説明

波長変換素子の製造方法

【課題】波長変換素子を従来よりも短時間で製造する。
【解決手段】自発分極の向きが第1方向A1である第1ドメインD1と、自発分極の向きが第1方向とは反転した第2方向A2である第2ドメインD2とが、光伝播方向ALに沿って交互に配置されてなる周期的分極反転構造Sが形成されている強誘電体結晶製の基板を、光伝播方向に沿いかつ第1主面に対して垂直に、ダイシングソーを用いて切断して、切断面に対して垂直に測った厚みが第1厚みH1である細条体を形成する第1工程と、基材52の表面52aに細条体を貼着する第2工程と、基材の表面に貼着された細条体に、第1及び第2方向に垂直な方向に沿って延在する2本の凹溝56a及び56bをダイシングソーにより切削形成することにより、2本の凹溝で挟まれた凸部として、横断面形状が矩形状のリッジ型光導波路54aを形成する第3工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周期的分極反転構造が形成された強誘電体結晶を用いた波長変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周期的分極反転構造によって擬似位相整合(QPM:Quasi−Phase Matching)を実現して波長変換を行う擬似位相整合型波長変換素子(以降、単に「波長変換素子」とも称する。)が注目されている。波長変換素子は、被波長変換光の波長に応じて周期的分極反転構造の周期を調整することによって、任意の波長の被波長変換光に対して波長変換が可能である。この優れた特徴を備えていることにより、波長変換素子は、光ファイバ通信の分野に限らず、光計測の分野等においても積極的に利用されつつある。
【0003】
波長変換素子に共通する課題は、波長変換の高効率化である。波長変換効率を高くするためには、エネルギー密度を高く保った状態の基本光を、光導波路に伝播させて波長変換を行うことが有効である。
【0004】
また、波長変換効率を高くするためには、基本光及び波長変換光の伝播モードの光導波路中における重なり度合いを大きくすることが有効である。このためには基本光及び波長変換光がともに基本伝播モードで伝播するように光導波路の寸法を設計するとともに、光導波路の光伝播方向に垂直な断面において、屈折率の中心対称性を高くすることが有効である。
【0005】
従来、波長変換素子は、ニオブ酸リチウムなどの強誘電体結晶基板に周期的分極反転構造を形成した後に、プロトン交換光導波路を作成することにより作られていた。しかし、この従来法で得られたプロトン交換光導波路は、(1)プロトン交換処理により非線形光学定数が劣化すること、及び(2)プロトン交換光導波路の屈折率分布が拡散型となるため、基本光及び波長変換光の伝播モードの重なり度合いが低下する、という問題を有していた。
【0006】
これらの問題を解決するために、強誘電体結晶基板を機械的に加工してリッジ型光導波路を作成することにより、プロトン交換光導波路を用いることなく波長変換素子を作成する技術が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0007】
より詳細には、特許文献1及び2に開示された技術では、周期的分極反転構造を形成した強誘電体結晶基板を、この基板よりも屈折率が低い基材に拡散接合した後に、平面研磨加工により薄膜化し、薄膜化した強誘電体結晶基板をエッチングすることにより、リッジ型光導波路を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−140214号公報
【特許文献2】特開2009−25555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された技術では、強誘電体結晶基板を、光導波路として使用可能な10μm以下の厚みにまで平面研磨するのに膨大な時間を必要とした。そのため、波長変換素子の製造スループットが低いという問題点があった。
【0010】
この発明は、このような問題点に鑑みなされたものである。発明者は鋭意検討の結果、平面研磨に代えてダイシングソーを用いて強誘電体結晶基板を加工することにより、上述した問題を解決できることに想到した。
【0011】
従って、この発明の目的は、周期的分極反転構造が形成された強誘電体結晶を備えたリッジ型光導波路からなる波長変換素子を従来よりも短時間で製造することが可能な波長変換素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的の達成を図るために、この発明の第1の波長変換素子の製造方法は、下記に示す第1〜第3工程を備えている。
【0013】
第1工程では、自発分極の向きが基板の第1主面から第2主面に向かう第1方向である第1ドメインと、自発分極の向きが前記第1方向とは反転した第2方向である第2ドメインとが、光伝播方向に沿って互いに隣接して交互に配置されてなる周期的分極反転構造が形成されている強誘電体結晶製の基板を、光伝播方向に沿いかつ第1主面に対して垂直に、ダイシングソーを用いて切断することにより、この切断面に対して垂直に測った厚みが、リッジ型光導波路の高さとなる第1厚みである細条体を形成する。
【0014】
第2工程では、基板よりも屈折率が小さい基材の表面に細条体を貼着する。
【0015】
第3工程では、基材の表面に貼着された細条体に、第1及び第2方向に垂直な方向に沿って延在する2本の凹溝をダイシングソーにより切削形成することにより、2本の凹溝で挟まれた凸部として、横断面形状が矩形状のリッジ型光導波路を形成する。
【0016】
第1の波長変換素子の製造方法によれば、ダイシングソーによる切削だけで、周期的分極反転構造を有するリッジ型光導波路、すなわち波長変換素子を製造することができる。
【0017】
第1の波長変換素子の製造方法の好適な実施態様として、第2工程において、細条体を、基材の表面と第1及び第2方向とが平行となるように貼着するのがよい。
【0018】
このようにすることにより、ダイシングソーを用いて、波長変換素子の光入出射端面を斜めに切断することができ、波長変換されるべき基本光及び波長変換後の変換光の、この光入出射端面における反射を抑制することができる。
【0019】
第1の波長変換素子の製造方法の別の好適な実施態様として、第1工程において、第1厚みを、4〜10μmの範囲の値とするのがよい。
【0020】
このようにすることにより、リッジ型光導波路の内部を伝播する基本光及び変換光の光パワー密度を上げることができるとともに、基本光及び変換光の伝播損失を実用上許容できる程度に抑えることができる。
【0021】
第1の波長変換素子の製造方法のまた別の好適な実施態様として、リッジ型光導波路の光入射端面及び光出射端面を、基材の表面に垂直、かつ、光伝播方向に対して斜めに、ダイシングソーを用いて切断する第4工程をさらに有するのがよい。
【0022】
このようにすることにより、リッジ型光導波路の光入射端面及び光出射端面における基本光及び変換光の反射を抑制することができる。
【0023】
この発明の第2の波長変換素子の製造方法は、下記に示す第1〜第3工程を備えている。
【0024】
第1工程では、自発分極の向きが基板の第1主面から第2主面に向かう第1方向である第1ドメインと、自発分極の向きが第1方向とは反転した第2方向である第2ドメインとが、光伝播方向に沿って互いに隣接して交互に配置されてなる周期的分極反転構造が形成されている強誘電体結晶製の基板を、第2主面を貼着面として、基板よりも屈折率が小さい基材の表面に貼着する。
【0025】
第2工程では、この表面に垂直に測った基板の厚みが、リッジ型光導波路の高さとなる第2厚みとなるまで、ダイシングソーにより基板を切削して、切削領域を形成する。
【0026】
第3工程では、切削領域において、光伝播方向に沿って延在する2本の凹溝をダイシングソーにより切削形成することにより、2本の凹溝で挟まれた凸部としてのリッジ型光導波路を形成する。
【0027】
第2の波長変換素子の製造方法によれば、ダイシングソーによる切削だけで、周期的分極反転構造を有するリッジ型光導波路、すなわち波長変換素子を製造することができる。
【0028】
第2の波長変換素子の製造方法の好適な実施態様として、第2工程において、第2厚みを、4〜10μmの範囲の値とするのがよい。
【0029】
第1及び第2の波長変換素子の製造方法のさらに別の好適な実施態様として、基板を、LiNbO、LiTaO、KTiOPO及びKNbOからなる群より選ばれた1種類の非線形光学結晶とするか、又は、選ばれた非線形光学結晶にMg、Zn、Sc及びInからなる群より選ばれた1種類以上の元素が添加物として添加された化合物とするのがよい。
【発明の効果】
【0030】
この発明は、上述したように、ダイシングソーのみで、周期的分極反転構造が形成された強誘電体結晶を備えたリッジ型光導波路からなる波長変換素子を形成するので、波長変換素子の製造に要する時間を、従来よりも短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(A)は、実施形態1の波長変換素子の構造を概略的に示す斜視図であり、(B)は、実施形態1の波長変換素子の構造を概略的に示す平面図であり、及び(C)は、(B)をB−B線に沿って切断した切断端面図である。
【図2】(A)は、実施形態1の第1工程の説明に供する模式図であり、(B)は、実施形態1の第2工程の説明に供する模式図である。
【図3】(A)は、実施形態1の第3工程の説明に供する模式図であり、(B)は、実施形態1の第4工程の説明に供する模式図である。
【図4】(A)は、実施形態1の第4工程の効果の説明に用いる比較用の波長変換素子の模式図であり、(B)は、実施形態1に沿って作成された波長変換素子の模式図である。
【図5】(A)は、実施形態2の波長変換素子の構造を概略的に示す斜視図であり、(B)は、(A)をB−B線に沿って切断した切断端面図である。
【図6】(A)は、実施形態2の第1工程の説明に供する模式図であり、(B)は、実施形態2の第2工程の説明に供する模式図である。
【図7】実施形態2の第3工程の説明に供する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。なお、図1〜図7は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。また、図1〜7において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0033】
<実施形態1>
以下、図1〜図3を参照して、実施形態1の波長変換素子の製造方法の一例について説明する。
【0034】
(構造)
まず始めに図1を参照して、実施形態1の波長変換素子の製造方法に沿って製造された波長変換素子10の構造及び動作について簡単に説明する。図1(A)は、波長変換素子の構造を概略的に示す斜視図である。図1(B)は、波長変換素子の構造を概略的に示す平面図である。図1(C)は、図1(B)をB−B線に沿って切断した切断端面図である。
【0035】
図1(A)〜(C)を参照すると、波長変換素子10は、切断基材52と、切断細条体54とを備えていて、光伝播方向ALに沿って入力された基本光LINを、内部で周波数が2倍の第2高調波成分(以下、この第2高調波成分を、単に「変換光LOUT」と称する。)へと変換して、光伝播方向ALに沿って出力する。
【0036】
切断基材52は、この実施形態に示す例では、例えば平面形状が平行四辺形状の平行平板とする。切断基材52は平坦な表面52aと、表面52aに垂直であって平坦な入射側切断面52bと、表面52aに垂直であって平坦な出射側切断面52cとを有している。なお、残りの2つの側面52d及び52eは、表面52aに垂直であり、かつ、側面同士が平行である。詳しくは「製造方法」の項で後述するが、切断基材52は、製造工程の最終段階において、直方体状の基材12(図2(B)参照)の両端面をダイシングソーにより斜めに切断することにより、入射側切断面52bと出射側切断面52cとを形成することで製造されている。
【0037】
表面52aには、入射側切断面52bから出射側切断面52cに渡って、3本の細い長方体又は帯状体からなる切断細条体54が貼着されている。これらの切断細条体54は互いに平行に、かつ、側面52d及び52eに平行に配置されている。
【0038】
入射側切断面52bは、基本光LINが入射される側に延在する切断基材52の端面であり、表面52aに対して垂直、かつ、側面52d及び52eに平行な光伝播方向ALに対して斜めに切断されている。詳しくは後述するが、入射側切断面52bに面するリッジ型光導波路54aの入射端面54a1も、入射側切断面52bと同一平面をなすように切断されている。入射側切断面52bが光伝播方向ALに対してなす角度の余角θ1、すなわち入射側切断角θ1は、好ましくは、例えば7°とする。入射側切断角θ1をこの角度とすることにより、基本光LINの入射側切断面52bへの入射角もθ1となるので、入射側切断面52b側から入射端面54a1へと入射される基本光LINの反射を実用上支障の無い程度に抑えつつ、実用上支障の無い程度に十分な強度の基本光LINをリッジ型光導波路54aへと入力することができる。なお、反射を抑え、かつ、十分な光強度を得るための上述の7°は、7°丁度の角度、又は7°の近傍の範囲内のある角度を意味する。
【0039】
出射側切断面52cは、変換光LOUTが出射される側に延在する切断基材52の端面であり、表面52aに対して垂直、かつ、光伝播方向ALに対して斜めに切断されている。入射側切断面52bと出射側切断面52cとは、互いに平行に延在している。詳しくは後述するが、出射側切断面52cに面するリッジ型光導波路54aの出射端面54a2も、出射側切断面52cと同一平面をなすように切断されている。出射側切断面52cが光伝播方向ALに対してなす角度の余角θ2、すなわち出射側切断角θ2は、入射側切断角θ1と等しい大きさ、好ましくは上述のθ1の角度である7°とする。出射側切断角θ2をこの角度とすることにより、出射端面54a2から外部へと出射される変換光LOUTの反射を実用上支障の無い程度に抑えつつ、実用上支障の無い程度に十分な強度の変換光LOUTをリッジ型光導波路54aから外部へと出力することができる。
【0040】
切断細条体54は、周期的分極反転構造Sが形成されている強誘電体結晶製の薄膜であり、リッジ型光導波路54aと、第1不要膜部54bと、第2不要膜部54cとで構成されている。詳しくは「製造方法」の項で後述するが、切断細条体54は、基材12(図2(B)参照)の表面12aに貼着された1枚の薄膜としての細条体14(図2(A)参照)に、2本の凹溝56a及び56bを形成することにより、3領域(すなわち、リッジ型光導波路54aと、第1不要膜部54bと、第2不要膜部54c)に分割したものである。切断細条体54の、切断基材52の表面52aに対して垂直に測った厚みH1は、場所によらず均一であり、好ましくは、例えば約10μmとする。なお、この厚みH1は、リッジ型光導波路54aの高さとなる第1厚みH1に対応している。
【0041】
切断細条体54に形成された周期的分極反転構造Sは、強誘電体結晶の自発分極の向きが第1方向A1に向かう第1ドメインD1と、自発分極の向きが第1方向とは180°反転した第2方向A2に向かう第2ドメインD2とが、光伝播方向ALに沿って互いに隣接して交互に配置された構造を有している。第1及び第2ドメインD1及びD2の光伝播方向ALに沿って測った周期は、場所によらず等しく、波長変換素子10により波長変換された変換光LOUTのコヒーレント長に等しい長さに形成されている。なお、周期的分極反転構造Sは従来周知であるので、これ以上の説明を省略する。
【0042】
切断細条体54を構成する強誘電体結晶は、この実施形態に示す例では、好ましくは、例えば、LiNbO結晶とする。なお、強誘電体結晶は、LiNbO結晶に限らず、LiTaO、KTiOPO及びKNbOからなる群より選ばれた1種類の非線形光学結晶を、設計に応じて用いてもよい。さらに、LiNbO結晶を含むこれらの選ばれた非線形光学結晶に、Mg、Zn、Sc及びInからなる群より選ばれた1種類以上の元素を、設計に応じて添加物として添加してもよい。
【0043】
2本の凹溝56a及び56bは、光伝播方向ALに沿って互いに平行に延在する直線状の2本の溝であり、切断細条体54の上述した3領域の境界部をなしている。凹溝56a及び56bは、それぞれダイシングソーを用いて切削形成されている。すなわち、表面52aに貼着された細条体14(図2(A)参照)を、第1及び第2方向A1及びA2に対して垂直、かつ、表面52aに対して垂直な方向にダイシングソーを用いて直線状に切削する。これにより2本の凹溝56a及び56bが形成される。凹溝56a及び56bの幅W1、すなわち第1及び第2方向に平行に測った長さは、好ましくは、例えばダイシングソーのブレードの幅(約100μm)とする。また、凹溝56a及び56bの深さは、この実施形態に示す例では、切断基材52の表面52aよりも深い深さ、すなわち、好ましくは、例えば約13μmとする。
【0044】
リッジ型光導波路54aは、2本の凹溝56a及び56bで挟まれた凸部として形成されていて、光伝播方向ALに直交する横断面形状が矩形状のリッジ型の光導波路である。リッジ型光導波路54aの一端部は入射端面54a1であり、この入射端面54a1に波長変換されるべき基本光LINが入射される。上述したように、入射端面54a1は、光伝播方向ALに対して、入射側切断角θ1(7°)で切断されている。さらに、この入射端面54a1の全面には、基本光LINの反射を防ぐために、従来公知の誘電体多層膜からなる反射防止膜(不図示)が形成されている。
【0045】
リッジ型光導波路54aの他端部は出射端面54a2であり、この出射端面54a2から波長変換素子10内部で基本光LINの2倍の周波数に変換された変換光LOUTが出射される。上述したように、出射端面54a2は、光伝播方向ALに対して出射側切断角θ2(7°)で切断されている。さらに、この出射端面54a2の全面には、変換光LOUTの反射を防ぐために、従来公知の誘電体多層膜からなる反射防止膜(不図示)が形成されている。
【0046】
リッジ型光導波路54aの幅W2、すなわち、第1及び第2方向A1及びA2に平行な方向に測った長さは、この実施の形態に示す例では、好ましくは、例えば約10μmとする。
【0047】
リッジ型光導波路54aの第1厚みH1、すなわち切断細条体54の厚みH1は、上述のように10μmであるので、リッジ型光導波路54aの光伝播方向ALに直交する横断面は正方形となる。リッジ型光導波路54aの幅W2及び第1厚みH1は、波長変換されるべき基本光LINの波長が1550nmの場合、4〜10μmの範囲の値とすることが好ましく、さらに、8〜10μmの範囲の値とするとより一層好ましい。リッジ型光導波54aの幅W2及び第1厚みH1を上述した範囲の値とすることにより、リッジ型光導波路54aの内部を伝播する基本光LIN及び変換光LOUTの光パワー密度を上げることができるとともに、基本光LIN及び変換光LOUTの伝播損失を実用上許容できる程度に抑えることができる。
【0048】
第1及び第2不要膜部54b及び54cは、切断細条体54のリッジ型光導波路54a以外の領域である。第1及び第2不要膜部54b及び54cは、いわば、切断細条体54の不要部であり、波長変換素子10の波長変換動作になんらの影響も及ぼさない。したがって、第1及び第2不要膜部54b及び54cについては、これ以上の説明を省略する。
【0049】
(製造方法)
続いて、図2及び図3を参照して、波長変換素子10の製造方法について説明する。図2(A)は、第1工程の説明に供する模式図である。図2(B)は、第2工程の説明に供する模式図である。図3(A)は、第3工程の説明に供する模式図である。図3(B)は、第4工程の説明に供する模式図である。なお、図2及び3において、図1と同様の構成要素には同符号を付して、その説明を省略することもある。
【0050】
(第1工程)
図2(A)を参照すると、第1工程においては、既に説明した周期的分極反転構造Sが形成されている強誘電体結晶製の基板16を準備し、この基板16を、第1及び第2主面16a及び16bに対して垂直にスライスして、細条体14を形成する。なお、基板16を構成する材料は、「構造」の項で説明した切断細条体54を構成する材料(LiNbO結晶)と同材料とする。
【0051】
より詳細には、まず始めに、自発分極の向きが基板16の第2主面16bから第1主面16aに向かう第1方向A1である第1ドメインD1と、自発分極の向きが第1方向A1とは反転した第2方向A2である第2ドメインD2とが、光伝播方向ALに沿って互いに隣接して交互に配置されてなる周期的分極反転構造Sが形成されている強誘電体結晶製の基板16を準備する。具体的には、市販の強誘電体結晶製のZカット基板を用いて、このZカット基板に、従来周知の方法を用いて周期的分極反転構造Sを形成して、基板16を得る。ここで、基板16の厚みHsすなわち、第1及び第2主面16a及び16bの間の距離は、場所によらず均一であり、好ましくは、例えば0.3〜1.0mmの範囲の値とする。
【0052】
続いて、この基板16を、光伝播方向ALに沿いかつ第1主面16aに対して垂直に、ダイシングソーDSを用いてスライスする。これにより、平行平板であってストリップ状の細条体14が形成される。このようにして形成された細条体14の切断面14aに垂直に計った厚み、すなわち切断幅は、後の工程でリッジ型光導波路54a(図3(A)参照)の高さとなる第1厚みH1であり、また、第1主面16aに垂直に測った高さは、基板16の厚みHsである。
【0053】
なお、この実施形態においては、細条体14を長尺なストリップ状に切り出した。しかし、後の工程での細条体14の取り扱いを容易にするために、細条体14を断面L字状に切り出して、ピンセット等で保持するための取っ手を形成してもよい。
【0054】
(第2工程)
続いて、図2(B)に示すように、基板16よりも屈折率が小さい基材12を準備して、この基材12の表面12aに、細条体14を貼着する。なお、基材12を構成する材料は、「構造」の項で説明した切断基材52を構成する材料(例えば、石英)と同材料とする。
【0055】
より詳細には、細条体14の切断面14a、すなわち貼着面よりも大面積の平坦な表面12aを有する直方体状の基材12を準備する。そして、この表面12aに、エポキシ樹脂等の公知の光学用接着剤を均一な厚みで薄く塗布する。そして、ピンセット等の治具で保持した細条体14を、光学用接着剤が塗布された表面12aに貼着する。この際、後に詳述する第4工程における加工の容易さを考慮して、細条体14の長手方向と、矩形状の表面12aの辺とが平行となるように、細条体14を貼着することが好ましい。
【0056】
これにより、細条体14は、第1及び第2方向A1及びA2と基材12の表面12aとが平行となるように、基材12の表面12aに貼着される。つまり、この工程では、図2(B)に示すように、第1工程において切り出された細条体14を、第1及び第2方向A1及びA2に直交し、かつ、第1及び第2主面16a及び16bに平行に延在する細条体14の中心軸Cを回転軸として直角(90°)に回転させた上で、基材12に貼着する。詳しくは第4工程の項で後述するが、細条体14を回転させることにより、傾斜した入射端面54a1(図1(B)及び図3(B)参照)及び出射端面54a2(図1(B)及び図3(B)参照)をダイシングソーDSにより容易に作成することが可能となる。
【0057】
(第3工程)
続いて、図3(A)に示すように、細条体14に凹溝56a及び56bをダイシングソーDSにより切削形成することにより、リッジ型光導波路54aを形成する。
【0058】
より詳細には、基材12の表面12aに貼着された細条体14に、第1及び第2方向A1及びA2に垂直な方向に沿って延在する2本の凹溝56a及び56bをダイシングソーDSにより切削形成して複数の個片に分割することにより、2本の凹溝56a及び56bで挟まれた凸部として、横断面形状が矩形状のリッジ型光導波路54aを形成する。この切削は、細条体14の露出した表面、すなわち基材12の表面12aと平行な表面から基材12の表面12aを越えて基材12の深さの一部分に達するように行う。
【0059】
ここで、リッジ型光導波路54aの長手方向の両端面、すなわち光伝播方向ALに沿った両端面をそれぞれ、入射前駆端面54a1Z及び出射前駆端面54a2Zと称する。これらの前駆端面54a1Z及び54a2Zは、次の第4工程において切断されて、それぞれ入射端面54a1及び出射端面54a2へと変化する。
【0060】
なお、ダイシングソーDSによる切削は、基材12の表面12aに対して垂直な方向に行われる。また、ダイシングソーDSによる切削の間隔、すなわちリッジ型光導波路54aの幅W2は、上述のように約10μmとする。さらに、ダイシングソーDSによる切削深さは、上述のように、基材12の表面12aよりも深く、約13μmとする。
【0061】
これにより、細条体14は、3個の領域(リッジ型光導波路54a、第1不要膜部54b及び第2不要膜部54c)へと分割されて切断細条体54が形成される。
【0062】
(第4工程)
続いて、図3(B)に示すように、リッジ型光導波路54aの入射前駆端面54a1Z及び出射前駆端面54a2Zを、基材12ごとダイシングソーDSにより斜めに切断することにより、入射端面54a1及び出射端面54a2を形成する。
【0063】
より詳細には、リッジ型光導波路54aの入射前駆端面54a1Z側の端面を、入射側切断角θ1に角度を合わせた後に、基材12の表面12a及びこの表面12aと平行な切断細条体54の表面に垂直にダイシングソーDSにより、基材12ごと切断する。これにより、リッジ型光導波路54aには入射端面54a1が形成され、及び基材12には、入射端面54a1と同一平面をなす入射側切断面52bが形成される。
【0064】
さらに、リッジ型光導波路54aの出射前駆端面54a2Z側の端面を、出射側切断角θ2に角度を合わせた後に、基材12の表面12a及びこの表面12aと平行な切断細条体54の表面に垂直にダイシングソーDSにより、基材12ごと切断する。これにより、リッジ型光導波路54aには出射端面54a2が形成され、及び基材12には、出射端面54a2と同一平面をなす出射側切断面52cが形成される。
【0065】
このような工程を経て、基材12から切断基材52が形成され、図1に示したような波長変換素子10が形成される。
【0066】
なお、第4工程は、この実施形態の波長変換素子10の製造方法において必須の工程ではない。基本光LIN及び変換光LOUTの入出射端面における反射の影響を、反射防止膜のみで実用上許容できる範囲内に抑えることが可能であれば、第4工程を実施する必要はない。このように第4工程を省略した場合、波長変換素子10の製造に要する時間をより短くできる。
【0067】
(効果)
(1)このように、この実施形態の波長変換素子10の製造方法によれば、ダイシングソーDSによる切断及び切削のみで、リッジ型光導波路54aを有する波長変換素子10を製造することができる。その結果、強誘電体結晶基板の平面研磨が不必要となり、従来法に比較して、波長変換素子10の製造時間を大幅に短縮することができる。
【0068】
(2)実施形態の波長変換素子10の製造方法において、第4工程に特有の効果として、入射端面54a1及び出射端面54a2を、ダイシングソーDSを用いて容易に形成できることが挙げられる。これは、既に説明した第2工程において、細条体14を中心軸Cの周りに90°回転させた上で、基材12の表面12aに貼着することに由来する(図2(B)参照)。以下、この点について、図4(A)及び(B)を参照して説明する。なお、図4(A)及び(B)においては、説明に不要な構成要素の図示を省略してある。
【0069】
図4(A)は、第4工程の効果の説明に用いる比較用の波長変換素子100の模式図である。図4(A)に示した波長変換素子100は、Zカットされた強誘電体結晶製の基板を、スライスすることなく基材12の表面12aに貼着し、表面12aに対して平行に平面研磨して形成されたリッジ型光導波路102を有すると仮定する。その結果、リッジ型光導波路102においては、周期的分極反転構造Sの自然分極の向きである第1及び第2方向A1及びA2が基材12の表面12aと垂直な方向(Z軸方向)を向いている。
【0070】
図4(B)は、この実施形態に沿って作成された波長変換素子10の模式図である。図4(B)に示した波長変換素子10は、第2工程において、細条体14を中心軸Cの周りに90°回転させた上で、基材12の表面12aに貼着している。その結果、リッジ型光導波路54aにおいては、周期的分極反転構造Sの自然分極の向きである第1及び第2方向A1及びA2が基材12の表面12aに平行な方向(Z軸方向)を向いている。
【0071】
一般に、波長変換素子を用いて高効率で波長変換を行うためには、最大の非線形光学定数であるd33のテンソル成分を利用する。なぜなら、波長変換効率は非線形光学定数の2乗に比例するからである。
【0072】
この実施形態のように第2高調波を変換光LOUTとして取り出す場合には、d33のテンソル成分の性質より、Z軸偏光した基本光LINからZ軸偏光した変換光LOUTが発生する。図4(A)及び(B)には、Z軸偏光した基本光LIN及び変換光LOUTを示している。なお、「Z軸」とは、この実施形態で用いている強誘電体結晶であるLiNOの結晶光学軸を意味し、自然分極の方向である第1及び第2方向A1及びA2に平行な方向である。
【0073】
つまり、図4(A)及び(B)に示したように、比較用の波長変換素子100と、この実施形態の波長変換素子10とでは、自然分極の方向(第1及び第2方向A1及びA2)が異なっているために、Z軸の方向も異なっている。図4(A)に示すように、波長変換素子100においては、Z軸の方向は、基材12の表面12aに垂直な向きを向いている。それに対して、図4(B)に示すように、波長変換素子10においては、Z軸の方向は、基材12の表面12aに平行な面内に存在する。
【0074】
ところで、基本光LIN及び変換光LOUTとしてZ軸偏光を利用する場合に、波長変換素子の入出射端面での反射の影響を除くためには、入出射端面をZ軸方向からオフセットして斜めに切断する必要がある。このようにすることにより、Z軸偏光した基本光LIN及び変換光LOUTをより効率的に反射できるからである。
【0075】
つまり、図4(A)に示した比較用の波長変換素子100の場合には、点線で示したように、入射端面100a1及び出射端面100a2を基材12の表面12aに対して斜めに切断する必要がある。このように比較用の波長変換素子100の場合には、入射端面100a1及び出射端面100a2を基材12の表面12aに対して斜めに切断する必要がある。そのため、切断面が基材12の表面12aに対して垂直に形成されるダイシングソーDSでは、入射端面100a1及び出射端面100a2を形成することができない。
【0076】
それに対し、図4(B)に示したこの実施形態の波長変換素子10の場合には、点線で示したように、入射端面54a1及び出射端面54a2を基材12の表面12aに対して垂直、かつ、光伝播方向ALに対して傾斜した方向に切断すればよい。つまり、この実施形態の波長変換素子10では、入射端面54a1及び出射端面54a2の切断方向が基材12の表面12aに対して垂直であるので、ダイシングブレードにより容易に加工することができる。
【0077】
<実施形態2>
以下、図5〜図7を参照して、実施形態2の波長変換素子の製造方法の一例について説明する。
【0078】
まず始めに、実施形態2の波長変換素子の製造方法について簡単に概説する。この実施形態の波長変換素子の製造方法は、基板16を基材12に貼着した後に、ダイシングソーDSを用いた切削により、膜厚が薄い切削領域62を基板16に形成し、この切削領域62をダイシングソーDSにより切削して凹溝64a及び64bを形成することでリッジ型光導波路66aを作成するものである。
【0079】
(構造)
図5を参照して、実施形態2の波長変換素子の製造方法に沿って製造された波長変換素子20の構造及び動作について簡単に説明する。図5(A)は、波長変換素子の構造を概略的に示す斜視図である。図5(B)は、図5(A)をB−B線に沿って切断した切断端面図である。なお、図5(A)及び(B)において、図1〜図3と同様の構成要素には同符号を付して、その説明を省略する。
【0080】
図5(A)及び(B)を参照すると、波長変換素子20は、基材12と、加工済基板60とを備えていて、光伝播方向ALに沿って入力された基本光LINを、内部で周波数が2倍の変換光LOUTへと変換して、光伝播方向ALに沿って出力する。
【0081】
基材12は、実施形態1で説明した基材と同様に構成されている。
【0082】
加工済基板60は、周期的分極反転構造Sが形成されている強誘電体結晶製のZカット基板をほぼ直方体状に切り出したブロック体である。加工済基板60は、その第2主面16b(Z−面)が基材12の表面12aに貼着されている。その結果、加工済基板60において、周期的分極反転構造Sを構成する第1及び第2ドメインD1及びD2の自発分極の向き(第1及び第2方向A1及びA2)は、基材12の表面12aに対して垂直方向を向いている。
【0083】
加工済基板60には、光伝播方向ALに沿って切削領域62が形成されている。そして、この切削領域62中に形成された2本の凹溝64a及び64bにより、加工済基板60は、リッジ型光導波路66a、第1不要部66b及び第2不要部66cの3領域に分割されている。
【0084】
詳しくは「製造方法」の項で後述するが、加工済基板60は、直方体状に切り出された基板16(図6(A)参照)に、ダイシングソーDSにより切削領域62を切削形成し、その後に凹溝64a及び64bを切削形成したものである。切削領域62と凹溝64a及び64bが形成されることにより、加工済基板60は、3領域(リッジ型光導波路66a、第1不要部66b及び第2不要部66c)に分割される。
【0085】
切削領域62は、加工済基板60に設けられた薄層化領域である。すなわち、切削領域62は、厚みがHsである基板16(図6(A)参照)を、光伝播方向ALに沿ってダイシングソーDSにより切削して、基材12の表面12aに垂直に測った厚みを第2厚みH2(H2<Hs)とした領域である。なお、この第2厚みH2は、リッジ型光導波路66aの高さに対応する。このように、第2厚みH2はリッジ型光導波路66aの高さとなるので、実施形態1の場合と同様に、第2厚みH2は4〜10μmの範囲の値とすることが好ましく、さらに、8〜10μmの範囲の値とするとより一層好ましい。
【0086】
2本の凹溝64a及び64bは、光伝播方向ALに沿って互いに平行に延在する直線状の2本の溝であり、加工済基板60の上述した3領域の境界部をなしている。凹溝64a及び64bは、それぞれダイシングソーDSを用いて切削形成されている。すなわち、切削領域62が形成された基板16(図6(A)参照)を、光伝播方向ALに平行、かつ、表面12aに対して垂直な方向にダイシングソーDSを用いて直線状に切削する。これにより2本の凹溝64a及び64bが形成される。凹溝64a及び64bの幅W3、すなわち表面12aに平行な面内で、光伝播方向ALに垂直に測った長さは、好ましくは、例えばダイシングソーDSのブレードの幅(約100μm)とする。また、凹溝64a及び64bの深さは、この実施形態に示す例では、基材12の表面12aよりも深い深さ、すなわち、好ましくは、例えば約13μmとする。
【0087】
リッジ型光導波路66aは、2本の凹溝64a及び64bで挟まれた凸部として形成されていて、光伝播方向ALに直交する横断面形状が矩形状のリッジ型の光導波路である。リッジ型光導波路66aの一端部は入射端面66a1であり、この入射端面66a1に波長変換されるべき基本光LINが入射される。この入射端面66a1の全面には、基本光LINの反射を防ぐために、従来公知の誘電体多層膜からなる反射防止膜(不図示)が形成されている。
【0088】
リッジ型光導波路66aの他端部は出射端面66a2であり、この出射端面66a2から波長変換素子20内部で基本光LINの2倍の周波数に変換された変換光LOUTが出射される。この出射端面66a2の全面には、変換光LOUTの反射を防ぐために、従来公知の誘電体多層膜からなる反射防止膜(不図示)が形成されている。
【0089】
リッジ型光導波路66aの幅W4、すなわち、表面12aに平行な面内で光伝播方向ALに垂直に測った長さは、この実施の形態に示す例では、好ましくは、例えば約10μmとする。
【0090】
第1及び第2不要部66b及び66cは、加工済基板60のリッジ型光導波路66a以外の領域である。第1及び第2不要部66b及び66cは、いわば、加工済基板60の不要部であり、波長変換素子20の波長変換動作になんらの影響も及ぼさない。したがって、第1及び第2不要部66b及び66cについては、これ以上の説明を省略する。
【0091】
(製造方法)
続いて、図6及び図7を参照して、波長変換素子20の製造方法について説明する。図6(A)は、第1工程の説明に供する模式図である。図6(B)は、第2工程の説明に供する模式図である。図7は、第3工程の説明に供する模式図である。なお、図6及び7において、図5と同様の構成要素には同符号を付して、その説明を省略することもある。
【0092】
(第1工程)
図6(A)を参照すると、第1工程においては、既に説明した周期的分極反転構造Sが形成されている強誘電体結晶製の基板16を準備し、この基板16を、第2主面16bを貼着面として、基板16よりも屈折率が小さい基材12の表面12aに貼着する。
【0093】
その結果、実施形態1の場合とは異なり、この実施形態においては、第1及び第2ドメインD1及びD2の自発分極の向きである第1及び第2方向A1及びA2は、基材12の表面12aに対して垂直な方向を向くこととなる。
【0094】
(第2工程)
続いて、図6(B)に示すように、基材12の表面12aに垂直に測った基板16の厚みが、リッジ型光導波路66aの高さとなる第2厚H2みとなるまで、ダイシングソーDSにより基板16を切削して、切削領域62を形成する。
【0095】
より詳細には、ダイシングソーDSのブレードを、表面12aに平行な面内で光伝播方向ALに直交する方向に、ブレードの幅ずつずらしながら、光伝播方向ALに沿って数往復させて基板16の切削を行うことで、切削領域62を形成する。なお、この切削において、ダイシングソーDSによる切削深さは、基板16の厚みHsよりも浅い深さとする。これにより、基板16には、厚みが第2厚みH2である切削領域62が形成される。
【0096】
(第3工程)
続いて、図7に示すように、切削領域62に、光伝播方向ALに平行な方向に沿って延在する2本の凹溝64a及び64bをダイシングソーDSにより切削形成することにより、2本の凹溝64a及び64bで挟まれた凸部として、横断面形状が矩形状のリッジ型光導波路66aを形成する。
【0097】
なお、第3工程におけるダイシングソーDSによる切削は、基材12の表面12aに対して垂直な方向に行われる。また、ダイシングソーDSによる切削の間隔、すなわちリッジ型光導波路66aの幅W4は、上述のように約10μmとする。さらに、ダイシングソーDSによる切削深さは、上述のように、基材12の表面12aよりも深く、約13μmとする。
【0098】
これにより、基板16は、3個の領域(リッジ型光導波路66a、第1不要部66b及び第2不要膜部66c)へと分割されて加工済基板60が形成される。
【0099】
このような工程を経て、図5に示したような波長変換素子20が形成される。
【0100】
(効果)
このように、この実施形態の波長変換素子20の製造方法によれば、ダイシングソーDSによる切断及び切削のみで、リッジ型光導波路66aを有する波長変換素子20を製造することができる。その結果、強誘電体結晶基板の平面研磨が不必要となり、従来法に比較して、波長変換素子20の製造時間を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0101】
10,20,100 波長変換素子
12 基材
12a,52a 表面
14 細条体
14a 切断面
16 基板
16a 第1主面
16b 第2主面
52 切断基材
52b 入射側切断面
52c 出射側切断面
54 切断細条体
54a,66a,102 リッジ型光導波路
54a1,100a1,66a1 入射端面
54a2,100a2,66a2 出射端面
54a1Z 入射前駆端面
54a2Z 出射前駆端面
54b 第1不要膜部
54c 第2不要膜部
56a,56b,64a,64b 凹溝
60 加工済基板
62 切削領域
66b 第1不要部
66c 第2不要部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発分極の向きが基板の第1主面から第2主面に向かう第1方向である第1ドメインと、自発分極の向きが前記第1方向とは反転した第2方向である第2ドメインとが、光伝播方向に沿って互いに隣接して交互に配置されてなる周期的分極反転構造が形成されている強誘電体結晶製の当該基板を、前記光伝播方向に沿いかつ前記第1主面に対して垂直に、ダイシングソーを用いて切断することにより、該切断面に対して垂直に測った厚みが、リッジ型光導波路の高さとなる第1厚みである細条体を形成する第1工程と、
前記基板よりも屈折率が小さい基材の表面に前記細条体を貼着する第2工程と、
前記基材の前記表面に貼着された前記細条体に、前記第1及び第2方向に垂直な方向に沿って延在する2本の凹溝をダイシングソーにより切削形成することにより、前記2本の凹溝で挟まれた凸部として、横断面形状が矩形状の前記リッジ型光導波路を形成する第3工程と
を含むことを特徴とする波長変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記細条体を、前記基材の前記表面と前記第1及び第2方向とが平行となるように貼着することを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程において、前記第1厚みを、4〜10μmの範囲の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記リッジ型光導波路の光入射端面及び光出射端面を、前記基材の前記表面に垂直、かつ、前記光伝播方向に対して斜めに、ダイシングソーを用いて切断する第4工程をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項5】
自発分極の向きが基板の第1主面から第2主面に向かう第1方向である第1ドメインと、自発分極の向きが前記第1方向とは反転した第2方向である第2ドメインとが、光伝播方向に沿って互いに隣接して交互に配置されてなる周期的分極反転構造が形成されている強誘電体結晶製の当該基板を、前記第2主面を貼着面として、前記基板よりも屈折率が小さい基材の表面に貼着する第1工程と、
前記表面に垂直に測った前記基板の厚みが、リッジ型光導波路の高さとなる第2厚みとなるまで、ダイシングソーにより前記基板を切削して、切削領域を形成する第2工程と、
該切削領域において、前記光伝播方向に沿って延在する2本の凹溝をダイシングソーにより切削形成することにより、前記2本の凹溝で挟まれた凸部としてのリッジ型光導波路を形成する第3工程と
を含むことを特徴とする波長変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2工程において、前記第2厚みを、4〜10μmの範囲の値とすることを特徴とする請求項5に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記基板を、LiNbO、LiTaO、KTiOPO及びKNbOからなる群より選ばれた1種類の非線形光学結晶とするか、又は、該選ばれた非線形光学結晶にMg、Zn、Sc及びInからなる群より選ばれた1種類以上の元素が添加物として添加された化合物とすることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の波長変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−75604(P2011−75604A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223784(P2009−223784)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】