プロセッサ218に入力される。フーリエ変換プロセッサ218は、時間領域にあるデータセットを周波数領域にあるデータセットに変換するように構成されている。フーリエ変換プロセッサ218は、高速フーリエ変換(FFT)タイプの変換を実行する。
【0095】
フーリエ変換されたデータセットは、相関および比較プロセッサ220への入力である。レコーダ212の出力はまた、プロセッサ220への入力である。プロセッサ220は、データセットを以前に記録されたデータセットと関連付け、閾値を決定し、ノイズ消去を実行する(SQUID206によってノイズ消去が提供されない場合)ように構成されている。プロセッサ220の出力は、サンプルの分子低周波数電磁放射線のスペクトルを表す最終データセットである。
【0096】
グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)などのユーザインタフェース(UI)222はまた、少なくともフィルタ216およびプロセッサ220に接続されて、信号処理パラメータを指定する。フィルタ216、プロセッサ218、およびプロセッサ220は、ハードウエア、ソフトウエア、またはファームウエアとして実施することができる。例えば、フィルタ216およびプロセッサ218は、1つ以上の半導体チップで実施することができる。プロセッサ220は、コンピュータデバイスで実施されるソフトウエアとしても良い。
【0097】
この増幅器は、「仮想モード」で動作し、このモードでは、初期基準周波数にロックし、次いで自由に動作し、「ノイズ」にロックできるように基準周波数を除去する。アナログノイズ発生器(General Radioによって生産され、真のアナログノイズ発生器)は、ヘルムホルツおよびノイズ消去コイルのそれぞれに対して、20dBおよび45dBの減衰を必要とする。
【0098】
ヘルムホルツコイルは、バランスが1%の100分の1である約1立方インチのスイートスポットを有し得る。代替の実施形態で、ヘルムホルツコイルは、垂直方向および回転方向(垂直軸の回り)の両方に移動させることができ、かつ平行からパイ形に離隔させることもできる。一実施形態では、SQUID、グラジオメータ、および駆動用変圧器(コントローラ)はそれぞれ、1.8、1.5、および0.3マイクロヘンリーの値を有する。ヘルムホルツコイルは、スイートスポットにおいて1アンペア当たり0.5ガウスの感度を有し得る。
【0099】
確率応答には、約10〜15マイクロボルトが必要であろう。ガウス性ホワイトノイズ刺激を注入することにより、システムは、SQUIDデバイスの感度が上げる。SQUIDデバイスは、ノイズのない約5フェムトテスラの感度を有していた。このシステムは、ノイズを注入し、この確率共鳴応答を使用することによって、感度を25〜35dB改善することができ、これは、ほぼ1,500%の上昇に等しい。
【0100】
システムからの信号を受信して記録すると、コンピュータ、例えば、メインフレームコンピュータ、スーパーコンピュータ、または高性能コンピュータは、前処理および後処理の両方を実行し、前処理は、カリフォルニア州リッチモンドのSystat Softwareによって開発されたAutoSignalソフトウエアを利用して実行され、後処理は、Flexproソフトウエア製品を利用して実行される。Flexproは、Dewetron社によって提供されるデータ(統計)解析ソフトウエアである。次の式または選択肢は、AutosignalおよびFlexpro製品で使用することができる。
【0101】
装置によって実行される信号検出および処理のフローチャートが図3に示されている。注目サンプルである場合、典型的には、少なくとも4つの信号検出またはデータランが実行される:サンプルなしでの時刻t1での第1のデータラン、サンプルありでの時刻t2での第2のデータラン、サンプルありでの時刻t3での第3のデータラン、およびサンプルなしでの時刻t4での第4のデータラン。2つ以上のデータランからのデータセットの実行および収集により、最終(例えば、関連付けられた)データセットの精度が上がる。第4のデータランでは、システムのパラメータおよび条件は、一定に保たれる(例えば、温度、増幅量、コイルの位置、ガウス性ホワイトノイズおよび/またはDCオフセット信号など)。
【0102】
ブロック300で、適切なサンプル(または、第1または第4のデータランの場合、サンプルが存在しない)が、装置、例えば、装置700に配置される。ガウス性ホワイトノイズまたはDCオフセット刺激が注入されていない所与のサンプルは、約0.001マイクロテスラまたはそれ以下の振幅で、DC〜50kHz範囲の電磁放射線を放射する。このような低い放射線を捕捉するために、ブロック301でガウス性ホワイトノイズ刺激および/またはDCオフセットが注入される。
【0103】
ブロック302で、コイル722、724は、サンプルの放射および注入された磁気刺激を表す誘導電圧を検出する。誘導電圧は、データランの期間にわたって時間の関数である一連の電圧値(振幅および位相)の連続的な流れを含む。データランは、長さが2〜20分であり得、したがってデータランに対応するデータセットは、時間の関数である2〜20分の電圧値を含む。
【0104】
ブロック304で、注入された磁気刺激は、誘導電圧が検出されると消去される。このブロックは、SQUID206のノイズ消去機能がオフの場合には省略される。
【0105】
ブロック306で、データセットの電圧値が、ブロック304でノイズが消去されるか否かによって、20〜50dB増幅される。そしてブロック308で、増幅されたデータセットが、アナログからデジタルへ(A/D)変換され、レコーダ212に記憶される。デジタル化されたデータセットは、数百万行のデータを含み得る。
【0106】
取得されたデータセットが記憶されると、ブロック310で、サンプルに対して少なくとも4つのデータランが実行された(例えば、少なくとも4つのデータセットが取得された)か否かについて確認される。所与のサンプルに対して4つのデータセットが得られていれば、ブロック312で低域通過フィルタリングが行われる。そうでない場合は、次のデータランが開始される(ブロック300に戻る)。
【0107】
デジタル化されたデータセットの低域通過フィルタリング(ブロック312)および帯域通過フィルタリング(ブロック314)が行われたら、データセットは、フーリエ変換ブロック316で周波数領域に変換される。
【0108】
次に、ブロック318で、類似のデータセットが、各データポイントで互いに関連付けられる。例えば、第1のデータラン(例えば、ベースラインまたは周囲ノイズのデータラン)に対応する第1のデータセットと、第4のデータラン(例えば、別のノイズのデータラン)に対応する第4のデータセットとが互いに関連付けられる。所与の周波数における第1のデータセットの振幅値が、この所与の周波数における第4のデータセットの振幅値と同じである場合は、この所与の周波数に対する相関値または数値は、1.0であろう。あるいは、相関値の範囲は、0〜100の範囲に設定することができる。このような相関または比較は、第2および第3のデータラン(例えば、サンプルのデータラン)についても行われる。取得されたデータセットが記憶されているため、残りのデータランが完了してから、それらのデータセットにアクセスすることができる。
【0109】
関連付けられた各データセットに対して所定の閾値レベルが適用されて、統計的に意味のない相関値が排除される。データランの長さ(データランが長ければ長いほど、取得されるデータの精度が向上する)、およびサンプルの実際の放射スペクトルの他のタイプのサンプルに対する類似性によって、様々な閾値を使用することができる。閾値レベルに加えて、相関値が平均化される。閾値および相関の平均化を使用すると、注入されたガウス性ホワイトノイズ刺激成分が、得られる相関データセットで非常に小さくなる。
【0110】
2つのサンプル・データ・セットが、1つの相関サンプル・データ・セットに改善され、2つのノイズ・データ・セットが、1つの相関ノイズ・データ・セットに改善されると、相関ノイズ・データ・セットが、相関サンプル・データ・セットから減じられる。得られるデータセットは、最終データセット(例えば、サンプルの放射スペクトルを表すデータセット)である(ブロック320)。
【0111】
1Hz当たり8600のデータポイントがあり得、最終データセットがDC〜50kHzの周波数範囲に対してデータポイントを有し得るため、最終データセットは、数億行のデータを含み得る。データの各行は、周波数、振幅、位相、および相関値を含み得る。
【0112】
(III.変換のための最適な時間領域信号を同定する方法)
上記の装置および方法にしたがって生成される作用物質特異的信号は、例えば、in vitro系または哺乳動物系を変換するために使用される場合は、最適なエフェクタ活性についてさらに選択することができる。共有の国際公開第2008/063654A3号に詳述されているように、所与の作用物質で得られた時間領域信号における作用物質依存性信号の特徴は、様々な磁場刺激条件、例えば、ガウス性ホワイトノイズ刺激の振幅および/またはDCオフセットに対する様々な電圧レベルに対するサンプルの時間領域信号を記録することによって最適化することができる。次いで、記録された信号が、処理されて信号の特徴が明らかにされ、後述するように最適な信号解析スコアを有する1つ以上の時間領域信号が選択される。最適化またはほぼ最適化された時間領域信号の選択は、系、例えば、in vitro生物系の変換、または水性培地の最適化時間領域信号への曝露が、非最適化時間領域信号への曝露よりも強く、かつより予測可能な応答を与えることが分かったため有用である。すなわち、最適化(またはほぼ最適化)時間領域信号の選択は、標的系がサンプル信号によって変換される場合、あるいは水性培地が信号に曝露される場合に、信頼性の高い検出可能なサンプル効果の達成に有用である。
【0113】
作用物質特異的信号は、典型的には、オリゴヌクレオチド作用物質について以下に例示されるように、選択された作用物質、例えば、生物学的または生化学的作用物質を適切な水性培地、例えば、純水にまず溶解または懸濁することによって記録される。可溶性が低い作用物質、例えば、タキサンでは、この作用物質を、両方のパクリタキセルについて以下に例示されているように、適切なビヒクル、例えば、Cremophor EL(商標)または適切な可溶化剤または懸濁剤を含む他のビヒクルに懸濁することができる。
【0114】
作用物質の濃度は、典型的には、10−3〜10−24M、好ましくは約10−10〜10−16μMの範囲に調整される。サンプルは、記録の前に処理して:(i)機械的に破壊されたサンプル培地、(ii)気泡を含む界面サンプル培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面サンプル培地の1つを調製することができる。機械的な破壊の処理は、例えば、5〜30秒の強いボルテックスによって行うことができ、このボルテックスが気体の存在下で行われると、気泡が懸濁した界面培地も得られる。サンプルは、典型的には、4〜37℃、好ましくは室温、すなわち約24℃で記録される。
【0115】
一般に、サンプルに加えられる注入ホワイトノイズおよびDCオフセット電圧は、例えば、0〜1G(ガウス)の計算された磁場をサンプル容器に生成する、あるいは注入ノイズ刺激は、好ましくは、検出しようとする分子電磁放射線よりも約30〜35デシベル高い、例えば、70〜80dbmの範囲である。記録されるサンプル数、すなわち時間領域信号が記録されるノイズレベルの間隔の数は、典型的には、10〜100またはそれ以上の範囲で変化し、いずれの場合も、十分に小さい間隔であれば、良好な最適信号を識別することができる。例えば、ノイズ発生器レベルの電力利得は、50の20mVの間隔で変動し得る。
【0116】
あるいは、ガウス性ホワイトノイズおよび/またはDCオフセット以外の刺激信号を、記録された時間領域信号の最適化のために使用することができる。このような信号の例には、様々な正弦波周波数、矩形波、規定された非線形構造を含む時系列データ、またはSQUID出力自体のスキャニングが含まれる。これらの信号は、さらに刺激信号を修正するために、オフ状態とオン状態との間でそれら自体がパルス化されても良い。磁気シールドによって自然に生じるホワイトノイズを、刺激信号源として使用しても良い。
【0117】
上記の国際公開第2008/063654号に、上記のように生成される時間領域信号をスコアリングするための5つの方法:(A)ヒストグラムビン法、(B)自己相関信号のFFTの生成、(C)FFTの平均化、(D)相互相関閾値の使用、および(E)位相空間比較、が記載されている。これらのうち、効果的な変換信号の最も有望な予測方法は、ヒストグラムビン法(A)および拡張自己相関(EAC)法(B)である。これらの2つの好ましい方法を以下に説明する。
【0118】
(A.スペクトル情報を生成するヒストグラム法)
図4は、スペクトル情報を生成するヒストグラム法のハイレベルのデータフローチャートである。SQUIDから取得されたデータ(ボックス2002)または記憶されたデータ(ボックス2004)は、16ビットまたは24ビットのWAVデータとして保存され(ボックス2006)、倍精度浮動小数点データに変換される(ボックス2008)。変換されたデータは、生の波形として保存される(ボックス2010)、または表示される(ボックス2012)。次いで、変換されたデータは、図5に関連して以下に記載され、フーリエ解析と書かれたボックス2014によって示されるアルゴリズムに送られる。ヒストグラムは、2016で表示することができる。
【0119】
図5は、ヒストグラム・スコアリング・アルゴリズムの全体の流れを示している。時間領域信号は、ADC(アナログ/デジタル変換器)から得られ、2102に示されたバッファに記憶される。このサンプルは、SampleDuration秒の長さであり、1秒に付きSampleRateサンプルでサンプリングされ、SampleCount(SampleDuration*SampleRate)サンプルが得られる。信号から回収され得るFrequencyRangeは、Nyquistによって定義されるようにSampleRateの半分として定義される。したがって、時系列信号が毎秒10,000サンプルでサンプリングされると、FrequencyRangeは、0Hz〜5kHzとなる。使用できる1つのフーリエアルゴリズムは、Radix 2 Real高速フーリエ変換(RFFT)であり、これは、216までの2のべき乗の選択可能な周波数領域分解能(FFTSize)を有する。FrequencyRangeが8kHz以下に維持される限りは、1ヘルツに付き少なくとも1つのスペクトルビンを有する十分な分解能を実現するために、8192のFFTSizeが選択される。SampleDurationは、信頼できる結果を保証するために、SampleCount>(2*)FFTSize*10のように十分な長さにするべきである。
【0120】
このFFTは、1回にFFTSizeのサンプルにしか実行できないため、プログラムは、最終スペクトルを得るために、サンプルに対してFFTを順次実行し、結果を平均しなければならない。各FFTに対してFFTSizeのサンプルをスキップすることが選択されると、1/FFTSize^0.5の統計誤差が生じる。しかしながら、FFT入力にFFTSizeの半分がオーバーラップすることが選択されると、この誤差は、1/(0.81*2*FFTSize)^0.5に減少する。これにより、誤差が0.0110485435から0.0086805556まで減少する。誤差および相関解析全般についての追加情報は、BendatおよびPiersol著、「Engineering Applications of Correlation and Spectral Analysis」、1993を参照されたい。
【0121】
所与のウインドウでFFTを実行する前に、データ・テーパリング・フィルタを適用して、サンプリングエイリアシングによるスペクトルの漏れを回避することができる。このフィルタは、例として、矩形(フィルタなし)、ハミング(Hamming)、ハニング(Hanning)、バートレット(Bartlett)、ブラックマン(Blackman)およびブラックマン/ハリス(Blackman/Harris)の中から選択することができる。
【0122】
例示的な方法では、ボックス2104に示されているように、1回に実行される時間領域サンプルの数であり、かつFFTで出力される離散的周波数の数でもある変数FFTSizeに対して8192が選択されている。FFTSize=8192は、分解能、またはサンプリングレートによって決まる範囲内のビン数であることに留意されたい。離散的RFFT(実FFT)が何回実行されるかを決める変数nは、SampleCountをFFTビンの数であるFFTSize*2で除すことによって設定される。アルゴリズムが意味をなす結果を生成するために、この数nは、少なくとも10〜20であるべきであり(しかし、他のバルブ(valve)も可能である)、より弱い信号をピックアップするためにはより大きい数が好ましいであろう。このことは、所与のSampleRateおよびFFTSizeに対して、SampleDurationが十分な長さでなければならないことを示唆する。ボックス2104にも示すように、0からnまでをカウントするカウンタmは、ゼロに初期化される。
【0123】
プログラムはまず、3つのバッファ:各ビン周波数でのカウントを累積するFFTSizeのヒストグラムビン用のバッファ2108;各ビン周波数での平均出力用のバッファ2110、および各mについてのFFTSizeのコピーされたサンプルを含むバッファ2112、を確立する。
【0124】
プログラムは、ヒストグラムおよび配列を初期化し(ボックス2113)、2114で波形データのFFTSizeのサンプルをバッファ2112にコピーし、波形データに対してRFFTを実行する(ボックス2115)。FFTは、最大の振幅が1となるように正規化され(ボックス2116)、すべてのFFTSizeのビンに関する平均出力が、正規化信号から決定される(ボックス2117)。各ビン周波数に対して、その周波数でのFFTからの正規化値がバッファ2108の各ビンに加えられる(ボックス2118)。
【0125】
次いで、ボックス2119で、プログラムは、上記から計算した平均出力に対する各ビン周波数における出力を調べる。その出力が、平均出力の特定の因子ε(0〜1)の範囲内である場合は、16で、その出力がカウントされ、対応するビンがヒストグラムバッファ内で増分される。そうでない場合、その出力は廃棄される。
【0126】
平均出力が比較されるのは、このFFTの場合だけに対してであることに留意されたい。低速であるが拡張されたアルゴリズムは、ヒストグラムのレベルを設定する前に、データを2回通過させ、全ての時間に対して平均を計算することがある。εとの比較は、周波数ビンにとって有意に十分な出力値を表すのを容易にする。あるいは広義では、εを利用する式は、「この時点でこの周波数の信号が存在するか?」という質問に答えるのに役立つ。その答えがイエスである場合は、2つの事項:(1)この1回だけこのビンに到達する定常ノイズ、または(2)ほぼ毎回発生する真に低レベルの周期的信号、の一方に起因し得る。したがって、ヒストグラムカウントは、ノイズヒットを除去し、そして低レベル信号ヒットを強める。したがって、平均化およびε因子により、有意と考えられる最小の出力レベルを選択することが可能となる。
【0127】
ボックス2120で、カウンタmが増分され、mがnに等しくなるまで(ボックス2121)、上記のプロセスが、WAVデータのn個のセットのそれぞれに対して反復される。各サイクルで、各ビンについての平均出力が、2118で関連するビンに加えられ、各ヒストグラムビンが、2114で出力振幅条件が満たされたとき1だけ増分される。
【0128】
n個のサイクルのデータの全てが考慮されたときは、各ビンの平均出力は、各ビンの蓄積された合計平均出力をサイクルの総数nで除すことによって決定され(ボックス2122)、この結果が表示される(ボックス2123)。例えば、DC=0または60Hzの周波数で構造ノイズが存在する場合を除き、各ビンの平均出力は、ある程度小さい数となる。
【0129】
この方法で関係する設定は、ノイズ刺激利得およびεの値である。この値は、平均値を超えるある事象を区別するために使用される出力値を決定する。出力は、平均出力よりも大きくなり得ないため、1の値では、事象が一切検出されない。εがゼロに接近するにつれて、実質的に全ての値が、ビンに入れられることになる。0〜1の値、典型的には、構造ノイズに対する合計ビンカウントの約20〜50%のビンカウント数となる値では、εは、最大「スペクトル特性」を有する、すなわち確率共鳴事象が、純粋ノイズよりも余程好ましいであろうことを意味する。
【0130】
したがって、磁場刺激入力に対する電力利得を、例えば、0〜1Vの間で50mVの増分で体系的に増加させることができ、各出力設定で、明確なピークを有するヒストグラムが観測されるまでεを調節することができる。例えば、処理されるサンプルが、20秒の時間間隔を表す場合は、それぞれの異なる出力およびεに対する合計処理時間は約25秒となる。明確な信号が観測された場合、最適なヒストグラム、すなわち最大数の識別可能なピークを有するヒストグラムが生成されるまで、出力設定またはε、あるいはこれらの両方を改善することができる。
【0131】
このアルゴリズム下では、多数のビンが満たされ、関連するヒストグラムが、低周波数のノイズ(例えば、環境ノイズ)の一般的な発生による低周波数について表示され得る。したがって、このシステムは、所与の周波数未満(例えば、1kHz未満)のビンを単に無視できるが、それでもなお、より高い周波数で十分なビンの値を表示し、サンプル間の固有の信号シグネチャを決定することができる。
【0132】
あるいは、ε変数の目的が、各サイクルで決定された異なる平均出力レベルに対応することであるため、プログラムは、それ自体が、平均出力レベルをεの最適値に関連付ける所定の機能を使用してεを自動的に調節することができる。
【0133】
同様に、プログラムは、最適なピーク高さまたは特性がヒストグラムで観測されるまで、各出力設定におけるピーク高さを比較し、ノイズ刺激出力設定を自動的に調節することができる。
【0134】
εの値は、すべての周波数について固定値とすることができるが、εの周波数依存値を利用して、例えば、DC〜1,000までの低周波数で観測され得るより高い値の平均エネルギーに調節することも企図されている。周波数依存ε因子は、例えば、多数の低周波数FFT領域を平均し、より高い周波数で観測される値と同等の値に平均値を「調節」するεの値を決定することによって求めることができる。
【0135】
(B.拡張自己相関(EAC))
信号解析スコアを決定する第2の好ましい方法では、選択されたノイズ刺激で記録された時間領域信号を自己相関し、自己相関信号の高速フーリエ変換(FFT)を使用して信号解析プロット、すなわち周波数領域での信号のプロットを生成する。次いで、FFTを使用して、選択された周波数範囲、例えば、DC〜1kHzまたはDC〜8kHzの範囲にわたって平均のノイズレベルを超えるスペクトル信号の数をスコアリングする。
【0136】
図6は、この第2の実施形態にしたがって、記録された時間領域信号のスコアリングで実行されるステップのフローチャートである。時間領域信号が、上記のようにサンプリングされ、デジタル化され、そしてフィルタリングされ(ボックス402)、磁場刺激レベルの利得は、404と同様に初期レベルに設定される。1つのサンプル合成物402に対する典型的な時間領域信号は、標準的な自己相関アルゴリズムを使用して408で自己相関され、自己相関関数のFFTは、標準FFTアルゴリズムを使用して410で生成される。
【0137】
FFTプロットは、412で、自己相関FFTで観察される平均ノイズよりも統計的に大きいスペクトルのピークの数をカウントすることによってスコアリングされ、このスコアは、414で計算される。このプロセスは、ピークスコアが記録されるまで、すなわち所与の信号のスコアが磁気刺激利得の増加とともに低下し始めるまで、ステップ416および406が繰り返される。ピークスコアは、418で記録され、プログラムまたはユーザが、422で時間領域信号のファイルからピークスコアに対応する信号を選択する(ボックス420)。
【0138】
上記のように、この実施形態は、手動モードで実行され、この手動モーでは、ユーザが、増分における磁気刺激設定を手動で調整し、手動でFFTスペクトルプロットから解析し(ピークのカウント)、ピークスコアを使用して1つ以上の最適な時間領域信号を識別する。あるいは、これらのステップの1つ以上の態様を自動化することもできる。
【0139】
関連した方法では、時間領域信号を、FFTによって周波数領域に変換し、例えば、同じサンプルからの周波数領域信号の対を相互相関させる。相互相関信号は、例えば、上記の同じサンプルからの周波数領域信号の第2の対を相互相関させることによって生成される第2の周波数領域信号と相互相関させることによりさらに強化しても良い。したがって、同じサンプルからの4つの時間領域信号がそれぞれ、周波数領域に変換され、それぞれが相互相関した2つの対に分割され、次いで再び相互相関させて、そのサンプルの最終周波数領域スペクトルを生成する。次いで、この信号を、所与のノイズ閾値よりも高いピークの数によってスコアリングすることができ、トップスコアリング2倍相互相関信号の生成に使用される4つの時間領域信号のいずれかを、後述する変換法または曝露法に利用することができる。
【0140】
1つの例示的な方法では、パクリタキセル時間領域信号を、最終濃度が6mg/mlとなるようにCremophorEL(商標)529mlおよび無水エタノール69.74ml中に懸濁されたパクリタキセルのサンプルからの低周波数信号を記録することによって得た。この信号を、10〜241mVのノイズレベル設定で、1mVの増分で、注入DCオフセットと共に記録した。この注入ノイズレベル範囲に対する合計241の時間領域信号を得て、これらを、詳細が上述された拡張自己相関アルゴリズムによって解析し、さらなるin vitro試験用の8つの時間領域パクリタキセル誘導信号が得られた。生物学的応答系(後述)でタキソール特異的作用をもたらすのに有効であり、かつ同様に後述されるように、本発明にしたがってパクリタキセル特異的水性組成物の調製に使用されると有効である例示的なパクリタキセル信号として、これらの中から、指定された信号M2(3)を選択した。
【0141】
図9A〜図9Cは、フーリエサブトラクションによってノイズが除去された2つのパクリタキセル信号の周波数領域スペクトル(図9Aおよび図B)、および3510〜3650Hzの周波数スペクトルの部分に対する作用物質特異的スペクトル特性を示す2つの信号の相互相関(図9C)を示している。図9Cから分かるように、約3の縦座標値に一致するノイズ閾値が与えられた場合、この領域におけるパクリタキセル信号は、7つのピークによって特徴付けられる。0〜20kHzの全領域でスペクトル特性を示すように拡張されている図9A〜図9Cに示されているスペクトルは、固有の作用物質特異的ピークに対する信号の周波数スペクトルの検査および多数のこのようなピークを含む時間領域信号の選択によって、いかに最適時間領域信号を選択できるかを例示している。
【0142】
上記のように記録され、処理され、そして選択された時間領域信号は、コンパクトディスクまたはデジタルもしくはアナログ信号の任意の他の適切な記憶媒体に記憶させることができ、信号変換動作中に変換系に供給される。コンパクトディスクに記憶される信号は、より一般的には、実体的なデータ記憶媒体の表現であり、この記憶媒体には、この信号が1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に供給されるときに、化学系または生化学系を変換できる磁場の生成、または本発明にしたがった作用物質特異的水性組成物の調製に有効な低周波数時間領域信号が記憶される。試験された特定の信号は、パクリタキセルサンプルから生じたものであったが、あらゆるタキサン様化合物が、変換形態で同じ機構の作用を有する信号を生成するはずであることを理解されたい。
【0143】
上記の方法によって生成され、選択される時間領域信号の1つのクラスには、パクリタキセルについて上で詳述されているように、タキサン化合物またはタキサン様化合物から生じる信号が含まれる。本発明で企図される治療用化合物の別の一般的なクラスは、一本鎖(ss)および二本鎖(ds)RNA、DNA、ならびにssおよびdsオリゴヌクレオチド類似体、例えば、モルホリノ、ホスホロチオエート、ならびに様々な主鎖修飾および/または塩基修飾を有するホスホン酸塩類似体を含む治療用オリゴヌクレオチドである。これらの化合物は、細胞環境に存在すると、典型的には、1つ以上の選択された細胞タンパク質の発現を阻害または活性化することによって治療的役割を果たす。
【0144】
(IV.変換/曝露装置およびプロトコル)
このセクションでは、本発明の水性組成物の調製において、上記のセクションI〜IIIに記載された方法にしたがって生成され、選択された低周波数時間領域信号に水性培地を曝露する機器および方法論を記載する。本明細書で使用される用語「変換器」または「変換装置」または「変換/曝露装置」または「曝露装置」は、この装置の磁場環境に配置される生物系の変換における変換モード、あるいは本発明にしたがった水性培地の曝露による本発明の水性培地の調製に使用される曝露モードで機能できる装置を指すことを理解されたい。
【0145】
(A.変換/曝露装置および方法)
図7に500で示されている1つの一般型の変換/曝露装置は、変換に応答して系の光学特性の変化を検出する、あるいは印加時間領域信号の曝露に応答して水性組成物の変化を検出するようにデザインされている。この装置は、この装置における変換/曝露ステーションとして機能する光学的に透明なセル502、ならびにサンプルからのビームの吸収および/または放出を検出する、電磁ビーム源504および光検出器506を含む分光光度計を備えている。1つの例示的なサンプルセルは、容量70μLの水晶キュベットである。このセルの反対側の端部領域に位置する変換コイル510は、コイル間に均一な磁場強度を発生させるようにAmerican Magnetics社によってデザインされ、製造されたものであり、2つのコイルのリード線が512、514で示されている。例示的な実施形態では、各コイルは、直径が約7.82mmの空芯を備え、エナメル被覆された、50巻の#39ゲージ(awg)の角銅マグネットワイヤからなる。適切なスペクトロメータには、(i)UVもしくはUV−Vis吸収スペクトロメータ、(ii)FTIR能力を備えたものを含む、IR吸収スペクトロメータ、または(iii)ラマンスペクトロメータが含まれ、これらは全て上で参照されている。
【0146】
変換/曝露装置の別の一般的な実施形態では、いくつかのヘルムホルツコイル対を、互いに直交するように構成しても良い。この構成は、サンプルに加えられる磁場の構造をより柔軟に制御することができるであろう。例えば、静磁場は、1つの軸に沿って加えることができ、変動磁場を別の軸に沿って加えることができる。上記の変換/曝露装置は、サンプルが配置される領域の環境からの無制御外来磁場を最小限にするためにシールドエンクロージャ内に配置される。シールドの一実施形態では、変換機器は、この変換機器よりも少なくとも3倍大きい、遥かに大きなエンクロージャ内に配置される。この大きな容器は、接地された銅メッシュで覆われている。このような容器は、一般的には「ファラデーケージ」と呼ばれている。銅メッシュは、約10kHzよりも大きい外部環境電磁信号を減衰させる。
【0147】
シールドの第2の実施形態では、変換機器は、シートアルミニウムまたは構造的不連続が最小限の他の固体導体から形成された大きなエンクロージャ内に配置される。このような容器は、約1kHzよりも大きい外部環境電磁信号を減衰させる。
【0148】
シールドの第3の実施形態では、変換機器は、この変換機器よりも少なくとも5倍大きい、3つの直交ヘルムホルツコイル対の非常に大きなセット内に配置される。フラックスゲート電磁センサ容器が、ヘルムホルツコイル対の幾何学的中心の近傍に位置し、変換機器からやや離れている。フラックスゲートセンサからの信号は、フィードバック装置、例えば、Lindgren社のMagnetic Compensation Systemへの入力であり、フィードバック電流を使用してヘルムホルツコイルを駆動し、ヘルムホルツコイル内の領域をゼロ磁場にする。ヘルムホルツコイル対は、非常に大きいため、この領域も、相応に大きい。さらに、変換機器は、比較的小さいコイルを使用するため、それらの磁場は、フラックスゲートセンサと干渉するほどには外側に広がらない。ヘルムホルツコイル対のこのようなセットは、0.001Hz〜1kHzの外部環境電磁信号を減衰させる。
【0149】
シールドの第4の実施形態では、変換機器は、上述のように銅メッシュまたはアルミニウムエンクロージャのいずれかの中に配置することができ、このエンクロージャ自体は、上述のヘルムホルツコイル対のセット内に配置される。このような構成は、それらの組み合わせられた範囲にわたって外部環境電磁信号を減衰させることができる。
【0150】
上記の変換/曝露装置のそれぞれは、装置の変換/曝露ステーションで時間領域信号を信号関連磁場に変換するための構成要素を含むシステムまたは装置の一部を構成する。図8Aは、変換ステーション566の両端にある一対の変換コイル562、564から構成された変換器560を備えた一般的な転換/曝露システム548を例示している。上述のように、変換ステーションは、作用物質特異的信号に検出可能な方式で応答できる応答システム、あるいは本発明にしたがって曝露される水性培地を受け取る。この図に示されている変換器は、スペクトロメータ構成要素568、570も備えている。
【0151】
システムの制御ユニット550は、入力装置552からのユーザ入力を受け取り、ディスプレイ553で入力情報およびシステムの状態を表示するようにデザインされている。下の図8Cに示されているように、ユーザ入力は、典型的には、以下で考察されるように、磁場強度もしくは範囲、または変換もしくは曝露動作の最中に加えられる磁場強度を指定する情報、様々なタイミング変数、例えば、磁場増分および磁場サイクル時間の他、変換/曝露の合計時間を指定する情報を含む。この入力に基づいて、制御ユニットは、選択された時間にわたって望ましい変換もしくは曝露の磁場強度を達成するために、システムにおける信号増幅および減衰構成要素に適用される設定を計算する。
【0152】
システム内の記憶された時間領域信号源は、554で示されている。時間領域信号がCDもしくは他の記憶媒体に記録される場合、この信号源は、媒体およびメディアプレーヤーを含み、図示されているように、制御ユニットによって作動される。あるいは、信号源が、無線受信機またはインターネット接続によって遠隔ステーションから送信される場合は、この信号源は、遠隔信号源および受信機または接続を有する。この信号源は、同様にユニット552の制御下の従来の前置増幅器/増幅器556に接続されており、前置増幅器/増幅器556は、同様にユニット550の制御下の減衰器558に増幅された信号電圧を出力する。図8Bを参照して以下を読むと分かるように、減衰器の目的は、増幅器556からの信号電圧出力を信号電流出力に変換し、変換コイルへのこの出力電流を減衰させて、選択された範囲の磁場強度または選択された磁場を生成する。減衰器は、非常に低い磁場強度、例えば、1−5G〜10−8Gの範囲の磁場強度を有する選択された磁場を生成するように設定することができるが、生成可能な磁場強度の範囲は、これよりも遥かに大きい、例えば、1Gまたは10−8Gとしても良い。制御ボックス、増幅器/前置増幅器、および減衰器は、本明細書ではまとめて、信号源と電磁コイル装置との間の電子インターフェイスとも呼ぶ。
【0153】
一般的な一実施形態では、システムは、増幅器、前置増幅器、および減衰器に電圧および電流設定を供給して、約50の増分で約1G〜10−8Gの増分磁場を達成するためにユーザによって設定され、各増分の設定は、1〜5秒間維持され、システムは、ユーザが選択した変換期間、例えば、20分から数日間にわたって磁場強度の範囲を連続的に繰り返す。
【0154】
信号は、図示されているように、別個のチャネルを介して電磁コイル562および564に供給される。一実施形態では、Sony Model CDP CE375 CDプレーヤーが使用される。このプレーヤーのチャネル1は、Adcom Pre Amplifier Model GFP 750のCD入力1に接続される。チャネル2は、Adcom Pre Amplifier Model GFP 750のCD入力2に接続される。CDは、それぞれのチャネルからの同一の信号を再生するために記録される。あるいは、CDは、それぞれのチャネルからの異なる信号を再生するために記録され得る。ガウス性ホワイトノイズ源を、ホワイトノイズ変換制御として使用される信号源554の代わりとすることができる。本明細書では図示されていないが、システムは、状態、例えば、変換ステーション内の温度を監視するための様々なプローブを備えても良い。
【0155】
図8Aの減衰器558の実施形態の回路図は、図8Bに示されているように、電力増幅器572、例えば、National Semiconductor LM675 Power Operational Amplifierを含む。電力増幅器572は、広い帯域幅および低い入力オフセット電圧を供給し、その他の利点として、DCまたはAC用途に適している。電力増幅器572は、ピン1を介して入力電圧588に接続され、この入力電圧588は、直接、または入力を分割するように機能する1つ以上の抵抗器(582、584)を介してグランド580に接続されている。ピン2は、抵抗器600を介してグランドに接続されている。DC電源576、例えば、コンデンサ578および594と並列である、安定化されフィルタリングされた24ボルトDC電源は、ピン3およびピン5で電力増幅器572に接続されている。増幅器の出力(ピン4)は、インダクタ598、例えば、8.5Ωインダクタに接続されている。
【0156】
このような回路の典型的な減衰は、約90dBである。しかしながら、小さい抵抗器、例えば、400Ω抵抗器596を介したグランド600へのインダクタ150の接続は、さらなる減衰をもたらし、システムが、低い出力電流を生成することが可能となり、さらに他の利点ももたらされる。システムは、抵抗器596の値を変化させることによって減衰を変動させることができ、これにより出力電流が変動する。加えて、システムは、インダクタ598とグランド600との間に直列に低域通過RCフィルタを配置して、回路内で自然発生するあらゆる音によって生じる自励発振を排除または最小限にすることができる。
【0157】
より一般的には、信号電圧ではなく信号電流によって生成され、かつ/または1G〜10−8Gの選択された範囲内、例えば、10−3〜10−8G、または10−6〜10−8Gを生成すると計算された、増分される磁場による変換/曝露は、信号電圧によって生成される磁場および/または一定の磁場強度および/または約10−5Gを超える磁場強度を利用する従来の方法と比較して改善された変換/曝露法である。
【0158】
図8Aの変換/曝露システム548の動作特性が、図8Cに例示されており、この図では、制御ユニット、信号源、前置増幅器および増幅器、および減衰器は、まとまってシステムの電子インターフェイスを構成し、点線のボックス550で示されている。この図の変換システム560は、例えば、図7のコイル構造、またはその変更形態とすることができる。この図から分かるように、制御ユニットは、552でユーザ入力によって、指定された磁場強度または変換コイルで望ましい増分される磁場強度範囲に初期設定され(ボックス602)、望ましい磁場増分およびサイクル時間もユーザによって設定される(ボックス604)。例えば、ユーザは、一定の磁場強度、典型的には、1G〜10−8G、例えば、10−5、10−6、10−7、または10−8G、または1G〜10−8Gの磁場強度の増分範囲、例えば、1G〜10−8Gまたは10−5〜10−8Gの範囲を指定することができる。一定の磁場強度の場合、ユーザは、望ましい「オン」および「オフ」期間ならびに変換の合計期間、例えば、1 24時間の変換合計期間にわたって5分の「オン」と1分の「オフ」を入力することができる。増分する磁場強度範囲が、初期に選択される場合、ユーザは、磁場強度増分および合計増分時間、例えば、10分の合計サイクル時間に対して、それぞれ12秒の増分時間で、1G〜10−8Gにわたって50の等しい増分をさらに指定する。増分される磁場強度の操作では、制御ユニットは、好ましくは、標的が各サイクル内で増分される磁気パルスの離散パルスに曝露されるように、ぞれぞれの増分される「オン」間隔の間に短い「オフ」間隔、例えば、1ミリ秒を入れるように動作する。
【0159】
1つの好ましい変換コイルの構成は、変換/曝露ステーションの両側に並置された2つの電磁コイルからなっている。加えられる時間領域信号の電流レベルの関数であるコイル環境内の磁場強度は、公知の方法、例えば、図のボックス606に示され、Applications of Maxwell’s Equations,Cochran,J.F.およびHeinrich,B.、Dec,2004の122〜142頁に詳述されている方法によって計算することができる。この計算は、制御ユニットで、606で行われる。好ましい一実施形態では、公称10−8Gで始まり、一連の1〜99ステップで、1Gの公称最大磁場強度に達し、この時点で同じ範囲にわたる磁場パルスの新しいサイクルが始まる、計算された磁場強度を生成するために、コイルに加えられる信号電流は、磁場強度の0.5〜99.5dBの増分で1〜5秒ごとに増分される。連続した等しい強度の磁場パルス間の間隔は、好ましくは、1〜100秒の範囲である。
【0160】
変換/曝露パラメータ、すなわちシステムが曝露される、選択される変換/曝露条件は、(i)加えられる時間領域信号の電流、(ii)加えられる信号の期間、および(iii)加えられる信号のスケジューリングである。加えられる電流は、僅かにゼロよりも大きい値から最大約1000mAの範囲とすることができる。変換の合計時間は、2、3分から最大数日間とすることができる。
【0161】
図8Cに608で示されているボックスは、図8Aに示されているように、信号源、前置増幅器、増幅器、および減衰器を含む。これらの構成要素は、制御ユニットに記憶される望ましい電流、電流増分、サイクル、および合計変換時間を供給するために、制御ユニットによって作動され、制御される。減衰器からの電流出力は、図示されているように変換コイル(複数可)560に送らされ、変換/曝露ステーションで望ましい磁場強度を生成する。変換事象の過程を、標的系の光学(または他の測定可能な)変化における変化によって監視することができる場合、この情報は、制御ユニットの構成要素610に送られ、この情報を、構成要素606へのフィードバックによって変換条件を制御するために使用することができ、かつ/または変換/曝露条件を手動で制御するためにユーザに表示することができる。
【0162】
(V.パクリタキセル信号から生成される水性医薬組成物の調製および作用物質特異的活性)
一態様では、本発明は、水性培地が検出可能なパクリタキセル活性を獲得するまで、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、または他の癌細胞抑制化合物を含まない水性培地を、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号で処理することによって調製された水性抗腫瘍組成物を含む。作用物質特異的活性は、(i)標準的な培養条件下で、24時間の培養期間にわたって、この組成物が培養中のU87 MGヒト膠芽腫細胞に添加されたときにこのU87細胞の増殖を阻害し、かつ/または(ii)このような腫瘍を有する被験体に投与されたときにパクリタキセル応答性腫瘍の増殖を阻害する、この組成物の能力によって証明される。このセクションは、水性培地が細胞培養培地である組成物、および水性培地が超純水である組成物などの例示的な組成物の調製、ならびに組成物の作用物質特異的活性について記載する。
【0163】
(A.パクリタキセル信号組成物の調製)
DME培地(4,500mgs/lのD−グルコースが添加されたInvitrogen SKU#10313−021(Carlsbad,CA)培地)を35mlガラスバイアルに入れ、室温にした。この培地を、Vortexミキサー(VWR,Westchester,PA)を最大の設定にして20秒間ボルテックスし、磁場発生用のソレノイドコイルを有する変換/曝露装置のサンプルステーションに配置した。
【0164】
培地を含むバイアルを、3つの選択された範囲:1G〜10−1G(範囲1);10−2G〜10−3G(範囲2)、および10−5G〜10−6G(範囲3)の1つの範囲で磁場強度を生成すると計算された電流レベルで、20分間、上記のタキサンM2(3)信号に曝露させた。それぞれの選択された範囲では、タキサンM2(3)信号は、それぞれ1秒で0.5dBの増分で、上部から底部、そして底部から上部へと、2つの磁場強度の両極端の間で交互した。したがって、例えば、範囲1では、初期減衰器の設定は、1Gの磁場強度を生成し、次いで、1秒/ステップで、0.5dBステップで減少し、低い10−1Gの範囲に達すると、サイクルが繰り返され、20分間にわたって行われるように計算された。
【0165】
20分の曝露期間の終了時に、バイアルをコイルステーションから取り外して、同じ曝露前ボルテックス条件下で20秒間、再びボルテックスした。曝露された培地を、後述する細胞培養培地研究で即座に使用した。
【0166】
タキサン信号水性培地は、超純水(2倍希釈)を細胞培養培地の代わりに使用して、上で指定した3つの範囲のそれぞれの範囲内で、20分のタキサン信号の曝露の前および後の20秒のボルテックスステップを含む同一の方法によって調製した。
【0167】
(B.パクリタキセル信号細胞培養組成物中でのヒト膠芽腫細胞の増殖の阻害)
U87 MGヒト膠芽腫細胞は、American Type Culture Collection(ATCC,Rockville MD,USA)から購入した。これらの細胞を、4,500mg/lのD−グルコースとPen/Strepp/Gluおよび非必須アミノ酸が添加された完全DMEM増殖培地(Invitrogen)で増殖させた。これらの細胞を、細胞培養フラスコ(75ml)に播種し、5%CO2の十分に加湿された大気中で37℃で培養した。細胞がコンフルエンスに達したら、後述するように増殖させ、かつ/または保存した。
【0168】
増殖のために、培地を取り出し、付着した細胞を、PBSで2回洗浄し、次いで細胞が脱離するまでトリプシンで処置した。新鮮な培地を添加し、細胞懸濁物を、新しい培養フラスコに入れた。保存のために、該細胞を5%DMSOが添加された95%完全増殖培地で凍結させた。
【0169】
信号の変換のために、約100μlの2,500のU−87細胞を、96ウェルマイクロタイタープレートの6つのウェルのそれぞれに添加し、37℃で一晩定着させた。ウェルの培地を除去して、100μlの新鮮な培地(6ウェル)、または選択させた磁場設定でタキサン信号に曝露された新鮮な培地と交換した。次いで、プレートを、5%CO2の十分に加湿された大気中で、37℃でインキュベートした。
【0170】
新鮮な培地の添加から24時間後に、10μlのAlamarBlue死細胞検出試薬(viability dye)を、5つの群のそれぞれの6つのウェルに添加し、生細胞カウントの指標として全蛍光を測定した。生細胞カウントを、細胞増殖阻害の指標として、未処置ウェルの平均細胞数に対する細胞のパーセンテージに変換した。図10に示されている研究結果は、24時間後に、タキサン信号が曝露された培地中の細胞増殖が、約20%の阻害の範囲で、有意な細胞増殖阻害効果を受けたことを示している。
【0171】
(C.パクリタキセル信号超純水組成物中でのマウスの膠芽腫の処置)
タキサン信号に曝露された水の動物モデルの膠芽腫を抑制する能力を調べた。この研究では、8匹のマウスの9つの群のそれぞれに、右側腹部に7.355×106のU−87膠芽腫細胞を注入し、動物に細胞を接種してから1日後、または腫瘍が75〜100mm3に達してから、様々な方式の処置を開始した。処置群を以下の表1に示す。
【0172】
パクリタキセルをまず、CremaphorELとエタノールの1:1(v/v)の混合物中に溶解し、4℃で保存した。1.5mg/mlの濃度にする薬物の最終希釈を、使用の直前に0.9%NaClで行った。群3および群4では、パクリタキセルを、動物の体重1kg当たり15mgの用量で5日連続して尾静脈に静脈投与した。各動物に実際に投与された量は、上記のパクリタキセル製剤約0.2mlであった。
【0173】
群5および群6の動物には、範囲1の磁場で、セクションVIIで記載されたように調製された、タキサン信号に曝露された水20ml/kg(または約0.5ml)を投与した。曝露された水組成物を、腫瘍細胞を動物に接種してから1日目(群5)、または腫瘍の体積が75〜100mm3に達してから(群6)、調製の直後に強制経口投与した。群7の動物は、腫瘍を有していなかったが、M2(3)水で処置した。群8および群9の動物はそれぞれ、群5および群6の動物と同様に処置したが、動物に投与した曝露水は、超純水をホワイトノイズ信号に曝露することによって調製した点は異なる。投与は、26日目までの残りの研究期間の間、1日1回行った。
【0174】
全ての群に対して、腫瘍体積をキャリパー連続測定により1日おきに測定して腫瘍の幅および長さを決定し、式:腫瘍体積=(長さ×幅2)/2から腫瘍の体積を概算した。
【0175】
表1.処置群
【0176】
【表1】
ここで、研究の結果を考察する。図11は、未処置動物群(群1、X、細い線);ホワイトノイズ水で処置した動物(群8および群9、X、太い線);パクリタキセルビヒクルで処置した動物(群2、三角形、細い線)、パクリタキセルで処置した動物(群3および群4、三角形、太い線);およびタキサン水で処置した動物(群5および群6、四角形、太い線)の腫瘍体積の24日間にわたるプロットである。パクリタキセルで観察された結果と同様に、研究期間の腫瘍体積の増加は、未処置群(約650mm3)では、タキサン信号に曝露された水で処置した動物の2倍以上であった。
【0177】
これらの研究は、予備的ではあるが、細胞培養培地および超純水の両方を含む水性培地が作用物質特異的信号の影響を受け得ることを実証している上記の細胞培養の研究に一致しているため、培地自体が、たとえ信号が除去された後でも信号に類似した効果をもたらすことができる。
【0178】
(VI.オリゴヌクレオチドから得られる治療用信号および組成物)
別の態様では、本発明は、オリゴヌクレオチドを含まない水性培地を、この水性培地が治療用オリゴヌクレオチドに関連した検出可能な活性を獲得するまで、治療用オリゴヌクレオチドから生じた低周波数時間領域信号で処理することによって調製される水性組成物を含む。この信号および組成物が得られる例示的な治療用オリゴヌクレオチドには、GAPDHアンチセンスRNAまたはPCSK9アンチセンスRNAが含まれる。オリゴヌクレオチド特異的信号を生成する方法および水性組成物を調製する方法、ならびに4つの異なる組成物の作用物質特異的活性の実証が、以下のサブセクションAおよびBに示されている。
【0179】
(A.GAPDHアンチセンスRNA)
腫瘍細胞は、解糖速度の増加を特徴的に示し、一部の癌では、この増加は、高レベルのグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に起因する。例えば、GAPDH遺伝子発現のレベルは、通常の頸部組織と比較して、3つの子宮頸癌細胞系(HeLa、CUMC−3、およびCUMC−6)に大幅に増加していることが報告されている(Kim,J.W.ら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.1999 Dec;9(6):507−13)。この研究はまた、GAPDHアンチセンスが、細胞増殖の低下をもたらし、これと同時にコロニー形成効率が低下したことを示した。培養癌細胞に対するGAPDHアンチセンスのこの効果は、DNA断片化の増大を含むアポトーシスプロセスに関連していた。
【0180】
(GAPDHアンチセンスRNAシグナルの生成および組成物の調製)
配列番号1で示されている配列を有するGAPDHアンチセンスRNA分子を水に溶解して10−15μMの最終濃度にして、この溶液を信号記録の直前に20秒間、ボルテックスした。信号記録は、上のセクションIIIに記載されているように行った。非標的配列(配列番号2)を有するコントロールGAPDHアンチセンスRNAを同様に調製し、その信号を記録した。高スコア時間領域信号を使用して、パクリタキセルの研究に関する上のセクションVIIAに記載されているように培養培地を処置した。
【0181】
(方法および結果)
培養の48時間後に、アンチセンス信号処理培養培地で増殖中の細胞が、培養培地を非標的配列信号で処理することによって調製された培養培地でのコントロール細胞増殖の100%のレベルに対して78%のGAPDH活性を示した。
【0182】
(B.PCSK9アンチセンスRNA)
前駆タンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)の機能喪失突然変異は、肝細胞膜上のLDL−Rの密度を増加させ、LDLの血漿からの除去速度を速め、かつLDLのレベルを低下させることが分かっている。したがって、PCSK9合成の阻害またはPCSK9のLDL−Rへの結合の阻害をもたらす戦略は、血漿コレステロールレベルを低下させるはずであると期待され、この効果が、PCSK9に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびPCSK9に対するポリクローナル抗体で実証された。
【0183】
(PCSK9アンチセンスRNAシグナルの生成および組成物の調製)
配列番号3によって示される配列を有するPCSK9アンチセンスRNA分子を水に溶解して10−15μMの最終濃度にして、この溶液を信号記録の直前に20秒間、ボルテックスした。コントロール、非標的配列は、上の配列番号2を有する。信号記録は、上のセクションIIIに記載されているように行った。高スコア時間領域信号を使用して、信号−水組成物を調製した。
【0184】
(方法および結果)
12〜13週齢のC57BL/6Jマウスを、それぞれ5匹の2つの群:2倍希釈水が与えられたコントロール群および信号活性化水が与えられた処置群に分けた。投与は、時間0と12時間後に0.5mlの強制経口投与によって行った。24時間後に、動物を屠殺し、脂質化学検査のために血液を採取し、標準的な方法にしたがって肝pCSK9 mRNAについてアッセイするために肝臓を取り出した。
【0185】
図12Aに示されているように、コントロール(100%)に対して表されるLDLcのレベルは、1日目に64%に低下し、5匹のコントロール動物および5匹の処置動物についての個々の値は、図12Bに示されている。HDLcのレベルは、図12Cに示されているように1日目以降、実質的に一定に維持された。トリグリセリドのレベルは、図12Dの個々のコントロール動物および処置動物に見られるように、全体的な低下を示した。pCSK9 mRNAの劇的なノックダウン(約90%)が、数匹の動物で観察される一方、殆どノックダウン効果を示さない動物もいた。
【0186】
(VII.医薬組成物を調製して、その活性を確認するシステム)
本発明の一部を構成する他のものは、水性組成物を哺乳動物被験体に薬学的有効量投与したときに、この被験体に対して作用物質特異的な薬学的効果をもたらすことを目的とする該水性組成物を調製するシステムであり、例示的な1つのシステムが、図13に730で示されており、このシステムは、選択された電流レベルで薬物誘導時間領域信号を出力する電子ユニット732、および本発明の薬物信号組成物を調製するために水性培地を活性化させ、この組成物の活性を試験するための活性化ユニット734を備えている。
【0187】
Voyager(商標)ユニットと呼ばれるユニット732は、図8A〜図8Cを参照して上記した制御ユニット550と実質的に同じ構成要素を備え、その中には、ディスプレイ736、ユーザ入力用のキー738、ならびに活性化ユニットで選択された磁場強度の磁場を生成するように計算された電流レベルを有する信号出力に低周波数時間領域信号を変換する回路およびソフトウエアが含まれる。このユニットには、複数のカードリーダー、例えば、それぞれが適切な記憶媒体を有する薬物信号カード742を受け取るリーダー740が含まれ、この記憶媒体には、上で詳述されたように生成され選択された、選択された薬物低周波数時間領域信号が記憶されている。例えば、カード740の1つは、上記のin vitroおよびin vivo研究で利用されたようなパクリタキセル時間領域信号を含み得る。別の一般的な実施形態では、薬物信号カードおよびカードリーダーは、信号記憶CD−ROMおよび1つ以上の内部CD−ROMプレーヤーによって、または要求された薬物誘導低周波数時間領域信号を、例えば、電話またはインターネット回線を介して受け取るのに適したトランシーバによって置き換えられる。
【0188】
Voyager制御ユニットの出力は、遮蔽線744を介して活性化ユニット734に接続されており、遮蔽線744は、活性化ユニット内の活性化ステーション502の内部に望ましい磁場を生成するために使用される導線コイル510に接続された導体512、514にユニットを接続している。このステーションは、水性培地、例えば、本発明の薬物信号組成物に活性化される超純水またはリポソーム懸濁物を含む容器またはバイアルを受け取れる寸法である。コイル巻線は、図7を参照して上記した巻線と同様であるが、内部にサンプルが保持される単一ソレノイドコイルとしても良い。コイル(複数可)は、活性化ステーション内に均一の磁場を生成するようにデザインされている。システムは、薬物信号への曝露の前および/または後で薬物信号内容物を撹拌するための卓上型ボルテックス装置を追加的に備えても良い。
【0189】
このシステムを使用すると、薬剤師または医師は、要求されると、1サンプル当たり約10〜30分未満の時間で新しい薬物信号組成物を容易に調製することができる。例えば、複数の患者の処置で大量に必要な場合は、システムは、1回量の組成物をバッチ形式で調製できる複数の曝露ステーションを備えても良いし、または複数回量に適した量の組成物を調製するように大きくしても良い。
【0190】
組成物が調製されたら、その薬物等価活性を、分光分析手段、例えば、それぞれが構造水に関連したスペクトル特性を検出できる紫外線分光法、フーリエ変換(FT)赤外線分光法、および/またはラマン分光法によって確認することができる(Rao,M.L.ら、Current Science、98(11):1500 June,2010)。このアプローチでは、様々な既知の活性を有する一連の信号成分のそれぞれのUV、赤外線、および/またはラマンスペクトルが、既知のサンプルスペクトルに対して比較できる標準として役立つように事前に生成される。あるいは、装置は、水構造における変化を検出できる原子間力顕微鏡(AFM)を備えることもできる。分光計は、光源504と光検出器506によって図面に模式的に示されている。
【0191】
UV−Vis(可視)分光法は、例えば、Chai,B.ら、J.Phys Chem A.2008,112:2242−2247に記載されている方法にしたがって、UV分光計で行うことができる。この文献に記載されているように、吸収スペクトル測定を、単一ビームHewlett−Packard(Model 8452A)ダイオードアレイ分光光度計で行う。内寸で長さが12.5mm、幅が2mm、そして高さが45mmのUV水晶微小方形キュベット(Sigma Aldrich)を使用する。キュベットの送信域は、17nm〜2.7μmである。キュベットの光路長は2mmである。表示されるスペクトルは、少なくとも10回のスキャンの平均である。
【0192】
IR分光法は、例えば、Roy,R.、Materials Res.Innov、2005,9(4):1433およびRao,M.ら、Materials Letters、2008,62(10−11):1487−1490に記載されているように、従来の手段によって行うことができる。IR分光計は、例えば、Amrein,A.ら、J.Phys Chem、1988 92(19): 5455−5466に記載されているように、フーリエ変換赤外線吸収(FTIR)分光法を行うために備えることができる。ラマン分光法は、公知のラマン分光法器具を用いて行われ、別のラマンスペクトルを、例えば、785nmと532nmで得ることができる。
【0193】
図14は、システム内で調製される水性組成物の作用物質特異的活性を決定または確認するためにシステムで行われるステップのフロー図である。この図に762で示されているように、システムは、スペクトル、例えば、UV、UV−Vis、IR、またはラマン、既知の作用物質特異的活性を有する水性組成物について事前に記録されたスペクトルのファイルを備えている。したがって、例えば、このファイルは、パクリタキセル信号に対して様々な曝露条件下で生産された水性組成物について得られ、かつ、例えば、培養細胞系中でのパクリタキセル活性について試験された多数のスペクトルを含み得る。したがって、それぞれのスペクトルは、所与の試験された活性に一致する。
【0194】
システムで新たに生成された試験サンプルのスペクトルを記録したら、SX事前記録スペクトルのそれぞれを、766で連続的に回収し、764で試験スペクトルに対して整合させる。この整合は、従来の曲線製合法によって、例えば、差スペクトルを生成して、この差スペクトルの1つ以上の特徴、例えば、選択された周波数のピーク高さの比を定量することによって行うことができる。764で、事前記録されたスペクトルSXに最適な整合が確認されたら、最適なスペクトルに一致する活性が、信号印加組成物の活性化を決定または確認するためにユーザに表示される。
【0195】
より一般的には、本発明は、(a)(i)紫外線分光法、(ii)赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法の1つによって本発明の組成物のスペクトルを測定し、そして(b)測定したスペクトルが、そのスペクトル成分および振幅が既知の癌細胞阻害活性を有するスペクトルに類似しているかを決定することによって、本発明の信号組成物の作用物質特異的活性を確認する方法を包含する。
【0196】
本発明は、水性組成物が哺乳動物被験体に薬学的有効量投与されたときに、この被験体に作用物質特異的な薬学的効果をもたらすことを目的とする該水性組成物を調製するシステムをさらに提供する。このシステムは、(a)水性培地を作用物質特異的特性を有する水性組成物に変換することができる条件下で、該水性培地を作用物質特異的信号で処理するための装置;および(b)(i)紫外線分光法、(ii)フーリエ変換赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法の1つによってこの組成物のスペクトルを生成し、これにより、測定したスペクトルが、そのスペクトル成分および振幅が既知の作用物質特異的効果を有するスペクトルに類似しているかを確認できる分光器を備えている。
【0197】
システムは、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地の1つを調製するために水性培地を処理するための装置をさらに備えても良い。例えば、この装置は、組成物を機械的に破壊するためのボルテックス装置とすることができる。
【0198】
本発明の特定の実施形態および例は、例示目的で上記したが、当業者が理解できるような様々な等価の変更形態も本発明の範囲内で可能である。具体的には、本明細書に記載される変換方法にしたがって、化学系、生化学系、または生物系を作用物質特異的時間領域信号に曝露することによって該系に信号特異的効果をもたらす方法を、該系の標的成分に直接作用させても良いし、または、たとえ信号が停止された後でも、標的系の水性培地が信号特異的効果を生成するように変更される機構によって間接的に作用させても良いし、あるいはこれらの2つ機構を組み合わせても良いことを理解できよう。変更された状態機構の重要な意味は、対象の変換信号への比較的短時間の曝露が、例えば、1〜24時間にわたって長期の薬物効果をもたらすことができることである。
【0199】
本明細書に記載された本発明の教示は、必ずしも上記のシステムに適用しなければならないわけではなく、他のシステムにも適用することができる。上記の様々な実施形態の要素および作用を組み合わせてさらなる実施形態を提供することもできる。
【0200】
添付の出願書類に列記され得る全てを含む、上記の特許、出願、および他の参考文献はいずれも、参照により本明細書に組み入れられるものとする。必要に応じて、本発明の態様を変更して、上記の様々な参考文献のシステム、機能、および概念を利用して、本発明のなおさらなる実施形態を提供することもできる。
【0201】
配列表
配列番号1:GAPDHを標的とするアンチセンス鎖
5’−AAA GUU GUC AUG GAU GAC CTT−3’
配列番号2:非標的コントロールのアンチセンス鎖
5’−GGG UUG CGC UUA CUU ACG ATT−3’
配列番号3:PCSK9を標的とするアンチセンス鎖
5’−UCC GAA UAA ACU CCA GGC CTA−3’
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性抗腫瘍組成物であって、前記組成物は、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、または他の癌細胞阻害化合物を含まない水性培地を、検出可能なパクリタキセル活性を前記水性培地が獲得するまで、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号で処理することによって生成され、前記検出可能なパクリタキセル活性は、
(i)標準的な培養条件下で24時間の培養期間にわたって、前記組成物が培養中のヒト膠芽腫細胞に添加された場合に、前記ヒト膠芽腫細胞の成長を阻害する前記組成物の能力、および/または
(ii)パクリタキセル応答性腫瘍を有する被験体に投与されたときにこのような腫瘍の成長を阻害する前記組成物の能力
によって証明される、組成物。
【請求項2】
前記水性培地が、機械的に破壊された水性培地、気泡を含む界面水性培地、または機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1〜100μMのパクリタキセル濃度の単位で表される活性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記水性培地が、リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
0.05〜5%のエタノールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物を形成する方法であって、
(a)電磁コイル装置のサンプル領域内に水性培地を配置するステップと、
(b)前記水性培地を、培養中の腫瘍細胞の増殖の阻害、またはin vivoでの腫瘍の増殖の阻害に有効であるようにするために十分な時間にわたって、1G(ガウス)〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号を前記装置に供給することによって生成される磁場に前記水性培地を曝露するステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
ステップ(b)で使用される前記低周波数時間領域信号が、
(i)磁気シールドおよび電磁シールドの両方を有するサンプル容器に、パクリタキセルまたはその類似体の水性サンプルを配置するステップであって、前記サンプルが、低周波数分子信号の信号源として機能し;前記磁気シールドが、極低温容器の外部にある、ステップと、
(ii)前記極低温容器内のサンプル源放射線で構成される1つ以上の時間領域信号を記録するステップと、
(iii)パクリタキセル応答系が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、電磁変換コイル(複数可)に前記信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、前記パクリタキセル応答系においてパクリタキセルの効果を模倣するのに有効な信号を、ステップ(ii)で記録された前記信号から識別するステップと、
によって生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル中のパクリタキセルまたはその類似体の濃度が10−11〜10−19Mである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記装置の前記サンプル領域内に配置される前に、前記サンプルを処理して:(i)機械的に破壊されたサンプル培地、(ii)気泡を含む界面サンプル培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面サンプル培地、および(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物のうちの1つを形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
チューブリン分子の懸濁物が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に前記信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、ポリマーの形成を促進し、かつ/または形成されたポリマーを安定化させることによって、チューブリン懸濁物におけるチューブリン重合度の促進に有効なステップ(ii)の信号を識別するステップ(iii)において、ステップ(b)で使用される前記パクリタキセル特異的時間領域信号が生成される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)の前および/または後で、前記水性培地を処理して:(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、および(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物のうちの1つを形成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)の前および/または後で、前記水性培地をボルテックスによって機械的に撹拌して、機械的に破壊された水性培地を形成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a)(i)紫外線分光法、(ii)フーリエ変換赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法のうちの1つによって前記組成物のスペクトルを生成するステップと、
(b)前記生成したスペクトルが、そのスペクトル組成が既知の癌細胞阻害活性を有する同様に調製された水性組成物のスペクトルに類似しているかを決定するステップと、
によって、請求項1に記載の組成物の前記癌細胞阻害活性を確認する方法。
【請求項14】
前記組成物が作用物質応答性化学系または生物系に加えられたときに、前記系に作用物質特異的効果をもたらすために有効な水性組成物を形成する方法であって、
(a)電磁コイル装置のサンプル領域内に水性培地を配置するステップと、
(b)前記水性培地を培養中の腫瘍細胞の増殖の阻害、またはin vivoでの腫瘍の増殖の阻害に有効であるようにするために十分な時間にわたって、1G(ガウス)〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、低周波数時間領域作用物質特異的信号を前記装置に供給することによって生成される磁場に前記水性培地を曝露するステップと、を含む、方法。
【請求項15】
ステップ(b)で使用される前記低周波数時間領域信号が、
(i)磁気シールドおよび電磁シールドの両方を有するサンプル容器に前記作用物質の水性サンプルを配置するステップであって、前記サンプルが、低周波数分子信号の信号源として機能し;前記磁気シールドが、極低温容器の外部にある、ステップと、
(ii)前記極低温容器内のサンプル源放射線から構成される1つ以上の時間領域信号を記録するステップと、
(iii)作用物質応答系が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に前記信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、前記作用物質応答系において前記作用物質の効果を模倣するのに有効な信号を、ステップ(ii)で記録された前記信号から識別するステップと、によって生成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル中の前記作用物質の濃度が10−10〜10−16μMである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記装置の前記サンプル領域内に配置する前に、前記サンプルを処理して、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、および(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物を調製する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(b)の前および/または後で、前記水性培地を処理して、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、および(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物の1つを調製するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)の前および/または後で、前記水性培地をボルテックスによって機械的に撹拌して、機械的に破壊された水性培地を形成するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記水性培地は、リポソームの懸濁物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記作用物質が、(i)パクリタキセル、(ii)パクリタキセルの類似体、および(iii)治療用オリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記治療用オリゴヌクレオチドが、GAPDHアンチセンスRNAおよびPCSK9アンチセンスRNAからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドを含まない水性培地を、前記水性培地が治療用オリゴヌクレオチドに関連した統計的に有意な活性を獲得するまで、前記治療用オリゴヌクレオチドから生じる低周波数時間領域信号で処理することによって調製される水性組成物。
【請求項24】
前記治療用オリゴヌクレオチドが、GAPDHアンチセンスRNAおよびPCSK9アンチセンスRNAからなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記水性培地が、機械的に破壊された水性培地、気泡を含む界面水性培地、または機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記水性培地が、0.5〜10容量%のエタノールを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
(a)(i)紫外線分光法、(ii)赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法のうちの1つによって前記組成物のスペクトルを生成するステップと、
(b)前記生成したスペクトルが、そのスペクトル組成が既知の作用物質特異的効果を有する同様に調製された水性組成物のスペクトルに類似しているかを決定するステップと、によって、請求項23に記載の組成物の作用物質特異的活性を確認する方法。
【請求項28】
水性組成物が哺乳動物被験体に薬学的有効量で投与されたときに、前記被験体に作用物質特異的な薬学的効果をもたらすことを意図する前記水性組成物を生成するシステムであって、
(a)水性培地を、作用物質特異的特性を有する水性組成物に変換するのに有効な条件下で、前記水性培地を作用物質特異的信号で処理するための装置と、
(b)(i)紫外線分光法、(ii)フーリエ変換赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法のうちの1つによって前記組成物のスペクトルを生成し、これにより、前記測定したスペクトルが、そのスペクトル成分および振幅が既知の作用物質特異的効果を有するスペクトルに類似しているかを確認できる分光装置と、を備えている、システム。
【請求項29】
前記装置(a)が、
(a)作用物質特異的時間領域信号源と、
(b)前記装置の容器ホルダ内の、水性培地を含む容器を受け取るための電磁変換コイル装置と、
(c)水性培地を前記作用物質特異的組成物に変換するのに十分な期間にわたって、前記装置のサンプル領域における容器内に含まれる水性培地において、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を有する磁場が生成されると計算された供給源−信号電流を、前記装置に供給するための、前記信号源と前記装置との間の電子インターフェイスと、を備えている、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地のうちの1つを形成するために水性培地を処理する装置をさらに備えている、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
機械的に破壊された水性培地を形成するための前記装置がボルテックス装置である、請求項30に記載のシステム。
【請求項1】
水性抗腫瘍組成物であって、前記組成物は、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、または他の癌細胞阻害化合物を含まない水性培地を、検出可能なパクリタキセル活性を前記水性培地が獲得するまで、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号で処理することによって生成され、前記検出可能なパクリタキセル活性は、
(i)標準的な培養条件下で24時間の培養期間にわたって、前記組成物が培養中のヒト膠芽腫細胞に添加された場合に、前記ヒト膠芽腫細胞の成長を阻害する前記組成物の能力、および/または
(ii)パクリタキセル応答性腫瘍を有する被験体に投与されたときにこのような腫瘍の成長を阻害する前記組成物の能力
によって証明される、組成物。
【請求項2】
前記水性培地が、機械的に破壊された水性培地、気泡を含む界面水性培地、または機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1〜100μMのパクリタキセル濃度の単位で表される活性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記水性培地が、リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
0.05〜5%のエタノールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物を形成する方法であって、
(a)電磁コイル装置のサンプル領域内に水性培地を配置するステップと、
(b)前記水性培地を、培養中の腫瘍細胞の増殖の阻害、またはin vivoでの腫瘍の増殖の阻害に有効であるようにするために十分な時間にわたって、1G(ガウス)〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、パクリタキセルまたはその類似体から生じる低周波数時間領域信号を前記装置に供給することによって生成される磁場に前記水性培地を曝露するステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
ステップ(b)で使用される前記低周波数時間領域信号が、
(i)磁気シールドおよび電磁シールドの両方を有するサンプル容器に、パクリタキセルまたはその類似体の水性サンプルを配置するステップであって、前記サンプルが、低周波数分子信号の信号源として機能し;前記磁気シールドが、極低温容器の外部にある、ステップと、
(ii)前記極低温容器内のサンプル源放射線で構成される1つ以上の時間領域信号を記録するステップと、
(iii)パクリタキセル応答系が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、電磁変換コイル(複数可)に前記信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、前記パクリタキセル応答系においてパクリタキセルの効果を模倣するのに有効な信号を、ステップ(ii)で記録された前記信号から識別するステップと、
によって生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル中のパクリタキセルまたはその類似体の濃度が10−11〜10−19Mである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記装置の前記サンプル領域内に配置される前に、前記サンプルを処理して:(i)機械的に破壊されたサンプル培地、(ii)気泡を含む界面サンプル培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面サンプル培地、および(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物のうちの1つを形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
チューブリン分子の懸濁物が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に前記信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、ポリマーの形成を促進し、かつ/または形成されたポリマーを安定化させることによって、チューブリン懸濁物におけるチューブリン重合度の促進に有効なステップ(ii)の信号を識別するステップ(iii)において、ステップ(b)で使用される前記パクリタキセル特異的時間領域信号が生成される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)の前および/または後で、前記水性培地を処理して:(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、および(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物のうちの1つを形成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)の前および/または後で、前記水性培地をボルテックスによって機械的に撹拌して、機械的に破壊された水性培地を形成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a)(i)紫外線分光法、(ii)フーリエ変換赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法のうちの1つによって前記組成物のスペクトルを生成するステップと、
(b)前記生成したスペクトルが、そのスペクトル組成が既知の癌細胞阻害活性を有する同様に調製された水性組成物のスペクトルに類似しているかを決定するステップと、
によって、請求項1に記載の組成物の前記癌細胞阻害活性を確認する方法。
【請求項14】
前記組成物が作用物質応答性化学系または生物系に加えられたときに、前記系に作用物質特異的効果をもたらすために有効な水性組成物を形成する方法であって、
(a)電磁コイル装置のサンプル領域内に水性培地を配置するステップと、
(b)前記水性培地を培養中の腫瘍細胞の増殖の阻害、またはin vivoでの腫瘍の増殖の阻害に有効であるようにするために十分な時間にわたって、1G(ガウス)〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で、低周波数時間領域作用物質特異的信号を前記装置に供給することによって生成される磁場に前記水性培地を曝露するステップと、を含む、方法。
【請求項15】
ステップ(b)で使用される前記低周波数時間領域信号が、
(i)磁気シールドおよび電磁シールドの両方を有するサンプル容器に前記作用物質の水性サンプルを配置するステップであって、前記サンプルが、低周波数分子信号の信号源として機能し;前記磁気シールドが、極低温容器の外部にある、ステップと、
(ii)前記極低温容器内のサンプル源放射線から構成される1つ以上の時間領域信号を記録するステップと、
(iii)作用物質応答系が、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を生成すると計算された信号電流で電磁変換コイル(複数可)に前記信号を供給することによって生成される磁場に曝露されたときに、前記作用物質応答系において前記作用物質の効果を模倣するのに有効な信号を、ステップ(ii)で記録された前記信号から識別するステップと、によって生成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル中の前記作用物質の濃度が10−10〜10−16μMである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記装置の前記サンプル領域内に配置する前に、前記サンプルを処理して、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、および(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物を調製する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(b)の前および/または後で、前記水性培地を処理して、(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地、および(iv)リポソームまたは他のナノ粒子の懸濁物の1つを調製するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)の前および/または後で、前記水性培地をボルテックスによって機械的に撹拌して、機械的に破壊された水性培地を形成するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記水性培地は、リポソームの懸濁物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記作用物質が、(i)パクリタキセル、(ii)パクリタキセルの類似体、および(iii)治療用オリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記治療用オリゴヌクレオチドが、GAPDHアンチセンスRNAおよびPCSK9アンチセンスRNAからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドを含まない水性培地を、前記水性培地が治療用オリゴヌクレオチドに関連した統計的に有意な活性を獲得するまで、前記治療用オリゴヌクレオチドから生じる低周波数時間領域信号で処理することによって調製される水性組成物。
【請求項24】
前記治療用オリゴヌクレオチドが、GAPDHアンチセンスRNAおよびPCSK9アンチセンスRNAからなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記水性培地が、機械的に破壊された水性培地、気泡を含む界面水性培地、または機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記水性培地が、0.5〜10容量%のエタノールを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
(a)(i)紫外線分光法、(ii)赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法のうちの1つによって前記組成物のスペクトルを生成するステップと、
(b)前記生成したスペクトルが、そのスペクトル組成が既知の作用物質特異的効果を有する同様に調製された水性組成物のスペクトルに類似しているかを決定するステップと、によって、請求項23に記載の組成物の作用物質特異的活性を確認する方法。
【請求項28】
水性組成物が哺乳動物被験体に薬学的有効量で投与されたときに、前記被験体に作用物質特異的な薬学的効果をもたらすことを意図する前記水性組成物を生成するシステムであって、
(a)水性培地を、作用物質特異的特性を有する水性組成物に変換するのに有効な条件下で、前記水性培地を作用物質特異的信号で処理するための装置と、
(b)(i)紫外線分光法、(ii)フーリエ変換赤外線分光法、および(iii)ラマン分光法のうちの1つによって前記組成物のスペクトルを生成し、これにより、前記測定したスペクトルが、そのスペクトル成分および振幅が既知の作用物質特異的効果を有するスペクトルに類似しているかを確認できる分光装置と、を備えている、システム。
【請求項29】
前記装置(a)が、
(a)作用物質特異的時間領域信号源と、
(b)前記装置の容器ホルダ内の、水性培地を含む容器を受け取るための電磁変換コイル装置と、
(c)水性培地を前記作用物質特異的組成物に変換するのに十分な期間にわたって、前記装置のサンプル領域における容器内に含まれる水性培地において、1G〜10−8Gの範囲の磁場強度を有する磁場が生成されると計算された供給源−信号電流を、前記装置に供給するための、前記信号源と前記装置との間の電子インターフェイスと、を備えている、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
(i)機械的に破壊された水性培地、(ii)気泡を含む界面水性培地、および(iii)機械的に破壊された、気泡を含む界面水性培地のうちの1つを形成するために水性培地を処理する装置をさらに備えている、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
機械的に破壊された水性培地を形成するための前記装置がボルテックス装置である、請求項30に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図13】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図13】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図14】
【公表番号】特表2013−515005(P2013−515005A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544921(P2012−544921)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061136
【国際公開番号】WO2011/075692
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512158192)ネイティビス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061136
【国際公開番号】WO2011/075692
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512158192)ネイティビス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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