説明

注視判定装置

【課題】運転者の注視対象を自動的かつ的確に判定する。
【解決手段】注視判定装置10は、車両のフロントガラス両端に設けられたピラーよりも左右の外側方向の所定範囲内に対応する顔向き角度の頻度分布を検出する頻度分布検出部22と、所定範囲をピラーから左右のドアミラーに向かう方向の近傍でピラーに接する第1領域と該第1領域よりも左右の外側方向の第2領域とに区分し、頻度分布の検出結果を各第1領域及び第2領域毎に記憶する頻度分布記憶部23と、第1領域にて頻度分布が最大となる顔向き角度と第2領域にて頻度分布が最大となる顔向き角度との中間角度を検出する中間角度検出部25と、顔向き角度が各ピラーに対応する角度と中間角度との間の角度範囲に存在する場合には、注視対象がドアミラーであると判定する注視対象判定部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注視判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば運転者の顔を撮影した撮影画像上において、運転者が左右のドアミラー又はルームミラーを見たときの眼の位置を検出し、検出結果に基づき脇見許容時間に応じた所定の画像領域の左右端を決定する脇見検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、例えば運転者により左右のアウターミラーが操作されているときの運転者の顔向き角度を予め検出して記憶しておき、記憶した顔向き角度に基づき、運転中の顔向き角度を判定し、運転者が余所見をしているか否かを判定する余所見判定装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4305057号公報
【特許文献2】特開2009−9244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る脇見検出装置においては、運転者の眼の位置又は視線を検出することが困難な場合には運転者の脇見を検知することが出来ないという問題が生じる。
また、上記従来技術に係る余所見判定装置においては、運転者により左右のアウターミラーが操作されているときの運転者の顔向き角度が予め検出されていない場合には、運転者が余所見をしているか否かを判定することが出来ないという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、運転者の注視対象を自動的かつ的確に判定することが可能な注視判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る注視判定装置は、車両の運転席に着座した運転者の顔を撮像して顔画像を出力する撮像手段(例えば、実施の形態での乗員カメラ11)と、該撮像手段から出力された前記顔画像に基づき前記運転者の顔向き角度を検知して検知結果を出力する顔向き検知手段(例えば、実施の形態での顔向き検知部21)と、該顔向き検知手段から出力された前記顔向き角度の検知結果に基づいて前記運転者の注視対象を判定して判定結果を出力する注視対象判定手段(例えば、実施の形態での注視対象判定部26)とを備える注視判定装置であって、前記顔向き検知手段から出力された前記顔向き角度の検知結果から、前記車両のフロントガラス(例えば、実施の形態でのフロントガラス31)両端に設けられた各ピラー(例えば、実施の形態でのピラー32)よりも左右の外側方向の所定範囲内に対応する前記顔向き角度の頻度分布を検出して検出結果を出力する頻度分布検出手段(例えば、実施の形態での頻度分布検出部22)と、前記所定範囲を前記各ピラーから左右のドアミラー(例えば、実施の形態でのドアミラー33)に向かう方向の近傍で前記各ピラーに接する第1領域と該第1領域よりも左右の外側方向の第2領域とに区分し、前記頻度分布検出手段から出力された前記頻度分布の検出結果を前記第1領域及び前記第2領域毎に記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での頻度分布記憶部23)と、前記記憶手段に記憶された前記頻度分布の検出結果から、前記第1領域及び前記第2領域毎に前記頻度分布が最大となる前記顔向き角度を検出して検出結果を出力する最大頻度検出手段(例えば、実施の形態での最大頻度検出部24)と、前記最大頻度検出手段から出力された前記顔向き角度の前記検出結果から、前記第1領域にて前記頻度分布が最大となる前記顔向き角度と前記第2領域にて前記頻度分布が最大となる前記顔向き角度との略中間の角度を検出して検出結果を出力する中間角度検出手段(例えば、実施の形態での中間角度検出部25)とを備え、前記注視対象判定手段は、前記顔向き検知手段から出力された前記顔向き角度の検知結果において、前記顔向き角度が前記各ピラーに対応する角度と前記略中間の角度との間の角度範囲に存在する場合には、前記注視対象がドアミラーであると判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1態様に係る注視判定装置によれば、運転者がドアミラーの調整操作などの機器操作を行なわない場合であっても、自動的にドアミラーの位置を運転者の顔向きから検出することができ、利便性を向上させることができる。
また、所定範囲内に対応する顔向き角度の頻度分布の蓄積により第1領域および第2領域を設定することから、例えば運転者の姿勢が変化した場合などであっても、自動的に追従して適切な第1領域および第2領域を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る注視判定装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る第1領域A及び第2領域Bの例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る各第1領域A及び第2領域Bでの顔向き角度の頻度分布の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る注視判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す判定角度設定の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の注視判定装置の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による注視判定装置10は、例えば図1に示すように、乗員カメラ11と、処理装置12とを備えて構成され、さらに、処理装置12は、顔向き検知部21と、頻度分布検出部22と、頻度分布記憶部23と、最大頻度検出部24と、中間角度検出部25と、注視対象判定部26とを備えて構成されている。
【0010】
乗員カメラ11は、少なくとも車両の運転席に着座した運転者の顔を、撮像対象として、例えば可視光領域または赤外線領域にて撮像可能であって、運転者の顔を含む顔画像を出力する。
【0011】
処理装置12の顔向き検知部21は、乗員カメラ11から出力された顔画像に基づき、例えば運転者の顔を検知対象とした所定の認識処理を行ない、認識した顔に基づき、所定の基準方向(例えば、運転席の正面方向など)に対する運転者の顔向きの角度(顔向き角度)を検知して検知結果を出力する。
【0012】
頻度分布検出部22は、顔向き検知部21から出力された運転者の顔向き角度の頻度分布を、例えば図2に示すように、車両のフロントガラス31両端に設けられたピラー32よりも左右の外側方向の所定範囲(学習範囲)内に対して検出して検出結果を出力する。
例えば、頻度分布検出部22は、所定範囲(学習範囲)内に対応する角度範囲で運転者の顔向き角度が所定時間以上に亘って停留した場合に、この顔向き角度の頻度の度数を増大更新する。
【0013】
頻度分布記憶部23は、頻度分布検出部22から出力された所定範囲内での運転者の顔向き角度の頻度分布を、例えばピラー32から左右のドアミラー33に向かう方向の近傍でピラー32に接する第1領域Aでの頻度分布と、この第1領域Aよりも左右の外側方向の第2領域Bでの頻度分布とに区分して記憶する。
なお、第1領域Aは、少なくとも左右のドアミラー33を内部に含む領域であって、第2領域Bは、少なくとも左右のドアミラー33よりも左右の外側方向であって、左右のドアガラス34の一部を含む領域である。
【0014】
最大頻度検出部24は、頻度分布記憶部23に記憶された各領域A,B毎において、例えば頻度分布の標本数が所定閾値以上に到達した以後に、顔向き角度の頻度の度数が増大更新される都度に、運転者の顔向き角度の頻度分布が最大となる顔向き角度を検出して検出結果を出力する。
【0015】
中間角度検出部25は、例えば図3に示すように、最大頻度検出部24から出力された各領域A,B毎での運転者の顔向き角度の頻度分布が最大となる顔向き角度(最大頻度角度)θA,θBの略中間の角度、例えば中点の角度((θA+θB)/2)を検出して、この検出結果を判定角度として出力する。
【0016】
注視対象判定部26は、中間角度検出部25から出力された判定角度に基づき、顔向き検知部21から出力された運転者の顔向き角度が、左右のピラー32に対応する顔向き角度と判定角度との間の角度範囲に存在するか否かを判定し、この角度範囲内に存在すると判定した場合には、運転者の注視対象が左右のドアミラー33であると判定して、この判定結果を出力する。
【0017】
この実施の形態による注視判定装置10は上記構成を備えており、次に、この注視判定装置10の動作について説明する。
【0018】
先ず、例えば図4に示すステップS01においては、車両の運転席に着座した運転者の顔画像を取得する。
次に、ステップS02においては、顔画像に基づき、運転者の顔向き角度を検出する。
次に、ステップS03においては、運転者の顔向きの方向が左(例えば、運転席の正面から左)であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進み、このステップS04においては、左のドアミラー33に対して、後述する判定角度設定の処理を行なう。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05に進み、このステップS05においては、右のドアミラー33に対して、後述する判定角度設定の処理を行なう。
【0019】
次に、ステップS06においては、顔向き検知部21から出力された運転者の顔向き角度が、左右のピラー32に対応する顔向き角度と判定角度との間の角度範囲に存在するか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進み、このステップS07においては、運転者の注視対象がドアミラー33であると判定して、エンドに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS08に進み、このステップS08においては、運転者の注視対象がドアミラー33以外であると判定して、エンドに進む。
【0020】
以下に、上述したステップS04,S05での判定角度設定の処理について説明する。
先ず、例えば図5に示すステップS11においては、運転者の顔向き角度は車両のフロントガラス31両端に設けられたピラー32よりも左右の外側方向の所定範囲(学習範囲)内に対応する角度であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS12に進む。
【0021】
次に、ステップS12においては、所定範囲(学習範囲)内に対応する角度範囲で運転者の顔向き角度が所定時間以上に亘って停留したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS13に進む。
次に、ステップS13においては、運転者の顔向き角度が第1領域A内に対応する角度範囲内であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進み、このステップS14においては、第1領域Aの頻度分布、つまり顔向き角度の頻度の度数を増大更新する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS15に進み、このステップS15においては、第2領域Bの頻度分布、つまり顔向き角度の頻度の度数を増大更新する。
【0022】
次に、ステップS16においては、各領域A,B毎において頻度分布の標本数が所定閾値以上に到達したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS17に進む。
そして、ステップS17においては、頻度分布の標本数が所定閾値以上に到達した以後での運転者の顔向き角度の頻度分布が最大となる顔向き角度を検出する。
【0023】
次に、ステップS18においては、両領域A,Bにおいて運転者の顔向き角度の頻度分布が最大となる顔向き角度の検出が完了したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS19に進む。
そして、ステップS19においては、各領域A,B毎での運転者の顔向き角度の頻度分布が最大となる顔向き角度(最大頻度角度)θA,θBの中点の角度((θA+θB)/2)を検出して、この検出結果を判定角度として設定し、エンドに進む。
【0024】
上述したように、本実施の形態による注視判定装置10によれば、運転者がドアミラー33の調整操作などの機器操作を行なわない場合であっても、自動的にドアミラー33の位置を運転者の顔向きから検出することができ、利便性を向上させることができる。
また、所定範囲内に対応する顔向き角度の頻度分布の蓄積により第1領域Aおよび第2領域Bを設定することから、例えば運転者の姿勢が変化した場合などであっても、自動的に追従して適切な第1領域Aおよび第2領域Bを設定することができる。
【0025】
なお、上述した実施の形態においては、例えば車両の始動時などにおいて、例えばイグニッションがONとされてから判定角度が設定されるまでの期間においては、単に、運転者の顔向き角度が第1領域Aに対応する角度範囲内に存在するか否かに応じて、運転者の注視対象がドアミラー33であるか否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 注視判定装置
11 乗員カメラ(撮像手段)
21 顔向き検知部(顔向き検知手段)
22 頻度分布検出部(頻度分布検出手段)
23 頻度分布記憶部(記憶手段)
24 最大頻度検出部(最大頻度検出手段)
25 中間角度検出部(中間角度検出手段)
26 注視対象判定部(注視対象判定手段)
31 フロントガラス
32 ピラー
33 ドアミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席に着座した運転者の顔を撮像して顔画像を出力する撮像手段と、該撮像手段から出力された前記顔画像に基づき前記運転者の顔向き角度を検知して検知結果を出力する顔向き検知手段と、該顔向き検知手段から出力された前記顔向き角度の検知結果に基づいて前記運転者の注視対象を判定して判定結果を出力する注視対象判定手段とを備える注視判定装置であって、
前記顔向き検知手段から出力された前記顔向き角度の検知結果から、前記車両のフロントガラス両端に設けられた各ピラーよりも左右の外側方向の所定範囲内に対応する前記顔向き角度の頻度分布を検出して検出結果を出力する頻度分布検出手段と、
前記所定範囲を前記各ピラーから左右のドアミラーに向かう方向の近傍で前記各ピラーに接する第1領域と該第1領域よりも左右の外側方向の第2領域とに区分し、前記頻度分布検出手段から出力された前記頻度分布の検出結果を前記第1領域及び前記第2領域毎に記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記頻度分布の検出結果から、前記第1領域及び前記第2領域毎に前記頻度分布が最大となる前記顔向き角度を検出して検出結果を出力する最大頻度検出手段と、
前記最大頻度検出手段から出力された前記顔向き角度の前記検出結果から、前記第1領域にて前記頻度分布が最大となる前記顔向き角度と前記第2領域にて前記頻度分布が最大となる前記顔向き角度との略中間の角度を検出して検出結果を出力する中間角度検出手段とを備え、
前記注視対象判定手段は、前記顔向き検知手段から出力された前記顔向き角度の検知結果において、前記顔向き角度が前記各ピラーに対応する角度と前記略中間の角度との間の角度範囲に存在する場合には、前記注視対象がドアミラーであると判定することを特徴とする注視判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−116210(P2011−116210A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274457(P2009−274457)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】