説明

水素気体分離用パラジウム合金複合膜の製造方法

【課題】少量のパラジウム使用量によっても水素気体に対する選択性が優秀であるとともに、耐久性の優れた分離膜を製造することができ、また、支持体の種類に係りなく水素気体分離膜の特性を改善することのできる水素気体分離用パラジウム合金複合膜の製造方法を提供する。
【解決手段】(a)乾式スパッタリング蒸着法を用いて多孔性支持体の上部にパラジウムコーティング層を形成する段階;(b)乾式スパッタリング蒸着法を用いて前記パラジウムコーティング層の上部に金属コーティング層を形成する段階;(c)前記金属コーティング層を水素雰囲気下でリフローして合金層を形成する段階とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素気体分離用パラジウム合金複合膜の製造方法に関する。より詳細には、少量のパラジウム使用量によっても水素気体に対する選択性が優れるとともに、耐久性の優秀な分離膜を製造することができるのみならず、支持体の種類に係わりなく水素気体分離膜の特性を改善することのできる水素気体分離用パラジウム合金複合膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高純度の水素を製造する際に使用される分離膜は、低い透過性を有しているので、これを改善するために多孔性支持体に非多孔性のパラジウム膜をコーティングして、膜の選択的透過性を向上させるための研究が現在進行されている。しかし、非多孔性のパラジウム膜は、水素に対する選択性は優秀であるものの透過性が低い。従って、多孔性支持体の表面に薄いパラジウム膜をコーティングすることにより水素の選択的透過性を向上させようとするが、パラジウムだけを適用した分離膜の場合には、水素気体の吸収によって格子構造の相変態が発生して変形が起る問題があった。これを防止するために現在では、パラジウム合金分離膜が主に使用されている。
【0003】
パラジウムと合金を形成する金属としては、銀、ニッケル、銅、ルテニウム、モリブデンなどを考慮することができるが、中でもパラジウム‐銅合金膜は、他のパラジウム合金膜と比べて、硫化水素及び硫黄化合物の被毒に対する抵抗性が優秀であるばかりでなく、銅自体の価額が低価であるため、最近この分野に研究が集中されている。前記の合金膜を製造する場合には、多孔性のセラミックスや金属支持体上に銅メッキ、パラジウムメッキ(又はパラジウムスパッタリング)の順にコーティングして合金化を進行させていたが、このような従来の製造方法によっては、パラジウム‐銅合金膜が緻密にならず、膜層内に微細気孔や欠陥などが存在することにより、水素に対する選択性が低くなる(図1参照)。また、合金源として使用される銅膜層が支持体とパラジウム膜層の間に中間層として存在する場合、500℃の常用温度において、銅膜の熱拡散と流動性リフローの性質によって銅層が分離され、接着性に悪影響を与えるためパラジウム‐銅合金分離膜が究極的に破壊されてしまう問題がある。
【0004】
図2、図3は、多孔性の金属支持体表面にパラジウム‐銅合金コーティング層を形成するために、銅メッキ層の下地メッキ層にニッケルメッキ層を形成し、その上に銅メッキ層及びパラジウムメッキ層を順次的にコーティングし、最終的には熱処理して得たパラジウム‐銅合金膜を示している。前記の結果は、合金膜を常用温度の500℃で100時間熱処理して観察した結果である。
【0005】
又、図2は、分離された前記合金膜の上部表面の微細構造(a)とEDS成分結果(b)を示している。ここで前記微細構造の膜が緻密でなく膜層内には銅とパラジウム成分が存在していることを分る。図3は、分離された下部表面の微細構造(a)とEDS成分結果(b)を示している。この部分もやはり微細構造の膜が緻密でなく膜層内には銅とニッケル成分が表れているため、銅メッキ層を基準にしてそれぞれの上部方向(パラジウムコーティング層)と下部方向(支持体)に銅原子らが熱拡散‐分離されていることが分る。
【0006】
最近、研究・開発された製造方法であって、多孔性ステインレススチールの金属支持体に電気メッキ工程を通じてパラジウム合金複合分離膜の製造方法を開発している。しかし、多孔性ステインレススチールの支持体の気孔サイズと表面粗度が大きいので、パラジウム分離膜をコーティングするためには、複雑な前処理工程が必要になるとともに、多孔性ステインレススチールの支持体表面にパラジウム合金コーティングの電解メッキ工程を利用する場合には、メッキ活性化の主成分である塩酸に基因する支持体の浸食と、メッキ液の不純物などによる水素分離特性の低下とさらに500℃の常用温度においてパラジウム金属が内部支持体に拡散して耐久性の劣化を起すだけでなく、水素ガスの改質の時に水素吸収によるステインレススチール基材の水素脆性化により基材が破壊される問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】[Lee, et al., “preparation and characterization of SiO2 composite membrane for purification of hydrogen from methanol steam reforming as an energy carrier system for PEMFC”, Separation and purification technology, 32,45-50(2003)]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術が有する問題を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、少量のパラジウム使用量によっても水素気体に対する選択性が優秀であるとともに、耐久性の優れた分離膜を製造することができ、また、支持体の種類に係りなく水素気体分離膜の特性を改善することのできる水素気体分離用パラジウム合金複合膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の第1実施形態は、(a)乾式スパッタリング蒸着法を用いて多孔性支持体の上部にパラジウムコーティング層を形成する段階;(b)乾式スパッタリング蒸着法を用いて前記パラジウムコーティング層の上部に金属コーティング層を形成する段階;(c)前記金属コーティング層を水素雰囲気下でリフローして合金層を形成する段階とを包含する水素気体分離用パラジウム合金複合膜の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の第2実施形態は、(a’)乾式スパッタリング蒸着法を用いて多孔性支持体の上部に第1次金属コーティング層を形成する段階;(b’)乾式スパッタリング蒸着法を用いて前記第1次金属コーティング層の上部にパラジウムコーティング層を形成する段階;(c’)乾式スパッタリング蒸着法を用いて前記パラジウムコーティング層の上部に第2次金属コーティング層を形成する段階;(d’)前記第2次金属コーティング層を水素雰囲気下でリフローして合金層を形成する段階とを包含する水素気体分離用パラジウム合金複合膜の製造方法を提供する。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記多孔性支持体は、金属支持体又はセラミックス支持体であることを特徴とする製造方法を提供する。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記多孔性支持体は、多孔性ニッケル支持体であることを特徴とする製造方法を提供する。
【0013】
本発明の第2実施形態において、好ましくは、前記段階(a’)において、第1次金属コーティング層を形成した後、熱処理によって異物質を除去する段階をさらに追加することを特徴とする製造方法を提供する。
【0014】
本発明の第2実施形態において、好ましくは、前記第1次金属コーティング層は、銀、ニッケル、銅、ルテニウム(Ruthenium)、モリブデン(molybdenum)から選択される少なくとも1種の金属を包含してなることを特徴とする製造方法を提供する。
【0015】
本発明の第1実施形態において、好ましくは、前記金属コーティング層は銅であることを特徴とする製造方法を提供する。
【0016】
本発明の第2実施形態において、好ましくは、前記第2次金属コーティング層は銅であることを特徴とする製造方法を提供する。
【0017】
本発明の第1実施形態において、好ましくは、前記(a)段階のパラジウムコーティング層を形成する前に、プラズマを利用して前記多孔性支持体の表面改質を実施することを特徴とする製造方法を提供する。
【0018】
本発明の第2実施形態において、好ましくは、前記(a’)段階の第1次金属コーティング層を形成する前に、プラズマを利用して前記多孔性支持体の表面改質を実施することを特徴とする製造方法を提供する。
【0019】
本発明の第2実施形態において、好ましくは、前記(b’)段階のパラジウムコーティング層を形成する前に、プラズマを利用して前記第1次金属コーティング層の表面改質を実施することを特徴とする製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、少量のパラジウムによっても水素気体に対する選択性が優秀であるとともに、耐久性の優れた分離膜を製造することができるのみならず、支持体の種類に係わらず、水素気体分離膜の特性を改善することのできる格段の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の方法で製造されたパラジウム‐銅合金複合膜のSEMによる微細構造の写真図である。
【図2】多孔性金属支持体表面にパラジウム‐銅合金コーティング層を形成し、熱処理による膜の耐久性評価のために分離させた合金複合膜の上部部分のSEMによる微細構造の写真図及びEDSの結果を示すグラフ図面である。
【図3】分離された合金複合膜の下部部分のSEMによる表面微細構造(a)の写真図及びEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)の観察結果を示すグラフ図面である。
【図4】銅膜の単純なリフロー熱処理により形成されたパラジウム‐銅合金複合膜のSEMによる微細構造を示した写真図である。
【図5】前記図4で形成されたパラジウム‐銅合金複合膜のXRD(X-ray diffraction)による観察結果を示したグラフ図面である。
【図6】熱的安定化の特性を確認するために、多孔性金属ニッケル支持体表面にニッケル層をコーティングした後、スパッタリングパラジウムコーティング層、スパッタリング銅コーティング膜を形成して、実際の常用温度より高い温度である600℃で20日間、窒素雰囲気において熱処理した結果のSEMによる微細構造を示す写真図である。
【図7】本発明により形成されたパラジウム‐銅合金複合膜の結晶構造の観察結果を示したグラフ図面である。
【図8】本発明の1実施例による合金複合膜サンプルの断面を示したSEMによる写真図である。
【図9】本発明による合金複合膜のサンプルの断面を示した走査EDSラインのスキャン写真図である。
【図10】パラジウム及び銅コーティング製造方法であって、電解メッキ方式を実施してリフロー熱処理によりパラジウム‐銅合金複合膜を形成した表面のSEMによる微細構造を示した写真図である。
【図11】多孔性アルミナ支持体上にリフロー技術を使用してパラジウム‐銅合金複合膜を形成した表面をSEMによる微細構造を示した写真図である。
【図12】銅リフロー工程にて製造された多孔性ニッケル支持体表面に形成されたパラジウム‐銅合金複合膜に対して、水素と窒素の混合ガスを使用した水素/窒素の分離度を示すグラフ図面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態の内容をより詳細に説明する。
【0023】
本発明による複合膜の支持体としては、多孔性金属支持体又はセラミックス支持体が使用される。又、前記多孔性支持体は、平膜型又はチューブ型であっても良い。多孔性金属支持体は、多孔性セラミックス支持体と比べてコストが低価であり、熱衝撃に対する抵抗及び機械的強度が優れる。また、加工性及びモジュール化に有利であるため高純度の水素分離精製システムや触媒反応器への適用に容易なメリットがある。
【0024】
なかでも、特に多孔性ニッケル支持体は、パラジウム合金複合膜の主成分の元素であるパラジウム及びニッケルとの化学的親和力の優秀な特性を有する。又、多孔性ニッケル支持体は、多孔性ステインレススチール金属支持体と比べて、固有の特性により水素脆性化が発生されないとともに、塩酸による浸食が他の金属に比べて優秀な長所を有している。ニッケルパウダーを使用して焼成された多孔性ニッケル支持体は、平均気孔のサイズがサブ‐ミクロン以下であり、気孔密度が均一であるためパラジウム合金複合膜をコーティングする時、複雑な前処理工程を必要としない。又、多孔性ニッケル支持体は、それ自体でも8〜10程度の水素選択性と150ml/cm2・atm・min以上の透過性を有しているため、パラジウム合金複合膜の金属支持体としては非常に好適な特性を有している。
【0025】
多孔性支持体の上部に形成されるパラジウムコーティング層は、湿式電解メッキ又は乾式スパッタリング蒸着法など何れの方法によって形成しても構わない。好ましくは、多孔性支持体表面の気孔の完全埋め込みと表面平坦化のために、電解メッキ法を通じて実行することが好適である。この場合、パラジウムコーティング層を形成する以前に、パラジウムコーティング層との接着力を改善させるために、プラズマを利用して多孔性支持体の表面改質を行うことが好ましい。前記の表面改質のための具体的なプラズマ処理条件は、工程によって異なるので特別に限定されるものではないが、例えば、多孔性ニッケル支持体が使用される場合は、RF 100W、50mTorr、水素量40sccm、時間5分などの条件下で実行されることができる。
【0026】
パラジウムコーティング層の形成は、電解メッキ法による場合には特に限定されないが、例えば、電流密度を10mA/dm2、メッキ時間20分、メッキ浴温度40℃で実行されることができる。また、他の工程である乾式スパッタリング蒸着法が利用される場合には、特に限定されないが、例えば、直流電源40W、アルゴンガス25sccm、工程圧力1.0×10-3torr、基板温度400℃で実行することができる。
【0027】
金属コーティング層は、前記パラジウムコーティング層の上部に形成される。金属コーティング層を構成する金属の種類は、特別に限定されないが、例えば、銀、ニッケル、銅、ルテニウム、モリブデンなどの金属から選択することができる。ただ、好ましくは、経済性の側面とパラジウムとの合金膜を形成する際の硫化水素及び硫黄化合物の被毒に対する抵抗性の優秀な銅が好適である。
【0028】
金属コーティング層の形成は、湿式電解メッキ法又は乾式スパッタリング蒸着法をすべて利用することができる。パラジウムコーティング層を電解メッキ法によってコーティングした場合、連続工程で金属コーティング層を電解メッキ法でコーティングしても良く、スパッタリング蒸着法により形成しても良い。一方、パラジウムコーティング層を乾式スパッタリング蒸着法により形成する場合、連続工程で金属コーティング層をスパッタリング蒸着法によってコーティングしても良い。また、電解メッキ法でコーティングしても構わない。
【0029】
連続工程で金属コーティング層を電解メッキ法により形成する場合、使用される金属や環境条件などにより微差はあるが、例えば、使用する金属成分が銅である場合、銅シアン化メッキ液を使用して電流密度200mA/dm2、メッキ時間30秒、メッキ浴40℃でコーティングすることができる。
【0030】
また、金属コーティング層の形成において、連続工程でスッパタリング蒸着法を利用する場合、銅を例に挙げると、直流電源30W、アルゴンガス20sccm、工程圧力1.0×10-3torr、基板温度400℃で実行することができる。
【0031】
前記の工程によって得られた2層の金属膜は、後続のリフロー工程により合金化され、パラジウム‐金属合金複合膜となる。前記リフロー工程は、好ましくは、その場プロセス(in-situ process)方式で進行され、真空加熱炉の水素雰囲気下で真空度1mTorr、温度500〜600℃で熱処理する方法で行うことができる。次いでリフローにより合金の微細構造が緻密化されるとともに、欠陥や微細気孔が存在しない均一な複合膜を得ることができる。
【0032】
次に、本発明の前記第2実施形態の内容をより詳細に説明する。
【0033】
本発明の第2実施形態は、本発明の第1実施形態の構成において、多孔性支持体の表面気孔の埋め込みと表面平坦化のために、パラジウムコーティング層を形成する前に多孔性支持体の上部に下地金属層(第1次金属コーティング層)を形成する工程が包含される。好ましくは、前記の下地金属層はニッケル金属で形成され、ニッケル金属層は電解メッキ法によって形成することが好ましい。前記電解メッキ法は、乾式スパッタリング蒸着法と比べて、多孔性支持体の表面気孔の完全埋め込みと表面平坦化の側面において非常に効果的である。この場合、前記ニッケル金属層を形成する以前に接着力を改善させるためにプラズマを利用して多孔性支持体の表面改質を行うことが好ましい。これは、本発明の前記第1実施形態における多孔性ニッケル支持体が使用される場合の説明と同様である。
【0034】
以後の工程であるパラジウムのコーティング工程と第2次金属コーティング層(第1実施形態の本発明における‘金属コーティング層’と対応する)の形成工程は、本発明の第1実施形態の工程に対する説明と同様に適用されるため詳細な説明は省略する。
【0035】
パラジウムコーティング層を形成する以前に好ましくは、第1次金属コーティング層の表面をプラズマを利用して表面改質することが好ましい。前記の表面改質のためのプラズマ処理条件は、前記多孔性支持体に対する表面改質の場合と同様の条件で利用することができる。
【0036】
次いで、多孔性ニッケル支持体表面にニッケル金属層を第1次金属コーティング層として形成し、第2次金属層として銅金属層を形成してなる水素分離用合金複合膜を例に取って、本発明の内容をより具体的に説明する。
【0037】
図4、5は、本発明の第1実施形態の複合膜を対象にして行った走査型電子顕微鏡(SEM)による微細構造写真と、合金複合膜のXRD観察結果である。図4の表面微細構造と図5の結晶性分析において観察することができるように、多孔性ニッケル支持体表面上に形成されたパラジウム‐銅合金膜の組織は緻密であり、欠陥や微細気孔が存在しない均一な分離膜であることを確認することができる。
【0038】
又、図6、7は、本発明の第2実施形態の複合膜を対象にして行った前記合金複合膜の熱的安定化特性を観察した結果である。このような実験の観察結果は、多孔性ニッケル支持体表面に3μmのニッケルコーティング膜、4μmのスパッタリングパラジウムコーティング膜及び1μmのスパッタリング銅コーティング膜を形成して、実際の常用温度より高い温度の600℃において、20日間、窒素雰囲気で熱処理して現れた結果である。このような熱処理条件は他の拡散条件などが同様であると仮定するとき、500℃において、1年間以上の熱処理とほぼ同様の熱的条件に該当する。
【0039】
図6のSEMによる表面の微細構造の写真から分るように、熱処理した後にも合金層が緻密で欠陥や微細気孔が存在しない。又、図7のXRD分析から分るように、継続的な熱処理によりパラジウム、銅、ニッケルの相互間の化学的親和力が良好になるため、パラジウム‐銅‐ニッケルの安定された3相の合金膜を形成して支持体との接着力を増進させる。
【0040】
図8、9は、パラジウム金属が支持体に拡散する金属間の拡散現象をSEMによって観察した結果であり、前記熱処理による図9に示すEDS濃度の分布から分るように、パラジウム金属の多孔性支持体内への拡散が進行しているが、多量のパラジウムが依然としてコーティング層に存在してパラジウム‐銅‐ニッケル合金分離膜を形成しており、図8のSEMによる微細構造の断面から分るように、合金膜の層が緻密であるとともに、支持体と合金コーティング膜がSEMの観察によっても区分されない程度に接着力も格段に優秀であることが確認できる。
【0041】
従って、前記図6、7、8、9の結果から見るとき、多孔性金属支持体を使用しているにも拘わらず、パラジウム金属の多孔性支持体への拡散が少なく、多量のパラジウムがパラジウム‐銅‐ニッケルの合金複合膜を形成し、合金層の構造も依然として緻密である。従って、パラジウム‐銅‐ニッケル合金複合膜は、熱的安定化特性に優れ、耐久性が従来の研究結果と比べて一層向上されていると考えられる。
【0042】
図10は、パラジウム及び銅コーティング層を電解メッキ法によって形成し、リフロー熱処理によりパラジウム‐銅合金複合膜を形成した後の表面微細構造のSEM写真であって、合金膜が緻密で微細気孔が存在しないことを示している。
【0043】
図11は、多孔性アルミナ支持体の上にリフロー技術によってパラジウム‐銅合金分離膜を形成した後の表面微細構造のSEM写真であって、微細気孔のない非常に緻密な組織の合金分離膜を形成することができることを示している。
【0044】
図12は、本発明によるパラジウム‐銅合金複合膜に対して、水素と窒素の混合ガスを使用して水素/窒素の選択性を常用温度に従って図示したグラフであって、温度の増加によって、H2/N2に対する選択性の値は増加し、500℃においてはほとんど無限大値に近い程度の値を現して非常に優秀な特性を示している。
【0045】
次の表1は、本発明の前記図12に示す実施例と従来の方式により製造されたパラジウム‐銅合金分離膜の水素/窒素の選択性を示しているが、前記図12に示すグラフと比較するとき、本発明によって製造されたパラジウム‐銅合金複合膜の水素選択性の値が格段と優秀であることを確認することができる。
【0046】
【表1】

1) 参照:Fernando Roa, Douglas Way, Robert L. McCormick, Stephen N. Paglieri “Preparation and characterization of Pb‐Cu composite membranes for hydrogen separation”Chemical Engineering Journals. 4047(2002)1-12
【0047】
以下、本発明の内容を1実施例を通じて、より詳細に説明する。ただ、これらの実施例は、本発明の内容を理解するために提示されるだけであり、本発明の権利範囲がこれらの実施例に限定されることと解釈されてはならない。
【0048】
(実施例)
先ず、多孔性ニッケル支持体上に水素プラズマを利用して表面処理を施した。水素プラズマを利用する表面処理は、RFパワーを100W、水素の量は40sccm、工程圧力は50mTorr、時間は5分にそれぞれ設定して進行された。その後、支持体表面の気孔を埋め込むために前記表面処理された支持体上に塩化ニッケルメッキ液を使用して電流密度1A/dm2、メッキ時間2分間、常温においてニッケル電解メッキ工程を進行した。ニッケル電解メッキを実施した後、さらに、真空乾燥炉の60℃下で前記支持体を乾燥させた後、支持体内に存在する不純物及び異物質を除去するために、200℃、10-3torrの真空雰囲気において1時間の間維持した。
【0049】
前記支持体にさらに水素プラズマ処理を行った後、塩化パラジウム溶液にて電流密度10mA/dm2、メッキ時間20分、メッキ浴温度40℃の条件下でパラジウム電解メッキを実行した。次いで、連続工程により銅シアン化メッキ液を使用して、電流密度200mA/dm2、メッキ時間30秒、メッキ浴温度40℃の条件下で銅電解メッキを実行した。以上のコーティングが完了した後に、水素雰囲気550℃と1mTorrの真空度において1時間の間、熱処理するリフローを実施して銅層とパラジウム層を合金化させた。
【0050】
前記の湿式製造方法とは異なり、乾式製造方法であるスパッタリング工程を利用する場合には、すべての前処理工程と第1次コーティング層であるニッケルコーティング層の形成工程は前記の方法と同一であり、スパッタリング工程は次のように実行された。
【0051】
パラジウムコーティングの場合の、スパッタリング工程は、直流電源40W、アルゴンガス25sccm、工程圧力1.0×10-3torr、基板温度400℃下で実行され、その後連続的に銅スパッタリング工程を直流電源30W、アルゴンガス20sccm、工程圧力3.0×10-3torr、基板温度400℃下で実行した。その後、その場プロセス(in-situ process)方式で真空加熱炉の水素雰囲気で真空度1mTorr、リフロー温度550℃で1時間の間、熱処理する方法にてリフローを行ってパラジウム‐銅合金複合膜を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)乾式スパッタリング蒸着法を用いて多孔性支持体の上部にパラジウムコーティング層を形成する段階;
(b)乾式スパッタリング蒸着法を用いて前記パラジウムコーティング層の上部に金属コーティング層を形成する段階;
(c)前記金属コーティング層を水素雰囲気下でリフローして合金層を形成する段階とを包含する水素気体分離用パラジウム合金複合膜の製造方法。
【請求項2】
(a’)乾式スパッタリング蒸着法を用いて多孔性支持体の上部に第1次金属コーティング層を形成する段階;
(b’)乾式スパッタリング蒸着法を用いて前記第1次金属コーティング層の上部にパラジウムコーティング層を形成する段階;
(c’)乾式スパッタリング蒸着法を用いて前記パラジウムコーティング層の上部に第2次金属コーティング層を形成する段階;
(d’)前記第2次金属コーティング層を水素雰囲気下でリフローして合金層を形成する段階とを包含する水素気体分離用パラジウム合金複合膜の製造方法。
【請求項3】
前記多孔性支持体は、金属支持体又はセラミックス支持体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記多孔性支持体は、多孔性ニッケル支持体であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記段階(a’)において、第1次金属コーティング層を形成した後、熱処理によって異物質を除去する段階をさらに追加することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1次金属コーティング層は、銀、ニッケル、銅、ルテニウム(Ruthenium)、モリブデン(molybdenum)から選択される少なくとも1種の金属を包含してなることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記金属コーティング層は銅であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2次金属コーティング層は銅であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記(a)段階のパラジウムコーティング層を形成する前に、プラズマを利用して前記多孔性支持体の表面改質を実施することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記(a’)段階の第1次金属コーティング層を形成する前に、プラズマを利用して前記多孔性支持体の表面改質を実施することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記(b’)段階のパラジウムコーティング層を形成する前に、プラズマを利用して前記第1次金属コーティング層の表面改質を実施することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。

【図5】
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【図7】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−62699(P2011−62699A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278982(P2010−278982)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【分割の表示】特願2007−532244(P2007−532244)の分割
【原出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(502291252)韓国エネルギー技術研究院 (16)
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF ENERGY RESEARCH
【住所又は居所原語表記】71−2,Jang−dong,Yuseong−gu,Daejeon 305−343,Republic of Korea
【Fターム(参考)】