説明

油圧制御装置

【課題】切替バルブの状態を適切なタイミングで強制的に切り替えることによりバルブスティックの発生を抑制する。
【解決手段】油圧回路に異常が生じたときに全てのソレノイドバルブをオフとすることにより、リニアソレノイドバルブSLTからの信号圧によりクラッチアプライリレーバルブを作動させてライン圧PLをクラッチに供給するものにおいて、Rポジション時にアクセル開度Accが閾値Accrefを超えており且つ車速Vが閾値Vref以上のときに(S140,S150)リニアソレノイドバルブSLTからの信号圧によりクラッチアプライリレーバルブを強制的に作動させるバルブスティック抑制制御を実行する(S160〜S180)。これにより、Rポジションから他のポジションに切り替え難いタイミングでバルブスティック抑制制御を実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後進段を形成可能な自動変速機を備える車両に搭載され、後進段用の摩擦係合要素を含む摩擦係合要素を係合させるための油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧制御装置としては、ライン圧を制御するパイロット付リリーフ弁と、ライン圧を減圧して油圧アクチュエータに供給するパイロット付減圧弁と、パイロット圧を制御するソレノイドバルブとを備え、エンジン始動時や車両の停車時に、パイロット圧を増圧させると共にライン圧を減圧させることにより、パイロット減圧弁のスプールを強制的に移動させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、スプールを強制移動させることにより、バルブボディーのシリンダボアに付着した異物を噛み切り、除去することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−46621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした油圧制御装置では、異物除去のためのスプールの強制移動は、油圧アクチュエータの制御に影響を与えない範囲内で行なう必要がある。例えば、上述した油圧制御装置では、エンジン始動時や車両の停車時にスプールを強制移動するが、スプールの強制移動が完了する前に油圧アクチュエータへの油圧の供給が必要となったときには、その供給に遅れが生じる場合がある。
【0005】
本発明の油圧制御装置は、切替バルブの状態を適切なタイミングで強制的に切り替えることによりバルブスティックの発生を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の油圧制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の油圧制御装置は、
後進段を形成可能な自動変速機を備える車両に搭載され、後進段用の摩擦係合要素を含む摩擦係合要素を係合させるための油圧制御装置であって、
油圧を発生させるポンプと、
前記ポンプにより発生した油圧を調圧してライン圧を生成する第1の調圧器と、
前記ライン圧を入力し、調圧して出力する第2の調圧器と、
信号圧の入力を受けて作動し、後進用ポジションにシフト操作されているとき、前記信号圧が第1の状態の場合には前記第2の調圧器からの出力圧を前記後進段用の摩擦係合要素の油圧室に伝達し、前記信号圧が第2の状態の場合には前記ライン圧を前記第2の調圧器を介さずに前記後進段用の摩擦係合要素の油圧室に伝達する切替バルブと、
前記切替バルブを駆動するための前記信号圧を出力する駆動部と、
所定条件が成立していないときには前記信号圧が前記第1の状態となるよう前記駆動部を制御し、前記所定条件が成立しているときには前記信号圧が前記第2の状態となるよう前記駆動部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記後進用ポジションにシフト操作されている状態でアクセル操作量が第1の閾値を超えるときには、前記所定条件の成立の有無に拘わらず、前記信号圧が一時的に前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わるよう前記駆動部を制御するバルブスティック抑制制御を実行する
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の油圧制御装置では、後進用ポジションにシフト操作されているとき、信号圧が第1の状態の場合には第2の調圧器からの出力圧を後進段用の摩擦係合要素の油圧室に伝達し、信号圧が第2の状態の場合にはライン圧を後進段用の摩擦係合要素の油圧室に伝達する切替バルブと、切替バルブを駆動するための信号圧を出力する駆動部と、所定条件が成立していないときには信号圧が第1の状態となるよう駆動部を制御し、所定条件が成立しているときには信号圧が前記第2の状態となるよう駆動部を制御する制御部とを備え、制御部は、後進用ポジションにシフト操作されている状態でアクセル操作量が所定操作量を超えるときには、所定条件の成立の有無に拘わらず、信号圧が一時的に第1の状態から第2の状態に切り替わるよう駆動部を制御するバルブスティック抑制制御を実行する。ライン圧が第2の調圧器を介さずに後進用の摩擦係合要素の油圧室に伝達されている状態から後進用ポジションから他のポジションにシフト操作されると、シフトショックを抑制するために、切替バルブを第2の状態から第1の状態に切り替えて第2の調圧器の出力圧を後進用の摩擦係合要素の油圧室に伝達する状態としてから、第2の調圧器により後進用の摩擦係合要素の油圧室から油をドレンして後進用の摩擦係合要素を開放する必要があるため、シフト操作に対するレスポンスに遅れが生じる場合がある。アクセルオンで後進走行しているときには、後進用ポジションから他のポジションへのシフト操作がなされ難いと考えられることから、こうしたタイミングに限定してバルブスティック抑制制御を実行することにより、上述した不都合を発生させることなく、バルブスティックの発生を抑制することができる。ここで、「所定条件」には、油圧制御装置に異常が生じた場合が含まれる。
【0009】
こうした本発明の油圧制御装置において、前記第1の閾値は、油温が高いほど低くなる傾向に設定される値であるものとすることもできる。油温が高いほどバルブスティック抑制制御を素早く完了させることができるから、油温に応じて第1の閾値を変更することにより、バルブスティック抑制制御の実行機会をより増やすことができる。
【0010】
また、本発明の油圧制御装置において、前記制御部は、前記後進用ポジションにシフト操作されている状態で車速が第2の閾値以上のときに前記バルブスティック抑制制御を実行するものとすることもできる。これは、所定車速以上で後進走行しているときには、後進用ポジションから他のポジションへのシフト操作がなされ難いと考えられることによる。この態様の本発明の油圧制御装置において、前記第2の閾値は、油温が高いほど低くなる傾向に設定される値であるものとすることもできる。油温が高いほどバルブスティック抑制制御を素早く完了させることができるから、油温に応じて第2の閾値を変更することにより、バルブスティック抑制制御の実行機会をより増やすことができる。
【0011】
或いは、本発明の油圧制御装置において、前記制御部は、前記後進用ポジションにシフト操作されている状態で油温が所定値以上のときに前記バルブスティック抑制制御を実行するものとすることもできる。
【0012】
前記駆動部は、前記信号圧により前記第1の調圧器を駆動するものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自動変速機20を搭載する車両10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】変速機構26の構成の概略を示す構成図である。
【図3】変速機構26の作動表の一例を示す説明図である。
【図4】変速機構26の各回転要素の回転速度の関係を示す速度線図である。
【図5】油圧回路40の構成の概略を示す構成図である。
【図6】ATECU29のCPUにより実行されるバルブスティック抑制制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図7】油温Toと閾値Accrefとの関係の一例を示す説明図である。
【図8】油温Toと閾値Vrefとの関係の一例を示す説明図である。
【図9】変形例のバルブスティック抑制制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は自動変速機20を搭載する車両10の構成の概略を示す構成図であり、図2は変速機構26の構成の概略を示す構成図であり、図3は変速機構26の作動表を示す説明図である。
【0016】
実施例の自動車10は、図1に示すように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16と、エンジン12のクランクシャフト14(図2参照)に接続されると共に左右の車輪19a,19bの車軸18a,18bに接続されてエンジン12からの動力を変速して車軸18a,18bに伝達する自動変速機20と、自動変速機20を制御する変速機用電子制御ユニット(以下、ATECUという)29と、車両全体をコントロールするメイン用電子制御ユニット(以下、メインECUという)80と、を備える。なお、メインECU80は、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPやアクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込みを検出するブレーキスイッチ86からのブレーキスイッチ信号BSW,車速センサ88からの車速Vなどが入力されている。実施例では、シフトレバー81のシフトポジションとして、駐車時に用いる駐車ポジション(Pポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション)、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、前進走行用の通常のドライブポジション(Dポジション)、アクセルオフ時にエンジンブレーキを作用させるローポジション(Lポジション)などが用意されている。また、メインECU80は、エンジンECU16やATECU29と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU16やATECU29と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0017】
自動変速機20は、図2に示すように、エンジン12からの動力を車軸18a,18bに伝達するトランスアクスル装置として構成されており、エンジン12のクランクシャフト14に接続された入力側のポンプインペラ24aと出力側のタービンランナ24bとからなるロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ24と、トルクコンバータ24のタービンランナ24bに接続された入力軸21と車軸18a,18bにギヤ機構27とデファレンシャルギヤ28とを介して接続された出力軸22とを有し入力軸21に入力された動力を変速して出力軸22に出力する有段の変速機構26と、変速機構26を駆動制御する油圧回路40(図1参照)と、を備える。ここで、本発明の油圧制御装置は、実施例では、油圧回路40と、ATECU29とが該当する。
【0018】
変速機構26は、6段変速の有段変速機として構成されており、シングルピニオン式の遊星歯車機構30とラビニヨ式の遊星歯車機構35と3つのクラッチC1,C2,C3と2つのブレーキB1,B2とワンウェイクラッチF1と、を備える。シングルピニオン式の遊星歯車機構30は、外歯歯車としてのサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31は自動変速機20のケースに固定されており、リングギヤ32は入力軸21に接続されている。ラビニヨ式の遊星歯車機構35は、外歯歯車の2つのサンギヤ36a,36bと、内歯歯車のリングギヤ37と、サンギヤ36aに噛合する複数のショートピニオンギヤ38aと、サンギヤ36bおよび複数のショートピニオンギヤ38aに噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のロングピニオンギヤ38bと、複数のショートピニオンギヤ38aおよび複数のロングピニオンギヤ38bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア39とを備え、サンギヤ36aはクラッチC1を介してシングルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に接続され、サンギヤ36bはクラッチC3を介してキャリア34に接続されると共にブレーキB1を介して自動変速機20のケースに接続され、リングギヤ37は出力軸22に接続され、キャリア39はクラッチC2を介して入力軸21に接続されている。また、キャリア39は、ワンウェイクラッチF1を介して自動変速機20のケースに接続されてその回転が一方向に規制されると共にワンウェイクラッチF1に対して並列的に設けられたブレーキB2を介して自動変速機20のケースに接続されている。
【0019】
変速機構26は、図3の作動表に示すように、クラッチC1〜C3の係合および開放ブレーキB1,B2の係合および開放により前進1速段〜6速段と後進段とニュートラルとを切り替えることができるようになっている。後進段は、クラッチC3とブレーキB2とを係合すると共にクラッチC1,C2とブレーキB1とを開放することにより形成することができる。また、前進1速段は、クラッチC1を係合すると共にクラッチC2,C3とブレーキB1,B2とを開放することにより形成することができる。この前進1速段は、エンジンブレーキ時には、ブレーキB2が係合される。前進2速段は、クラッチC1とブレーキB1とを係合すると共にクラッチC2,C3とブレーキB2とを開放することにより形成することができる。前進3速段は、クラッチC1,C3を係合すると共にクラッチC2とブレーキB1,B2とを開放することにより形成することができる。前進4速段は、クラッチC1,C2を係合すると共にクラッチC3とブレーキB1,B2とを開放することにより形成することができる。前進5速段は、クラッチC2,C3を係合すると共にクラッチC1とブレーキB1,B2とを開放することにより形成することができる。前進6速段は、クラッチC2とブレーキB1とを係合すると共にクラッチC1,C3とブレーキB2とを開放することにより形成することができる。また、ニュートラルは、ブレーキB2を係合すると共にクラッチC1〜C3とブレーキB1とを開放することにより形成したり、クラッチC1〜C3とブレーキB1,B2をすべて開放することにより形成することができる。実施例では、前者の係合パターンによりニュートラルを形成するものとしている。ここで、ブレーキB2は後進段を形成に必要な2つの摩擦係合要素のうちの一つであるから、ニュートラル時にブレーキB2を係合しておくことにより、ニュートラルから後進段に切り替える際にはクラッチC3だけを係合すればよく、後進段の形成を素早く行なうことができる。なお、前進1速段〜6速段と後進段のそれぞれにおける変速機構26の各回転要素の回転速度の関係を示す速度線図を図4に示す。
【0020】
変速機構26におけるクラッチC1〜C3の係合および開放とブレーキB1,B2の係合および開放は、図5に示す油圧回路40により行なわれる。油圧回路40は、図5に示すように、エンジン12からの動力により作動しストレーナ42を介して作動油を吸入してライン圧用油路51に圧送する機械式オイルポンプ44と、ライン圧用油路51に圧送された作動油を調圧してライン圧PLを生成するレギュレータバルブ46と、ライン圧PLから図示しないモジュレータバルブを介して生成されるモジュレータ圧PMODを調圧して信号圧として出力することによりレギュレータバルブ46を駆動するリニアソレノイドバルブSLTと、ライン圧用油路51に接続された入力ポート48aとドライブ圧用油路52に接続されたDポジション用出力ポート48bとリバース圧用油路53に接続されたRポジション用出力ポート48cなどが形成されシフトレバー81がDポジションに操作されているときには入力ポート48aとDポジション用出力ポート48bとを連通すると共に入力ポート48aとRポジション用出力ポート48cとの連通を遮断しRポジションに操作されているときには入力ポート48aとDポジション用出力ポート48bとの連通を遮断すると共に入力ポート48aとRポジション用出力ポート48cとを連通しNポジションに操作されているときには入力ポート48aとDポジション用出力ポート48bおよびRポジション用出力ポート48cとの連通を遮断するマニュアルバルブ48と、Dポジション用出力ポート48bからの出力圧であるドライブ圧を入力し調圧してクラッチC1の油室に出力するリニアソレノイドバルブSL1と、ドライブ圧を入力し調圧してクラッチC2の油室に出力するリニアソレノイドバルブSL2と、ライン圧PLを入力し調圧してSL3圧用油路54に出力するリニアソレノイドバルブSL3と、ドライブ圧を入力し調圧してブレーキB1の油室に出力するリニアソレノイドバルブSL4と、リニアソレノイドバルブSL3の出力圧であるSL3圧の連絡油路55への供給とライン圧PLの連絡油路55への供給とを選択的に行なうクラッチアプライリレーバルブ60と、連絡油路55からの油圧のクラッチC3の油室への供給とブレーキB2の油室への供給とを選択的に行なうと共にRポジション用出力ポート48cからの出力圧であるリバース圧のブレーキB2の油室への供給と遮断とを選択的に行なうクラッチアプライコントロールバルブ70と、クラッチアプライコントロールバルブ70に信号圧(S1圧)を出力するオンオフソレノイドバルブS1と、クラッチアプライリレーバルブ60に信号圧(S2圧)を出力するオンオフソレノイドバルブS2と、を備える。ここで、実施例では、各ソレノイドバルブSLT,SL1〜SL4,S1,S2のうちリニアソレノイドバルブSLTだけをノーマルオープン型のソレノイドバルブとして構成し、その他のソレノイドバルブSL1〜SL4,S1,S2をノーマルクローズ型のソレノイドバルブとして構成するものとした。
【0021】
クラッチアプライリレーバルブ60は、各種ポートが形成されたスリーブ62と、対応するポート間の連通と遮断とを行なうスプール64と、スプール64を付勢するスプリング66とを備えるスプールバルブとして構成されている。スリーブ62には、各種ポートとして、オンオフソレノイドバルブS2からスプリング66の付勢力と同方向にスプール64を押圧する信号圧を入力する第1の信号圧用入力ポート62aと、モジュレータ圧をスプリング66の付勢力と同方向にスプール74を押圧する信号圧として入力する第2の信号圧用入力ポート62bと、リニアソレノイドバルブSLTからスプリング66の付勢力と逆方向にスプール64を押圧する信号圧を入力する第3の信号圧用入力ポート62cと、ライン圧用油路51に接続された入力ポート62dと、SL3圧用油路54に接続された入力ポート62eと、連絡油路55に接続された出力ポート62fとが形成されている。このクラッチアプライリレーバルブ60では、第1の信号圧用入力ポート62aに入力される信号圧はスプール64を構成する各ランドのうち小径側のランドの端面を受圧面としてスプリング66の付勢力と同方向に押圧し、第2の信号圧用入力ポート62bに入力される信号圧はスプール64の小径側のランドと大径側のランドのランド間の段差面を受圧面としてスプリング66の付勢力と同方向に押圧し、第3の信号圧用入力ポート62cに入力される信号圧はスプール64の大径側のランドの端面を受圧面としてスプリング66の付勢力と逆方向に押圧する。スプール64は、スプリング66の付勢力と上記3つの信号圧による押圧力との力の釣り合いによって移動する。本実施例では、第2の信号圧用入力ポート62bにはモジュレータ圧が常時入力されており、オンオフソレノイドバルブS2とリニアソレノイドバルブSLTのいずれからも信号圧が入力されていないときや、リニアソレノイドバルブSLTからの信号圧の有無に拘わらずオンオフソレノイドバルブS2から第1の信号圧用入力ポート62aに信号圧(S2圧)が入力されているときには、スプリング66が伸張する方向にスプール64が位置し、入力ポート62dと出力ポート62fとの連通を遮断すると共に入力ポート62eと出力ポート62fとを連通する。これにより、SL3圧をSL3圧用油路54,クラッチアプライリレーバルブ60(入力ポート62e,出力ポート62f)を介して連絡油路55に出力することができる。一方、第1の信号圧用入力ポート62aに信号圧が入力されていない状態でリニアソレノイドバルブSLTから第3の信号圧用入力ポート62cへ設定圧Psetを超える信号圧が入力されたときには、スプリング66が収縮する方向にスプール64が移動し、入力ポート62dと出力ポート62fとを連通すると共に入力ポート62eと出力ポート62fとの連通を遮断する。これにより、ライン圧PLをライン圧用油路51,クラッチアプライリレーバルブ60(入力ポート62d,出力ポート62f)を介して連絡油路55に出力することができる。
【0022】
クラッチアプライコントロールバルブ70は、各種ポートが形成されたスリーブ72と、対応するポート間の連通と遮断とを行なうスプール74と、スプール74を付勢するスプリング76とを備えるスプールバルブとして構成されている。スリーブ72には、各種ポートとして、オンオフソレノイドバルブS1からスプリング76の付勢力と逆方向にスプール74を押圧する信号圧を入力する信号圧用入力ポート72aと、リバース圧用油路53に接続された入力ポート72bと、連絡油路55に接続された入力ポート72cと、クラッチC3の油室に連通するC3用油路56に接続された出力ポート72dと、ブレーキB2の油室に連通するB2用油路57に接続された出力ポート72eとが形成されている。このクラッチアプライコントロールバルブ70では、オンオフソレノイドバルブS1から信号圧用入力ポート72aにスプリング76の付勢力により定まる設定圧を超える信号圧が入力されているときには、スプリング76の付勢力に打ち勝つ押圧力によりスプール74が押圧されてスプリング76が収縮する方向にスプール74が移動し、入力ポート72bと出力ポート72eとの連通を遮断すると共に入力ポート72cと出力ポート72eとを連通し、入力ポート72cと出力ポート72dとの連通を遮断する。これにより、連絡油路55からの油圧(SL3圧或いはライン圧PL)を、連絡油路55,クラッチアプライコントロールバルブ70(入力ポート72cおよび出力ポート72e),B2用油路57を介してブレーキB2の油室に供給することができる。一方、信号圧用入力ポート72aに設定圧を超える信号圧が入力されていないときには、スプリング76が伸張する方向にスプール74が移動し、入力ポート72bと出力ポート72eとを連通すると共に入力ポート72cと出力ポート72dとを連通し、入力ポート72cと出力ポート72eとの連通を遮断する。これにより、連絡油路55からの油圧を、連絡油路55,クラッチアプライコントロールバルブ70(入力ポート72cおよび出力ポート72d),C3用油路56を介してクラッチC3の油室に供給することができると共に、マニュアルバルブ48からのリバース圧を、リバース圧用油路53,クラッチアプライコントロールバルブ70(入力ポート72bおよび出力ポート72e),B2用油路57を介してブレーキB2の油室に供給することができる。
【0023】
ATECU29は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。このATECU29には、油圧回路40内の油の温度を検出する温度センサ89からの油温Toなどが入力ポートを介して入力されており、リニアソレノイドバルブSL1〜SL4,SLTへの駆動信号やオンオフソレノイドバルブS1,S2への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、ATECU29は、前述したように、通信ポートを介してメインECU80と通信しており、各種制御信号やデータをやり取りしている。
【0024】
こうして構成された実施例の自動変速機20では、通常時には、オンオフソレノイドバルブS1をオフとし、クラッチアプライコントロールバルブ70の入力ポート72cと出力ポート72dとを連通してリニアソレノイドバルブSL3からのSL3圧をクラッチC3の油室に供給可能な状態とし、前進1速のときのエンジンブレーキ時やシフトレバー81がNポジションやPポジションにある場合などには、オンオフソレノイドバルブS1をオンとし、クラッチアプライコントロールバルブ70の入力ポート72cと出力ポート72eとを連通してリニアソレノイドバルブSL3からのSL3圧をブレーキB2に供給可能な状態とする。
【0025】
また、実施例の自動変速機20では、シフトレバー81がRポジションにあるときには、オンオフソレノイドバルブS2をオフとし、シフトレバー81がRポジション以外のポジションにある等の条件が成立しているときにはオンオフソレノイドバルブS2をオンとする。
【0026】
さらに、実施例の自動変速機20では、油圧回路40の状態(ソレノイドバルブSLT,SL1〜SL4,S1,S2の通電状態や回路内の油圧状態)を監視しており、油圧回路40に何らかの異常が生じると、全てのソレノイドバルブSLT,SL1〜SL4,S1,S2をオフとする。いま、シフトレバー81がRポジションにある場合を考える。ここで、シフトレバー81がRポジションにあるときには、オンオフソレノイドバルブS1およびオンオフソレノイドバルブS2は共にオフとされる。本実施例では、リニアソレノイドバルブSL1〜SL4とオンオフソレノイドバルブS1,S2とをノーマルクローズ型のソレノイドバルブとして構成し、リニアソレノイドバルブSLTをノーマルオープン型のソレノイドバルブとして構成しているから、全てのソレノイドバルブSLT,SL1〜SL4,S1,S2がオフされると、リニアソレノイドバルブSLTからの出力圧(信号圧)は最大となり、他のソレノイドバルブSL1〜SL4,S1,S2からの出力圧は値0となる。このため、クラッチアプライリレーバルブ60では、第1の信号圧用入力ポート62aには信号圧が入力されず、第3の信号圧用入力ポート62cにはリニアソレノイドバルブSLTからの信号圧が入力されるから、スプリング66が収縮する方向にスプール64が移動し、入力ポート62dと出力ポート62eとを連通する。これにより、ライン圧をクラッチアプライリレーバルブ60(入力ポート62d,出力ポート62e)とクラッチアプライコントロールバルブ70とを介してクラッチC3の油室に供給し、ライン圧PLによってクラッチC3を係合することができる。Rポジション時にはマニュアルバルブ48からのリバース圧によってブレーキB2が係合されているから、油圧回路40に異常が生じても、後進段を形成して走行を継続することができる。本実施例では、クラッチアプライリレーバルブ60は、スプール64の移動は油圧回路40に異常が生じた場面などに限定され、その作動頻度が少ないため、異物が堆積しやすく、バルブの作動不良(バルブスティック)が生じる場合がある。したがって、バルブスティックの発生を抑制するために、適度な頻度でリニアソレノイドバルブSLTからの信号圧によってクラッチアプライリレーバルブ60を強制的に作動させ、バルブに堆積する異物を除去することが望ましい。
【0027】
次に、クラッチアプライリレーバルブ60のバルブスティックを抑制するための動作について説明する。図6は、ATECU29のCPUにより実行されるバルブスティック抑制制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0028】
バルブスティック抑制制御ルーチンが実行されると、ATECU29のCPUは、まず、アクセル開度Accや車速V,シフトポジションSP,油圧回路40内に設けられた温度センサ89からの油温Toなどの制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、アクセル開度Accと車速VとシフトポジションSPは、それぞれアクセルペダルポジションセンサ84と車速センサ88とシフトポジションセンサ82により検出されたものをメインECU80から通信により入力するものとした。
【0029】
こうして必要なデータを入力すると、入力したシフトポジションSPがRポジションか否かを判定する(ステップS110)。シフトポジションSPがRポジション以外のポジションであるときにはバルブスティック抑制制御の実行に適さないと判断し、そのまま本ルーチンを終了する。一方、シフトポジションSPがRポジションのときには、バルブスティック抑制制御実行フラグFがOFFであるか否かを判定する(ステップS120)。バルブスティック抑制制御実行フラグFがOFFと判定されると、入力した油温Toに基づいてアクセル開度用の閾値Accrefと車速用の閾値Vrefを設定し(ステップS130)、入力したアクセル開度Accが閾値Accrefよりも大きいか否か(ステップS140)、入力した車速Vが閾値Vref以上か否か(ステップS150)をそれぞれ判定する。ここで、閾値Accrefと閾値Vrefは、後進走行が後述するバルブスティック抑制制御の実行時間の間継続、即ちシフトレバー81がバルブスティック抑制制御の実行時間の間Rポジションに維持されるか否かを判断するための閾値である。閾値Accrefは、本実施例では、閾値Accrefと油温Toとの関係を予め求めてアクセル開度用閾値設定マップとしてROMに記憶しておき、油温Toが与えられるとマップから対応する閾値Accrefを導出することにより設定するものとした。また、閾値Vrefは、本実施例では、閾値Vrefと油温Toとの関係を予め求めて車速用閾値設定マップとしてROMに記憶しておき、油温Toが与えられるとマップから対応する閾値Vrefを導出することにより設定するものとした。アクセル開度用閾値設定マップの一例を図7に示し、車速用閾値設定マップの一例を図8に示す。閾値Accrefと閾値Vrefは、いずれも油温Toが高いほど低くなる傾向に設定される。これは、アクセル開度Accや車速Vが高いほどシフトレバー81がRポジションから他のポジションに切り替え難いと判断することができる一方、油温Toが高いほど油の粘性が低くリニアソレノイドバルブSLTの信号圧の立ち上がりが早くなってスプール64の移動を短時間で行なうことができるため、アクセル開度Accや車速Vが低くてもRポジションから他のポジションに切り替えられる前にスプール64の移動を完了させることができると考えられることに基づく。なお、図7および図8中の「Tomin」は、バルブスティック抑制制御を実行することのできる下限油温であり、油温Toが下限油温Tomin未満となると、アクセル開度Accや車速Vに拘わらずバルブスティック抑制制御が実行されないよう閾値Accref,Vrefとして後進走行時では通常取り得ない値が設定される。
【0030】
アクセル開度Accが閾値Accrefよりも大きく且つ車速Vが閾値Vref以上と判定されたときには、油圧指令PL*を高圧Phiに設定し(ステップS160)、ライン圧PLが油圧指令PL*に応じた油圧となるようリニアソレノイドバルブSLTを駆動制御し(ステップS170)、バルブスティック抑制制御実行フラグFをONとすると共にタイマTiをスタートさせて(ステップS180)、本ルーチンを終了する。これにより、リニアソレノイドバルブSLTから出力される信号圧は増圧されるため、この増圧された信号圧によってクラッチアプライリレーバルブ60のスプール64はスプリング66が収縮する方向に移動する。このとき、バルブ内に付着している異物はスプール64の移動に伴って除去される。なお、アクセル開度Accが閾値Accref以下と判定されたり、車速Vが閾値Vref未満と判定されると、バルブスティック抑制制御の実行に適さないと判断して、そのまま本ルーチンを終了する。
【0031】
ステップS120でバルブスティック抑制制御実行フラグFがONと判定されると、タイマTiが所定時間Tiref経過したか否かを判定し(ステップS190)、タイマTiが所定時間Tiref経過していないと判定されたときには、バルブスティック抑制制御の実行を継続したまま、本ルーチンを終了し、タイマTiが所定時間Tiref経過していると判定されると、油圧指令PL*を通常圧Pnorに戻し(ステップS200)、ライン圧PLが油圧指令PL*に応じた油圧となるようリニアソレノイドバルブSLTを駆動制御し(ステップS210)、バルブスティック抑制制御実行フラグFをOFFとすると共にタイマTiをクリアして(ステップS220)、本ルーチンを終了する。ここで、所定時間Tirefは、バルブスティック抑制制御の実行時間、即ちスプール64の移動に要する時間を示す閾値であり、油温Toが高いほど短くなるように設定することができる。なお、通常圧Pnorは、後進時における要求トルクによってクラッチC3のトルク容量を変化させるタイプの自動変速機20では、要求トルクに応じて設定されることになる。
【0032】
以上説明した実施例の油圧制御装置によれば、油圧回路40に異常が生じたときに全てのソレノイドバルブSLT,SL1〜SL4,S1,S2をオフとすることにより、リニアソレノイドバルブSLTからの信号圧によりクラッチアプライリレーバルブ60を作動させてライン圧PLをクラッチC3に供給するものにおいて、Rポジション時にアクセル開度Accが閾値Accrefを超えており且つ車速Vが閾値Vref以上のときにリニアソレノイドバルブSLTからの信号圧によりクラッチアプライリレーバルブ60を強制的に作動させるバルブスティック抑制制御を実行するから、シフトレバー81がRポジションから他のポジションに切り替え難いタイミングでバルブスティック抑制制御を実行することができる。この結果、バルブスティック抑制制御の実行中にシフトレバー81がRポジションから他のポジションに切り替えられるなどの不都合を発生させることなく、適切な頻度でバルブスティック抑制制御を実行して、バルブ内の異物を除去することができる。
【0033】
実施例の油圧制御装置では、アクセル開度Accが閾値Accrefを超えており且つ車速Vが閾値Vref以上のときを条件としてバルブスティック抑制制御を実行するものとしたが、これら2つの条件のいずれか一方を省略するものとしてもよいし、他の条件を加えるものとしてもよい。
【0034】
実施例の油圧制御装置では、油温Toに基づいて閾値Accref,閾値Vrefとを変更するものとしたが、いずれか一方または両方の閾値に一定値を用いるものとしてもよい。この場合、バルブスティック抑制制御の実行条件として油温Toが閾値以上である条件を加えるものとしてもよい。この場合における変形例のバルブスティック抑制制御ルーチンを図9に示す。図9の変形例のバルブスティック抑制制御ルーチンでは、図6の実施例のバルブスティック抑制制御ルーチンのステップS130〜S150に代えてステップS130B〜S150Bが実行される。具体的には、ステップS120でバルブスティック抑制制御実行フラグFがOFFと判定されたときに、油温Toが閾値Toref以上か否か(ステップS130B)、アクセル開度Accが閾値Accrefを超えているか否か(ステップS140B)、車速Vが閾値Vref以上か否か(ステップS150B)をそれぞれ判定し、各判定でいずれもが肯定的な判定のときにステップS160〜S180のバルブスティック抑制制御が実行される。
【0035】
実施例の油圧制御装置では、シフトレバー81がRポジションの場合に全てのソレノイドバルブSLT,SL1〜SL4,S1,S2がオフとされたときに、ライン圧PLによりクラッチC3を係合して後進段を形成するものとしたが、シフトレバー81がDポジションの場合にも全てのソレノイドバルブSLT,SL1〜SL4,S1,S2がオフとされたときに、特定の前進用の変速段が形成されるよう油圧回路40を構成するものとしてもよい。
【0036】
実施例では、前進1速〜6速の6段変速の変速機構26を組み込むものとしたが、これに限定されるものではなく、4段変速や5段変速,8段変速など、如何なる段数の自動変速機を組み込むものとしてもよい。
【0037】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、クラッチC3が「後進段用の摩擦係合要素」に相当し、機械式オイルポンプ42が「ポンプ」に相当し、レギュレータバルブ44が「第1の調圧器」に相当し、リニアソレノイドバルブSL3が「第2の調圧器」に相当し、クラッチアプライリレーバルブ60などが「切替バルブ」に相当し、リニアソレノイドバルブSLTが「駆動部」に相当し、図6や図9のバルブスティック抑制制御ルーチンを実行するATECU29が「制御部」に相当する。ここで、「第2の調圧器」としては、ライン圧PLから最適なクラッチ圧を生成してクラッチやブレーキをダイレクトに制御するダイレクト制御用のリニアソレノイドバルブとして構成するものに限定されるものではなく、リニアソレノイドをパイロット制御用のリニアソレノイドとして用いて別途コントロールバルブを駆動することによりこのコントロールバルブによりクラッチ圧を生成してクラッチやブレーキを制御するものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、自動車産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、16 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、18a,18b 車軸、19a,19b 車輪、20 自動変速機、21 入力軸、22 出力軸、24 トルクコンバータ、24a ポンプインペラ、24b タービンランナ、26 変速機構、27 ギヤ機構、28 デファレンシャルギヤ、29 変速機用電子制御ユニット(ATECU)、30 シングルピニオン式の遊星歯車機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 ラビニヨ式の遊星歯車機構、36a,36b サンギヤ、37 リングギヤ、38a ショートピニオンギヤ、38b ロングピニオンギヤ、39 キャリア、40 油圧回路、42 ストレーナ、44 機械式オイルポンプ、46 レギュレータバルブ、48 マニュアルバルブ、48a 入力ポート、48b Dポジション用出力ポート、48c Rポジション用出力ポート、51 ライン圧用油路、52 ドライブ圧用油路、53 リバース圧用油路、54 SL3圧用油路、55 連絡油路、56 C3用油路、57 B2用油路、60 クラッチアプライリレーバルブ、62 スリーブ、62a 第1の信号圧用入力ポート、62b 第2の信号圧用入力ポート、62c 第3の信号圧用入力ポート、62d,62e 入力ポート、62f 出力ポート、64 スプール、66 スプリング、70 クラッチアプライコントロールバルブ、72 スリーブ、72a 信号圧用入力ポート、72b,72c 入力ポート、72d,62e 出力ポート、74 スプール、76 スプリング、80 メイン電子制御ユニット(メインECU)、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキスイッチ、88 車速センサ、C1〜C3 クラッチ、B1,B2 ブレーキ、SL1〜SL4,SLT リニアソレノイドバルブ、S1,S2 オンオフソレノイドバルブ、F1 ワンウェイクラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後進段を形成可能な自動変速機を備える車両に搭載され、後進段用の摩擦係合要素を含む摩擦係合要素を係合させるための油圧制御装置であって、
油圧を発生させるポンプと、
前記ポンプにより発生した油圧を調圧してライン圧を生成する第1の調圧器と、
前記ライン圧を入力し、調圧して出力する第2の調圧器と、
信号圧の入力を受けて作動し、後進用ポジションにシフト操作されているとき、前記信号圧が第1の状態の場合には前記第2の調圧器からの出力圧を前記後進段用の摩擦係合要素の油圧室に伝達し、前記信号圧が第2の状態の場合には前記ライン圧を前記後進段用の摩擦係合要素の油圧室に伝達する切替バルブと、
前記切替バルブを駆動するための前記信号圧を出力する駆動部と、
所定条件が成立していないときには前記信号圧が前記第1の状態となるよう前記駆動部を制御し、前記所定条件が成立しているときには前記信号圧が前記第2の状態となるよう前記駆動部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記後進用ポジションにシフト操作されている状態でアクセル操作量が第1の閾値を超えるときには、前記所定条件の成立の有無に拘わらず、前記信号圧が一時的に前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わるよう前記駆動部を制御するバルブスティック抑制制御を実行する
ことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
前記第1の閾値は、油温が高いほど低くなる傾向に設定される値であることを特徴とする請求項1記載の油圧制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記後進用ポジションにシフト操作されている状態で車速が第2の閾値以上のときに前記バルブスティック抑制制御を実行することを特徴とする請求項1または2記載の油圧制御装置。
【請求項4】
前記第2の閾値は、油温が高いほど低くなる傾向に設定される値であることを特徴とする請求項3記載の油圧制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記後進用ポジションにシフト操作されている状態で油温が所定値以上のときに前記バルブスティック抑制制御を実行することを特徴とする請求項1または3記載の油圧制御装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記信号圧により前記第1の調圧器を駆動することを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項に記載の油圧制御装置。
【請求項7】
前記所定条件は、前記油圧制御装置に異常が生じたときに成立する条件である請求項1ないし6いずれか1項に記載の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−87937(P2013−87937A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232202(P2011−232202)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】