説明

水洗トイレの流水システム

【課題】 火災防止やトイレ環境維持等の高い付加価値を得ることにより、システムの有効利用を可能にし、多機能性(多様性)及びコストパフォーマンスを高める。
【解決手段】 利用者を検知したなら予め設定した条件により音声を発し、かつ駆動部2を制御して便器Mに洗浄水を自動で流す水洗トイレTの流水システム1を構成するに際して、トイレブースR内における炎Fを検知する炎検知部Uxを設けるとともに、この炎検知部Uxにより炎Fを検知したなら少なくとも検知数に係わる炎検知データDnを含むデータDを記憶するデータ記憶手段4及び利用者に注意を促す警告発生手段5を有するコントロール部Ucを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者を検知したなら予め設定した条件により音声を発し、かつ駆動部を制御して便器に洗浄水を自動で流す水洗トイレの流水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフィスビルや公共施設等の水洗トイレ、特に、和式大便器を用いた水洗トイレの場合、一回に使用する洗浄水の量は、通常、12リットル程度となり、大量の水道水が使用される。このため、無駄な流水をできるだけ排することが、節水対策において重要な課題となり、従来より、様々な節水機能を施した水洗トイレも知られている。
【0003】
例えば、特開平8−326117号公報には、水洗便器に対して洗浄水を放水するための放水経路上にフラッシュバルブを設け、フラッシュバルブの圧力室内の圧力を変化させることにより、フラッシュバルブ内の弁体を開弁位置及び閉弁位置に移動させて放水経路を開閉するとともに、放水経路とフラッシュバルブの圧力室との間を接続するバイパス経路と、バイパス経路上に設けられ、圧力室内の圧力を変化させるべくバイパス経路を開閉する電磁弁と、フラッシュバルブの圧力室内に水を供給するための給水経路と、電磁弁駆動のための開閉信号を出力する開閉信号出力手段と、開閉信号出力手段からの開閉信号に基づいて、電磁弁を開閉駆動制御する制御手段とを備え、通常は、電磁弁(ソレノイド)の励磁時間(放水時間)を3秒とするとともに、人体感知センサによる使用者の検出時間が120秒を越えたときは、電磁弁(ソレノイド)の励磁時間(放水時間)を10秒に変更して節水効果を得れるようにした水洗便所の節水装置が開示されている。
【特許文献1】特開平8−326117号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来における水洗便所の節水装置(水洗トイレの流水システム)は、次のような問題点があった。
【0005】
第一に、節水機能以外の他の付加的機能、例えば、火災防止やトイレ環境維持等に対する付加的機能については、十分な考慮がなされていないため、高い付加価値を得る観点からは不十分である。結局、設備(システム)を有効利用することができず、多機能性(多様性)及びコストパフォーマンスに劣る。
【0006】
第二に、フラッシュバルブ全体を専用のユニットとして構成するため、ユニット単価の高コスト化を強いられる。一方、既存のフラッシュバルブをそのまま利用して構成する場合、コスト面では有利になるものの、フラッシュバルブの外部に追加機構を付加する構成となるため、フラッシュバルブ全体の大型化が強いられ、この対策が課題となる。
【0007】
第三に、一定の節水効果は得れるものの、更なる発展させた節水対策を行ったり節水意識を高めにくい。即ち、実際の使用状態を的確かつ容易に把握できないため、例えば、データ解析を行うなどにより、流水システムの本来の機能や利便性を確保しつつ、更なる発展させた節水対策を行ったり節水意識を高めにくく、結局、節水効果や節水意識を高めるにも限界がある。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した水洗トイレの流水システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、利用者を検知したなら予め設定した条件により音声メッセージ及び/又は擬音を出力し、かつ駆動部2を制御して便器Mに洗浄水を自動で流す水洗トイレTの流水システム1を構成するに際して、トイレブースR内における炎Fを検知する炎検知部Uxを設けるとともに、この炎検知部Uxにより炎Fを検知したなら少なくとも検知数に係わる炎検知データDnを記憶するデータ記憶手段4及び利用者に注意を促す警告発生手段5を有するコントロール部Ucを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、駆動部2は、駆動モータ11と、この駆動モータ11の回転を運動変換してフラッシュバルブ12の操作ハンドル13を開位置Xo又は閉位置Xcに選択的に変位させる運動変換機構14を備えて構成できる。また、コントロール部Ucには、データ記憶手段4により記憶したデータDを、外部機器Uoに転送可能なデータ通信手段15を設けることができる。さらに、データDには、炎検知データDnに加え、操作ハンドル13に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrを含ませることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る水洗トイレTの流水システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) トイレブースR内における炎Fを検知する炎検知部Uxを設けるとともに、この炎検知部Uxにより炎Fを検知したなら少なくとも検知数に係わる炎検知データDnを含むデータDを記憶するデータ記憶手段4及び利用者に注意を促す警告発生手段5を有するコントロール部Ucを設けたため、火災防止やトイレ環境維持等の高い付加価値を得ることができる。したがって、システム1の有効利用が可能となり、多機能性(多様性)及びコストパフォーマンスに優れる。
【0013】
(2) 好適な態様により、駆動部2を、駆動モータ11と、この駆動モータ11の回転を運動変換してフラッシュバルブ12の操作ハンドル13を開位置Xo又は閉位置Xcに選択的に変位させる運動変換機構14を備えて構成すれば、既存のフラッシュバルブ12をそのまま利用することができる。したがって、操作ハンドル13の交換により容易に対応することができ、フラッシュバルブ12の周辺構成の低コスト化及び小型コンパクト化の双方を満足させることができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、コントロール部Ucに、データ記憶手段4により記憶したデータDを、外部機器Uoに転送可能なデータ通信手段15を設ければ、携帯端末等により容易かつ確実にデータ収集を行うことができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、データDに、炎検知データDnに加え、操作ハンドル13に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrを含ませれば、実際の使用状態を的確かつ容易に把握できる。したがって、例えば、データ解析を行うなどにより、流水システム1の本来の機能や利便性を確保しつつ、より発展させた節水対策を行ったり節水意識を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
まず、本実施形態に係る水洗トイレTの流水システム1の構成について、図1〜図4を参照して説明する。
【0018】
図1は、水洗トイレTを示し、Mは和式の便器(大便器)である。また、1は、この水洗トイレTに備える流水システムを示す。この流水システム1は、基本構成として、フラッシュバルブユニットUf及びコントロール部Ucを備える。
【0019】
フラッシュバルブユニットUfは、図2に示すように、ハウジング32を有し、このハウジング32に、フラッシュバルブ12と駆動機構Udを内蔵する。そして、フラッシュバルブ12の左側の側面には流水入口を有し、この流水入口はハウジング32から突出させ、図1に示すように、止水栓21を介して上流側の水道管22に接続するとともに、フラッシュバルブ12の底面は、流水出口となり、この流水出口はバキュームブレーカ23を介して便器M側に接続する。したがって、フラッシュバルブユニットUfを用いるも、水道管22,止水栓21,フラッシュバルブ12,バキュームブレーカ23,便器Mに至る流水経路は、既存の流水経路と実質同じとなる。
【0020】
また、フラッシュバルブ12の右側の側面には突出した操作ハンドル13を備える。本実施形態では、既存のフラッシュバルブ12をそのまま利用するも、この操作ハンドル13及び図3に示すフラッシュバルブ12に内蔵するリターンスプリング25のみ、新たな操作ハンドル13とリターンスプリング25に交換する。この場合、操作ハンドル13は、図3に示すように、操作入力側13iと操作出力側13oをオフセットさせた形状Zとなるように合成樹脂等により一体成形し、操作入力側13iには、後述する駆動部2の出力部2oに係合する長孔による係合部13sを形成する。リターンスプリング25は、フラッシュバルブ12に内蔵するプッシュバー24に装填することにより、このプッシュバー24、更にこのプッシュバー24に当接する操作ハンドル13を閉位置Xc、即ち、フラッシュバルブ12が閉じる位置に戻す機能を有し、特に、弾性力を、駆動部2を使用しないときの弾性力よりも小さくなるように選定する。
【0021】
このような形状Zの操作ハンドル13を用いれば、フラッシュバルブ12の周辺構成の更なる小型コンパクト化に寄与できるとともに、弾性力を小さくしたリターンスプリング25を用いれば、駆動モータ11を含む駆動部2の低能力化により、フラッシュバルブ12の周辺構成の更なる低コスト化及び小型化に寄与できる利点がある。
【0022】
一方、駆動機構Udは、図3に示すように、駆動モータ11の回転を運動変換機構14により運動変換して、操作ハンドル13を、フラッシュバルブ12が開く開位置Xo又はフラッシュバルブ12が閉じる閉位置Xcに選択的に変位させる駆動部2を備える。この駆動部2は、フラッシュバルブ12に係止させた取付プレート35により支持される。なお、駆動部2と操作ハンドル13により駆動機構Udを構成する。この場合、駆動モータ11は、特に種類を問わないが、後述するコントロール部Ucにより正回転制御及び逆回転制御可能な駆動モータを選定する。例示の駆動モータ11はDCモータである。
【0023】
また、運動変換機構14は、駆動モータ11の出力シャフトに固定したピニオン36,このピニオン36に噛合する減速歯車37,この減速歯車37に噛合する平歯車38,この平歯車38に一端(上端)を固定したスクリュ歯車39,このスクリュ歯車39に螺合するナット歯車40を有し、このナット歯車40は、プランジャ41に固定する。これにより、駆動モータ11における出力シャフトの回転は、ピニオン36,減速歯車37,平歯車38,スクリュ歯車39を介して減速伝達され、スクリュ歯車39に螺合するナット歯車40及びこれに一体のプランジャ41を昇降させる。
【0024】
この場合、プランジャ41の下端は、駆動部2の出力部2oとなり、プランジャ41の下端に設けた係合ピン部42が、操作ハンドル13に形成した係合部13s、即ち、長孔に係合する。さらに、プランジャ41は、図2に示すように、取付プレート35に固定した補助プレート43を用いて構成した上下一対のガイド部44u,44dにより上下方向へ平行移動可能に支持される。また、プランジャ41には、シャッタプレート45を取付けるとともに、補助プレート43には、シャッタプレート45を検出可能な光学センサを用いた上下一対の上位置センサ46uと下位置センサ46dを取付ける。これにより、上位置センサ46u及び下位置センサ46dは、閉位置Xc及び開位置Xoに対応する出力部2oの位置を検出する位置検出部46を構成する。このような位置検出部46を設ければ、フラッシュバルブ12を開位置Xo及び閉位置Xcに確実に切換えることができる利点がある。なお、図1において、止水栓21,水道管22,バキュームブレーカ23,フラッシュバルブユニットUf,後述するケーブル81は、壁面の内部側に設置されており、トイレブースR側からは見えない。
【0025】
他方、コントロール部Ucは、図1に示すように、トイレブースR内の壁面に取付けるケーシング51を備える。ケーシング51の前面には、音声及び擬音を出力するスピーカ52を配設するとともに、利用者の存在を検知する人検知センサ54,非接触スイッチを用いた手動操作スイッチ55及び後述する外部機器Uoに対して交信を行う赤外線送受のための送受信部56等を配した入出力パネル53を設ける。手動操作スイッチ55は前方に手を翳すことによりONさせることができる。なお、入出力パネル53は半透明カバーにより覆われている。そして、このコントロール部Ucは、ケーブル81を介してフラッシュバルブユニットUfに接続する。
【0026】
また、Uxは、トイレブースR内における炎Fを検知する炎検知部Uxであり、トイレブースRの壁面上部或いは天井に取付ける。この炎検知部Uxは、無線によりコントロール部Ucに接続される。さらに、仮想線で示すUoは、管理者が携帯可能な携帯端末等の外部機器であり、コントロール部Ucに対して無線により交信することができる。この外部機器Uoは、表示部57及び操作部58等を備えている。
【0027】
図4に、上述した駆動機構Ud,コントロール部Uc,炎検知部Ux及び外部機器Uoの電気系統ブロック図を示す。同図中、Ucはコントロール部であり、マイクロコンピュータ(マイコン)等を利用した制御部61を内蔵する。制御部61には内部メモリ62が付属する。内部メモリ62は、予め設定したシーケンスプログラムを格納するとともに、各種データDを記憶するデータ記憶手段4を構成する。また、63はメモリに登録した音声データを用いてスピーカ52から音声を出力する音声発生部、64はメモリに登録した擬音データを用いてスピーカ52から擬音を出力する擬音発生部であり、それぞれ制御部61に接続する。この場合、音声データにはガイダンスデータが含まれるとともに、擬音データには流水音データが含まれる。さらに、コントロール部Ucは、炎検知部Uxにより炎Fを検知したなら利用者に注意を促す警告発生手段5を構成する。その他、コントロール部Ucにおいて、54は人検知センサ、55は手動操作スイッチ、65は無線送信部及び無線受信部を含む無線通信部であり、それぞれ制御部61に接続する。この無線通信部65には、上述した送受信部56が含まれる。なお、66は、AC100〔V〕電源に接続して直流出力を得る直流電源部である。
【0028】
このような構成を有するコントロール部Ucは、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ駆動部2を駆動制御する制御手段を構成するとともに、メモリ62(データ記憶手段4)に記憶したデータDを無線により外部機器Uoに転送可能なデータ通信手段15を構成する。このデータDには、炎検知部Uxにより炎Fを検知した際におけるその検知数に係わる炎検知データDnが含まれるとともに、操作ハンドル13に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrが含まれる。炎検知データDnは、炎検知部Uxが炎Fを検知した際における検知信号をコントロール部Ucが受信するため、この検知信号の検知数(検知回数)に係わるデータである。また、Udは駆動機構であり、上述した駆動モータ11,上位置センサ46u及び下位置センサ46dを備え、それぞれケーブル81を介して制御部61に接続される。
【0029】
一方、Uxは炎検知部であり、制御部67を備えるとともに、この制御部67に接続した無線送信機能を有する無線通信部68及び炎センサ8を備える。この炎センサ8は、炎Fを直接検知し或いは炎Fから間接的に発生する現象を検知するセンサであり、ライタ等の炎から発する紫外線を検知する紫外線センサ,タバコ100から放射する熱を検知するサーモセンサ,煙を検知する煙センサ等を含む概念である。なお、70は電池等を用いた電源部である。
【0030】
さらに、Uoは外部機器であり、制御部71を備えるとともに、この制御部71に接続したメモリ72,無線送信部及び無線受信部を含む無線通信部73,入出力ポート74,バッテリ等を用いた電源部75を備える。
【0031】
次に、本実施形態に係る流水システム1の使用方法及び動作について、図1〜図7を参照して説明する。
【0032】
まず、流水システム1の全体動作について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。水洗トイレTを使用していない状態であれば、人検知センサ54は非検知状態にあり、コントロール部Ucは待機モードを維持する(ステップS1)。この場合、操作ハンドル13は閉位置Xcにある。また、炎センサ8(炎検知部Ux)は、トイレブースR(感知エリア)内における炎Fの有無を常にセンシングしている。
【0033】
今、利用者がトイレブースRに入り、水洗トイレTを使用する場合を想定する。利用者が人検知センサ54の検知エリアに入れば、人検知センサ54により利用者が検出され、この検出結果は、制御部61に付与される(ステップS2)。そして、検出状態のまま2秒間が経過すれば、音声発生部63が制御され、スピーカ52から音声ガイダンス、例えば、「このトイレは自動で水が流れます」等の音声ガイダンスが出力する(ステップS3,S4)。したがって、人検知センサ54が検出状態になった後、2秒間が経過する前に非検出状態になったときは、一時的な外乱と考えられるため、待機モードを維持する(ステップS3)。
【0034】
一方、音声ガイダンスの出力が終了したなら続いて擬音発生部64が制御され、スピーカ52から流水音(擬音)が出力する(ステップS5)。女性の場合、一般的な水洗トイレでは、トイレ使用中の音を消すために、洗浄水を流し続ける場合も少なくなく、水道水のかなりの無駄を生じている。したがって、流水音(擬音)を流すことによりトイレ使用中の音を消すようにすれば、かなりの節水効果を得ることができる。なお、擬音の音量は設定可能であり、必要により擬音の種類を選択することもできる。そして、利用者が水洗トイレTの使用を終え、人検知センサ54の検知エリアから離れれば、人検知センサ54は非検出状態となるため、この非検出結果は、制御部61に付与され、擬音の出力が停止する(ステップS6,S7)。このように、擬音は、人検知センサ54が検知状態になってから非検出状態になるまでの間継続することになる。
【0035】
また、制御部61では、内蔵タイマにより、人検知センサ54が検出状態になった時点から非検出状態になる時点までの時間を計時することにより人検知時間Tdを求め、この人検知時間Tdの判定処理を行う(ステップS8)。具体的には、人検知時間Tdを、予め設定した判定時間Ts(通常、90〜120秒)と比較し、Td<Tsであれば、「小」と判定し、Ts≦Tdであれば、「大」と判定する。制御部61では、この判定結果により流水時間を選択して洗浄水を流す時間を制御する(ステップS9,S10)。この場合、「小」と判定した場合の流水時間は、1〜4秒に設定できるとともに、「大」と判定した場合の流水時間は、2〜8秒に設定でき、これらの流水時間の長さは予め設定することができる。なお、人検知センサ54が検出状態になってから所定時間経過しても非検出状態にならないときは、利用者に何らかの異常が発生したことが考えられるため、ステップS8における判定処理では、異常発生と判定し、アラーム音を発生させたり、管理室に通報するなどの異常処理を行わせることができる。そして、選択した流水時間が経過したなら洗浄水を停止する制御を行う(ステップS11,S12)。
【0036】
洗浄水を流す制御と停止する制御は、次のように行われる。まず、洗浄水を流す制御は、制御部61から駆動モータ11に対して正回転駆動信号を供給する。これにより、駆動モータ11が正回転し、スクリュ歯車39が正回転することによりナット歯車40が下降する。ナット歯車40の下降により一体のプランジャ41も下降し、出力部2oに係合する操作ハンドル13が押し下げられる。そして、図3に示すように、操作ハンドル13が閉位置Xcから開位置Xoまで変位すれば、シャッタプレート45が下位置センサ46dにより検出され、制御部61は駆動モータ11を停止制御する。操作ハンドル13が開位置Xoに変位すれば、操作ハンドル13の操作出力側13oがプッシュバー24を、図3中、左方向に押し出すため、フラッシュバルブ3は開状態となり、洗浄水が便器Mに流れる。この際、プッシュバー24はリターンスプリング25の弾性に抗して変位する。
【0037】
他方、洗浄水を停止する制御は、制御部61から駆動モータ11に対して逆回転駆動信号を供給し、駆動モータ11を逆回転させる。これにより、スクリュ歯車39が逆回転し、ナット歯車40が上昇する。ナット歯車40の上昇によりプランジャ41も上昇し、出力部2oに係合する操作ハンドル13が引き上げられる。そして、操作ハンドル13が開位置Xoから図2に示す閉位置Xcまで変位すれば、シャッタプレート45が上位置センサ46uにより検出され、制御部61は駆動モータ11を停止制御する。また、この際、操作ハンドル13に対する操作の回数に係わるデータDtと、操作時の条件、即ち、流水時間に係わるデータDrは、メモリ62に記憶される(ステップS13)。このように、データDに、操作ハンドル13に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrを含ませれば、実際の使用状態をより的確に把握することができる。この後は、システム1を停止させない限り同様の動作(処理)が繰り返される(ステップS14)。
【0038】
次に、利用者がトイレブースR内においてタバコを吸った場合の処理(動作)について、図6を参照して説明する。
【0039】
図1の符号100がタバコを示している。利用者がタバコを吸った場合、タバコ100から炎F(熱)が発生する。一方、上述したように、炎検知部Uxは、トイレブースR(感知エリア)内における炎Fの有無を常にセンシングしている(ステップS21)。したがって、炎検知部Uxの炎センサ(サーモセンサ)8は、炎Fから放射される熱を検知するため、炎センサ8から出力する検知信号(検知データ)は、制御部67を介して無線通信部68に付与され、コントロール部Ucに対して無線により送信される(ステップS22,S23)。この場合、前述したように、炎検知部Uxの炎センサ8に煙センサを用いて煙を検知するようにしてもよいし、炎センサ8に紫外線センサを用いてライタ等の炎から発する紫外線を検知するようにしてもよい。
【0040】
そして、無線通信部68から送信された検知データは、コントロール部Ucの無線通信部65により受信し、受信した検知データは制御部61に付与される(ステップS24)。これにより、制御部61は、システム動作が進行中であれば、システム動作を中断し、警告発生手段5により、利用者に対して警告音及び音声ガイダンスにより注意を促す(ステップS25,S26)。システム動作を中断するとは、上述したステップS4における音声ガイダンスやステップS5における流水音(擬音)が出力中の場合、その出力を中断し、ステップS26における警告音及び音声ガイダンスを出力することを意味する。
【0041】
また、制御部61は、検知数に係わる炎検知データDnをメモリ62(データ記憶手段4)に記憶する(ステップS27)。この場合、「検知数」には、少なくとも前回のチェック日からの検知回数(カウント数)を含めるとともに、必要により検知日や検知時間等を含めることができる。そして、炎Fを検知したことに伴う上述した処理が終了したなら、システム動作の中断を解除し、例えば、中断したサブルーチンからシステム動作を再開する(ステップS28)。一方、ステップS24において、炎検知データDをコントロール部Ucの無線通信部65により受信したなら、コントロール部Ucの外部出力端子から管理者側に設置された外部出力装置(監視装置)に通報(送信)する(ステップS29,S30)。
【0042】
このように、本実施形態に係る流水システム1によれば、トイレブースR内における炎Fを検知する炎検知部Uxを設けるとともに、この炎検知部Uxにより炎Fを検知したなら少なくとも検知数に係わる炎検知データDnを記憶するデータ記憶手段4及び利用者に注意を促す警告発生手段5を有するコントロール部Ucを設けたため、火災防止やトイレ環境維持等の高い付加価値を得ることができる。したがって、システム1の有効利用が可能となり、多機能性(多様性)及びコストパフォーマンスに優れる。
【0043】
なお、コントロール部Ucに備える手動操作スイッチ55を手動で操作することにより任意に洗浄水を流すことができる。したがって、例えば、清掃者が清掃時等に任意に洗浄水を流すことができる。この場合、清掃者が、待機モードのコントロール部Ucにおける入出力パネル53(手動操作スイッチ55)の前に手を翳せば、手動操作スイッチ55がONする。これにより、制御部61は、駆動モータ11に対して正回転駆動信号を供給し、操作ハンドル13を開位置Xoに変位させることにより、フラッシュバルブ3を開状態にして便器Mに洗浄水を流す。そして、予め設定した流水時間が経過したなら、制御部61は、駆動モータ11に対して逆回転駆動信号を供給し、操作ハンドル13を閉位置Xcに変位させることにより、フラッシュバルブ3を閉状態にして洗浄水を停止させる。この際、操作ハンドル13に対する操作及び流水時間は、手動操作に基づくデータDt,Drとしてメモリ62に記憶される。手動操作スイッチ55による動作の態様は、例示のように、予め設定した流水時間により行ってもよいし、その他、手を翳している間だけ洗浄水が流れるようにする態様、或いは手を瞬間的に翳して小流量の洗浄水を流し、手を2秒以上翳して大流量の洗浄水を流す態様など、任意の態様を採用できる。
【0044】
一方、外部機器Uoを用いて、各種条件設定やデータ収集等を行うことができる。図7は、一例としてメモリ62に記憶されたデータDを外部機器Uoにより収集する際の動作をフローチャートで示す。データDを収集する際には、まず、図1に示すように、仮想線で示す外部機器Uo(携帯端末)の上端(送受信部)をコントロール部Ucに向け、データDを収集するための所定のキー操作を行う(ステップS31)。これにより、外部機器UoからデータDを収集するための指令信号が無線通信部73から送信される(ステップS32)。そして、コントロール部Ucは、送受信部56により指令信号を受信する(ステップS33)。これにより、制御部61はメモリ62に記憶されているデータDを読み出すとともに、無線通信部65を介して外部機器Uoに送信する(ステップS34)。外部機器Uoは、無線通信部73によりデータDを受信し(ステップS35)、このデータDは外部機器Uoの表示部57に表示されるとともに、メモリ72に記憶される(ステップS36,S37)。
【0045】
このように、コントロール部Ucには、メモリ62に記憶したデータDを無線により外部機器Uoに転送可能なデータ通信手段15を備えている。このようなデータ通信手段15を備えることにより、携帯端末等により容易かつ確実にデータ収集を行うことができる利点がある。なお、各種条件設定を行う場合も基本的には同様の動作となる。この場合、予め外部機器Uoにおいて各種条件を設定し、設定した各種条件に係わる設定データを外部機器Uoからコントロール部Ucに無線で転送できる。したがって、コントロール部Ucにおいて直接設定する煩わしさを解消できる。
【0046】
このような流水システム1によれば、開位置Xo又は閉位置Xcに選択的に変位させる駆動部2の出力部2oに係合する係合部13sを有する操作ハンドル13を用いたため、既存のフラッシュバルブ12をそのまま利用する場合であっても、操作ハンドル13の交換により容易に対応することができ、フラッシュバルブ12の周辺構成の低コスト化及び小型コンパクト化の双方を満足させることができる。また、駆動機構Udに加え、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ駆動部2を駆動制御する制御手段と、この制御手段の制御に係わるデータDを記憶するデータ記憶手段4とを有するコントロール部Ucを備えるため、実際の使用状態を的確かつ容易に把握できる。したがって、例えば、データ解析を行うなどにより、流水システム1の本来の機能や利便性を確保しつつ、より発展させた節水対策を行ったり節水意識を高めることができる。
【0047】
他方、図8は、本発明の変更実施形態に係る流水システム1におけるフラッシュバルブ駆動ユニットUeを示す。図1〜図3に示したフラッシュバルブユニットUfは、既存のフラッシュバルブ12をそのまま利用するも、操作ハンドル13及びリターンスプリング25を、新たな専用の操作ハンドル13とリターンスプリング25に交換したものであるが、図8に示すフラッシュバルブ駆動ユニットUeは、既存の操作ハンドル13及びリターンスプリングを含むフラッシュバルブ12の全体をそのまま利用したものである。したがって、フラッシュバルブ駆動ユニットUeは、既存のフラッシュバルブ12に付設することができ、基本的には、前述したフラッシュバルブユニットUfにおける駆動部2により構成する。
【0048】
フラッシュバルブ駆動ユニットUeにおいて、91はフラッシュバルブ12に取付固定するための取付ベースであり、この取付ベース91により駆動部2が支持される。駆動部2は、図2及び図3に示した駆動部2と同様の動作を行い、駆動モータ11を正回転制御又は逆回転制御することにより、駆動部2の出力部2oを昇降させることができる。この場合、出力部2oの下端には、操作駒92が設けてあり、この操作駒92が操作ハンドル13の上端に当接する。このため、出力部2oが実線で示す上昇位置にあれば、操作ハンドル13は実線で示す水平位置となり、フラッシュバルブ12は閉状態になる。一方、出力部2oが仮想線で示す下降位置にあれば、操作ハンドル13は仮想線で示す13dのように下方傾斜位置となるため、フラッシュバルブ12は開状態となり、洗浄水を便器Mに流すことができる。なお、図8において、図2及び図3と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明を省略する。
【0049】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,手法,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0050】
例えば、駆動部2(運動変換機構14)の構成は例示の機能と同様の機能を有する他の形態により置換できる。また、操作ハンドル13は、操作入力側13iと操作出力側13oをオフセットさせたクランク形の形状Zを例示したが、他の形状Zを排除するものではない。一方、データ通信手段15として無線手段を例示したが有線手段を排除するものではない。さらに、外部機器Uoとして、携帯端末を例示したが、ノートパソコンや多機能携帯電話等を利用できる。なお、携帯端末は専用端末であるか汎用端末であるかを問わない。また、データDとして、操作ハンドル13に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrを例示したが、利用者の滞在時間(使用時間)等の各種データを適用できる。さらに、操作スイッチ55…も押ボタンスイッチ等の各種形態のスイッチを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る流水システム全体の外観構成図、
【図2】同流水システムにおけるフラッシュバルブユニットの断面構成図、
【図3】同流水システムにおける要部の原理構成図、
【図4】同流水システムの電気系統ブロック図、
【図5】同流水システムの全体動作を説明するためのフローチャート、
【図6】同流水システムにおける炎を検知した際の動作を説明するためのフローチャート、
【図7】同流水システムにおけるデータを外部機器により収集する際の動作を説明するためのフローチャート、
【図8】本発明の変更実施形態に係る流水システムにおけるフラッシュバルブ駆動ユニットの構成図、
【符号の説明】
【0052】
1:流水システム,2:駆動部,4:データ記憶手段,5:警告発生手段,11:駆動モータ,12:フラッシュバルブ,13:操作ハンドル,14:運動変換機構,15:データ通信手段,M:便器,T:水洗トイレ,R:トイレブース,F:炎,Ux:炎検知部,Uc:コントロール部,Uo:外部機器,D:データ,Dn:炎検知データ,Dt:データ,Dr:データ,Xo:開位置,Xc:閉位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を検知したなら予め設定した条件により音声メッセージ及び/又は擬音を出力しかつ駆動部を制御して便器に洗浄水を自動で流す水洗トイレの流水システムにおいて、トイレブース内における炎を検知する炎検知部を設けるとともに、この炎検知部により炎を検知したなら少なくとも検知数に係わる炎検知データを記憶するデータ記憶手段及び利用者に注意を促す警告発生手段を有するコントロール部を備えることを特徴とする水洗トイレの流水システム。
【請求項2】
前記駆動部は、駆動モータと、この駆動モータの回転を運動変換してフラッシュバルブの操作ハンドルを開位置又は閉位置に選択的に変位させる運動変換機構を備えることを特徴とする請求項1記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項3】
前記コントロール部は、前記データ記憶手段により記憶したデータを、外部機器に転送可能なデータ通信手段を備えることを特徴とする請求項1記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項4】
前記データには、前記炎検知データに加え、前記操作ハンドルに対する操作の回数に係わるデータ及び操作時の条件に係わるデータを含むことを特徴とする請求項1又は3記載の水洗トイレの流水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−304932(P2007−304932A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133538(P2006−133538)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(504133291)株式会社ヒューネット・ジャパン (9)
【出願人】(390034153)株式会社バイタル (6)
【Fターム(参考)】