説明

水性酵素送達システム

少なくとも1の安定な酵素および少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールを含んでなる、水性酵素送達システムならびに水性の化粧品および個人的な治療製品を提供する。加えて、非水性の粘稠性の液体中における少なくとも1の酵素の分散である安定な非水性酵素送達システムならびに酵素によりレクリエーションとしての水の使用においてヒトの皮膚を治療するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の説明】
【0001】
本発明は、化粧品および個人的な治療製品に対する添加物として適した、安定な水性および非水性の酵素送達システム、ならびに少なくとも1の有効量の酵素を含んでなる安定した水性の化粧品および個人的な治療製品、ならびにレクリエーションとしての水の使用における酵素の使用について言及する。
【0002】
化粧品および個人的な治療製品には、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、またはオキシダーゼのような種々の酵素が含まれることが既知である。プロテアーゼは、皮膚から細胞を剥脱させることが可能であり、それ故、皮膚を再生および加湿するため、および皮膚の老化の外見上の徴候を戻すために用いることができる。リパーゼは、皮膚および髪の過剰な脂性を治療するために用いることができ、オキシダーゼはメラニンを破壊するために用いることができ、その結果として、皮膚を明るくしたり髪を退色させる。
【0003】
多くの酵素は、水性の系において急速にその活性を失う。それ故、水性の化粧品または個人的な治療製品中の酵素を安定化する必要がある。
水性の化粧品組成物中の酵素、特にプロテアーゼを安定化するために、種々の試みがなされてきた。
【0004】
米国特許第5,830,449号において、皮膚を洗浄および/または保護するために使用される化粧品組成物について記載されている。前記組成物は、少なくも1の酵素、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、またはラクトペルオキシダーゼ、ならびに少なくとも1のポリオールおよび少なくとも1のアクリルポリマーもしくはメタクリルポリマーからなる安定系を含んでなる。前記ポリオールは、グリセロールまたはプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールのようなグリコールであってよい。
【0005】
米国特許第5,935,559号において、皮膚の洗浄のため、または皮膚の乾燥、老化、もしくは色素沈着と闘うために用いられる化粧品組成物について記載されている。それは、例えばプロテアーゼ等の酵素のような水に敏感な物質の活性を維持するための安定系として、シリコーン油およびポリオールの混合物を含んでなる。前記ポリオールは、グリセロールまたはプロピレングリコールもしくはエチレングリコールのようなグリコールであってよい。
【0006】
少なくとも1の有効量の酵素を含んでなる化粧品および個人的な治療製品の調製のために、酵素粉末の代わりに水性または非水性の酵素送達システムを用いることがより好都合であり、それは、溶液、エマルジョン、または分散である。そのような酵素送達システムは、扱いがより容易であり、且つ吸入の危険がより少ない。
【0007】
レクリエーションとしての水の使用における酵素の使用は、これまでに述べられていない。
【0008】
本発明の1つの目的は、水性の化粧品または個人的な治療製品を調製するのに適した、安定な水性酵素送達システムを提供することである。また、少なくとも1の有効量の酵素を含んでなる安定した水性の化粧品または個人的な治療製品を提供することも、本発明の目的である。
【0009】
少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールは、グリセロールの安定化効果と比較して、水性酵素送達システム中の酵素における安定化効果を増強することが見出された。
本発明の水性酵素送達システムは、少なくとも1の酵素および少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールを含んでなる。
【0010】
前記酵素は、加水分解酵素(EC3)、酸化還元酵素(EC1)、または加水分解酵素および/または酸化還元酵素を含んでなる混合物であってよい。加水分解酵素の例は、リパーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、およびプロテアーゼである。酸化還元酵素の例は、オキシダーゼおよびペルオキシダーゼである。
【0011】
好ましくは、前記酵素は、プロテアーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、およびオキシダーゼからなる群より選択される。より好ましくは、前記酵素はプロテアーゼである。さらに好ましくは、前記酵素はシステインプロテイナーゼである。最も好ましくは、前記酵素はパパインおよび/またはブロメラインである。
【0012】
水性酵素送達システムにおける酵素の濃度は、水性の化粧品および個人的な治療製品に対する添加剤としての適性を与えるように調整される。例えば、水性送達システム中のパパインの濃度は100〜10,000 PU/mgの範囲であってよく、ブロメラインの濃度は1〜1,000 GDU/gの範囲であってよく、グルコースオキシダーゼの濃度は500〜1,000 GO/gの範囲であってよく、リパーゼの濃度は100〜10,000 LU/gの範囲であってよい。
【0013】
タンパク質分解単位(PU)は、時間当り1μgのチロシンを遊離する酵素の量として定義される。ゼラチン消化単位(GDU)は、pH 4.5または5.5において、20分後に標準ゼラチンから1mgのアミノ窒素を遊離する酵素の量として定義される。リパーゼ単位(LU)は、リパーゼによるp-ニトロフェニルブチレートのニトロフェノールへの加水分解により、ならびに与えられた時間の吸収速度を測定することにより、およびそれを標準と比較することにより決定される。活性のグルコースオキシダーゼ滴定単位(GO)は、35℃において、50分間で3mgのグルコースをグルコン酸に酸化する酵素の量である。
【0014】
少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールは、単一の化合物またはそれらの混合物であってよい。少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールの例は、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール、ヘプタグリセロール、オクタグリセロール、ノナグリセロール、およびデカグリセロールである。
【0015】
好ましくは、前記ポリグリセロールは少なくとも21の炭素原子を含み、より好ましくは少なくとも27の炭素原子、さらに好ましくは少なくとも30の炭素原子を含む。最も好ましくは、前記ポリグリセロールはデカグリセロールである。
【0016】
前記水性酵素送達システムには、ゲオガード(Geogard:登録商標)361およびナトルロン(Natrulon:登録商標)PC-15のような抗菌剤が含まれてもよい。
【0017】
1つの実施形態において、前記水性酵素送達システムには、さらにポリオールが含まれる。前記ポリオールは、最大で6の炭素原子を含む単量体のポリオールまたは重合体のグリコールであってよい。最大で6の炭素原子を含むポリオールの例は、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、およびソルビトールである。重合体のグリコールの例は、ポリエチレングリコール200および400である。
【0018】
好ましくは、ポリグリセロール/ポリオールの比は少なくとも1:10(重量/重量)であり、より好ましくは、ポリグリセロール/ポリオールの比は少なくとも1:1(重量/重量)である。最も好ましくは、前記比は5:1(重量/重量)より大きい。
【0019】
前記水性酵素送達システムは、溶液、w/o型エマルジョン、またはo/w型エマルジョンであってよい。
【0020】
好ましい実施形態において、前記水性酵素送達システムは、溶液を形成する。好ましくは、溶液を形成する水性酵素送達システムにおけるポリグリセロールおよび任意のポリオールの全含有量は、少なくとも40重量%である。より好ましくは、少なくとも60重量%である。最も好ましくは、80重量%である。
【0021】
第2の好ましい実施形態において、前記水性酵素送達システムは、さらに水不混和性の液体を含んでなり、w/o型エマルジョンを形成する。前記水不混和性の液体は、粘稠性の脂肪酸エステル、鉱油のような粘稠性の炭化水素、シリコーン油のような合成油、またはそれらの混合物であってよい。粘稠性の脂肪酸エステルの例は、アルド(Aldo:登録商標)MCTであり、それはカプリル酸およびカプリン酸とグリセロールの混合エステルである。好ましくは、w/o型エマルジョンを形成する水性酵素送達システム中のポリグリセロールおよびポリオールの全含有量は、少なくとも5重量%である。より好ましくは、少なくとも7重量%である。最も好ましくは、10重量%である。w/o型エマルジョンを形成する水性酵素送達システムには、ノベマー(Novemer:登録商標)EC-1のような増粘剤、およびグリセロールモノステアレートであるロンゼスト(Lonzest:登録商標)MSA、ソルビトールモノステアレートであるロンゼスト(登録商標)SMS、またはポリエチレングリコールモノステアレートであるペゴスパーゼ(Pegosperse:登録商標)1750 MSのような乳化剤が含まれてもよい。
【0022】
本発明のさらなる部分は、以下の方法および過程である:
少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールにより、水性酵素送達システムにおける酵素を安定化するための方法;
少なくとも1の有効量の酵素を含んでなる溶液の形態で水性の化粧品または個人的な治療製品を調製するための方法であって、本発明の水性酵素送達システムを加えるステップを含み、化粧品または個人的な治療製品の溶液を形成する方法;溶液を形成する水性の化粧品または個人的な治療製品の例は、シャワーゲルおよびシャンプーである;
溶液を形成する本発明の水性酵素送達システムによって、レクリエーションとしての水の使用においてヒトの皮膚を治療するための方法;前記レクリエーションとしての水の使用の例は、湯浴(hot tub)、温泉、プール、治療的な浴場/プール、水治療システム、フットバス、およびジャクージ(Jacuzzi:登録商標)噴流式気泡風呂である;レクリエーションとしての水の使用に適した水性酵素送達システムには、生薬抽出物および/または精油がさらに含まれてもよい;
エマルジョン、好ましくはo/w型エマルジョンの形態で、少なくとも1の有効量の酵素を含んでなる水性の化粧品または個人的な治療製品を調製するための方法であって、化粧品または個人的な治療製品に本発明の水性酵素送達システムを加えるステップが含まれる方法;エマルジョンである化粧品または個人的な治療製品の例は、クリーム、ローション、ほお紅、ファンデーション、日焼け止め、美白剤、日焼け剤、およびメークアップである。
【0023】
少なくとも1の有効量の酵素を含んでなる安定な水性の化粧品または個人的な治療製品を提供することも、本発明の1つの目的である。
この目的は、有効量の酵素および少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールを含んでなる本発明の水性の化粧品または個人的な治療製品により達成される。
【0024】
グリセロールの安定化効果と比較して、少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールは、水性の化粧品および個人的な治療製品中の酵素に対して増大した安定化効果を有することが見出された。加えて、有効量のプロテアーゼおよび少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールを含有する水性の化粧品および個人的な治療製品は、グリセロールを含有する水性の化粧品および個人的な治療製品と比較して、ヒトの皮膚において増大した加湿効果を示す。
【0025】
水性の化粧品および個人的な治療製品の例は、シャワーゲル、シャンプー、石けん、手、顔、もしくは膝をなめらかにするため、健康にするため、しわを減らすため、美白のため、日焼けに対処するため、もしくは環境的な傷害から保護するために使用される、皮膚軟化剤、皮膚硬結除去剤、剥脱剤、美白剤、スキンクリーム、およびローションのような入浴後に使用する製品、メーク落とし、マッサージクリームおよびローション、ならびにほお紅、ファンデーション、メークアップ、およびアイメークの化粧品のような色つきの化粧品である。
【0026】
1つの実施形態において、前記水性の化粧品または個人的な治療製品には、さらにポリオールが含まれてもよい。
【0027】
水性酵素送達システムの酵素、ポリグリセロール、およびポリオールに対して上記で述べた定義および選択物は、本発明の水性の化粧品および個人的な治療製品の酵素、ポリグリセロール、およびポリオールにも適用する。
【0028】
前記水性の化粧品および個人的な治療製品は、溶液、w/o型エマルジョン、またはo/w型エマルジョンのようないずれの適切な形態であってもよい。
好ましくは、前記本発明の水性の化粧品または個人的な治療製品は、水不混和性の液体と混合され、o/w型エマルジョンを形成する。
【0029】
前記水不混和性の液体の定義は、本発明の水性の化粧品および個人的な治療製品にも適用する。
好ましくは、ポリグリセロールおよび任意のポリオールの全含有量は、少なくとも7%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%である。
【0030】
本発明の一部は、以下の方法である:
本発明の水性の化粧品または個人的な治療製品により、ヒトの皮膚を治療するための方法;好ましくは、プロテアーゼを含んでなる本発明の水性の化粧品および個人的な治療製品が用いられ、皮膚の治療には、皮膚を剥脱することおよび加湿することが含まれる;
少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールにより、水性の化粧品または個人的な治療製品中の酵素を安定化するための方法。
【0031】
本発明のもう1つの目的は、エマルジョンを形成する水性の化粧品または個人的な治療製品ならびに非水性の化粧品または個人的な治療製品に対する添加剤として適した、非水性の酵素送達システムを提供することである。
【0032】
本発明の前記非水性酵素送達システムは、非水性の粘稠性の液体中における少なくとも1の酵素の分散である。
水性酵素送達システムの酵素について上記で示した定義および選択物は、非水性送達システムの酵素にも適用する。
【0033】
前記非水性の粘稠性の液体の例は、鉱油のような粘稠性の炭化水素、シリコーン油のような合成油、脂肪酸エステルのようなエステル、ポリエトキシル化ソルビトールのようなアルコール、およびポリエチレンイミンのようなアミンである。
好ましくは、前記非水性の粘稠性の液体は、バーサゲル(Versagel:登録商標)M-200のような鉱油である。
【0034】
本発明の部分は、以下の方法である:
好ましくはo/w型エマルジョンであるエマルジョンの形態の水性の化粧品または個人的な治療製品を調製するための方法であって、前記製品は、少なくとも1の有効量の酵素を含んでなり、本発明の非水性酵素送達システムを水性の化粧品または個人的な治療製品に加えるステップを含む方法;エマルジョンの形態の水性の化粧品または個人的な治療製品の例は、上に記載されている;
少なくとも1の有効量の酵素を含んでなる非水性の化粧品または個人的な治療製品を調製するための方法であって、本発明の非水性酵素送達システムを非水性の化粧品または個人的な治療製品に加えるステップを含む方法;非水性の化粧品および個人的な治療製品の例は、メーク落とし剤、ボディーオイル、およびバスオイルである。
【0035】
レクリエーションとしての水の使用においてヒトの皮膚を治療するための方法を提供することも、本発明の目的である。
本発明の方法には、レクリエーションとしての水の使用において、酵素によりヒトの皮膚を治療することが含まれる。
レクリエーションとしての水の使用の例は、上述した。好ましいレクリエーションとしての水の使用は、温泉および湯浴である。
【0036】
水性酵素送達システムの酵素について上記で示した定義および選択物は、レクリエーションとしての水の使用において皮膚の治療のために用いられる酵素にも適用する。
入浴は、一般に、皮膚の乾燥に関係する。驚くべきことに、レクリエーションとしての水におけるプロテアーゼの存在は、皮膚の乾燥を防ぐのみならず、優れた皮膚の加湿効果を示すことが見出された。
【0037】
好ましくは、本発明の方法には、レクリエーションとしての水において、プロテアーゼによりヒトの皮膚を剥脱することおよび加湿することが含まれる。
【0038】
例1
溶液の形態の水性プロテアーゼ送達システムにおけるプロテアーゼの安定性
パパインおよびブロメラインをデカグリセロール/水(80/20)またはグリセロール/水(80/20)に溶解し、パパイン(200PU/mg)およびブロメライン(2.3 GDU/g)の最終濃度にした。その溶液を37℃で8週間保管した。プロテアーゼの活性は、2日後ならびに1、2、4、6、および8週後にカゼイン消化により測定した。結果は表1に示す。デカグリセロール/水(80/20)中のプロテアーゼの安定性は、グリセロール/水(80/20)中のそれよりも優れていた。
【表1】

【0039】
略語:wk=週;nd=検出されず。
【0040】
例2
溶液の形態の水性プロテアーゼ送達システムによる、o/w型エマルジョンである皮膚の剥脱および加湿のためのクリームの調製
配合1:皮膚の剥脱および加湿のためのクリーム
【表2】

【0041】
相1は、80℃に加熱し、80℃で強く撹拌した相2に加えた。得られた混合物を80℃で1時間強く撹拌し、撹拌しながら40℃以下までゆっくりと冷却した。相3をゆっくりと加えた。混合物のpHを5.8に調整し、デカグリセロール/水(80/20)中のパパイン(200 PU/mg)およびブロメライン(2.3 GDU/g)の溶液である例1の水性酵素送達システムを加えた。
【0042】
例3
皮膚の剥脱および加湿のためのクリームにおけるプロテアーゼの安定性
7重量%のデカグリセロールを含んでなる配合1(例2)の皮膚を剥脱および加湿するためのクリームならびにデカグリセロールの代わりにグリセロールを含むこと以外は配合1と同一である対照クリームを、8週間、37℃で保管した。プロテアーゼの活性は、1、2、4、6、および8週後にカゼイン消化により測定した。結果を以下の表2に示す。配合1のクリームにおけるプロテアーゼの安定性は、対照クリーム中のそれよりも優れていた。
【表3】

【0043】
例4
配合1のクリーム(例2)のヒトの皮膚に対する剥脱/加湿効果
ヒトの皮膚を配合1のクリームならびにデカグリセロールがグリセロールにより置換されていることを除いて、プロテアーゼが含まれないことを除いて、またはデカグリセロールがグリセロールで置換され且つプロテアーゼが含まれないことを除いて配合1のクリームと同一である対照クリームで処理した。皮膚を1日に1回、11日間クリームで処理し、皮膚の表面の伝導率を処理の前に毎日測定した。プロテアーゼは、皮膚の外側の死んだ層を剥脱し、同時に、下にある新しく且つ生きた皮膚細胞をさらす。これらの新しい皮膚細胞は、剥脱されるよりも水和され、結果として電気をより効果的に伝導するであろう。結果を以下の表3に示す。
【表4】

【0044】
例5
レクリエーションとしての水の使用においてヒトの皮膚を保湿するためのプロテアーゼの使用
擬似の温泉の条件下、すなわち、0.04PU/mgのパパインを含み、殺菌剤として6ppmのBr2を添加した40℃の水にヒトの皮膚を15分間浸漬した。皮膚の水分含量を、15分間浸漬した1時間後に伝導率を測定することにより決定した。最初に15分浸漬した5時間後、皮膚を同じ擬似の温泉の条件下で15分間浸漬し、皮膚の水分含量を2回目の15分間の浸漬の16時間後に測定した。対照として、同じ条件下で皮膚を浸漬するが、プロテアーゼが存在しない皮膚の水分含量も測定した。結果を以下の表4に示す。
【表5】

【0045】
例6
湯浴に適した水性プロテアーゼ送達システムの調製
配合2:湯浴に適した水性プロテアーゼ送達システム
【表6】

【0046】
水中におけるパパインおよびブロメラインの溶液をデカグリセロールに加えた。pHを6.4に調節し、生薬抽出物、精油、およびゲオガード(Geogard:登録商標)361を加えた。
【0047】
例7
湯浴または温泉に適した水性プロテアーゼ/リパーゼ送達システムの調製
配合3:湯浴および温泉に使用するのに適した水性プロテアーゼ/リパーゼ送達システム
【表7】

【0048】
水中におけるパパイン、ブロメライン、およびリパーゼの溶液に、ホウ砂を加えた。この溶液をデカグリセロールに加えた。pHを6.4に調節し、生薬抽出物、精油、およびゲオガード(登録商標)361を加えた。
【0049】
例8
デカグリセロールおよび有効量のオキシダーゼを含んでなる、美白クリームの調製
配合4:美白クリーム
【表8】

【0050】
相1を80℃まで加熱し、80℃で強く撹拌した相2に加えた。得られた混合物を80℃で1時間強く撹拌し、撹拌しながら40℃以下までゆっくりと冷却した。相3をゆっくりと加えた。混合物のpHを5.8に調節し、相4を加えた。
【0051】
例9
w/o型エマルジョンの形態の水性プロテアーゼ送達システムの調製
組成物1:w/o型エマルジョンの形態の水性プロテアーゼ送達システム
【表9】

【0052】
相1を80℃まで加熱し、80℃で強く撹拌した相2を加えた。得られた混合物を80℃で1時間強く撹拌し、撹拌しながら40℃以下までゆっくりと冷却した。相3および4をゆっくりと加えた。エマルジョンのpHを5.8に調節し、パパインおよびブロメラインの粉末を加え、最終的な活性をそれぞれ200PU/mgおよび2.3GDU/gとした。
【0053】
例10
w/o型エマルジョンの形態の水性プロテアーゼ送達システムにおけるプロテアーゼの活性
例9のプロテアーゼ送達システムを37℃で保管した。プロテアーゼの活性は、2日後ならびに1、2、4、6、および8週後にカゼイン消化により測定した。例9の1つと同一であるが、デカグリセロールの代わりにグリセロールを含んでいるか、または安定剤を全く含んでいない対照のエマルジョンも37℃で保管した。加えて、デカグリセロール/水(7/93)またはグリセロール/水(7/93)中におけるパパインおよびブロメラインの溶液も対照として37℃で保管した。結果を以下の表5に示す。例9のプロテアーゼ送達システム中におけるプロテアーゼの安定性は、対照のそれよりも優れていた。
【表10】

【0054】
略語:wk=週;nd=検出されず。
【0055】
例11
w/o型エマルジョンの形態の水性リパーゼ送達システムによる、有効量のリパーゼを含んでなる油性のメーク落とし剤の調製
配合6:有効量のリパーゼを含んでなる油性のメーク落とし剤
【表11】

【0056】
相2を相1に、pH 7.2で加えた。
【0057】
例12
o/w型エマルジョンである、美白クリームの調製
組成物4:美白クリーム
【表12】

【0058】
相1を80℃に加熱し、強く撹拌した相2を80℃で加えた。得られた混合物を80℃で1時間強く撹拌し、撹拌しながらゆっくりと40℃以下まで冷却した。相3をゆっくりと加えた。混合物のpHを5.5に調節し、相4を加えた。
【0059】
例13
鉱油中におけるプロテアーゼの分散である、非水性のプロテアーゼ送達システム
パパインおよびブロメラインをバーサゲル(Versagel:登録商標)M-200に分散させ、最終濃度をパパイン(200PU/mg)およびブロメライン(2.3GDU/g)にした。その溶液を37℃で8週間保管した。プロテアーゼの活性を、2日後ならびに1、2、4、6、および8週後にカゼイン消化により測定した。デカグリセロール/水(80/20)およびグリセロール/水(80/20)中のプロテアーゼの溶液も37℃で8週間保管した。バーサゲル(Versagel:登録商標)M-200中のプロテアーゼの安定性を、グリセロール/水(80/20)中におけるものと比較した。
【表13】

【0060】
略語:wk=週;nd=検出されず。
【0061】
例14
例13の非水性プロテアーゼ送達システムによる、皮膚を剥脱および加湿するためのクリームの調製
配合8:皮膚を剥脱/加湿するためのクリーム
【表14】

【0062】
相1を80℃に加熱し、80℃で強く撹拌した相2に加えた。得られた混合物を80℃で1時間強く撹拌し、撹拌しながら40℃以下までゆっくりと冷却した。相3をゆっくりと加えた。混合物のpHを5.5に調節し、相4を加えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の酵素および少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールを含んでなる水性酵素送達システム。
【請求項2】
前記酵素がプロテアーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、およびオキシダーゼからなる群より選択される、請求項1に記載の水性酵素送達システム。
【請求項3】
付加的にポリオールを含んでなる、請求項1または2に記載の水性酵素送達システム。
【請求項4】
ポリグリセロール/ポリオールの比が少なくとも1:10(重量/重量)である、請求項3に記載の水性酵素送達システム。
【請求項5】
溶液を形成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性酵素送達システム。
【請求項6】
ポリグリセロールおよび任意のポリオールの全含有量が少なくとも40重量%である、請求項5に記載の水性送達システム。
【請求項7】
水不混和性の液体をさらに含み、w/o型エマルジョンを形成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性送達システム。
【請求項8】
ポリグリセロールおよび任意のポリオールの全含有量が少なくとも5重量%である、請求項7に記載の水性送達システム。
【請求項9】
少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールにより、水性酵素送達システム中の酵素を安定化する方法。
【請求項10】
少なくとも1の有効量の酵素を含んでなる溶液の形態の、水性の化粧品または個人的な治療製品を調製するための方法であって、請求項5または6に記載の水性酵素送達システムを化粧品または個人的な治療製品に加えるステップを含んでなる方法。
【請求項11】
請求項5または6に記載の水性酵素送達システムにより、レクリエーションとしての水の使用においてヒトの皮膚を治療するための方法。
【請求項12】
少なくとも1の有効量の酵素を含んでなるエマルジョンの形態の、水性の化粧品または個人的な治療製品を調製するための方法であって、請求項5〜8のいずれか1項に記載の水性酵素送達システムを化粧品または個人的な治療製品に加えるステップを含んでなる方法。
【請求項13】
前記化粧品および個人的な治療製品がo/w型エマルジョンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1の有効量の酵素および少なくとも15の炭素原子が含まれるポリグリセロールを含んでなる水性の化粧品または個人的な治療製品。
【請求項15】
前記酵素がプロテアーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、およびオキシダーゼからなる群より選択される、請求項14に記載の水性の化粧品または個人的な治療製品。
【請求項16】
付加的にポリオールを含んでなる、請求項14または15に記載の水性の化粧品または個人的な治療製品。
【請求項17】
ポリグリセロール/ポリオールの比が少なくとも1:10(重量/重量)である、請求項16に記載の水性の化粧品または個人的な治療製品。
【請求項18】
o/w型エマルジョンである、請求項14〜17のいずれか1項に記載の水性の化粧品または個人的な治療製品。
【請求項19】
ポリグリセロールおよび任意のポリオールの全含有量が少なくとも7重量%である、請求項18に記載の水性の化粧品または個人的な治療製品。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の水性の化粧品または個人的な治療製品により、ヒトの皮膚を治療するための方法。
【請求項21】
前記酵素がプロテアーゼであり、皮膚が剥脱および加湿される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも15の炭素原子を含むポリグリセロールにより、水性の化粧品または個人的な治療製品中の酵素を安定化するための方法。
【請求項23】
非水性の粘稠性の液体中における少なくとも1の酵素の分散である、非水性酵素送達システム。
【請求項24】
前記酵素がプロテアーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、およびオキシダーゼからなる群より選択される、請求項24に記載の非水性酵素送達システム。
【請求項25】
前記非水性溶液が鉱油である、請求項23または24に記載の非水性酵素送達システム。
【請求項26】
少なくとも1の有効量の酵素を含んでなるエマルジョンの形態の、水性の化粧品または個人的な治療製品を調製するための方法であって、請求項23〜25のいずれか1項に記載の水性酵素送達システムを化粧品または個人的な治療製品に加えるステップを含んでなる方法。
【請求項27】
前記化粧品および個人的な治療製品がo/w型エマルジョンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1の有効量の酵素を含んでなる非水性の化粧品または個人的な治療製品を調製するための方法であって、請求項23〜25のいずれか1項に記載の水性酵素送達システムを化粧品または個人的な治療製品に加えるステップを含んでなる方法。
【請求項29】
酵素により、レクリエーションとしての水の使用においてヒトの皮膚を治療するための方法。
【請求項30】
前記酵素がプロテアーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、およびオキシダーゼからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記レクリエーションとしての水の使用が湯浴または温泉である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記酵素がプロテアーゼであり、皮膚が剥脱および加湿される、請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−509940(P2008−509940A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526215(P2007−526215)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000392
【国際公開番号】WO2006/018048
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(398075600)ロンザ ア−ゲ− (58)
【Fターム(参考)】