説明

沸騰冷却器

【課題】孔食の発生を抑制し、信頼性の向上した沸騰冷却器を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、沸騰冷却器は、冷媒38を収容した筐体36を有し、発熱体から受熱する受熱部32と、それぞれ筐体内の空間に連通した冷媒流路を内部に有し、互いに間隔を置いて並んで設けられた複数のコア部42と、それぞれ隣り合うコア部間にこれらのコア部に接触して設けられた複数の放熱フィン44と、隣り合う放熱フィンの間および前記隣り合うコア部間に規定され、外気が流れる通風路と、を備えている。放熱フィン44は、コア部42間を外気の流入側から流出側まで延びる平坦な平板状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、発熱体を冷却する沸騰冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道車両の電力変装置等に用いる大容量の発熱素子を冷却する冷却器として、沸騰冷却器が用いられている。一般に、沸騰冷却器は、発熱体に接触して設けられる蒸発部と、この蒸発部の上部に設けられた凝縮部と、を備えている。蒸発部は例えば、偏平な箱状に形成され、その内部に冷媒が封入されている。蒸発部の底面に冷却対象となる発熱体、例えば、大容量の半導体素子が取り付けられる。凝縮部は、蒸発部に連通する複数の冷媒流路を形成した複数のコア部と、これらのコア部に接触して設けられた放熱フィンと、を有している。蒸発部が半導体素子から受熱して蒸発部内の冷媒が加熱されると、蒸発した冷媒が冷媒流路を昇流する。同時に、ファン等によりコア部の間および放熱フィンに冷却風を流すことにより、冷媒流路内を流れる冷媒の蒸気が冷却され、凝縮した後、蒸発部に戻る。このような沸騰サイクルを繰り返すことにより、半導体素子が冷却される。
【0003】
冷却器の熱交換部分、特に、凝縮部は、放熱面積を大きくするために、コア部間に設けられた放熱フィンを通風方向に長くし、更に、ウェーブ構造としている。また、冷媒通路を形成しているコア部の壁あるいはプレートを薄くすることにより、冷却性能の向上を図っている。また、近年、沸騰冷却器の軽量化を図るため、コア部および放熱フィンをアルミニウム等の軽量金属により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−12926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道車両に用いられる上記のようなアルミニウム製の沸騰冷却器は、経年的な汚損等による腐食(孔食)により、リークが発生し冷却能力を失われ温度異常として装置故障が発生する場合がある。放熱フィンがウェーブ構造等の凹凸を有することより、特に、放熱フィンが水平方向に延びる構造の冷却器では、冷却風と共に飛来してくる水や塵埃に含まれる腐食生成物質が放熱フィンの凹所に滞留、蓄積し、コア部を構成するプレートに経年的な孔食を発生させ、冷媒リークを発生させる。これにより、沸騰冷却器の寿命および信頼性が低下する。
孔食の進行を抑制するために、コア部のアルミニウムに表面処理を施したり、コア部の壁を厚くすることも考えられるが、この場合、冷却器の製造コストが増加する。
【0006】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その課題は、孔食の発生を抑制し、信頼性の向上した沸騰冷却器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、沸騰冷却器は、冷媒を収容した筐体を有し、発熱体から受熱する受熱部と、それぞれ前記筐体内の空間に連通した冷媒流路を内部に有し、互いに間隔を置いて並んで設けられた複数のコア部と、それぞれ隣り合う前記コア部間にこれらのコア部に接触して設けられた複数の放熱フィンと、前記隣り合う放熱フィンの間および前記隣り合うコア部間に規定され、外気が流れる通風路と、を備え、前記放熱フィンは、前記コア部間を前記外気の流入側から流出側まで延びる平坦な平板状に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る沸騰冷却器を備えた鉄道車両を概略的に示す断面。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る沸騰冷却器の正面図。
【図3】図3は、図2の線A−Aに沿った前記沸騰冷却器の断面図。
【図4】図4は、前記沸騰冷却器を拡大して示す断面図。
【図5】図5は、前記沸騰冷却器のコア部および放熱フィンを拡大して示す断面図。
【図6】図6は、前記沸騰冷却器の凝縮部を示す斜視図。
【図7】図7は、第1変形例に係る沸騰冷却器の凝縮部を示す斜視図。
【図8】図8は、第2変形例に係る沸騰冷却器の凝縮部を示す斜視図。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る沸騰冷却器の断面図。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る沸騰冷却器の断面図。
【図11】図11は、第4の実施形態に係る沸騰冷却器の断面図。
【図12】図12は、第5の実施形態に係る沸騰冷却器の正面図。
【図13】図13は、図12の線B−Bに沿った前記沸騰冷却器の断面図。
【図14】図14は、第6の実施形態に係る沸騰冷却器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、種々の実施形態に係る沸騰冷却器について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る沸騰冷却器10が設置された鉄道車両を示す断面図である。図1に示すように、鉄道車両は、車輪12および車軸が設けられた図示しない台車と、台車上に支持された車体14と、を備えている。車輪12は軌道、すなわち、レール13上に載置され、台車に取り付けられた図示しない電動機によって車輪12を回転することにより、鉄道車両はレール13上を走行する。
【0010】
車体14の床下には、発熱体として、例えば、IGBT等のパワー半導体素子20を冷却する沸騰冷却器10、および沸騰冷却器10に冷却空気を供給するブロワー22が設けられている。ブロワー22の吸気側は、風道23を介して、車両側面に形成された吸気口24に連通している。ブロワー22の排気側は、風道26により沸騰冷却器10の流入側に接続されている。沸騰冷却器10の流出側は、風道28を介して、車両側面に形成された排気口30に連通している。ブロワー22を駆動することにより、吸気口24から外気が吸い込まれ、風道23、26を通して沸騰冷却器10の後述する凝縮部に供給される。そして、冷却空気は凝縮部を通過してこれを冷却した後、風道28を通して排気口30から外部に排気される。
【0011】
次に、沸騰冷却器10について詳細に説明する。
図2は沸騰冷却器10の正面図、図3は図2の線A−Aに沿った沸騰冷却器10の断面図、図4は沸騰冷却器10を拡大して示す断面図、図5は沸騰冷却器10のコア部および放熱フィンを拡大して示す断面図、図6は、沸騰冷却器10の凝縮部を示す斜視図である。
【0012】
図2、図3、および図4に示すように、沸騰冷却器10は、発熱体から受熱して冷媒を蒸発させる受熱部32と、この蒸発部上に設けられ、蒸発した冷媒を凝縮する凝縮部34と、を備えている。受熱部32は、例えば、偏平な箱状に形成さ筐体36を有し、この筐体の上板36aおよび下板36bがほぼ水平に位置するように配置されている。筐体36内には、冷媒38として、例えば、パーフルオロカーボンの作動液が封入されている。また、筐体36内には複数の仕切り壁40が立設され、筐体内部を複数の領域に仕切っている。各仕切り壁40は、上板36aおよび下板36b間を延び、筐体36を補強している。各仕切り壁40の下板36b側の端部には少なくとも1つの流通孔37が形成され、筐体36内の隣り合う領域は流通孔37を通して互いに連通している。
【0013】
冷却対象となるパワー半導体素子20は、筐体36の下板36b上に、直接、あるいは、図示しない回路基板を介して、載置されている。パワー半導体素子20で発生した熱は、受熱部32に受熱され、すなわち、パワー半導体素子20で発生した熱は、筐体36の下板36bを介して冷媒38に伝わり、この冷媒38を加熱、蒸発させる。これにより、パワー半導体素子20から熱が奪われて冷却される。
【0014】
図2ないし図6に示すように、蒸発した冷媒を凝縮する凝縮部34は、それぞれ筐体36の上板36a上に立設された複数のコア部42、および隣り合うコア部間に設けられた複数の放熱フィン44と、を備えている。各コア部42は、隙間おいて対向するそれぞれ矩形状の一対の主壁42aと、これら主壁の上縁および両側縁を密閉した側壁42bと、を有し、下端の開放した偏平な中空の平板状に形成されている。コア部42の内部空間により冷媒流路46が形成されている。各コア部42は、伝熱性が高く、かつ、軽量な材料、例えば、アルミニウムの板により形成されている。なお、冷媒との接触面積を増やすように、主壁42aの内面に複数のフィンあるいはリブを設けてもよく、また、主壁内面をエッチング等により粗く表面処理してもよい。
【0015】
各コア部42は、筐体36の上面にほぼ垂直に立設され、その下端が筐体36の上板36aに固定されている。複数のコア部42は、所定の間隔を置いて、互いにほぼ平行に対向するように並んで配設されている。コア部42の下端開口は、上板36aに形成された連通孔48を通して筐体36の内部空間に連通している。これにより、コア部42内の冷媒流路46は、筐体36の内部空間に気密に連通している。そして、筐体36の内部空間および冷媒流路46内は、真空に引かれ、この内部空間に冷媒38が封入されている。
【0016】
図2ないし図6に示すように、放熱フィン44は、隣り合うコア部42間に設けられ、これらコア部42に接触している。本実施形態において、例えば、アルミニウムの薄板を鉛直方向に沿って蛇腹状に折り曲げ、各折曲げ部を両側のコア部42の主壁42a外面に固定することにより、隣り合うコア部42間で、鉛直方向に隙間を置いて並んだ多数の放熱フィン44が形成されている。各放熱フィン44は、平坦な直線状に形成され、コア部42間をほぼ水平に延びている。各放熱フィン44の両側縁部が、例えば、ろう付けにより主壁42aの外面に固定されている。放熱フィン44と主壁42a表面との隙間は、ろう材により埋められている。
【0017】
放熱フィン44の下面、つまり、鉛直方向に関して、下側となる下面、には、複数の補強部材、例えば、補強バー50が固定されている。各補強バー50は、放熱フィン44の幅方向、ここでは、コア部42の主壁42aと直交する方向、に沿って延び、軸方向両端がそれぞれコア部42の主壁42aに当接して、あるいは、主壁42aの近傍に位置している。複数の補強バー50は、放熱フィン44の長手方向に所定の間隔を置いて設けられている。なお、補強部材は、補強バーに限らず、補強リブ等を放熱フィン44の下面に形成してもよい。いずれの場合でも、放熱フィン44の上面は、凹凸の無い、平坦な平面に形成される。上記のような補強部材を放熱フィン44の下面側に設けることにより、放熱フィン44を補強し、隣り合う2つのコア部42が互いに近づく方向の外力が作用した場合でも、放熱フィン44の幅方向の座屈等を防止することがでいる。また、放熱フィン44の間を流れる冷却風の流路に、補強バー50からなる凸部を設けることにより、冷却風に乱流を生じさせ易くすることが、この乱流の発生により、冷却効率を向上することができる。
【0018】
上記沸騰冷却器10によれば、パワー半導体素子20が動作し発熱すると、受熱部32がパワー半導体素子20から受熱して蒸発部内の冷媒38が加熱される。これにより、冷媒38が蒸発し、蒸発した冷媒は連通孔48を通ってコア部42内の冷媒流路46を昇流する。同時に、ブロワー22から冷却風が供給され、放熱フィン44の間を通して冷却風が流れる。そして、この冷却風により、放熱フィン44およびコア部42の主壁42aから放熱され、冷媒流路46内を流れる冷媒の蒸気が冷却され、凝縮する。凝縮した冷媒38は、冷媒流路46を通って受熱部32に戻る。このような冷媒の沸騰サイクルを繰り返すことにより、パワー半導体素子20が冷却される。
【0019】
以上のように構成された沸騰冷却器10によれば、放熱フィン44は、凹凸のない平坦な平板状に形成されていることから、放熱フィン44をほぼ水平に配置した場合でも、冷却風と共に飛来してくる水や塵埃に含まれる腐食生成物質が放熱フィン44の上面に滞留、蓄積することがなくなる。そのため、腐食生成物質に起因するコア部の孔食を抑制し、冷媒リークの発生を防止することができる。これにより、信頼性および寿命の向上した沸騰冷却器が得られる。
【0020】
また、放熱フィン44を平坦にした場合でも、補強部材によって放熱フィンを補強することにより、放熱フィンの強度を確保し、座屈等の発生を防止することができる。この際、補強部材は、鉛直方向に対して下向きである放熱フィンの下面に設けられていることから、補強部材の部分に腐食生成物質が滞留、蓄積することは防止される。補強部材を設けることにより、放熱フィンの間を流れる冷却風に乱流を発生し易くすることができ、冷却風による放熱フィンおよびコア部の冷却効率を向上することができる。
【0021】
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する種々の変形例において、上述した第1の実施形態と同一構成部分は、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0022】
(第1変形例)
図7は、第1変形例に係る沸騰冷却器の凝縮部34を示している。第1変形例によれば、凝縮部34の放熱フィン44は、例えばアルミミニウムの細長い矩形状の薄板を断面がクランク状となるように折り曲げて形成されている。すなわち、薄板の両側部44aは、互いに異なる方向にほぼ90度折曲げられ、薄板の両側部44a間に位置する中央部分により、平坦で直線状に延びる放熱フィン44を構成している。各側部44aには、それぞれ側縁に開口する複数の切欠き45が形成され、これらの切欠き45は、放熱フィン44の長手方向に間隔をおいて並んで設けられている。
【0023】
放熱フィン44は、隣り合う2つのコア部42間に配置され、両側部44aがコア部42の主壁42a外面にそれぞれ、例えば、ろう付けにより固定されている。放熱フィン44は、2つのコア部42間をほぼ水平に延びている。そして、コア部42間の全域に亘り、複数の放熱フィン44が、鉛直方向に隙間おいて重ねて配置されている。これにより、隣り合う放熱フィン44間に、冷却風が流れる通風路が形成されている。
【0024】
各放熱フィン44の下面、つまり、鉛直方向に関して、下向きとなる下面、には、複数の補強部材、例えば、補強バー50が固定されている。各補強バー50は、放熱フィン44の幅方向、ここでは、コア部42の主壁42aと直交する方向、に沿って延び、軸方向両端がそれぞれコア部42の主壁42aに当接して、あるいは、主壁42aの近傍に位置している。複数の補強バー50は、放熱フィン44の長手方向に所定の間隔を置いて設けられている。なお、補強部材は、補強バーに限らず、補強リブ等を放熱フィン44の下面に形成してもよい。
【0025】
上記のように構成された第1変形例に係る沸騰冷却器10によれば、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。放熱フィン44は、平板を折り曲げて形成され、かつ、複数の放熱フィンを積み重ねて配置した構成とすることにより、凝縮部34の製造、組立てを容易にすることができる。また、各放熱フィン44の側部45に切欠き45を設けることにより、コア部42の主壁40aと冷却風との接触を確保ことで、高い冷却性能を維持することができる。
【0026】
(第2変形例)
図8は、第2変形例に係る沸騰冷却器の凝縮部34を示している。第2変形例によれば、凝縮部34の放熱フィン44は、例えばアルミミニウムの細長い矩形状の薄板を断面がほぼU字状となるように折り曲げて形成されている。すなわち、薄板の両側部44aは、同一方向にほぼ90度折曲げられ、薄板の両側部44a間に位置する中央部分により、平坦で直線状に延びる放熱フィン44を構成している。各側部44aには、それぞれ側縁に開口する複数の切欠き45が形成され、これらの切欠き45は、放熱フィン44の長手方向に間隔をおいて並んで設けられている。
【0027】
放熱フィン44は、隣り合う2つのコア部42間に配置され、両側部44aがコア部42の主壁42a外面にそれぞれ、例えば、ろう付けにより固定されている。放熱フィン44は、2つのコア部42間をほぼ水平に延びている。そして、コア部42間の全域に亘り、複数の放熱フィン44が、鉛直方向に隙間おいて重ねて配置されている。これにより、隣り合う放熱フィン44間に、冷却風が流れる通風路が形成されている。
【0028】
各放熱フィン44の下面、つまり、鉛直方向に関して、下向きとなる下面、には、複数の補強部材、例えば、補強バー50が固定されている。各補強バー50は、放熱フィン44の幅方向、ここでは、コア部42の主壁42aと直交する方向、に沿って延び、軸方向両端がそれぞれコア部42の主壁42aに当接して、あるいは、主壁42aの近傍に位置している。複数の補強バー50は、放熱フィン44の長手方向に所定の間隔を置いて設けられている。なお、補強部材は、補強バーに限らず、補強リブ等を放熱フィン44の下面に形成してもよい。
【0029】
上記のように構成された第2変形例に係る沸騰冷却器10によれば、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。放熱フィン44は、平板を折り曲げて形成され、かつ、複数の放熱フィンを積み重ねて配置した構成とすることにより、凝縮部34の製造、組立てを容易にすることができる。また、各放熱フィン44の側部45に切欠き45を設けることにより、コア部42の主壁40aと冷却風との接触を確保ことで、高い冷却性能を維持することができる。
【0030】
次に、他の実施形態に係る沸騰冷却器について説明する。以下に説明する種々の実施形態において、上述した第1の実施形態と同一構成部分は、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0031】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る沸騰冷却器10の断面図である。第2の実施形態によれば、隣り合うコア部42間に配設された複数の放熱フィン44は、水平方向に対し傾斜して設けられている。各放熱フィン44は、平坦な直線状に形成され、冷却風の流入側よりも流出側が低くなるように、傾斜して延びている。また、複数の放熱フィン44は、所定の間隔を置いて、互いに平行に配置されている。各放熱フィン44の下面には、第1の実施形態と同様の補強部材が固定されている。
【0032】
以上のように構成された沸騰冷却器10によれば、放熱フィン44は、凹凸のない平坦な平板状に形成されていることから、冷却風と共に飛来してくる水や塵埃に含まれる腐食生成物質が放熱フィン44の上面に滞留、蓄積することがなくなる。更に、放熱フィン44を下流側に向かって下方に傾斜して配置することにより、腐食生成物質の放熱フィン44の上面への滞留、蓄積を一層低減することが可能となる。これにより、腐食生成物質に起因するコア部の孔食を抑制し、冷媒リークの発生を防止することができる。
【0033】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る沸騰冷却器10の断面図である。第3の実施形態によれば、隣り合うコア部42間に配設された複数の放熱フィン44は、それぞれ平坦な薄板で構成され、長手方向の中途部、例えば、ほぼ中央で折れ曲がり、V字状に形成されている。各放熱フィン44は、その長手方向の屈曲部が最も高く、屈曲部の一方側の部分が屈曲部から流入端まで水平方向に対し、下方に傾斜して延び、屈曲部の他方側の部分が屈曲部から流出端まで水平方向に対し、下方に傾斜して延びている。また、複数の放熱フィン44は、所定の間隔を置いて、互いに平行に配置されている。各放熱フィン44の下面には、第1の実施形態と同様の補強部材を取り付けてもよい。
【0034】
以上のように構成された沸騰冷却器10によれば、放熱フィン44は、凹凸のない平坦な平板状に形成されていることから、冷却風と共に飛来してくる水や塵埃に含まれる腐食生成物質が放熱フィン44の上面に滞留、蓄積することがなくなる。また、放熱フィン44は、その中央部から両側に向かって傾斜して延びていることから、隣り合う放熱フィン間を流れる冷却風に乱流を生じさせ易くすることができ、冷却効率の向上が可能となる。
【0035】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態に係る沸騰冷却器10の断面図である。第4の実施形態によれば、隣り合うコア部42間に配設された複数の放熱フィン44は、波状に湾曲されたウェーブ構造の平板で構成されている。また、複数の放熱フィン44は、水平方向に対し傾斜して設けられている。放熱フィン44の傾斜度合いは、放熱フィン44の波状の凹所の底から下流側に延びる斜面が、少なくとも水平になるか、あるいは、水平よりも鉛直方向下向きとなるように、設定されている。複数の放熱フィン44は、所定の間隔を置いて、互いに平行に配置されている。放熱フィン44を波状に形成されたウェーブ構造とした場合、放熱フィンの幅方向の強度が増加する。そのため、補強部材は省略してもよい。
【0036】
以上のように構成された沸騰冷却器10によれば、放熱フィン44は、波状のウェーブ構造を有しているにも拘わらず、放熱フィンを傾斜して配置することにより、冷却風と共に飛来してくる水や塵埃に含まれる腐食生成物質が放熱フィン44の凹所に滞留、蓄積することがなくなる。更に、放熱フィン44を下流側に向かって下方に傾斜して配置することにより、腐食生成物質の放熱フィン44の上面への滞留、蓄積を一層低減することが可能となる。これにより、腐食生成物質に起因するコア部の孔食を抑制し、冷媒リークの発生を防止することができる。
【0037】
(第5の実施形態)
図12および図13は、第5の実施形態に係る沸騰冷却器10を示している。第5の実施形態によれば、受熱部32の筐体36に複数の支持板54が設けられている。各支持板54は、筐体36の上板36aと下板36bとの間を延び、上板36aおよび下板36bに接合されている。複数の支持板54は、それぞれ発熱体である各パワー半導体素子20と重なる位置に設けられている。
【0038】
これらの支持板54を設けることにより、受熱部32の筐体36を補強することができるとともに、受熱部32における冷媒38との熱伝達面積を増大し、冷却性能の向上を図ることができる。沸騰冷却器10の他の構成は、前述した第1の実施形態と同一であり、その詳細な説明は省略する。
なお、筐体36内に設けられる支持部材は、支持板に限らず、スタッドのような支持ポストとしてもよい。
【0039】
(第6の実施形態)
図14は、第6の実施形態に係る沸騰冷却器10を示している。第6の実施形態によれば、凝縮部34を構成する複数のコア部42は、それぞれ受熱部32の筐体36と平行に、ここでは、水平に設けられている。複数のコア部42は、互いに、鉛直方向に間隔をおいて、積層されている。また、凝縮部34は、コア部42の両端側に鉛直方向に立設された1対の端コア部43を有し、これら端コア部43の下端は、筐体36の上板36aに固定されている。各端コア部43は、コア部42と同様に、例えば、アルミニウムの板により、下端が開口した偏平な箱状に形成されている。各端コア部43内に形成された冷媒流路58は、筐体36の内部空間に連通しているとともに、複数のコア部42内の冷媒流路46に連通している。
【0040】
上下に隣り合う2つのコア部42間に、複数の放熱フィン44が設けられ、コア部42の主壁42aの表面に接合されている。放熱フィン44は、例えば、アルミニウムの平坦な薄板により形成され、図14の紙面と直交する方向に直線状に延びている。放熱フィン44の平坦な表面は、2つのコア部42間を鉛直方向に沿って延在している。そして、複数の放熱フィン44は、互いに所定の隙間を置いて、水平方向に並んで設けられている。
【0041】
本実施形態において、水平に配設された各コア部42を構成する一対の主壁42aは、放熱フィン44の鉛直方向(重力方向)下方に位置する主壁42aの板厚T1を、鉛直方向上方に位置する主壁42aの板厚T2よりも厚く形成している。
【0042】
このように構成された沸騰冷却器10によれば、放熱フィン44は、凹凸のない平坦な平板状に形成されていることから、冷却風と共に飛来してくる水や塵埃に含まれる腐食生成物質が放熱フィン44の表面に滞留、蓄積し難くなる。そのため、腐食生成物質に起因するコア部の孔食を抑制し、冷媒リークの発生を防止することができる。また、コア部42を構成する主壁42aの内、放熱フィン44の下側、つまり、腐食生成物の滞留しやすい側に位置する主壁42aを厚くすることにより、腐食生成物への耐腐食性を向上することができる。
なお、第6の実施形態において、コア部42は、水平に設ける構成に限らず、水平方向に対し傾斜して配置してもよい。
【0043】
以上の詳述したように、第1の実施形態、第1、第2変形例、および第2ないし第6の実施形態によれば、孔食の発生を抑制し、信頼性および寿命の向上した沸騰冷却器を提供することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0045】
例えば、沸騰冷却器による冷却対象は、パワー半導体素子に限らず、他の種々の発熱体に適用することができる。受熱部を構成する筐体の形状は、実施形態に限定されることなく、種々変更可能である。使用する冷媒の種類は、適宜選択可能である。冷却器を構成する材料は、アルミニウムに限定されることなく、種々選択可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…沸騰冷却器、22…ブロワー、20…パワー半導体素子、32…受熱部、
36筐体、38…冷媒、42…コア部、42a…主壁、42b…側壁、
43…端コア部、44…放熱フィン、46…冷媒流路、50…補強バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を収容した筐体を有し、発熱体から受熱する受熱部と、
それぞれ前記筐体内の空間に連通した冷媒流路を内部に有し、互いに間隔を置いて並んで設けられた複数のコア部と、
それぞれ隣り合う前記コア部間にこれらのコア部に接触して設けられた複数の放熱フィンと、
前記隣り合う放熱フィンの間および前記隣り合うコア部間に規定され、外気が流れる通風路と、を備え、
前記放熱フィンは、前記コア部間を前記外気の流入側から流出側まで延びる平坦な平板状に形成されている沸騰冷却器。
【請求項2】
前記放熱フィンは、鉛直方向に上向きの平坦な上面と、鉛直方向に下向きの下面と、前記下面に固定され前記コア部間を延びる補強部材と、を備えている請求項1に記載の沸騰冷却器。
【請求項3】
前記放熱フィンは、水平方向に沿って配置されている請求項1又は2に記載の沸騰冷却器。
【請求項4】
前記放熱フィンは、水平方向に対し傾斜して配置されている請求項1又は2に記載の沸騰冷却器。
【請求項5】
前記放熱フィンは、中途部で屈曲し、この屈曲部の一方側部分は、屈曲部から前記外気の流入端まで水平方向に対し傾斜して延び、前記屈曲部の他方側部分は、屈曲部から前記外気の流出端まで水平方向に対し傾斜して延びている請求項1又は2に記載の沸騰冷却器。
【請求項6】
前記筐体は、前記発熱体と重なる位置で筐体内に設けられ、前記筐体を補強する複数の支持部材を備えている請求項1に記載の沸騰冷却器。
【請求項7】
前記各コア部は、それぞれ金属板で構成され互いに隙間を置いて対向する一対の主壁と、前記主壁の側縁を閉じる複数の側壁と、を有し、
前記コア部は、水平あるいは水平方向に対し傾斜して設けられ、
前記コア部の一対の主壁の内、前記放熱フィンの鉛直方向下方に位置する主壁は、他方の主壁よりも厚い板厚を有している請求項1に記載の沸騰冷却器。
【請求項8】
冷媒を収容した筐体を有し、発熱体から受熱する受熱部と、
それぞれ前記筐体内の空間に連通した冷媒流路を内部に有し、互いに間隔を置いて並んで設けられた複数のコア部と、
それぞれ隣り合う前記コア部間にこれらのコア部に接触して設けられた複数の放熱フィンと、
前記隣り合う放熱フィンの間および前記隣り合うコア部間に規定され、外気が流れる通風路と、を備え、
前記放熱フィンは、前記コア部間を前記外気の流入側から流出側まで延びる波状に湾曲した平板で形成され、前記放熱フィンの波状の凹所の底から下流側に延びる斜面が、少なくとも水平か、あるいは、水平よりも鉛直方向下向きとなるように、傾斜して配置されている沸騰冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−256760(P2012−256760A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129479(P2011−129479)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】