説明

洗浄装置、洗浄方法および半導体製造装置

【課題】 純水による洗浄工程での基板表面の回路パターンの腐食を防止する洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄装置は、基材を段階的に洗浄するため2つの洗浄槽3、4と、最終段以外の洗浄槽3で洗浄後の洗浄液を最終段以外の洗浄槽3に循環させる第1循環路と、最終段以外の洗浄槽3における洗浄後の洗浄液にオゾンを通気することによって洗浄液を再生し、最終段以外の洗浄槽に還流するオゾン通気部10と、洗浄液にオゾンを通気することなく、最終段の洗浄槽で洗浄後の洗浄液を最終段に循環させる供給管26、供給管28を含む第2循環路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル、PDP(プラズマディスプレイパネル)や半導体の製造プロセスにおいてガラス基板やウェハーを洗浄してレジストなどの有機皮膜を剥離する洗浄装置、洗浄方法および半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶パネルや半導体を製造するプロセスにおける、レジストを剥離又は除去する洗浄工程では、硫酸、過酸化水素等の各種洗浄液が多量に使用される。そのために多量の廃酸や廃アルカリ等の廃液が生じ、廃液の処理が問題となっている。洗浄液の中でも多量に使用される種類については、回収した後精製して、製造工程等での再利用が試みられるようになってきており、各種の洗浄液の再生方法の開発が進められている。
【0003】
近年、パネルの大型化、ウェハーの大口径化等により使用する洗浄槽が大型化しその容量が大きくなっている。それに伴い、洗浄液の使用量が増大し、洗浄液のコストのみならず洗浄液の処理コストや環境負荷が増大し、そのために廃液量を可能なかぎり少量化する新たな技術が必要とされている。
【0004】
洗浄液の再生機能を有する洗浄装置の先行技術文献として例えば特許文献1、特許文献2がある。
【0005】
図10は、特許文献1および特許文献2に開示された洗浄装置の構成を示す図である。同図において、再生装置533は、2つの洗浄槽のうち第1洗浄槽519の洗浄後の洗浄液にオゾンを通気することによって再生する。再生された洗浄液は、ポンプ535によって第2洗浄槽520の上のノズル管540に供給され第2洗浄槽520での洗浄液として使用される。第2洗浄槽520における洗浄後の洗浄液は、ポンプ524によって回収タンク522からノズル管529に供給され、第1洗浄槽519での洗浄液として使用される。この洗浄液は、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンの何れかを含み、従来の洗浄液に比べてレジストの剥離速度が極めて速いという特性を有している。しかも、この洗浄液は、オゾン通気による再生能力が高い。すなわち、再生装置533は、洗浄液にオゾンを通気させることにより、基板から剥離されて洗浄液中に溶解している有機物(レジスト)を分解する。上記有機物は炭素と水素を含むため、オゾン通気によって最終的には二酸化炭素と水にまで分解される。
【0006】
このように、上記の洗浄装置は、洗浄能力が高いことに加えて再生効率も高いことから、小型化に適している。
【特許文献1】特開2004−186208号公報
【特許文献2】特開2004−298752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の洗浄装置によれば、再生装置の量的な再生能力にも依存するが再生後の洗浄液中にレジスト起因の不純物やその分解過程で生じる酸が不純物として含まれており、この不純物濃度が高い場合、次工程の純水による洗浄過程で、基板表面の回路パターン(特に金属類)を酸が腐食する可能性があるという問題がある。
【0008】
より詳しく言うと、上記の不純物は、オゾンによる有機物の分解過程における途中段階の有機物であって、酸(例えば、ギ酸、グリオキシル酸、マレイン酸、フタル酸、ムコン酸、シュウ酸、メソキサル酸など。図3A、図3B参照。)を含んでいる。また、次工程に搬送される基板上には洗浄液が表面に薄く残留している。この状態で、不純物濃度が高い場合には基板上の残留洗浄液を純水でリンスすると、酸が回路パターンを腐食することになる。
【0009】
本発明は、純水での洗浄工程での基板表面の回路パターンの腐食を防止または低減する洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の洗浄装置は、基材を段階的に洗浄するための少なくとも2つの洗浄槽と、最終段以外の洗浄槽で洗浄後の洗浄液を最終段以外の洗浄槽に循環させる第1循環路と、最終段以外の洗浄槽における洗浄後の洗浄液にオゾンを通気することによって洗浄液を再生し、最終段以外の洗浄槽に還流するオゾン通気手段と、洗浄液にオゾンを通気することなく、最終段の洗浄槽で洗浄後の洗浄液を最終段に循環させる第2循環路とを備える。
【0011】
この構成によれば、最終段以外の洗浄槽の洗浄液にはオゾンによる分解過程で生じる酸が残留し得るが、最終段の洗浄槽の洗浄液には酸がごく微量にしか含まれないので、次工程における純水での洗浄過程で基板表面の回路パターンの腐食を防止することができる。
【0012】
ここで、前記洗浄液は、炭酸エチレン、炭酸プロピレンの何れかを含むようにしてもよい。
【0013】
ここで、前記オゾン通気手段は、第1洗浄槽における洗浄後の洗浄液にオゾンを通気することによって洗浄液を再生し、再生後の洗浄液を最終段の直前の洗浄槽に還流するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の洗浄方法および半導体製造装置についても上記洗浄装置と同様の手段を備える。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明の洗浄装置によれば、次工程における純水での洗浄過程で基板表面の回路パターンの腐食を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態における洗浄装置は、液晶パネルのガラス基板、PDP(プラズマディスプレイパネル)のガラス基板、半導体ウェハー等の基材を洗浄する装置であり、液晶パネルやPDPや半導体を製造する半導体製造装置の一工程として設置される。この洗浄装置は、基材を段階的に洗浄するための少なくとも2つの洗浄槽を有し、洗浄液として炭酸エチレンを利用し、オゾン通気によって洗浄液を再生する。最終段以外の洗浄槽ではオゾン通気によって洗浄液中にオゾンによる分解過程で生じる酸が存在するが、最終段の洗浄槽では洗浄液にはごく微量の酸しか含まれないように構成されている。これにより、純水での洗浄過程で基板表面の回路パターンの腐食を防止する。
【0017】
また、洗浄液は、炭酸エチレン(Ethylene Carbonate、EC)、炭酸プロピレン(Propylene Carbonate、PC)、またはこれらの混合液である。
【0018】
炭酸エチレン(融点36.4℃、沸点238℃、引火点160℃)は、室温では無色無臭の固体であり、洗浄液として利用するには加温する必要があるが、非プロトン性極性溶媒として利用できる。沸点、引火点が高く、毒性も小さい。洗浄液としては、第1に、有機皮膜の剥離性能が優れ(剥離速度が速く)、第2に、オゾンと殆ど反応せずに液中に溶解したレジストの分解が容易であることから、オゾン通気による再生が可能であり、第3に、水溶性(中性)であるという特性を有している。
【0019】
炭酸プロピレン(融点-48.8℃、沸点242℃、引火点160℃以上)も、第1〜第3の点でほぼ同様である。ただし、炭酸プロピレンは、炭酸エチレンと比較して、第1の点では洗浄力がやや劣り、第2の点ではオゾンの影響を若干受けるというデメリットがあるが、室温でも液体である点で加温することなく洗浄液として容易に使用できるというメリットがある。
【0020】
図1は、実施の形態1における洗浄装置の構成を示す図である。同図において洗浄装置1は、搬入槽2、洗浄槽3、洗浄槽4、中継槽5、洗浄槽6、タンク7、タンク8、タンク9、第1再生部(以下、オゾン通気部と呼ぶ)10、および洗浄液を循環させるための配管類を備えている。配管類による洗浄液の循環経路には、大きく2つある。
【0021】
1つは、オゾン通気される洗浄液の循環経路であり、最終段以外の洗浄槽の洗浄後の洗浄液を最終段以外の洗浄槽に循環させる第1循環経路である。この循環経路の洗浄液には酸が含まれる。すなわち、初段の洗浄槽3で使用された洗浄液は、排出菅17、タンク7、排出菅18、ポンプ19、排出菅20を介してオゾン通気部10に排出され、オゾン通気部10によってオゾン通気され、排出菅21、供給管223、タンク8、供給管12、ポンプ13、フィルタF2、供給管14、フローティング流量計15、供給管16を介して洗浄槽3に循環する。
【0022】
もう1つは、洗浄液にオゾンを通気されない洗浄液の循環経路であり、最終段の洗浄槽で洗浄後の洗浄液を最終段に循環させる第2循環路である。すわなち、最終段の洗浄槽4で使用された洗浄液は、タンク9、供給管24、ポンプ25、フィルタF1、供給管26、フローティング流量計27、供給管28を介して洗浄槽4に循環する。このように、オゾン通気される洗浄液の循環経路と、オゾン通気されない洗浄液の循環経路とは分離されている。オゾン通気されない洗浄液の循環経路を有する洗浄槽4から洗浄槽6に搬出される基板上に薄く残留する洗浄液にはオゾンによるレジスト分解過程で生じる酸がごく微量しか含まれない。
【0023】
搬入槽2は、液晶パネルのガラス基板の搬入口であり、エア管Aを有する。エア管Aは、エアナイフとも呼ばれ、基板上の洗浄液が洗浄槽3から搬入槽2に逆流するのを防止するため、圧縮空気を洗浄槽3の方向に吹き付ける。
【0024】
洗浄槽3は、ノズル管B〜G、エア管H、Iを有し、搬入槽2から搬送される基板に対して第1段階目の洗浄を行う。ノズル管B〜Gは、タンク8から供給される洗浄液をガラス基板表面に噴出する。これにより、レジストの付着したガラス基板は、ノズル管B〜Gから噴出される洗浄液により1段階目の洗浄がなされる。このときの洗浄液は、オゾン通気によって再生された洗浄液であり、タンク8から供給される。すなわち、タンク8の洗浄液は、タンク8から洗浄槽3へ洗浄液を供給するための配管路として、供給管12、ポンプ13、フィルタF2、供給管14、フローティング流量計15、供給管16を介してノズル管B〜Gに供給される。エア管H、Iは、エアナイフであり、エアコンプレッサから供給される圧縮空気をガラス基板に噴出することによりガラス基板上の洗浄液を洗浄槽3に落とす。ガラス基板から流れ落ちた洗浄液は洗浄槽3から、排出管17、タンク7、排出管18、ポンプ19、排出管20を介してオゾン通気部10へ供給される。
【0025】
洗浄槽4は、ノズル管J〜O、エア管P、Qを有し、オゾン通気されていない洗浄液を用いて、洗浄槽3から搬送される基板に対して第2段階目の洗浄を行う。ノズル管J〜Oは、タンク9から供給される洗浄液をガラス基板表面に噴出する。これにより、洗浄槽3による洗浄後のガラス基板は、ノズル管J〜Oから噴出される洗浄液により洗浄される。このときの洗浄液は、タンク9から供給される。すなわち、タンク9の洗浄液は、タンク9から洗浄槽4へ洗浄液を供給するための配管路として、供給管24、ポンプ25、フィルタF1、供給管26、フローティング流量計27、供給管28を介してノズル管J〜Oに供給される。エア管P、Qは、上記のエア管H、Iと同様である。ガラス基板から流れ落ちた洗浄液は洗浄槽4から、排出管30を介してタンク9に排出される。
【0026】
中継槽5は、洗浄槽4から搬出されたガラス基板を洗浄槽6に搬送する。
洗浄槽6は、ノズル管R〜V、エア管Wを有し、中継槽5から搬出されたガラス基板を純水で洗浄する。前段から搬送されるガラス基板上に薄く残留する洗浄液には、酸がごく微量しか含まれないので、ガラス基板表面の金属配線の腐食を防止することができる。
【0027】
タンク7は、ヒータ7aを有し、洗浄槽3から排出管17を介して排出された洗浄液を一時的に溜めて、排出管18、ポンプ19、排出管20を介してオゾン通気部10に排出するバッファタンクである。ヒータ7aは洗浄液を加温する。洗浄液が炭酸エチレンの場合は40℃〜200℃、洗浄液が炭酸プロピレンの場合は室温〜200℃の範囲内の温度とする。これは、炭酸エチレン(融点36.4℃)が室温では固体なので、液化するためである。
【0028】
タンク8は、ヒータ8aと、タンク8内の液量を計測するレベルセンサ8bとを有し、オゾン通気部10によって再生された洗浄液を排出菅21、供給管223を介して回収する。ヒータ8aは、ヒータ7aと同様である。図示していない制御部によって、レベルセンサ8bによって計測された液量が設定液量Lより減少すると新洗浄液供給管34より新しい洗浄液がタンク9に供給され、設定液量Hに達すると供給は停止される。
【0029】
タンク9は、ヒータ9aを有し、洗浄槽4で使用された洗浄液を回収する。この洗浄液は、供給管24、ポンプ25、フィルタF1、供給管26、フローティング流量計27、供給管28を介して洗浄槽4に循環する。ヒータ9aは、ヒータ7aと同様である。
【0030】
単方向連結管9bは、タンク9の洗浄液量が規定量よりも超えた場合に、タンク9からタンク8方向に洗浄液を供給する。
【0031】
第1再生部(オゾン通気部)10は、タンク7から排出管18、ポンプ19、排出管20を介して排出される洗浄液にオゾンを通気することによって洗浄液を再生する。
【0032】
このように洗浄装置1は、レジストなどの有機皮膜の付着したガラス基板から有機皮膜を剥離するために洗浄槽3および洗浄槽4における二段階の洗浄を行い、さらに、基材の表面に薄く残留する洗浄液を流すために洗浄槽6における純水による洗浄を行う。第1段階の洗浄槽3における洗浄液は、オゾン通気により再生された洗浄液であり、オゾンによる分解過程で生じる酸が存在する。一方、第2段階の洗浄槽4における洗浄液は、オゾン通気されていない洗浄液であるので第2段階ではそもそも酸が生成されないが、第1段階の洗浄槽3から第2段階の洗浄槽4へ搬入されるガラス基板上に残留する洗浄液によって持ち込まれる酸が存在する。この酸が第2段階の洗浄液に混入することになるが、第2段階の洗浄液にはごく微量の酸しか含まれない。それゆえ、第2段階の洗浄槽4から純水でリンスする次工程の洗浄槽6へ搬出されるガラス基板上に薄く残留する洗浄液には酸がごく微量しか含まれないので、ガラス基板表面の金属配線の酸による腐食を防止することができる。
【0033】
図2は、オゾン通気部10の詳細な構成例を示すブロック図である。このオゾン通気部10は、主としてオゾンガス通気によるレジスト分解と、窒素ガス通気によるオゾン脱気とを行う。同図において、オゾン通気部10は、洗浄液が通過する構成として、タンク7から排出され、原液取込管101から取り込まれた洗浄後の洗浄液を原液として貯める原液タンク100と、原液タンク100からの原液を吸入し逆止弁141、バルブ140、フローティング流量計103を介して第1通気処理管104に送り出す原液ポンプ102と、原液ポンプ102から供給される原液にオゾンガスを通気する第1通気処理管104と、第1通気処理管104から連結管105を介して供給される洗浄液にオゾンガスを通気する第2通気処理管106と、第2通気処理管106から連結管107を介して供給される洗浄液に窒素ガスを通気することによりオゾンガスを脱気する脱気処理管108と、脱気処理管108から連結管109を介して供給される洗浄液を処理液として貯める処理液タンク110とを備える。
【0034】
原液タンク100内のヒータ142および冷却管122は、原液が固化せず、かつ再生に適切な温度にするための温度調整用である。
【0035】
原液タンク100内の冷却管122は、外部から冷水取込管121を介して供給される冷水により原液を冷却し、冷水排出管123を介して外部に排水する。
【0036】
第1通気処理管104の周囲に取り付けられた冷却器119は、外部から冷水取込管118を介して供給される冷水により第1通気処理管104を冷却し、冷水排出管120を介して外部に排水する。これにより、オゾンガスの溶解度を上げると共にオゾンガスの分解を防ぎ、オゾンガス通気によるレジスト分解を促進する適温に保つ。
【0037】
また原液ポンプ102は、図示していない制御部によってレベルセンサ144に測定された液量レベルに応じて流量が調整される。
【0038】
ヒータ132は、再生および脱気後の洗浄液を例えば80℃程度に加温する。このヒータ132は温度計133に測定された温度により調整される。
【0039】
レーザーセンサ130は、四方弁128により迂回管129および迂回管131を迂回するオゾン再生後の洗浄液について、レジスト色の濃度を測定する。洗浄液は、レジストが溶解していない場合は無色透明であるが、レジストの溶解度が高くなるにつれて淡黄色、橙色、茶色と濃くなっていく。再生後の洗浄液は通常は透明になるので、レーザーセンサ130によって測定されたレジスト色の濃度は、オゾンガス系統や洗浄液の循環系統等における異常発生の有無の判定等に用いられる。
【0040】
処理液タンク110内の処理液は、再生された洗浄液として図1に示した排出菅21を介してタンク8に供給される。
【0041】
オゾン通気部10におけるオゾンガスに関する構成について、オゾンガス発生器(図外)により送出されるオゾンガスは、オゾン取込管114から第2通気処理管106に供給され、オゾン管115を介して第1通気処理管104に供給され、さらにオゾン管116を介して原液タンク100に通気される。
【0042】
オゾン通気部10における窒素ガスに関する構成について、窒素ガスボンベ(図外)により送出される窒素ガスは、窒素取込管124を介して脱気処理管108に供給され、窒素管125を介して原液タンク100に排出される。ここでは窒素ガスという不活性ガスを用いているが、空気その他のガス(気体)であってもよい。
【0043】
原液タンク100に通気されたオゾンガスおよび供給された窒素ガスは、オゾン分解器145を介して排気管117から排気される。
【0044】
加熱器126は、処理液タンク110での洗浄液の加熱に先立って脱気処理管108を流れる洗浄液を予備加熱する。この予備加熱は、脱気処理管108におけるオゾンガスの分解および脱気の促進も兼ねている。このとき、図示していない制御部によって温度計127に測定された温度に応じて加熱量が調整される。
【0045】
オゾンセンサ135、137は、それぞれオゾンガスの濃度を測定する。
オゾン分解器145は、触媒によりオゾンガスを分解して無害化する。
【0046】
図3A、図3Bは、オゾン通気によるレジストの分解過程の一例を示す説明図である。図3Aではレジストの主成分として一般的なノボラック樹脂の分解過程を示す。同図のように、ノボラック樹脂は、フェノールに分解され、さらにムコン酸とムコンアルデヒドに分解される。ムコン酸は、直接グリオキシル酸に、またはマレイン酸を経てグリオキシル酸に分解される。また、ムコンアルデヒドは、直接グリオサールに、またはマレインアルデヒドを経てグリオサールに分解される。グリオキシル酸およびグリオサールは、ギ酸に分解され、さらに、二酸化炭素と水に分解される。
【0047】
また、図3Bではレジストに含まれる光感光剤(光硬化剤)として一般的なナフトキノンジアジゾの分解過程を示す。同図のように、ナフトキノンジアジゾは、ナフタレンに分解され、さらに2−オゾン化物に分解され、さらに、フタルアルデヒドを経て、フタル酸に分解される。フタル酸は、グリオサール、マレイン酸、またはメソキサル酸に分解される。グリオサールはギ酸に、マレイン酸はグリオキシル酸を経てギ酸に、メソキサル酸はシュウ酸に分解される。ギ酸およびシュウ酸は二酸化炭素と水に分解される。
【0048】
オゾン通気部10の量的な再生能力にも依存するが、オゾン通気後の洗浄液中にレジスト起因の不純物や分解過程で生じる酸が不純物として含まれる。
【0049】
以上説明してきたように本実施の形態における洗浄装置によれば、最終段以外の洗浄槽の洗浄液にはオゾンによるレジスト分解過程で生じる酸が含まれるが、最終段の洗浄槽の洗浄液にはごく微量の酸しか含まれないので、最終段から搬出される基材に薄く残る洗浄液にもごく微量の酸しか含まれない。それゆえ、次工程における純水での洗浄過程で基板表面の回路パターンの腐食を防止することができる。
【0050】
図4は、本実施の形態における洗浄装置の第1の変形例の構成を示す図である。同図の洗浄装置160は図1の洗浄装置1と比較して、洗浄槽が1段追加されている点が異なっている。これにより、洗浄液を循環再利用しながら洗浄能力をより高めることができる。すなわち洗浄装置160は、洗浄槽161、タンク162、単方向連結管162bが追加されている点と、排出菅21がタンク8ではなくタンク162に排出する点とが主に異なっている。
【0051】
洗浄装置160において、第1の循環経路は、最終段以外の洗浄槽の洗浄後の洗浄液を最終段以外の洗浄槽に循環させる。この循環経路にはオゾン通気部10が含まれる。第2の循環経路は、洗浄液にオゾンを通気されない洗浄液の循環経路であり、最終段の洗浄槽で洗浄後の洗浄液を最終段に循環させる。
【0052】
第1の循環経路では、第2段目の洗浄槽161ではオゾン通気部10によって再生された洗浄液が用いられ、第1段目の洗浄槽3では洗浄槽161での洗浄液が用いられる。これにより、第2段目の方がよりクリーンな洗浄液となり、洗浄効率を向上させることができる。
【0053】
図5は、本実施の形態における洗浄装置の第2の変形例の構成を示す図である。同図の洗浄装置1aは、図1に示した洗浄装置1と比較して、第2再生部(以下晶析部と呼ぶ)11、バルブ222、供給管31、供給管32、バルブ33が追加されている点が異なる。同じ点は説明を省略して、以下異なる点を中心に説明する。
【0054】
晶析部11は、オゾン通気部10から排出管21を介して供給される洗浄液の一部(例えば10%)をバルブ222から取得し、晶析することによって不純物を分離し、洗浄液を高純度に再生する。ここで、晶析とは、液相から結晶を析出し、それにより液相より特定成分(不純物)を分離することをいう。
【0055】
オゾン通気部10により再生された洗浄液は、排出管21、供給管223を介してタンク8に還流されている。また、オゾン通気部10からのレジスト起因やレジスト分解過程の酸等の不純物を含有する洗浄液の一部は、バルブ222、供給管31を介して晶析部11に供給され、晶析部11における晶析により不純物が分離精製され、タンク9に還流される。
【0056】
図6は、図5に示した晶析部11のより詳細な構成例を示す図である。同図において、晶析部11は、ドラムフレーカ11a、ベルトコンベア11b、結晶精製装置11c、タンク11d、ポンプ11e、フィルタF3を備える。
【0057】
ドラムフレーカ11aは、供給管31から排出される洗浄液を連続的に冷却固化し、粉砕する。その結果、粗結晶に固化した炭酸エチレンの粉末(以下パウダーと呼ぶ)が連続的に生成される。炭酸エチレンの融点は36.4℃であり、この冷却固化では36.4℃よりも低い温度にするだけなので室温で容易に固化することができる。
【0058】
ベルトコンベア11bは、ドラムフレーカ11aにより生成されるパウダーを搬送し、結晶精製装置11cに連続的に供給する。
【0059】
結晶精製装置11cは、パウダーを晶析することにより不純物を分離し、高純度に精製する。この晶析では、いわゆる発汗現象により炭酸エチレンの結晶から不純物を吐き出させる。
【0060】
タンク11dは、ヒータを有し、不純物が除去されて高純度に精製されたパウダーをヒータにより加熱することにより液化する。
【0061】
ポンプ11eは、タンク11dからフィルタF3、供給管32を介して再生後の洗浄液をタンク9に供給する。
【0062】
図7は、結晶精製装置11cの詳細な構成例を示すブロック図である。同図において結晶精製装置11cは、筒体150、フィーダ151、液体分離器152、受け取り口153、移送スクリュー154、スクリューコンベア155、融解器156、取出口157、廃棄口158、ヒータ159を備える。
【0063】
ベルトコンベア11bから搬送される粗結晶のパウダーは、原料として受け取り口153に連続供給され、さらにフィーダ151内の移送スクリュー154によって筒体150内の下部に移送される。パウダーは低速で回転している特殊な羽根付きのスクリューコンベア155によりほぐされながら上方へと搬送され、その過程で羽根の動きと連動して圧縮解放を繰り返し、固液平衡状態における発汗現象により精製される。つまり、パウダーの結晶は、融点に近い温度に維持されると、発汗現象によって内包している不純物を外に吐き出す。さらに、塔頂に達したパウダーの一部分は上部に設置された融解器156により融解され、還流液となつて筒体150内を流下する。この還流液は、結晶と接触することで結晶の温度を上げて発汗現象を促して結晶内部の不純物を表面に吐き出させるとともに、結晶と接触することでパウダーの結晶表面を洗浄し、不純物を濃縮しながら筒体150内下部に流れる。筒体150内下部の液分離器152は、濃縮された不純物を含む液を廃棄口158から廃出する。また、ヒータ159は融点に達しないが近い温度に筒体150を加温する。
【0064】
これにより、スクリューコンベア155で筒体150内の下部から塔頂に達したパウダ一の大部分は、搬送される過程で極めて高純度に精製されて取出口157から搬出される。また、還流液の一部は、塔下部に到達する迄に再結晶化するため、極めて高収率でほぼ100%に近い高純度の結晶に精製することができる。
【0065】
このように結晶精製装置11cは、不純物の分離、結晶表面の洗浄、伝熱、物質移動を攪拌により促進し、短い滞留時間で効率的に高純度化する。この結晶精製装置11cには、例えば呉羽テクノエンジ株式会社製の呉羽連続結晶精製装置KCP(Kureha Crystal Purifier)等がある。
【0066】
ここで、図4に示した洗浄装置160における洗浄液中の不純物濃度について考える。全て新しい洗浄液(不純物を含まない)で稼動を開始した場合、基板の処理と共に洗浄液中に溶解したレジストによりレジスト起因の不純物及びオゾン通気による分解過程で生じた不純物(中間生成物と呼ぶ)が増加する。
【0067】
特に中間生成物に注目すれば、オゾン通気部で発生したある濃度の中間生成物を含んだ洗浄液が、タンク162、洗浄槽161、タンク8、洗浄槽3と循環する事になりその濃度はタンク162、タンク8でほぼ等しくなる。タンク9での不純物の増加は洗浄槽161から洗浄槽4に入ってくる基板に付着した洗浄液中に含まれる不純物による物だが、その量はタンク162の増加量に比べ、明らかに少ない量である。
【0068】
タンク162、タンク8の循環系統の洗浄液は基板表面に薄く付着して洗浄槽4へ持ち出される分と、各槽の排気によってに引かれる分だけ減少する。その減少分は新洗浄液がタンク9へ追加され、その分、タンク9からタンク162へ追加される事になる。そして、持ち出される洗浄液中の不純物濃度に比べて追加される洗浄液中の不純物濃度がはるかに少ないため、基板処理を行っていくとある濃度で飽和してしまう事になる。実際に1m×1.2mのLCD基板上の1.2μの厚みのレジストを連続して剥離処理を行った所、タンク162の洗浄液中の不純物濃度は15,000枚程度の基板処理で0.8%弱の濃度で飽和した。
【0069】
次にタンク9での不純物濃度について考える。図8は、タンク162、タンク8は上述のような飽和状態で1%の不純物濃度であると仮定し、タンク9は新洗浄液を貯めていた場合の、タンク9での処理枚数と洗浄液の不純物濃度の変化例を示す図である。横軸の処理枚数は洗浄した基板の枚数を示す。新洗浄液を用いて洗浄を開始した処理枚数が千枚程度までは、不純物濃度が急に増加していき、4千枚程度までは徐々に増加する。それ以降は、不純物濃度は飽和する。この飽和状態では、オゾン通気による分解過程で生じた不純物(中間生成物と呼ぶ)の量と、オゾン通気によって中間生成物がさらに完全に分解される量とが均衡すると考えられる。この飽和状態では、タンク162の洗浄液の不純物濃度1%に対し、タンク9の洗浄液の不純物濃度が約0.27%となる。つまり、最終段の洗浄槽4と最終段のタンク9を循環する循環経路と、最終段以外の洗浄槽3,162と最終段以外のタンク7,8,162のオゾン通気を含む循環経路を別の分けた循環経路とすることにより、タンク9の不純物濃度は、前段のタンク不純物濃度の約1/4にまで低下することを意味する。 図9は、図8に示した不純物濃度特性の前提となる不純物の出入りを示す説明図である。同図では図4に示したタンク9を中心に出入りする不純物量を示している。洗浄槽3、洗浄槽161、洗浄槽4を第1〜第3洗浄槽と記している。また、タンク8とタンク162の不純物濃度をx%、タンク9の不純物濃度をy%としている。3つの洗浄槽における排気による基板1枚当たりの洗浄液の持ち出し量を50cc、洗浄槽間で基板上に薄く残留する洗浄液の基板1枚当たりの持ち出し/持ち込み量を30ccとしている。また、タンク9の洗浄液量を80リットルとする。この場合、基板1枚処理当たりのタンク9への新洗浄液の補充量は30+50cc、タンク9から前段のタンク162への洗浄液補充は30+50*2/3ccになる。そうすると、タンク9への不純物持ち込み量は30*x%、タンク9からの不純物持ち出し量は、(30+50*2/3)*y%となる。
【0070】
タンク9の不純物濃度は新洗浄液を用いて洗浄を開始したのち増加するが、不純物持ち込み量と不純物持ち出し量とが等しくなった時点で平衡状態となり飽和することになる。この平衡状態では30*x%=(30+50*2/3)*y%であるので、y=0.2727xとなる。つまりタンク9の不純物濃度は、前段2つの平均的な不純物濃度の約1/4のまま飽和する。
【0071】
このように不純物濃度は飽和してしまい、それ以上劣化しないので、持ち出し量を補充するだけで、洗浄液の交換は不要になる。
【0072】
以上説明してきたように本実施の形態における洗浄装置によれば、最終段から搬出される基板に薄く残留する洗浄液には、オゾン通気による分解過程で生じる酸がごく微量しか含まれないので、次工程における純水での洗浄過程で基板表面の回路パターンの腐食を防止することができる。
【0073】
なお、図5に示した洗浄装置は、2段に限らず3段の洗浄槽を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、液晶パネルや半導体を製造するプロセスにおけるレジストを剥離又は除去する洗浄装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施の形態1における洗浄装置の構成を示す図である。
【図2】第1再生部(オゾン通気部)の構成を示すブロック図である。
【図3A】レジストの分解過程を示す説明図である。
【図3B】レジストの分解過程を示す説明図である。
【図4】洗浄装置の第1の変形例の構成を示す図である。
【図5】洗浄装置の第2の変形例の構成を示す図である。
【図6】第2再生部(晶析部)11のより詳細な構成例を示す図である。
【図7】結晶精製装置の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図8】洗浄装置における処理枚数と洗浄液の不純物濃度の変化例を示す図である。
【図9】不純物濃度特性の前提となる不純物の出入りを示す説明図である。
【図10】従来技術における洗浄装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 洗浄装置
2 搬入槽
3 洗浄槽
4 洗浄槽
5 中継槽
6 洗浄槽
7、8、9 タンク
10 オゾン通気部
11 晶析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を段階的に洗浄するための少なくとも2つの洗浄槽と、
最終段以外の洗浄槽で洗浄後の洗浄液を最終段以外の洗浄槽に循環させる第1循環路と、
最終段以外の洗浄槽における洗浄後の洗浄液にオゾンを通気することによって洗浄液を再生し、最終段以外の洗浄槽に還流するオゾン通気手段と、
洗浄液にオゾンを通気することなく、最終段の洗浄槽で洗浄後の洗浄液を最終段に循環させる第2循環路と
を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄液は、炭酸エチレン、炭酸プロピレンの何れかを含む
ことを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記オゾン通気手段は、第1洗浄槽における洗浄後の洗浄液にオゾンを通気することによって洗浄液を再生し、再生後の洗浄液を最終段の直前の洗浄槽に還流する
ことを特徴とする請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
基材を段階的に洗浄するための少なくとも2つの洗浄槽を用いた洗浄方法であって、
最終段以外の洗浄槽で洗浄後の洗浄液を最終段以外の洗浄槽に循環させ、
最終段以外の洗浄槽における洗浄後の洗浄液にオゾンを通気することによって洗浄液を再生し、最終段以外の洗浄槽に還流し、
洗浄液にオゾンを通気することなく、最終段の洗浄槽で洗浄後の洗浄液を最終段に循環させる
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項5】
請求項1記載の洗浄装置を備えることを特徴とする半導体製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−303115(P2006−303115A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121507(P2005−121507)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(500347782)エス・イー・テクノ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】