説明

水素処理システム

【課題】停止要因に応じた適切な停止処理を行うことができる水素処理システムを提供する。
【解決手段】発電モード及び水素精製モードでの運転中に、温度センサ24、圧力センサ41、水素センサ26、原料ガスセンサ25、及び回転速度センサ66の検出信号に基づいて、水素処理器(改質器10,DMS(Dual Mode Stack)30,水素高純度化装置40等)の状態を監視し、水素処理器の状態が水素処理器の破損を示すものであるときは、各電磁弁を閉弁して水素処理器のガス流路から外部へのガスの流出を遮断する第1の停止処理を実行し、水素処理器の状態が予め設定された状態域から外れ、且つ、水素処理器の破損を示すものでないときには、水素処理運転を停止して、ブロワ61により水素処理器のガス流路を掃気する第2の停止処理を実行する停止制御手段92を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を含むガスを処理する水素処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水素処理システムとして、例えば、炭化水素を主体とする原燃料を改質して、水素リッチな改質ガスを生成する水素製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された水素製造装置においては、運転停止時に、徐々に原燃料の濃度を下げながら、酸素を含まない燃焼ガス(排ガス)を反応系内にリサイクルさせることによって、反応系内のガスを、最終的に窒素と二酸化炭素と水蒸気に置換する処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−20102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素処理システムの稼働中に、種々の要因によって水素処理システムを停止する必要が生じる場合がある。そして、水素処理システムの停止要因には、水素処理システムの作動を直ちに停止しなければならない緊急性の高いものと、緊急停止の必要性が低いものがある。このとき、水素処理システムの停止を1種類の処理で行ったときには、停止処理の内容が停止要因に対して不適切なものとなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、停止要因に応じた適切な停止処理を行うことができる水素処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、触媒反応を用いた原燃料からの含水素ガスの生成と、電解質膜を用いた含水素ガスの電気化学反応による発電と、電解質膜を用いた含水素ガスからの水素の精製とのうちの、少なくともいずれかを行う水素処理運転を実行する水素処理器を有する水素処理システムに関する。
【0008】
そして、前記水素処理器の状態を検出する状態検出手段と、前記水素処理器のガス流路から外部へのガスの流出を遮断するガス封止手段と、前記水素処理器のガス流路に空気を供給してガス流路の掃気を行う掃気手段と、前記水素処理運転の実行中に、前記状態検出手段の検出結果に基づいて前記水素処理器の状態を監視し、前記水素処理器の状態が前記水素処理器の破損を示すものであるときは、前記ガス封止手段により前記水素処理器のガス流路から外部へのガスの流出を遮断して、前記水素処理器の運転を停止する第1の停止処理を実行し、前記水素処理器の状態が、所定運転範囲の状態から外れ、且つ、前記水素処理器の破損を示すものでないときには、前記水素処理運転を停止して、前記掃気手段により前記水素処理器のガス流路を掃気する第2の停止処理を実行する停止制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明によれば、前記水素処理器による前記水素処理運転中に、前記停止制御手段により前記水素処理器の状態が監視される。そして、前記水素処理器の状態が前記水素処理器の破損を示すものであるときは、前記停止制御手段により前記第1の停止処理が実行されて、前記水素処理器のガス流路内に水素が封止された状態となる。これにより、破損した前記水素処理器の運転を直ちに停止することができると共に、前記水素処理器内の水素が外部に流出して無駄になることを防止することができる。
【0010】
また、前記水素処理器の状態が、前記所定運転範囲の状態から外れ、且つ、前記水素処理器の故障を示すものでないときには、前記停止制御手段により前記第2の停止処理が実行されて、前記水素処理器のガス流路が掃気される。これにより、前記水素処理器の温度低下やガス流路内に滞留した水の排出を行って、前記水素処理器の性能の回復を図ることができる。
【0011】
このように、本発明によれば、前記停止制御手段により、前記水素処理器の状態に応じて、前記第1の停止処理又は前記第2の停止処理を実行することによって、前記水素処理器の前記水素処理運転を適切に停止することができる。
【0012】
また、前記水素処理運転は、初期チェック工程、暖機工程、水素処理工程、及び停止工程を含み、前記停止制御手段は、前記各工程において、前記水素処理器の状態を監視して、前記第1の停止処理と前記第2の停止処理を実行することを特徴とする。
【0013】
かかる本発明によれば、前記各工程において前記水素処理器の状態を監視することによって、前記水素処理器の故障や性能低下が生じたときに、速やかに前記第1の停止処理又は前記第2の停止処理を実行して対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】水素処理システムの構成図。
【図2】水素精製モードにおける運転制御手段及び停止制御手段の作動フローチャート。
【図3】水素精製モードにおける停止条件を示した説明図。
【図4】発電モードにおける運転制御手段及び停止制御手段の作動フローチャート。
【図5】発電モードにおける停止条件を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図1〜5を参照して説明する。図1を参照して、本実施形態の水素処理システムは、筐体1内に、炭化水素を主体とする燃料ガス(都市ガス等)と水蒸気との混合燃料を改質して改質ガスを生成する改質装置10、燃料電池及びイオンポンプとして機能する電極構造体30(以下、DMS(Dual Mode Stack)30という)、DMS30に酸化剤ガスとして空気を供給するブロワ50、DMS30により精製された水素ガスを除湿してさらに精製する水素高純度化装置40、及び、水素処理システムの作動を制御するECU(Electronic Control Unit)を備えて構成されている。
【0016】
また、水素処理システムは、筐体1内の換気を行うための換気ファン65、換気ファン65の回転速度を検出する回転速度センサ66、筐体1内の燃料ガスの濃度を検出する燃料ガスセンサ25、筐体1内の水素の濃度を検出する水素センサ26、燃料供給路2から分岐した改質及び掃気用流路60に設けられたブロワ61(本発明の掃気手段に相当する)、燃料供給路2に設けられた電磁弁70、掃気用流路60に設けられた電磁弁62、アノード出口流路3に設けられた電磁弁71、カソード入口流路5に設けられた電磁弁51、カソード出口流路6に設けられた電磁弁52、及び、水素ガス流路4に設けられた電磁弁72,73を備えている。
【0017】
なお、水素高純度化装置40で精製された水素ガスは、図示しない圧縮部により圧縮され、図示しない充填部により燃料電池車両の水素ボンベ等に充填される。
【0018】
改質装置10は、燃料ガスに含まれるメタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、ブタン(C10)等の炭化水素に、水蒸気を混合して混合燃料を生成する熱交換器(蒸発器)11、熱交換器11に水蒸気発生用の熱を付与する触媒燃焼器17、熱交換器12、混合燃料を水蒸気改質して改質ガスを生成する改質器13、シフト反応により改質ガス中の一酸化炭素(CO)及び水蒸気を二酸化炭素(CO)及び水素(H)に変換するCO変成器(シフト反応器)14、熱交換器15、及び、少量の空気を改質ガスに付加し、選択的に吸収した一酸化炭素と空気中の酸素を反応させて二酸化炭素に変換するCO除去器(選択酸化反応器)16を備えている。
【0019】
また、触媒燃焼器17には、触媒燃焼器17の温度を検出する温度センサ24が設けられている。同様に、改質器13、熱交換器12の入口、CO変成器14の入口、CO除去器16の入口にも、これらの温度を検出する温度センサ20,21,22,23が個別に設けられている。また、水素高純度化装置40には、水素高純度化装置40の内部圧力を検出する圧量センサ41が設けられている。
【0020】
DMS30は、固体高分子電解質膜31をアノード電極32とカソード電極33で挟んだ電解質膜・電極構造部を有し、この電解質膜・電極構造部を図示しないセパレータと交互に積層したスタックを構成している。この場合、電解質膜・電極構造部とセパレータの間にガス流路が形成される。
【0021】
アノード電極32の入口はアノード入口流路7と接続され、改質装置10で精製された水素リッチな改質ガス(本発明の含水素ガスに相当する)が、アノード入口流路7からアノード電極32に供給される。また、アノード電極32の出口はアノード出口流路3と接続され、使用済みの改質ガス(アノードオフガス)が、アノード電極32からアノード出口流路3に排出される。
【0022】
カソード電極33の入口はカソード入口流路5と接続され、発電モードでの運転時には、カソード入口流路5を介して、ブロワ50からカソード電極33に空気(酸化剤ガス)が供給される。また、カソード電極33の一方の出口はカソード出口流路6と接続され、他方の出口は水素ガス流路4と接続されている。
【0023】
そして、発電モードでの運転時は、使用済みの空気(カソードオフガス)が、カソード電極33からカソード出口流路6に排出される。また、水素精製モードでの運転時には、精製水素がカソード電極33から水素ガス流路4に供給される。
【0024】
なお、改質器10と、DMS30と、水素高純度化装置40と、これらを接続するガス流路を含む構成を、以下では水素処理器という。また、電磁弁51,52,62,70〜73により、本発明のガス封止手段が構成される。
【0025】
ECU90は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等により構成された電子ユニットであり、このCPUに水素処理システムの制御用プログラムを実行させることによって、ECU90が運転制御手段91及び停止制御手段92として機能する。
【0026】
運動制御手段91は、DMS30をイオンポンプとして機能させる水素精製モードでの運転と、DMS30を燃料電池として機能させる発電モードでの運転とを切換えて実行する。以下、水素精製モード及び発電モードでの水素処理システムの動作について説明する。
【0027】
先ず、水素精製モードでの運転を行なうときの水素処理器の動作について、図1を参照して説明する。運転制御手段91は、カソード入口流路5の電磁弁51と、カソード出口流路6の電磁弁52とを閉弁すると共に、燃料供給ライン2の電磁弁70と、改質及び掃気用流路60の電磁弁62と、アノード出口流路3の電磁弁71と、水素ガス流路4の電磁弁72,73とを開弁する。これにより、改質装置10からアノード電極32に改質ガスが供給される状態となる。
【0028】
そして、運転制御手段91は、DMS30のアノード電極32とカソード電極33間に、アノード電極32を高電位側として所定電圧を印加する。これにより、アノード電極32では、以下の式(1)の反応が起こって水素イオン(H)が発生する。
【0029】
→ 2H+2e・・・・・ (1)
そして、水素イオンは、固体高分子電解質膜31を透過してカソード電極33に移動し、カソード電極33では、以下の式(2)の反応が惹起されると共に、昇圧される。
【0030】
2H+2e → H・・・・・ (2)
このようにして、アノード電極32からカソード電極33に、水素イオンが移動することにより、改質ガスから高純度の水素ガスが精製される。この水素ガスは、水素ガス流路4を介して水素高純度化装置40に送出され、水素高純度化装置40により除湿と精製の処理が施される。
【0031】
また、アノード電極32で水素イオンが抽出された後の改質ガス(未抽出の水素ガスを含む)は、アノードオフガスとして、アノード出口流路3を経由して触媒燃焼器17に送出される。アノードオフガス中の水素ガスは、触媒燃焼器17で燃焼して燃焼熱が熱交換器11に与えられる。
【0032】
次に、発電モードでの運転を行うときの水素処理システムの動作について、図1を参照して説明する。発電モードでは、DMS30のアノード電極32とカソード電極33の間に電気負荷(図示しない)が接続される。
【0033】
運転制御手段91は、水素ガス流路4の電磁弁72,73を閉弁すると共に、燃料供給ライン2の電磁弁70と、改質及び掃気用流路60の電磁弁62と、アノード出口流路3の電磁弁71と、カソード入口流路5の電磁弁51と、カソード出口流路6の電磁弁52とを開弁する。これにより、改質装置10からアノード電極32に改質ガスが供給される状態となる。
【0034】
そして、運転制御手段91は、ブロワ50を作動させて、カソード入口流路5を介してカソード電極33に空気(酸化剤ガス)を供給する。これにより、DMS30では、アノード電極32で、以下の式(3)の反応が起こり、水素ガス(H)が電子eを放出して水素イオン(H)となる。
【0035】
→ 2H+2e・・・・・ (3)
水素イオンは、固体高分子電解質膜31中を透過し、カソード電極33において、カソード入口流路5から供給される空気中の酸素ガス(O)と、カソード電極33に供給される電子eとにより、以下の式(4)の反応が生じて水が生成される。
【0036】
1/2O+2H+2e→ HO ・・・・・ (4)
そして、上記式(3)、(4)に示したように、アノード電極32から電気負荷を介してカソード電極33に電流が流れ、DMS30から電気負荷に電力が供給される。
【0037】
また、アノード電極32で水素イオンが抽出された後の改質ガス(未抽出の水素ガスを含む)は、アノードオフガスとして、アノード出口流路3を経由して触媒燃焼器17に送出される。アノードオフガス中の水素ガスは、触媒燃焼器17で燃焼してその燃焼熱が熱交換器11に与えられる。
【0038】
次に、図2(a),図2(b)に示したフローチャートを参照して、運転制御手段91による水素精製モードでの運転の開始から停止までの処理と、停止制御手段92による水素処理システムの監視及び停止処理について説明する。
【0039】
運転制御手段91は、水素精製モードにおいては、図2(a)のSTEP1〜STEP9の処理を実行する。運転制御手段91は、STEP1でアイドリング状態(待機状態)となって、STEP2で水素処理システムの起動指示がなされるのを待つ。
【0040】
そして、水素処理システムの起動指示がなされたときにSTEP3に進んで、運転制御手段91は、水素処理器への電力供給を開始して水素処理システムを起動する。また、続くSTEP4で、運転制御手段91は、各センサの検出出力等によって、水素処理器が正常状態であるか否かを確認する(初期チェック工程)。
【0041】
次のSTEP5で、運転制御手段91は、改質装置10の暖機を行い(暖気工程)、続くSTEP6で、上述した水素精製モードでの運転(水素処理工程)を開始する。次のSTEP7でシステム停止指示がなされたときに、STEP8に進んで運転を停止し(停止工程)、STEP9で水素高純度化処理器40の脱圧及び改質装置10の次回起動用処理を行ってSTEP1に戻る。そして、運転制御手段91は待機状態に戻る。
【0042】
また、停止制御手段92は、運転制御手段91が図2(a)のフローチャートによる初期チェック(STEP4)、暖機(STEP5)、運転(STEP6)、及びシステム停止(STEP8)の処理を行っているときに、図2(b)のフローチャートによる処理を行って、水素処理器の状態を監視する。
【0043】
停止制御手段92は、条件A1と条件B1という2つの条件を用いて、水素処理器の状態を監視する。図3を参照して、条件A1は、改質装置10の性能低下を判断するためのものであり、例えば以下の(1)又は(2)の成立を要件とするものである。
(1) 温度センサ24により検出される触媒燃焼器17の温度が定格運転範囲外。定格運転範囲は、例えば400℃〜700℃に設定される。
(2) 圧力センサ41により検出される水素高純度化装置40の内部圧力が、定格運転範囲外。定格運転範囲は、例えば0kPa〜800kPaに設定される。
【0044】
また、条件B1は、水素処理器の破損を判断するためのものであり、以下の(1)〜(5)のうちの少なくとも一つの成立を要件とするものである。
(1) 触媒燃焼器17の温度センサ24の出力が規定レンジから外れている。
(2) 水素高純度化装置40の圧力センサ41の出力が規定レンジから外れている。
(3) 水素センサ26による水素の検出濃度が、水素のリークが想定されるレベル以上。
(4) 燃料ガスセンサ25による燃料ガスの検出濃度が、燃料ガスのリークが想定されるレベル以上。
(5) 回転速度センサ66による換気ファン66の回転速度が、換気ファン66の故障が想定されるレベル以下。
【0045】
なお、触媒燃焼器17の温度センサ24、水素高純度化装置40の圧力センサ41、換気ファン65の回転速度センサ66、燃料ガスセンサ25、及び水素センサ25により、本発明の状態検出手段が構成される。
【0046】
停止制御手段92は、STEP20で条件B1が成立している否かを判断し、条件B1が成立しているときはSTEP30に分岐し、成立していないときにはSTEP21に進む。また、停止制御手段92は、STEP21で条件A1が成立しているか否かを判断し、条件A1が成立しているときはSTEP22に進み、成立していないときにはSTEP20に戻る。これにより、条件B1が成立しているときは、STEP30で第1の停止処理が実行され、条件A1が成立しているときには、STEP22で第2の停止処理が実行される。
【0047】
そして、停止制御手段92は、第1の停止処理として、全ての電磁弁51,52,62,70〜73を閉弁すると共に、DMS30のアノード電極32とカソード電極33間への電圧の印加を停止して、水素精製モードでの運転を直ちに終了する処理を行う。
【0048】
このように、条件B1の成立により、温度センサ24の破損、圧力センサ41の破損、換気ファン66の破損、水素処理器からの水素或いは燃料ガスのリークといった運転を継続することができない状態となっているときに、第1の停止処理を実行することによって、水素処理器内に水素や改質ガスを封止した状態を維持して、運転を速やかに停止することができる。
【0049】
そのため、水素処理器内の水素が外部に流出して無駄になることを防止することができる。この場合、水素処理器内に残留した水素は、水素処理器の修理を行う作業者が回収する。
【0050】
また、停止制御手段92は、第2の停止処理として、燃料供給路2の電磁弁70を閉弁して燃料ガスの供給を停止し、DMS30のアノード電極32とカソード電極33間への電圧の印加を停止すると共に、掃気用流路60の電磁弁62を開弁してブロワ61を作動させることにより、水素処理器内に残留するガスと水を空気により掃気する(エアパージ)。
【0051】
このように、条件A1の成立により、水素処理器の性能が低下していると判断できるときに、水素処理器のガス流路を空気により掃気することによって、ガス流路内の残留ガス及び水を排出すると共に、ガス流路の温度やガス流路に接続された構成部分の温度を低下させることができる。そのため、水素処理器の性能を回復させることができる。
【0052】
次に、図4(a),図4(b)に示したフローチャートを参照して、運転制御手段91による発電モードでの運転の開始から停止までの処理と、停止制御手段92による水素処理器の監視及び停止処理について説明する。
【0053】
運転制御手段91は、発電モードにおいては、図4(a)のSTEP50〜STEP58の処理を実行する。運転制御手段91は、STEP50でアイドリング状態(待機状態)となって、STEP51で水素処理システムの起動指示がなされるのを待つ。
【0054】
そして、水素処理システムの起動指示がなされたときにSTEP52に進んで、運転制御手段91は、水素処理器への電力供給を開始して水素処理システムを起動する(システム起動工程)。また、続くSTEP53で、運転制御手段91は、各センサの出力等によって、改質装置10やDMS30が正常状態であるか否かを確認する(初期チェック工程)。
【0055】
次のSTEP54で、運転制御手段91は、改質装置10の暖機を行い(暖気工程)、続くSTEP55で、上述した発電モードでの運転を開始する(運転工程)。次のSTEP56でシステム停止指示がなされたときに、STEP57に進んで運転を停止し(システム停止工程)、STEP58でカソード電極33のガス流路に残留する酸素を消費する処理(カソード処理工程)を行うと共に改質装置10の次回起動用処理を行ってSTEP50に戻る。そして、運転制御手段91は待機状態に戻る。
【0056】
なお、STEP58のカソード処理工程において、運転制御手段91は、カソード入口流路5の電磁弁51とカソード出口流路6の電磁弁52を閉弁して、アノード電極32への改質ガスの供給を継続する。そして、これにより、発電によりカソード電極33内の酸素を消費させる。
【0057】
また、停止制御手段92は、運転制御手段91が図4(a)のフローチャートによる初期チェック(STEP53)、暖機(STEP54)、運転(STEP55)、及びシステム停止(STEP57)の処理を行っているときに、図4(b)の処理を行って、水素処理器の状態を監視する。
【0058】
停止制御手段92は、条件A2と条件B2という2つの条件を用いて、水素処理器の状態を監視する。図5を参照して、条件A2は、水素処理器の性能低下を判断するためのものであり、例えば以下の(1)を要件とするものである。
(1) 温度センサ24により検出される触媒燃焼器17の温度が定格運転範囲外。定格運転範囲は、例えば400℃〜700℃に設定される。
【0059】
また、条件Bは、水素処理器の破損を判断するものであり、例えば以下の(1)〜(4)のうちの少なくとも一つの成立を要件とするものである。
(1) 触媒燃焼器17の温度センサ24の出力が規定レンジから外れている。
(2) 水素センサ26による水素の検出濃度が、水素のリークが想定されるレベル以上。
(3) 燃料ガスセンサ25による燃料ガスの検出濃度が、燃料ガスのリークが想定されるレベル以上。
(4) 回転速度センサ66による換気ファン66の回転速度が、換気ファン66の故障が想定されるレベル以下。
【0060】
停止制御手段92は、STEP60で条件B2が成立しているか否かを判断し、条件B2が成立しているときはSTEP70に分岐し、成立していないときにはSTEP61に進む。また、停止制御手段92は、STEP61で条件A2が成立しているか否かを判断し、条件A2が成立しているときはSTEP62に進み、成立していないときにはSTEP60に戻る。これにより、条件B2が成立しているときは、STEP70で第1の停止処理が実行され、条件A2が成立しているときには、STEP62で第2の停止処理が実行される。
【0061】
このように、発電モードでの運転時に、停止制御手段92により条件A2,条件B2の成立の有無により水素処理器の状態を監視して、第1の停止処理及び第2の停止処理を実行することによって、上述した水素精製モードでの運転時と同様に、水素処理器の状態に応じた適切な停止処理を実行することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、本発明の水素処理器として、改質器10とDMS10と水素高純度化装置40とを備えたものを示したが、改質器のみを備えた水素処理器、DMSのみを備えた水素処理器に対しても、水素処理器の性能低下に起因する停止条件と、水素処理器の破損に起因する停止条件を設定して、水素処理器の堀器ガス流路のエアパージによる第1の停止処理と、水素処理器のガス流路の封止による第2の停止処理とを実行することにより、本発明を適用することが可能である。また、DMSではなく、発電のみを行う電極構造体、或いは水素精製処理のみを行う電極構造体を備えた水素処理器に対しても、本発明の適用が可能である。
【0063】
また、本実施の形態では、図2,図4に示したように、水素精製モード及び発電モードでの運転時に、初期チェック工程、暖機工程、運転工程、及び、システム停止工程において、停止制御手段92により水素処理器の状態を監視したが、これらの工程のうちの少なくとも一つの工程において、停止制御手段92により水素処理器の状態を監視して、第1の停止処理と第2の停止処理を実行することで、本発明の効果を得ることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、水素処理器の状態を、触媒燃焼器17の温度、水素高純度化装置40の圧力、換気ファン65の回転数、筐体1内の水素濃度、及び、筐体1内の燃料ガス濃度に基づいて検出したが、他の要素に基づいて水素処理器の状態を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…水素処理システムの筐体、10…改質装置、13…改質器、17…触媒燃焼器、24…(触媒燃焼器の)温度センサ、30…電極構造体(DMS:Dual Mode Stack)、31…固体高分子電解質膜、32…アノード電極、33…カソード電極、40…水素高純度化装置、41…圧力センサ、91…運転制御手段、92…停止制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒反応を用いた原燃料からの含水素ガスの生成と、電解質膜を用いた含水素ガスの電気化学反応による発電と、電解質膜を用いた含水素ガスからの水素の精製とのうちの、少なくともいずれかを行う水素処理運転を実行する水素処理器を有する水素処理システムにおいて、
前記水素処理器の状態を検出する状態検出手段と、
前記水素処理器のガス流路から外部へのガスの流出を遮断するガス封止手段と、
前記水素処理器のガス流路に空気を供給してガス流路の掃気を行う掃気手段と、
前記水素処理運転の実行中に、前記状態検出手段の検出結果に基づいて前記水素処理器の状態を監視し、前記水素処理器の状態が前記水素処理器の破損を示すものであるときは、前記ガス封止手段により前記水素処理器のガス流路から外部へのガスの流出を遮断して、前記水素処理器の運転を停止する第1の停止処理を実行し、前記水素処理器の状態が、所定運転範囲の状態から外れ、且つ、前記水素処理器の破損を示すものでないときには、前記水素処理運転を停止して、前記掃気手段により前記水素処理器のガス流路を掃気する第2の停止処理を実行する停止制御手段とを備えたことを特徴とする水素処理システム。
【請求項2】
請求項1記載の水素処理システムにおいて、
前記水素処理運転は、初期チェック工程、暖機工程、水素処理工程、及び停止工程を含み、
前記停止制御手段は、前記各工程において、前記水素処理器の状態を監視して、前記第1の停止処理と前記第2の停止処理を実行することを特徴とする水素処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100610(P2011−100610A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254227(P2009−254227)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】