洗浄装置およびこれを用いた空気清浄化装置
【課題】汚染物質除去部材を設置した状態のまま洗浄できる機能を有しながらも、汚染物質除去部材の数量や配置の変更に容易且つ柔軟に対応することができ、しかも僅かな洗浄液で汚染物質除去部材を効率良く洗浄することができる洗浄装置およびこれを用いた空気清浄化装置を提供する。
【解決手段】所定量の洗浄液を貯留可能な洗浄液貯留部10と、この洗浄液貯留部10内の洗浄液を汚染物質除去部材3に向けて上方から吐出する洗浄管11とを備え、これら洗浄管11および洗浄液貯留部10がダクト型中空構造物3に着脱自在に設置されている。
【解決手段】所定量の洗浄液を貯留可能な洗浄液貯留部10と、この洗浄液貯留部10内の洗浄液を汚染物質除去部材3に向けて上方から吐出する洗浄管11とを備え、これら洗浄管11および洗浄液貯留部10がダクト型中空構造物3に着脱自在に設置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト型中空構造物内に設置された汚染物質除去部材を洗浄する洗浄装置およびこれを用いた空気清浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、例えば二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスについては、国際的な削減目標の設定などが行われており、二酸化炭素の削減を目的とした世界規模での植林事業に呼応して、建築分野においても、屋上緑化などの対策が講じられるようになってきている。
【0003】
また、健康面からも、自動車等から発せられる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)についても、その排出規制が一段と厳しくなっており、さらに悪臭物質やたばこ臭、シックハウス症候群を引き起こすホルムアルデヒドなどの居住空間における汚染物質も社会問題となっている。
【0004】
空気中に含まれるこれら汚染物質を除去する技術としては、太陽光等の光エネルギーの下で活性化した酸化チタン等の光触媒に接触させることにより、上記汚染物質を分解除去する技術や、オゾン処理による除去技術、あるいは活性炭などの吸着剤によって吸着除去する技術などが実用化されている。
【0005】
また、建築物においても、吸着剤や光触媒を用いたフィルターにより、建築物内部に取り込む空気や、建築物外部に排出する空気に含まれる汚染物質を除去する技術が提案されている。
さらに、例えば、特許文献1〜4には、光触媒または光触媒と吸着剤の組合せからなる平板を汚染空気の流通方向と平行に配置することによって、圧力損失を低下させるようにした装置(以下、平行板装置と称する。)が提案されている。
【0006】
しかしながら、それら平行板装置には、現場に設置した後に圧力損失や空気清浄能力(汚染物質の除去効率)などの設定を調整する手段が設けられていないため、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件が変化する場合に、それら条件に合わせて上記設定を調整することが困難であった。そのため、例えば、設計時の予定性能を確保できない場合には、装置全体の交換が必要であった。
【0007】
また、上記平行板装置を既設のダクトなどに連結する際には、上記平行板装置をその設置環境に合わせて設計するか、または給排気動力の増設などの大掛かりな工事によって、既存の設備を上記平行板装置の仕様に合わせる手間が発生する。何れの場合も設置後に上記設定の微調整が必要になることが多いが、そのような場合においても、上記設定を調整することは困難であった。
【0008】
一方、屋外の汚染物質を除去する方法としては、例えば、建物外壁、ガードレール、道路などの構造物の表面に光触媒を塗布して、光触媒の作用により、周囲に存在するNOxやSOxを分解除去する方法が検討されている。しかしながら、これらの物質を分解除去の対象とした場合には、光触媒反応で生じる硝酸塩あるいは硫酸塩が光触媒表面に蓄積する触媒被毒が光触媒の性能劣化の大きな要因となるため、洗浄処理などによってそれら無機塩を除去する必要がある。無機塩を除去する方法としては、例えば雨水によって洗い流すことも考えられるが、そのまま放置しておくと、洗い流された硝酸塩あるいは硫酸塩が土壌中に拡散して地下水汚染などを引き起こす虞がある。このため、上記汚染水を回収するのが望ましいが、上記汚染水は大量に発生するために、その回収設備に掛かるコストは高く、また上述した建物外壁やガードレール等の構造物の近傍は、何れも回収設備を設置するのに適していないため、現状では汚染水を回収するのは困難である。
【0009】
そこで、本発明者等は、先に、上記問題点を解決する空気清浄化装置として、壁面に開閉部が設けられた中空構造物本体と、この中空構造物本体の内部に、空気の流通方向と略平行に且つ着脱自在な状態で配置された汚染物質除去部材とを有する空気清浄化装置を提案するとともに、これに関する技術を特許文献5(特願2006−337700号の明細書等)に記載している。
かような構成の空気清浄化装置によれば、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化などに応じて、圧力損失や空気清浄能力などの設定を容易に調整することができる上に、汚染物質除去部材表面の空気清浄手段(光触媒や吸着材など)を適切な時期に容易に交換・洗浄することもできる。
【0010】
しかしながら、光触媒によりNOxやSOxを分解除去する場合には、前述した触媒被毒により短期間で触媒性能が低下することが多く、上記空気清浄手段を交換・洗浄する頻度も高くなるため、たとえ容易な作業であっても、ある程度の手間と時間を要する。また、例えば、建築物側面の外気取入口など、上記空気清浄化装置の設置場所によっては、上記空気清浄手段を頻繁に交換・洗浄するのが困難な場合もある。
【0011】
なお、交換や洗浄が困難な場所に設置された部材を洗浄する装置としては、例えば、特許文献6に記載の自動再生型換気装置が知られている。この自動再生型換気装置においては、フィルタ(洗浄対象となる部材)の近傍に、その圧力損失を測定する差圧センサを設け、その差圧センサの測定結果に基づいてフィルタの汚れが検知された場合に、洗浄用給水設備や洗浄空間の区画機構等を作動させることによって、フィルタを自動洗浄するようにしている。
しかしながら、上記自動再生型換気装置においては、洗浄用給水設備の散水用配管口が固定設置されているために、フィルタ(洗浄対象となる部材)の増設や、配置変更等に全く対応することができず、その上、制御装置により洗浄用給水設備や区画機構等を自動制御するようにしているため、それに対応して、システムの構成も複雑になるという問題点があった。
また、フィルタを通過させて汚染物質を除去する構成としているため、汚染空気の処理量にも自ずと限界があった。
【0012】
【特許文献1】特開平10−286436号公報
【特許文献2】特開2001−120956号公報
【特許文献3】特開2001−137665号公報
【特許文献4】特許第3483208号公報
【特許文献5】特願2006−337700号
【特許文献6】特開2004−301423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、汚染物質除去部材を設置した状態のまま洗浄できる機能を有しながらも、汚染物質除去部材の数量や配置の変更に容易且つ柔軟に対応することができ、しかも僅かな洗浄液で汚染物質除去部材を効率良く洗浄することができる洗浄装置およびこれを用いた空気清浄化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明に係る洗浄装置は、ダクト型中空構造物内に設置された汚染物質除去部材を洗浄する装置であって、所定量の洗浄液を貯留可能な洗浄液貯留部と、この洗浄液貯留部内の洗浄液を上記汚染物質除去部材に向けて上方から吐出する洗浄管とを備え、これら洗浄管および洗浄液貯留部が上記ダクト型中空構造物に着脱自在に設置されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項2に記載の本発明に係る空気清浄化装置は、空気流路を有するダクト型中空構造物と、上記ダクト型中空構造物の内部に着脱自在な状態で設置され、表面が光触媒および/または吸着材により構成された汚染物質除去部材と、上記ダクト型中空構造物の上部に着脱自在な状態で設置され、上記汚染物質除去部材を洗浄する洗浄装置とを備え、上記洗浄装置が、上記汚染物質除去部材に向けて上方から洗浄液を吐出する洗浄管と、この洗浄管に洗浄液を供給する洗浄液貯留部とにより構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
ここで、上記ダクト型中空構造物は、その底面および両側壁面を構成する断面略コ字形の流路構成部材と、この流路構成部材の上部開口を塞ぐ天井部材とにより構成することが可能である。汚染物質の除去に光触媒を用いる場合には、上記天井部材が光透過性部材により構成される。
上記汚染物質除去部材としては、例えば、請求項3に記載の発明のように、上記ダクト型中空構造物内に立設可能な一または複数の起立板部を有する汚染物質除去部材を用いることが可能である。
【0017】
上記洗浄装置の洗浄液貯留部は、予め設定された所定量の洗浄液を貯留可能な容器等により構成することが可能である。この洗浄液貯留部をダクト型中空構造物に取り付ける方法としては、例えば、洗浄液貯留部に係合部を設けて、これをダクト型中空構造物の上記流路構成部材の側壁に係合させる方法や、上記流路構成部材の内壁面に支持部を突設して、当該支持部により洗浄液貯留部を支持する方法などが挙げられるが、洗浄液貯留部をダクト型中空構造物に着脱自在に取付可能であれば如何なる方法であってもよい。
【0018】
洗浄液は、光触媒や吸着材に付着した硝酸塩や硫酸塩、粉塵などを洗い落とすことができれば、例えば、雨水、イオン交換水、蒸留水、水道水など、如何なる液体であってもよい。洗浄液として雨水を用いる場合には、例えば、洗浄液貯留部の天井部に雨水取入口(開口部)を設けて、当該雨水取入口から雨水を直接受け入れるようにしても、あるいは別の場所から配管等を介して導入するようにしてもよい。何れの洗浄液を用いる場合にも、洗浄液の取入口には、洗浄液の流入を制限する開閉手段を設けることが望ましい。そうすることで、例えば梅雨の季節のように長期間雨天が続く場合などには、開閉手段により雨水取入口を閉じて、雨水の流入を制限することにより、過度な洗浄による光触媒や吸着材の性能劣化を抑制することができる。開閉手段は、例えば、スライド式の扉部材で開口部を開閉するものや、蓋部材により開口部を開閉するものなど、如何なる態様のものであってもよい。
【0019】
上記洗浄装置の洗浄管は、洗浄液貯留部の下端部(側面または底面)に連結することが好ましく、洗浄液貯留部の底面に連結する際には、底面に、連結部が最下端となるような傾斜を設けることが好ましい。また、この連結部(または洗浄液の導入口)には、ネット、フィルタ、金属網、金属ボールなど、ゴミや落ち葉などによる目詰まりを防ぐ手段を設けることが望ましい。さらに、隣接する他の洗浄装置等には、各洗浄管の先端部を支持する洗浄管支持部を設けることが望ましく、そうすることで、各洗浄管および洗浄装置を安定した状態で設置することができる。
【0020】
各洗浄管には、汚染物質除去部材に向けて洗浄液を吐出可能な位置に洗浄液吐出口が設けられる。この洗浄液吐出口は、汚染物質除去部材を洗浄可能であれば、その数量や配置は任意に設定することが可能である。例えば、洗浄管を水平に配置して、その下端位置に長手方向に沿って所定間隔毎に洗浄液吐出口を設けるようにすれば、直下の汚染物質除去部材を洗浄することが可能である。また、周方向に複数の洗浄液吐出口を設けるようにすれば、直下の汚染物質除去部材だけでなく、これに隣接する汚染物質除去部材も併せて洗浄することが可能である。
【0021】
なお、上記洗浄装置においては、洗浄液の流入量が洗浄液貯留部の容量を超過した際に、余剰の洗浄液がダクト型中空構造物の外部に排出される構造とすることが望ましい。そうすることで、必要以上の洗浄液がダクト型中空構造物内に供給されるのを防止することができる。また、かような構造とした場合には、洗浄液吐出口の径や、洗浄液貯留部の容量、ダクト型中空構造物の傾斜角度等を調整することによって、ダクト型中空構造物内に供給する洗浄液量を調整することが可能である。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空気清浄化装置において、上記汚染物質除去部材は、上記ダクト型中空構造物内に立設可能な一または複数の起立板部を有し、当該起立板部が空気の流通方向と略平行に配置されるとともに、それら起立板部の上方に、各起立板部の上端に沿って、上記洗浄管がそれぞれ配置されていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の空気清浄化装置において、上記洗浄液貯留部として、上記洗浄管の取付位置および数量が異なる複数種類の洗浄液貯留部が用意され、それら洗浄液貯留部に上記洗浄管が着脱できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4の何れかに記載の空気清浄化装置において、上記洗浄管から吐出される洗浄液の吐出量が空気流路の上流側ほど大きくなるように設定されていることを特徴とするものである。
なお、洗浄液の吐出量を空気流路の上流側ほど大きくするには、例えば、洗浄管の洗浄液吐出口の径を空気流路の上流側ほど大きくしたり、あるいは洗浄液貯留部の容量を空気流路の上流側ほど大きくするようにすればよい。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5の何れかに記載の空気清浄化装置において、上記ダクト型中空構造物の天井部に、上記汚染物質除去部材に対して紫外線を照射する紫外線照射手段が配設され、この紫外線照射手段と上記汚染物質除去部材との間に上記洗浄管が配置されていることを特徴とするものである。
ここで、紫外線照射手段としては、例えば、ブラックライトや紫外線ランプなどが挙げられる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜6の何れかに記載の空気清浄化装置において、加圧された洗浄液が上記洗浄液貯留部に供給される構成としたことを特徴とするものである。
具体的に、加圧された洗浄液を洗浄液貯留部に供給する方法としては、例えば、洗浄液貯留部よりも高所に貯水タンクを設置して、当該貯水タンクから洗浄液貯留部に洗浄液を供給する方法や、ポンプ等の加圧装置を介して洗浄液貯留部に洗浄液を供給する方法などが挙げられる。このような構成とした場合には、洗浄液吐出口を複数の微細な孔の集合に変更することによって、拡散型の放水を行うことも可能である。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜7の何れかに記載の空気清浄化装置において、上記洗浄管の先端部を上記ダクト型中空構造物の空気流入側に向けた状態で上記洗浄装置が配置されるとともに、上記ダクト型中空構造物が、空気流入側が低くなるように傾斜した状態で設置されていることを特徴とするものである。
【0028】
上記空気清浄化装置においては、上記ダクト型中空構造物の空気流入側の底面に、排水管に通ずる排水溝を設け、上記排水管に、排水を回収または清浄化する手段を接続または介装するようにしてもよい。
また、回収した排水は清浄化処理するようにしても、あるいは大量の雨水で希釈処理するようにしてもよい。それら処理水は植物への栄養源として利用することも可能であり、例えば、当該空気清浄化装置を屋上に設置する場合には、これを屋上緑化や壁面緑化に用いることも可能である。
【0029】
さらに、上記空気清浄化装置においては、上記洗浄液貯留部の天井部に雨水取入口を設け、当該雨水取入口から流入した雨水を洗浄液として用いる構成とすることも可能である。
かかる構成の場合には、洗浄液貯留部の設置位置を底とする緩やかなテーパ状にダクト型中空構造物の天井部を構成することにより、洗浄液貯留部に流入する雨水を増加させることも可能である。
【発明の効果】
【0030】
請求項1または2に記載の発明によれば、汚染物質除去部材をダクト型中空構造物内に設置した状態のまま洗浄することが可能となり、従来と比較して洗浄作業を大幅に軽減することができるとともに、例えば、建築物側面の外気取入口など、従来は洗浄が困難であった場所においても、汚染物質除去部材を適切に洗浄することができる。
また、洗浄装置をダクト型中空構造物に着脱自在な状態で設置するようにしたので、洗浄装置が汚染物質除去部材の設置や撤去の妨げになることはなく、また、汚染物質除去部材の数量や配置の変更に対しても容易且つ柔軟に対応することができる。したがって、汚染物質除去部材の数量や配置を変更して圧力損失や空気清浄能力などの設定を調整する際においても、洗浄装置がその調整の妨げになることはなく、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化に応じて、圧力損失や空気清浄能力を容易に調整することができる。また、繰り返し行われる洗浄過程で汚染物質除去部材に目詰まりや洗浄液による経年劣化、過度の汚れ等が生じた場合においても、当該汚染物質除去部材を容易に交換することができる。
【0031】
さらに、請求項1または2に記載の発明によれば、汚染物質除去部材に向けて上方から洗浄液を吐出するようにしたので、僅かな洗浄液で汚染物質除去部材を効率良く洗浄することができ、その排水量を最小限に抑えることができる。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、汚染物質除去部材の起立板部を空気の流通方向と略平行に配置し、それら起立板部の上方に、各起立板部に沿って、洗浄管をそれぞれ配置するようにしたので、圧力損失の増加を極力抑えることができる。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、洗浄管の取付位置および数量が異なる複数種類の洗浄液貯留部を用意して、当該洗浄液貯留部に洗浄管を着脱できるように構成したので、汚染物質除去部材の数量や配置に応じて、洗浄管の数量や配置を容易に調整することができる。また、洗浄管の取り外しができるので、洗浄装置のメンテナンスも容易に行うことができる。
【0034】
請求項5に記載の発明によれば、洗浄管から吐出される洗浄液の吐出量が空気流路の上流側ほど大きくなるように構成したので、汚染物質の濃度が高く汚染物質除去部材の表面に蓄積する酸化生成物量が多い空気流路の上流側ほど、洗浄装置による洗浄能力が高くなる。
したがって、汚染物質除去部材をその性能劣化の度合いに応じて効率良く洗浄することができ、洗浄液の使用量や排水量を全体として減らすことができる。
【0035】
請求項6に記載の発明によれば、紫外線照射手段と汚染物質除去部材との間に洗浄管を配置するようにしたので、洗浄管から吐出された洗浄液が紫外線照射手段の方向に飛散するのを極力防止することができる。
【0036】
請求項7に記載の発明によれば、洗浄液吐出口から吐出される洗浄液の水圧が増すこととなるので、洗浄装置の洗浄能力を高めることができるとともに、各洗浄管の洗浄範囲を拡大することができる。
【0037】
請求項8に記載の発明によれば、ダクト型中空構造物を、空気流入側が低くなるように傾斜した状態で設置したので、ダクト型中空構造物の底面に設置した汚染物質除去部材(底板部)を効率良く洗浄することができるとともに、その排水を空気流入側に容易に導くことができ、ダクト型中空構造物内に排水が滞留したり、逆流が発生したりするのを防止することができる。また、ダクト型中空構造物と共に洗浄管も傾いた状態となるので、洗浄液貯留部から洗浄管に円滑に洗浄液を供給することができる。また、共通の給水管から複数の洗浄液貯留部に順次洗浄液を供給する構成とした場合には、同様に、上記給水管から各洗浄液貯留部に円滑に洗浄液を供給することができる。
なお、上記洗浄排水の処理に関しては、天井面(洗浄装置)が水平で底面のみが空気流入側に下り傾斜したダクト型中空構造物を用いることによっても、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、本発明に係る空気清浄化装置の一実施形態を示す概略構成図である。
この空気清浄化装置1は、図1および図2に示すように、ダクト型中空構造物2と、このダクト型中空構造物2の内部に、空気の流通方向と略平行に配置された汚染物質除去部材3と、この汚染物質除去部材3を洗浄する洗浄装置4とにより概略構成されている。本実施形態では、ダクト型中空構造物2の内部に、空気の流通方向に沿って複数の汚染物質除去部材3が一列に配置され、それら汚染物質除去部材3の上方位置に、それぞれ洗浄装置4が配置されている。
【0039】
ダクト型中空構造物2は、図1に示すように、角形のダクトであり、その天井部を構成する光透過性部材5と、底部および両側壁部を構成する断面略コ字形の流路構成部材6とにより構成されている。光透過性部材5は、例えば硼珪酸ガラスなどからなり、太陽光や光源の光(紫外線)を透過可能となっている。光透過性部材5は、流路構成部材6の上部開口のうち、後述する洗浄装置4の雨水取入口12以外の領域を覆う状態で着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、流路構成部材6と洗浄装置4の各上端位置にそれぞれフランジ部9,14が設けられ、それらフランジ部9,14によって形成される矩形枠状の載置部の上に、光透過性部材5が設置されるようになっている。
【0040】
汚染物質除去部材3は、ダクト型中空構造物2の底部上面に載置可能な底板部7と、この底板部7上面に立設された一または複数の起立板部8とを備えている。本実施形態では、汚染物質除去部材3として、図1(d)に示すように、4枚の起立板部8を有する第1汚染物質除去部材3aと、5枚の起立板部8を有する第2汚染物質除去部材3bが用意されている。
【0041】
汚染物質除去部材3は、その表面が光触媒や吸着材等の空気清浄手段により構成されている。本実施形態では、空気清浄手段を板状に成形した空気清浄パネル、あるいは板状の基材の全体または一部に空気清浄手段を塗布または焼付けた空気清浄パネルを支持部材の両面または片面に装着することにより、汚染物質除去部材3が構成されている。
【0042】
上記空気清浄手段を構成する光触媒としては、例えば、酸化チタン、金属酸化物半導体(酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化カドミウム、酸化インジウム、酸化銀、酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化スズ、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウムなど)、金属硫化物半導体(硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化インジウム、硫化鉛、硫化銅、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化アンチモン、硫化ビスマスなど)、チタン酸ストロンチウム、セレン化カドミウム、タンタル酸カリウム、およびこれらの混合物などが適用可能である。また、光触媒とセメントの混合材や光触媒にハイドロキシアパタイトやフッ化アパタイトを結合させた触媒なども適用可能である。
一方、上記吸着材としては、例えば、ゼオライト、シリカゲル、イオン交換材、アルミナ系吸着材、金属錯体系吸着材、セラミックスなどの無機系吸着材や、活性炭、イオン交換材、キレート樹脂などの有機系吸着材が適用可能である。なお、上記吸着材には、特定のガスを除去するためのガス反応成分(例えば、二酸化炭素を除去するための水酸化カリウム溶液など)を塗布または含浸したものも含まれる。
【0043】
洗浄装置4は、図2に示すように、所定量の洗浄液(雨水)を貯留可能な洗浄液貯留部10と、この洗浄液貯留部10内の洗浄液を上記汚染物質除去部材3に向けて上方から吐出する洗浄管11とにより構成されている。
【0044】
洗浄液貯留部10は、上面が開放された矩形箱状の容器で、その上部開口が雨水取入口12となっている。この洗浄液貯留部10は、図1(b)および図1(c)に示すように、ダクト型中空構造物2の上端部(流路構成部材6の側壁部間)に架設され、図3に示すように、各洗浄管11が汚染物質除去部材3の各起立板部8の直上位置に配置されるよう、その設置位置が設定されている。
洗浄液貯留部10の雨水取入口12の周縁部には、図2に示すように、その長手方向の両端に、一対の係合片13が設けられ、短手方向の両端には、光透過性部材5を載置するためのフランジ部14が設けられている。
上記係合片13は、洗浄液貯留部10をダクト型中空構造物2に装着するためのもので、それら係合片13を流路構成部材6の両側壁部に係合させた状態でストッパー等により固定することにより、洗浄液貯留部10がダクト型中空構造物2に装着されるようになっている。それら係合片13と流路構成部材6とが当接する部分には、相互の密着性を高めるために、例えばシリコン製のパッキンなどが挿入されている。
【0045】
また、空気の流通方向と垂直な側壁面のうち、一方の側壁面の下端部には、複数の洗浄管11が互いに平行に横一列に並ぶように取り付けられ、他方の側壁面の下端部には、隣接する洗浄装置4の各洗浄管11の先端部を支持するための洗浄管支持部15が水平方向に延出する状態で設けられている。
各洗浄管11には複数の洗浄液吐出口が設けられ、それら吐出口から汚染物質除去部材3の起立板部8に向けて雨水が吐出されるようになっている。
【0046】
例えば、図3(a)に示すように、第1汚染物質除去部材3aの上方位置には、4本の洗浄管11を装着した洗浄装置4が配置され、第2汚染物質除去部材3bの上方位置には、図3(b)に示すように、5本の洗浄管11を装着した洗浄装置4が配置されている。各洗浄管11は、対応する起立板部8の上端に沿ってほぼ水平に配置され、雨天の際には、図4(a)および図4(b)に示すように、その下端位置に穿設した各洗浄液吐出口から直下の起立板部8に向けて一斉に雨水を吐出するようになっている。
【0047】
なお、上述した洗浄液貯留部10や洗浄管11は、ステンレス、アクリル、塩化ビニル、各種プラスチックの何れかにより形成することが可能である。洗浄管11は、洗浄液貯留部10に着脱可能に構成することが望ましく、またその内部を洗浄できるように、複数に分解可能に構成するか、あるいは先端部を取り外し可能に構成することが望ましい。
【0048】
上記構成からなる空気清浄化装置1を使用する際には、先ず、建築物の給気口や排気口など、汚染空気の経路に沿ってダクト型中空構造物2を設置する。
その際に、ダクト型中空構造物2は、図5に示すように、空気流入側が低くなるように傾斜させた状態で設置することが望ましい。そうすることで、洗浄液貯留部10から洗浄管11に円滑に雨水を供給することができるととも、汚染物質除去部材3の底板部7を効率良く洗浄することができる。この場合、排水が空気流入側に向けて流れることとなるので、空気流入側の底面に、排水管17に通ずる排水溝18を設けることが望ましい。また、排水溝18の底面には排水管17との連結部が最下端となるように傾斜を設け、排水管17にフィルタ(排水清浄化手段)19を介装するか、あるいは排水貯蔵タンク(排水回収手段)を連結する構成とすることが望ましい。
【0049】
ダクト型中空構造物2の設置が完了したら、図1(d)に示すように、設置したダクト型中空構造物2の内部に、汚染空気の流通方向と略平行に汚染物質除去部材3を配置する。その際に、要求される空気清浄能力および許容される圧力損失に基づいて、汚染物質除去部材3の配置構成(起立板部8の数量、配置、空気清浄手段の種類など)を決定し、その決定に従って汚染物質除去部材3を配置する。
【0050】
その後、汚染物質除去部材3の設置が完了したら、図1(c)に示すように、各汚染物質除去部材3の上方位置に、洗浄管11の先端部を空気流入側に向けた状態で洗浄装置4を設置する。
その際に、汚染物質除去部材3の起立板部8の数量および配置に基づいて、洗浄管11の取付位置および数量を決定するとともに、要求される洗浄液の吐出量に基づいて、洗浄液貯留部10の容量や洗浄管11の洗浄液吐出口の径を決定する。本実施形態のように、空気の流通方向に沿って複数の汚染物質除去部材3を配置する場合には、洗浄管11から吐出される洗浄液の吐出量が、空気流路の上流側ほど大きくなるように、洗浄液貯留部10の容量や洗浄管11の洗浄液吐出口の径を設定することが望ましい。そうすることで、汚染物質の濃度が高く汚染物質除去部材3の表面に蓄積する酸化生成物量が多い空気流路の上流側ほど、洗浄装置4による洗浄能力が高くなる。
【0051】
洗浄装置4の設置が完了したら、図1(b)に示すように、洗浄装置4の雨水取入口12を閉塞しないようにダクト型中空構造物2上端の所定位置に光透過性部材5を装着する。具体的には、流路構成部材6上端のフランジ部9と洗浄装置4上端のフランジ部14とによって形成される矩形枠状の載置部の上に、シリコン製のパッキン等を介して光透過性部材5を載置し、これを専用のクリップ等で固定する。これにより、空気清浄化装置1の設置が完了となり、この状態で、汚染空気をダクト型中空構造物2の内部に流し込めば、その汚染空気中に含まれる様々な汚染物質を汚染物質除去部材3により除去することができ、空気の清浄化を図ることができる。
【0052】
また、雨天の際には、図4(a)および図4(b)に示すように、洗浄装置4の雨水取入口12に雨水(洗浄液)が流入して、当該雨水が各洗浄管11の洗浄液吐出口から汚染物質除去部材3に向けて上方から吐出される。これにより、汚染物質除去部材3の表面に付着した硝酸塩や硫酸塩、粉塵などが雨水により洗い流される。この排水は、植物への栄養源として利用することも可能であり、例えば、当該空気清浄化装置1を屋上に設置する際には、これを屋上緑化や壁面緑化等に用いることも可能である。
また、例えば雨天が続いて、雨水の供給量が洗浄液貯留部10の容量を超過した際には、余剰の雨水が雨水取入口12から溢れて、ダクト型中空構造物2の外部に排出されることとなる。このため、必要以上の雨水がダクト型中空構造物2内に供給されるのを防止することができる。
【0053】
また、圧力損失や空気清浄能力などの設定を調整する際には、当該空気清浄化装置1の設置時と反対の順序で、図1(a)〜図1(d)に示すように、光透過性部材5および洗浄装置4を取り外す。これにより、汚染物質除去部材3の数量や配置を自在に変更することができ、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化に応じて、圧力損失や空気清浄能力を容易に調整することができる。
この際に、例えば、汚染物質除去部材3の数量を増加させると、空気と空気清浄手段の接触面積が増加するとともに、圧力損失が増加して風速の低下および空気と空気清浄手段との接触時間の増大をもたらす。一方、汚染物質除去部材3の数量を減少させると、空気と空気清浄手段の接触面積が減少するとともに、圧力損失が減少して風速の増大および空気と空気清浄手段との接触時間の減少をもたらす。すなわち、汚染物質除去部材3の数量を増減することにより、圧力損失および空気清浄能力を変化させることができる。
また、汚染物質除去部材3の数量を変えなくとも、汚染物質除去部材3の配置を変更すれば、圧力損失が変動することから、空気清浄能力が変化する。また、空気清浄手段の種類や密度を変えることによっても、空気清浄能力が変化する。したがって、汚染物質除去部材3の数量、配置および空気清浄手段の設定を変えることによって、圧力損失および空気清浄能力を調整することができる。
【0054】
また、洗浄装置4のメンテナンスを行う際には、同様の手順で、洗浄装置4を取り外すようにすればよい。本実施形態では、洗浄管11が取り外し可能に構成されているため、洗浄管11の洗浄や交換を行う際には、洗浄装置4を装着した状態のまま、当該洗浄管11のみを取り外すようにしてもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態の空気清浄化装置1によれば、汚染物質除去部材3をダクト型中空構造物2内に設置した状態のまま洗浄することができるため、従来と比較して洗浄作業を大幅に軽減することができるとともに、例えば、建築物側面の外気取入口など、従来は洗浄が困難であった場所においても、汚染物質除去部材3を適切に洗浄することができる。
また、洗浄装置4をダクト型中空構造物2に着脱自在な状態で設置するようにしたので、洗浄装置4が汚染物質除去部材3の設置や撤去の妨げになることはなく、また、汚染物質除去部材3の数量や配置の変更に対しても容易且つ柔軟に対応することができる。したがって、汚染物質除去部材3の数量や配置を変更して圧力損失や空気清浄能力などの設定を調整する際においても、洗浄装置4がその調整の妨げになることはなく、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化に応じて、圧力損失や空気清浄能力を容易に調整することができる。また、汚染物質除去部材3に経年劣化や過度の汚れ等が生じた場合においても、当該汚染物質除去部材3を容易に交換することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の空気清浄化装置1によれば、汚染物質除去部材3に向けて上方から洗浄液を吐出するようにしたので、僅かな洗浄液で汚染物質除去部材3を効率良く洗浄することができ、その排水量を最小限に抑えることができる。
また、洗浄管11の取付位置および数量が異なる複数種類の洗浄液貯留部10を用意して、当該洗浄液貯留部10に洗浄管11を着脱できるように構成したので、汚染物質除去部材3の数量や配置に応じて、洗浄管11の数量や配置を容易に調整することができる。また、洗浄管11の取り外しができるので、洗浄装置4のメンテナンスも容易に行うことができる。
特に、本実施形態では、洗浄液貯留部10に雨水取入口12を設けて、当該雨水取入口12から取り入れた雨水を洗浄液として利用するようにしたので、余分なエネルギーを使用せずに自然エネルギーのみで汚染物質除去部材3を洗浄することができる。
また、汚染物質除去部材3の起立板部8を空気の流通方向と略平行に配置し、それら起立板部8の上方位置に、各起立板部8に沿って、洗浄管11をそれぞれ配置するようにしたので、圧力損失の増加を最小限に抑えることができる。
【0057】
このように、本実施形態の空気清浄化装置1によれば、雨水を洗浄液として利用できる上に、洗浄装置4が着脱自在で、圧力損失が低く、しかも余分なエネルギーを使用しないため、例えば、建築物の側面または屋上部の給排気口や、地下空間と地上とを結ぶ給排気口、水族館の排気口、地下駐車場の排気口、トンネルの排気口など、新設・既設を問わず、様々な給排気口に設置することができ、それら給排気口を通る空気中に含まれる様々な汚染物質を効率良く除去することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、洗浄装置4の上面をダクト型中空構造物2の上面に合わせてほぼ面一となるようにしたが、洗浄装置4の容量を増やすために、洗浄装置4の上面をダクト型中空構造物2の上面よりも高くするようにしてもよい。
また、本実施形態では、洗浄液貯留部10の両端に設けた係合片13で洗浄装置4を支持する構成としたが、これに加えて、例えば図6に示すように、ダクト型中空構造物2の内部に、洗浄液貯留部10の底部を載せる支持板21や、あるいは図7に示すように、洗浄液貯留部10の側部スリット23に挿入する支持板22等を架設して、それら支持板21,22と上記係合片13との協働により洗浄装置4を支持する構成とすることも可能である。
また、本実施形態では、洗浄液貯留部10に洗浄管支持部15を設ける構成としたが、その代わりに、例えば図8に示すように、ダクト型中空構造物2の内部に洗浄管支持部24を設ける構成とすることも可能である。
なお、それら洗浄管支持部24および支持板21,22は、ダクト形状を維持するための手段としても利用することが可能である。
【0059】
また、本実施形態では、底板部7の上面に複数の起立板部8が立設された汚染物質除去部材3を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図9に示すように、複数の起立板部25が連結部材により相互に連結された汚染物質除去部材27を用いることも可能である。この場合、連結部材としては、図9(a)および図9(b)に示すように、各起立板部25を上端位置で連結する連結部材26aを用いるようにしても、或いは図9(c)および図9(d)に示すように、下端位置で連結する連結部材26bを用いるようにしてもよい。何れの場合も、複数の連結部材を用いることにより、安定した状態で各起立板部25を支持することができる。連結部材26a、26bは、例えばセラミックス等の無機材料により形成することが可能である。ここでは、帯板状の基枠の一方の面に立設された互いに平行な一対の支持片26c,26cの間に起立板部25を挿入して、それら支持片26c,26cにより当該起立板部25をその両側から支える構造としているが、これ以外の方法で起立板部25を支持するものであってもよい。また、このような構成の場合には、ダクト型中空構造物2の床面上にも、平板状の汚染物質除去部材28を敷設することが可能である。
【0060】
また、本実施形態では、ダクト型中空構造物2の天井部を光透過性部材5で構成して、ダクト内部の汚染物質除去部材3に太陽光が照射されるように構成したが、例えば、太陽光が届かない箇所で使用する場合や、夜間使用する場合には、図10(a)および図10(b)に示すように、ダクト型中空構造物2の天井部にブラックライト等の紫外線照射手段29を設けることも可能である。この場合、紫外線照射手段29と汚染物質除去部材3との間に洗浄管11が配置されるように、洗浄管11の上方位置に紫外線照射手段29を設置することが望ましい。
【0061】
また、本実施形態では、汚染物質除去部材3の起立板部8を平板状に形成するようにしたが、少量の洗浄液で効率的に汚染物質除去部材3の表面を洗浄できるように、起立板部8の頂部を山形に形成することも可能である。さらに、起立板部8の上端部(空気清浄パネルや、これを支持部材に固定するための固定治具等)の表面が親水性となるように光触媒を塗布したり、当該表面を親水性の材料によって構成するようにしてもよく、そうすることで、洗浄管11から吐出される洗浄液を広範囲に広げることができ、汚染物質除去部材3表面の洗浄効率をさらに向上させることができる。特に、光触媒を塗布した場合には、親水性および光触媒効果により、汚れなどの付着が低減できるため、長期間、上記洗浄効果を維持することができる。
【0062】
また、本実施形態では、洗浄液貯留部10に雨水取入口12を設けて、当該雨水取入口12から雨水(洗浄液)を直接取り入れる構成としたが、例えば図11に示すように、外部から洗浄液貯留部10Aに洗浄液を導入する構成とすることも可能である。図11の例では、ダクト型中空構造物2の上端両側部に一対の給水路30a,30bを配設し、それら給水路30a,30b間に円筒状の洗浄液貯留部10Aを架設する構成となっている。給水路30a,30bには、上面が開放された断面略コ字状の流路が用いられ、その上部開口から雨水を取り込み可能となっている。また、洗浄液貯留部10Aの連結口の近傍位置(下流側)には、所定高さの堰板31が介装されて、当該堰板31から溢れた雨水のみが下流側に流れるように構成されている。さらに、ダクト型中空構造物2の内部には、図12に示すように、各洗浄管11の先端部を支持する支持板32や、洗浄液貯留部10Aを支持する円弧状の突出部33が設けられ、ダクト型中空構造物2の側壁面には、洗浄液貯留部10と給水路30a,30bとを連通させるための開口部が形成されている。また、図11に示すように、ダクト型中空構造物2の天井部が一枚の光透過性部材5Aで構成されている。このような構成の空気清浄化装置によっても、前述した空気清浄化装置1と同様、汚染物質除去部材3をダクト型中空構造物2内に設置した状態のまま洗浄することができ、従来と比較して洗浄作業を大幅に軽減することができる。
【0063】
なお、上記空気清浄化装置においては、洗浄液貯留部10Aに洗浄液を供給する流路として、雨水を取り入れ可能な給水路30a,30bを用いるようにしたが、例えば、洗浄液貯留部10Aよりも高所に設置した貯水タンクから洗浄液貯留部10に供給する場合や、水道水を直接洗浄液貯留部10Aに供給する場合など、加圧された洗浄液を洗浄液貯留部10Aに供給する場合には、図13に示すように、管状の給水路35a,35bを用いることも可能である。この場合、加圧された洗浄液が供給されることにより、洗浄液吐出口から吐出される洗浄液の水圧が増すこととなるので、洗浄装置4の洗浄能力を高めることができるとともに、各洗浄管11の洗浄範囲を拡大することができる。
【0064】
また、本実施形態においては、給排気口を構成するダクトとほぼ同形状のダクト型中空構造物2を設置する場合について例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図14に示すように、大断面の正方形ダクト36に本発明に係る空気清浄化装置を設置する場合には、正方形ダクト36と断面積が同じで幅方向の寸法が大きい(その分、高さ寸法が小さい)ダクト型中空構造物2Aを使用することも可能である。正方形ダクト36と同じ断面形状のダクト型中空構造物を使用した場合には、汚染物質除去部材3の起立板部8の高さ寸法が大きくなる分、洗浄装置4による洗浄効果が低下する懸念があるが、上記ダクト型中空構造物2Aを使用すれば、高さ寸法の小さい起立板部8を用いて、その枚数を増やすことができるため、空気清浄能力を維持したまま、洗浄効果の低下を防ぐことができる。
【0065】
また、例えば図15に示すように、洗浄効果をさらに高める必要がある場合には、ダクト37と高さ寸法が同じで幅方向の寸法が大きいダクト型中空構造物2Bを使用するようにしてもよい。この場合には、幅方向に配置する起立板部8の枚数あるいは汚染物質除去部材3の数量を増やすことができるため、洗浄能力を維持したまま空気清浄能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る空気清浄化装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る洗浄装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】洗浄装置の設置例を示す模式図で、晴天時の状態を表している。
【図4】洗浄装置の設置例を示す模式図で、雨天時の状態を表している。
【図5】図1の空気清浄化装置の設置例を示す斜視図である。
【図6】洗浄装置の支持構造の変形例を示す斜視図である。
【図7】洗浄装置の支持構造の変形例を示す斜視図である。
【図8】洗浄管支持部の変形例を示す斜視図である。
【図9】汚染物質除去部材の変形例を示す斜視図である。
【図10】紫外線照射手段の取付例を示す斜視図である。
【図11】洗浄液の供給構造の変形例を示す斜視図である。
【図12】図11の洗浄装置の取付構造を示す斜視図である。
【図13】洗浄液の供給構造の変形例を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る空気清浄化装置のその他の設置例を示す斜視図である。
【図15】本発明に係る空気清浄化装置のその他の設置例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1 空気清浄化装置
2 ダクト型中空構造物
3 汚染物質除去部材
4 洗浄装置
5 光透過性部材
6 流路構成部材
7 底板部
8 起立板部
10 洗浄液貯留部
11 洗浄管
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト型中空構造物内に設置された汚染物質除去部材を洗浄する洗浄装置およびこれを用いた空気清浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、例えば二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスについては、国際的な削減目標の設定などが行われており、二酸化炭素の削減を目的とした世界規模での植林事業に呼応して、建築分野においても、屋上緑化などの対策が講じられるようになってきている。
【0003】
また、健康面からも、自動車等から発せられる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)についても、その排出規制が一段と厳しくなっており、さらに悪臭物質やたばこ臭、シックハウス症候群を引き起こすホルムアルデヒドなどの居住空間における汚染物質も社会問題となっている。
【0004】
空気中に含まれるこれら汚染物質を除去する技術としては、太陽光等の光エネルギーの下で活性化した酸化チタン等の光触媒に接触させることにより、上記汚染物質を分解除去する技術や、オゾン処理による除去技術、あるいは活性炭などの吸着剤によって吸着除去する技術などが実用化されている。
【0005】
また、建築物においても、吸着剤や光触媒を用いたフィルターにより、建築物内部に取り込む空気や、建築物外部に排出する空気に含まれる汚染物質を除去する技術が提案されている。
さらに、例えば、特許文献1〜4には、光触媒または光触媒と吸着剤の組合せからなる平板を汚染空気の流通方向と平行に配置することによって、圧力損失を低下させるようにした装置(以下、平行板装置と称する。)が提案されている。
【0006】
しかしながら、それら平行板装置には、現場に設置した後に圧力損失や空気清浄能力(汚染物質の除去効率)などの設定を調整する手段が設けられていないため、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件が変化する場合に、それら条件に合わせて上記設定を調整することが困難であった。そのため、例えば、設計時の予定性能を確保できない場合には、装置全体の交換が必要であった。
【0007】
また、上記平行板装置を既設のダクトなどに連結する際には、上記平行板装置をその設置環境に合わせて設計するか、または給排気動力の増設などの大掛かりな工事によって、既存の設備を上記平行板装置の仕様に合わせる手間が発生する。何れの場合も設置後に上記設定の微調整が必要になることが多いが、そのような場合においても、上記設定を調整することは困難であった。
【0008】
一方、屋外の汚染物質を除去する方法としては、例えば、建物外壁、ガードレール、道路などの構造物の表面に光触媒を塗布して、光触媒の作用により、周囲に存在するNOxやSOxを分解除去する方法が検討されている。しかしながら、これらの物質を分解除去の対象とした場合には、光触媒反応で生じる硝酸塩あるいは硫酸塩が光触媒表面に蓄積する触媒被毒が光触媒の性能劣化の大きな要因となるため、洗浄処理などによってそれら無機塩を除去する必要がある。無機塩を除去する方法としては、例えば雨水によって洗い流すことも考えられるが、そのまま放置しておくと、洗い流された硝酸塩あるいは硫酸塩が土壌中に拡散して地下水汚染などを引き起こす虞がある。このため、上記汚染水を回収するのが望ましいが、上記汚染水は大量に発生するために、その回収設備に掛かるコストは高く、また上述した建物外壁やガードレール等の構造物の近傍は、何れも回収設備を設置するのに適していないため、現状では汚染水を回収するのは困難である。
【0009】
そこで、本発明者等は、先に、上記問題点を解決する空気清浄化装置として、壁面に開閉部が設けられた中空構造物本体と、この中空構造物本体の内部に、空気の流通方向と略平行に且つ着脱自在な状態で配置された汚染物質除去部材とを有する空気清浄化装置を提案するとともに、これに関する技術を特許文献5(特願2006−337700号の明細書等)に記載している。
かような構成の空気清浄化装置によれば、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化などに応じて、圧力損失や空気清浄能力などの設定を容易に調整することができる上に、汚染物質除去部材表面の空気清浄手段(光触媒や吸着材など)を適切な時期に容易に交換・洗浄することもできる。
【0010】
しかしながら、光触媒によりNOxやSOxを分解除去する場合には、前述した触媒被毒により短期間で触媒性能が低下することが多く、上記空気清浄手段を交換・洗浄する頻度も高くなるため、たとえ容易な作業であっても、ある程度の手間と時間を要する。また、例えば、建築物側面の外気取入口など、上記空気清浄化装置の設置場所によっては、上記空気清浄手段を頻繁に交換・洗浄するのが困難な場合もある。
【0011】
なお、交換や洗浄が困難な場所に設置された部材を洗浄する装置としては、例えば、特許文献6に記載の自動再生型換気装置が知られている。この自動再生型換気装置においては、フィルタ(洗浄対象となる部材)の近傍に、その圧力損失を測定する差圧センサを設け、その差圧センサの測定結果に基づいてフィルタの汚れが検知された場合に、洗浄用給水設備や洗浄空間の区画機構等を作動させることによって、フィルタを自動洗浄するようにしている。
しかしながら、上記自動再生型換気装置においては、洗浄用給水設備の散水用配管口が固定設置されているために、フィルタ(洗浄対象となる部材)の増設や、配置変更等に全く対応することができず、その上、制御装置により洗浄用給水設備や区画機構等を自動制御するようにしているため、それに対応して、システムの構成も複雑になるという問題点があった。
また、フィルタを通過させて汚染物質を除去する構成としているため、汚染空気の処理量にも自ずと限界があった。
【0012】
【特許文献1】特開平10−286436号公報
【特許文献2】特開2001−120956号公報
【特許文献3】特開2001−137665号公報
【特許文献4】特許第3483208号公報
【特許文献5】特願2006−337700号
【特許文献6】特開2004−301423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、汚染物質除去部材を設置した状態のまま洗浄できる機能を有しながらも、汚染物質除去部材の数量や配置の変更に容易且つ柔軟に対応することができ、しかも僅かな洗浄液で汚染物質除去部材を効率良く洗浄することができる洗浄装置およびこれを用いた空気清浄化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明に係る洗浄装置は、ダクト型中空構造物内に設置された汚染物質除去部材を洗浄する装置であって、所定量の洗浄液を貯留可能な洗浄液貯留部と、この洗浄液貯留部内の洗浄液を上記汚染物質除去部材に向けて上方から吐出する洗浄管とを備え、これら洗浄管および洗浄液貯留部が上記ダクト型中空構造物に着脱自在に設置されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項2に記載の本発明に係る空気清浄化装置は、空気流路を有するダクト型中空構造物と、上記ダクト型中空構造物の内部に着脱自在な状態で設置され、表面が光触媒および/または吸着材により構成された汚染物質除去部材と、上記ダクト型中空構造物の上部に着脱自在な状態で設置され、上記汚染物質除去部材を洗浄する洗浄装置とを備え、上記洗浄装置が、上記汚染物質除去部材に向けて上方から洗浄液を吐出する洗浄管と、この洗浄管に洗浄液を供給する洗浄液貯留部とにより構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
ここで、上記ダクト型中空構造物は、その底面および両側壁面を構成する断面略コ字形の流路構成部材と、この流路構成部材の上部開口を塞ぐ天井部材とにより構成することが可能である。汚染物質の除去に光触媒を用いる場合には、上記天井部材が光透過性部材により構成される。
上記汚染物質除去部材としては、例えば、請求項3に記載の発明のように、上記ダクト型中空構造物内に立設可能な一または複数の起立板部を有する汚染物質除去部材を用いることが可能である。
【0017】
上記洗浄装置の洗浄液貯留部は、予め設定された所定量の洗浄液を貯留可能な容器等により構成することが可能である。この洗浄液貯留部をダクト型中空構造物に取り付ける方法としては、例えば、洗浄液貯留部に係合部を設けて、これをダクト型中空構造物の上記流路構成部材の側壁に係合させる方法や、上記流路構成部材の内壁面に支持部を突設して、当該支持部により洗浄液貯留部を支持する方法などが挙げられるが、洗浄液貯留部をダクト型中空構造物に着脱自在に取付可能であれば如何なる方法であってもよい。
【0018】
洗浄液は、光触媒や吸着材に付着した硝酸塩や硫酸塩、粉塵などを洗い落とすことができれば、例えば、雨水、イオン交換水、蒸留水、水道水など、如何なる液体であってもよい。洗浄液として雨水を用いる場合には、例えば、洗浄液貯留部の天井部に雨水取入口(開口部)を設けて、当該雨水取入口から雨水を直接受け入れるようにしても、あるいは別の場所から配管等を介して導入するようにしてもよい。何れの洗浄液を用いる場合にも、洗浄液の取入口には、洗浄液の流入を制限する開閉手段を設けることが望ましい。そうすることで、例えば梅雨の季節のように長期間雨天が続く場合などには、開閉手段により雨水取入口を閉じて、雨水の流入を制限することにより、過度な洗浄による光触媒や吸着材の性能劣化を抑制することができる。開閉手段は、例えば、スライド式の扉部材で開口部を開閉するものや、蓋部材により開口部を開閉するものなど、如何なる態様のものであってもよい。
【0019】
上記洗浄装置の洗浄管は、洗浄液貯留部の下端部(側面または底面)に連結することが好ましく、洗浄液貯留部の底面に連結する際には、底面に、連結部が最下端となるような傾斜を設けることが好ましい。また、この連結部(または洗浄液の導入口)には、ネット、フィルタ、金属網、金属ボールなど、ゴミや落ち葉などによる目詰まりを防ぐ手段を設けることが望ましい。さらに、隣接する他の洗浄装置等には、各洗浄管の先端部を支持する洗浄管支持部を設けることが望ましく、そうすることで、各洗浄管および洗浄装置を安定した状態で設置することができる。
【0020】
各洗浄管には、汚染物質除去部材に向けて洗浄液を吐出可能な位置に洗浄液吐出口が設けられる。この洗浄液吐出口は、汚染物質除去部材を洗浄可能であれば、その数量や配置は任意に設定することが可能である。例えば、洗浄管を水平に配置して、その下端位置に長手方向に沿って所定間隔毎に洗浄液吐出口を設けるようにすれば、直下の汚染物質除去部材を洗浄することが可能である。また、周方向に複数の洗浄液吐出口を設けるようにすれば、直下の汚染物質除去部材だけでなく、これに隣接する汚染物質除去部材も併せて洗浄することが可能である。
【0021】
なお、上記洗浄装置においては、洗浄液の流入量が洗浄液貯留部の容量を超過した際に、余剰の洗浄液がダクト型中空構造物の外部に排出される構造とすることが望ましい。そうすることで、必要以上の洗浄液がダクト型中空構造物内に供給されるのを防止することができる。また、かような構造とした場合には、洗浄液吐出口の径や、洗浄液貯留部の容量、ダクト型中空構造物の傾斜角度等を調整することによって、ダクト型中空構造物内に供給する洗浄液量を調整することが可能である。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空気清浄化装置において、上記汚染物質除去部材は、上記ダクト型中空構造物内に立設可能な一または複数の起立板部を有し、当該起立板部が空気の流通方向と略平行に配置されるとともに、それら起立板部の上方に、各起立板部の上端に沿って、上記洗浄管がそれぞれ配置されていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の空気清浄化装置において、上記洗浄液貯留部として、上記洗浄管の取付位置および数量が異なる複数種類の洗浄液貯留部が用意され、それら洗浄液貯留部に上記洗浄管が着脱できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4の何れかに記載の空気清浄化装置において、上記洗浄管から吐出される洗浄液の吐出量が空気流路の上流側ほど大きくなるように設定されていることを特徴とするものである。
なお、洗浄液の吐出量を空気流路の上流側ほど大きくするには、例えば、洗浄管の洗浄液吐出口の径を空気流路の上流側ほど大きくしたり、あるいは洗浄液貯留部の容量を空気流路の上流側ほど大きくするようにすればよい。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5の何れかに記載の空気清浄化装置において、上記ダクト型中空構造物の天井部に、上記汚染物質除去部材に対して紫外線を照射する紫外線照射手段が配設され、この紫外線照射手段と上記汚染物質除去部材との間に上記洗浄管が配置されていることを特徴とするものである。
ここで、紫外線照射手段としては、例えば、ブラックライトや紫外線ランプなどが挙げられる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜6の何れかに記載の空気清浄化装置において、加圧された洗浄液が上記洗浄液貯留部に供給される構成としたことを特徴とするものである。
具体的に、加圧された洗浄液を洗浄液貯留部に供給する方法としては、例えば、洗浄液貯留部よりも高所に貯水タンクを設置して、当該貯水タンクから洗浄液貯留部に洗浄液を供給する方法や、ポンプ等の加圧装置を介して洗浄液貯留部に洗浄液を供給する方法などが挙げられる。このような構成とした場合には、洗浄液吐出口を複数の微細な孔の集合に変更することによって、拡散型の放水を行うことも可能である。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜7の何れかに記載の空気清浄化装置において、上記洗浄管の先端部を上記ダクト型中空構造物の空気流入側に向けた状態で上記洗浄装置が配置されるとともに、上記ダクト型中空構造物が、空気流入側が低くなるように傾斜した状態で設置されていることを特徴とするものである。
【0028】
上記空気清浄化装置においては、上記ダクト型中空構造物の空気流入側の底面に、排水管に通ずる排水溝を設け、上記排水管に、排水を回収または清浄化する手段を接続または介装するようにしてもよい。
また、回収した排水は清浄化処理するようにしても、あるいは大量の雨水で希釈処理するようにしてもよい。それら処理水は植物への栄養源として利用することも可能であり、例えば、当該空気清浄化装置を屋上に設置する場合には、これを屋上緑化や壁面緑化に用いることも可能である。
【0029】
さらに、上記空気清浄化装置においては、上記洗浄液貯留部の天井部に雨水取入口を設け、当該雨水取入口から流入した雨水を洗浄液として用いる構成とすることも可能である。
かかる構成の場合には、洗浄液貯留部の設置位置を底とする緩やかなテーパ状にダクト型中空構造物の天井部を構成することにより、洗浄液貯留部に流入する雨水を増加させることも可能である。
【発明の効果】
【0030】
請求項1または2に記載の発明によれば、汚染物質除去部材をダクト型中空構造物内に設置した状態のまま洗浄することが可能となり、従来と比較して洗浄作業を大幅に軽減することができるとともに、例えば、建築物側面の外気取入口など、従来は洗浄が困難であった場所においても、汚染物質除去部材を適切に洗浄することができる。
また、洗浄装置をダクト型中空構造物に着脱自在な状態で設置するようにしたので、洗浄装置が汚染物質除去部材の設置や撤去の妨げになることはなく、また、汚染物質除去部材の数量や配置の変更に対しても容易且つ柔軟に対応することができる。したがって、汚染物質除去部材の数量や配置を変更して圧力損失や空気清浄能力などの設定を調整する際においても、洗浄装置がその調整の妨げになることはなく、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化に応じて、圧力損失や空気清浄能力を容易に調整することができる。また、繰り返し行われる洗浄過程で汚染物質除去部材に目詰まりや洗浄液による経年劣化、過度の汚れ等が生じた場合においても、当該汚染物質除去部材を容易に交換することができる。
【0031】
さらに、請求項1または2に記載の発明によれば、汚染物質除去部材に向けて上方から洗浄液を吐出するようにしたので、僅かな洗浄液で汚染物質除去部材を効率良く洗浄することができ、その排水量を最小限に抑えることができる。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、汚染物質除去部材の起立板部を空気の流通方向と略平行に配置し、それら起立板部の上方に、各起立板部に沿って、洗浄管をそれぞれ配置するようにしたので、圧力損失の増加を極力抑えることができる。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、洗浄管の取付位置および数量が異なる複数種類の洗浄液貯留部を用意して、当該洗浄液貯留部に洗浄管を着脱できるように構成したので、汚染物質除去部材の数量や配置に応じて、洗浄管の数量や配置を容易に調整することができる。また、洗浄管の取り外しができるので、洗浄装置のメンテナンスも容易に行うことができる。
【0034】
請求項5に記載の発明によれば、洗浄管から吐出される洗浄液の吐出量が空気流路の上流側ほど大きくなるように構成したので、汚染物質の濃度が高く汚染物質除去部材の表面に蓄積する酸化生成物量が多い空気流路の上流側ほど、洗浄装置による洗浄能力が高くなる。
したがって、汚染物質除去部材をその性能劣化の度合いに応じて効率良く洗浄することができ、洗浄液の使用量や排水量を全体として減らすことができる。
【0035】
請求項6に記載の発明によれば、紫外線照射手段と汚染物質除去部材との間に洗浄管を配置するようにしたので、洗浄管から吐出された洗浄液が紫外線照射手段の方向に飛散するのを極力防止することができる。
【0036】
請求項7に記載の発明によれば、洗浄液吐出口から吐出される洗浄液の水圧が増すこととなるので、洗浄装置の洗浄能力を高めることができるとともに、各洗浄管の洗浄範囲を拡大することができる。
【0037】
請求項8に記載の発明によれば、ダクト型中空構造物を、空気流入側が低くなるように傾斜した状態で設置したので、ダクト型中空構造物の底面に設置した汚染物質除去部材(底板部)を効率良く洗浄することができるとともに、その排水を空気流入側に容易に導くことができ、ダクト型中空構造物内に排水が滞留したり、逆流が発生したりするのを防止することができる。また、ダクト型中空構造物と共に洗浄管も傾いた状態となるので、洗浄液貯留部から洗浄管に円滑に洗浄液を供給することができる。また、共通の給水管から複数の洗浄液貯留部に順次洗浄液を供給する構成とした場合には、同様に、上記給水管から各洗浄液貯留部に円滑に洗浄液を供給することができる。
なお、上記洗浄排水の処理に関しては、天井面(洗浄装置)が水平で底面のみが空気流入側に下り傾斜したダクト型中空構造物を用いることによっても、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、本発明に係る空気清浄化装置の一実施形態を示す概略構成図である。
この空気清浄化装置1は、図1および図2に示すように、ダクト型中空構造物2と、このダクト型中空構造物2の内部に、空気の流通方向と略平行に配置された汚染物質除去部材3と、この汚染物質除去部材3を洗浄する洗浄装置4とにより概略構成されている。本実施形態では、ダクト型中空構造物2の内部に、空気の流通方向に沿って複数の汚染物質除去部材3が一列に配置され、それら汚染物質除去部材3の上方位置に、それぞれ洗浄装置4が配置されている。
【0039】
ダクト型中空構造物2は、図1に示すように、角形のダクトであり、その天井部を構成する光透過性部材5と、底部および両側壁部を構成する断面略コ字形の流路構成部材6とにより構成されている。光透過性部材5は、例えば硼珪酸ガラスなどからなり、太陽光や光源の光(紫外線)を透過可能となっている。光透過性部材5は、流路構成部材6の上部開口のうち、後述する洗浄装置4の雨水取入口12以外の領域を覆う状態で着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、流路構成部材6と洗浄装置4の各上端位置にそれぞれフランジ部9,14が設けられ、それらフランジ部9,14によって形成される矩形枠状の載置部の上に、光透過性部材5が設置されるようになっている。
【0040】
汚染物質除去部材3は、ダクト型中空構造物2の底部上面に載置可能な底板部7と、この底板部7上面に立設された一または複数の起立板部8とを備えている。本実施形態では、汚染物質除去部材3として、図1(d)に示すように、4枚の起立板部8を有する第1汚染物質除去部材3aと、5枚の起立板部8を有する第2汚染物質除去部材3bが用意されている。
【0041】
汚染物質除去部材3は、その表面が光触媒や吸着材等の空気清浄手段により構成されている。本実施形態では、空気清浄手段を板状に成形した空気清浄パネル、あるいは板状の基材の全体または一部に空気清浄手段を塗布または焼付けた空気清浄パネルを支持部材の両面または片面に装着することにより、汚染物質除去部材3が構成されている。
【0042】
上記空気清浄手段を構成する光触媒としては、例えば、酸化チタン、金属酸化物半導体(酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化カドミウム、酸化インジウム、酸化銀、酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化スズ、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウムなど)、金属硫化物半導体(硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化インジウム、硫化鉛、硫化銅、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化アンチモン、硫化ビスマスなど)、チタン酸ストロンチウム、セレン化カドミウム、タンタル酸カリウム、およびこれらの混合物などが適用可能である。また、光触媒とセメントの混合材や光触媒にハイドロキシアパタイトやフッ化アパタイトを結合させた触媒なども適用可能である。
一方、上記吸着材としては、例えば、ゼオライト、シリカゲル、イオン交換材、アルミナ系吸着材、金属錯体系吸着材、セラミックスなどの無機系吸着材や、活性炭、イオン交換材、キレート樹脂などの有機系吸着材が適用可能である。なお、上記吸着材には、特定のガスを除去するためのガス反応成分(例えば、二酸化炭素を除去するための水酸化カリウム溶液など)を塗布または含浸したものも含まれる。
【0043】
洗浄装置4は、図2に示すように、所定量の洗浄液(雨水)を貯留可能な洗浄液貯留部10と、この洗浄液貯留部10内の洗浄液を上記汚染物質除去部材3に向けて上方から吐出する洗浄管11とにより構成されている。
【0044】
洗浄液貯留部10は、上面が開放された矩形箱状の容器で、その上部開口が雨水取入口12となっている。この洗浄液貯留部10は、図1(b)および図1(c)に示すように、ダクト型中空構造物2の上端部(流路構成部材6の側壁部間)に架設され、図3に示すように、各洗浄管11が汚染物質除去部材3の各起立板部8の直上位置に配置されるよう、その設置位置が設定されている。
洗浄液貯留部10の雨水取入口12の周縁部には、図2に示すように、その長手方向の両端に、一対の係合片13が設けられ、短手方向の両端には、光透過性部材5を載置するためのフランジ部14が設けられている。
上記係合片13は、洗浄液貯留部10をダクト型中空構造物2に装着するためのもので、それら係合片13を流路構成部材6の両側壁部に係合させた状態でストッパー等により固定することにより、洗浄液貯留部10がダクト型中空構造物2に装着されるようになっている。それら係合片13と流路構成部材6とが当接する部分には、相互の密着性を高めるために、例えばシリコン製のパッキンなどが挿入されている。
【0045】
また、空気の流通方向と垂直な側壁面のうち、一方の側壁面の下端部には、複数の洗浄管11が互いに平行に横一列に並ぶように取り付けられ、他方の側壁面の下端部には、隣接する洗浄装置4の各洗浄管11の先端部を支持するための洗浄管支持部15が水平方向に延出する状態で設けられている。
各洗浄管11には複数の洗浄液吐出口が設けられ、それら吐出口から汚染物質除去部材3の起立板部8に向けて雨水が吐出されるようになっている。
【0046】
例えば、図3(a)に示すように、第1汚染物質除去部材3aの上方位置には、4本の洗浄管11を装着した洗浄装置4が配置され、第2汚染物質除去部材3bの上方位置には、図3(b)に示すように、5本の洗浄管11を装着した洗浄装置4が配置されている。各洗浄管11は、対応する起立板部8の上端に沿ってほぼ水平に配置され、雨天の際には、図4(a)および図4(b)に示すように、その下端位置に穿設した各洗浄液吐出口から直下の起立板部8に向けて一斉に雨水を吐出するようになっている。
【0047】
なお、上述した洗浄液貯留部10や洗浄管11は、ステンレス、アクリル、塩化ビニル、各種プラスチックの何れかにより形成することが可能である。洗浄管11は、洗浄液貯留部10に着脱可能に構成することが望ましく、またその内部を洗浄できるように、複数に分解可能に構成するか、あるいは先端部を取り外し可能に構成することが望ましい。
【0048】
上記構成からなる空気清浄化装置1を使用する際には、先ず、建築物の給気口や排気口など、汚染空気の経路に沿ってダクト型中空構造物2を設置する。
その際に、ダクト型中空構造物2は、図5に示すように、空気流入側が低くなるように傾斜させた状態で設置することが望ましい。そうすることで、洗浄液貯留部10から洗浄管11に円滑に雨水を供給することができるととも、汚染物質除去部材3の底板部7を効率良く洗浄することができる。この場合、排水が空気流入側に向けて流れることとなるので、空気流入側の底面に、排水管17に通ずる排水溝18を設けることが望ましい。また、排水溝18の底面には排水管17との連結部が最下端となるように傾斜を設け、排水管17にフィルタ(排水清浄化手段)19を介装するか、あるいは排水貯蔵タンク(排水回収手段)を連結する構成とすることが望ましい。
【0049】
ダクト型中空構造物2の設置が完了したら、図1(d)に示すように、設置したダクト型中空構造物2の内部に、汚染空気の流通方向と略平行に汚染物質除去部材3を配置する。その際に、要求される空気清浄能力および許容される圧力損失に基づいて、汚染物質除去部材3の配置構成(起立板部8の数量、配置、空気清浄手段の種類など)を決定し、その決定に従って汚染物質除去部材3を配置する。
【0050】
その後、汚染物質除去部材3の設置が完了したら、図1(c)に示すように、各汚染物質除去部材3の上方位置に、洗浄管11の先端部を空気流入側に向けた状態で洗浄装置4を設置する。
その際に、汚染物質除去部材3の起立板部8の数量および配置に基づいて、洗浄管11の取付位置および数量を決定するとともに、要求される洗浄液の吐出量に基づいて、洗浄液貯留部10の容量や洗浄管11の洗浄液吐出口の径を決定する。本実施形態のように、空気の流通方向に沿って複数の汚染物質除去部材3を配置する場合には、洗浄管11から吐出される洗浄液の吐出量が、空気流路の上流側ほど大きくなるように、洗浄液貯留部10の容量や洗浄管11の洗浄液吐出口の径を設定することが望ましい。そうすることで、汚染物質の濃度が高く汚染物質除去部材3の表面に蓄積する酸化生成物量が多い空気流路の上流側ほど、洗浄装置4による洗浄能力が高くなる。
【0051】
洗浄装置4の設置が完了したら、図1(b)に示すように、洗浄装置4の雨水取入口12を閉塞しないようにダクト型中空構造物2上端の所定位置に光透過性部材5を装着する。具体的には、流路構成部材6上端のフランジ部9と洗浄装置4上端のフランジ部14とによって形成される矩形枠状の載置部の上に、シリコン製のパッキン等を介して光透過性部材5を載置し、これを専用のクリップ等で固定する。これにより、空気清浄化装置1の設置が完了となり、この状態で、汚染空気をダクト型中空構造物2の内部に流し込めば、その汚染空気中に含まれる様々な汚染物質を汚染物質除去部材3により除去することができ、空気の清浄化を図ることができる。
【0052】
また、雨天の際には、図4(a)および図4(b)に示すように、洗浄装置4の雨水取入口12に雨水(洗浄液)が流入して、当該雨水が各洗浄管11の洗浄液吐出口から汚染物質除去部材3に向けて上方から吐出される。これにより、汚染物質除去部材3の表面に付着した硝酸塩や硫酸塩、粉塵などが雨水により洗い流される。この排水は、植物への栄養源として利用することも可能であり、例えば、当該空気清浄化装置1を屋上に設置する際には、これを屋上緑化や壁面緑化等に用いることも可能である。
また、例えば雨天が続いて、雨水の供給量が洗浄液貯留部10の容量を超過した際には、余剰の雨水が雨水取入口12から溢れて、ダクト型中空構造物2の外部に排出されることとなる。このため、必要以上の雨水がダクト型中空構造物2内に供給されるのを防止することができる。
【0053】
また、圧力損失や空気清浄能力などの設定を調整する際には、当該空気清浄化装置1の設置時と反対の順序で、図1(a)〜図1(d)に示すように、光透過性部材5および洗浄装置4を取り外す。これにより、汚染物質除去部材3の数量や配置を自在に変更することができ、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化に応じて、圧力損失や空気清浄能力を容易に調整することができる。
この際に、例えば、汚染物質除去部材3の数量を増加させると、空気と空気清浄手段の接触面積が増加するとともに、圧力損失が増加して風速の低下および空気と空気清浄手段との接触時間の増大をもたらす。一方、汚染物質除去部材3の数量を減少させると、空気と空気清浄手段の接触面積が減少するとともに、圧力損失が減少して風速の増大および空気と空気清浄手段との接触時間の減少をもたらす。すなわち、汚染物質除去部材3の数量を増減することにより、圧力損失および空気清浄能力を変化させることができる。
また、汚染物質除去部材3の数量を変えなくとも、汚染物質除去部材3の配置を変更すれば、圧力損失が変動することから、空気清浄能力が変化する。また、空気清浄手段の種類や密度を変えることによっても、空気清浄能力が変化する。したがって、汚染物質除去部材3の数量、配置および空気清浄手段の設定を変えることによって、圧力損失および空気清浄能力を調整することができる。
【0054】
また、洗浄装置4のメンテナンスを行う際には、同様の手順で、洗浄装置4を取り外すようにすればよい。本実施形態では、洗浄管11が取り外し可能に構成されているため、洗浄管11の洗浄や交換を行う際には、洗浄装置4を装着した状態のまま、当該洗浄管11のみを取り外すようにしてもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態の空気清浄化装置1によれば、汚染物質除去部材3をダクト型中空構造物2内に設置した状態のまま洗浄することができるため、従来と比較して洗浄作業を大幅に軽減することができるとともに、例えば、建築物側面の外気取入口など、従来は洗浄が困難であった場所においても、汚染物質除去部材3を適切に洗浄することができる。
また、洗浄装置4をダクト型中空構造物2に着脱自在な状態で設置するようにしたので、洗浄装置4が汚染物質除去部材3の設置や撤去の妨げになることはなく、また、汚染物質除去部材3の数量や配置の変更に対しても容易且つ柔軟に対応することができる。したがって、汚染物質除去部材3の数量や配置を変更して圧力損失や空気清浄能力などの設定を調整する際においても、洗浄装置4がその調整の妨げになることはなく、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化に応じて、圧力損失や空気清浄能力を容易に調整することができる。また、汚染物質除去部材3に経年劣化や過度の汚れ等が生じた場合においても、当該汚染物質除去部材3を容易に交換することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の空気清浄化装置1によれば、汚染物質除去部材3に向けて上方から洗浄液を吐出するようにしたので、僅かな洗浄液で汚染物質除去部材3を効率良く洗浄することができ、その排水量を最小限に抑えることができる。
また、洗浄管11の取付位置および数量が異なる複数種類の洗浄液貯留部10を用意して、当該洗浄液貯留部10に洗浄管11を着脱できるように構成したので、汚染物質除去部材3の数量や配置に応じて、洗浄管11の数量や配置を容易に調整することができる。また、洗浄管11の取り外しができるので、洗浄装置4のメンテナンスも容易に行うことができる。
特に、本実施形態では、洗浄液貯留部10に雨水取入口12を設けて、当該雨水取入口12から取り入れた雨水を洗浄液として利用するようにしたので、余分なエネルギーを使用せずに自然エネルギーのみで汚染物質除去部材3を洗浄することができる。
また、汚染物質除去部材3の起立板部8を空気の流通方向と略平行に配置し、それら起立板部8の上方位置に、各起立板部8に沿って、洗浄管11をそれぞれ配置するようにしたので、圧力損失の増加を最小限に抑えることができる。
【0057】
このように、本実施形態の空気清浄化装置1によれば、雨水を洗浄液として利用できる上に、洗浄装置4が着脱自在で、圧力損失が低く、しかも余分なエネルギーを使用しないため、例えば、建築物の側面または屋上部の給排気口や、地下空間と地上とを結ぶ給排気口、水族館の排気口、地下駐車場の排気口、トンネルの排気口など、新設・既設を問わず、様々な給排気口に設置することができ、それら給排気口を通る空気中に含まれる様々な汚染物質を効率良く除去することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、洗浄装置4の上面をダクト型中空構造物2の上面に合わせてほぼ面一となるようにしたが、洗浄装置4の容量を増やすために、洗浄装置4の上面をダクト型中空構造物2の上面よりも高くするようにしてもよい。
また、本実施形態では、洗浄液貯留部10の両端に設けた係合片13で洗浄装置4を支持する構成としたが、これに加えて、例えば図6に示すように、ダクト型中空構造物2の内部に、洗浄液貯留部10の底部を載せる支持板21や、あるいは図7に示すように、洗浄液貯留部10の側部スリット23に挿入する支持板22等を架設して、それら支持板21,22と上記係合片13との協働により洗浄装置4を支持する構成とすることも可能である。
また、本実施形態では、洗浄液貯留部10に洗浄管支持部15を設ける構成としたが、その代わりに、例えば図8に示すように、ダクト型中空構造物2の内部に洗浄管支持部24を設ける構成とすることも可能である。
なお、それら洗浄管支持部24および支持板21,22は、ダクト形状を維持するための手段としても利用することが可能である。
【0059】
また、本実施形態では、底板部7の上面に複数の起立板部8が立設された汚染物質除去部材3を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図9に示すように、複数の起立板部25が連結部材により相互に連結された汚染物質除去部材27を用いることも可能である。この場合、連結部材としては、図9(a)および図9(b)に示すように、各起立板部25を上端位置で連結する連結部材26aを用いるようにしても、或いは図9(c)および図9(d)に示すように、下端位置で連結する連結部材26bを用いるようにしてもよい。何れの場合も、複数の連結部材を用いることにより、安定した状態で各起立板部25を支持することができる。連結部材26a、26bは、例えばセラミックス等の無機材料により形成することが可能である。ここでは、帯板状の基枠の一方の面に立設された互いに平行な一対の支持片26c,26cの間に起立板部25を挿入して、それら支持片26c,26cにより当該起立板部25をその両側から支える構造としているが、これ以外の方法で起立板部25を支持するものであってもよい。また、このような構成の場合には、ダクト型中空構造物2の床面上にも、平板状の汚染物質除去部材28を敷設することが可能である。
【0060】
また、本実施形態では、ダクト型中空構造物2の天井部を光透過性部材5で構成して、ダクト内部の汚染物質除去部材3に太陽光が照射されるように構成したが、例えば、太陽光が届かない箇所で使用する場合や、夜間使用する場合には、図10(a)および図10(b)に示すように、ダクト型中空構造物2の天井部にブラックライト等の紫外線照射手段29を設けることも可能である。この場合、紫外線照射手段29と汚染物質除去部材3との間に洗浄管11が配置されるように、洗浄管11の上方位置に紫外線照射手段29を設置することが望ましい。
【0061】
また、本実施形態では、汚染物質除去部材3の起立板部8を平板状に形成するようにしたが、少量の洗浄液で効率的に汚染物質除去部材3の表面を洗浄できるように、起立板部8の頂部を山形に形成することも可能である。さらに、起立板部8の上端部(空気清浄パネルや、これを支持部材に固定するための固定治具等)の表面が親水性となるように光触媒を塗布したり、当該表面を親水性の材料によって構成するようにしてもよく、そうすることで、洗浄管11から吐出される洗浄液を広範囲に広げることができ、汚染物質除去部材3表面の洗浄効率をさらに向上させることができる。特に、光触媒を塗布した場合には、親水性および光触媒効果により、汚れなどの付着が低減できるため、長期間、上記洗浄効果を維持することができる。
【0062】
また、本実施形態では、洗浄液貯留部10に雨水取入口12を設けて、当該雨水取入口12から雨水(洗浄液)を直接取り入れる構成としたが、例えば図11に示すように、外部から洗浄液貯留部10Aに洗浄液を導入する構成とすることも可能である。図11の例では、ダクト型中空構造物2の上端両側部に一対の給水路30a,30bを配設し、それら給水路30a,30b間に円筒状の洗浄液貯留部10Aを架設する構成となっている。給水路30a,30bには、上面が開放された断面略コ字状の流路が用いられ、その上部開口から雨水を取り込み可能となっている。また、洗浄液貯留部10Aの連結口の近傍位置(下流側)には、所定高さの堰板31が介装されて、当該堰板31から溢れた雨水のみが下流側に流れるように構成されている。さらに、ダクト型中空構造物2の内部には、図12に示すように、各洗浄管11の先端部を支持する支持板32や、洗浄液貯留部10Aを支持する円弧状の突出部33が設けられ、ダクト型中空構造物2の側壁面には、洗浄液貯留部10と給水路30a,30bとを連通させるための開口部が形成されている。また、図11に示すように、ダクト型中空構造物2の天井部が一枚の光透過性部材5Aで構成されている。このような構成の空気清浄化装置によっても、前述した空気清浄化装置1と同様、汚染物質除去部材3をダクト型中空構造物2内に設置した状態のまま洗浄することができ、従来と比較して洗浄作業を大幅に軽減することができる。
【0063】
なお、上記空気清浄化装置においては、洗浄液貯留部10Aに洗浄液を供給する流路として、雨水を取り入れ可能な給水路30a,30bを用いるようにしたが、例えば、洗浄液貯留部10Aよりも高所に設置した貯水タンクから洗浄液貯留部10に供給する場合や、水道水を直接洗浄液貯留部10Aに供給する場合など、加圧された洗浄液を洗浄液貯留部10Aに供給する場合には、図13に示すように、管状の給水路35a,35bを用いることも可能である。この場合、加圧された洗浄液が供給されることにより、洗浄液吐出口から吐出される洗浄液の水圧が増すこととなるので、洗浄装置4の洗浄能力を高めることができるとともに、各洗浄管11の洗浄範囲を拡大することができる。
【0064】
また、本実施形態においては、給排気口を構成するダクトとほぼ同形状のダクト型中空構造物2を設置する場合について例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図14に示すように、大断面の正方形ダクト36に本発明に係る空気清浄化装置を設置する場合には、正方形ダクト36と断面積が同じで幅方向の寸法が大きい(その分、高さ寸法が小さい)ダクト型中空構造物2Aを使用することも可能である。正方形ダクト36と同じ断面形状のダクト型中空構造物を使用した場合には、汚染物質除去部材3の起立板部8の高さ寸法が大きくなる分、洗浄装置4による洗浄効果が低下する懸念があるが、上記ダクト型中空構造物2Aを使用すれば、高さ寸法の小さい起立板部8を用いて、その枚数を増やすことができるため、空気清浄能力を維持したまま、洗浄効果の低下を防ぐことができる。
【0065】
また、例えば図15に示すように、洗浄効果をさらに高める必要がある場合には、ダクト37と高さ寸法が同じで幅方向の寸法が大きいダクト型中空構造物2Bを使用するようにしてもよい。この場合には、幅方向に配置する起立板部8の枚数あるいは汚染物質除去部材3の数量を増やすことができるため、洗浄能力を維持したまま空気清浄能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る空気清浄化装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る洗浄装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】洗浄装置の設置例を示す模式図で、晴天時の状態を表している。
【図4】洗浄装置の設置例を示す模式図で、雨天時の状態を表している。
【図5】図1の空気清浄化装置の設置例を示す斜視図である。
【図6】洗浄装置の支持構造の変形例を示す斜視図である。
【図7】洗浄装置の支持構造の変形例を示す斜視図である。
【図8】洗浄管支持部の変形例を示す斜視図である。
【図9】汚染物質除去部材の変形例を示す斜視図である。
【図10】紫外線照射手段の取付例を示す斜視図である。
【図11】洗浄液の供給構造の変形例を示す斜視図である。
【図12】図11の洗浄装置の取付構造を示す斜視図である。
【図13】洗浄液の供給構造の変形例を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る空気清浄化装置のその他の設置例を示す斜視図である。
【図15】本発明に係る空気清浄化装置のその他の設置例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1 空気清浄化装置
2 ダクト型中空構造物
3 汚染物質除去部材
4 洗浄装置
5 光透過性部材
6 流路構成部材
7 底板部
8 起立板部
10 洗浄液貯留部
11 洗浄管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクト型中空構造物内に設置された汚染物質除去部材を洗浄する装置であって、所定量の洗浄液を貯留可能な洗浄液貯留部と、この洗浄液貯留部内の洗浄液を上記汚染物質除去部材に向けて上方から吐出する洗浄管とを備え、これら洗浄管および洗浄液貯留部が上記ダクト型中空構造物に着脱自在に設置されていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
空気流路を有するダクト型中空構造物と、
上記ダクト型中空構造物の内部に着脱自在な状態で設置され、表面が光触媒および/または吸着材により構成された汚染物質除去部材と、
上記ダクト型中空構造物の上部に着脱自在な状態で設置され、上記汚染物質除去部材を洗浄する洗浄装置とを備え、
上記洗浄装置が、上記汚染物質除去部材に向けて上方から洗浄液を吐出する洗浄管と、この洗浄管に洗浄液を供給する洗浄液貯留部とにより構成されていることを特徴とする空気清浄化装置。
【請求項3】
上記汚染物質除去部材は、上記ダクト型中空構造物内に立設可能な一または複数の起立板部を有し、当該起立板部が空気の流通方向と略平行に配置されるとともに、それら起立板部の上方位置に、各起立板部の上端に沿って、上記洗浄管がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項2に記載の空気清浄化装置。
【請求項4】
上記洗浄液貯留部として、上記洗浄管の取付位置および数量が異なる複数種類の洗浄液貯留部が用意され、それら洗浄液貯留部に上記洗浄管が着脱できるように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の空気清浄化装置。
【請求項5】
上記洗浄管から吐出される洗浄液の吐出量が空気流路の上流側ほど大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の空気清浄化装置。
【請求項6】
上記ダクト型中空構造物の天井部に、上記汚染物質除去部材に対して紫外線を照射する紫外線照射手段が配設され、この紫外線照射手段と上記汚染物質除去部材との間に上記洗浄管が配置されていることを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の空気清浄化装置。
【請求項7】
加圧された洗浄液が上記洗浄液貯留部に供給される構成としたことを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の空気清浄化装置。
【請求項8】
上記洗浄管の先端部を上記ダクト型中空構造物の空気流入側に向けた状態で上記洗浄装置が配置されるとともに、
上記ダクト型中空構造物が、空気流入側が低くなるように傾斜した状態で設置されていることを特徴とする請求項2〜7の何れかに記載の空気清浄化装置。
【請求項1】
ダクト型中空構造物内に設置された汚染物質除去部材を洗浄する装置であって、所定量の洗浄液を貯留可能な洗浄液貯留部と、この洗浄液貯留部内の洗浄液を上記汚染物質除去部材に向けて上方から吐出する洗浄管とを備え、これら洗浄管および洗浄液貯留部が上記ダクト型中空構造物に着脱自在に設置されていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
空気流路を有するダクト型中空構造物と、
上記ダクト型中空構造物の内部に着脱自在な状態で設置され、表面が光触媒および/または吸着材により構成された汚染物質除去部材と、
上記ダクト型中空構造物の上部に着脱自在な状態で設置され、上記汚染物質除去部材を洗浄する洗浄装置とを備え、
上記洗浄装置が、上記汚染物質除去部材に向けて上方から洗浄液を吐出する洗浄管と、この洗浄管に洗浄液を供給する洗浄液貯留部とにより構成されていることを特徴とする空気清浄化装置。
【請求項3】
上記汚染物質除去部材は、上記ダクト型中空構造物内に立設可能な一または複数の起立板部を有し、当該起立板部が空気の流通方向と略平行に配置されるとともに、それら起立板部の上方位置に、各起立板部の上端に沿って、上記洗浄管がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項2に記載の空気清浄化装置。
【請求項4】
上記洗浄液貯留部として、上記洗浄管の取付位置および数量が異なる複数種類の洗浄液貯留部が用意され、それら洗浄液貯留部に上記洗浄管が着脱できるように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の空気清浄化装置。
【請求項5】
上記洗浄管から吐出される洗浄液の吐出量が空気流路の上流側ほど大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の空気清浄化装置。
【請求項6】
上記ダクト型中空構造物の天井部に、上記汚染物質除去部材に対して紫外線を照射する紫外線照射手段が配設され、この紫外線照射手段と上記汚染物質除去部材との間に上記洗浄管が配置されていることを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の空気清浄化装置。
【請求項7】
加圧された洗浄液が上記洗浄液貯留部に供給される構成としたことを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の空気清浄化装置。
【請求項8】
上記洗浄管の先端部を上記ダクト型中空構造物の空気流入側に向けた状態で上記洗浄装置が配置されるとともに、
上記ダクト型中空構造物が、空気流入側が低くなるように傾斜した状態で設置されていることを特徴とする請求項2〜7の何れかに記載の空気清浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−253911(P2008−253911A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98192(P2007−98192)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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