説明

油中水型乳化日焼け止め化粧料

【課題】幅広い紫外線領域に亘って極めて優れた紫外線防御促進効果(=紫外線吸収能のブースター効果)を有し、かつ、使用性(なめらか感、さらさら感、べたつかない等)に優れる、低粘度の油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供する。
【解決手段】(a)水溶性高分子を0.01〜10質量%、(b)紫外線吸収剤を0.01〜30質量%含有し、化粧料の粘度が10,000mPa・s(B型粘度計。30℃)以下であり、水相が45質量%以下である、油中水型乳化日焼け止め化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。さらに詳しくは、幅広い紫外線領域に亘って極めて優れた紫外線防御促進効果を有し、かつ使用性(なめらか感、さらさら感、べたつかない等)に優れる、低粘度の油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料による重要な紫外線吸収波長領域は、UV−A領域(320〜400nm)とUV−B領域(290〜320nm)である。従来、UV−A領域の紫外線は皮膚を黒化させるが、UV−B領域の紫外線のようにサンバーンを起こし、皮膚の老化を促進させるものではないと考えられていた。ところが近年になって、UV−B領域の紫外線が比較的、皮膚の表面部分にとどまるのに対して、UV−A領域の紫外線が、皮膚の深部にまで達し、皮膚の老化はもとより皮膚癌を誘発する原因となることがわかってきた。そのためUV−B領域、UV−A領域を含む幅広い紫外線領域に亘って紫外線防御効果を奏する日焼け止め化粧料が求められるようになってきた。
【0003】
特に近年の美白ブームもあり、最近は従来にもましてより一層紫外線防御効果に優れた日焼け止め化粧料が求められている。また優れた使用性(べたつかない等)も兼ね備えた製品がより好ましい。さらに、塗布時に伸びが重くならないよう低粘度のものが望まれている。
【0004】
本発明の日焼け止め化粧料に近い技術として、例えば以下の特許文献1〜3に記載の技術が挙げられる。
【0005】
すなわち特開2008−162930号公報(特許文献1)には、油溶性紫外線吸収剤、水溶性増粘剤(例えばアクリル系水溶性高分子等)、水溶性紫外線吸収剤、および特定の親水性非イオン性界面活性剤を含有する水中油型乳化日焼け止め化粧料が、みずみずしい使用性を損うことなく、紫外線防御能、安定性に優れるということが記載されている。この特許文献1に記載の日焼け止め化粧料は、水中油型乳化タイプのため使用性がみずみずしくてよい反面、油中水型乳化タイプに比べると耐水性が十分でないという点は否めない。
【0006】
特開2007−217379号公報(特許文献2)には、オクトクリレンと、疎水化処理を施した二酸化チタンおよび/または酸化亜鉛を油相(外相)に併用配合した油中水型乳化系の水相(内相)に、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を中和して塩として配合することによって、優れた紫外線遮断効果と経時での変臭防止・抑制効果を奏する油中水型乳化日焼け止め化粧料が記載されている。しかしこの特許文献2には、油中水型乳化日焼け止め化粧料において、紫外線吸収剤と水溶性高分子を併用することで紫外線吸収能を飛躍的に増大させる(=紫外線吸収能のブースター効果)ということについての記載・示唆はない。
【0007】
特開2007−291094号公報(特許文献3)には、表面が(ジメチコン/メチコン)コポリマーと有機チタネートおよび/またはトリアルコキシアルキルシランで被覆された表面処理酸化亜鉛を配合した油中水型乳化日焼け止め化粧料が、伸び広がりに優れ、経時での粉体の分散安定性、紫外線防御効果に優れることが記載されている。しかしこの特許文献3にも、油中水型乳化日焼け止め化粧料において、紫外線吸収剤と水溶性高分子を併用することで紫外線吸収能を飛躍的に増大させる(=紫外線吸収能のブースター効果)ということについての記載・示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−162930号公報
【特許文献2】特開2007−217379号公報
【特許文献3】特開2007−291094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、幅広い紫外線領域に亘って極めて優れた紫外線防御促進効果を有し、かつ使用性(なめらか感、さらさら感、べたつかない等)に優れる、低粘度の油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来、油中水型乳化系においては、分散相である水相に水溶性高分子などの分子量の大きな水性成分を配合すると、使用性の点において水溶性高分子に由来するべたつきを生じやすいという懸念や、系の安定性(バランス)等の点から、水相に水溶性高分子を積極的に配合することは通常行われていなかった。
【0011】
しかるに今回、本発明者らが上記従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、紫外線吸収剤を配合した油中水型乳化日焼け止め化粧料の系において、水相に水溶性高分子を配合したところ、驚くべきことに、広い紫外線領域に亘って紫外線吸収能が格段に増大し(=紫外線吸収能のブースター効果)、かつ使用性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、(a)水溶性高分子を0.01〜10質量%、(b)紫外線吸収剤を0.01〜30質量%含有し、化粧料の粘度が10,000mPa・s(B型粘度計。30℃)以下であり、水相が45質量%以下である、油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供する。
【0013】
また本発明は、(a)成分が植物系水溶性高分子、微生物系水溶性高分子の中から選ばれる1種または2種以上である、上記油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供する。
【0014】
また本発明は、(a)成分が寒天および/またはサクシノグリカンである、上記油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供する。
【0015】
また本発明は、使用時に振盪させて用いる二層分散型の化粧料である、上記油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、幅広い紫外線領域に亘って極めて優れた紫外線防促進効果(=紫外線吸収能のブースター効果)を有し、かつ使用性(なめらか感、さらさら感、べたつかない等)に優れる、低粘度の油中水型乳化日焼け止め化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料について詳述する。
【0018】
(a)成分としての水溶性高分子は、特に限定されるものでなく、例えば、天然の水溶性高分子、半合成水溶性高分子、合成高分子、無機の水溶性高分子等が挙げられる。
【0019】
天然の水溶性高分子としては、アラアビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリントガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系水溶性高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグリカン、ブルラン等の微生物系水溶性高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系水溶性高分子などが例示される。
【0020】
半合成水溶性高分子としては、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系水溶性高分子;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系水溶性高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系水溶性高分子などが例示される。
【0021】
合成水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)等のビニル系水溶性高分子;ポリエチレングリコール20,000、同4,000,000、同600,000等のポリオキシエチレン系水溶性高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等の共重合系水溶性高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系水溶性高分子のほか、ポリエチレンイミン、カチオンポリマーなどが例示される。
【0022】
無機の水溶性高分子としては、ベントナイト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸などが例示される。
【0023】
(a)成分は1種または2種以上を用いることができる。本発明では中でも、紫外線防御向上効果の点から、天然の水溶性高分子が好適に用いられ、植物系水溶性高分子、微生物系水溶性高分子が好ましく用いられる。中でも寒天、サクシノグリカンが特に好ましく用いられる。
【0024】
(a)成分の配合量は、本発明化粧料中、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。0.01質量%未満では紫外線防御向上効果を得るのが難しく、一方、10質量%を超えて配合すると使用性、製剤の安定性が損なわれるおそれがある。
【0025】
(b)成分としての紫外線吸収剤は、化粧料に配合され得るものであれば特に限定されるものでなく、油溶性、水溶性のいずれのものも用いることができる。
【0026】
油溶性紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート〔=2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート〕、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート、3,4,5−トリメトキシケイ皮酸3−メチル−4−[メチルビス(トリメチルシリキシ)シリル]ブチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、オクトクリレン〔=2−シアノ−3,3−ジフェニル−2−プロペン酸−2−エチルヘキシルエステル〕、ポリシリコン−15〔=ジメチコジエチルベンザルマロネート〕等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。中でも安息香酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、オクトクリレン、ポリシリコン−15等が、(a)成分との併用による紫外線防御能促進の点から好ましく用いられる。
【0027】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸およびその塩、フェニレン−ビス−ベンゾイミダゾール−テトラスルホン酸およびその塩等のベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤;メチレンビス−ベンゾトリアゾリル−テトラメチルブチルフェノール等ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。中でもベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が、(a)成分との併用による紫外線防御能促進の点から好ましく用いられる。
【0028】
(b)成分の配合量は、本発明化粧料中、0.01〜30質量%であり、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。0.01質量%未満では十分な紫外線防御能を得ることが難しく、一方、30質量%を超えて配合すると使用性、製剤の安定性、安全性が損なわれるおそれがある。(b)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は(a)成分と(b)成分を含有するが、従来、使用性(べたつきなど)等の点から油中水型乳化系に(a)成分を積極的に配合することは行われていなかった。本発明では、油中水型乳化系において、(b)成分に(a)成分を組合せ配合することで、(b)成分のもつ紫外線吸収能がより一層促進される(=紫外線吸収能のブースター効果)という、従来予測されていなかった極めて優れた効果を奏する。これにより、(b)成分が従来に比べ比較的低配合であっても、従来の(b)成分高配合レベルより格段に優れた紫外線防御効果が得られた。また、油中水型乳化系にありがちな塗布時の油っぽさやべたつき感等の使用性を改善することができた。すなわち紫外線防御効果の格段の向上と使用性の両立を図ることができた。
【0030】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料にはさらに、耐水性向上等の点から、疎水性粉末を配合してもよい。疎水性粉末は、粉末自体が疎水性のもののみならず、親水性粉末等であっても粉末表面を疎水化処理した疎水化処理粉末も含む。
【0031】
疎水性の粉末としては、具体的には、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末などの有機粉末や、トリメチルシルセスキオキサン粉末などのシリコーン粉末等が例示される。
【0032】
疎水化処理粉末の粉末成分としては、例えばタルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素等の無機粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック、低次二酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、バルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;二酸化チタンコーテッドマイカ、二酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、二酸化チタンコーテッドタルク、着色二酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料等が挙げられる。本発明ではこれら粉末成分を疎水化処理したものが用いられる。
【0033】
疎水化処理方法としては、撥水性を付与できる方法であればいかなるものでもよく、その方法は問わないが、例えば気相法、液相法、オートクレーブ法、メカノケミカル法等、通常の表面処理方法を用いることができる。
【0034】
例えば疎水化処理剤を原料粉末に添加して処理を行う場合、適当な溶媒(ジクロルメタン、クロロホルム、ヘキサン、エタノール、キシレン、揮発性シリコーン等)に希釈して添加してもよく、あるいは直接添加してもよい。粉末と処理剤の混合攪拌には、ボールミル、ホジャーサイトボールミル、振動ボールミル、アトライター、ポットミル、ロッドミル、パンミル、ホモミキサー、ホモディスパー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等も使用することができる。この他にも、粉末表面の活性を利用し、気相反応により100℃以下の低温で環状オルガノシロキサンを粉末表面上で重合させる方法(特公平1−54380号)や、前記方法の後に表面のシリコーンポリマーのSi−H部分にグリセロールモノアリルエーテル等のペンダント基を付加させる方法(特公平1−54381号)等も用いることができる。
【0035】
疎水化処理として、具体的には、例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類を用いた処理;オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等のシラン化合物を用いた処理;パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸を用いた処理;前記脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等を用いた金属セッケン処理;パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、パーフルオロアルキルトリメトキシシラン等を用いたフッ素処理等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0036】
疎水性粉末は撥水性が強く、実際に乳化物に適用した場合も、水や汗に強く、化粧くずれが最も起きにくいため効果の持続性に優れる。また乳化粒子が緻密で長期安定性も最も優れている。
【0037】
これら疎水性粉末は1種を用いてもよく、あるいは2種以上を用いてもよい。また、一般の化粧品に適用できる疎水性粉末であればよく、上記例示の成分に限定されるものではない。本発明では、紫外線防御の点から、疎水化処理を施した二酸化チタン、酸化亜鉛等が好適例として挙げられる。疎水化処理を施した二酸化チタンとしては、例えば「TTO−S−4」、「TTO−V−4」(いずれも石原産業(株)製)、「MT−100TV」、「MT−014V」(いずれもテイカ(株)製)等が市販品として挙げられ、また、疎水化処理を施した酸化亜鉛としては、例えば「FZO−50」(石原産業(株)製)、「MZ−700」(テイカ(株)製)、「Z−Cote HP−1」(バスフ(BASF)社製)等が市販品として挙げられる。
【0038】
疎水性粉末を配合する場合、その配合量は本発明化粧料中に0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは1〜30質量%であり、特に好ましくは3〜20質量%である。配合量が0.1質量%未満では疎水性粉末を配合した効果を十分に上げることが難しく、一方、50質量%超では、使用性、製剤の安定性が損なわれるおそれがある。
【0039】
本発明油中水型乳化日焼け止め化粧料は、粘度が10,000mPa・s(30℃、B型粘度計)以下の低粘度であり、好ましくは6,000mPa・s以下である。粘度が10,000mPa・s超では粘度が高すぎ、塗布時の伸びが重くなり、良好な操作感が得られない。
【0040】
本発明油中水型乳化日焼け止め化粧料の剤型は、クリーム状、液状等、特に限定されるものでないが、本発明では特に静置時には二層に分かれ、使用時に振盪して用いる二層分散型のものが好ましい。このような低粘度の乳化系においては、特に水相に分子量の大きい水溶性高分子を積極的に配合することは従来なかった。
【0041】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、常法により調製することができ、乳化の方法は特に限定されるものでない。例えば、水相と油相を、それぞれ70℃程度に加温し、加温した水相を油相に徐々に添加して、乳化機で乳化し、その後、室温まで放冷する等の方法が挙げられるが、これに限定されるものでない。本発明では水相を化粧料全量に対して45質量%以下の割合で配合する。水相が45質量%超では化粧料の粘度が高くなりがちである。
【0042】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内で通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意添加成分、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級アルコール、高級脂肪酸、合成エステル油、界面活性剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、粉末成分、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0043】
また有機変性粘土鉱物を配合してもよい。有機変性粘土鉱物としては、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト(=クオタニウム−18ヘクトライト)、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト(=クオタニウム−18ベントナイト)、ベンジルジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトや、ジオクタデシルジメチルアンモニウム塩変性モンモリロナイト、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩変性モンモリロナイト、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム塩変性モンモリロナイト等が挙げられる。有機変性粘土鉱物を配合する場合、配合量は化粧料中に1質量%以下とするのが好ましい。
【0044】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、配合量はすべて質量%で示す。
【0046】
1.紫外線防御促進効果、粘度
(実施例1〜8、対照例1〜8)
紫外線吸収剤に水溶性高分子を組合せることによる紫外線吸収能増大効果(=紫外線吸収能のブースター効果)について、下記表2〜3に示す組成の低粘度の試料を用いて試験を行い、評価した。なお表2〜3中、「対照例」は紫外線吸収剤を含むが水溶性高分子を含まない系であり、「実施例」は紫外線吸収剤と水溶性高分子を併用した系である。
【0047】
<紫外線防御促進効果>
(試験方法)
各試料を塗布用基板上に2mg/cm2の割合で塗布し、分光光度計(「U−4100」;(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、試料中に含まれる各紫外線吸収剤の紫外線吸収スペクトルの極大吸収波長(λmax)(nm)における紫外線吸光度(abs.)を測定した。測定値を表2〜3に示す。紫外線吸光度の値が大きいほど紫外線防御効果に優れる。試料中に含まれる各紫外線吸収剤のλmax(nm)は下記表1に示すとおりである。
【0048】
【表1】

【0049】
(紫外線吸収能増加率)
各対照例に対する各実施例での紫外線吸光度(abs.)の増加率を、測定値から算出した。実施例、対照例とも同じ紫外線吸収剤を用いたもの同士で対比した。結果を表2〜3に示す。
(紫外線防御効果)
各実施例における上記紫外線吸収能増加率から、紫外線防御効果を下記基準により評価した。
++:紫外線吸収能増加率が対照例に比べ20%超高くなった
+:紫外線吸収能増加率が対照例に比べ10%超〜20%高くなった
A:紫外線吸収能増加率が対照例に比べ5%超〜10%高くなった
B:紫外線吸収能増加率が対照例に比べ0%超〜5%高くなった
C:紫外線吸収能増加率が対照例と同じか、あるいは対照例に比べ低下した。
【0050】
<粘度>
調製後の各試料を振盪したときの粘度を、B型粘度計〔「ビスメトロン粘度計」(芝浦システム(株)製)、回転数12rpm〕を用いて、30℃にて測定した。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
なお表2〜3中、以下に示す化合物は下記製品を用いた。
【0054】
ジメチコジエチルベンザルマロネート(*1):「パルソールSLX」(DSMニュートリションジャパン(株)製)、
フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(*2):「オーソレックス232」(メルク社製)、
フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム(*3):「ネオヘリパンAP」(ハーマン・アンド・レイマー社製)、
メチレンビス−ベンゾトリアゾリル−テトラメチルブチルフェノール(*4):「チノソーブM」(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)。
【0055】
表2〜3の結果から明らかなように、UV−A領域(320〜400nm)、UV−B領域(290〜320nm)のいずれの紫外線吸収波長領域をもつ紫外線吸収剤を用いた場合でも、紫外線吸収剤に水溶性高分子を併用することで、紫外線吸収剤を単独配合した場合に比べ、紫外線防御促進効果が奏されることが確認された。
【0056】
2.使用性
(実施例9、対照例9)
下記表4に示す実施例9(寒天配合処方)、対照例9(寒天配合なし)の使用性を女性パネル(10名)に使用してもらい比較評価した。
【0057】
各評価項目について、対照例9よりも実施例9の使用性が改善されているかどうか下記評価基準により評価した。結果を表5に示す。なお対照例9に比べ実施例9の使用性が低下したという評価はなかった。
(評価基準)
+:10名中7名以上が改善されていると回答
A:10名中5名以上が改善されていると回答
B:10名中3名以上が改善されていると回答
C:10名中2名以下が改善されていると回答
【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
表5に示す結果から明らかなように、寒天(水溶性高分子)を配合した実施例9では、寒天を配合しない対照例9に対し使用性が改善されたことが確認された。
【0061】
以下にさらに処方例を示す。
【0062】
(実施例10:油中水型乳化日焼け止め乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 15
(2)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 1
(3)オレフィンオリゴマー 10
(4)ジメチルポリシロキサン 2
(5)香料 適量
(6)トリス(ポリプロピレングリコール−3 ベンジルエーテル)
クエン酸 5
(7)セバシン酸ジイソプロピル 5
(8)4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 2.5
(9)有機変性粘土鉱物 0.1
(10)疎水化処理(シラン処理)・カチオン処理酸化亜鉛 15
(11)球状樹脂微粒子粉末(「ガンツパール」;ガンツ化成社製) 3
(12)イオン交換水 残余
(13)グリセリン 3
(14)寒天 1
(15)エデト酸塩 適量
(16)フェノキシエタノール 0.5
(製造方法)
(7)、(8)を80℃で混合溶解し、(1)〜(6)の油相に添加する。次に、(9)〜(11)を加え、ディスパーで分散混合する。(12)〜(16)を95℃で混合加熱溶解してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、十分均一に混合した後、25℃まで急冷して目的の日焼け止め乳液を得る。
【0063】
(実施例11:油中水型乳化日焼け止め乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)トリメチルシロキシケイ酸 0.2
(2)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 1.5
(3)軽質イソパラフィン 15
(4)テトライソブタン 15
(5)ジメチルポリシロキサン 3
(6)香料 適量
(7)2−エチルヘキサン酸 2−エチルヘキシル 2
(8)オクチルメトキシシンナメート 5
(9)オクトクリレン 2
(10)疎水化処理(シラン処理)・カチオン処理酸化亜鉛 18
(11)架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体 2
(12)イオン交換水 残余
(13)グリセリン 3
(14)寒天 0.5
(15)エデト酸塩 適量
(16)フェノキシエタノール 0.3
(製造方法)
(1)〜(11)をディスパーで分散混合する。(12)〜(16)を95℃で混合加熱溶解してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、十分均一に混合した後、25℃まで急冷して目的の日焼け止め乳液を得る。
【0064】
(実施例12:油中水型乳化日焼け止め乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)トリメチルシロキシケイ酸 0.2
(2)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 1.5
(3)シクロメチコン 30
(4)ジメチルポリシロキサン 3
(5)香料 適量
(6)2−エチルヘキサン酸 2−エチルヘキシル 2
(7)オクチルメトキシシンナメート 5
(8)オクトクリレン 2
(9)疎水化処理(シラン処理)・カチオン処理酸化亜鉛 18
(10)架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体 2
(11)イオン交換水 残余
(12)グリセリン 2
(13)サクシノグリカン 0.5
(14)エデト酸塩 適量
(15)フェノキシエタノール 0.3
(製造方法)
(1)〜(10)をディスパーで分散混合する。(11)〜(15)を混合溶解してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加して目的の日焼け止め乳液を得る。
【0065】
(実施例13:多相日焼け止め乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.5
(2)イソステアリン酸 0.2
(3)セバシン酸ジイソプロピル 5
(4)4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシ
ジベンゾイルメタン 2
(5)トリス(ポリプロピレングリコール−3 ベンジルエーテル)
クエン酸 5
(6)デカメチルシクロペンタシロキサン 25
(7)ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール 2
(8)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
(9)疎水化処理酸化亜鉛 10
(10)シリコーン樹脂微粒子粉末 2
(「トスパール2000B」;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
(11)クエン酸 0.04
(12)クエン酸ナトリウム 0.06
(13)ジプロピレングリコール 2
(14)メチルグルコース 1
(15)ダイナマイトグリセリン 1
(16)食塩 0.1
(17)サクシノグリカン 0.5
(18)フェノキシエタノール 適量
(19)イオン交換水 残余
(製造方法)
(1)〜(4)の油相を(11)〜(19)の水相に徐々に添加してO/W製剤を得た。この製剤を(5)〜(10)の油相中に徐々に添加後、ホモミキサーで攪拌を行い目的のサンプルを得る。
【0066】
(実施例14:油中水型乳化ファンデーション)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 10
(2)ドデカメチルシクロヘキサシロキサン 20
(3)トリメチルシロキシケイ酸 1
(4)ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチル
ポリシロキサン共重合体 3
(5)オクチルメトキシシンナメート 5
(6)イソステアリン酸 0.5
(7)アルキル変性シリコーン樹脂被覆二酸化チタン 10
(8)パルミチン酸デキストリン被覆二酸化チタン 5
(9)パルミチン酸デキストリン被覆タルク 5
(10)針状微粒子二酸化チタン 1
(11)パルミチン酸デキストリン被覆ベンガラ 0.5
(12)パルミチン酸デキストリン被覆黄酸化鉄 1.6
(13)パルミチン酸デキストリン被覆黒酸化鉄 0.1
(14)球状無水ケイ酸 5
(15)無水ケイ酸被覆マイカ 1
(16)クエン酸ナトリウム 適量
(17)クララエキス 1
(18)寒天 0.5
(19)精製水 残余
(製造方法)
(1)〜(6)をディスパーで混合した油相へ、(7)〜(13)をディスパーで分散混合する。(14)〜(19)を95℃で混合加熱溶解してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、十分均一に混合した後、25℃まで急冷して目的の乳化ファンデーションを得る。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の低粘度の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、幅広い紫外線領域に亘って極めて優れた紫外線防御促進効果を有し、かつ使用性(なめらか感、さらさら感、べたつかない等)に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水溶性高分子を0.01〜10質量%、(b)紫外線吸収剤を0.01〜30質量%含有し、化粧料の粘度が10,000mPa・s(30℃、B型粘度計)以下であり、水相が45質量%以下である、油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項2】
(a)成分が植物系水溶性高分子、微生物系水溶性高分子の中から選ばれる1種または2種以上である、請求項1記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項3】
(a)成分が寒天および/またはサクシノグリカンである、請求項1または2記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項4】
使用時に振盪させて用いる二層分散型の化粧料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。

【公開番号】特開2010−195773(P2010−195773A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12834(P2010−12834)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】