説明

油圧閉回路システム

【課題】双方向油圧ポンプの回転初動時の流量及び圧力の立ち上がり特性を改善可能な油圧閉回路システムを提供すること。
【解決手段】第一ポート3b及び第二ポート3cを有する油圧シリンダ3を駆動可能な油圧閉回路システム100は、第一管路C1を通じて第一ポート3bに流体的に連通される第一ポンプポート1aと第二管路C2を通じて第二ポート3cに流体的に連通される第二ポンプポート1bとを有する油圧ポンプ1と、油圧ポンプ1の回転を制御する電動モータ2と、第一管路C1及び第二管路C2のそれぞれに配置されるリリーフ弁20L、20Rと、リリーフ弁20L、20Rのそれぞれに対し並列に接続されるチェック弁21L、21Rであり、油圧ポンプ1から油圧シリンダ3への作動油の流れを止めるチェック弁21L、21Rと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダ又は油圧モータを駆動可能な油圧閉回路システムに関し、特に、電動モータによって駆動される油圧ポンプを備えた油圧閉回路システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、双方向油圧ポンプにより油圧モータを駆動する油圧駆動装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
この油圧駆動装置は、作動油タンクと方向切換弁との間に配置される双方向油圧ポンプの周りに4つのチェック弁を配置する。この構成により、油圧駆動装置は、その双方向油圧ポンプが何れの方向に回転したとしても、作動油タンクから吸入された作動油が同じ経路で方向切換弁に流入できるようにする油圧開回路システムを実現する。
【0004】
上述の4つのチェック弁のうちの2つは、双方向油圧ポンプの2つのポートのそれぞれと作動油タンクとの間に配置され、双方向油圧ポンプから作動油タンクへの逆流を防止する。その結果、回転する双方向油圧ポンプが停止した場合、双方向油圧ポンプの2つのポートのそれぞれにおける圧力は、作動油タンクにおける圧力以上の圧力に維持されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−310267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の4つのチェック弁の配置は、作動油が常に同じポートを通じて方向切換弁に流入できるようにすることのみを目的としており、双方向油圧ポンプの回転初動時の流量及び圧力の立ち上がり特性を改善することを目的としていない。そのため、特許文献1に記載の装置は、回転する双方向油圧ポンプが停止した場合の双方向油圧ポンプの2つのポートのそれぞれにおける圧力を制御する手段を有しておらず、2つのポートのそれぞれにおける圧力を所望の圧力に制御することもできない。したがって、特許文献1に記載の装置は、双方向油圧ポンプの回転初動時の流量及び圧力の立ち上がり特性を改善することができない。
【0007】
上述の点に鑑み、本発明は、双方向油圧ポンプの回転初動時の流量及び圧力の立ち上がり特性を改善可能な油圧閉回路システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る油圧閉回路システムは、第一ポート及び第二ポートを有する油圧シリンダ又は油圧モータを駆動可能な油圧閉回路システムであって、第一管路を通じて前記第一ポートに流体的に連通される第一ポンプポートと第二管路を通じて前記第二ポートに流体的に連通される第二ポンプポートとを有する油圧ポンプと、前記油圧ポンプの回転を制御する電動モータと、前記第一管路及び前記第二管路のそれぞれに配置されるリリーフ弁と、前記リリーフ弁のそれぞれに対し並列に接続されるチェック弁であり、前記油圧ポンプから前記油圧シリンダ又は前記油圧モータへの作動油の流れを止めるチェック弁と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述の手段により、本発明は、双方向油圧ポンプの回転初動時の流量及び圧力の立ち上がり特性を改善可能な油圧閉回路システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る油圧閉回路システムの構成例を示す概略図である。
【図2】油圧ポンプを回転させたときの油圧閉回路システムの状態を示す図である。
【図3】図2における回転中の油圧ポンプを停止させたときの油圧閉回路システムの状態を示す図である。
【図4】図5の一点鎖線で示す油圧ポンプの断面を矢印IVで示す方向から見た断面図である。
【図5】図4の一点鎖線で示す面に含まれるバルブプレートのスライド面を矢印Vで示す方向から見た図である。
【図6】リリーフ弁の設定圧の違いによる油圧ポンプの吐出圧の立ち上がり時間の変化を説明する図である。
【図7】本発明の別の実施例に係る油圧閉回路システムの構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る油圧閉回路システム100の構成例を示す概略図である。
【0013】
油圧閉回路システム100は、電動モータ2によって回転制御される油圧ポンプ1で油圧シリンダ3を駆動するシステムである。油圧シリンダ3は、例えば、大負荷容量油圧駆動式大型平面研削盤のテーブルを駆動するために用いられる。
【0014】
本実施例では、油圧閉回路システム100は、主に、油圧ポンプ1、電動モータ2、油圧シリンダ3、安全弁4L、4R、シャトル弁7、センサ9、制御装置10、リリーフ弁20L、20R、及びチェック弁21L、21Rで構成される。
【0015】
油圧ポンプ1は、油圧シリンダ3を駆動する装置であり、例えば、固定容量型又は可変容量型の斜板式双方向アキシャルピストンポンプである。なお、油圧ポンプ1は、固定容量型又は可変容量型の斜軸式アキシャルピストンポンプであってもよく、固定容量型又は可変容量型のラジアルピストンポンプであってもよい。
【0016】
電動モータ2は、油圧ポンプ1の回転を制御する装置であり、例えば、ACサーボモータである。具体的には、電動モータ2は、例えば、油圧ポンプ1の回転速度を可変制御する。
【0017】
油圧シリンダ3は、ピストン3aによって隔てられる第一油室3L及び第二油室3Rを有する油圧アクチュエータである。第一油室3Lは、第一ポート3b及び管路C1を通じて、油圧ポンプ1の第一ポンプポート1aに流体的に連通され、第二油室3Rは、第二ポート3c及び管路C2を通じて、油圧ポンプ1の第二ポンプポート1bに流体的に連通される。本実施例において、油圧シリンダ3は、ピストン3aの両側に延びる2つのロッドを備えた両ロッドシリンダであり、2つのロッドのうちの一方が平面研削盤テーブル(図示せず。)に結合される。なお、油圧シリンダ3は、ピストン3aの片側に延びる1つのロッドを備えた片ロッドシリンダであってもよく、平面研削盤テーブルが直接的にピストン3aに結合されるような、ロッドのない構成であってもよい。
【0018】
安全弁4Lは、管路C1内の圧力が所定の設定圧以上となった場合に、管路C1内の作動油を作動油タンクT1に逃がすための弁である。また、安全弁4Rは、管路C2内の圧力が所定の設定圧以上となった場合に、管路C2内の作動油を作動油タンクT1に逃がすための弁である。
【0019】
安全弁4Lは、作動油タンクT1に流体的に連通される管路C3と管路C1とを繋ぐ管路C4上に配置され、安全弁4Rは、管路C3と管路C2とを繋ぐ管路C5上に配置される。
【0020】
シャトル弁7は、管路C1又は管路C2と作動油タンクT1との間の作動油の流れを制御する弁であり、1つの一次側ポート7aと2つの二次側ポート7b、7cとを有する。
【0021】
一次側ポート7aは、管路C11を介して、作動油タンクT1に流体的に連通され、二次側ポートの一方7bは、管路C7を介して、管路C1に流体的に連通され、二次側ポートの他方7cは、管路C8を介して、管路C2に流体的に連通される。
【0022】
具体的には、シャトル弁7は、管路C1内の圧力が作動油タンクT1の圧力よりも低い場合、二次側ポート7bを通じて、作動油タンクT1の作動油を管路C1内に導入する。また、シャトル弁7は、管路C2内の圧力が作動油タンクT1の圧力よりも低い場合、二次側ポート7cを通じて、作動油タンクT1の作動油を管路C2内に導入する。
【0023】
このように、シャトル弁7は、油圧ポンプ1が回転し、管路C1及び管路C2のうちの一方における作動油の圧力が作動油タンクT1における作動油の圧力未満となった場合に、すなわち、作動油が不足した場合に、作動油タンクT1における作動油によってその不足を補うようにする。
【0024】
センサ9は、油圧シリンダ3の動作状態を検出するセンサであり、例えば、ピストン3aの変位を検出する位置センサである。センサ9は、検出した値を制御装置10に対して出力する。
【0025】
制御装置10は、油圧閉回路システム100を制御するための装置であり、例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータである。
【0026】
また、制御装置10は、ユーザ入力に応じて、平面研削盤テーブルの所要移動距離(現在位置から目標位置までの距離)、すなわち、ピストン3aの所要移動距離を決定する。さらに、制御装置10は、決定したピストン3aの所要移動距離に応じて油圧ポンプ1の回転方向及び回転速度を決定し、決定した油圧ポンプ1の回転方向及び回転速度に対応する制御信号を電動モータ2に対して出力する。具体的には、制御装置10は、ピストン3aの所要移動距離が大きいほど油圧ポンプ1の回転速度が大きくなるように油圧ポンプ1の回転速度を決定する。また、制御装置10は、ピストン3aの所要移動距離が小さくなるにつれて、すなわち、目標位置に近づくにつれて、油圧ポンプ1の回転速度が小さくなるように、油圧ポンプ1の回転速度を決定する。
【0027】
また、制御装置10は、センサ9の出力に基づいてピストン3aの位置、すなわち、平面研削盤テーブルの位置を監視しながら、平面研削盤テーブルが目標位置に到達したか否かを判定する。
【0028】
平面研削盤テーブルが目標位置に到達したと判定した場合に、制御装置10は、油圧ポンプ1の回転を停止させるための制御信号を電動モータ2に対して出力する。
【0029】
リリーフ弁20Lは、管路C1上に配置され、一次側(油圧ポンプ1とリリーフ弁20Lとの間にある管路C1の一部)における作動油の圧力が所定の設定圧以上の場合に開弁し、一次側における作動油の圧力が所定の設定圧未満の場合に閉弁する。
【0030】
リリーフ弁20Rは、管路C2上に配置され、一次側(油圧ポンプ1とリリーフ弁20Rとの間にある管路C2の一部)における作動油の圧力が所定の設定圧以上の場合に開弁し、一次側における作動油の圧力が所定の設定圧未満の場合に閉弁する。
【0031】
なお、リリーフ弁20Lの所定の設定圧とリリーフ弁20Rの所定の設定圧は同じ値となるように設定される。また、リリーフ弁20L、20Rの所定の設定圧は、安全弁4L、4Rの所定の設定圧より低い値となるように設定される。
【0032】
チェック弁21Lは、管路C1における作動油の流れを制御する弁である。具体的には、チェック弁21Lは、リリーフ弁20Lの一次側と二次側(リリーフ弁20Lと油圧シリンダ3との間にある管路C1の一部)とを流体的に連通する管路C12上に配置される。そして、チェック弁21Lは、リリーフ弁20Lの一次側からリリーフ弁20Lの二次側への作動油の流れを禁止し、リリーフ弁20Lの一次側の圧力がリリーフ弁20Lの二次側の圧力より低い場合に限り、リリーフ弁20Lの二次側の作動油をリリーフ弁20Lの一次側に導入させる。
【0033】
チェック弁21Rは、管路C2における作動油の流れを制御する弁である。具体的には、チェック弁21Rは、リリーフ弁20Rの一次側と二次側(リリーフ弁20Rと油圧シリンダ3との間にある管路C2の一部)とを流体的に連通する管路C13上に配置される。そして、チェック弁21Rは、リリーフ弁20Rの一次側からリリーフ弁20Rの二次側への作動油の流れを禁止し、リリーフ弁20Rの一次側の圧力がリリーフ弁20Rの二次側の圧力より低い場合に限り、リリーフ弁20Rの二次側の作動油をリリーフ弁20Rの一次側に導入させる。
【0034】
次に、図2を参照しながら、油圧ポンプ1を回転させたときの油圧閉回路システム100の状態について説明する。なお、図2において、太い黒の実線は、管路C1、C4、C7、及びC12内の圧力がリリーフ弁20Lの設定圧よりも高い状態を表す。また、太い灰色の実線は、管路C2、C5、C8、及びC13内の圧力がリリーフ弁20Rの設定圧よりも低い状態を表す。なお、図2は、図の明瞭化のため、センサ9及び制御装置10の図示を省略している。
【0035】
図2で示すように、油圧閉回路システム100は、操作者の入力に応じて電動モータ2により油圧ポンプ1を回転させ、ピストン3a(平面研削盤テーブル)を矢印AR4で示す方向に移動させるように油圧シリンダ3を駆動する。
【0036】
電動モータ2によって油圧ポンプ1が回転させられると、油圧ポンプ1は、第一ポンプポート1aから作動油を吐出し、リリーフ弁20Lに向かう作動油の流れを形成する(矢印AR1参照。)。なお、管路C12では、チェック弁21Lの存在により、作動油の流れが形成されることはない。
【0037】
その結果、リリーフ弁20Lの一次側にある作動油の圧縮度が増大して圧力が上昇し、その一次側の圧力がリリーフ弁20Lの設定圧に達すると、リリーフ弁20Lが開弁する。
【0038】
一方、電動モータ2によって油圧ポンプ1が回転させられると、油圧ポンプ1は、第二ポンプポート1bに作動油を取り込み、リリーフ弁20R及びチェック弁21Rから油圧ポンプ1に向かう作動油の流れを形成する(矢印AR9参照。)。
【0039】
油圧ポンプ1の回転初動時には、油圧ポンプ1の第二ポンプポート1bでの取り込み量が、後述する油圧シリンダ3の第二ポート3cを通じた作動油の流出量を上回る。その結果、リリーフ弁20Rの一次側にある作動油の圧縮度が減少して圧力が低下する。リリーフ弁20Rの一次側にある作動油の圧力がリリーフ弁20Rの設定圧未満であれば、リリーフ弁20Rは閉弁する。
【0040】
リリーフ弁20Lが開弁すると、油圧ポンプ1は、第一ポンプポート1aから作動油を吐出することによって、リリーフ弁20Lを経由して油圧シリンダ3の第一ポート3bに向かう作動油の流れを形成する(矢印AR2及びAR3参照。)。なお、管路C4では、安全弁4Lの存在により、作動油の流れが形成されることはなく、管路C7でも、シャトル弁7の存在により、作動油の流れが形成されることはない。
【0041】
油圧シリンダ3の第一ポート3bを通じて作動油が第一油室3Lに流入すると、油圧シリンダ3のピストン3aは、第一油室3Lの体積が増大する方向、すなわち図中右方向に移動する(矢印AR4参照。)。
【0042】
ピストン3aが右方向に移動すると、第二油室3Rの体積は減少し、第二油室3R内の作動油が第二ポート3cを通じて管路C2に流出する。
【0043】
このようにして、油圧ポンプ1は、油圧シリンダ3の第二ポート3cからリリーフ弁20R及びチェック弁21Rに向かう作動油の流れを形成する(矢印AR5及びAR6参照。)。なお、リリーフ弁20Rは、その一次側の圧力に応じて開弁・閉弁を切り換えるが、その二次側の圧力に応じて開弁・閉弁を切り換えることはない。また、チェック弁21Rは、リリーフ弁20Rの一次側の圧力がリリーフ弁20Rの二次側の圧力より低い場合に、リリーフ弁20Rの二次側の作動油をリリーフ弁20Rの一次側に導入させる。なお、リリーフ弁20Rの一次側の圧力は、油圧ポンプ1の回転により管路C2内の作動油が油圧ポンプ1に取り込まれるため、リリーフ弁20Rの二次側より低くなっている。
【0044】
その結果、油圧ポンプ1は、油圧シリンダ3の第二ポート3cから管路C13すなわちチェック弁21Rを通じて油圧ポンプ1の第二ポンプポート1bに向かう作動油の流れを形成する(矢印AR5〜AR8参照。)。なお、図2では、リリーフ弁20Rの一次側の圧力は、リリーフ弁20Rの設定圧よりも低い。そのため、リリーフ弁20Rを通じた、リリーフ弁20Rの二次側からリリーフ弁20Rの一次側への作動油の流れが形成されることはない。但し、リリーフ弁20Rの一次側の圧力が設定圧より高い場合には、リリーフ弁20Rを通じた、リリーフ弁20Rの二次側からリリーフ弁20Rの一次側への作動油の流れが形成される。
【0045】
なお、管路C2内の圧力が作動油タンクT1の圧力未満であれば、シャトル弁7は、二次側ポート7c及び管路C8を通じて作動油タンクT1の作動油を管路C2に供給する。この作動油の流れは、管路C2内の圧力が作動油タンクT1の圧力に達した場合に消失する。
【0046】
また、図2では、ピストン3aを右側に移動させる場合の油圧閉回路システム100の状態を代表例として示すが、ピストン3aを左側に移動させる場合にも、作動油が流れる方向とその圧力の状態が左右で反対となることを除き、同様の説明が適用され得る。
【0047】
次に、図3〜図5を参照しながら、図2における回転中の油圧ポンプ1を停止させたときの油圧閉回路システム100の状態について説明する。なお、図3において、太い黒の点線は、管路C1、C4、C7、及びC12内の圧力、並びに、油圧ポンプ1とリリーフ弁20Rとチェック弁21Rとの間の圧力がリリーフ弁20L、20Rの設定圧と等しい状態を表す。また、太い灰色の実線は、管路C5及びC8内の圧力、並びに、油圧シリンダ3とリリーフ弁20Rとチェック弁21Rとの間の圧力がリリーフ弁20Rの設定圧よりも低い状態を表す。なお、図3は、図の明瞭化のため、センサ9及び制御装置10の図示を省略している。
【0048】
図4及び図5は、油圧ポンプ1の構造を説明するための概略図であり、図4は、図5の一点鎖線で示す油圧ポンプ1の断面を矢印IVで示す方向から見た断面図であり、図5は、図4の一点鎖線で示す面に含まれるバルブプレート40のスライド面40aを矢印Vで示す方向から見た図である。なお、図4及び図5に示す油圧ポンプ1は、回転中であり、第一ポンプポート1aが吐出ポートを構成し、第二ポンプポート1bが吸入ポートを構成する。また、図4及び図5における高密度のドットパターンは、第一ポンプポート1aにおける作業油の圧力が比較的高いことを表し、低密度のドットパターンは、第二ポンプポート1bにおける作業油の圧力が比較的低いことを表す。
【0049】
図4及び図5で示すように、油圧ポンプ1は、主に、バルブプレート40、シリンダブロック41、ピストン43、シュー45、及び斜板46から構成される。
【0050】
バルブプレート40は、第一ポンプポート1a及び第二ポンプポート1bを内部に形成する非回転部材である。本実施例では、バルブプレート40は、円柱形状であり、シリンダブロック41とスライド可能に接触するスライド面40aを有する。また、第一ポンプポート1a及び第二ポンプポート1bのそれぞれは、円弧状の開口をスライド面40aに形成する。
【0051】
シリンダブロック41は、複数のピストン室42及び複数のピストンポート44をその内部に形成する回転部材である。本実施例では、シリンダブロック41は、9つのピストン室42−1〜42−9及び9つのピストンポート44−1〜44−9を備え、ポンプ回転軸1X周りを回転する。
【0052】
ピストン43は、シリンダブロック41のピストン室42においてポンプ回転軸1Xに平行な方向に往復動する部材である。また、ピストン43は、シリンダブロック41と共に、ポンプ回転軸1Xの周りを回転する。本実施例では、ピストン43は、9つのピストン室42−1〜42−9のそれぞれに収容される9つのピストン43−1〜43−9で構成される。
【0053】
シュー45は、ピストン43の一端に3軸周りに回動可能に接続され、且つ、斜板46のスライド面46a上におけるポンプ回転軸1Xを中心とする円の円周上をスライド可能に斜板46に結合される部材である。また、シュー45は、シリンダブロック41及びピストン43と共に、ポンプ回転軸1Xの周りを回転する。本実施例では、シュー45は、略半球体であり、9つのピストン43−1〜43−9のそれぞれに接続される9つのシュー45−1〜45−9で構成される。
【0054】
斜板46は、ピストン43のストロークを決定する非回転部材であり、シュー45がスライド可能なスライド面46aを提供する。本実施例では、斜板46は、ポンプ回転軸1Xに対してスライド面46aが形成する角度である傾斜角θであり、ピストン43のストロークを決定する傾斜角θを固定値とし、油圧ポンプ1が固定容量型となるように構成される。
【0055】
図5に示す9つの破線円のそれぞれは、9つのピストンポート44−1〜44−9のそれぞれの現在の位置を示す。また、図5は、4つのピストンポート44−4〜44−7が第一ポンプポート1aに流体的に連通し、3つのピストンポート44−1、44−2、及び44−9と、2つのピストンポート44−3及び44−8のそれぞれの一部とが第二ポンプポート1bに流体的に連通した状態を示す。
【0056】
9つのピストンポート44−1〜44−9のそれぞれは、図5の矢印AR10で示すように、第一ポンプポート1a及び第二ポンプポート1bのそれぞれの円弧状の開口の上を辿るように、ポンプ回転軸1Xの周りを回転する。本実施例では、第一ポンプポート1aの開口上を通過するピストンポートに接続されるピストン室から第一ポンプポート1aに対して比較的高圧の作動油が吐出され、第二ポンプポート1bの開口上を通過するピストンポートに接続されるピストン室に第二ポンプポート1bからの比較的低圧の作動油が取り込まれる。
【0057】
また、バルブプレート40は、スライド面40a上に開口し、且つ、第一ポンプポート1aの内壁に接続される小穴50を有する。小穴50は、第一ポンプポート1a(吐出ポート)の開口に流体的に接続されていたピストンポートが、第二ポンプポート1b(吸入ポート)の開口に流体的に接続される際の急激な圧力変化を緩和するためのものである。具体的には、図5のピストンポート44−8で示すように、ピストンポート44−8の一部が第二ポンプポート1bに流体的に接続されたときに、小穴50を通じて第一ポンプポート1aの作動油を第二ポンプポート1bに導入させる(矢印AR11参照。)。これにより、ピストンポート44−8が完全に第一ポンプポート1aに流体的に接続される前に、比較的低圧の第二ポンプポート1bにおける作動油の圧力を増大させる。
【0058】
また、バルブプレート40は、スライド面40a上に開口し、且つ、第二ポンプポート1bの内壁に接続される小穴51を有する。小穴51は、第二ポンプポート1b(吸入ポート)の開口に流体的に接続されていたピストンポートが、第一ポンプポート1a(吐出ポート)の開口に流体的に接続される際の急激な圧力変化を緩和するためのものである。具体的には、ピストンポートの一部が第一ポンプポート1aに流体的に接続されたときに、小穴51を通じて第一ポンプポート1aの作動油を対応するピストン室及び第二ポンプポート1bに導入させる。これにより、そのピストンポートが完全に第一ポンプポート1aに流体的に接続される前に、比較的低圧の対応するピストン室及び第二ポンプポート1bにおける作動油の圧力を増大させる。
【0059】
なお、図示しないが、バルブプレート40は、油圧ポンプ1が矢印AR10で示す方向とは逆の方向に回転する場合に、小穴50、51と同様の役割を果たす別の小穴を備えるものとする。
【0060】
これらの小穴50、51を利用して、油圧ポンプ1は、ピストンポート及びピストン室における作動油の圧力が急激に変化して脈動を発生させたりするのを防止する。
【0061】
ここで再び図3を参照すると、油圧ポンプ1の回転が停止した時点では、第一ポンプポート1a(吐出ポート)側の管路C1、C4、C7、C12内の圧力が、第二ポンプポート1b(吸入ポート)側の管路C2、C5、C8、C13内の圧力よりも高い状態にある。なお、この状態は、図3の太い黒の点線と太い灰色の実線で示す圧力状態とは異なる。また、第一ポンプポート1a側の圧力は、リリーフ弁20Lの設定圧より高いため、リリーフ弁20Lは、開弁状態となっている。一方、第二ポンプポート1b側の圧力は、リリーフ弁20Rの設定圧より高いため、リリーフ弁20Rは、閉弁状態となっている。
【0062】
その後、第一ポンプポート1a側の圧力は、小穴50又は小穴51を通じて第二ポンプポート1b側に至り、油圧ポンプ1とリリーフ弁20Rとチェック弁21Rとの間の作動油の圧力を増大させる。なお、第一ポンプポート1a側の圧力は、第一ポンプポート1a側の作動油が第二ポンプポート1b側に移動するにつれて減少する。
【0063】
油圧ポンプ1とリリーフ弁20Rとチェック弁21Rとの間の作動油の圧力が増大してリリーフ弁20Rの設定圧に至ると、リリーフ弁20Rが開弁状態となり、その作動油は、リリーフ弁20Rの二次側に至る。
【0064】
第一ポンプポート1a側の作動油の圧力が減少してリリーフ弁20Lの設定圧を下回ると、リリーフ弁20Lが閉弁状態となる。このとき、第二ポンプポート1b側の作動油の圧力もリリーフ弁20Rの設定圧を下回るため、リリーフ弁20Rも閉弁状態となる。その結果、図3の太い黒の点線で示すように、管路C1、C4、C7、及びC12内の作動油の圧力、並びに、油圧ポンプ1とリリーフ弁20Rとチェック弁21Rとの間の作動油の圧力が、リリーフ弁20L、20Rの設定圧とほぼ同じ圧力となる。
【0065】
このようにして、油圧閉回路システム100は、油圧ポンプ1の回転が停止している場合、第一ポンプポート1a及び第二ポンプポート1bのそれぞれにおける圧力がリリーフ弁20L、20Rの設定圧にほぼ等しい圧力となるようにする。これは、油圧ポンプ1の回転を開始させる前の油圧ポンプ1の両ポンプポートにおける作動油の圧縮度を予め増大させておくためである。厳密には、吸入ポートにおける作動油の圧縮度を予め増大させておくためであるが、実際に油圧ポンプ1の回転が開始するまでは何れのポンプポートが吸入ポートになるか未定であるため、両ポンプポートにおける作動油の圧縮度を予め増大させておく。
【0066】
その結果、油圧閉回路システム100は、油圧ポンプ1の回転によって油圧ポンプ1に取り込まれる作動油の体積変化(圧縮容量)を小さくし、油圧ポンプ1の回転初動時の流量及び圧力の立ち上がり応答性を改善することができる。
【0067】
ここで、図6を参照しながら、リリーフ弁20L、20Rの設定圧の違いによる油圧ポンプ1の吐出圧の立ち上がり時間の変化について説明する。なお、図6(A)は、油圧ポンプ1の吐出圧の時間的推移を示し、図6(B)は、油圧ポンプ1の回転速度の時間的推移を示す。
【0068】
また、図6(A)の実線で表される推移は、リリーフ弁20L、20Rの設定圧をP1(>0)[MPa]とした場合の推移を示し、図6(A)の点線で表される推移は、リリーフ弁20L、20Rの設定圧を0[MPa]とした場合の推移を示す。
【0069】
図6(B)で示すように、時刻t0において油圧ポンプ1の回転を開始させると、リリーフ弁20L、20Rの設定圧をP1[MPa](例えば2[MPa]である。)としたときの油圧ポンプ1の吐出圧は即座に上昇を開始する。そして、油圧ポンプ1の回転の開始から時間t1[ms](例えば8〜10[ms]である。)が経過するまでは、油圧ポンプ1の吐出圧は緩やかに上昇し、時間t1[ms]が経過した後は、油圧ポンプ1の回転速度に応じた割合で上昇を続ける。
【0070】
一方で、リリーフ弁20L、20Rの設定圧を0[MPa]としたときの油圧ポンプ1の吐出圧は、油圧ポンプ1が回転しているにもかかわらず、時間t2(>t1)[ms]が経過するまでは0[MPa]未満のまま推移する。なお、図6(A)では、説明の便宜上、負圧の値を0[MPa]としている。そして、油圧ポンプ1の回転の開始から時間t2[ms]が経過した時点で、油圧ポンプ1の吐出圧は上昇を開始し、時間t3(>t2)[ms](例えば28.5[ms]である。)が経過するまでは緩やかに上昇する。そして、時間t3[ms]が経過した後、油圧ポンプ1の吐出圧は、油圧ポンプ1の回転速度に応じた割合で上昇を続ける。なお、油圧ポンプ1の回転速度は、回転開始から時間t4(t2<t4<t3)[ms](例えば25[ms]である。)が経過した時点で所定の回転速度N1[rpm]に至る。
【0071】
このように、油圧ポンプ1は、リリーフ弁20L、20Rの設定圧をP1[MPa]とした場合には、回転開始後に時間t1[ms]が経過した時点で正常な吸い込みを開始させる。以下、正常な吸い込みを開始させるまでに要する時間を「吐出圧立ち上がり時間」と称する。これに対し、油圧ポンプ1は、リリーフ弁20L、20Rの設定圧を0[MPa]とした場合には、回転開始後に時間t2[ms]が経過するまでは、キャビテーションを伴う吸い込み不良の状態、すなわちポンプ吐出効率が低下した状態にある。そして、油圧ポンプ1は、時間t3が経過した時点でようやく正常な吸い込みを開始させることができる。
【0072】
以上の構成により、油圧閉回路システム100は、リリーフ弁20L、20Rによって、回転する油圧ポンプ1が停止した場合の油圧ポンプ1の2つのポート1a、1bのそれぞれにおける圧力を制御することができる。その結果、油圧閉回路システム100は、油圧ポンプ1の回転初動時の流量及び圧力の立ち上がり特性を改善することができる。
【0073】
また、油圧閉回路システム100は、リリーフ弁20L、20Rの設定圧を0[MPa]より高い値P1[MPa]に設定することによって、油圧ポンプ1の回転初動時におけるキャビテーションを伴う吸い込み不良の発生を抑制し或いは回避して吐出圧立ち上がり時間を短縮することができる。
【0074】
次に、図7を参照しながら、本発明の別の実施例に係る油圧閉回路システム100Aについて説明する。なお、図7は、油圧閉回路システム100Aの構成例を示す概略図である。
【0075】
油圧閉回路システム100Aは、シャトル弁7の代わりにフラッシング弁7Aを備える点で油圧閉回路システム100と相違するが、その他の点で油圧閉回路システム100と共通する。
【0076】
そのため、共通点の説明を省略しながら、相違点を詳細に説明する。なお、油圧閉回路システム100と同じ構成要素に対しては、油圧閉回路システム100を説明するために用いた参照符号と同じ参照符号を用いる。
【0077】
フラッシング弁7Aは、管路C2における作動油の圧力が所定圧に達した場合に開弁状態となるチェック弁7A1と、管路C1における作動油の圧力が所定圧に達した場合に開弁状態となるチェック弁7A2とを備える。
【0078】
チェック弁7A1は、管路C7上に配置され、管路C2における作動油の圧力が所定圧に達した場合に開弁状態となり、作動油タンクT1の作動油が管路C11及び管路C7を通じて管路C1に導入されるようにする。なお、チェック弁7A1は、管路C2における作動油の圧力が所定圧未満の場合には閉弁状態となり、作動油タンクT1と管路C1との間の作動油の流れを遮断する。また、チェック弁7A1は、管路C2における作動油の圧力が管路C1における作動油の圧力よりも高い場合に開弁状態となり、管路C2における作動油の圧力が管路C1における作動油の圧力よりも低い場合に開弁状態となるよう構成されてもよい。
【0079】
チェック弁7A2は、管路C8上に配置され、管路C1における作動油の圧力が所定圧に達した場合に開弁状態となり、作動油タンクT1の作動油が管路C11及び管路C8を通じて管路C2に導入されるようにする。なお、チェック弁7A2は、管路C1における作動油の圧力が所定圧未満の場合には閉弁状態となり、作動油タンクT1と管路C2との間の作動油の流れを遮断する。また、チェック弁7A2は、管路C1における作動油の圧力が管路C2における作動油の圧力よりも高い場合に開弁状態となり、管路C1における作動油の圧力が管路C2における作動油の圧力よりも低い場合に開弁状態となるよう構成されてもよい。
【0080】
このように、フラッシング弁7Aは、油圧ポンプ1が回転し、管路C1及び管路C2のうちの一方における作動油の圧力が作動油タンクT1における作動油の圧力未満となった場合に、すなわち、作動油が不足した場合に、作動油タンクT1における作動油によってその不足を補うようにする。
【0081】
以上の構成により、油圧閉回路システム100Aは、油圧閉回路システム100と同様、リリーフ弁20L、20Rによって、回転する油圧ポンプ1が停止した場合の油圧ポンプ1の2つのポート1a、1bのそれぞれにおける圧力を制御することができる。その結果、油圧閉回路システム100は、油圧ポンプ1の回転初動時の流量及び圧力の立ち上がり特性を改善することができる。
【0082】
また、油圧閉回路システム100Aは、油圧閉回路システム100と同様、リリーフ弁20L、20Rの設定圧を0[MPa]より高い値P1[MPa]に設定することによって、油圧ポンプ1の回転初動時におけるキャビテーションを伴う吸い込み不良の発生を抑制し或いは回避して吐出圧立ち上がり時間を短縮することができる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0084】
例えば、上述の実施例では、油圧閉回路システム100は、油圧ポンプ1で油圧シリンダ3を駆動する構成であるが、油圧ポンプ1で油圧モータを駆動する構成であってもよい。
【0085】
また、上述の実施例では、油圧閉回路システム100は、大負荷容量油圧駆動式大型平面研削盤のテーブルを被制御部として移動させるために用いられるが、射出成形機の射出シリンダや可動プラテンを被制御部として移動させるために用いられてもよく、他の工作機械の構成部品を被制御部として移動させるために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1・・・油圧ポンプ 1a・・・第一ポンプポート 1b・・・第二ポンプポート 1X・・・ポンプ回転軸 2・・・電動モータ 3・・・油圧シリンダ 3a・・・ピストン 3b・・・第一ポート 3c・・・第二ポート 3L・・・第一油室 3R・・・第二油室 4L、4R・・・安全弁 7・・・シャトル弁 7a・・・一次側ポート 7b、7c・・・二次側ポート 7A・・・フラッシング弁 7A1、7A2・・・チェック弁 9・・・センサ 10・・・制御装置 20L、20R・・・リリーフ弁 21L、21R・・・チェック弁 40・・・バルブプレート 40a・・・スライド面 41・・・シリンダブロック 42・・・ピストン室 43・・・ピストン 44・・・ピストンポート 45・・・シュー 46・・・斜板 46a・・・スライド面 50、51・・・小穴 100、100A・・・油圧閉回路システム T1・・・作動油タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ポート及び第二ポートを有する油圧シリンダ又は油圧モータを駆動可能な油圧閉回路システムであって、
第一管路を通じて前記第一ポートに流体的に連通される第一ポンプポートと第二管路を通じて前記第二ポートに流体的に連通される第二ポンプポートとを有する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの回転を制御する電動モータと、
前記第一管路及び前記第二管路のそれぞれに配置されるリリーフ弁と、
前記リリーフ弁のそれぞれに対し並列に接続されるチェック弁であり、前記油圧ポンプから前記油圧シリンダ又は前記油圧モータへの作動油の流れを止めるチェック弁と、
を備えることを特徴とする油圧閉回路システム。
【請求項2】
前記油圧ポンプは、アキシャルピストンポンプである、
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧閉回路システム。
【請求項3】
前記第一管路と作動油タンクとをつなぐ管路、及び、前記第二管路と作動油タンクとをつなぐ管路のそれぞれに配置される安全弁を備え、
前記リリーフ弁の設定圧は、前記安全弁の設定圧より小さい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧閉回路システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−100846(P2013−100846A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243809(P2011−243809)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】