説明

治療的介入のためのY2選択性レセプターアゴニスト

改変ヒトPPペプチド(i)[Lys4,Leu17,Ser30,Gln34]hPP、(ii)[Lys4,Leu17,Thr30,Gln34]hPP;及び(iii)[Lys4,Leu17,酸化Met30,Gln34]hPP(ここで、「酸化Met」はスルホキシド又はスルホンであり得る)、並びにこれらの本明細書中で言及する或る種のアナログ形態及び誘導体化形態は、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターの選択性アゴニストであり、例えば食欲制御及び治療的脈管形成に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターの選択性アゴニストとして作用するペプチド又はペプチド性化合物に関し、また、Y2レセプターの活性化に応答性の症状の治療、例えば肥満及び過体重、及びこれらが主因とされる症状の治療における使用、並びに脈管形成の誘導のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
PP折り畳みファミリーのペプチド − NPY(ニューロペプチドY)(ヒト配列−配列番号:1)、PYY(ペプチドYY)(ヒト配列−配列番号:2)、及びPP(膵ポリペプチド)(ヒト配列−配列番号:3)は、天然に分泌される、相同な36アミノ酸の、C末端がアミド化されたペプチドであり、これらは共通の三次元構造−PP折り畳み(PP-fold)(これは希水溶液中でさえも驚くほど安定であり、当該ペプチドのレセプター認識に重要である)−により特徴付けられる。
【0003】
NPYは、ヒトにおいて多くの異なるレセプターサブタイプ(Y1、Y2、Y4、及びY5)を通じて作用する中枢神経系及び末梢神経系の両方の種々の部分で複数の作用を有する非常に広範に散在するニューロペプチドである。主要なNPYレセプターは、概してNPYニューロンの「作用」を伝えるシナプス後レセプターであるY1レセプター、及び概してシナプス前の抑制性レセプターであるY2レセプターである。これは、NPYニューロン−これはメラノコルチンレセプターアンタゴニスト/逆アゴニストAgRP(アグーチ関連ペプチド)も発現する−が弓状核の刺激性分枝における一次「感覚」ニューロンとして作用する視床下部でも当てはまる。したがって、食欲及びエネルギー消費を制御するこの「センサー核(sensor nucleus)」では、NPY/AgRPニューロンが、抑制性POMC/CARTニューロンと共に、身体のホルモン状態及び栄養状態を監視している。なぜなら、これらのニューロンは、レプチン及びインスリンのような長期レギュレーター、並びにグレリン及びPYYのような短期レギュレーターの両方の標的であるからである(下記参照)。刺激性NPY/AgRPニューロンは、例えば室傍核−これもまた視床下部である−に投射する。そこでは、シナプス後の標的レセプターはY1レセプター及びY5レセプターであると考えられている。NPYの脳室内(ICV)注射に際してげっ歯類は文字通り破裂するまで食べるので、NPYは食物摂取の増大に関して公知の最も強力な化合物である。NPY/AgRPニューロンからのAgRPは、主としてメラノコルチンレセプタータイプ4(MC-4)に対してアンタゴニストとして作用し、このレセプターに対するPOMC由来ペプチド−主にaMSH−の作用を遮断する。MC4レセプターシグナルは食物摂取のインヒビターとして作用するので、AgRPの作用は、−ちょうどNPY作用のように−食物摂取の刺激性シグナル(すなわち、抑制の抑制)である。NPY/AGRPニューロン上に、抑制性−シナプス前−Y2レセプターが見出されている。このレセプターは、局所的に放出されるNPY及び腸ホルモンPYY−別のPP折り畳みペプチド−の両方の標的である。
【0004】
PYYは、食事の間に−食事のカロリー含量に比例して−遠位小腸及び結腸の腸内分泌細胞から放出され、末梢ではGI管機能に対して作用し、中枢では満腹シグナルとして作用する。末梢では、PYYは、例えば上部GI管の自動運動性、胃酸及び膵外分泌性分泌に対してインヒビター−「回腸遮断(illeal break)」−として機能すると考えられる。中枢では、PYYは、主として、弓状核(血液からアクセスされると考えられている)のNPY/AgRPニューロン上のシナプス前抑制性Y2レセプターに対して作用すると考えられる(Batterhamら、2002 Nature 418: 650-4)。このペプチドはPYY1-36として放出されるが、或る割合−約50%−は、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(3つの全てのPP折り畳みペプチド−PP、PYY、及びNPY−と同様にPro又はAlaが2位に見出されるペプチドのN末端からジペプチドを取り除く酵素)による分解産物であるPYY3-36として循環する(Eberleinら、1989 Peptides 10: 797-803)。したがって、循環中のPYYは、PYY1-36(これはY1レセプター及びY2レセプターの両方に対して作用し、Y4及びY5にも種々の親和性で作用する)とPYY3-36(これはY2レセプターに関する親和性より低い親和性をY1レセプター、Y4レセプター及びY5レセプターに対して有する)の混合物である。
【0005】
PPは、特に食物摂取により誘発される迷走神経のコリン作動性刺激によってほぼ独占的に支配される膵島の内分泌細胞から放出されるホルモンである(Schwartz 1983 Gastroenterology 85:1411-25)。PPは胃腸管に対して種々の効果を有するが、これらのほとんどは単離した細胞及び器官では観察されず、無傷の迷走神経供給に依存しているようである(Schwartz 1983 Gastroenterology 85:1411-25)。このことと一致して、PPレセプター(Y4レセプターと呼ばれる)は脳幹に位置し、迷走運動ニューロン−この活性化はPPの末梢効果を生じる−及び孤束核(NTS)−この活性化は満腹ホルモンとしてのPPの効果を生じる−で強力に発現する(Whitecombら、1990 Am.J.Physiol. 259: G687-91;Larsen & Kristensen 1997 Brain Res.Mol.Brain Res 48: 1-6)。血液脳関門は末梢からの種々のホルモンが感知されるこの領域で「漏れやすい(leaky)」ので、血液からのPPは脳のこの領域に自由に出入りできることに留意すべきである。最近、食物摂取に対するPPの効果の一部は、弓状核のニューロン−特にPOMC/CARTニューロン−に対する作用を通じて媒介されていると主張されている(Batterhamら、2004 Abstract 3.3 International NPY Symposium in Coimbra, Portugal)。PPはY4レセプターを通じて作用し、このレセプターに対してナノモルの親和性を有するPYY及びNPYとは対照的にPPはナノモル未満の親和性を有する(Michelら、1998 Pharmacol. Rev. 50: 143-150)。PPはまた、Y5レセプターに対して相当の親和性を有するが、このことは、このレセプターが特に発現しているCNSの細胞へのアクセスを欠いているため、及びPPに関する比較的低い親和性のために、循環PPに関しては生理学的に重要である可能性は低い。
【0006】
PP折り畳みペプチドレセプター
ヒトには、4つの十分に確立されたタイプのPP折り畳みペプチドレセプター:Y1、Y2、Y4、及びY5が存在し、これらは全て類似する親和性でNPY及びPYYを認識する。かつては、PYYよりNPYを嗜好するとされたY3レセプタータイプが示唆されたが、今日ではこれは真のレセプターサブタイプとして受け入れられていない(Michelら、1998 Pharmacol. Rev. 50: 143-150)。Y6レセプターサブタイプがクローニングされたが、ヒトでは、これはTM-VII並びにレセプターテイルを欠く切断形態で発現され、その結果少なくともそのままでは機能的レセプター分子を形成しないようである。
【0007】
Y1レセプター − 親和性研究により、Y1はNPY及びPYYと等しく親密に結合し、基本的にはPPに結合しないことが示唆されている。
Y2レセプター − 親和性研究により、Y2はNPY及びPYYと等しく親密に結合し、基本的にはPPに結合しないことが示唆されている。
Y4レセプター − 親和性研究により、Y4はPPに血漿中で見出される濃度に相当するナノモル未満の親和性で結合する一方、NPY及びPYYはよりずっと低い親和性で認識されることが示唆されている。
【0008】
Y5レセプター − 親和性研究により、Y5はNPY及びPYYに等しく親密に結合し、PPにもより低い(が、このホルモンの通常の循環レベルを下回る)親和性で結合する。PYY3-36もまた、Y5レセプターによって十分に認識される。しかし、このレセプターは、PYY3-36が末梢に投与されたときに容易に該レセプターにアクセスできないCNSにおいてかなりの程度で発現される。
【0009】
PP折り畳みペプチド及びこれらのアナログは、動物モデル及びヒトでこれらペプチドの或る種のものの証明された効果、並びに、肥満のヒトがPYY及びPPの低い基礎レベル及びこれらペプチドのより低い食事応答を有している事実に基づいて、肥満及び付随する疾患(例えばプラーダー‐ヴィリ症候群を含む)の治療における使用について示唆されている(Holst JJら、1983 Int.J.Obes. 7: 529-38;Batterhamら、1990 Nature)。プラーダー‐ヴィリ症候群の患者におけるPPの注入は、早くから、食物摂取を減少させることが示され(Berntsonら、1993 Peptides 14: 497-503)、この効果は健常なヒト対象におけるPPの注入によって確証されている(Batterhamら、2003, Clin.Endocrinol.Metab. 88: 3989-92)。PP折り畳みペプチドはまた、例えば治療的な脈管形成(Zukowskaら、2003 Trends Cardiovasc Med. 13:86-92)及び炎症性腸疾患(例えばWO03/105763を参照)における使用について示唆されている。
【0010】
したがって、Yレセプター調整に応答性の症状の治療のためには、YレセプターPP折り畳みペプチド又はPP折り畳みペプチド模擬体(標的として意図される選択したYレセプターに特異的であり且つレセプター結合に重要なPP折り畳み構造の要素が安定的に保存される)を使用することが望ましい。特に、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して選択性である薬剤を使用することが極めて望ましい。Y2レセプターは、肥満、メタボリック症候群などの治療のために、例えば食物摂取及びエネルギー消費に対して有益な効果を与えるレセプターであり、例えば末梢血管疾患又は冠血管疾患を有する患者で治療的な脈管形成を得るために有益な効果を与えるのもまたY2レセプターである。しかし、Y2レセプターアゴニストとして作用する薬剤は、それがY1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して選択性でない限り、このような治療に特には有用でない。Y1レセプターに対する作働作用(agonism)は、例えば心血管系並びに腎臓系における重篤な副作用−それぞれ血圧の上昇及びナトリウム排泄増加−を引き起こす。同様に、Y4レセプターよりY2レセプターに対する選択性が望ましい。なぜなら、2つの天然のY2アゴニスト及びY4アゴニストであるそれぞれPYY及びPPは、例えば胃腸管に対して多くの類似する効果を有し、その或るものは有益であるが或るものは望まない副作用を引き起こし得るからである。例えば、Y2レセプター及びY4レセプターは共に、小腸及び大腸でそれぞれニューロン性の作用態様及び上皮直接性の作用態様を通じて抗分泌効果を促進する(Coxら、2002 Br.J.Pharmacol. 135: 1505-12)。よって、Y2レセプター及びY4レセプターの組合せ刺激を通じて、相加的な抗分泌効果又は可能性としては相乗的な抗分泌効果さえも得られる可能性が高く、これは便秘を導き得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人の同時継続中の国際出願第PCT/EP2005/002981号(この内容は参照により本明細書に組み込む)は、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して選択性であるYレセプターアゴニストの1つのクラス及び当該クラスの幾つかの具体的メンバーに関する。
本発明は、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して高度に選択性である具体的ペプチドに関する。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明によれば、
(i)[Lys4,Leu17,Ser30,Gln34]hPP (配列番号:4)、
(ii)[Lys4,Leu17,Thr30,Gln34]hPP (配列番号:5)、
(iii)[Lys4,Leu17,酸化Met30,Gln34]hPP (配列番号:6)、
並びに、
(a)4位、17位、30位及び34位以外の1又はそれより多い位置で保存的に置換され、及び/又は、(b)N末端アシル化、PEG化、又は血清アルブミン結合モチーフ若しくはグリコサミノグリカン結合モチーフ若しくはヘリックス誘導モチーフに共有結合的にカップリングされた、(i)、(ii)又は(iii)のアナログ(ここで、共有結合的カップリングは、ペプチド(i)、(ii)若しくは(iii)の残基に対して、又はペプチド(i)、(ii)若しくは(iii)中で置換され該共有結合のための官能基を提供する残基に対してである)
からなる群より選択されるペプチドが提供される。
【0013】
本明細書中で使用する表記 hPP はヒトPP配列(配列番号:3)をいう。よって、ペプチド[Lys4,Leu17,Ser30,Gln34]hPPは、4位でリジンに置換され、17位でロイシンに置換され、30位でセリンに置換され、34位でグルタミンに置換されているヒトPP配列(配列番号:3)を有する。表記「酸化Met」は、側鎖メチルチオ基のイオウ原子がスルホキシド(酸素1つ)又はスフホン(酸素2つ)に酸化しているメチオニン残基をいう。本発明の1つの実施形態では、本発明のペプチド(iii)中の酸化Met30はスルホキシドである。
【0014】
本発明の3つのペプチド及びそれらのアナログは、本明細書に記載の親和性アッセイ及び/又は効力アッセイにより測定したとき、Y1レセプター及びY4レセプターよりY2レセプターに対して高度に選択性であるYレセプターアゴニストである。
【0015】
本明細書中で、アミノ酸への言及は、一般名又は略称により、例えばバリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、アスパラギン酸(Asp)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、システイン(Cys)、及びプロリン(Pro)によりなされる。立体異性体型を特定せずに一般名又は略称で言及する場合、問題のアミノ酸は、L体として理解されるべきである。D体を意図する場合、アミノ酸は、そのように特定して言及される。場合によって、文脈から望ましいとき、L体は推論されるよりむしろ特定される。
【0016】
保存的置換アナログ
本明細書中で使用される用語「保存的置換」は、1又はそれより多いアミノ酸が生物学的に類似する別の残基により置換されていることを指称する。例としては、類似する特徴を有するアミノ酸残基同士(例えば小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸)の置換が挙げられる。本発明における使用に適切な保存的アミノ酸置換の限定的でない例としては、下記の表に記載のもの、及び元の残基に類似する特徴を有する非天然αアミノ酸による同類置換(analogous substitution)が挙げられる。内因性の哺乳動物ペプチド及びタンパク質では通常は見出されない残基での保存的置換の例は、Arg又はLysの、例えばオルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又はその他の塩基性アミノ酸での保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における表現型的にサイレントな置換に関する更なる情報については、例えばBowieら、Science 247, 1306-1310, 1990を参照。
【0017】
【表1】

【0018】
本発明の保存的置換アナログは、例えば10までの保存的置換を有していてもよく、別の実施形態では5までの保存的置換を、なお別の実施形態では3又はそれより少ない保存的置換を有していてもよい。
【0019】
N-アシル化アナログ
本発明に係る3つ全てのY2選択性アゴニストは、N末端でアシル化されてアミノペプチダーゼ活性に対する耐性を付与されていてもよい。例えば、アシル化は、2〜24炭素原子を有する炭素鎖を用いるものであってもよく、N末端アセチル化は特定の例である。
【0020】
共有結合性機能モチーフを有するアナログ
薬物動態学、薬力学、及び代謝特性の改善を目的として、種々の改変が本発明の3つのアゴニストになされ得る。このような改変としては、アゴニストを、それ自体はペプチド又はタンパク質製薬分野で公知の機能集団(functional groupings)(モチーフとしても知られる)に連結することが含まれ得る。本発明に係るアゴニストの場合に特に有益な3つの特定の改変は、血清アルブミン結合モチーフ又はグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフとの連結、又はPEG化である。
【0021】
血清アルブミン結合モチーフ
血清アルブミン結合モチーフは、代表的には、投与の際に体内で延長された滞留を可能にするため又は他の理由で組み込まれる親油性基であり、これは、種々の公知の方法で、ペプチド性又はタンパク質性の分子に、例えばi)共有結合性連結を介して、例えば側鎖アミノ酸残基上に存在する官能基に、ii)当該ペプチド又は適切な誘導体化ペプチド中に挿入された官能基を介して、iii)当該ペプチドの一体化部分(integrated part)として、カップリングされ得る。例えば、WO 96/29344 (Novo Nordisk A/S)及びP. Kurtzhalsら、1995 Biochemical J. 312: 725-31及びL.B.Knudsenら、2000 J.Med.Chem. 43: 1664-69は、本発明に係るアゴニストの場合に用いることができる多くの適切な親油性改変を記載している。
【0022】
適切な親油性基には、任意に置換されていてもよい、飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝鎖の10〜24炭素原子の炭化水素基が挙げられる。このような基は、例えばアゴニストの主鎖中のアミノ酸残基の側鎖への又はPP折り畳み模擬体アゴニストの主鎖中の非ペプチド性リンカー基の主鎖炭素若しくは主鎖炭素からの分枝へのエーテル結合、チオエーテル結合、アミノ結合、エステル結合又はアミド結合により、アゴニストの主鎖に対する側鎖を形成していてもよいし、そのような側鎖の一部を形成していてもよい。親油性基の付着のための化学ストラテジーは、重要でないが、親油性基を含む以下の側鎖が、アゴニストの主鎖炭素又はそれからの適切な分枝に連結され得る例である:
【0023】
CH3(CH2)nCH(COOH)NH-CO(CH2)2CONH- (式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CONH- (式中、rは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CONH- (式中、sは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)mCONH- (式中、mは8〜18の整数である)、
-NHCOCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3 (式中、pは10〜16の整数である)、
-NHCO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3 (式中、qは10〜16の整数である)、
CH3(CH2)nCH(COOH)NHCO- (式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)pNHCO- (式中、pは10〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)mCH3 (式中、mは8〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3 (式中、pは10〜16の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3 (式中、qは10〜16の整数である)、及び
部分的又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格。
【0024】
1つの化学合成ストラテジーにおいて、親油性基含有側鎖は、アゴニストの主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するC12、C14、C16又はC18のアシル基、例えばテトラデカノイル基である。
【0025】
記載のように、改善された血清結合性特徴を提供するために使用されるアゴニストの改変は、一般に(特には上記に列挙した具体的アゴニストの場合に)適用され得るストラテジーである。したがって、適切な改変アゴニストとしては、[Lys4,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Leu17,Ser30,Gln34]PP又は[Lys4,N-(N'-ヘキサデカノイル)-γグルタモイル-Lys13,Leu17,Thr30,Gln34]PP及びそれらの保存的置換アナログが挙げられる。
【0026】
GAG結合
上記の親油性血清結合モチーフの場合と同様に、本発明に係るアゴニストは、アゴニストの主鎖に対する側鎖として又はそのような側鎖の一部としてGAG結合モチーフを組み込むことによって改変されていてもよい。この方法での組込みのための公知のGAG結合モチーフとしては、アミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX (式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)が挙げられる。複数、例えば3つのこのような配列が、コンカテマー(直鎖)又はデンドリマー(分枝鎖)の様式で組み込まれていてもよい。具体的コンカテマーGAGモチーフとしては、Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala及びAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaが挙げられる(この両方が、例えばコンカテマーGAG結合モチーフのC末端とアゴニストの主鎖アミノ酸の側鎖中のアミノ基、例えばアゴニスト[Lys4,Lys13,Leu17,Ser30,Gln34]PP又は[Lys4,Lys13,Leu17,Thr30,Gln34]PP中のLys13のεアミノ基との間に形成されるアミド結合を通じてカップリングされ得る)。
【0027】
主鎖残基に対する側鎖として又はそのような側鎖の一部としてアゴニストに付着する代わりに、GAGモチーフは、アゴニストのC末端又は(好ましくは)N末端に、直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結していてもよい。ここでまた、GAG結合モチーフは、アミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX (式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)、例えば配列[XBBBXXBX]n (式中、nは1〜5であり、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなってもよい。
【0028】
本発明に係るY2選択性アゴニストは、とりわけ、治療的脈管形成に有用である。この使用のためには、具体的には、アゴニストは、好ましくは、上記のようなグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフを含んでなる。このようなモチーフにより、確実に、アゴニストは細胞外マトリクス中のGAGに結合し、そのことにより、その組織中のY2レセプターの延長された局所的曝露を確実にする。成長因子、ケモカインなどがパッチ状の塩基性アミノ酸(これがGAGの酸性糖鎖と相互作用する)を介してGAGに結合する。成長因子上のこれらの正に荷電したエピトープは、通常、塩基性残基の側鎖から構成されている。塩基性残基の側鎖は、必ずしも配列中で連続して位置していないが、二次構造要素(例えばαヘリックス又はターン)により、又は当該タンパク質の三次元構造全体により近接して提示されることが多い。上記のような或る種のGAG結合性直線配列、例えばXBBXBX及びXBBBXXBX (式中、Bは塩基性残基を表す)が記載されている(Hilemanら、Bioassays 1998, 20: 156-67)。これらセグメントは、GAGへの結合に際してαヘリックスを形成することが円偏光二色性により示されている(Verrecchioら、J. Biol. Chem. 2000, 275(11): 7701-7707)。このような配列が、例えばコンカテマー又はデンドリマーの構築物(ここでは、例えば3つのこのような配列、例えば各々ARRRAARA配列が提示されている)で配置されている場合、得られる24マーペプチド、例えば、ARRRAARA-ARRRAARA-ARRRAARAにより、高分子量ポリリジンに類似する細胞外マトリクス中での保持が確実にされる。すなわち、これは、4時間の灌流期間の間に洗い流されない(Sakharovら、FEBS Lett 2003, 27: 6-10)。
【0029】
よって、成長因子及びケモカインは、当然、2つのタイプの結合モチーフを有して構築される:1つは、シグナル伝達の達成を介するレセプターの結合モチーフであり、1つは、付着及び長期持続局所活性の達成を介するGAGの結合モチーフである。PYY及びNPYのようなペプチドはニューロペプチド及びホルモンであり、これらは組織からかなり迅速に洗い流され、長期持続性局所活性に最適化されていない。GAG結合モチーフを本発明に従うY2選択性アゴニストに付着させることにより、成長因子及びケモカインに類似する二機能性分子が、PP折り畳みペプチド部分のレセプター結合エピトープ及びGAG結合モチーフの両方を有して構築される。このようなアゴニストの例は、[Lys4,N-[(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Ala-Arg-Ala)3]-Lys13,Leu17,Ser30,Gln34]PPである。
【0030】
PEG化
PEG化において、ポリアルキレンオキシド基は、投与後の身体内での実効半減期を改善するため、及び免疫原性を減少させ、溶解性を増大させるなどのために、ペプチド性又はタンパク質性の薬物に共有結合的にカップリングされる。この用語は、このようなプロセスで使用される好ましいポリアルキレンオキシドに由来する。すなわち、この用語は、エチレングリコール−ポリエチレングリコール、又は「PEG」に由来する。
【0031】
適切なPEG基は、任意の好都合な化学により、アゴニストに、例えば当該アゴニストの主鎖アミノ酸残基を介して、付着してもよく、また切断可能なリンカー(FEBS Lett. 2005 Apr 25;579(11):2439-44.)が組み込まれていてもよい。例えば、例えばPEGのような分子に関しては、頻繁に使用される付着基は、リジンのε-アミノ基又はN末端アミノ基である。その他の付着基としては、遊離カルボン酸基(例えば、C末端アミノ酸残基のもの又はアスパラギン酸若しくはグルタミン酸残基のもの)、適切に活性化されたカルボニル基、メルカプト基(例えば、システイン残基のもの)、芳香族酸残基(例えば、Phe、Tyr、Trp)、ヒドロキシ基(例えば、Ser、Thr又はOH-Lysのもの)、グアニジン(例えばArg)、イミダゾール(例えばHis)、及び酸化した炭水化物部分が挙げられる。
【0032】
アゴニストは、PEG化されている場合、通常、1〜5のポリエチレングリコール(PEG)分子、例えば、1、2又は3のPEG分子を含んでなる。各PEG分子は、約5kDa(キロダルトン)〜約100kDaの分子量、例えば約10kDa〜約40kDaの分子量、例えば約12kDaの分子量、別の実施形態では上限約20kDaの分子量を有していてもよい。本発明の特定の実施形態では、PEG 40kDaがPEG化剤である。
【0033】
適切なPEG分子は、Shearwater Polymers, Inc.及びEnzon, Incから入手可能であり、SS-PEG、NPC-PEG、アルデヒド-PEG、mPEG-SPA、mPEG-SCM、mPEG-BTC、SC-PEG、トレシル化mPEG(米国特許第5,880,255号)、又はオキシカルボニル-オキシ-N-ジカルボキシイミド-PEG(米国特許第5,122,614号)から選択してもよい。
【0034】
本発明のPEG化アゴニストの特定の例は、[Lys4,N-PEG5000-Lys13,Leu17,Ser30,Gln34]PP及び[Lys4,N-PEG5000-Lys13,Leu17,Thr30,Gln34]PPである。
【0035】
血清アルブミン、GAG、及びPEG
アゴニストに対する改変が血清結合、GAG結合、又はPEG化を介する向上した安定性を促進するための基の付着である場合、血清アルブミン結合モチーフ若しくはGAG結合モチーフ又はPEG基は、以下の位置:1位、3位、6位、7位、10位、11位、12位、13位、15位、16位、18位、19位、21位、22位、23位、25位、26位、28位、29位及び32位のいずれかに相当するアゴニストの主鎖炭素の側鎖であってもよいし、又はそのような側鎖の一部を形成していてもよい。
【0036】
より大きな生体分子との接合
Y2選択性レセプターアゴニストは、例えばアルブミン又は有益な薬力学的特性若しくは他の型の特性(例えば、減少した腎排泄のような特性)を提供する別のタンパク質若しくはキャリア分子と連結された融合タンパク質として使用し得る。当該分野で公知の共有結合性付着に使用できる多数の化学的改変及びリンカーが存在する。同様に、使用可能な多数のタンパク質又はキャリアが存在する。特に、Y2選択性ペプチドアゴニストのアルブミンへの共有結合性付着が好ましく、それは、種々のモチーフを伴う改変に関して本明細書中の他で指摘したペプチド中の位置においてである。本発明の1つの好ましい実施形態において、ペプチドは大きな生体分子(例えばアルブミン)のC末端部に融合される。このような融合タンパク質は、種々の半合成技法(ペプチドを本明細書中に記載のようなペプチド合成により作り、生体分子を組換え技術により作ってもよい)により製造することができる。融合タンパク質はまた、全体が、例えばGly-Lys-Arg配列により伸長された前駆体分子(これは、真核細胞で分泌性タンパク質として発現すると生合成酵素により切断され、GlyはC末端Y2レセプター認識配列のC末端Tyr残基上のカルボキシアミドに転換される)として発現される組換え分子として作られてもよい。
【0037】
ヘリックス誘導性ペプチド
本発明に係るアゴニストのN末端のアシル化は、アミノペプチダーゼの作用に対してアゴニストを安定化する手段として言及されている。別の安定化改変として、4〜20アミノ酸残基の安定化ペプチド配列をN末端及び/又はC末端、好ましくはN末端で共有結合性に付着することが挙げられる。このようなペプチド中のアミノ酸残基は、Ala、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Metなどからなる群より選択される。興味深い実施形態において、N末端ペプチド付着は、4、5又は6のLys残基を含んでなり、例えばLys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-[Lys4,Leu17,Ser30,Gln34]PPである。これらは、ペプチドアゴニストのN末端で連結することができる。このような安定化ペプチド伸長の一般的な記載は、WO 99/46283 (Zealand Pharmaceuticals)(参照により本明細書中に組み込まれる)に与えられる。
【0038】
本発明に係るレセプターアゴニストは、周知の方法、例えば合成法、半合成法及び/又は組換え法のような方法により製造されてもよい。このような方法としては、標準的なペプチド製造技法、例えば、溶液合成、及び固相合成のようなペプチド製造技法が挙げられる。当該分野の教科書及び一般的知識に基づいて、当業者は、本アゴニスト及びその誘導体又は改変体を取得するための手順を理解する。
【0039】
臨床適応症
本発明に係るY2特異的アゴニストは、Y2レセプターの活性化に応答性の症状の治療に価値がある。このような症状としては、エネルギー摂取又はエネルギー代謝の調節、或いは脈管形成の誘導が指示される症状が挙げられる。そのような使用のためには、アゴニストは、ペプチダーゼに対する安定性、血清タンパク質結合特性を付与する改変又はモチーフ、血清及び/又は組織での半減期を延長するためのPEG化を含んでなるアゴニストであり得る。特に、脈管形成の誘導のためには、アゴニストは、組織半減期及びYレセプター曝露を延長するためのGAG結合モチーフを含んでなり得る。
【0040】
脈管形成の誘導が指示される疾患又は症状としては、末梢血管疾患、冠血管疾患、心筋梗塞、卒中、前記のいずれかが主因とされる症状、創傷治癒、及び組織修復が挙げられる。
【0041】
エネルギー摂取又はエネルギー代謝の調節が指示される疾患又は症状としては、肥満及び過体重、並びに肥満及び過体重が主因とされる症状、例えば過食症、神経性大食症、X症候群(Syndrome X)(メタボリック症候群)、糖尿病、2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、卒中、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、或いは胸部、前立腺又は結腸のガンが挙げられる。
【0042】
1.肥満及び過体重
PYY3-36は、種々のげっ歯類において食欲、食物摂取及び体重を減少させることが示されており(Batterhamら、Nature 2002, 418: 595-7;Challisら、BBRC Nov. 2003, 311: 915-9)、またヒトにおいて食欲及び食物摂取を減少させることが示されている(Batterhamら、2002)。レセプターノックアウト動物における研究を含む動物データは、PYY3-36のこの効果が、Y2レセプターを通じて、並びに弓状核のNPY/AgRP及びPOMCニューロンを通じて媒介されていることを強く示している。興味深いことに、この効果は非常に長く持続し、例えばPYY3-36の単回腹腔内注射の24時間後まで見られる。食欲などに対するこのような長期持続性効果は、特にAgRPのICV注射からも周知である。PYYレベル及びPYY食物応答は、肥満対象でより低く、対象のBMIと逆相関する。重要なことに、肥満対象はPYYのこの効果に対して耐性ではない。なぜならば、90分間のPYY3-36注入は類似の長期持続性様式で肥満対象において食物摂取を減少させるからである(Batterhamら、2003, NEJM 349: 941-48)。
【0043】
故に、本発明に係るY2選択性アゴニストは、エネルギー摂取を調節するために、対象(例えばヒトを含む哺乳動物)における使用に適切である。したがって、本発明は、エネルギー摂取、食物摂取、食欲、及びエネルギー消費を変化させるための方法に関する。対象に美容上又は治療上の有効量の本発明のアゴニストを投与することによりエネルギー摂取又は食物摂取を減少させる方法が本明細書中に開示される。
【0044】
更なる実施形態では、対象においてエネルギー代謝を変化させる方法が本明細書に開示される。この方法は、治療有効量の本発明のアゴニストを対象に投与し、そのことによりエネルギー消費を変化させることを含む。エネルギーは、全ての生理学的プロセスにおいて燃焼する。身体は、直接、そのプロセスの効率を変調させることにより、又は起こっているプロセスの数及び性質を変えることにより、エネルギー消費の速度(rate)を変更することができる。例えば、消化の間、身体はエネルギーを消費して食物を腸を通って移動させ、食物を消化し、細胞内では、より多くの又はより少ない熱を生み出すために細胞代謝の効率を変更することができる。更なる実施形態では、食物摂取を変更し、協調的に及び相互的にエネルギー消費を変更する本出願に記載される弓状回路の任意及び全ての操作の方法が本明細書に開示される。エネルギー消費は、細胞代謝、タンパク質合成、代謝率、及びカロリー利用の結果である。よって、この実施形態では、末梢投与は、エネルギー消費の増大、及びカロリー利用効率の減少を生じる。1つの実施形態では、治療有効量の本発明に従うレセプターアゴニストが対象に投与され、そのことによりエネルギー消費を増大させる。
【0045】
治療的使用及び美容的使用の両方に関連する幾つかの実施形態では、体重制御、及び肥満の処置、減少又は予防のために、詳細には以下:体重増加を予防し及び減少させること;体重損失を誘導し及び促進すること;及びボディ・マス・インデックスにより測定される肥満を減少させることの任意の1つ又はそれ以上のために、Y2選択性アゴニストを使用することが可能である。上記のように、本発明はまた、食欲、満腹及び空腹の任意の1つ又はそれ以上を制御するため、詳細には以下:食欲を減退させ、抑制し、及び阻害すること;満腹及び満腹の感覚を誘導し、増大させ、増強し、及び促進すること;並びに空腹及び空腹の感覚を減少させ、阻害し、及び抑制することの任意の1つ又はそれ以上のためのY2選択性アゴニストの使用に関する。本開示は更に、所望する体重、所望するボディ・マス・インデックス、所望する外観及び良好な健康状態の任意の1つ又はそれ以上を維持することにおけるY2選択性アゴニストの使用に関する。
【0046】
更なる又は代替の観点では、本発明は、減少したエネルギー代謝、摂食障害、食欲障害、過体重、肥満、過食症、神経性大食症、X症候群(メタボリック症候群)、又はそれらに関連する合併症若しくは危険(糖尿病、2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、卒中、心筋梗塞、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、胸部、前立腺及び結腸のガンを含む)の治療及び/又は予防のための方法に関し、この方法は、対象(例えばヒトを含む哺乳動物)に、有効用量の1又はそれ以上の本明細書中に記載のようなY2選択性アゴニストを投与することを含んでなる。
【0047】
2.治療的脈管形成
血管平滑筋細胞の増殖、心室心筋細胞の肥大並びに内皮細胞の増殖及び移動に対する効果についての多くのインビトロ研究は、NPYが血管形成因子として作用し得ることを示唆している(Zukowska-Grojecら、1998 Circ.Res. 83: 187-95)。重要なことに、マウス角膜マイクロポケットモデル及びヒヨコ絨毛尿膜(CAM)アッセイの両方を使用するインビボ研究により、NPYは、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)血管由来構造(angiogenic structure)ではなく、他には線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)でのみ観察される血管拡張を示す血管樹状構造を生じる強力な血管形成因子であることが確証されている(Ekstrandら、2003 PNAS 100: 6033-38)。発達中のヒヨコ胚では、NPYは既存の血管からの血管発芽を誘導した。NPYのこの効果は、Y2レセプターノックアウト動物では観察されなかった。このことは、Y2レセプターがNPYの血管形成効果を担っていることを示している(Ekstrandら、2003)。この考えは、Y2レセプターが、虚血血管で高度にアップレギュレートされ、内因性のY2選択性リガンドPYY3-36を生じる酵素であるジペプチジルペプチダーゼ-IVもまた高度にアップレギュレートされるという観察により支持されている。
【0048】
種々の心血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症では、例えば、脈管形成の誘導が末梢脈管及び冠血管において有益であると企図される。また、脈管形成の誘導は、心筋梗塞後の再灌流を確保するために有益であると考えられている。FGF-2は、心血管疾患を有する患者での脈管形成誘導に特に効率的な薬剤であると提案されている。しかし、ほとんどの他の血管形成因子と同様に、FGF-2は増殖因子であり、脈管形成を提供することによって腫瘍増殖もまた刺激するおそれもある。上記のように、Y2レセプターを通じて作用するNPYは、FGF-2により誘導されるような類似のタイプの新生血管形成を誘導する。しかし、NPYはニューロペプチドであり、古典的な増殖因子ではなく、腫瘍増殖の誘導に関係付けられていない。よって、Y2アゴニストは、治療的脈管形成のために有用な薬剤である。しかし、本アゴニストはY1レセプター作働作用を示さないことがこの使用に特に重要である。なぜならば、このY1レセプター作働作用は望まない心血管効果を与えるからである。このことは、本発明に係る全てのペプチドが、Y2選択性レセプターアゴニストであり、脈管形成の誘導に関してもまた特に有用な治療薬であることを意味する。これらは、上記のようなGAG結合モチーフで改変されている場合、特に有用である。更なる詳細な説明のために:FGF-2の作用は、他のほとんどの古典的増殖因子の作用と同様に、部分的に、細胞外マトリクス中のグリコサミノグリカン(GAG)への結合により媒介されるか又は制御される。GAGへのこの結合は、この血管形成因子が適切な空間的及び時間的様式で作用すること、及びそれが迅速に組織から洗い流されないことを確実する。このことは、治療用脈管形成における小さなペプチド及びペプチド模擬体(例えば本発明に記載されているもの)の使用のために、特に重要である。本発明の1つの実施形態において、本ペプチドは、細胞外マトリクス中のGAGに付着して投与後に最適な脈管形成を引き起こすことを確実にする1又はそれ以上のGAG結合モチーフが組み込まれている。これは、例えば、静脈内投与又は動脈内投与より、或いは冠動脈疾患の間及び/又は急性心筋梗塞後に心臓脈管形成を誘導するために例えば冠動脈への直接投与によることができる。同様に、本化合物は、末梢血管疾患の治療のために、動脈内注射により、大腿動脈に投与することが可能である。これはまた、改善された創傷治癒を促進するために、例えば皮膚病巣への局所限局投与によることができる。脈管形成の誘導に効率的な延長されたYレセプター曝露はまた、血清アルブミン結合モチーフで改変された本発明に従うペプチドを使用して得ることもできる。
【0049】
本発明の1つの実施形態では、Y2選択性アゴニストは、当該ペプチドの安定性も、該ペプチドの効力及び選択性も損なわない位置に配置されるGAG結合モチーフを含んでなる。
【0050】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、脈管形成系における攪乱を改変するため、特に、脈管形成、例えば間欠跛行、冠動脈疾患及び心筋梗塞のような症状を有する、末梢血管疾患を含む心血管疾患のような疾患又は症状に関係する脈管形成を誘導するため;皮膚における創傷治癒、胃腸管における炎症性症状を含む炎症性症状、例えば潰瘍、結腸炎、炎症性腸疾患、クローン病などを含む組織修復プロセスを誘導するための、Y2選択性レセプターアゴニストの使用に関する。
【0051】
具体的実施形態は、心臓若しくは血管で又は組織(例えば、胃腸粘膜を含む粘膜組織)及び皮膚で脈管形成を誘導するために本レセプターアゴニストを使用することである。
【0052】
3.創傷治癒
遺伝子欠失によりY2レセプターが選択的に除去されている動物で、創傷治癒が損なわれること、及び関連する新生血管形成が損なわれることが報告されている(Ekstrandら、2003 PNAS 100: 6033-38)。よって、本発明のY2選択性アゴニストは創傷治癒を改善するために有用である。本ペプチドは、この適応症のためには、非経口投与を含む種々の方法で投与することができる。しかし、好ましい投与経路は、例えば、溶液、懸濁液、散剤、固着剤(stick)、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、ヒドロゲル、経皮送達系(パッチ及びプラスターを含む)などの形態での局所適用である。局所投与には、本ペプチドはそれのまま使用することができる。しかし、本発明の好ましい実施形態では、本ペプチドは、組織でのGAGへの結合により当該ペプチドの長期持続性局所効果を確実にするため、本明細書に記載のGAG結合モチーフの1つ又はそれ以上で改変される。
【0053】
4.炎症性腸疾患
PYYは、以前に、炎症性腸疾患の予防及び/又は治療について記載された;Amylin Pharmaceuticals, IncのWO 03/105763(参照により本明細書中に組み込まれる)を参照。したがって、本発明に係るアゴニストも同様に、炎症性腸疾患の治療又は予防に効果的である。したがって、本発明はまた、このような医学的使用のための本明細書に記載のアゴニストの使用に関する。興味深い実施形態では、本ペプチドは1又はそれ以上のGAG結合モチーフを含んでなる(上記参照)。
【0054】
5.骨粗鬆症
Y2ノックアウト動物における幾つかの研究により、海綿質形成に対する非常に強い効果が示されている(例えばSainsburyら、Mol.Cell.Biol. 2003, 23: 5225-33)。Y2レセプターはまた骨形成にも関与している(Baldockら、2002 J.Clin.Invest 109: 915-21を参照)。よって、本Y2選択性アゴニストは骨粗鬆症の治療に有用である。特に、1又はそれ以上のGAG結合モチーフを含んでなるペプチドは、骨粗鬆症又は関連疾患における使用に適切であると企図される。
【0055】
人口の或る亜群では、Y2アゴニストは、Y2遺伝子における遺伝的多様性、例えば多形性に起因して、意図する作用を有しないことがある。これらレセプターにおける機能損失変異は、肥満に関連している可能性が高い。よって、本発明の好ましい実施形態では、これら遺伝子における多形性/変異についての探索及びそのような多形性の同定のために、処置すべき対象のY2遺伝子の分析が行われる。このような分析に基づいて、対象の最適な治療をなすことができる。例えば、正常な遺伝子型又はY2アゴニストの機能に影響しない多形性を有する対象のみを、本アゴニストで治療すべきである。別の可能性は、薬物の最適な効果を確実にするために、損傷したレセプターを発現する対象でY2アゴニストの用量を増加させることである。対象の肥満がY2レセプターの機能の損傷により引き起こされている場合、例えば大用量の、Y2アゴニストでの治療は、例えば異型接合体の患者において、該当するレセプター機能の少なくとも幾つかが依然として残っているという条件で、代償療法の形態であるということができる。
【0056】
本発明の1つの実施形態では、これら化合物が処置すべき対象で意図する効果を有することを確実にするため、慢性治療の開始前にY2アゴニストを投与する急性試験を実施してもよい。これら手段により、確実に、Y2アゴニストでの治療に感受性の対象のみがこれら化合物で治療されることになる。
【0057】
投薬
本発明に従うY2レセプターアゴニストの治療有効量は、用いる具体的アゴニスト、治療される対象の年齢、体重及び状態、治療される症状又は疾患の重篤度及びタイプ、投与の方式、並びに適用する組成物の強さに依存する。
【0058】
例えば、Y2レセプターアゴニストの治療有効量は、約0.01μg/キログラム(kg)体重から約1g/kg体重まで、例えば約1μgから約5mg/kg体重まで、又は約5μgから約1mg/kg体重まで変えることができる。別の実施形態では、本レセプターアゴニストは、対象に0.5〜135ピコモル(pmol)/kg体重、又は約72pmol/kg体重で投与する。
【0059】
1つの具体的な、限定的でない例では、約5〜約50nmolが皮下注射として投与され、例えば約2〜約20nmol、又は約1.0nmolが皮下注射として投与される。正確な用量は、使用する具体的化合物(例えば本レセプターアゴニスト)の効力、対象の年齢、体重、性別及び生理学的状態に基づいて、当業者により容易に決定される。
【0060】
量は、日々の、1日おきの、週ごとの、1週間おきの、毎月の、又は他の任意の適切な頻度での投与のために、1つの用量又は幾つかの用量に分割することができる。通常、投与は1日に1回又は2回である。
【0061】
投与方法
本発明に従うY2レセプターアゴニスト並びに美容組成物又は医薬組成物は、任意の経路(経腸経路(例えば経口投与)又は非経口経路を含む)により投与することができる。具体的実施形態では、非経口経路が好ましく、これには、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、胸骨内の注射及び注入、並びに舌下、経皮、局所、経粘膜(鼻経路を含む)による投与、又は吸入による投与(例えば肺吸入)が挙げられる。具体的な実施形態では、皮下及び/又は鼻の投与経路が好ましい。
【0062】
本レセプターアゴニストは、適切なビヒクル中に分散されたそれ自体で投与することができ、或いは、適切な医薬組成物又は美容組成物の形態で投与することができる。このような組成物もまた本発明の範囲内である。以下で、適切な医薬組成物を記載する。当業者は、そのような組成物が美容的使用にも適切であり得ることを理解している。或いは、当業者は、適切な美容上許容される賦形剤の使用により医薬組成物を美容組成物に調整する方法を理解している。
【0063】
医薬組成物
本発明に従うレセプターアゴニスト(「化合物」とも称する)は、医薬品又は化粧品における使用のためには、通常、具体的化合物又はその誘導体を1又はそれ以上の生理学的又は薬学的に許容される賦形剤と共に含んでなる薬学組成物の形態で提供される。
【0064】
本化合物は、動物(哺乳動物(例えばヒト)を含む)に、任意の好都合な投与経路、例えば経口経路、口腔粘膜経路、鼻経路、眼経路、肺経路、局所経路、経皮経路、膣経路、直腸経路、眼経路、非経口経路(とりわけ、皮下経路、筋肉内経路、及び静脈内経路を含む。上記参照)のような投与経路により、個々の目的に効果的である用量で投与してもよい。当業者は、適切な投与経路を選択する方法を理解している。上記のように、非経口投与経路が好ましい。特定の実施形態では、本レセプターアゴニストは、皮下に及び/又は鼻に投与される。皮下注射が容易に自己投与できることは当該分野で周知である。
【0065】
特定の投与経路に適切な組成物は、医療実務者により各患者個人個人について容易に決定される。種々の医薬的に許容されるキャリア及びそれらの処方は、標準的な製剤専門書、例えばE. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0066】
本発明に従う化合物を含んでなる医薬組成物は、固体、半固体、又は流体の組成物の形態であり得る。非経口使用のためには、本組成物は、通常、流体組成物の形態であり、移植のためには半固体の形態か又は固体形態である。
【0067】
滅菌溶液又は分散液である流体組成物は、例えば静脈内、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内又は皮下の注射又は注入により利用することができる。本化合物はまた、投与の前又は投与時に、例えば滅菌水、生理食塩水又は他の適切な滅菌注射可能媒体を用いて溶解又は分散され得る滅菌固体組成物として製造されてもよい。
【0068】
流体形態の組成物は、溶液、エマルジョン(ナノエマルジョンを含む)、懸濁液、分散液、リポソーム組成物、混合液、スプレー、又はエアロゾルであり得る(最後の2つのタイプは鼻投与に特に該当する)。
【0069】
溶液又は分散液用の適切な媒体は、通常、水、或いは医薬的に許容される溶媒、例えば油(例えばごま油又はピーナッツ油)のような溶媒又は例えばプロパノール若しくはイソプロパノールのような有機溶媒をベースにする。本発明に従う組成物は、医薬的に許容される賦形剤、例えばpH調整剤、(例えば組成物の等張性を生理学的に許容されるレベルに合わせるための)浸透圧的に活性な薬剤、粘性調整剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤などを更に含んでなり得る。好ましい媒体は水である。
【0070】
鼻投与用の組成物はまた、適切な非刺激性ビヒクル、例えばポリエチレングリコール、グリコフロール(glycofurol)などのようなビヒクル、並びに当業者に周知の吸収増強剤(例えば、Remington's Pharmaceutical Scienceを参照)を含有してもよい。
【0071】
非経口投与には、1つの実施形態で、本レセプターアゴニストは、一般には、注射可能な単位剤形(溶液、懸濁液、又はエマルジョン)で所望純度の当該レセプターアゴニストを、医薬的に許容される賦形剤又はキャリア(すなわち、用いる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、組成物の他の成分と適合性であるもの)と混合することにより製剤化することができる。
【0072】
一般に、製剤は、本レセプターアゴニストを均一に及び親密に液体キャリア又は微細に分割した固体キャリア又はその両者と接触させることにより製造する。次いで、必要であれば、生成物を所望の製剤に成形する。キャリアは、好ましくは非経口キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張性の溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が挙げられる。非水性ビヒクル、例えば不揮発性油及びエチルオレエート、並びにリポソームもまた本発明において有用である。本明細書に記載のペプチドの両親媒性に起因して、適切な形態としては、ミセル状製剤、リポソーム、及び1又はそれ以上の適切な脂質、例えばリン脂質などを含んでなる他のタイプの製剤なども挙げられる。
【0073】
好ましくは、これらは、水性キャリア中、例えば、約3.0〜約8.0のpH、好ましくは約3.5〜約7.4のpH、3.5〜6.0のpH、又は3.5〜約5のpHの等張性緩衝溶液中に懸濁する。有用な緩衝液物質としては、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム-クエン酸及びリン酸ナトリウム-リン酸、及び酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液などが挙げられる。
【0074】
本組成物は、より少ない頻度の投与レジメンを得るために、投与後の本レセプターアゴニストが制御又は延長された送達をされるように設計されてもよい。通常、日に1〜2の投与を含む投薬レジメンが適切であると考えられるが、他の投薬レジメン、例えばより頻繁な投薬レジメン及びより頻度の少ない投薬レジメンもまた本発明の範囲に含まれる。本レセプターアゴニストの延長された送達を達成するためには、投与部位でデポー(ここから、本レセプターアゴニストが循環系中にゆっくりと放出される)を形成するために例えば脂質又は油を含む適切なビヒクルを用いてもよいし、又はインプラントを使用してもよい。この点に関して適切な組成物としては、その中に本レセプターアゴニストが組み込まれているリポソーム及び生物分解性粒子が挙げられる。
【0075】
固体組成物が必要とされる状況では、固体組成物は、錠剤、例えば従来型の錠剤、沸とう錠、コーティング錠、融解錠(melt tablet)又は舌下錠、ペレット、散剤、顆粒剤(granules、granulates)、粒子状物質(particulate material)、固体分散剤又は固溶体の形態であってもよい。
【0076】
半固体形態の組成物は、チューインガム、軟膏、クリーム、リニメント剤、パスタ剤、ゲル又はヒドロゲルであり得る。
本発明に従う医薬組成物の他の適切な剤形は、膣坐剤(vagitory)、坐剤、プラスター剤、パッチ剤、錠剤、カプセル剤、薬袋剤(sachet)、トローチ剤、デバイスなどであり得る。
剤形は、本化合物を自由に又は制御された様式(例えば錠剤に関しては適切なコーティングによる)で放出するように設計されてもよい。
【0077】
本医薬組成物は、治療有効量の本発明に従う化合物を含んでなり得る。
本発明の医薬組成物中の本発明の化合物の含有量は、例えば、医薬組成物の約0.1〜約100% w/wである。
本医薬組成物は、医薬製剤の当業者に周知の任意の方法により製造され得る。
【0078】
医薬組成物において、本化合物は、通常、医薬賦形剤、すなわち治療上不活性な物質又はキャリアと組み合わされる。
キャリアは、所望の剤形及び投与経路に依存して、幅広い種々の形態をとり得る。
医薬的に許容される賦形剤は、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、流動促進剤(glidant)、溶媒、乳化剤、懸濁剤、安定化剤、増強剤、香料、着色料、pH調整剤、緩染剤、湿潤剤、表面活性剤、防腐剤、抗酸化剤などであり得る。詳細は、薬学ハンドブック、例えばRemington's Pharmaceutical Science又はPharmaceutical Excipient Handbookに見出すことができる。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、本発明の幾つかの具体的アゴニストの製造及び活性を記載する。
【0080】
合成
Fmoc化学を利用する固相ペプチド合成(SPPS)アプローチに基づくApplied Biosystem Inc.(ABI)モデル433自動合成装置を用いてペプチドを合成した。ABI合成装置用の試薬は全てABIから(ただし、ピペリジンはAldrichから)購入した。Fmocアミノ酸はABIから購入した。Rink Amide MBHA樹脂はNovabiochemから購入した。標準の0.25ミリモルFastMoc化学を使用した。SPPSのための一般的なFmoc化学プロトコルには、1)20%ピペリジンでのFmoc保護基の切断;2)アミノ酸のカルボキシル基の活性化;及び3)樹脂に結合したペプチド鎖のアミノ末端へ活性化アミノ酸をカップリングしてペプチド結合を形成することが含まれる。アミノ酸は、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)で活性化した。カートリッジ中の1.0ミリモルの乾燥保護アミノ酸を、追加のN-メチルピロリジノン(NMP)を加えた、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中HBTU、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の溶液に溶解した。活性化Fmocアミノ酸がほぼ即時に形成された。この溶液を反応容器に直接移した。Fmoc脱保護工程をモニターし、電導性測定により制御した。最終合成産物をNMP及びジクロロメタン(DCM)で大規模に洗浄した。
【0081】
脱保護:合成したペプチドを含有する樹脂を、合成装置から取出し、短時間風乾した。5〜10mlの切断カクテル(水中、95%トリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%トリイソプロピルシラン(TIS))を4.0時間室温にて用いて、ペプチドを樹脂から切断し、同時に側鎖保護基[Asp、Glu、Tyr、Thr及びSer用にはO-t-ブチル(OtBu)、Arg用にはペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、Lys用にはt-ブトキシカルボニル(Boc)、Asn及びGln用にはトリチル(Trt)]を脱保護条件下で除去した。このペプチド溶液を濾過により樹脂と分離し、40mlの冷ジエチルエーテル中で沈澱させた。遠心分離によりペプチドを回収し、2×40mlの冷ジエチルエーテルで洗浄した。ペプチドを凍結乾燥させ、精製まで−20℃にて貯蔵した。
【0082】
精製及び特徴付け:ペプチド粉末を50%酢酸溶液に溶解し、精製のために、半分取(semi-preparative)逆相HPLCカラムに注入した。二波長(220nm及び280nm)UV検出器を備えたHPLCシステムを使用した。アセトニトリルの線形グラジエントをプログラムし、カラムに導入してペプチド生成物を他の物質から分離した。溶離液をフラクションコレクターにより回収し、同一性及び純度を確実にする特徴付けのために、個々の分離画分を分析HPLC及びMALDI-TOF MSの両方に供した。
【0083】
(実施例1)
[Lys4,Leu17,Thr30,Gln34]hPP (配列番号:5)の合成;[M+H]+:4162.2
Rink Amide MBHA樹脂(Novabiochem)についての0.70ミリモル/g置換割合(substitution rate)に基づいて、0.25ミリモルスケールの合成のために、0.357gの樹脂を秤量した。正確な試薬送達を確実にするため、運転前に、種々のフロー試験でPE-ABD 433ペプチド合成装置の性能を検査した。Fmocアミノ酸:Asp-OtBu、Tyr-OtBu、Thr-OtBu、Arg-Pmc、Trp-Boc、Lys-Boc、Glu-OtBu、Asn-Trt、Gln-Trt、Val、Leu、Ile、Ala、Pro及びGlyを、1ミリモルカートリッジで購入した。他の合成試薬及び溶媒は、装置の指示書に従って購入して装置に搭載した。本ペプチドを合成するために、0.25ミリモルMonPrePkと呼ばれる化学プログラムを使用した。最初の4つのN末端アミノ酸(Ala-Pro-Leu-Lys)について二重カップリング(double coupling)を実行して合成効率を増大させた。Fmoc脱保護をモニターし、前回の脱保護サイクルと比較して5%以下の電導性という基準を設定して電導性測定により制御した。この一連のペプチド(直鎖状)の全体の合成収率は、分析HPLCにより測定したとき、60%より良好であった。
【0084】
樹脂を風乾し、ガラスバイアル中に移し、10mlの新たに調製した切断試薬(水中、95%トリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%トリイソプロピルシラン(TIS))を加えた。一定の撹拌をしながら脱保護反応を4時間室温にて行った。次いで、濾過により上清を樹脂から分離した。40mlの氷冷ジエチルエーテルでペプチドを沈降させ、続いて回収のために遠心分離した(3,500×rpmにて6分間)。沈降したペプチドを冷ジエチルエーテルで2回洗浄した。このペプチド溶液を一晩凍結乾燥した。
【0085】
ペプチドを50%酢酸中に再溶解し、Vydac C8逆相HPLCカラム(1.0cm I.D.、長さ25cm、5μmの粒子サイズ、300Å孔サイズ)にて、70分間に0〜70%溶剤B+溶剤Aの線形グラジエントを用い流量3ml/分で精製した。溶剤A及びBの組成は以下のとおりである:A:水中、0.1% TFA、2%アセトニトリル;B:95%アセトニトリル水溶液中0.1% TFA。画分を0.1分ごとに回収した。各画分のアリコートをMS及び分析RP-HPLCの両方で分析した。本ペプチド([M+H]+:4162.2)の予測される質量単位を有する単一のU.V.220nm吸収ピークを含む画分を一緒に合わせて凍結乾燥した。本ペプチドの最終純度(95%)は、合わせた画分のRP-HPLC分析により決定した。
【0086】
記載した変更を伴う以外は実施例1と同じプロトコルに従って、下記のペプチドを合成した。
(実施例2)
[Lys4,Leu17,Ser30,Gln34]hPP (配列番号:4)の合成;[M+H]+:4148.2
Fmoc-Thr-OtBuの代わりにFmoc-Ser-OtBuを使用した以外は実施例1に従って調製した。
【0087】
(実施例3)
[Lys4,Leu17,Met-スルホキシド30,Gln34]hPP (配列番号:6)の合成;[M+H]:4207.2
Fmoc-Thr-OtBuの代わりにFmoc-Metを使用した以外は実施例1に従って、[Lys4,Leu17,Met30,Gln34]hPPを調製した。次いで、精製した[Lys4,Leu17,Met30,Gln34]hPPペプチドを0.14%過酸化水素中で酸化して、[Lys4,Leu17,Met-スルホキシド30,Gln34]hPPを得た:0.65mgの[Lys4,Leu17,Met30,Gln34]hPPを1.5mlのリン酸緩衝液に溶解した。次いで、このペプチド溶液に75μlの3%過酸化水素を加えた。酸化反応を12時間暗所で行った。ペプチドのアリコートを分析逆相HPLC及びMALDI-TOF MSの両方で分析した。4191.2 ([Lys4,Leu17,Met30,Gln34]hPP)から4207.2への[M+H]のシフトは、30位でのMetのMet-スルホキシドへの酸化を示した([Lys4,Leu17,Met-スルホキシド30,Gln34]hPP)。親の未酸化ペプチドは、220nmでのUV検出に基づいて4%を超えなかった。
【0088】
生物学的アッセイ及び結果
I.ペプチドの親和性及び効力を決定するためのインビトロアッセイ
アカゲザルYレセプターのクローニング及び発現
アカゲザル(rhesus monkey)NPY-レセプター(Y1、Y2、Y4)のコード領域を、X.-M. Guanら、J. Biol. Chem. 267(31):21995-21998(1992)に記載のように、アミノ末端にHA-シグナル配列−フラッグタグ(Flag Tag)を含むpcDNA3.1/Zeoベクター中にサブクローニングし、発現、結合及び機能研究に使用してY2選択性ペプチドを同定した。rhY1はGenbank配列AF303089と同一である。rhY2はGenbank配列AF303090と同一である。rhY4はGenbank配列AY149475.1と同一である。
【0089】
アカゲザルY2レセプター親和性アッセイ
アカゲザルY2レセプターに対する試験化合物の親和性は、アカゲザルY2レセプターで安定にトランスフェクトしたCHO細胞においてヒト125I-PYY結合を利用する競合結合アッセイで決定する。
【0090】
アッセイの1日前に、安定トランスフェクトCHO細胞を、放射活性リガンドの5〜8%結合を狙ってウェルあたり2,500細胞の密度で48ウェル培養プレートに移す。翌日、12pMのヒト125I-PYY (Amersham、Little Chalfont、英国)を使用して3時間、4℃にて競合結合実験を行う。結合アッセイは、1mM CaCl2、5mM MgCl2及び0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン並びに100μg/mlバシトラシンを補充した0.5mlの50mM Hepes緩衝液(pH7.4)中で行う。非特異結合は、1μMの非標識ヒトPYYの存在下での結合として決定する。0.5mlの氷冷緩衝液中で細胞を2回洗浄する。0.5〜1mlの溶解緩衝液(3M酢酸中、8M尿素、2% NP40)を加え、結合した放射活性をガンマカウンターでカウントする。計測は3連で(in triplicates)行う。定常状態の結合は、これら条件下で放射活性リガンドと達成される。IC50値は、標準的な薬理データを取り扱うソフトウェアであるPrism 3.0 (graphPad Sofware、San Diego、米国)を用いて算出した。Ki値は、Cheng-Prusofの式(Cheng Y、Prusoff WH.、Biochem Pharmacol. 1973)に従って算出する:Ki = [IC50/(1+[L]/Kd)] (式中、Kiはコールド(cold)リガンドの平衡阻害定数であり、Kdは放射標識(ホット(hot))リガンドの平衡定数であり、Lは使用した放射標識リガンドの濃度である)。
【0091】
アカゲザルY4レセプター親和性アッセイ
アカゲザルY4を安定に発現するCHO細胞を使用し、ウェルあたり125,000細胞の密度で細胞を培養プレートに移すこと以外は、Y2親和性アッセイについてと同じプロトコル。この競合アッセイはヒト125I-PPを使用し、非特異結合の決定にはヒトPPを使用する。
【0092】
アカゲザルY1レセプター親和性アッセイ
アカゲザルY1を安定に発現するCHO細胞を使用し、ウェルあたり23,000細胞の密度で細胞を培養プレートに移すこと以外は、Y2親和性アッセイについてと同じプロトコル。この競合アッセイはヒト125I-PYYを使用し、非特異結合の決定にはヒトPYYを使用する。
【0093】
上記の親和性アッセイにおいてY2レセプターでNPY、PYY、PYY3-36、PP及び本発明のアゴニストを試験した結果を表1に示す。
【表2】

上記の親和性アッセイで、配列番号:4〜6で示されるペプチドは、Y1レセプターに対してより100倍以上選択性であり、Y4レセプターに対してより20倍以上選択性である。
【0094】
アカゲザルY2レセプター効力アッセイ
アカゲザルY2レセプターに対する試験化合物の効力は、アカゲザルY2レセプター及びキメラGタンパク質Gqi5(Y2レセプターが共役し、Gq経路を通じてイノシトールリン酸代謝回転の増加が導かれることを確実にする)で一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞において、用量-応答実験を行うことにより決定する。
【0095】
ホスファチジルイノシトール代謝回転 − トランスフェクションの1日後、COS-7細胞をウェル当たり30,000細胞の密度で96ウェル培養プレートに移し、ウェル当たり100μlの、10%胎仔ウシ血清、2mMグルタミン及び0.01mg/mlゲンタマイシンを補充した培地中で0.5μCiの[3H]-myo-inositol (Amersham、PT6-271)と共に24時間インキュベートする。140mM NaCl、5mM KCl、1mM MgSO4、1mM CaCl2、10mMグルコース、0.05%(w/v)ウシ血清を補充した緩衝液(20mM HEPES、pH 7.4)中で、細胞を2回洗浄し;10mM LiClを補充した100μl緩衝液中で37℃にて30分間インキュベートする。種々の濃度のペプチドでの37℃にて45分間の刺激後、50μlの10%氷冷過塩素酸で細胞を抽出し、続いて氷上で30分間インキュベートする。20μlの過塩素酸細胞溶液を、一様な白色(solid white)96ウェルプレートに移す。80μlのSPA YSIビーズ(12.5 mg/ml)(=1mg/ウェル)を加え、プレートを密封し、上限30分間振盪させる。プレートを1500rpmにて5分間遠心分離した後、Packard Topcounterで読み取る。計測は、2連で(in duplicates)行う。EC50値は、標準的な薬理データを取り扱うソフトウェアであるPrism 3.0 (graphPad Sofware、San Diego、米国)を用いて算出した。
【0096】
アカゲザルY4レセプター効力アッセイ
アカゲザルY4形質転換COS-7細胞を用いること以外はY2効力アッセイと同じプロトコル。
アカゲザルY1レセプター効力アッセイ
アカゲザルY1形質転換COS-7細胞を用いること以外はY2効力アッセイと同じプロトコル。
【0097】
NPY、PYY、PYY3-36、PP及び本発明のアゴニストを試験した結果
【表3】

上記の効力アッセイで、配列番号:4〜6で示されるペプチドは、Y1レセプターに対してより100倍以上選択性であり、Y4レセプターに対してより20倍以上選択性である。
【0098】
II.グリコサミノグリカン(GAG)への結合を決定するためのインビトロアッセイ
試験化合物がGAGに結合する能力を、固定化ヘパリンを使用するインビトロアッセイ、すなわち、例えばHiTrapヘパリン-セファロースカラム(Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala、スウェーデン)又はヘパリンHPLCカラム(これらは、2mM DTT及び1mM MgEDTAを含有する50mMリン酸ナトリウム(pH7.3)中0〜0.5M NaClの50分間の線形グラジエントで、1ml/分の流量にて溶出させる)のいずれかでモニターする。再生のために、51〜55分まで緩衝液A中1M NaClでカラムを洗浄した。最初の分析に、NaClの段階的グラジエントを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)[Lys4,Leu17,Ser30,Gln34]hPP (配列番号:4)、
(ii)[Lys4,Leu17,Thr30,Gln34]hPP (配列番号:5)、
(iii)[Lys4,Leu17,酸化Met30,Gln34]hPP (配列番号:6)、
並びに、
(a)4位、17位、30位及び34位以外の1又はそれより多い位置で保存的に置換され、及び/又は、(b)N末端アシル化、PEG化、又は血清アルブミン結合モチーフ若しくはグリコサミノグリカン結合モチーフ若しくはヘリックス誘導モチーフに共有結合的にカップリングされた、(i)、(ii)又は(iii)のアナログ(ここで、共有結合的カップリングは、ペプチド(i)、(ii)若しくは(iii)の残基に対して、又はペプチド(i)、(ii)若しくは(iii)中で置換され該共有結合のための官能基を提供する残基に対してである)
からなる群より選択されるペプチド。
【請求項2】
酸化Met30がスルホキシドである請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
N末端にてアシル化された請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
N末端にて2〜24の炭素原子を有する炭素鎖、例えばN末端N(N'-テトラデカノイル)-γグルタモイル基を有する炭素鎖でアシル化されている請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
N末端にてアセチル化されている請求項3に記載のペプチド。
【請求項6】
血清アルブミン結合モチーフ若しくはグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフ若しくはヘリックス誘導モチーフを含んでなるか、又はPEG化されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項7】
親油性基である血清アルブミン結合モチーフを含んでなる請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
前記親油性基が、任意に置換されていてもよい飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖の10〜24炭素原子の炭化水素基を含んでなる請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
前記親油性基がペプチド主鎖に対する側鎖であるか又はその一部である請求項7又は8に記載のペプチド。
【請求項10】
前記親油性基含有側鎖がエーテル結合、チオエーテル結合、アミノ結合、エステル結合又はアミド結合を介して前記主鎖中の残基に接続している請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
前記親油性基含有側鎖が
CH3(CH2)nCH(COOH)NH-CO(CH2)2CONH- (式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CONH- (式中、rは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CONH- (式中、sは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)mCONH- (式中、mは8〜18の整数である)、
-NHCOCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3 (式中、pは10〜16の整数である)、
-NHCO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3 (式中、qは10〜16の整数である)、
CH3(CH2)nCH(COOH)NHCO- (式中、nは9〜15の整数である)、
CH3(CH2)pNHCO- (式中、pは10〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)mCH3 (式中、mは8〜18の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)pCH3 (式中、pは10〜16の整数である)、
-CONHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)qCH3 (式中、qは10〜16の整数である)、及び
部分的又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格
からなる群より選択される請求項10に記載のペプチド。
【請求項12】
前記親油性基含有側鎖が、ペプチド主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するC12、C14、C16又はC18のアシル基である請求項9に記載のペプチド。
【請求項13】
前記親油性基含有側鎖が、ペプチド主鎖の残基の側鎖に存在するアミノ基をアシル化するテトラデカノイル基である請求項10に記載のペプチド。
【請求項14】
前記親油性基含有側鎖が、ペプチド中のLys13置換基のεアミノ基のアシル化により形成されている請求項8に記載のペプチド。
【請求項15】
前記GAG結合モチーフがペプチド主鎖に対する側鎖であるか又はその一部であるアミノ酸配列である請求項6に記載のペプチド。
【請求項16】
前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX (式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項15に記載のペプチド。
【請求項17】
前記GAG結合モチーフがコンカテマー又はデンドリマーである請求項15又は16に記載のペプチド。
【請求項18】
前記GAG結合モチーフが、コンカテマーGAG結合モチーフのC末端とペプチドのLys13置換基のεアミノ基との間で形成されるアミド結合によりカップリングしたAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである請求項15〜17のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項19】
前記GAG結合モチーフが、コンカテマーGAG結合モチーフのC末端とペプチドのLys13置換基のεアミノ基との間で形成されるアミド結合によりカップリングしたAla-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Arg-Alaである請求項15〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記GAG結合モチーフがペプチドのC末端又はN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項6に記載のペプチド。
【請求項21】
前記GAG結合モチーフがペプチドのN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項20に記載のペプチド。
【請求項22】
前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列XBBXBX及び/又はXBBBXXBX (式中、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項20又は21に記載のペプチド。
【請求項23】
前記アゴニストにおいて、前記GAG結合モチーフがアミノ酸配列[XBBBXXBX]n (式中、nは1〜5であり、Bは塩基性アミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸残基である)を含んでなる請求項20又は21に記載のペプチド。
【請求項24】
前記GAG結合モチーフが、ペプチド中のLys13置換基のεアミノ基の(Ala-Arg-Arg-Arg-Ala-Ala-Ala-Arg-Ala)3アシル化である請求項15に記載のペプチド。
【請求項25】
前記PEGが最大で約20kDaの分子量を有するポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシドである請求項6に記載のペプチド。
【請求項26】
ペプチド中のLys13置換基のεアミノ基へのPEG付加物である請求項6に記載のペプチド。
【請求項27】
前記ヘリックス誘導ペプチドがアゴニストのC末端又はN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項6に記載のペプチド。
【請求項28】
前記ヘリックス誘導ペプチドがアゴニストのN末端に直接にか又はリンカー基を介してかのいずれかで共有結合的に連結している請求項6に記載のペプチド。
【請求項29】
前記ヘリックス誘導ペプチドがAla、Leu、Ser、Thr、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Met、Orn、及び式-NH-C(R1)(R2)-CO- (式中、R1は水素であり、R2は任意に置換していてもよいC1-C6アルキル、フェニル又はフェニルメチルであるか、或いはR1及びR2はこれらが付着しているC原子と一緒になってシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル環を形成する)のアミノ酸残基からなる群より選択される4〜20アミノ酸残基を有する請求項27又は28に記載のペプチド。
【請求項30】
前記ヘリックス誘導ペプチドが4、5又は6つのLys残基を含んでなる請求項27又は28に記載のペプチド。
【請求項31】
N末端Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys配列を有する請求項27に記載のペプチド。
【請求項32】
Y2レセプターの活性化に応答性の症状の治療用医薬の製造における請求項1〜31のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項33】
その必要がある患者に有効量の請求項1〜31のいずれか1項に記載のペプチドを投与することを含んでなるY2レセプターの活性化に応答性の症状を治療する方法。
【請求項34】
前記治療される症状がエネルギー摂取若しくはエネルギー代謝の調節、又は脈管形成の誘導が指示される症状である請求項32に記載の使用又は請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記ペプチドがGAG結合モチーフを含んでなる請求項34に記載の使用又は方法。
【請求項36】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記ペプチドが血清結合モチーフを含んでなる請求項34に記載の使用又は方法。
【請求項37】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記ペプチドがPEG化されている請求項34に記載の使用又は方法。
【請求項38】
前記治療される症状が末梢血管疾患、冠動脈疾患、心筋梗塞、卒中、前記のいずれかが主因とされる疾患、創傷治癒又は組織修復である請求項34〜37のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
前記治療される症状が肥満若しくは過体重、又は肥満若しくは過体重が主因とされる症状である請求項34に記載の使用又は方法。
【請求項40】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記ペプチドが血清結合モチーフを含んでなる請求項39に記載の使用又は方法。
【請求項41】
前記治療される症状が脈管形成の誘導が指示される症状であり、前記ペプチドアゴニストがPEG化されている請求項39に記載の使用又は方法。
【請求項42】
前記治療される症状が過食症、神経性大食症、X症候群(メタボリック症候群)、前記と関連するか又は前記の結果である、糖尿病若しくは2型糖尿病若しくはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、高血糖、インスリン抵抗性、グルコース寛容減損、心血管疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、卒中、血栓塞栓性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、又は胸部、前立腺若しくは結腸のガンから選択される症状である請求項39〜41のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項43】
前記ペプチドが絶食状態の患者に投与される、請求項39〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ペプチドが皮下、筋肉内、静脈内、鼻、経皮又は口腔粘膜投与を含む非経口経路を介して患者に投与される請求項34〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
1又はそれより多い請求項1〜31のいずれかに記載のペプチドを医薬的に許容される賦形剤と共に含んでなる医薬組成物。
【請求項46】
1又はそれより多い請求項1〜31のいずれかに記載のペプチドを美容上許容される賦形剤と共に含んでなる美容組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2009−508886(P2009−508886A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531541(P2008−531541)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010315
【国際公開番号】WO2007/038943
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(506312478)7ティーエム ファーマ エイ/エス (12)
【氏名又は名称原語表記】7TM PHARMA A/S
【住所又は居所原語表記】Fremtidsvej 3,DK−2970 Hoersholm,DENMARK
【Fターム(参考)】