説明

活性成分、特にアスパラギナーゼまたはイノシトールヘキサホスフェートを赤血球中に組み込むための溶解/再シーリング方法及び装置

活性成分を含む赤血球を調製するための溶解/再シーリング方法であって、以下のステップ:
(1)球状体濃縮物を65%以上のヘマトクリットレベルを有する等張溶液中の懸濁液中におき、+1〜+8℃で冷蔵し、
(2)同じ球状体濃縮物からの赤血球サンプルに基づいて浸透圧抵抗を測定し、ここで、上記ステップ1及び2は、任意の順番で実施することができ、
(3)同じチャンバー内で、+1〜+8℃に常に維持された温度において、溶解及び活性成分の内在化手順であって、65%以上のヘマトクリットレベルを有する赤血球懸濁液及び+1〜+8℃で冷蔵された低張性解溶液を透析カートリッジ内を循環させ;ここで、溶解パラメータは先に測定した浸透圧抵抗に従って調節され;そして、
(4)+30℃〜+40℃の温度で、高張性溶液によって第二のチャンバー中で実施される、再シーリング手順、を含む、上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂溶解/再シーリング技術が実施されることを可能とする方法に関し、それは、活性成分が赤血球に組み込まれることを可能とする。本発明はまた、その方法を実施することのできる装置にも関する。
【0002】
本発明はさらに、アスパラギナーゼなど、またはイノシトールヘキサホスフェートを含み、そして本発明の方法を実施することによって得ることのできる赤血球組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
溶解/再シーリング技術は、ヨーロッパ特許第EP-A-101341号及び同第EP-A-679101号に記載されている。後者は、比較的複雑な装置を記載し、それは、先ず溶解部分のための冷蔵ハウジングであって、その中に透析カートリッジ、チューブ、シケイン型または曲がりくねった袋および曲がりくねった冷却配置などの取り外し可能な金属要素を含む使い捨て要素を含むアセンブリーが置かれた上記冷蔵ハウジング、そして第二に、再シーリングのためのハウジング、このハウジングは再加熱手段を備え、そしてその中にはプラスチック材料の使い捨てアセンブリーが置かれている、を含む。
【0004】
予め血漿から分離され、そして(低張性媒体中の)弱いイオン力に供された赤血球は、膜がイオン及び巨大分子に対して透過性となるまで膨張した臨界体積に達するまで膨張する。そして、赤血球膜の顕微鏡下での試験は、20〜500nmの大きさの孔が現れ、その結果としてヘモグロビンが脱出することができることを明らかにする(P. Seeman J. Cell. Biol. 1967, 32(1): 55-70)。懸濁媒の等張性の回復は、孔を閉鎖させ、膜を巨大分子に対して不透過性にする。イオンに対する透過性のみが維持される。
【0005】
低浸透圧ショックは、好ましくは中空糸を有する透析装置の「血液」コンパートメント中を赤血球を循環させ、低張液を「透析液」コンパートメント中の対抗流中を循環させる。この技術の利益は、細胞の寿命に必須の構成成分の損失を顕著に減少させる、低浸透圧ショック中の赤血球の拘束にある。したがって、赤血球の半減期は、インビボにおいて顕著に変更されない。
【0006】
リポソームまたはミクロスフェア中への封入などの他の技術に比較した、医薬品のためのビヒクルとして赤血球を使用する利益は、実質的に、「自然の」生物適合性を有する小体は、周知の方法によって完全に生物分解性であり、比較的長いインビボでの寿命が期待され(約120日)、そしてさまざまな化学物質及び治療剤分子がその中に封入可能であることにある。
【0007】
赤血球の溶解及び再シーリングによる内在化の過程は、複雑な多因子現象である。結果のばらつきに影響するいくつかの重要な物理学的/化学的パラメータは、透析前のヘモグロビン濃度、透析装置中の赤血球懸濁液の流速、低張性透析の緩衝液のモル浸透圧濃度、透析装置中の透析温度及び再シーリング温度及び膜間圧である。赤血球の浸透圧抵抗は、血液サンプルごとに異なり、そして有力な生物学的因子である。したがって、L.Boucher et al., Biotechnol. Appl. Biochem. 1996, 24, 73-78は、イノシトールヘキサホスフェートの分布及び最終濃度に対する、さまざまな赤血球集団の浸透圧抵抗の多様性の影響を研究した。結論として、著者らは、赤血球の最初の浸透圧抵抗が、溶解の程度及び活性成分の内在化の変動に関して支配的な役割を有し、そしてその浸透圧抵抗は、赤血球の透過性、表面積/体積及びイオン含量の関係、ドナーの生理学的状態及び年齢(A.A. Hussain et al., Br. J. Haematol. 1984, 57(4):716-718も参照のこと)、血液が保存される時間の長さ、医薬品、病気(K.Kolanjiappan et al., Clin. Chim. Acta 2002, 326(1-2): 143-149も参照のこと)及び治療の存在などの多くの因子に依存することを示している。赤血球懸濁液の流速を変化させて得られた結果は、赤血球が低レベルの脆性を有する群または高レベルの脆性を有する群に属する赤血球であるか否かに依存して、12〜14ml/分の流速での操作条件の極端な感度を示した。
【0008】
したがって、上記文献は赤血球の浸透圧抵抗及び溶解/再シーリング技術による組み込みの有効性に影響を及ぼすさまざまな因子についての情報を提供する。それらは、実施において遭遇する、該技術がヒトのヘルスケアにおいて日常的に適用できるものでないという困難性を理解させる。
【0009】
ごく最近の文献は現在の状況を非常に上手く要約する。C.G. Millan et al.のJournal of Controlled Release 2004, 95: 27-49において、赤血球の医薬ビヒクルとしての使用を全般的に総説し、かれらがヒトの医薬に非常に高い関心を持っているにもかかわらず、その保存の困難性、汚染の危険性及びその製造を可能とする証明された工業的手順のないことによってかれらの成果が今日においてまだ非常に限定的なものである、と結論している。
【0010】
アスパラギナーゼは、細胞の生存、特に線維芽細胞の生存に必要なタンパク質の合成に不可欠なアミノ酸であるアスパラギンを加水分解しそして枯渇させる、細菌性微生物(E.Coli 又はErwinia)により産生される酵素である。正常細胞とは異なり、いくつかの癌性リンパ芽球細胞は自身でアスパラギンを合成する能力を持たず、したがって、細胞外供給源に依存している。したがって、アスパラギナーゼ処理は、それらから該構成成分を奪い、死に導く。この有糸分裂阻害剤は、腫瘍細胞に関して選択的である。
【0011】
しかしながら、ヒトにおいては、天然のアスパラギナーゼが平均して70%超の患者に存在する抗体の産生を誘導し、アスパラギナーゼのクリアランスの増加及び時には非常に重篤なアレルギー反応に導く(B. Wang et al., Leukaemia 2003 17,8: 1583-1588)。したがって、アスパラギナーゼが急性リンパ芽球性白血病の治療において非常に有効であるにもかかわらず、それは高い毒性を持ち、そして蕁麻疹型の単純反応から本格的なアナフィラキシーショックにわたる過敏症反応に導くことができる。さらに、神経学的タイプ(認知の妨害)、止血性タイプ(低フィブリノーゲン血症、出血性及び/又は血栓性合併症に導く、抗トロンビンIII及び他の凝固因子の血清レベルの低下)、胃腸タイプ及び(膵臓の急性炎症を含む)膵臓タイプの有害な影響が観察される。
【0012】
赤血球中へのアスパラギナーゼの封入は、治療指数を改善させる(D. Schrijvers et al., Clin. Pharmacokinet. 2003, 42(9): 779-791)。したがって、再現性のある工業的なやり方で赤血球中にアスパラギナーゼを封入することを可能とする方法を提供するのは、極めて有益である。
【0013】
さらに、イノシトールヘキサホスフェートは、酸素のヘモグロビンへの親和性を顕著に低下させ、組織中の酸素の放出を増加させるために、赤血球中の2,3−DPG(2,3−ジホスホグリセラート)の代替物として提案されてきた(EP-A-0101341)。米国特許第US4,321,259号、同第US5,612,207号及び同第US6,610,702号は、赤血球中への該代替物の組み込み及びさまざまな治療への応用におけるその使用について記載している。それらは、低酸素性の腫瘍の酸素負荷およびそれらの放射線療法への感受性を改善するために、放射線療法による癌治療のための添加剤としての効能を含む。しかしながら、その効能は、いかなる実行可能性要素も伴わない。
【0014】
封入のためには、米国特許第US4,321,259号は、赤血球及びイノシトールヘキサホスフェートを含むリポソームの融合を使用する。米国特許第US5,612,207号は、エレクトロポーレーションによる技術を使用する。米国特許第6610702号は、赤血球中への導入を促進することのできる生物適合性の水溶性錯体を形成するために、アンモニウムカチオンと結合されたイノシトールヘキサホスフェートによる、エレクトロポーレーション技術の改善を記載する。最後に、上記のBiotechnol. Appl. Biochem. 1996, 24, 73-78中で、L.Boucher らは、溶解/再シーリング技術による赤血球中へのイノシトールヘキサホスフェートの導入を研究している。したがって、該化合物を赤血球中に導入するために、当業者にはさまざまな経路が利用可能である。しかしながら、C.G. Millanら(上記)が示すとおり、一般に酸素の輸送のためにイノシトールヘキサホスフェートを引き合いに出すと、イノシトールヘキサホスフェートなどの分子を組み込んでいる赤血球の使用は、現在は証明された工業的手順のないことに直面する。
【発明の開示】
【0015】
したがって、本出願においては、再現性がありそして工業的なやり方で赤血球中にイノシトールヘキサホスフェートを封入することのできる方法を有することは非常に有益であろう。
【0016】
上記を考慮すると、出願人が取り組む問題は、再現性のあるやり方で所望の量の活性成分を組み込んだ赤血球を生成することを可能とし、かつ(無菌性、病原体及びパイロジェンを含まない)輸血のための標準に適合する生成物が得られることを可能とする、工業的な溶解/再シーリング方法を提供することである。
【0017】
本発明の重要な目的は、輸血のために必要な標準に適合する球状体濃縮物に適用されることのできる方法を提供することである。
【0018】
他の目的は、効果的で、再現性があり、信頼性があり、かつ安定なやり方で赤血球中にアスパラギナーゼまたはイノシトールヘキサホスフェートを封入することを可能とする方法を提供することである。
【0019】
これら及び他の目的は、少なくとも1つの活性成分を含む赤血球を調製するための溶解/再シーリング方法によって達成され、該方法は以下のステップ:
1 球状体濃縮物を、65%以上のヘマトクリットレベルを有する等張溶液中の懸濁液中におき、+1℃〜+8℃で冷蔵し、
2 同じ球状体濃縮物からの赤血球サンプルに基づいて浸透圧抵抗を測定し、ここで、ステップ1及び2は、(並行して実施されることを含む)任意の順番で実施されることができ、
3 以下の:
65%以上のヘマトクリットレベルを有する赤血球懸濁液及び+1〜+8℃で冷蔵された低張性溶解溶液を、透析カートリッジ内を循環させ;
溶解パラメータを先に測定した浸透圧抵抗によって調節する、
を含む、同じチャンバー内、+1〜+8℃に常に維持した温度における、溶解及び活性成分の内在化手順;そして
4 その中の温度が、再シーリングに適合された、好ましくは+30〜40℃である第二のチャンバー中、かつ高張性溶液の存在下で実施される再シーリング手順、
を含む。
【0020】
好ましい実施態様においては、ステップ2は、ステップ1において調製された懸濁液サンプルについて実施される。その後に説明されるように、懸濁液は、生理食塩水溶液で洗浄するなどの通常の処理操作に供された球状体濃縮物から調製されることができる。さらに、内在化されるべき活性成分は、この懸濁液中に存在してよい。したがって、ステップ2をこの懸濁液のサンプルについて実施することは有益であり、活性成分が最初の懸濁液中にある場合、ステップ2は活性成分を含む懸濁液のサンプルについて実施される。
【0021】
「内在化」という用語は、活性成分を赤血球内部に導入することをさす。
【0022】
本発明の特徴によれば、球状体濃縮物は、65%以上、そして好ましくは70%以上の高いヘマトクリットレベルを有する等張性溶液中に懸濁され、そしてその懸濁液は、+1〜8℃、好ましくは+2〜+6℃、典型的にはほぼ+4℃程度で冷蔵される。特別な方法によれば、ヘマトクリットレベルは、65〜80%、好ましくは70〜80%である。
【0023】
本発明の重要な特徴によれば、浸透圧抵抗は、溶解ステップのすぐ前の赤血球について測定される。赤血球またはそれを含む懸濁液は、溶解のために選択された温度またはそれに近い温度であることが有利である。本発明の他の有益な特徴によれば、実施される浸透圧抵抗の測定は、迅速に使用され、すなわち、該溶解手順はサンプルが取得された後、短時間で実施される。好ましくは、サンプル取得と溶解の開始の間の時間間隔は、30分以下、さらに好ましくは25分以下、またはさらに20分以下である。
【0024】
透析の制御を可能とする2つのパラメータは、(その特徴にしたがって)細胞が透析装置中に存在する時間及び透析液のモル浸透圧濃度である。該2つのパラメータは、溶解/再シーリングステップに供されるために処理される赤血球の浸透力、または逆に浸透圧抵抗の特徴にしたがって調節されなくてはならない。該浸透力は、以下のパラメータ:
a.溶血が現れる、すなわち、孔形成開始時の媒体のモル浸透圧濃度、
b.溶血の速度V、これは、溶血%=f(媒体のモル浸透圧濃度)曲線の直線部分の勾配により確立され、
c.所与のモル浸透圧濃度についての溶血パーセンテージ、
d.50%の溶血が得られることを可能とするモル浸透圧濃度(H50)、
e.所与の溶血パーセンテージ(例えば、50%)を得るための時間、
のうちの少なくとも1つによって特徴づけられる。
【0025】
好ましい実施態様によれば、浸透力は、パラメータb、dまたはb及びdによって特徴づけられる。
【0026】
したがって、浸透圧抵抗は、サンプル取得と溶解開始の間の短い時間間隔に適合した、短い時間内に測定されなければならない。本発明の特徴によれば、これらの溶血パラメータのうちの1つ以上が、半透過性膜を通して、水(蒸留水など)などの既知の等張性を有する低張性溶液に対して測定される。手動の方法は予想されることができる。しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、浸透圧抵抗は、赤血球サンプルの浸透圧抵抗を15分未満、より特別には12分未満及び好ましくは10分未満で測定するように構成された自動測定装置によって測定され、そして得られた結果は、溶解パラメータを調節するため及び溶解を開始するために、短時間内に使用される。
【0027】
浸透圧抵抗の測定は、J.V. Dacie in Practical Haematology, 2nd edn, Churchill, London 1956に記載された手動の技術を少なくとも部分的に自動化する装置によって実施されることができる。かかる装置の例は、J. Didelon et al., Clinical Hemorheology and Microcirculation 23(2000) 31-42による記事中に記載されている。原理は、NaClイオンが蒸留水などの溶液に向かって拡散するときにゆっくりとした赤血球の溶血をおこすように、半透過性膜の1つ及び他の側において、評価されるべき赤血球懸濁液のサンプル及び蒸留水などの既知の等張性を有する適切な体積の低張性溶液をともに有する装置を使用することに基づく。経時的な溶血の進行は、808nmの波長を有するレーザービームによる透過率の測定(J. Didelon et al., Biorheology 37, 2000: 409-416を参照のこと)によって追跡される。光電管は、懸濁液を透過する光の変化を測定する。例えば、測定は、10分間にわたって実施される。該装置は、a〜eに上記されたパラメータの1つ以上が得られることを可能とする。
【0028】
最初の方法によれば、浸透圧抵抗の測定は、その最初の温度が+1〜+8℃であるサンプルについて、好ましくはその温度である蒸留水を用いて、温度の変化が測定に有害でない条件下で行われる。第二の方法によれば、浸透圧抵抗の測定は、+1〜+8℃の温度に維持されたサンプルについて実施される。したがって、上記のJ. Didelonらにより記載された測定装置は、温度の制御を可能とするために改変されてよい。好ましくは、この温度は溶解温度に類似または同じである。
【0029】
一旦、これらのパラメータのうちの1つ以上が決定されたら、「活性」物質及び/またはその所望の量を封入する赤血球を得るのに十分な、透析装置中の細胞の流速または透析液のモル浸透圧濃度のいずれかを確立するために、該パラメータを考慮した以下の関係が適用されることができる:
赤血球の流速=[A×(H50)]+[B×(V)]+K
A及びB=透析装置及び溶解溶液のモル浸透圧濃度によって調節可能な変数
K=調節定数
透析液のモル浸透圧濃度=[C×(H50)]+[D×(V)]+K
C及びD=透析装置及び透析装置中の赤血球の流速によって調節可能な変数
K=調節定数
【0030】
好ましい実施態様によれば、g/Lで表した約50%の溶血をおこすNaClの濃度が測定され(パラメータd)、そして透析カートリッジ中の赤血球懸濁液の流速が測定された濃度の値によって調節される。
【0031】
本発明のある側面によれば、溶解手順は、赤血球懸濁液の温度が+1〜8℃のときに開始し、そして浸透圧抵抗が測定されそして溶解パラメータが記録された。
【0032】
有益な特徴によれば、処理される最初の懸濁液は、上記の溶解/内在化チャンバー中に入れられる。本発明のある実施態様によれば、該方法は、温度制御を備えた冷蔵モジュールを使用し、+1〜+8℃に冷蔵される赤血球懸濁液の袋が該モジュール中に置かれ、そして、透析カートリッジ、カートリッジを片側では袋に、そして他の側では溶解溶液に連結するためのチューブを含む、滅菌された取り外し可能な使い捨てアセンブリーに連結され、該モジュールはさらに、赤血球懸濁液及び溶解溶液の循環をおこすことのできる手段を含み、該モジュール中では温度は+1〜+8℃に安定化されている。冷蔵モジュールは、袋及び取り外し可能な使い捨てアセンブリーを入れるための寸法を有する。さまざまなチューブによって連結された袋、透析カートリッジ、溶解溶液がこのタイプの単一の冷蔵モジュール中に提供されることは、本発明の方法の有利な特徴である。
【0033】
「袋」という用語は、輸血及び血液製剤の分野で一般に使用されるフレキシブルな袋をさす。
【0034】
本発明の重要な側面によれば、透析装置を通過する懸濁液のヘマトクリットレベルを安定に保つように、均一な懸濁液中に赤血球を保持するためにステップが採用される。したがって、本発明の特徴によれば、袋は、袋へのそして袋からの懸濁液の循環をおこすことのできる、外部ループ型の循環を備える。
【0035】
「透析カートリッジ」という用語は、透析壁によって分離された2つのコンパートメントを含む要素をさし、ここで、1つのコンパートメントの中に置かれた水溶液の浸透圧を制御されたやり方で改変することを可能とするイオン交換が、他のコンパートメント中に導入された塩を含む水溶液との間で、上記透析壁を通って行われる。このタイプのカートリッジは、医学分野で広く使用されている。好ましい方法によれば、例えば、中空糸を有する透析カートリッジが使用され、このタイプのカートリッジは、以下の特異的な性質:100〜400μmの該糸の内径、0.3〜2m2の該糸の総外部表面積、10〜40cmの該糸の長さ、1.5〜8ml/時間mmHgの限外ろ過係数、を有する。
【0036】
上記で詳細に記載されたとおり、溶解手順は、袋中の懸濁液の温度が+1〜+8℃であるときに開始されることができる。ある有利な方法によれば、懸濁液の温度は、外部ループ型の循環上に配置されたセンサーによって制御される。
【0037】
どちらの場合にも、溶解溶液を一定流速に固定することが好ましい場合、検出された浸透圧抵抗によって、2つの主要なパラメータ、透析カートリッジ中の赤血球懸濁液の流速及び溶解溶液のモル浸透圧濃度、が調節されることができる。流速の値は臨界的なものではない。典型的には、中空糸を有する透析カートリッジについては、上記のとおり、溶解溶液の流速は50〜300ml/分、好ましくは150〜250ml/分に固定される。
【0038】
溶解溶液は、赤血球の懸濁液に比べて低張である生理食塩水溶液である。そのモル浸透圧濃度は一定値に固定された場合、典型的に、20〜120mOsm、好ましくは70〜110mOsm、例えば、ほぼ90mOsm程度であることができる。
【0039】
例えば、溶解溶液はNa2HPO4及び/またはHaH2PO4並びにグルコースなどの糖を含むことができる。
【0040】
最初の方法によれば、溶解緩衝液の流速及びモル浸透圧濃度が固定される一方、透析カートリッジを通過する赤血球懸濁液の流速は調節される。浸透圧抵抗が高いほど、懸濁液の流速が増加する。典型的には、その仕様が上記において示されたカートリッジについては、流速は、5〜200ml/分、好ましくは10〜40ml/分の中で変化させられるであろう。
【0041】
第二の方法によれば、懸濁液及び溶解溶液の流速が固定される一方、溶解溶液のモル浸透圧濃度が調節される。浸透圧抵抗が高いほど、溶解溶液のモル浸透圧濃度が増加する。典型的には、モル浸透圧濃度は、10〜200mOsm/l、好ましくは20〜150mOsm/lの中で変化させられるであろう。
【0042】
第三の方法によれば、透析カートリッジを通る赤血球懸濁液の流速及び溶解溶液のモル浸透圧濃度が調節される。
【0043】
本発明によれば、赤血球中に組み込まれることを目的とする1つ以上の活性成分が導入される。活性成分は、懸濁液袋中に存在する、及び/または好ましくは徐々に透析カートリッジの上流または下流の懸濁液循環中に導入されることができる。導入される体積が小さいため、活性成分の冷蔵は任意である。
【0044】
赤血球の懸濁液は、好ましくは、白血球が除去され、病原体が検出されず、そして特に、例えば500mlを含む袋中に提供された、受容者と適合性である血液群由来の球状体濃縮物から生成される。「移植物/宿主」型の免疫反応を経験するかもしれない、高度な免疫不全患者を対象とする場合、赤血球は放射線照射されていてよい(R.J. Davey Immunol. Invest.1995、24(1-2):143-149)。
【0045】
本発明の特別な特徴によれば、懸濁液を調製するために使用される最初の球状体濃縮物は、予め、赤血球以外の血液成分から取り除くことを目的する処理操作に供されている。血漿または保存溶液を除去するために生理食塩水中で洗浄することなどのこのタイプの処理は、当業者に知られている。
【0046】
特別な方法によれば、洗浄は、封入されるべき1つ以上の活性成分の存在下で実施される。
【0047】
洗浄は、赤血球を洗浄するための四重の袋または4つの袋の技術などの任意の慣用技術によって実施されることができる(MacoPharma method and transfer pouch)。COBE 2991 Cell Processor型の自動赤血球洗浄装置を使用することも可能である。
【0048】
本発明の他の特徴によれば、赤血球は、その浸透力を増加及び/または均一化することのできる溶液で予め処理されることができる。かかる溶液は、当業者に知られている。例えば、L-カルニチンを含む溶液は赤血球の浸透力を改善させることを可能とする。他の例は、ヘパリン、クエン酸−リン酸−デキストロース(CPD)及びマンニトールの溶液を含むことができる。
【0049】
溶解ステップの間の温度は、好ましくは+2〜+6℃、そしてより好ましくは、ほぼ4℃程度に維持される。
【0050】
再シーリング手順は、好ましくは、溶解した懸濁液を再加熱し、高張性再シーリング溶液を加えることによって実施される。再シーリング温度は、+30〜+40℃であってよい。それは、+35〜+38℃、例えば、約37℃であることが好ましい。インキュベーションは、典型的には15〜45分間持続してよい。
【0051】
好ましくは、透析カートリッジから排出された懸濁液及び高張性再シーリング溶液は、好ましくは連続的に中間の袋に導入される。懸濁液はその中で再加熱され、所望の温度でそして再シーリングを確実にするのに十分な時間、インキュベーションされる。特別な側面によれば、中間の袋は、その内部温度が選択された温度に制御された、加熱されたチャンバーまたはモジュール中に置かれる。
【0052】
変形すると、懸濁液並びに再シーリング溶液は中間の袋に入れられる。懸濁液全体がその袋に集められたら、それは密封されて、所望の温度に加熱しそしてその温度でインキュベーションすることを可能とするモジュールに移される。
【0053】
その後、再シーリングされた赤血球の懸濁液はシールされていないまたは上手くシールされなかった細胞、残渣及び細胞外ヘモグロビンを除去するために、生理食塩水による1つ以上の洗浄ステップに供される。
【0054】
他の特徴によれば、赤血球は、L-カルニチンを含む溶液などの赤血球の保存のための溶液中で処理される。
【0055】
生成された赤血球は、+1〜+8℃の温度、好ましくは+2〜+6℃、典型的には約+4℃で保存される。
【0056】
すぐに使用できる生成物の最終的なヘマトクリットレベルは、実際は40〜70%である。
【0057】
本発明はまた、本発明によって赤血球を調製するための方法を実施するのに使用されることのできる、溶解/再シーリング装置にも関し、該装置は以下の:
+1〜+8℃の温度で冷蔵されることができ、そして冷却及び温度制御のための手段を含む、モジュール、
上記モジュール中に配置可能であるように構成され、そして一方の側で溶解溶液の入り口に、そして他方の側は赤血球懸濁液の入り口に接続されることのできる透析カートリッジを含む、無菌性で取り外し可能な使い捨てアセンブリー、
処理されるべき赤血球の浸透圧抵抗によって、上記溶解カートリッジを通る赤血球懸濁液の流速を調節し、及び/または溶解溶液のモル浸透圧濃度を調節するための、手段、
を含む。
【0058】
ある実施態様によれば、それ自体が本発明の側面である取り外し可能なアセンブリーは、使い捨てキットであり、赤血球懸濁液を含むことのできる袋およびその袋を透析カートリッジに連結するチューブを含み、そして該モジュールは、そのチューブと協同することが可能であって、赤血球懸濁液を袋からカートリッジにむかわせそしてそこを通って循環させるポンプを含み、該ポンプは場合により流速を調節するための手段に接続されている。該アセンブリーは無菌性が維持されることを可能とする。
【0059】
有利な特徴によれば、該袋はさらに、該袋にその2つの末端で連結されたループ型のチューブを備え、該モジュールはそのチューブと協同し、袋の内容物を袋からそして袋へ向かって循環させることのできるポンプを含む。ループ型のチューブ並びに少なくとも1つの入り口または出口ポイントを備えたかかるフレキシブルな袋は、それ自体が本発明の側面を構成する。その袋は、各入り口/出口に接続された少なくとも1つの他のフレキシブルなチューブを含んでよい。該袋は、ループ型のチューブ及び/または袋及び場合によりポンプの支持体と協同するために配置されたポンプ(例えば、ペリスタルティックポンプ)と関連されてよい。腸管外の供給のための組成物などの組成物における所与の程度の均一性を維持することが望ましいため、かかる袋は、(懸濁液、エマルジョンなどの)組成物をヒトまたは動物に投与するために使用されることができる。
【0060】
他の有利な特徴によれば、温度プローブがループ型チューブ上に配置される。
【0061】
他の特徴によれば、活性成分の注入用のチューブが、透析カートリッジの「血液」の入り口に袋を接続するチューブに接続される。
【0062】
他の特徴によれば、透析カートリッジがチューブによって溶解溶液を含むことのできるフラスコに連結され、そして冷蔵されたモジュールは、溶解溶液を透析カートリッジに向かいそしてそこを通って循環させるために上記チューブと協同することのできるポンプ及び上記フラスコのための受容手段を含む。
【0063】
本発明の好ましい特徴によれば、冷却手段及び温度制御手段は、+2〜+6℃、好ましくはほぼ+4℃程度の温度をモジュール中で維持することができる。
【0064】
他の特徴によれば、透析カートリッジの「血液」出口は、モジュールの外に開口したまたは開口することのできる出口チューブに接続される。他の特徴によれば、活性成分の注入用のチューブがその出口チューブに接続される。出口チューブは、溶解溶液から排出された(好ましくは、中間の袋の中へ開いた地点からわずかに上流で出口チューブ中に開口した二次的チューブによって導入された)赤血球懸濁液並びに再シーリング溶液を集めることのできる第二の袋(中間の袋)に接続されてよい。その袋は、モジュール中の温度を+30〜+40℃、好ましくは+35℃〜+38℃に制御することのできる手段を備えた第二のモジュール中に配置されることが有利である。
【0065】
有利な実施態様によれば、使い捨ての取り外し可能なアセンブリーは、単一のユニット中に袋、循環チューブ、(注入装置またはかかる装置と協同することを目的とする受容器を備えた)注入チューブ、透析カートリッジ及び好ましくは溶解溶液のフラスコを含む。
【0066】
好ましくは、取り外し可能なアセンブリー自体は、冷却または加熱を目的とする特別な手段を含まない。これらの機能は、アセンブリーの上記2つの部分が置かれるモジュールまたはチャンバーによってのみ実行される。
【0067】
本発明の方法及び装置中で使用されるポンプは、好ましくはペリスタルティックポンプ(閉塞ポンプ)であり;1つの実施態様によれば、懸濁液を最初の袋に向かってそしてそこから再循環させるポンプ及び溶解緩衝液を循環させるためのポンプは、一定の、所定の回転速度を有するが、懸濁液を透析カートリッジに向かって運ぶポンプは処理されるべき赤血球の浸透圧抵抗によって調節されることのできる回転速度を有する。
【0068】
活性成分は、固定速度プランジャーシリンジなどの任意の好適な手段によって導入されてよく、該シリンジは場合により、対応する注入チューブに接続される。変形すると、該プランジャーシリンジはペリスタルティックポンプで置換されることができる。
【0069】
上記装置は、処理されるべき赤血球の浸透圧抵抗によって、溶解カートリッジ中の赤血球懸濁液の流速を制御し、及び/又は溶解溶液のモル浸透圧濃度を調節するための手段を含む。
【0070】
ある特徴によれば、流速調節手段は、懸濁液を透析カートリッジに向かって運ぶポンプを制御するように構成される。他の特徴によれば、該調節手段は、モル浸透圧濃度を希釈または低下させるため、あるいは該モル浸透圧濃度を導入される好適な溶質によって増加させることのいずれかのために溶解溶液のモル浸透圧濃度を制御するように構成される。変形することにより、処理されるべき赤血球の浸透圧抵抗に対して調節されるモル浸透圧濃度を有する溶解溶液は、場合によりモジュール中に導入されてよい。
【0071】
好ましい方法によれば、該装置は、浸透圧抵抗に関連して、(オペレーターが、赤血球懸濁液の流速に関するデータを直接インプットするなどの)オペレーターによってインプットされる指示にしたがって、またはオペレーターによってインプットされたデータにしたがって、溶解過程及び場合により再シーリング過程を制御することのできる電子的手段を含む(該電子的手段は、赤血球懸濁液の流速などの溶解パラメータを確立しそして調節するために構成されている)。これらの電子的手段は好ましくは(モジュール中及び/または赤血球懸濁液のための温度センサーにおいて温度を制御することを可能とする)温度センサーに接続されている。これらの手段は、ポンプを制御及び操作して、透析カートリッジ中の懸濁液の圧力及び流速などを制御することができる。
【0072】
モジュールは、装置並びに溶液及び懸濁液の循環の視覚による制御を可能とする、ガラス表面を有する少なくとも1つの側面を備えていることが好ましい。
【0073】
本発明の方法及び装置は、特にヒトまたは動物の治療に使用される、医薬品、ワクチン、酵素、ペプチド、抗原及び造影剤から選択される多数の活性成分を組み込むのに使用されることができる(例えば、C.G. Millan, J. Controlled Released 2004, 95: 27-49を参照のこと)。
【0074】
本発明は、本発明による方法を、アスパラギナーゼの有効な、再現性のあるそして安定な組み込みに適用することにも関する。アスパラギナーゼという用語は、本発明にしたがって、天然、合成、人工または組換えにかかわらず、任意の起源の任意のアスパラギナーゼ、及びアスパラギナーゼ及びポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーの組み合わせ(例えば、ペギレイテッドアスパラギナーゼまたはペグアスパラギナーゼであり、これは、Enzon and Medacにより販売されているOncaspar(登録商標)などの、PEG中に封入されたアスパラギナーゼのタイプである)などのそれを組み込んだ誘導体をさすことを目的とする。
【0075】
さまざまな可能な方法によれば、アスパラギナーゼは最初の袋及び/または透析カートリッジの上流及び/または下流の懸濁液の循環中に導入される。透析カートリッジの上流の懸濁液の循環中に導入されることが好ましい。浸透圧抵抗はアスパラギナーゼを含む懸濁液について測定されることが有利である。その後懸濁液は放出され、洗浄され、場合により保存剤溶液がそれに添加され、そして好ましくは、フレキシブルな袋中ですぐに使用できるように保存される。
【0076】
治療のために処方された用量に対応するために、懸濁液の体積を最後の袋の中で調節することができるように、アスパラギナーゼを懸濁液中に計って入れることを可能とする方法が知られている。
【0077】
好ましい実施態様においては、最初の濃縮物は、白血球が除去され及び/または放射線照射されている。
【0078】
特別な側面においては、例えば、ビンクリスチン及び/またはメトトレキセート及び/または場合によりアスパラギナーゼに添加するのに有利な任意の他の活性成分などの、併用療法のための活性成分も導入される。
【0079】
本発明は、本発明の方法を実施することによって得ることのできる、アスパラギナーゼを含む赤血球の懸濁液または濃縮物にも関する。この懸濁液は、医薬として許容可能な生理食塩水溶液(一般に、赤血球のための標準的媒体であって、NaCl並びにグルコース、デキストロース、アデニン及びマンニトールから選ばれる1つ以上の成分を含む溶液;例えば、SAG-マンニトールまたはADsol)中で作製されることができる。この溶液は、赤血球の保存を確実にすることができ、そしてL-カルニチンなどの保存剤添加物を含んでよい。赤血球は、ビンクリスチン及び/メトトレキセート、及び/または場合によりアスパラギナーゼと結合させて有利である任意の他の成分も含んでよい。懸濁液または濃縮物は、使用の前に希釈されるために処理されてよい。懸濁液は、すぐに使用できるように処理されてもよい。すぐに使用することのできる生成物の最終的なヘマトクリットレベルは、40〜70%であることが好ましい。
【0080】
本発明は、本発明の方法にしたがって得ることのできる、アスパラギナーゼを含む赤血球懸濁液の有効量を投与することによって急性のリンパ芽球性白血病及びリンパ腫を治療するための方法にも関する。本発明の特別な側面は、患者または一人以上のドナーから採取された1つ以上の血液サンプル、赤血球の濃縮物の調製、本発明によるアスパラギナーゼの組み込み及びアスパラギナーゼを組み込んだ赤血球のバッチの作製、そして静脈内経路による上記懸濁液の患者への投与を含む。典型的には、ある体積の処理された赤血球懸濁液は、体重1kgあたり60〜200単位のアスパラギナーゼに相当して投与される。
【0081】
本発明は、急性のリンパ芽球性白血病またはリンパ腫について患者を治療する目的の医薬品または薬物の製造のための、本発明の方法にしたがって得られることのできる、アスパラギナーゼを含む赤血球の使用にも関する。本発明の特別な実施態様は、赤血球の濃縮物の調製のために患者または一人以上のドナーから採取された1単位以上の血液の使用、これらの赤血球による患者の治療のための、本発明によるアスパラギナーゼの組み込み及びアスパラギナーゼを組み込んだ赤血球のバッチの作製を含む。特別な方法によれば、上記使用は、体重1kgあたり60〜200単位と等価のアスパラギナーゼを含む、ある体積の処理された赤血球懸濁液などのある用量を含む袋を作製することを目的とする。
【0082】
本発明は、イノシトールホスフェート、特にイノシトールヘキサホスフェート及びイノシトールペンタホスフェート、或いはそれらの誘導体の、有効で再現性がありかつ安定な組み込みへの本発明の方法の適用にも関する。イノシトールヘキサホスフェートが好ましい。
【0083】
可能性のあるさまざまな方法によれば、イノシトールホスフェートは最初の袋及び/または透析カートリッジの上流及び/または下流の懸濁液の循環中に導入される。最初の袋に導入されることが好ましい。イノシトールホスフェートを含む懸濁液について浸透圧抵抗を測定することが有利である。その後懸濁液は溶解され、再シールされ、洗浄され、場合により保存剤溶液がそれに添加され、そしてフレキシブルな袋中ですぐに使用できるように保存される。
【0084】
治療のために処方された用量に相当するために、懸濁液の体積を最後の袋の中で調節することができるように、イノシトールホスフェートを懸濁液中に計って入れることを可能とする方法が知られている。
【0085】
好ましい実施態様によれば、最初の濃縮物は、白血球が除去され及び/または放射線照射されている。
【0086】
本発明は、本発明の方法を実施することによって得ることのできる、イノシトールホスフェート、特にイノシトールヘキサホスフェートまたはペンタホスフェートを含む、赤血球の懸濁液または濃縮物にも関する。この懸濁液は、医薬として許容可能な生理食塩水溶液(一般に、赤血球のための標準的媒体であって、NaCl並びにグルコース、デキストロース、アデニン及びマンニトールから選ばれる1つ以上の成分を含む溶液;例えば、SAG-マンニトールまたはADsol)中で作製されることができる。この溶液は、赤血球の保存を確実にすることができ、そしてL-カルニチンなどの保存剤添加物を含んでよい。該懸濁液または濃縮物は、使用の前に希釈されるために処理されてよい。該懸濁液は、すぐに使用できるように処理されてもよい。すぐに使用することのできる生成物の最終的なヘマトクリットレベルは、40〜70%であることが好ましい。
【0087】
本発明は、本発明の方法にしたがって得ることのできる、イノシトールホスフェート、特にイノシトールヘキサホスフェートを組み込んでいる赤血球懸濁液の有効量を患者に投与することを含む、特に放射線療法に関連する腫瘤の酸素負荷のための方法にも関する。本発明の特別な側面は、患者または一人以上のドナーから採取された1つ以上の血液サンプル、赤血球の濃縮物の調製、本発明によるイノシトールホスフェート、特にイノシトールヘキサホスフェートの組み込み、及び該化合物を組み込んだ赤血球のバッチの作製、そして静脈内経路による上記懸濁液の患者への投与を含む。好ましくは、該方法は放射線療法と関連し、そしてしたがって処理された赤血球を静脈内経路を介して放射線療法の全体又は一部分について持続的に、そして好ましくはさらに治療の前および/または後にも十分な時間投与することが可能である。
【0088】
本発明の方法は、さまざまな癌及び特に肺、前立腺、直腸、食道の癌並びに脳腫瘍の治療において使用されることができる。該方法は、特に放射線に対する感受性が弱く、一般に低酸素性腫瘍、そして特に悪性グリオーマを目的とする。本発明の特別な側面によれば、該方法は、グリオブラストーマ及びENT(耳鼻咽喉の)癌の治療を目的とする。
【0089】
本発明は、上記のタイプの癌について、特に放射線療法の過程に関連して患者を治療することを目的とする医薬品または薬物の製造のための、本発明の方法にしたがって得られることのできる、イノシトールホスフェート、特にイノシトールヘキサホスフェートを含む赤血球の使用にも関する。本発明の特別な側面は、赤血球の濃縮物の調製のために患者または一人以上のドナーから採取された1単位以上の血液の使用、これらの赤血球による患者の治療のための、活性成分の本発明による組み込み及び該化合物を組み込んだ赤血球のバッチの作製を含む。
【0090】
本発明は、本発明の方法によって得ることのできる、イノシトールホスフェート、特にイノシトールヘキサホスフェートを組み込んだ赤血球懸濁液の有効量を患者に投与することを含む、ドレパノサイトーシス(drepanocytosis)または他の低酸素状態を治療するための方法にも関する。本発明の特別な側面は、患者または一人以上のドナーから採取された1つ以上の血液サンプル、赤血球の濃縮物の調製、本発明によるイノシトールホスフェート、特にイノシトールヘキサホスフェートの組み込み及び該化合物を組み込んだ赤血球のバッチの作製、そして静脈内経路による上記懸濁液の患者への投与を含む。
【0091】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られることのできる、イノシトールホスフェート、特にイノシトールヘキサホスフェートを含むかかる赤血球の、低酸素症患者の治療を目的とする医薬品または薬物の製造のための使用に関する。低酸素症は、組織、特に筋肉及び骨への低い酸素の送達に特徴を有する。この治療は、ドレパノサイトーシスに罹った患者の治療に対して特に興味深い。本発明の特別な側面は、これらの赤血球による患者の治療のための、患者または一人以上のドナーから採取された1単位以上の血液の使用、本発明による活性成分の組み込み及び該化合物を組み込んだ赤血球のバッチの作製を含む。
【0092】
赤血球中に組み込まれたイノシトールヘキサホスフェートなどは、ヘモグロビンの酸素親和性の低下に導く。これは、組織のよりよい酸素負荷及びドレパノサイトーシスによる低酸素症状の減少に導く。P50は、ヘモグロビンの50%酸素飽和に相当するO2圧(PO2)である。25mmHgのP50の増加は、約2倍の酸素負荷の増加に導く(酸素負荷は、100mmHg及び40mmHgのPO2値の飽和における相違である)。したがって、2000mLの赤血球細胞を有する成人のためには、イノシトールホスフェートを含む200mLの赤血球を含む血液バッグの輸血は正常の2倍の酸素負荷能力を有する10%超の赤血球が生じることに導く。これは、低酸素状態の個体において有益である、20%超の酸素負荷の増加に導く。
【0093】
該方法は、個体の赤血球量の5〜20%、好ましくは10〜15%を表す体積による輸血を含み、輸血の頻度は1ヶ月又は2ヶ月に1回であることが有利であるかもしれない。
【実施例】
【0094】
実施例1:装置
先ず図1を参照する。最初の破線の枠は、一般にパラレルエピペダルな(parallelepipedal)形態であって、図示していない開閉可能に形成されたガラスの前面を含む第一のモジュール1を示す。ペリスタルティックポンプP1、P2及びP3並びにこの後に記載する取り外し可能なアセンブリーの(図示していない)受容手段を該モジュールの底部に配置する。ポンプP1、及びP3は、一定の所定の流速を有する。ポンプP2は、流速を変化させるために制御される。取り外し可能なアセンブリーは、溶解される赤血球懸濁液を入れたフレキシブルな袋2を含む。袋2はループ型の構成のフレキシブルなチューブ3を備え、これは懸濁液中に赤血球を保持するために袋を出入りする循環をおこすためにポンプP1と協同する。袋はさらにその底が、透析カートリッジ5の「血液」コンパートメントの入り口に接続したフレキシブルなチューブ4に接続する。該チューブ4は、懸濁液の袋からカートリッジへの循環をおこすポンプP2と協同する。制御されたプランジャー型のシリンジPS1は、カートリッジ5の上流のチューブ4に接続され、該プランジャー型のシリンジは活性成分を赤血球の循環中に導入することを目的とする。カートリッジ5の「血液」コンパートメントの出口は、モジュール1の外に開口するフレキシブルな出口チューブ6に接続している。第二の制御されたプランジャー型シリンジPS2は、チューブ6に接続し、該プランジャー型シリンジは、活性成分を溶解した赤血球の循環中に導入することを目的とする。溶解溶液を入れたフラスコ7はモジュール1中に配置され、そして、溶解溶液のカートリッジ5を通る循環をおこすポンプP3と協同する、フレキシブルチューブ8によってカートリッジ5の「透析液」入り口に接続される。最後に、カートリッジから出た溶解溶液は、モジュール1の外側に置かれたフラスコ10中に開口しているフレキシブルな排出チューブ9によってモジュール1から排出される。
【0095】
出口チューブ6は、一般的にパラレルエピペダルな形態であって、開閉可能に形成された図示していないガラスの前面を含む、第二のモジュール11中に伸長している。取り外し可能なアセンブリーの一部を形成する(図示していない)受容要素は、該モジュールの底部上に配置される。これらは、チューブ6に接続され、そしてその中に溶解懸濁液が保存される、フレキシブルな袋12を含む。制御されたプランジャー型シリンジPS3は、チューブ6に接続され、そして再シーリングされた生成物が注入されることを可能とする。
【0096】
取り外し可能なアセンブリーは、過程を完全に見ることのできる、フレキシブルであって透明なプラスチック材料から完全に作られる。
【0097】
該装置はさらに以下の図示されていないさまざまな手段を備えている:
モジュール1の内部を冷却し、その中の温度を+2〜+4℃に制御する手段であって、中でも、その中を循環する懸濁液の温度を測定するためにチューブ3上に置かれた温度プローブであって、モジュール1の内部温度T1を測定するための温度プローブを含む、上記手段、
モジュール11はさらに、モジュール11の内部を加熱し、そしてその中の温度T2を+37〜+38℃に制御することを可能とする手段を備え;温度プローブがモジュール内に置かれ、
D1及びD2においてチューブ内の赤血球の存在を検出するための手段(例えば、超音波又は比色手段)、
透析カートリッジの入り口における圧力を測定するための手段PR1、
最初に、温度プローブ、圧力プローブ及び検出手段からの情報、そして第二に、溶解パラメータの調節に関する情報を受けとり;これらのデータに基づいてポンプP1、P2及びP3を制御する電子装置。過程のフローチャートを図2に示す。
【0098】
電子装置は、上記のフローチャートを実行するように設計されたコンピュータによって構成される。
【0099】
更なる特徴によれば、それは各溶解手順のパラメータを記録し、そして処理される各濃縮物のパラメータを記録する。
【0100】
実施例2:アスパラギナーゼの封入
この実施例においては、浸透圧抵抗は、50%の溶血をおこす、g/Lで表されたNaCl濃度によって定義される。
【0101】
1)浸透圧抵抗に対するアスパラギナーゼの影響
a.アスパラギナーゼ溶液の調製
シリンジによって2.5mlの0.9%NaClを隔膜を介して、10000IUのアスパラギナーゼ粉末を入れたフラスコ中に注入した。溶解するまで混合物を攪拌し、4000IU/mlの濃度の母液を得た。内容物をシリンジによって取り出し、そして5mlの溶血チューブ中に入れた。3つの溶液:(0.9%NaCl対照を構成する)0IU/ml溶液、3200IU/ml溶液(625μlの0.9%NaCl溶液を母液に加えた)及び1600IU/ml溶液(1mlの3200IU/ml溶液を取り出し、これに1mlの0.9%NaCl溶液を加えた)を調製し、そして+4℃で保存した。
【0102】
b.赤血球の洗浄
クエン酸リン酸デキストロース中に採取された全血から始めて、これを+4℃、1000gで20分間遠心分離した。
血漿をデカントし、バフィーコートを除去し、
等体積の+4℃の0.9%NaClを赤血球濃縮物に加え、
1000gで20分間遠心分離し、そして上清を除去し、
上記のステップを繰り返すことによって、第二そして第三の洗浄操作を実施し、
上清を除去し、そして0.9%NaCl溶液でヘマトクリットを80%に調節し、
875μlの体積の赤血球懸濁液を入れたチューブを準備した。
【0103】
これを6人の異なるドナーからの6個の血液サンプルについて実施した。
【0104】
c.アスパラギナーゼ溶液の添加
最初の浸透圧抵抗を6つのサンプルについて測定し、
125μlの0、1600、又は3200IU/mlのアスパラギナーゼ溶液を各アスパラギナーゼ濃度につき6本の試験管の割合で加え;各試験管を少しの間穏やかに攪拌した。6本の試験管の3つの群に含まれる最終濃度は:0、200及び400IU/mlである。試験管を浸透圧抵抗の測定まで砕いた氷の上に+4℃で保存し、
4つのインキュベーション時間:5、15、30及び60分、を試験した。インキュベーション時間の最後は、砕いた氷から試験管を取り除くことによって定義し、
周囲温度で浸透圧抵抗の測定を実施する。
【0105】
d.浸透圧抵抗の測定は、SODEREL MEDICAL, Haillecourt, FranceによりOSMOCELLS(登録商標)の名前で販売されている装置によって実施する。
【0106】
e.結果
アスパラギナーゼの非存在下又は存在下における、透析前の赤血球の浸透圧抵抗の発生及び分散を、図3、4及び5に示す。
【0107】
これらの結果は、存在するアスパラギナーゼの濃度及び時間による、血液サンプル間の赤血球の浸透圧抵抗の広い変動を示す。これらの結果は、処理される赤血球サンプルの浸透圧抵抗を透析相のできるだけ近くで、そして好ましくは封入されるアスパラギナーゼの存在下で、測定することの重要性を強調する。
【0108】
1)封入及び再シーリング過程:
a.装置
透析カートリッジ:
・GAMBRO, Lakewood, CO,USAにより販売されているPRISMA M60PPIモデル
・寸法(cm):38×21×9
・血液チャンバー容量:84ml
・中空糸:アクリロニトリル及びメタリルスルホネートナトリウムのコポリマー
・有効表面積:0.60m2
装置の操作パラメータ:
・P1=20ml/分
・P2=可変
・P3=150ml/分
・PS3=P2の10%
・T2=30分
【0109】
b.生成物
「Centre de Transfusion Sanguine」(French Blood Transfusion Centre)により提供された濃厚赤血球、すなわち、SAG-マンニトール中に懸濁された赤血球
ヘマトクリットを70%に調節
アスパラギナーゼ溶液:透析前の赤血球懸濁液1mlあたり400IUであった
【0110】
c.結果
図6は、透析装置中で22ml/分の流速P2の400IU/mlのアスパラギナーゼの場合の封入収率を示す。封入収率が透析前の浸透圧抵抗によって変動するように見える(5サンプル)。血液サンプル本来の多様性にもかかわらず、封入収率が可能な限り一定であることを確実にするように、本発明の方法の最適化を、透析パラメータ、特に透析装置中の赤血球懸濁液の流速を測定した浸透圧抵抗にしたがって調節することによって行う。
【0111】
流速P2(透析カートリッジ中での赤血球懸濁液の流速)を調節手段として、使用した透析カートリッジのための以下の最適レベルを確立にすることが可能であった。
【0112】
【表1】

【0113】
4.7を超える浸透圧抵抗についての流速P2の低下は、透析により生じる現象によって説明する。26ml/分以上の流速についての膜間圧(transmembranous pressure)の増加は浸透圧効果を増加させる。したがって、示したように、流速P2を低下させることが有利である。
【0114】
(各サンプルの浸透圧抵抗に依存して、表1にしたがって調節したP2により、)本発明の方法によって処理した7つの異なる赤血球サンプルの血液学パラメータの及び組み込みパラメータも追跡し、そしてこれらの血液学パラメータを健康な個人についてえられた値と比較した。測定した血液学パラメータの平均を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
組み込みパラメータ:
J.L. Orsonneau, Annales de Biologie Clinique 2004, vol.62, No.5に記載の方法を用いて溶解後の赤血球についての凍結融解を通じたアスパラギナーゼの用量を作製した。
109赤血球あたりのアスパラギナーゼの平均球状体レベルをIUで表す:10±1.1。
IU/赤血球mlで表したアスパラギナーゼの平均粒子濃度:112±11.3。
封入収率(最終生成物中のアスパラギナーゼ粒子濃度/透析前のアスパラギナーゼ濃度):29.8%±2.1。
【0117】
浸透圧抵抗を考慮せず、かつ流速を調節することを考慮しないが、18〜30ml/分の流速P2を考慮した、14個の異なるサンプルについて実施した予備的な試験では、32±12.4%の平均封入収率を測定することが可能であり、これはあきらかに広い変動性を表す。反対に、上記実験における流速P2の調節は、かなりより均一な平均封入収率(29.8%±2.1)を得ることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0118】
本発明は、実施態様に関する非制限的な実施例及び図面によってより詳細に記載されるであろう。
【図1】図1は、本発明による溶解/再シーリング装置の模式的表現である。
【図2】図2は、上記方法の基本的なフロー線図である。
【図3】図3は、分で表したインキュベーション時間により、約50%の溶血を起こすNaClの濃度(g/L)として表した、赤血球の溶血の進行を示すグラフである。
【図4】図4は、図3に類似した、アスパラギナーゼ(200IU/ml)存在下での上記状況で測定した溶血のグラフである。
【図5】図5は、図3及び図4に類似したグラフであって、測定は、アスパラギナーゼ(400IU/ml)の存在下において実施した。
【図6】図6は、g/Lで表した、50%の溶血をおこすNaCl濃度による封入収率を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分を含む赤血球を調製するための溶解/再シーリング方法であって、以下のステップ:
(1)球状体濃縮物を65%以上のヘマトクリットレベルを有する等張溶液中の懸濁液中におき、+1〜+8℃で冷蔵し、
(2)同じ球状体濃縮物からの赤血球サンプルに基づいて浸透圧抵抗を測定し、ここで、上記ステップ1及び2は、任意の順番で実施することができ、
(3)同じチャンバー内で、+1〜+8℃に常に維持された温度における、溶解及び活性成分の内在化手順であって、65%以上のヘマトクリットレベルを有する赤血球懸濁液及び+1〜+8℃で冷蔵された低張性溶解溶液を透析カートリッジ内を循環させ;ここで、溶解パラメータは先に測定した浸透圧抵抗に従って調節され;そして、
(4)+30℃〜+40℃の温度で、高張性溶液によって第二のチャンバー中で実施される、再シーリング手順、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記浸透圧抵抗が、赤血球サンプルの浸透圧抵抗を15分未満で測定するために構成されている測定装置によって測定され、そして得られた結果が前記溶解パラメータを調節するために短時間で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記赤血球サンプルの前記溶血パラメータの1つ以上が、半透過性膜を通して既知の等張性を有する低張性溶液に対して測定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
以下のパラメータ:
a.それに対して溶血が現れる媒体のモル浸透圧濃度、
b.溶血%=f(媒体のモル浸透圧濃度)曲線の直線部分の勾配によって確立される、溶血速度
c.所与のモル浸透圧濃度についての溶血のパーセンテージ
d.50%溶血が得られるモル浸透圧濃度
e.所与の溶血のパーセンテージを得るための時間
のうちの1つ以上が測定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
温度制御を備えた冷蔵モジュールが使用され、滅菌された取り外し可能な使い捨てアセンブリーに接続されているかまたは接続されるべきである、+1〜+8℃で冷蔵された赤血球の袋が上記モジュール中に置かれ、さらに上記モジュールは上記赤血球懸濁液及び前記溶解溶液の循環を起こすことのできる手段を含み、ここで、上記モジュールの内部の温度は+1〜+8℃に安定化され、ここで、上記取り外し可能な使い捨てアセンブリーは、透析カートリッジ、該カートリッジを1つの側で前記袋に接続し、他方の側でフラスコに接続するためのチューブを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶解手順が、前記袋の中の懸濁液の温度が+1〜+8℃であるときに開始される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記懸濁液中のヘマトクリットの安定なレベルが、該懸濁液が前記透析カートリッジを通過する時間全体において維持される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記懸濁液の袋へのそして該袋からの循環をおこすことのできる、外部ループ型の循環を備えた上記袋が使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
浸透圧抵抗の測定に基づいて、前記透析カートリッジ中を通過する赤血球懸濁液の流速が調節されるか、または前記溶解溶液のモル浸透圧濃度が選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記活性成分が前記懸濁液の袋の中に存在する、及び/または前記透析カートリッジを通過する前及び/または後の懸濁液の循環中に導入される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記球状体濃縮物が、該濃縮物の浸透力を増加及び/または均一化させることのできる溶液で先に処理されている赤血球を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ1及び3の間の温度が、+2〜+6℃、そして好ましく約4℃に維持される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記活性成分が、アスパラギナーゼ及びイノシトールヘキサホスフェートから選ばれる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
急性のリンパ芽球性白血病及びリンパ腫に対して患者を治療することを目的とするアスパラギナーゼを組み込んでいる赤血球を作製するため、または放射線療法に関連する低酸素性腫瘍を治療することを目的とするイノシトールヘキサホスフェートを組み込んでいる赤血球を作製するため、またはドレパノサイトーシスまたは他の低酸素状態を治療するための、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
浸透圧抵抗が、ステップ(1)において得られた懸濁液のサンプルについて測定される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の、活性成分を含む赤血球を調製するための方法を実施するために使用可能な溶解装置であって、該装置は、冷却手段を備えたモジュール(1)、透析カートリッジ(5)を含む滅菌された取り外し可能な使い捨てアセンブリー(2〜12)であって、該モジュール(1)中に置かれることができるように構成された前記アセンブリーを含み、ここで、前記カートリッジ(5)は、1つの側で溶解溶液の入り口に、そして他の側で赤血球懸濁液の入り口に接続されることができ、ここで、上記モジュール(1)が、温度を+1〜+8℃に制御するための手段、及び処理されるべき赤血球の浸透圧抵抗にしたがって上記溶解カートリッジ中の前記赤血球懸濁液の流速を調節するため及び/または前記溶解溶液のモル浸透圧濃度を調節するための手段を備えていることを特徴とする、前記装置。
【請求項17】
前記取り外し可能なアセンブリーが、前記赤血球懸濁液を入れることのできる袋(2)及び該袋を前記透析カートリッジ(5)に接続するチューブ(4)を含み、そして前記モジュール(1)が、該チューブ(4)と協同しかつ前記赤血球懸濁液を前記袋(2)から前記カートリッジ(5)に向かいそして通過して循環させることのできるポンプ(P2)を含み、該ポンプ(P2)は場合により流速を調節するための前記手段に接続されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記袋(2)が、その2つの末端において該袋に接続しているループ型のチューブ(3)を備え、そして、前記モジュール(1)が、該チューブ(3)と協同しかつ前記袋の内容物の該袋へ及び該袋からの循環を起こすことのできるポンプ(P1)を含む、請求項16または17に記載の装置。
【請求項19】
前記活性成分を注入するためのチューブが、前記袋(2)を前記透析カートリッジ(5)の「血液」入り口に接続する前記チューブ(4)に接続され、前記カートリッジ(5)がチューブ(8)によって、溶解溶液を含むことのできるフラスコ(7)に接続され、そして、前記モジュール(1)が、該フラスコ(7)及び前記溶解溶液を前記透析カートリッジへ向かってそして該カートリッジを通過して循環させるために前記チューブ(8)と協同することのできるポンプ(P3)のための受容手段を含み;そして前記透析カートリッジの「血液」出口が、上記モジュールの外部に開口しているかまたは開口されることのできるチューブ(6)に接続されている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記チューブ(6)が、前記溶解から排出された赤血球懸濁液並びに再シーリング溶液を集めることのできる第二の袋(12)に接続され、該袋(12)が、その中の温度を+30〜+40℃、好ましくは+35℃〜+38℃に制御することのできる手段を備えた第二のモジュール(11)中に配置されている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
オペレーターによりインプットされる指示にしたがって、または該オペレーターによってインプットされたデータにしたがって、浸透圧抵抗に関して、前記溶解過程及び場合により前記再シーリング過程を制御することのできる電子的手段を含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法及び装置を実施するのに好適な、フレキシブルなプラスチック材料の使い捨てアセンブリーであって、袋(2)にその2つの末端で接続しているループ型チューブ(3)を備えた前記袋(2)を含み、ここで、該袋(2)は透析カートリッジ(5)の「血液」入り口に接続されているチューブ(4)に接続され、該カートリッジの「血液」出口は第二の袋(12)に接続されたチューブ(6)に接続され、少なくとも1つの追加のチューブが前記チューブ(4)または(6)中に開口し、そして、前記透析カートリッジはさらに、溶解溶液を循環させることを目的とする2つのチューブ(8及び9)に接続され;前記チューブ(6)は好ましくは第二の袋(12)に接続され、二次的チューブが該チューブ(6)に接続される、前記アセンブリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−508920(P2008−508920A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524421(P2007−524421)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002323
【国際公開番号】WO2006/016247
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507035042)
【Fターム(参考)】