説明

水質評価方法及び装置

【課題】超純水中に含まれるアミン系の有機物などを短時間で高精度に検出し、超純水の水質を評価できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】超純水を第1のカラム4aに通水する。第1のカラム4aからの流出水中の溶存水素濃度測定値が第1の濃度設定値以下まで低下するか、又はこの測定値の上昇速度が第1の濃度変化速度設定値以下まで低下したときには、循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減された可能性があると判断し、通水カラムを第1のカラム4aから第2のカラム4bに切り替える。第2のカラム4bへの通水開始後、該第2のカラム4bからの流出水中の溶存水素濃度測定値が第2の濃度設定値を超えないか、又はこの測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値を超えない場合には、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減されたと判断し、ユースポイント24への供給ラインのバルブを開ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水(超純水を含む。)の水質を評価する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやメモリーをはじめとする半導体の製造工場や液晶パネルの製造工場などでは、超純水が大量に使用されている。
【0003】
半導体製造工程においては、半導体デバイスの高精細化が進むに従い、シリコン表面の清浄度の維持、平坦度の維持が重要になってくる。高精細度の半導体を製造する工程においては、超純水がシリコンの表面をわずかでも溶解させると、シリコン表面のエッチングに伴いシリコン表面荒れが生じ、それに伴いシリコンの電気特性を低下させるおそれがある。
【0004】
従って、半導体製造工程においては、シリコン表面荒れを生じさせることがない超純水を使用することが必要であり、超純水がシリコン表面をエッチングする性質を有するか否かを判断することは重要な課題である。
【0005】
超純水中の不純物としては、金属などの無機物以外に、有機物があり、超純水中の全有機性炭素濃度(TOC)での水質管理がなされている。一般的に、超純水中のTOCは10ppb程度以下に保持されている。仮に超純水中のTOCが10ppb以下であっても、超純水中にアミン系の有機物が含まれていると、超純水がシリコン表面をエッチングしてしまい、シリコン表面の粗さを大きくすることが知られている。また、アミン系の有機物のうちでも、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンあるいはオクタデシルアミンなどのアルキル鎖が長いものほど、エッチング量が多いことが知られている(特許第4056417号)。このアミン系の不純物は、超純水を製造する際に利用されるアニオン交換樹脂などの溶出物である。半導体工場で新設された超純水製造設備や、運転を中断した後の再開時に、このようなアミン系の有機物が多く含まれる超純水が排出されることが知られている。
【0006】
超純水製造設備からの超純水が半導体洗浄に用いても良いものかどうかを判定するために、この超純水を用いてウエハを洗浄し、洗浄後のウエハ表面の凹凸を赤外分光法で分析するか原子間力顕微鏡で観察する方法が行われているが、長時間を要すると共に、現場では行いにくい。
【0007】
特開2007−170863号公報には、試料水をシリコン物質と接触させ、該シリコン物質と接触した後の試料水に含有される、シリカ濃度に相関する物性値である溶存水素濃度を測定し、該シリコン物質との接触によって上昇した溶存水素濃度に基づいて、試料水の水質を評価する水質評価方法が記載されている。
【0008】
同号公報には、シリコン物質の粒子が充填されたカラムに試料水を通水し、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定する水質評価装置が記載されている。
【0009】
また、同号公報には、1次純水製造装置で処理された純水をさらに精製処理するサブシステムを備えた超純水製造設備において、該サブシステムからユースポイントに超純水を供給する循環ラインに水質評価用の分岐配管が設けられ、この分岐配管に上記の水質評価装置が接続されており、この分岐配管を介してカラムに超純水を通水しながら、このカラムからの流出水中の溶存水素濃度を連続して測定することにより、超純水の水質の変化を連続してモニタリングすることができる超純水製造設備が記載されている。
【0010】
試料水中に、アミン類などのようにシリコンをエッチングし易い物質が混入していると、試料水をシリコン物質に接触させた際にシリコン表面にエッチングが生じ、試料水中にシリコンが溶出する。溶出したシリコンはOHイオンもしくは水分子と反応し、イオン状シリカ(ケイ酸イオン)(SiO2−)になると共に、水素を生成させる。この水素は溶存水素となって水中に存在する。従って、溶存水素濃度はシリカ濃度と相関関係にあるため、溶存水素濃度の上昇をモニタリングすることによって、試料水がシリコンにエッチングを生じさせる水質かどうかを評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4056417
【特許文献2】特開2007−170863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特開2007−170863の方法及び装置では、カラムに試料水を通水すると、カラム内のシリコン物質にアミン系有機物が付着する。このシリコン物質に付着したアミン系有機物は、該シリコン物質から剥がれるのに時間がかかるため、その間、このシリコン物質に付着したままのアミン系有機物からも水素が生成され続ける。従って、このシリコン物質に付着したアミン系有機物が該シリコン物質から剥がれるまでは、カラムからの流出水中の溶存水素濃度に、このシリコン物質に付着したアミン系有機物から生成された水素も含まれる。そのため、超純水製造装置からの超純水中のアミン系有機物濃度が十分に低下した後も、カラムからの流出水中の溶存水素濃度がなかなか低下せず、実際の超純水中のアミン系有機物濃度と、カラムからの流出水中の溶存水素濃度との相関性が低下し、短時間で正確な水質判定を行うのが困難となっていた。
【0013】
本発明は、超純水中に含まれるアミン系の有機物などを短時間で高精度に検出し、超純水の水質を評価できる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明(請求項1)の水質評価方法は、シリコン物質の粒子が充填されたカラムに、純水製造装置から供給される純水からなる試料水を通水しながら、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいて試料水の水質を評価する水質評価方法において、第1のカラムに試料水を通水しながら、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が基準濃度設定値mを超えるか、又は、該測定値の上昇速度が基準濃度変化速度設定値Δd(正の数)を超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定する水質悪化判定工程と、該水質悪化判定工程の後に、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が、第1の濃度設定値mを超えて上昇し、その後、該第1の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が、第1の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、試料水の通水を第2のカラムに切り替えるカラム切替工程と、該第2のカラムに試料水を通水しながら、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が、第2の濃度設定値mを超えないか、又は、該測定値の上昇速度が、第2の濃度変化速度設定値Δd(正の数)を超えないときには、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する水質改善判定工程とを含むことを特徴とするものである。
【0015】
請求項2の水質評価方法は、請求項1において、前記基準濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、前記基準濃度変化速度設定値Δdは、0.2〜0.4ppb・h−1であり、前記第1の濃度設定値mは、0.5〜2.5ppbであり、前記第1の濃度変化速度設定値Δdは、−0.4〜−0.2ppb・h−1であり、前記第2の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、前記第2の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3の水質評価方法は、請求項1又は2において、前記水質改善判定工程において、前記第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が前記第2の濃度設定値mを超えるか、又は、該測定値の上昇速度が前記第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定し、該水質改善判定工程の後に、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が、第3の濃度設定値mを超えて上昇し、その後、該第3の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が、第3の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、試料水の通水を第3のカラム又は通水前の状態に戻した前記第1のカラムに切り替える第2のカラム切替工程と、該第1又は第3のカラムに通水しながら、該第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又は該測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えないときには、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する第2の水質改善判定工程とを行うことを特徴とするものである。
【0017】
請求項4の水質評価方法は、請求項3において、前記第3の濃度設定値mは、0.5〜1.0ppbであり、前記第3の濃度変化速度設定値Δdは、−0.2〜−0.1ppb・h−1であり、前記第4の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、前記第4の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明(請求項5)の水質評価方法は、シリコン物質の粒子が充填されたカラムに、純水製造装置から供給される純水からなる試料水を通水しながら、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいて試料水の水質を評価する水質評価方法において、前記純水製造装置の運転を開始した後、第1のカラムに試料水を通水しながら、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が第1の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が第1の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、試料水の通水を第2のカラムに切り替えるカラム切替工程と、該第2のカラムに試料水を通水しながら、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が、第2の濃度設定値mを超えないか、又は、該測定値の上昇速度が、第2の濃度変化速度設定値Δd(正の数)を超えないときには、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する水質改善判定工程とを含むことを特徴とするものである。
【0019】
請求項6の水質評価方法は、請求項5において、前記第1の濃度設定値mは、0.5〜2.5ppbであり、前記第1の濃度変化速度設定値Δdは、−0.4〜−0.2ppb・h−1であり、前記第2の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、前記第2の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項7の水質評価方法は、請求項5又は6において、前記水質改善判定工程において、前記第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が前記第2の濃度設定値mを超えるか、又は、該測定値の上昇速度が前記第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定し、該水質改善判定工程の後に、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が、第3の濃度設定値mを超えて上昇し、その後、該第3の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が、第3の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、試料水の通水を第3のカラム又は通水前の状態に戻した前記第1のカラムに切り替える第2のカラム切替工程と、該第1又は第3のカラムに通水しながら、該第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又は該測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えないときには、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する第2の水質改善判定工程とを行うことを特徴とするものである。
【0021】
請求項8の水質評価方法は、請求項7において、前記第3の濃度設定値mは、0.5〜1.0ppbであり、前記第3の濃度変化速度設定値Δdは、−0.2〜−0.1ppb・h−1であり、前記第4の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、前記第4の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることを特徴とするものである。
【0022】
請求項9の水質評価方法は、請求項1ないし8のいずれか1項において、前記カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とすることを特徴とするものである。
【0023】
請求項10の水質評価方法は、請求項1ないし9のいずれか1項において、純水が下記条件を全て満たす超純水であることを特徴とするものである。
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【0024】
請求項11の水質評価方法は、請求項1ないし10のいずれか1項において、前記シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とするものである。
【0025】
請求項12の水質評価方法は、請求項1ないし11のいずれか1項において、シリコン物質が水素終端化されていることを特徴とするものである。
【0026】
請求項13の水質評価方法は、請求項12において、水素終端化する方法が、シリコン物質をオゾン水で洗浄した後にフッ酸で洗浄するものであることを特徴とするものである。
【0027】
本発明(請求項14)の水質評価装置は、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の水質評価方法により試料水の水質を評価するための水質評価装置であって、それぞれシリコン物質の粒子が充填された複数個のカラムと、各カラムに試料水を切り替えて通水する通水手段と、各カラムから流出した流出水中の溶存水素濃度を測定する手段とを有するものである。
【0028】
請求項15の水質評価装置は、請求項14において、前記通水手段は、各カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とするものであることを特徴とするものである。
【0029】
請求項16の水質評価装置は、請求項14又は15において、前記シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の水質評価方法及び装置によれば、純水中に含まれる微量のシリコン汚染物質(アミン系の有機物など)を短時間で高精度に検出し、純水の水質を評価することができる。また、これにより、純水製造装置を新規に運転するときや、メンテナンスなどのために一時停止していた運転を再開するときに、純水の水質が目標水準まで上がったことを短時間で正確に知ることができ、タイムロスなく純水をユースポイントに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明装置のフロー図である。
【図2】本発明装置を組み込んだ超純水製造装置のフロー図である。
【図3】第1及び第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値の変化を示すグラフである。
【図4】第1〜第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明の水質評価方法によれば、まず、第1のカラムに、純水製造装置から供給される純水からなる試料水を通水しながら、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定する。純水製造装置の運転を継続しながらメンテナンスを行った場合には、純水製造装置から供給される純水中の汚染物質濃度が上昇することがある。このとき、第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が基準濃度設定値mを超えるか、又は、該測定値の上昇速度が基準濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定する(水質悪化判定工程)。この場合、純水製造装置からユースポイントへの純水の供給を停止する。
【0034】
なお、各カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定間隔は、0.5〜10分程度、特に1〜5分程度が好ましい。
【0035】
この基準濃度設定値mとは、含まれる汚染物質が前記所定濃度である試料水を、アミン系有機物等の汚染物質が付着していないシリコン物質が充填されたカラムに通水した場合における、この通水開始直後の該カラムからの流出水中の溶存水素濃度に相当するもの(実験値又は理論値)である。また、基準濃度変化速度設定値Δdとは、この場合における、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度の上昇速度に相当するもの(実験値又は理論値)である。
【0036】
次に、第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第1の濃度設定値mを超えて上昇し、その後、該第1の濃度設定値m以下となったとき、又は、この測定値の上昇速度が第1の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下となったときには、未通水の第2のカラムに通水を切り替えて(カラム切替工程)、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定する。
【0037】
この第1の濃度設定値m及び第1の濃度変化速度設定値Δdは、それぞれ、第1のカラムからの流出水中に含まれる、該第1のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度を考慮して、実験値又は理論値として予め設定するものである。前記第1の濃度設定値mは、前記基準濃度設定値mより大きく設定する。また、前記第1の濃度変化速度設定値Δdは、前記基準濃度変化速度設定値Δdより小さく、且つ負の数として設定する。
【0038】
このカラム切替工程の時点では、実質的に、該第2のカラム内のシリコン物質にはまだ試料水中のアミン系有機物等の汚染物質が付着していないので、該第2のカラムからの流出水の溶存水素濃度には、シリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度は含まれていない。そのため、この第2のカラムからの流出水の溶存水素濃度と試料水中の汚染物質濃度との相関性がきわめて高く、正確な水質判定を行うことができる。従って、本発明においては、第2のカラムに通水しながら、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定を継続し、第3図のように、この測定値が第2の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えなければ、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度以下であると判定する(水質改善判定工程)。
【0039】
この第2の濃度設定値m及び第2の濃度変化速度設定値Δdは、それぞれ、第2のカラムからの流出水中に含まれる、該第2のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度を考慮して、実験値又は理論値として予め設定するものである。なお、第2のカラムに通水を切り替えた時点においては、試料水中の汚染物質濃度は第1のカラムへの通水時よりも低下しているので、その分を考慮して、第2の濃度設定値mは、前記第1の濃度設定値mよりも低く設定する。同様に、第2の濃度変化速度設定値Δdは、前記基準濃度変化速度設定値Δdより低く設定する。
【0040】
なお、この水質改善判定工程においては、カラム切替工程後に通水が開始された第2のカラムからの流出水中の測定値が、第2の濃度設定値mを超えることなく、又はこの測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えることなく、そのピーク(極大値)を超えたときに、水質改善が完了したと判定することが原則となる。しかしながら、水質の改善が進むと、溶存水素濃度の極大値が小さくなり、ピークが鈍くなる(ブロードになる)ため、このピークの判定自体が困難となる場合がある。従って、本発明においては、カラム切替工程後、第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第2の濃度設定値mを超えないか、又はこの測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えないまま一定時間が経過した場合には、水質改善が完了したと判定してもよいものとする。ここで、該一定時間とは、1〜5時間程度、特に2〜4時間程度が好適である。なお、この判定基準は、後述の第2の水質改善判定工程にも適用しうる。
【0041】
このように、従来方法ではカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質が該シリコン物質から剥がれ、この汚染物質から生成された水素が該第1のカラムからの流出水中に含まれなくなるまで、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定を継続する必要があったが、本発明のように、第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第1の濃度設定値m以下となったとき、又は、この測定値の上昇速度が第1の濃度変化速度設定値Δd以下となったときに、未通水の第2のカラムに通水を切り替えることにより、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度未満まで減少したと判定するまでの測定時間を短縮することができる。
【0042】
[m,m,m,Δd,Δd,Δdの好適条件]
前記基準濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであることが好ましく、前記基準濃度変化速度設定値Δdは、0.2〜0.4ppb・h−1であることが好ましい。前記第1の濃度設定値mは、0.5〜2.5ppbであることが好ましく、前記第1の濃度変化速度設定値Δdは、−0.4〜−0.2ppb・h−1であることが好ましい。また、前記第2の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであることが好ましく、前記第2の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることが好ましい。なお、基準濃度設定値mと第2の濃度設定値mとは好適な数値範囲が同じであるが、上記の数値範囲内であれば、基準濃度設定値mと第2の濃度設定値mとは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0043】
第4図のように、前記カラム切替工程後に、第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第2の濃度設定値mを超えるか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、水質改善未了と判定して、引き続き水質評価を行うようにしてもよい。即ち、第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第2の濃度設定値mを超えるか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定する(水質改善判定工程)。次に、この測定値が第3の濃度設定値mを超えて上昇し、その後第3の濃度設定値m以下まで低下したとき、又は、この測定値の上昇速度が第3の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、第3のカラムに試料水の通水を切り替えるか、又は通水前の状態に戻した第1のカラムに試料水の通水を切り替える(第2のカラム切替工程)。そして、この第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、この測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えなければ、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する(第2の水質改善判定工程)。なお、この場合、前述の通り、水質改善が進行するのに伴って測定値のピークが鈍くなり、このピークの判定が困難である場合には、第2のカラム切替工程後、第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又はこの測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えないまま一定時間(好ましくは1〜5時間程度、特に好ましくは2〜4時間程度)が経過した場合には、水質改善が完了したと判定してもよい。
【0044】
この第3の濃度設定値m及び第3の濃度変化速度設定値Δdとは、それぞれ、第2のカラムからの流出水中に含まれる、該第2のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度を考慮して、実験値又は理論値として予め設定するものである。なお、第2のカラムに通水を切り替えた時点においては、試料水中の汚染濃度は第1のカラムへの通水時よりも低下しているので、溶存水素濃度の極大値は小さくなり、そのピークはブロードになる。よって、その分を考慮して、第3の濃度設定値mは、第2の濃度設定値mより高く、且つ第1の濃度設定値mより低く設定する。また、第3の濃度変化速度設定値Δdは、0未満且つ第1の濃度変化速度設定値Δdより高く設定する。
【0045】
また、第4の濃度設定値m及び第4の濃度変化速度設定値Δdは、それぞれ、第3のカラムからの流出水中に含まれる、該第3のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度を考慮して、実験値又は理論値として予め設定するものである。なお、第3のカラムに通水を切り替えた時点においては、試料水中の汚染物質濃度は第2のカラムへの通水時よりも低下しているので、その分を考慮して、第4の濃度設定値mは、前記第3の濃度設定値mよりも低く設定する。同様に、第4の濃度変化速度設定値Δdは、前記基準濃度変化速度設定値Δdより低く設定する。
【0046】
この場合にも、第2のカラム切替工程の時点では、実質的に、第3のカラム内又は通水前の状態に戻した第1のカラム内のシリコン物質にはまだ試料水中のアミン系有機物等の汚染物質が付着していないので、該第1又は第3のカラムからの流出水の溶存水素濃度と試料水中の汚染物質濃度との相関性がきわめて高く、正確な水質判定を行うことができる。また、このようにすることにより、第2のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質が該シリコン物質から剥がれ、この汚染物質から生成された水素が該第2のカラムからの流出水中に含まれなくなるまで、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定を継続する必要がないので、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度未満まで減少したと判定するまでの測定時間を短縮することができる。
【0047】
なお、仮に第2のカラム切替工程後に、第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第4の濃度設定値mを超えた場合、又は、この測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、水質改善未了と判定して(第2の水質改善判定工程)、さらに別の未通水のカラムか、又は通水前の状態に戻した第1又は第2のカラムに通水を切替えて第2の水質改善判定工程と同様の工程を繰り返してもよい。この工程は、カラム切替工程後に通水を開始したカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が所定の濃度設定値を超えないか、又はこの測定値の上昇速度が所定の濃度変化速度設定値を超えない状態となるまで複数回繰り返してもよい。
【0048】
[m,m,Δd,Δdの好適条件]
前記第3の濃度設定値mは、0.5〜1.0ppbであることが好ましく、前記第3の濃度変化速度設定値Δdは、−0.2〜−0.1ppb・h−1であることが好ましい。前記第4の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであることが好ましく、前記第4の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることが好ましい。なお、第4の濃度設定値mは、前記基準濃度設定値mと好適な数値範囲が同じであるが、上記の数値範囲内であれば、第4の濃度設定値mは、基準濃度設定値mと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
本発明において、純水製造装置の運転を開始するとは、例えば新設の純水製造装置の運転を開始することや、メンテナンス等で純水製造装置の運転を中断した後、この純水製造装置の運転を再開することなどを含む。即ち、本発明の水質評価方法は、このような新設の純水製造装置の運転開始時や、メンテナンス等で運転を中断した後の純水製造装置の運転再開時などにおいて水質評価を行うのに好適である。
【0050】
本発明の水質評価方法により水質評価を行う場合には、純水製造装置からユースポイントへの純水の供給を停止した状態で純水製造装置の運転を開始する。この純水製造装置の運転開始後、まず、第1のカラムに、この純水製造装置から供給される純水からなる試料水を通水しながら、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定する。新設の純水製造装置の運転開始時や、メンテナンス等で運転を中断した後の純水製造装置の運転再開時には、純水製造装置から供給される純水中に所定濃度以上の汚染物質が含まれることがある。この場合、第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値は、含まれる汚染物質が所定濃度である試料水を第1のカラムに通水した場合における、この通水開始直後の該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度(以下、基準濃度設定値mという。)よりも高くなる。また、この測定値の上昇速度は、含まれる汚染物質が所定濃度である試料水を第1のカラムに通水した場合における該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の上昇速度(以下、基準濃度変化速度設定値Δdという。)よりも高くなる。
【0051】
その後、該第1のカラムへの通水を継続し、この第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第1の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が第1の濃度変化速度設定値Δd以下まで低下したときには、試料水の通水を第1のカラムから第2のカラムに切り替える(カラム切替工程)。
【0052】
上記基準濃度設定値m及び基準濃度変化速度設定値Δdは、共に前述の基準濃度設定値m及び基準濃度変化速度設定値Δdと同様にして設定するものである。また、第1の濃度設定値m及び第1の濃度変化速度設定値Δdも、共に前述の第1の濃度設定値m及び第1の濃度変化速度設定値Δdと同様にして設定するものである。
【0053】
このカラム切替工程の時点では、実質的に、該第2のカラム内のシリコン物質にはまだ試料水中のアミン系有機物等の汚染物質が付着していないので、該第2のカラムからの流出水の溶存水素濃度には、シリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度は含まれていない。そのため、この第2のカラムからの流出水の溶存水素濃度と試料水中の汚染物質濃度との相関性がきわめて高く、正確な水質判定を行うことができる。従って、本発明においては、第2のカラムに通水しながら、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定を継続し、この測定値が第2の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えなければ、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度以下であると判定する(水質改善判定工程)。
【0054】
この第2の濃度設定値m及び第2の濃度変化速度設定値Δdは、共に前述の第2の濃度設定値m及び第2の濃度変化速度設定値Δdと同様にして設定するものである。
【0055】
このように、従来方法ではカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質が該シリコン物質から剥がれ、この汚染物質から生成された水素が該第1のカラムからの流出水中に含まれなくなるまで、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定を継続する必要があったが、本発明のように第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第1の濃度設定値m以下となったとき、又は、この測定値の上昇速度が第1の濃度変化速度設定値Δd以下となったときに、未通水の第2のカラムに通水を切り替えることにより、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度未満まで減少したと判定するまでの測定時間を短縮することができる。
【0056】
前記カラム切替工程後に、第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第2の濃度設定値mを超えるか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、水質改善未了と判定して、引き続き水質評価を行うようにしてもよい。即ち、第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第2の濃度設定値mを超えるか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定する(水質改善判定工程)。次に、この測定値が第3の濃度設定値mを超えて上昇し、その後第3の濃度設定値m以下まで低下したとき、又は、この測定値の上昇速度が第3の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、第3のカラムに試料水の通水を切り替えるか、又は通水前の状態に戻した第1のカラムに試料水の通水を切り替える(第2のカラム切替工程)。そして、この第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、この測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えなければ、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する(第2の水質改善判定工程)。
【0057】
この第3の濃度設定値m及び第3の濃度変化速度設定値Δdは、共に前述の第3の濃度設定値m及び第3の濃度変化速度設定値Δdと同様にして設定するものである。また、同様に、第4の濃度設定値m及び第4の濃度変化速度設定値Δdも共に前述の第4の濃度設定値m及び第4の濃度変化速度設定値Δdと同様にして設定するものである。
【0058】
この場合にも、第2のカラム切替工程の時点では、実質的に、第3のカラム内又は通水前の状態に戻した第1のカラム内のシリコン物質にはまだ試料水中のアミン系有機物等の汚染物質が付着していないので、該第1又は第3のカラムからの流出水の溶存水素濃度と試料水中の汚染物質濃度との相関性がきわめて高く、正確な水質判定を行うことができる。また、このようにすることにより、第2のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質が該シリコン物質から剥がれ、この汚染物質から生成された水素が該第2のカラムからの流出水中に含まれなくなるまで、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定を継続する必要がないので、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度未満まで減少したと判定するまでの測定時間を短縮することができる。
【0059】
なお、仮に第2のカラム切替工程後に、第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第4の濃度設定値mを超えた場合、又は、この測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、水質改善未了と判定して(第2の水質改善判定工程)、さらに別の未通水のカラムを用いるか、又は通水前の状態に戻した第1又は第2のカラムに通水を切替えて第2の水質改善判定工程と同様の工程を繰り返してもよい。この工程は、カラム切替工程後に通水を開始したカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が所定の濃度設定値を超えない状態となるか、又はこの測定値の上昇速度が所定の濃度変化速度設定値を超えない状態となるまで複数回繰り返してもよい。
【0060】
本発明においては、各カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とすることが好ましい。このようにすることにより、シリコン物質と試料水との反応が早くなる。そのため、超純水中の極微量のアミン系の有機物を短時間で高精度に検出し、超純水の水質を精度よく評価することができる。
【0061】
本発明の水質評価方法及び装置は、超純水からなる試料水をシリコン物質と接触させて該超純水中の溶存水素濃度を測定することによって、この超純水がシリコンウエハ表面をエッチングする性質を有するか否かを容易に判定できるので、半導体製造上の不具合の発生防止に極めて有効である。
【0062】
本発明の評価装置を、超純水製造装置直近、製造装置内、工場への供給配管途上等、任意の位置に設置することにより、水質評価を迅速に実行することが可能となる。従って、本発明は、半導体製造上の不具合の原因及びその発生源の解明に役立ち、解決に大きく寄与する。
【0063】
本発明においては、水質悪化判定工程、カラム切替工程、水質改善判定工程、第2のカラム切替工程、及び第2の水質改善判定工程の全ての工程において、カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値に基づいて判定を行うようしてもよく、あるいは、上記の全ての工程において、カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値の上昇速度に基づいて判定を行うようしてもよい。また、上記のうちいずれかの工程においては、カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値に基づいて判定を行い、残りの工程においては、カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値の上昇速度に基づいて判定を行うようしてもよい。
【0064】
[本発明の好ましい条件]
本発明では、各カラムに試料水を上向流で通水すると共に、シリコンの充填量と通水量との関係が、SV=100〜10,000h−1好ましくは200〜5000h−1となるように調節し、カラム内に流動層を形成することが好ましい。ここでSVとはSpace Velocity(空間速度)の略称であり、1時間あたりの通水量をシリコンの充填量で除算した値となる。例えばシリコンの充填量が120mLで通水量が60L/hであれば、SV=60×1,000/120=500h−1となる。SVが10000h−1よりも大きくなると、超純水がシリコンの充填材に接触する時間が短くなり、超純水中のアミン系有機物の検出感度が低くなる。一方、SVが100h−1を下回ると、水素濃度が飽和状態となるのに極めて長い時間(24時間以上)を要し、検出時間が長くなる。
【0065】
充填材料のシリコンとしては金属シリコンが用いられる。この金属シリコンとしては、純度が99%の金属シリコン(純度は2N、不純物を1%含む)を用いるよりは、純度6N以上のもの、例えば高純度の半導体ウエハ(99.999999999%,11N)の破砕物あるいは、太陽電池用(99.9999%,6N以上)に球状に形成されたシリコン(例えば特許第4074931号に記載のもの)を利用するのが望ましい。
【0066】
シリコン物質の大きさ(粒径)は、特に制限はないが、0.2mm〜2.0mmが良く、望ましくは0.2mm〜1.0mm程度とする。シリコン物質の形状は、特に制限はない。再溶解して、球形にしたものでも良い。
【0067】
シリコンは水素終端化されていることが好ましく、その方法としてまずオゾン水でシリコン表面の有機物を酸化処理し、次いでフッ酸で水素終端化するのが望ましい。オゾン水のオゾン濃度は1ppm以上が良く処理時間は30分程度が良い。フッ酸の濃度は0.5〜1%程度で良く、処理時間は5分程度が良い。
【0068】
シリコン物質を充填するためのカラムとしては、超純水と接触して溶出物を排出しなければ良く、アクリル製でも良く、ポリテトラフルオルエチレン、PFA等のフッ素樹脂製でも良い。
【0069】
水中の溶存水素濃度測定には、各種の溶存水素濃度計を用いることができ、例えば、隔膜電極式溶存水素濃度計が挙げられる。
【0070】
シリコン充填カラムに試料水の通水を開始した場合、試料水の水質が悪いときにはカラム流出水中の溶存水素濃度がいったん増加するが、水質が良くなると溶存水素濃度が低下する。
【0071】
なお、本発明において、超純水は次の水質を満たすものであることが好ましい。
【0072】
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【0073】
本発明で検知対象となる、シリコン表面荒れを生じさせる不純物としては、アミン類が挙げられる。アミン類のうち特にドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどのアルキル鎖が長いものは、エッチング量が多いため、本発明方法により精度よく検知することができる。
【0074】
[本発明方法により水質評価を行うための装置の一例]
以下、図面を参照して実施の形態に係る水質評価装置について詳細に説明する。
【0075】
第1図は、本発明方法により水質評価を行うための水質評価装置の一例を示すフロー図である。
【0076】
この実施の形態では、水質評価装置は、3個のカラム4a,4b,4cを有している。各カラム4a,4b,4c内にはシリコン物質の粒子5が充填されている。以下、カラム4a,4b,4cを順に第1のカラム4a、第2のカラム4b及び第3のカラム4cと呼ぶ。試料水は、配管1に導入される。この配管1は、バルブ2を経た後、三股(配管1a,1b,1c)に分かれてカラム4a,4b,4cの上流側にそれぞれ接続されている。各配管1a,1b,1cの途中にはそれぞれバルブ3a,3b,3cが設けられている。各カラム4a,4b,4cの下流側にはそれぞれ配管7a,7b,7cが接続されている。各配管7a,7b,7cにはそれぞれバルブ6a,6b,6cが設けられている。これらの配管7a,7b,7cは、該バルブ6a,6b,6cを経た後、1本の配管7に合流し、系外に導かれている。この配管7の途中には、下流側へ向って順にバルブ8及び流量計9が設けられている。配管7の該バルブ8よりも上流側から配管10が分岐している。この配管10の途中には、下流側へ向って順に水素濃度計11及び流量計12が設けられている。この配管10の下流側は系外に導かれている。
【0077】
試料水は、配管1、バルブ2、各配管1a,1b,1c及びバルブ3a,3b,3cを通って各カラム4a,4b,4cに上向流にて通水される。この際、各カラム4a,4b,4c内に充填されたシリコン物質の粒子5が流動層を形成するように上向流の流速が選定される。シリコン物質の粒子5と接触した水は、配管7a,7b,7c、バルブ6a,6b,6c、配管7、バルブ8及び流量計9を通って系外に排出される。この水の一部は、配管7から分岐する配管10によって分取され、水素濃度計11にて水素濃度が測定された後、流量計12を通って系外に排出される。
【0078】
第2図は、半導体製造工程に適用される超純水製造装置を示す概略的なフロー図である。
【0079】
原水は1次純水製造装置21で処理された後、サブシステム22で処理されて超純水となる。この超純水は、ライン23を介して循環され、その途中で分岐してユースポイント24に送られる。
【0080】
本発明の水質評価装置26は、サブシステム22の循環ライン23に設けられた分岐配管に接続されて設置されることが好ましく、該循環ライン23の流れ方向に間隔をおいて3個以上設置されることが好ましい。この実施の形態では、第2図の通り、サブシステム22から出た直後の地点、ユースポイント24に送られた直後の地点、及びサブシステム22に戻る直前の地点で採水用分岐配管25で超純水が分取され、第1図の構成を有した各水質評価装置26に供給され、評価が行われるよう構成されている。
【0081】
以下に、第2図の超純水製造装置において、該超純水製造装置の運転を継続しながらメンテナンスを行う場合に、第1図の水質評価装置を用いて水質評価を行う場合の超純水製造装置の運転方法について説明する。
【0082】
<ステップ1> 超純水製造装置の運転を継続しながらメンテナンスを行う場合、超純水製造装置の通常運転中に水質評価装置26のバルブ2,3a,6aを開け、その他のバルブは閉じた状態で、循環ライン23から分岐した超純水を第1のカラム4aに通水する。このとき、第1のカラム4aからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が、予め設定された基準濃度設定値mを超えるか、又はこの測定値の上昇速度が、予め設定された基準濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、超純水中のシリコン汚染物質の濃度が高いと判断し、ユースポイント24への供給ラインのバルブを閉じる(水質悪化判定工程)。次に、ステップ2に移る。
【0083】
<ステップ2> メンテナンス終了後、時間の経過と共に、第1のカラム4aからの流出水中の溶存水素濃度測定値が徐々に低下し、予め設定された第1の濃度設定値m(>基準濃度設定値m)以下まで低下したとき、又は、この測定値の上昇速度が、予め設定された第1の濃度変化速度設定値Δd(<0)以下まで低下したときには、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減された可能性があると判断し、バルブ3a,6aを閉じると共にバルブ3b,6bを開け、通水カラムを第1のカラム4aから第2のカラム4bに切り替える(カラム切替工程)。次いで、次のステップ3を実行する。
【0084】
<ステップ3> 第2のカラム4bへの切り替え後、該第2のカラム4bからの流出水中の溶存水素濃度測定値は徐々に上昇するが、この測定値が、予め設定された第2の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が、予め設定された第2の濃度変化速度設定値Δdを超えない場合には、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減されたと判断し、ユースポイント24への供給ラインのバルブを開ける。そして、バルブ2,3b,6bを閉じ、水質評価を終了する。
これに対し、第2のカラム4bへの通水開始後、該第2のカラム4bからの流出水中の溶存水素濃度測定値が前記第2の濃度設定値mを超えるか、又は、この測定値の上昇速度が前記第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度がまだ十分に低減されていないと判断し、ステップ4に移行する(水質改善判定工程)。
【0085】
<ステップ4> 第2のカラム4bからの流出水中の溶存水素濃度測定値が第3の濃度設定値m以下まで低下したとき、又は、この測定値の上昇速度が第3の濃度変化速度設定値Δd以下まで低下したときには、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減された可能性があると判断し、バルブ3b,6bを閉じると共にバルブ3c,6cを開け、通水カラムを第2のカラム4bから第3のカラム4cに切り替える(第2のカラム切替工程)。その後、次のステップ5を実行する。
【0086】
<ステップ5> 第3のカラム4cへの通水開始後、該第3のカラム4cからの流出水中の溶存水素濃度測定値は徐々に上昇するが、この測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えない場合には、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減されたと判断し、ユースポイント24への供給ラインのバルブを開ける。そして、バルブ2,3c,6cを閉じ、水質評価を終了する(第2の水質改善判定工程)。
【0087】
次に、第2図の超純水製造装置において、新設の該超純水製造装置の運転開始時又はメンテナンス等で運転を中断した後の該超純水製造装置の運転再開時に、第1図の水質評価装置を用いて水質評価を行う場合の超純水製造装置の運転方法について説明する。
【0088】
<ステップ1> サブシステム22からユースポイント24への供給ラインのバルブを閉めた状態で超純水製造装置の運転を開始又は再開する。水質評価装置26のバルブ2,3a,6aを開け、その他のバルブは閉じた状態で、循環ライン23から分岐した超純水を第1のカラム4aに通水する。このとき、第1のカラム4aからの流出水中の溶存水素濃度の測定値は、予め設定された基準濃度設定値mを超えるか、又はこの測定値の上昇速度が、予め設定された基準濃度変化速度設定値Δdを超える。次に、ステップ2に移る。
【0089】
<ステップ2> その後、時間の経過と共に、第1のカラム4aからの流出水中の溶存水素濃度測定値が徐々に低下する。この第1のカラム4aからの流出水中の溶存水素濃度測定値が、予め設定された第1の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、この測定値の上昇速度が、予め設定された第1の濃度変化速度設定値Δd以下まで低下したときには、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減された可能性があると判断し、バルブ3a,6aを閉じると共にバルブ3b,6bを開け、通水カラムを第1のカラム4aから第2のカラム4bに切り替える(カラム切替工程)。次いで、次のステップ3を実行する。
【0090】
<ステップ3> 第2のカラム4bへの切り替え後、該第2のカラム4bからの流出水中の溶存水素濃度測定値は徐々に上昇するが、この測定値が、予め設定された第2の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が、予め設定された第2の濃度変化速度設定値Δdを超えない場合には、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減されたと判断し、ユースポイント24への供給ラインのバルブを開ける。そして、バルブ2,3b,6bを閉じ、水質評価を終了する。
これに対し、第2のカラム4bへの通水開始後、該第2のカラム4bからの流出水中の溶存水素濃度測定値が第2の濃度設定値mを超えるか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度がまだ十分に低減されていないと判断し、ステップ4に移行する(水質改善判定工程)。
【0091】
<ステップ4> 第2のカラム4bからの流出水中の溶存水素濃度測定値が第3の濃度設定値m以下に低下するか、又は、この測定値の上昇速度が第3の濃度変化速度設定値Δd以下に低下したときには、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減された可能性があると判断し、バルブ3b,6bを閉じると共にバルブ3c,6cを開け、通水カラムを第2のカラム4bから第3のカラム4cに切り替える(第2のカラム切替工程)。その後、次のステップ5を実行する。
【0092】
<ステップ5> 第3のカラム4cへの通水開始後、該第3のカラム4cからの流出水中の溶存水素濃度測定値は徐々に上昇するが、この測定値が前記第4の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が前記第4の濃度変化速度設定値Δdを超えない場合には、循環ライン23を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減されたと判断し、ユースポイント24への供給ラインのバルブを開ける。そして、バルブ2,3c,6cを閉じ、水質評価を終了する(第2の水質改善判定工程)。
【0093】
なお、上記の実施の形態では、水質評価装置26は3個のカラム4a,4b,4cを備えているが、2個又は4個以上備えていてもよい。ただし、装置構成を単純化する方が低コスト化かつ省スペース化が可能となり、制御しやすいという点もあるため、カラムを2個とするのが好ましい。
【実施例】
【0094】
以下、実施例、比較例及び参考例について説明する。
【0095】
後述の水質判定時間とは、水質評価開始からウエハを洗浄するのに適当な溶存水素濃度に達するまでの時間を表わす。
【0096】
[実施例1]
内径25mm、高さ500mmのアクリル製カラムを2本設置して第1のカラム4a及び第2のカラム4bを設けた(即ち、第3のカラム4cは省略した)こと以外は、第1図の装置と同様の装置を構成した。各カラム4a,4b内に、半導体向け高純度シリコンウエハ(純度:11N)を1mm角程度の大きさに破砕したシリコン粒を充填した。第1のカラム4aにはシリコン粒を30mL充填し、第2のカラム4bにはシリコン粒を120mL充填した。なお、シリコン粒は、充填前にオゾン水で30分洗浄した後に、1%HF溶液中に5分浸漬して水素終端化を行っている。
【0097】
まず、第1のカラム4aに超純水を1L/minとなるように上向流で通水した。このとき、第1のカラム4a内において、シリコン粒子は展開して流動層となった。このときのSVは2,000h−1であった。各カラムからの流出水中の溶存水素濃度は、隔膜電極式溶存水素計(オービスフェア製)を利用して測定した。
【0098】
第1のカラム4aへの通水開始から2時間後に該第1のカラム4aからの流出水中の溶存水素濃度が1.50ppbまで上昇したが、その0.5時間後に1.35ppbまで低下したので、バルブ3a,6aを閉じ、バルブ3b,6bを開けて通水カラムを切り替え、第2のカラム4bへの通水を開始した。この際、SVを500h−1とした。その後、4時間経過した後、第2のカラム4bからの流出水中の溶存水素濃度が0.35ppbで安定したものとなったので、ウエハ洗浄を開始した。水質判定に要した時間は6.5時間(2+0.5+4=6.5)であった。
【0099】
[比較例1]
実施例1において、内径25mm、高さ500mmのアクリル製カラムを1本だけ設置した(即ち、第2及び第3のカラム4b,4cを省略した)こと以外は実施例1と同様にして通水を行った。即ち、このカラム内には、シリコン粒を30mL充填し、SVを2,000h−1として超純水をこのカラムに通水した。
【0100】
このカラムへの通水開始から3時間後にこのカラムからの流出水中の溶存水素濃度が1.60ppbまで上昇したが、その1時間後に1.55ppbまで低下した。その後、このカラムからの流出水中の溶存水素濃度が0.50ppbまで低下するまでさらに8時間を要した。
【0101】
このように、1本のカラムだけに連続して通水し、そこからの流出水中の溶存水素濃度の測定値だけをモニタリングして水質評価を行う場合には、超純水を半導体洗浄に用いても良いと判定できるまでに多大な時間を要するので、工場における生産性が低いものとなる。
【0102】
これに対し、本発明例(実施例1)によると、水質判定を短時間で行うことができることが認められた。これにより、工場における生産性を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0103】
4a,4b,4c カラム
5 シリコン粒子
11 水素濃度計
21 1次純水装置
22 サブシステム
23 循環ライン
24 ユースポイント
25 分岐配管
26 水質評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン物質の粒子が充填されたカラムに、純水製造装置から供給される純水からなる試料水を通水しながら、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいて試料水の水質を評価する水質評価方法において、
第1のカラムに試料水を通水しながら、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が基準濃度設定値mを超えるか、又は、該測定値の上昇速度が基準濃度変化速度設定値Δd(正の数)を超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定する水質悪化判定工程と、
該水質悪化判定工程の後に、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が、第1の濃度設定値mを超えて上昇し、その後、該第1の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が、第1の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、試料水の通水を第2のカラムに切り替えるカラム切替工程と、
該第2のカラムに試料水を通水しながら、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が、第2の濃度設定値mを超えないか、又は、該測定値の上昇速度が、第2の濃度変化速度設定値Δd(正の数)を超えないときには、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する水質改善判定工程と
を含むことを特徴とする水質評価方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、前記基準濃度変化速度設定値Δdは、0.2〜0.4ppb・h−1であり、
前記第1の濃度設定値mは、0.5〜2.5ppbであり、
前記第1の濃度変化速度設定値Δdは、−0.4〜−0.2ppb・h−1であり、
前記第2の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、
前記第2の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることを特徴とする水質評価方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記水質改善判定工程において、前記第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が前記第2の濃度設定値mを超えるか、又は、該測定値の上昇速度が前記第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定し、
該水質改善判定工程の後に、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が、第3の濃度設定値mを超えて上昇し、その後、該第3の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が、第3の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、試料水の通水を第3のカラム又は通水前の状態に戻した前記第1のカラムに切り替える第2のカラム切替工程と、
該第1又は第3のカラムに通水しながら、該第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又は該測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えないときには、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する第2の水質改善判定工程と
を行うことを特徴とする水質評価方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記第3の濃度設定値mは、0.5〜1.0ppbであり、
前記第3の濃度変化速度設定値Δdは、−0.2〜−0.1ppb・h−1であり、
前記第4の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、
前記第4の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることを特徴とする水質評価方法。
【請求項5】
シリコン物質の粒子が充填されたカラムに、純水製造装置から供給される純水からなる試料水を通水しながら、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいて試料水の水質を評価する水質評価方法において、
前記純水製造装置の運転を開始した後、
第1のカラムに試料水を通水しながら、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が第1の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が第1の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、試料水の通水を第2のカラムに切り替えるカラム切替工程と、
該第2のカラムに試料水を通水しながら、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が、第2の濃度設定値mを超えないか、又は、該測定値の上昇速度が、第2の濃度変化速度設定値Δd(正の数)を超えないときには、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する水質改善判定工程と
を含むことを特徴とする水質評価方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1の濃度設定値mは、0.5〜2.5ppbであり、
前記第1の濃度変化速度設定値Δdは、−0.4〜−0.2ppb・h−1であり、
前記第2の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、
前記第2の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることを特徴とする水質評価方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、前記水質改善判定工程において、前記第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が前記第2の濃度設定値mを超えるか、又は、該測定値の上昇速度が前記第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定し、
該水質改善判定工程の後に、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が、第3の濃度設定値mを超えて上昇し、その後、該第3の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が、第3の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、試料水の通水を第3のカラム又は通水前の状態に戻した前記第1のカラムに切り替える第2のカラム切替工程と、
該第1又は第3のカラムに通水しながら、該第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又は該測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えないときには、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する第2の水質改善判定工程と
を行うことを特徴とする水質評価方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記第3の濃度設定値mは、0.5〜1.0ppbであり、
前記第3の濃度変化速度設定値Δdは、−0.2〜−0.1ppb・h−1であり、
前記第4の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであり、
前記第4の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることを特徴とする水質評価方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、前記カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とすることを特徴とする水質評価方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、純水が下記条件を全て満たす超純水であることを特徴とする水質評価方法。
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項において、前記シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とする水質評価方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項において、シリコン物質が水素終端化されていることを特徴とする水質評価方法。
【請求項13】
請求項12において、水素終端化する方法が、シリコン物質をオゾン水で洗浄した後にフッ酸で洗浄するものであることを特徴とする水質評価方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の水質評価方法により試料水の水質を評価するための水質評価装置であって、
それぞれシリコン物質の粒子が充填された複数個のカラムと、
各カラムに試料水を切り替えて通水する通水手段と、
各カラムから流出した流出水中の溶存水素濃度を測定する手段と
を有する水質評価装置。
【請求項15】
請求項14において、前記通水手段は、各カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とするものであることを特徴とする水質評価装置。
【請求項16】
請求項14又は15において、前記シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とする水質評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−249651(P2010−249651A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99210(P2009−99210)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】