説明

油圧パワーステアリング装置

【課題】操舵補助装置に供給される作動油の量を正確に制御することに貢献する油圧パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】油圧パワーステアリング装置1は、パワーシリンダー20と、パワーシリンダー20に供給される作動油の流れを制御するロータリーバルブ70(以下、「バルブ70」)と、バルブ70を駆動する電動モーター50と、電動ポンプ24とバルブ70とを接続するポンプ吐出油路92と、パワーシリンダー20とバルブ70とを接続する各供給油路93,94と、電動モーター50を制御する制御部30とを有する。油圧パワーステアリング装置1は、シャフト42の回転角度を検出する回転角センサ60を有し、バルブ70は、電動モーター50のシャフト42と一体的に回転する弁体と、各油路92〜94と接続される空間を内部に有するハウジングとを有し、制御部30は、電動モーター50の制御に回転角センサ60の出力を反映する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルポンプと、オイルポンプから供給される作動油により動作する操舵補助装置と、オイルポンプから操舵補助装置に供給される作動油の流れを制御する流量制御弁と、流量制御弁を駆動する電動モーターと、オイルポンプと流量制御弁とを互いに接続する第1油路と、操舵補助装置と流量制御弁とを互いに接続する第2油路と、電動モーターを制御する制御部とを有する油圧パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のパワーステアリング装置は、筒型のバルブボディーと、バルブボディーに回転力を加えるモーターと、操舵制御部とを有し、操舵部材に加えられる操舵トルクを検出し、この検出結果に基づいて動作する油圧制御弁により操舵補助用のパワーシリンダーの作動油圧を給排制御する。アクチュエータは、操舵トルクの検出結果に基づいて駆動される。操舵制御部は、トルクセンサから得られる操舵トルクの検出値に基づいて、操舵補助力の発生に必要なモーターの回転力を求めて、この回転力に対応する電流をモーターに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操舵補助装置は、流量制御弁を介して供給される作動油の量に応じて、転舵シャフトに力を付与する。このため、ステアリングホイールの操作を適切にアシストするためには、作動油の供給量を正確に制御することが好ましい。しかし、特許文献1は、作動油の供給量を正確に制御することについて特に言及していない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、操舵補助装置に供給される作動油の量を正確に制御することに貢献する油圧パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、オイルポンプと、前記オイルポンプから供給される作動油により動作する操舵補助装置と、前記オイルポンプから前記操舵補助装置に供給される作動油の流れを制御する流量制御弁と、前記流量制御弁を駆動する電動モーターと、前記オイルポンプと前記流量制御弁とを互いに接続する第1油路と、前記操舵補助装置と前記流量制御弁とを互いに接続する第2油路と、前記電動モーターを制御する制御部とを有する油圧パワーステアリング装置において、前記流量制御弁は、前記電動モーターの出力軸と一体的に回転する回転弁と、前記第1油路および前記第2油路と接続される空間を内部に有する弁筐体とを有し、前記油圧パワーステアリング装置は、前記電動モーターの出力軸の回転角度を検出する回転角センサを有し、前記制御部は、前記電動モーターの制御に前記回転角センサの出力を反映することを要旨とする。
【0007】
この発明によれば、流量制御弁の回転弁が電動モーターの出力軸と一体的に回転して、回転角センサが電動モーターの出力軸の回転角度を検出する。そして、制御部が電動モーターの制御に回転角センサの出力を反映するため、流量制御弁の回転弁の角度制御を精度良く行うことができ、作動油の供給量を正確に制御することができる。
【0008】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、請求項1に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記回転角センサは、前記電動モーターの出力軸と一体的に回転する第1センサ要素と、前記弁筐体のうちの前記第1センサ要素に対応する箇所に取り付けられる第2センサ要素とを有し、前記電動モーターは、前記弁筐体に取り付けられるステーターと、前記電動モーターの出力軸のうちの前記ステーターと対応する位置に取り付けられるローターとを有することを要旨とする。
【0009】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、請求項2に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記電動モーターの出力軸は、同出力軸の軸方向に沿って、前記回転弁、前記第1センサ要素、および前記ローターの順、または前記第1センサ要素、前記回転弁、および前記ローターの順に、前記回転弁、前記第1センサ要素、および前記ローターを有することを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、電動モーターの出力軸の軸方向に沿って、回転弁、ローター、第1センサ要素の順に回転弁、第1センサ要素、およびローターを電動モーターの出力軸が有する構成に比べて、回転角センサが回転弁の近傍に位置するため、流量制御弁の回転弁の回転角度を精度良く検出することができる。
【0011】
(4)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、請求項2に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記電動モーターの出力軸は、同出力軸の軸方向に沿って、前記回転弁、前記第1センサ要素、および前記ローターの順、または前記回転弁、前記ローター、および前記第1センサの順に、前記回転弁、前記第1センサ要素、および前記ローターを有し、前記弁筐体は、前記回転弁を収容する第1収容室と、前記第1センサ要素および前記ローターを収容する第2収容室と、前記第1収容室および前記第2収容室を区画するオイルシールとを有することを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、電動モーターの出力軸が、同出力軸の軸方向に沿って、前記第1センサ、前記回転弁、および前記ローターの順に、前記回転弁、前記第1センサ要素、および前記ローターを有する構成に比べて、弁筐体が有する第1収容室と第2収容室とを1つのオイルシールが区画することができる。そして、オイルシールにより、回転弁を収容する第1収容室に流入した作動油が、第1センサ要素およびローターを収容する第2収容室に流入することを抑制することができる。
【0013】
(5)第5の手段は、請求項5に記載の発明すなわち、請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記回転角センサによる前記回転角度の検出可能範囲が360°未満であることを要旨とする。
【0014】
(6)第6の手段は、請求項6に記載の発明すなわち、請求項1〜5のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記電動モーターが有する前記出力軸の回転可能範囲が360°未満であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、操舵補助装置に供給される作動油の量を正確に制御することに貢献する油圧パワーステアリング装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の油圧パワーステアリング装置について、その全体構成を模式的に示す構成図。
【図2】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、回転中心軸を通過する平面における電動バルブ装置の断面構造を示す構成図。
【図3】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、回転中心軸に直交する平面における電動バルブ装置の断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、回転中心軸に直交する平面における電動バルブ装置の断面構造を示す断面図であり、(a)はローターの回転位置が第1回転位置のときの断面図、(b)はローターの回転位置が第2回転位置のときの断面図。
【図5】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、回転角センサの集磁リングの斜視構造を示す斜視図。
【図6】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、回転角センサのヨークリングの斜視構造を示す斜視図。
【図7】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、回転角センサの永久磁石の斜視構造を示す斜視図。
【図8】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、ローターの回転位置が回転中立位置のときのヨークリングおよび永久磁石の位置関係を示す展開図。
【図9】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、ローターの回転位置が第1回転位置のときのヨークリングおよび永久磁石の位置関係を示す展開図。
【図10】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、ローターの回転位置が第2回転位置のときのヨークリングおよび永久磁石の位置関係を示す展開図。
【図11】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、図2のA−A平面における電動バルブ装置の断面構造を示す断面図であり、ローターの回転位置が回転中立位置のときの断面図。
【図12】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、図2のA−A平面における電動バルブ装置の断面構造を示す断面図であり、ローターの回転位置が第1回転位置のときの断面図。
【図13】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、図2のA−A平面における電動バルブ装置の断面構造を示す断面図であり、ローターの回転位置が第2回転位置のときの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、油圧パワーステアリング装置1の構成について説明する。
油圧パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール2の操作を転舵輪4に伝達するステアリング装置10と、ステアリングホイール2の操作に必要な力を補助するアシスト装置20と、アシスト装置20を制御する制御部30とを有する。
【0018】
ステアリング装置10は、ステアリングホイール2とともに回転するステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転を直線の運動に変換するラックアンドピニオン機構12と、ラックアンドピニオン機構12の動作にともない軸方向に移動する転舵シャフト13とを備える。
【0019】
集積回路を含むECU(Electronic Control Unit)である制御部30は、トルクセンサ14、操舵角センサ15、および車速センサ5の出力に基づいて、アシスト装置20の電動ポンプ24および電動バルブ装置40を制御する。
【0020】
トルクセンサ14は、ステアリングシャフト11に付与された操舵トルクに応じた信号を制御部30に出力する。操舵角センサ15は、ステアリングシャフト11の回転角度、すなわち操舵角に応じた信号を制御部30に出力する。車速センサ5は、転舵輪4の回転速度、すなわち車速に応じた信号を制御部30に出力する。
【0021】
油圧パワーステアリング装置1は次のように動作する。
運転者がステアリングホイール2を操作したとき、ステアリングシャフト11がステアリングホイール2とともに回転する。ラックアンドピニオン機構12は、ステアリングシャフト11の回転運動を転舵シャフト13の軸方向の直線運動に変換する。したがって、転舵シャフト13は、ラックアンドピニオン機構12から伝達される力により軸方向に移動する。そして、転舵シャフト13の軸方向への移動にともないタイロッド3が転舵輪4の舵角を変更する。
【0022】
また、運転者がステアリングホイール2を操作するとき、アシスト装置20が転舵シャフト13に軸方向の力を付与する。これにより、転舵シャフト13を軸方向に移動させるためにステアリングホイール2の操作に要求される力が小さくなる。すなわち、アシスト装置20が、ステアリングホイール2の操作に必要となる力をアシストする。
【0023】
アシスト装置20の構成について説明する。
アシスト装置20は、転舵シャフト13に油圧を付与するパワーシリンダー21と、パワーシリンダー21に作動油を供給する電動ポンプ24と、パワーシリンダー21への作動油の流れを制御する電動バルブ装置40と、作動油を貯留する貯留部27とを備える。なお、パワーシリンダー21は「操舵補助装置」に相当する。また、電動ポンプ24は「オイルポンプ」に相当する。
【0024】
パワーシリンダー21は、転舵シャフト13が挿入されるハウジング22と、転舵シャフト13に固定されるピストン23とを有する。ピストン23は、ハウジング22内の空間を第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bに区画する。
【0025】
電動ポンプ24には、電動モーター25と、電動モーター25の出力軸に連結される羽根車(図示略)を備えたポンプ26とを有する。電動モーター25としては3相ブラシレスモーターが用いられる。電動モーター25がポンプ26を駆動することにより、電動ポンプ24は、貯留部27から電動バルブ装置40を介してパワーシリンダー21に作動油を送り出す。
【0026】
電動バルブ装置40は、電動モーター50と、電動モーター50の回転角度を検出する回転角センサ60と、ロータリーバルブ70とを有する。なお、ロータリーバルブ70は「流量制御弁」に相当する。
【0027】
電動モーター50がロータリーバルブ70を駆動することにより、電動バルブ装置40は、パワーシリンダー21に対する作動油の給排態様を制御する。電動バルブ装置40による作動油の給排態様の制御は、次の4つの制御を含む。
(a)第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bのうち一方を作動油供給先として、この作動油供給先へ流れる作動油の流量の制御。
(b)第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bのうち他方(すなわち、作動油供給先と異なる方)を作動油排出元として、この作動油排出元から流れる作動油の流量の制御。
(c)第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bのうち一方である作動油供給先と、他方である作動油排出元とを切り替える制御。
【0028】
貯留部27は、パワーシリンダー21から電動バルブ装置40を介して排出される作動油を貯留するオイルタンクを有する。パワーシリンダー21の各油圧室21A,21Bに供給された作動油は、各油圧室21A,21Bから排出されることにより、電動ポンプ24に循環する。
【0029】
アシスト装置20は、電動バルブ装置40を介さずに第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの間で作動油を流通させることが可能なバイパスバルブ80と、作動油が流れる油路90とを有する。
【0030】
油路90は、各油路91〜95を有する。なお、ポンプ吐出油路92は「第1油路」に相当する。また、第1供給油路93および第2供給油路94は「第2油路」に相当する。
(a)ポンプ吸入油路91は、貯留部27と電動ポンプ24とを互いに接続する。電動ポンプ24は、貯留部27からポンプ吸入油路91を通して作動油を吸入する。
(b)ポンプ吐出油路92は、電動ポンプ24と電動バルブ装置40のポンプポート72(図2)とを互いに接続する。電動ポンプ24は、ポンプ吐出油路92を通して作動油を電動バルブ装置40に吐出する。
(c)第1供給油路93は、電動バルブ装置40の第1ポート73(図2)とパワーシリンダー21の第1油圧室21Aとを互いに接続する。電動バルブ装置40は、第1供給油路93を通して作動油を第1油圧室21Aに供給する。
(d)第2供給油路94は、電動バルブ装置40の第2ポート74(図2)とパワーシリンダー21の第2油圧室21Bとを互いに接続する。電動バルブ装置40は、第2供給油路94を通して作動油を第2油圧室21Bに供給する。
(e)排出油路95は、電動バルブ装置40のタンクポート75(図2)と貯留部27とを互いに接続する。電動バルブ装置40は、排出油路95を通して作動油を貯留部27に排出する。
(f)連通油路96は、第1供給油路93と第2供給油路94とを互いに接続する。連通油路96が開放されているとき、かつ、第1油圧室21Aの油圧および第2油圧室21Bの油圧が互いに異なるとき、油圧室21A,21B間の連通油路96を作動油が流れる。
【0031】
バイパスバルブ80は、第1供給油路93と第2供給油路94の接続状態、すなわち第1油圧室21Aと第2油圧室21Bの接続状態を変更するフェールセーフバルブである。バイパスバルブ80は、連通油路96を閉鎖することにより、第1供給油路93と第2供給油路94との連通を遮断して、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの連通を遮断する。また、バイパスバルブ80は、連通油路96を開放することにより、第1供給油路93と第2供給油路94とを連通して、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとを互いに連通する。
【0032】
電動バルブ装置40は、ポンプ吐出油路92、第1供給油路93、第2供給油路94、および排出油路95の接続状態を、次のようにして変更する。すなわち、電動バルブ装置40は、第1供給油路93および第2供給油路94のうち、一方をポンプ吐出油路92に接続するとともに、他方を排出油路95に接続する。そして、接続状態を変更して、一方を排出油路95に接続するとともに、他方をポンプ吐出油路92に接続することにより、作動油供給先を変更する。このように、電動バルブ装置40は、作動油が一方向に流れるポンプ吐出油路92と、第1供給油路93と第2供給油路94との接続状態を切り替える。さらに、作動油の流路面積を変更することにより、作動油供給先への作動油の供給量を制御する。
【0033】
図2〜13を参照して、電動バルブ装置40の詳細な構成について説明する。
図2に示されるように、電動バルブ装置40は、電動モーター50と回転角センサ60とロータリーバルブ70とを収納するハウジング41と、電動モーター50のローター54とロータリーバルブ70の弁体76とを兼ねるシャフト42と、ハウジング41とともにシャフト42を覆うカバー43とを有する。なお、ハウジング41は「弁筐体」に相当する。また、シャフト42は「出力軸」に相当する。
【0034】
ハウジング41の内部において、シャフト42の軸方向に沿って、電動モーター50、回転角センサ60、ロータリーバルブ70の順で配置されている。ハウジング41は、ロータリーバルブ70を収容するバルブ室41Aと、電動モーター50および回転角センサ60を収容する機械室41Bと、オイルシール44とを有する。なお、バルブ室41Aは「第1収容室」に相当する。また、機械室41Bは「第2収容室」に相当する。
【0035】
オイルシール44は、ハウジング41内の空間をバルブ室41Aおよび機械室41Bに区画する。オイルシール44は、シャフト42の軸方向において、互いに隣り合って設けられる回転角センサ60とロータリーバルブ70との間、かつ、ハウジング41の内面とシャフト42の外面との間に位置する。
【0036】
シャフト42の一端は、カバー43に設けられた転がり軸受45が回転可能に支持する。また、シャフト42の他端は、ハウジング41の底部に設けられたすべり軸受46が回転可能に支持する。また、シャフト42の中間部は、転がり軸受47が回転可能に支持する。軸受46,47は、ロータリーバルブ70の弁体76の両端を支持する。バルブ室41Aに流入する作動油は、バルブ室41Aに設けられた軸受46,47の潤滑油となる。
【0037】
シャフト42は、電動モーター50のローター54として構成されるモーターローター部42Aと、回転角センサ60により回転角が検出される回転角被検出部42Bと、ロータリーバルブ70の弁体76として構成される弁体部42Cとを有している。シャフト42は単一の材料により形成されている。したがって、モーターローター部42Aと回転角被検出部42Bと弁体部42Cとは一体的に形成されているシャフト42の一部分であって、モーターローター部42Aと回転角被検出部42Bと弁体部42Cとは互いに異なる部位である。弁体部42Cの内部には作動油の流れる内部空間42Sが形成されている。
【0038】
図2に示されるように、電動モーター50は、ハウジング41に対して固定されたステーター51と、ステーター51に対して回転するローター54とにより構成されている。ローター54は、シャフト42のモーターローター部42Aを含んでいる。
【0039】
図3に示されるように、電動モーター50は、2相ブラシレスモーターの構造を有している。ステーター51は、円筒状に形成されるとともに内周にティース52Aが形成されたステーターコア52と、ティース52Aに巻かれた導線からなるコイル53とを有する。2相を構成するコイル53は、第1相コイル53Aと第2相コイル53Bとにより構成されている。コイル53に流れる電流はスイッチング素子(図示略)により制御され、このスイッチング素子により第1相コイル53Aおよび第2相コイル53Bには選択的に電流が供給される。すなわち、第1相コイル53Aに通電するときは第2相コイル53Bに通電せず、第2相コイル53Bに通電するときは第1相コイル53Aに通電しない。
【0040】
ローター54は、モーターローター部42Aに対して固定されたローターコア55と、ローターコア55に設けられた永久磁石56とを有する。4極を構成する永久磁石56は、第1磁石56Aと第2磁石56Bと第3磁石56Cと第4磁石56Dとにより構成されている。各磁石56A〜56Dは、ローター54の回転方向において等間隔に設けられている。モーターローター部42Aとローターコア55とローターコア55とは、ステーター51のコイル53に通電したときに発生する磁界によって、回転中心軸Rを中心として一体的に回転する。こうして電動モーター50は回転中心軸Rを回転中心としてシャフト42を回転させる。すなわち、ローター54が回転することにより、回転角被検出部42Bおよび弁体部42Cを含むシャフト42が回転する。
【0041】
図3および図4を参照して、ローター54の回転について説明する。ローター54は、ステーター51が磁界を発生させることにより、360°未満の範囲内(例えば、6°の範囲内)で回転するように構成されている。すなわち、電動モーター50が有するシャフト42の回転可能範囲は360°未満である。
【0042】
図3に示されるように、ローター54の各磁石56A〜56Dが、ローター54の回転方向においてステーター51の第1相コイル53Aと第2相コイル53Bとの間に位置しているときのローター54の位置を「回転中立位置」とする。
【0043】
電動バルブ装置40においては、電動モーター50の駆動により、ステーター51に対するローター54の回転位置が以下のように変更される。
図4(a)に示されるように、第1相コイル53Aに通電することにより、第1相コイル53Aが第1磁石56Aおよび第3磁石56Cを吸引して、ローター54が、図3の回転中立位置から矢印Y1の方向に回転する。こうして回転中立位置から回転した図4(a)のローター54の位置を「第1回転位置」とする。
【0044】
図4(b)に示されるように、第2相コイル53Bに通電することにより、第2相コイル53Bが第1磁石56Aおよび第3磁石56Cを吸引して、ローター54が、図3の回転中立位置から矢印Y2の方向に回転する。こうして回転中立位置から回転した図4(b)のローター54の位置を「第2回転位置」とする。
【0045】
以上のように、ローター54の位置は、回転中立位置から第1回転位置または第2回転位置に変化する。また、ローター54が第1回転位置にあるとき、第2相コイル53Bに通電することにより、ローター54の位置を、回転中立位置または回転中立位置を経て第2回転位置に変化させることができる。また、ローター54が第2回転位置にあるとき、第1相コイル53Aに通電することにより、ローター54の位置を、回転中立位置または回転中立位置を経て第1回転位置に変化させることができる。
【0046】
図2に示されるように、回転角センサ60は、ハウジング41に設けられたホルダ61と、ホルダ61からハウジング41の内部に突出したホール素子62と、ホール素子62を挟み込む集磁リング63A,63Bと、集磁リング63A,63Bがインサート成型された樹脂モールド体64とを有する。
【0047】
ホルダ61にはホール素子62が接続される回路基板等が内蔵されている。ホール素子62は、ホール効果を利用して磁束を検出するホールICからなる。ホール素子62は、磁束密度に応じた電気信号を制御部30に出力する。
【0048】
第1集磁リング63Aと第2集磁リング63Bとは、シャフト42の軸方向において間隔を空けて設けられている。図5に示されるように、各集磁リング63A,63Bは、円環状の円環部63Cと、円環部63Cから集磁リング63A,63Bの側方に突出する突出部63Dとを有する。各集磁リング63A,63Bの突出部63Dの間に、ホール素子62(図2参照)が設けられる。
【0049】
図2に示されるように、樹脂モールド体64には、各集磁リング63A,63Bが埋め込まれて、樹脂モールド体64と各集磁リング63A,63Bは一体化されている。樹脂モールド体64は、ハウジング41に対して固定されている。したがって、各集磁リング63A,63Bはハウジング41に対して固定されている。
【0050】
また、回転角センサ60は、ハウジング41に対して固定された樹脂モールド体65およびヨークリング66A,66Bと、シャフト42の回転角被検出部42Bに対して固定された樹脂モールド体67および永久磁石68とを有する。
【0051】
樹脂モールド体65には、各ヨークリング66A,66Bが埋め込まれて、樹脂モールド体65と各ヨークリング66A,66Bは一体化されている。樹脂モールド体65は、ハウジング41に対して固定されている。したがって、各ヨークリング66A,66Bはハウジング41に対して固定されている。
【0052】
樹脂モールド体67には、永久磁石68が埋め込まれて、樹脂モールド体67と永久磁石68は一体化されている。樹脂モールド体67は、シャフト42の回転角被検出部42Bに対して固定されている。したがって、永久磁石68はシャフト42に対して固定されている。
【0053】
第1ヨークリング66Aと第2ヨークリング66Bとは、シャフト42の軸方向において間隔を空けて設けられている。各ヨークリング66A,66Bの外側には、各集磁リング63A,63Bが間隔を空けて設けられている。第1ヨークリング66Aは第1集磁リング63Aと対向している。第2ヨークリング66Bは第2集磁リング63Bと対向している。
【0054】
図6に示されるように、各ヨークリング66A,66Bは、ヨークリング66A,66Bの内側に設けられる円環状の円環部66Cと、円環部66Cからシャフト42の軸方向(図2参照)に延びる台形上の磁極対向部66Dとを有する。各ヨークリング66A,66Bの磁極対向部66Dは、永久磁石68の外側表面(図2参照)と対向する。
【0055】
図7に示されるように、永久磁石68は、N極を構成する第1磁極68Aと、S極を構成する第2磁極68Bとを有する。第1磁極68Aと第2磁極68Bは、シャフト42の回転方向に沿って交互に設けられている。
【0056】
以下、シャフト42と一体的に回転する樹脂モールド体67および永久磁石68を、「第1センサ要素」という。また、ハウジング41のうちの第1センサ要素に対応する箇所に取り付けられるホール素子62、各集磁リング63A,63B、樹脂モールド体64,65、および各ヨークリング66A,66Bを「第2センサ要素」という。
【0057】
図8〜10を参照して、ローター54の回転位置に応じたシャフト42の回転角の検出原理について説明する。図8は、ローター54(図3参照)が回転中立位置にあるときのヨークリング66A,66Bに対する永久磁石68の回転位置を示している。
【0058】
図8に示されるように、ローター54が回転中立位置にあるとき、各ヨークリング66A,66Bの磁極対向部66Dは、第1磁極68Aと第2磁極68Bとに対向している。このとき、各ヨークリング66A,66Bは、磁極対向部66Dのうち第1磁極68Aに対向する部位の面積と、磁極対向部66Dのうち第2磁極68Bに対向する部位の面積とが等しくなるように設けられている。
【0059】
電動バルブ装置40においては、ステーター51に対するローター54の回転位置が変更されることにより、ヨークリング66A,66Bに対する永久磁石68の回転位置が変更される。図9は、ローター54(図4(a)参照)が第1回転位置にあるときのヨークリング66A,66Bに対する永久磁石68の回転位置を示している。また、図10は、ローター54(図4(b)参照)が第2回転位置にあるときのヨークリング66A,66Bに対する永久磁石68の回転位置を示している。
【0060】
図9に示されるように、ローター54が第1回転位置にあるとき、第1ヨークリング66Aの磁極対向部66Dのうち第1磁極68Aに対向する部位の面積は、ローター54が回転中立位置にあるときに比べて増大する。また、第2ヨークリング66Bの磁極対向部66Dのうち第2磁極68Bに対向する部位の面積は、ローター54が回転中立位置にあるときに比べて増大する。第1ヨークリング66Aの磁極対向部66Dのうち第1磁極68Aに対向する部位の面積の大きさを「面積N1」とし、第2ヨークリング66Bの磁極対向部66Dのうち第2磁極68Bに対向する部位の面積を「面積S2」としたとき、面積N1と面積S1の変化は連動している。このように面積N1および面積S2が増大した結果、第1ヨークリング66Aの円環部66Cから第2ヨークリング66Bの円環部66Cに向かう磁束が発生する。この磁束の密度は、面積N1および面積S2が増大するほど大きくなる。
【0061】
図10に示されるように、ローター54が第2回転位置にあるとき、第1ヨークリング66Aの磁極対向部66Dのうち第2磁極68Bに対向する部位の面積は、ローター54が回転中立位置にあるときに比べて増大する。また、第2ヨークリング66Bの磁極対向部66Dのうち第1磁極68Aに対向する部位の面積は、ローター54が回転中立位置にあるときに比べて増大する。第1ヨークリング66Aの磁極対向部66Dのうち第2磁極68Bに対向する部位の面積の大きさを「面積S1」とし、第2ヨークリング66Bの磁極対向部66Dのうち第1磁極68Aに対向する部位の面積を「面積N2」としたとき、面積S1と面積N2の変化は連動している。このように面積S1および面積N2が増大した結果、第1ヨークリング66Aの円環部66Cから第2ヨークリング66Bの円環部66Cに向かう磁束が発生する。この磁束の密度は、面積S1および面積N2が増大するほど大きくなる。
【0062】
以上のように、第1ヨークリング66Aの円環部66Cから第2ヨークリング66Bの円環部66Cに向かう磁束の密度、または第1ヨークリング66Aの円環部66Cから第2ヨークリング66Bの円環部66Cに向かう磁束の密度をホール素子62が検出することにより、回転角センサ60はローター54の回転位置を検出することができる。また、ローター54の回転はシャフト42の回転に連動しているため、シャフト42の回転角を検出することができる。シャフト42の回転可能範囲が360°未満である電動バルブ装置40において、回転角センサ60によるシャフト42の回転角度の検出可能範囲は360°未満である。なお、ここでいう「検出可能範囲」とは実質的に検出可能角度が360°未満となる範囲を含み、例えば、361°を1°として検出するセンサの検出可能範囲は360°未満である。
【0063】
また、各ヨークリング66A,66Bの外側には集磁リング63A,63Bが設けられ、各集磁リング63A,63Bの突出部63Dの間に、ホール素子62が設けられているため、回転角センサ60はローター54の回転位置(シャフト42の回転角)を精度良く検出することができる。
【0064】
図2に示されるように、ロータリーバルブ70は、ポート72〜75を形成するポート形成部材71と、ポート形成部材71に対して回転する弁体76とにより構成されている。弁体76はシャフト42の弁体部42Cからなるため、以下の構成の説明において、「弁体76」は「弁体部42C」と読み替えることができる。
【0065】
円筒形状のポート形成部材71は、弁体76が内部に設けられる内部空間71Sを有する。ポート形成部材71は、ハウジング41に対して固定された弁座であって、弁体76とともに作動油の流路を形成する。ポート形成部材71には、ポンプ吐出油路92が接続されるポンプポート72と、第1供給油路93が接続される第1ポート73と、第2供給油路94が接続される第2ポート74とが形成されている。
【0066】
ポンプポート72は、ポート形成部材71の外周に設けられた円環溝72Aと、円環溝72Aと内部空間71Sとを互いに連通する連通孔72Bとにより構成されている。円環溝72Aにはポンプ吐出油路92が接続され、ポンプポート72には、電動ポンプ24から送り出された作動油が流入する。
【0067】
第1ポート73は、ポート形成部材71の外周に形成された円環溝73Aと、ポート形成部材71の内周に形成された軸方向に延びる縦軸溝73Cと、円環溝73Aと縦軸溝73Cとを互いに連通する連通孔73Bとにより構成されている。円環溝73Aには第1供給油路93が接続され、第1ポート73から第1油圧室21Aに作動油が供給される。
【0068】
第2ポート74は、ポート形成部材71の外周に形成された円環溝74Aと、ポート形成部材71の内周に形成された軸方向に延びる縦軸溝74Cと、円環溝74Aと縦軸溝74Cとを互いに連通する連通孔74Bとにより構成されている。円環溝74Aには第2供給油路94が接続され、第2ポート74から第2油圧室21Bに作動油が供給される。
【0069】
各円環溝72A,73A,74Aは、ポート形成部材71の軸方向、すなわち弁体76の軸方向において互いに異なる位置に形成されている。また、各連通孔72B,73B,74Bも同様に、弁体76の軸方向において互いに異なる位置に形成されている。
【0070】
図11に示されるように、円環溝73Aは、ポート形成部材71の周方向、すなわち弁体76の回転方向に沿って形成されている。これと同様に、各円環溝72A,74Aも、弁体76の回転方向に沿って形成されている。各縦軸溝73C,74Cは、弁体76の回転方向において等間隔に設けられている。弁体76の回転方向において、縦軸溝73Cと縦軸溝74Cとの間には、内部空間71Sに連通する連通孔72Bの開口が設けられている。
【0071】
図2に示されるように、タンクポート75は、ハウジング41と、弁体76の軸方向におけるポート形成部材71の端面とにより形成されている。タンクポート75には排出油路95が接続され、タンクポート75から貯留部27に作動油が排出される。
【0072】
図11に示されるように、弁体76には、ポート形成部材71に対する弁体76の回転位置に応じて縦軸溝73Cまたは縦軸溝74Cに接続される第1弁体溝76Aおよび第2弁体溝76Bと、第1弁体溝76Aと弁体76の内部空間42Sとを互いに連通する入口連通孔76Cとが形成されている。また、図2に示されるように、弁体76には、タンクポート75と弁体76の内部空間42Sとを互いに連通する出口連通孔76Dが形成されている。
【0073】
図11〜13を参照して、ポート形成部材71に対する弁体76の回転位置に応じた各ポート72〜75の接続態様を説明する。図10は、ローター54(図3参照)が回転中立位置にあるときのポート形成部材71に対する弁体76の回転位置を示している。
【0074】
図11に示されるように、ローター54が回転中立位置にあるとき、ポート形成部材71と弁体76の隙間を介して、ポンプポート72が第1ポート73と第2ポート74とに連通される。また、このとき、タンクポート75(図2参照)も第1ポート73と第2ポート74とに連通される。このようにポンプポート72が第1ポート73と第2ポート74とに連通している態様を「中立モード」とする。
【0075】
電動バルブ装置40においては、ステーター51に対するローター54の回転位置が変更されることにより、ポート形成部材71に対する弁体76の回転位置が変更される。図12は、ローター54(図4(a)参照)が第1回転位置にあるときのポート形成部材71に対する弁体76の回転位置を示している。また、図13は、ローター54(図4(b)参照)が第2回転位置にあるときのポート形成部材71に対する弁体76の回転位置を示している。
【0076】
図12に示されるように、ローター54が第1回転位置にあるとき、ポンプポート72が第1ポート73に連通される。また、このとき、タンクポート75(図2参照)が第2ポート74に連通される。このように、中立モードに比べてポンプポート72が第1ポート73と大きな流路面積をもって連通している態様を「第1モード」とする。
【0077】
図13に示されるように、ローター54が第2回転位置にあるとき、ポンプポート72が第2ポート74に連通される。また、このとき、タンクポート75(図2参照)が第1ポート73に連通される。このように、中立モードに比べてポンプポート72が第2ポート74と大きな流路面積をもって連通している態様を「第2モード」とする。
【0078】
中立モード、第1モード、および第2モードは、ローター54の位置に応じて変化する。すなわち、ローター54が回転中立位置または第2回転位置から第1回転位置に変化したとき、各ポート72〜75の接続態様は第1モードとなる。また、ローター54が回転中立位置または第1回転位置から第2回転位置に変化したとき、各ポート72〜75の接続態様は第2モードとなる。また、ローター54が第1回転位置または第2回転位置から回転中立位置に変化したとき、各ポート72〜75の接続態様は中立モードとなる。
【0079】
図2、図11〜13を参照して、作動油の流れについて説明する。なお、ここでの作動油の流れは、バイパスバルブ80が第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの連通を遮断していることを前提としている。
【0080】
(A)中立モードのときの作動油の流れを説明する。
中立モードにおいて電動ポンプ24(図2)から吐出された作動油は、ポンプ吐出油路92、ポンプポート72の円環溝72Aと連通孔72B、および第2弁体溝76Bを通って、各ポート73,74の縦軸溝73C,74C(図11)とに供給される。また、作動油は、各ポート73,74の縦軸溝73C,74Cから、第1弁体溝76A、入口連通孔76C、内部空間42S、出口連通孔76D(図2)、タンクポート75、および排出油路95を通って、電動バルブ装置40から貯留部27に排出される。
【0081】
(B)第1モードのときの作動油の流れを説明する。
第1モードにおいて電動ポンプ24(図2)から吐出された作動油は、ポンプ吐出油路92、ポンプポート72の円環溝72Aと連通孔72B、第2弁体溝76B、第1ポート73の縦軸溝73C(図12)と連通孔73Bと円環溝73A、および第1供給油路93(図2)を通って、第1油圧室21Aに供給される。すなわち、電動バルブ装置40においては図12中の矢印R1で示すように作動油が流れる。
【0082】
また、第1モードにおいて第2油圧室21B内の作動油は、第2供給油路94、第2ポート74の円環溝74Aと連通孔74Bと縦軸溝74C、第1弁体溝76A(図12)、入口連通孔76C、内部空間42S、出口連通孔76D(図2)、タンクポート75、および排出油路95を通って、貯留部27に排出される。すなわち、電動バルブ装置40においては図12中の矢印R2で示すように作動油が流れる。
【0083】
(C)第2モードのときの作動油の流れを説明する。
第2モードにおいて電動ポンプ24(図2)から吐出された作動油は、ポンプ吐出油路92、ポンプポート72の円環溝72Aと連通孔72B、第2弁体溝76B、第2ポート74の縦軸溝74C(図13)と連通孔74Bと円環溝74A、および第2供給油路94(図2)を通って、第2油圧室21Bに供給される。すなわち、電動バルブ装置40においては図13中の矢印R3で示すように作動油が流れる。
【0084】
また、第2モードにおいて第1油圧室21A内の作動油は、第1供給油路93、第1ポート73の円環溝73A(図13)と連通孔73Bと縦軸溝73C、第1弁体溝76A、入口連通孔76C、内部空間42S、出口連通孔76D(図2)、タンクポート75、および排出油路95を通って、貯留部27に排出される。すなわち、電動バルブ装置40においては図13中の矢印R4で示すように作動油が流れる。
【0085】
以上のように電動バルブ装置40を流れる作動油の流量、すなわち、第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bのうち一方である作動油供給先へ流れる作動油の流量と、他方である作動油排出元から流れる作動油の流量は、シャフト42の回転角に応じて変化する。シャフト42の回転角は次の4つの開度を制御する。
(a)第1油圧室21Aへの作動油の供給量を変更する第1供給開度。
(b)第2油圧室21Bへの作動油の供給量を変更する第2供給開度。
(c)第1油圧室21Aからの作動油の排出量を変更する第1排出開度。
(d)第2油圧室21Bからの作動油の排出量を変更する第2排出開度。
【0086】
上記の各開度は電動バルブ装置40の以下の部分に相当する。
第1供給開度は、第1ポート73の縦軸溝73Cと第2弁体溝76Bとを互いに連通する通路の面積に相当する。また、第2供給開度は、第2ポート74の縦軸溝74Cと第2弁体溝76Bとを互いに連通する通路の面積に相当する。また、第1排出開度は、第1ポート73の縦軸溝73Cと第1弁体溝76Aとを互いに連通する通路の面積に相当する。また、第2排出開度は、第2ポート74の縦軸溝73Cと第2弁体溝76Bとを互いに連通する通路の面積に相当する。
【0087】
第1供給開度および第2排出開度は、ローター54が回転中立位置から図3中の矢印Y1の方向に回転するにつれて大きくなる。第1供給開度および第2排出開度が大きいほど、第1油圧室21Aへ供給される作動油の流量、および第2油圧室21Bから排出される作動油の流量が増える。一方、第1排出開度および第2供給開度は、ローター54が回転中立位置から図3中の矢印Y2の方向に回転するにつれて大きくなる。第1排出開度および第2供給開度が大きいほど、第1油圧室21Aから排出される作動油の流量、および第2油圧室21Bへ供給される作動油の流量が増える。
【0088】
制御部30による電動バルブ装置40の制御態様について説明する。
制御部30は、ステアリングホイール2の操作状態に応じて電動バルブ装置40の弁体76の位置を制御する。すなわち、ステアリングホイール2の操作が行なわれないとき、制御部30は、ローター54の回転位置が回転中立位置となるように電動モーター50を制御して、電動バルブ装置40を中立モードとする。また、ステアリングホイール2が右方向に回転操作されるとき、制御部30は、ローター54の回転位置が第1回転位置となるように電動モーター50を制御して、電動バルブ装置40を第1モードとする。また、ステアリングホイール2が左方向に回転操作されるとき、制御部30は、ローター54の回転位置が第2回転位置となるように電動モーター50を制御して、電動バルブ装置40を第2モードとする。
【0089】
油圧パワーステアリング装置1の動作について説明する。
制御部30は、トルクセンサ14を用いて操舵部材であるステアリングシャフト11に作用する操舵トルクを検出するとともに、操舵トルクに基づいて電動モーター50を制御する。すなわち、ステアリングホイール2の操作に応じて電動モーター50を制御する。このとき、電動モーター50が回転させるシャフト42の一部、すなわち弁体部42Cが、作動油の流量を調整するロータリーバルブ70の弁体76として構成されているため、電動モーター50のローター54とロータリーバルブ70の弁体76とが一体的に回転する。そして、制御部30は、回転角センサ60を用いて一部がロータリーバルブ70の弁体76として構成されたシャフト42の回転角度、すなわちロータリーバルブ70の弁体76の回転角度を検出するとともに、弁体76の回転角度に基づいて電動モーター50を制御する。すなわち、制御部30は、弁体76の回転角度の制御において、回転角センサ60により検出された弁体76の回転角度に基づいてフィードバック制御を行う。
【0090】
(実施形態の効果)
本実施形態の油圧パワーステアリング装置1は以下の効果を奏する。
(1)油圧パワーステアリング装置1は電動モーター50のシャフト42の回転角度を検出する回転角センサ60を有し、ロータリーバルブ70は、電動モーター50のシャフト42と一体的に回転する弁体76と、ポンプ吐出油路92と第1供給油路93および第2供給油路94と接続される空間を内部に有するハウジング41とを有する。そして、制御部30は、電動モーター50の制御に回転角センサ60の出力を反映する。このような構成によれば、ロータリーバルブ70の弁体76が電動モーター50のシャフト42と一体的に回転して、回転角センサ60が電動モーター50のシャフト42の回転角度を検出する。そして、制御部30が電動モーター50の制御に回転角センサ60の出力を反映するため、ロータリーバルブ70の弁体76の角度制御を精度良く行うことができ、作動油の供給量を正確に制御することができる。
【0091】
(2)電動モーター50のシャフト42は、シャフト42の軸方向に沿って、弁体76、第1センサ要素、およびローター54の順に、弁体76、第1センサ要素、およびローター54を有する。このような構成によれば、シャフト42の軸方向に沿って、弁体76、ローター54、第1センサ要素の順に、弁体76、第1センサ要素、およびローター54をシャフト42が有する構成に比べて、回転角センサ60が弁体76の近傍に位置するため、ロータリーバルブ70の弁体76の回転角度を精度良く検出することができる。
【0092】
(3)電動モーター50のシャフト42は、シャフト42の軸方向に沿って、弁体76、第1センサ要素、およびローター54の順に、弁体76、第1センサ要素、およびローター54を有し、ハウジング41は、弁体76を収容するバルブ室41Aと、第1センサ要素およびローター54を収容する機械室41Bと、バルブ室41Aおよび機械室41Bを区画するオイルシール44とを有する。このような構成によれば、シャフト42が、シャフト42の軸方向に沿って、第1センサ、弁体76、およびローター54の順に、弁体76、第1センサ要素、およびローター54を有する構成に比べて、ハウジング41が有するバルブ室41Aと機械室41Bとを1つのオイルシール44が区画することができる。そして、オイルシール44により、弁体76を収容するバルブ室41Aに流入した作動油が、第1センサ要素およびローター54を収容する機械室41Bに流入することを抑制することができる。
【0093】
(4)油圧パワーステアリング装置1は、回転角センサ60としてホールIC式センサを有する。一般的に、ホール素子による回転角度の検出範囲が狭くするほど、ホール素子から出力される電気信号をA/D変換する際において回転角度の分解能を高くすること、すなわち微細な回転角度の検出結果を出力することができる。このため、ホール効果により微細な回転角度の検出結果を出力することができ、360°回転しない電動モーター50のシャフト42の回転角度の分解能を向上することができる。
【0094】
(5)油圧パワーステアリング装置1は、電動モーター50として2相ブラシレスモーターを有するため、油圧パワーステアリング装置1が電動モーター50として3相ブラシレスモーターを有する構成に比べて、コイル53やステーターコア52等を簡素化することにより小型化および軽量化および低コスト化を図ることができる。
【0095】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態以外の実施形態を含む。以下、本発明のその他の実施形態としての上記実施形態の変形例を示す。なお、以下の各変形例は、互いに組み合わせることもできる。
【0096】
・上記実施形態(図2)の電動バルブ装置40において、転がり軸受45,47とすべり軸受46とがシャフト42を支持しているが、シャフト42を支持する軸受の種類、配置、個数を変更することもできる。
【0097】
・上記実施形態(図2)の電動バルブ装置40において、各ポート72〜75の形状および弁体76の形状を変更することもできる。すなわち、ロータリーバルブ70の構造を変更することもできる。
【0098】
・上記実施形態(図2)の電動バルブ装置40において、シャフト42の軸方向に沿って、ロータリーバルブ70、回転角センサ60、電動モーター50の順で配置されているが、電動モーター50と回転角センサ60とロータリーバルブ70の配置順序を変更することもできる。すなわち、電動モーター50のシャフト42は、シャフト42の軸方向に沿って、第1センサ要素、弁体76、ローター54の順に、弁体76、第1センサ要素、およびローター54を有することもできる。このような構成であっても、上記(2)に準じた効果が得られる。
【0099】
・上記実施形態(図2)の電動バルブ装置40において、シャフト42の軸方向に沿って、ロータリーバルブ70、回転角センサ60、電動モーター50の順で配置されているが、ロータリーバルブ70、電動モーター50、回転角センサ60の順で配置することもできる。すなわち、電動モーター50のシャフト42は、シャフト42の軸方向に沿って、弁体76、ローター54、第1センサ要素の順に、弁体76、第1センサ要素、およびローター54を有することもできる。このような構成であっても、ロータリーバルブ70と、ロータリーバルブ70に隣り合って設けられる電動モーター50との間にオイルシールが位置することにより、上記(5)に準じた効果が得られる。
【0100】
・上記実施形態(図2)の電動バルブ装置40において、電動モーター50は2相ブラシレスモーターを有するが、電動モーター50の構造を変更することもできる。すなわち、電動モーター50の極数や相数等を変更することもできる。また、電動モーター50は、ブラシ付きモーターであってもよい。
【0101】
・上記実施形態(図2)の電動バルブ装置40において、回転角センサ60は第1集磁リング63Aおよび第2集磁リング63Bを有するが、第1集磁リング63Aおよび第2集磁リング63Bを省略することもできる。
【0102】
・上記実施形態(図2)の電動バルブ装置40において、回転角センサ60は永久磁石68とホール素子62とを備えるものであるが、回転角センサ60に代えてホール効果を利用しない回転角センサを設けることもできる。
【符号の説明】
【0103】
1…油圧パワーステアリング装置、2…ステアリングホイール、3…タイロッド、4…転舵輪、5…車速センサ、10…ステアリング装置、11…ステアリングシャフト、12…ラックアンドピニオン機構、13…転舵シャフト、14…トルクセンサ、15…操舵角センサ、20…アシスト装置、21…パワーシリンダー(操舵補助装置)、21A…第1油圧室、21B…第2油圧室、22…ハウジング、23…ピストン、24…電動ポンプ(オイルポンプ)、25…電動モーター、26…ポンプ、27…貯留部、30…制御部、40…電動バルブ装置、41…ハウジング(弁筐体)、41A…バルブ室(第1収容室)、41B…機械室(第2収容室)、42…シャフト(出力軸)、42A…モーターローター部、42B…回転角被検出部、42C…弁体部、42S…内部空間、43…カバー、44…オイルシール、45…転がり軸受、46…すべり軸受、47…転がり軸受、50…電動モーター、51…ステーター、52…ステーターコア、52A…ティース、53…コイル、53A…第1相コイル、53B…第2相コイル、54…ローター、55…ローターコア、56…永久磁石、56A…第1磁石、56B…第2磁石、56C…第3磁石、56D…第4磁石、60…回転角センサ、61…ホルダ(第2センサ要素)、62…ホール素子(第2センサ要素)、63A…第1集磁リング(第2センサ要素)、63B…第2集磁リング(第2センサ要素)、64…樹脂モールド体(第2センサ要素)、65…樹脂モールド体(第2センサ要素)、66A…第1ヨークリング(第2センサ要素)、66B…第2ヨークリング(第2センサ要素)、67…樹脂モールド体(第1センサ要素)、68…永久磁石(第1センサ要素)、68A…第1磁極、68B…第2磁極、70…ロータリーバルブ(流量制御弁)、71…ポート形成部材、71S…内部空間、72…ポンプポート、72A…円環溝、72B…連通孔、73…第1ポート、73A…円環溝、73B…連通孔、73C…縦軸溝、74…第2ポート、74A…円環溝、74B…連通孔、74C…縦軸溝、75…タンクポート、76…弁体(回転弁)、76A…第1弁体溝、76B…第2弁体溝、76C…入口連通孔、76D…出口連通孔、80…バイパスバルブ、90…油路、91…ポンプ吸入油路、92…ポンプ吐出油路(第1油路)、93…第1供給油路(第2油路)、94…第2供給油路(第2油路)、95…排出油路、96…連通油路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプと、前記オイルポンプから供給される作動油により動作する操舵補助装置と、前記オイルポンプから前記操舵補助装置に供給される作動油の流れを制御する流量制御弁と、前記流量制御弁を駆動する電動モーターと、前記オイルポンプと前記流量制御弁とを互いに接続する第1油路と、前記操舵補助装置と前記流量制御弁とを互いに接続する第2油路と、前記電動モーターを制御する制御部とを有する油圧パワーステアリング装置において、
前記電動モーターの出力軸の回転角度を検出する回転角センサを有し、
前記流量制御弁は、前記電動モーターの出力軸と一体的に回転する回転弁と、前記第1油路および前記第2油路と接続される空間を内部に有する弁筐体とを有し、
前記制御部は、前記電動モーターの制御に前記回転角センサの出力を反映する
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記回転角センサは、前記電動モーターの出力軸と一体的に回転する第1センサ要素と、前記弁筐体のうちの前記第1センサ要素に対応する箇所に取り付けられる第2センサ要素とを有し、
前記電動モーターは、前記弁筐体に取り付けられるステーターと、前記電動モーターの出力軸のうちの前記ステーターと対応する位置に取り付けられるローターとを有する
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記電動モーターの出力軸は、同出力軸の軸方向に沿って、前記回転弁、前記第1センサ要素、および前記ローターの順、または前記第1センサ要素、前記回転弁、および前記ローターの順に、前記回転弁、前記第1センサ要素、および前記ローターを有する
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項2に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記電動モーターの出力軸は、同出力軸の軸方向に沿って、前記回転弁、前記第1センサ要素、および前記ローターの順、または前記回転弁、前記ローター、および前記第1センサの順に、前記回転弁、前記第1センサ要素、および前記ローターを有し、
前記弁筐体は、前記回転弁を収容する第1収容室と、前記第1センサ要素および前記ローターを収容する第2収容室と、前記第1収容室および前記第2収容室を区画するオイルシールとを有する
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記回転角センサによる前記回転角度の検出可能範囲が360°未満である
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記電動モーターが有する前記出力軸の回転可能範囲が360°未満である
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−100016(P2013−100016A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244728(P2011−244728)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】