説明

水晶ウェハ

【課題】円板形状の面内周波数のばらつきを軽減する水晶ウェハを提供する。
【解決手段】所定の厚みを有し、3回対称性であり、X軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光軸)の結晶軸を有する水晶からなる板状の水晶ウェハ10であって、直径が1インチ以上であり、+X軸と直交する平面を+X面としたとき、基本形状を円形とし、その円形のうち、+X軸と平行となる半径に対して直交する+X面に平行となる方向にオリフラ面11が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに搭載される水晶板の製造に用いられる水晶ウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧電デバイスには水晶振動素子が用いられている。この水晶振動素子は、水晶板の両主面に励振電極が形成され、この励振電極と接続するように一方の端部側へ引回されたパターンが形成された構造となっている。このような水晶振動素子に用いられる水晶板は、水晶ウェハから所定の形状に形成される。
水晶ウェハは、例えば、凹凸を有するアズグロウンの状態の人工水晶材を凹凸のないランバードに成形し、所定の厚さ及び所定の角度で切り出して水晶部材を作成し、研磨装置で所定の厚さとなるまで研磨して形成される(例えば、特許文献1参照)。
このような水晶ウェハは、例えば、円板状に形成されており、水晶の結晶軸(X軸、Y軸、Z軸)のうち、X軸に直交するようにオリエンテーションフラット(以下、「オリフラ」という。)が設けられている。ここで、X軸には方向性がある。例えば、Y軸及びZ軸と平行になる平面(以下、「YZ平面」という。)に沿ってX軸と直交するように水晶片を2箇所、切断すると、一方の平面は+X面となり、他方の平面は−X面となる。
水晶ウェハにオリフラを設ける理由は、水晶が3回対称の結晶で、結晶軸が(X軸、Y軸、Z軸)と決まっているため、水晶振動素子を製造する過程でもこの結晶軸方向を把握することができるようにするためである。
従来より、この水晶ウェハに設けられるオリフラは、−X面とされている。
この状態で、水晶ウェハは、所定の厚さとなるまで両面研磨装置で研磨されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−150496号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の円板状水晶ウェハを両面研磨装置で研磨した場合、水晶の結晶性により、ウェハ面内において−X面側が厚く+X面側が薄くなっていた。そのため、ウェハ面内にて厚み差が生じ、平坦度が悪くなる。また、この水晶ウェハから水晶振動素子を製造した場合、厚みの違いによってそれぞれの水晶振動素子の周波数が異なる原因になる。つまり、水晶ウェハの面内周波数にばらつきが生じ、そのため周波数調整を行う必要があった。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、円板形状の水晶ウェハの面内周波数のばらつきを軽減する水晶ウェハを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、所定の厚みを有しX軸、Y軸、Z軸の結晶軸を有する水晶からなる板状の水晶ウェハであって、直径が1インチ以上であり、+X軸と直交する平面を+X面としたとき、基本形状を円形とし、その円形のうち、+X軸と平行となる半径に対して直交する+X面に平行となる方向にオリフラ面が設けられて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このような水晶ウェハによれば、オリフラ面が+X面と平行となるように設けられていることで、研磨時のウェハに対する研磨材の流れ、また、研磨軌跡が変化し、+X面側がより薄く研磨される現象を抑制することができ、平坦度を改善することができる。それにより円板状ウェハの面内周波数のばらつきを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る水晶ウェハの一例を示し、(a)は水晶ウェハの外観の一例を示す模式図であり、(b)は(a)の水晶ウェハの平面図ある。
【図2】水晶ウェハの平面状態の例を示す図である。
【図3】ランバードから水晶ウェハを切り出す前の状態の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各構成要素について、状態をわかりやすくするために、誇張して図示している。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係る水晶ウェハの一例を示し、(a)は水晶ウェハの外観の一例を示す模式図であり、(b)は(a)の水晶ウェハの平面図ある。
図1(a)及び(b)に示すように、本発明の実施形態に係る水晶ウェハ10は、基本形状が円形形状に形成されており、オリフラ面11が+X面と平行となるように設けられている。
また、この水晶ウェハ10は、例えば、直径が1インチで形成されている。なお、水晶ウェハ10の直径は、1インチ以上であっても良い。
【0011】
ここで、図3に示すように、水晶がランバードRの状態において、結晶軸は、X軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光軸)となっている。このランバードRからATカットとなる角度で切断して得られる水晶ウェハ10の新たな結晶軸を、X軸、Y´軸、Z´軸とする(図1参照)。以下、これらX軸、Y´軸、Z´軸をX軸、Y軸、Z軸として説明することがある。
このとき、この水晶ウェハ10のY´軸とZ´軸と平行となる平面をY´Z´平面とすると、X軸の+側においてX軸と直交するように切り取った平面であるオリフラ面がY´Z´平面と平行となり、これが+X面となる。
【0012】
例えば、図2に示すように、本発明の実施形態に係る水晶ウェハ10は、研磨装置で研磨されると、オリフラ面11が+X面と平行となるように設けられているため、直径1インチの間で+X面側の厚み偏差が−40nmとなり、−X面側の厚み偏差が+20nmとなった(図2の「●」マーク)。
なお、厚み偏差とは、基準とする厚みに対して測定した厚みとの差をいう。
したがって、厚み偏差の値がマイナスになる場合は、基準とする厚みに対して薄く形成されたことを意味し、厚み偏差がプラスになる場合は、基準となる厚みに対して厚く形成されたことを意味する。
このように、水晶ウェハ10のX軸方向の平面の平面状態が、+X面側から−X面側にかけてなだらかに傾斜しているものの、以下に示す従来の水晶ウェハより基準値に近い厚みで形成されたことが確認できる。
したがって、本発明の実施形態に係る水晶ウェハ10の平坦度が改善され、水晶ウェハ10における面内周波数のばらつきを軽減することができる。
【0013】
これに対して、オリフラ面を−X面と平行に設けた場合の従来の水晶ウェハは、研磨装置で研磨されると、オリフラ面11が+X面と平行となるように設けられているため、直径1インチの間で+X面側の厚みが基準より−140nmとなり、中央付近で基準値となりつつ、−X面側の厚みが基準より−80nmとなった(図2の「◆」マーク)。
つまり、水晶ウェハ10のX軸方向の平面の平面状態が、+X面側から−X面側にかけて中央部が盛り上がる厚みで形成されたことが確認できる。
【0014】
したがって、本発明の実施形態に係る水晶ウェハ10は、従来のような−X面に平行なオリフラ面を設けた場合と比べて、平坦度が改善された状態になっていることが確認できる。これにより、円板形状の面内周波数のばらつきを軽減する水晶ウェハとすることができる。
【0015】
なお、水晶ウェハについて、ATカットの水晶ウェハ以外に、BTカットの水晶ウェハやSCカットの水晶ウェハであってもよい。
【符号の説明】
【0016】
10 水晶ウェハ
11 オリフラ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有し各々が直交するX軸、Y軸、Z軸の結晶軸を有する水晶からなる板状の水晶ウェハであって、
直径が1インチ以上であり、
+X軸と直交する平面を+X面としたとき、
基本形状を円形とし、その円形のうち、+X軸と平行となる半径に対して直交する+X面に平行となる方向にオリフラ面が設けられて構成されていることを特徴とする水晶ウェハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−16893(P2013−16893A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146248(P2011−146248)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】