説明

油圧ホースの製造方法および油圧ホースならびにスパイラル補強層形成用帯状部材

【課題】安価な装置により製造できる油圧ホースの製造方法および油圧ホースならびにスパイラル補強層形成用帯状部材を提供すること。
【解決手段】第1乃至第4スパイラル補強層14,16,18,20を形成するための第1乃至第4帯状部材28A、28B,28C、28Dをそれぞれ製造する。帯状部材28は、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状の未加硫のコートゴム24と、コートゴム24に保持された複数のスチールコード26で構成されている。マンドレル40に、最内層用のチューブ12を被せ、マンドレル40を回転し、帯状部材28をドラム52から繰り出し、走行台50を走行させて第1乃至第4帯状部材28A、28B,28C、28Dをチューブ12の上に螺旋状に順番に巻き付けていく。そして、第4スパイラル補強層20をカバー22で覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ホースの製造方法および油圧ホースならびにスパイラル補強層形成用帯状部材に関し、より詳細には、スチールコードが螺旋状に巻回されたスパイラル補強層を備える高圧油圧ホースの製造方法および高圧油圧ホースならびにスパイラル補強層形成用帯状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
最内層を構成するチューブ(チューブゴム層)と、最外層を構成するカバー(カバーゴム層)との間に、複数のスパイラル補強層が積層されて構成された高圧油圧ホースが提供されている。
この種の高圧油圧ホースのスパイラル補強層は、螺旋状に巻回されたスチールコードと、このスチールコードを被覆するコートゴムとで構成されている。
そして、スパイラル補強層は、従来、マンドレルを回転させつつ、スパイラルマシンにより複数のスチールコードおよびコートゴムを同時に繰り出し、マンドレル上に螺旋状に巻回させることで製造されている( 特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−44214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらこのスパイラルマシンは、構造が複雑で高価なため、安価な装置により油圧ホースを製造できる製造方法の出現が望まれていた。
本発明の目的は、安価な装置により製造できる油圧ホースの製造方法および油圧ホースならびにスパイラル補強層形成用帯状部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため、本発明は、スチールコードが螺旋状に巻回された複数のスパイラル補強層が順次積層された油圧ホースの前記スパイラル補強層の製造方法であって、最も内側のスパイラル補強層から最も外側のスパイラル補強層までの各スパイラル補強層をそれぞれ形成するための複数の帯状部材を設け、前記各帯状部材は、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状の未加硫のコートゴムと、前記コートゴムの延在方向に沿って互いに平行して延在するように前記幅方向に並べられて前記コートゴムに保持された複数のスチールコードとで構成され、マンドレルを回転しつつ最も内側のスパイラル補強層形成用の帯状部材から最も外側のスパイラル補強層形成用の帯状部材まで前記マンドレル上に隙間なく順に螺旋状に巻き付けていくようにしたことを特徴とする。
また、本発明の油圧ホースは、最内層を構成するチューブと、前記チューブの外周面に順次積層されスチールコードが螺旋状に巻回された複数のスパイラル補強層と、前記複数のスパイラル補強層のうち最も外側に位置するスパイラル補強層の外周面に設けられ最外層を構成するカバーとを備え、前記各スパイラル補強層は、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状のコートゴムに、複数のスチールコードがそれらの長さ方向を前記コートゴムの延在方向に沿わせて互いに平行に並べられた帯状部材が螺旋状に巻回されて構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、油圧ホースのスパイラル補強層を形成するための帯状部材であって、前記帯状部材は、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状の未加硫のコートゴムと、前記コートゴムに保持された複数のスチールコードで構成され、前記複数のスチールコードは、その長さ方向を前記コートゴムの延在方向に沿わせ前記コートゴムの幅方向に並べられて配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の油圧ホースのスパイラル補強層の製造方法によれば、高価なスパイラルマシンを用いることなく、スパイラル補強層を簡単に製造できる。
本発明の油圧ホースおよび帯状部材によれば、高価なスパイラルマシンを用いることなく、油圧ホースおよびスパイラル補強層を簡単に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1(A)は実施の形態の油圧ホースの断面図、(B)は分解説明図を示す。
実施の形態の油圧ホース10は、最内層を構成するチューブ12(チューブゴム層)と、チューブ12の外周面に巻装された第1乃至第4スパイラル補強層14,16,18,20と、第4スパイラル補強層20の外周面に設けられたカバー22(カバーゴム層)とを含んで構成され、高圧用の油圧ホース10すなわち高圧油圧ホース10として構成されている。
チューブ12は、例えば、耐油性や弾性を有し、このようなチューブ12の材質や、厚さなどは、製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて適宜設定される。
第1乃至第4スパイラル補強層14,16,18,20は、それらの順番にチューブ12の外周面に積層されている。
各スパイラル補強層14,16,18,20は、図2に示すように、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状のコートゴム24に、複数のスチールコード26がそれらの長さ方向を前記コートゴム24の延在方向に沿わせて互いに平行に並べられた帯状部材28が螺旋状に巻回されて構成されている。
各スパイラル補強層14,16,18,20は、帯状部材28が隙間なく螺旋状に1回巻回され1層として構成されていてもよい。あるいは、帯状部材28が隙間なく同じ向きに螺旋状に複数回巻回され複数層として構成されていてもよい。あるいは、積層毎に向きを変え帯状部材28が隙間なく螺旋状に複数回巻回され複数層として構成されていてもよい。あるいは、積層毎に向きを変え帯状部材28が隙間をあけて螺旋状に複数回巻回され複数層として構成されていてもよい。要するに、帯状部材28を用いてスパイラル補強層が構成されればよい。
コートゴム24の材質やスチールコード26の線径、スチールコード26の間隔(配置密度)、スチールコード26の巻回角度などは、製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて適宜設定される。
カバー22には、耐候性や弾性を有する材料が用いられ、カバー22の材質や厚さなどは、製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて適宜設定される。
【0007】
次に、油圧ホース10の製造方法について説明する。
まず、予め、第1乃至第4スパイラル補強層14,16,18,20を形成するための各帯状部材28、すなわち、第1スパイラル補強層14を形成するための第1帯状部材28A、第2スパイラル補強層16を形成するための第2帯状部材28B、第3スパイラル補強層18を形成するための第3帯状部材28C、第4スパイラル補強層20を形成するための第4帯状部材28Dをそれぞれ製造する。
帯状部材28は、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状の未加硫のコートゴム24と、コートゴム24に保持された複数のスチールコード26で構成されている。
複数のスチールコード26は、その長さ方向をコートゴム24の延在方向に沿わせコートゴム24の幅方向に並べられて配設されている。
【0008】
帯状部材28は、図2(A)に示すように、帯状のコートゴム24の内部に、スチールコード26の全体が埋設されている構造のものであってもよい。すなわち、複数のスチールコード26は、コートゴム24の幅方向に並べられて配設され、複数のスチールコード26はそれらの全体がコートゴム24の内部に埋設されている。
あるいは、帯状部材28は、図2(B)に示すように、帯状のコートゴム24の表面に、各スチールコード26の一部が露出された構造のものであってもよい。すなわち、複数のスチールコード26は、前記コートゴム24の幅方向に並べられて配設され、複数のスチールコード26はそれらの一部が前記コートゴム24の表面に露出するようにコートゴム24に埋設されている。
【0009】
あるいは、帯状部材28は、図2(C)に示すように、帯状のコートゴム24の表面に、各スチールコード26の径方向の半部が露出された構造のものであってもよい。すなわち、複数のスチールコード26は、前記コートゴム24の幅方向に並べられて配設され、複数のスチールコード26はそれらの断面の半部がそれらスチールコード26の全長にわたって前記コートゴム24の表面に露出するようにそれらの断面の残りの半部が埋設されている。
この場合、コートゴム24の材質やスチールコード26の線径、スチールコード26の間隔(配置密度)などは、製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて適宜設定される。無論、スパイラル補強層の数も製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて、3層以下、あるいは、5層以上に適宜設定される。
【0010】
図3は、油圧ホース10の製造に用いる装置の平面図を示す。
マンドレル40の一端が回転装置42のチャック44で支持され、マンドレル40の他端が芯押し台46で支持されている。
マンドレル40の長手方向に沿って延在するレール48が設けられ、このレール48上に走行可能に走行台50が設けられ、走行台50にドラム52が回転可能に支持されている。
帯状部材28はこのドラム52に巻装され、帯状部材28はドラム52から案内ローラ54を経てマンドレル40上に繰り出される。
【0011】
上述のように帯状部材28を用意したならば、マンドレル40に、最内層用のチューブ12を被せる。
次に、走行台50に、第1帯状部材28Aが巻回されたドラム52を支持させる。
そして、マンドレル40を回転し、第1帯状部材28Aをドラム52から繰り出し、走行台50を走行させて第1帯状部材28Aをチューブ12の上に螺旋状に巻き付け、第1スパイラル補強層14を形作る。
次に、走行台50に、第2帯状部材28Bが巻回されたドラム52を支持させ、マンドレル40を回転し、第2帯状部材28Bをドラム52から繰り出し、走行台50を走行させて第2帯状部材28Bを第1スパイラル補強層14の上に螺旋状に巻き付け、第2スパイラル補強層16を形作る。
このようにして、第2スパイラル補強層16の上に第3帯状部材28Cを巻き付けて第3スパイラル補強層18を形作り、第3スパイラル補強層18の上に第4帯状部材28Dを巻き付けて第4スパイラル補強層20を形作る。
なお、第1乃至第4帯状部材28A、28B、28C、28Dを巻き付ける際に、ドラム52に制動力を付与し帯状部材28に張力を持たせるなど任意であり、帯状部材28に張力を付与すると、各帯状部材28のスチールコード26に巻きぐせを付ける上で有利となる。
最後に、第4スパイラル補強層20をカバー22で覆う。
そして、加硫したのち、従来公知の様々な方法によりマンドレル40が引き抜かれ、油圧ホース10が得られる。
【0012】
本実施の形態の油圧ホース10のスパイラル補強層の製造方法によれば、単一の帯状部材28をマンドレル40の上に螺旋状に巻回していくことでスパイラル補強層を製造するので、高価なスパイラルマシンを用いる必要がなくなり、安価な装置を用いてスパイラル補強層を簡単に製造できる。
また、本実施の形態の油圧ホース10によれば、スパイラル補強層が、帯状のコートゴム24に、複数のスチールコード26がそれらの長さ方向をコートゴム24の延在方向に沿わせて互いに平行に並べられた帯状部材28が螺旋状に巻回されて構成されているので、高価なスパイラルマシンを用いる必要がなくなり、安価な装置を用いて油圧ホース10を簡単に製造できる。
また、本実施の形態の帯状部材28によれば、高価なスパイラルマシンを用いることなく、スパイラル補強層を簡単に製造できる。
【0013】
なお、帯状部材28には、その取り扱いが簡単になされるように、イオウ系の粉がまぶせられる。一方、スチールコード26は、その表面にブラスメッキなどが施されている。
したがって、図2(B)、図2(C)に示すように、スチールコード26の表面がコートゴム24から露出していると、メッキ層とイオウとが化学反応を起こし、スチールコード26が相手方のコートゴム24や、チューブ12、カバー22により強固に接合される上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は実施の形態の油圧ホースの断面図、(B)は分解説明図である。
【図2】(A)、(B)、(C)はそれぞれ帯状部材の断面図である。
【図3】油圧ホースの製造に用いる装置の平面図である。
【符号の説明】
【0015】
10……油圧ホース、12……チューブ、14……第1スパイラル補強層、16……第2スパイラル補強層、18……第3スパイラル補強層、20……第4スパイラル補強層、22……カバー、24……コートゴム、26……スチールコード、28……帯状部材、28A……第1帯状部材、28B……第2帯状部材、28C……第3帯状部材、28D……第4帯状部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールコードが螺旋状に巻回された複数のスパイラル補強層が順次積層された油圧ホースの前記スパイラル補強層の製造方法であって、
最も内側のスパイラル補強層から最も外側のスパイラル補強層までの各スパイラル補強層をそれぞれ形成するための複数の帯状部材を設け、
前記各帯状部材は、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状の未加硫のコートゴムと、前記コートゴムの延在方向に沿って互いに平行して延在するように前記幅方向に並べられて前記コートゴムに保持された複数のスチールコードとで構成され、
マンドレルを回転しつつ最も内側のスパイラル補強層形成用の帯状部材から最も外側のスパイラル補強層形成用の帯状部材まで前記マンドレル上に順に螺旋状に巻き付けていくようにした、
ことを特徴とする油圧ホースのスパイラル補強層の製造方法。
【請求項2】
前記各帯状部材が前記マンドレルに巻き付けられる際に、前記各帯状部材に張力が付与される、
ことを特徴とする請求項1記載の油圧ホースのスパイラル補強層の製造方法。
【請求項3】
前記油圧ホースの最内層はチューブで構成され、
前記油圧ホースの最外層はカバーで構成され、
前記マンドレルに前記チューブが被せられ、
最も内側のスパイラル補強層形成用の帯状部材から最も外側のスパイラル補強層形成用の帯状部材まで前記チューブの上に順に螺旋状に巻き付けられ、
最も外側のスパイラル補強層形成用の帯状部材が巻き付けられたならばその外周が前記カバーで覆われる、
ことを特徴とする請求項1記載の油圧ホースのスパイラル補強層の製造方法。
【請求項4】
最内層を構成するチューブと、
前記チューブの外周面に順次積層されスチールコードが螺旋状に巻回された複数のスパイラル補強層と、
前記複数のスパイラル補強層のうち最も外側に位置するスパイラル補強層の外周面に設けられ最外層を構成するカバーとを備え、
前記各スパイラル補強層は、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状のコートゴムに、複数のスチールコードがそれらの長さ方向を前記コートゴムの延在方向に沿わせて互いに平行に並べられた帯状部材が螺旋状に巻回されて構成されている、
ことを特徴とする油圧ホース。
【請求項5】
油圧ホースのスパイラル補強層を形成するための帯状部材であって、
前記帯状部材は、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状の未加硫のコートゴムと、前記コートゴムに保持された複数のスチールコードで構成され、
前記複数のスチールコードは、その長さ方向を前記コートゴムの延在方向に沿わせ前記コートゴムの幅方向に並べられて配設されている、
ことを特徴とする油圧ホースのスパイラル補強層形成用帯状部材。
【請求項6】
前記複数のスチールコードはそれらの全体が前記コートゴムの内部に埋設されている、
ことを特徴とする請求項5記載の油圧ホースのスパイラル補強層形成用帯状部材。
【請求項7】
前記複数のスチールコードはそれらの一部が前記コートゴムの表面に露出するように埋設されている、
ことを特徴とする請求項5記載の油圧ホースのスパイラル補強層形成用帯状部材。
【請求項8】
前記複数のスチールコードはそれらの断面の半部がそれらスチールコードの全長にわたって前記コートゴムの表面に露出するようにそれらの断面の残りの半部が埋設されている、
ことを特徴とする請求項5記載の油圧ホースのスパイラル補強層形成用帯状部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−58398(P2010−58398A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227211(P2008−227211)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】