説明

洗滌用シートおよびその製造方法

【課題】オフセット輪転印刷機のブランケット胴を洗滌するための洗滌用シートに対して、シート両面のいずれを使用してもブランケット胴に短い繊維が付着して残るということがないように改良を施す。
【解決手段】ブランケット胴を洗滌するための洗滌用シート1が上部表面層3と、下部表面層5と、これら両層3,5間に介在する中間層6とを有する。上部表面層3と下部表面層5とのそれぞれは、繊維長25〜70mm、繊度0.7〜3.5dtexの熱可塑性合成繊維11,12のそれぞれを主体にして形成され、中間層6がパルプ繊維13を主体にして形成される。熱可塑性合成繊維11,12のそれぞれは、上部表面層3と下部表面層5とのそれぞれにおいて互いに溶着している。熱可塑性合成繊維11,12の少なくとも一方には中間層6を貫通して上部表面層3と下部表面層5とにまで延びて、これら両層3,5における熱可塑性合成繊維11,12と溶着するものが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オフセット輪転印刷機のブランケット胴を洗滌するのに好適なシートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性合成繊維とパルプ繊維とからなるシートに洗滌液を含浸させてオフセット輪転印刷機のブランケット胴を洗滌することは、よく知られている。例えば、特開平11−99636号公報(特許文献1)には、植物性セルロース繊維と有機合成繊維とを均一に混合したものであって、植物性セルロース繊維と有機合成繊維とが熱接着しているか、有機合成繊維どうしが熱接着している不織布をブランケット胴の洗滌に使用する例が開示されている。
【0003】
また、特開平10−131022号公報(特許文献2)には、複合型長繊維不織布とパルプ繊維からなる紙シートとが高圧ジェット水流で処理されて互いに交絡した後に、加熱と加圧とを施されることによって形成した複合不織布をブランケット胴の洗滌に使用する例が開示されている。複合不織布に含まれているポリオレフィン系重合体は、その加熱によって溶融し、パルプ繊維に固定されている。
【特許文献1】特開平11−99636号公報
【特許文献2】特開平10−131022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のブランケット胴洗滌用シートは、植物性セルロース繊維と有機合成繊維とを均一に混合したものであるから、洗滌用シートは、繊維長の短い植物性セルロース繊維がその両表面に等しく存在しており、いずれの面を使用しても、ブランケット胴に植物性セルロース繊維が付着して残ることを避け難い。また、特許文献2に記載の洗滌用シートは、その両面のうちで複合型繊維不織布で形成された面を使用してブランケット胴を洗滌すれば、ブランケット胴にパルプ繊維が付着して残るということはないが、パルプ繊維で形成されている面を使用したときには、特許文献1の洗滌用シートと同様な問題が生じる。即ち、これら両文献に記載の洗滌用シートには、ブランケット胴を洗滌するときに、パルプ繊維等の短い繊維がブランケット胴に付着して残るという傾向がある。
【0005】
この発明では、洗滌用シートの両面のいずれを使用しても、ブランケット胴に短い繊維が付着して残るということがないように、洗滌用シートに改良を加えることを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題解決のためのこの発明は、ブランケット胴を洗滌するのに好適な洗滌用シートに係る第1発明と、そのシートの製造方法に係る第2発明とからなる。
【0007】
洗滌用シートに係る前記第1発明が対象とするのは、オフセット輪転印刷機のブランケット胴の洗滌に使用可能であり、熱可塑性合成繊維とパルプ繊維とによって形成された洗滌用シートである。
【0008】
かかる洗滌用シートにおいて、前記第1発明が特徴とするところは、前記シートが第1表面層と、前記第1表面層の反対側にある第2表面層と、前記第1、第2表面層の間にある中間層とからなり、前記第1、第2表面層が繊維長25〜70mm、繊度0.7〜3.5dtexの前記熱可塑性合成繊維を主体にして形成される一方、前記中間層がパルプ繊維を主体にして形成されており、前記熱可塑性合成繊維には、互いに溶着して前記第1、第2表面層それぞれを形成するものと、前記中間層を貫通して前記第1、第2表面層それぞれにまで延びて前記前記第1、第2表面層それぞれにおける前記熱可塑性合成繊維に溶着するものとが含まれていること、にある。
【0009】
第1発明の好ましい実施態様において、前記熱可塑性合成繊維には前記パルプ繊維と交絡しているものが含まれている。
【0010】
洗滌用シートの製造方法に係る第2発明が対象とするのは、オフセット輪転印刷機のブランケット胴の洗滌に使用可能であって、熱可塑性合成繊維とパルプ繊維とによって形成された洗滌用シートが下記工程を含む製造工程を経て製造されることを特徴とする前記洗滌用シートの製造方法である。
【0011】
かかる製造方法において、前記第2発明が特徴とするところは、前記製造工程に下記工程が含まれることにある。
【0012】
a.繊維長が25〜70mm、繊度が0.7〜3.5dtexの熱可塑性合成繊維からなり、10〜25g/mの坪量を有する第1繊維ウエブを機械方向へ連続的に走行させる工程。
【0013】
b.パルプ繊維からなり、20〜40g/mの坪量を有する第2繊維ウエブを前記機械方向へ連続的に供給しながら前記第1繊維ウエブに重ねる工程。
【0014】
c.繊維長が25〜70mm、繊度が0.7〜3.5dtexの熱可塑性合成繊維からなり、10〜25g/mの坪量を有する第3繊維ウエブを前記機械方向へ連続的に供給しながら前記第1ウエブに重なっている前記第2繊維ウエブに重ねて、前記第1、第2、第3繊維ウエブからなる第1複合ウエブを得る工程。
【0015】
d.前記第1複合ウエブに対して、前記第1、第3繊維ウエブのうちの少なくとも一方の側から高圧柱状水流を作用させて、前記第1繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維と前記第2繊維ウエブにおけるパルプ繊維と前記第3繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維とを互いに交絡させるとともに、前記第1、第3繊維ウエブにおける少なくとも一方の繊維ウエブの前記熱可塑性合成繊維に前記第2繊維ウエブを貫通させてもう一方の繊維ウエブに進入させることにより第2複合ウエブを得る工程。
【0016】
e.前記第2複合ウエブを乾燥させた後に加熱して、前記第1繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維どうし、および前記第3繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維どうしを溶着させるとともに、前記第2繊維ウエブを貫通している前記熱可塑性合成繊維を前記第1、第2繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維と溶着させて第3複合ウエブを得る工程。
【0017】
前記第2発明の好ましい実施態様において、前記工程eでは、前記第2複合ウエブが所要の厚さにまで圧縮される。
【発明の効果】
【0018】
前記第1発明に係る洗滌用シートでは、第1表面層と第2表面層とが熱可塑性合成繊維を主体にして形成されており、中間層がパルプ繊維を主体にして形成されている。熱可塑性合成繊維は、第1、第2表面層において互いに溶着するとともに、中間層を貫通するものが第1、第2表面層における熱可塑性合成繊維と溶着している。かような洗滌用シートは、第1、第2表面層それぞれを使用してブランケット胴を洗滌しても、ブランケット胴にパルプ繊維が付着して残るということがない。また、熱可塑性合成繊維は互いに溶着することによって、洗滌作業中に毛玉を作ることがないので、この洗滌用シートを使用すると、ブランケット胴にインクが残るということがない。洗滌用シートは、中間層を貫通する熱可塑性合成繊維によって厚さ方向の寸法の変化が抑えられているので、洗滌液を含浸させる前後において、厚さが著しく変化するということがない。
【0019】
熱可塑性合成繊維とパルプ繊維とが交絡している態様の洗滌用シートでは、パルプ繊維の洗滌用シートからの脱落防止効果を向上させることができる。
【0020】
第1表面層と第2表面層とにおいて熱可塑性合成繊維の繊維長と繊度と坪量とが実質的に同じである洗滌用シートでは、その洗滌用シートを自動洗滌機に取り付けてブランケット胴を洗滌するときに、第1表面層を使用する場合と第2表面層を使用する場合とで、自動洗滌機の運転条件を変更するという必要がない。
【0021】
前記第2発明に係る洗滌用シートの製造方法によれば、第1繊維ウエブと第2繊維ウエブとに同じものを使用することによって、洗滌用シートの第1表面層と第2表面層とが実質的に同じものになる。また、互いに重なり合う第1、第2、第3繊維ウエブに対して高圧柱状水流を作用させることによって、第1繊維ウエブおよび第3繊維ウエブのうちの少なくとも一方の繊維ウエブにおける熱可塑性合成繊維に第2繊維ウエブを貫通させることができる。
【0022】
第2複合ウエブを加熱下に圧縮して洗滌用シートを製造する態様の製造方法では、その加熱下の圧縮によって熱可塑性合成繊維を変形させるならば、洗滌用シートを所要の厚さにすることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
添付の図面を参照してこの発明に係る洗滌用シートおよびそのシートの製造方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0024】
図1は、オフセット輪転印刷機のブランケット胴(図3参照)の洗滌に好適な洗滌用シート1の部分斜視図である。洗滌用シート1は、その製造工程での進行方向であって図において双頭矢印で示された機械方向MDと、機械方向MDに直交する双頭矢印で示された交差方向CDと、これら両方向に直交する双頭矢印で示された厚さ方向TDとを有する。その洗滌用シート1は、厚さ方向TDの上方に上部表面2を含む上部表面層3を有し、厚さ方向TDの下方に上部表面2の反対側である下部表面4を含む下部表面層5を有する。洗滌用シート1はまた、これら両表面層3,5の間に中間層6を有する。
【0025】
上部表面層3と下部表面層5とでは、繊維長が25〜70mm、繊度が0.7〜3.5dtexの熱可塑性合成繊維11,12が、坪量10〜25g/mの割合で使用されている。中間層6では、パルプ繊維13が坪量20〜40g/mの割合で使用されている。上部表面層3では、熱可塑性合成繊維11どうしが互いに交絡したり、溶着したりしている。上部表面層3と中間層6との間では、熱可塑性合成繊維11とパルプ繊維13とが交ざり合って互いに交絡している他に、熱可塑性合成繊維11の一部のものがパルプ繊維13に溶着している。熱可塑性合成繊維11と交ざり合ったパルプ繊維13の一部のものは、後記する洗滌用シート1の製造工程における高圧柱状水流の作用によって、上部表面2に現われる場合があるが、上部表面層3は、熱可塑性合成繊維11を主体にして形成されているものであって、パルプ繊維13が主体となることはない。下部表面層5では、熱可塑性合成繊維12どうしが互いに交絡したり、溶着している。下部表面層5と中間層6との間では、熱可塑性合成繊維12とパルプ繊維13とが交ざりあい、互いに交絡している他に、熱可塑性合成繊維12の一部のものがパルプ繊維13に溶着している。熱可塑性合成繊維12と混ざり合ったパルプ繊維13の一部のものは、下部表面層5に現われることがあるが、下部表面槽5は、熱可塑性合成繊維12を主体にして形成されているものであって、パルプ繊維13が主体となることはない。
【0026】
中間層6は、坪量20〜40g/mのパルプ繊維13を使用して形成されている。パルプ繊維13は、上部表面層3と下部表面層5とによって挟まれていて、パルプ繊維どうしで交絡している他に、熱可塑性合成繊維11,12と交絡しているものもあり、洗滌用シート1の使用時には、洗滌用シート1に含浸させた洗滌液を保持することが可能であり、しかも洗滌用シート1から容易に脱落することがない。
【0027】
図2は、洗滌用シート1の拡大断面図である。図示の断面には、熱可塑性合成繊維11のうちで、上部表面層3から中間層6を貫通して下部表面層5にまで延びるものが熱可塑性合成繊維11aとして示されている。熱可塑性合成繊維11aはその上端部21が上部表面層3において、熱可塑性合成繊維11に溶着しており、下端部22が下部表面層5において熱可塑性合成繊維12に溶着している。上端部21と下端部22との間の中間部23は、パルプ繊維13に溶着していることがある。なお、洗滌用シート1では、中間層6を貫通している複数条の熱可塑性合成繊維11aの一部を熱可塑性合成繊維12に代えたり、熱可塑性合成繊維11aの全部を熱可塑性合成繊維12に代えたりすることができる。
【0028】
かように形成されている洗滌用シート1をブランケット胴を洗滌するための自動洗滌装置47(図3参照)に取り付けて使用する場合には、例えば、機械方向MDにおける長さが13.5m、交差方向CDにおける幅が920mmの洗滌用シート1を外径38mmの紙管に巻いてロール(図示せず)を作り、そのロールの外径が70mm以下となるように、洗滌用シート1の方向TDの寸法、すなわち厚さを予め調整しておく。その厚さは、熱可塑性合成繊維11,12とパルプ繊維13との坪量の選択やそれら繊維11,12,13に対する加熱下での圧縮の程度によって調整可能である。その加熱は、熱可塑性合成繊維11どうしや熱可塑性合成繊維12どうしの溶着が可能な温度や熱可塑性合成繊維11と12との溶着が可能な温度で行うことが好ましい。
【0029】
図3は、使用状態にある洗滌用シート1を示す図である。輪転印刷機41には、版胴42と、ブランケット胴43と、圧胴44とが設けられており、ブランケット胴43と圧胴44との間を印刷用紙46が通過する。洗滌用シート1は、ロールの状態で自動洗滌機47の供給軸48に取り付けられていて、巻き取り軸49に巻き取られる間に、洗滌液(図示せず)を含浸させた状態で、プレッシャーパッド51を介してブランケット胴43を洗滌することができる。洗滌用シート1は、上部表面層3と下部表面層5とが同じように形成されているから、上部表面層3を使用してブランケット胴43を洗滌した後には、自動洗滌機47の運転条件を大きく変更せずに下部表面層5を使用して再びブランケット胴43を洗滌することができる。但し、図示例の如く下部表面槽5が内側となるように巻き取られた洗滌用シート1は、必要であるならば、下部表面層5が外側となるように巻き替えられた後に再使用される。洗滌用シート1の上部表面2と下部表面4とは、熱可塑性合成繊維11どうしや12どうしが溶着しているので、ブランケット胴43を洗滌してもこれら繊維11,12は毛玉を作ることがなく、したがって、洗滌後のブランケット胴43には毛玉に起因するインク残りが生じない。
【0030】
洗滌液を含浸させた洗滌用シート1では、その洗滌液が主として中間層6のパルプ繊維13に保持されており、中間層6は見かけの厚さが増すように変化する傾向にあるが、図2において中間層6を貫通している熱可塑性合成繊維11aがその変化を抑えて洗滌用シート1の厚さをほぼ一定に保っている。したがって、洗滌用シート1は、一度使用してもその厚さが変わらないから、自動洗滌機47は、洗滌用シート1の上部表面層3を使用する場合と下部表面層5を使用する場合とで運転条件を変更する必要がない。
【0031】
図4は、洗滌用シート1の製造工程図であって、図の左側から右側へ向かう方向が機械方向MDである。図の左側では、洗滌用シート1の上部表面層3を形成するための第1繊維ウエブ61と、中間層6を形成するための第2繊維ウエブ62と、下部表面層5を形成するための第3繊維ウエブ63とが互いに重なり合うように、機械方向MDへ走行する無端ベルト64の上に連続的に供給されて第1複合ウエブ66を形成する。第1、第3繊維ウエブ61,63には、例えば繊維長25〜70mm、繊度0.7〜3.5dtex、坪量10〜25g/mの熱可塑性合成繊維からなるカードウエブが使用され、第2繊維ウエブ62には、例えば坪量20〜40g/mのパルプシートが使用される。
【0032】
第1複合ウエブ66は、送りロール67,68で機械方向MDへ送られて、水流交絡処理工程69へと進む。工程69では、10〜100kg/cmの高圧柱状水流71が第1複合ウエブ66の上方から噴射されて、第1、第3繊維ウエブ61,63それぞれにおいて熱可塑性合成繊維どうしが交絡するとともに第2繊維ウエブ62においてパルプ繊維どうしが交絡し、第1繊維ウエブ61と第2繊維ウエブ62との間において熱可塑性合成繊維とパルプ繊維とが交絡し、第2繊維ウエブ62と第3繊維ウエブ63との間においてパルプ繊維と熱可塑性合成繊維とが交絡して、第2複合ウエブ72を形成する。また、柱状水流71が噴射される間に、第2複合ウエブ72では、第3繊維ウエブ63における熱可塑性合成繊維の一部のものが、第2繊維ウエブ62を貫通して第1繊維ウエブ61にまで延びるように移動している。次いで、第2複合ウエブ72は、乾燥室73に進入して、熱風を当てられて乾燥する。乾燥室73を出た第2複合ウエブ72は、上下一対の加熱ロール76の間を通り、第1、第3繊維ウエブ61,63それぞれの熱可塑性合成繊維どうしが加圧下に溶着するとともに、第2繊維ウエブ62を貫通して第1、第3繊維ウエブ61,63の間に延びる熱可塑性合成繊維が第1、第3繊維ウエブ61,63における熱可塑性合成繊維に溶着し、好ましくは第2複合ウエブ72を所要の厚さにまで圧縮し、さらに好ましくは第1、第3繊維ウエブ61,63の熱可塑性合成繊維と第2繊維ウエブ62のパルプ繊維とを溶着して、第3複合ウエブ81を形成する。第3複合ウエブ81は、送りロール82,83に送られて巻き取られる。第3複合ウエブ81は、適宜の寸法に截断され、洗滌用シート1として使用される。
【0033】
この製造工程において、第1繊維ウエブ61によって図1の洗滌用シート1の下部表面層5を作り、第3繊維ウエブ63によって上部表面層3を作ることも可能である。また、工程69においては、第1複合ウエブ66の上面に対して柱状水流71を噴射することに加えて、またはその上面に対して柱状水流71が噴射されることに代えて、第1複合ウエブ66の下面に対して柱状水流が噴射されるようにすることも可能である。また、第1繊維ウエブ61と第3繊維ウエブ63との間では、坪量に差をつけたり、熱可塑性合成樹脂の種類や繊度の異なる繊維を使用したりすることができる。さらには、第1、第3繊維ウエブ61,63それぞれにおいて、溶融温度の低い繊維と溶融温度の高い繊維とを混合したものを使用し、加熱ロール76によって溶融温度の低い繊維のみを溶融して、この繊維を溶融温度の高い繊維やパルプ繊維に溶着することができる。例えば、溶融温度の高い繊維としてポリエステル繊維を使用し、溶融温度の低い繊維として溶融温度が低くなるように変性されたポリエステル繊維を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明によれば、両面のそれぞれを使用してもブランケット胴に繊維が残ることのない洗滌用シートの製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】洗滌用シートの部分斜視図。
【図2】洗滌用シートの拡大断面図。
【図3】使用状態にある洗滌用シートを示す図。
【図4】洗滌用シートの製造工程図。
【符号の説明】
【0036】
1 洗滌用シート
3 第1表面層(上部表面層)
5 第2表面層(下部表面層)
6 中間層
11 熱可塑性合成繊維
11a 熱可塑性合成繊維
12 熱可塑性合成繊維
13 パルプ繊維
43 ブランケット胴
61 第1繊維ウエブ
62 第2繊維ウエブ
63 第3繊維ウエブ
66 第1複合ウエブ
71 柱状水流
72 第2複合ウエブ
81 第3複合ウエブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット輪転印刷機のブランケット胴の洗滌に使用可能であり、熱可塑性合成繊維とパルプ繊維とによって形成された洗滌用シートであって、
前記シートが第1表面層と、前記第1表面層の反対側にある第2表面層と、前記第1、第2表面層の間にある中間層とからなり、前記第1、第2表面層が繊維長25〜70mm、繊度0.7〜3.5dtexの前記熱可塑性合成繊維を主体にして形成される一方、前記中間層がパルプ繊維を主体にして形成されており、前記熱可塑性合成繊維には、互いに溶着して前記第1、第2表面層それぞれを形成するものと、前記中間層を貫通して前記第1、第2表面層それぞれにまで延びて前記前記第1、第2表面層それぞれにおける前記熱可塑性合成繊維に溶着するものとが含まれていることを特徴とする前記洗滌用シート。
【請求項2】
前記熱可塑性合成繊維には前記パルプ繊維と交絡しているものが含まれている請求項1記載の洗滌用シート。
【請求項3】
オフセット輪転印刷機のブランケット胴の洗滌に使用可能であって、熱可塑性合成繊維とパルプ繊維とによって形成された洗滌用シートが下記工程を含む製造工程を経て製造されることを特徴とする前記洗滌用シートの製造方法。
a.繊維長が25〜70mm、繊度が0.7〜3.5dtexの熱可塑性合成繊維からなり、10〜25g/mの坪量を有する第1繊維ウエブを機械方向へ連続的に走行させる工程。
b.パルプ繊維からなり、20〜40g/mの坪量を有する第2繊維ウエブを前記機械方向へ連続的に供給しながら前記第1繊維ウエブに重ねる工程。
c.繊維長が25〜70mm、繊度が0.7〜3.5dtexの熱可塑性合成繊維からなり、10〜25g/mの坪量を有する第3繊維ウエブを前記機械方向へ連続的に供給しながら前記第1繊維ウエブに重なっている前記第2繊維ウエブに重ねて、前記第1、第2、第3繊維ウエブからなる第1複合ウエブを得る工程。
d.前記第1複合ウエブに対して、前記第1、第3繊維ウエブのうちの少なくとも一方の側から高圧柱状水流を作用させて、前記第1繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維と前記第2繊維ウエブにおけるパルプ繊維と前記第3繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維とを互いに交絡させるとともに、前記第1、第3繊維ウエブにおける少なくとも一方の繊維ウエブの前記熱可塑性合成繊維に前記第2繊維ウエブを貫通させてもう一方の繊維ウエブに進入させることにより第2複合ウエブを得る工程。
e.前記第2複合ウエブを乾燥させた後に加熱して、前記第1繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維どうし、および前記第3繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維どうしを溶着させるとともに、前記第2繊維ウエブを貫通している前記熱可塑性合成繊維を前記第1、第2繊維ウエブにおける前記熱可塑性合成繊維と溶着させて第3複合ウエブを得る工程。
【請求項4】
前記工程eでは、前記第2複合ウエブが所要の厚さにまで圧縮される請求項3記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−90580(P2007−90580A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280924(P2005−280924)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(390019736)国光製紙株式会社 (1)
【Fターム(参考)】