説明

汚染表面清掃方法

【課題】半導体製造装置の内部や、半導体製造装置のガス給排気系に配設されている排気バルブあるいは半導体製造装置やガス給排気系に配設されている圧力制御バルブなど複雑な構造部分に付着している付着物を安全に取り除く汚染表面清掃技術を提供する。
【解決手段】半導体製造装置1およびそれにつながるガス給排気系の内部壁面部分を、多関節型に形成したアーム12部分の先端部に清掃具14を装着してなる清掃ロボット2で清掃するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子製造装置、液晶製造装置、太陽電池製造装置などの半導体製造装置での処理チャンバー内部や、半導体製造装置の排気路内部やその接続部内面、排気路に装着されているバルブ類の表面に付着する、毒性付着物や発火性付着物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子製造装置、液晶製造装置、太陽電池製造装置などの半導体製造装置では、空乏層作成のために、As,B,P,Ge,Sb等の有害物質をイオン注入、製膜、熱拡散などの技術を使用してドーピングを行っている。このような半導体製造工程においては、半導体製造装置の処理室内部や排気路内部あるいは排気路接続部の内面に有害物質や可燃性粉体が付着して、該表面部分を汚染する。
【0003】
このような半導体製造装置の内部や排気バルブ、圧力制御バルブの清掃には、ガスクリーニングやプラズマクリーニングが普及しつつある。ところが、付着物の材料によっては、ガスやプラズマでは反応性が乏しく、清掃できない場合がある。
【0004】
半導体製造装置の処理室内部や排気路内部あるいは排気路接続部の内面に有害物質や可燃性粉体が付着した場合、従来では、操業を停止し、処理室や排気路などを分解し、作業員がブラシ等の清掃具を用いて清掃していたが、作業員が清掃具を使用して行う清掃では、付着物とブラシ等の清掃具とが充分に接触せず、清掃不良となる場合があった。
【0005】
また、付着物には、砒素化合物などの毒性を有するものや、シラン系化合物のように発火・可燃性を有するものがあることから、人力による清掃作業に当っては、大きな危険を伴うとともに、防護服に付着した有害粉体が脱衣する際に飛散し、この飛散粉体が人体に付着あるいは吸引されることで健康に悪影響を及ぼす場合がある。
【0006】
そこで、半導体製造装置からの排気ガスを有害物処理装置に導く排気路に連通させた大気とは遮断されている格納部から排気路に清掃ロボツトを進入させて排気路を清掃し、清掃後に清掃ロボットを排気路から自動退出させるようにした、清掃装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−271628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の清掃ロボツトを使用した半導体製造装置の清掃装置では、半導体製造装置と有害物処理装置とを連通接続する排気路(配管部)を清掃ロボツトで清掃することはできるが、複雑な構造をしている半導体製造装置(処理室)の壁面やこれに装着されているバルブ類の内面に付着した付着物を除去することはできず、処理室壁面や処理室に配置されている各種機器類に付着した付着物は依然として作業員による清掃に頼らざるを得ないという問題が残っている。
【0009】
そして、この場合、運転停止直後の半導体製造装置は高い温度域にあることから、清掃対象部分が充分に冷却されるまで、清掃作業を実施することができず、半導体製造装置の運転休止期間が長くなり、生産性を低下させるという不利益もあった。
【0010】
また、付着物は、装置内部に一定の膜厚でなく、特に複雑な構造の処理室内部やバルブ内は製造用材料の滞留部分・成膜温度よりも低温の部分により高速に多く付着する傾向があり、稼動部分の動作不良、パーティクル、フレーク、不純物汚染の増加の原因となっていた。
【0011】
更に、作業員による清掃の場合、手の大きさ長さに制限があり、狭い部分では清掃具が汚染表面部分に接触することできず、清掃不良が発生していた。
【0012】
本発明はこのような点に鑑み提案されたもので、半導体製造装置の内部や、半導体製造装置のガス給排気系に配設されている排気バルブあるいは半導体製造装置やガス給排気系に配設されている圧力制御バルブなど複雑な構造部分に付着している付着物を安全に取り除く汚染表面清掃技術を提供することを目的とする。
【0013】
上述の目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、半導体素子製造装置、液晶製造装置、太陽電池製造装置などの半導体製造装置での処理チャンバー内部や、半導体製造装置の排気路内部やその接続部内面、排気路に装着されているバルブ類の表面に付着する、毒性付着物や発火性付着物を除去するにあたり、前記半導体製造装置およびそれにつながるガス給排気系の内部壁面部分を、多関節型に形成したアーム部分の先端部に清掃具を装着してなる清掃ロボットで清掃するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、清掃ロボットで清掃対象表面の汚染物質を清掃するようにしていることから、半導体製造装置の運転休止期間を短縮して、生産性を高めることができる。
【0015】
更に、清掃ロボットを多関節型に形成したアーム部分の先端部に清掃具を装着して構成してあることから、清掃具は細かい動きをすることができ、複雑な構造の処理室内部やバルブ内であっても、確実に付着物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した清掃装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明を半導体基板等の半導体素子を製造する半導体製造装置に適用した例を示し、半導体製造装置(1)とこの半導体製造装置(1)の内部を清掃する清掃装置(2)とが示されている。半導体製造装置(1)は処理チャンバ(3)と吸引ポンプ(4)とを排ガス路(5)で連通接続してある。この排ガス路(5)にはアングルバルブ(6)や圧力調整バルブ(7)あるいはフランジ(8)等のフィッティング類が装着してある。
【0018】
処理チャンバ(3)には、サセプター(9)に対向する状態で、プロセスガスやクリーニングガスを導入するシャワーノズル(10)が配置してある。また、排ガス路(5)は圧力調整バルブ(7)よりも下流側部分をT字状に分岐し、主通路(5A)を前記吸引ポンプ(4)に接続するとともに、分岐通路(5B)の端部にロボットアーム導入用ゲートバルブ(11)が装着してある。なお、本件では、この分岐通路(5B)が圧力調整バルブ(7)を装着している排ガス路(5)と直線的に接続するようにしてある。
【0019】
そして、このロボットアーム導入用ゲートバルブ(11)から、清掃装置(2)を構成しているロボットアーム(12)が半導体製造装置(1)内に出退するように構成してある。このとき、ロボットアーム(12)の外周部分は気密空間に形成してあり、この気密状態を維持したままロボットアーム導入用ゲートバルブ(11)に連結接続してある。したがって、ロボットアーム導入用ゲートバルブ(11)を開いてロボットアーム(12)が半導体製造装置(1)内に導入されている清掃姿勢であっても、半導体製造装置(1)の内部が大気に連通することはない。
【0020】
清掃装置(2)は、ロボット本体部分(13)とこのロボット本体部分(13)から連出された前記のロボットアーム(12)とを有する清掃ロボットで構成してあり、このロボットアーム(12)は球関節継手などの自在継手で接続された多関節形式で構成してある。そして、このロボットアーム(12)の先端部には、清掃具(14)が装着してある。
【0021】
清掃具(14)としては、ロボットアーム(12)の先端部に回転可能に装着した布・紙・スポンジ等の払拭具、薬液・洗浄水・アルコールなどの液体を噴出する液体噴射器、払拭具と流体噴射器とを並備するもの、あるいは、ハロゲン間化合物ガスあるいは液化炭酸ガスなどの高圧ガスを噴出するガス噴出器などが考えられる。また、液体あるいはガスなどの流体噴出器からの噴出流体や噴出流体で溶解したリ剥離させられた汚染物質、払拭により飛散した汚染物質などを吸引排除する吸引具を清掃具(14)とともに装備するようにしてもよい。
【0022】
更に、ロボットアーム(12)の先端にCCDカメラを装着し、このCCDカメラで清掃対象表面を視認しながら清掃作業を行うようにしてもよい。また、清掃対象表面に消火性ガスを吹付け、発火防止あるいは消火をしながら清掃することも考えられる。
【0023】
次に、上述の清掃装置(2)を使用して、半導体製造装置(1)の内部を清掃する手順の一例を説明する。
半導体製造装置(1)の稼動時間が所定時間に達すると、いったん半導体製造装置(1)の稼動運転を中止する。そして、排ガス路(5)の一部に配設されているロボットアーム導入用ゲートバルブ(11)を開き作動して、このロボットアーム導入用ゲートバルブ(11)から清掃装置(2)を構成しているロボットアーム(12)を排ガス路(5)、処理チャンバ(3)に進入させ、処理チャンバー(3)の壁面やサセプター(9)の壁面、シャワーノズル(10)のノズル部分、排ガス路(5)の内面、アングルバルブ(6)や圧力調整バルブ(7)あるいはフランジ(8)等のフィッティング類の接ガス面をロボットアーム(12)の先端部に装着した清掃具(14)で清掃する。
【0024】
このとき、清掃装置(2)を構成しているロボットアーム(12)は、球関節継手などの自在継手で接続された多関節形式に形成してあることから、ロボットアーム(12)が任意な方向に屈曲することができることになり、清掃具(14)は細かい動きをすることができ、複雑な構造の処理室内部やバルブ内であっても、確実に付着物を除去することができることになる。
【0025】
また、清掃ロボットによる清掃装置を使用して、清掃対象表面の汚染物質を清掃するようにしていることから、清掃のために半導体製造装置の温度低下を待つ必要がないこと、および半導体製造装置が所定の運転温度に達するまでの温度上昇期間を短縮させることができることから、運転休止期間を短縮して、生産性を高めることができる。
【0026】
上記の実施形態では、半導体製造分野での清掃について説明したが、本発明は、食品製造分野での例えば、膠着しているタンパク質膜を除去するような場合にも利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、半導体製造や食品製造などの分野での表面汚染を除去する清掃方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…半導体製造装置、2…清掃ロボット(清掃装置)、3…処理チャンバー、5…半導体製造装置(1)の排気路、12…アーム(ロボットアーム)、14…清掃具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子製造装置、液晶製造装置、太陽電池製造装置などの半導体製造装置(1)での処理チャンバー(3)の内部や、半導体製造装置(1)の排気路(5)の内部およびその接続部内面や排気路に装着されているバルブ類の表面に付着している毒性付着物や発火性付着物を除去するにあたり、前記半導体製造装置(1)およびそれにつながるガス給排気系の内部壁面部分を、多関節型に形成したアーム(12)部分の先端部に清掃具(14)を装着してなる清掃ロボット(2)で清掃するようにしたことを特徴とする汚染表面清掃方法。
【請求項2】
アーム(12)部分の先端部に装着した清掃具(14)が払拭具であり、清掃対象表面の汚染物質を拭き取るようにした請求項1に記載の汚染表面清掃方法。
【請求項3】
アーム(12)部分の先端部に装着した清掃具(14)が流体噴射器であり、清掃対象表面の汚染物質を吹付けた洗浄流体で溶解除去するようにした請求項1に記載の汚染表面清掃方法。
【請求項4】
アーム(12)部分の先端部に装着した清掃具(14)が流体噴射器と払拭具とで構成してあり、清掃対象表面の汚染物質を吹付けた洗浄流体で溶解した後、払拭具で拭き取るようにした請求項1に記載の汚染表面清掃方法。
【請求項5】
アーム(12)部分の先端部に清掃具(14)とともに吸引具を装着し、清掃対象表面に吹付けた洗浄流体および溶解した汚染物質を吸引除去するようにした請求項1または3に記載の汚染表面清掃方法。
【請求項6】
アーム(12)部分の先端部に装着したCCDカメラで清掃対象表面を視認しながら清掃作業を行うようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の汚染表面清掃方法。
【請求項7】
清掃対象表面に消火性ガスを吹付けるようにした請求項1〜6のいずれか1項に記載の汚染表面清掃方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−253399(P2010−253399A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107224(P2009−107224)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】