説明

洗浄剤

【課題】 電子部品、金属部品、セラミック部品などに付着している油脂類、樹脂、パーティクルなどを除去するのに使用されるアルカリ洗浄剤であって、特に垂直配向タイプのポリイミド配向膜の剥離が可能で、かつ耐アルミ腐蝕性に優れた新規な洗浄剤、洗浄方法および洗浄された電子部品を提供すること。
【解決手段】 アルカリ成分(A)、親水性有機溶剤(B)からなり、30℃における電導度が0.1〜3.0mS/cmである洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、金属部品、セラミック部品などに付着している油脂類、樹脂、パーティクルなどを除去するのに使用されるアルカリ洗浄剤、更に詳しくは液晶パネルの垂直配向ポリイミド膜の剥離液として使用される洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルカリ洗浄剤は中性洗浄剤に比べて、油脂類、樹脂、パーティクルなどを除去する能力に優れているので、電子部品、金属部品、セラミック部品などの生産現場において幅広く使用されている。しかしながら、アルカリ洗浄剤はアルミなどの非鉄金属を容易に腐蝕させるので、アルミが部品の一部または全部に使用されている電子部品などの洗浄には使用できないのが現状であった。例えば、電子部品とくに液晶パネルのポリイミド配向膜はこれまで水平配向タイプであったが、広視野角の液晶パネルの要望が強くなるにつれて垂直配向タイプのポリイミド配向膜が増える趨勢にある。水平配向タイプのポリイミド配向膜ガラス基板は完全焼成(焼成温度:約180℃)前の半焼成状態(約80℃で脱溶剤した半硬化膜)であれば、その不具合品はN−メチルピロリドンなどの溶剤でアルミ薄膜(配線)を腐蝕することなく配向膜を剥離できるが、垂直配向タイプのポリイミド配向膜の場合には、該半焼成状態であっても溶剤ではポリイミド配向膜(半焼成)を剥離できないので、アルカリ洗浄剤を使用して配向膜剥離を行っている(特許文献1参照)。その際、ガラス基板のアルミ薄膜(配線)は腐蝕するのでアルミ薄膜部分をワックスなどで保護して洗浄し、次に炭化水素などの溶剤でワックス除去して基板を再生させるか、配向膜と同時にアルミ薄膜を完全に剥離・溶解させてからガラス基板だけを再生させる方法がとられていた。
【0003】
【特許文献1】特開平6−306661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、垂直配向タイプのポリイミド配向膜の剥離が可能で、かつ耐アルミ腐蝕性に優れた新規な洗浄剤、洗浄方法および洗浄された電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の洗浄剤を得るべく鋭意検討した結果、該洗浄剤の30℃における電導度を0.1〜3.0mS/cmに調整することにより上記問題点を解決できることを見いだし、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、アルカリ成分(A)、および親水性有機溶剤(B)からなり、30℃における電導度が0.1〜3.0mS/cmであることを特徴とする洗浄剤;該洗浄剤を用いて、超音波洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、浸漬および浸漬揺動から選ばれる1種以上の方法で洗浄することを特徴とする電子部品、電気部品またはアルミ建材の洗浄方法;該洗浄方法で洗浄し、リンスした後、乾燥して得られる電子部品、電気部品またはアルミ建材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の洗浄剤は、耐金属腐蝕性に優れているため、例えば液晶パネル用ガラス基板のアルミ配線、カラーフィルター部材にダメージを与えずに半焼成垂直配向ポリイミド膜を短時間に剥離・洗浄できる。したがって、配向膜剥離洗浄工程(ガラス基板再生工程)において従来のガラス基板の再生だけでなく、アルミ配線、カラーフィルター部材も同時に再生使用できる。また、本発明の洗浄剤は、油分、指紋、樹脂およびパーティクルを除去する能力にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における(A)としては、(A1)金属水酸化物[アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウムなど)など]、(A2)炭酸塩[アルカリ金属塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、アルカリ土類金属塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなど)]、(A3)リン酸塩[アルカリ金属塩(例えば、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウムなど)、アルカリ土類金属塩(例えば、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸バリウム、トリポリリン酸カルシウム、トリポリリン酸マグネシウム、トリポリリン酸バリウムなど)]、(A4)ケイ酸塩[アルカリ金属塩(例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなど)、アルカリ土類金属塩(例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸バリウムなど)]、(A5)アンモニア、(A6)ヒドロキシルアミン、(A7)下記一般式(1)で表される有機アルカリおよびこれらの混合物などが挙げられる。
【0009】
【化1】

[式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ炭素数1〜24の炭化水素基または−(R5O)p−Hで表される基であり、R5は炭素数2〜4のアルキレン基、pは1〜6の整数を表す。]
【0010】
一般式(1)において、R1、R2、R3およびR4としては、直鎖もしくは分岐の飽和または不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香環含有炭化水素基などが挙げられる。直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−、i−、sec−およびt−ブチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、オクタデシル基など);直鎖もしくは分岐の不飽和炭化水素基としては、アルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基など);脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)など;芳香環含有炭化水素基としては、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など);アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基など);アルキルアリール基(例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基など)などが挙げられる。これらの炭化水素基の中では、洗浄性の観点から好ましいのはアルキル基、アルケニル基である。
【0011】
1、R2、R3およびR4の炭素数は、通常1〜24であり、洗浄性(または剥離性、以下同じ)の観点から、好ましくは1〜14である。
またR5としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数2〜4のアルキレン基が挙げられる。pは1〜6(好ましくは1〜3)の整数である。
【0012】
一般式(1)で示される有機アルカリ(A7)の具体例としては、下記(1)〜(4)のテトラアルキルアンモニウムカチオン、ハイドロカルビル基を有するアンモニウムカチオンおよび下記(5)のオキシアルキレン基を有するアンモニウムカチオンとハイドロオキサイドアニオンとの塩およびこれら塩の混合物が挙げられる。
(1)炭素数1〜6のアルキル基を4個含むカチオン
[例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ(n−またはi−)プロピルアンモニウム、テトラ(n−、i−またはt−)ブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウムおよびテトラエチルアンモニウムなど];
(2)炭素数1〜6のアルキル基を3個と炭素数7〜24のハイドロカルビル基を1個含むカチオン
[例えば、トリメチルへプチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルへキシルアンモニウム、トリエチルオクチルアンモニウム、トリエチルステアリルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリブチルオクチルアンモニウムおよびトリへキシルステアリルアンモニウムなど];
(3)炭素数1〜6のアルキル基を2個と炭素数7〜24のハイドロカルビル基を2個含むカチオン
[例えば、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジエチルジオクチルアンモニウムおよびジメチルジベンジルアンモニウムなど];
(4)炭素数1〜6のアルキル基を1個と炭素数7〜24のハイドロカルビル基を3個含むカチオン
[例えば、メチルトリオクチルアンモニウム、エチルトリオクチルアンモニウムおよびメチルオクチルジベンジルアンモニウムなど]。
【0013】
(5)オキシアルキレン基を有するアンモニウムカチオン
(i)オキシアルキレン基を1個有するカチオン[例えば、ヒドロキシエチルトリメチルアミンカチオン、ヒドロキシエチルトリエチルアミンカチオン、ヒドロキシプロピルトリメチルアミンカチオン、ヒドロキシプロピルトリエチルアミンカチオン、ヒドロキシエチルジメチルエチルアミンカチオンおよびヒドロキシエチルジメチルオクチルアミンカチオンなど];
(ii)オキシアルキレン基を2個有するカチオン[例えば、ジヒドロキシエチルジメチルアミンカチオン、ジヒドロキシエチルジエチルアミンカチオン、ジヒドロキシプロピルジメチルアミンカチオン、ジヒドロキシプロピルジエチルアミンカチオン、ジヒドロキシエチルメチルエチルアミンカチオン、ジヒドロキシエチルメチルオクチルアミンカチオンおよびビス(2−ヒドロキシエトキシエチル)オクチルアミンカチオンなど];
(iii)オキシアルキレン基を3個有するカチオン[例えば、トリヒドロキシエチルメチルアミンカチオン、トリヒドロキシエチルエチルアミンカチオン、トリヒドロキシエチルブチルアミンカチオン、トリヒドロキシプロピルメチルアミンカチオン、トリヒドロキシプロピルエチルアミンカチオンおよびトリヒドロキシエチルオクチルアミンカチオンなど]。
【0014】
アルカリ成分(A)のうち、洗浄性とリンス性の観点から、好ましいのは(A1)および(A7)、特に好ましくは(A7)である。
(A1)のうち洗浄性の観点から好ましいのは、アルカリ金属水酸化物、更に好ましいのは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである。
(A7)のうち、洗浄性とリンス性の観点から好ましいのは、テトラハイドロカルビルアンモニウムカチオンのハイドロオキサイドアニオン塩であり、さらに好ましいのは、上記(1)および(2)、特に好ましいのは(1)、最も好ましいのはテトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオンのハイドロオキサイドアニオン塩およびこれらの併用である。
【0015】
本発明における洗浄剤は水を含有していてもよい。水としては、水道水、工業用水、地下水、蒸留水、イオン交換水、超純水など特に限定はないが、好ましくはイオン交換水、超純水である。
【0016】
本発明における親水性有機溶剤(B)としては、20℃における水に対する溶解度(g/100gH2O)が3以上、好ましくは10以上のものであり、下記の(B1)〜(B7)の化合物が挙げられる。
【0017】
(B1)後述する1価の脂肪族(炭素数1〜24)アルコール(C1−1)アルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(以下、AOと略記)付加物{活性水素当たりの付加モル数(以下、付加モル数と略記)1〜7}
{例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルなど};
(B2)前記(B1)、後述する2価アルコール(C1−2)もしくは後述する3価以上の多価アルコール(C1−3)の水酸基を除いた残基と炭素数1〜8(好ましくは1もしくは2)のアルキル基とから構成されるアルキルエーテル
{例えば、下記一般式(2)で表されるグリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびトリエチレングリコールジエチルエーテルなど)など;
【化2】

[式中、R6およびR7は炭素数1〜8の炭化水素基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を表す。]
【0018】
(B3)窒素原子含有親水性溶媒
{例えば、ピロリドン系溶媒(例えば、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、2−ピロリドンなど)、ホルムアミド系溶剤(例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなど)、アセトアミド系溶剤(例えば、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなど)、プロピオンアミド系溶剤(例えば、N,N−ジメチルプロピオンアミドなど)、オキサゾリジノン系溶剤(例えば、N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノンなど)、ニトリル系溶剤(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、ベンゾニトリルなど)およびヘキサメチルホスホリルアミドなど};
(B4)ラクトン系親水性溶媒{例えば、炭素数3〜12のラクトン(γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンなど)など};
(B5)ケトン系親水性溶媒{例えば、アセトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジアセトンアルコールなど};
(B6)環状エーテル系親水性溶媒{例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなど};
(B7)エステル系親水性溶媒{例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセト酢酸エチルなど};などが挙げられる。
【0019】
(B)のうち洗浄性と耐金属腐蝕性の観点から好ましいのは(B1)、(B2)、(B3)、(B4)であり、特に好ましくは(B1)、(B2)である。またこれらは混合物として用いても良い。
【0020】
また、(B1)もしくは(B2)の数平均分子量{以下、Mnと略記。測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による}は、洗浄後のリンス性の観点から、好ましくは75〜500、特に好ましくは75〜200である。
【0021】
本発明の洗浄剤は、30℃における電導度が0.1〜3.0mS/cmであることを特徴とする。電導度が0.1mS/cmよりも小さいと洗浄性が低下し易くなる傾向があり、また電導度が3.0mS/cmを越えると金属腐食性が著しく低下し易くなる傾向がある。これらの範囲の内で、洗浄性と金属腐食性の観点から、好ましくは0.5〜2.5、特に好ましくは1.0〜2.0、最も好ましくは1.2〜1.9である。
本発明において電導度の測定方法は、測定用セルに仕込んだサンプルを30℃に温調した水槽中(小数点第一位まで温度コントロール可能なもの)で温調し、サンプルの温度が30.0℃で一定になった時の電導度を、電気伝導率計{東亜電波工業(株)製、CM−40S}を用いて測定する方法である。
【0022】
具体的に電導度を調整する方法としては、電導度が0.1mS/cmよりも低い場合には、(A)および/または水の配合量を増やすことで調整可能であり、また電導度が3.0mS/cmよりも高い場合には、電導度調整剤(C)を所定量添加することで調整することが可能である。
【0023】
本発明の(C)としては、例えば以下の(C1)〜(C7)およびこれらの混合物が挙げられる。
(C1)水酸基を有する化合物(ただし前記(B1)を除く化合物);
(C1−1)1価のアルコール
[例えば、脂肪族(炭素数1〜24)アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールおよびステアリルアルコールなど)、脂環式(炭素数5〜24)アルコール(例えば、シクロヘキシルアルコールなど)、芳香族(炭素数6〜24)アルコール{例えば、フェノール、アルキル(炭素数1〜18)フェノール(例えば、メチルフェノール、エチルフェノールなど)など}など];
(C1−2)2価のアルコール
[例えば、炭素数2〜8のアルカンジオール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールなど)、脂環式ジオール{例えば、炭素数6〜15のジオール(例えば、シクロヘキサン−1,2−、1,3−および1,4−ジオール、シクロペンタン−1,2−および1,3−ジオール並びに水素添加ビスフェノールAなど)など}、分子中にエーテル基を1個有するジオール(例えば、ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールなど)など]、並びにこれらのAO付加物(付加モル数1〜7モル)など;
(C1−3)3価以上の多価アルコール
〔例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)、糖類{例えば、グルコース、ショ糖、キシリトール、シュークロース、セルロース系化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびそれらのケン化物など)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、キチン、キトサンなど}、トリスフェノール類(例えば、トリスフェノールPAなど)、ノボラック樹脂(例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)、ポリフェノール、その他の水酸基を有するポリマー[例えば、ポリビニルアルコール、アクリルポリオール{例えば、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニル系モノマーの共重合物など}など]など〕、並びにこれらのAO付加物(付加モル数1〜7モル)などが挙げられる。
【0024】
(C2)カルボキシル基を有する化合物;
(C2−1)炭素数1〜24の脂肪族モノカルボン酸
{例えば、飽和モノカルボン酸(例えば、n−吉草酸、iso−吉草酸、オクタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、およびリシノレイン酸など)、不飽和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸など)、および脂肪族オキシカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、オキシカプロン酸、リシノール酸、オキシステアリン酸、グルコン酸など)など};
(C2−2)炭素数7〜30の芳香族または複素環式モノカルボン酸
{例えば、芳香族モノカルボン酸(例えば、安息香酸、ナフトエ酸、ケイ皮酸など)、芳香族オキシカルボン酸(例えば、サリチル酸、p−オキシ安息香酸、マンデル酸など)、および複素環式モノカルボン酸(例えば、ピロリドンカルボン酸など)など};
(C2−3)その他のモノカルボン酸
{例えば、ロジン類(例えば、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、エリオチノ酸など)など};
【0025】
(C2−4)2価以上のポリカルボン酸
〔例えば、炭素数2〜30の直鎖状または分岐状の脂肪族ポリカルボン酸{例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデセニルコハク酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸、アルケニルコハク酸(例えば、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸など)、アルキルコハク酸(例えば、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸など)など}、炭素数4〜30の不飽和ポリカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など)、炭素数4〜20の脂肪族オキシポリカルボン酸(例えば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸など)、炭素数8〜30の芳香族ポリカルボン酸[例えば、ジカルボン酸{例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびビフェニルジカルボン酸(2,2’−、3,3’−および/または2,7−体)など}、トリもしくはテトラカルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸など)など]、硫黄を含有する炭素数4〜30のポリカルボン酸(例えば、チオジプロピオン酸など)、カルボキシル基を有するポリマー{例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と他のビニル系モノマーの共重合物など}など〕;
【0026】
(C2−5)炭素数2〜30のアミノ酸
(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、システィン酸など);
(C2−6)脂肪族アルコール(炭素数8〜24)のカルボキシメチル化物
{例えば、オクチルアルコールのカルボキシメチル化物、デシルアルコールのカルボキシメチル化物、ラウリルアルコールのカルボキシメチル化物、のカルボキシメチル化物およびトリデカノール(協和発酵製)のカルボキシメチル化物など};
(C2−7)脂肪族アルコール(炭素数8〜24)のエチレンオキサイド(以下、EOと略記)および/またはプロピレンオキサイド(以下、POと略記)1〜20モル付加物のカルボキシメチル化物
(例えば、オクチルアルコールEO3モル付加物のカルボキシメチル化物、ラウリルアルコールEO2.5モル付加物のカルボキシメチル化物、イソステアリルアルコールEO3モル付加物のカルボキシメチル化物、およびトリデカノールEO2モル付加物のカルボキシメチル化物など);などが挙げられる。なお、(C2)は、(A)と塩を形成してもよい。
【0027】
(C3)アミノ基含有化合物;
(C3−1)炭素数1〜24のモノアミン
{例えば、脂肪族1級アミン(例えば、エチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン、硬化牛脂アミンなど)、脂環式1級アミン(例えば、シクロヘキシルアミンなど)、脂肪族2級アミン(例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミンなど)、複素環式2級アミン(例えば、モルホリン、ピペリジンなど)、芳香族2級アミン(例えば、N−メチルアニリンなど)、脂肪族3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)、複素環式3級アミン(例えば、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリンなど)、芳香環含有脂肪族3級アミン(例えば、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミンなど)、芳香族3級アミン(例えば、N−ジメチルアニリン、ピリジン、キノリンなど)など};
【0028】
(C3−2)ポリアミン
(C3−2−1)炭素数2〜18の脂肪族ポリアミン類
[例えば、炭素数2〜6のアルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)、ポリアルキレン(炭素数2〜6)ポリアミン{例えば、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン,トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど}、これらのアルキル(炭素数1〜4)またはヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)置換体{例えば、ジアルキル(炭素数1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミンなど}、脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン{例えば、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど}、炭素数8〜15の芳香環含有脂肪族アミン類(例えば、キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミンなど)など];
(C3−2−2)炭素数4〜15の脂環式ポリアミン類
{例えば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4´−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)など};
(C3−2−3)炭素数4〜15の複素環式ポリアミン
{例えば、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなど};
【0029】
(C3−2−4)炭素数6〜20の芳香族ポリアミン類
(C3−2−4A)非置換芳香族ポリアミン
{例えば、1,2−、1,3−および1,4−フェニレンジアミン、2,4´−および4,4´−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4´,4”−トリアミン、ナフチレンジアミンなど};
(C3−2−4B)核置換アルキル基(炭素数1〜4)を有する芳香族ポリアミン
{例えば、2,4−および2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン、4,4´−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジブチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3´,5,5´−テトラメチルベンジジン、3,3´,5,5´−テトライソプロピルベンジジン、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトラエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトライソプロピル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトラブチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3´−メチル−2´,4−ジアミノジフェニルメタン,3,5−ジイソプロピル−3´−メチル−2´,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジエチル−2,2´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトラエチル−4,4´−ジアミノベンゾフェノン、3,3´,5,5´−テトライソプロピル−4,4´−ジアミノベンゾフェノン、3,3´,5,5´−テトラエチル−4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´,5,5´−テトライソプロピル−4,4´−ジアミノジフェニルスルホンなど、およびこれらの異性体の種々の割合の混合物など;
【0030】
(C3−2−4C)核置換電子吸引基(Cl,Br,I,Fなどのハロゲン;メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基;ニトロ基など)を有する芳香族ポリアミン
{例えば、メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、3−ジメトキシ−4−アミノアニリン;4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチル−5,5´−ジブロモ−ジフェニルメタン、3,3´−ジクロロベンジジン、3,3´−ジメトキシベンジジン、ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)オキシド、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)デカン、ビス(4−アミノフェニル)スルフイド、ビス(4−アミノフェニル)テルリド、ビス(4−アミノフェニル)セレニド、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)ジスルフイド、4,4´−メチレンビス(2−ヨードアニリン)、4,4´−メチレンビス(2−ブロモアニリン)、4,4´−メチレンビス(2−フルオロアニリン)、4−アミノフェニル−2−クロロアニリンなど};
【0031】
(C3−2−4D)2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン
[例えば、上記の芳香族ポリアミンの−NH2の一部または全部が−NH−R8(R8はアルキル基たとえばメチル,エチルなどの低級アルキル基)で置き換ったもの{例えば、4,4´−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど}など]。
【0032】
(C3−2−5)その他のポリアミン
[例えば、ポリエーテルポリアミン{例えば、ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコールなど)のシアノエチル化物の水素化物など}、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリ(ジ)アリルアミンなど];
【0033】
(C3−3)前記(C3−1)または(C3−2)で例示した1または2級アミンのAO付加物(付加モル数1〜7)
{例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、エチレンジアミンのEO付加物(付加モル数1〜7)など};などが挙げられる。なお、(C2)と(C3)は塩を形成しても良い。
【0034】
(C4)アミド基またはウレア基含有化合物{ただし(B3)を除く化合物};
例えば、(ポリ)尿素、ポリビニルピロリドン、ポリアミドポリアミン{例えば、ジカルボン酸(ダイマー酸など)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミン,ポリアルキレンポリアミンなど)との縮合により得られるポリアミドポリアミンなど}、ポリウレタン{例えば、多官能イソシアネート(例えば、TDI、MDIなど)とポリアミン類(上記アルキレンジアミン,ポリアルキレンポリアミンなど)および/またはポリアルキレン(炭素数2〜4)グリコールとの重付加反応により得られるポリウレタンなど}、前記(C2)のアミド化物{例えば、n−吉草酸アミド、iso−吉草酸アミド、オクタン酸アミドなど}など。
【0035】
(C5)アミジン骨格を含有する化合物
例えば、グアニジン類(例えば、グアニジン、メチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、エチルグアニジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジンなど)、環式および非環式アミジン類(例えば、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7、1,6−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノネン−5など)、プロトンスポンジ誘導体(例えば、キノリジン、イソキノリン、2,7−ナフチリジンなど)など。
【0036】
(C6)カーボネート化合物;
例えば、エチレンカーボネート、プロピオンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど。
(C7)スルホキシド化合物;
例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ブチルスルホン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホランなど。
【0037】
これらの内で、金属腐食性の観点から、好ましくは(C1)、(C3)、より好ましくは(C1)、特に好ましくは(C1−2)、(C1−3)である。また(C)は2種以上の混合物として用いても良い。
【0038】
(C)の作用機構については、十分わかっていないが、(C)が(A)もしくは水に対して、何らかの作用を及ぼし、(A)の解離度を抑制しているものと考えられる。このため、比較的少量で解離度抑制効果を発揮し、金属腐食性が発揮できる点から、(C)の溶解度パラメーター(以下,SP値と略記)が、好ましくは10〜30、特に好ましくは15〜25である。
ここでいうSP値とは、下記に示したように凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表される。
[SP値]=(△E/V)1/2
ここで△Eは凝集エネルギー密度を表す。Vは分子容を表し、その値は、ロバート エフ.フェドールス(Robert F.Fedors)らの計算によるもので、例えばポリマー エンジニアリング アンド サイエンス(Polymer engineering and science)第14巻、147〜154頁(1974)に記載されている。
【0039】
本発明の洗浄剤における(A)、(B)および(C)の含有量(重量%)は、洗浄性と耐金属腐蝕性の観点から、(A)、(B)および(C)の合計重量に基づき、(A)は好ましくは0.1〜25、さらに好ましくは0.5〜10であり、(B)は好ましくは25〜99.89、さらに好ましくは60〜99.4であり、(C)は好ましくは0.01〜50、さらに好ましくは0.1〜30である。また洗浄剤中に水を含有する場合、水の含有量は洗浄剤の重量に基づき、0.001〜50、さらに好ましくは1〜30である。
【0040】
本発明において、洗浄剤中に水を含有する場合、(A)に対する水の重量比[水/(A)]は、洗浄性の観点から、好ましくは1/100〜100/1であり、特に好ましくは1/1〜20/1である。
また(C)を使用する場合における(A)に対する(C)の重量比[(C)/(A)]は、金属腐食性の観点から、好ましくは1/100〜100/1であり、特に好ましくは1/2〜20/1である。
さらに水を含有した洗浄剤中において(C)を使用する場合、水に対する(C)の重量比[(C)/水]は、同様の観点から、好ましくは1/1,000〜10/1であり、特に好ましくは1/10〜5/1である。
【0041】
本発明の洗浄剤は、(A)、(B)および必要により(C)を用いる以外に、さらに必要により界面活性剤(D)、その他の添加剤(E)を配合させてもよい。
【0042】
界面活性剤(D)としては、非イオン界面活性剤(D1)、アニオン界面活性剤(D2)、カチオン界面活性剤(D3)、両性界面活性剤(D4)およびこれらの混合物が挙げられる。但し、(D1)には、上記(B)または(C)の範囲の化合物は含まれない。また、(D3)には一般式(1)で示される有機アルカリは含まれない。
【0043】
(D1)としては、例えば、AO付加型非イオン界面活性剤[例えば、前記(C1)〜(C3)で例示したものの内、活性水素を有する化合物{例えば、高級アルコール(炭素数8〜18)、アルキル(炭素数10〜24)フェノール、高級脂肪酸(炭素数12〜24)または高級アルキルアミン(炭素数8〜24)など}に直接AOを付加(付加モル数8〜5,000)させたもの]、ポリオキシアルキレングリコール(Mn150〜6,000)に高級脂肪酸(炭素数12〜24)などを反応させたもの、ジオール{前記(C1−2)として例示したもの}または3価以上の多価アルコール{前記(C1−3)として例示したもの}などの水酸基含有化合物中に含まれる一部の水酸基に高級脂肪酸(炭素数12〜24)を反応させて得られたエステル化物の残った水酸基にAOを付加させたもの(Mn250〜30,000)、高級脂肪酸(炭素数8〜24)アミドにAOを付加させたもの(Mn200〜30,000)、多価アルコール(前記のもの)アルキル(炭素数8〜60)エーテルにAOを付加させたもの(Mn120〜30,000)など]、および多価アルコール(炭素数3〜20)型非イオン界面活性剤[多価アルコール脂肪酸(炭素数8〜60)エステル、多価アルコールアルキル(炭素数8〜60)エーテル、脂肪酸(炭素数8〜60)アルカノールアミドなど]などが挙げられる。
【0044】
(D2)としては、例えば、硫酸エステル塩[高級アルコール硫酸エステル塩(炭素数8〜18の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩など)など]、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩[炭素数8〜18の脂肪族アルコールのEO(1〜10モル)付加物の硫酸エステル塩]、硫酸化油(天然の不飽和油脂または不飽和のロウをそのまま硫酸化して中和した塩)、硫酸化脂肪酸エステル(不飽和脂肪酸の低級アルコールエステルを硫酸化して中和した塩)、硫酸化オレフィン(炭素数12〜18のオレフィンを硫酸化して中和した塩)、スルホン酸塩[アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル型、α−オレフィン(炭素数12〜18)スルホン酸塩、イゲポンT型など]およびリン酸エステル塩[高級アルコール(炭素数8〜60)リン酸エステル塩、高級アルコール(炭素数8〜60)EO付加物リン酸エステル塩、アルキル(炭素数4〜60)フェノールEO付加物リン酸エステル塩など]が挙げられる。
上記の塩としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)塩、アンモニウム塩、アルキルアミン(炭素数1〜20)塩およびアルカノールアミン(炭素数2〜12、例えばモノー、ジ−およびトリエタノールアミン)塩などが挙げられる。但し、これらの塩を形成するアミンが前記(C3)である場合は、該アミンは(C)と見なし(C)の含有量に含むものとする。
【0045】
(D3)としては、第4級アンモニウムのハロゲン塩型[テトラアルキル(炭素数4〜100)アンモニウムクロライド(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイドなど)、トリアルキル(炭素数3〜80)ベンジルアンモニウムクロライド{例えば、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)など}、アルキル(炭素数2〜60)ピリジニウム塩(例えば、セチルピリジニウムクロライド)、ポリオキシアルキレン(炭素数2〜4)トリアルキルアンモニウムクロライド(例えば、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライドなど)、サパミン型第4級アンモニウム塩(例えば、ステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェートなど)];
アミン塩型[前記(C3−1)またはその他の脂肪族高級アミン(炭素数25〜60)(例えば、ロジンアミンなど)の無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸など)塩など]などが挙げられる。但し、(C3−1)のアミンからなるアミン塩を用いる場合は、該アミンは(C)と見なし(C)の含有量に含むものとする。
【0046】
(D4)としては、アミノ酸型両性界面活性剤[高級アルキルアミン(炭素数12〜18)のプロピオン酸ナトリウムなど]、ベタイン型両性界面活性剤[アルキル(炭素数12〜18)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数12〜18)ジヒドロキシエチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなど]、硫酸エステル塩型両性界面活性剤[高級アルキル(炭素数8〜18)アミンの硫酸エステルナトリウム塩、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステルナトリウム塩など]、スルホン酸塩型両性界面活性剤(ペンタデシルスルフォタウリン、イミダゾリンスルホン酸など)、リン酸エステル塩型両性界面活性剤[グリセリン高級脂肪酸(炭素数8〜22)エステル化物のリン酸エステルアミン塩]などが挙げられる。
【0047】
(D1)〜(D4)の中では、洗浄性と耐金属腐蝕性の観点から好ましいのは(D1)および(D2)、さらに好ましいのは(D1)である。
(D)の含有量は、洗浄剤の全重量に基づいて、通常30%以下、好ましくは1〜20%である。
【0048】
その他の添加剤(E)としては、防錆剤[前記アミン化合物(C3)の内、活性水素を有する1級アミンまたは2級アミン化合物のEO(付加モル数8〜20)付加物、クロム酸塩、亜硝酸塩]、酸化防止剤[フェノール化合物(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなど)、含硫化合物(ジラウリルチオジプロピオネートなど)、リン化合物(トリフェニルホスファイトなど)など]、金属イオン封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)などが挙げられる。
(E)の含有量は、洗浄剤の全重量に基づいて、防錆剤は通常20%以下、好ましくは0.5〜10%、酸化防止剤は通常5%以下、好ましくは0.1〜1%、金属イオン封鎖剤は通常20%以下、好ましくは0.5〜10%である。
【0049】
本発明の洗浄剤は、通常、固体または液状であり、使いやすさの観点から好ましいのは液状であり、液状の場合は透明または白濁液状のいずれでもよい。本発明の洗浄剤が液状の場合の25℃における粘度は、通常2〜300mm2/s、洗浄性およびリンス性の観点から、好ましくは3〜100mm2/s、特に好ましくは4〜50mm2/sである。粘度はオストワルドまたはウベローデなどの粘度計にて測定できる。
本発明の洗浄剤のpH(10%水溶液)は通常10〜14、洗浄性および耐腐蝕性の観点から、好ましくは10.5〜13.5である。
【0050】
本発明の洗浄剤の単位重量当たりの3級アミン価は好ましくは0.1〜10mgKOH/g、さらに好ましくは0.3〜7mgKOH/gである。
3級アミン価が0.1〜10mgKOH/gであれば耐金属腐食性の観点で好ましい。
3級アミン価は以下の方法で測定できる。
(1)試料を0.3〜7gを100mlビーカーに精秤し、メチルアルコール50mlを加えて溶解する。
(2)これに10mlの無水酢酸を加えてよく混合し、30分間室温にて放置後、溶液を電位差滴定装置を用いて、0.01mol/Lアルコール性塩酸標準溶液にて滴定する。
(3)滴定曲線の変曲点を滴定の終点とする。
(4)滴定は2個の試料について行うとともに、空試験を行う。
(5)3級アミン価は、以下の式によって算出する。
3級アミン価=(A−B)×f×0.5611/S
A:本試験に要した0.01mol/l塩酸標準溶液のml数
B:空試験に要した0.01mol/l塩酸標準溶液のml数
f:0.01mol/l塩酸標準溶液の力価
S:試料の採取量(g)
【0051】
本発明の洗浄剤が適用できる用途は特に限定はなく、各種の電子部品、電気部品およびアルミ建材などの洗浄に使用される。
具体的には、例えば液晶パネル用ガラス基板(配向膜パターン化の前の洗浄、不具合配向膜の剥離洗浄)、プリント配線基板、半導体基板、プラズマディスプレイガラス基板、サーマルヘッドなどの電子部品、エアコン冷却フィン、空気清浄機アルミ電極板、電気カミソリ刃などの電気部品、アルミ建材などが挙げられる。
これらの用途の内、本発明の効果である優れた耐金属腐食性の点から、好ましくは電子部品の洗浄、特に配線用金属(例えば、アルミニウム、銅、タングステンなど)が部品の一部または全部に使用されている電子部品などの洗浄用であり、特に好ましくは液晶パネル用ガラス基板の洗浄用(例えば、配向膜を薄膜化する前のガラス基板の洗浄用、または配向膜が不具合となったガラス基板の洗浄用)であり、最も好ましくは配線用金属にアルミを使用した液晶パネル用ガラス基板の洗浄用に好適に使用することができる。
また、洗浄の対象物(汚れ)は、油分、指紋、樹脂、有機パーティクルなどの有機物、無機パーティクル(例えば、ガラス粉、セラミック粉、金属粉など)などの無機物が挙げられる。
【0052】
本発明の洗浄剤を用いて、例えば液晶パネル用ガラス基板の配向膜を剥離洗浄する方法としては、超音波洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、浸漬、浸漬揺動およびこれらの組み合わせによる洗浄方法が適用できる。
洗浄時の本発明の洗浄剤は、必要によりさらに水で稀釈されて使用されてもよいが、好ましいのは上記の水の含有量の範囲内である。
【0053】
洗浄温度は、通常10〜70℃、好ましくは15〜60℃程度である。洗浄時間は通常0.2〜120分、好ましくは0.5〜30分である。水によるリンス温度は、通常5〜90℃、好ましくは10〜70℃であり、リンス方法としては上記洗浄方法と同じ方法が適用できる。リンス後通常50〜150℃、好ましくは60〜100℃で通常1〜120分間、好ましくは3〜60分間加熱乾燥することにより清浄な液晶パネル用ガラス基板が得られ、再生使用することができる。
【0054】
<実施例>
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において部は重量部を示す。
【0055】
実施例1〜8、比較例1〜3
表1に記載の部数(純分表示)の各成分を、1Lのビーカー中で室温で十分に撹拌・混合して実施例および比較例の洗浄剤を作製した。
表1中の略号は下記の通りである。
A−1:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド
A−2:テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド
B−1:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
B−2:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
C−1:エチレングリコール
C−2:グリセリン
C−3:ソルビトール
C−4:D−グルコース
【0056】
実施例および比較例で得られた洗浄剤の評価試験方法を以下に示し、評価結果を表1に示す。
【0057】
1.配向膜剥離性
予めITO膜(インジウム・スズ酸化膜)を形成されたガラス基板(25×25mm、厚さ0.75mm)の上にポリイミド樹脂を塗布し、80℃で焼き付ける作業を3回繰り返し、半焼性の垂直配向ポリイミド膜(膜厚5μm)が密着したガラス基板試験片を作成した。試験片を洗浄剤(25℃)に所定時間浸漬後、試験片をステンレス網かごの上に置きイオン交換水で1分間シャワーリンスし、さらに裏側の面についても同様にリンスした。次に、試験片を70℃の循風乾燥機中で10分間乾燥後、顕微鏡で観察して配向膜剥離性を次の5段階で評価した。
<評価基準>
5:ガラス基板面に配向膜が全くなし。
4:ガラス基板面に配向膜が痕跡程度残っている。
3:ガラス基板面の一部に配向膜が少し残っている。
2:ガラス基板面の大部分に配向膜が残っている。
1:ガラス基板全面に配向膜が残っている。
【0058】
2.腐蝕性−1
アルミ薄膜(膜厚0.03μm)が密着したガラス基板試験片(25×25mm、厚さ0.75mm)を洗浄剤(50℃)に所定時間浸漬し、アルミ薄膜が完全に溶解するまでの時間を測定して腐蝕時間とした。腐蝕時間が長いほど耐腐蝕性が良いことを表す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示されるように、本発明の洗浄剤(実施例1〜8)は、1〜2分で半焼成垂直配向ポリイミド膜が剥離でき、しかも腐蝕時間が180分以上と耐腐蝕性が非常に良好である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の洗浄剤は、耐金属(特に、アルミ)腐食性に極めて優れ、かつ、油分、指紋、樹脂およびパーティクルを除去する能力にも優れているので、液晶パネル用ガラス基板などの電子部品の洗浄用途だけでなく、電気部品、金属部品および建材などの洗浄用途に適用が可能であり極めて有用性が高い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ成分(A)、および親水性有機溶剤(B)からなり、30℃における電導度が0.1〜3.0mS/cmであることを特徴とする洗浄剤。
【請求項2】
前記(A)が一般式(1)で示される有機アルカリ(A)であることを特徴とする請求項1記載の洗浄剤。
【化1】

〔式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ炭素数1〜24の炭化水素基または−(R5O)p−Hで表される基であり、R5は炭素数2〜4のアルキレン基、pは1〜6の整数を表す。〕
【請求項3】
前記(B)が炭素数1〜24の1価の脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物(B1)および下記一般式(2)で示されるアルキルエーテル(B2)からなる群から選ばれる1種以上の親水性有機溶剤であることを特徴とする請求項1または2記載の洗浄剤。
【化2】

〔式中、R6およびR7は炭素数1〜8の炭化水素基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜4の整数を表す。〕
【請求項4】
さらに電導度調整剤(C)を配合してなる請求項1〜3のいずれか記載の洗浄剤。
【請求項5】
前記(C)が、10〜30の溶解度パラメーター(SP値)を有する少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項4記載の洗浄剤。
【請求項6】
前記(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、(A)を0.1〜25重量%、(B)を25〜99.89重量%、(C)を0.01〜50重量%含有する請求項4または5のいずれか記載の洗浄剤。
【請求項7】
前記(A)に対する(C)の重量比[(C)/(A)]が1/100〜100/1である請求項4〜6のいずれか記載の洗浄剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の洗浄剤を用いて、超音波洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、浸漬および浸漬揺動から選ばれる1種以上の方法で洗浄することを特徴とする電子部品、電気部品の洗浄方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか記載の洗浄剤を用いて、超音波洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、浸漬および浸漬揺動から選ばれる1種以上の方法で洗浄することを特徴とするアルミ建材の洗浄方法。
【請求項10】
電子部品がガラス基板である請求項8記載の洗浄方法。
【請求項11】
ガラス基板が少なくとも一部にアルミニウムを使用したガラス基板である請求項10記載の洗浄方法。
【請求項12】
請求項8記載の洗浄方法で洗浄し、リンスした後、乾燥して得られる電子部品、電気部品。
【請求項13】
請求項9記載の洗浄方法で洗浄し、リンスした後、乾燥して得られるアルミ建材。

【公開番号】特開2006−63201(P2006−63201A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247979(P2004−247979)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】