説明

泥水,泥土の処理方法および処理システム

【課題】地盤改良等の土木工事現場において発生する泥土や電解質を含んだ高濃度の排泥水を、従来と比較して低コストで効率的に処理すること。
【解決手段】土木工事現場において発生する泥水を、希釈することなく貯泥槽3から混合装置11へ送る。同時に、所定の分散液型凝集剤を希釈することなく原液の状態のまま混合装置11へ送出し、泥水に対して添加,混合する。この分散液型凝集剤に対しては、ノニオン性、アニオン性、及びカチオン性群から選ばれた少なくとも1種以上の界面活性物質が、工場における製造工程において(或いは凝集処理前に現場において)予め添加混合されている。このような特徴によれば、処理すべき泥水の容積を増加させることなく,短時問で凝集させ、フロックを形成させることが可能になる。その結果、たとえば、脱水機械の大幅の効率アップを図ることが可能になるとともに、コスト縮減を図ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良等の地下土木工事現場から発生する泥土や、アルカリ性物質等の電解質を含んだ高濃度の排泥水に対して、所定の油中水型エマルジョン及び/又は塩水溶液中分散液からなる凝集剤(以下、両物質を総称して「分散液型凝集剤」という。)と金属塩類とを用いて処理を施し、さらに固液分離処理を施すことによって、該高含水土等の減容化と脱水処理後のケーキ及び処理水を再使用する技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、以下に述べる第1及び第2の背景に鑑みて提供される。
【0003】
[第1の背景]
地盤改良等の地下土木工事現場から発生する泥土や、アルカリ性物質等の電解質を含んだ高濃度の排泥水は、現行では、主に下記(一)〜(三)に挙げる方法で処分されている。
(一) なんら処理を施すことなく、排出された状態のままでバキューム車で廃棄物処分場へ運搬して廃棄する。
(二) 排出された泥水、泥土、高含水土を沈澱させて、上澄み液と土砂に分離する。そして、分離された土砂を固結した上で、廃棄物処分場へ運搬して廃棄する。
(三) 排出された泥水、泥土、高含水土に凝集剤(有機高分子凝集剤)を添加混合し、さらに、重力を利用して上澄み水と土砂に自然分離する。そして、分離された固形分については、廃棄物処分場へ運搬して廃棄する。また、分離された上澄み液については、工事用水として再利用するか、或いはpH値を適宜調整した上で放流する。
【0004】
しかしながら、従来より行われていた上記(一)〜(三)に挙げる方法には、以下に述べるような問題点があった。
【0005】
上記(一)の方法においては、処理すべき量が大量にある場合には、経済性の点で問題がある。しかも、排泥水を大量に処分することとなると、処分地を確保することが難しく、また、環境負荷の観点より問題がある。
【0006】
上記(二)の方法は、高含水土に細粒分が多量に含まれている場合には、沈澱・分離処理(上澄み液と土砂に分離するための処理)を行うことができない。仮に、沈澱・分離処理を施すことが可能であっても、大容量の沈殿槽が必要であるし、高含水土の減量効果も少ない。
【0007】
上記(三)の方法においては、高含水土等に添加混合される有機高分子凝集剤は、その効果を最大限発揮させるために、清水で予め希釈した上で使用されるようになっている。そして、希釈する際には、清水に対して0.1〜0.2%(重量)程度の濃度に設定されるようになっている。ところが、このような方法では、希釈に用いる清水を必要量確保するための費用が余分に必要となるため、施工コストの点において問題がある。しかも、清水で希釈することによって全体の処理量が増大することから、負担が大きくなって脱水機械の効果,効率が低下するだけでなく、処理コストの増大を招くという問題もある。
【0008】
[第2の背景]
種々の工事現場では、高分子凝集剤を用いた自然脱水処理や、脱水機械を利用した機械式脱水処理が行われている。
【0009】
ところが、セメント等の電解質を含んだ泥水や高含水については、未だ、処理剤および脱水機械に関する有効な技術は提供されていない。そのため、セメント等の電解質を含んだ高含水泥土等に対して脱水処理等を施した上で再利用するということは、ほとんど行われていない。
【0010】
しかしながら、産業廃棄物の処分地が減少しつつある現状下では、泥水や高含水に対する処理コストも高価となってきているため、泥水および高含水土の処理後の再利用が強く望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、地盤改良等の土木工事現場において大量に発生する泥土や電解質を含んだ高濃度の排泥水を、従来と比較して低コストで、しかも効率的に処理することができる方法およびシステムを提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、産業廃棄物の処分地が減少しつつある状況に鑑みて、土木工事現場において排出される泥水や高含水土に対して所定の処理を施した上で、その全部又は一部を再利用し、土木工事全体の施工コストを低減させるとともに、環境に対する負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的は、下記(1)〜(6)に記載の本発明によって達成される。
【0014】
(1) 土木工事現場において発生する泥土及び電解質を含んだ泥水の少なくとも何れか一方から成る被処理物を処理する際に用いられる凝集剤であって、
ノニオン性、アニオン性、及びカチオン性群から選ばれた少なくとも1種以上の界面活性物質が、工場における製造工程において予め添加混合されているか、又は前記被処理物に対する凝集処理前に前記土木工事現場において添加混合されている油中水型エマルジョン及び/又は塩水溶液中分散液からなることを特徴とする分散液型凝集剤。
【0015】
(2) 土木工事現場において発生する泥土及び電解質を含んだ泥水の少なくとも何れか一方から成る被処理物を希釈することなく、上記(1)記載の分散液型凝集剤を用いて処理するための方法であって、
前記分散液型凝集剤を希釈することなく原液の状態のまま、前記被処理物に対して添加,混合して、凝集反応を生じさせる工程を含むことを特徴とする泥水,泥土の処理方法。
【0016】
(3) さらに、前記分散液型凝集剤の添加,混合工程を経て凝集,フロック化した前記被処理物に対して、金属または塩基性基と置換し得る水素原子を有する化合物である酸に溶解した金属塩類を添加,混合する工程を含んでおり、
前記金属塩類を添加,混合することによって、前記被処理物のpH値を低下させると共に、凝集フロック中の分散液型凝集剤に吸着・吸水した水を疎水化させることを特徴とする上記(2)記載の泥水,泥土の処理方法。
【0017】
(4) さらに、前記金属塩類の添加,混合工程の後において、前記被処理物に対して脱水処理を施すことによって、当該被処理物をケーキと水分とに分離する工程を含むことを特徴とする上記(3)記載の泥水,泥土の処理方法。
【0018】
(5) さらに、前記脱水工程を経て得られた前記ケーキの全部又は一部に対して、
そのままの状態で廃棄する処理、中性固化処理を施した上で廃棄する処理、及び急結剤かポーラスな無機鉱物を用いて改良した上で土構造材料として再利用する処理、の何れかの処理を選択的に施す工程を含むことを特徴とする上記(4)記載の泥水,泥土の処理方法。
【0019】
(6) 上記(1)記載の分散液型凝集剤を用いて、土木工事現場において発生する泥土及び電解質を含んだ泥水の少なくとも何れか一方から成る被処理物を処理するためのシステムであって、
前記分散液型凝集剤を収容する第1の容器と、
金属または塩基性基と置換し得る水素原子を有する化合物である酸に溶解した金属塩類を収容する第2の容器と、
前記土木工事現場に設けられた貯泥手段と前記第1の容器に接続されており、当該貯泥手段から送給される前記被処理物と、前記第1の容器から送給される前記分散液型凝集剤とを混合するための混合装置と、
前記混合装置と前記第2の容器に接続されており、当該混合装置から送給される混合済み前記被処理物と、前記第2の容器から送給される前記金属塩類とを混合し攪拌するための攪拌装置と、
前記攪拌装置に接続されており、当該攪拌装置から送給される攪拌済み前記被処理物に対して、脱水処理を施すための脱水装置と、を有しており、
前記被処理物は、希釈することなく前記貯泥手段から前記混合装置へ送給されて混合処理に供されるようになっており、
前記分散液型凝集剤は、希釈することなく原液の状態のまま前記第1の容器から前記混合装置へ送給されて、前記被処理物に対して添加,混合されるようになっていることを特徴とする泥水,泥土の処理システム。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明によれば、地盤改良等の土木工事現場において排出された排泥水等は、排出された状態のままで(すなわち希釈することなく)、所定の分散液型凝集剤が加えられるようになっている。しかも、この分散液型凝集剤は、原液の状態のままで(すなわち希釈することなく)、排泥水等に対して少量だけ添加されるようになっている。そのため、このような特徴によれば、処理すべき泥水の容積を増加させることなく,短時問で凝集させ、フロックを形成させることが可能になる。その結果、たとえば、脱水機械の大幅の効率アップを図ることが可能になるとともに、コスト縮減を図ることが可能になる等の格別の効果が達成される。
【0021】
また、本発明において用いられる分散液型凝集剤には、予め、工場における製造工程において(或いは、排泥水等に対する凝集処理前に工事現場において)一又は二以上の所定種類の界面活性剤が添加されるようになっている。これにより、添加する分散液型凝集剤を少量で、かつ短時間で泥水等に対して混合、溶解させることができる。
【0022】
また、本発明によれば、凝集された排泥水等には、疎水性を向上させるために、所定の金属塩類が添加されるようになっている。これにより、当該排泥水等を、短時問で水分とケーキに固液分離することができるので、効率的に排泥水の減量化を図ることが可能になる。
【0023】
また固液分離工程で得られたケーキに対して中性固化処理等を施した場合には、土構造材料等への再利用が可能となるので、廃棄コストの削減を図ることができる等の格別の効果も達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面および表に基づいて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
[排泥水処理システムの構成]
まず最初に、図1に基づいて、排泥水処理を実施する上で利用される排泥水処理システムの概略構成を説明する。図1は、排泥水処理システム1の概略構成を示す図である。
【0026】
本発明において用いられる排泥水処理システム(泥水,泥土の処理システム)1は、主として、混合装置11と、攪拌装置13と、脱水装置15と、分散液型凝集剤を収容する第1の容器21と、金属塩類を収容する第2の容器22と、から構成されている。
【0027】
この排泥水処理システム1において、混合装置11は、ホースを介して、地盤改良工事等の土木工事現場に設けられた貯泥手段(たとえば貯泥槽、ピット等)に接続されている。当該貯泥手段に接続する混合装置の種類は特に限定されないが、たとえば公知のスタティックミキサー等を用いることが可能である。
【0028】
貯泥手段には、地盤改良工事等の実施に伴って排出される泥水や泥土(高含水土を含む)が貯留されるようになっている。以下、貯泥手段の一例として「貯泥槽」を挙げ、また、本発明によって処理されるべき被処理物の一例として「泥水」を挙げ、本発明に関わる実施形態を説明する。
【0029】
混合装置11と貯泥槽3との間のホースの途中には、貯泥槽3内の排泥水を混合装置11へ向けて送出するためのポンプ(図示せず)と、当該ポンプによって送出される排泥水の流量を調整するための第1の流量管理装置31とが設けられている。
【0030】
また、混合装置11には、貯泥槽3に加えて、第1の容器21がホースを介して接続されている。当該第1の容器21には、混合装置11へ向けて送出されるようになっている分散液型凝集剤(詳細は後述)が収容されている。混合装置11と第1の容器21との間のホースの途中には、混合装置11へ向けて送出される分散液型凝集剤の流量を調整するための第2の流量管理装置32が設けられている。
【0031】
上記分散液型凝集剤のうち油中水型エマルジョンに対しては、ノニオン性、アニオン性、及びカチオン性群から選ばれた少なくとも1種以上の界面活性物質が、工場内における製造工程において(或いは、排泥水に対する凝集処理前に工事現場において)予め添加混合されるようになっている。この界面活性物質の添加は、油中水型エマルジョンを少量で、かつ短時間で排泥水に対して混合、溶解させることを目的として行われる。界面活性物質は、低HLB(ハイドロフィリック・リポフィリック・バランス)界面活性剤である。具体的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレートなどが好ましい。また塩水溶液中分散液は、そのままの状態で水に溶解することができる。
【0032】
攪拌装置13は、ホースを介して混合装置11に接続されている。また、当該攪拌装置13には、第2の容器22がホースを介して接続されている。当該第2の容器22には、攪拌装置13へ向けて送出されるようになっている金属塩類(詳細は後述)が収容されている。攪拌装置13と第2の容器22との間のホースの途中には、攪拌装置13へ向けて送出される金属塩類の流量を調整するための第3の流量管理装置33が設けられている。なお、攪拌装置13の種類は特に限定されず、一般的に用いられているミキサーを用いることが可能である。
【0033】
脱水装置(固液分離装置)15は、ホースを介して上記攪拌装置13に接続されている。当該脱水装置の種類は特に限定されず、たとえば公知のスクリュープレス機を用いることが可能である。
【0034】
[被処理物に対する処理の流れ]
次に、図1及び図2に基づいて、上述した排泥水処理システム1を利用した排泥水処理の流れについて詳細に説明する。図2は、図1に示す排泥水処理システム1を利用した排泥水処理の流れを示すフローチャートである。
【0035】
地盤改良工事等の土木工事で排出された排泥水は、まず、貯泥槽3に貯留される。貯泥槽3に貯留された排泥水は、希釈することなく、そのままの状態でポンプによって混合装置11へ送出する(ステップS1)。このプロセスにおいて、排泥水は、第1の流量管埋装置31を経由して、流量を管理されながら送出される。
【0036】
同時に、混合装置11に対しては、第2の流量管埋装置32を介して、第1の容器21から所定量(少量)の分散液型凝集剤が、従来のように希釈されることなく、原液状態のまま送出される(ステップS3)。そして、当該混合装置11において、原液の分散液型凝集剤と排泥水とを混合する(ステップS5)。これにより、排泥水において、短時間で凝集,フロック化が行われる。
なお、混合すべき排泥水と分散液型凝集剤との割合(混合比)は特に限定されないが、一例を挙げれば、排泥水1m3当りの分散液型凝集剤の含有量が約1〜5kg程度になるように添加,混合する。
【0037】
混合装置11において混合した後に、凝集,フロック化した一次処理物(排泥水と分散液型凝集剤とを混合したもの)を、攪拌装置13へ送出する。同時に、攪拌装置13に対して、第3の流量管埋装置33を介して、第2の容器22から所定量の金属塩類を送出する(ステップS7)。そして、当該攪拌装置において、一次処理物と金属塩類とを混合,攪拌する(ステップS9)。そして、この金属塩類の添加によって、pH値が低下し、さらに、凝集フロック中の水が疎水化する(疎水性が向上する)。
【0038】
続いて、二次処理物(上記一次処理物に対して金属塩類を混合,攪拌したもの)を、攪拌装置13から脱水装置15へ送出する。当該脱水装置15においては、疎水化されたフロックが脱水される。そして、脱水処理を経て、二次処理物は水分とケーキに固液分離される(ステップS11)。
【0039】
分離することによって得られた「ケーキ」の全部又は一部については、たとえば下記(a)〜(c)の何れかの処分または利用に選択的に供される。
(a) 分離することによって得られたケーキを、そのままの状態で廃棄処分する。
(b) 中性固化処理を施した上で廃棄処分する。
(c) 急結剤かポーラスな無機鉱物を用いて改良し、土構造材料等として再利用する。
【0040】
一方、分離することによって得られた「水分」の全部又は一部については、たとえば下記(d)又は(e)の処理に供される。
(d) 工事用水として再利用する。
(e) pH値を適宜調整した上で放流する。
【0041】
[分散液型凝集剤の詳細]
次に、排泥水に対して添加される分散液型凝集剤の詳細について説明する。
【0042】
本発明において用いられる分散液型凝集剤は、電気的な接着力を持つ有機系高分子を主成分とする材料である。この凝集剤は、分子量が100万以上(好ましくは200万以上)であり、イオン化濃度が0〜100モル%であるアクリル系高分子から成る分散粒子径が100μm以下の油中水型エマルジョンあるいは塩水溶液中分散液の形態を有する高分子凝集剤である。
【0043】
なお、本発明で用いる分散液型凝集剤については、粘度が高すぎると、混練が不均一となってしまう。
一方において、従来の凝集処理にみられるように、高分子凝集剤を清水で希釈した上で使用することとすると、排泥水に多量の凝集剤液を加える結果、脱水する排泥水処理量が極めて多くなって、脱水装置に対する負荷が大きくなる等の問題がある。
そこで、本発明において用いられるアクリル系高分子凝集剤分散液は、1万mPas以下の粘度を有しているとともに、10%以上の濃度を有していることが好ましい。このようにアクリル系高分子凝集剤分散液を構成した場合には、低粘度の分散型高分子凝集剤分散液を希釈することなく、高濃度の原液のまま添加することが可能になる。
【0044】
次に、具体的な高分子について説明すると、ノニオン性としてはポリアクリルアミド、アニオン性としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸、ビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸などの単独重合体あるいはアクリルアミドとの共重合体などが挙げられる。
【0045】
また、カチオン性としては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイル2−ヒドロキシプロピルリド、メタアクリロイル2−ヒドロキシプロピルリドなどの単独重合体あるいはアクリルアミドとの共重合休などが挙げられる。
【0046】
かかる分散液の製造法は公知であり、具体的には、油中水型エマルジョンは、特公昭34−10644号公報、特公昭52−39417号公報および特公昭55−45783号公報に記載されている。また、塩水溶液中分散液の製造法は、特公昭46−14907号公報および特開昭62−20511号公報に記載されている。
【0047】
なお、市販されている油中水型エマルジョンの場合には、通常、清水に溶解するように界面活性剤の量が調整されているが、粘土分、コロイド分が多く含まれる排泥には溶解しにくい。一方、本発明の場合には、界面活性剤の種類、量が適宜調整されているので、迅速に溶解して排泥を速やかに凝集させることができるようになっている。界面活性剤の量を具体的に挙げると、転相剤と呼ばれる界面活性剤を含む全界面活性剤の量が、油中水型エマルジョンに対して約0.5%〜30%程度が好ましい。
【0048】
上述した分散液型凝集剤は、高含水土と混合した場合、高含水土中の土粒子を極めて短時間で凝集させるが、この際高分子が持つ親水基が高含水土中の自由水を土粒子問に強固に保持してしまい、水の分離が少なくなるが、ここに酸に溶解した金属塩類を添加すると疎水化され、水の分離が促進されて分離水量が多くなる。
【0049】
[金属塩類の詳細]
そして、金属塩類の詳細について説明すると、具体的な金属塩類としでは、ボリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、硫酸第一鉄,塩化第二鉄、塩化カルシウム等を挙げることができる。
【0050】
[実施例]
次に、凝集が最も困難と考えられる高アルカリ性のジエットグラウト工法(地盤改良工法)により発生する排泥、及び高含水土に適用した室内配合試験例を、下記表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
上記表1に示されるように、ジエットグラウト工法により発生する高含水土等であっても、本発明に係る処理を施すことによって、当該高含水土等を良好に水分とケーキに分離し得ることが確認された。
【0053】
[本発明によって達成される優れた効果]
上述した本発明によれば、土木工事現場において排出された排泥水等は、排出された状態のままで(すなわち希釈することなく)、所定の分散液型凝集剤が加えられるようになっている。しかも、この分散液型凝集剤は、原液の状態のままで(すなわち希釈することなく)、排泥水等に対して少量だけ添加されるようになっている。そのため、このような特徴によれば、処理すべき泥水の容積を増加させることなく,短時問で凝集させ、フロックを形成させることが可能になる。その結果、たとえば、脱水機械の大幅の効率アップを図ることが可能になるとともに、コスト縮減を図ることが可能になる等の格別の効果が達成される。
【0054】
また、本発明において用いられる分散液型凝集剤には、予め、工場における製造工程において(或いは、排泥水等に対する凝集処理前に工事現場において)一又は二以上の所定種類の界面活性剤が添加されるようになっている。これにより、添加する分散液型凝集剤を少量で、かつ短時間で泥水等に対して混合、溶解させることができる。
【0055】
また、本発明によれば、凝集された排泥水等には、疎水性を向上させるために、所定の金属塩類が添加されるようになっている。これにより、当該排泥水等を、短時問で水分とケーキに固液分離することができるので、効率的に排泥水の減量化を図ることが可能になる。
【0056】
また固液分離工程で得られたケーキに対して中性固化処理等を施した場合には、土構造材料等への再利用が可能となるので、廃棄コストの削減を図ることができる等の格別の効果も達成される。
【0057】
以上、本発明に係る泥水,泥土の処理方法および処理システムについて詳細に説明した。なお、本発明の構成は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において種々の改変が可能であることに留意されたい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、地盤改良等の土木工事現場において大量に発生する泥土や電解質を含んだ高濃度の排泥水を、従来と比較して低コストで、しかも効率的に処理することができる方法およびシステムを提供するのに好適に用いられる。
【0059】
また、本発明は、産業廃棄物の処分地が減少しつつある状況に鑑みて、土木工事現場において排出される泥水や高含水土に対して所定の処理を施した上で、その全部又は一部を再利用し、土木工事全体の施工コストを低減させるとともに、環境に対する負荷を軽減するのに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】排泥水処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す排泥水処理システムを利用した排泥水処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 排泥水処理システム(泥水,泥土の処理システム)
3 貯泥槽(貯泥手段)
11 混合装置
13 攪拌装置
15 脱水装置
21 第1の容器
22 第2の容器
31 第1の流量管理装置
32 第2の流量管理装置
33 第3の流量管理装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木工事現場において発生する泥土及び電解質を含んだ泥水の少なくとも何れか一方から成る被処理物を処理する際に用いられる凝集剤であって、
ノニオン性、アニオン性、及びカチオン性群から選ばれた少なくとも1種以上の界面活性物質が、工場における製造工程において予め添加混合されているか、又は前記被処理物に対する凝集処理前に前記土木工事現場において添加混合されている油中水型エマルジョン及び/又は塩水溶液中分散液からなることを特徴とする分散液型凝集剤。
【請求項2】
土木工事現場において発生する泥土及び電解質を含んだ泥水の少なくとも何れか一方から成る被処理物を希釈することなく、請求項1記載の分散液型凝集剤を用いて処理するための方法であって、
前記分散液型凝集剤を希釈することなく原液の状態のまま、前記被処理物に対して添加,混合して、凝集反応を生じさせる工程を含むことを特徴とする泥水,泥土の処理方法。
【請求項3】
さらに、
前記分散液型凝集剤の添加,混合工程を経て凝集,フロック化した前記被処理物に対して、金属または塩基性基と置換し得る水素原子を有する化合物である酸に溶解した金属塩類を添加,混合する工程を含んでおり、
前記金属塩類を添加,混合することによって、前記被処理物のpH値を低下させると共に、凝集フロック中の分散液型凝集剤に吸着・吸水した水を疎水化させることを特徴とする請求項2記載の泥水,泥土の処理方法。
【請求項4】
さらに、
前記金属塩類の添加,混合工程の後において、前記被処理物に対して脱水処理を施すことによって、当該被処理物をケーキと水分とに分離する工程を含むことを特徴とする請求項3記載の泥水,泥土の処理方法。
【請求項5】
さらに、
前記脱水工程を経て得られた前記ケーキの全部又は一部に対して、
そのままの状態で廃棄する処理、中性固化処理を施した上で廃棄する処理、及び急結剤かポーラスな無機鉱物を用いて改良した上で土構造材料として再利用する処理、の何れかの処理を選択的に施す工程を含むことを特徴とする請求項4記載の泥水,泥土の処理方法。
【請求項6】
請求項1記載の分散液型凝集剤を用いて、土木工事現場において発生する泥土及び電解質を含んだ泥水の少なくとも何れか一方から成る被処理物を処理するためのシステムであって、
前記分散液型凝集剤を収容する第1の容器と、
金属または塩基性基と置換し得る水素原子を有する化合物である酸に溶解した金属塩類を収容する第2の容器と、
前記土木工事現場に設けられた貯泥手段と前記第1の容器に接続されており、当該貯泥手段から送給される前記被処理物と、前記第1の容器から送給される前記分散液型凝集剤とを混合するための混合装置と、
前記混合装置と前記第2の容器に接続されており、当該混合装置から送給される混合済み前記被処理物と、前記第2の容器から送給される前記金属塩類とを混合し攪拌するための攪拌装置と、
前記攪拌装置に接続されており、当該攪拌装置から送給される攪拌済み前記被処理物に対して、脱水処理を施すための脱水装置と、を有しており、
前記被処理物は、希釈することなく前記貯泥手段から前記混合装置へ送給されて混合処理に供されるようになっており、
前記分散液型凝集剤は、希釈することなく原液の状態のまま前記第1の容器から前記混合装置へ送給されて、前記被処理物に対して添加,混合されるようになっていることを特徴とする泥水,泥土の処理システム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−784(P2006−784A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181526(P2004−181526)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(594010559)株式会社イナバ (1)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】