説明

水蒸気バリアフィルム

【課題】 ゴミ等が不着しにくくて高いバリア性を有する水蒸気バリアフィルムを提供すること。
【解決手段】 ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルム上に少なくとも一層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムにおいて、該ポリアルキレンナフタレート樹脂のガラス転移点(Tg)が70〜150℃であり、かつ該水蒸気バリアフィルムが、抵抗が1012Ω(25℃・相対湿度60%)以下である導電性層を少なくとも一層有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気バリアフィルムに関するものであり、特に各種デバイスの基板やデバイスの被覆フィルムに好適な積層型の水蒸気バリアフィルムに関するものである。また、本発明は、耐久性およびフレキシブル性に優れた画像表示素子用基板および有機EL素子にも関するものであり、特に静電気障害のない取り扱いに優れた基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素など各種ガスの遮断を必要とする物品の包装や、食品、工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、前記ガスバリア性フィルムは、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池またはエレクトロルミネッセンス(EL)の基板等にも使用されはじめている。特に、液晶表示素子、EL素子などへの応用が進んでいる透明基材は、軽量化や大型化という要求に加えて、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、および曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わっている。
【0003】
近年、液晶表示素子やEL素子等の分野においては、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって、透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。また、透明プラスチック等のフィルム基材は上記要求に応えるだけでなく、ロールトゥロール(Roll to Roll)方式に適用することも可能であることから、ガラスよりも生産性がよくコストダウンの点でも有利である。しかし、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスと比較してガスバリア性に劣るという問題がある。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透するため、例えば液晶表示素子に用いた場合には、液晶セル内の液晶を劣化させ、劣化部位が表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。
【0004】
このような問題を解決するために、上述のようなフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性フィルムを透明基材として用いることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしては、プラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や、特酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)が知られており、これらはいずれも1g/m2/day程度の水蒸気バリア性を有する。しかし、近年では液晶ディスプレイの大型化や高精細ディスプレイ等の開発により、フィルム基板の水蒸気バリア性は0.1g/m2/day程度まで要求されるようになってきている。
【0005】
さらに、ごく近年においてはさらなるバリア性が要求される有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が進んでおり、これらに使用可能な透明性を維持しつつもさらなる高バリア性、特に水蒸気バリア性で0.1g/m2/day未満の性能をもつ基材が要求されるようになってきた。かかる要求に応えるために、より高いバリア性能が期待できる手段として、低圧条件下におけるグロー放電で生じるプラズマを用いて薄膜を形成するスパッタリング法やCVD法による成膜検討が行われている。また、有機層/無機層の交互積層構造を有するバリア膜を真空蒸着法により作製する技術が提案されている(例えば、特許文献3および非特許文献1参照)。
【0006】
一方、単に外界からの水蒸気の進入を防ぐだけでなく、封止部材の内側面に吸湿剤を成膜して積極的に水を捕獲する技術も開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、係る技術においても封止剤や基板のバリア能が不十分であるため長時間経時において吸湿による膜変形が生じ、ディスプレイとしては致命的な画質の劣化を招くという問題があった。また吸湿性層を形成する金属イオンがデバイス製造工程または使用中に拡散して性能を劣化させてしまう問題があり、かかる意味においても透明で高い吸湿能と高バリア能を両立する技術の発現が望まれていた。
【0007】
さらに、これらの基板の問題点としてその製造中に起因するゴミが付着し、基板性能(バリア性)を悪化することが問題となっている。また、その基板の取り扱い時に静電気帯電によりゴミの付着だけでなく、静電気発生により基板に静電気障害を発生しその特性障害を引き起こすことが問題となっている。さらに、近年開発されている高耐熱性基板は、その基板フィルムのコストが問題となり、実際の商品とする場合に大きな障害となることも課題であった。したがって、低コストの基板フィルムを利用しかつ取り扱い性の良好な水蒸気バリアフィルムが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭53−12,953号公報(第1頁〜第3頁)
【特許文献2】特開昭58−217,344号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献3】米国特許第6,413,645B1号公報(第4頁[2−54]〜第8頁[8−22])
【特許文献4】特開2000−260,562号公報(第3頁〜第5頁)
【非特許文献1】Affinitoら著「Thin Solid Films」(1996)、P.290〜291(第63頁〜第67頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の諸問題を解決すべく、本発明は、ゴミ等が不着しにくくて高いバリア性と透明性を有する水蒸気バリアフィルムを提供することを目的とする。特に安価で透明性に優れた水蒸気バリアフィルムを実現することも可能な技術を提供することを目的とする。また本発明は、製造時あるいは取り扱い時に静電気障害を発生しないようにするとともに、長期間使用しても、吸湿による膜変形や透明性変化により画質が劣化することのない画像表示素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。また、使用する基板フィルムが安価であり、市場で容易に入手できること素材を利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様により達成された。
(態様1)
ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルム上に少なくとも一層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムにおいて、該ポリアルキレンナフタレート樹脂のガラス転移点(Tg)が70〜150℃であり、かつ該水蒸気バリアフィルムが、抵抗が1012Ω(25℃・相対湿度60%)以下である導電性層を少なくとも一層有することを特徴とする水蒸気バリアフィルム。
【0011】
(態様2)
前記無機ガスバリア層が、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTaから選ばれる一種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物を含む層であることを特徴とする態様1に記載の水蒸気バリアフィルム。
(態様2’)
前記無機ガスバリア層が、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、またはプラズマCVD法で作製された層であることを特徴とする態様2に記載の水蒸気バリアフィルム。
(態様3)
前記基材フィルムが、ガラス転移点が85〜150℃であるポリアルキレンナフタレート樹脂からなる透明基材フィルムであることを特徴とする態様1または2に記載の水蒸気バリアフィルム。
(態様4)
前記ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムが、ポリエチレンナフタレートフィルムであることを特徴とする態様1〜3のいずれか一つに記載の水蒸気バリアフィルム。
【0012】
(態様5)
前記導電性層が少なくとも一種の導電性無機金属酸化物、および/または少なくとも一種の有機導電性素材を含有する層であることを特徴とする態様1〜4のいずれか一つに記載の水蒸気バリアフィルム。
(態様6)
前記導電性金属酸化物が、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、或いはこれらの複合酸化物であり、さらに該金属酸化物が異種原子としてAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、BrまたはIを含有していてもよいことを特徴とする態様5に記載の水蒸気バリアフィルム。
(態様7)
態様1〜6のいずれか一つに記載の水蒸気バリアフィルムにおいて、該水蒸気バリアフィルムが少なくとも二層の無機ガスバリア層を有し、かつ該無機ガスバリア層の間に少なくとも一層の2属金属一酸化物からなる吸湿性層を有することを特徴とする水蒸気バリアフィルム。
(態様8)
前記無機ガスバリア層および/または前記吸湿性層に隣接するように、少なくとも一層の隣接有機層を設けることを特徴とする態様1〜7のいずれか一つに記載の水蒸気バリアフィルム。
(態様9)
前記吸湿性層が、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raの金属酸化物から選ばれる少なくとも一種以上を含むことを特徴とする態様7または8に記載の水蒸気バリアフィルム。
(態様10)
態様1〜9のいずれか一つに記載の水蒸気バリアフィルムを用いた光学表示材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水蒸気バリアフィルムは、ゴミが不着しにくくて優れたバリア性を有し、かつ帯電防止特性に優れている。特に、本発明によれば透明性が高い水蒸気バリアフィルムを安価に提供することもできる。さらに、本発明の光学表示材料は、製造時や取り扱い時に静電気障害を発生せず、長期間使用しても画質が劣化しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、以下に本発明の水蒸気バリアフィルムについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
(水蒸気バリアフィルム)
本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルム上に、少なくとも一層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムである。該無機ガスバリア層は少なくとも二層存在することが好ましい。さらに好ましくは、前記二層の無機ガスバリア層の間に少なくとも一層の2属金属一酸化物からなる吸湿性層を有することで、好ましい水蒸気バリア特性を発現する。本発明の水蒸気バリアフィルムは、積層型の水蒸気バリアフィルムであり、特に少なくとも二層の無機ガスバリア層の間に2属金属一酸化物からなる吸湿性層を有することで、一段と高いガスバリア能と吸湿能をうる事ができる。すなわち、本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルム上に、少なくとも二層の無機ガスバリア層を有する態様が好ましく、さらに少なくとも一層の吸湿性層をも有する態様がより好ましい。
以下、基材フィルム上に、少なくとも二層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムを例にとって、該水蒸気バリアフィルムを構成する各層について詳細に説明する。
【0016】
(無機ガスバリア層)
本発明における「無機ガスバリア層」とは、無機材料で構成されるガス分子の透過を抑制しうる緻密な構造の薄膜である層を意味し、例えば、金属化合物からなる薄膜(金属化合物薄膜)が挙げられる。前記無機ガスバリア層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。前記形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
【0017】
前記無機ガスバリア層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる一種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属酸化物が好ましく、特にSi、Al、Sn、Tiがから選ばれる金属酸化物が好ましい。
【0018】
また、前記無機ガスバリア層の厚みに関しても特に限定されないが、厚みが厚すぎると曲げ応力によるクラックの恐れがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる傾向がある。このため、各無機ガスバリア層の厚みは、それぞれ5nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、10nm〜1000nmであり、最も好ましくは、10nm〜200nmである。また、二層以上の無機ガスバリア層は、各々が同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよく、特に制限はされない。この際、前記無機ガスバリア層は、炭素を含有する金属酸化物を含んでいてもよい。
【0019】
本発明において、水蒸気バリア性と高透明性とを両立させるには前記無機ガスバリア層として、珪素酸化物や珪素窒化物または珪素酸化窒化物を用いるのが好ましい。前記無機ガスバリア層として珪素酸化物であるSiOxを用いる場合、良好な水蒸気バリア性と高い光線透過率とを両立させるためには1.6<x<1.9であることが望ましい。前記無機ガスバリア層として珪素窒化物であるSiNyを用いる場合は、1.2<y<1.3であることが好ましい。yが1.2より大きければ着色が比較的小さくなる傾向があるため、ディスプレイ用途に好ましい。
【0020】
また、前記無機ガスバリア層として珪素酸化窒化物であるSiOxyを用いる場合、密着性向上を重視するのであれば、酸素リッチの膜とすることが好ましく、具体的には1<x<2および、0<y<1を満足することが好ましい。一方、水蒸気バリア性の向上を重視する場合には、窒素リッチの膜とすることが好ましく、具体的には0<x<0.8および0.8<y<1.3を満足することが好ましい。
【0021】
(吸湿性層)
本発明における水蒸気バリアフィルムは、さらに「吸湿性層」を有することが好ましく、その場合に好ましい吸湿性層は、2属金属一酸化物から構成される層を挙げる事ができる。前記2属金属一酸化物に含まれる2属金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raが挙げられる。本発明においては何れの2属金属をも使用することができるが、コスト、高純度材料の入手性、実用性を考慮すると、Mg、Ca、Sr、Baが好適である。さらに吸湿能や安全性の観点からはCa、Srが好ましく、Srが最も好ましい。
【0022】
ここで「2属金属一酸化物」とは、金属1原子に酸素約1原子が結合した酸化物である。2属金属を「M」とすると、吸湿性層の組成は「MOz」と表記することができ、zは0.8<z<1.2を満足することが好ましく、0.9<z<1.1を満足することが最も好ましい。2属金属一酸化物は、十分に高い吸湿性と透明性とを両立し、かつ吸湿前後の体積変化が比較的小さいという特徴を有する。またアルカリ金属に比べて層内拡散が起こりにくく、イオン性金属の拡散を嫌うようなデバイス材料への適用には好適である。さらに、シリカゲルやゼオライトのような物理吸着ではなく分子内に水分子を取り込むものであるため、吸湿した水分子が再脱着することもなく本発明の目的には好適である。
【0023】
前記吸湿性層の成膜法としては、2属金属一酸化物の分散物を塗設してから400℃以上の高温で焼結する方法を用いてもよいが、この場合、基材フィルムが耐熱性上の制約を受けたり、高吸湿性材料を不活性雰囲気下でハンドリングすることが困難になったりすることがある。従って、安定した性能を得る観点からは、前記吸湿性層は後述する真空成膜法により形成されることが好ましい。前記真空成膜法としては、例えば、2属金属一酸化物のソースを真空蒸着する方法、2属金属または同部分酸化物を酸化雰囲気で真空蒸着する方法、2属金属金属過酸化物を真空蒸着する方法等が挙げられる。また、上記真空成膜法においては、イオンアシストを組み合わせたイオンプレーティング法を用いてもよい。また、前記真空成膜法としては、特開2000−26562号公報に記載されているような、ソースの取り扱いが容易で品質のよい成膜が可能な2属金属過酸化物をターゲットとしたスパッタリング法が最も望ましい。
【0024】
共蒸着法や共スパッタ法により、2属金属一酸化物にSiOx、SiNy、SiOxy、SiCなどの無機化合物を共存させた吸湿性層を形成したり、塗設法により無水酢酸・アセト酢酸を2属金属一酸化物に共存させた吸湿性層を形成してもよい。しかし、本発明にしたがって2属金属一酸化物を単独で成膜した吸湿性層は、均一性、透明性、酸素バリア性に優れている。
【0025】
前記吸湿性層の厚みは、吸湿性、平滑性、透過性、屈曲耐性の観点から、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜100nmがさらに好ましく、10nm〜50nmが特に好ましい。前記吸湿性層の厚みが、10nm以下となると2属金属一酸化物が連続層を形成することが困難になる場合があり、吸湿能力が不足して十分な効果が得られない場合がある。また、前記吸湿性層の厚みが200nmを超えると欠陥が発生しやすくなる場合があり、剥離破壊、白色化や光学干渉模様が確認されるようになってディスプレイ材料には致命的な欠陥となる場合がある。
【0026】
また、前記吸湿性層は均一層であることが好ましい。特に、厚みが10nm〜200nmの均一層であることが好ましい。ここで「均一層」とは、層内の組成が均一である層を意味する。均一層であれば、力学的、光学的に不連続な境界が生じにくく、ディスプレイ材料として好適であるという利点がある。
【0027】
(隣接有機層)
本発明の水蒸気バリアフィルムには、前記無機ガスバリア層および/または前記吸湿性層の脆性やバリア性を向上させるために、前記無機ガスバリア層および/または前記吸湿性層に隣接するように隣接有機層を設けることができる。隣接有機層は、紫外線もしくは電子線硬化性モノマー、オリゴマーまたは樹脂を、塗布または蒸着で成膜したのち、紫外線または電子線で硬化させた層であることが好ましい。
【0028】
前記隣接有機層について、モノマーを架橋させて得られた高分子を主成分として形成した隣接有機層を用いる場合を例に説明する。前記モノマーとしては、紫外線もしくは電子線の照射により架橋できる基を有するモノマーであれば特に限定は無いが、アクリロイル基またはメタクリロイル基、オキセタン基を有するモノマーを用いることが好ましい。上記有機層は、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどのうち、2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーを架橋させて得られる高分子を主成分とすることが好ましい。
【0029】
これらの2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーは二種類以上を混合して用いてもよいし、また1官能の(メタ)アクリレートを混合して用いてもよい。また、前記オキセタン基を有するモノマーとしては、例えば、特開2002−356607号公報の一般式(3)〜(6)に記載されている構造を有するモノマーが好適に挙げられる。この場合、これらを任意に混合してもよい。
【0030】
隣接有機層は、ディスプレイ用途に要求される耐熱性、耐溶剤性の観点から、特に架橋度が高く、ガラス転移点が200℃以上である、イソシアヌル酸アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートを主成分とすることがさらに好ましい。隣接有機層の厚みについても特に限定はされないが、隣接有機層の厚みが薄すぎると、厚みの均一性を得ることが困難となるため、無機ガスバリア層の構造欠陥を効率よく隣接有機層で埋めることができずに、バリア性の向上は見られない。また、逆に隣接有機層の厚みが厚すぎると、曲げ等の外力により隣接有機層がクラックを発生し易くなるためバリア性が低下してしまう不具合が発生してしまう。かかる観点から、上記隣接有機層の厚みは、10nm〜5000nmが好ましく、10nm〜2000nmさらに好ましく、10nm〜5000nmが最も好ましい。
【0031】
本発明で好ましく用いられる隣接有機層の形成方法としては、まず、架橋性のモノマー等を含む塗膜を形成し、その後、該塗膜に電子線もしくは紫外線を照射して硬化させる方法が挙げられる。前記塗膜を形成する方法としては、例えば、塗布による方法、真空成膜法等を挙げることができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましく、有機物質モノマーの成膜速度を制御しやすい抵抗加熱蒸着法がより好ましい。ここで架橋性モノマー等の架橋方法に関しては特に制限はないが、電子線や紫外線等による架橋が、真空槽内に容易に取り付けられる点や架橋反応による高分子量化が迅速である点で望ましい。
【0032】
塗布方式で前記塗膜を塗設する場合には、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。前記塗膜の形成方法としては塗布法、蒸着法のいずれを用いてもよいが、直下の無機ガスバリア層成膜後に機械的な応力がかかりにくく、かつ薄膜形成に有利な真空成膜法を用いることが好ましい。
【0033】
本発明において、前記吸湿性層は基材フィルム上の2つの無機ガスバリア層の間に設置してあれば、2つの無機ガスバリア層と隣接する位置、無機ガスバリア層と隣接有機層とに隣接する位置、2つの隣接有機層に隣接する位置のいずれに配置してもよいが、吸湿性層の脆弱性や吸湿後の体積膨張による変形の影響を少なくするという観点からは、2つの隣接有機層に隣接する形で2つの無機ガスバリア層の間に配置されることが最も望ましい。
【0034】
(その他の機能層ならびに各層の構成)
本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルムと無機ガスバリア層との間に、公知のプライマー層または無機薄膜層を設置することができる。前記プライマー層としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂層、親水性樹脂共存下でゾルーゲル反応により形成する有機無機ハイブリッド層、無機蒸着層またはゾル−ゲル法による緻密な無機層を挙げることができる。前記無機蒸着層としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ等の蒸着層が好ましい。前記無機蒸着層は真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することができる。
【0035】
(基材フィルム)
次に本発明の水蒸気バリアフィルムを構成するポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムについて記述する。該基材フィルムを構成するポリアルキレンナフタレート樹脂は、ジカルボン酸とジオールから形成される。
ジカルボン酸残基として、ナフタレンジカルボン酸残基が必須成分として含まれる。好ましくは、全ジカルボン酸残基の50モル%〜100モル%がナフタレンジカルボン酸残基からなる。本発明では、ポリアルキレンナフタレート樹脂のジカルボン酸残基として、ナフタレンジカルボン酸残基とともにフタル酸残基を含んでいるものも好ましい。ナフタレンジカルボン酸残基とフタル酸残基との合計量は、全ジカルボン酸残基の70モル%〜100モル%であることが好ましく、全ジカルボン酸残基の80モル%〜100モル%であることがより好ましい。ナフタレンジカルボン酸残基としては2,6−ナフタレンジカルボン酸残基が好ましく、フタル酸残基としてはテレフタル酸残基が好ましい。
ジオールについては、エチレングリコール残基が全ジオール残基の50モル%〜100モル%であるものが好ましく、より好ましくは70モル%〜100モル%であり、さらに好ましくは80モル%〜100モル%である。
【0036】
基材フィルムを構成するポリアルキレンナフタレート樹脂の好ましい具体例を以下に記載するが、本発明で用いることができる樹脂はこれらに限定されるものではない。
(ホモポリマー例)
HP-1: ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)
(コポリマー例) 組成(モル比)
CP-1: 2,6-NDCA/TPA/EG (20/80/100)
CP-2: 2,6-NDCA/IPA/EG (80/20/100)
CP-3: 2,6-NDCA/TPA/EG (80/20/100)
CP-4: 2,6-NDCA /EG/BPA・2EO (100/25/75)
CP-5: 2,6-NDCA /EG/CHDM/BPA・2EO (100/25/25/50)
CP-6: 2,6-NDCA /EG/CHDM (100/80/20)
【0037】
(NDCA:ナフタレンジカルボン酸、TPA:テレフタル酸、IPA:イソフタル酸、BPA.2EO:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2付加物、CHDM:シクロヘキサンジメタノール、EG:エチレングリコールを示す)
(ポリマーブレンド例) 組成(質量比)
PB-1:PEN/PET (80/20)
PB-2:PAr/PEN (15/85)
PB-3:PAr/PCT/PEN (15/10/75)
PB-4:PAr/PC/PEN (10/10/80)
(PEN:ポリエチレンナフタレート、PET:ポリエチレンテレフタレート、PAr:ポリアリレート、PCT:ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、PC:ポリカーボネートを示す)
【0038】
好ましいポリアルキレンナフタレート樹脂としては、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレート共重合体(CP-2)などであり、特に好ましくはポリエチレンナフタレートである。これらのポリマーの好ましい固有粘度は0.4〜0.8、より好ましくは0.45〜0.7、さらに好ましくは0.5〜0.7である。
基材フィルムを構成するポリアルキレンナフタレート樹脂のガラス転移点(Tg)は、70〜150℃であり、好ましくは85〜150℃であり、より好ましくは75〜150℃であり、さらにより好ましくは77〜150℃である。ガラス転移点が70℃未満だと機能層を付与する際の加熱処理によって基材フィルムが変形し易いいう点で不利であり、ガラス転移点が150℃を超えるとフィルム製膜した際に安定な面状を確保しにくいという点で不利である。
【0039】
このようなポリアルキレンナフタレート樹脂は、原料のジカルボン酸ジエステル(通常ジメチルエステル体)とジオールを大気圧下、エステル交換反応触媒の存在下で、150℃〜250℃に加熱し、副生するメタノールを留去させつつ0.5〜5時間反応させ、ついで250℃〜290℃の温度下、大気圧から0.3torrまで徐々に真空度を上げ撹拌させながら重縮合反応させることにより合成することができる。これらのポリアルキレンナフタレート樹脂の合成法については、例えば、高分子実験学第5巻「重縮合と重付加」(共立出版、1980年)第103頁〜第136頁、「合成高分子V」(朝倉書店、1971年)第187頁〜第286頁の記載、特開平5−163337号、同3−179052号、同2−3420号、同1−275628号各公報等を参考に行うことができる。このようにして重合したポリアルキレンナフタレート樹脂を取り出し、水冷しヌードル状に固めた後ペレットに裁断する。
【0040】
本発明で用いるポリアルキレンナフタレート樹脂は極めて小さな微粒子を含有していてもよいが、その場合は高濃度で均一に分散することも好ましく、ポリアルキレンナフタレート樹脂中に1nm〜400nm、より好ましくは5nm〜200nm、さらに好ましくは10nm〜100nmの微粒子を10質量%〜60質量%、より好ましくは15質量%〜50質量%、より好ましくは20質量%〜45質量%添加させる。1nm以上であれば分散が容易で凝集粒子ができにくく、400nm以下であればヘイズが小さいため、どちらも透明性を維持するために有利である。
【0041】
好ましい微粒子として、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、雲母、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、カオリンのような無機微粒子、架橋ポリスチレンのような有機微粒子が挙げられる。より好ましくはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、雲母、タルク、炭酸カルシウムである。形状は、不定形、板状、球状、針状のいずれでもよく、また、二種類以上の微粒子を混合使用してもよい。
【0042】
これらの微粒子は、ポリアルキレンナフタレート樹脂重合前にモノマーと一緒に添加してもよく、ポリアルキレンナフタレート樹脂重合後に添加しても良いが、前者は重合中に粘度上昇が発生し重合を制御しにくいことがあるため、後者の方が均一に分散し易く、より好ましい。これらの微粒子は、ポリアルキレンナフタレート樹脂との濡れ性を改良するため、表面修飾されていることが好ましい。表面修飾剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、シリケート、チタネート、アルミネート等のカップリング剤が挙げられる。
【0043】
微粒子の分散に先立ち、ポリアルキレンナフタレート樹脂のオリゴマーを熔融した中にこれらの微粒子を添加し、予め微粒子の表面をポリアルキレンナフタレート樹脂で被覆することが好ましい。オリゴマーの好ましい固有粘度は0.5〜4、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2である。オリゴマー(O)と微粒子(P)の好ましい比(P/O)は1〜100、より好ましくは3〜50、より好ましくは5〜20である。
【0044】
オリゴマーと微粒子の混合はバンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル、単軸あるいは2軸の押出し機を用いることができる。 混合温度は100℃〜350℃、より好ましくは120℃〜300℃、さらに好ましくは150℃〜250℃が好ましい。混合時間は1分〜200分、より好ましくは2分〜100分、さらに好ましくは3分〜30分が好ましい。
【0045】
この後、さらにポリアルキレンナフタレート樹脂と混練する。混練はバンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル、単軸あるいは2軸の押出し機を用いることができる。混合温度は200℃〜350℃、より好ましくは240℃〜340℃、さらに好ましくは260℃〜330℃、混合時間は1分〜200分、より好ましくは2分〜100分、さらに好ましくは3分〜30分が好ましい。
【0046】
このような微粒子を含むポリアルキレンナフタレート樹脂は単層でフィルムを形成しても良いが、積層フィルムとして用いてもよい。積層フィルムとすることにより表裏の表面弾性率の差を0.5GPa〜10GPa、より好ましくは0.8GPa〜7GPa、さらに好ましくは1.0GPa〜5GPaにすることができる。 両面とも表面硬度が高いと、搬送ロールとの保持力が低下し製膜中にスリップによる擦り傷を発生し易いためである。このような積層フィルムは、微粒子を含むポリアルキレンナフタレート樹脂層(B層)を、B層より微粒子含量の少ないポリアルキレンナフタレート樹脂層(A層)の片面に積層(B/A)してもよく、B層より微粒子含量の少ないポリアルキレンナフタレート樹脂層(B'層)をB層の反対側のA層に積層(B/A/B')しても良い。
【0047】
本発明のポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムの全層厚みは30μm〜600μmが好ましく、より好ましくは40μm〜400μmであり、さらに好ましくは60μm〜200μmである。B層、B’層の厚みは10μm〜100μmが好ましく、より好ましくは15μm〜80μm、さらに好ましくは20μm〜50μmである。ここで、微粒子の粒子サイズ(D)とB層、B’層の厚み(Tb)の比(D/Tb)は1×10-2未満1×10-5が好ましく、より好ましくは5×10-2以下1×10-4、さらに好ましくは1×10-3以下1×10-4である。
【0048】
本発明で用いるポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムは、以下のようにして製膜することができる。
(1)ポリアルキレンナフタレート樹脂の乾燥
ポリアルキレンナフタレート樹脂ペレットを、好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは130℃〜200℃で、好ましくは5分〜5時間以下、より好ましくは10分〜1時間乾燥させる。
(2)熔融押出し
A層、B層、B'層用のペレットを各々1軸あるいは多軸の混練押し出し機に入れ熔融する。この時、初めから所望の量の微粒子を添加したペレットを用いても良く、予め高濃度に微粒子を添加したペレット(マスターペレット)に微粒子を添加していないペレットで希釈し所望の濃度に調製しても良い。押出し温度は、好ましくは250℃〜350℃、より好ましくは260度〜340℃で、好ましくは1分〜30分、より好ましくは3分〜15分滞留させて熔融させる。この後、フィルタ−を用いて溶融ポリマ−をあらかじめろ過しておくことが好ましい。フィルタ−としては、金網、焼結金網、焼結金属、サンド、グラスファイバ−などが挙げられる。好ましいフィルターサイズは1μm〜30μmである。この熔融ポリアルキレンナフタレート樹脂をTダイから押し出す。積層フィルムを作る場合は積層構造を有するTダイ(マルチマニホールドダイなど)を用いて各成分を押し出す。これを40℃〜100℃キャスティングドラムの上で固化させ未延伸フィルムを作成する。このとき、静電印加法、水膜形成法(水等の流体をキャスティングドラム上に塗布しメルトとドラムの密着をよくする)などを用いて、キャスティングドラムへの密着を上げることで、フィルムの平面性を改良でき好ましい。これを剥取り未延伸シートを形成する。
【0049】
(3)MD延伸
未延伸シートを長手方向(MD)に延伸する。好ましい延伸倍率は2.5倍〜4倍、より好ましくは3倍〜4倍である。延伸温度は70℃〜160℃が好ましく、より好ましくは80℃〜150℃、より好ましくは80℃〜140℃である。好ましい延伸速度は10%/秒〜300%/秒、より好ましくは30%/秒〜250%/秒、さらに好ましくは50%/秒〜200%/秒である。このようなMD延伸は周速の異なる一対のロール間を搬送することで実施できる。
(4)TD延伸
一般にはMD方向延伸に続いて、幅方向(TD)に延伸する。延伸倍率は2.5倍〜5倍が好ましく、より好ましくは3倍〜4.5倍、さらに好ましくは3.3倍〜4.3倍である。延伸温度は75℃〜165℃が好ましく、より好ましくは80℃〜160℃、より好ましくは85℃〜155℃である。好ましい延伸速度は10%/秒〜300%/秒、より好ましくは30%/秒〜250%/秒、さらに好ましくは50%/秒〜200%/秒である。TD延伸は、フィルムの両端をチャックしテンター内に搬送し、この幅を広げることで達成できる。
【0050】
(5)熱固定
好ましい熱固定温度は190℃〜275℃、より好ましくは210℃〜270℃、さらに好ましくは230℃〜270℃であり、好ましい処理時間は5秒〜180秒、より好ましくは10秒〜120秒、さらに好ましくは15秒〜60秒である。熱固定中に幅方向に0%〜10%弛緩させるのが好ましい。より好ましくは0%〜8%、さらに好ましくは0%〜6%である。このような熱固定および弛緩は、フィルム両端をチャックし熱固定ゾーンに搬送し、この幅を狭めることで達成できる。
(6)巻き取り
熱固定後、冷却、トリミング(耳きり部カット)を行いロ−ルに巻き取る。このとき、フィルム端部に厚みだし加工(ナ−リング)を付与することも好ましい。好ましい製膜幅は0.5m〜10m、より好ましくは0.8m〜8m、さらに好ましくは1m〜6mである。
【0051】
ポリアルキレンナフタレート樹脂からなる基材フィルムは、その表面弾性率が5GPa〜15GPaであるポリアルキレンナフタレート樹脂が好ましく、より好ましくは5.5GPa〜12GPa、さらに好ましくは6GPa〜10GPaであるポリアルキレンナフタレート樹脂フィルムである。表面弾性率は微小表面硬度計を用いて求めた値である。具体的な方法は以下のとおりである。
微小表面硬度計((株)フィッシャー・インスツルメンツ社製:フィッシャースコープH100VP-HCU)を用い、試料表面にビッカース圧子を接触させた後、10秒間に加重を1mNにまで増加させ、この状態で5秒保持する。この時のビッカース圧子の侵入深さをDv0とする。この後、加重を0mNとした時にビッカース圧子を押し戻す力(Fv)と侵入深さ(Dv)を測定し、その傾きを表面弾性率とする。即ちDvを横軸にとり、縦軸にFvをとったとき、DvがDv0から0.9×Dv0間の傾きの絶対値を表面弾性率とする。この測定は25℃・相対湿度60%下で行い、10点の平均値で表す。
【0052】
(導電性層)
次に本発明においては、帯電防止のために導電性層を付与することを特徴とする。以下に詳細に記載する。
すなわち、本発明の水蒸気バリアフィルムは、フィルムを構成する層のうちの少なくとも一層として、抵抗が1012Ω(25℃・相対湿度60%)以下である導電性層を有することを特徴としている。さらに抵抗値が1×1011.5Ω以下であることが好ましく、特には1×1010Ω以下であることが好ましく、1×109Ω以下が特に好ましい。本発明においては、前記抵抗の温湿度の変化に対しても変動しないことが好ましく、例えば低温低湿から高温高湿下において上記の抵抗を有する層が好ましい。その場合の環境変化としては製造工程あるいは取り扱い時の環境を考えると、−30℃〜300℃でかつ相対湿度0〜100%などの広範囲な温湿度域でも、導電性が1012Ω以下であることが好ましい。ここで、導電性層の抵抗は導電性層自身を測定する場合は、一般的な表面抵抗で求めてもよいが、内部導電性層の場合はそのエッジ部から評価することが推奨される。すなわち、導電性層の両端部に銀ペイントを塗布し、導電性層の抵抗を測定することで抵抗値を求めることができる。
【0053】
本発明における導電性層は、少なくとも一種の導電性無機素材、および/または、少なくとも一種の有機導電性素材(例えば、イオン性導電性素材)を含有する層であることが好ましい。さらには、前記導電性層が、導電性金属酸化物や導電性ポリマーを含むことが好ましい。なお、本発明における導電性層は、蒸着やスパッタリングにより形成された透明導電性膜でもよい。
導電性無機素材である好ましい金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、あるいはこれらの金属元素を含む複合酸化物が好ましく、特にZnO、SnO2、Sb23またはV25が好ましい。複合酸化物の異種原子例としては、Al、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、Br、Iの添加が効果的であり、添加量は0.01mol%−25mol%の範囲が好ましい。複合酸化物が異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜30mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜10mol%であれば特に好ましい。
【0054】
また、これらの導電性を有する金属酸化物は粉体であることが好ましく、その粉体の体積抵抗率は105Ωm以下が好ましく、さらに103Ωm以下であることが好ましく、特に10Ωm以下であることが好ましい。その粉体の1次粒子サイズは50Å〜0.2μmであることが好ましく、特には50Å〜0.1μmであることが好ましい。また、これらの凝集体の高次構造の長径が100Å〜6μmである特定の構造を有する粉体(導電性微粒子)を導電性層に体積分率で0.01%〜80%含んでいることが好ましい。この導電性微粒子の使用量は0.001〜5.0g/m2が好ましく、特に0.005〜1g/m2が好ましい。これらの酸化物については特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号各公報などに記載されている。さらに又、特公昭59−6235号公報に記載のごとく、他の結晶性金属酸化物粒子あるいは繊維状物(例えば酸化球状カーブンブラック)に上記の金属酸化物を付着させた導電性素材を使用してもよい。該導電性素材に利用できる粒子サイズとしては10μm以下が好ましいが、2μm以下であると分散後の安定性が良く使用し易い。
【0055】
また光散乱性をできるだけ小さくするために、導電性層には0.5μm以下の導電性粒子を利用することが好ましい。これによって、導電性層を設けても基材を透明に保つことが可能になるからである。なお、本明細書において「透明基材」とは、光線透過率が60%以上である基材であり、より好ましくは透過率が75%以上であり、特に好ましくは透過率が85%以上を示すような透明性を有する基材を意味する。導電性材料がファイバーあるいは繊維状の場合は、その長さは30μm以下で直径が2μm以下であることが好ましく、特に好ましいのは長さが25μm以下で直径0.5μm以下であり長さ/直径比が3以上である。特に好ましいのは、結晶性金属酸化物であるSnO2/Sb23(または/Sb25)であり、一次粒子サイズが10〜50nmの平均径を有し二次凝集体として約0.01〜0.5μmである球形の導電性材料を挙げることができる。さらに、本発明においてはゾル状金属酸化物も使用でき、例えば酸化錫ゾル溶液、アルミナゾル溶液からなる導電性層を形成することができる。
【0056】
また、本発明における導電性層は、イオン導電性物質を含んでいてもよい。イオン導電性物質とは、電気伝導性を示し、電気を選ぶ担体であるイオンを含有する物質のことを意味する。イオン導電性物質の例としては、イオン性高分子化合物と電解質を含む金属酸化物ゾルを挙げることができる。イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号各公報にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号各公報などにみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開61−27853号、特開62−9346号各公報にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー;等を挙げることができる。前記イオン性高分子化合物は、これを単独で用いてもよいし、あるいは数種類のイオン導電性物質を組み合わせて使用してもよい。そしてこのようなイオン性高分子化合物は0.005g〜2.0g/m2の範囲で用いられているのが好ましく、特に0.01g〜1.0g/m2の範囲で用いられるのが好ましい。
また、前記電解質としては、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、過塩素酸カリウム、P−トルエンスルフォン酸などが挙げられる。また、電解質の含有量は、0.0001〜1.0g/m2が好ましく、さらには0.005〜0.5g/m2が好ましい。
【0057】
これらをさらに具体的に記すと、本発明に用いられる導電性高分子化合物としては、例えばポリビニルベンゼンスルホン酸塩類、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、米国特許第4,108,802号、同4,118,231号、同4,126,467号、同4,137,217号各明細書に記載の4級塩ポリマー類、米国特許第4,070,189号明細書、OLS2,830,767号、特開昭61−296352号、同61−62033号各公報等に記載のポリマーラテックス等が好ましい。以下に本発明の導電性高分子化合物の具体例を示すが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0058】
【化1】

【0059】
本発明に用いられる導電性無機金属素材または有機導電性素材はバインダー中に分散または溶解させて用いられる。バインダーとしては、フィルム形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばゼラチン、カゼイン等の蛋白質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ナトリウム、澱粉誘導体等の糖類、ポリビニールアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸等の合成ポリマー等を挙げることができる。特に、ゼラチン(石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素分解ゼラチン、フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン等)、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリルアミド、デキストラン、SBR ラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテクッス等が好ましい。
【0060】
本発明に用いられる導電性無機金属素材または有機導電性素材をより効果的に使用して導電性層の抵抗を下げるために、導電性層中における導電性物質の体積含有率は高い方が好ましいが、層としての強度を十分に持たせるために最低5%程度のバインダーが必要であるため、かかる観点から、導電性無機金属素材または有機導電性素材の体積含有率は5〜95%の範囲が望ましい。本発明に用いる導電性無機金属素材または有機導電性素材の使用量は、一平方メートル当たり0.01〜2gが好ましく、特に0.01〜0.5gが好ましい。本発明に用いる導電性無機金属素材または有機導電性素材を含有する導電性層は、基材フィルム上に構成層として少なくとも一層設けることが好ましい。前記導電性層は、例えば、表面保護層、バック層、下塗層などのいずれでもよいが、必要に応じて二層以上設けることもできる。
【0061】
さらに導電性材料として、有機電子伝導性材料も好ましく、例えばポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアセチレン誘導体などを挙げることができる。これらの中でも特に好ましいのは、ポリピロールでありポリスチレンスルホン酸との塩が好ましい。また、少なくとも一種以の金または銀コロイドを含有することも好ましい。さらに耐候性の観点から銀とパラジウムの合金が好ましく、パラジウムの含有量としては5〜30質量%が好ましい。銀コロイド粒子の作成方法としては、通常の低真空蒸発法による微粒子の作製方法や金属塩の水溶液を還元する金属コロイド作製方法が挙げられる。これらの金属粒子の平均粒子サイズは1〜200nmが好ましい。導電性層は実質的に金属微粒子のみからなることが好ましく、バインダー等の非導電性のものを含有しないことが導電性の観点から好ましい。
【0062】
本発明の水蒸気バリアフィルムに設置される導電性層は、機能層としてその導電性が確保できれば特にその位置は限定されないが、好ましい層構成としては下記を挙げることができる。湿性層の基材フィルムとは反対側、即ち、基材フィルムが設けられている側を内側とみなした際に、前記吸湿性層の外側に設置した無機ガスバリア層のさらに外側に、無機ガスバリア層・吸湿性層・隣接有機層を任意の順序で一層以上設置してもよい。また吸湿性層の外側に設置した無機ガスバリア層の外側または最外層にそれぞれ種々の機能層を設置してもよく、本発明では導電性層をこの部位に設置してもよい。
【0063】
本発明ではさらに導電性層以外の機能層の例としては、反射防止層、偏光層、カラーフィルター、紫外線吸収層および光取出効率向上層等の光学機能層;ハードコート層や応力緩和層等の力学的機能層;防曇層;防汚層;被印刷層などが挙げられる。これらの機能層は無機ガスバリア層、吸湿性層および隣接有機層を設置した基材フィルムの反対側に設置してもよい。また、本発明の水蒸気バリアフィルムは、基材フィルムの両面に無機ガスバリア層、吸湿性層および隣接有機層などを設けることができる。さらに、吸湿性層の基材フィルムとは反対側に、少なくとも無機ガスバリア層と隣接有機層と無機ガスバリア層とがこの順に積層されたガスバリア性ラミネート層を設けることもできる。ガスバリア性ラミネート層は、フィルム反対面からの水分子の侵入を防ぐことでフィルム基板の寸法変化を抑制することでガスバリア層への応力集中や破壊を防止し、結果として耐久性の高いディスプレイを供給しうるという特徴を有する。
【0064】
<光学表示材料>
本発明の水蒸気バリアフィルムの用途は特に限定されないが、光学特性と機械特性と双方に優れるため、画像表示素子の透明電極用基板などの光学表示材料として好適に用いることができる。ここでいう「画像表示素子」とは、円偏光板・液晶表示素子、タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などを意味する。
【0065】
<円偏光板>
前記円偏光板は、本発明の水蒸気バリアフィルム上に、λ/4板と偏光板とを積層することで作製することができる。この場合、λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【0066】
<液晶表示素子>
前記液晶表示装置は、反射型液晶表示装置と透過型液晶表示装置とに大別することができる。
前記反射型液晶表示装置は、下方から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明の水蒸気バリアフィルムは、前記透明電極および上基板として使用することができる。前記反射型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記反射電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
【0067】
また、前記透過型液晶表示装置は、下方から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の水蒸気バリアフィルムは、前記上透明電極および上基板として使用することができる。また、前記透過型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記下透明電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
【0068】
前記液晶層の構造は特に限定されないが、例えば、TN(Twisted Nematic)型、STN(Supper Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Alligned Nematic)型、VA(Vertically Allignment)型、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型、OCB(Optically Compensatory Bend)型、または、CPA(Continuous Pinwheel Allignment)型であることが好ましい。
【0069】
<タッチパネル>
前記タッチパネルとしては、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載されたものの基板に本発明の水蒸気バリアフィルムを適用したものを用いることができる。
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の基材として最も特徴を活かすことのできる有機エレクトロルミネッセンス素子につき詳細に説明する。本発明の発光素子は基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と称する場合がある。)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
【0070】
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。尚、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
<陽極>
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0071】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0072】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流または高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0073】
前記有機エレクトルルミネッセンス素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよい。また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0074】
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0075】
<陰極>
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、2属金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、二種以上を好適に併用することができる。
【0076】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属や2属金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属または2属金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0077】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その一種または二種以上を同時または順次にスパッタ法等に従って行うことができる。陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0078】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属または2属金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜して、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0079】
<有機化合物層>
本発明における有機化合物層について説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、有機発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0080】
(有機化合物層の形成)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
(有機発光層)
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。また、発光層は一層であっても二層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0081】
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0082】
また、本発明に使用できる燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、および白金である。ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、およびガドリニウムが好ましい。
【0083】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0084】
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
【0085】
(正孔注入層、正孔輸送層)
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
【0086】
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の一種または二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0087】
(電子注入層、電子輸送層)
電子注入層、電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0088】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのがさらに好ましい。電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の一種または二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0089】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔ブロック層は、上述した材料の一種または二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0090】
(保護層)
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも一種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0091】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。本発明においては、保護層が導電性層として使用されてもよい。
【0092】
(封止)
さらに、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤または不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0093】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5,828,429号、同6,023,308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0094】
(ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムの改質)
本発明の水蒸気バリアフィルムには、ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムに処理や加工を施すことによって、様々な機能をさらに付与することができる。以下に好ましい態様を記述する。まずポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムの表面処理方法について記述する。
ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムに表面処理を行うことによって、ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。グロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことも示すが、大気圧下でのグロー放電処理でもよい。
【0095】
まず、低圧下でのグロー放電処理は、米国特許第3,462,335号、同3,761,299号、同4,072,769号および英国特許第891,469号各明細書に記載されている。また不活性ガス、酸化窒素類、有機化合物ガス等の特定のガス等を導入することも行われる。フィルムの表面をグロー放電処理する際には大気圧でもよいし減圧下で実施されてもよい。グロー放電処理の雰囲気に酸素、窒素、ヘリウムあるいはアルゴンのような種々のガスや水を導入しながら実施してもよい。グロー放電処理時の真空度は0.005〜20Torrが好ましく、より好ましくは0.02〜2Torrである。また、電圧は500〜5000Vの間が好ましく、より好ましくは500〜3000Vである。使用する放電周波数は、直流から数千MHz、より好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ましくは1KHz〜1MHzである。放電処理強度は、0.01KV・A・分/m2〜5KV・A・分/m2が好ましく、より好ましくは0.15KV・A・分/m2〜1KV・A・分/m2である。
【0096】
次に紫外線照射法も本発明では好ましく用いられる。使用される水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源はポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムの表面温度が150℃前後にまで上昇することが支持体性能上問題なければ、主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することができる。低温処理が必要とされる場合には主波長が254nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプの高圧水銀ランプ、および低圧水銀ランプを使用する事も可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほどポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムと被接着層との接着力は向上するが、光量の増加に伴い支持体が着色し、また支持体が脆くなるという問題が発生する。従って、365nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは50〜2000(mJ/cm2)である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは300〜1500(mJ/cm2)である。
【0097】
次にポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムの表面処理としてコロナ放電処理も好ましく、コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中、常圧で行うことができる。処理時の放電周波数は、5〜40KV、より好ましくは10〜30KVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは0.1〜10mm、より好ましくは1.0〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.3〜0.4KV・A・分/m2、より好ましくは0.34〜0.38KV・A・分/m2である。
【0098】
次に火炎処理について記述すると、用いるガスは天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場合は1/14〜1/22、好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の場合は1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7である。 また、火炎処理量は1〜50Kcal/m2、より好ましくは3〜20Kcal/m2の範囲で行うとよい。
【0099】
これらの方法で得られた固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができ、接触角法を用いることが好ましく、水の接触角が10〜50°、さらには10〜40°が好ましく、特には10〜30°が好ましい。
【0100】
ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムと機能性層を接着するために、表面活性化処理をしたのち、直接ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。下塗層の構成としても種々の工夫が行われており、第1層として支持体によく隣接する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂重層法がある。
【0101】
単層法においては、ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムを膨張させ、下塗層素材と界面混合させることによって良好な接着性を達成している場合が多い。本発明に使用する下塗ポリマーとしては、水溶性ポリマー、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などである。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などである。重層法における下塗第1層では、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、等のオリゴマーもしくはポリマーなどがある。
【0102】
また本発明のポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムの好ましい態様として、偏光子と接着するための親水性バインダー層が設けられる態様を挙げることができる。例えば、−COOM基含有の酢酸ビニル−マレイン酸共重合体化合物、または親水性セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等)、ポリビニールアルコール誘導体(例えば酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルベンザール等)天然高分子化合物(例えばゼラチン、カゼインアラビアゴム等)、親水基含有ポリエステル誘導体(例えばスルホン基含有ポリエステル共重合体)が挙げられる。
【0103】
本発明のポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムに場合により施される下塗り層には、機能層の透明性などを実質的に損なわない程度に無機または、有機の微粒子をマット剤として含有させることができる。無機の微粒子のマット剤としてはシリカ(SiO2),二酸化チタン(TiO2),炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。有機の微粒子マット剤としては、ポリメチルメタクリレ−ト、セルロ−スアセテ−トプロピオネ−ト、ポリスチレン、米国特許第4,142,894号明細書に記載されている処理液可溶性のもの、米国特許第4,396,706号明細書に記載されているポリマ−などを用いることができる。これらの微粒子マット剤の平均粒子サイズは0.01〜10μmのものが好ましい。より好ましくは、0.05〜5μmである。また、その含有量は0.5〜600mg/m2が好ましく、さらに好ましくは、1〜400mg/m2である。 下塗液は、一般に良く知られた塗布方法、例えばディップコ−ト法、エア−ナイフコ−ト法、カ−テンコ−ト法、ロ−ラ−コ−ト法、ワイヤ−バ−コ−ト法、グラビアコ−ト法、スライドコート法、或いは、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコ−ト法により塗布することができる。
【実施例】
【0104】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0105】
[実施例1]
基材フィルム上に無機ガスバリア層、隣接有機層、吸湿性層および導電性層を設けたバリアフィルム(試料1−1〜試料1−8)を下記の手順にしたがって作製した。各バリアフィルムは金属酸化物塗布量が表1に示すように異なっている。
【0106】
(1)基材フィルムの作製
(1−1)基材フィルムの溶融製膜
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部およびエチレングリコール54部を、酢酸マンガン四水塩0.045部を触媒として、エステル交換により反応させた後、リン酸トリメチル0.065部および三酸化アンチモン0.03部を添加した。その後300℃にて系を徐々に減圧し、107Paとした。そして、攪拌機の軸トルクから2000poiseに相当する溶融粘度に到達するまで重縮合反応を進行させた。それにより、極限粘度0.46、ガラス転移点116℃のポリエチレンナフタレート樹脂を得た。次に、得られたポリエチレンナフタレート樹脂を180℃で6時間乾燥後、305℃で溶融押出を行い、キャスティングドラム上で冷却、固化させシートを得た。続いて、得られたシートを127℃にて縦方向に3.2倍に延伸し、次いで130℃にて横方向に3.4倍に延伸した後、これを210℃で熱固定して厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムを作製した。この二軸延伸フィルムを110℃にて32時間熱処理し、水蒸気バリアフィルム用のポリエステル樹脂フィルムを作製した。
【0107】
(1−2)後処理、巻き取り
得られた上記フィルムの両端にナーリングを行った。ここで、耳切りはレーザー光を当てて耳屑が出ないようにして実施した。またナーリングは片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングする幅は10mmであり、最大高さは平均厚みよりも平均12μm高くなるように押し圧を設定した。
得られたフィルム(厚さ100μm)の幅は、1475mmであった。巻き芯の径は169mmであり、巻き始めテンションは360N/巾であり、巻き終わりが250N/巾になるようなテンションパターンとした。巻き取り全長は3000mであった。また、巻き取りロールにプレスロールを押し圧50N/巾に設定した。巻き取り時のフィルムの温度は25℃、含水量は0.01質量%以下であった。また巻き緩み、シワもなく、巻きずれが生じなかった。ロール外観も良好であった。以上の工程を経て本発明の基板フィルム試料−1を製膜した。
【0108】
ここで本発明の基板フィルム試料−1は、ヘイズが0.01%、密度は1.36g/cm3であり、引っ張り強度は249Mpaであり、伸長率89%であり、透湿度(g/m2/24時間)は1.5であり、吸水率0.1%であり、体積抵抗率1017Ω・cmであり、誘電率は3.1、ガラス転移点(Tg)は119℃であり、脆化温度は267℃であった。また、キシミ値(静止摩擦係数)は0.45、キシミ値(動摩擦係数)は0.41、カール値は相対湿度25%で−0.1,ウェットでは0であった。異物はリントが3個/m未満であった。また、輝点は、0.02mm〜0.05mmが5個/3m未満、0.05〜0.1mmが3個/3m未満、0.1mm以上はなかった。これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。また、製膜後の接着も見られず優れたフィルムであった。
【0109】
(2)水蒸気バリアフィルムの形成
(2−1)無機ガスバリア層の形成
図1に示すロールトゥロール方式のスパッタリング装置(1)を用いて、本発明の基板フィルム試料−1上に無機ガスバリア層を形成した。図1に示すように、スパッタリング装置(1)は、真空槽(2)を有しており、その中央部にはプラスチックフィルム(6)を表面に接触させて冷却するためのドラム(3)が配置されている。また、上記真空槽(2)にはプラスチックフィルム(6)を巻くための送り出しロール(4)および巻き取りロール(5)が配置されている。送り出しロール(4)に巻かれたプラスチックフィルム(6)はガイドロール(7)を介してドラム(3)に巻かれ、さらにプラスチックフィルム(6)はガイドロール(8)を介して巻き取りロール(5)に巻かれる。
【0110】
真空排気系としては排気口(9)から真空ポンプ(10)によって真空槽(2)内の排気が常に行われている。成膜系としてはパルス電力を印加できる直流方式の放電電源(11)に接続されたカソード(12)上にターゲット(図示せず)が装着されている。この放電電源(11)は制御器(13)に接続されており、さらに制御器(13)は真空槽(2)へ配管(15)を介して反応ガス導入量を調整しながら供給するガス流量調整ユニット(14)に接続されている。また、真空槽(2)には一定流量の放電ガスが供給されるよう構成されている(図示せず)。
【0111】
以下、無機ガスバリア層の形成時における具体的な条件を示す。
ターゲットとしてSiをセットし、放電電源(11)としてパルス印加方式の直流電源を用意した。また、プラスチックフィルム(6)として厚み100μmの基材フィルム(上記方法で作製した基材フィルム)を用意し、これを送り出しロール(4)に掛け、巻き取りロール(5)まで通した。スパッタリング装置(1)への基材の準備が終了した後、真空槽(2)の扉を閉めて真空ポンプ(10)を起動し、真空引きとドラムとの冷却を開始した。到達圧力が4×10-4Pa、ドラム温度が5℃になったところで、プラスチックフィルム(6)の走行を開始した。
【0112】
放電ガスとしてアルゴンを導入して放電電源(11)をONし、放電電力5kW、成膜圧力0.3PaでSiターゲット上にプラズマを発生させ、3分間プレスパッタを行った。この後、反応ガスとして酸素を導入し、放電が安定してからアルゴンおよび酸素ガス量を徐々に減らして成膜圧力を0.1Paまで下げた。0.1Paでの放電の安定を確認してから、一定時間酸化ケイ素の成膜を行った。成膜終了後、真空槽(2)を大気圧に戻して酸化ケイ素(無機ガスバリア層)を成膜したフィルムを取り出した。無機ガスバリア層の膜厚は約50nmであった。
【0113】
(2−2)隣接有機層の形成
50.75容量部のテトラエチレングリコール・ジアクリレートと14.5容量部のトリプロピレングリコールモノアクリレートと7.25容量部のカプロラクトンアクリレートと10.15容量部のアクリル酸と10.15容量部の「EZACURE」(Sartomer社製、ベンゾフェノン混合物光重合開始剤)とのアクリルモノマー混合物を、固体物であるN、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン粒子0.03625質量部と混合し、20kHz超音波ティッシュミンサーで約1時間撹拌した。約45℃に加熱し、沈降を防ぐために撹拌した混合物を内径2.0mm、長さ61mmの毛管を通して1.3mmのスプレーノズルにポンプで送り込んだ。そこで25kHzの超音波噴霧器によって小滴噴霧し、約340℃に維持された前記無機ガスバリア層または吸湿性層表面に落とした。次いで、ドラム表面温度約13℃の低温ドラムに接触させた基板フィルムの無機ガスバリア層または吸湿性層上に蒸気をクライオ凝結させた後、高圧水銀灯ランプによりUV硬化させ(積算照射量約2000mJ/cm2)、有機層を形成した。膜厚は約500nmであった。
【0114】
(2−3)吸湿性層の形成
上記無機ガスバリア層、その上に付与した隣接有機層上に、さらに(2−1)の無機ガスバリア層、さらに隣接有機層を順に付与した表面に、過酸化ストロンチウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウムのターゲット(豊島製作所(株)製)を用い、Arガスを導入、放電電力100W、成膜圧力0.8Paで3分間のプレスパッタの後にそのまま成膜して吸湿層を付与した。吸湿性層の膜厚は約20nmであり、元素分析の結果SrとOとの比率、CaとOとの比率およびBaとOとの比率はほぼ1:1であった。
【0115】
(2−4)ラミネート層の形成
上記基材フィルムの吸湿性層とは反対側に、上記(2−1)、(2−2)に記載した方法にて、無機ガスバリア層、隣接有機層、無機バリア層の三層からなるガスバリア性ラミネート層を形成した。
【0116】
(2−5)導電性層の形成
(2−4)で得られた試料において、(2−3)で作製した吸湿性層の上に、下記の酸化スズ−酸化アンチモン複合物からなる導電性層を作製した。導電性材料の添加量を変えることで、導電性の異なる各種試料を作製した。
・平均一次粒子サイズ15nmの球状酸化スズ−酸化アンチモン複合物
(酸化アンチモン含有量10mol%、比抵抗は5Ω・cm、
微粒子粉末のアセトン分散物(2次凝集粒子サイズ約60nm)
固形分塗布量は表1に記載
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305) 0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル 0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5容量%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布して、表1の酸化スズ−酸化アンチモン複合物塗布量になるように実施した。
【0117】
(2−6)バリアフィルムの物性評価
(2−5)で得られたフィルム試料の水蒸気透過率を、MOCON社製「PERMATRAN−W3/31」を用いて、40℃・相対湿度90%において測定した。また、(2−5)で得られたフィルム試料の光線透過率を、島津製作所(株)製の分光光度計「UV3100PC」で、25℃・相対湿度60%にて測定した。その結果、水蒸気透過率は0.005g/m2・day以下であり、光線透過率は87.8%であり、共に優れた特性であることを確認した。
【0118】
(3)有機EL素子の作製
上記各バリアフィルムを真空チャンバー内に導入し、IZOターゲット(出光興産(株)製)を用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、厚み0.2μmのIZO薄膜からなる透明電極を形成した。透明電極(IZO)より、アルミニウムのリ−ド線を結線し、積層構造体を形成した。前記透明電極の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥し、厚み100nmのホール輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Xとした。
【0119】
一方、厚み188μmのポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、スミライトFS−1300)からなる仮支持体の片面上に、下記組成を有する発光性有機薄膜層用塗布液を、スピンコーターを用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚み13nmの発光性有機薄膜層を仮支持体上に形成した。これを転写材料Yとした。
〔組成〕
・ポリビニルカルバゾール 40質量部
(Mw=63000、アルドリッチ社製)
・トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体(オルトメタル化錯体)
(ケミプロ化成(株)製) 1質量部
・ジクロロエタン 3200質量部
【0120】
前記基板Xのホール輸送性有機薄膜層の上面に転写材料Yの発光性有機薄膜層側を重ね、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、基板Xの上面に発光性有機薄膜層を形成した。これを基板XYとする。また、25mm角に裁断した厚み50μmのポリイミドフィルム(UPILEX−50S、宇部興産(株)製)片面上に、パターニングした蒸着用のマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、約0.1mPaの減圧雰囲気中でAlを蒸着し、膜厚0.3μmの電極を形成した。Al23ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、Al23をAl層と同パターンで蒸着し、膜厚3nmとした。Al電極よりアルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。得られた積層構造体の上に下記組成を有する電子輸送性有機薄膜層用塗布液をスピンコーター塗布機で塗布し、80℃で2時間真空乾燥することにより、厚み15nmの電子輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Zとする。
【0121】
〔組成〕
・ポリビニルブチラール2000L 10質量部
(Mw=2000、電気化学工業(株)製)
・1−ブタノール 3500質量部
・下記構造を有する電子輸送性化合物
(特開2001−335776号公報に記載の方法にて合成) 20質量部
【0122】
【化2】

【0123】
前記基板XYと前記基板Zとを用い、電極同士が発光性有機薄膜層を挟んで対面するように重ね合せ、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、貼り合せ、2枚の基板フィルムを、上記発光性有機薄膜層(有機EL層)を取り囲むように市販の有機EL用UV硬化性封止材で封止した。さらに得られた積層構造体のリード線部以外の部分をスパッタリング法により窒化珪素で覆って有機EL素子を得た。
【0124】
得られた有機EL素子にソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)製)を用いて、直流電流を印加して発光させたところ、良好に発光した。次に前記ガスバリアフィルムを用いた有機EL素子を素子作製後、60℃・相対湿度90%下に500時間放置して同様にして発光させ、全体における発光部分の面積(非発光部分はダークスポット)を、日本ポラデジタル(株)製マイクロアナライザーを用いて求めた。該フィルム光線透過率(550nm)は88.5%であり、有機EL試料の経時後の発光面積率は100%であり優れたものであった。
【0125】
(4)導電性特性の評価
前記の方法にて、表1に記載されるように金属酸化物塗布量を変更して作製された試料1−1〜1−8の導電性とその帯電防止特性を調べた。
(4−1)内部導電性評価
25℃・相対湿度60%環境下で、試料を1cm×5cmに裁断し、長辺エッジ部に銀ペイントを塗布し十分に乾燥した。その後銀ペイント部に電極端子を設置し、その間の抵抗を抵抗計で測定した。
【0126】
(4−2)ゴミ付評価
20cm×20cmの試料を作製し、25℃・相対湿度25%環境下にて3日間調湿した。この調湿済みの試料の導電性の付与した面に、ナイロン布(5cm×5cm)に全体で1kgの分銅を掛け、試料表面(10cm×5cm)を10回擦って静電荷を付与した。得られた試料を5秒後に、予め採集したタバコの灰の上に1cmの距離に擦った面を置いて、タバコの灰の付着状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。A、B,C、Dの順に帯電防止特性が優れていることを示す。
A: 特にタバコの付着は認められなかった
B: かすかにタバコの付着が認められた
C: かなりなタバコの付着が認められた
D: タバコの付着が著しく認められた
【0127】
(4−3)フィルム付着評価
20cm×20cmの試料を作製し、25℃・相対湿度60%環境下または25℃・相対湿度10%環境下で3日間調湿した。同環境条件下で調湿済みの試料の両面を接触し、全体に5kgの分銅を掛けて試料を一方方向に5cm搬送し、計10回擦って静電荷を付与した。得られた試料を縦方向に設置し、一方のフィルムに対して、他方のフィルムが落下する状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。A、B,C、Dの順に帯電防止特性が優れていることを示す。
A: 他方のフィルムは瞬時に落下した
B: 他方のフィルムは短時間で落下した
C: 他方のフィルムが少しずれたが付着した状態であった
D: 他方のフィルムがしっかりと付着した状態であった
【0128】
(4−4)結果
表1に示すように、導電性金属酸化物を全く含まない試料1−1、あるいはその含有量の低い比較用試料1−2〜1−4は、抵抗値が高くゴミつき、フィルム付着が悪く取り扱い性の悪いものであった。これに対して、本発明の導電性を示す本発明の試料1−5〜1−8はゴミ付評価およびフィルム付着評価の結果が良好であった。特に低湿度環境下でもフィルム付着は優れたものであった。
【0129】
【表1】

【0130】
[実施例2]
実施例1の試料1−7において、その層構成を下記のように変更する以外は、試料1−7と全く同様にして、本発明の試料2−1〜2−7を作製した。実施例1と同様にそれぞれの特性評価を実施した結果を表1に記載した。得られた本発明の試料は全て、導電性とゴミつきおよびフィルム付着性の評価結果が優れたものであった。
【0131】
試料2−1の構成:
基材フィルム/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/導電性層
試料2−2の構成:
基材フィルム/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/吸湿性層/隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/導電性層
試料2−3の構成:
基材フィルム/無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/吸湿性層/{(隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)}×2/隣接有機層(500nm)/導電性層
試料2−4の構成:
基材フィルム/{無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)}×2/吸湿性層/{隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)}×2/導電性層
試料2−5の構成:
無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)/基材フィルム/{無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)}×2/吸湿性層/{隣接有機層(500nm)/無機ガスバリア層(50nm)}×2/導電性層
試料2−6の構成:
基材フィルム/{無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)}×2/吸湿性層/隣接有機層(500nm)/導電性層
試料2−7の構成:
基材フィルム/吸湿性層/隣接有機層(500nm)/{無機ガスバリア層(50nm)/隣接有機層(500nm)}×2/導電性層
【0132】
[実施例3]
実施例1の試料1−7において、(1−1)基材フィルムの樹脂化合物を本発明のCP−2、CP−3、HP−2、PB−1およびCP−6に変更する以外は、試料1−7と全く同様にして、本発明の試料3−1〜3−5を作製した。実施例1と同様にそれぞれの特性評価を実施した結果を表1に記載した。得られた本発明の試料は全て、導電性とゴミつきおよびフィルム付着性の評価結果が優れたものであった。
【0133】
[実施例4]
実施例1の試料1−7において、(2−5)導電性層の形成を下記のように変更する以外は、試料1−7と全く同様にして、本発明の試料4−1〜4−5を作製した。実施例1と同様にそれぞれの特性評価を実施した結果を表1に記載した。得られた本発明の試料は全て、導電性とゴミつきおよびフィルム付着性の評価結果が優れたものであった。
【0134】
試料4−1の導電性層の形成:
・平均一次粒子サイズ12nmの酸化インジウム−酸化アンチモン複合物
(酸化アンチモン含有量5mol%、比抵抗は1Ω・cm、
微粒子粉末のアセトン分散物(2次凝集粒子サイズ約45nm)
0.2g/m2(固形分)
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305)
0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル
0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5容量%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布した。
【0135】
試料4−2の導電性層の形成:
・酸化スズ−酸化アンチモン複合物ゾル
(酸化アンチモン含有量5mol%、比抵抗は1Ω・cm、
微粒子粉末のメタノール/水(9/1質量比))
0.3g/m2(固形分)
・トリアセチルセルローvス(酢化度2.60、重合度305)
0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル
0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5容量%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布した。
【0136】
試料4−3の導電性層の形成:
・平均短軸長5nm、平均長軸長0.5μmの五酸化バナジウム−銀複合物
(銀含有量7mol%、比抵抗は2Ω・cm、
微粒子粉末のアセトン分散物 0.18g/m2(固形分)
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305)
0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル
0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5容量%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布した。
【0137】
試料4−4の導電性層の形成:
・平均一次粒子サイズ18nmのポリアニリン
(比抵抗は5500Ω・cm、微粒子粉末のアセトン分散物
(2次凝集粒子サイズ約86nm) 0.4g/m2(固形分)
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305)
0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル
0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5容量%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布した。
【0138】
試料4−5の導電性層の形成:
・針状酸化スズ−酸化アンチモン複合物
(酸化アンチモン含有量10mol%、比抵抗は5Ω・cm、
平均長軸長さ1.1μm、平均短軸長さ20μm、
微粒子粉末のアセトン分散物) 0.2g/m2(固形分)
・トリアセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305)
0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル
0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5容量%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布した。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の導電性層を有する水蒸気バリアフィルムは、ゴミが不着しにくくて優れた透明性とバリア性を有しかつ帯電防止特性に優れるため、各種デバイスの基板やデバイスの被覆フィルムとして好適に用いられる。特に、本発明によれば透明性が高い水蒸気バリアフィルムを提供することができるため有用である。さらに、本発明の画像表示素子用基板および有機EL素子は、高い耐久性およびフレキシブル性を有し、帯電防止に優れており、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実施例において用いたスパッタリング装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0141】
1 スパッタリング装置
2 真空槽
3 ドラム
4 送り出しロール
5 巻き取りロール
6 プラスチックフィルム
7 ガイドロール
8 ガイドロール
9 排気口
10 真空ポンプ
11 放電電源
12 カソード
13 制御器
14 ガス流量調整ユニット
15 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルム上に少なくとも一層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムにおいて、該ポリアルキレンナフタレート樹脂のガラス転移点(Tg)が70〜150℃であり、かつ該水蒸気バリアフィルムが、抵抗が1012Ω(25℃・相対湿度60%)以下である帯電防止のための導電性層を少なくとも一層有し、前記導電性層は、導電性無機金属素材または有機導電性素材をバインダー中に分散させたものであることを特徴とする水蒸気バリアフィルム。
【請求項2】
前記無機ガスバリア層が、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTaから選ばれる一種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物を含む層であることを特徴とする請求項1に記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムが、ガラス転移点が85〜150℃であるポリアルキレンナフタレート樹脂からなる透明基材フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項4】
前記ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルムが、ポリエチレンナフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜3に記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項5】
前記導電性層が少なくとも一種の導電性無機金属酸化物、および/または少なくとも一種の有機導電性素材を含有する層であることを特徴とする請求項1〜4に記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項6】
前記導電性金属酸化物が、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、或いはこれらの複合酸化物であり、さらに該金属酸化物が異種原子としてAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、BrまたはIを含有していてもよいことを特徴とする請求項5に記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の水蒸気バリアフィルムにおいて、該水蒸気バリアフィルムが少なくとも二層の無機ガスバリア層を有し、かつ該無機ガスバリア層の間に少なくとも一層の2属金属一酸化物からなる吸湿性層を有することを特徴とする水蒸気バリアフィルム。
【請求項8】
前記無機ガスバリア層および/または前記吸湿性層に隣接するように、少なくとも一層の隣接有機層を設けることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項9】
前記導電性層の抵抗が2.6×108Ω〜1012Ω(25℃・相対湿度60%)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の水蒸気バリアフィルムを用いた光学表示材料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−221716(P2010−221716A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122891(P2010−122891)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【分割の表示】特願2005−54752(P2005−54752)の分割
【原出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】