洗浄液再生装置及び循環洗浄装置
【課題】複数成分からなる洗浄液を効率よく再生することができ、しかも簡易かつ小型の洗浄液再生装置およびこれを用いてなる循環洗浄装置を提供する。
【解決手段】使用済洗浄液30を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液15とするための生成部13と、再生洗浄液15を連続的に回収するための回収部13と、を備えた洗浄液再生装置10等であって、生成部13は、加熱するための蒸発部31と、洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液15とするための冷却部41と、蒸発部および冷却部をつなぐ連結部と、を備えており、連結部の開口面積をA(mm2)とし、蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とする。洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B)
【解決手段】使用済洗浄液30を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液15とするための生成部13と、再生洗浄液15を連続的に回収するための回収部13と、を備えた洗浄液再生装置10等であって、生成部13は、加熱するための蒸発部31と、洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液15とするための冷却部41と、蒸発部および冷却部をつなぐ連結部と、を備えており、連結部の開口面積をA(mm2)とし、蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とする。洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液再生装置及び循環洗浄装置に関し、特に、複数成分からなる水系洗浄液であっても、複数成分からなる相分離状態の洗浄液であっても、それぞれ効率的に再生するための洗浄液再生装置及び、このような洗浄液再生装置を備えてなる循環洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数成分からなる洗浄液を用いて金属電子部品やプリント配線基板等の被洗浄物を洗浄したときに生成される使用済洗浄液を再生するための洗浄液再生装置が各種提案されている。
【0003】
例えば、蒸留再生装置を用いた連続蒸留再生システムであって、一定組成の多成分系洗浄液を連続的に循環させて浄化する連続蒸留再生システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図15に示すように、洗浄液を有する洗浄槽101、102と、蒸留再生装置103と、これらを接続する配管とからなり、一定組成の多成分系洗浄液を洗浄槽101、102に収容しているとともに、蒸留再生装置103に予め多成分系洗浄液の気液平衡図から求めた蒸留装置からの留出液組成が洗浄液と同一組成となるように調整された多成分系洗浄液を規定量収容した連続蒸留再生システムである。
そして、洗浄槽101、102と、蒸留再生装置103とがそれぞれ逆流防止弁106、108、113を設置した配管で接続されており、蒸留再生装置103では、液槽部103aの洗浄液の液面を一定に保持する液面調整装置110を備えて留出量と流入量が調整されるとともに、蒸留再生装置103からの一定組成の多成分系洗浄液留出液を洗浄槽102へ供給し、洗浄槽101からの過剰の洗浄液を蒸留再生装置103内へ還流させて、一定組成の多成分系洗浄液が連続的に循環させて浄化する連続蒸留再生システムである。
【0004】
また、非水系溶剤等からなる洗浄液を再生するための減圧蒸留装置として、エゼクタを具備した減圧蒸留装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図16に示すように、被処理液を減圧下で加熱蒸発させる蒸留釜201と、被処理液の蒸気を凝縮液化する冷却器219と、凝縮液化した留出液を、貯液タンク231およびポンプ233を介して循環させる循環系232に介挿され、蒸留釜201の内部を減圧するためのエゼクタ234、とを具備した減圧蒸留装置200が提案されている。
また、好適態様として、蒸留釜201と、冷却器219と、の間に、熱交換器226が備えてあり、また、貯液タンク231には、非水系溶剤に含まれる水分を除去するための水分分離器237を備えている。
【特許文献1】特許第2577857号公報
【特許文献2】特開平7−136402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された連続蒸留再生システムでは、減圧蒸留を考慮していないことから、配合組成を変えずに十分量の洗浄液を得るためには、蒸留時間が長くなり易く、また、十分量の洗浄液を再生するためには、蒸留再生装置が大型化し易いという問題点が見られた。
【0006】
また、特許文献2に開示された減圧蒸留装置は、エゼクタを用いた減圧蒸留によって、蒸留時間を短縮できるものの、複数成分からなる洗浄液を対象としていないばかりか、それらにおける移動速度や気液平衡等を全く考慮していないために、蒸発タンクにおいて突沸現象が生じたり、得られる洗浄液の配合組成が変化したりするという問題が見られた。
特に、蒸留釜から取り出した蒸気を、離間して配置された冷却器にそのまま導入して、液化させるために、蒸発タンクにおける圧力が過剰となって、突沸現象が生じたり、気液平衡が維持できなかったりするという問題が見られた。
その上、本来、非水系溶剤を対象としているばかりか、貯液タンクに、水分分離器を設けた場合には、水系溶剤を適用できないという問題も見られた。
【0007】
そこで、本願発明によれば、洗浄液蒸気の移動速度を考慮するとともに、気相としての洗浄液蒸気と、その液相との間の気液平衡を利用した減圧蒸留によって、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離し、洗浄時に白濁状態となる複数成分からなる洗浄液であっても、初期配合組成を実質的に維持しながら効率的に再生可能な洗浄液再生装置を提供することを目的とする。
また、本願発明によれば、気液平衡を利用した減圧蒸留を行う洗浄液再生装置を備えることによって、複数成分からなる洗浄液を長期間にわたって安定的に循環使用可能な循環洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、複数成分からなる使用済洗浄液を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための生成部と、再生洗浄液を連続的に回収するための回収部と、を備えた洗浄液再生装置であって、生成部は、使用済洗浄液を収容するとともに、加熱するための蒸発部と、洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための冷却部と、蒸発部および冷却部をつなぐ連結部と、を備えており、連結部の開口面積をA(mm2)とし、蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする洗浄液再生装置が提供され、上述した問題点を解決することができる。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【0009】
すなわち、本願発明の洗浄液再生装置によれば、洗浄液蒸気の移動速度を考慮するとともに、気相としての洗浄液蒸気と、その液相との間の気液平衡を利用した減圧蒸留を行うように構成することによって、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離し、洗浄時に白濁状態となる複数成分からなる洗浄液であっても、初期配合組成を実質的に維持し、かつ、突沸現象を防止しながら、洗浄液を効率的に再生することができる。
なお、本願発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、生成部において洗浄液を加熱して、洗浄液蒸気を生成するに際し、蒸発部において、当該洗浄液蒸気と同種の配合組成であって、かつ、気液平衡図から算出した配合の複数成分からなる蒸留元液を、予め収容しておくことが好ましい。
【0010】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、連結部の開口面積(A)を100〜3,000,000mm2の範囲内の値とすることが好ましい。
このように連結部の開口面積(A)を所定範囲内の値に制限することにより、洗浄液蒸気の移動速度の制御がさらに容易になって、気液平衡を利用した減圧蒸留において、突沸現象を有効に防止することができる。
また、このような連結部の開口面積(A)であれば、洗浄液再生装置が過度に大きくなることを防止し、洗浄装置への取付けが容易な適当サイズの洗浄液再生装置とすることができる。
【0011】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、ヒータ容量(B)を0.1〜100kWの範囲内の値とすることが好ましい。
このようにヒータ容量(B)を所定範囲内の値に制限することにより、洗浄液蒸気の移動速度の制御がさらに容易になって、気液平衡を利用した減圧蒸留においても、突沸現象を有効に防止することができる。
また、このようなヒータ容量(B)であれば、消費電力が過度に大きくなることを防止し、経済性にも優れた洗浄液再生装置とすることができる。
【0012】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、洗浄液蒸気に水蒸気が含まれる場合、当該水蒸気の移動速度を0.02〜6m/secの範囲内の値とすることが好ましい。
このように水蒸気の移動速度を所定範囲内の値に制限することにより、気液平衡を利用した減圧蒸留において、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、突沸現象をさらに有効に防止することができる。
【0013】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、回収部は、再生洗浄液が貯留された洗浄液タンクと、再生洗浄液を外部に取り出すための洗浄液取出部と、再生洗浄液を循環ポンプにより循環流動させる循環経路と、循環経路の途中に設けられ、再生洗浄液が流動することで負圧を生じる吸引部と、吸引部及び生成部の間を連通する減圧経路と、を備えているとともに、吸引部の負圧によって、減圧経路を介して、生成部を減圧状態とするとともに、再生洗浄液を吸引して、循環経路に導入することが好ましい。
このように回収部を構成することによって、生成部内を直接的に減圧するための真空ポンプや、排出される気体を気液分離する手段等を用いる必要がないことから、簡易かつ小型化した洗浄液再生装置を提供することができる。
【0014】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、生成部における冷却部が、蒸発部の直上に設けてあるとともに、それぞれ同一の筐体内部に設けてあることが好ましい。
このように生成部を構成することによって、冷却部と、蒸発部との間の距離を可及的に短くして、洗浄液蒸気の移動速度の制御のみならず、減圧下の気液平衡状態の維持も容易になって、複数成分からなる所定配合の洗浄液をさらに効率的に再生することができる。
また、生成部における冷却部と、蒸発部とが、同一の筐体内部に設けてあることから、さらに簡易かつ小型化した洗浄液再生装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、生成部の圧力を−0.01〜−0.1MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
このように生成部の圧力を所定範囲内の値に制限することによって、生成部における減圧蒸留を効率的に行うことができるとともに、洗浄液蒸気の移動速度や、沸点が大きく異なる配合組成における気液平衡状態を安定的に維持することができる。
【0016】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、洗浄液が、水を含むとともに、当該水の含有量を、全体量に対して、40〜70重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することによって、生成部における減圧蒸留を効率的に行うとともに、所定の水系洗浄液を用いた場合においても、生成部における気液平衡状態を安定的に維持することができる。
【0017】
また、本発明の別の態様は、再生洗浄液により被洗浄物を洗浄可能であるとともに、洗浄後の使用済洗浄液を生成部へ供給可能な洗浄装置と、再生洗浄液を生成する洗浄液再生装置と、を備えた循環洗浄装置であって、洗浄液再生装置が、複数成分からなる使用済洗浄液を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための生成部と、再生洗浄液を連続的に回収するための回収部と、を備えており、生成部は、使用済洗浄液を収容するとともに、加熱するための蒸発部と、洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための冷却部と、蒸発部および冷却部をつなぐ連結部と、を備えており、連結部の開口面積をA(mm2)とし、蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする循環洗浄装置である。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【0018】
すなわち、本願発明の循環洗浄装置によれば、所定の洗浄液再生装置を備えていることによって、使用済洗浄液を減圧状態で、かつ突沸現象を防止しながら、安定的に蒸発させるとともに、気液平衡状態を利用して、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離し、洗浄時に白濁状態となる複数成分からなる洗浄液であっても、所定配合の洗浄液を効率的に回収するとともに、そのように回収した再生洗浄液を用いて、被洗浄物を安定的に洗浄することができる。
【0019】
また、本発明の循環洗浄装置を構成するにあたり、回収部は、再生洗浄液が貯留された洗浄液タンクと、再生洗浄液を外部に取り出すための洗浄液取出部と、再生洗浄液を循環ポンプにより循環流動させる循環経路と、循環経路の途中に設けられ、再生洗浄液が流動することで負圧を生じる吸引部と、吸引部及び生成部の間を連通する減圧経路と、を備えているとともに、吸引部の負圧によって、減圧経路を介して、生成部を減圧状態とすることが好ましい。
このような回収部を有する洗浄液再生装置を備えることによって、生成部内を直接的に減圧するための真空ポンプや、排出される気体を気液分離する手段等を省略できることから、簡易かつ小型化した洗浄液再生装置を備えた循環洗浄装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明の洗浄液再生装置を説明するために供する概略図である。
【図2】洗浄液の2成分(NMPとBFG)の理想溶液とした場合に、洗浄液再生装置の稼働条件下における液相組成と気相組成との相関を示す図である。
【図3】洗浄液の2成分(NMPと水)の理想溶液とした場合に、洗浄液再生装置の稼働条件下における液相組成と気相組成との相関を示す図である。
【図4】洗浄液の2成分(水とBFG)の理想溶液とした場合に洗浄液再生装置の稼働条件下における液相組成と気相組成との相関を示す図である。
【図5】洗浄液蒸気の移動係数と、蒸発部の圧力との関係を説明するために供する図である。
【図6】洗浄液蒸気の移動係数と、水蒸気の移動速度との関係を説明するために供する図である。
【図7】本願発明の循環洗浄装置を説明するために供する概略図である。
【図8】本願発明の別の循環洗浄装置を説明するために供する概略図である。
【図9】第1の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を説明するために供する図である。
【図10】第2の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を説明するために供する図である。
【図11】第3の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を説明するために供する図である。
【図12】第3の有機溶剤の配合量の、乾燥性に対する影響を説明するために供する図である。
【図13】第3の有機溶剤の配合量の、引火点に対する影響を説明するために供する図である。
【図14】水の配合量の、洗浄性に対する影響を説明するために供する図である。
【図15】従来の循環洗浄装置を説明するために供する概略図である。
【図16】従来の別の循環洗浄装置を説明するために供する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1に示すように、複数成分からなる使用済洗浄液30を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気15´を生成するとともに、当該洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための生成部13と、再生洗浄液15を連続的に回収するための回収部23と、を備えた洗浄液再生装置10であって、生成部13は、使用済洗浄液30を収容するとともに、加熱するための蒸発部31と、洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための冷却部41と、蒸発部31および冷却部41をつなぐ連結部41cと、を備えており、連結部41cの開口面積をA(mm2)とし、蒸発部31を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気15´の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする洗浄液再生装置10である。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
以下、第1の実施形態の洗浄液再生装置10について、図1等を適宜参照しながら、具体的に説明する。
【0022】
1.洗浄液
(1)種類1
図1等において、洗浄液再生装置10で処理対象とする多成分からなる使用済洗浄液30としては、少なくとも二成分以上、好ましくは三成分以上の洗浄剤成分が混合された混合溶液からなる。
このような洗浄成分の種類としては、被洗浄物に応じて適宜選択することが可能である。
より具体的には、水、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB)、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート(MMBAC)、3−メトキシブチルアセテート(メトアセ)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBG)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(iPG)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BGAC)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMFDG)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFDG)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFDG)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジエチルイソパノールアミン(2FA)、N−エチルエタノールアミン(MEM)、N−メチルエタノールアミン(MMA)、N,N−ジエチルエタノールアミン(2A)、N,N−ジメチルエタノールアミン(2Mabs)、2−エチルヘキシルアミン(2EHA)、N,N−ジメチルベンジルアミン(DMBAN)、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、1−デセン、1−ドデセン、リモネン、シメン、アニソール、フルフラール、2−ヘプタノン、2−オクタノン、フルフリルアルコール(FFAL)、プロピレングリコール(PG)、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFFAL)、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、ジブチルアミン(DBA)、ベンジルアルコール(BAL)、ベンジルアミン(BAN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエタノールアミン(DEA)、モノイソパノールアミン(MIPA)、プソイドクメン(クメン)、n−デカン(デカン)等の一種単独または二種以上の組み合わせが例示される(かっこ内は略号である。)。
【0023】
したがって、洗浄液再生装置で処理対象とする多成分からなる洗浄液(使用済洗浄液)の好適な組み合わせとして、クメン、デカンの組み合わせ、BAL、HeDG、DEAの組み合わせ、BAL、DEAの組み合わせ、PFG、DMAC、水の組み合わせ、PMA、DMAC、水の組み合わせ、PMA、PFG、NMP、水の組み合わせ、メトアセ、PFG、NMP、水の組み合わせ、MMBAC、PFG、NMP、水の組み合わせ、BAN、BAL、BGAC、MIPA、水の組み合わせ、デカン、BAN、BAL、BGAC、MIPA、水の組み合わせ、PMA、メトアセ、PGDA、MMB、DMSO、NMP、水の組み合わせ、MEM、iBG、BFG、水の組み合わせ、iBG、BFG、水の組み合わせ、MEM、1−デセン、NMP、1−ヘキサノール、MAKの組み合わせ、DMBAN、アニソール、BAL、水の組み合わせ、2FA、1−デセン、iBGの組み合わせ、MMB、MEM、水の組み合わせ、PFG、水の組み合わせ等が挙げられる。
なお、相分離し、白濁状態で洗浄する洗浄剤組成物の例も一部含むが、第2の実施形態で詳細に説明する。
【0024】
2.生成部
(1)基本的構成
また、図1に示す生成部13は、使用済洗浄液(以下、蒸留元液と称する場合がある。)30を収容するとともに、当該蒸留元液30を加熱手段31aによって加熱するための蒸発部31と、洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための冷却部41と、蒸発部31および冷却部41をつなぐ連結部41cと、を備えている。
そして、生成部13の減圧状態において、蒸発部31に貯留された蒸留元液30と、洗浄液蒸気15´(すなわち、得られた再生洗浄液15)と、が気液平衡状態にある構成である。
なお、生成部13は、図示しない被洗浄物を洗浄することによって、蒸発部31内に蓄積された固体又は液体などの汚染物質を、バルブ37aを介して、外部に取り出すための排出部37と、を備えており、安定的な再生ができるように構成されている。
【0025】
(2)蒸留元液
また、図1に示す蒸留元液30は、使用前の洗浄液(再生洗浄液)を構成する全ての配合成分を含有しているものの、かかる洗浄液とは異なる配合組成を有しており、生成部13の温度及び圧力条件下で、蒸発して生成される洗浄液蒸気15´が、再生洗浄液15と等しい配合となるように、予め調製された液体物である。
すなわち、蒸留元液30は、生成部13の稼働条件において、かかる蒸留元液30と、再生洗浄液15の組成を有する洗浄液蒸気15´との間で、気液平衡状態が成立する配合組成の液体物である。
なお、蒸留元液に対して使用済洗浄液が供給されて混合された場合であっても、洗浄液再生装置の定常状態においては、その混合物を蒸留元液と称呼する場合もあるし、あるいは、使用済洗浄液と称呼する場合もある(以下、同様である。)。
【0026】
また、蒸留元液30の配合組成を設定するには、生成部13の稼働条件下で、予備試験等を繰り返すことで行うことも可能であるが、例えば、所望の組成の洗浄液に対し、洗浄液を構成する各成分の理想溶液の気液平衡図等に基づいて算出することも可能である。
【0027】
ここで、2成分からなる洗浄液を対象として、蒸留元液30の配合組成を算出する場合、2成分からなる洗浄液の気液平衡図を予めもとめ、その気体における配合が、洗浄液の配合成分となる場合の液相における混合割合をそれぞれ求めて、それを蒸留元液とするものである。
例えば、図2に示すように、洗浄液再生装置の稼働条件下におけるNMP−BFG溶液の液相組成と、気相組成との相関を示す気液平衡図(NMP−BFGのXY線図)に基づいて、気相組成が、所望の洗浄剤としてのNMP−BFG溶液の混合割合と一致する場合の液相における混合割合をそれぞれ求めて、それを蒸留元液とするものである。
同様に、図3に示すように、洗浄液再生装置の稼働条件下におけるH2O−NMP溶液の液相組成と、気相組成との相関を示す気液平衡図(H2O−NMPのXY線図)に基づいて、気相組成が、所望の洗浄剤としてのH2O−NMP溶液の混合割合と一致する場合の液相における混合割合をそれぞれ求めて、それを蒸留元液とするものである。
さらに、図4に示すように、洗浄液再生装置の稼働条件下におけるH2O−BFG溶液の液相組成と、気相組成との相関を示す気液平衡図(H2O−BFGのXY線図)に基づいて、気相組成が、所望の洗浄剤としてのH2O−BFG溶液の混合割合と一致する場合の液相における混合割合をそれぞれ求めて、それを蒸留元液とするものである。
【0028】
なお、上述したように、複数成分からなる蒸留元液の場合、周囲温度や圧力が多少変化した場合であっても、それらの複数成分からなる洗浄液蒸気との間の気液平衡状態はほとんど変化せずに、安定していることが別途判明している。
より具体的には、蒸留元液が、例えば、A成分:B成分:C成分が、常温、条圧において、重量比でA:B:Cで存在している場合、それが、高温として、例えば、50〜200℃、低圧として、例えば、−0.01〜−0.1MPaにおいても、A成分:B成分:C成分の重量比が、略A:B:Cとなることが判明している。
【0029】
また、3成分以上からなる洗浄液を対象とする場合であっても、複数成分からなる洗浄液のうち、一つの成分を基準成分とし、他の配合成分との間の気液平衡図から、この基準成分と、他の配合成分との洗浄液中の混合割合をそれぞれ求めることによって、3成分以上からなる蒸留元液30の配合組成を決定することができる。
すなわち、基準成分と、他の各成分との2成分系の理想溶液を仮定し、それぞれの気液平衡図から、その混合割合の蒸気が得られる液組成をそれぞれ求める。
【0030】
次いで、2成分系の理想溶液について求めた基準成分に対する他の各成分の液組成を、洗浄液中の存在割合に対応させて全量が100%となるように組み合わせ、必要に応じ実際の洗浄液再生装置に適用するための補正を行うことによって、蒸留元液としての配合組成を決定することができる。
具体的には、A成分、B成分、C成分の配合割合が、それぞれの合計量を100重量%としたときに、Ya(重量%):Yb(重量%):Yc(重量%)となる洗浄液の場合、A成分を基準成分とし、A成分とB成分との2成分系の理想溶液(A−B溶液)と、A成分とC成分との2成分系の理想溶液(A−C溶液)とを仮定する。
その場合、A−B溶液における混合割合は、Ya/(Ya+Yb)、Yb/(Ya+Yb)となり、A−C溶液における混合割合は、Ya/(Ya+Yc)、Yc/(Ya+Yc)となる。
【0031】
次に、蒸留元液におけるA成分の配合割合を、A−B溶液の気液平衡図および下式(2)から算出する。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、Yaは、洗浄装置における洗浄液からなる気相中のA成分の配合割合である。したがって、例えば、洗浄液におけるA成分の配合割合が1.8重量%の場合には、Ya=1.8となる。
また、液相中のA成分の配合割合は、再生槽におけるA成分と、B成分の合計量に対するA成分の配合割合(Ya/(Ya+Yb))を意味する。したがって、洗浄液中におけるA成分:B成分の重量比率が、例えば、83:17の場合、再生槽における洗浄液からなる液相中のA成分の配合割合は、0.17となる。
【0034】
また、気相中のA成分の配合割合は、A−B溶液の気液平衡図から、液相中のA成分の配合割合に対して求めた値である。したがって、例えば、再生槽における洗浄液からなる液相中のA成分の配合割合が0.17であって、A−B溶液の気液平衡図において、その数値に対応した気相の値が0.38である場合、この0.38を洗浄槽における洗浄液からなる気相中のA成分の配合割合とするものである。
【0035】
さらに、補正係数は、暫定的に、補正係数を1として算出したA成分の配合割合Ya´(%)と、同様に、A−B溶液の気液平衡図および下式(3)(補正係数は1と仮定)から算出したB成分の配合割合Yb´(%)と、A−C溶液の気液平衡図および下式(4)(補正係数は1と仮定)から算出したC成分の配合割合Yc´(%)から、下式(5)に準じて、算出するものである。
【0036】
【数2】
【0037】
【数3】
【0038】
補正係数=(Ya´+Yb´+Yc´)/100 (5)
【0039】
このようにして配合割合が決定された液体を蒸留元液とすることにより、洗浄液再生装置10の稼働中には、各配合成分が、蒸発部31から連続的に、再生洗浄液15の配合組成を有する洗浄液蒸気15´として、それぞれ連続的に蒸発することになる。そして、所定時間経過し、洗浄液再生装置10が定常状態になって、蒸発部31に、配管17bから使用済洗浄液が所定量で連続的に供給されるとともに、蒸留元液30の配合組成は、略一定に維持されることになる。
【0040】
(3)冷却部
また、生成部13における冷却部41は、蒸発タンク等を含む蒸発部31の上方に一体的に設けられており、蒸発部31で生成された洗浄液蒸気15´を凝縮するための部位である。
したがって、蒸発部31、例えば、蒸発タンクからの蒸気が上昇し、それが冷却管41aにより冷却されて、流下してなる凝縮液を、貯留部41bに、一時的に集めたのち、それを吸引部49によって導くように構成されている。
そのため、生成部13における冷却部41が、蒸発部31の直上に設けてあることが好ましい。
すなわち、このように生成部13における冷却部41の位置を考慮することによって、冷却部41と、蒸発部31と、の間の距離を比較的短くして、蒸発部31から上方に蒸発した洗浄液蒸気15´が、すぐに液化されることから、生成部13における気液平衡状態をさらに安定的に維持することができるためである。
【0041】
(4)連結部
また、図1に示すように、生成部13における冷却部41と、蒸発部31との間に、連結部41cが設けてあり、当該連結部41cに設けてある開口部41dを介して、洗浄液蒸気15´が、蒸発部31から、冷却部41に移動するように構成することが好ましい。
この理由は、連結部41cによって、冷却部41と、蒸発部31と、が明確に分けられるとともに、連結部41cにおける開口部41dの開口面積を制御することによって、洗浄液蒸気15´の移動速度を制御することができ、結果として、蒸発部31における洗浄液の突沸現象を有効に防止できるためである。
【0042】
そして、連結部41cの開口面積をA(mm2)とし、蒸発部31を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気15´の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とするものである。
【0043】
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【0044】
この理由は、図5に示すように、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数が、100mm2/kW未満となると、蒸発部の圧力が著しく大きくなって、蒸留元液30が突沸しやすくなるためである。
また、図6に示すように、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数が、100mm2/kW未満となると、水蒸気の移動速度も著しく大きくなって、水系洗浄剤の場合、蒸留元液30がさらに突沸しやすくなるためである。
一方、図5に示すように、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数が、30,000mm2/kWを超えた値になると、蒸発部の圧力は小さくなって、蒸留元液30の突沸が防止できるものの、連結部41cの開口部の面積が過度になって、洗浄液再生装置が大型化しやすくなるためである。
同様に、図6に示すように、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数が、5,000mm2/kWを超えた値になると、水蒸気の移動速度も小さくなって、水系洗浄剤の場合であっても、蒸留元液30の突沸が防止できるものの、連結部41cの開口部の面積が過度になって、洗浄液再生装置が大型化しやすくなるためである。
したがって、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数Cを1,000〜20,000mm2/kWの範囲内の値とすることが好ましく、1,000〜5,000mm2/kWの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0045】
また、洗浄液再生装置において、連結部の開口面積(A)を100〜3,000,000mm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように連結部の開口面積(A)を所定範囲内の値に制限することによって、洗浄液蒸気の移動速度の制御がさらに容易になって、気液平衡を利用した減圧蒸留において、突沸現象を有効に防止することができるためである。
また、このような連結部の開口面積(A)であれば、洗浄液再生装置が過度に大きくなることを防止し、洗浄装置への取付けが容易な適当サイズの洗浄液再生装置とすることができるためである。
したがって、洗浄液再生装置において、連結部の開口面積(A)を1,000〜1,000,000mm2の範囲内の値とすることがより好ましく、10,000〜150,000mm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
また、洗浄液蒸気に水蒸気が含まれる場合、連結部における開口部での水蒸気の移動速度を0.02〜6m/secの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように水蒸気の移動速度を所定範囲内の値に制限することにより、気液平衡を利用した減圧蒸留において、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、突沸現象をさらに有効に防止することができるためである。
したがって、連結部における開口部での水蒸気の移動速度を0.03〜0.6m/secの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.6m/secの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
(5)加熱手段
また、図1に示す生成部13における加熱手段31aは、蒸発槽31に貯留された蒸留元液30を所定温度に維持可能な熱量を供給するものである。
したがって、例えば、加熱用蒸気が通気されることで蒸留元液30を加熱可能な蒸気流路や加熱ヒータなどから構成される。
また、このような加熱手段31aは、蒸発槽31内の液量が一定又は略一定に維持される場合には、一定の熱量を供給するものであってもよく、あるいは、蒸発槽31内の液量が経時的に変動する場合や、配管17bから供給される使用済洗浄液の温度が経時的に変動する場合には、液量や温度に応じて熱量を調整可能なものであってもよい。
さらに、図示しない温度センサ等を用いて、供給する熱量を調整するように構成することも可能である。
【0048】
また、加熱手段に関し、ヒータ容量(B)を0.1〜100kWの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにヒータ容量(B)を所定範囲内の値に制限することにより、洗浄液蒸気の移動速度の制御がさらに容易になって、気液平衡を利用した減圧蒸留においても、突沸現象を有効に防止することができるためである。
また、このようなヒータ容量(B)であれば、消費電力が過度に大きくなることを防止し、経済性にも優れた洗浄液再生装置とすることができるためである。
したがって、ヒータ容量(B)を0.1〜50kWの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜30kWの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0049】
また、生成部13における温度(蒸発温度)は、用いる洗浄液や圧力により適宜選択することが可能であるが、稼働中には一定温度に維持されることが好ましい。
より具体的に、生成部における蒸発温度を50〜200℃の範囲内の値に保つことが好ましい。
この理由は、このような温度範囲に設定することによって、洗浄液再生装置において用いる洗浄液の選択幅を著しく高めることができるためである。
すなわち、生成部における蒸発温度が50℃未満の値になると、使用可能な洗浄剤の種類が過度に制限される場合があるためである。
一方、生成部における蒸発温度が200℃を超えると、同様に、使用可能な洗浄剤の種類が過度に制限されたり、生成部における構成材料が過度に制限されたり、さらには、生成部の維持管理が困難となる場合があるためである。
したがって、生成部における蒸発温度を50〜180℃の範囲内の値とすることが好ましく、60〜160℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる生成部における蒸発温度は、基本的に、生成部の減圧度や洗浄液の配合組成等によって調整され、決定される値である。
【0050】
(6)排出部
また、図1に示す排出部37は、使用済洗浄液に混入された状態で蒸発槽31に持ち込まれた汚染物質を、系外に排出するための部位である。
したがって、蒸発槽31の底部に開口した排出管37aと、排出管37aを開閉するための開閉弁37bとを有している。
また、汚染物質は、洗浄液を構成する洗浄成分以外の液体や固体などであり、洗浄液再生装置10の稼働中に蒸発することなく経時的に蒸発槽31に蓄積され、この実施の形態では蒸発槽31の底部に滞留する。
そのため、定期的に、或いは、滞留する汚染物質の量が増加した際に、蒸発槽31の底部から排出することが可能となっている。
但し、このような排出部を設けることなく、所定時間経過した後に、生成部における蒸発槽31を、新規蒸発槽に交換することによって、汚染物資の影響を排除することもできる。
【0051】
(7)液面調整手段
その他、この生成部13では、蒸発槽31に貯留される蒸留元液30の貯留量を一定又は略一定に保つために、例えば、液面を所定の範囲、好ましくは一定の位置に保つための液面調整手段を設けることが好ましい。
このような液面調整手段としては、例えば、図1に示すような、フロート31bの所定動作(上下方向動作)によって、機械的に流量調整弁17dの開度を調整することが好ましい。
さらに、液面センサにより検出された液面位に基づき、配管17bに設けられた流量調整弁17dの開度を、図示しないマイクロプロセッサーからの電気的信号をもとに、調整するようにしてもよい。
【0052】
3.回収部
(1)基本的構成
また、図1に示す洗浄液再生装置10における回収部23は、再生洗浄液15を、洗浄液タンク43を介して、連続的に回収するための部位である。
したがって、再生洗浄液15が貯留される洗浄液タンク43と、洗浄液タンク43の再生洗浄液15を循環ポンプ49aにより循環流動させる循環経路47と、循環経路47の途中に設けられて洗浄液15が流動することで負圧を生じる吸引部49と、吸引部49により冷却部41内及び生成部13内の気体或いは液体を吸引するように、冷却部41を介して吸引部49と生成部13との間を連通する配管路であって、逆止弁53bを含む減圧経路55と、を備えている。
そして、洗浄液タンク43には、貯留されている再生洗浄液15を外部に取り出すための洗浄液取出部としての逆止弁17cを含む配管17aが設けられている。
【0053】
(2)洗浄液タンク
また、洗浄液タンク43は、所定の配合組成の再生洗浄液15が貯留される容器として設けられている。
この洗浄液タンク43に収容される洗浄液量としては、循環経路47内に洗浄液を常時循環流動させた状態で、配管17aから洗浄装置(図示しない)へ供給する量の洗浄液を十分に確保できる容積であればよい。
但し、洗浄液量が過剰となると、洗浄液再生装置の簡易化や小型化に資することが困難となる。すなわち、この洗浄液タンク43に貯留される洗浄液が過剰に多いと、洗浄液再生装置10における再生洗浄液15の使用量が無駄に多くなりやすく、また、洗浄液再生装置自体が大型化しやいという問題があるためである。
なお、この洗浄液タンク43には、再生洗浄液を所定温度に保つために、冷却装置や加熱装置等を設けることがより好ましい。
【0054】
(3)循環経路
また、循環経路47は、洗浄液タンク43に流入口47a及び流出口47bが設けられた配管路であり、途中に設けられた循環ポンプ49aにより、吸引部49bを介して、洗浄液タンク43内の洗浄液を、常時流入口47aから流出口47bまで流動させるように構成されている。
そして、吸引個所49bに設けた圧力計49cによって、循環経路47の圧力をモニタするとともに、維持管理している。
なお、循環ポンプ49aは、例えば洗浄液を一定流量で連続的に循環流動させるポンプであることから、エゼクタ効果により、吸引個所49bに生じる負圧を一定に保ち易くできることから好適である。
【0055】
(4)吸引部
また、循環経路47の途中に設けられた吸引部49は、再生洗浄液15が流動することで負圧を生じて液体あるいは気体を吸引する部位であって、図1の場合、循環ポンプ49aと、吸引個所49bと、圧力計49cと、から構成されている。
すなわち、かかる吸引部49によれば、エゼクタ効果により、負圧を生じることで、減圧経路55を介して、冷却部41内の貯留部41bに貯留された再生洗浄液(洗浄液蒸気を含む場合がある。)15を吸引することが可能である。
したがって、吸引された再生洗浄液15は、吸引部49において循環経路47を流動する再生洗浄液15に対して、そのまま導入されて洗浄液タンク43に供給されることとなる。
【0056】
また、この洗浄液再生装置10では、吸引部49により、貯留部41bを介して、再生洗浄液15及び洗浄液蒸気が吸引されることにより、生成部13内が減圧されている。
この実施形態では、生成部13の圧力を、例えば、−0.01〜−0.1MPaの範囲内の値とするように吸引部49で吸引することが可能であり、それにより、洗浄液再生装置10において用いる洗浄液の構成の選択幅の自由度が高くなっている。
但し、過度に減圧すると、吸引部の能力を増加すべく、大型化する場合がある。
したがって、吸引部49によって、生成部13の圧力を、−0.06〜−0.095MPaの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、吸引部49における吸引個所49bの構成は、T字管であれば十分であるが、その他、エゼクタやアスピレータ等から構成されていても良い。
【0057】
4.基本的動作
次に、図1に示す洗浄液再生装置10の基本的動作について説明する。
かかる洗浄液再生装置10では、予め生成部13に蒸留元液30が貯留されて、蒸発槽31内で、ヒータ等の加熱手段31aにより加熱されている。
また、予め回収部23の洗浄液タンク43内に再生洗浄液15が貯留され、循環ポンプ49aにより再生洗浄液15が、循環経路47内で反時計回りに循環流動されており、それを利用した吸引部49により生じた負圧により、生成部13が減圧状態にされている。
これにより、生成部13内は、所望とする再生洗浄液15の配合成分や組成に応じた所定の温度及び圧力を有する稼働条件に保たれている。
【0058】
次いで、生成部13に、配管17bにより導かれた使用済洗浄液が供給され、蒸留元液30と混合されることで、生成部13の稼働条件下、再生洗浄液15を構成する配合成分が、洗浄液蒸気15´として蒸発する。
そして、蒸留元液30が、予め生成部13の稼働条件下で、配管17bを介して供給される使用済洗浄液と混合されつつ、再生洗浄液の配合組成を有する洗浄液蒸気15´を生成可能なように、気液平衡を利用して調整されているため、生成部13において、所定の配合組成を有する洗浄液蒸気15´が生成される。
【0059】
一方、生成部13では、吸引部49の機能によって所定の減圧状態で保持されつつ、連続的に洗浄液蒸気15´が生成されて、蒸留元液30から各配合成分が減少するものの、配管17bから連続的に使用済洗浄液が供給されることで、結果として、再生洗浄液の配合組成に対応する割合で各成分が補充される。
そして、液面が一定又は略一定に保たれることで、蒸留元液30の配合組成及び貯留量は一定又は略一定に保たれることになる。
【0060】
また、吸引部49では、吸引された洗浄液蒸気15´や再生洗浄液15が、循環経路47内をすでに流動する再生洗浄液15に導入されて、洗浄液タンク43に移送される。
これにより生成部13により生成された洗浄液蒸気15´が系外に排出されることなく、全て再生洗浄液15として洗浄液タンク43に収容される。したがって、使用済洗浄液の再生処理が終了し、再び、洗浄液として、配管17aから洗浄装置11に供給可能となる。
【0061】
以上説明した洗浄液再生装置10によれば、所定の吸引部49を設けることにより、洗浄液タンク43の洗浄液15が循環経路47を循環流動することで負圧が生じ、生成部13が減圧状態にされるとともに、生成部13で生じる洗浄液蒸気15´や再生洗浄液15が、貯留部41bを介して吸引され、それが、循環経路47を流動する再生洗浄液15に対して導入されるので、洗浄液15の各成分を系外に排出することなく、使用済洗浄液を減圧状態で蒸発させて回収する再生処理を行うことが可能である。
その上、この洗浄液再生装置10では、生成部13に貯留された蒸留元液30が、吸引部49の負圧に基づく生成部13の圧力及び温度において、洗浄液15の組成を有する洗浄液蒸気と気液平衡となる組成を有するので、洗浄液15の組成が変動し難く、洗浄液15を所望の組成で維持して再生処理を安定して行うことが可能である。
【0062】
また、減圧状態で再生処理を行うため、より低温で十分な量の洗浄液15を再生し易いという利点がある。
さらにまた、生成部13内を減圧するために気体を排出する手段や、排出される気体を気液分離する手段などを用いる必要がない。そのため、洗浄液再生装置10の構成を簡易かつ小型化することが可能である。
【0063】
その他、この洗浄液再生装置10では、循環ポンプ49aが所定流量で連続的に洗浄液15を循環流動させるものであって、生成部13が所定温度で維持されるものであれば、生成部13の稼働条件を安定に維持することができる。
したがって、生成部13から安定した量で洗浄液蒸気を生成させることが可能であり、この生成部13に使用済洗浄液が所定量連続的に混合されるように構成されているので、洗浄液蒸気の生成量と使用済洗浄液の混合量とを合わせることで、所望の組成を維持して洗浄液15の再生処理を長期間継続することが可能である。
【0064】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図7に示すように、再生洗浄液15により被洗浄物(図示せず)を洗浄可能であるとともに、洗浄後の使用済洗浄液30を生成部13へ供給可能な洗浄装置11と、再生洗浄液15を生成する洗浄液再生装置10と、を備えた循環洗浄装置12である。
そして、洗浄液再生装置10が、複数成分からなる使用済洗浄液30を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気15´を生成するとともに、当該洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための生成部13と、再生洗浄液15を連続的に回収するための回収部23と、を備えており、生成部13は、使用済洗浄液30を収容するとともに、加熱するための蒸発部31と、洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための冷却部41と、蒸発部31および冷却部41をつなぐ連結部41cと、を備えており、連結部41cの開口面積をA(mm2)とし、蒸発部31を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気15´の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする循環洗浄装置12である。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
なお、図7に示す循環洗浄装置12において、第1の実施形態で説明したように、図1に示す洗浄液再生装置10と同様のものがそのまま使用できるため、ここでは、洗浄装置11について、中心に説明する。
【0065】
1.洗浄装置
図7に示す洗浄装置11は、配管17aから供給される洗浄液15aを、リンス槽60を含むリンス部11aおよび逆止弁65を介して、洗浄槽62を含む洗浄部11bに導入し、それを用いて、被洗浄物を洗浄可能な構成としており、かつ、洗浄に使用した使用済の洗浄液15bを、配管17bを介して、洗浄液再生装置10に対して供給可能な構成である。
このような洗浄装置11としては、配管17aから供給される再生洗浄液15の実質的に全量を洗浄液再生装置10に供給可能なものであることが好適である。
したがって、被洗浄物に付着して洗浄液15が系外に排出される等の不可避の消費があってもよいが、配管17b以外からは系外に排出されない構成であることが好ましい。
【0066】
また、かかる洗浄装置11では、リンス槽60を含むリンス部11aと、洗浄槽62を含む洗浄部11bと、を備えており、その間に、再生洗浄液15bの逆流を防止するための逆止弁65が設けてある。
したがって、まずは、洗浄槽62において、被洗浄物を、洗浄液30に浸漬するとともに、それを用いて洗浄し、半田やフラックス残渣等を除去する。そして、洗浄槽62に収容した洗浄液15bが、半田やフラックス残渣等によって、所定以上に汚染された場合、当該半田やフラックス残渣等を含む洗浄液15b(30)を、洗浄液再生装置10に供給する構成である。
一方、洗浄槽62において洗浄した被洗浄物を、洗浄槽62からリンス槽60に移動させ、そこで、清浄なリンス液としての再生洗浄液15aを用いて、表面に付着した汚染物を効率的に除去する。そして、洗浄液再生装置10において再生された再生洗浄液15aが、定常的または非定常的に、リンス槽60に供給されるため、それをリンス液として、安定的にリンス処理を実施することができる。
その他、洗浄液再生装置10において再生され、リンス槽60に供給された再生洗浄液15aの一部は、オーバーフロー等して、洗浄槽62に導入され、被洗浄物の洗浄に使用されることになるが、逆止弁65が設けてあるため、構成として、リンス槽60に還流することはない。
なお、図7に示す洗浄装置11は、便宜上、左方から、リンス槽60を含むリンス部11aと、洗浄槽62を含む洗浄部11bと、洗浄液再生装置10と、を順次配列してあるが、リンス槽60を含むリンス部11aの下方、上方、あるいは左方に、洗浄液再生装置10を配置するとともに、当該リンス部11aを、洗浄部11bの右方に配置し、その間に、逆止弁65を設けても良い。
【0067】
2.循環洗浄装置
(1)基本的構成
また、図7に示す循環洗浄装置12の基本的構成として、再生洗浄液15により被洗浄物を洗浄するとともに、洗浄後の使用済洗浄液30を生成部13へ供給可能な洗浄装置11と、再生洗浄液15を生成するための洗浄液再生装置10と、を備えているが、洗浄装置11と、洗浄液再生装置10とが、一対一で対応して設けられていてもよい。
あるいは、図示しないものの、一つの洗浄装置に対して、複数の洗浄液再生装置が設けられていてもよく、さらには、複数の洗浄装置に対して、一つの洗浄液再生装置が設けられていてもよい。
【0068】
また、循環洗浄装置12は、洗浄装置11と、洗浄液再生装置10と、を含んで構成されているものの、図8に示すように、洗浄液再生装置10の一部10bが、洗浄装置11のリンス部11aを兼用するように、構成されていても良い。
すなわち、図8に示す循環洗浄装置12は、図1に示す洗浄液再生装置10の回収部23における洗浄液タンク43が、洗浄装置11におけるリンス槽60を兼用する例である。
したがって、このような循環洗浄装置12であれば、かかるリンス槽60を、被洗浄物のリンス処理場所として使用し、このリンス槽60の右方に、被洗浄物の主洗浄タンク62を設けることができることから、全体として、循環洗浄装置の小型化を図ることができる。
【0069】
(2)基本的動作
次に、図7に示すような循環洗浄装置12の基本的動作について説明する。
この循環洗浄装置12を連続的に稼働させると、洗浄装置11では、洗浄液タンク43から、流量調整弁17cにより流量を調整されつつ配管17aにより導かれた再生洗浄液15が、リンス槽60に順次供給され、リンス液15aになるとともに、この再生洗浄液15の一部が、リンス槽60からオーバーフローして、洗浄槽62に流入し、洗浄液15bとなる。
したがって、被洗浄物が洗浄槽62に収容され、そこの洗浄液15bによって、被洗浄物の洗浄が行われることになる。
この洗浄で、被洗浄物に付着している固体や液体からなる汚染物質が洗浄液に移行し、洗浄液に汚染物質が混入した状態の使用済洗浄液30が、洗浄装置11から排出される。この使用済洗浄液30が、配管17bにより洗浄液再生装置10に導かれる。
【0070】
すなわち、洗浄液再生装置10では、予め生成部13に蒸留元液30が貯留されて、蒸発槽31内で加熱手段35により加熱されている。また、予め回収部23の洗浄液タンク43内に再生洗浄液15が貯留され、循環ポンプ49aにより、再生洗浄液15が循環経路47内で循環流動されており、吸引部49により生じた負圧により、生成部13が減圧状態にされている。
これにより、生成部13内は、洗浄液15の成分や組成に応じた所定の温度及び圧力を有する稼働条件に保たれている。
【0071】
そして、このような洗浄液再生装置10を用いた循環洗浄装置12において、洗浄液再生装置10の配管17aからの再生洗浄液15(リンス液15a、洗浄液15b)により、被洗浄物を洗浄するとともに、リンス処理を行うことができる。
それとともに、洗浄後の汚染された使用済洗浄液30を洗浄液再生装置10の生成部13へ供給する洗浄装置11を備えていることから、かかる洗浄装置11と、洗浄液再生装置10との間で、再生洗浄液15を繰り返し循環させて使用することができる。
【0072】
その際、洗浄液再生装置10では、再生洗浄液15の各成分を系外に排出することなく、使用済洗浄液を蒸発して回収する再生処理を行うことができるため、長期間連続して再生洗浄液を循環して使用することが可能である。
【0073】
しかも、洗浄液再生装置10の生成部13では、蒸留元液30から洗浄液15の配合組成に対応する各配合成分が連続的に、突沸もなく、気液平衡状態を利用しつつ、蒸発する。したがって、生成部13に対して、洗浄液15に対応する各配合成分が、使用済洗浄液として連続的かつ安定的に補充されるため、生成部13の蒸留元液30の配合組成を維持することができる。
よって、長期間洗浄液を循環して使用したとしても、特別な成分調整を行うことなく、所定の配合組成の再生洗浄液を継続して再生することができ、その結果、複数成分が所定の組成で混合された洗浄液を長期間連続して洗浄装置に供給して被処理物を洗浄することが可能となる。
【0074】
(3)洗浄液
また、洗浄液として、第1の実施形態で説明したのと同様のものを使用することができるが、さらに、所定の洗浄剤組成物用原液を準備し、それに所定量の水を後添加して、白濁状態の洗浄液(洗浄剤組成物)として使用することも好ましい。
すなわち、所定量の水を含んだ状態で、白濁状態の洗浄剤組成物として、被洗浄物を洗浄するための洗浄剤組成物用原液であって、その配合組成としては、第1の有機溶剤として、SP値が6.5〜12の範囲内の値である炭化水素化合物または芳香族化合物と、第2の有機溶剤として、SP値が8〜15の範囲内の値である含窒素化合物または含イオウ化合物と、第3の有機溶剤として、SP値が8〜12の範囲内の値であるエステル化合物と、を含むとともに、第1の有機溶剤100重量部に対して、第2の有機溶剤の配合量を5〜1400重量部の範囲内の値とし、第3の有機溶剤の配合量を5〜1400重量部の範囲内の値とした洗浄液用の組成物である。
このように構成することによって、所定量の水を後添加する前は、均一溶液であるとともに、所定量の水を後添加し、相分離させ、白濁状態の洗浄液として、フラックス残渣やソルダーペースト等が付着した被洗浄物に対して、優れた洗浄力を示すことができる。
すなわち、第1の有機溶剤であるSP値が6.5〜12の範囲内の値である炭化水素化合物(例えば、脂肪族炭化水素等)または芳香族化合物(例えば、芳香族炭化水素等)と、第3の有機溶剤であるSP値が8〜12の範囲内の値であるエステル化合物とは、本来相溶し難い組み合わせである。しかるに、第2の有機溶剤であるSP値が8〜15の範囲内の値である含窒素化合物(例えば、アミン化合物等)や含イオウ化合物(例えば、スルホキシド化合物等)を所定量含むことにより、洗浄剤組成物用原液において、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤とが相溶し、均一溶液となるものである。
そして、かかる洗浄剤組成物用原液に対して、所定量の水を後添加した場合、第2の有機溶剤の作用効果が変化し、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤とが、非相溶状態となって、静置すると、相分離することになる。それを、所定の攪拌状態におくと白濁状態となるものの、フラックス残渣やソルダーペースト等に対して、優れた洗浄力を示すことができるようになる。
なお、洗浄剤組成物における白濁状態の是非は、目視によって官能的に判断することも可能であるが、後述するように洗浄剤組成物の光透過率によって、定量的に判断することができる。
【0075】
また、このような洗浄剤組成物用原液であれば、比較的多量の水と混合使用できることから、環境安全性や取扱性、さらには再処理性に優れた洗浄剤組成物を効率的に提供することができる。
より具体的には、全体量に対して、60重量%以上の水を含むことが可能なことから、消防法の危険物に該当しなくなるためである。
また、同様に、比較的多量の水を含むことから、使用によって、洗浄剤組成物が汚染された場合であっても、効率的に再生使用することが可能なためである。
さらに、このような洗浄剤組成物用原液であれば、使用者が、被洗浄物における汚染度合い等に応じて、洗浄剤組成物用原液と、水との配合割合を変えられることから、安価に、洗浄性を変えてなる洗浄剤組成物を効率的に提供することができる。
【0076】
次いで、洗浄剤組成物用原液を構成する第1の有機溶剤、第2の有機溶剤、および第3の有機溶剤を具体的に説明する。
【0077】
(第1の有機溶剤)
また、洗浄剤組成物用原液を構成する第1の有機溶剤は、SP値が6.5〜12の範囲内の値である炭化水素化合物または芳香族化合物であって、所定の洗浄力を発揮するために配合する有機溶剤である。
すなわち、第1の有機溶剤として、所定SP値を有する炭化水素化合物または芳香族化合物を用いることにより、所定量の水と混合する前は、幅広い温度領域において、第2の有機溶剤および第3の有機溶剤とともに均一溶液を組成するとともに、所定量の水を後添加した場合には、白濁状態の洗浄剤組成物となって、さらに優れた洗浄力を示すことができる。
【0078】
より具体的には、このような第1の有機溶剤としては、第2および第3の有機溶剤、あるいは後述する第4の有機溶剤のいずれにも該当しない炭化水素化合物または芳香族化合物であって、例えば、アニソール(SP値:9.3、沸点:152℃、引火点:52℃)、フルフラール(SP値:10.2、沸点:162℃、引火点:62℃)、メチルスチレン(SP値:8.8、沸点:164℃、引火点:54℃)、ミルセン(SP値:7.7、沸点:167℃、引火点:54℃)、クメン(SP値:9.0、沸点:169℃、引火点:50℃)、メンタン(SP値:7.2、沸点:170℃、引火点:63℃)、フェネトール(SP値:9.0、沸点:170℃、引火点:63℃)、デカン(SP値:7.7、沸点:170℃、引火点:53℃)、リモネン(SP値:7.8、沸点:175℃、引火点:48℃)、シメン(SP値:8.7、沸点:177℃、引火点:47℃)、テルピネン(SP値:8.0、沸点:180℃、引火点:71℃)、n−パラフィンL(SP値:8.9、沸点:189〜229℃、引火点:71℃)、インデン(SP値:6.8、沸点:182℃、引火点:78℃)、トルイジン(SP値:9.8、沸点:202℃、引火点:85℃)、デュレン(SP値:9.2、沸点:192℃、引火点:65℃)、ベンジルアミン(SP値:9.9、沸点:185℃、引火点:72℃)、ベンジルエチルエーテル(SP値:8.9、沸点:189℃、引火点:73℃)、チオアニソール(SP値:8.8、沸点:188℃、引火点:72℃)、ジメチルアニリン(SP値:9.9、沸点:188℃、引火点:63℃)、リナロール(SP値:9.4、沸点:198℃、引火点:83℃)、メチルベンゾエート(SP値:9.9、沸点:199℃、引火点:82℃)、ジイソプロピルベンゼン(SP値:8.3、沸点:202℃、引火点:85℃)、スワゾール(SP値:9.5、沸点:180〜208℃、引火点:64℃)、グアヤコール(SP値:10.2、沸点:205℃、引火点:87℃)、ベンジルアルコール(SP値:11.6、沸点:205℃、引火点:93℃)、テトラリン(SP値:9.2、沸点:208℃、引火点:77℃)、N−メチルベンジルアミン(SP値:9.5、沸点:180℃、引火点:77℃)、N,N−ジメチルベンジルアミン(SP値:9.8、沸点:181℃、引火点:60℃)、α−フェニルエチルアミン(SP値:9.7、沸点:192℃、引火点:79℃)、およびフェネチルアミン(SP値:9.7、沸点:198℃、引火点:90℃)からなる群から選択される少なくとも一つの脂肪族炭化水素または芳香族化合物(ベンジルアミンや、ベンジルアルコールを含む。)であることが好ましい。
【0079】
特に、第1の有機溶剤としては、アニソール、フルフラール、クメン、フェネトール、デカン、リモネン、シメン、テルピネン、n−パラフィン、ベンジルアミン、ベンジルエチルエーテル、メチルベンゾエート、ジイソプロベンゼン、ベンジルアルコール、トルイジン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、α−フェニルエチルアミンおよびフェネチルアミンからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、このような種類の第1の有機溶剤を用いることにより、比較的少量の配合であっても優れた洗浄性が得られるとともに、乾燥性の低下も相対的に少なくなるためである。
よって、第1の有機溶剤におけるSP値を7〜12の範囲内の値とすることが好ましく、8〜11の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0080】
また、第1の有機溶剤の配合量を、全体量に対して、0.25〜55重量%の範囲内の値にすることが好ましい。
この理由は、かかる第1の有機溶剤の配合量が、0.25重量%未満の値になると、フラックス等に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。一方、かかる第1の有機溶剤の配合量が、55重量%を超えると、可燃性液体量として、所定量を超えるために、消防法上の危険物として取り扱わなければならない場合があるためである。
したがって、その洗浄性と、取り扱い性とのバランスを考慮して、第1の有機溶剤の配合量を、全体量に対して、1〜50重量%の範囲内の値にすることがより好ましく、3〜30重量%の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
【0081】
また、図9に、第1の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図9の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液を用いた洗浄剤組成物(水分も含む)中の第1の有機溶剤の配合量(重量%)が採って示してあり、縦軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液を用いた場合の洗浄性の評価結果(相対値)が採って示してある。
そして、洗浄性の評価結果(相対値)は、0〜10の評価点で表しており、フラックスの洗浄温度を70℃とした上で、その評価基準は、以下の通りである。
評価点10:フラックス洗浄時間が0〜10分未満である。
評価点9 :フラックス洗浄時間が10〜12分未満である。
評価点8 :フラックス洗浄時間が12〜15分未満である。
評価点7 :フラックス洗浄時間が15〜17分未満である。
評価点6 :フラックス洗浄時間が17〜20分未満である。
評価点5 :フラックス洗浄時間が20〜25分未満である。
評価点4 :フラックス洗浄時間が25〜30分未満である。
評価点3 :フラックス洗浄時間が30〜40分未満である。
評価点2 :フラックス洗浄時間が40〜50分未満である。
評価点1 :フラックス洗浄時間が50〜60分未満である。
評価点0 :フラックス洗浄時間が60分以上である。
【0082】
かかる図9の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第1の有機溶剤の配合量が、全体量に対して、例えば、図中、レンジAで示す0.25〜55重量%の範囲であれば、水を所定量含む洗浄剤組成物とした場合に、良好な洗浄性が得られている。
一方、第1の有機溶剤の配合量が0.25重量%未満の値となったり、55重量%を超える値となったりすると、水を所定量含む洗浄剤組成物とした場合の洗浄性の評価結果が著しく低下することが理解される。
また、配合成分の相違や配合量等のばらつきを考慮しても、例えば、図中、レンジBで示す1〜50重量%の範囲であれば、さらに良好な洗浄性が得られることが理解される。
したがって、洗浄剤組成物原液中の第1の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、水を所定量含む洗浄剤組成物とした場合に、良好な洗浄性が得られることが理解される。
よって、本願発明の洗浄剤組成物原液における第1の有機溶剤の配合量を、水を所定量含む洗浄剤組成物とした場合の洗浄性から、所定範囲に制限することが好ましいと言える。
【0083】
(第2の有機溶剤)
第2の有機溶剤は、SP値が8〜15の範囲内の値である含窒素化合物(例えば、アミン化合物やピロリドン化合物等)または含イオウ化合物(例えば、スルホキシド化合物等)、あるいはいずれか一方の化合物である。
すなわち、第2の有機溶剤は、洗浄剤組成物とした場合の洗浄性を向上させるとともに、所定量の水と混合する前は、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤との相分離を有効に防いで、均一溶液としての洗浄剤組成物用原液を提供するために配合する有機溶剤である。
【0084】
より具体的には、このような第2の有機溶剤としては、第1および第3の有機溶剤、あるいは後述する第4の有機溶剤のいずれにも該当しない含窒素化合物または含イオウ化合物であって、例えば、2−エチルヘキシルアミン(SP値:8.4、沸点:168℃、引火点:53℃)、モノイソプロパノールアミン(SP値:12.7、沸点:160℃、引火点:74℃)、N−エチルエタノールアミン(SP値:11.4、沸点:169℃、引火点:71℃)、N、N−ジメチルアセトアミド(SP値:11.1、沸点:166℃、引火点:70℃)、N−メチルホルムアミド(SP値:11.8、沸点:183℃、引火点:98℃)、ジメチルスルホキシド(SP値:13.0、沸点:189℃、引火点:95℃)、N−メチル−2−ピロリドン(SP値:11.2、沸点:204℃、引火点:91℃)、およびジエタノールアミン(SP値:14.4、沸点:269℃、引火点:134℃)からなる群から選択される少なくとも一つのアミン系化合物やピロリドン化合物等である。
【0085】
特に、第2の有機溶剤としては、2−エチルヘキシルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエタノールアミン、N,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも一つのアミン化合物やピロリドン化合物等であることが好ましい。
この理由は、このような種類の第2の有機溶剤を用いることにより、所定量の水と混合する前は、幅広い温度領域において、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤との間の相分離を有効に防いで、均一溶液を組成するとともに、所定量の水を後添加した場合には、白濁状態の洗浄剤組成物となって、さらに優れた洗浄力を示すことができるためである。
よって、第2の有機溶剤におけるSP値を9〜14の範囲内の値とすることが好ましく、10〜13.5の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0086】
また、第2の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、5〜1400重量部の範囲内の値とする。
この理由は、かかる第2の有機溶剤の配合量が、5重量部未満の値になると、洗浄剤組成物とした場合の洗浄性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる第2の有機溶剤の配合量が、1400重量部を超えた値になると、洗浄剤組成物とした場合の洗浄性や乾燥性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、第2の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、10〜600重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜350重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0087】
また、図10に、第2の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図10の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液中の第2の有機溶剤の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液を用いた洗浄剤組成物における洗浄性の評価結果(相対値)が採って示してある。
そして、洗浄性の評価結果(相対値)は、0〜10の評価点で表しており、その評価基準は、図9の場合と、同様である。
そして、かかる図10の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第2の有機溶剤の配合量が、第1の有機溶剤100重量部に対して、例えば、レンジAで示す5〜1400重量部の範囲であれば、評価点が8以上の良好な洗浄性が得られている。
一方、第2の有機溶剤の配合量が5重量部未満の値となったり、1400重量部を超える値となったりした場合、洗浄性の評価結果が著しく低下することが理解される。
また、配合成分の相違や配合量等のばらつきを考慮しても、例えば、レンジBで示す10〜600重量部の範囲であれば、評価点が10程度のさらに良好な洗浄性が得られることが理解される。
したがって、洗浄剤組成物原液中の第2の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、良好な洗浄性が得られることが理解される。
【0088】
(第3の有機溶剤)
また、洗浄剤組成物用原液を構成する第3の有機溶剤は、SP値が8〜12の範囲内の値であるエステル化合物であって、洗浄剤組成物とした場合の乾燥性を向上させるために配合する有機溶剤である。
そして、第3の有機溶剤は、所定量の水と混合する前は、第1および第2の有機溶剤とともに、均一溶液としての洗浄剤組成物用原液を提供するために配合する有機溶剤である。
より具体的には、このような第3の有機溶剤としては、第1〜2の有機溶剤、および後述する第4の有機溶剤のいずれにも該当しないエステル化合物であって、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値:9.2、沸点:146℃、引火点:47℃)、3−メトキシブチルアセテート(SP値:9.3、沸点:173℃、引火点:63℃)、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート(SP値:9.2、沸点:188℃、引火点:73℃)、プロピレングリコールジアセテート(SP値:10.4、沸点:190℃、引火点:93℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:9.0、沸点:192℃、引火点:88℃)、乳酸ブチル(SP値:10.5、沸点:188℃、引火点:71℃)、アセト酢酸メチル(SP値:11.6、沸点:172℃、引火点:77℃)、アセト酢酸エチル(SP値:10.7、沸点:181℃、引火点:75℃)、無水プロピオン酸(SP値:10.5、沸点:167℃、引火点:74℃)、無水酪酸(SP値:9.7、沸点:199℃、引火点:88℃)、シュウ酸ジエチル(SP値:10.8、沸点:189℃、引火点:76℃)、およびオクタン酸エステル(SP値:8.4、沸点:208℃、引火点:75℃)からなる群から選択される少なくとも一つのエステル化合物である。
【0089】
特に、第3の有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、およびエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも一つのエステル化合物であることが好ましい。
この理由は、このような種類の第3の有機溶剤を用いることにより、所定量の水と混合する前は、幅広い温度領域において、第1の有機溶剤および第2の有機溶剤とともに、均一溶液を組成するとともに、所定量の水を後添加した場合には、白濁状態の洗浄剤組成物として、さらに優れた洗浄力を示すことができるためである。
したがって、第3の有機溶剤におけるSP値を8.5〜11.5の範囲内の値とすることが好ましく、9〜11の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0090】
また、第3の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、5〜1400重量部の範囲内の値とする。
この理由は、かかる第3の有機溶剤の配合量が、5重量部未満の値になると、洗浄剤組成物原液から洗浄剤組成物を構成した場合の乾燥性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる第3の有機溶剤の配合量が、1400重量部を超えた値になると、洗浄剤組成物原液から洗浄剤組成物を構成した場合の洗浄性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、第3の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、10〜600重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜350重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0091】
また、図11に、第3の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図11の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液を用いた洗浄剤組成物における洗浄性の評価結果(相対値)が採って示してある。
また、洗浄性の評価結果(相対値)は、0〜10の評価点で表しており、その評価基準は、図9の場合と、同様である。
そして、かかる図11の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量が、第1の有機溶剤100重量部に対して、例えば、レンジAで示すように、1400重量部以下の値であれば、評価点が8以上の良好な洗浄性が得られ、レンジBで示すように、600重量部以下の値であれば、評価点が10以上の良好な洗浄性が得られている。
但し、第3の有機溶剤の配合量が0重量部となっても、洗浄性の評価結果は良好であることが理解される。
【0092】
一方、図12に、第3の有機溶剤の配合量の、乾燥性に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図12の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液を用いた洗浄剤組成物における乾燥性の評価結果(相対値)が採って示してある。
そして、乾燥性の評価結果(相対値)は、0〜10の評価点で表しており、乾燥温度100℃の条件において、その評価基準は、以下のとおりである。
評価点10:乾燥時間が0〜5分未満である。
評価点9 :乾燥時間が5〜7分未満である。
評価点8 :乾燥時間が7〜10分未満である。
評価点7 :乾燥時間が10〜12分未満である。
評価点6 :乾燥時間が12〜15分未満である。
評価点5 :乾燥時間が15〜17分未満である。
評価点4 :乾燥時間が17〜20分未満である。
評価点3 :乾燥時間が20〜22分未満である。
評価点2 :乾燥時間が22〜25分未満である。
評価点1 :乾燥時間が25〜30分未満である。
評価点0 :乾燥時間が30分以上である。
【0093】
かかる図12の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量が、全体量に対して、レンジAで示すように、10重量部以上の値であれば、評価点が8以上の良好な乾燥性が得られ、レンジBで示すように、20重量部以上の値であれば、評価点が10程度のさらに良好な乾燥性が得られている。
したがって、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、良好な乾燥性が得られることが理解される。
よって、上述した洗浄性の評価結果を加味すると、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、良好な洗浄性および乾燥性との間のバランスを取ることができる。
【0094】
その他、図13に、第3の有機溶剤の配合量の、洗浄剤組成物原液の引火点に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図13の横軸には、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液の引火点(℃)が採って示してある。
かかる図13の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量が、全体量に対して、例えば、50重量部以上の値であれば、75℃以上の比較的高い引火点の値が得られている。
よって、上述した洗浄性および乾燥性の評価結果をさらに加味すると、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、引火点のみならず、良好な洗浄性および乾燥性との間のバランスを取ることができる。
【0095】
(第4の有機溶剤)
また、洗浄剤組成物用原液を構成するに際して、第4の有機溶剤として、SP値が8.5〜12の範囲内の値であるグリコールエーテルまたはアルコール化合物をさらに添加するとともに、当該第4の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、5〜600重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような第4の有機溶剤を所定量添加することにより、第2の有機溶剤を補完して、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤と、の間の相分離をさらに有効に防止することができるためである。
【0096】
ここで、このような第4の有機溶剤としては、第1〜3の有機溶剤のいずれにも該当しないグリコールエーテルまたはアルコール化合物である。
より具体的に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(SP値:9.6、沸点:150℃、引火点:48℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(SP値:9.0、沸点:171℃、引火点:62℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(SP値:8.7、沸点:171℃、引火点:65℃)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(SP値:9.1、沸点:161℃、引火点:56℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(SP値:10.9、沸点:142℃、引火点:46℃)、フルフリルアルコール(SP値:11.9、沸点:171℃、引火点:65℃)、および3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(SP値:10.5、沸点:174℃、引火点:68℃)等の少なくとも一つである。
【0097】
また、第4の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、5〜600重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第4の有機溶剤の配合量が、5重量部未満の値になると、添加効果を発現しない場合があるためである。
一方、かかる第4の有機溶剤の配合量が、600重量部を超えた値になると、洗浄性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、第4の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、10〜250重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜150重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0098】
(界面活性剤)
また、界面活性剤は、上述した第1〜第3の有機溶剤、あるいは第1〜第4の有機溶剤を、水に対して乳化あるいは可溶化させるために添加するが、さらには、被洗浄物に対する親和性を向上させ、結果として、洗浄性を高めるために、洗浄剤組成物中に配合することが好ましい。
ここで、界面活性剤の好適例としては、非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンベンジルアルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0099】
また、界面活性剤の配合量は、例えば、洗浄剤組成物の全体量に対して、0.01〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる界面活性剤の配合量が、0.01重量%未満の値になると、上述した第1〜第3の有機溶剤の相溶性が不十分となって、洗浄剤組成物用原液において、分離しやすくなる場合があるためである。
一方、かかる界面活性剤の配合量が、5重量%を超えると、被洗浄物への残留量が多くなって、リンス工程が必須になったり、被洗浄物の電気特性を劣化させたりする場合があるためである。
したがって、その乳化性と、残留性等とのバランスを考慮して、界面活性剤の配合量を、全体量に対して、0.05〜2重量%の範囲内の値にすることがより好ましく、0.1〜2重量%の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
【0100】
(水分量)
また、多成分からなる洗浄剤組成物(使用済洗浄剤組成物)が、配合成分として水を含有している場合、洗浄剤組成物における水の含有量を、全体量に対して、40〜90重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる水の含有量が40重量%未満の値になると、洗浄剤組成物における低VOC性、安全性、取扱性等が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる水の含有量が90重量%を超えると、洗浄剤組成物における洗浄性や再生性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、洗浄剤組成物における水の含有量を、全体量に対して、60〜90重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、65〜90重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0101】
また、水分量に関して、白濁状態となって、優れた洗浄力を示すために、洗浄剤組成物用原液に対して、所定量の水を後添加し、所定の洗浄剤組成物とする。
すなわち、洗浄剤組成物用原液に対して、比較的多量の水を後添加することによって、第2の有機溶剤の作用効果を変化させるとともに、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤との分離を促進し、白濁状態の洗浄剤組成物となって、優れた洗浄力を示すことができる。
また、比較的多量の水を含むことから、環境安全性や取扱性、さらには再処理性に優れた洗浄剤組成物を効率的に提供することができる。
さらに、使用者が、被洗浄物における汚染度合いや汚染物の種類等に応じて、洗浄剤組成物用原液と、水との配合割合を変えられることから、安価かつ迅速に、洗浄性を変えてなる洗浄剤組成物を提供することができる。
【0102】
また、水の配合量を、洗浄剤組成物用原液100重量部に対して、50〜1900重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる水の配合量が、50重量部未満の値になると、洗浄性が低下するばかりか、安全性や取扱性が低下する場合があるためである。
一方、かかる水の配合量が、1900重量部を超えた値になると、逆に、洗浄性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、水の配合量を、洗浄剤組成物用原液100重量部に対して、150〜900重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、175〜600重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0103】
ここで、図14に、洗浄性における、洗浄剤組成物用原液100重量部に対する水の配合量の影響を検討した結果を示す。
すなわち、図14の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物用原液100重量部に対する水の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液から構成した洗浄剤組成物における洗浄性に対する評価結果(相対値)が採って示してある。
かかる図14の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物用原液100重量部に対する水の配合量が、全体量に対して、例えば、レンジAで示すように、50〜1900重量部の範囲内の値であれば、評価点8以上の良好な洗浄性が得られている。
また、例えば、レンジBで示すように、65〜900重量部の範囲内の値であれば、評価点10の良好な洗浄性が得られている。
したがって、洗浄剤組成物用原液100重量部に対する水の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、それから得られる洗浄剤組成物において、良好な洗浄性が得られることが理解される。
【0104】
(光透過率)
また、洗浄剤組成物の白濁状態の目安となる光透過率(可視光/750nm基準)を80%以内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる光透過率が80%を超えた値になると、均一溶液に近くなるか、あるいは相分離が過度になって、白濁状態を維持することができず、フラックス等に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる洗浄剤組成物の光透過率が過度に小さくなると、相分離が不十分になって、洗浄性の制御が困難となったり、フラックス等に対する洗浄効果が逆に低下したりする場合があるためである。
したがって、洗浄剤組成物の光透過率を0.5〜60%の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜40%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、洗浄剤組成物の可視光に対する光透過率は、分光光度計を用いて、実施例1に記載するように、測定することができる。
【実施例】
【0105】
[実施例1]
実施例1では、水と、N−メチルピロリドン(NMP)と、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)とが、15:20:65重量%である配合組成の洗浄液を用いて、図1に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄液の配合組成が安定に維持できるか否かを確認した。
そのため、表1に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
なお、実施例1の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
【0106】
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0107】
さらに、洗浄液(洗浄剤組成物)の光透過率は、以下のように測定した。すなわち、得られた洗浄剤組成物200gを、容量300mlのビーカー内部に収容した。次いで、ビーカー内のマグネチックスターラーを約700rpmで回転させた。次いで、その状態の洗浄剤組成物をすばやく分光光度計のセルに収容し、5分間静置させた後、その時点での光透過率を、下記条件に基づき測定した。
測定装置:分光光度計(日立製作所(株)製)
測定光 :可視光(波長750nm)
測定温度:室温(25℃)
【0108】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表1のように調製し、蒸発槽に投入した。
ここでは、仮の蒸留元液は循環洗浄装置の稼働開始時点で組成が変動するため、定常状態に達した時点で適切な蒸留元液となるように調製した。この仮の蒸留元液は、洗浄液再生装置の稼働条件下における液相組成と気相組成との相関図である図2〜図4、および上述した式(2)〜(5)をもとにし、洗浄液の組成の洗浄液蒸気と気液平衡が成立するように蒸留元液の配合組成を算出して、仕込み量を設定した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、凝集部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。その結果を表1に示す。
また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数を、それぞれ測定した。
【0109】
【表1】
【0110】
表1の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後でも、光透過率が100%である洗浄液の当初配合組成を略維持することが確認された。
なお、蒸留元液の配合組成の稼働開始時の値は、使用済洗浄液が生成部に供給が開始される前の値であるため、初期の変動が大きいものの、稼働開始後には、安定していた。そのため、定常状態に達した後は、適切な蒸留元液として、水:NMP:BFG=2:43:55重量%となる配合組成の液となった。
従って、この循環洗浄装置によれば、長期間継続して稼働させても、所望の洗浄液の配合組成を維持できることが確認できた。
また、実施例1の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、突沸現象が生じないことが確認された。
【0111】
[実施例2]
実施例2では、実施例1の循環洗浄装置の仕様を以下のように変更した他は、実施例1と同様に、循環洗浄装置を駆動させ、洗浄液の配合組成を経時的に測定するとともに、突沸回数を測定した。得られた結果を表2に示す。
なお、実施例2の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
連結部の開口面積(A) :9,000mm2
ヒータ容量(B) :1.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):6,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.1m/sec
【0112】
【表2】
【0113】
表2の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、実施例2における循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後でも、光透過率が100%である洗浄液の当初配合組成を維持することが確認された。
また、実施例2の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、突沸現象が生じないことが確認された。
【0114】
[実施例3]
実施例3では、実施例1の循環洗浄装置の仕様を以下のように変更した他は、実施例1と同様に、循環洗浄装置を駆動させ、洗浄液の配合組成を経時的に測定するとともに、突沸回数を測定した。得られた結果を表3に示す。
なお、実施例3の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
連結部の開口面積(A) :15,000mm2
ヒータ容量(B) :5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):3,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.2m/sec
【0115】
【表3】
【0116】
表3の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、実施例3における循環洗浄装置を10および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後でも、光透過率が100%である洗浄液の当初配合組成を維持することが確認された。
また、実施例3の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、突沸現象が生じないことが確認された。
【0117】
[実施例4]
実施例4では、水と、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)と、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)とが15:40:45重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄液の配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表4に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
なお、実施例4の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0118】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表4のように調製し、蒸発槽に投入した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、凝集部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。その結果を表4に示す。
また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数を、それぞれ測定した。
【0119】
【表4】
【0120】
表4の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている洗浄液の組成は、循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後でも、光透過率が100%である洗浄液の当初配合組成を略維持することができた。
従って、この循環洗浄装置によれば、長期間継続して稼働させても、所望の洗浄液の組成を維持できることが確認できた。
また、実施例4の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、所定時間経過した後でも、突沸現象が生じないことが確認された。
【0121】
[実施例5]
実施例5では、水と、モノイソパノールアミン(MIPA)と、ベンジルアミン(BAN)と、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BGAC)と、ベンジルアルコール(BAL)と、が69:10:1:15:5重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することにより、白濁状態(光透過率5%)の洗浄液の配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表5に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0122】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表5のように調製し、蒸発槽に投入した。ここでは、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表5に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
[実施例6]
実施例6では、水と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、ジメチルスルホキシド(DMSO)と、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB)と、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)と、メトキシブチルアセテート(メトアセ)と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)と、が70:2:2:7:9:9:2重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄時に白濁状態(光透過率10%)となる洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表6に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0125】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表6のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表6に示す。
【0126】
【表6】
【0127】
[比較例1]
比較例1では、実施例1の循環洗浄装置の仕様を以下のように変更した他は、実施例1と同様に、循環洗浄装置を駆動させ、洗浄液の配合組成を経時的に測定するとともに、突沸回数を測定した。得られた結果を表7に示す。
連結部の開口面積(A) :300mm2
ヒータ容量(B) :5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):60mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :9m/sec
【0128】
【表7】
【0129】
表7の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、比較例1における循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後、当初の組成比から相当ずれることが確認された。
また、比較例1の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、所定回数の突沸現象が生じることが確認された。
【0130】
[比較例2]
比較例2では、実施例4の循環洗浄装置の仕様を以下のように変更した他は、実施例1と同様に、循環洗浄装置を駆動させ、洗浄液の配合組成を経時的に測定するとともに、突沸回数を測定した。得られた結果を表8に示す。
連結部の開口面積(A) :180mm2
ヒータ容量(B) :5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):36mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :15m/sec
【0131】
【表8】
【0132】
表8の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、比較例2における循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後、当初の組成比から若干ずれることが確認された。
また、比較例2の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、所定回数の突沸現象が生じることが確認された。
【0133】
[実施例7]
実施例7では、水と、N−エチルエタノールアミン(MEM)と、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)と、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBG)と、が70:2:19:9重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することにより、洗浄時に白濁状態(光透過率10%)となる洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表9に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0134】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表9のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表9に示す。
【0135】
【表9】
【0136】
[実施例8]
実施例8では、水と、1−デセン、N−エチルエタノールアミン(MEM)と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、1−ヘキサノールと、2−ヘプタノン(MAK)と、が70:17.1:0.1:4.3:4.2:4.3重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄時に白濁状態(光透過率5%)となる洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表10に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0137】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表10のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表10に示す。
【0138】
【表10】
【0139】
[実施例9]
実施例9では、水と、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBG)と、が70:17:13重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄時に白濁状態(光透過率30%)となる洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表11に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0140】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表11のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表11に示す。
【0141】
【表11】
【0142】
[実施例10]
実施例10では、水と、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB)と、N−エチルエタノールアミン(MEM)と、が70:28:2重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表12に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
なお、実施例10の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0143】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表12のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表12に示す。
【0144】
【表12】
【0145】
[実施例11]
実施例11では、水と、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)と、が60:40重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表13に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
なお、実施例11の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0146】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表13のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表13に示す。
【0147】
【表13】
【産業上の利用可能性】
【0148】
本願発明の洗浄液再生装置によれば、洗浄液蒸気の移動速度を考慮するとともに、気相としての洗浄液蒸気と、その液相との間の気液平衡を利用した減圧蒸留によって、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離状態(洗浄時には、白濁状態)となる複数成分からなる洗浄液であっても、初期配合組成を実質的に維持しながら効率的に再生することが可能となった。
また、本願発明の循環洗浄装置によれば、気液平衡を利用した減圧蒸留を行う所定の洗浄液再生装置を備えることによって、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離状態(洗浄時には、白濁状態)となる複数成分からなる洗浄液であっても、長期間にわたって安定的に循環使用可能な循環洗浄装置を提供することが可能となった。
なお、所定種類であって、かつ、所定SP値の有機溶剤を用いた洗浄剤組成物用原液とすることにより、所定量の水を含み、静置状態では相分離状態(洗浄時には、白濁状態)となる複数成分からなる洗浄液も、所定量の水を添加する前は、相分離しない均一状態とできることから、保管条件や運搬条件等によって、配合組成や洗浄力等がばらつくおそれはない。
よって、本願発明の洗浄液再生装置や循環洗浄装置によれば、特に、高信頼性を要求される電子部品におけるフラックス残渣やソルダーペースト等の洗浄、スクリーン版洗浄や切削油やプレス油が付着した金属部品の洗浄において、洗浄性に優れた洗浄剤組成物や洗浄方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0149】
10:洗浄液再生装置、11:洗浄装置、11a:リンス部、11b:洗浄部、12:循環洗浄装置、13:生成部、15:再生洗浄液、15a:リンス液(再生洗浄液)、15b:洗浄液(再生洗浄液)、15´:洗浄液蒸気、17a:洗浄液取出部、17b:配管、 17c、17d:流量調整弁、23:回収部、30:使用済洗浄液(蒸留元液)、31:蒸発部(蒸発タンク)、31a:加熱手段(ヒータ)、41:冷却部(水冷管)、41b:貯留部、41c:開口部、43:洗浄液タンク、47:循環経路、49:吸引部、49a:循環ポンプ、49b:吸引個所、49c:圧力計、51:配管路、53a:吸引バルブ、53b:逆止弁、55:減圧経路、60:リンス槽、62:洗浄槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液再生装置及び循環洗浄装置に関し、特に、複数成分からなる水系洗浄液であっても、複数成分からなる相分離状態の洗浄液であっても、それぞれ効率的に再生するための洗浄液再生装置及び、このような洗浄液再生装置を備えてなる循環洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数成分からなる洗浄液を用いて金属電子部品やプリント配線基板等の被洗浄物を洗浄したときに生成される使用済洗浄液を再生するための洗浄液再生装置が各種提案されている。
【0003】
例えば、蒸留再生装置を用いた連続蒸留再生システムであって、一定組成の多成分系洗浄液を連続的に循環させて浄化する連続蒸留再生システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図15に示すように、洗浄液を有する洗浄槽101、102と、蒸留再生装置103と、これらを接続する配管とからなり、一定組成の多成分系洗浄液を洗浄槽101、102に収容しているとともに、蒸留再生装置103に予め多成分系洗浄液の気液平衡図から求めた蒸留装置からの留出液組成が洗浄液と同一組成となるように調整された多成分系洗浄液を規定量収容した連続蒸留再生システムである。
そして、洗浄槽101、102と、蒸留再生装置103とがそれぞれ逆流防止弁106、108、113を設置した配管で接続されており、蒸留再生装置103では、液槽部103aの洗浄液の液面を一定に保持する液面調整装置110を備えて留出量と流入量が調整されるとともに、蒸留再生装置103からの一定組成の多成分系洗浄液留出液を洗浄槽102へ供給し、洗浄槽101からの過剰の洗浄液を蒸留再生装置103内へ還流させて、一定組成の多成分系洗浄液が連続的に循環させて浄化する連続蒸留再生システムである。
【0004】
また、非水系溶剤等からなる洗浄液を再生するための減圧蒸留装置として、エゼクタを具備した減圧蒸留装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図16に示すように、被処理液を減圧下で加熱蒸発させる蒸留釜201と、被処理液の蒸気を凝縮液化する冷却器219と、凝縮液化した留出液を、貯液タンク231およびポンプ233を介して循環させる循環系232に介挿され、蒸留釜201の内部を減圧するためのエゼクタ234、とを具備した減圧蒸留装置200が提案されている。
また、好適態様として、蒸留釜201と、冷却器219と、の間に、熱交換器226が備えてあり、また、貯液タンク231には、非水系溶剤に含まれる水分を除去するための水分分離器237を備えている。
【特許文献1】特許第2577857号公報
【特許文献2】特開平7−136402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された連続蒸留再生システムでは、減圧蒸留を考慮していないことから、配合組成を変えずに十分量の洗浄液を得るためには、蒸留時間が長くなり易く、また、十分量の洗浄液を再生するためには、蒸留再生装置が大型化し易いという問題点が見られた。
【0006】
また、特許文献2に開示された減圧蒸留装置は、エゼクタを用いた減圧蒸留によって、蒸留時間を短縮できるものの、複数成分からなる洗浄液を対象としていないばかりか、それらにおける移動速度や気液平衡等を全く考慮していないために、蒸発タンクにおいて突沸現象が生じたり、得られる洗浄液の配合組成が変化したりするという問題が見られた。
特に、蒸留釜から取り出した蒸気を、離間して配置された冷却器にそのまま導入して、液化させるために、蒸発タンクにおける圧力が過剰となって、突沸現象が生じたり、気液平衡が維持できなかったりするという問題が見られた。
その上、本来、非水系溶剤を対象としているばかりか、貯液タンクに、水分分離器を設けた場合には、水系溶剤を適用できないという問題も見られた。
【0007】
そこで、本願発明によれば、洗浄液蒸気の移動速度を考慮するとともに、気相としての洗浄液蒸気と、その液相との間の気液平衡を利用した減圧蒸留によって、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離し、洗浄時に白濁状態となる複数成分からなる洗浄液であっても、初期配合組成を実質的に維持しながら効率的に再生可能な洗浄液再生装置を提供することを目的とする。
また、本願発明によれば、気液平衡を利用した減圧蒸留を行う洗浄液再生装置を備えることによって、複数成分からなる洗浄液を長期間にわたって安定的に循環使用可能な循環洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、複数成分からなる使用済洗浄液を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための生成部と、再生洗浄液を連続的に回収するための回収部と、を備えた洗浄液再生装置であって、生成部は、使用済洗浄液を収容するとともに、加熱するための蒸発部と、洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための冷却部と、蒸発部および冷却部をつなぐ連結部と、を備えており、連結部の開口面積をA(mm2)とし、蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする洗浄液再生装置が提供され、上述した問題点を解決することができる。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【0009】
すなわち、本願発明の洗浄液再生装置によれば、洗浄液蒸気の移動速度を考慮するとともに、気相としての洗浄液蒸気と、その液相との間の気液平衡を利用した減圧蒸留を行うように構成することによって、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離し、洗浄時に白濁状態となる複数成分からなる洗浄液であっても、初期配合組成を実質的に維持し、かつ、突沸現象を防止しながら、洗浄液を効率的に再生することができる。
なお、本願発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、生成部において洗浄液を加熱して、洗浄液蒸気を生成するに際し、蒸発部において、当該洗浄液蒸気と同種の配合組成であって、かつ、気液平衡図から算出した配合の複数成分からなる蒸留元液を、予め収容しておくことが好ましい。
【0010】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、連結部の開口面積(A)を100〜3,000,000mm2の範囲内の値とすることが好ましい。
このように連結部の開口面積(A)を所定範囲内の値に制限することにより、洗浄液蒸気の移動速度の制御がさらに容易になって、気液平衡を利用した減圧蒸留において、突沸現象を有効に防止することができる。
また、このような連結部の開口面積(A)であれば、洗浄液再生装置が過度に大きくなることを防止し、洗浄装置への取付けが容易な適当サイズの洗浄液再生装置とすることができる。
【0011】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、ヒータ容量(B)を0.1〜100kWの範囲内の値とすることが好ましい。
このようにヒータ容量(B)を所定範囲内の値に制限することにより、洗浄液蒸気の移動速度の制御がさらに容易になって、気液平衡を利用した減圧蒸留においても、突沸現象を有効に防止することができる。
また、このようなヒータ容量(B)であれば、消費電力が過度に大きくなることを防止し、経済性にも優れた洗浄液再生装置とすることができる。
【0012】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、洗浄液蒸気に水蒸気が含まれる場合、当該水蒸気の移動速度を0.02〜6m/secの範囲内の値とすることが好ましい。
このように水蒸気の移動速度を所定範囲内の値に制限することにより、気液平衡を利用した減圧蒸留において、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、突沸現象をさらに有効に防止することができる。
【0013】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、回収部は、再生洗浄液が貯留された洗浄液タンクと、再生洗浄液を外部に取り出すための洗浄液取出部と、再生洗浄液を循環ポンプにより循環流動させる循環経路と、循環経路の途中に設けられ、再生洗浄液が流動することで負圧を生じる吸引部と、吸引部及び生成部の間を連通する減圧経路と、を備えているとともに、吸引部の負圧によって、減圧経路を介して、生成部を減圧状態とするとともに、再生洗浄液を吸引して、循環経路に導入することが好ましい。
このように回収部を構成することによって、生成部内を直接的に減圧するための真空ポンプや、排出される気体を気液分離する手段等を用いる必要がないことから、簡易かつ小型化した洗浄液再生装置を提供することができる。
【0014】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、生成部における冷却部が、蒸発部の直上に設けてあるとともに、それぞれ同一の筐体内部に設けてあることが好ましい。
このように生成部を構成することによって、冷却部と、蒸発部との間の距離を可及的に短くして、洗浄液蒸気の移動速度の制御のみならず、減圧下の気液平衡状態の維持も容易になって、複数成分からなる所定配合の洗浄液をさらに効率的に再生することができる。
また、生成部における冷却部と、蒸発部とが、同一の筐体内部に設けてあることから、さらに簡易かつ小型化した洗浄液再生装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、生成部の圧力を−0.01〜−0.1MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
このように生成部の圧力を所定範囲内の値に制限することによって、生成部における減圧蒸留を効率的に行うことができるとともに、洗浄液蒸気の移動速度や、沸点が大きく異なる配合組成における気液平衡状態を安定的に維持することができる。
【0016】
また、本発明の洗浄液再生装置を構成するにあたり、洗浄液が、水を含むとともに、当該水の含有量を、全体量に対して、40〜70重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することによって、生成部における減圧蒸留を効率的に行うとともに、所定の水系洗浄液を用いた場合においても、生成部における気液平衡状態を安定的に維持することができる。
【0017】
また、本発明の別の態様は、再生洗浄液により被洗浄物を洗浄可能であるとともに、洗浄後の使用済洗浄液を生成部へ供給可能な洗浄装置と、再生洗浄液を生成する洗浄液再生装置と、を備えた循環洗浄装置であって、洗浄液再生装置が、複数成分からなる使用済洗浄液を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための生成部と、再生洗浄液を連続的に回収するための回収部と、を備えており、生成部は、使用済洗浄液を収容するとともに、加熱するための蒸発部と、洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための冷却部と、蒸発部および冷却部をつなぐ連結部と、を備えており、連結部の開口面積をA(mm2)とし、蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする循環洗浄装置である。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【0018】
すなわち、本願発明の循環洗浄装置によれば、所定の洗浄液再生装置を備えていることによって、使用済洗浄液を減圧状態で、かつ突沸現象を防止しながら、安定的に蒸発させるとともに、気液平衡状態を利用して、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離し、洗浄時に白濁状態となる複数成分からなる洗浄液であっても、所定配合の洗浄液を効率的に回収するとともに、そのように回収した再生洗浄液を用いて、被洗浄物を安定的に洗浄することができる。
【0019】
また、本発明の循環洗浄装置を構成するにあたり、回収部は、再生洗浄液が貯留された洗浄液タンクと、再生洗浄液を外部に取り出すための洗浄液取出部と、再生洗浄液を循環ポンプにより循環流動させる循環経路と、循環経路の途中に設けられ、再生洗浄液が流動することで負圧を生じる吸引部と、吸引部及び生成部の間を連通する減圧経路と、を備えているとともに、吸引部の負圧によって、減圧経路を介して、生成部を減圧状態とすることが好ましい。
このような回収部を有する洗浄液再生装置を備えることによって、生成部内を直接的に減圧するための真空ポンプや、排出される気体を気液分離する手段等を省略できることから、簡易かつ小型化した洗浄液再生装置を備えた循環洗浄装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明の洗浄液再生装置を説明するために供する概略図である。
【図2】洗浄液の2成分(NMPとBFG)の理想溶液とした場合に、洗浄液再生装置の稼働条件下における液相組成と気相組成との相関を示す図である。
【図3】洗浄液の2成分(NMPと水)の理想溶液とした場合に、洗浄液再生装置の稼働条件下における液相組成と気相組成との相関を示す図である。
【図4】洗浄液の2成分(水とBFG)の理想溶液とした場合に洗浄液再生装置の稼働条件下における液相組成と気相組成との相関を示す図である。
【図5】洗浄液蒸気の移動係数と、蒸発部の圧力との関係を説明するために供する図である。
【図6】洗浄液蒸気の移動係数と、水蒸気の移動速度との関係を説明するために供する図である。
【図7】本願発明の循環洗浄装置を説明するために供する概略図である。
【図8】本願発明の別の循環洗浄装置を説明するために供する概略図である。
【図9】第1の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を説明するために供する図である。
【図10】第2の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を説明するために供する図である。
【図11】第3の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を説明するために供する図である。
【図12】第3の有機溶剤の配合量の、乾燥性に対する影響を説明するために供する図である。
【図13】第3の有機溶剤の配合量の、引火点に対する影響を説明するために供する図である。
【図14】水の配合量の、洗浄性に対する影響を説明するために供する図である。
【図15】従来の循環洗浄装置を説明するために供する概略図である。
【図16】従来の別の循環洗浄装置を説明するために供する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1に示すように、複数成分からなる使用済洗浄液30を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気15´を生成するとともに、当該洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための生成部13と、再生洗浄液15を連続的に回収するための回収部23と、を備えた洗浄液再生装置10であって、生成部13は、使用済洗浄液30を収容するとともに、加熱するための蒸発部31と、洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための冷却部41と、蒸発部31および冷却部41をつなぐ連結部41cと、を備えており、連結部41cの開口面積をA(mm2)とし、蒸発部31を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気15´の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする洗浄液再生装置10である。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
以下、第1の実施形態の洗浄液再生装置10について、図1等を適宜参照しながら、具体的に説明する。
【0022】
1.洗浄液
(1)種類1
図1等において、洗浄液再生装置10で処理対象とする多成分からなる使用済洗浄液30としては、少なくとも二成分以上、好ましくは三成分以上の洗浄剤成分が混合された混合溶液からなる。
このような洗浄成分の種類としては、被洗浄物に応じて適宜選択することが可能である。
より具体的には、水、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB)、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート(MMBAC)、3−メトキシブチルアセテート(メトアセ)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBG)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(iPG)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BGAC)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMFDG)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFDG)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFDG)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジエチルイソパノールアミン(2FA)、N−エチルエタノールアミン(MEM)、N−メチルエタノールアミン(MMA)、N,N−ジエチルエタノールアミン(2A)、N,N−ジメチルエタノールアミン(2Mabs)、2−エチルヘキシルアミン(2EHA)、N,N−ジメチルベンジルアミン(DMBAN)、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、1−デセン、1−ドデセン、リモネン、シメン、アニソール、フルフラール、2−ヘプタノン、2−オクタノン、フルフリルアルコール(FFAL)、プロピレングリコール(PG)、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFFAL)、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、ジブチルアミン(DBA)、ベンジルアルコール(BAL)、ベンジルアミン(BAN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエタノールアミン(DEA)、モノイソパノールアミン(MIPA)、プソイドクメン(クメン)、n−デカン(デカン)等の一種単独または二種以上の組み合わせが例示される(かっこ内は略号である。)。
【0023】
したがって、洗浄液再生装置で処理対象とする多成分からなる洗浄液(使用済洗浄液)の好適な組み合わせとして、クメン、デカンの組み合わせ、BAL、HeDG、DEAの組み合わせ、BAL、DEAの組み合わせ、PFG、DMAC、水の組み合わせ、PMA、DMAC、水の組み合わせ、PMA、PFG、NMP、水の組み合わせ、メトアセ、PFG、NMP、水の組み合わせ、MMBAC、PFG、NMP、水の組み合わせ、BAN、BAL、BGAC、MIPA、水の組み合わせ、デカン、BAN、BAL、BGAC、MIPA、水の組み合わせ、PMA、メトアセ、PGDA、MMB、DMSO、NMP、水の組み合わせ、MEM、iBG、BFG、水の組み合わせ、iBG、BFG、水の組み合わせ、MEM、1−デセン、NMP、1−ヘキサノール、MAKの組み合わせ、DMBAN、アニソール、BAL、水の組み合わせ、2FA、1−デセン、iBGの組み合わせ、MMB、MEM、水の組み合わせ、PFG、水の組み合わせ等が挙げられる。
なお、相分離し、白濁状態で洗浄する洗浄剤組成物の例も一部含むが、第2の実施形態で詳細に説明する。
【0024】
2.生成部
(1)基本的構成
また、図1に示す生成部13は、使用済洗浄液(以下、蒸留元液と称する場合がある。)30を収容するとともに、当該蒸留元液30を加熱手段31aによって加熱するための蒸発部31と、洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための冷却部41と、蒸発部31および冷却部41をつなぐ連結部41cと、を備えている。
そして、生成部13の減圧状態において、蒸発部31に貯留された蒸留元液30と、洗浄液蒸気15´(すなわち、得られた再生洗浄液15)と、が気液平衡状態にある構成である。
なお、生成部13は、図示しない被洗浄物を洗浄することによって、蒸発部31内に蓄積された固体又は液体などの汚染物質を、バルブ37aを介して、外部に取り出すための排出部37と、を備えており、安定的な再生ができるように構成されている。
【0025】
(2)蒸留元液
また、図1に示す蒸留元液30は、使用前の洗浄液(再生洗浄液)を構成する全ての配合成分を含有しているものの、かかる洗浄液とは異なる配合組成を有しており、生成部13の温度及び圧力条件下で、蒸発して生成される洗浄液蒸気15´が、再生洗浄液15と等しい配合となるように、予め調製された液体物である。
すなわち、蒸留元液30は、生成部13の稼働条件において、かかる蒸留元液30と、再生洗浄液15の組成を有する洗浄液蒸気15´との間で、気液平衡状態が成立する配合組成の液体物である。
なお、蒸留元液に対して使用済洗浄液が供給されて混合された場合であっても、洗浄液再生装置の定常状態においては、その混合物を蒸留元液と称呼する場合もあるし、あるいは、使用済洗浄液と称呼する場合もある(以下、同様である。)。
【0026】
また、蒸留元液30の配合組成を設定するには、生成部13の稼働条件下で、予備試験等を繰り返すことで行うことも可能であるが、例えば、所望の組成の洗浄液に対し、洗浄液を構成する各成分の理想溶液の気液平衡図等に基づいて算出することも可能である。
【0027】
ここで、2成分からなる洗浄液を対象として、蒸留元液30の配合組成を算出する場合、2成分からなる洗浄液の気液平衡図を予めもとめ、その気体における配合が、洗浄液の配合成分となる場合の液相における混合割合をそれぞれ求めて、それを蒸留元液とするものである。
例えば、図2に示すように、洗浄液再生装置の稼働条件下におけるNMP−BFG溶液の液相組成と、気相組成との相関を示す気液平衡図(NMP−BFGのXY線図)に基づいて、気相組成が、所望の洗浄剤としてのNMP−BFG溶液の混合割合と一致する場合の液相における混合割合をそれぞれ求めて、それを蒸留元液とするものである。
同様に、図3に示すように、洗浄液再生装置の稼働条件下におけるH2O−NMP溶液の液相組成と、気相組成との相関を示す気液平衡図(H2O−NMPのXY線図)に基づいて、気相組成が、所望の洗浄剤としてのH2O−NMP溶液の混合割合と一致する場合の液相における混合割合をそれぞれ求めて、それを蒸留元液とするものである。
さらに、図4に示すように、洗浄液再生装置の稼働条件下におけるH2O−BFG溶液の液相組成と、気相組成との相関を示す気液平衡図(H2O−BFGのXY線図)に基づいて、気相組成が、所望の洗浄剤としてのH2O−BFG溶液の混合割合と一致する場合の液相における混合割合をそれぞれ求めて、それを蒸留元液とするものである。
【0028】
なお、上述したように、複数成分からなる蒸留元液の場合、周囲温度や圧力が多少変化した場合であっても、それらの複数成分からなる洗浄液蒸気との間の気液平衡状態はほとんど変化せずに、安定していることが別途判明している。
より具体的には、蒸留元液が、例えば、A成分:B成分:C成分が、常温、条圧において、重量比でA:B:Cで存在している場合、それが、高温として、例えば、50〜200℃、低圧として、例えば、−0.01〜−0.1MPaにおいても、A成分:B成分:C成分の重量比が、略A:B:Cとなることが判明している。
【0029】
また、3成分以上からなる洗浄液を対象とする場合であっても、複数成分からなる洗浄液のうち、一つの成分を基準成分とし、他の配合成分との間の気液平衡図から、この基準成分と、他の配合成分との洗浄液中の混合割合をそれぞれ求めることによって、3成分以上からなる蒸留元液30の配合組成を決定することができる。
すなわち、基準成分と、他の各成分との2成分系の理想溶液を仮定し、それぞれの気液平衡図から、その混合割合の蒸気が得られる液組成をそれぞれ求める。
【0030】
次いで、2成分系の理想溶液について求めた基準成分に対する他の各成分の液組成を、洗浄液中の存在割合に対応させて全量が100%となるように組み合わせ、必要に応じ実際の洗浄液再生装置に適用するための補正を行うことによって、蒸留元液としての配合組成を決定することができる。
具体的には、A成分、B成分、C成分の配合割合が、それぞれの合計量を100重量%としたときに、Ya(重量%):Yb(重量%):Yc(重量%)となる洗浄液の場合、A成分を基準成分とし、A成分とB成分との2成分系の理想溶液(A−B溶液)と、A成分とC成分との2成分系の理想溶液(A−C溶液)とを仮定する。
その場合、A−B溶液における混合割合は、Ya/(Ya+Yb)、Yb/(Ya+Yb)となり、A−C溶液における混合割合は、Ya/(Ya+Yc)、Yc/(Ya+Yc)となる。
【0031】
次に、蒸留元液におけるA成分の配合割合を、A−B溶液の気液平衡図および下式(2)から算出する。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、Yaは、洗浄装置における洗浄液からなる気相中のA成分の配合割合である。したがって、例えば、洗浄液におけるA成分の配合割合が1.8重量%の場合には、Ya=1.8となる。
また、液相中のA成分の配合割合は、再生槽におけるA成分と、B成分の合計量に対するA成分の配合割合(Ya/(Ya+Yb))を意味する。したがって、洗浄液中におけるA成分:B成分の重量比率が、例えば、83:17の場合、再生槽における洗浄液からなる液相中のA成分の配合割合は、0.17となる。
【0034】
また、気相中のA成分の配合割合は、A−B溶液の気液平衡図から、液相中のA成分の配合割合に対して求めた値である。したがって、例えば、再生槽における洗浄液からなる液相中のA成分の配合割合が0.17であって、A−B溶液の気液平衡図において、その数値に対応した気相の値が0.38である場合、この0.38を洗浄槽における洗浄液からなる気相中のA成分の配合割合とするものである。
【0035】
さらに、補正係数は、暫定的に、補正係数を1として算出したA成分の配合割合Ya´(%)と、同様に、A−B溶液の気液平衡図および下式(3)(補正係数は1と仮定)から算出したB成分の配合割合Yb´(%)と、A−C溶液の気液平衡図および下式(4)(補正係数は1と仮定)から算出したC成分の配合割合Yc´(%)から、下式(5)に準じて、算出するものである。
【0036】
【数2】
【0037】
【数3】
【0038】
補正係数=(Ya´+Yb´+Yc´)/100 (5)
【0039】
このようにして配合割合が決定された液体を蒸留元液とすることにより、洗浄液再生装置10の稼働中には、各配合成分が、蒸発部31から連続的に、再生洗浄液15の配合組成を有する洗浄液蒸気15´として、それぞれ連続的に蒸発することになる。そして、所定時間経過し、洗浄液再生装置10が定常状態になって、蒸発部31に、配管17bから使用済洗浄液が所定量で連続的に供給されるとともに、蒸留元液30の配合組成は、略一定に維持されることになる。
【0040】
(3)冷却部
また、生成部13における冷却部41は、蒸発タンク等を含む蒸発部31の上方に一体的に設けられており、蒸発部31で生成された洗浄液蒸気15´を凝縮するための部位である。
したがって、蒸発部31、例えば、蒸発タンクからの蒸気が上昇し、それが冷却管41aにより冷却されて、流下してなる凝縮液を、貯留部41bに、一時的に集めたのち、それを吸引部49によって導くように構成されている。
そのため、生成部13における冷却部41が、蒸発部31の直上に設けてあることが好ましい。
すなわち、このように生成部13における冷却部41の位置を考慮することによって、冷却部41と、蒸発部31と、の間の距離を比較的短くして、蒸発部31から上方に蒸発した洗浄液蒸気15´が、すぐに液化されることから、生成部13における気液平衡状態をさらに安定的に維持することができるためである。
【0041】
(4)連結部
また、図1に示すように、生成部13における冷却部41と、蒸発部31との間に、連結部41cが設けてあり、当該連結部41cに設けてある開口部41dを介して、洗浄液蒸気15´が、蒸発部31から、冷却部41に移動するように構成することが好ましい。
この理由は、連結部41cによって、冷却部41と、蒸発部31と、が明確に分けられるとともに、連結部41cにおける開口部41dの開口面積を制御することによって、洗浄液蒸気15´の移動速度を制御することができ、結果として、蒸発部31における洗浄液の突沸現象を有効に防止できるためである。
【0042】
そして、連結部41cの開口面積をA(mm2)とし、蒸発部31を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気15´の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とするものである。
【0043】
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【0044】
この理由は、図5に示すように、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数が、100mm2/kW未満となると、蒸発部の圧力が著しく大きくなって、蒸留元液30が突沸しやすくなるためである。
また、図6に示すように、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数が、100mm2/kW未満となると、水蒸気の移動速度も著しく大きくなって、水系洗浄剤の場合、蒸留元液30がさらに突沸しやすくなるためである。
一方、図5に示すように、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数が、30,000mm2/kWを超えた値になると、蒸発部の圧力は小さくなって、蒸留元液30の突沸が防止できるものの、連結部41cの開口部の面積が過度になって、洗浄液再生装置が大型化しやすくなるためである。
同様に、図6に示すように、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数が、5,000mm2/kWを超えた値になると、水蒸気の移動速度も小さくなって、水系洗浄剤の場合であっても、蒸留元液30の突沸が防止できるものの、連結部41cの開口部の面積が過度になって、洗浄液再生装置が大型化しやすくなるためである。
したがって、洗浄液(洗浄液蒸気)15´の移動係数Cを1,000〜20,000mm2/kWの範囲内の値とすることが好ましく、1,000〜5,000mm2/kWの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0045】
また、洗浄液再生装置において、連結部の開口面積(A)を100〜3,000,000mm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように連結部の開口面積(A)を所定範囲内の値に制限することによって、洗浄液蒸気の移動速度の制御がさらに容易になって、気液平衡を利用した減圧蒸留において、突沸現象を有効に防止することができるためである。
また、このような連結部の開口面積(A)であれば、洗浄液再生装置が過度に大きくなることを防止し、洗浄装置への取付けが容易な適当サイズの洗浄液再生装置とすることができるためである。
したがって、洗浄液再生装置において、連結部の開口面積(A)を1,000〜1,000,000mm2の範囲内の値とすることがより好ましく、10,000〜150,000mm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
また、洗浄液蒸気に水蒸気が含まれる場合、連結部における開口部での水蒸気の移動速度を0.02〜6m/secの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように水蒸気の移動速度を所定範囲内の値に制限することにより、気液平衡を利用した減圧蒸留において、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、突沸現象をさらに有効に防止することができるためである。
したがって、連結部における開口部での水蒸気の移動速度を0.03〜0.6m/secの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.6m/secの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
(5)加熱手段
また、図1に示す生成部13における加熱手段31aは、蒸発槽31に貯留された蒸留元液30を所定温度に維持可能な熱量を供給するものである。
したがって、例えば、加熱用蒸気が通気されることで蒸留元液30を加熱可能な蒸気流路や加熱ヒータなどから構成される。
また、このような加熱手段31aは、蒸発槽31内の液量が一定又は略一定に維持される場合には、一定の熱量を供給するものであってもよく、あるいは、蒸発槽31内の液量が経時的に変動する場合や、配管17bから供給される使用済洗浄液の温度が経時的に変動する場合には、液量や温度に応じて熱量を調整可能なものであってもよい。
さらに、図示しない温度センサ等を用いて、供給する熱量を調整するように構成することも可能である。
【0048】
また、加熱手段に関し、ヒータ容量(B)を0.1〜100kWの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにヒータ容量(B)を所定範囲内の値に制限することにより、洗浄液蒸気の移動速度の制御がさらに容易になって、気液平衡を利用した減圧蒸留においても、突沸現象を有効に防止することができるためである。
また、このようなヒータ容量(B)であれば、消費電力が過度に大きくなることを防止し、経済性にも優れた洗浄液再生装置とすることができるためである。
したがって、ヒータ容量(B)を0.1〜50kWの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜30kWの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0049】
また、生成部13における温度(蒸発温度)は、用いる洗浄液や圧力により適宜選択することが可能であるが、稼働中には一定温度に維持されることが好ましい。
より具体的に、生成部における蒸発温度を50〜200℃の範囲内の値に保つことが好ましい。
この理由は、このような温度範囲に設定することによって、洗浄液再生装置において用いる洗浄液の選択幅を著しく高めることができるためである。
すなわち、生成部における蒸発温度が50℃未満の値になると、使用可能な洗浄剤の種類が過度に制限される場合があるためである。
一方、生成部における蒸発温度が200℃を超えると、同様に、使用可能な洗浄剤の種類が過度に制限されたり、生成部における構成材料が過度に制限されたり、さらには、生成部の維持管理が困難となる場合があるためである。
したがって、生成部における蒸発温度を50〜180℃の範囲内の値とすることが好ましく、60〜160℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる生成部における蒸発温度は、基本的に、生成部の減圧度や洗浄液の配合組成等によって調整され、決定される値である。
【0050】
(6)排出部
また、図1に示す排出部37は、使用済洗浄液に混入された状態で蒸発槽31に持ち込まれた汚染物質を、系外に排出するための部位である。
したがって、蒸発槽31の底部に開口した排出管37aと、排出管37aを開閉するための開閉弁37bとを有している。
また、汚染物質は、洗浄液を構成する洗浄成分以外の液体や固体などであり、洗浄液再生装置10の稼働中に蒸発することなく経時的に蒸発槽31に蓄積され、この実施の形態では蒸発槽31の底部に滞留する。
そのため、定期的に、或いは、滞留する汚染物質の量が増加した際に、蒸発槽31の底部から排出することが可能となっている。
但し、このような排出部を設けることなく、所定時間経過した後に、生成部における蒸発槽31を、新規蒸発槽に交換することによって、汚染物資の影響を排除することもできる。
【0051】
(7)液面調整手段
その他、この生成部13では、蒸発槽31に貯留される蒸留元液30の貯留量を一定又は略一定に保つために、例えば、液面を所定の範囲、好ましくは一定の位置に保つための液面調整手段を設けることが好ましい。
このような液面調整手段としては、例えば、図1に示すような、フロート31bの所定動作(上下方向動作)によって、機械的に流量調整弁17dの開度を調整することが好ましい。
さらに、液面センサにより検出された液面位に基づき、配管17bに設けられた流量調整弁17dの開度を、図示しないマイクロプロセッサーからの電気的信号をもとに、調整するようにしてもよい。
【0052】
3.回収部
(1)基本的構成
また、図1に示す洗浄液再生装置10における回収部23は、再生洗浄液15を、洗浄液タンク43を介して、連続的に回収するための部位である。
したがって、再生洗浄液15が貯留される洗浄液タンク43と、洗浄液タンク43の再生洗浄液15を循環ポンプ49aにより循環流動させる循環経路47と、循環経路47の途中に設けられて洗浄液15が流動することで負圧を生じる吸引部49と、吸引部49により冷却部41内及び生成部13内の気体或いは液体を吸引するように、冷却部41を介して吸引部49と生成部13との間を連通する配管路であって、逆止弁53bを含む減圧経路55と、を備えている。
そして、洗浄液タンク43には、貯留されている再生洗浄液15を外部に取り出すための洗浄液取出部としての逆止弁17cを含む配管17aが設けられている。
【0053】
(2)洗浄液タンク
また、洗浄液タンク43は、所定の配合組成の再生洗浄液15が貯留される容器として設けられている。
この洗浄液タンク43に収容される洗浄液量としては、循環経路47内に洗浄液を常時循環流動させた状態で、配管17aから洗浄装置(図示しない)へ供給する量の洗浄液を十分に確保できる容積であればよい。
但し、洗浄液量が過剰となると、洗浄液再生装置の簡易化や小型化に資することが困難となる。すなわち、この洗浄液タンク43に貯留される洗浄液が過剰に多いと、洗浄液再生装置10における再生洗浄液15の使用量が無駄に多くなりやすく、また、洗浄液再生装置自体が大型化しやいという問題があるためである。
なお、この洗浄液タンク43には、再生洗浄液を所定温度に保つために、冷却装置や加熱装置等を設けることがより好ましい。
【0054】
(3)循環経路
また、循環経路47は、洗浄液タンク43に流入口47a及び流出口47bが設けられた配管路であり、途中に設けられた循環ポンプ49aにより、吸引部49bを介して、洗浄液タンク43内の洗浄液を、常時流入口47aから流出口47bまで流動させるように構成されている。
そして、吸引個所49bに設けた圧力計49cによって、循環経路47の圧力をモニタするとともに、維持管理している。
なお、循環ポンプ49aは、例えば洗浄液を一定流量で連続的に循環流動させるポンプであることから、エゼクタ効果により、吸引個所49bに生じる負圧を一定に保ち易くできることから好適である。
【0055】
(4)吸引部
また、循環経路47の途中に設けられた吸引部49は、再生洗浄液15が流動することで負圧を生じて液体あるいは気体を吸引する部位であって、図1の場合、循環ポンプ49aと、吸引個所49bと、圧力計49cと、から構成されている。
すなわち、かかる吸引部49によれば、エゼクタ効果により、負圧を生じることで、減圧経路55を介して、冷却部41内の貯留部41bに貯留された再生洗浄液(洗浄液蒸気を含む場合がある。)15を吸引することが可能である。
したがって、吸引された再生洗浄液15は、吸引部49において循環経路47を流動する再生洗浄液15に対して、そのまま導入されて洗浄液タンク43に供給されることとなる。
【0056】
また、この洗浄液再生装置10では、吸引部49により、貯留部41bを介して、再生洗浄液15及び洗浄液蒸気が吸引されることにより、生成部13内が減圧されている。
この実施形態では、生成部13の圧力を、例えば、−0.01〜−0.1MPaの範囲内の値とするように吸引部49で吸引することが可能であり、それにより、洗浄液再生装置10において用いる洗浄液の構成の選択幅の自由度が高くなっている。
但し、過度に減圧すると、吸引部の能力を増加すべく、大型化する場合がある。
したがって、吸引部49によって、生成部13の圧力を、−0.06〜−0.095MPaの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、吸引部49における吸引個所49bの構成は、T字管であれば十分であるが、その他、エゼクタやアスピレータ等から構成されていても良い。
【0057】
4.基本的動作
次に、図1に示す洗浄液再生装置10の基本的動作について説明する。
かかる洗浄液再生装置10では、予め生成部13に蒸留元液30が貯留されて、蒸発槽31内で、ヒータ等の加熱手段31aにより加熱されている。
また、予め回収部23の洗浄液タンク43内に再生洗浄液15が貯留され、循環ポンプ49aにより再生洗浄液15が、循環経路47内で反時計回りに循環流動されており、それを利用した吸引部49により生じた負圧により、生成部13が減圧状態にされている。
これにより、生成部13内は、所望とする再生洗浄液15の配合成分や組成に応じた所定の温度及び圧力を有する稼働条件に保たれている。
【0058】
次いで、生成部13に、配管17bにより導かれた使用済洗浄液が供給され、蒸留元液30と混合されることで、生成部13の稼働条件下、再生洗浄液15を構成する配合成分が、洗浄液蒸気15´として蒸発する。
そして、蒸留元液30が、予め生成部13の稼働条件下で、配管17bを介して供給される使用済洗浄液と混合されつつ、再生洗浄液の配合組成を有する洗浄液蒸気15´を生成可能なように、気液平衡を利用して調整されているため、生成部13において、所定の配合組成を有する洗浄液蒸気15´が生成される。
【0059】
一方、生成部13では、吸引部49の機能によって所定の減圧状態で保持されつつ、連続的に洗浄液蒸気15´が生成されて、蒸留元液30から各配合成分が減少するものの、配管17bから連続的に使用済洗浄液が供給されることで、結果として、再生洗浄液の配合組成に対応する割合で各成分が補充される。
そして、液面が一定又は略一定に保たれることで、蒸留元液30の配合組成及び貯留量は一定又は略一定に保たれることになる。
【0060】
また、吸引部49では、吸引された洗浄液蒸気15´や再生洗浄液15が、循環経路47内をすでに流動する再生洗浄液15に導入されて、洗浄液タンク43に移送される。
これにより生成部13により生成された洗浄液蒸気15´が系外に排出されることなく、全て再生洗浄液15として洗浄液タンク43に収容される。したがって、使用済洗浄液の再生処理が終了し、再び、洗浄液として、配管17aから洗浄装置11に供給可能となる。
【0061】
以上説明した洗浄液再生装置10によれば、所定の吸引部49を設けることにより、洗浄液タンク43の洗浄液15が循環経路47を循環流動することで負圧が生じ、生成部13が減圧状態にされるとともに、生成部13で生じる洗浄液蒸気15´や再生洗浄液15が、貯留部41bを介して吸引され、それが、循環経路47を流動する再生洗浄液15に対して導入されるので、洗浄液15の各成分を系外に排出することなく、使用済洗浄液を減圧状態で蒸発させて回収する再生処理を行うことが可能である。
その上、この洗浄液再生装置10では、生成部13に貯留された蒸留元液30が、吸引部49の負圧に基づく生成部13の圧力及び温度において、洗浄液15の組成を有する洗浄液蒸気と気液平衡となる組成を有するので、洗浄液15の組成が変動し難く、洗浄液15を所望の組成で維持して再生処理を安定して行うことが可能である。
【0062】
また、減圧状態で再生処理を行うため、より低温で十分な量の洗浄液15を再生し易いという利点がある。
さらにまた、生成部13内を減圧するために気体を排出する手段や、排出される気体を気液分離する手段などを用いる必要がない。そのため、洗浄液再生装置10の構成を簡易かつ小型化することが可能である。
【0063】
その他、この洗浄液再生装置10では、循環ポンプ49aが所定流量で連続的に洗浄液15を循環流動させるものであって、生成部13が所定温度で維持されるものであれば、生成部13の稼働条件を安定に維持することができる。
したがって、生成部13から安定した量で洗浄液蒸気を生成させることが可能であり、この生成部13に使用済洗浄液が所定量連続的に混合されるように構成されているので、洗浄液蒸気の生成量と使用済洗浄液の混合量とを合わせることで、所望の組成を維持して洗浄液15の再生処理を長期間継続することが可能である。
【0064】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図7に示すように、再生洗浄液15により被洗浄物(図示せず)を洗浄可能であるとともに、洗浄後の使用済洗浄液30を生成部13へ供給可能な洗浄装置11と、再生洗浄液15を生成する洗浄液再生装置10と、を備えた循環洗浄装置12である。
そして、洗浄液再生装置10が、複数成分からなる使用済洗浄液30を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気15´を生成するとともに、当該洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための生成部13と、再生洗浄液15を連続的に回収するための回収部23と、を備えており、生成部13は、使用済洗浄液30を収容するとともに、加熱するための蒸発部31と、洗浄液蒸気15´を凝縮して、再生洗浄液15とするための冷却部41と、蒸発部31および冷却部41をつなぐ連結部41cと、を備えており、連結部41cの開口面積をA(mm2)とし、蒸発部31を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気15´の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする循環洗浄装置12である。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
なお、図7に示す循環洗浄装置12において、第1の実施形態で説明したように、図1に示す洗浄液再生装置10と同様のものがそのまま使用できるため、ここでは、洗浄装置11について、中心に説明する。
【0065】
1.洗浄装置
図7に示す洗浄装置11は、配管17aから供給される洗浄液15aを、リンス槽60を含むリンス部11aおよび逆止弁65を介して、洗浄槽62を含む洗浄部11bに導入し、それを用いて、被洗浄物を洗浄可能な構成としており、かつ、洗浄に使用した使用済の洗浄液15bを、配管17bを介して、洗浄液再生装置10に対して供給可能な構成である。
このような洗浄装置11としては、配管17aから供給される再生洗浄液15の実質的に全量を洗浄液再生装置10に供給可能なものであることが好適である。
したがって、被洗浄物に付着して洗浄液15が系外に排出される等の不可避の消費があってもよいが、配管17b以外からは系外に排出されない構成であることが好ましい。
【0066】
また、かかる洗浄装置11では、リンス槽60を含むリンス部11aと、洗浄槽62を含む洗浄部11bと、を備えており、その間に、再生洗浄液15bの逆流を防止するための逆止弁65が設けてある。
したがって、まずは、洗浄槽62において、被洗浄物を、洗浄液30に浸漬するとともに、それを用いて洗浄し、半田やフラックス残渣等を除去する。そして、洗浄槽62に収容した洗浄液15bが、半田やフラックス残渣等によって、所定以上に汚染された場合、当該半田やフラックス残渣等を含む洗浄液15b(30)を、洗浄液再生装置10に供給する構成である。
一方、洗浄槽62において洗浄した被洗浄物を、洗浄槽62からリンス槽60に移動させ、そこで、清浄なリンス液としての再生洗浄液15aを用いて、表面に付着した汚染物を効率的に除去する。そして、洗浄液再生装置10において再生された再生洗浄液15aが、定常的または非定常的に、リンス槽60に供給されるため、それをリンス液として、安定的にリンス処理を実施することができる。
その他、洗浄液再生装置10において再生され、リンス槽60に供給された再生洗浄液15aの一部は、オーバーフロー等して、洗浄槽62に導入され、被洗浄物の洗浄に使用されることになるが、逆止弁65が設けてあるため、構成として、リンス槽60に還流することはない。
なお、図7に示す洗浄装置11は、便宜上、左方から、リンス槽60を含むリンス部11aと、洗浄槽62を含む洗浄部11bと、洗浄液再生装置10と、を順次配列してあるが、リンス槽60を含むリンス部11aの下方、上方、あるいは左方に、洗浄液再生装置10を配置するとともに、当該リンス部11aを、洗浄部11bの右方に配置し、その間に、逆止弁65を設けても良い。
【0067】
2.循環洗浄装置
(1)基本的構成
また、図7に示す循環洗浄装置12の基本的構成として、再生洗浄液15により被洗浄物を洗浄するとともに、洗浄後の使用済洗浄液30を生成部13へ供給可能な洗浄装置11と、再生洗浄液15を生成するための洗浄液再生装置10と、を備えているが、洗浄装置11と、洗浄液再生装置10とが、一対一で対応して設けられていてもよい。
あるいは、図示しないものの、一つの洗浄装置に対して、複数の洗浄液再生装置が設けられていてもよく、さらには、複数の洗浄装置に対して、一つの洗浄液再生装置が設けられていてもよい。
【0068】
また、循環洗浄装置12は、洗浄装置11と、洗浄液再生装置10と、を含んで構成されているものの、図8に示すように、洗浄液再生装置10の一部10bが、洗浄装置11のリンス部11aを兼用するように、構成されていても良い。
すなわち、図8に示す循環洗浄装置12は、図1に示す洗浄液再生装置10の回収部23における洗浄液タンク43が、洗浄装置11におけるリンス槽60を兼用する例である。
したがって、このような循環洗浄装置12であれば、かかるリンス槽60を、被洗浄物のリンス処理場所として使用し、このリンス槽60の右方に、被洗浄物の主洗浄タンク62を設けることができることから、全体として、循環洗浄装置の小型化を図ることができる。
【0069】
(2)基本的動作
次に、図7に示すような循環洗浄装置12の基本的動作について説明する。
この循環洗浄装置12を連続的に稼働させると、洗浄装置11では、洗浄液タンク43から、流量調整弁17cにより流量を調整されつつ配管17aにより導かれた再生洗浄液15が、リンス槽60に順次供給され、リンス液15aになるとともに、この再生洗浄液15の一部が、リンス槽60からオーバーフローして、洗浄槽62に流入し、洗浄液15bとなる。
したがって、被洗浄物が洗浄槽62に収容され、そこの洗浄液15bによって、被洗浄物の洗浄が行われることになる。
この洗浄で、被洗浄物に付着している固体や液体からなる汚染物質が洗浄液に移行し、洗浄液に汚染物質が混入した状態の使用済洗浄液30が、洗浄装置11から排出される。この使用済洗浄液30が、配管17bにより洗浄液再生装置10に導かれる。
【0070】
すなわち、洗浄液再生装置10では、予め生成部13に蒸留元液30が貯留されて、蒸発槽31内で加熱手段35により加熱されている。また、予め回収部23の洗浄液タンク43内に再生洗浄液15が貯留され、循環ポンプ49aにより、再生洗浄液15が循環経路47内で循環流動されており、吸引部49により生じた負圧により、生成部13が減圧状態にされている。
これにより、生成部13内は、洗浄液15の成分や組成に応じた所定の温度及び圧力を有する稼働条件に保たれている。
【0071】
そして、このような洗浄液再生装置10を用いた循環洗浄装置12において、洗浄液再生装置10の配管17aからの再生洗浄液15(リンス液15a、洗浄液15b)により、被洗浄物を洗浄するとともに、リンス処理を行うことができる。
それとともに、洗浄後の汚染された使用済洗浄液30を洗浄液再生装置10の生成部13へ供給する洗浄装置11を備えていることから、かかる洗浄装置11と、洗浄液再生装置10との間で、再生洗浄液15を繰り返し循環させて使用することができる。
【0072】
その際、洗浄液再生装置10では、再生洗浄液15の各成分を系外に排出することなく、使用済洗浄液を蒸発して回収する再生処理を行うことができるため、長期間連続して再生洗浄液を循環して使用することが可能である。
【0073】
しかも、洗浄液再生装置10の生成部13では、蒸留元液30から洗浄液15の配合組成に対応する各配合成分が連続的に、突沸もなく、気液平衡状態を利用しつつ、蒸発する。したがって、生成部13に対して、洗浄液15に対応する各配合成分が、使用済洗浄液として連続的かつ安定的に補充されるため、生成部13の蒸留元液30の配合組成を維持することができる。
よって、長期間洗浄液を循環して使用したとしても、特別な成分調整を行うことなく、所定の配合組成の再生洗浄液を継続して再生することができ、その結果、複数成分が所定の組成で混合された洗浄液を長期間連続して洗浄装置に供給して被処理物を洗浄することが可能となる。
【0074】
(3)洗浄液
また、洗浄液として、第1の実施形態で説明したのと同様のものを使用することができるが、さらに、所定の洗浄剤組成物用原液を準備し、それに所定量の水を後添加して、白濁状態の洗浄液(洗浄剤組成物)として使用することも好ましい。
すなわち、所定量の水を含んだ状態で、白濁状態の洗浄剤組成物として、被洗浄物を洗浄するための洗浄剤組成物用原液であって、その配合組成としては、第1の有機溶剤として、SP値が6.5〜12の範囲内の値である炭化水素化合物または芳香族化合物と、第2の有機溶剤として、SP値が8〜15の範囲内の値である含窒素化合物または含イオウ化合物と、第3の有機溶剤として、SP値が8〜12の範囲内の値であるエステル化合物と、を含むとともに、第1の有機溶剤100重量部に対して、第2の有機溶剤の配合量を5〜1400重量部の範囲内の値とし、第3の有機溶剤の配合量を5〜1400重量部の範囲内の値とした洗浄液用の組成物である。
このように構成することによって、所定量の水を後添加する前は、均一溶液であるとともに、所定量の水を後添加し、相分離させ、白濁状態の洗浄液として、フラックス残渣やソルダーペースト等が付着した被洗浄物に対して、優れた洗浄力を示すことができる。
すなわち、第1の有機溶剤であるSP値が6.5〜12の範囲内の値である炭化水素化合物(例えば、脂肪族炭化水素等)または芳香族化合物(例えば、芳香族炭化水素等)と、第3の有機溶剤であるSP値が8〜12の範囲内の値であるエステル化合物とは、本来相溶し難い組み合わせである。しかるに、第2の有機溶剤であるSP値が8〜15の範囲内の値である含窒素化合物(例えば、アミン化合物等)や含イオウ化合物(例えば、スルホキシド化合物等)を所定量含むことにより、洗浄剤組成物用原液において、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤とが相溶し、均一溶液となるものである。
そして、かかる洗浄剤組成物用原液に対して、所定量の水を後添加した場合、第2の有機溶剤の作用効果が変化し、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤とが、非相溶状態となって、静置すると、相分離することになる。それを、所定の攪拌状態におくと白濁状態となるものの、フラックス残渣やソルダーペースト等に対して、優れた洗浄力を示すことができるようになる。
なお、洗浄剤組成物における白濁状態の是非は、目視によって官能的に判断することも可能であるが、後述するように洗浄剤組成物の光透過率によって、定量的に判断することができる。
【0075】
また、このような洗浄剤組成物用原液であれば、比較的多量の水と混合使用できることから、環境安全性や取扱性、さらには再処理性に優れた洗浄剤組成物を効率的に提供することができる。
より具体的には、全体量に対して、60重量%以上の水を含むことが可能なことから、消防法の危険物に該当しなくなるためである。
また、同様に、比較的多量の水を含むことから、使用によって、洗浄剤組成物が汚染された場合であっても、効率的に再生使用することが可能なためである。
さらに、このような洗浄剤組成物用原液であれば、使用者が、被洗浄物における汚染度合い等に応じて、洗浄剤組成物用原液と、水との配合割合を変えられることから、安価に、洗浄性を変えてなる洗浄剤組成物を効率的に提供することができる。
【0076】
次いで、洗浄剤組成物用原液を構成する第1の有機溶剤、第2の有機溶剤、および第3の有機溶剤を具体的に説明する。
【0077】
(第1の有機溶剤)
また、洗浄剤組成物用原液を構成する第1の有機溶剤は、SP値が6.5〜12の範囲内の値である炭化水素化合物または芳香族化合物であって、所定の洗浄力を発揮するために配合する有機溶剤である。
すなわち、第1の有機溶剤として、所定SP値を有する炭化水素化合物または芳香族化合物を用いることにより、所定量の水と混合する前は、幅広い温度領域において、第2の有機溶剤および第3の有機溶剤とともに均一溶液を組成するとともに、所定量の水を後添加した場合には、白濁状態の洗浄剤組成物となって、さらに優れた洗浄力を示すことができる。
【0078】
より具体的には、このような第1の有機溶剤としては、第2および第3の有機溶剤、あるいは後述する第4の有機溶剤のいずれにも該当しない炭化水素化合物または芳香族化合物であって、例えば、アニソール(SP値:9.3、沸点:152℃、引火点:52℃)、フルフラール(SP値:10.2、沸点:162℃、引火点:62℃)、メチルスチレン(SP値:8.8、沸点:164℃、引火点:54℃)、ミルセン(SP値:7.7、沸点:167℃、引火点:54℃)、クメン(SP値:9.0、沸点:169℃、引火点:50℃)、メンタン(SP値:7.2、沸点:170℃、引火点:63℃)、フェネトール(SP値:9.0、沸点:170℃、引火点:63℃)、デカン(SP値:7.7、沸点:170℃、引火点:53℃)、リモネン(SP値:7.8、沸点:175℃、引火点:48℃)、シメン(SP値:8.7、沸点:177℃、引火点:47℃)、テルピネン(SP値:8.0、沸点:180℃、引火点:71℃)、n−パラフィンL(SP値:8.9、沸点:189〜229℃、引火点:71℃)、インデン(SP値:6.8、沸点:182℃、引火点:78℃)、トルイジン(SP値:9.8、沸点:202℃、引火点:85℃)、デュレン(SP値:9.2、沸点:192℃、引火点:65℃)、ベンジルアミン(SP値:9.9、沸点:185℃、引火点:72℃)、ベンジルエチルエーテル(SP値:8.9、沸点:189℃、引火点:73℃)、チオアニソール(SP値:8.8、沸点:188℃、引火点:72℃)、ジメチルアニリン(SP値:9.9、沸点:188℃、引火点:63℃)、リナロール(SP値:9.4、沸点:198℃、引火点:83℃)、メチルベンゾエート(SP値:9.9、沸点:199℃、引火点:82℃)、ジイソプロピルベンゼン(SP値:8.3、沸点:202℃、引火点:85℃)、スワゾール(SP値:9.5、沸点:180〜208℃、引火点:64℃)、グアヤコール(SP値:10.2、沸点:205℃、引火点:87℃)、ベンジルアルコール(SP値:11.6、沸点:205℃、引火点:93℃)、テトラリン(SP値:9.2、沸点:208℃、引火点:77℃)、N−メチルベンジルアミン(SP値:9.5、沸点:180℃、引火点:77℃)、N,N−ジメチルベンジルアミン(SP値:9.8、沸点:181℃、引火点:60℃)、α−フェニルエチルアミン(SP値:9.7、沸点:192℃、引火点:79℃)、およびフェネチルアミン(SP値:9.7、沸点:198℃、引火点:90℃)からなる群から選択される少なくとも一つの脂肪族炭化水素または芳香族化合物(ベンジルアミンや、ベンジルアルコールを含む。)であることが好ましい。
【0079】
特に、第1の有機溶剤としては、アニソール、フルフラール、クメン、フェネトール、デカン、リモネン、シメン、テルピネン、n−パラフィン、ベンジルアミン、ベンジルエチルエーテル、メチルベンゾエート、ジイソプロベンゼン、ベンジルアルコール、トルイジン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、α−フェニルエチルアミンおよびフェネチルアミンからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、このような種類の第1の有機溶剤を用いることにより、比較的少量の配合であっても優れた洗浄性が得られるとともに、乾燥性の低下も相対的に少なくなるためである。
よって、第1の有機溶剤におけるSP値を7〜12の範囲内の値とすることが好ましく、8〜11の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0080】
また、第1の有機溶剤の配合量を、全体量に対して、0.25〜55重量%の範囲内の値にすることが好ましい。
この理由は、かかる第1の有機溶剤の配合量が、0.25重量%未満の値になると、フラックス等に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。一方、かかる第1の有機溶剤の配合量が、55重量%を超えると、可燃性液体量として、所定量を超えるために、消防法上の危険物として取り扱わなければならない場合があるためである。
したがって、その洗浄性と、取り扱い性とのバランスを考慮して、第1の有機溶剤の配合量を、全体量に対して、1〜50重量%の範囲内の値にすることがより好ましく、3〜30重量%の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
【0081】
また、図9に、第1の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図9の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液を用いた洗浄剤組成物(水分も含む)中の第1の有機溶剤の配合量(重量%)が採って示してあり、縦軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液を用いた場合の洗浄性の評価結果(相対値)が採って示してある。
そして、洗浄性の評価結果(相対値)は、0〜10の評価点で表しており、フラックスの洗浄温度を70℃とした上で、その評価基準は、以下の通りである。
評価点10:フラックス洗浄時間が0〜10分未満である。
評価点9 :フラックス洗浄時間が10〜12分未満である。
評価点8 :フラックス洗浄時間が12〜15分未満である。
評価点7 :フラックス洗浄時間が15〜17分未満である。
評価点6 :フラックス洗浄時間が17〜20分未満である。
評価点5 :フラックス洗浄時間が20〜25分未満である。
評価点4 :フラックス洗浄時間が25〜30分未満である。
評価点3 :フラックス洗浄時間が30〜40分未満である。
評価点2 :フラックス洗浄時間が40〜50分未満である。
評価点1 :フラックス洗浄時間が50〜60分未満である。
評価点0 :フラックス洗浄時間が60分以上である。
【0082】
かかる図9の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第1の有機溶剤の配合量が、全体量に対して、例えば、図中、レンジAで示す0.25〜55重量%の範囲であれば、水を所定量含む洗浄剤組成物とした場合に、良好な洗浄性が得られている。
一方、第1の有機溶剤の配合量が0.25重量%未満の値となったり、55重量%を超える値となったりすると、水を所定量含む洗浄剤組成物とした場合の洗浄性の評価結果が著しく低下することが理解される。
また、配合成分の相違や配合量等のばらつきを考慮しても、例えば、図中、レンジBで示す1〜50重量%の範囲であれば、さらに良好な洗浄性が得られることが理解される。
したがって、洗浄剤組成物原液中の第1の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、水を所定量含む洗浄剤組成物とした場合に、良好な洗浄性が得られることが理解される。
よって、本願発明の洗浄剤組成物原液における第1の有機溶剤の配合量を、水を所定量含む洗浄剤組成物とした場合の洗浄性から、所定範囲に制限することが好ましいと言える。
【0083】
(第2の有機溶剤)
第2の有機溶剤は、SP値が8〜15の範囲内の値である含窒素化合物(例えば、アミン化合物やピロリドン化合物等)または含イオウ化合物(例えば、スルホキシド化合物等)、あるいはいずれか一方の化合物である。
すなわち、第2の有機溶剤は、洗浄剤組成物とした場合の洗浄性を向上させるとともに、所定量の水と混合する前は、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤との相分離を有効に防いで、均一溶液としての洗浄剤組成物用原液を提供するために配合する有機溶剤である。
【0084】
より具体的には、このような第2の有機溶剤としては、第1および第3の有機溶剤、あるいは後述する第4の有機溶剤のいずれにも該当しない含窒素化合物または含イオウ化合物であって、例えば、2−エチルヘキシルアミン(SP値:8.4、沸点:168℃、引火点:53℃)、モノイソプロパノールアミン(SP値:12.7、沸点:160℃、引火点:74℃)、N−エチルエタノールアミン(SP値:11.4、沸点:169℃、引火点:71℃)、N、N−ジメチルアセトアミド(SP値:11.1、沸点:166℃、引火点:70℃)、N−メチルホルムアミド(SP値:11.8、沸点:183℃、引火点:98℃)、ジメチルスルホキシド(SP値:13.0、沸点:189℃、引火点:95℃)、N−メチル−2−ピロリドン(SP値:11.2、沸点:204℃、引火点:91℃)、およびジエタノールアミン(SP値:14.4、沸点:269℃、引火点:134℃)からなる群から選択される少なくとも一つのアミン系化合物やピロリドン化合物等である。
【0085】
特に、第2の有機溶剤としては、2−エチルヘキシルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエタノールアミン、N,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも一つのアミン化合物やピロリドン化合物等であることが好ましい。
この理由は、このような種類の第2の有機溶剤を用いることにより、所定量の水と混合する前は、幅広い温度領域において、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤との間の相分離を有効に防いで、均一溶液を組成するとともに、所定量の水を後添加した場合には、白濁状態の洗浄剤組成物となって、さらに優れた洗浄力を示すことができるためである。
よって、第2の有機溶剤におけるSP値を9〜14の範囲内の値とすることが好ましく、10〜13.5の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0086】
また、第2の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、5〜1400重量部の範囲内の値とする。
この理由は、かかる第2の有機溶剤の配合量が、5重量部未満の値になると、洗浄剤組成物とした場合の洗浄性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる第2の有機溶剤の配合量が、1400重量部を超えた値になると、洗浄剤組成物とした場合の洗浄性や乾燥性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、第2の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、10〜600重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜350重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0087】
また、図10に、第2の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図10の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液中の第2の有機溶剤の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液を用いた洗浄剤組成物における洗浄性の評価結果(相対値)が採って示してある。
そして、洗浄性の評価結果(相対値)は、0〜10の評価点で表しており、その評価基準は、図9の場合と、同様である。
そして、かかる図10の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第2の有機溶剤の配合量が、第1の有機溶剤100重量部に対して、例えば、レンジAで示す5〜1400重量部の範囲であれば、評価点が8以上の良好な洗浄性が得られている。
一方、第2の有機溶剤の配合量が5重量部未満の値となったり、1400重量部を超える値となったりした場合、洗浄性の評価結果が著しく低下することが理解される。
また、配合成分の相違や配合量等のばらつきを考慮しても、例えば、レンジBで示す10〜600重量部の範囲であれば、評価点が10程度のさらに良好な洗浄性が得られることが理解される。
したがって、洗浄剤組成物原液中の第2の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、良好な洗浄性が得られることが理解される。
【0088】
(第3の有機溶剤)
また、洗浄剤組成物用原液を構成する第3の有機溶剤は、SP値が8〜12の範囲内の値であるエステル化合物であって、洗浄剤組成物とした場合の乾燥性を向上させるために配合する有機溶剤である。
そして、第3の有機溶剤は、所定量の水と混合する前は、第1および第2の有機溶剤とともに、均一溶液としての洗浄剤組成物用原液を提供するために配合する有機溶剤である。
より具体的には、このような第3の有機溶剤としては、第1〜2の有機溶剤、および後述する第4の有機溶剤のいずれにも該当しないエステル化合物であって、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値:9.2、沸点:146℃、引火点:47℃)、3−メトキシブチルアセテート(SP値:9.3、沸点:173℃、引火点:63℃)、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート(SP値:9.2、沸点:188℃、引火点:73℃)、プロピレングリコールジアセテート(SP値:10.4、沸点:190℃、引火点:93℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:9.0、沸点:192℃、引火点:88℃)、乳酸ブチル(SP値:10.5、沸点:188℃、引火点:71℃)、アセト酢酸メチル(SP値:11.6、沸点:172℃、引火点:77℃)、アセト酢酸エチル(SP値:10.7、沸点:181℃、引火点:75℃)、無水プロピオン酸(SP値:10.5、沸点:167℃、引火点:74℃)、無水酪酸(SP値:9.7、沸点:199℃、引火点:88℃)、シュウ酸ジエチル(SP値:10.8、沸点:189℃、引火点:76℃)、およびオクタン酸エステル(SP値:8.4、沸点:208℃、引火点:75℃)からなる群から選択される少なくとも一つのエステル化合物である。
【0089】
特に、第3の有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、およびエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも一つのエステル化合物であることが好ましい。
この理由は、このような種類の第3の有機溶剤を用いることにより、所定量の水と混合する前は、幅広い温度領域において、第1の有機溶剤および第2の有機溶剤とともに、均一溶液を組成するとともに、所定量の水を後添加した場合には、白濁状態の洗浄剤組成物として、さらに優れた洗浄力を示すことができるためである。
したがって、第3の有機溶剤におけるSP値を8.5〜11.5の範囲内の値とすることが好ましく、9〜11の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0090】
また、第3の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、5〜1400重量部の範囲内の値とする。
この理由は、かかる第3の有機溶剤の配合量が、5重量部未満の値になると、洗浄剤組成物原液から洗浄剤組成物を構成した場合の乾燥性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる第3の有機溶剤の配合量が、1400重量部を超えた値になると、洗浄剤組成物原液から洗浄剤組成物を構成した場合の洗浄性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、第3の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、10〜600重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜350重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0091】
また、図11に、第3の有機溶剤の配合量の、洗浄性に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図11の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液を用いた洗浄剤組成物における洗浄性の評価結果(相対値)が採って示してある。
また、洗浄性の評価結果(相対値)は、0〜10の評価点で表しており、その評価基準は、図9の場合と、同様である。
そして、かかる図11の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量が、第1の有機溶剤100重量部に対して、例えば、レンジAで示すように、1400重量部以下の値であれば、評価点が8以上の良好な洗浄性が得られ、レンジBで示すように、600重量部以下の値であれば、評価点が10以上の良好な洗浄性が得られている。
但し、第3の有機溶剤の配合量が0重量部となっても、洗浄性の評価結果は良好であることが理解される。
【0092】
一方、図12に、第3の有機溶剤の配合量の、乾燥性に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図12の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液を用いた洗浄剤組成物における乾燥性の評価結果(相対値)が採って示してある。
そして、乾燥性の評価結果(相対値)は、0〜10の評価点で表しており、乾燥温度100℃の条件において、その評価基準は、以下のとおりである。
評価点10:乾燥時間が0〜5分未満である。
評価点9 :乾燥時間が5〜7分未満である。
評価点8 :乾燥時間が7〜10分未満である。
評価点7 :乾燥時間が10〜12分未満である。
評価点6 :乾燥時間が12〜15分未満である。
評価点5 :乾燥時間が15〜17分未満である。
評価点4 :乾燥時間が17〜20分未満である。
評価点3 :乾燥時間が20〜22分未満である。
評価点2 :乾燥時間が22〜25分未満である。
評価点1 :乾燥時間が25〜30分未満である。
評価点0 :乾燥時間が30分以上である。
【0093】
かかる図12の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量が、全体量に対して、レンジAで示すように、10重量部以上の値であれば、評価点が8以上の良好な乾燥性が得られ、レンジBで示すように、20重量部以上の値であれば、評価点が10程度のさらに良好な乾燥性が得られている。
したがって、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、良好な乾燥性が得られることが理解される。
よって、上述した洗浄性の評価結果を加味すると、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、良好な洗浄性および乾燥性との間のバランスを取ることができる。
【0094】
その他、図13に、第3の有機溶剤の配合量の、洗浄剤組成物原液の引火点に対する影響を検討した結果を示す。
すなわち、図13の横軸には、実施例1に準拠した洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液の引火点(℃)が採って示してある。
かかる図13の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量が、全体量に対して、例えば、50重量部以上の値であれば、75℃以上の比較的高い引火点の値が得られている。
よって、上述した洗浄性および乾燥性の評価結果をさらに加味すると、洗浄剤組成物原液中の第3の有機溶剤の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、引火点のみならず、良好な洗浄性および乾燥性との間のバランスを取ることができる。
【0095】
(第4の有機溶剤)
また、洗浄剤組成物用原液を構成するに際して、第4の有機溶剤として、SP値が8.5〜12の範囲内の値であるグリコールエーテルまたはアルコール化合物をさらに添加するとともに、当該第4の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、5〜600重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような第4の有機溶剤を所定量添加することにより、第2の有機溶剤を補完して、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤と、の間の相分離をさらに有効に防止することができるためである。
【0096】
ここで、このような第4の有機溶剤としては、第1〜3の有機溶剤のいずれにも該当しないグリコールエーテルまたはアルコール化合物である。
より具体的に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(SP値:9.6、沸点:150℃、引火点:48℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(SP値:9.0、沸点:171℃、引火点:62℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(SP値:8.7、沸点:171℃、引火点:65℃)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(SP値:9.1、沸点:161℃、引火点:56℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(SP値:10.9、沸点:142℃、引火点:46℃)、フルフリルアルコール(SP値:11.9、沸点:171℃、引火点:65℃)、および3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(SP値:10.5、沸点:174℃、引火点:68℃)等の少なくとも一つである。
【0097】
また、第4の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、5〜600重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第4の有機溶剤の配合量が、5重量部未満の値になると、添加効果を発現しない場合があるためである。
一方、かかる第4の有機溶剤の配合量が、600重量部を超えた値になると、洗浄性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、第4の有機溶剤の配合量を、第1の有機溶剤100重量部に対して、10〜250重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜150重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0098】
(界面活性剤)
また、界面活性剤は、上述した第1〜第3の有機溶剤、あるいは第1〜第4の有機溶剤を、水に対して乳化あるいは可溶化させるために添加するが、さらには、被洗浄物に対する親和性を向上させ、結果として、洗浄性を高めるために、洗浄剤組成物中に配合することが好ましい。
ここで、界面活性剤の好適例としては、非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンベンジルアルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0099】
また、界面活性剤の配合量は、例えば、洗浄剤組成物の全体量に対して、0.01〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる界面活性剤の配合量が、0.01重量%未満の値になると、上述した第1〜第3の有機溶剤の相溶性が不十分となって、洗浄剤組成物用原液において、分離しやすくなる場合があるためである。
一方、かかる界面活性剤の配合量が、5重量%を超えると、被洗浄物への残留量が多くなって、リンス工程が必須になったり、被洗浄物の電気特性を劣化させたりする場合があるためである。
したがって、その乳化性と、残留性等とのバランスを考慮して、界面活性剤の配合量を、全体量に対して、0.05〜2重量%の範囲内の値にすることがより好ましく、0.1〜2重量%の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
【0100】
(水分量)
また、多成分からなる洗浄剤組成物(使用済洗浄剤組成物)が、配合成分として水を含有している場合、洗浄剤組成物における水の含有量を、全体量に対して、40〜90重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる水の含有量が40重量%未満の値になると、洗浄剤組成物における低VOC性、安全性、取扱性等が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる水の含有量が90重量%を超えると、洗浄剤組成物における洗浄性や再生性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、洗浄剤組成物における水の含有量を、全体量に対して、60〜90重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、65〜90重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0101】
また、水分量に関して、白濁状態となって、優れた洗浄力を示すために、洗浄剤組成物用原液に対して、所定量の水を後添加し、所定の洗浄剤組成物とする。
すなわち、洗浄剤組成物用原液に対して、比較的多量の水を後添加することによって、第2の有機溶剤の作用効果を変化させるとともに、第1の有機溶剤と、第3の有機溶剤との分離を促進し、白濁状態の洗浄剤組成物となって、優れた洗浄力を示すことができる。
また、比較的多量の水を含むことから、環境安全性や取扱性、さらには再処理性に優れた洗浄剤組成物を効率的に提供することができる。
さらに、使用者が、被洗浄物における汚染度合いや汚染物の種類等に応じて、洗浄剤組成物用原液と、水との配合割合を変えられることから、安価かつ迅速に、洗浄性を変えてなる洗浄剤組成物を提供することができる。
【0102】
また、水の配合量を、洗浄剤組成物用原液100重量部に対して、50〜1900重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる水の配合量が、50重量部未満の値になると、洗浄性が低下するばかりか、安全性や取扱性が低下する場合があるためである。
一方、かかる水の配合量が、1900重量部を超えた値になると、逆に、洗浄性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、水の配合量を、洗浄剤組成物用原液100重量部に対して、150〜900重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、175〜600重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0103】
ここで、図14に、洗浄性における、洗浄剤組成物用原液100重量部に対する水の配合量の影響を検討した結果を示す。
すなわち、図14の横軸に、実施例1に準拠した洗浄剤組成物用原液100重量部に対する水の配合量(重量部)が採って示してあり、縦軸に、当該洗浄剤組成物原液から構成した洗浄剤組成物における洗浄性に対する評価結果(相対値)が採って示してある。
かかる図14の特性曲線が示すように、洗浄剤組成物用原液100重量部に対する水の配合量が、全体量に対して、例えば、レンジAで示すように、50〜1900重量部の範囲内の値であれば、評価点8以上の良好な洗浄性が得られている。
また、例えば、レンジBで示すように、65〜900重量部の範囲内の値であれば、評価点10の良好な洗浄性が得られている。
したがって、洗浄剤組成物用原液100重量部に対する水の配合量を所定範囲内の値に制限することによって、それから得られる洗浄剤組成物において、良好な洗浄性が得られることが理解される。
【0104】
(光透過率)
また、洗浄剤組成物の白濁状態の目安となる光透過率(可視光/750nm基準)を80%以内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる光透過率が80%を超えた値になると、均一溶液に近くなるか、あるいは相分離が過度になって、白濁状態を維持することができず、フラックス等に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる洗浄剤組成物の光透過率が過度に小さくなると、相分離が不十分になって、洗浄性の制御が困難となったり、フラックス等に対する洗浄効果が逆に低下したりする場合があるためである。
したがって、洗浄剤組成物の光透過率を0.5〜60%の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜40%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、洗浄剤組成物の可視光に対する光透過率は、分光光度計を用いて、実施例1に記載するように、測定することができる。
【実施例】
【0105】
[実施例1]
実施例1では、水と、N−メチルピロリドン(NMP)と、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)とが、15:20:65重量%である配合組成の洗浄液を用いて、図1に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄液の配合組成が安定に維持できるか否かを確認した。
そのため、表1に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
なお、実施例1の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
【0106】
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0107】
さらに、洗浄液(洗浄剤組成物)の光透過率は、以下のように測定した。すなわち、得られた洗浄剤組成物200gを、容量300mlのビーカー内部に収容した。次いで、ビーカー内のマグネチックスターラーを約700rpmで回転させた。次いで、その状態の洗浄剤組成物をすばやく分光光度計のセルに収容し、5分間静置させた後、その時点での光透過率を、下記条件に基づき測定した。
測定装置:分光光度計(日立製作所(株)製)
測定光 :可視光(波長750nm)
測定温度:室温(25℃)
【0108】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表1のように調製し、蒸発槽に投入した。
ここでは、仮の蒸留元液は循環洗浄装置の稼働開始時点で組成が変動するため、定常状態に達した時点で適切な蒸留元液となるように調製した。この仮の蒸留元液は、洗浄液再生装置の稼働条件下における液相組成と気相組成との相関図である図2〜図4、および上述した式(2)〜(5)をもとにし、洗浄液の組成の洗浄液蒸気と気液平衡が成立するように蒸留元液の配合組成を算出して、仕込み量を設定した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、凝集部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。その結果を表1に示す。
また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数を、それぞれ測定した。
【0109】
【表1】
【0110】
表1の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後でも、光透過率が100%である洗浄液の当初配合組成を略維持することが確認された。
なお、蒸留元液の配合組成の稼働開始時の値は、使用済洗浄液が生成部に供給が開始される前の値であるため、初期の変動が大きいものの、稼働開始後には、安定していた。そのため、定常状態に達した後は、適切な蒸留元液として、水:NMP:BFG=2:43:55重量%となる配合組成の液となった。
従って、この循環洗浄装置によれば、長期間継続して稼働させても、所望の洗浄液の配合組成を維持できることが確認できた。
また、実施例1の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、突沸現象が生じないことが確認された。
【0111】
[実施例2]
実施例2では、実施例1の循環洗浄装置の仕様を以下のように変更した他は、実施例1と同様に、循環洗浄装置を駆動させ、洗浄液の配合組成を経時的に測定するとともに、突沸回数を測定した。得られた結果を表2に示す。
なお、実施例2の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
連結部の開口面積(A) :9,000mm2
ヒータ容量(B) :1.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):6,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.1m/sec
【0112】
【表2】
【0113】
表2の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、実施例2における循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後でも、光透過率が100%である洗浄液の当初配合組成を維持することが確認された。
また、実施例2の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、突沸現象が生じないことが確認された。
【0114】
[実施例3]
実施例3では、実施例1の循環洗浄装置の仕様を以下のように変更した他は、実施例1と同様に、循環洗浄装置を駆動させ、洗浄液の配合組成を経時的に測定するとともに、突沸回数を測定した。得られた結果を表3に示す。
なお、実施例3の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
連結部の開口面積(A) :15,000mm2
ヒータ容量(B) :5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):3,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.2m/sec
【0115】
【表3】
【0116】
表3の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、実施例3における循環洗浄装置を10および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後でも、光透過率が100%である洗浄液の当初配合組成を維持することが確認された。
また、実施例3の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、突沸現象が生じないことが確認された。
【0117】
[実施例4]
実施例4では、水と、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)と、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)とが15:40:45重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄液の配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表4に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
なお、実施例4の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0118】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表4のように調製し、蒸発槽に投入した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、凝集部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。その結果を表4に示す。
また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数を、それぞれ測定した。
【0119】
【表4】
【0120】
表4の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている洗浄液の組成は、循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後でも、光透過率が100%である洗浄液の当初配合組成を略維持することができた。
従って、この循環洗浄装置によれば、長期間継続して稼働させても、所望の洗浄液の組成を維持できることが確認できた。
また、実施例4の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、所定時間経過した後でも、突沸現象が生じないことが確認された。
【0121】
[実施例5]
実施例5では、水と、モノイソパノールアミン(MIPA)と、ベンジルアミン(BAN)と、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BGAC)と、ベンジルアルコール(BAL)と、が69:10:1:15:5重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することにより、白濁状態(光透過率5%)の洗浄液の配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表5に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0122】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表5のように調製し、蒸発槽に投入した。ここでは、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表5に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
[実施例6]
実施例6では、水と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、ジメチルスルホキシド(DMSO)と、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB)と、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)と、メトキシブチルアセテート(メトアセ)と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)と、が70:2:2:7:9:9:2重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄時に白濁状態(光透過率10%)となる洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表6に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0125】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表6のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表6に示す。
【0126】
【表6】
【0127】
[比較例1]
比較例1では、実施例1の循環洗浄装置の仕様を以下のように変更した他は、実施例1と同様に、循環洗浄装置を駆動させ、洗浄液の配合組成を経時的に測定するとともに、突沸回数を測定した。得られた結果を表7に示す。
連結部の開口面積(A) :300mm2
ヒータ容量(B) :5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):60mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :9m/sec
【0128】
【表7】
【0129】
表7の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、比較例1における循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後、当初の組成比から相当ずれることが確認された。
また、比較例1の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、所定回数の突沸現象が生じることが確認された。
【0130】
[比較例2]
比較例2では、実施例4の循環洗浄装置の仕様を以下のように変更した他は、実施例1と同様に、循環洗浄装置を駆動させ、洗浄液の配合組成を経時的に測定するとともに、突沸回数を測定した。得られた結果を表8に示す。
連結部の開口面積(A) :180mm2
ヒータ容量(B) :5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):36mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :15m/sec
【0131】
【表8】
【0132】
表8の結果から明らかなように、洗浄液タンクに貯留されている再生洗浄液の配合組成は、比較例2における循環洗浄装置を10時間および100時間、それぞれ継続的に稼働させた後、当初の組成比から若干ずれることが確認された。
また、比較例2の循環洗浄装置の仕様によれば、初期はもちろんのこと、長期間経過した後でも、所定回数の突沸現象が生じることが確認された。
【0133】
[実施例7]
実施例7では、水と、N−エチルエタノールアミン(MEM)と、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)と、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBG)と、が70:2:19:9重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することにより、洗浄時に白濁状態(光透過率10%)となる洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表9に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0134】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表9のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表9に示す。
【0135】
【表9】
【0136】
[実施例8]
実施例8では、水と、1−デセン、N−エチルエタノールアミン(MEM)と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、1−ヘキサノールと、2−ヘプタノン(MAK)と、が70:17.1:0.1:4.3:4.2:4.3重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄時に白濁状態(光透過率5%)となる洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表10に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0137】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表10のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表10に示す。
【0138】
【表10】
【0139】
[実施例9]
実施例9では、水と、プロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBG)と、が70:17:13重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄時に白濁状態(光透過率30%)となる洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表11に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0140】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表11のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表11に示す。
【0141】
【表11】
【0142】
[実施例10]
実施例10では、水と、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB)と、N−エチルエタノールアミン(MEM)と、が70:28:2重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表12に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
なお、実施例10の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0143】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表12のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表12に示す。
【0144】
【表12】
【0145】
[実施例11]
実施例11では、水と、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)と、が60:40重量%となる配合組成の洗浄液を用いて、図7に示すような循環洗浄装置を構成し、連続的に稼働することで、洗浄液の当初配合組成が安定に維持できるかを確認した。
そのため、表13に示すような割合で各配合成分を混合して、洗浄液を調製し、それを洗浄液タンクに投入した。
なお、実施例11の洗浄液は、相分離しない均一組成であることから、その光透過率は100%であった。
また、循環洗浄装置の仕様は、以下の通りであった。
連結部の開口面積(A) :5,000mm2
ヒータ容量(B) :0.5kW
洗浄液蒸気の移動係数(C):10,000mm2/kW
水蒸気の移動係数(D) :0.06m/sec
【0146】
次いで、洗浄液タンクに投入した洗浄液に対応する仮の蒸留元液を表13のように調製し、蒸発槽に投入した。また、仮の蒸留元液は実施例1の手法に準拠して調製した。
そして、この状態で循環洗浄装置を稼働し、略定常状態に達した後、生成部の温度及び圧力、及び、生成部からの凝縮液の流出流量を経時的に測定するとともに、洗浄液タンク内に貯留されている洗浄液の配合組成を経時的に測定した。また、開始後〜1時間の間に生じた突沸回数、10時間〜11時間の間に生じた突沸回数、および100時間〜101時間の間に生じた突沸回数をそれぞれ測定した。その結果を表13に示す。
【0147】
【表13】
【産業上の利用可能性】
【0148】
本願発明の洗浄液再生装置によれば、洗浄液蒸気の移動速度を考慮するとともに、気相としての洗浄液蒸気と、その液相との間の気液平衡を利用した減圧蒸留によって、非水系溶剤はもちろんのこと、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離状態(洗浄時には、白濁状態)となる複数成分からなる洗浄液であっても、初期配合組成を実質的に維持しながら効率的に再生することが可能となった。
また、本願発明の循環洗浄装置によれば、気液平衡を利用した減圧蒸留を行う所定の洗浄液再生装置を備えることによって、水系溶剤であっても、さらには、静置状態では相分離状態(洗浄時には、白濁状態)となる複数成分からなる洗浄液であっても、長期間にわたって安定的に循環使用可能な循環洗浄装置を提供することが可能となった。
なお、所定種類であって、かつ、所定SP値の有機溶剤を用いた洗浄剤組成物用原液とすることにより、所定量の水を含み、静置状態では相分離状態(洗浄時には、白濁状態)となる複数成分からなる洗浄液も、所定量の水を添加する前は、相分離しない均一状態とできることから、保管条件や運搬条件等によって、配合組成や洗浄力等がばらつくおそれはない。
よって、本願発明の洗浄液再生装置や循環洗浄装置によれば、特に、高信頼性を要求される電子部品におけるフラックス残渣やソルダーペースト等の洗浄、スクリーン版洗浄や切削油やプレス油が付着した金属部品の洗浄において、洗浄性に優れた洗浄剤組成物や洗浄方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0149】
10:洗浄液再生装置、11:洗浄装置、11a:リンス部、11b:洗浄部、12:循環洗浄装置、13:生成部、15:再生洗浄液、15a:リンス液(再生洗浄液)、15b:洗浄液(再生洗浄液)、15´:洗浄液蒸気、17a:洗浄液取出部、17b:配管、 17c、17d:流量調整弁、23:回収部、30:使用済洗浄液(蒸留元液)、31:蒸発部(蒸発タンク)、31a:加熱手段(ヒータ)、41:冷却部(水冷管)、41b:貯留部、41c:開口部、43:洗浄液タンク、47:循環経路、49:吸引部、49a:循環ポンプ、49b:吸引個所、49c:圧力計、51:配管路、53a:吸引バルブ、53b:逆止弁、55:減圧経路、60:リンス槽、62:洗浄槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数成分からなる使用済洗浄液を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための生成部と、
前記再生洗浄液を連続的に回収するための回収部と、を備えた洗浄液再生装置であって、
前記生成部は、
前記使用済洗浄液を収容するとともに、加熱するための蒸発部と、
前記洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための冷却部と、
前記蒸発部および前記冷却部をつなぐ連結部と、
を備えており、
前記連結部の開口面積をA(mm2)とし、前記蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする洗浄液再生装置。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【請求項2】
前記連結部の開口面積(A)を100〜3,000,000mm2の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の洗浄液再生装置。
【請求項3】
前記ヒータ容量(B)を0.1〜100kWの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄液再生装置。
【請求項4】
前記洗浄液蒸気に水蒸気が含まれる場合、当該水蒸気の移動速度を0.02〜6m/secの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項5】
前記回収部は、
前記再生洗浄液が貯留された洗浄液タンクと、
前記再生洗浄液を外部に取り出すための洗浄液取出部と、
前記再生洗浄液を循環ポンプにより循環流動させる循環経路と、
前記循環経路の途中に設けられ、前記再生洗浄液が流動することで負圧を生じる吸引部と、
前記吸引部及び生成部の間を連通する減圧経路と、を備えているとともに、
前記吸引部の負圧によって、前記減圧経路を介して、前記生成部を減圧状態とするとともに、前記貯留部から、前記再生洗浄液を吸引して、前記循環経路に導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項6】
前記生成部における冷却部が、前記蒸発部の直上に設けてあるとともに、それぞれ同一の筐体内部に設けてあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項7】
前記生成部の圧力を−0.01〜−0.1MPaの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項8】
前記洗浄液が、水を含むとともに、当該水の含有量を、全体量に対して、40〜70重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項9】
再生洗浄液により被洗浄物を洗浄可能であるとともに、洗浄後の使用済洗浄液を生成部へ供給可能な洗浄装置と、再生洗浄液を生成する洗浄液再生装置と、を備えた循環洗浄装置であって、
前記洗浄液再生装置が、
複数成分からなる使用済洗浄液を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための生成部と、
前記再生洗浄液を連続的に回収するための回収部と、を備えており、
前記生成部は、
前記使用済洗浄液を収容するとともに、加熱するための蒸発部と、
前記洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための冷却部と、
前記蒸発部および前記冷却部をつなぐ連結部と、
を備えており、
前記連結部の開口面積をA(mm2)とし、前記蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする循環洗浄装置。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【請求項10】
前記回収部は、
前記再生洗浄液が貯留された洗浄液タンクと、
前記再生洗浄液を外部に取り出すための洗浄液取出部と、
前記再生洗浄液を循環ポンプにより循環流動させる循環経路と、
前記循環経路の途中に設けられ、前記再生洗浄液が流動することで負圧を生じる吸引部と、
前記吸引部及び生成部の間を連通する減圧経路と、を備えているとともに、
前記吸引部の負圧によって、前記減圧経路を介して、前記生成部を減圧状態とすることを特徴とする請求項9に記載の循環洗浄装置。
【請求項1】
複数成分からなる使用済洗浄液を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための生成部と、
前記再生洗浄液を連続的に回収するための回収部と、を備えた洗浄液再生装置であって、
前記生成部は、
前記使用済洗浄液を収容するとともに、加熱するための蒸発部と、
前記洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための冷却部と、
前記蒸発部および前記冷却部をつなぐ連結部と、
を備えており、
前記連結部の開口面積をA(mm2)とし、前記蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする洗浄液再生装置。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【請求項2】
前記連結部の開口面積(A)を100〜3,000,000mm2の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の洗浄液再生装置。
【請求項3】
前記ヒータ容量(B)を0.1〜100kWの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄液再生装置。
【請求項4】
前記洗浄液蒸気に水蒸気が含まれる場合、当該水蒸気の移動速度を0.02〜6m/secの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項5】
前記回収部は、
前記再生洗浄液が貯留された洗浄液タンクと、
前記再生洗浄液を外部に取り出すための洗浄液取出部と、
前記再生洗浄液を循環ポンプにより循環流動させる循環経路と、
前記循環経路の途中に設けられ、前記再生洗浄液が流動することで負圧を生じる吸引部と、
前記吸引部及び生成部の間を連通する減圧経路と、を備えているとともに、
前記吸引部の負圧によって、前記減圧経路を介して、前記生成部を減圧状態とするとともに、前記貯留部から、前記再生洗浄液を吸引して、前記循環経路に導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項6】
前記生成部における冷却部が、前記蒸発部の直上に設けてあるとともに、それぞれ同一の筐体内部に設けてあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項7】
前記生成部の圧力を−0.01〜−0.1MPaの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項8】
前記洗浄液が、水を含むとともに、当該水の含有量を、全体量に対して、40〜70重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の洗浄液再生装置。
【請求項9】
再生洗浄液により被洗浄物を洗浄可能であるとともに、洗浄後の使用済洗浄液を生成部へ供給可能な洗浄装置と、再生洗浄液を生成する洗浄液再生装置と、を備えた循環洗浄装置であって、
前記洗浄液再生装置が、
複数成分からなる使用済洗浄液を減圧状態で加熱蒸発させることによって、洗浄液蒸気を生成するとともに、当該洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための生成部と、
前記再生洗浄液を連続的に回収するための回収部と、を備えており、
前記生成部は、
前記使用済洗浄液を収容するとともに、加熱するための蒸発部と、
前記洗浄液蒸気を凝縮して、再生洗浄液とするための冷却部と、
前記蒸発部および前記冷却部をつなぐ連結部と、
を備えており、
前記連結部の開口面積をA(mm2)とし、前記蒸発部を加熱するためのヒータ容量をB(kW)としたときに、下式(1)で定義される洗浄液蒸気の移動係数Cを100〜30,000mm2/kWの範囲内の値とすることを特徴とする循環洗浄装置。
洗浄液蒸気の移動係数(C)=開口面積(A)/ヒータ容量(B) (1)
【請求項10】
前記回収部は、
前記再生洗浄液が貯留された洗浄液タンクと、
前記再生洗浄液を外部に取り出すための洗浄液取出部と、
前記再生洗浄液を循環ポンプにより循環流動させる循環経路と、
前記循環経路の途中に設けられ、前記再生洗浄液が流動することで負圧を生じる吸引部と、
前記吸引部及び生成部の間を連通する減圧経路と、を備えているとともに、
前記吸引部の負圧によって、前記減圧経路を介して、前記生成部を減圧状態とすることを特徴とする請求項9に記載の循環洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−188338(P2010−188338A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13368(P2010−13368)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000123491)化研テック株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000123491)化研テック株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
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