説明

汚泥の燃料化方法及び装置

【課題】 汚泥を燃料化するための炭化処理において、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる汚泥の燃料化方法及び装置を提供する。
【解決手段】 汚泥を炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる炭化炉30と、熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉40と、燃焼炉で発生した燃焼排ガスを熱源として炭化炉に供給するライン41と、汚泥の燃料化にかかる電力の少なくとも一部を発電するためのガスエンジン70と、ガスエンジンの排ガスで燃焼炉に流入するガスを間接的に加熱する熱交換器47とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場などで発生する汚泥の燃料化方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CO2排出量を低減する観点から、化石燃料の代替エネルギーとして、カーボンニュートラルであるバイオマスが注目されている。バイオマスの一つである有機性汚泥は、大半が埋め立て処理あるいは焼却処理されており、エネルギー利用されていない。そこで、CO2の排出を抑制するために、すなわち、化石燃料の使用を抑制するために、安定した収集量が見込める下水汚泥を、炭化処理により固体燃料化して、石炭火力発電用の燃料にするシステムが考えられている。
【0003】
しかしながら、汚泥を焼却処理する場合は、汚泥の発熱量を全て焼却熱に使えるので助燃料の使用量は少ないが、汚泥を炭化処理する場合は、炭化物に熱量を残すために助燃料の使用量が多くなる。助燃料には化石燃料が使用されているので、化石燃料の代替燃料を製造するために多量の化石燃料が使用されてしまっては、実質的なCO2排出量の低減を図ることができない。そこで、例えば、特開2002−192196号公報に記載されるように、汚泥を炭化炉により加熱して炭化物とともに熱分解ガスを発生させ、この熱分解ガスをガスタービンやガスエンジンなどの燃焼機関に供給して省エネルギー化を図る方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−192196号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記公報に記載されている技術では、炭化炉で発生する熱分解ガスのみで燃焼機関を運転させたとしても、汚泥を炭化処理するのに必要なエネルギーを十分に得ることはできないので、助燃料として多量の化石燃料を使用する必要があるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、汚泥を燃料化するための炭化処理において、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる汚泥の燃料化方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る汚泥の燃料化方法は、その一形態として、汚泥を炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる炭化工程と、汚泥を嫌気性消化して消化ガスを生成させるメタン発酵工程とを含んでなり、前記熱分解ガス及び前記消化ガスを燃焼させ、この燃焼で発生する燃焼排ガスを前記炭化処理の熱源として用いることを特徴とする。前記メタン発酵工程で発生する消化汚泥は、前記炭化工程で炭化処理することもできる。
【0007】
このように、汚泥の炭化処理で生成する熱分解ガスとともに、バイオマス資源である汚泥を嫌気性消化させて得られる消化ガスを燃焼させ、この燃焼で発生する燃焼排ガスを炭化処理の熱源として使用することで、汚泥の炭化処理に必要なエネルギーを十分に得ることができる。よって、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。また、汚泥を嫌気性消化させて得られる消化ガス中には、硫化水素や有機ケイ素化合物であるシロキサン等が含まれているため、消化ガスをガスエンジン燃料として使用する場合には、これらを除去する必要があり、これらの吸着除去はコストが高いという問題がある。しかし、本発明では消化ガスを燃焼炉で燃焼するため、硫化水素やシロキサン等を除去することなく利用することができる。
【0008】
本発明に係る汚泥の燃料化方法は、別の形態として、汚泥を炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる炭化工程とを含んでなり、前記汚泥に木質系バイオマスを加えて前記炭化処理を行うことを特徴とする。
【0009】
間伐材や剪定枝などの木質系バイオマスは、有効な利用先が確立されておらず利用率が低い。しかし、木質系バイオマスは汚泥に比べて含水量が非常に低く、発熱量が高いことから、木質系バイオマスを汚泥とともに炭化処理することで、炭化処理に必要な助燃料の量は低下し、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。
【0010】
本発明に係る汚泥の燃料化方法は、さらに別の形態として、上記の形態を組み合わせたものであり、汚泥を炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる炭化工程と、汚泥を嫌気性消化して消化ガスを生成させるメタン発酵工程とを含んでなり、前記熱分解ガス及び前記消化ガスを燃焼させることにより発生する燃焼排ガスを前記炭化処理の熱源として用いるとともに、前記炭化工程において汚泥に木質系バイオマスを加えて前記炭化処理を行うことを特徴とする。これにより、化石燃料の使用を極少量まで削減することができる。
【0011】
また、本発明に係る汚泥の燃料化方法は、ガスエンジンを用いて発電を行う発電工程を更に含んでなり、本方法にかかる電力の少なくとも一部を前記発電工程の発電を利用するとともに、燃焼炉に流入するガスを間接的に加熱する熱源として前記ガスエンジンの排ガスを用い、前記燃焼炉により発生した燃焼排ガスを前記炭化処理の熱源として用いることもできる。これにより、熱分解ガスの燃焼に必要な助燃料の量が大幅に低下するので、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。
【0012】
本発明は、別の態様として、汚泥の燃料化装置であって、その一形態として、汚泥を炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる炭化炉と、該熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉と、汚泥を嫌気性消化して消化ガス及び消化汚泥を生成させるメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽から前記消化ガスを燃料として前記燃焼炉に供給するラインと、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスを熱源として前記炭化炉に供給するラインとを含むことを特徴とする。なお、汚泥を脱水する脱水機と、脱水した汚泥を乾燥する乾燥炉と、該乾燥炉から乾燥させた汚泥を前記炭化炉に供給するラインと、前記メタン発酵槽から前記消化汚泥を前記脱水機に供給するラインとを更に含むことができる。
【0013】
本発明に係る汚泥の燃料化装置は、別の形態として、汚泥を炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる炭化炉と、該炭化炉に木質系バイオマスを供給する木質系バイオマス供給機とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る汚泥の燃料化装置は、さらに別の形態として、上記の形態を組み合わせたものであり、汚泥を炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる炭化炉と、該熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉と、汚泥を嫌気性消化して消化ガス及び消化汚泥を生成させるメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽から前記消化ガスを燃料として前記燃焼炉に供給するラインと、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスを熱源として前記炭化炉に供給するラインと、前記炭化炉に木質系バイオマスを供給する木質系バイオマス供給機とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る汚泥の燃料化装置は、本装置にかかる電力の少なくとも一部を発電するためのガスエンジンと、該ガスエンジンの排ガスで燃焼炉に流入するガスを間接的に加熱する熱交換器とを更に含むことができる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、汚泥を燃料化するための炭化処理において、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる汚泥の燃料化方法及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る汚泥の炭化処理装置の一実施の形態であって、メタン発酵槽を設けた場合を示す模式図である。図1に示すように、汚泥の炭化処理装置は、下水汚泥1を脱水する脱水機10と、脱水した下水汚泥に熱風を直接接触させて乾燥する乾燥炉20と、乾燥させた下水汚泥を炭化処理する外熱式ロータリーキルン型の炭化炉30と、炭化炉30で生成した熱分解ガスを燃焼する燃焼炉40と、下水汚泥2を嫌気性消化するメタン発酵槽60とから主に構成されている。
【0018】
乾燥炉20は、熱風を直接接触させる方式に限定されず、脱水汚泥を燃焼させずに乾燥できるものであれば特に限定されない。炭化炉30は、外熱式ロータリーキルン型のものに限定されず、内燃式でも、流動床型又はスクリュー型でも良い。なお、図1では、乾燥炉20と炭化炉30は別々の設備として図示してあるが、一体型の乾燥炭化炉としても良い。メタン発酵槽60は、メタン菌などの微生物を用いて嫌気的条件下で有機性物質を分解して、メタンを含む消化ガスを生成できるものであれば特に限定されるものではない。メタン菌としては、例えば、Methanobacterium属や、Methanobacillus属、Methanococcus属、Methanosarcina属などが好ましい。
【0019】
脱水機10と乾燥炉20とはライン11で接続されており、このライン11はポンプによって汚泥を圧送できる配管などが好ましい。乾燥炉20と炭化炉30とはライン21で接続されており、このライン21は乾燥した汚泥を搬送できるコンベアなどが好ましい。炭化炉30内部と燃焼炉40とは、炭化炉30内で生成する熱分解ガスの配管であるライン31で接続されており、このライン31には熱分解ガス中から炭化物を分離除去するサイクロン32が設けられている。サイクロン32の底部と炭化炉30の炭化物出口には、炭化物を排出するライン33とライン34とがそれぞれ設けられている。
【0020】
燃焼炉40と炭化炉30外熱部とはライン41で接続されており、炭化炉30外熱部と乾燥炉20とはライン42で接続されている。これらライン41、42は、燃焼炉40で発生する燃焼排ガスの配管である。なお、ライン42には、燃焼排ガスの一部を系外に排気するための配管であるライン43が設けられている。このライン43には、炭化炉30側から順に、空気予熱器44、熱交換器47、排ガス処理装置48、ファン49、及び煙突50が設けられている。
【0021】
乾燥炉20と燃焼炉40とは、乾燥炉20内で発生する排ガスの配管であるライン22で接続されており、このライン22には、ライン43との間で熱交換を行う熱交換器47が設けられている。また、空気を吸引するファン45と燃焼炉40とは、空気配管であるライン46で接続されており、このライン46には、ライン43との間で熱交換を行う空気予熱器44が設けられている。
【0022】
メタン発酵槽60と燃焼炉40とはライン61で接続されており、このライン61はメタン発酵槽60内で生成する消化ガスの配管である。必要であれば、メタン発酵槽60と脱水機10とはライン62で接続することもできる。このライン62は、ポンプによりメタン発酵槽60内で発生する消化汚泥を圧送できる配管などが好ましい。ライン62には、消化汚泥中の水分を分離除去できる固液分離機63が設けられている。
【0023】
以上の構成によれば、先ず、脱水機10に下水汚泥1を導入し、下水汚泥1の水分が約80%になるぐらいまで脱水する。なお、本発明で対象となる汚泥は、炭化処理により固体燃料化できる有機性の汚泥であれば下水汚泥に限定されるものではなく、例えば、食品汚泥、製紙汚泥、ビルピット汚泥、消化汚泥、活性汚泥なども適用できる。脱水した下水汚泥は、ライン11を介して乾燥炉20に供給する。
【0024】
乾燥炉20では、汚泥の水分が約30%ぐらいになるまで汚泥を乾燥する。乾燥させた汚泥は、ライン21を介して炭化炉30に導入する。炭化炉30では、汚泥を酸素が欠乏した雰囲気下で約300〜600℃に加熱して炭化処理を行い、熱分解ガスと固体燃料である炭化物6とを生成する。熱分解ガスは、ライン31を介してサイクロン32に導入し、熱分解ガス中の炭化物6を分離除去した後、燃焼炉40に導入する。炭化物6は、炭化炉30に設けられたライン34と、サイクロン32に設けられたライン33とから、それぞれ回収する。
【0025】
また、メタン発酵槽60にも下水汚泥2を導入して嫌気性消化を行う。この下水汚泥2も、脱水機10に導入する下水汚泥1と同様に、有機性汚泥であれば特に下水汚泥に限定されるものではない。嫌気性消化によって、下水汚泥2中のC成分、H成分からメタンが生成され、メタンを含む消化ガスが発生する。なお、メタン発酵槽60内の温度やpH等は、メタン菌が生息できる環境に設定する。メタン発酵槽60内で生成した消化ガスは、ライン61を介して燃焼炉40に導入する。メタン発酵槽60内で発生した消化汚泥は、固液分離機63で水分を分離除去した後、ライン62を介して脱水機10に導入し、下水汚泥1と同様に炭化処理によって燃料化することができる。固液分離機63で発生した廃水は、廃水処理設備(図示省略)で処理する。
【0026】
燃焼炉40には、上述した炭化炉30で生成した熱分解ガスと、メタン発酵槽60で生成した消化ガスの他、ファン45から吸引して空気予熱器44で予熱した燃焼用の空気と、乾燥炉20から排気され熱交換器47で加熱した排ガスとを導入する。そして、約800〜1000℃の温度で燃焼を行う。この燃焼により発生した燃焼排ガスは、ライン41を介して炭化炉30外熱部に導入し、炭化処理の熱源として使用する。これにより、炭化処理に必要なエネルギーを十分に得ることができるので、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。但し、燃焼の安定化等のために、助燃料として若干量の化石燃料を燃焼炉40に供給してもよい。
【0027】
炭化炉30外熱部から排出された燃焼排ガスの一部は、ライン42を介して乾燥炉20に導入される。また、燃焼排ガスの残部は、ライン43を介して煙突50から系外に排出される。
【0028】
このようにして得られた固体燃料である炭化物6は、上述してきたように、カーボンニュートラルなバイオマス資源である下水汚泥1、2を炭化処理したものであって、かつ、この炭化処理も化石燃料に代えてバイオマス資源由来の燃料が使用されている。よって、この炭化物6を石炭火力発電所(図示省略)での発電燃料として使用することで、化石燃料の使用量を本質的に低減することができるので、CO2排出量の削減を図ることができる。
【0029】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明に係る汚泥の炭化処理装置の一実施の形態であって、木質系バイオマス供給機を設けた場合を示す模式図である。なお、図1と同様の構成については同一の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。図2に示すように、汚泥の炭化処理装置は、脱水機10と、乾燥炉20と、炭化炉30と、燃焼炉40と、木質系バイオマス供給機80とから主に構成されている。
【0030】
木質系バイオマス供給機80は、特に限定されないが、木質系バイオマスを定量的に連続して供給できるものが好ましい。木質系バイオマス供給機80と炭化炉30とはライン81で接続されており、このライン81は木質系バイオマスを搬送できるコンベヤやポンプで空気輸送できる配管などが好ましい。ライン81には木質系バイオマスを粗粉砕する粗粉砕機82が設けられている。粗粉砕機82としては、例えば、シュレッダー、ハンマークラッシャーや、ジョークラッシャーなどが好ましい。
【0031】
以上の構成によれば、先ず、脱水機10に下水汚泥1を導入して脱水する。脱水した下水汚泥は、乾燥炉20に導入して乾燥させる。乾燥させた汚泥は、炭化炉30に導入する。一方、木質系バイオマスは、木質系バイオマス供給機80から粗粉砕機82に導入して粗粉砕する。木質系バイオマスとしては、例えば、間伐材、剪定枝、製材廃材、建築廃材などが好ましい。粗粉砕された木質系バイオマスは、ライン81を介して炭化炉30に導入する。
【0032】
炭化炉30では、下水汚泥と木質系バイオマスとを炭化処理して、熱分解ガスと固体燃料である炭化物7とを生成する。木質系バイオマスの添加割合は、下水汚泥の乾燥重量に対して、50〜150%が好ましく、80〜120%がより好ましい。添加割合を80〜120%とすることで、化石燃料の使用量をほぼ零にすることができる。木質系バイオマスは汚泥に比べて含水量が低く発熱量が高いので、汚泥とともに木質系バイオマスを炭化処理することで、炭化炉30での炭化処理に必要なエネルギーを低下させることができる。さらに、木質系バイオマスは汚泥に比べて熱分解ガスの発生量が多いので、熱分解ガスを燃焼炉40で燃焼させ、その燃焼排ガスを炭化炉30の熱源として使用することで、炭化炉30での炭化処理に必要なエネルギーを十分に得ることができる。よって、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。但し、燃焼の安定化等のために、助燃料として若干量の化石燃料を燃焼炉40に供給してもよい。
【0033】
炭化炉30の炭化物出口に設けられたライン34と、サイクロン32の底部に設けられたライン33とから、それぞれ炭化物7を回収する。この炭化物7は、汚泥とともに木質系バイオマスを炭化処理したものであるので、汚泥のみを炭化処理したものに比べて炭素含有量が高く、熱量が高い。よって、この炭化物7を石炭火力発電所(図示省略)での発電燃料として使用することで、化石燃料の使用量をより低減することができ、更なるCO2排出量の削減を図ることができる。
【0034】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明に係る汚泥の炭化処理装置の一実施の形態であって、ガスエンジンを設けた場合を示す模式図である。なお、図1と同様の構成については同一の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。図3に示すように、汚泥の炭化処理装置は、脱水機10と、乾燥炉20と、炭化炉30と、燃焼炉40と、都市ガス(天然ガス)を燃料として発電を行うガスエンジン70とから主に構成されている。
【0035】
ガスエンジン70は、天然ガス等の気体燃料を燃焼し、これにより発電するものであれば、特に限定されない。なお、図3では省略しているが、ガスエンジン70で発生する電力を、脱水機10、乾燥炉20、炭化炉30、燃焼炉40等の本装置の各設備に供給するための配電管が設けられている。
【0036】
また、ガスエンジン70には、ライン43の空気予熱器44と熱交換器47との間にガスエンジン70で発生した排ガスを導入するための配管であるライン71が設けられている。
【0037】
以上の構成によれば、先ず、脱水機10に下水汚泥1を導入して脱水する。脱水した下水汚泥は、乾燥炉20に導入して乾燥させる。乾燥させた汚泥は、炭化炉30に導入する。炭化炉30では、炭化処理により熱分解ガスと固体燃料である炭化物6とが生成する。熱分解ガスは、サイクロン32にて炭化物6を分離除去した後、燃焼炉40に導入する。炭化物6は、炭化炉30に設けられたライン34と、サイクロン32に設けられたライン33とから、それぞれ回収する。
【0038】
一方、ガスエンジン70には都市ガスを供給し、都市ガスの燃焼により発電を行う。これにより得られた電力は、配電管(図示省略)を介して本装置の各設備に供給し、本装置による汚泥の燃料化に必要な電力の全部又は一部として使用する。また、ガスエンジン70では発電とともに約400℃の排ガスが発生する。この排ガスは、ライン71を介して熱交換器47に導入され、乾燥炉20内で発生する排ガスを熱交換器47で加熱するための熱源として用いられた後、煙突50から排出される。
【0039】
燃焼炉40には、上述した熱分解ガスの他、ファン45から吸引して空気予熱器44で予熱した燃焼用の空気と、乾燥炉20から排気され熱交換器47で加熱した排ガスとを導入する。そして、約800〜1000℃の温度で燃焼を行う。この燃焼により発生した燃焼排ガスは、ライン41を介して炭化炉30外熱部に導入し、炭化処理の熱源として使用する。これにより、炭化処理に必要なエネルギーを十分に得ることができる。
【0040】
このように、燃焼炉40における熱分解ガスの燃焼に、ガスエンジン70で発生する高温の排ガスを利用することで、燃焼炉40で必要な助燃料の量を大幅に削減することができる。よって、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。このようにして得られる炭化物6を石炭火力発電所(図示省略)での発電燃料として使用することで、化石燃料の使用量を本質的に低減することができるので、CO2排出量の削減を図ることができる。
【0041】
(第4の実施の形態)
図1から図3の各実施の形態はそれぞれ組み合わせることができ、メタン発酵槽と木質系バイオマス供給機とを備えた汚泥の炭化処理装置や、メタン発酵槽とガスエンジンとを備えた汚泥の炭化処理装置、木質系バイオマス供給機とガスエンジンとを備えた汚泥の炭化処理装置、メタン発酵槽と木質系バイオマス供給機とガスエンジンとを備えた汚泥の炭化処理装置とすることもできる。これにより、化石燃料の使用を極少量まで削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る汚泥の炭化処理装置の一実施の形態であって、メタン発酵槽を設けた場合を示す模式図である。
【図2】本発明に係る汚泥の炭化処理装置の一実施の形態であって、木質系バイオマス供給機を設けた場合を示す模式図である。
【図3】本発明に係る汚泥の炭化処理装置の一実施の形態であって、ガスエンジンを設けた場合を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1、2 下水汚泥
6、7 炭化物
10 脱水機
20 乾燥炉
30 炭化炉
32 サイクロン
40 燃焼炉
44 空気予熱器
45、49、72 ファン
47 熱交換器
48 排ガス処理装置
50 煙突
60 メタン発酵槽
63 固液分離機
70 ガスエンジン
80 木質系バイオマス供給機
82 粗破砕機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる炭化工程を含み、前記熱分解ガスを燃焼炉で燃焼させ、この燃焼で発生する燃焼排ガスを前記炭化処理の熱源として用いる汚泥の燃料化方法において、ガスエンジンを用いて発電を行う発電工程を更に含み、本方法にかかる電力の少なくとも一部を前記発電工程の発電を利用するとともに、前記燃焼炉に流入するガスを間接的に加熱する熱源として前記ガスエンジンの排ガスを用いることを特徴とする汚泥の燃料化方法。
【請求項2】
汚泥を嫌気性消化して消化ガスを生成させるメタン発酵工程を更に含み、前記消化ガスを燃焼させ、この燃焼で発生する燃焼排ガスを前記炭化処理の熱源として用いる請求項1に記載の汚泥の燃料化方法。
【請求項3】
前記メタン発酵工程で生成する消化汚泥を、前記炭化工程で炭化処理する請求項2に記載の汚泥の燃料化方法。
【請求項4】
前記汚泥に木質系バイオマスを加えて前記炭化処理を行う請求項1〜3のいずれか一項に記載の汚泥の燃料化方法。
【請求項5】
汚泥を炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる炭化炉と、該熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉と、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスを熱源として前記炭化炉に供給するラインとを含んでなる汚泥の燃料化装置において、本装置にかかる電力の少なくとも一部を発電するためのガスエンジンと、該ガスエンジンの排ガスで燃焼炉に流入するガスを間接的に加熱する熱交換器とを更に含んでなることを特徴とする汚泥の燃料化装置。
【請求項6】
汚泥を嫌気性消化して消化ガス及び消化汚泥を生成させるメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽から前記消化ガスを燃料として前記燃焼炉に供給するラインとを更に含む請求項5に記載の汚泥の燃料化装置。
【請求項7】
汚泥を脱水する脱水機と、脱水した汚泥を乾燥する乾燥炉と、該乾燥炉から乾燥させた汚泥を前記炭化炉に供給するラインと、前記メタン発酵槽から前記消化汚泥を前記脱水機に供給するラインとを更に含む請求項6に記載の汚泥の燃料化装置。
【請求項8】
前記炭化炉に木質系バイオマスを供給する木質系バイオマス供給機を更に含む請求項5〜7のいずれか一項に記載の汚泥の燃料化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−348302(P2006−348302A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206042(P2006−206042)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【分割の表示】特願2004−138273(P2004−138273)の分割
【原出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】