説明

洗浄装置

【課題】 高性能で省力化を実現した洗浄装置を提供する。
【解決手段】 バスケットBKに収容したワークを洗浄する洗浄槽1と、洗浄槽1に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔2と、回収塔2から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器3と、前記各部1〜3を適宜に減圧する真空ポンプ4と、バスケットBKを洗浄槽1に搬入及び搬出する昇降装置5と、装置全体の動作を制御する制御部6とを備えて構成される。昇降装置5は、上下動する可動ベース板20と、可動ベース板20から下方に延設される係止部21,21とを備えて構成される。可動ベース板20は、洗浄槽1の密閉蓋を兼ねている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程毎の移送処理が不要であって、一つの槽内で洗浄工程から乾燥工程までを自動的に実行できる単槽式の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、炭化水素系有機溶剤を用いる一槽式の洗浄装置を提案しており(特許文献1)、非常に好評を博している。
【特許文献1】特開平09−141216公報
【0003】
この洗浄装置は、開閉弁を通して連通する洗浄槽及び貯留槽と、これらを減圧する真空ポンプとを中心に構成されている。そして、真空ポンプの作用によって、洗浄槽と貯留槽の間の洗浄液の給排液を実現する点、及び、洗浄槽において超音波洗浄、蒸気洗浄、及び真空乾燥を実現する点に大きな特徴がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の洗浄装置は、小型でありながら高性能である点で極めて優れているが、省力化や更なる高性能化が望まれていた。すなわち、洗浄対象物(ワーク)には、エアポケットとも呼ばれる袋穴を有するものもあり、このような場合には、超音波洗浄時に減圧と復圧を繰り返すと共に、ワークを適宜に回転させるのが有効であり、かかる動作を確実に実現する簡易な構成が望まれていた。しかも、作業員の作業負担を軽減化できると更に好ましい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、より高性能で省力化を実現した洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、バスケットに収容したワークを洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔と、前記回収塔から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器と、前記各部を適宜に減圧する減圧機構と、前記バスケットを前記洗浄槽に搬入及び搬出する昇降装置と、装置全体の動作を制御する制御部とを備えて構成され、前記昇降装置は、上下動する可動ベース板と、前記可動ベース板から延設される係止部とを備えて構成され、前記可動ベース板が前記洗浄槽の密閉蓋を兼ねている。
【0007】
バスケットの形状は、特に限定されないが、円筒状又は多角形筒状に形成されているのが好ましい。更に好ましくは、洗浄槽の中で回転可能に構成されているのが良い。例えば、筒形状のバスケットの軸方向両端に、軸方向に延びる突出部を設けるのが望ましく、このような突出部としては、円柱状又は円筒状に構成さえているのが望ましい。
【0008】
洗浄装置で使用する洗浄液も特に限定されないが、有機溶剤を使用するのが好ましく、好適な有機溶剤としては、トリクロロエチレン等の塩素系有機溶剤ではなく、イソパラフィン系、ノルマルパラフィン系、ナフテン系等の炭化水素系有機溶剤または二種以上の炭化水素系溶剤の混合溶剤が採用される。但し、洗浄液としてグリコール溶剤を使用するのも好適であり、また、炭化水素系溶剤およびグリコール系溶剤の二種以上を選択した混合溶剤であっても良い。
【0009】
第1発明は、洗浄槽の密閉蓋を兼ねた、上下動する可動ベース板と、可動ベース板から延設される係止部とを備える昇降装置が特徴的である。ここで、係止部は、可動ベース板の両端から下方に延びているのが好適である。また、好ましくは、一対の係止部は、バスケットを軸方向両側から保持できる構成が良い。この場合、各係止部には、バスケットを保持する際に、バスケットを所定位置に移動させるスライド片が設けられているのが好ましい。具体的には、バスケットの中心軸が、洗浄槽の中心位置に移動する構成が好ましい。第1発明に関する上記した種々の構成は、特に矛盾が生じない限り、本出願の他の発明にも好適に適用できる。
【0010】
第2発明は、バスケットに収容したワークを洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔と、前記回収塔から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器と、前記各部を適宜に減圧する減圧機構と、前記バスケットを前記洗浄槽に搬入及び搬出する昇降装置と、装置全体の動作を制御する制御部とを備えて構成され、前記洗浄槽の上部には、処理前のバスケットを前記昇降装置に引き渡すと共に、処理後のバスケットを前記昇降装置から受け取るための移送テーブルが設けられ、前記移送テーブルには、前記バスケットの軸方向長さに対応する左右幅を有して、前記バスケットの底部を受け入れる凹部が設けられている。
【0011】
本発明の移送テーブルは、洗浄槽の上部開口を完全に開放する第1状態と、洗浄槽の真上に位置する第2状態とに、スライド移動可能に構成するのが好ましい。この場合、第1状態において人為的にバスケットを受け取り、その後、水平方向に移動して第2状態に移行し、昇降装置にバスケットを自動的に引き渡した後、第1状態に戻るよう移動するのが好適である。また、その後、第1状態で待機し、水平方向に移動して第2状態に移行して、昇降装置からバスケットを自動的に受け取り、第1状態に戻るよう移動するのが好適である。第2発明に関する上記した種々の構成は、特に矛盾が生じない限り、本出願の他の発明にも好適に適用できる。
【0012】
第3発明は、バスケットに収容したワークを洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔と、前記回収塔から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器と、前記各部を適宜に減圧する減圧機構と、前記バスケットを前記洗浄槽に搬入及び搬出する昇降装置と、装置全体の動作を制御する制御部とを備えて構成され、前記バスケットは、多数の開口を有する筒状に形成されて、その軸方向両端には突出部が設けられ、前記突出部の少なくとも一方には、駆動モータの回転力を前記バスケットに伝える伝達部が設けられている。
【0013】
突出部は、円筒形又は円柱形に構成するのが好適である。また、伝達部は、突出部の一部を切欠いて形成するのが好ましい。この場合、駆動モータから板状の駆動軸が突出させるのが好適であり、この板状の駆動軸は、停止状態では、板面が垂直に立つように静止させるのが好適である。第3発明に関する上記した種々の構成は、特に矛盾が生じない限り、本出願の他の発明にも好適に適用できる。
【0014】
第4発明は、バスケットに収容したワークを洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔と、前記回収塔から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器と、前記各部を適宜に減圧する減圧機構と、前記バスケットを前記洗浄槽に搬入及び搬出する昇降装置と、装置全体の動作を制御する制御部とを備えて構成され、前記洗浄槽の側壁の水平方向の中央位置には、駆動モータによって回転される駆動軸が突出され、前記駆動軸の周りには、前記バスケットの回転を支える支持部材が設けられている。
【0015】
支持部材は、前記洗浄槽の側壁から突出して自由回転する回転体であるのが好適である。この場合、駆動軸の両側に回転体を設けることで、バスケットを支持し、駆動軸をバスケットの一部に歯合させるのが好ましい。駆動軸を歯合させる具体的態様は、種々考えられるが、バスケットから回転軸を突出させ、回転軸に設けたキー溝と駆動軸とを歯合させるのが効果的である。この場合、駆動軸は板状に形成し、停止状態では、板面が垂直に立つように静止させるのが好適である。第4発明に関する上記した種々の構成は、特に矛盾が生じない限り、本出願の他の発明にも好適に適用できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、大幅に自動化されて省力化され、しかも高性能の洗浄装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。図1は、実施例に係る洗浄装置WASHの正面図(a)と平面図(b)である。また、図2は、図1の洗浄装置WASHの内部構成を示すフロー図である。
【0018】
図示の通り、この洗浄装置WASHは、ワークの洗浄処理から乾燥処理までを一槽で実行する洗浄槽1と、洗浄槽1に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔2と、回収塔2から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器3と、上記各部1〜3を適宜に減圧する真空ポンプ4と、ワークを収容したバスケットBKを洗浄槽1に搬入及び搬出する昇降装置5と、装置全体の動作を制御する制御部6とを中心に構成されている。
【0019】
図2に示す通り、洗浄槽1の上部には、処理前のバスケットBKを昇降装置5に引き渡すと共に、処理後のバスケットBKを昇降装置5から受け取るための移送テーブルTBLが設けられている。この移送テーブルTBLは、ワークを収容したバスケットBKを載置して、手動操作によって図1(b)の左右方向にスライド移動できるように構成されている。また、洗浄槽1の側壁には、収納されたバスケットBKを回転させる駆動モータMOの駆動軸DRが突設されている(図1(a))。また、洗浄槽1の底部には超音波発信器が設けられている。
【0020】
図2に示す通り、蒸留器3には、オイルタンクOTとオイルポンプPとを備える加熱ラインHOTが設けられており、内部の洗浄液が減圧状態で沸騰している。また、蒸留器3には、回収塔2から洗浄液を受ける液面調整タンク9が接続されている。
【0021】
一方、蒸留器3と洗浄槽1とは、開閉弁V1を通して接続されており、必要時には、洗浄槽1に洗浄蒸気が供給されるようになっている。また、蒸留器3と洗浄槽1の予熱部8とは、開閉弁V2を通して接続されており、予熱部8と回収塔2とは、逆止弁V12を通して接続されている。したがって、蒸留器3から出力された洗浄蒸気は、洗浄槽1を予備加熱した後、回収塔2の液中に導入されて液置換されることになる。
【0022】
洗浄槽1は、開閉弁V5を通して真空ポンプ4に接続されており、必要時には、この経路を通して洗浄槽1が減圧される。一方、洗浄槽1と回収塔2とは開閉弁V7,V8を通して接続されている。ここで、開閉弁V8は、洗浄液の移送時に開放され、開閉弁V7は、洗浄槽1と回収塔2とを同一気圧にする時に開放される。また、洗浄槽1の底部と回収塔2とは、開閉弁V4と逆止弁V11を通して接続されている。なお、開閉弁V3は洗浄槽1を大気開放する時に開放される。
【0023】
回収塔2には、冷却水ラインCOOLが設けられており、逆止弁V11や逆止弁V12を通して供給された洗浄蒸気が、確実に液回収されるようになっている。また、回収塔2は、開閉弁V6を通して真空ポンプ4に接続されており、必要時には、この経路を通して回収塔2が減圧される。
【0024】
真空ポンプ4の下流側には、開閉弁V9を通してアフタークーラ7が設けられ、ここでトラップされた洗浄液は、凝縮液タンクTKに回収される。なお、アフタークーラ7の入力側は、開閉弁V10を通して回収塔2に接続されている。この開閉弁V10は、回収塔2を大気開放する時に開放される。
【0025】
図3は、ワークを収容するバスケットBKを図示したものである。バスケットBKの形状は、特に限定されるものではなく、円柱やその他の角柱でも良いが、ここでは、略六角柱状のバスケットBKを示している。図示の通り、このバスケットBKは、一様に開口穴HOを有する六つの周壁面10が、正六角形の側板11A,11Bで閉塞されて構成されている。
【0026】
周壁面10は、詳細には、板材からなる第1部材10Aと、板材を屈曲形成してなる第2部材10Bとに区分される。そして、第1部材10Aと第2部材10Bが、ヒンジ11によって連結される一方、ロック機構12によって開閉可能に構成されている。したがって、開放状態のバスケットBKにワークを投入した後、ロック機構12によって第1部材10Aと第2部材10Bをロック状態に閉塞するとワークの収容が完了する。
【0027】
2つの側板11A,11Bには、その外周の一辺に、突出板13,13が設けられている。この突出板13は、バスケットBKの軸方向に突出する板材であり、昇降装置5に持ち上げられる部分である。また、側板11A、11Bの中心には、バスケットBKの軸方向に延びる突出部14A,14Bが設けられている。突出部14Bは単純な円筒形状である(図3(d))。一方、突出部14Aは、円筒形状の中心部が、軸方向に延びるU字状の屈曲板15によって切欠かれている。すなわち、突出部14Aは、2つの略半円筒が対面して形成されている。そして、屈曲板5の部分に、駆動モータMOの回転軸と一体に回転する板状の駆動軸DRが挿入されるようになっている(図3(e)参照)。
【0028】
図1(a)に示すように、昇降装置5は、上下動する可動ベース板20と、可動ベース板20の両側から下方に延びる板状の係止部21,21と、可動ベース板20を適宜に昇降させるエアーシリンダ22とを中心に構成されている。ここで、可動ベース板20は、下限位置まで降下すると、洗浄槽1を密閉する蓋として機能する。
【0029】
エアーシリンダ22のシリンダ本体22Aは、本装置のフレームFRに固着され、シリンダロッド22Bは、可動ベース板20に固着されている。また、可動ベース板20には、二本の案内ロッド23が固着され、案内ロッド23を通過させる案内ブッシュ24は、フレームFRに固着されている。
【0030】
図4(a)は、昇降装置5の係止部21,21とバスケットBKとの関係を拡大して図示したものである。なお、図示の状態では、昇降装置5は、ホームポジションに位置している。2つの係止部21,21は、互いに対面してバスケットBKの両側に位置するが、それぞれ、中央開口を設けた矩形状の本体板25と、本体板25に固定されたスライド片26とを中心に構成されている(図4(c)参照)。
【0031】
図4(b)に示す通り、本体板25の下方の両端部は、内向きに(バスケットBKに向けて)直角に屈曲されて、スライド片26の取付台25aを構成している。ここで、スライド片26は、急峻な傾斜角を有する肉厚の三角板であり、その急峻な斜辺が、バスケットBKの突出板13を下方に誘導する傾斜面となっている。なお、このようなスライド片26が、取付台25aの下方からネジ込まれたボルトによって取付台25aに固定されている。
【0032】
図5は、移送テーブルTBLの平面図(a)と、A−A断面図(b)である。図示の移送テーブルは、図5(a)の左右方向にスライド移動可能に構成されている。そして、移送テーブルの中央には、凹部30が形成されている。凹部30の左右幅Wは、バスケットBKの軸方向長さに対応して、ほぼ同一長さに設定されている。一方、凹部30のスライド方向の長さLは、バスケットBKの径方向の長さに対応して、ほぼ同一に設定されている。
【0033】
凹部30の内部には、スライド方向に直交して、4つの丸パイプ31a,31bが掛け渡されている。これらは、バスケットBKを所定の姿勢に保持するためのものであり、丸パイル31a,31aは、凹部30の底面に近接して配置される一方、丸パイプ31b,31bは、凹部30の頂面に近接して配置されている。
【0034】
本実施例の移送テーブルTBLは、六角柱形状のバスケットBKに対応して、上記の通りに構成されているので、移送テーブルTBLにバスケットBKを載置すると、バスケットBKが、移送テーブルTBLの凹部30に嵌って、図1(a)の状態に正しく位置決めされることになる。
【0035】
図6は、洗浄槽1の側壁部分を説明する図面である。図1(a)に示すように、洗浄槽1の側壁水平方向の中心位置には、駆動モータMOの回転軸が貫通して突出している。この回転軸には、矩形板状の駆動軸DRが設けられ、停止状態では、その板面が垂直に立つように静止している(図6(a)参照)。駆動軸DRの左右位置には、自由回転する2つの案内ローラRL,RLが、洗浄槽1の側壁から突出して設けられている(図6(a))。一方、洗浄槽1の反対側側壁の対称位置には、自由回転する2つの案内ローラRL,RLのみが突出して設けられている。
【0036】
駆動軸DRは、バスケットBKの突出部14Aと係合して、バスケットBKを回転させるが(図3(e)参照)、バスケットBKが回転する状態では、突出部14Aの円筒状の外周は、案内ローラRL,RLに接触している(図6(b))。この時、反対側の突出部14Bの外周は、案内ローラRL,RLに接触して回転している(図6(c))。
【0037】
続いて、以上の構成からなる洗浄装置WASHの動作内容を説明する。図7は、ワーク投入状態、図8は、ワーク保持状態、図9はワーク洗浄状態を概略的に示している。
<ワーク投入>
最初に、ワークを収容したバスケットBKを用意し、これを移送テーブルTBLに載置する。より具体的には、バスケットBKの突出板13,13を、最上部で水平に設定して(図3(a)参照)、バスケットBKの底部を、移送テーブルTBLの凹部30に嵌める。図5に関して説明したように、バスケットの左右幅は、凹部30の左右幅Wに一致しており、且つ、凹部30に設けられた丸パイプ31a,31bが、バスケットBKの外周形状に対応しているので、バスケットBKを載置するだけで正しく位置決めできることになる。
【0038】
続いて、移送テーブルTBLをスライドさせてバスケットBKを洗浄槽1の真上である限界点まで押し込む。なお、この時には、昇降装置5は、図4(a)に示すホームポジションに位置しているので、バスケットBKの突出板13,13は、昇降装置5のスライド片26に当たることはない。そして、移送テーブルTBLを限界位置まで押し込むと、突出板13は、2つのスライド片26,26の上方であって、スライド片26,26に挟まれる位置に正しく配置されることになる(図4(a)(c)参照)。
<ワーク保持>
続いて、作業員が制御部6に指示を与えると、昇降装置5が動作して上昇する。図8は、この上昇状態を図示したものであり、昇降装置5の係止部21,21が、バスケットBKの突出板13,13を保持して吊り上げている。
【0039】
この吊り上げ動作では、バスケットBKの軸方向左右の突出板13,13が、各2つのスライド片26,26を滑りつつ持ち上げられる。そのため、バスケットBKと昇降装置5との位置関係に、仮にズレがあったとしても、突出板13の両端部が、スライド片26,26の急峻な斜面をスライドすることによって、バスケットBKの中心軸(突出部14)が、洗浄槽1に対して正確に位置決めされる。言い換えると、バスケットBKが昇降装置5によって吊り上げられた図7の状態では、バスケットBKの径方向の中心に位置する突出部14A,14Bと、洗浄槽1の水平方向の中心位置に対応して設けられた駆動軸DR及び案内ローラRLとが、正確に位置決めされることになる。なお、図7及び図8では、便宜上駆動軸DRの図示を省略している。
【0040】
このようにバスケットBKは、昇降装置5の係止部21,21によって吊り上げられるので、作業員は、バスケットBKを残して、移送テーブルTBLだけを引き出す。
<ワーク洗浄>
続いて、制御部6に作業開始の指示をすると、昇降装置5が降下動作を開始する。先に説明した通り、移送テーブルTBLが引き出されているので、洗浄槽1の上部は開放状態であり、昇降装置5は、バスケットBKを洗浄槽1の中に降下させることになる。
【0041】
ここで、バスケットBKの突出部14A,14Bと、洗浄槽1の側壁から突出する駆動軸DR及び案内ローラRLとは、正しく位置決めされているので、バスケットBKを降下させると、やがて、突出部14A,14Bが案内ローラRLに正しく当接されることになる。また、案内ローラRLとの当接時には、突出部14AのU字状屈曲板15は、駆動モータMOの駆動軸DRを正しく受け入れることになる(図3(e))。
【0042】
昇降装置5は、バスケットBKと案内ローラRLとの当接後も、バスケットBKを残して更に降下動作を続ける。そして、昇降装置5の可動ベース板20が、洗浄槽1の上部開口を閉塞させた段階で降下動作を終了する。図9は、昇降装置5が降下動作を終えた状態を図示したものであり、バスケットBKが案内ローラRLに保持され、可動ベース板20が、洗浄槽1を確実に密閉している状態を示している。
【0043】
このようにして準備動作が終わると、後は、(1)減圧下での超音波洗浄→(2)蒸気洗浄→(3)真空乾燥の各動作が、バスケットBKの移動を伴うことなく自動的に行われる。なお、各動作は、駆動モータMOによってバスケットBKを回転させながら行われる。以下、図2を参照しつつ各動作をより詳細に説明する。
(1)減圧超音波洗浄
先ず、開閉弁V5のみを開放状態にして、真空ポンプ4によって洗浄槽1を所定レベルまで脱気する。その後、開閉弁V5を閉じた後に、開閉弁V10を開放すると共に、開閉弁V8を開放する。すると、洗浄槽1が減圧状態であることから、回収塔2に貯留されている洗浄液が洗浄槽1に一気に導入される。
【0044】
その後、開閉弁V10と開閉弁V8を閉じて、超音波発振器を動作させて超音波洗浄動作を開始する。この超音波洗浄時には、減圧と復圧を適度に繰り返すので、ワークの袋穴の奥まで完全に脱脂することができる。なお、この超音波洗浄動作中に開閉弁V6が開放され、回収塔2は、真空ポンプ4によって減圧状態になっている。
【0045】
超音波洗浄処理が終わると、開閉弁V3を開放すると共に開閉弁V4を開放する。すると、回収塔2が減圧状態であることから、洗浄槽1の洗浄液は、回収塔2に一気に回収される。
(2)蒸気洗浄
続いて、開閉弁V3,V8を閉じた後、開閉弁V5を開放して真空ポンプ4を動作させて洗浄槽1を適度なレベルまで減圧する。しかる後、開閉弁V5を閉じて、開閉弁V1,V4,V6を開放する。すると、蒸留器3からの洗浄蒸気が洗浄槽1に導入されるので、ワークに付着している洗浄液は、高純度の洗浄蒸気で洗い流されることになり、仕上げリンス処理が実現される。なお、このリンス処理によってワークが加熱されることになり、乾燥に必要な自熱が与えられることにもなる。
(3)真空乾燥
蒸気洗浄処理が終われば、真空ポンプ4が動作状態のまま、先ず、開閉弁V1を閉じた後、時間をおいて開閉弁V4と開閉弁V6を閉じる。しかる後、開閉弁V5を開いて洗浄槽1を更に減圧する。このような動作の結果、無酸素状態において、ワークの自熱だけで高速に洗浄液が沸騰乾燥することになり、ワークにシミを残すことがない。
【0046】
以上のようにして乾燥処理が終わると、開閉弁V5を閉じると共に、開閉弁V3を開放し洗浄槽1を大気圧状態に戻す。
(4)蒸留再生
なお、上記の動作とは別に、使用された洗浄液の蒸留再生処理が行われるが、その時には、開閉弁V2,V6が開放される。この状態では、蒸留器3からの洗浄蒸気が予熱部8を加熱した後、回収塔2に導入されることで、液化回収されることになる。
【0047】
何れにしても上記(3)の真空乾燥処理が終わると、昇降装置5が上昇する。すると、先ず、昇降装置5の係止部12が、バスケットBKの突出部14A,14Bを持ち上げることで、昇降装置5がバスケットBKを保持する。この状態のまま昇降装置5は更に上昇して、図8に示す最上部の位置で停止する。
【0048】
この停止状態では、昇降装置5は、図7に示すホームポジションより上に位置している。したがって、作業員は、昇降装置5に阻止されることなく、吊り上げられたバスケットBKの直ぐ下に、移送テーブルTBLを移動させることができる。
【0049】
その後、受け取りの準備ができたことを制御部6に指示すると、昇降装置5がホームポジションの位置まで降下して停止する。この状態では、昇降装置5とバスケットBKの位置関係は、図4(a)の通りであるので、作業員は移送テーブルTBLを引き戻すことによって、洗浄作業後のバスケットBKを取り出すことができる。
【0050】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、具体的な記載内容は本発明を限定する趣旨ではない。すなわち、本発明の趣旨を逸脱することなく各種の変更が可能である。例えば、実施例では、超音波洗浄→蒸気洗浄→真空乾燥の一連の動作について説明したが、本装置によれば、超音波洗浄工程や真空乾燥工程だけの運転も可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例に係る洗浄装置の正面図(a)と平面図(b)である。
【図2】図1の洗浄装置のフロー図である。
【図3】バスケットの各部を示す図面である。
【図4】昇降装置のホームポジションとバスケットの位置関係を示す図面である。
【図5】移送テーブルTBLを示す図面である。
【図6】洗浄装置の内部構造とバスケットとの位置関係を図示したものである。
【図7】ワーク投入動作を説明する図面である。
【図8】ワーク保持動作を説明する図面である。
【図9】ワーク洗浄動作を説明する図面である。
【符号の説明】
【0052】
BK バスケット
1 洗浄槽
2 回収塔
3 蒸留器
4 減圧機構(真空ポンプ)
5 昇降装置
5 制御部
20 可動ベース板
21 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスケットに収容したワークを洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔と、前記回収塔から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器と、前記各部を適宜に減圧する減圧機構と、前記バスケットを前記洗浄槽に搬入及び搬出する昇降装置と、装置全体の動作を制御する制御部とを備えて構成され、
前記昇降装置は、上下動する可動ベース板と、前記可動ベース板から延設される係止部とを備えて構成され、前記可動ベース板が前記洗浄槽の密閉蓋を兼ねている洗浄装置。
【請求項2】
バスケットに収容したワークを洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔と、前記回収塔から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器と、前記各部を適宜に減圧する減圧機構と、前記バスケットを前記洗浄槽に搬入及び搬出する昇降装置と、装置全体の動作を制御する制御部とを備えて構成され、
前記洗浄槽の上部には、処理前のバスケットを前記昇降装置に引き渡すと共に、処理後のバスケットを前記昇降装置から受け取るための移送テーブルが設けられ、
前記移送テーブルには、前記バスケットの軸方向長さに対応する左右幅を有して、前記バスケットの底部を受け入れる凹部が設けられている洗浄装置。
【請求項3】
バスケットに収容したワークを洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔と、前記回収塔から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器と、前記各部を適宜に減圧する減圧機構と、前記バスケットを前記洗浄槽に搬入及び搬出する昇降装置と、装置全体の動作を制御する制御部とを備えて構成され、
前記バスケットは、多数の開口を有する筒状に形成されて、その軸方向両端には突出部が設けられ、前記突出部の少なくとも一方には、駆動モータの回転力を前記バスケットに伝える伝達部が設けられている洗浄装置。
【請求項4】
バスケットに収容したワークを洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽に洗浄液を供給すると共に使用後の洗浄液を回収する回収塔と、前記回収塔から受けた洗浄液を蒸留再生する蒸留器と、前記各部を適宜に減圧する減圧機構と、前記バスケットを前記洗浄槽に搬入及び搬出する昇降装置と、装置全体の動作を制御する制御部とを備えて構成され、
前記洗浄槽の側壁の水平方向の中央位置には、駆動モータによって回転される駆動軸が突出され、前記駆動軸の周りには、前記バスケットの回転を支える支持部材が設けられている洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−14943(P2007−14943A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367017(P2005−367017)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【分割の表示】特願2005−196020(P2005−196020)の分割
【原出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(591282711)アクア化学株式会社 (10)
【Fターム(参考)】