説明

波長選択フィルタ及びそれを備えたフィルタ装置及びレーザ装置

【課題】従来のGMRFよりも小さな面積で入射光と結合可能であり、高屈折率の材料を必要とせず、所望波長の光とそれ以外の波長の光とを別個に取り出す波長選択フィルタを提供する。
【解決手段】波長選択フィルタは、導波コア2と、導波コア2上に設けられたDBR11、位相調整区間p1、GC10、位相調整区間p2、及びDBR12とを備える。所望波長の光及び所望波長以外の波長の光を含む入射光がGC10に入射したとき、導波コア2を伝搬する導波光をGC10により回折して導波コア2の第1の面から放射させることにより、GC10に入射した所望波長の光を反射し、導波コア2を伝搬する導波光をGC10により回折して導波コア2の第2の面から放射させることにより、GC10に入射して導波コア2を透過した所望波長の光を相殺する。所望波長以外の波長の光は導波コア2を透過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスの基板上に面状に形成された波長選択フィルタであって、入射光を透過光と反射光に分離することでフィルタリングする波長選択フィルタに関し、また、そのような波長選択フィルタを備えたフィルタ装置及びレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイスのためのフィルタとして、例えば、特許文献1〜4に開示されたものが知られ、また、特許文献5〜6及び非特許文献1〜5に開示された導波モード共鳴フィルタ(GMRF: Guided Mode Resonance Filter)が知られている。
【0003】
GMRFは、基板上に導波路とサブ波長の周期構造とを設けることで、基板に垂直に入射する光波に対して、ある波長において急峻な反射特性もしくは透過特性を示す光学フィルタである。この急峻な波長依存性は、周期構造がグレーティングカップラ(GC: Grating Coupler)として機能する波長において、励振された導波光が再度放射光に結合する際に、入射光の透過もしくは反射を相殺する現象として理解される。高い反射率もしくは透過率を得るためには、放射モード光を相殺して消滅させるのに十分な導波光の励振及び放射が必要であるので、結合係数が小さなGCを用いる場合ではGCの面積及び入射光のビーム径を大きくすること(例えば数mm)が前提となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−331581号公報。
【特許文献2】特開平6−221921号公報。
【特許文献3】特開平9−236760号公報。
【特許文献4】特開2000−258704号公報。
【特許文献5】特開2009−288718号公報。
【特許文献6】米国特許第6,154,480号明細書。
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. S. Wang and R. Magnusson, "Theory and applications of guided-mode resonance filters", Applied Optics, vol. 32, pp. 2606-2613, May 10, 1993.
【非特許文献2】Z. S. Liu, S. Tibuleac, D. Shin, P. P. Young, and R. Magnusson, "High-efficiency guided-mode resonance filter", Optics Letters, vol. 23, pp. 1556-1558, October 1, 1998.
【非特許文献3】S. Tibuleac and R. Magnusson, "Diffractive narrow-band transmission filters based on guided-mode resonance effects in thin-film multilayers", IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 9, No. 4, pp. 464-466, April 1997.
【非特許文献4】Alok A. Mehta, Raymond C. Rumpf, Zachary A. Roth, and Eric G. Johnson, "Guided Mode Resonance Filter as a Spectrally Selective Feedback Element in a Double-Cladding Optical Fiber Laser", IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 19, No. 24, pp. 2030-2032, December 15, 2007.
【非特許文献5】Ye Zhou, Michael Moewe, Johannes Kern, Michael C. Y. Huang, and Connie J. Chang-Hasnain, "Surface-normal emission of a high-Q resonator using a subwavelength high-contrast grating", Optics Express, Vol. 16, No. 12, pp. 17282-17287, October 27, 2008.
【非特許文献6】K. Kintaka, J. Nishii, A. Mizutani, H. Kikuta, and H. Nakano, "Antireflection microstructures fabricated upon fluorine-doped SiO2 films", OPTICS LETTERS, Vol. 26, No. 21, pp. 1642-1644, November 1, 2001.
【非特許文献7】Akio Mizutani, Hisao Kikuta, Koichi Iwata, and Hiroshi Toyota, "Guided-mode resonant grating filter with an antireflection structured surface", J. Opt. Soc. Am. A, Vol. 19, No. 7, pp. 1346-1351, July 2002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ファイバの端面から出力される光は、例えば10μm程度のビーム径を有するので、GCへの入射光のビーム径を数mmにするためにはレンズが必要になる。一方、波長選択フィルタを使用する上では、多くの場合、光導波路や光ファイバから出力された光をレンズレスで結合できること、すなわち、数μm〜数十μm程度のビーム径を有する入射光をそのままフィルタリングできることが求められる。
【0007】
また、従来のフィルタは、グレーティングのために高屈折率の材料を必要とする場合があるが(例えば、特許文献1、非特許文献5)、このような要件なしに材料を柔軟に選択できることが好ましい。
【0008】
また、従来のフィルタは、レーザ光源の活性層などと一体化して形成され、フィルタリングにより所望波長の光のみを出力するように使用される場合がある(例えば、特許文献6、非特許文献5)。しかしながら、フィルタリングにより、所望波長の光と、それ以外の波長の光を別個に取り出せることが好ましい。
【0009】
本発明の目的は、以上の課題を解決し、従来のGMRFよりも小さな面積で入射光と結合可能であり、高屈折率の材料を必要とせず、所望波長の光とそれ以外の波長の光とを別個に取り出すことができる波長選択フィルタを提供し、さらに、そのような波長選択フィルタを備えたフィルタ装置及びレーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る波長選択フィルタは、
互いに逆方向の第1及び第2の導波方向を有する導波路であって、上記第1の導波方向に沿って延在しかつ互いに対向する第1及び第2の面の間に設けられた導波路と、
上記第1の導波方向に沿って順に、上記導波路に設けられた第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段とを備え、
上記回折手段は、上記第1の導波方向に沿ってグレーティング周期を有し、
上記回折手段は、上記回折手段のグレーティング周期に対応する第1の波長の光を含む入射光が上記回折手段に入射したとき、上記導波路において、上記第1の導波方向に伝搬する導波光を励振し、上記回折手段は、上記第1の導波方向に伝搬する導波光を回折して上記導波路の第1及び第2の面から放射させ、
上記第2の反射手段は、上記第1の導波方向に伝搬した導波光を上記第2の伝搬方向に反射し、
上記第1の反射手段は、上記第2の導波方向に伝搬した導波光を上記第1の伝搬方向に反射し、
上記第1の位相調整区間は、上記第2の伝搬方向に伝搬する導波光が上記第1の反射手段によって反射されたとき、当該反射された導波光が、上記回折手段に入射した入射光により励振された上記第1の伝搬方向に伝搬する導波光の位相と同じ位相を有するように設定された長さを有し、
上記第1の波長の光及び上記第1の波長以外の波長の光を含む入射光が上記回折手段に入射したとき、
上記第1の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第1の面から放射させることにより、上記回折手段に入射した上記第1の波長の光を反射し、
上記第1の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第2の面から放射させることにより、上記回折手段に入射して上記導波路を透過した上記第1の波長の光を相殺し、
上記第1の波長以外の波長の光は上記導波路を透過することを特徴とする。
【0011】
上記波長選択フィルタにおいて、
上記入射光は、上記導波路の第1の面に対して垂直になるように上記回折手段に入射し、
上記回折手段は、上記回折手段のグレーティング周期に対応する第1の波長の光を含む入射光が上記回折手段に入射したとき、上記導波路において、上記第1の導波方向に伝搬する導波光と上記第2の導波方向に伝搬する導波光とを励振し、上記回折手段は、上記第1の導波方向に伝搬する導波光を回折して上記導波路の第1及び第2の面から放射させ、上記第2の導波方向に伝搬する導波光を回折して上記導波路の第1及び第2の面から放射させ、
上記第2の位相調整区間は、上記第1の伝搬方向に伝搬する導波光が上記第2の反射手段によって反射されたとき、当該反射された導波光が、上記回折手段に入射した入射光により励振された上記第2の伝搬方向に伝搬する導波光の位相と同じ位相を有するように設定された長さを有し、
上記第1の波長の光及び上記第1の波長以外の波長の光を含む入射光が上記回折手段に入射したとき、
上記第1の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第1の面から放射させ、かつ上記第2の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第1の面から放射させることにより、上記回折手段に入射した上記第1の波長の光を反射し、
上記第1の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第2の面から放射させ、かつ上記第2の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第2の面から放射させることにより、上記回折手段に入射して上記導波路を透過した上記第1の波長の光を相殺し、
上記第1の波長以外の波長の光は上記導波路を透過することを特徴とする。
【0012】
上記波長選択フィルタにおいて、上記第1の反射手段及び上記第2の反射手段のそれぞれは、上記第1の導波方向に沿ってグレーティング周期を有する分布ブラッグ反射器であることを特徴とする。
【0013】
上記波長選択フィルタにおいて、上記第1の反射手段及び上記第2の反射手段のそれぞれは、金属ミラーであることを特徴とする。
【0014】
上記波長選択フィルタにおいて、上記回折手段は無反射構造を有することを特徴とする。
【0015】
上記波長選択フィルタにおいて、上記入射光は、上記導波路の第1の面に対して垂直な方向から上記第1の反射手段の側に傾いた所定入射角を有して上記回折手段に入射し、
上記回折手段は、上記第1の導波方向に伝搬する導波光と結合するように、かつ上記第2の導波方向に伝搬する導波光と結合しないように、上記導波路の第1の面及び第2の面の間において上記導波路の第1の面から所定距離を有して設けられ、
上記第1及び第2の反射手段は、上記第1の導波方向に伝搬する導波光及び上記第2の導波方向に伝搬する導波光の両方と結合するように、上記導波路の第1の面及び第2の面の間において上記導波路の第1の面から所定距離を有して設けられることを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の態様に係るフィルタ装置は、本発明の第1の態様に係る波長選択フィルタを2つ備えたフィルタ装置であって、
上記フィルタ装置は、互いに対向しかつ互いに平行な第1及び第2の面を有する基板をさらに備え、
上記基板の第1の面に、上記2つの波長選択フィルタのうちの第1の波長選択フィルタが形成され、
上記基板の第2の面に、上記2つの波長選択フィルタのうちの第2の波長選択フィルタが形成され、上記第2の波長選択フィルタの導波路の第1及び第2の導波方向は、上記基板の第2の面に平行な平面内にあって、上記第1の波長選択フィルタの導波路の第1及び第2の導波方向と直交することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第3の態様に係るフィルタ装置は、本発明の第1の態様に係る波長選択フィルタを2つ備えたフィルタ装置であって、
上記フィルタ装置は、
互いに対向しかつ互いに平行な第1及び第2の面の間に設けられた1つの共通の導波路を備え、
上記導波路の第1の面において、上記2つの波長選択フィルタのうちの第1の波長選択フィルタの第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段を備え、
上記導波路の第2の面において、上記2つの波長選択フィルタのうちの第2の波長選択フィルタの第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段を備え、
上記第2の波長選択フィルタの導波路の第1及び第2の導波方向は、上記導波路の第1及び第2の面に平行な平面内にあって、上記第1の波長選択フィルタの導波路の第1及び第2の導波方向と直交することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第4の態様に係るフィルタ装置は、本発明の第1の態様に係る波長選択フィルタを2つ備えたフィルタ装置であって、
上記フィルタ装置は、
互いに対向しかつ互いに平行な第1及び第2の面の間に設けられた1つの共通の導波路を備え、
上記導波路の第1の面において、上記2つの波長選択フィルタのうちの第1の波長選択フィルタの第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段を備え、
上記導波路の第2の面において、上記2つの波長選択フィルタのうちの第2の波長選択フィルタの第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段を備え、
上記第2の波長選択フィルタの回折手段は、上記第1の導波方向に沿って、上記第1の波長選択フィルタの回折手段のグレーティング周期とは異なるグレーティング周期を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の第5の態様に係るレーザ装置は、上記波長選択フィルタを外部ミラーとして備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の波長選択フィルタによれば、従来のGMRFよりも小さな面積で入射光と結合可能であり、高屈折率の材料を必要とせず、所望波長の光とそれ以外の波長の光とを別個に取り出すことができる波長選択フィルタを提供することができる。さらに、そのような波長選択フィルタを備えたフィルタ装置及びレーザ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る波長選択フィルタ100の構成を示す断面図である。
【図2】図1のGC10の近傍の詳細構成を示す断面図である。
【図3】(a)は図1の波長選択フィルタ100に入射する入射光のうちの所望波長の成分を示し、(b)は図1の波長選択フィルタ100に入射する入射光のうちの所望波長以外の成分を示す概略図である。
【図4】図1の波長選択フィルタ100についてシミュレーションされた反射スペクトル及び透過スペクトルを示すグラフである。
【図5】図1の波長選択フィルタ100の解析モデルから計算された反射スペクトル及び透過スペクトルを示すグラフである。
【図6】図1の波長選択フィルタ100に入射光が入射した場合の電界プロファイルを示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る波長選択フィルタ101の構成を示す断面図である。
【図8】図7の波長選択フィルタ101に入射光が入射した場合の電界プロファイルを示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る波長選択フィルタ102の構成を示す断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るフィルタ装置の構成を示す断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るフィルタ装置の構成を示す断面図である。
【図12】本発明の第6の実施形態に係るフィルタ装置の構成を示す断面図である。
【図13】本発明の第7の実施形態に係るVCSELレーザ装置の構成を示す断面図である。
【図14】本発明の第1の実施形態の変形例に係る波長選択フィルタ110の構成を示す断面図である。
【図15】図14のGC10の近傍の詳細構成を示す断面図である。
【図16】(a)は図14の波長選択フィルタ110に入射する入射光のうちの所望波長の成分を示し、(b)は図14の波長選択フィルタ110に入射する入射光のうちの所望波長以外の成分を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。各図面を通じて、同様の構成要素は同じ参照番号で表す。
【0023】
第1の実施形態.
図1は、本発明の第1の実施形態に係る波長選択フィルタ100の構成を示す断面図であり、図2は、図1のGC10の近傍の詳細構成を示す断面図である。図1他において、図面内に示したXYZ座標を参照する。本実施形態の波長選択フィルタ100は、透明な誘電体材料から形成された基板1と、基板1上に形成された導波コア2と、さらに導波コア2上に形成されたグレーティングカップラ(GC)10及び分布ブラッグ反射器(DBR: Distributed Bragg Reflector)11,12とを備える。GC10及びDBR11,12はそれぞれ、Z軸方向に沿って所定のグレーティング周期を有する(すなわち凹凸が周期的に並ぶ)グレーティングから構成される。DBR11は、GC10の−Z方向に位置するように、GC10との間に所定の位相調整区間p1を挟んで形成され、同様に、DBR12は、GC10の+Z方向に位置するように、GC10との間に所定の位相調整区間p2を挟んで形成される。本実施形態の波長選択フィルタ100は、−X方向からGC10に入射光が入射したときに、所望波長の光を−X方向に反射させ、それ以外の波長の光を+X方向に透過させることを特徴とする。
【0024】
GC10は、Z軸方向の長さLとして、従来技術のように数mmにわたる大きな長さを必要とせず、例えば、光ファイバ又は他の光導波路の端面から出力される光のビーム径と同等の長さ(例えば長さL=10μm)を有する。GC10のグレーティングは、入射光のうちの所望波長の成分に対応するZ軸方向のグレーティング周期Λ(例えばΛ=950nm)を有し、GC10のグレーティングを形成する凹部及び凸部はそれぞれ、Z軸方向に約Λ/2の長さを有する。グレーティング周期Λに応じた所望波長を含む入射光がGC10に−X方向から垂直に入射したとき、導波コア2において、グレーティング周期Λに応じた所定の導波路内波長を有し、+Z方向及び−Z方向に伝搬する導波光(すなわち、図2の矢印d1の方向に伝搬する導波光及び矢印d2の方向に伝搬する導波光)が励振される。DBR11,12はそれぞれ、Z軸方向の長さとして、GC10の位置から導波コア2を伝搬してきた導波光を元のGC10の位置に向かって完全に反射するのに十分な長さ(例えば170μm)を有する。DBR11,12のグレーティングは、Z軸方向にグレーティング周期Λ/2を有し、DBR11,12のグレーティングを形成する凹部及び凸部はそれぞれ、Z軸方向に約Λ/4の長さを有する。また、GC10とDBR11,12との間の位相調整区間p1,p2のZ軸方向の長さを条件として、導波コア2において導波光が往復して重畳され、入射光のうちの所望波長の成分に対応する導波光が導波コア2において共振する。GC10とDBR11との間に形成された位相調整区間p1のZ軸方向の長さは、DBR11によって反射されて+Z方向に伝搬する導波光が、GC10に入射した入射光によって励振されて+Z方向に伝搬する導波光と同じ位相を有するように決定される。GC10とDBR12との間に形成された位相調整区間p2のZ軸方向の長さは、DBR12によって反射されて−Z方向に伝搬する導波光が、GC10に入射した入射光によって励振されて−Z方向に伝搬する導波光と同じ位相を有するように決定される。これらの位相調整区間p1,p2は、例えばZ軸方向の長さL1=Λ/8を有する。導波コア2は、X軸方向の厚さTcとして、1つの導波モードが発生する程度の厚さTc(例えばTc=275nm)を有する。GC10及びDBR11,12のグレーティングの凸部は、X軸方向の厚さTgとして、例えば厚さTg=150nmを有する。
【0025】
導波コア2の屈折率は、基板1、GC10及びDBR11,12の屈折率よりも高くされる。例えば、導波コア2はシリコンナイトライドからなり、基板1、GC10及びDBR11,12は石英からなる。以下の説明では、導波コア2の屈折率は2.0であり、基板1、GC10及びDBR11,12の屈折率は1.5であるとする。
【0026】
本実施形態の波長選択フィルタ100は、DBR11,12の間に、結合長の短いGC10を挿入した構成を有する。GC10の実効結合長は、通常は、結合の強さを表す放射損失係数αの逆数で与えられる。入射光のうちの所望波長の成分の真空中での波長をλとし、導波コア2の実効屈折率をNとし、GC10のグレーティング周期をΛとすると、次式を満たす波長λを含む入射光がGC10に垂直に入射した場合、導波コア2を+Z方向及び−Z方向に伝搬する導波光が励振される。
【0027】
【数1】

【0028】
ここで、βは導波光の伝搬定数であり、KGCはグレーティングベクトルの大きさである。
【0029】
図3(a)は図1の波長選択フィルタ100に入射する入射光のうちの所望波長の成分を示し、図3(b)は図1の波長選択フィルタ100に入射する入射光のうちの所望波長以外の成分を示す概略図である。図3(a)及び(b)は図1及び図2と同様の断面図であるが、説明のためにハッチングを省略する。前述のように、入射光がGC10に−X方向から入射したとき、入射光のうちの所望波長の成分は、導波コア2において、+Z方向及び−Z方向に伝搬する導波光を励振させる。+Z方向に伝搬する導波光は、GC10によって回折されることにより、−X方向の放射光及び+X方向の放射光(すなわち、導波コア2の−X方向の面及び+X方向の面に垂直な放射光)を発生し、−Z方向に伝搬する導波光もまた、GC10によって回折されることにより、−X方向の放射光及び+X方向の放射光(すなわち、導波コア2の−X方向の面及び+X方向の面に垂直な放射光)を発生する。−X方向の放射光は、入射光に対する反射光となる。+X方向の放射光は、−X方向からGC10に入射して基板1の側に透過する透過光と逆位相を有するので、透過光と相殺する。一方、入射光がGC10に−X方向から入射したとき、入射光のうちの所望波長以外の成分は、導波光を励振させることなく、そのまま基板1の側に透過する。このように、本実施形態の波長選択フィルタ100は、入射光がGC10に−X方向から入射したとき、入射光のうちの所望波長の成分を反射光として−X方向に反射し、入射光のうちの所望波長以外の成分を透過光として+X方向に透過させる。従って、本実施形態の波長選択フィルタ100は、入射光を透過光と反射光に分離することでフィルタリングすることができる。
【0030】
本実施形態の波長選択フィルタ100について、FDTD(時間領域差分)法によりそのフィルタリング機能を検証した。図4は、図1の波長選択フィルタ100についてシミュレーションされた反射スペクトル及び透過スペクトルを示すグラフであり、図6は、図1の波長選択フィルタ100に入射光が入射した場合の電界プロファイルを示す図である。図4において、丸のプロットは反射率を示し、四角形のプロットは透過率を示す。図4のシミュレーションでは、GC10の開口と同サイズのビーム径(10μm)を有し、かつ一様な強度を有する矩形波ビームの入射光を入射した場合を想定した。図4によれば、共鳴波長1.5518μm付近において、95%の反射率及び半値全幅1.5nmが得られている。DBR11,12の反射率をほぼ100%にしたことにより、するどい反射スペクトルのピークが得られた。図6は、1.5518μmの波長を有する入射光が入射したときの波長選択フィルタ100の近傍における電界プロファイル(正規化された電界強度)である。図6は、図1〜図3と同じ断面の一部を、X軸方向とZ軸方向とで異なる縮尺で示す。Z軸方向の「185μm」の位置に設けられたGC10(図示せず。)に、−X方向から入射光が入射している。GC10の−Z方向と+Z方向には、DBR11,12(図示せず。)がそれぞれ設けられる。導波コア2において、導波光は、DBR11,12による反射により、GC10から所定距離内に閉じこめられる。図6を参照すると、波長選択フィルタ100の外部では、GC10の位置(すなわち、Z軸方向の「185μm」の位置)よりも−X方向の領域の電界(GC10の位置への入射光と、GC10の位置からの反射光とを含む)が最も強い。一方、導波コア2よりも+X方向では、透過光と放射光とが相殺し、電界は次第に弱くなっている。
【0031】
以下、本実施形態の波長選択フィルタ100の特性を、モード結合理論に基づく解析モデルを参照して説明する。
【0032】
(入射光の放射モード表記)
空気中及び基板中での波数をそれぞれk及びkとし、Z軸方向波数をβνとする。ほぼ垂直(βν≒0)に入射する入射光を空気側及び基板側放射モードで表すことを考える。Z軸方向波数βν=0と近似して、入射平面波の界分布EIN(x)を次式で表す。
【0033】
【数2】

【0034】
ここで、aINは所定の振幅係数であり、rIN及びtINは反射係数及び透過係数である。空気側放射モードの界分布E(x)は、上式の位相共役(時間反転波)で与えられる。すなわち、所定の振幅係数aを用いて、次式で表される。
【0035】
【数3】

【0036】
ここで、上付きの「*」は複素共役を示す。
【0037】
同様に、基板側放射モードの界分布E(x)は、基板1からの仮想入射光の位相共役で与えられる。すなわち、所定の振幅係数aを用いて、次式で表される。
【0038】
【数4】

【0039】
入射平面波の界分布EIN(x)を空気側放射モードの界分布E(x)と基板側放射モードの界分布E(x)の重ね合わせで表そうとすると、aIN+a=0かつaIN+a=aINが成り立たなければならない。これより、次式が得られる。
【0040】
【数5】

【数6】

【0041】
GC10の領域(0<z<L)に一様な振幅分布で入射する光波の場合は、所定の振幅係数aを用いて、そのスペクトル成分aINは次式で表される。
【0042】
【数7】

【0043】
(モード結合方程式)
+Z方向伝搬導波モードをA(z)とし、−Z方向伝搬導波モードをB(z)とし、空気側及び基板側放射モードをそれぞれ、aνa(z)及びaνs(z)とする。伝搬導波モードA(z)及びB(z)のZ軸方向伝搬定数をそれぞれ、β及びβ(=−β)とし、グレーティングベクトルの大きさをKGC=2π/Λとする。モード結合方程式は以下のように表される。
【0044】
【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【0045】
ここで、パラメータiは、a(空気中)又はs(基板中)を示す。Eνi(x)及びE(x)はそれぞれ、放射モード及び導波モードの規格化電界である。また、ε、ω及びΔεはそれぞれ、真空中の誘電率、角周波数、GC10の構造を表す比誘電率である。数10の左辺の複合はZ軸方向波数βνの正負に対応する。2Δ=βν−(β−KGC)、2Δ=βν−(β+KGC)を導入すると、数8及び数9は以下のようにまとめられる。
【0046】
【数12】

【数13】

【数14】

【数15】

【数16】

【数17】

【0047】
(一般解)
次式のA’(z)及びB’(z)を導入する。
【0048】
【数18】

【数19】

【0049】
対象を0<z<Lに限定すると、数17よりS(s,L)=1であるから、数12及び数13は次式に変形される。
【0050】
【数20】

【数21】

【数22】

【0051】
数20〜数22は、A’(z)、B’(z)に関する非同次線形連立微分方程式である。その一般解は、
【数23】

として、κGC=κGC=αであることを用いると、次式のように書ける。
【0052】
【数24】

【数25】

【0053】
放射モード振幅は、数10をβνに関して積分して次式が得られる。
【0054】
【数26】

【数27】

【0055】
透過光パワーPsub及び反射光パワーPairはそれぞれ次式で与えられる。
【0056】
【数28】

【数29】

【0057】
構造から放散される全パワーをPtotalとすると、入射光のパワー透過率及びパワー反射率はそれぞれPsub/Ptotal及びPair/Ptotalで得られる。
【0058】
(境界条件の適用)
境界条件としてA(0)=1、A(0)/B(0)=rDRB、B(L)/A(L)=rDRBを導入すると、次式が得られる。
【0059】
【数30】

【数31】

【数32】

【0060】
従って、c、c、αEXは、次式で表される。
【0061】
【数33】

【数34】

【数35】

【数36】

【0062】
(計算例)
図5は、図1の波長選択フィルタ100の解析モデルから計算された反射スペクトル及び透過スペクトルを示すグラフである。図5のグラフが図4のFDTD法のシミュレーションの結果によく一致していることがわかる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の波長選択フィルタ100によれば、従来のGMRFよりも小さな面積で入射光と結合可能であり、高屈折率の材料を必要とせず、所望波長の光とそれ以外の波長の光とを別個に取り出すことができる波長選択フィルタを提供することができる。本実施形態の波長選択フィルタ100は、GC10の結合長は短くとも、大きな面積を有する従来技術のGMRFと同等の機能が期待できる。
【0064】
以上の説明では、導波コア2と、GC10及びDBR11,12とを異なる屈折率の材料により形成するとしたが、これらを同じ材料により形成してもよい。この場合、波長選択フィルタ100は、例えば、化学気相成長法などで導波コア2を基板1上に堆積し、その上にレジストを塗布して、マスク露光や電子ビーム直接描画露光などでレジストにグレーティングの凹凸パターンを形成し、そのパターンをドライエッチング等により導波路材質に転写するという方法で得ることができる。また、基板1上に導波コア2とGC10及びDBR11,12とを形成することに限定されるものではなく、導波コア2上にGC10及びDBR11,12を本実施形態の波長選択フィルタ100と同様に形成すれば、本実施形態の波長選択フィルタ100と同様の機能を実現することができる。
【0065】
第1の実施形態の変形例.
図14は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る波長選択フィルタ110の構成を示す断面図であり、図15は、図14のGC10の近傍の詳細構成を示す断面図である。本発明の実施形態は、入射光がGC10に垂直に入射される場合に限定されず、入射光は、GC10に垂直な方向から所定入射角を有して入射してもよい。
【0066】
本変形例の波長選択フィルタ110は、透明な誘電体材料から形成された基板1と、基板1上に形成された導波コア2と、さらに、導波コア2において導波コア2の−X方向の面からX軸方向に所定距離を有してそれぞれ形成されたGC10及びDBR11,12とを備える。本変形例の波長選択フィルタ110では、GC10は、導波コア2において導波コア2の−X方向の面からX軸方向に距離0を有して形成され(すなわち導波コア2の−X方向の面に形成され)、DBR11,12は、導波コア2において導波コア2の−X方向の面からX軸方向に、導波コア2の厚さと同じ距離Tcを有して形成される(すなわち導波コア2の+X方向の面に形成される)。DBR11は、GC10の−Z方向に位置するように、GC10との間に所定の位相調整区間p1を挟んで形成され、同様に、DBR12は、GC10の+Z方向に位置するように、GC10との間に所定の位相調整区間p2を挟んで形成される。
【0067】
本変形例の波長選択フィルタ110では、図16に示すように、導波コア2の表面に対して垂直な方向(−X方向)からZX面内で所定入射角θを有して(すなわち、DBR11の側に傾いた入射角θを有して)、入射光がGC10に入射する。GC10のグレーティングは、この入射角θと入射光のうちの所望波長の成分とに対応するグレーティング周期Λ3を有し、所望波長の成分を含む入射光がこの入射角θでGC10に入射したときに限って、導波光が励振される。ただし、本変形例の波長選択フィルタ110は、GC10に入射した入射光により、−Z方向及び+Z方向に伝搬する導波光のうちの一方(本変形例では+Z方向に伝搬する導波光)のみを励振するように構成されることを特徴とする。+Z方向に伝搬する導波光は、DBR12で反射されて−Z方向に伝搬し、この−Z方向に伝搬する導波光は、DBR11で反射されて再び+Z方向に伝搬する。本変形例では+Z方向に伝搬する導波光と−Z方向に伝搬する導波光とではその導波モードが異なり、その電界プロファイル(分布)も異なる。従って、導波コア2の屈折率分布を適切に設計し、導波コア2の−X方向の面からのGC10の距離を、−Z方向に伝搬する導波光の電界が0となる位置に合わせて決定すると、GC10に入射する入射光により−Z方向に伝搬する導波光が励振されることがなく、さらに、−Z方向に伝搬する導波光がGC10により回折されることで放射光が発生することもない。すなわち、導波コア2、GC10及びDBR11,12を上述のように構成した場合、GC10に入射する入射光により+Z方向に伝搬する導波光のみが励振され、さらに、+Z方向に伝搬する導波光のみがGC10により回折されて放射光になる。DBR11,12は、導波光を反射するために、導波コア2の−X方向の面と+X方向の面との間において、+Z方向に伝搬する導波光及び−Z方向に伝搬する導波光の両方の電界が十分な強度で存在する位置に形成される。従って、導波コア2の−X方向の面からのDBR11,12の距離は、導波コア2の−X方向の面からのGC10の距離とは異なる。本変形例の波長選択フィルタ110は、入射角θを有してGC10に入射した入射光によって動作するので、本変形例の波長選択フィルタ110におけるGC10のグレーティング周期Λ3は、第1の実施形態の波長選択フィルタ100におけるGC10のグレーティング周期Λとは異なる。本変形例の波長選択フィルタ110におけるDBR11,12のグレーティング周期Λ4は、+Z方向に伝搬する導波光と−Z方向に伝搬する導波光で導波モードが異なるため、第1の実施形態の波長選択フィルタ100におけるDBR11,12のグレーティング周期Λ/2とは異なる。GC10のグレーティングを形成する凹部及び凸部はそれぞれ、Z軸方向に約Λ3/2の長さを有し、DBR11,12のグレーティングを形成する凹部及び凸部はそれぞれ、Z軸方向に約Λ4/2の長さを有する。GC10とDBR11との間に形成された位相調整区間p1のZ軸方向の長さは、DBR11によって反射されて+Z方向に伝搬する導波光が、GC10に入射した入射光によって励振されて+Z方向に伝搬する導波光と同じ位相を有するように決定される。
【0068】
図16(a)は図14の波長選択フィルタ110に入射する入射光のうちの所望波長の成分を示し、図16(b)は図14の波長選択フィルタ110に入射する入射光のうちの所望波長以外の成分を示す概略図である。図16(a)及び(b)は図14及び図15と同様の断面図であるが、説明のためにハッチングを省略する。前述のように、入射光がGC10に入射したとき、入射光のうちの所望波長の成分は、+Z方向に伝搬する導波光のみを励振させる。+Z方向に伝搬する導波光は、GC10によって回折されることにより、−X方向の面及び+X方向の面からそれぞれ放射光を放射する。−X方向の面から放射される放射光は、導波コア2の表面に対して垂直な方向(−X方向)からZX面内で所定反射角θを有し、入射光に対する反射光となる。+X方向の面から放射される放射光は、GC10に入射して基板1の側に透過する透過光と逆位相を有するので、透過光と相殺する。一方、入射光がGC10に入射したとき、入射光のうちの所望波長以外の成分は、導波光を励振させることなく、そのまま基板1の側に透過する。このように、本変形例の波長選択フィルタ110は、入射光がGC10に入射したとき、入射光のうちの所望波長の成分を反射光として反射し、入射光のうちの所望波長以外の成分を透過光として透過させる。従って、本変形例の波長選択フィルタ110は、入射光を透過光と反射光に分離することでフィルタリングすることができる。
【0069】
なお、GC10及びDBR11,12の位置は、図14〜図16に示したように導波コア2の−X方向の面及び+X方向の面に限定されるものではなく、GC10が、−Z方向及び+Z方向に伝搬する導波光のうちの一方のみに結合し、DBR11,12が、−Z方向及び+Z方向に伝搬する導波光の両方に結合するのであれば、任意の位置に形成可能である。例えば、GC10が、導波コア2の+X方向の面に形成され、DBR11,12が、導波コア2の−X方向の面に形成されてもよく、GC10及びDBR11,12が、導波コア2の−X方向の面と+X方向の面との間の所定位置に形成されてもよい。導波コア2の厚さと屈折率分布は、GC10及びDBR11,12と導波光とのこのような結合を可能にするように決定される。
【0070】
以上説明したように、本変形例の波長選択フィルタ110によれば、入射光がGC10に垂直に入射される場合に限定されず、入射光がGC10に垂直な方向から所定入射角を有して入射する場合であっても、従来のGMRFよりも小さな面積で入射光と結合可能であり、高屈折率の材料を必要とせず、所望波長の光とそれ以外の波長の光とを別個に取り出すことができる波長選択フィルタを提供することができる。さらに、本変形例の波長選択フィルタ110によれば、GC10が、+Z方向に伝搬する導波光のみに結合するので、−Z方向に伝搬する導波光がGC10により回折されることで余分な角度に放射される放射光が発生することを抑制することができる。
【0071】
第2の実施形態.
図7は、本発明の第2の実施形態に係る波長選択フィルタ101の構成を示す断面図である。本実施形態の波長選択フィルタ101は、第1の実施形態におけるDBR11,12に代えて、金属ミラー21,22を備えたことを特徴とする。
【0072】
本実施形態の波長選択フィルタ101において、GC10は、第1の実施形態のGC10と同様に構成される。GC10の−Z方向に位置するように、金属ミラー21が、GC10との間に所定の位相調整区間p1を挟んで形成され、同様に、GC10の+Z方向に位置するように、金属ミラー22が、GC10との間に所定の位相調整区間p2を挟んで形成される。金属ミラー21,22は、例えば、複素屈折率n=1.44−j16.0のアルミニウムからなる。図7では、金属ミラー21,22を導波コア2の−Z方向の端部と+Z方向の端部に密着させるように示しているが、例えば、導波コア2(又は、導波コア2及び基板1)においてX軸方向の溝を形成して、この溝に金属材料(例えばアルミニウム)を流し込むことによって金属ミラー21,22を形成してもよい。本実施形態の波長選択フィルタ101によれば、第1の実施形態の波長選択フィルタ100に比較して、波長選択フィルタ101のZ軸方向のサイズを大幅に削減することができる。
【0073】
図8は、図7の波長選択フィルタ101に入射光が入射した場合の電界プロファイルを示す図である。図8は、1.5518μmの波長を有する入射光が入射したときの電界プロファイル(正規化された電界強度)である。図8は、図7と同じ断面の一部を、X軸方向とZ軸方向とで異なる縮尺で示す。導波コア2において、金属ミラー21,22(図示せず。)間の反射により、定在波が発生している。この定在波は、GC10のグレーティングを形成する凹部及び凸部の位置に応じて発生する。本実施形態の波長選択フィルタ101の反射率は、58%と計算された。
【0074】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態よりも波長選択フィルタ101のサイズを小さくすることができるが、波長選択フィルタ101の反射率は第1の実施形態の波長選択フィルタ100の方が良好である。従って、第1の実施形態でのDBRと、第2の実施形態での金属ミラーとを組み合わせてもよい。この場合、GC10の−Z方向と+Z方向のそれぞれにおいて、Z軸方向に短縮されたDBR及び金属ミラーを形成する。このような構成によれば、利用可能な基板面積に応じて、十分な反射率を達成する波長選択フィルタを実現することができる。
【0075】
第3の実施形態.
図9は、本発明の第3の実施形態に係る波長選択フィルタ102の構成を示す断面図である。反射スペクトルの消光比を高めるためには、所望波長以外での反射率を低減させることが有効である。そのためには、入射光が入射するGCの面に、例えば非特許文献6〜7に記載のような無反射構造(「moth-eye」構造ともいう。)を導入すればよい。例えば非特許文献7では、三角形の断面形状を有するグレーティングが高屈折率の薄いフィルムでコーティングされた構造を有するGMRFを開示している。本実施形態の波長選択フィルタ102は、第1の実施形態の波長選択フィルタ100における矩形断面形状を有するGC10に代えて、三角形の断面形状を有する無反射GC30を備えたことを特徴とする。三角形の断面形状を有することにより、屈折率境界に起因するフレネル反射を低減させることができる。屈折率1.5を有する媒質からの鏡面反射が4%程度であるのに対して、本実施形態の構造を採用することにより鏡面反射を原理的に0とすることが可能である。本実施形態の波長選択フィルタ102によれば、入射光のうちの所望波長の成分は、導波コア2における導波光が無反射GC30により回折されることにより、−X方向の放射光として放射される(すなわち、入射光に対する反射光となる)。入射光のうちの所望波長以外の成分は、無反射GC30を無反射で通過して、基板1の側に透過する。
【0076】
第4の実施形態.
図10は、本発明の第4の実施形態に係るフィルタ装置の構成を示す断面図である。GMRFは導波モードを利用するので、一般的には偏光方向に依存する。これは以上に説明した実施形態の波長選択フィルタ100〜102でも同じである。しかしながら、場合によっては、偏光方向に依存しない波長選択フィルタを提供することが望ましい。このため、本実施形態のフィルタ装置は、基板1の−X方向の面及び+X方向の面の両方に、第1の実施形態の波長選択フィルタ100と同様の2つの波長選択フィルタ103,104を形成したことを特徴とする。詳しくは、本実施形態のフィルタ装置は、基板1の−X方向の面において、導波コア2と、Z軸方向に凹凸が周期的に並んだGC10とを備え、基板1の+X方向の面において、導波コア3と、Y軸方向に凹凸が周期的に並んだGC13とを備える。GC10,13の凹凸の周期(グレーティング周期)は、互いに同じにする。GC10,13が上記の向きを有することにより、グレーティング周期に応じた所望波長を含む入射光がGC10に−X方向から入射したとき、導波コア2において、GC10のグレーティング周期に応じた所定の導波路内波長を有し、+Z方向及び−Z方向に伝搬する導波光(すなわち、図10の矢印d1の方向に伝搬する導波光及び矢印d2の方向に伝搬する導波光)が励振され、導波コア3において、GC13のグレーティング周期に応じた所定の導波路内波長を有し、+Y方向及び−Y方向に伝搬する導波光(すなわち、図10の矢印d1’の方向に伝搬する導波光及び矢印d2’の方向に伝搬する導波光)が励振される。図示の簡単化のために省略したが、GC10の−Z方向及び+Z方向には、第1の実施形態の波長選択フィルタ100と同様の位相調整区間及びDBRをそれぞれ形成し、GC13の−Y方向及び+Y方向にも、第1の実施形態の波長選択フィルタ100と同様の位相調整区間及びDBRをそれぞれ形成する必要がある。基板1及び導波コア2,3は、これらの位相調整区間及びDBRを支持するために十分なサイズを有するものとする。第2の実施形態と同様に、DBRに代えて金属ミラーを備えてもよい。また、第3の実施形態と同様に、矩形断面形状のGCに代えて三角形の断面形状を有する無反射GCを備えてもよい。本実施形態のフィルタ装置によれば、グレーティングの向きが互いに直交したGC10,13を備えたことにより、偏光方向に依存しないフィルタ装置を提供することができる。
【0077】
第5の実施形態.
図11は、本発明の第5の実施形態に係るフィルタ装置の構成を示す断面図である。本実施形態のフィルタ装置もまた、第4の実施形態のフィルタ装置と同様に偏光方向に依存しないフィルタ装置を提供する。このため、本実施形態のフィルタ装置は、導波コア2の−X方向の面及び+X方向の面の両方に、向きの異なるGCを形成したことを特徴とする。詳しくは、本実施形態のフィルタ装置は、導波コア2の−X方向の面において、Z軸方向に凹凸が周期的に並んだGC10を備え、導波コア2の+X方向の面(すなわち、基板1と導波コア2との間の層)において、Y軸方向に凹凸が周期的に並んだGC14を備える。導波コア2及びGC10が第1の波長選択フィルタ105として機能し、導波コア2及びGC14が第2の波長選択フィルタ106として機能する。GC10,14の凹凸の周期(グレーティング周期)は、互いに同じにする。GC10,14が上記の向きを有することにより、グレーティング周期に応じた所望波長を含む入射光がGC10に−X方向から入射したとき、導波コア2において、GC10のグレーティング周期に応じた所定の導波路内波長を有し、+Z方向及び−Z方向に伝搬する導波光(すなわち、図11の矢印d1の方向に伝搬する導波光及び矢印d2の方向に伝搬する導波光)が励振される一方、導波コア2において、GC14のグレーティング周期に応じた所定の導波路内波長を有し、+Y方向及び−Y方向に伝搬する導波光(すなわち、図11の矢印d1’の方向に伝搬する導波光及び矢印d2’の方向に伝搬する導波光)が励振される。図示の簡単化のために省略したが、GC10の−Z方向及び+Z方向には、第1の実施形態の波長選択フィルタ100と同様のDBRをそれぞれ形成し、GC14の−Y方向及び+Y方向にも、第1の実施形態の波長選択フィルタ100と同様のDBRをそれぞれ形成する必要がある。基板1及び導波コア2は、これらのDBRを支持するために十分なサイズを有するものとする。第2の実施形態と同様に、DBRに代えて金属ミラーを備えてもよい。また、第3の実施形態と同様に、矩形断面形状のGCに代えて三角形の断面形状を有する無反射GCを備えてもよい。本実施形態のフィルタ装置によれば、グレーティングの向きが互いに直交したGC10,14を備えたことにより、偏光方向に依存しないフィルタ装置を提供することができる。
【0078】
第6の実施形態.
図12は、本発明の第6の実施形態に係るフィルタ装置の構成を示す断面図である。ある周波数の光波について、同じ媒質であっても、TE波とTM波とで媒質の屈折率は異なり、従って媒質中の波長も異なる。このため、あるグレーティング周期を有するGCについて、TE波とTM波とでは反射スペクトル及び透過スペクトルが相違することになる。本実施形態のフィルタ装置は、直交偏光のそれぞれに対して同一波長で共鳴するように、異なるグレーティング周期を有する2つのGC10,15を導波コア2の−X方向の面及び+X方向の面に形成することを特徴とする。詳しくは、本実施形態のフィルタ装置は、導波コア2の−X方向の面において、グレーティング周期Λ1を有するGC10を備え、導波コア2の+X方向の面(すなわち、基板1と導波コア2との間の層)において、グレーティング周期Λ1とは異なるグレーティング周期Λ2を有するGC15を備える。導波コア2及びGC10が第1の波長選択フィルタ107として機能し、導波コア2及びGC15が第2の波長選択フィルタ108として機能する。GC10,15はいずれも、Z軸方向に凹凸が周期的に並ぶように形成される。図示の簡単化のために省略したが、GC10の−Z方向及び+Z方向には、第1の実施形態の波長選択フィルタ100と同様のDBRをそれぞれ形成し、GC15の−Z方向及び+Z方向にも、第1の実施形態の波長選択フィルタ100と同様のDBRをそれぞれ形成する必要がある。基板1及び導波コア2は、これらのDBRを支持するために十分なサイズを有するものとする。第2の実施形態と同様に、DBRに代えて金属ミラーを備えてもよい。また、第3の実施形態と同様に、矩形断面形状のGCに代えて三角形の断面形状を有する無反射GCを備えてもよい。本実施形態のフィルタ装置によれば、グレーティングの向きが平行で異なる周期のGC10,15を備えたことにより、偏光方向に依存しないフィルタ装置を提供することができる。
【0079】
第7の実施形態.
図13は、本発明の第7の実施形態に係るVCSELレーザ装置の構成を示す断面図である。VCSEL(垂直共振器面発光レーザ)は、例えば非特許文献5にも開示されている。本実施形態のVCSELレーザ装置は、第1の実施形態の波長選択フィルタ100と同様の波長選択フィルタ109を、レーザ光源40のための外部ミラーとして用いることを特徴とする。このとき、波長選択フィルタ109における偏光方向の依存性を利用して偏光制御したレーザ発振を得ることができる。レーザ光源40は、活性層41及び多層膜ミラー42を備え、活性層41で発生した光のうちの所定波長の成分は、多層膜ミラー42と波長選択フィルタ109との間で反射を繰り返すことにより共振する。この所定波長の成分は、第1の実施形態の波長選択フィルタ100と同様に、導波コア2において導波光を励振させる。DBR11,12のうちの一方(本実施形態ではDBR11)は、Z軸方向の長さを短縮することにより反射率を100%よりも低下させられている。本実施形態のVCSELレーザ装置は、そのレーザ出力として、DBR11の一端から導波光の一部を出力する。本実施形態のレーザ装置で用いる波長選択フィルタとして、第1の実施形態の波長選択フィルタ100に代えて、第3の実施形態の波長選択フィルタ102を用いてもよい。本実施形態のVCSELレーザ装置によれば、発生した光のうちの所定波長の成分のみを共振させ、この所定波長の成分のみを効果的に出力することができる。
【0080】
本発明の実施形態に係る波長選択フィルタ及びフィルタ装置は、従来技術に比較して以下のような特有の効果を有する。例えば特許文献1及び非特許文献5のグレーティングは高屈折率の材料を必要としているが、本発明の実施形態の波長選択フィルタ及びフィルタ装置は、そのような要求なしに高効率の結合を可能にする。また、例えば非特許文献4のGMRFは、GMRFと光ファイバの結合のためのレンズを必要としているが、本発明の実施形態の波長選択フィルタ及びフィルタ装置は、そのような要求なしに高効率の結合を可能にする。また、例えば非特許文献5のグレーティングは、基板にDBR反射層を形成しているが、本発明の実施形態の波長選択フィルタ及びフィルタ装置は、そのような構造を必要とせず、基板の側に透過光を透過させることができる。
【0081】
特許文献5のGCは、GCと、その両側に形成された2つのDBRとを備えているという点で、本発明の実施形態の波長選択フィルタと最も類似したものであるが、本発明の実施形態に係る波長選択フィルタは、以下のような特有の効果を有する。特許文献5のGCは、導波光と空間光を短い結合長で高効率結合することを目的とし、このため、基板には高反射率の材料を用いている。従って、特許文献5のGCは、基板の側から透過光を取り出すことができず、本発明の実施形態の波長選択フィルタのように入射光のうちの所望波長の成分とそれ以外の波長の成分とを別個に取り出すことができない。さらに、特許文献5のGCは、単に導波光と空間光とを結合することを目的としているので、その動作原理は、入射光のうちの所望波長の成分とそれ以外の波長の成分とを別個に取り出すことを目的とする本発明の実施形態の波長選択フィルタの動作原理とはまったく異なる。
【0082】
このように、本実施形態の波長選択フィルタによれば、従来のGMRFよりも小さな面積で入射光と結合可能であり、高屈折率の材料を必要とせず、所望波長の光とそれ以外の波長の光とを別個に取り出すことができる波長選択フィルタを提供することができる。
【0083】
本発明の実施形態の波長選択フィルタは、GCとDBRとを集積した新規な構成を備えたことにより、共振器集積導波モード共鳴フィルタ(CRIGF: Cavity-resonator-integrated Guided-mode-resonance Filter)と呼ぶことができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の波長選択フィルタによれば、従来のGMRFよりも小さな面積で入射光と結合可能であり、高屈折率の材料を必要とせず、所望波長の光とそれ以外の波長の光とを別個に取り出すことができる波長選択フィルタを提供することができる。さらに、そのような波長選択フィルタを備えたフィルタ装置及びレーザ装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…基板、
2,3…導波コア、
10,13,14,15…グレーティングカップラ(GC)、
11,12…DBR、
p1,p2…位相調整区間、
21,22…金属ミラー、
30…無反射GC、
40…レーザ光源、
41…活性層、
42…多層膜ミラー、
100〜110…波長選択フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長選択フィルタであって、上記波長選択フィルタは、
互いに逆方向の第1及び第2の導波方向を有する導波路であって、上記第1の導波方向に沿って延在しかつ互いに対向する第1及び第2の面の間に設けられた導波路と、
上記第1の導波方向に沿って順に、上記導波路に設けられた第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段とを備え、
上記回折手段は、上記第1の導波方向に沿ってグレーティング周期を有し、
上記回折手段は、上記回折手段のグレーティング周期に対応する第1の波長の光を含む入射光が上記回折手段に入射したとき、上記導波路において、上記第1の導波方向に伝搬する導波光を励振し、上記回折手段は、上記第1の導波方向に伝搬する導波光を回折して上記導波路の第1及び第2の面から放射させ、
上記第2の反射手段は、上記第1の導波方向に伝搬した導波光を上記第2の伝搬方向に反射し、
上記第1の反射手段は、上記第2の導波方向に伝搬した導波光を上記第1の伝搬方向に反射し、
上記第1の位相調整区間は、上記第2の伝搬方向に伝搬する導波光が上記第1の反射手段によって反射されたとき、当該反射された導波光が、上記回折手段に入射した入射光により励振された上記第1の伝搬方向に伝搬する導波光の位相と同じ位相を有するように設定された長さを有し、
上記第1の波長の光及び上記第1の波長以外の波長の光を含む入射光が上記回折手段に入射したとき、
上記第1の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第1の面から放射させることにより、上記回折手段に入射した上記第1の波長の光を反射し、
上記第1の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第2の面から放射させることにより、上記回折手段に入射して上記導波路を透過した上記第1の波長の光を相殺し、
上記第1の波長以外の波長の光は上記導波路を透過することを特徴とする波長選択フィルタ。
【請求項2】
上記入射光は、上記導波路の第1の面に対して垂直になるように上記回折手段に入射し、
上記回折手段は、上記回折手段のグレーティング周期に対応する第1の波長の光を含む入射光が上記回折手段に入射したとき、上記導波路において、上記第1の導波方向に伝搬する導波光と上記第2の導波方向に伝搬する導波光とを励振し、上記回折手段は、上記第1の導波方向に伝搬する導波光を回折して上記導波路の第1及び第2の面から放射させ、上記第2の導波方向に伝搬する導波光を回折して上記導波路の第1及び第2の面から放射させ、
上記第2の位相調整区間は、上記第1の伝搬方向に伝搬する導波光が上記第2の反射手段によって反射されたとき、当該反射された導波光が、上記回折手段に入射した入射光により励振された上記第2の伝搬方向に伝搬する導波光の位相と同じ位相を有するように設定された長さを有し、
上記第1の波長の光及び上記第1の波長以外の波長の光を含む入射光が上記回折手段に入射したとき、
上記第1の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第1の面から放射させ、かつ上記第2の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第1の面から放射させることにより、上記回折手段に入射した上記第1の波長の光を反射し、
上記第1の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第2の面から放射させ、かつ上記第2の導波方向に伝搬する導波光を上記回折手段により回折して上記導波路の第2の面から放射させることにより、上記回折手段に入射して上記導波路を透過した上記第1の波長の光を相殺し、
上記第1の波長以外の波長の光は上記導波路を透過することを特徴とする請求項1記載の波長選択フィルタ。
【請求項3】
上記第1の反射手段及び上記第2の反射手段のそれぞれは、上記第1の導波方向に沿ってグレーティング周期を有する分布ブラッグ反射器であることを特徴とする請求項1又は2記載の波長選択フィルタ。
【請求項4】
上記第1の反射手段及び上記第2の反射手段のそれぞれは、金属ミラーであることを特徴とする請求項1又は2記載の波長選択フィルタ。
【請求項5】
上記回折手段は無反射構造を有することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の波長選択フィルタ。
【請求項6】
上記入射光は、上記導波路の第1の面に対して垂直な方向から上記第1の反射手段の側に傾いた所定入射角を有して上記回折手段に入射し、
上記回折手段は、上記第1の導波方向に伝搬する導波光と結合するように、かつ上記第2の導波方向に伝搬する導波光と結合しないように、上記導波路の第1の面及び第2の面の間において上記導波路の第1の面から所定距離を有して設けられ、
上記第1及び第2の反射手段は、上記第1の導波方向に伝搬する導波光及び上記第2の導波方向に伝搬する導波光の両方と結合するように、上記導波路の第1の面及び第2の面の間において上記導波路の第1の面から所定距離を有して設けられることを特徴とする請求項1記載の波長選択フィルタ。
【請求項7】
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の波長選択フィルタを2つ備えたフィルタ装置であって、
上記フィルタ装置は、互いに対向しかつ互いに平行な第1及び第2の面を有する基板をさらに備え、
上記基板の第1の面に、上記2つの波長選択フィルタのうちの第1の波長選択フィルタが形成され、
上記基板の第2の面に、上記2つの波長選択フィルタのうちの第2の波長選択フィルタが形成され、上記第2の波長選択フィルタの導波路の第1及び第2の導波方向は、上記基板の第2の面に平行な平面内にあって、上記第1の波長選択フィルタの導波路の第1及び第2の導波方向と直交することを特徴とするフィルタ装置。
【請求項8】
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の波長選択フィルタを2つ備えたフィルタ装置であって、
上記フィルタ装置は、
互いに対向しかつ互いに平行な第1及び第2の面の間に設けられた1つの共通の導波路を備え、
上記導波路の第1の面において、上記2つの波長選択フィルタのうちの第1の波長選択フィルタの第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段を備え、
上記導波路の第2の面において、上記2つの波長選択フィルタのうちの第2の波長選択フィルタの第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段を備え、
上記第2の波長選択フィルタの導波路の第1及び第2の導波方向は、上記導波路の第1及び第2の面に平行な平面内にあって、上記第1の波長選択フィルタの導波路の第1及び第2の導波方向と直交することを特徴とするフィルタ装置。
【請求項9】
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の波長選択フィルタを2つ備えたフィルタ装置であって、
上記フィルタ装置は、
互いに対向しかつ互いに平行な第1及び第2の面の間に設けられた1つの共通の導波路を備え、
上記導波路の第1の面において、上記2つの波長選択フィルタのうちの第1の波長選択フィルタの第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段を備え、
上記導波路の第2の面において、上記2つの波長選択フィルタのうちの第2の波長選択フィルタの第1の反射手段、第1の位相調整区間、回折手段、第2の位相調整区間、及び第2の反射手段を備え、
上記第2の波長選択フィルタの回折手段は、上記第1の導波方向に沿って、上記第1の波長選択フィルタの回折手段のグレーティング周期とは異なるグレーティング周期を有することを特徴とするフィルタ装置。
【請求項10】
請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の波長選択フィルタを外部ミラーとして備えたことを特徴とするレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−98513(P2012−98513A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246087(P2010−246087)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】