説明

治療用途または化粧品用途のための二芳香族化合物

本発明は、2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸のエステル化合物、その製造方法、および医療分野および化粧品分野におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サリチル酸単位から誘導された新規な二芳香族化合物、その製造方法、ならびに、ヒトおよび動物の医薬および化粧品におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サリチル酸単位から誘導された二芳香族化合物のファミリーについては、欧州特許第0514264号に記載されている。これらの化合物は、角質化障害に関連する皮膚病変、および特に眼科病変の局所的および全身的な処置における用途を有するとして記載されている。
【0003】
これらの化合物の活性は、特に、マウスの胚性テトラカルシノーマ(F9)細胞分化アッセイ、およびヒトにおけるケラチノサイト分化アッセイによって、実証されている。
【特許文献1】欧州特許第0514264号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、前述の文献は、RAR受容体のγサブタイプに対する、この化合物に存在しうるいかなる特異的な活性にも言及していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸が、RAR受容体ファミリーのγサブタイプに対して選択的な、極めて有利なアゴニスト活性を示すことが明らかになった。
【0006】
この結果、この酸のプロドラッグであり、それら自体RARγ受容体に対する選択的な活性を示す可能性がある化合物を所有しておくことの利点が多くなった。
【0007】
本発明は、このような化合物であって、肝臓での半減期が非常に短い、有利には半減時間が3分のオーダーである、さらには半減期が局所的な適用と完全に適合するという利点をも有する化合物を提供する。
【0008】
第一の態様では、本発明の主題は、一般式(I):
【化1】

(式中、Rは:
−炭素原子2個〜20個を有するアルキル基、
−炭素原子2個〜20個を有するアルケニル基、
−炭素原子1個〜6個を有するモノ−またはポリヒドロキシアルキル基
−糖残基、または
−アミノ酸残基
を表し、
は、水素原子、または炭素原子1個〜3個を有するアルキル基を表す)
の化合物、および(Rがアミノ酸残基を表す場合には)式(I)の化合物の塩、および式(I)の化合物の異性体である。
【0009】
上述により定義した、十分に酸性の官能基もしくは十分に塩基性の官能基または両方を有する本発明の式(I)の化合物は、これに対応する、医薬品として許容できる有機酸もしくは無機酸の塩または有機塩基もしくは無機塩基の塩を含むことができる。
【0010】
本発明は、一般式(I)の化合物の、互変異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体およびエピマー、ならびに有機もしくは無機の塩にも関する。
【0011】
上述で用いられたように、また本発明の記載を通して、以下の用語は、特に言及が内限り、以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0012】
用語「アルキル基」は、直鎖または分岐鎖の、鎖中に炭素原子2個〜20個を有する、脂肪族炭化水素をベースにした基を意味することが意図されている。好ましいアルキル基は、鎖中に炭素原子2個〜12個、特に炭素原子4個〜12個を有する。
【0013】
用語「分岐鎖のアルキル」は、1種またはそれ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、またはプロピル基等)が、直鎖のアルキル鎖に結合していることを意味する。
【0014】
用語「低級アルキル」は、鎖中に炭素原子1個〜4個を有する、直鎖または分岐鎖の基を意味する。
【0015】
アルキル基の例としては、特に、エチル、イソプロピル、n-プロピル、tert-ブチル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルを挙げることができる。
【0016】
用語「アルケニル」は、炭素−炭素二重結合を含み、直鎖であっても分岐鎖であってもよい、鎖中に炭素原子2個〜15個を有する脂肪族炭化水素をベースにした基を意味することが意図されている。好ましいアルケニル基は、鎖中に炭素原子を2個〜12個を有し、好ましくは、鎖中に2個〜4個の炭素原子を有する。
【0017】
用語「分岐鎖の」は、1種またはそれ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、またはプロピル基等)が、直鎖のアルケニル鎖に結合していることを意味することが意図されている。
【0018】
アルケニル基の例としては、特に、ビニル、アリル、2-ブテニル、n-ブテニル、3-メチルブト-2-エニル、n-ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、シクロヘキシルブテニル、およびデセニル基を挙げることができる。
【0019】
用語「モノヒドロキシアルキル基」は、水酸基1個で置換された、本明細書で定義されたアルキル基を意味することが意図されている。
【0020】
モノヒドロキシアルキル基の例としては、特に、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、およびヒドロキシヘキシル基を挙げることができる。
【0021】
用語「ポリヒドロキシアルキル基」は、水酸基2個〜5個で置換され、好ましくは炭素原子2個〜6個を有する、本明細書で定義されたアルキル基を意味することが意図されている。ポリヒドロキシアルキル基の例としては、特に、2,3-ジヒドロキシプロピル、2,3,4-トリヒドロキシブチル、および2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル基を挙げることができる。
【0022】
本明細書の目的において、用語「糖残基」は、例えば、グルコース、ガラクトース、またはマンノースから誘導される残基を意味することが意図されている。糖残基の例としては、特に、6-グルコシル、6-ガラクトシル、および6-マンノシル基を挙げることができる。
【0023】
用語「アミノ酸」は、アミノ基とカルボキシル基とを両方含む、一般式:
HOOC-CH(側鎖)(NH2)
の原子団を意味する。
【0024】
このアミノ酸は、D配置、L配置、またはラセミ配置であってよい。
【0025】
このアミノ酸は、天然のおよび非天然のアミノ酸を含む。
【0026】
天然のアミノ酸は、タンパク質を構成する20個のアミノ酸(例えば、セリン、トレオニン、およびチロシン等)を包含する。
【0027】
非天然のアミノ酸は既知であり、天然のアミノ酸の類似体を包含する。この点については、特に、Lehninger, A.L., Biochemistry, 2nd ed., Worth Publishers, New York, 1975, 71-77を参照することができる。
【0028】
非天然のアミノ酸は、側鎖が合成誘導体で置換されたアミノ酸を含む。
【0029】
本発明の文脈では、側鎖に1個またはそれ以上のヒドロキシル官能基を含み、カルボン酸官能基でエステル官能基を形成しうるアミノ酸が、最も特に好ましい。ヒドロキシル官能基を有する天然のアミノ酸の例には、セリン、トレオニン、およびチロシンがある。
【0030】
本明細書の目的において、用語「アミノ酸残基」は、アミノ酸の側鎖に担われたヒドロキシル基が、カルボン酸官能基と反応して、以下のタイプのエステル官能基:
【化2】

を形成した後のアミノ酸の残基を意味することが意図されている。
【0031】
表現「医薬品として許容できる塩」は、比較的毒性のない、本発明の化合物の、無機または有機の酸付加塩および塩基との付加塩をいう。これらの塩は、本化合物の最終的な単離および精製の間に、系内で製造することができる。特に、酸付加塩は、精製した化合物を精製された形態のままで有機または無機の酸と別々に反応させ、形成された塩を単離することによって製造することができる。
【0032】
酸付加塩の例としては、以下の塩を挙げることができる:
臭化水素塩、塩酸塩、硫酸塩、ビスルフェート、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、トシレート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプタン酸塩、ラクトビオン酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、メチレンビス-b-ヒドロキシナフトエ酸塩、ゲンチシン酸塩、イセチオン酸塩、ジ-p-トルイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩、ラウリルスルホン酸塩等(例えば、S.M.Bergeら、"Pharmaceutical Salts" J. Pharm. Sci., 66: p. 1-19 (1977)を参照されたい)。この酸付加塩は、酸の形態で精製した化合物を有機または無機の酸と別々に反応させ、形成された塩を単離することによって製造することもできる。
【0033】
酸付加塩には、アミノ塩および金属塩が含まれる。
【0034】
好適な金属塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム、およびアルミニウム塩が挙げられる。ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【0035】
好適な、塩基との無機付加塩は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、および水酸化亜鉛を含む、金属塩基から製造する。
【0036】
好適な、塩基とのアミノ付加塩は、安定な塩を形成するために十分なアルカリ度を有し、好ましくは、毒性が低く、医学的用途に認容性があるため医薬品化学において用いられることが多いアミン類:アンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルカミン、リジン、アルギニン、オルチニン、コリン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェナミン(ephenamine)、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸(例えば、リジンおよびアルギニン)、およびジシクロヘキシルアミン等から製造する。
【0037】
本発明の化合物は、不斉中心を含んでいてよい。これらの不斉中心は、独立に、R配置またはS配置であってよい。一部の化合物は、幾何異性も示す。
【0038】
本発明は、式(I)の化合物の、個々の幾何異性体、および立体異性体、ならびにこれらの混合物を含み、ラセミ混合物混合物を含む。
【0039】
これらの異性体のタイプは、これらの混合物から、公知の方法(例えば、クロマトグラフィー技術または再結晶技術)を適用または採用することによって分離することができ、あるいは、これらの適切な中間体の異性体から別々に製造することができる。
【0040】
所与の基(例えば、オキソ/ヒドロキシル)に言及する場合には、互変異性型を含むと理解されたい。
【0041】
好ましくは、Rは、アルキル基、特に炭素原子2個〜6個を有するアルキル基を表す。1つの実施態様では、Rは、炭素原子1個〜3個を有し、上述した定義に従うアルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルを表す。
【0042】
好ましくは、Rは、水素原子である。
【0043】
上述の式(I)の化合物としては、以下の化合物を挙げることができる:
1) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸エチルエステル;
2) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソプロピルエステル;
3) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソブチルエステル;
4) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ブチルエステル;
5) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ペンチルエステル;
6) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ヘキシルエステル;
7) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ヘプチルエステル;
8) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ヘプト-6-エニルエステル;
9) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸2,3-ジヒドロキシプロピルエステル;
10) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸4-ヒドロキシブチルエステル;
11) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸6-ガラクトシルエステル;
12) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸6-グルコシルエステル;
13) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸6-マンノシルエステル;
14) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸2-アミノ-2-カルボキシエチルエステル;
15) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸4-(2-アミノ-2-カルボキシエチル)フェニルエステル;
16) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸2-アミノ-2-カルボキシプロピルエステル。
【0044】
一般式(I)の化合物は、それ自体公知ないずれかの方法の適用または採用によって、かつ/あるいは、当業者に公知な範囲内で、特にLarockによりComprehensive Organic Transforations、VCH Pub., 1989に記載された方法の範囲内で、あるいは、以下の実施例に記載された方法(より詳細には、欧州特許第0 514 264号に記載の方法)の適用または採用等によって、製造することができる。
【0045】
以下に記載する反応において、反応性官能基(例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、またはカルボキシル基)が最終生成物に存在することが所望される場合、これらの反応性官能基の反応への望ましからぬ参与を避けるために、これらの反応性官能基を保護する必要がある場合がある。従来の保護基を、標準的な手順:例えば、T.W. GreenおよびP.G.M. Wutsの、Protective Groups in Organic Chemistry, John Wiley and Sons, 1991;J.F.W. McOmieの、Protective Groups in Organic Chemistry, Plenum Press, 1973にしたがって用いることができる。
【0046】
式(I)の化合物を製造するための一般的な合成経路を、図1のスキームに表した。
【0047】
使用する塩基性物質もしくは反応物質は、商業的に入手可能であり、かつ/あるいは公知の方法(例えば、実施例に記載した方法、またはこれらの方法と化学的に等価な方法)の適用または採用によって製造することができる。
【0048】
式(I)の化合物は、図1の合成スキームで表した経路Aまたは経路Bによって製造することができる。
【0049】
特記のない限り、図1または図2の合成スキームで表した置換基は、上述した意味を有する。
【0050】
したがって、別の態様では、本発明は、上述した式(I)の化合物を製造する方法にも関し、以下の工程:
i) 式3:
【化3】

(式中、Rは:
−炭素原子2個〜20個を有するアルキル基、
−炭素原子2個〜20個を有するアルケニル基、
−炭素原子1個〜6個を有するモノ−またはポリヒドロキシアルキル基
−糖残基、または
−アミノ酸残基
を表し、
は、水素原子、または炭素原子1個〜3個を有するアルキル基を表す)
の化合物のケトン官能基を、オキシム官能基に変換して、式(I):
【化4】

の化合物を生成させる工程、および、任意に、
ii) 得られた式(I)の化合物を回収する工程、
を含む。
【0051】
[工程(i)]
ケトン官能基のオキシムへの変換は、公知の方法にしたがって実施することができる。
【0052】
例えば、オキシムは、ヒドロキシルアミン、またはその塩(例えば、ヒドロキシルアミンのハロゲン化水素酸塩、および特に、ヒドロキシルアミン塩酸塩)のケトンへの反応によって製造することができる。
【0053】
ヒドロキシルアミン誘導体(例えば、H2NOSO3HおよびHON(SO3Na)2等)も用いることができる。この点については、March,、Jerry、Advanced Organic Chemistry, 3rd Ed.、John Wiley and Sonsを参照することができる。
【0054】
ヒドロキシルアミンまたはその塩もしくはその誘導体と、ケトン化合物3との比は、例えば、1〜20モル当量の範囲内で、より好ましくは1〜5モル当量の範囲内で、変動することができる。ヒドロキシルアミン塩酸塩およびピリジンの量は、例えば、1モルの化合物3に対してそれぞれ1モルである。
【0055】
オキシムは、化合物3をヒドロキシルアミン塩酸塩とピリジンとの組合せと反応させることによって製造することもできる。
【0056】
好ましくは、これらの2つの反応物質は、それぞれ、モル当量比(1/1)で存在する。
【0057】
工程(i)は、適切な塩基の存在下で実施することもできる。この反応では、塩基の性質に関しては、具体的な制限は全くなく、分子の他の部分に悪影響を及ぼさないという条件で、従来このタイプの反応において使用されているいずれの塩基でも使用することができる。
【0058】
適切な塩基の例は、特に、アルカリ金属ヒドロキシド(例えば、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム等)、およびアミン(例えば、トリエチルアミンまたはジイソプロピルアミン等)である。
【0059】
使用する溶媒の性質に関しては、具体的な制限は全くないが、反応、または関与する反応物質に悪影響を及ぼさないことを条件とする。
【0060】
好適な溶媒の例は、特に、極性溶媒であり、特に、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、またはイソプロパノール等);脂肪族エーテル(例えば、テトロヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、またはジオキサン等);およびこれらの溶媒の混合物が含まれる。
【0061】
反応は、非常に広範囲にわたる温度で実施することができ、反応を特定の温度で実施することは本発明に本質的ではない。反応温度は、例えば、15℃〜150℃の間、および最も一般には、20℃〜100℃の間である。
【0062】
反応は、例えば、メタノールおよび/またはTHFの還流温度で実施することができる。
【0063】
[経路A]
工程a1)
本発明の方法の第一の特定の実施態様では、式3の化合物を、アルコールR1OH(式中、Rは上述した定義を有する)の存在下、工程a1)による酸1のエステル化からなる反応を含む方法(これによって、式2の化合物が得られる)に従って製造する。
【0064】
【化5】

【0065】
工程a1)のエステル化反応は、適切な酸によって触媒されうる。酸の例としては、特に、塩酸、臭化水素酸、硝酸、または硫酸があり、硫酸が好ましい。
【0066】
R2 = Hである場合、式3の化合物は、工程a1)によって、2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸1から直接得られる。2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸は、欧州特許第0514264号に記載の方法にしたがって製造することができる。
【0067】
工程a2)
がアルキル基を表す場合、式3の化合物を製造するための方法は、式R2X(式中、Rは、炭素原子1個〜3個を有するアルキル基を表し、Xはハロゲン原子(例えば、ClまたはBr)を表す)のハロゲン化アルキルの存在下における、化合物2のフェノール官能基のアルキル化工程も含む。
【0068】
このアルキル化反応は、従来の方法にしたがって実施することができる。この点に関しては、特に、March, Jerry、Advanced Organic Chemistry、3`d Ed.、John Wiley and Sonsを参照することができる。
【0069】
例えば、アルキル化反応は、適切な塩基の存在下で実施することができる。
【0070】
適切な塩基の例としては、特に、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、または炭酸セシウム等);およびアルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等)が挙げられる。
【0071】
[経路B]
工程b2)
第二の実施態様では、化合物3は、ハロアセトフェノン6、特にブロモアセトフェノンの、式5の化合物を使ったアルキル化からなる反応によって製造する。
【0072】
【化6】

【0073】
このアルキル化反応は、公知の方法にしたがって実施することができる。この点に関しては、特に、March, Jerry、Advanced Organic Chemistry、3`d Ed.、John Wiley and Sonsを参照することができる。
【0074】
例えば、アルキル化反応は、適切な塩基の存在下で実施することができる。
【0075】
適切な塩基の例は、特に、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、または炭酸セシウム等);およびアルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等)、または炭酸カリウムであり、炭酸カリウムが特に好ましい。
【0076】
工程b1)
化合物5は、ジヒドロ安息香酸のアルコール R1OH とのエステル化からなる反応に続く、ハロゲン化アルキル R2X を使ったアルキル化からなる反応により、従来の方法にしたがって製造することができる。
【0077】
R2 = Hである、特に好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、以下の工程にしたがって製造する:
1) 式1の2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸を、硫酸およびアルコールR1OHの存在下で、エステル化する工程;および、
2) 工程1)で得られたエステルを、ヒドロキシルアミン塩酸塩とピリジンとの極性溶媒中の混合物と反応させる工程。
【0078】
この実施態様を、特に、図2の合成スキームによって説明する。
【0079】
このように製造した化合物(I)と、適切な場合には、中間体2および5とは、従来の方法によって反応混合物から回収することができる。例えば、これらの化合物は、反応混合物の溶媒を蒸留する工程、または、必要であれば、溶液混合物の溶媒を蒸留した後に、残りを水に注ぎ、次いで水−非混和性の有機溶媒で抽出し、この抽出物の溶媒を蒸留する工程によって回収することができる。これに加えて、所望する場合には、この生成物を、様々な技術、例えば、再結晶、再沈殿、または様々なクロマトグラフィー技術(特に、分取薄層クロマトグラフィーまたはカラムクロアトグラフィー)によってさらに精製する。
【0080】
本発明の主題はまた、医薬製品としての、上述した式(I)の化合物である。
【0081】
別の態様では、本発明の主題は、医薬品としてまたは化粧品として許容できる担体中に、上述した式(I)の化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする医薬組成物または化粧品組成物である。
【0082】
表現「医薬品としてまたは化粧品として許容できる担体」は、ヒトおよび動物の細胞に接触した状態で、過度の毒性、刺激、およびアレルギー反応等なしに用いるために好適であり、合理的な利点/リスク比に調節された担体を意味することが意図されている。
【0083】
投与は、局所的に、腸内または経口で、非経口または眼内で実施することができる。
【0084】
これらの投与経路のうち、局所投与が特に好ましい。
【0085】
局所投与の場合、本発明の医薬組成物は、さらに詳細には、皮膚または粘膜の処置において使用するためのものであり、液状、ペースト状、または固形の形態であってよく、さらに詳細には、膏薬、クリーム、ミルク、軟膏、粉剤、含浸パッド、合成洗剤、液剤、ゲル、スプレー、フォーム、懸濁液、スティック、シャンプー、または洗浄剤の基剤の形態であってよい。本発明の医薬組成物は、放出を制御するための、脂質もしくはポリマーから形成されたマイクロスフェアもしくはナノスフェアまたはベシクルの懸濁液の形態、またはポリマーもしくはゲルのパッチの形態であってもよい。
【0086】
本化合物は、一般に、組成物の総重量に対して、0.001重量%〜3重量%の濃度で局所的に使用することができる。
【0087】
化粧品に適用するためには、本組成物は、クリーム、ミルク、ローション、ゲル、脂質もしくはポリマーから形成されたマイクロスフェアもしくはナノスフェアもしくはベシクル、せっけん、またはシャンプーの形態であることが好ましい。
【0088】
腸内または経口で投与される場合、本組成物は、錠剤、ゲル、糖衣錠、シロップ、懸濁液、液剤、粉剤、顆粒、エマルション、放出を制御するための、脂質もしくはポリマーから形成されたマイクロスフェアもしくはナノスフェアもしくはベシクルの懸濁液の形態であってよい。非経口で投与される場合、本組成物は、注入または注射のための、液剤または懸濁剤の形態であってよい。
【0089】
本発明の組成物は、一般に、1回〜3回の投与で摂取される、体重1Kgあたり約0.01 mg〜30 mgの日用量で投与される。
【0090】
本発明の組成物は、有利には、プロドラッグの役割を果たす。
【0091】
用語「プロドラッグ」は、その化合物が、ヒトまたは動物の体内で加水分解することによってin vivoで変換されて、親化合物である、2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸を与えることを意味する(Prodrugs, Drugs and the Pharmaceutical Sciences、Kenneth B. Sloan vol. 53, p. 152)。
【0092】
本発明の化合物は、本化合物がRAR−γ受容体に対して選択的なアゴニスト活性を発揮する薬剤である、医薬組成物または化粧品組成物の製造のために、単独でまたは混合物として、使用することができる。
【0093】
本発明はまた、このような化合物を、RAR−γ受容体に対して選択的なアゴニスト活性を発揮する薬剤として含む医薬組成物または化粧品組成物を投与する工程を含む、治療上または美容のための処置方法に関する。
【0094】
本医薬組成物は、より詳細には、その治療のためにはRAR−γ受容体に対する選択的なアゴニスト活性が所望される病変の処置において使用することができる。
【0095】
本組成物はまた、細胞分化障害または細胞増殖障害に関連する病変の処置において、特に、皮膚科学分野において使用することができる。
【0096】
より詳細には、本組成物は、角質化障害に関連する病変の処置において使用することができる。
【0097】
したがって、座瘡の処置、特に、尋常性座瘡、面皰性座瘡または多形性座瘡、結節嚢腫性座瘡、集簇性座瘡、老人性座瘡または二次的座瘡、例えば日光性座瘡、薬物性座瘡または職業性座瘡が想定されている。
【0098】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、炎症性および/または免疫アレルギー性要素を伴う角質化障害、および特に、皮膚、粘膜または爪のいずれかを問わず全ての形態の乾癬に関連する、その他の皮膚病変の処置において使用するためのものでもある。
【0099】
本発明の化合物は、例えば、光誘導性老化または加齢性老化のいずれかを問わず、皮膚の老化と闘うための化粧品組成物において使用するためのものでもである
【0100】
本医薬組成物または化粧品組成物は、皮膚の色素沈着の低減、および光線性角化症の処置も可能にする。
【0101】
想定される全ての用途において、本発明の化合物は、細胞分化障害または細胞増殖障害に関連する病変の処置において使用するための別の治療剤と組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0102】
以下の実施例は、本発明を例証するが、これを制限することはない。使用する出発物質は、公知であって、公知の手順にしたがって合成される物質である。
【0103】
以後の実施例において、試料は1H NMR、13C NMR、およびHPLC/MSによって分析した。
【実施例】
【0104】
[実施例1]:2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸エチルの合成
a)2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸エチル
2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸 5 g(13 mmol)を無水エタノール 100 mlに溶解した。濃硫酸 1 mlを添加し、反応媒体を還流温度で24時間撹拌した。加水分解、および酢酸エチルでの抽出後、有機相を無水にして濃縮した後、残渣をクロマトグラフィーによって精製した(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル=95/5)。黄色オイルが得られた(13.9 g、R = 73%)。
【0105】
b)2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸エチル
2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸エチル3.9 g(9.5 mmol)をTHF 100 mおよびメタノール 100 mllに溶解した。ピリジン 3.9 ml(47.5 mmol)、次いでヒドロキシルアミン塩酸塩 3.3 g(47.5 mmol)を添加し、反応媒体を還流温度で1時間30分撹拌した。この反応媒体を、1N塩酸溶液で処理し、酢酸エチルで抽出した。得られた残渣を無水にし、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル=95/5)。
【0106】
2つの生成物が得られた。シン異性体(白色結晶、Mp 130℃、m = 2.4 g、R = 59%)、1H NMR (CDCl3): 1.29 (s, 12H) ; 1.39-1.42 (t, J=8Hz, 3H) ; 1.69 (s, 4H) ; 4.40 (q, J = 8Hz, 2H) ; 5.29 (s, 2H) ; 6.48 (dd, J1= 4Hz, J2=8Hz, 1H); 6.57 (s, 1H) ; 7.30-7.32 (m, 1H) ; 7.40-7.42 (m, 1M) ; 7.61 (s, 1 H) ; 7.74-7.76 (d, J = 8Hz, 1 H) ; 8.20 (s, 1 H) ; 11 .0 (s, 1 H)、およびアンチ異性体(白色結晶、Mp 155℃、m = 0.5 g、R = 12%)、1H NMR (CDCl3): 1.27 (s, 6H); 1.30 (s, 6H); 1.39-1.43 (t, J=8Hz, 3H); 1.7 (s, 4H); 4.36-4.42 (q, J=8Hz, 2H); 4.92 (s, 2H); 6.4-6.52 (m, 1H); 6.55-6.56 (s, 1 H); 7.35-7.42 (m, 2H); 7.58 (s, 1 H); 7.63 (s, 1 H); 7.76-7.78 (d, J=8Hz, 1 H); 11 (s, 1 H)。
【0107】
[実施例2]:2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソプロピルの合成
a)2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソプロピル
実施例1aと同様に、2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸 1.9 g(5 mmol)をイソプロパノール 50 ml中で反応させた。褐色オイルが得られた(660 mg、R = 32%)。
【0108】
b)2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソプロピル
実施例1bと同様に、2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソプロピル660 mg(1.5 mmol)を、ヒドロキシルアミン塩酸塩0.54 g(7.8 mmol)およびピリジン 0.6 mlと反応させた。
2つの生成物が得られた:
シン異性体(白色結晶、Mp 130℃、m = 600 mg、R = 88%)、1H NMR (CDCl3):1.28(s, 12H); 1.37-1.38(d, J=6,25, 6H);2.19 (s, 4H); 5.29 (m, 3H); 6.49 (m,1H); 6.57(s, 1 H);7.29-7.31 (m, 1H); 7.40(m, 1 H); 7.61 (s, 1 H); 7.72-7.75 (d,J=8Hz,1H); 8.45(s, 1 H); 11 (s, 1H)、および
アンチ異性体(白色結晶、Mp 149℃、m = 70 mg、R = 5%)、1H NMR (CDCl3): 1.27 (s, 6H);1.30 (s, 6H); 1.38-1.39 (d, J=6,24Hz,6H); 1.70 (s, 4H); 4.9 (s, 2H); 5.25-5.29 (m, 1 H); 6.48-6.51 (m, 1 H); 6.55 (s, 1 H); 7.35-7.42 (m, 2H); 7.58 (s, 1 H); 7.59-7.61 (m, 1H); 7.74-7.77 (d, J=8Hz, 1H), 11 (s, 1H)。
【0109】
[実施例3]:2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソブチルの合成
a)2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソブチル
実施例1aと同様に、2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸 1.9 g(5 mmol)をイソブタノール 50 ml中で反応させた。褐色オイルが得られた(1.7 g、R = 79%)。
【0110】
b)2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソブチル
実施例1bと同様に、2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソブチル 1.7g(3.9 mmol)を、ヒドロキシルアミン塩酸塩1.4 g(20 mmol)およびピリジン 1.6 mlと反応させた。
【0111】
2つの生成物が得られた:
シン異性体(白色結晶、Mp 96℃、m = 1.2 g、R = 70%)、1H NMR (CDCl3):1.02-1.04 (d, J=8Hz, 6H); 1.29 (s, 12H); 1.69 (s, 4H); 2.1-2.2 (m, 1 H); 4.10-4.12 (d, J=8Hz, 2H); 5.29 (s, 2H); 6.48-6.50 (dd, J=8Hz, 1 H); 6.58 (s, 1 H); 7.30-7.32 (m, 1 H); 7.40-7.42 (m, 1 H); 7.62 (s, 1 H); 7.75-7.77 (d, J=8Hz, 1 H); 8.21 (s, 1 H); 11 (s, 1 H)、および
アンチ異性体(白色結晶、Mp 156℃、m = 130 mg、R = 7%)、1H NMR (CDCl3): 1.03- 1.05 (d, J=6,7Hz, 6H); 1.28 (s, 6H); 1.30 (s, 6H); 1.70 (s, 4H); 2.08-2.11 (m, 1H); 4.11- 4.12 (d, J=6,7Hz, 2H); 4.9 (s, 2H); 6.5-6.52 (m, 1 H); 6.56 (s, 1 H); 7.35-7.42 (m, 2H); 7.59 (s, 1 H); 7.66 (s, 1 H); 7.76-7.78 (d, J=8Hz, 1 H); 11 (s, 1 H)。
【0112】
[実施例4]:トランス活性化試験
a) 試験の原理:
HeLa細胞においてアゴニスト(活性化剤)によって受容体を活性化すると、受容体遺伝子であるルシフェラーゼの発現をもたらし、これが基質の存在下で発光する。したがって、受容体の活性化は、参照アンタゴニストの存在下で細胞をインキュベートした後に生成した蛍光を定量化することによって測定することができる。活性剤化合物は、このアンタゴニストをその部位から移動させて、受容体を活性化させる。この活性の測定は、発生した光の増大を定量化することによって行う。この測定により、本発明に用いるための化合物の活性化活性を測定することができる。
【0113】
この研究において、受容体に対する分子の親和性を示す定数を決定する。この値は、受容体の定常活性および発現によって変動しうるため、見かけのKd(KdApp)値と呼ばれる。
【0114】
この定数を決定するために、試験化合物(2-ヒドロキシ-4-[2-オキソ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸)の、参照アンタゴニスト(あるいは、参照リガンドと呼ばれる)(4-(5,5-ジメチル-8-p-トルイル-5,6-ジヒドロナフタレン-2-イルエチニル)-安息香酸)に対する「クロスカーブ」を実施する。試験化合物を10種の濃度で用い、参照アンタゴニストを7種の濃度で用いる。(96ウェルプレートの)各ウェルにおいて、細胞は、1つの濃度の試験化合物および1つの濃度の参照アンタゴニストと接触する。
【0115】
測定は、全アゴニスト対照(あるいは、100%対照とも呼ばれる)(4-[2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-プロペニル]安息香酸)、および、逆アゴニスト対照(あるいは、0%対照とも呼ばれる)(4-{(E)-3-[4-(4-tert-ブチルフェニル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]-3-オキソプロペニル}安息香酸)に対しても行う。
【0116】
これらのクロスカーブによって、試験化合物の、種々の濃度の参照リガンドに対するAC50値(50%活性化が観察される濃度)を測定することが可能になる。これらのAC50値は、Schild方程式に対応する直線をプロットすることによりSchild回帰を算出するのに用いられる(「受容体薬理学における定量法」(”quantitation in receptor pharmacology”)、Terry P. Kenakin, Receptors and Channels, 2001, Vol. 7, 371-385)。
【0117】
アゴニストの場合、AC50値(50%活性化が観察される濃度)は、80%の活性化を与える参照リガンドの濃度での試験化合物の曲線をプロットすることによって算出することができる。得られる活性化が最大である濃度に相当する活性化パーセントも測定する。
【0118】
b) 材料と方法:
使用したHeLa細胞系は、プラスミドERE-βGlob-Luc-SV-Neo(受容体遺伝子)およびRAR(α,β,γ)ER-DBD-puroを含む安定な形質移入体である。これらの細胞を、脱脂した子ウシ血清 10%を補充した、フェノールレッドを含まないDMEM培地100 μl中、1ウェルにつき10000細胞の割合で、96-ウェルプレートに接種する。次いで、このプレートを37℃、CO2 7%で4時間インキュベートする。
【0119】
試験化合物の種々の希釈物、参照リガンドの種々の希釈物(4-(5,5-ジメチル-8-p-トルイル-5,6-ジヒドロナフタレン-2-イルエチニル)-安息香酸)、100%対照(4-[2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-プロペニル]安息香酸、100 nM)、および0%対照(4-{(E)-3-[4-(4-tert-ブチルフェニル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]-3-オキソプロペニル}安息香酸、500 nM)を、1ウェルにつき5μlの割合で添加する。次いで、このプレートを37℃、CO2 7%で18時間インキュベートする。
【0120】
培養培地を、プレートを逆さにすることによって除去し、1:1のPBS(リン酸緩衝液)/ルシフェリン混合物 100μlを各ウェルに加える。5分後に、ルミネセンス検出器でフレートを読み取る。
【0121】
c) 結果:
見かけのKd定数を、以下の表に示した。
【表1】

【0122】
2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸で得られた結果は、他の2つの受容体サブタイプであるRARαおよびRARβと比較して、受容体サブタイプRARγに対して、この化合物が顕著な特異性を有することを明らかに示している。
【0123】
2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸は、RARγ受容体の選択的なアゴニストまたは活性化剤である。
【0124】
[実施例5]:刺激試験
2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸のエチルエステルおよびイソブチルエステルの刺激性を、BALB/cマウスの耳への局所的な1回の適用によって評価した。マウス(ByJIco)は、8週齢の雄のマウスである。1バッチにつき5匹のマウスを試験した。
【0125】
アセトン中の試験化合物20μlを、右耳に適用する(D1:第1日目)。耳の厚さを、D4、D5、D6、D7、D8、およびD11にオーディテスト(Oditest)を使って測定する。
【0126】
2種の試験化合物のいずれも、試験した用量0.003%〜0.01%において、炎症を誘発しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、式(I)の化合物を製造するための一般的な合成経路を表すスキームである。
【図2】図2は、R2 = Hである、特に好ましい実施態様を説明する合成スキームである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、Rは:
−炭素原子2個〜20個を有するアルキル基、
−炭素原子2個〜20個を有するアルケニル基、
−炭素原子1個〜6個を有するモノ−またはポリヒドロキシアルキル基
−糖残基、または
−アミノ酸残基
を表し、
は、水素原子、または炭素原子1個〜3個を有するアルキル基を表す)
の化合物、および(Rがアミノ酸残基を表す場合には)式(I)の化合物の塩、および式(I)の化合物の異性体。
【請求項2】
炭素原子2個〜20個を有する前記アルキル基が、エチル、イソプロピル、n-プロピル、tert-ブチル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の化合物。
【請求項3】
炭素原子2個〜20個を有する前記アルケニル基が、ビニル、アリル、2-ブテニル、n-ブテニル、3-メチルブト-2-エニル、n-ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、シクロヘキシルブテニル、およびデセニル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の化合物。
【請求項4】
前記モノヒドロキシアルキル基が、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、およびヒドロキシヘキシル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の化合物。
【請求項5】
前記ポリヒドロキシアルキル基が、2,3-ヒドロキシプロピル、2,3,4-トリヒドロキシブチル、および2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の化合物。
【請求項6】
前記糖残基が、6-グルコシル、6-ガラクトシル、および6-マンノシル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の化合物。
【請求項7】
前記アミノ酸残基が、セリン、チロシン、およびトレオニン基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の化合物。
【請求項8】
が水素原子であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
以下の化合物:
1) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸エチルエステル;
2) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソプロピルエステル;
3) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸イソブチルエステル;
4) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ブチルエステル;
5) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ペンチルエステル;
6) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ヘキシルエステル;
7) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ヘプチルエステル;
8) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸ヘプト-6-エニルエステル;
9) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸2,3-ジヒドロキシプロピルエステル;
10) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸4-ヒドロキシブチルエステル;
11) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸6-ガラクトシルエステル;
12) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸6-グルコシルエステル;
13) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸6-マンノシルエステル;
14) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸2-アミノ-2-カルボキシエチルエステル;
15) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸4-(2-アミノ-2-カルボキシエチル)フェニルエステル;
16) 2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシイミノ-2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル)-エトキシ]-安息香酸2-アミノ-2-カルボキシプロピルエステル、
のいずれか1つであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
医薬製品である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
医薬品または化粧品として許容できる適切な担体中に、請求項1〜9に記載の化学式(I)の化合物を少なくとも1種含む、医薬組成物または化粧品組成物。
【請求項12】
局所投与のために適切な形態である、請求項11に記載の医薬組成物または化粧品組成物。
【請求項13】
皮膚の老化と闘うための、請求項11に記載の医薬組成物または化粧品組成物。
【請求項14】
RARγ受容体に対する選択的なアゴニスト活性が所望される治療のための病変の処置に使用するための医薬組成物の製造のための、請求項1〜9のいずれか一項で定義された式(I)の化合物の使用。
【請求項15】
細胞分化障害または細胞増殖障害に関連する病変の処置のための、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
角質化障害に関連する病変の処置のための、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
座瘡の処置のための、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
乾癬の処置のための、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、化学式3:
【化2】

(式中、Rは:
−炭素原子2個〜20個を有するアルキル基、
−炭素原子2個〜20個を有するアルケニル基、
−炭素原子1個〜6個を有するモノ−またはポリヒドロキシアルキル基
−糖残基、または
−アミノ酸残基
を表し、
は、水素原子、または炭素原子1個〜3個を有するアルキル基を表す)
の化合物のケトン官能基を、オキシム官能基に変換して、式(I):
【化3】

の化合物を製造する工程を含む、製造方法。
【請求項20】
前記オキシムを、前記化合物3と、ヒドロキシルアミン塩酸塩とピリジンとの混合物との反応によって製造することを特徴とする、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記化合物3を、ハロゲン化物R2X(式中、Rは、炭素原子1個〜3個を有するアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す)の存在下、化合物2:
【化4】

のアルキル化からなる工程を含む方法によって製造することを特徴とする、請求項19または20に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−515958(P2008−515958A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536212(P2007−536212)
【出願日】平成17年10月10日(2005.10.10)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002487
【国際公開番号】WO2006/040462
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】