説明

治療の組成物と方法

患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する方法であって、単球における有効cAMP濃度を上昇させる薬剤またはその誘導体を患者に投与することを含む方法である。好ましくは、単球における有効cAMP濃度を上昇させる薬剤は単球におけるcAMP産生を刺激するプロスタグランジンまたはそのアゴニストである。場合によっては、寛容性を誘発することが望まれる抗原、またはその誘導体もまた投与することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、治療的組成物、方法および使用に関する。特に、患者に抗原に対する寛容性を誘発するための方法に関する。
【0002】
抗原に対する生物の免疫は、先ず抗原と遭遇し、その後、その抗原に選択的に結合することが可能な免疫グロブリン分子、例えば、抗体の生産の結果生じる。さらに、免疫反応は、抗原特異的な可能性もあるT細胞によって制御される。免疫は、通常炎症反応を刺激することによって、外来抗原の処分を可能とする細胞の急速な招集を可能とする。ある状況下では、免疫系は、「寛容性」と呼ばれるメカニズムによって抗原に対して免疫反応を起こさない。例えば、免疫系は、外来の抗原と、生物体そのものの構成成分とを正常に識別することが可能である。これは、生物体そのものの構成成分(「自己抗原」)に対して抗体を生産する可能性のあるB型リンパ球を全て成育時に破壊し、そうすることによって自己抗原に向けられる抗体を生産する生体の能力を除去するメカニズムがあるためである。
【0003】
寛容性は積極的な作用であると考えられる。このことは、末梢性寛容は、特定の寛容性付与環境(例えば、インターロイキン10(IL-10)が高レベル)において抗原がT細胞に提示された場合に獲得されることを意味する。次に、このT細胞は循環し、その特定の抗原に再び出会っても、免疫反応を惹起しないか(アネルギーT細胞)、または、抑制反応を惹起する(調整T細胞)。従来から、調整T細胞の役割は寛容性にあることが提起されていた。調整T細胞は、抗原提示細胞の環境によって、同系抗原に反応して「下方制御」サイトカインを放出するようにプログラムされている。このような調整細胞として初めて報告された細胞はIL-10によって誘発されたものである(Grouxら(1997)Nature389:737-742)。
寛容性が崩壊すると、生物体は、その生物体の正常な構成成分に対して、細胞性免疫反応(細胞傷害性T細胞を含む)を起こして、「自己免疫疾患」を生ずる。自己免疫疾患としては、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)および全身エリテマトーデス(SLE)が挙げられる。
いくつかの状況では、外来抗原に対する免疫系の正常反応は有害な結果をもたらすことがある。例えば、移植組織片または移植器官片、または、臓器移植がそれであって、この場合、組織または器官のレシピエントの免疫系は、この移植組織片また器官片または臓器移植を外来性のものと認識し、これを拒絶するように作動する。
【0004】
しかしながら、免疫性または炎症性病態または疾患に対する既存の治療方法の欠点の一つは、選択の範囲が限られており、その治療に不十分な点が見られることである。例えば、炎症性呼吸器疾患を治療するための糖質コルチコステロイドは、多くの患者に有毒作用をもたらし、代替治療薬、例えば、シクロスポリンAまたはインターフェロンγは、危険度が高く、高価で、かつ、一般に効力は不十分である。
思いがけず、発明者は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えば、プロスタグランジンと、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を混合して用いるとき、免疫系の細胞においてIL-10が顕著に刺激されることを見出した。更に、発明者は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えば、プロスタグランジンと、GMCSFには免疫系の細胞からのIL-10放出に対して相乗効果があり、GMCSF存在下で、プロスタグランジンE(PGE)と19-ヒドロキシPGEの両方によりIL-10が著しく刺激され、寛容性付与環境になることを見出した。言い換えれば、GMCSFと、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えば、プロスタグランジンはIL-10放出増加で特徴づけられる表現型に単球を二極化すると考えられる。同様に、フォルスコリン又はGMCSF単独と比較して、GMCSF存在下において、フォルスコリンにより相乗的にIL-10発現が著しく刺激された。この細胞は、前寛容性表現型へと方向付けられるだけでなく、また、抗細菌薬であるグラヌリシンの生産をも亢進する。加えてこれらの薬剤を除去した後PGEやGMCSFの効果は延長及び継続し、そして細胞は選択的に分化する。
【0005】
GMCSFは顆粒球およびマクロファージ系成熟に重要な役割を持つ。GMCSFは治療薬剤としても治療の標的としても提案されている。組換えヒトGMCSFはある種の癌を治療し、骨髄移植後に造血再構成を促進するために使用されている(Leukine(登録商標) Package Insert Approved Text, Feb. 1998, およびBuchselら (2002) Clin. J. Oncol. Nurs. 6(4): 198-205)。これに対して、他の最近の報告では、GMCSFは炎症および免疫疾患(Hamilton, (2002) Trends Immunol 23 (8):403-8)および喘息(Ritzら (2002) Trends Immunol 23 (8):396-402)の治療の潜在的な標的であると記載されている。
異常なまたは有害な免疫反応によってもたらされる疾患では、IL−10が欠乏することがよくある。このIL−10の欠乏は、有用なTヘルパー細胞、特に2型Tヘルパー細胞の発達にとって有害な場合がある;自己免疫疾患では、2型Tヘルパー細胞よりも1型Tヘルパー細胞の方が優勢であることが特徴的と考えられている。従って、IL−10生産の刺激は、T細胞活性化において寛容性付加環境をもたらすものと考えられている。さらに、IL−10高レベル環境は、抗原提示細胞(典型的には樹状細胞)に作用して、調節T細胞形成を確実にし、提示された抗原に対して特異的な調節T細胞が形成される。
しかして、本発明者は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と組み合わせて、GMCSFを使用して、患者に寛容性付与環境を誘発することによって、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発することを提案する。よって、本発明者は、この組み合わせが患者において抗原の寛容性又は抗原に対する寛容性を誘発することを提案する。
【0006】
理論に拘束されるものではないが、本発明者は、GMCSFと単球における有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはフォルスコリンの組み合わせがIL-12レベルをまた減少させ、これが本発明の効果を高めることは期待されると考える。本発明者は、プロスタグランジンとGMCSFの組み合わせがIL-10とCOX-2の双方の発現を増大させ、フォルスコリンとGMCSFの組み合わせが単球におけるIL-10のレベルを相乗的に増大させることを示した。従って、IL-12レベルの減少はIL-10によってIL-12を直接阻害することによって(Hariziら, 2002)またはCOX-2誘導に依存するIL-10の独立経路によって(Schwachaら, 2002)生じうる。
GMCSFと単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストとの併用が、有用な程度の治療効果を達成するのに必要とされる、薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニスト、またはGMCSFの量を低減させ、よってプロスタグランジンまたはそのアゴニストまたはGMCSFの投与の副作用を低減させるという所望の効果を達成するために本発明者によってまた考えられる。
本発明者の知る限り、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストのような単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSFの併用を、IL−10生産刺激のために使用できることを示唆したものはこれまでなかったし、IL−10を刺激するためにこの併用を用いた治療方法を示唆したものもなかった。さらに、この併用が、T細胞活性化のための寛容性付与環境を誘発し、または、患者に抗原に対する寛容性を誘発するために使用できることを示唆したものも全くなかった。さらに、寛容性誘発に伴う抗微生物効果または確かに如何なる用途であれ単球の抗微生物効果について言及したものはなかった。
【0007】
本発明者は、GMCSFと寛容性の誘発が望まれる特異的抗原またはその誘導体と組み合わせて、単球における有効cAMP濃度を上昇させる薬剤を使用することによって患者における特異的抗原に対する寛容性を誘発することをさらに提案する。
本発明者の知る限り、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストまたはフォスコリンのような単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSFとの患者への投与が、患者におけるその抗原に対する寛容性を誘発するために使用できることについては何ら示唆されていない。
また、本発明者は、PGEとGMCSFがクラスIIトランス活性化因子(CIITA)およびMHCクラスIIのような抗原提示への関与体のレベルを減少させることをまた示した(実施例1に示す)。この表現型の変化には、抗ウイルスを含む抗微生物特性を有しており(Krensky 2000)感染した細胞を溶解する抗微生物活性を媒介する活性化T細胞の産物と通常は考えられる(Hataら 2001;Ochoaら 2001;Smythら 2001)グラヌリシンの発現の増加が伴う。グラヌリシンの発現の増加は本発明の重要な結果であると考えられるが、それは、生得的防御分子における増加が寛容性誘発に伴う適応免疫系の無防備状態を補う可能性があるからである。
【0008】
また、本発明者は、PGEとGMCSFの組み合わせがCOX-2、CD86、CD14の発現を増加させることを示した。COX-2はプロスタグランジンとGMCSFの除去後の寛容性表現型の維持に関与していると考えられ(実施例2および3に示す)、CD14とCD86の双方とも分化マーカーであり、より分化した状態の証拠である。さらに、本発明者は、フォルスコリンとGMCSFでの分化は単球におけるTNFαを明白には上昇させないことを示した(TNFαは炎症誘発性および抗寛容原性剤である)。
この明細書における先に公開された文献の列挙または検討は、その文献が先行技術の一部であるかまたは技術常識であることを認めているものと必ずしも解釈してはならない。
【0009】
本発明の第1の態様は単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSFまたはその誘導体を含有する組成物を提供する。
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤は幾つかの別であるが関連している生化学的方法でそのように機能しうる。よって、その薬剤は、例えばcAMPの産生に関連している受容体を刺激することによってcAMPの産生を増大させるものでありうる。そのような薬剤には、以下にさらに詳細に記載するプロスタグランジンおよびそのアゴニストが含まれる。Braunら (1999) J. Exp. Med. 189, 541-552に記載されているように、コレラ毒素もまたcAMPレベルを細胞内的に増大させるために使用することができ、それが、望ましいと思われる上皮にわたる抗原輸送を増大させうる証拠もある。同様に、βアドレナリン受容体を介して細胞内のcAMPレベルを上昇させるβアドレナリン作動薬も使用することができる。そのようなβアドレナリン作動薬は喘息治療の場合におけるように当該分野でよく知られている。好適なβアドレナリン作動薬にはイソプロテレノールが含まれる。
【0010】
上記薬剤は、cAMPの分解を阻害するものであってもよく、よってcAMPホスホジエステラーゼ阻害剤であってもよく、これを以下にさらに詳細に記載する。その薬剤は、細胞からのcAMPの輸出を阻害するものでありうる。細胞からのcAMPの輸出は、例えばプロベネシド(プロベニシド)(痛風に対して現在用いられている薬剤)またはプロゲステロンまたはそのアゴニストまたはアンタゴニスト、例えばメドロキシプロゲステロンアセテートまたはRU486(これはまたcAMP輸送体に対して阻害効果を有していると思われる)でブロックされうる特異的輸送体(一般的に多種薬剤抵抗性タンパク質であるMRP-4)を介してなされる。
上記薬剤はまた寛容誘発状態の発生に関連して細胞におけるcAMPの効果を模倣するが、分解や輸出を受け難いと思われる化合物であってもよい。そのような化合物は細胞中に存在しているとcAMP濃度を上昇させると考えることができる。そのような化合物には、Sp-アデノシン3',5'-サイクリックモノホスホロチオエートおよび8-ブロモアデノシン3',5'-サイクリックモノホスフェートおよびジブチリルcAMPが含まれる。十分なこれら化合物を投与したことは単球中でIL-10の発現の増加があったことを測定することによって評価することができる。好ましくは、最大の応答をもたらす濃度で使用されると、IL-10の発現を少なくとも1.2倍、または1.5倍、または2倍、または5倍、または10倍上昇させる。典型的には、約1から100μmolのcAMP類似体を患者に投与することができる。
【0011】
フォルスコリン(ホルスコリン)は7β-アセトキシ-8,13-エポキシ-1α,6β,9α-トリヒドロキシラブダ-14-エン-11-オン、7β-アセトキシ-1α,6β,9α-トリヒドロキシ-8,13-エポキシ-ラブダ-14-エン-11-オンである。それはまたコレオノールおよびコルフォルシンとも呼ばれ、410のMrを有している。それは血圧降下、陽性変力およびアデニルシクラーゼ活性化特性を有する細胞透過性ジテルペノイドである。その生物学的効果の多くはそのアデニル酸シクラーゼの活性化とその結果の細胞内cAMP濃度の増大による。フォルスコリンはカルシウム流に影響を及ぼし、MAPキナーゼを阻害する。コルホルシンはダロパートとして使用される(Ann Thoracic Surgery (2001) 71, 1931-1938)。それは塩酸塩として投与して水溶性を確保することができるが、より速やかに細胞膜を透過することができる可能性のある遊離塩基として使用することもまたできる。
Sp-アデノシン3',5'-サイクリックモノホスフェート(SpcAMP)は446のMrを有しており、アデノシン-3',5'-サイクリックモノホスホチオエートのSp-ジアステレオマーである。それはサイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼに対して耐性がありながら数多くの系において第二メッセンジャーとしてcAMPの効果を模倣するcAMP依存プロテインキナーゼIおよびIIの強力な膜透過性活性因子である。それはフォルスコリンやジブチリル-cAMPのようなcAMP類似体よりも大きな特異性と親和性を示す。
8-ブロモアデノシン3',5'-サイクリックモノホスフェート(8-BrcAMP)は430のMrを有している。それはcAMPよりもホスホジエステラーゼによる加水分解に対してより大なる耐性を有している細胞透過性cAMP類似体である。それはプロテインキナーゼAを活性化させる。
【0012】
コレラ毒素は約100000のMrを有している。それは細胞表面上でガングリオシドGM1に毒素を結合させる5つのBサブユニット(それぞれおよそ12kDa)によって囲まれたAサブユニット(27kDa)からなる毒素である。AサブユニットはGTP加水分解酵素活性を低減させαサブユニットを活性化させる刺激性Gプロテインのαサブユニット(Gαs)のADPリボシル化を触媒する。Gαsのこの活性化はcAMPのレベル増加を生じるアデニル酸シクラーゼの活性の増大に至る。それはまた眼の桿体外節中でトランスデューシンをADPリボシル化し、そのGTP加水分解酵素活性を不活性化する。コレラ毒素はまたチューブリンをADPリボシル化することが報告されている。それは強力な粘膜ワクチンアジュバントで、インターロイキン-12の産生を阻害することによってTヘルパー細胞2型の応答を誘導することが示されている(上掲のBraunら(1999))。単球におけるcAMPレベルを増加させることができるコレラ毒素の断片は使用することができるが、完全なコレラ毒素を使用するのが好ましい。
コレラ毒素はある条件下では過敏症(過剰感作)を誘導するので、好ましさは低い。
SpcAMPおよび8-BrcAMP、および場合によってはフォスコリンはcAMP輸出ポンプを阻害し得、これは有効cAMP濃度を上昇させるその能力に寄与しうる。
【0013】
単球における有効cAMP濃度を測定するのが簡便である(つまり、単球への薬剤の効果を評価することによる)。好適な単球はよく知られた単球細胞株U937である。薬剤は他の単球および単球関連細胞、例えばマクロファージにおける有効cAMP濃度をまた上昇させ、本発明の意味での有用性はこれら細胞に対する効果による場合があることが理解されるであろう。上に述べたように、十分な量のcAMP類似体が存在しているかどうかは単球中のIL-10を測定することによって決定することができる。好ましくは、最大の応答をもたらす濃度で使用される場合、薬剤は少なくとも1.2倍、または1.5倍または2倍または5倍または10倍のcAMP濃度を上昇させる。
図5はcAMPレベルの上昇に導く細胞中または細胞上の様々な介入場所を模式的に示している。
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤はプロスタグランジンであることが好ましい。
本発明のこの態様および他の全ての態様に対してプロスタグランジンまたはそのアゴニストは単球におけるcAMP産生を刺激することが好ましい。
プロスタグランジンまたはそのアゴニストは、単球におけるcAMP産生を刺激し、特にGMCSFの存在下で単球にIL-10を発現させる任意の好適なプロスタグランジンまたはそのアゴニストでありうる。本発明での使用に好適なプロスタグランジンまたはそのアゴニストは当業者によって直ぐに決定することができる。単球中でのcAMP産生を評価する方法はBurzynら(2000)および実施例3に見出すことができ、単球におけるIL-10の発現と放出を検出する方法は実施例1および3のものを含む。
【0014】
「プロスタグランジンまたはアゴニスト」とは、プロスタグランジン受容体にプロスタグランジンアゴニストとして作用する全ての化合物を意味する。プロスタグランジンアゴニストはプロスタノイドでありうるがそうである必要はない。典型的には、プロスタグランジンまたはアゴニストは、EP2またはEP4受容体に結合するものである。プロスタグランジンはPGE、PGDまたはPGIまたはそのアゴニストでありうる。好ましくは、プロスタグランジンは、PGEまたはそのアゴニストである。PGIは余りに不安定であるので薬剤として有用ではないが、PGIおよびPGIの安定な類似体が好適である。好ましくは、プロスタグランジンはPGFまたはそのアゴニストではない。
プロスタグランジンまたはそのアゴニストは、PGEか、またはその合成類似体であることが好ましい。合成類似体としては、15または16位においてメチル基を添加して修飾したもの、またはヒドロキシルが15位から16位に転位したものが挙げられる。プロスタグランジン類似体の好ましい例としては、ブタプロスト(EP2受容体アゴニスト)および11-デオキシPGE1(EP4受容体アゴニスト)、および19-ヒドロキシPGEが挙げられる。疑問を避けるために、「プロスタグランジン」という用語は、天然に生じるプロスタグランジン類並びに合成プロスタグランジン類似体を含む。
【0015】
適切なプロスタグランジンまたはそのアゴニストとしては、ジノプロストン(プロペスの名前で、ヨーロッパではFerringによって、米国ではForestによって販売され、また、プロスティンE2の名前でPharmaciaによって販売されている)、ゲメプロスト(Farillonによって販売)、ミソプロストール(サイトテックの名前でSearleとPharmaciaによって販売)、アルプロスタジル(カベルジェクトの名前でPharmaciaによって、ビリダルの名前でSchwarzによって、ムセの名前でアストラゼネカによって販売されている)、および、リマプロストが挙げられる。
ミソプロストールは、EP2およびEP3アゴニスト作用を有するPGE類似体である。その化学構造は、(±)メチル11α,16-ジヒドロキシ-16-メチル-9-オキソプロスト-13-エノアートである。
プロスタグランジンアゴニストとして作用する非プロスタノイド化合物の例として、EP4受容体アゴニストであるAH23848がある。
本発明を実施するのに有用と考えられるEP2アゴニストはAH13205を含む。
好適なプロスタグランジンはまた19-ヒドロキシPGE1および19-ヒドロキシPGE2を含む。プロスタグランジンEアゴニストは、出典明示によりここに取り込まれる欧州特許第1097922号および同第1114816号に記載されている。
好適なプロスタグランジンまたはアゴニストはまた米国特許第4127612号に記述されている19-ヒドロキシプロスタグランジン類似体の任意のものを含む。
プロスタグランジンは、プロスタグランジンE(PGE)または19-ヒドロキシPGEであることが好ましい。PGEを含む、プロスタグランジンおよびそのアゴニストは、例えば、PharmaciaおよびUpjohnからプロスチンE2の名前で市販されている。
【0016】
「GMCSF」には、ヒトGMCSF遺伝子およびその天然に生じる変異体の遺伝子産物を含む。ヒトGMCSFのヌクレオチドおよびアミノ酸配列はGenbank受託番号NM 000758および図1に見出される。GMCSFの幾つかの天然に生じる変異体はまたNM 000758に列挙されている。GMCSFはコロニー刺激因子2(CSF2)としても知られている。
本発明は、野生型GMCSFの生物学的活性を保持する、つまりその前駆細胞から顆粒球およびマクロファージの産生を刺激し、プロスタグランジンEの存在下で単球にIL-10を発現させるGMCSFの誘導体の使用を含む。
GMCSFの「誘導体」には、その断片、融合体または修飾体または類似体、あるいはその断片の融合体または修飾体を含む。
GMCSFの「断片」とは、その前駆細胞から顆粒球およびマクロファージの産生を刺激し、プロスタグランジンEの存在下で単球にIL-10を発現させる糖タンパク質の任意の部分を意味する。典型的には、断片は完全長GMCSFの活性の少なくとも30%を有する。断片は完全長GMCSFの活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%を有していることがより好ましい。最も好ましくは、断片は完全長GMCSFの活性の100%またはそれ以上を有する。
【0017】
誘導体は、部分的タンパク質分解法(外因性溶解または内因性溶解の何れか)を使用するタンパク化学法を用いて、または新規合成法によって作製することができる。あるいは、誘導体は組換えDNA法によって作製してもよい。核酸のクローニング、操作、修飾および発現、および発現されたタンパク質の精製のための好適な方法は当該分野でよく知られており、例えば出典明示によりここに取り込まれるSambrookら (2001) "Molecular Cloning, a Laboratory Manual", 第3版, Sambrookら編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USAに記載されている。
本発明はまたその前駆細胞から顆粒球およびマクロファージの産生を刺激し、プロスタグランジンEの存在下で単球にIL-10を発現させる完全長GMCSFの修飾またはその断片を含む。
そのような修飾には、完全なまたは部分的な糖タンパク質の脱グリコシル化が含まれる。他の修飾には、天然に生じるヒトGMCSFに見出されるものとは異なったグリコシル化パターンを有する完全長GMCSFまたはその断片が含まれる。
【0018】
完全長GMCSFまたはその断片の他の修飾には、一または複数の位置においての、保存的であれ非保存的であれ、アミノ酸挿入、欠失および置換が含まれる。そのような修飾はGMCSFの類似体とも呼ぶことができる。「保存的置換」とは、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrのような組み合わせを意図する。そのような修飾は、上掲のSambrookら 2001 に記載されたように、タンパク工学および部位特異的突然変異誘発の方法を使用して行うことができる。好ましくは、修飾されたGMCSFまたは修飾されたGMCSF断片は完全長GMCSFの活性の少なくとも30%を保持する。修飾されたGMCSFまたはGMCSF誘導体が完全長GMCSFの活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%を有するならばさらに好ましい。より好ましくは、修飾されたGMCSFまたは修飾されたGMCSF断片は完全長GMCSFの活性の100%またはそれ以上を有する。
本発明はまた他の化合物への完全長GMCSFまたはその断片の融合体を含む。好ましくは、融合体は完全長GMCSFの活性の少なくとも30%を保持する。融合体は完全長GMCSFの活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%を有するならばさらに好ましい。最も好ましくは、融合体は完全長GMCSFの活性の100%またはそれ以上を有する。
【0019】
GMCSFとその類似体は、それぞれを出典明示によりここに取り込む次の刊行物に記載されている:米国特許第5229496号(Deeleyら);米国特許第5391485号(Deeleyら);米国特許第5393870号(Deeleyら);米国特許第5602007号(Dunnら);Wongら, "Human GM-CSF: molecular cloning of the complementary DNA and purification of the natural and recombinant proteins", Science 228 (4701), 810-815 (1985);Leeら, "Isolation of cDNA for a human granulocyte-macropharge colony-stimulating factor by functional expression in mammalian cells", Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82(13), 4360-4364 (1985);Cantrellら, "Cloning, sequence, and expression of a human granulocyte/macrophage colony-stimulating factor", Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82(18), 6250-6254 (1985);およびMiyatakeら, "Structure of the chromosomal gene for granulocyte-macrophage colony stimulating factor: comparison of the mouse and human genes", EMBO J. 4(10), 2561-2568 (1985)。
GMCSFは上述のようにヒトGMCSFであるのが好ましいが、GMCSFには他の種のGMCSFもまた含める。しかしながら、GMCSFが患者に投与される用途に対しては、GMCSFは患者と同じ種由来であることが好ましいことが理解される。よって、GMCSFがヒト患者に投与されるならば、GMCSFは好ましくはヒトGMCSFである。
【0020】
この発明の実施に適したGMCSFは、Peprotech EC Ltd., 29 Margravine Road, London, W6 8LL(カタログ番号300-03)から取得できる。
この発明の実施に好適なGMCSFは、Immunex, Inc.によって生産され、商品名Leukine(登録商標)で販売されている酵母由来組換えヒトGMCSFの正式名であるサルグラモスチムである。Leukine(登録商標)はパン酵母系で産生された組換えヒトGMCSFである。Leukine(登録商標)は19500、16800および15500ダルトンの分子量を有する3つの主要分子種を特徴とする127のアミノ酸の糖タンパク質である。Leukine(登録商標)のアミノ酸配列は23位のロイシンの置換が天然のヒトGMCSFとは異なり、糖鎖部分は天然タンパク質とは異なっている場合がある。Leukine(登録商標)は皮下または静脈内投与に適している(Leukine(登録商標) Package Insert Approved Text, Feb. 1998)。
文脈が別のことを示していない限り、「GMCSF」という用語が使用される場合は常にここに定義された誘導体が含まれる。
【0021】
好適な実施態様では、組成物は単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSFと、製薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤(その組み合わせを含む)を含有する薬学的組成物である。
担体、賦形剤または希釈剤は本発明の組成物と適合性があり、その賦形剤に対して有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。典型的には、担体は無菌でピロゲン不含有の水または生理食塩水である。
治療用途に許容可能な担体または希釈剤は製薬分野でよく知られており、RemingtonのPharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A.R. Gennaro編 1985)に記載されている。製薬的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤の選択は意図される投与経路と標準的な製薬実務に関して選択することができる。薬学的組成物は、担体、賦形剤または希釈剤として、またはそれに加えて、任意の適切なバインダー、潤滑剤、懸濁化剤、コーティング剤または可溶化剤を含有しうる。
【0022】
保存料、安定化剤、染料およびさらには香料添加剤を薬学的組成物中に提供することができる。保存料の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。酸化防止剤と懸濁化剤もまた使用することができる。
一実施態様では、組成物は患者に対して寛容性を誘発するのが望まれる抗原またはその誘導体をさらに含有する。本発明の実施に使用して好適な抗原の詳細は以下に記載する。よって、本発明は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSFまたはその誘導体と、それに対して寛容性を誘発することが望まれる抗原またはその誘導体を含有する組成物を含む。本発明は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSFまたはその誘導体、およびそれに対して寛容性を誘発することが望まれる抗原またはその誘導体と、製薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤(その組み合わせを含む)を含有する薬学的組成物をまた含む。
【0023】
抗原に対して寛容性を誘発するためには、抗原それ自体ではなく、抗原の誘導体を患者に投与してもよいことが理解される。抗原の「誘導体」とは、例えば、抗原提示細胞(APC)上のクラスIまたはクラスIIのMHC分子によって提示が可能であって、抗原そのものに対して寛容性を誘発する抗原の任意の部分を含む。典型的には、抗原の誘導体は、例えばT細胞受容体を介して提示された場合に、T細胞によってもまた認識が可能である。
抗原がタンパク質である場合、抗原の誘導体は、典型的には、MHC結合可能な抗原のアミノ酸の連続配列からなる抗原のペプチド断片である。好ましくは、断片は、その長さが6から100アミノ酸長である。さらに好ましくは、断片の長さは、6から50アミノ酸長である。最も好ましくは、断片の長さは、6、または7、または8、または9、または10、または11、または12、または13、または14、または15、または16、または17、または18、または19、または20、または21、または22、または23、または24、または25アミノ酸長である。
【0024】
抗原の誘導体は、抗原と他の化合物との融合体、または抗原の断片と他の化合物との融合体であって、提示された場合、クラスIまたはクラスIIMHC分子のいずれかによって認識が可能で、その抗原そのものに対する寛容性を誘発する融合体を含む。典型的には、その融合体は、その抗原そのものに対する寛容性を誘発することが可能な一部分となるように、APCによって処理されることが可能なものである。
文脈が別の意味を示していない限り、「抗原」という用語が抗原の文脈で使用される場合は常にここで定義される誘導体も含まれる。
理論に拘束されるものではないが、本発明者は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストとGMCSFが単球におけるIL-10の産生および分泌を相乗的に刺激することによって抗原に対する寛容性を誘発すると信じる。本発明の効果は、プロスタグランジンのような薬剤とGMCSFと場合によっては抗原が投与される組織中に単球を誘発し、新たに到達された単球がついで寛容な表現型に向けられる走化剤を使用することによってさらに増加しうる。
【0025】
よって、一実施態様では、組成物は単球求引走化剤をさらに含みうる。この発明の実施に好適な走化剤には、MIP-1αおよびMCP-1が含まれ、これは、Peprotech EC Ltd., 29 Margravine Road, London, W6 8LLから(カタログ番号300-04)得ることができる。他の好適な走化剤は、出典明示によりここに取り込まれるKellyの米国特許第5908829に記載されている。
本発明者は、組成物中にホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤を含有せしめるのが有益である場合があるとさらに信じる。プロスタグランジンE2(PGE2)の主要な受容体はEP2およびEP4サブタイプである。しかしながら、他の受容体サブタイプが存在する(つまり、EP1およびEP3)。EP2およびEP4受容体はアデニルシクラーゼと結合し、メッセンジャー系として増加したcAMPを用いる。組織中のcAMPのレベルは、特異的なPDE阻害剤によってブロックされ得るPDEによるその合成とその異化作用の双方に支配されている。よって、本発明者は、そのEP2およびEP4受容体に作用するプロスタグランジンまたはそのアゴニスト(例えばPGE)の効果はcAMPを刺激することにあり、PDE阻害剤の添加は単球とマクロファージへの相乗作用をもたらし、単独で投与される同量のプロスタグランジンまたはそのアゴニストとGMCSF、またはPDE阻害剤の相加効果より大きい免疫および/または炎症反応の減少を生じると信じる。
【0026】
さらに、本発明者は、プロスタグランジンとPDE阻害剤の組み合わせが免疫系の細胞におけるIL-10の発現とそれからの分泌を顕著に刺激しIL-12の発現とそれからの分泌を阻害し、寛容化環境を生じることを以前に見出した。よって、一実施態様では、組成物はPDE阻害剤をさらに含有しうる。
PDE阻害剤は、適当なものであればいずれのPDE阻害剤であってもよい。好ましくは、PDE阻害剤は、cAMP分解に活性を示すPDEを抑制するものである。cAMP分解に活性を示すことが知られるPDEは、IV、VIIおよびVIII型のものである。好ましくは、PDE阻害剤は、IVまたはVIIまたはVIII型に対して選択的である。
もっとも好ましくは、PDE阻害剤は、IV型PDEに対して選択的である。「選択的」とは、その阻害剤が、それに対して選択的なPDE阻害剤の特定の型を、別の型に対するよりも強力に抑制することを意味する。好ましくは、IV型選択的阻害剤は、他のPDE型に対してよりも、IV型PDEに対して少なくとも2倍強力な抑制剤である。より好ましくは、IV型選択的阻害剤は、他のPDE型に対してより、IV型PDEに対して、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または、1000倍強力な阻害剤である。
典型的には、選択的阻害剤は、他のPDE型に対してより、選択されたPDE型に対して、約5から50倍強力な阻害剤である。典型的には、選択的阻害剤は、非選択的とされる阻害剤、例えば、テオフィリンよりも、選択されたPDE型に対して5から50倍強力な阻害剤である。よって、テオフィリンは、ロリプラムよりも30倍効力が低いことになる。
【0027】
好ましくは、選択的抑制は、IC50レベルの比較によって確定される(Dousa (1999) Kidney International 55: 29-62)。
非特異的PDE阻害剤としては、カフェイン、テオフィリン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)およびペントキシフィリン(3,7-ジヒドロ-3,7-ジメチル-1-(5-オキソヘキシル)-1H-プリン-2,6-ジオン)が挙げられる。もっともカフェインは、他のものほど活性はないのでそれほど好ましくはない。IBMXのIC50値は2−50μMである。
出典明示により本明細書に含める米国特許第6127378号は、選択的PDE阻害剤(主にIV型の)と記述される、6位が置換されたフェナンスリジンを開示し、これは、本発明の方法で用いるのに好適である可能性がある。
IV型特異的(または選択的)PDE阻害剤としては、ロリプラム(4-[3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル]-2-ピロリジノン)、および、Ro-20-1724(4-[3-ブトキシ-4-メトキシベンジル]-2-イミダゾリジノン)が挙げられる。ロリプラムのIC50は800nMであり、Ro-20-1724のIC50は2μMである。
【0028】
もう一つの好適なIV型選択的PDE阻害剤は、デンブフィリン(1,3-ジ-n-ブチル-7-(2-オキソプロピル)-キサンチン)である。
CP80633(Hanifinら (1996) J. Invest. Dermatol. 107, 51-56)、CP102995およびCP76593は皆強力なIV型阻害剤である(コネティカット州グロトンのファイザー社、中央研究部から市販)。
その他の高親和性IV型選択的阻害剤としては、CPD840、RP73401およびRS33793(Dousa, 1999)が挙げられる。高親和性IV型選択的PDE阻害剤は約1nMのKを有する一方、低親和性阻害剤は約1μMのKを有する。
IV型PDE選択的阻害剤に関するDousa (1999);Muellerら(1996, Trends Pharmacol.Sci.17:294-298);PalfreymanおよびSouness (1996, Prog Med Chem 33:1-52);StaffordおよびFeldman (1996, Annual Reports in Medical Chemistry (vol 31) pp71-80;Bristol編, Academic Press, NY, USA);およびTeixeiraら (1997, Trends Pharmacol. Sci.18:164-171)の開示を出典明示により本明細書に含める。
典型的には、IV型PDE選択的阻害剤を経口投与する場合、約1から30mgが使用される。従って、ロリプラムまたはデンブフィリンの典型的経口用量は、1mgまたは5mgまたは10mgまたは30mgである。非選択的PDE阻害剤、例えばテオフィリンを用い、しかも経口投与する場合は、用量は5と50mgの間、例えば、5または10または20または30または40または50mgである。
【0029】
組成物がプロゲステロンを含む場合、プロゲステロンの用量は100nMと50μMの間のレベルをもたらすのに十分ならば好適である。
GMCSFとの好適な組み合わせは次の通りである:
PGE
PGE+ロリプラム
PGE+プロベネシド
PGE+ロリプラム+プロベネシド
フォルスコリン
フォルスコリン+ロリプラム
フォルスコリン+ロリプラム+プロベネシド
8-ブロモcAMP+プロベネシド
8-ブロモcAMP+ロリプラム+プロベネシド
Sp-アデノシン3,5-サイクリックモノホスホチオエート(SpcAMP)
SpcAMP+プロベネシド
SpcAMP+ロリプラム+プロベネシド
コレラ毒素
コレラ毒素+プロベネシド。
本発明者は、これらの(およびその他の)組み合わせが相乗的に作用して、単球における有効cAMPレベルを所望されるように上昇させうると信じる。cAMPに対する全ての代謝点を操作することによって、単一の成分だけと比較して同じ効果をもたらすために、混合物の成分のより低い用量が可能になることがまた理解される(図5参照)。
【0030】
本発明の第2の態様は、患者における抗原に対する寛容性を誘発する方法を提供し、該方法は単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSFまたはその誘導体を患者に投与することを含む。
抗原に対する寛容性を誘発するとは、患者の免疫系が、以前は非寛容的であった抗原に対して寛容的となること、あるいは免疫系が、その抗原に対して低下した反応を呈すること、またはまったく無反応(すなわち、検出不能反応)を呈することという意味を含める。
本発明は、患者における抗原に対する寛容性を誘発する方法をまた提供し、該方法は単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗原またはその誘導体を患者に投与することを含む。
投与される抗原またはその誘導体は、典型的には、それに対して寛容性を誘発することが望ましい抗原またはその誘導体である。
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗原またはその誘導体は好ましくは本発明の第1の態様に関して上述したものである。
薬剤がプロスタグランジンまたはそのアゴニストである場合が特に好ましい。
【0031】
よって、本発明は、本発明の第1の態様に記載されたような組成物を患者に投与することを含む、患者において抗原に対する寛容性を誘発する方法を含む。
該方法は単球走化剤、例えば上述したものを投与することをさらに含んでもよい。
GMCSFまたはその誘導体と組み合わされる単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤の量は、患者に投与されたときに、患者に寛容性状態を誘発しおよび/または免疫系または炎症反応を抑制する所望の治療効果を示すのに十分なものであることが理解される。
該方法は、上述のもののようなPDE阻害剤を投与することを含みうる。
本発明は、患者の免疫反応または炎症反応を抑制することを含む。「抑制する」には、免疫系または炎症反応が、炎症反応の場合には、刺激に対する炎症反応が低下させられ、または、その反応が検出不能となる程度にまで炎症反応が回避されるよう変更されるという意味を含める。
【0032】
従って、本発明は、患者において抗原に対する寛容性を誘発し、それによって、患者の異常なまたは有害な免疫または炎症反応を治療することを含む。これは、有害な炎症反応または免疫反応が見られる疾患または病態の治療に特に有用である可能性がある。従って、本発明は、患者における免疫反応または炎症反応を抑制する方法であって、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSFを患者に投与することを含む方法を含む。本発明は患者における免疫反応または炎症反応を抑制する方法であって、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSFと、それに対して寛容性を誘発することが望まれる抗原またはその誘導体を患者に投与することを含む方法をさらに含む。
「異常なまたは有害な免疫反応または炎症反応」とは、ある個体または患者の組織中に、目視が可能な、または測定可能な炎症の存在を誘発する疾患または病態を含む。例えば、外来移植片の一部を形成する組織、または外来移植片を受容した宿主の組織、あるいはMSを持つ個体の中枢神経系、あるいは1型糖尿病患者の膵島炎、あるいは関節リューマチ患者の腫脹関節である。
本発明は、患者において抗原に対する寛容性を誘発し、それによって、例えば、臓器移植拒絶に関連する反応のような、患者の中の異常なまたは有害な免疫または炎症反応を抑制する方法を含む。
従って、一実施態様では、本発明は、例えば臓器または皮膚移植における、移植対宿主疾患または宿主対移植疾患のような移植拒絶と関連する疾患または病態の治療を含む。これらの場合、免疫または炎症反応を阻害しまたはその勢いを弱めることが必要とされうる。よって、本発明は移植拒絶を克服することを含む。
【0033】
本発明は、患者において、移植拒絶反応、または移植拒絶と関連する疾患または病態を克服する方法を含み、その方法は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF、および場合によってはそれに対して寛容性を誘発することが望ましいとされる抗原、またはその誘導体をその患者に対して投与することを含む。
移植拒絶と関連する疾患または病態が宿主に対する移植片の疾患である場合、典型的には、抗原は宿主の抗原、すなわち移植受容者に存在する抗原である。あるいは、移植拒絶と関連する疾患または病態が移植片に対する宿主の疾患である場合、典型的には、抗原は、移植された臓器または材料に存在する抗原である。これらの場合、移植における抗原特異的T調節細胞の増加に関連する免疫または炎症反応の抑制または沈静が必要とされる場合がある。好ましくは、抗原はクラスIのMHC分子である。最も好ましくは、このMHC分子はHLA-A2である。
異常なまたは有害な免疫または炎症反応である疾患または病態は、有害な反応がアレルギー反応であるアレルギー症も含む。このような病態または疾患では、それに対して寛容性が誘発される抗原はアレルゲンであろう。
従って、本発明の方法は、有害なアレルギー性炎症または免疫反応の見られる、アレルギー性病態または疾患の治療には特に有用である可能性がある。
よって、他の実施態様では、本発明は、患者におけるアレルギー反応を治療、予防または抑制する方法であって、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSFを患者に投与することを含む方法を含む。場合によっては、寛容性を誘発するのが望ましい抗原またはその誘導体がまた患者に投与される。典型的には、アレルギー病態または疾患において、それに対して寛容性が誘発される抗原はアレルゲンであろう。アレルギーは、例えばネコ鱗屑、家埃ダニ、草や木の花粉、カビ、菌類、食物、刺す昆虫等々に対するアレルギーのような任意のアレルギーであってよい。
【0034】
好ましい一実施態様では、アレルギー病態または疾患はアレルギー性喘息である。好ましくは、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤および/またはGMCSFおよび/または抗原またはその誘導体は、エアロゾルを介して肺または気管支に投与される。好ましくは、薬剤はプロスタグランジンまたはそのアゴニストである。この実施態様は特に好ましいと考えられるが、それは、出典明示によりここに取り込まれる米国特許第4127612号に記述されるように、いくつかの19−ヒドロキシプロスタグランジン類似体は、気管支拡張剤として機能することが報告されているからである。プロスタグランジンが、喘息治療に広く使用されない理由は、プロスタグランジンが患者に咳を引き起こすためである。GMCSFを投与すれば、これはプロスタグランジンの低濃度投与を可能とするから、副作用を最小にしながら治療効果を挙げることが可能となる。
従って、本発明は、19-ヒドロキシPGE、GMCSF、および場合によってはアレルギー性喘息の吸入治療のためにそれに対して寛容性を誘発するのが好ましいとされるアレルゲンまたはその誘導体の使用を含む。
好ましい一実施態様では、疾患または病態が、アレルギー性疾患または病態、例えば、アレルギー性喘息である場合、抗原は、ダニ・アレルゲン、埃アレルゲン、哺乳類アレルゲン、例えば、ネコ、イヌ、または、ウマ・アレルゲン、好ましくはネコ・アレルゲンでありうる。
【0035】
他の実施態様では、抗原(アレルゲン)は、下記の内のいずれかである。すなわち、Fel d1(飼養ネコFelis domesticusの皮膚・唾液腺アレルゲンで、そのアミノ酸配列はWO91/06571に開示されている)、Der pI、Der pII、Der fI、またはDer fII(家埃ダニdermatophagoidesから生じる主要蛋白アレルゲンで、そのアミノ酸配列はWO94/24281に開示されている),および下記のいずれかに存在するアレルゲン、すなわち、草、木および雑草(ブタクサを含む)の花粉;キノコ類およびカビ類;食物例えば魚;貝類;蟹・海老;ピーナッツ;ナッツ類;小麦グルテン;卵とミルク;刺す昆虫、例えば、蜂、黄蜂と熊蜂、および、蚋類(刺さない蚋);蜘蛛・ダニ、家埃ダニを含む;哺乳類、例えば、猫、犬、牛、豚、羊、馬、兎、鼠、モルモット、マウス、および、ジャービル等の鱗屑、尿、唾液、血液、または、その他の体液の中に見られるアレルゲン;空中に浮遊する一般の粒子;ラテックス、および洗剤のタンパク質添加剤である。
抗原(アレルゲン)は、また、家蝿、ショウジョウバエ、羊クロバエ、蝿蛆虫、穀ゾウムシ、蚕、蜜蜂、刺さない蚋の幼虫、蜂蜜蛾幼虫、ミルワーム、ゴキブリおよびゴミムシダマシ(Tenibrio molitor)の幼虫を含む昆虫群から選ばれる昆虫抗原であってもよい。
さらに別の実施態様では、本発明は、患者の自己免疫疾患の治療方法であって、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSFを患者に投与することを含む方法を含む。自己免疫疾患の治療は、有害な免疫反応が生じる自己抗原に寛容性を誘発することを含みうる。
【0036】
本発明の方法を使用して治療することができる自己免疫疾患には、一次粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫萎縮性胃炎、アディソン病、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、交感性眼炎、MS、自己免疫性溶血性貧血、特発性白血球減少症、潰瘍性大腸炎、皮膚筋炎、強皮症、混合結合組織病、関節リウマチ、過敏性腸症候群、SLE、橋本病、甲状腺炎、ベーチェット病、セリアック病/疱疹状皮膚炎および脱髄疾患が含まれる。
例えば、関節炎を治療するためには、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSFまたはその誘導体を滑液に投与して、免疫学的に寛容性環境を確保することができる。
一実施態様では、患者の自己免疫疾患の治療方法は、寛容性を誘発することが望まれる抗原またはその誘導体を患者に投与することをさらに含む。典型的には、抗原は、それに対して有害な免疫反応が生じる自己抗原である。
好ましくは、疾患または病態が悪性貧血ならば、抗原はビタミンB12であってもよい。
好ましくは、疾患または病態がアディソン病ならば、抗原は副腎抗原であってもよい。
好ましくは、疾患または病態がインスリン依存性糖尿病(IDDM)ならば、抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリン、またはIA−2(プロテインチロシンフォスファターゼ様分子)であってもよい。
好ましくは、疾患または病態がグッドパスチャー症候群または腎臓脈管炎ならば、抗原は腎臓抗原または内皮抗原であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が重症筋無力症ならば、抗原はアセチルコリン受容体であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が交感性眼炎ならば、抗原は眼球抗原であってもよい。
【0037】
好ましくは、疾患または病態がMSのようなミエリン消耗疾患ならば、抗原は、ミエリン、MBP(ミエリン塩基性蛋白)、PLP(プロテオリピド蛋白)、またはMOG(ミエリン・オリゴデンドロサイト糖タンパク質)であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が自己免疫性溶血性貧血ならば、抗原は赤血球抗原であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が特発性白血球減少症ならば、抗原は白血球抗原であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が潰瘍性大腸炎ならば、抗原は、食物抗原またはウィルス抗原であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が皮膚筋炎ならば、抗原は平滑筋抗原であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が強皮症ならば、抗原は結合組織抗原であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が混合結合組織病ならば、抗原は結合組織抗原であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が過敏性腸症候群ならば、抗原は食物抗原であってもよい。
好ましくは、疾患または病態がSLEならば、抗原は、ヒストンタンパク質または免疫グロブリン重鎖であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が、橋本病、一次粘液水腫または甲状腺中毒症ならば、抗原は甲状腺抗原であってもよい。
【0038】
好ましくは、疾患または病態が、甲状腺自己免疫疾患または甲状腺炎ならば、抗原は、サイログロブリンのような甲状腺ホルモンであってもよい。
好ましくは、疾患または病態がベーチェット病ならば、抗原は、Sag(眼球由来のS抗原)、HLA-B44、B51またはHSP65であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が、セリアック病/疱疹状皮膚炎ならば、抗原はグリアジンであってもよい。全グリアジンを使用するよりは、グリアジン特異的T細胞の増殖を下方調節することが可能なグリアジン分画を使用する方が有用である可能性がある。適当な分画は、出典明示によりここに取り込まれるMauranoら (2001) Scand. J. Immunol. 53, 290-295に開示されるα分画であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が関節リューマチならば、抗原は、II型コラーゲンまたはHSP(熱ショックタンパク質)であってもよい。
好ましくは、疾患または病態が脱髄疾患ならば、抗原はミエリンであってもよい。
本発明の方法は、患者に対し、ある抗原に対する寛容性を再度付与するのに使用することが可能である。例えば、ウィルス感染の結果である自己免疫疾患または病態では、抗原は、ウィルスHSP類似の自己HSPである可能性がある。
本治療法は、T細胞を炎症誘発機能から逸らせることによって症状を治療するばかりでなく、有害な自己免疫反応を克服するものと考えられる。
【0039】
如何なる理論にも縛られるものではないが、本発明者は、本発明の方法が、T細胞のプログラミングに影響を及ぼし、それらの細胞を、炎症誘発性T細胞にではなく、調節的または抑制的T細胞となるように仕向けると考える。プロスタグランジンのような単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSFと抗原の存在下で抗原提示細胞によって改変されたT細胞がさらにその同じ抗原と遭遇すると、T細胞はIL−10のような抑制性サイトカインを放出する。従って、プロスタグランジンのような単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSFによる治療は、その抗原に対する炎症反応が生ずるのを阻止するか、または極小化すると考えられる。従って、プロスタグランジンのような上記薬剤、およびGMCSFおよび場合によっては抗原、例えば自己抗原、またはその誘導体による治療は、予防的に使用が可能であるし、あるいは例えば自己免疫疾患の最初の兆候が現れたら直ちに使用することも可能である。
さらに、T細胞は全身中に存在するのであるから、それらの細胞は、最終的な活動部位から遠く離れた部位でプログラムされる、あるいは成熟すると考えられる。従って、本発明の一実施態様では、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗原またはその誘導体の内のいずれか一つまたは全てを、疾患部位から離れた部位に投与してもよい。
同様に、ある種の自己免疫疾患に対する他の形態の治療と異なり、本方法は、免疫反応を、それが始まる前に予防するのに役立つ可能性がある。従って、本方法は、例えば年齢や遺伝的素因によって、自己免疫疾患にかかり易い素質を持つ患者を、炎症症状が現れる前に治療するのに有用である可能性がある。
本発明はまた患者における免疫反応または炎症反応を抑制または沈静するために、患者において抗原に対する寛容性を誘発することを含む。「抑制または沈静」とは、Th2反応の増加、Th1反応の減少、またはT調節細胞の増加を生じるIL−10レベルを増加させることを含む。
【0040】
ある特定の患者が、治療による効果を期待できる者か否かは医師によって判定が可能である。
患者を、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSFまたはその誘導体によって治療した場合に得られる効果は、その抗原に対する寛容性の促進または改善である。抗原は、その患者にとって外来のものであっても自己抗原であってもよく、患者に投与される抗原であってもよい。
プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤、GMCSFまたはその誘導体を投与することによって患者においてある抗原に対する寛容性を誘発することは、非特異的免疫抑制をもたらす可能性があることが理解される。従って、本発明は、患者において抗原に対する寛容性を誘発し、その患者に免疫抑制状態を作り出す方法を含み、その方法は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニスト、およびGMCSFまたはその誘導体を患者に投与することを含む。このような免疫抑制状態は、任意の抗原性刺激に対する細胞媒介性免疫反応の閾値を高めるという特徴を持つ。
従って本発明はまた単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSFまたはその誘導体の組み合わせの免疫抑制剤としての使用を提供することが分かる。
【0041】
プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗原またはその誘導体を投与することによって患者においてある抗原に対する寛容性を誘発することは、抗原特異的免疫抑制をもたらす可能性があることがまた理解される。従って、本発明は、患者において抗原に対する寛容性を誘発し、その患者に抗原特異的免疫抑制状態を作り出す方法を含み、その方法は、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗原またはその誘導体を患者に投与することを含む。このような抗原特異的免疫抑制状態は、特異的抗原に対する細胞媒介性免疫反応の閾値を高めるという特徴を持つ。
従って本発明はまた単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニスト、GMCSFまたはその誘導体、および抗原またはその誘導体の組み合わせの、その抗原に対する免疫抑制剤としての使用も提供する。
上記薬剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗原またはその誘導体は、どのような順序で投与してもよい。好ましくはこれらは同時投与される。しかしながら、それらは、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤と抗原の投与前に、GMCSFまたはその誘導体がアクセサリー細胞中に効果を示すことが可能となるように投与されてもよい。例えば、プロスタグランジンおよびそのアゴニストのような上記薬剤と、抗原またはその誘導体は、実質的に同時に、例えば同じ組成物において投与され、GMCSFは別に投与されてもよい。GMCSFは、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤と抗原またはその誘導体の前に、後に、または、実質的に同時に投与されてよい。投与の順序とタイミングは、抗原、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤およびGMCSFの性質に関する知識を用いて医師によって決められてよい。例えば、プロスタグランジン(例えばミソプロストール)は、投与後4時間にわたって活性を保ちうる。従って、投与の適切なタイミングは、この情報から容易に案出することができる。
【0042】
抗原に対する寛容性が、特定の器官に、例えば、皮膚または気管支および肺に局在することが望ましい場合、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤、および/またはGMCSFまたはその誘導体および/または抗原またはその誘導体は、その病態部位に局所的に投与されることが好ましい。上記薬剤は、ゲルまたはクリームまたはベーパーまたはスプレーとして、あるいは、病態が皮膚に局在している場合には「パッチ」として、あるいは、病態部位が肺または気管支である場合には吸入蒸気またはスプレーとして投与することができる。
プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤および/または抗原またはその誘導体は、全身的に投与してもよい。例えば、粘膜性免疫系に対して局所的に、例えば、坐剤を介して提示される抗原は、投与部位から離れた粘膜部位で作用することが予想される。
本発明は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤および/またはGMCSFまたはその誘導体および/または抗原またはその誘導体を、炎症部位から離れた粘膜部位に投与することを含み、例えば、関節炎の場合に、これらを坐剤として同時投与することも可能である。この実施態様は、消化管の病的変化は、筋骨格系(AlghafeerおよびSigal, Bulletin on the Rheumatic Diseases, 51(2): http://www.arthritis.org/research/bulletin/vol51no2/51_2_printable.asp、この文献は出典明示により本明細書に含める)を含む多数の器官の臨床的問題と関連する可能性があるので、特に効果的である。ある種の反応性関節炎は炎症性腸炎によって引き起こされ、腸疾患性関節炎では、腸管粘膜からの白血球が関節組織に移動することが報告されている(サルミとヤーカネン(SalmiおよびJalkanen (2001) J Immunol., 166(7): 4650-7、この文献は出典明示により本明細書に含める)。
【0043】
従って、抗原またはその誘導体は、様々な手段を通じて患者に投与することが可能であることが理解される。例えば、それは、患者の粘膜表面、例えば、直腸粘膜表面を通じて、例えば、坐剤として投与することが可能であり、膣を通じて、例えば、ペッサリーとして投与してもよいし、皮膚を通じて、例えば、ゲルまたはクリームまたはパッチとして投与してもよいし、肺に、例えば、エアロゾルとして(典型的には、肺の障害に対して)投与してもよいし、または経口的に、例えば、錠剤またはカプセルとして(通常、腸管における徐放のために)投与してもよい。
理論によって縛られるものではないが、投与された抗原またはその誘導体は、リンパ組織、例えば、リンパ系のリンパ節、または小腸粘膜下のパイヤー斑に輸送されると考えられる。従って、これらの組織に対してあらゆる輸送形態が考えられる。抗原またはその誘導体は、プロスタグランジンおよびGMCSFによって作られたIL−10上昇の寛容性付与環境において、APCによって循環するT細胞に提示される。さらに、プロスタグランジンとGMCSFの投与は、循環性T細胞が調節T細胞となる可能性を増大させる。
【0044】
GMCSFまたはその誘導体は、任意の適当な経路を通じて投与することができる。GMCSFまたはその誘導体は、多くの異なった投与経路を用いて、典型的には本発明に関しては単球である所望の作用部位に達することが可能である。典型的には、一実施態様では、GMCSFまたはその誘導体は全身的に投与される。全身投与の適切な形態は、経口、経皮、皮下または静脈内投与を含み、または坐剤による。
GMCSFまたはその誘導体を局所的に投与するのも簡便である。従って、GMCSFは、皮膚上のような局所的に、例えば、プロスタグランジンまたはそのアゴニストの投与に関連して前述したように、ゲルまたはクリームまたはベーパーまたはスプレーを用いて、あるいは「パッチ」として送達してもよい。同様に、気管支または肺投与の場合には、スプレーまたはベーパーとして投与してもよい。
本発明の好ましい実施態様では、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニスト、および/またはGMCSFまたはその誘導体および/または抗原またはその誘導体を、同時送達のために、同一の製剤中に組み合わせてもよい。従って、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニスト、および/またはGMCSFまたはその誘導体および/または抗原は、ゲルまたはクリームまたはベーパーまたはスプレーまたは「パッチ」または坐剤の中で組み合わされて、一緒に患者に投与されてもよい。
【0045】
好ましくは、坐剤は、pHが上昇した時にのみ腸内に活性剤を放出する腸溶性コーティングを有する。この種の調剤は、グルココルチコイドを腸管に送達するのに成功している(エントコートCRのデータシート)。
別態様として、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤および/またはGMCSFまたはその誘導体および/または抗原またはその誘導体は、カプセルまたは、その他の適当な嚥下される形態の下に投与されてもよい。カプセルまたはその他の適当な剤形は、pH感受性を持つ腸溶性コーティングを持ち、そのために、消化管における所望の地点、典型的には、回腸遠位部または結腸における放出を実現する。
別態様として、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤および/またはGMCSFまたはその誘導体および/または抗原またはその誘導体は、例えば、Egaletで生産されるもののような非溶解性チューブまたはパイプシステムを用いて、結腸または回腸遠位部に直接投与してもよい。
上記薬剤および/またはGMCSFおよび/または抗原は、同じまたは異なる部位に、かつ、同じまたは異なる投与方式によって投与してよいことが理解される。
【0046】
一実施態様では、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストは経口投与される。特に、プロスタグランジンまたはそのアゴニストは、その分解性を低減するように修飾され、かつ経口的に利用可能な(例えばミソプロストール)プロスタグランジン類似体である。
よって、好ましい実施態様では、本発明の方法は、その分解性を低減するように修飾され、かつ経口的に利用可能な(例えばミソプロストール)プロスタグランジン類似体の経口投与を移用し、抗原またはその誘導体もまた経口投与される。経口投与の利点は、他の投与方式と比べると一般に適応性が優れていることである。
本発明者は、GMCSFまたはその誘導体を、経口投与可能なプロスタグランジンまたはそのアゴニストと併用することは、GMCSFを用いない場合よりも、プロスタグランジンの経口用量が低減されることになることを意味すると考える。さらに、プロスタグランジンとGMCSFのこの組み合わせは、それが無くなった後でさえ持続する効果をもたらすことが示されており(実施例2および3を参照)、これは分化誘導薬であるGMCSFの存在によると思われる。これは、プロスタグランジンまたはそのアゴニストの経口投与によって引き起こされる副作用、例えば、筋痙攣を低減させるという利点を持つと本発明者は考える。
【0047】
好ましくは、GMCSFとプロスタグランジンまたはそのアゴニストの組み合わせは、GMCSFとPGEを含む。典型的には、5mlの生理食塩水中、0.1−100μgのPGEと1−250μgのGMCSFが投与されうる。
あるいは、GMCSFとプロスタグランジンまたはそのアゴニストの組み合わせは、GMCSFと19-ヒドロキシPGEを含む。典型的には、5mlの生理食塩水中、0.1−100μgの19ヒドロキシPGEと1−250μgのGMCSFが投与されうる。
サルグラモスチムの好適な用量は一日当たり250μg/mである。
典型的には、100から800μg、より好ましくは100から400μgのミソプロストールが毎日経口投与される。
典型的には、抗原またはその誘導体は、約100ngと約100mg、より典型的には約100μgの間の用量で投与される。
【0048】
本発明の第3の態様は、医薬に使用される、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSFまたはその誘導体を含有する組成物を提供する。本発明はまた医薬に使用される、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSFまたはその誘導体と、患者に寛容性を誘発することが望まれる抗原またはその誘導体を含有する組成物を含む。従って、組成物は医薬への使用のために包装され、提供される。組成物はヒトまたは獣医薬に使用することができる。好ましくはヒトの医薬に使用される。
好ましくは、第3の態様に係る使用は、上述のように、患者における異常なまたは望まれない免疫または炎症反応を治療することにある。
上述の薬剤(例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニスト)、GMCSFまたはその誘導体、および、抗原またはその誘導体に対して好ましいものは本発明の第1の態様のものと同じである。
一実施態様では、組成物は、上述のもののような、単球走化剤をさらに含有してもよい。
付加的なまたは別の実施態様では、組成物は、上述のもののような、PDE阻害剤をさらに含有してもよい。
【0049】
本発明の第4の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤の使用を提供し、ここで、患者にGMCSFまたはその誘導体が投与される。よって、患者には上記薬剤の投与前にGMCSFまたはその誘導体が既に投与されているか、または上記薬剤と同時にGMCSFまたはその誘導体が投与されるか、または上記薬剤の投与後にGMCSFまたはその誘導体が投与される。
本発明の第5の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、GMCSFまたはその誘導体の使用を提供し、ここで、患者には、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤が投与される。よって、患者にはGMCSFまたはその誘導体の投与前に上記薬剤が既に投与されているか、またはGMCSFまたはその誘導体と同時に上記薬剤が投与されるか、またはGMCSFまたはその誘導体の投与後に上記薬剤が投与される。
本発明の第6の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSF又はその誘導体の組み合わせの使用を提供する。よって、上記薬剤とGMCSFは患者への投与前に同じ医薬に併用されうる。
【0050】
本発明の第7の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤の使用を提供し、ここで、患者にGMCSFまたはその誘導体と抗原またはその誘導体が投与される。よって、患者には上記薬剤の投与前にGMCSFまたはその誘導体と抗原またはその誘導体が既に投与されているか、または上記薬剤と同時にGMCSFまたはその誘導体と抗原またはその誘導体が投与されるか、または上記薬剤の投与後にGMCSFまたはその誘導体と抗原またはその誘導体が投与される。
本発明の第8の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、GMCSF又はその誘導体の使用を提供し、ここで、患者には、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と抗原またはその誘導体が投与される。よって、患者にはGMCSFまたはその誘導体の投与前に上記薬剤と抗原またはその誘導体が既に投与されているか、またはGMCSFまたはその誘導体と同時に上記薬剤と抗原またはその誘導体が投与されるか、またはGMCSFまたはその誘導体の投与後に上記薬剤と抗原またはその誘導体が投与される。
本発明の第9の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、抗原またはその誘導体の使用であり、ここで、患者には、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSF又はその誘導体が投与される。よって、患者には上記抗原またはその誘導体の投与前に上記薬剤とGMCSFまたはその誘導体が既に投与されているか、または抗原またはその誘導体と同時に上記薬剤とGMCSFまたはその誘導体が投与されるか、または抗原またはその誘導体の投与後に上記薬剤とGMCSFまたはその誘導体が投与される。
【0051】
本発明の第10の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSF又はその誘導体の使用であり、ここで、患者には、抗原またはその誘導体が投与される。よって、患者には上記薬剤とGMCSFまたはその誘導体の投与前に上記抗原またはその誘導体が既に投与されているか、または上記薬剤とGMCSFまたはその誘導体と同時に抗原またはその誘導体が投与されるか、または上記薬剤とGMCSFまたはその誘導体の投与後に抗原またはその誘導体が投与される。
本発明の第11の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、GMCSF又はその誘導体と抗原またはその誘導体との使用であり、ここで、患者には、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤が投与される。よって、患者にはGMCSFまたはその誘導体と抗原またはその誘導体の投与前に上記薬剤が既に投与されているか、またはGMCSFまたはその誘導体と抗原またはその誘導体と同時に上記薬剤が投与されるか、またはGMCSFまたはその誘導体と抗原またはその誘導体の投与後に上記薬剤が投与される。
本発明の第12の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と抗原またはその誘導体との使用であり、ここで、患者には、GMCSF又はその誘導体が投与される。よって、患者には上記薬剤と抗原またはその誘導体の投与前にGMCSFまたはその誘導体が既に投与されているか、または上記薬剤と抗原またはその誘導体と同時にGMCSFまたはその誘導体が投与されるか、または上記薬剤と抗原またはその誘導体の投与後にGMCSFまたはその誘導体が投与される。
本発明の第13の態様は、患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSFまたはその誘導体および抗原またはその誘導体の組み合わせの使用を提供する。よって、上記薬剤、GMCSFまたはその誘導体および抗原またはその誘導体は患者への投与前に同じ医薬に併用されうる。
【0052】
好ましくは、第4ないし13の態様に係る使用は、上述のようにして、患者の異常なまたは望まれない免疫又は炎症反応を治療することにある。
発明の第4ないし13の態様に対して好ましい単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニスト、GMCSFまたはその誘導体、抗原またはその誘導体、投与経路、用量等々は発明の第1の態様のものと同じである。
発明の第4ないし13の態様に記載された医薬はまた単球走化剤および/またはPDE阻害剤を含有することもできることが理解される。発明の第4ないし13の態様に記載された医薬は、単球走化剤および/またはPDE阻害剤が投与された患者において抗原に対して寛容性を誘発するためのものでありうることがさらに理解される。単球走化剤およびPDE阻害剤の好適なものは発明の第1の態様のものと同じである。
本発明の第14の態様は、抗原に対する寛容性を誘発するための治療システムであって、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSFまたはその誘導体を含むシステムを提供する。該治療システムは「キット・オブ・パーツ」と呼ぶこともできる。
本発明は、抗原に対する寛容性を誘発するための治療システムであって、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSFまたはその誘導体と、寛容性を誘発することが望まれる抗原またはその誘導体とを含むシステムを含む。
【0053】
好ましくは、該治療システムは、本発明の第1の態様に記載されたような、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような好適な薬剤を含む。さらに好ましくは、治療システムは、本発明の第1の態様に記載されたような、好適なGMCSFまたはその誘導体を含む。該治療システムは好ましくは本発明の第1の態様に記載したような抗原またはその誘導体を含む。
該治療システムまたはキット・オブ・パーツは、好適には、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSFまたはその誘導体と、抗原またはその誘導体を、同時投与かまたは時間的に別々の投与かのいずれかの併用に適した製剤に包装され提供せしめられて含む。従って、例えば、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤、GMCSFまたはその誘導体、および、抗原またはその誘導体が、皮膚に対する同時局所投与用である場合の一実施態様では、治療システムは、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗原またはその誘導体の組み合わせを含む、ゲルまたはクリームまたはスプレーまたはベーパーまたは「パッチ」を含んでもよい。また別に、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗原またはその誘導体が、特定の治療処方において別々の投与用とされる他の実施態様では、それらの成分は別々に包装または製剤化される。例えば、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤は、クリームまたはゲルまたはスプレーまたはベーパーまたは「パッチ」を用いた局所投与用に製剤化され、GMCSFまたはその誘導体および抗原またはその誘導体は、静脈内または経口投与用に包装または製剤されてもよい。
治療システムは本発明の第1の態様に関して上述したもののような、単球走化剤および/またはPDE阻害剤をまた含んでいてもよいことが理解される。
【0054】
プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤単独、または、GMCSFまたはその誘導体単独、または抗原またはその誘導体単独、またはそれらの任意の2種またはそれら3種全ての組み合わせの製剤は、簡便には単位剤形で提供することが可能であり、製薬学の分野でよく知られた任意の方法によって調製することができる。このような方法は、本発明において使用される活性成分を、一または複数の補助成分を構成する担体と関連させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を、液性の担体または微細に分割した固相担体、またはその両方に、均一にかつ緊密に関連させ、かつ必要に応じて、その生成物を成形することによって調製される。
経口投与に好適な本発明に係る製剤(例えば、GMCSFまたは単球における有効cAMP濃度を上げる適切な薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストまたは抗原の)は、それぞれが予め定まった量の活性成分を含む、カプセル、カシェ剤または錠剤のような別々の単位として提供されてもよいし、散剤または顆粒として、水性液体または非水性液体の溶液または懸濁液として、あるいは、水中油液体エマルションまたは油中水液体エマルションとして提供されてもよい。活性成分はまたボーラス、舐剤またはペーストとして提供されてもよい。
【0055】
錠剤は、場合によっては一または複数の補助成分と共に、圧縮または成形によって製造することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒状の流動形の活性成分を、場合によっては結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性な希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、グリコール酸澱粉ナトリウム、架橋結合ポビドン、架橋結合カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性または分散剤と混合し、適当な装置で圧縮することによって調製することが可能である。成形錠剤は、不活性な液性希釈剤によって湿らした粉末状化合物の混合体を適当な装置で成形することによって製造が可能である。錠剤は場合によってはコート被覆し、または、割線をつけ、所望の放出プロフィールが得られるように、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な比率で用いて、活性成分の緩徐なまたは制御された放出を実現するように製剤化されてもよい。
好ましい単位剤形製剤は、活性成分の、1日用量または単位、1日のサブ用量またはその適当な分画量を含むものである。
【0056】
特に前述した成分の他に、本発明の製剤は、問題の製剤タイプに関して当該分野で一般的な他の薬剤を含んでもよく、例えば経口投与に適した製剤であれば香料添加剤を含んでもよいということを理解しなければならない。
皮膚に対する局所投与のためには、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤、および/またはGMCSFまたはその誘導体および/または抗原またはその誘導体を、分散剤または経皮的または経粘膜的移送または浸透を可能とする薬剤、例えば、ジメチルスルフォキシド(DMSO)等と組み合わせて製剤するのが簡便である。適当な薬剤とは、プロスタグランジンまたはそのアゴニストのような上記薬剤、および/またはGMCSFまたはその誘導体と適合性があるもの(例えば、その溶媒)である。
本方法または医薬が使用される患者は、例えば、猫、犬、馬、牛、羊、馬、豚等いずれの哺乳動物であってもよいが、好ましくはヒトである。
本方法または医薬は、抗原に対する寛容性を誘発する必要性を示す兆候が、治療される患者に明らかになる前に使用されてもよく、またそれとは別に、または、それに加えて、本方法または医薬は、症状または兆候が明白になってから使用されてもよいことが理解されよう。従って、臓器または組織移植を受ける予定の患者の場合、移植手術を開始する前に、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニスト、GMCSFまたはその誘導体、および場合によっては抗原またはその誘導体を投与することは有利であろう。さらに、移植(transplant)または移植(graft)手術の間にまたは完了後にも投与を続行することは有利であろう。必要な用量は、要求される寛容性の程度に応じて医師によって決められてよい。
【0057】
さらに、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニスト、GMCSFまたはその誘導体、および場合によっては抗原またはその誘導体は、それぞれ、単一用量として、または、同じ治療効果を挙げる複数のより少量の用量として投与されてもよいことが理解されよう。投与頻度は、用量を投与する医師または患者の都合によって変動させてもよい。
それに対して寛容性を誘発するのが望ましいとされる抗原以外の抗原への患者の暴露は最小限とするのが好ましいことが理解される。ある場合、このことは、免疫抑制処置患者に対して当該分野で知られている隔離「バブル」の中に患者を閉じ込めることを含みうる。
一を越える抗原に対して寛容性を持たせることが望ましいことがあることが理解される。従って、それに対して寛容性を誘発することが望ましいとされる一つの抗原を含む、複数の方法、使用および、組成物について言えば、それは、それに対して寛容性を誘発することが望ましいとされる2種または3種または4種または5種またはそれ以上の抗原を含むことになる。
妊娠は、本発明に対して不適応であるようである。事実、妊娠は、ミソプロストールを含む数種類のプロスタグランジンに対して不適応である。サイトテック(ミソプロストール)は低血圧を起こさないが、低血圧は、本発明の方法において考えられるリスクである。
【0058】
本発明者は、プロスタグランジンEおよびGMCSFがマクロファージ/単球系の細胞におけるIL−10、グラヌリシン、COX−2、CD86およびCD14の発現を亢進させることを示した。「マクロファージ/単球系の細胞」には、単球前駆体から誘導される細胞を含み、マクロファージ、単球および樹状細胞を含む。
本発明はまたマクロファージ/単球系の細胞におけるIL−10の発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する方法において、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSFまたはその誘導体を投与することを含む方法を含む。刺激は、インビトロまたはインビボでありうる。
マクロファージ/単球系の細胞におけるIL−10の発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する方法は単球走化剤および/またはPDE阻害剤を投与することをさらに含んでもよい。
IL−10のインビボでの分泌の刺激又は亢進は、本発明の第一の態様に関して既に記載したような移植、自己免疫疾患及びアレルギーのような症状において有益でありうる。
【0059】
本発明はまた患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるIL−10の発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストの使用を提供し、ここで、患者にはGMCSF又はその誘導体が投与される。よって、患者には上記薬剤の投与前にGMCSFが既に投与されているか、または上記薬剤と同時にGMCSFが投与されるか、またはプロスタグランジンまたはそのアゴニストの投与後にGMCSFが投与される。
本発明はまた患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるIL−10の発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する医薬の製造におけるGMCSF又はその誘導体の組み合わせの使用を提供し、ここで、患者には、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストが投与される。よって、患者にはGMCSFの投与前に上記薬剤が既に投与されているか、またはGMCSFと同時に上記薬剤が投与されるか、またはGMCSFの投与後に上記薬剤が投与される。
本発明はまた患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるIL−10の発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSF又はその誘導体の組み合わせの使用を提供する。よって、上記薬剤とGMCSFは患者への投与前に同じ医薬に併用されうる。
【0060】
本発明はまたマクロファージ/単球系の細胞におけるグラヌリシンの発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する方法において、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSFまたはその誘導体を投与することを含む方法を含む。刺激は、例えばグラヌリシンの抗ウイルス活性の増大を必要とする患者においてのインビトロまたはインビボ刺激でありうる。
マクロファージ/単球系の細胞におけるグラヌリシンの発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する方法は単球走化剤および/またはPDE阻害剤を投与することをさらに含んでもよい。
グラヌリシンのインビボでの分泌の刺激又は亢進は、本発明の第一の態様に関して既に記載したような移植、自己免疫疾患及びアレルギーのような症状において有益でありうる。
【0061】
本発明はまた患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるグラヌリシンの発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストの使用を提供し、ここで、患者にはGMCSF又はその誘導体が投与される。よって、患者には上記薬剤の投与前にGMCSFが既に投与されているか、または上記薬剤と同時にGMCSFが投与されるか、または上記薬剤の投与後にGMCSFが投与される。
本発明はまた患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるグラヌリシンの発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する医薬の製造におけるGMCSF又はその誘導体の組み合わせの使用を提供し、ここで、患者には、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストが投与される。よって、患者にはGMCSFの投与前に上記薬剤が既に投与されているか、またはGMCSFと同時に上記薬剤が投与されるか、またはGMCSFの投与後に上記薬剤が投与される。
本発明はまた患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるグラヌリシンの発現および同細胞からの分泌を刺激しまたは亢進する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSF又はその誘導体の組み合わせの使用を提供する。よって、上記薬剤とGMCSFは患者への投与前に同じ医薬に併用されうる。
【0062】
さらに、グラヌリシンのインビボでの分泌の刺激又は亢進は、例えば単純ヘルペスウイルスまたはヒトパピローマウイルスに対する抗ウイルス治療法として有益でありうる。よって、場合によっては例えばMCP−1またはMIP−1αのような単球走化剤と共に、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSF又はその誘導体との組み合わせを皮膚に局所的に適用して、ヘルペスまたはいぼの発生を予防しまたはそれを治療することができる。
従って、本発明は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSF又はその誘導体を患者に投与することを含む、患者のウイルス感染の治療方法を含む。該方法は単球走化剤および/またはPDE阻害剤を患者に投与することを更に含んでもよい。
本発明はまた単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSF又はその誘導体をヘルペスまたはいぼに投与することを含む、ヘルペスまたはいぼの治療方法を含む。該方法は単球走化剤および/またはPDE阻害剤をヘルペスまたはいぼに投与することを更に含んでもよい。
【0063】
本発明はまた患者のウイルス感染を治療する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストの使用を提供し、ここで、患者にはGMCSF又はその誘導体が投与される。よって、患者には上記薬剤の投与前にGMCSFが既に投与されているか、または上記薬剤と同時にGMCSFが投与されるか、または上記薬剤の投与後にGMCSFが投与される。
本発明はまた患者のウイルス感染を治療する医薬の製造におけるGMCSF又はその誘導体の組み合わせの使用を提供し、ここで、患者には、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストが投与される。よって、患者にはGMCSFの投与前に上記薬剤が既に投与されているか、またはGMCSFと同時に上記薬剤が投与されるか、またはGMCSFの投与後に上記薬剤が投与される。
本発明はまた患者のウイルス感染を治療する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSF又はその誘導体の組み合わせの使用を提供する。よって、上記薬剤とGMCSFは患者への投与前に同じ医薬に併用されうる。
【0064】
また、グラヌリシンのインビボでの分泌の刺激又は亢進は、特にグラヌリシンの抗ウイルス活性のために、抗腫瘍治療法として有益でありうる。例えば、グラヌリシン分泌の刺激又は亢進は初期段階の皮膚癌または子宮頚癌の治療に有益でありうる。
本発明はまた単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSF又はその誘導体を投与することを含む、患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるCOX−2の発現を刺激又は亢進する方法を含む。
COX−2のインビボでの発現の刺激又は亢進は、プロスタグランジンとGMCSFによって誘発される寛容化及び抗微生物表現型の維持に関与しているものと信じられているので、本発明の第一の態様に関して既に記載したような移植、自己免疫疾患及びアレルギーのような症状において有益でありうる。
本発明はまた患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるCOX−2の発現を刺激又は亢進する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストの使用を提供し、ここで、患者にはGMCSF又はその誘導体が投与される。よって、患者には上記薬剤の投与前にGMCSFが既に投与されているか、または上記薬剤と同時にGMCSFが投与されるか、または上記薬剤の投与後にGMCSFが投与される。
【0065】
本発明はまた患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるCOX−2の発現を刺激又は亢進する医薬の製造におけるGMCSF又はその誘導体の組み合わせの使用を提供し、ここで、患者には、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストが投与される。よって、患者にはGMCSFの投与前に上記薬剤が既に投与されているか、またはGMCSFと同時に上記薬剤が投与されるか、またはGMCSFの投与後に上記薬剤が投与される。
本発明はまた患者のマクロファージ/単球系の細胞におけるCOX−2の発現を刺激又は亢進する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、例えばプロスタグランジンまたはそのアゴニストと、GMCSF又はその誘導体の組み合わせの使用を提供する。よって、上記薬剤とGMCSFは患者への投与前に同じ医薬に併用されうる。
本発明のあらゆる側面及び実施態様において、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤はプロスタグランジンまたはそのアゴニストが好ましいことが理解される。
ここで言及される文献の全ては、出典明示によりその全体がここに取り込まれる。
以下、本発明を次の図面と実施例を参照しながらさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0066】
実施例1:免疫学的な寛容性を誘導するためのプロスタグランジンE/GMCSF相乗効果
プロスタグランジンのEシリーズは免疫学的な寛容性に関与することが証明されつつある。これは、経口寛容性(病原性及び共生生物に対する免疫系能力)、サイトカイン割合を調節する能力、精子に対する寛容性が必須であるヒト精漿中の高濃縮における役割に由来する。
プロスタグランジンは有益又は有害な細菌に適応して更に病原体に対する反応を高めるべき身体の多くの粘膜表面で生産される。Newberryら(1999)は、エッグ-ホワイトライソザイムを特異的に認識するT細胞受容体を発現している3A9TCRα−/−マウスが、プロスタグランジン合成が阻害、この場合、誘発性シクロオキシゲナーゼアイソフォームCOX-2により阻害されない限り、この抗原に対する炎症性反応を高めることはないことを示した。プロスタグランジンが除去され、特異的抗原にさらされるとマウスは炎症性腸疾患類似の疾患を発達させる(Newberry ら、1999)。これらの実験は、プロスタグランジン合成を阻害する主要効果を持つ、インドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬が寛容性を破壊するという先の研究を確信させるものである(Scheuerら,1987; Louisら, 1996)。
【0067】
正常固有層の単球はCD80ではなくCD86を発現するので、明確な表現型を持つ。炎症性病態(例えば、炎症性腸疾患)が持続する時、単球はCD80を発現する(Rugtveitら, 1997)。それゆえ、常在性のマクロファージ(CD80−veCD86+ve)は、最近補充したマクロファージ、CD80+ve、CD86+veと区別される。
単球は多くの免疫学的媒介物の主要源であり、プロスタグランジンを含めて、それ自体が抗原提示のためにサイトカイン環境を変化させる。PGEは寛容性に関連するサイトカインに主要に影響し、寛容原であるサイトカインIL-10(Strassmannら,1994)を刺激し、寛容性を破壊するIL-12(Kraanら,1995)を阻害する。PGEは又、抗原提示樹状細胞の成熟に直接作用し、IL-10の分泌を増加し、IL-12の分泌を減少させる細胞の生産を刺激するであろう(Kalinskiら,1997)。
ヒト精漿におけるPGE及び19-ヒドロキシPGEの濃度がいずれもとても高い(およそミリモル)ことが、必須寛容性を確実にする際のプロスタグランジンの重要性をさらに示す。明らかに、精子が免疫学的にコンピテントで感染可能な雌性生殖器に侵入するための免疫学的な寛容性は種の継続に必須であり、プロスタグランジンレベルは多くの内皮、さらにはリンパ節細胞が影響を受ける値であろう。このようにして精子は確実に免疫学的な保護を受けるように進化している。
【0068】
本実験(Strassmannら.,1994; Kraanら.,1995)では、PGEがIL-10産生を刺激するためにリポ多糖類(LPS)を必要とした。加えてIL-10への伝達はおよそ12時間遅れて伝わり、これらの因子が難題となる。本発明の観察により、LPSはGMCSFの発現を刺激し、このことが遅延及びその後のIL-10発現の原因となっているであろうことが示唆される。
今回我々は、プロスタグランジンとGMCSF間の相乗効果により、単球への寛容性誘導における主要なプロスタグランジン効果が媒介されうることを示す。この併用の短期曝露により、IL-10の発現は非常に増加し、CIITA及びMHCIIのような抗原提示関係細胞のレベルは現象するという表現型となる。更に、この表現型の変化はグラヌリシンによる発現亢進にも付随する。この分子は、抗微生物特性があり(Krensky 2000)、活性化T細胞(感染した細胞を溶解する抗ウイルス活性を媒介する(Hataら. 2001; Ochoaら. 2001; Smythら. 2001))の産物と通常考えられている。このような先天的防御分子の増加は、寛容性誘発を必然的に伴う適応免疫系の妥協を補うであろう。更に、この表現型は、CD80への中和効果だけでなくCD86の刺激により特徴づけられる。
【0069】
実験の詳細
U937(ヒト単球細胞系)細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories社)を添加したRPMI(PAA Laboratories社)培地中で生育した。5ng/mlのGMCSFを含む又は含まない10−6モルのプロスタグランジンE2で、細胞を4時間処理した。処理を除去して、細胞を更に20時間培養した。細胞はペレット状にしてTri試薬(英国、プール、Sigma社)を用いてmRNAを抽出した。全RNAはクロロホルムの添加に続くイソプロパノール沈殿によって得た。RNAは逆転写酵素(Applied Biosystem社)とランダムヘキサマー(Applied Biosystems社)で逆転写合成した。増幅とIL-10及び多くの他の分子の検出のためのプローブとプライマーはPrimer Express(Applied Biosystem社)を用いて以下のように設定した。
【0070】
IL-10プライマー
CTACGGCGCTGTCATCGAT
TGGAGCTTATTAAAGGCATTCTTCA
IL-10プローブ
CTTCCCTGTGAAAACAAGAGCAAGGCC
BAXプライマー
CATGGAGCTGCAGAGGATGA
CTGCCACTCGGAAAAAGACCT
Baxプローブ
TGCCGCCGTGGACACAGACTCC
BCL2プライマー
CCGGGAGGCGACCGTAGT
GGGCTGCGCACCCTTTC
BCL2プローブ
CGCCGCGCAGGACCAGGA
CD80プライマー
TCCACGTGACCAAGGAAGTG
CCAGCTCTTCAACAGAAACATTGT
CD80プローブ
AAGAAGTGGCAACGCTGTCCTGTGG
CD86プライマー
CAGACCTGCCATGCCAATT
TTCCTGGTCCTGCCAAAATACTA
CD86プローブ
CAAACTCTCAAAACCAAAGCCTGAGTGAGC
【0071】
COX-1プライマー
TGTTCGGTGTCCAGTTCCAATA
ACCTTGAAGGAGTCAGGCATGAG
COX-1プローブ
CGCAACCGCATTGCCATGGAGT
COX-2プライマー
GTGTTGACATCCAGATCACATTTGA
GAGAAGGCTTCCCAGCTTTTGTA
COX-2プローブ
TGACAGTCCACCAACTTACAATGCTGACTATGG
EP2プライマー
GAC CGC TTA CCT GCA GCT GTA C
TGA AGT TGC AGG CGA GCA
EP2プローブ
CCA CCC TGC TGC TGC TTC TCA TTG TCT
EP4プライマー
ACGCCGCCTACTCCTACATG
AGAGGACGGTGGCGAGAAT
EP4プローブ
ACG CGG GCT TCA GCT CCT TCC T
PDE4bプライマー
CCTTCAGTAGCACCGGAATCA
CAAACAAACACACAGGCATGTAGTT
PDE4bプローブ
AGCCTGCAGCCGCTCCAGCC
【0072】
グラヌリシンプライマー
CAGGGTGTGAAAGGCATCTCA
GGAGCATGGCTGCAAGGA
グラヌリシンプローブ
CGGCTGCCCCACCATGGC
CD 14プライマー
GCGCTCCGAGATGCATGT
AGCCCAGCGAACGACAGA
CD 14プローブ
TCCAGCGCCCTGAACTCCCTCA
E合成酵素プライマー
CGGAGGCCCCCAGTATTG
GGGTAGATGGTCTCCATGTCGTT
E合成酵素プローブ
CGACCCCGACGTGGAACGCT
IRAKMプライマー
CCT GCC CTC GGA ATT TCT CT
CTT TGC CCG CGT TGC A
IRAKMプローブ
CAC ACC GGC CTG CCA AAC AGA A
CIITAプライマー
GCTGTTGTGTGACATGGAAGGT
RTGGGAGTCCTGGAAGACATACTG
CIITAプローブ
CCGCGATATTGGCATAAGCCTCCCT
ClassIIプライマー
AGCCCAACGTCCTCATCTGT
TCGAAGCCACGTGACATTGA
ClassIIプローブ
TCATCGACAAGTTCACCCCACCAGTG
【0073】
Taqman7700機にてプローブにFAM/TAMRA色素を用いて鋳型を40サイクル増幅した。Applied Biosystemsキットを用いて増幅し、リボゾーム(18S)RNAをコントロールとして検出した。40サイクル後、FAMと18S(VIC)を表すCt(サイクル数に関連して信号が見られる)を記録し、式2−ΔΔCtを用いて確実な量を得る。
実験の結果は図2に示す。免疫系の細胞からのIL-10、CD-14、CD86、COX-2、及びグラヌリシンの放出に対してプロスタグランジン(PGE2)とGMCSF間に相乗効果が見られる。
【0074】
実施例2:IL-10を誘導するためのプロスタグランジンE/GMCSF相乗効果
実施例1に示すように細胞を培養したが、4時間後培地を除去し、細胞を洗浄し、単独培地にて更に48時間培養する。実施例1に示すように細胞からRNAを抽出した。
この実験の結果を図3に示す。IL-10発現に対してプロスタグランジン(PGE2)とGMCSF間に相乗効果が見られ、表現型が処理除去後48時間維持されることを示す。
【0075】
実施例3:PGE及びGMCSFに応答する際の単球からのIL-10放出
U937細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories社)を添加したRPMI(PAA Laboratories社)培地中で生育した。5ng/mlのGMCSFを含む及び含まない10−6モルのプロスタグランジンE2で、細胞を4時間処理した。処理を除去して、細胞を更に20時間培養した。培地を除去し、対応したモノクローナル抗体対(Pharmingen)又は市販のELISA(オックスフォード州、アビンドン、R&DSystem社、カタログ番号D1000)を用いてIL-10の分析を行った。図4はPGEとGMCSFに応答した単球から放出されるIL-10を示す。
サイクリックAMPレベルを分析するために、細胞が生育しているウェルを0.01N塩酸で処理して細胞内cAMPを抽出する。この抽出物はpH6に中和し、競合的酵素免疫測定法(オックスフォード州、アビンドン、R&DSystem社、カタログ番号DE0450)にてサイクリックAMPを分析する。
【0076】
実施例4:IL-10誘導の際の単球におけるcAMPレベルを上げる様々な薬剤の相対的効力
実験の詳細
U937(ヒト単球細胞系)細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories社)を添加したRPMI(PAA Laboratories社)培地中で生育した。5ng/mlのGMCSFを含む又は含まない10−6モルのプロスタグランジンE2、10−6モルのロリプラム、50×10−6モルのフォルスコリンで、細胞を48時間処理した。細胞はペレット状にしてTri試薬(英国、プール、Sigma社)を用いてmRNAを抽出した。全RNAはクロロホルムの添加に続くイソプロパノール沈殿によって得た。RNAは逆転写酵素(Applied Biosystem社)とランダムヘキサマー(Applied Biosystems社)で逆転写合成する。増幅とIL-10の検出のためのプローブとプライマーはPrimer Express(Applied Biosystem社)を用いて以下のように設定する。
IL-10プライマー
CTACGGCGCTGTCATCGAT
TGGAGCTTATTAAAGGCATTCTTCA
IL-10プローブ
CTTCCCTGTGAAAACAAGAGCAAGGCC
図6を参照。
【0077】
実施例5:TNFαと比較してIL-10を誘導する際の単球におけるcAMPレベルを上げる様々な薬剤の相対的効力
実施例4のとおりであるが、TNFαのmRNAをも含む。
PMA(2×10−7M)は選択的分化薬剤として用いた。IL-10はPMA分化により増加するが、TNFα(前起炎性及び抗寛容性薬剤)も増加した。フォルスコリンとGMCSFによる分化によりTNFαを認められるほど上昇しなかった。データはIL-10mRNA/TNFαmRNAの割合で示す。Pはホルボールミリストイルアセテート(PMA)、Fはフォルスコリン(Fsk)、gはGMCSF、Cは溶媒コントロール。
TNFαプライマー
GGAGAAGGGTGACCGACTCA
TGCCCAGACTCGGCAAAG
TNFαプローブ
CGCTGAGATCAATCGGCCCGACTA
図7を参照。
【0078】
実施例6:グラヌリシンを誘導する際の単球におけるcAMPレベルを上げる様々な薬剤の相対的効力
実施例4に示すとおりであるが、グラヌリシンのmRNAを実施例1に記載したプライマーを用いて測定した(図8を参照)。
GはGMCSF、FSKはフォルスコリン。
【0079】
実施例7:IL-10を誘導するためのプロスタグランジンE/GMCSF/プロベネシド相乗効果
細胞は実施例1に示すように培養し、20時間後に培地を除去して、洗浄し、実施例1に示すように細胞からRNAを抽出した。
この実験の結果を図9に示す。IL-10の発現に対して、プロスタグランジン(PGE2)及びGMCSF及びプロベネシド間に相乗効果が見られる。
EはPGE2。
【0080】
実施例8:脱髄疾患の治療
脱髄疾患患者に、200μgのミエリンとともに、1日当たり800μgのミソプロストールを経口的に、及び250μg/mのロイキン(登録商標)を静脈注射で、投与する。
【0081】
実施例9:関節リウマチの治療
関節リウマチ患者に、200μgのII型コラーゲンとともに、1日当たり800μgのミソプロストールを経口的に、及び250μg/mのロイキン(登録商標)を皮下注射で、投与する。
【0082】
実施例10
関節リウマチ患者に、1日に2回坐薬として、200μgのコラーゲンII型、100μgのフォルスコリン、及び100μgのロイキンを投与する。
【0083】
実施例11
関節リウマチ患者に、1日に2回坐薬として、200μgのコラーゲンII型、100μgのPGE、4mgのプロベネシド、及び100μgのロイキンを投与する。
【0084】
実施例12
関節リウマチ患者に、1日に2回坐薬として、200μgのコラーゲンII型、10μgのコレラ毒素、及び100μgのロイキンを投与する。
【0085】
実施例13
関節リウマチ患者に、1日に2回坐薬として、200μgのコラーゲンII型、100μgの8-brcAMP、及び100μgのロイキン(登録商標)を投与する。
【0086】
実施例14
多発性硬化症の女性患者に、1mgのミエリン、500μgのロリプラム、100μgのPGE2、4mgのプロベネシド、及び100μgのロイキンのゲル懸濁液を経膣的に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】Genbank登録番号NM_000758より得たヒトGMCSFのcDNA及びアミノ酸配列(それぞれ、図1A及び1B)。
【図2】U937細胞における遺伝子発現へのPGEとGMCSFの影響を示すグラフである。細胞はペレット状にしてRNAを抽出する前に、4時間、GMCSFを含む又は含まないでPGE2を処理し、洗浄して処理を除去し、更に20時間培養する。CD14、CD80、CD86、BCL-2、BAX, COX-1(シクロオイゲナーゼ1)、COX-2、PGES(プロスタグランジンシンターゼ)、EP2(あるプロスタグランジン受容体)、EP4(あるプロスタグランジン受容体)、PDE4B(あるホスホジエステラーゼ)、IRAK-IV、CIITA(MHCクラスIIトランス活性化因子)、MHC-II、IL-10、及びグラヌリシン(グランリンに省略)のmRNAレベルを測定した。グラフはGMCSF及びPGE2存在下での発現レベルの割合の変化を示す。
【図3】処置を除去した後48時間表現型を維持するU937細胞におけるIL-10のmRNA生産へのPGE及びGMCSFの相乗的効果を示す。細胞はグラフの下に表示した薬剤で4時間処理し、洗浄して処理を除去し、ペレット状にしてRNAを抽出する前に更に48時間培養する。PGE2、E2、及びEはすべてプロスタグランジンE2を表し、GMはGMCSF、及びMはMCSFを表す。
【図4】処置を除去した後表現型を維持するU937細胞におけるIL-10のタンパク質放出へのPGE及びGMCSFの相乗的効果を示す。細胞はグラフの下に表示した薬剤で4時間処理し、洗浄して処理を除去し、培地をIL-10の測定をする前に更に20時間培養する。PGEはすべてプロスタグランジンE2を表し、GMはGMCSFを表す。
【図5】細胞内cAMPを制御する薬剤を図示する。白抜き矢印は細胞内cAMPレベルを有効に下げている。実線矢印は刺激している。併用は相乗効果を意図する。
【図6】IL-10発現誘発における様々な薬剤の相対的効力を示す。詳細は実施例4を参照。
【図7】IL-10発現誘発における様々な薬剤の相対的効力を、TNFαmRNA発現に対するIL-10の割合として表す。詳細は実施例5を参照。
【図8】グラヌリシンmRNA発現誘導における様々な薬剤と薬剤の混合の相対的効力を示す。詳細は実施例6を参照。
【図9】IL-10発現におけるプロスタグランジン(PGE2)とGMCSFとプロベネシド間の相乗的効果を示す。
【0088】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対し抗原に対する寛容性を誘発する方法において、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその誘導体を患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤が、プロスタグランジン又はそのアゴニスト、βアドレナリン作動薬、細胞からのcAMP放出遮断薬、フォルスコリン又はその誘導体、cAMPホスホジエステラーゼ阻害剤、cAMP類似体、又はコレラ毒又はその誘導体又は断片のうちのいずれか又は複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞からのcAMP放出遮断薬がプロベネシド又はプロゲステロンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
cAMP類似体が、Sp-アデノシン3',5'-環状モノホスホロチオエート又は8-ブロモアデノシン3',5'環状モノホスフェート又はジブトリリルcAMPである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
プロスタグランジン又はそのアゴニストが単球におけるcAMP産生を刺激する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
プロスタグランジン又はそのアゴニストが、プロスタグランジンE、例えば、プロスタグランジンE又はその類似体、ジノプロストン、ゲメプロスト、ミソプロストール、アルプロスタジル、リマプロスト、ブタプロスト、11-デオキシPGE1、AH23848、AH13205、又は、19-ヒドロキシPGEのいずれか一つである、請求項2又は5に記載の方法。
【請求項7】
GMCSFが図1に示すアミノ酸配列又はその天然に生じる変異型を持つヒトGMCSFである、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
GMCSFがサルグラモスチムである、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
患者に単球走化性薬剤を投与することを更に含む、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
単球走化性薬剤がMCP-1又はMIP-1αである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
患者にPDE阻害剤を投与することを含む、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
PDE阻害剤が、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、ペントキシフィリン(3,7-ジヒドロ-3,7-ジメチル-1-(5-オキソヘキシル)-1H-プリン-2,6-ジオン)、ロリプラム(4-[3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル]-2-ピロリジノン)、CP80 633、CP102 995、CP76 593、Ro-20-1724 (4-[3-ブトキシ-4-メトキシベンジル]-2-イミダゾリジノン)、テオフィリン、または、デンブフィリン(1,3-ジ-n-ブチル-7-(2-オキソプロピル)-キサンチン)のいずれか一つである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
PDE阻害剤がIV型PDEに対して選択的である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
IV型PDEに対して選択的なPDE阻害剤が、ロリプラム(4-[3-シクロペンチルオキシ-4−メトキシフェニル]-2-ピロリジノン)、CP80 633、CP102 995、CP76 593、Ro-20-1724(4-[3-ブトキシ-4-メトキシベンジル]-2-イミダゾリジノン)、デンブフィリン(1,3-ジ-n-ブチル-7-(2-オキソプロピル)-キサンチン)、又は、CDP840、RP73401またはRS33793のいずれか一つである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者に抗原又はその誘導体を投与することを含む、請求項1ないし14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体のいずれか又は複数を、寛容性を必要とする部位に局所的に投与する、請求項1ないし15に記載の方法。
【請求項17】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体のいずれか又は複数を、全身投与する、請求項1ないし16に記載の方法。
【請求項18】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体のいずれか又は複数を、経口投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
単球におけるc有効AMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体のいずれか又は複数を、坐剤又はカプセル剤として投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
坐剤又はカプセル剤は、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体のいずれか又は複数が患者の腸管において放出されるために腸溶コーティングしたものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくともGMCSF又はその誘導体が皮下注射又は静脈注射される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体のいずれか二つ以上が同時に投与される、請求項1ないし21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
移植拒絶反応に関する疾患又は病態に抗するための、請求項1ないし22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
移植拒絶反応に関する疾患又は症状が移植片対宿主病又は宿主対移植片病を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体の一又は複数が移植前に投与される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
抗原がHLA-A2である、請求項23ないし25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
自己免疫疾患又は病態の治療を目的とする、請求項1ないし22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
自己免疫疾患が、原発性粘液性浮腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アディソン病、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、交感性眼炎、多発性硬化症(MS)、自己免疫性溶血性貧血、特発性白血球減少症、潰瘍性大腸炎、皮膚筋炎、強皮症、混合結合組織病、関節リウマチ、過敏性腸症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、橋本病、甲状腺炎、ベーチェット病、セリアック病/疱疹状皮膚炎、腎脈管炎、及び、脱随疾患から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
抗原が自己抗原である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
自己免疫疾患が悪性貧血であるならば抗原はビタミンB12であり、疾患がアディソン病ならば抗原は副腎抗原であり、疾患がIDDMならば抗原はグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリンまたはIA−2であり、疾患がグッドパスチャー症候群または腎脈管炎ならば抗原は腎臓抗原または内皮抗原であり、疾患が重症筋無力症ならば抗原はアセチルコリン受容体であり、疾患が交感性眼炎ならば抗原は眼球抗原であり、疾患が多発性硬化症(MS)ならば抗原はミエリン塩基性蛋白(MBP)、プロテオリピド蛋白(PLP)またはミエリン・オリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)であり、疾患が自己免疫性溶血性貧血ならば抗原は赤血球抗原であり、疾患が特発性白血球減少症ならば抗原は白血球抗原であり、疾患が潰瘍性大腸炎ならば抗原は食物抗原またはウイルス抗原であり、疾患が皮膚筋炎ならば抗原は平滑筋抗原であり、疾患が強皮症ならば抗原は結合組織抗原であり、疾患が混合結合組織病ならば抗原は結合組織抗原であり、疾患が過敏性腸症候群ならば抗原は食物抗原であり、疾患が全身性エリテマトーデス(SLE)ならば抗原はヒストン蛋白または免疫グロブリン重鎖であり、疾患が橋本病、原発性粘液性浮腫または甲状腺中毒症ならば抗原は甲状腺抗原であり、疾患が関節リウマチならば抗原はII型コラーゲンまたは熱ショック蛋白(HSP)であり、疾患が甲状腺炎ならば抗原はサイログロブリンであり、疾患がベーチェット病ならば抗原はSag、HLA−B44、B51またはHSP65であり、疾患がセリアック病/疱疹状皮膚炎ならば抗原はグリアジンまたはそのα分画であり、かつ、疾患が脱髄疾患ならば抗原はミエリンである、請求項27ないし29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
患者のアレルギー疾患または病態を治療するための、請求項1ないし22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
アレルギー疾患または病態はアレルギー性喘息である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
抗原は、ダニ・アレルゲン、埃アレルゲン、ネコ・アレルゲン、イヌ・アレルゲン、または、ウマ・アレルゲンである、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
抗原に対する寛容性は、抗原に対する患者の異常な、または望まれない免疫または炎症反応を治療することである、請求項1ないし33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
異常な、または望まれない免疫または炎症反応は、IL-10生産の欠乏が関与する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその誘導体を含む組成物。
【請求項37】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤が、プロスタグランジン又はそのアゴニスト、βアドレナリン作動薬、細胞からのcAMP放出遮断薬、フォルスコリン又はその誘導体、cAMPホスホジエステラーゼ阻害剤、cAMP類似体、又はコレラ毒又はその誘導体又はその断片のうちのいずれか又は複数である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
細胞からのcAMP放出遮断薬がプロベネシド又はプロゲステロンである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
cAMP類似体が、Sp-アデノシン3',5'-環状モノホスホロチオエート、又は8-ブロモアデノシン3',5'環状モノホスフェートである、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
プロスタグランジン又はそのアゴニストが単球におけるcAMP産生を刺激する、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
プロスタグランジン又はそのアゴニストが、プロスタグランジンE、例えば、プロスタグランジンEまたはその類似体、ジノプロストン、ゲメプロスト、ミソプロストール、アルプロスタジル、リマプロスト、ブタプロスト、11-デオキシPGE1、AH23848、AH13205、又は、19-ヒドロキシPGEである、請求項37又は40に記載の組成物。
【請求項42】
GMCSFが図1に示すアミノ酸配列又はその自然発生的な変異型を持つヒトGMCSFである、請求項36ないし41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
GMCSFがサルグラモスチムである、請求項36ないし41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
単球走化性薬剤を含む、請求項36ないし43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
単球走化性薬剤がMCP-1又はMIP-1αである、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤を含む、請求項36ないし45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
PDE阻害剤が、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、ペントキシフィリン(3,7-ジヒドロ-3,7-ジメチル-1-(5-オキソヘキシル)-1H-プリン-2,6-ジオン)、ロリプラム(4-[3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル]-2-ピロリジノン)、CP80 633、CP102 995、CP76 593、Ro-20-1724 (4-[3-ブトキシ-4-メトキシベンジル]-2-イミダゾリジノン)、テオフィリン、または、デンブフィリン(1,3-ジ-n-ブチル-7-(2-オキソプロピル)-キサンチン)のいずれか一つである、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
PDE阻害剤がIV型PDEに対して選択的である、請求項46又は47に記載の組成物。
【請求項49】
IV型PDEに対して選択的なPDE阻害剤が、ロリプラム(4-[3-シクロペンチルオキシ-4−メトキシフェニル]-2-ピロリジノン)、CP80 633、CP102 995、CP76 593、Ro-20-1724(4-[3-ブトキシ-4-メトキシベンジル]-2-イミダゾリジノン)、デンブフィリン(1,3-ジ-n-ブチル-7-(2-オキソプロピル)-キサンチン)、または、CDP840、RP73401またはRS33793のいずれか一つである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
患者において抗原に対する寛容性を誘発するためのものであり、寛容性を誘発すると思われる抗原又はその誘導体をさらに含む、請求項36ないし49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
請求項36ないし50のいずれか一項に記載の組成物と製薬的に受容可能な単体、希釈剤又は賦形剤を含む製薬組成物。
【請求項52】
医学での使用を目的とした、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSF又はその誘導体を含む組成物。
【請求項53】
医学での使用を目的とした、患者における寛容性を誘導すると思われる抗原、又はその誘導体をさらに含む、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
医学での使用を目的とした、単球走化性薬剤を含む、請求項52又は53に記載の組成物。
【請求項55】
医学での使用を目的とした、PDE阻害剤を含む、請求項52ないし54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
GMCSF又はその誘導体が投与される患者において抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤の使用。
【請求項57】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤が投与される患者において抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、GMCSF又はその誘導体の使用。
【請求項58】
患者において抗原に対する寛容性を誘発する薬剤製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSF又はその誘導体の使用。
【請求項59】
GMCSF又はその誘導体と抗原又はその誘導体が投与される患者において抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤の使用。
【請求項60】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と抗原又はその誘導体が投与される患者において抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、GMCSF又はその誘導体の使用。
【請求項61】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSF又はその誘導体が投与される患者において抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、抗原又はその誘導体の使用。
【請求項62】
抗原又はその誘導体が投与される患者において抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤とGMCSF又はその誘導体の使用。
【請求項63】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤が投与される患者において抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、GMCSF又はその誘導体と抗原又はその誘導体の使用。
【請求項64】
GMCSF又はその誘導体が投与される患者において抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と抗原又はその誘導体の使用。
【請求項65】
患者において抗原に対する寛容性を誘発する医薬の製造における、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体と、抗原又はその誘導体の使用。
【請求項66】
患者において抗原に対する寛容性を誘発する治療システムにおいて、単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体を含む治療システム。
【請求項67】
寛容性の誘発を望む抗原をさらに含む、請求項66に記載の治療システム。
【請求項68】
単球走化性薬剤、及び/又はPDE阻害剤をさらに含む、請求項66又は67に記載の治療システム。
【請求項69】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体の一又は複数は、寛容性を必要とする部位に局所的に投与することを目的として調製される、請求項66ないし68のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項70】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体の一又は複数は、全身投与を目的として調製される、請求項66ないし68のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項71】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体の一又は複数は、経口投与を目的として調製される、請求項66ないし68のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項72】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤、GMCSF又はその誘導体、単球走化性薬剤、PDE阻害剤と、抗原又はその誘導体の一又は複数は、坐剤又はカプセル剤として調製される、請求項66ないし68のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項73】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSF又はその誘導体を細胞に投与することを含む、マクロファージ/単球系の細胞におけるグラヌリシン発現を刺激又は亢進する方法。
【請求項74】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSF又はその誘導体を患者に投与することを含む、ウイルス感染治療方法。
【請求項75】
ウイルス感染が単純ヘルペスウイルス感染又はヒトパピローマウイルス感染である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
単純ヘルペスウイルス感染が単純疱疹である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
ヒトパピローマウイルス感染が疣である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSF又はその誘導体を細胞に投与することを含む、マクロファージ/単球系細胞でのIL-10発現と分泌を刺激又は亢進する方法。
【請求項79】
単球における有効cAMP濃度を上げる薬剤と、GMCSF又はその誘導体を患者に投与することを含む、患者の腫瘍治療方法。
【請求項80】
単球走化性薬剤を投与することをさらに含む、請求項73ないし79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
PDE阻害剤を投与することをさらに含む、請求項73ないし80のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−508936(P2006−508936A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544500(P2004−544500)
【出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004537
【国際公開番号】WO2004/035083
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504171433)メディカル リサーチ カウンシル (16)
【Fターム(参考)】