説明

水晶振動子

【課題】 水晶振動板の小形化を実現しながら引出電極により励振領域を侵害することのない、より電気的特性の優れた水晶振動子を提供する。
【解決手段】 水晶振動板1とパッケージとキャップを有する水晶振動子であって、前記水晶振動板は、厚みすべり振動で動作してなり、X軸方向を長辺方向とする矩形状に形成され、表裏面に対向する一対の矩形状の励振電極11と、水晶振動板の端部に形成され前記パッケージの端子電極と接続される引出端部電極と、前記励振電極と前記引出端部電極を接続する引出電極とを有しており、前記水晶振動板の短辺から最も近接する前記励振電極の一辺までの寸法を0.5mm以下に設定してなり、かつ前記励振電極の一辺の中央部から0.279mm以上0.5mm以下の電極形成されないギャップ領域を介して前記引出端部電極が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる水晶振動子の電極構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電振動子に、例えば、以下に示すような構成からなる水晶振動子がある。この水晶振動子は、その筐体がパッケージとキャップとから構成されてなる。そして、パッケージ内部には、例えばATカット水晶振動板が搭載されている。パッケージは、一面を開口させた箱型状体からなる。このパッケージの内部底面の一側部には、水晶振動板を搭載支持する一対の支持体が設けられている。また、この一対の支持体には、下記する水晶振動板の励振電極と導電性接着剤を介して導通する電極が形成されている。キャップは、板状体からなる。このキャップの外周縁部がパッケージの開口面と接合してパッケージ内部が気密封止される。水晶振動板は、X軸方向の辺とZ'軸方向の辺とから構成される矩形状の水晶振動板からなる。この水晶振動板の長辺軸の指定は、一般的に、保持形態により選択されている。車載向けなどの耐衝撃性が求められるものでは、長辺側の両端を保持するために、長辺側の保持の影響が少ないZ'軸方向を長辺とするものが多い。これに対して、X軸方向を長辺とするものでは、長辺側の保持の影響を受けやすいので片端側で保持する一方、水晶振動板の励振電極を大きく形成することができるので、励振領域を広くし、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができる。ATカット水晶振動板を用いた厚み振動系水晶振動子は、一般に水晶振動板の表裏面に一対の励振電極を正対向して形成し、当該励振電極に交流電圧を印加する構成である。つまり、水晶振動板の両主面には励振電極と、この励振電極を外部電極(支持体に形成された電極)と導通するための接続電極と、励振電極を接続電極に導通させるための引出電極が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−17978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、水晶振動板の小形化が益々進んでおり、水晶振動板の長辺寸法(X軸方向)は1.7mm以下、短辺寸法(Z'軸方向)は1.2mm以下のものが開発されている。このように小形化された水晶振動板では、小形化に伴う水晶振動板の面積の縮小化に対して、励振電極の面積をできるだけ大きく設定し、励振領域を広くすることがより高性能な水晶振動板を得るために必要不可欠となっている。このように水晶振動板の励振領域を広くすることで、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができる。
【0005】
しかしながら、小形化された水晶振動板に対して励振電極の面積を大きく形成しようとすれば、当然のことながら水晶振動板の端部から励振電極の端部までの寸法が小さくなる。そして、この小さな寸法間に引出電極を配置形成することで、励振領域が阻害され、水晶振動子の電気的特性(直列共振抵抗、周波数可変量)が低下するといった小形化された水晶振動板に特有の問題が顕在化してきた。また、前記励振領域を阻害しない程度に引出電極の面積を小さくすると、水晶振動板の表裏面の励振電極に対する引出電極による引き回し電極も小さくなり、導通抵抗が低下するといった問題があった。特に、水晶振動板の稜で引き回し電極の電極切れが発生した場合、引出電極が断線して水晶振動子の不発振を招く危険性が懸念される。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水晶振動板の小形化を実現しながら引出電極により励振領域を侵害することのない、より電気的特性の優れた水晶振動子を提供することを第1の目的とし、水晶振動板の表裏面の励振電極に対する引出電極による引き回し電極の導通抵抗が低下することのない、より電気的接続性の優れた水晶振動子を提供することを第2の目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の特許請求項1に示すように、水晶振動板とパッケージとキャップを有する水晶振動子であって、前記水晶振動板は、厚みすべり振動で動作してなり、X軸方向を長辺方向とする矩形状に形成され、表裏面に対向する一対の矩形状の励振電極と、水晶振動板の端部に形成され前記パッケージの端子電極と接続される引出端部電極と、前記励振電極と前記引出端部電極を接続する引出電極とを有しており、前記水晶振動板の短辺から最も近接する前記励振電極の一辺までの寸法を0.5mm以下に設定してなり、かつ前記励振電極の一辺の中央部から0.279mm以上0.5mm以下の電極形成されないギャップ領域を介して前記引出端部電極が形成されてなることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、前記水晶振動板の短辺から最も近接する前記励振電極の一辺までの寸法を0.5mm以下に設定してなり、かつ前記励振電極の一辺の中央部から0.279mm以上0.5mm以下の電極形成されないギャップ領域を介して前記引出端部電極が形成されているので、小形化された水晶振動板であっても、励振領域を阻害することなく有効に引出端部電極を配置形成することができ、励振領域を阻害することなく励振電極を拡大することができる。このため、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができる。特に、ギャップ領域は、振動変位エネルギの強く、振動が伝播しやすいX軸方向に設定することでその効果が高まり、より好ましいものとなる。
【0009】
また、本発明の特許請求項2に示すように、上述の構成に加え、前記表裏面の引出端部電極を水晶振動板の側端部を介して共通接続してなる引き回し電極の幅寸法を0.5mm以上としたことを特徴とする。
【0010】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、前記表裏面の引出端部電極を水晶振動板の側端部を介して共通接続してなる引き回し電極の幅寸法を0.5mm以上としているので、導通抵抗が低下することがなく、水晶振動板の稜で引き回し電極の電極切れが発生しても、引出電極が断線する危険性が飛躍的に抑制される。また、水晶振動板をパッケージの端子電極と接続する場合、引出電極により表裏面の励振電極の接続が確立されるので、導電性接合材等はパッケージの端子電極側のみで形成することができる。つまり、水晶振動板の搭載構成の薄肉化が行え、結果として水晶振動子の低背化が行える。導電性接合材が樹脂系の接着剤であれば余分なガスの発生を抑制することができ、樹脂系の接着剤を上塗りすることによる水晶振動板のずれ込みの悪影響も抑制することができる。また、水晶振動板の片面のみに金属バンプや金属メッキバンプを用いることができるので、フリップチップボンディング(FCB)工法に最適な構成となり、より小型化・低背化に対応できる。
【0011】
また、本発明の特許請求項3に示すように、上述の構成に加え、前記引出端部電極に接続され、かつ前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極を有した幅細の引出端部枝電極が前記引出端部電極に隣接して形成されてなることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、前記引出端部電極より幅細の引出枝端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極を延長しているので、励振領域を阻害することなく有効に引出端部枝電極を配置形成することができ、導通抵抗が低下することがなく、水晶振動板の稜で引き回し電極の電極切れが発生しても、引出電極が断線する危険性が飛躍的に抑制される。また、水晶振動板をパッケージの端子電極と接続する場合、引出電極により表裏面の励振電極の接続が確立されるので、導電性接合材等はパッケージの端子電極側のみで形成することができる。つまり、水晶振動板の搭載構成の薄肉化が行え、結果として水晶振動子の低背化が行える。導電性接合材が樹脂系の接着剤であれば余分なガスの発生を抑制することができ、樹脂系の接着剤を上塗りすることによる水晶振動板のずれ込みの悪影響も抑制することができる。また、水晶振動板の片面のみに金属バンプや金属メッキバンプを用いることができるので、フリップチップボンディング(FCB)工法に最適な構成となり、より小型化・低背化に対応できる。
【0013】
また、本発明の特許請求項4に示すように、上述の構成に加え、前記各励振電極は、前記引出電極により前記水晶振動板の一短辺の両端部分に引き出されてなることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、片持ち保持に適したより好ましい構成となり、励振領域をより広く設定し、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができる。また、片持ち保持することで、水晶振動板の保持領域を縮小化することができ、結果として水晶振動子の更なる小形化に対応できる。
【0015】
次に本発明品と従来品の検証データについて説明する。比較した水晶振動子はセラミックパッケージに水晶振動板を気密収納した表面実装型水晶振動子であり、基本構成は後述の実施形態に開示した構成であり、図4、図5に示すように水晶振動板の各電極寸法を異ならせた。サンプル数は従来品、本発明品それぞれ20個であり、それぞれの直列共振抵抗値(いわゆるCI値)特性(縦軸)と、引出端部電極の側端部に形成される引き回し電極の寸法による表裏励振電極間の抵抗値(横軸)とをそれぞれ測定した。図4では、水晶振動板は基本波で40MHz、長辺寸法(X軸方向)は1.7mm、短辺寸法(Z'軸方向)は1mmであり、励振電極のX軸方向の寸法Lは0.9mm、Z'軸方向の寸法Wは0.5mmのものを使用した。図5では、水晶振動板は基本波で30MHz、長辺寸法(X軸方向)は1.25mm、短辺寸法(Z'軸方向)は0.85mmであり、励振電極のX軸方向の寸法Lは0.5mm、Z'軸方向の寸法Wは0.5mmのものを使用した。
【0016】
図4の従来品は、引出端部電極の形状を矩形状(0.4mmと0.4mm)としている。水晶振動板の短辺から最も近接する励振電極の一辺までの寸法G1を0.5mm、励振電極の一辺から対向する引出端部電極までのギャップ領域の寸法G2を0.1mm、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極までの最短ギャップ領域の寸法G3を約0.141mmに設定した。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.8mmに設定している。
【0017】
図4の本発明品1は、引出端部電極の形状を矩形状(0.15mmと0.15mm)としている。水晶振動板の短辺から最も近接する励振電極の一辺までの寸法G1を0.5mm、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極までの最短ギャップ領域の寸法G3を約0.49mmに設定した。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.3mmに設定している。
【0018】
図4の本発明品2は、引出端部電極の形状を矩形状(0.2mmと0.3mm)としている。水晶振動板の短辺から最も近接する励振電極の一辺までの寸法G1を0.5mm、励振電極の一辺から対向する引出端部電極までのギャップ領域の寸法G2を0.3mm、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極までの最短ギャップ領域の寸法G3を約0.36mmに設定した。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.5mmに設定している。
【0019】
図4の本発明品3は、引出端部電極の形状を矩形状(0.4mmと0.25mm)としている。水晶振動板の短辺から最も近接する励振電極の一辺までの寸法G1を0.5mm、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極までの最短ギャップ領域の寸法G3を約0.269mmに設定した。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.65mmに設定している。
【0020】
図4の本発明品4は、後述する図1と同様の形状であり、引出端部電極の形状を中央よりに低い2つの階段形状(0.4mmと0.25mmの矩形、および0.15mmと0.15mmの矩形を合体させたもの)とし、引出端部電極より幅細の引出枝端部電極を具した構造となっている。水晶振動板の短辺から最も近接する励振電極の一辺までの寸法G1を0.5mm、励振電極の一辺から対向する引出端部電極までのギャップ領域の寸法G2を0.35mm、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極までの最短ギャップ領域の寸法G3を約0.269mmに設定した。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.8mmに設定している。
【0021】
図5の従来品は、引出端部電極の形状を矩形状(0.3mmと0.3mm)としている。水晶振動板の短辺から最も近接する励振電極の一辺までの寸法G1を0.45mm、励振電極の一辺から対向する引出端部電極までのギャップ領域の寸法G2を0.15mm、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極までの最短ギャップ領域の寸法G3を約0.195mmに設定した。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.6mmに設定している。
【0022】
図5の本発明品は、引出端部電極の形状を矩形状(0.2mmと0.3mm)としている。水晶振動板の短辺から最も近接する励振電極の一辺までの寸法G1を0.45mm、励振電極の一辺から対向する引出端部電極までのギャップ領域の寸法G2を0.25mm、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極までの最短ギャップ領域の寸法G3を約0.279mmに設定した。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.5mmに設定している。
【0023】
これらの検証データから、従来品については、各サンプルの直列共振抵抗値のバラツキが多く、全般的に特性が低下している。これに対して、本発明品は、各サンプルの直列共振抵抗値のバラツキが小さく、全般的に特性が安定していることが明らかである。また、図4の本発明品1については、引出端部電極の側端部に形成される引き回し電極の寸法による表裏励振電極間の抵抗値が高くなり、引き回し導通性能が図4の他の本発明品に比べて低下しているのが理解できる。つまり、図4と図5の本発明品のように、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極までの最短ギャップ領域の寸法G3を0.279mm以上に設定することで、小形化された水晶振動板であっても、励振領域を阻害することなく有効に引出端部電極を配置形成することができる。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.5mm以上に設定することで、導通抵抗が低下することが抑制され、水晶振動板の稜で引き回し電極の電極切れが発生しても、引出電極が断線する危険性が飛躍的に抑制されるのでより好ましい。
【0024】
また、本発明の特許請求項5に示すように、上述の構成に加え、前記励振電極と引出電極を同一電極層構成とするとともに、電極層構成を、クロムの下地電極層と当該下地電極層の上面に形成された銀電極層、銀電極層の上面に形成されたクロム電極層と当該クロム電極層の上面に形成された銀電極層、または金電極層からなることを特徴とする。
【0025】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、前記励振電極と引出電極を同一電極層構成とすることで、電極形成する際の生産性を低下させることがなくより安価な電極膜構成とすることができる。
【0026】
加えて、水晶振動板との密着性の高いクロムの下地電極材料を介して銀電極層とクロム電極層と銀電極層または金電極層を形成しているので、水晶振動板の短辺稜部での引出電極の断線が一切なくなり、電気的導通性能がより確実なものとなった。電極の密着性が極端に低くなり電極の膜厚が薄くなる水晶振動板の稜部分では、クロム電極層を銀電極層の上面に形成しているので、後工程(導電性接合材の硬化工程やリフロー工程等)や環境変化などによって外部から熱が加わったとしても、クロム電極層で酸素を吸着させて、クロム電極層下面の銀電極層の飛散を抑制することができる。その結果、引出電極の稜部分での電極の膜厚が薄くなったとしても、クロムの下面にある銀電極層が確実に確保されるので、断線することが一切なくなる。特に、今回の発明では、引き回し電極の幅寸法を0.5mm以上とする構成や、前記引出端部電極より幅細の引出枝端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極を延長する構成と組み合わせることで、断線防止効果が飛躍的に高まり、その効果は絶大なものとなる。引き回される引出電極の形成幅が水晶振動板の端部から小さくなるほど、電極形成時にマスク部材の影となりやすく、水晶振動板の稜部分に形成される引出電極の膜厚は薄くなりやすいので、引出電極の稜部分での断線の問題がより顕著に現れやすい。ところがこのような電極層構成を組み合わせることで断線の問題が解決されるのでより好ましい構成となる。
【0027】
また、上述の酸素吸着層であるクロム電極が励振電極の最上面に形成されると酸化の問題がより顕著となり、エージング特性の低下を招く原因となっているが、クロム電極層の上面に銀電極層、あるいは金電極層をさらに形成しているので、極端な酸化の進行を抑制され、結果としてエージング特性を低下させることもない。
【0028】
さらに、振動周波数や水晶振動板のサイズに応じて最適な電極厚み設計する必要がある。特に、水晶振動子の高周波化に伴い電極膜厚が薄くなるので、前述のような電極膜構成による問題点がより顕著なものとなる。例えば、基本波周波数が30MHz以上の水晶振動子では、片面の電極厚みを3500オングストローム以下に設定しないと、主振動特性に悪影響を及ぼすことがあるので、引出電極の稜線部分での断線の問題や励振電極の酸化によるエージング特性低下の問題がより切実なものとなる。このような電極層構成を組み合わせることで、断線の問題と励振電極の酸化によるエージング特性低下の問題も解決されるので、水晶振動板の高周波化、小型化に対応できる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明の水晶振動子によれば、水晶振動板の長辺寸法(X軸方向)が1.7mm以下、短辺寸法(Z'軸方向)が1.2mm以下の小形化された水晶振動板を実現しながら引出電極により励振領域を侵害することないより電気的特性の優れた水晶振動子を提供することができる。また、水晶振動板の表裏面の励振電極に対する引出電極による引き回し電極の電気的接続性の優れた水晶振動子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施の形態では、厚みすべり振動にて動作するATカット水晶振動板について説明する。
【0031】
図1は本発明の水晶振動板を示す斜視図であり、図2は図1の水晶振動板を搭載した状態の水晶振動子の平面図である。
【0032】
水晶振動板1は矩形平板状のATカット水晶振動板(厚みすべり振動)からなり、その表裏面の中央領域に平面視矩形状の励振電極11,12(12については図示せず)が形成されている。水晶振動板1はX軸が長辺、Z'軸が短辺になるよう設定されており、また各励振電極11,12は各辺がX軸とZ'軸に沿った構成となっている。励振電極11,12は同形状で、かつ水晶振動板1を介して正対向して形成されている。なお、裏面に形成された励振電極12については一部図示していない。
【0033】
また励振電極11は引出電極111により水晶振動板1の短辺側であって、当該短辺の一角部分に形成された引出端部電極112に引き出され、励振電極12は引出電極121(図示せず)により同じ短辺側の他角部分に形成された引出端部電極122に引き出されている。引出端部電極112,122には、同短辺の中央側に向かって前記水晶振動板の側端部に形成される幅細の引出端部枝電極1121,1221が形成されている。これらの引出端部電極112,122、および引出端部枝電極1121,1221により、水晶振動板の側面端部には、引き回し電極113,123が形成され、水晶振動板の反対面に引き出されるように構成されている。これらの電極は前記励振電極11,12と引出電極111,121、引出端部電極112,122、引出端部枝電極1121,1221、引き回し電極113,123を同一電極層構成とするとともに、電極層構成を、クロムの下地電極層と当該下地電極層の上面に形成された銀電極層、銀電極層の上面に形成されたクロム電極層と当該クロム電極層の上面に形成された銀電極層、または金電極層から形成している。上述のように各電極を同一電極層構成とすることで、電極形成する際の生産性を低下させることがなくより安価な電極膜構成とすることができる。加えて、水晶振動板1との密着性の高いクロムの下地電極材料を介して銀電極層とクロム電極層と銀電極層または金電極層を形成しているので、水晶振動板1の短辺稜部での前記引出端部電極112,122、引出端部枝電極1121,1221、引き回し電極113,123の断線が一切なくなり、電気的導通性能がより確実なものとなった。また、水晶振動子の励振電極11,12の表面層の酸化がクロム電極層の場合と比較して極端に抑制されることで、エージング特性が低下することのないより電気的信頼性と安定性の高い水晶振動子が得られる。
【0034】
このとき、前記水晶振動板1の短辺から最も近接する前記励振電極の一辺までの寸法G1を0.5mmに設定してなり、かつ前記励振電極の一辺の中央部の点Aから0.269mm以上0.5mm以下の電極形成されないギャップ領域Gを介在しながら、前記引出端部電極112,122が形成されている。つまり、本形態では前記励振電極の一辺の中央部の点Aから引出端部電極112,122までの最短ギャップ領域の寸法G3を0.269mmとしている。また、前記引出端部電極112,122によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極113,123の寸法G4を0.8mmとした。なお、前記引出端部枝電極1121,1221の幅G5は、0.1mm程度で形成している。
【0035】
以上の水晶振動板1はパッケージ2に搭載される。図2は水晶振動板1をパッケージに搭載した状態を示す平面図である。パッケージ2は平面視矩形状で、セラミックを主体として内外部に導体配線が形成されたセラミックパッケージであり、水晶振動板1を収納する凹部を有し、その周囲に堤部20が形成された構成である。パッケージ2の凹部の長辺方向一端には電極パッド21,22が底部23に対して一段高く形成された支持体24が形成されている。水晶振動板1は当該電極パッド21,22に片持ち支持される。当該片持ち支持は、例えばシリコーン系の導電樹脂接着剤(導電性接合材)Dを用いて引出端部電極112,122と電極パッド21,22を電気的機械的に接続する。このとき、引出端部電極および引出端部枝電極1121,1221による引き回し電極113,123により、表裏面の励振電極11,12の接続が水晶振動板の一方の主面のみで確立することができるので、導電性樹脂接着剤Dはパッケージの支持体24側のみで形成している。そして所定の加熱等による安定化処理を行った後、図示しないキャップにてパッケージの開口部20aをシーム接合やビーム接合、ろう接合、ガラス封止等の手段により、気密封止を行うことで水晶振動子の完成となる。
【0036】
以上のように構成することで、小形化された水晶振動板1であっても、励振領域を阻害することなく有効に引出端部電極112,122を配置形成することができ、励振領域を阻害することなく励振電極11,12を拡大することができる。このため、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができる。特に、ギャップ領域は、振動変位エネルギの強く、振動が伝播しやすいX軸方向に設定することでその効果が高まり、より好ましいものとなる。
【0037】
また、上述の作用効果に加えて、前記引出端部電極112,122より幅細の引出枝端部電極1121,1221(幅寸法G5を0.1mm程度)によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極113,123を延長し、その引き回し電極113,123の寸法を0.8mm以上としているので、励振領域を阻害することなく有効に引出端部枝電極1121,1221を配置形成することができ、導通抵抗が低下することがなく、水晶振動板の稜で引き回し電極113,123の電極切れが発生しても、引出電極が断線する危険性が飛躍的に抑制される。また、水晶振動板1をパッケージの端子電極21,22と接続する場合、引出電極111,121により表裏面の励振電極11,12の接続が確立されるので、導電性接合材Dはパッケージ2の端子電極側(支持体24側)のみで形成することができる。つまり、水晶振動板1の搭載構成の薄肉化が行え、結果として水晶振動子の低背化が行える。導電性接合材Dが樹脂系の接着剤であれば余分なガスの発生を抑制することができ、樹脂系の接着剤を水晶振動板の上塗りすることによる水晶振動板のずれ込みの悪影響も抑制することができる。
【0038】
また、上述の作用効果に加えて、前記各励振電極111,121は、前記引出電極112,122により前記水晶振動板1の一短辺の両端部分に引き出されているので、片持ち保持に適したより好ましい構成となり、励振領域をより広く設定し、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができる。また、片持ち保持することで、水晶振動板の保持領域を縮小化することができ、結果として水晶振動子の更なる小形化に対応できる。
【0039】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、図3(本発明の他の形態を示す水晶振動板の斜視図)に示すような電極構成とすることができる。すなわち、図3(a)では、引出端部電極112,122の形状を中央に次第に低くなる台形状としている。このとき、前記水晶振動板1の短辺から最も近接する前記励振電極の一辺までの寸法をG1とし、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極の角までのギャップ領域の寸法をG3とした場合、例えばG3を0.279mm以上に設定するとよい。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.5mm以上に設定するとより好ましい。また、図3(b)では、上記実施形態に対して引出端部電極112,122に形成される引出端部枝電極1121,1221の形成位置が異なっており、隣接する各長辺の中央側に向かって前記水晶振動板の側端部に形成される幅細の引出端部枝電極1121,1221が形成されている。これらの引出端部電極112,122、および引出端部枝電極1121,1221により、水晶振動板の側面端部には、引き回し電極113,123が形成され、水晶振動板の反対面に引き出されるように構成されている。このとき、前記水晶振動板1の短辺から最も近接する前記励振電極の一辺までの寸法をG1とし、励振電極の一辺の中央部Aから引出端部電極までの最短ギャップ領域の寸法をG3とした場合、例えばG3を約0.279mm以上に設定するとよい。また、前記引出端部電極によって前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極の寸法G4を0.5mm以上に設定するとより好ましい。上記図3の構成により、上記実施形態と同様に、水晶振動板の小形化を実現しながら引出電極により励振領域を侵害することないより電気的特性の優れた水晶振動子を提供することができる。また、水晶振動板の表裏面の励振電極に対する引出電極による引き回し電極の電気的接続性の優れた水晶振動子を提供することができる。
【0040】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
水晶振動子の量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の水晶振動板を示す斜視図。
【図2】図1の水晶振動板を搭載した状態の水晶振動子の平面図。
【図3】本発明の他の形態を示す水晶振動板の斜視図。
【図4】本発明品と従来品の検証データを示す図。
【図5】本発明品と従来品の検証データを示す図。
【符号の説明】
【0043】
1 水晶振動板
2 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動板とパッケージとキャップを有する水晶振動子であって、
前記水晶振動板は、厚みすべり振動で動作してなり、X軸方向を長辺方向とする矩形状に形成され、表裏面に対向する一対の矩形状の励振電極と、水晶振動板の端部に形成され前記パッケージの端子電極と接続される引出端部電極と、前記励振電極と前記引出端部電極を接続する引出電極とを有しており、
前記水晶振動板の短辺から最も近接する前記励振電極の一辺までの寸法を0.5mm以下に設定してなり、かつ前記励振電極の一辺の中央部から0.279mm以上0.5mm以下の電極形成されないギャップ領域を介して前記引出端部電極が形成されてなることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
前記表裏面の引出端部電極を水晶振動板の側端部を介して共通接続してなる引き回し電極の幅寸法を0.5mm以上としたことを特徴とする特許請求項1記載の水晶振動子。
【請求項3】
前記引出端部電極に接続され、かつ前記水晶振動板の側端部に形成される引き回し電極を有した幅細の引出端部枝電極が前記引出端部電極に隣接して形成されてなることを特徴とする特許請求項1、または特許請求項2記載の水晶振動子。
【請求項4】
前記各励振電極は、前記引出電極により前記水晶振動板の一短辺の両端部分に引き出されてなることを特徴とする特許請求項1乃至3記載の水晶振動子。
【請求項5】
前記励振電極と引出電極を同一電極層構成とするとともに、
電極層構成を、クロムの下地電極層と当該下地電極層の上面に形成された銀電極層、銀電極層の上面に形成されたクロム電極層と当該クロム電極層の上面に形成された銀電極層、または金電極層からなることを特徴とする特許請求項2乃至4いずれか1項記載の水晶振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−251918(P2007−251918A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313259(P2006−313259)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】