説明

洗浄装置

【課題】ガス溶解水を用いて基板等を洗浄する場合の洗浄効率を向上させることができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】ガスをガス溶解装置1で水中に溶解させ、ガス溶解水を殻体たる洗浄槽4に導入し、被洗浄物としての基板Sを洗浄する。ガス溶解装置1からのガス溶解水が配管2及び水圧調整弁3を介して洗浄槽4に導入される。水圧調整弁3で減圧されることにより、洗浄槽4内に導入されるガス溶解水中に微細気泡が多量に生じる。この微細気泡含有水によって基板が効率よく洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子基板などの被洗浄物をガス溶解水で洗浄するための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板などを洗浄する方法としてオゾン、酸素、水素などのガスを溶解させたガス溶解水を用いることは周知である。
【0003】
例えば、特開平11−77021号では水素溶解水を用いており、特開2000−279902では酸素溶解水を用いており、特開2002−23386ではオゾンの溶解水を用いており、特開2004−281894では水素及び窒素の溶解水を用いている。
【0004】
洗浄方式としては、槽内に基板を浸積する方式、ノズルから洗浄液を基板に向かって噴射する方式、基板の一方の面に液供給ノズルと液吸引ノズルとを対峙させる方式(特許3511441)など様々のものがある。
【特許文献1】特開平11−77021
【特許文献2】特開2000−279902
【特許文献3】特開2002−23386
【特許文献4】特開2004−281894
【特許文献5】特許3511441
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガス溶解水を用いて基板等を洗浄する場合の洗浄効率を向上させることができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗浄装置は、ガスを加圧溶解させた加圧水によって被洗浄物を洗浄する洗浄装置において、該加圧水を製造するガス溶解装置と、該ガス溶解装置からの加圧水を導く配管と、該配管から加圧水が導入部を介して導入される室を有し、該室に被洗浄物を収容するか又は該室内を被洗浄物に露呈させる開口が設けられている殻体と、該殻体の加圧水導入部又はその直近の前記配管に設けられた水圧調整弁とを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の洗浄装置では、殻体内に導入されるガス溶解水によって被洗浄物の洗浄が行われる。このガス溶解水は、ガスを加圧溶解させるガス溶解装置から配管を介して送られてくるものであるが、殻体又はその直近の配管に設けられた水圧調整弁で水圧を低下させることにより水中に微細気泡が多量に発生する。この微細気泡を多量に含む水が被洗浄物表面に接触することにより、被洗浄物表面の微細微粒子や汚れ成分が該表面から効率よく除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0009】
第1図は本発明の実施の形態に係る洗浄装置の系統図である。この実施の形態では、ガスをガス溶解装置1で水中に溶解させ、ガス溶解水を殻体たる洗浄槽4に導入し、被洗浄物としての基板Sを洗浄している。
【0010】
ガス溶解装置1は膜式ガス溶解装置であり、ガス透過膜1mによって隔てられた気体室1aと水室1bを備えている。ガスが気体室1aに加圧供給され、水がポンプ(図示略)によって水室1bに通水される。膜1mを透過したガスが、水室1b内の水に溶解し、生じたガス溶解水が配管2及び水圧調整弁3を介して洗浄槽4に導入される。
【0011】
洗浄槽4は槽体の下側に水の導入口4aを有し、上側に排水口4bを備えている。この実施の形態では、この導入口4aに前記水圧調整弁3が取り付けられている。基板Sは、槽体の底面から複数個上方に向って突設された脚台4c上に載置されている。この洗浄槽4は、天蓋部4dを開閉して基板Sを出し入れするよう構成されている。
【0012】
このように構成された洗浄装置においては、ガス溶解装置1から配管2を介して送られてきたガス溶解水が水圧調整弁3で減圧されて洗浄槽4内に導入され、基板Sが洗浄される。洗浄排水は排水口4bから流出する。
【0013】
この水圧調整弁3で減圧されることにより、洗浄槽4内に導入されるガス溶解水中に微細気泡が多量に生じている。この微細気泡含有水が基板Sと接触することにより、基板Sが効率よく洗浄される。洗浄された基板Sは、天蓋部4dを開けて取り出され、次の基板Sが洗浄槽4内に配置され、洗浄される。
【0014】
第1図では、基板Sをバッチ式に洗浄槽4に出し入れするようにしているが、コンベヤ等によって搬送することにより、基板Sを連続的に洗浄槽4を通過させるようにしてもよい。
【0015】
第1図では水圧調整弁3を導入口4aに取り付けているが、配管2の途中のうち導入口4aの直近部位(例えば導入口4aから50mm以内)に水圧調整弁3を設けてもよい。
【0016】
第1図では、洗浄槽4の天蓋部4dを開閉するようにしているが、第2図のように、洗浄槽7を略上下対称な下半殻7Aと上半殻7Bとの2体で構成し、この上半殻7Bと下半殻7Aとを分離することにより基板Sを出し入れするようにしてもよい。
【0017】
この下半殻7Aは逆円錐形であり、その底部中央に導入口7aが設けられている。この導入口7aに水圧調整弁3が取り付けられており、配管2からのガス溶解水が水圧調整弁3で減圧された後、洗浄槽7内に導入される。この導入された水には多量の微細気泡が含まれており、基板Sが効率よく洗浄される。基板Sは脚台7c上に載置されている。
【0018】
上半殻7Bは正円錐形であり、その上部中央に排水口7bが設けられている。
【0019】
第3図(a)は別の実施の形態に係る洗浄装置の系統図、第3図(b)はそのノズル部分の拡大図である。
【0020】
この実施の形態でも、ガス溶解装置1で製造されたガス溶解水が配管2を介して水圧調整弁3に送られる。この実施の形態では、水圧調整弁3は殻体としてのノズル5の導入口5aに取り付けられている。このノズル5は、底面部分が開放した無底容器形状(下向きカップ状)のものであり、導入口5aはノズル5の天蓋部分に設けられている。
【0021】
ノズル5の下側に被洗浄物としての基板Sが配置されており、ノズル5の下端5bと基板Sとの間に若干(例えば1〜3mm程度)の間隙があいている。この間隙が微小であるため、導入口5aから導入された水によってノズル5内は満水状態となっている。
【0022】
この実施の形態でも、水圧調整弁3によってガス溶解水が減圧されることにより洗浄水中に微細気泡が多量に生じ、この微細気泡含有水によって基板Sが効率よく洗浄される。洗浄水は、ノズル5の下端5bと基板Sとの間の間隙を通り抜けた後、基板Sの上面を伝わって流れ落ちる。
【0023】
なお、このような下向きカップ状のノズル5を用いて基板Sを洗浄する場合、基板Sが円板状であるときには、第4図のように基板Sをターンテーブル9上に載せ、基板Sをその中心回りにθ方向に回転させると共に、ノズル5を基板Sの半径方向rに移動、例えば1回又は複数回往復移動させるようにしてもよい。
【0024】
本発明では、第5図のようにノズル5の上部にガス排出口5dを設け、ガス排出弁5eを介してガスをノズル5外に流出させるようにしてもよい。これにより、ノズル5内を満水状態に保ち、極めて効率よく基板洗浄を行うことが可能となる。
【0025】
第6図は殻体として下向きカップ状の洗浄器6を用いた洗浄装置の該洗浄器部分の断面図である。
【0026】
この洗浄器6は、底部が開放し、この底部に基板Sが挿入される。洗浄器6の上部に導入口6aが設けられ、この導入口6aに水圧調整弁3が取り付けられている。ガス溶解装置からのガス溶解水がこの水圧調整弁3を介して洗浄器6内に導入される。基板Sの外周面と洗浄器6の側周壁6bの下部との間には若干間隙があいている。この間隙が微小であるため、洗浄器6内が満水状態となる。
【0027】
この実施の形態でも、配管2からのガス溶解水が水圧調整弁3で減圧され、微細気泡を多量に含んだ水となり、この微細気泡含有水によって基板Sが効率よく洗浄される。洗浄排水は、基板Sの外周と側周壁6bとの間隙を通って下方へ流出する。
【0028】
なお、基板Sは支持部材8によって支持されている。
【0029】
第7図は本発明のさらに別の実施の形態に係る洗浄装置のノズル部分の断面図である。
【0030】
このノズル10は、下向きカップ状であり、上部の導入口10aに水圧調調整弁3が取り付けられ、配管2からのガス溶解水が該水圧調整弁3で減圧された後、ノズル10内に導入される。
【0031】
このノズル10の側周及び上側を覆うようにカバー11が設けられている。このカバー11も下向きカップ状であり、ノズル10の外周囲との間に所定の間隔があいている。カバー11の上部には吸引口11aが設けられ、配管12を介して吸引ポンプ13が接続されている。カバー11の下端11bは、ノズル10の下端10bと面一状となっている。
【0032】
このノズル下端5b及びカバー下端11bに、所定の間隙を介して対面するように基板Sが配置される。この間隙が微小であるため、ノズル10内は導入口10aから導入される水で満水状態となる。
【0033】
この第7図の洗浄装置においては、配管2からのガス溶解水が水圧調整弁3によって減圧され、多量の微細気泡を含んだ水がノズル10内に導入され、基板Sの上面が洗浄される。この水は、ノズル10の下端10bを回り込んでカバー11内に吸い込まれ、吸引口11a、配管12及び吸引ポンプ13を介して排出される。このため、基板S上に洗浄排水が広がることがない。
【0034】
この第7図の洗浄装置においても、前記第3図のように基板Sをターンテーブル上に配置すると共に、ノズル10をターンテーブルの半径方向に移動させることにより、基板Sの上面の全体を洗浄することができる。
【0035】
また、この第7図の洗浄装置において、ノズル10の径が大きい場合などには、第8図のように、基板Sをノズル10の底部に挿入して洗浄してもよい。この基板Sは支脚15を介してベース14上に配置されている。基板Sの外周面とノズル10の下部内周面との間には若干の間隙があいている。ノズル下端10b及びカバー下端11bとベース14との間には若干の間隙があいている。
【0036】
水圧調整弁3を介してノズル10内に導入された微細気泡含有水によって基板Sが洗浄され、洗浄排水はノズル下端10bを回り込み、ノズル10とカバー11との間を通り、吸引口11a、配管12、吸引ポンプ13を介して吸引排出される。
【0037】
上記のガスとしては、窒素、炭酸ガス、アルゴン、ヘリウム、水素、酸素、オゾン、空気、アンモニアなどが例示されるが、これらに限定されない。
【0038】
水圧調整弁3では、配管2内の水圧の1/2〜1/6程度に減圧するのが好ましい。
【0039】
基板Sとしては、シリコンウェハ、FPD用ガラス基板、フォトマスク、ハードディスクなどが例示される。これらの基板Sは、微細加工が施されているものでもよい。
【0040】
本発明では、ガス溶解装置1に水の冷却装置を設けたり、該ガス溶解装置1に導入される水を冷却する冷却装置を設けてもよい。この冷却装置によって水を冷却することにより、水のガス溶解度が増大する。
【0041】
本発明では、ガス溶解装置1への給水ライン、ガス溶解装置1、配管2又は殻体(洗浄槽4,7、ノズル5,10又は洗浄器6)に洗浄薬品を添加する薬注手段を設けてもよい。このような洗浄薬品としては、アンモニア、アンモニウム化合物、アルカリ金属水酸化物などのアルカリ、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸などの酸、界面活性剤、キレート剤などが例示される。
【0042】
本発明では、殻体に超音波振動器を設け、超音波による洗浄作用を重畳させるようにしてもよい。
【0043】
本発明では、配管2、水圧調整弁3又は殻体にヒータ等の水の加温手段を設け、ガス溶解水を加温するようにしてもよい。これにより、ガス溶解度が低下し、微細気泡の発生量が多くなる。また、温水によって洗浄効果が向上する。ガス溶解水の流通方向は、上,下いずれでもよく、場合によっては左右方向でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態に係る洗浄装置の系統図である。
【図2】別の実施の形態に係る洗浄装置のノズル部分の断面図である。
【図3】異なる実施の形態を示す系統図と断面図である。
【図4】基板の洗浄状態を示す斜視図である。
【図5】別の実施の形態のノズル部分の断面図である。
【図6】さらに別の実施の形態の洗浄器部分の断面図である。
【図7】さらに別の実施の形態のノズル部分の断面図である。
【図8】さらに異なる実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ガス溶解装置
2 配管
3 水圧調整弁
4,7 洗浄槽(殻体)
5,10 ノズル(殻体)
6 洗浄器(殻体)
11 カバー
13 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを加圧溶解させた加圧水によって被洗浄物を洗浄する洗浄装置において、
該加圧水を製造するガス溶解装置と、
該ガス溶解装置からの加圧水を導く配管と、
該配管から加圧水が導入部を介して導入される室を有し、該室に被洗浄物を収容するか又は該室内を被洗浄物に露呈させる開口が設けられている殻体と、
該殻体の加圧水導入部又はその直近の前記配管に設けられた水圧調整弁と
を備えてなる洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記殻体はその一方の面に前記開口が設けられており、
該開口から流出した水を吸引する吸引部が該開口を取り巻いて設けられていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
請求項2において、該殻体を取り囲むカバーが設けられており、該カバーと前記殻体との間が前記吸引部となっていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記殻体の下面に前記開口が設けられており、
該殻体の上部に該殻体内のガスを排出するガス排出部が設けられていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ガス溶解装置又はその上流側に、水の冷却手段が設けられていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記配管又はその上流側に洗浄薬品を添加する薬品添加手段が設けられていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記殻体に超音波振動器が設けられていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記殻体又は前記配管に水の加温手段が設けられていることを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−124203(P2008−124203A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305577(P2006−305577)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】