説明

活性粒子発生装置

【課題】 低濃度のオゾンと高濃度のイオンを含む気体を発生させることを目的とする。
【解決手段】 活性粒子発生電極7,8が設けられ、この電極に電圧を供給することにより起こる放電により、取り込まれた気体を活性化する活性粒子発生室5を備えた活性粒子発生装置において、上記活性粒子発生電極に供給する電圧を間欠的にするパルス発生器23を備え、上記パルス発生器のパルス周波数を制御して、イオン発生量をほぼ一定に保ちながらオゾン発生量を変化させるようにした。また、上記パルス発生器のパルス周波数を制御して、0.1ppm以下のオゾンと少なくとも104個/cm3のイオンを含む気体を発生させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンやオゾン等の活性粒子を利用して、食品、調理用品、その他摂取時に必要なもの等の食に関連するものや、公衆衛生上、微生物の繁殖防止を要する物体表面及びそれらの物体を収納する空間に存在する微生物の増殖を防止する微生物繁殖防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図14は例えば特開平7−115946号公報に示された従来の微生物繁殖防止装置を示す構成図であり、図において1は外部の気体、2は気体1を取り込むファン(送風機)、3はファン2により取り込まれた気体1が通気する通気路、4は気体1を取り込む供給口、5は通気路3内に設置され、取り込まれた気体1に対して電子を電離することによりその気体1をイオン化する電離室、6は絶縁材料からなるブッシング、7はタングステン、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属材料からなる金属針電極、8は金属針電極7と対向して配置された金属平板接地電極、9は金属平板接地電極8上に蒸着または密着により取り付けられたセラミック、ガラス、石英等の誘電材料からなる平板状の誘電体、10は電離室5でイオン化された、オゾンを含むイオン化された気体、11は通気路3内に設置され、電離室5でオゾンを含むイオン化された気体10に含まれるオゾンを分解し、そのオゾンを含むイオン化された気体10からオゾンを除去するオゾン分解室であり、二酸化マンガン、活性アルミナ等のオゾン分解触媒が充填されている。12はオゾン分解室11を通気路3から電気的に絶縁する絶縁体、13はオゾンを含まないイオン化された気体、14は微生物が繁殖する物体、15は微生物が繁殖する物体14を収納する空間を有し、オゾン分解室11でオゾンが除去されたオゾンを含まないイオン化された気体13が供給されるイオン処理室、16は高圧発生器、17はオゾンを含まないイオン化された気体13をイオン処理室15に供給するガス入口、18はイオン処理室15の外に使用済みのオゾンを含まないイオン化された気体13を放出するためのガス出口である。
【0003】
次に動作について説明する。
まず、ファン2が外部の気体1を供給口4から取り込み、通気路3を経て電離室5内に導く。
この電離室5内には、複数の金属針電極7と、この金属針電極7と対向して配置された誘電体9に密着して取り付けられた金属平板接地電極8とが両電極7,8間の間隔(ギャップ長)を数mmとして配設されており、両電極7,8間に数kVの交流高電圧を印加すると、金属針電極7の先端近傍に、高い電界がかかり、コロナ放電と呼ばれる放電が起こる。
そして、気体1が放電中の電離室5内に導かれると、気体1に含まれる酸素分子等と電子が衝突して酸素分子等がイオン化し、気体1にイオンが含まれることになる。
【0004】
しかしながら、外部の気体1には酸素分子が含まれているため、コロナ放電によりイオンが発生すると同時にオゾンも発生する。因みに、このオゾンは酸化力が強いためオゾン濃度が高くなると有害である。
そこで、オゾンを含むイオン化された気体10が流れる通気路3内の下流側に通気路3から電気的に絶縁してオゾン分解室11にオゾン分解触媒を配置し、このオゾン分解触媒によりオゾンを含むイオン化された気体10からオゾンを除去し、オゾンを含まないイオン化された気体13を作り出している。
【0005】
このようにして、作り出したオゾンを含まないイオン化された気体13を微生物が繁殖する物体14を収納する空間を有するイオン処理室15に供給して、物体14に付着した微生物の繁殖を抑える。
【0006】
【特許文献1】特開平7−115946号公報(段落[0066]、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の微生物繁殖防止装置は以上のように構成されており、この装置で発生させたイオンは微生物の増殖を抑制する効果を有している。しかしながら、イオンの発生量には限界があり、また気体中のイオン濃度を高くするほど、イオンの自己分解量が増加するため、物体に付着した微生物に高濃度のイオンを十分に供給できないという問題点があった。また、イオン単独では、イオン処理を停止すると、微生物が増殖を再び開始するなど十分な微生物増殖抑制効果が得られないという問題点があった。
一方、オゾンを用いて微生物の増殖を抑制する場合、0.1ppm以上のオゾン濃度で処理することが必要であるが、0.1ppm以上の濃度域では、オゾンが有する高酸化力のために、例えば食品によっては変色・変質したり、機材が腐食するなどの問題点があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解消するために鋭意研究の結果、微生物の増殖を抑制するイオンを含んだ気体中に、低濃度に制御されたオゾンを含ませ、オゾンとイオンの相乗効果により、微生物の増殖防止能力を高めることができることを見出しなされたものである。
【0009】
本発明の目的は、イオンを高濃度に発生させることができ、しかもオゾンの発生量を抑制してオゾンを低濃度に制御することができる微生物の増殖防止能力の高い微生物繁殖防止装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の活性粒子発生装置は、活性粒子発生電極が設けられ、上記電極間に直流電圧を印加することにより起こる放電により、取り込まれた酸素を含む気体をイオン化およびオゾン化する活性粒子発生室と、上記活性粒子発生電極に供給する直流電圧を間欠的にするパルス発生器と、上記活性粒子発生室に上記気体を取り込むためのファンとを備えたものである。
【0011】
本発明の活性粒子発生装置は、活性粒子発生室に配置された活性粒子発生電極間に直流パルス電圧を印加することにより起こる放電により、上記活性粒子発生室にファンにより供給された酸素を含む気体をイオン化およびオゾン化する活性粒子発生方法であって、上記気体の流速を一定に保ちながら上記直流パルス電圧のパルス周波数を制御して、イオン発生量をほぼ一定に保ちながらオゾン発生量を制御するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、活性粒子発生電極に供給する電圧を間欠的にするパルス発生器を備え、上記パルス発生器のパルス周波数を制御して、イオン発生量をほぼ一定に保ちながらオゾン発生量を変化させるようにしたので、オゾン濃度を低濃度域に保ちながら、イオン濃度を高めることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態を図について説明する。
図1は本発明の実施の形態1による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。図において、1は外部の気体、2は気体1を取り込むファン、3はファン2により取り込まれた気体1が通気する通気路、4は気体1を取り込む供給口、5は通気路3内に設置され、下記の活性粒子発生電極間に高電圧を印加することにより起こる放電により取り込まれた気体1をイオン化するとともにオゾン化する活性粒子発生室で、この場合は電離室、6は絶縁材料からなるブッシング、7,8は活性粒子発生電極で、この場合はタングステン、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属材料からなる金属針電極7と、金属針電極7と対向して配置された金属平板接地電極、10は電離室5でイオン化された、オゾンを含むイオン化された気体(イオン化気体と記す)、14は微生物が繁殖する物体、21は金属針電極7の近傍で放電を起こすための高電圧の源となる電力を供給する入力電源、22は入力電源21から供給された一次電圧を変換および昇圧する昇圧変換器、23は昇圧変換器22で昇圧された高電圧をパルス化するパルス変換器である。なお、本実施の形態では、入力電源21は交流100Vとし、昇圧変換器22により、入力された交流100Vは負極性の直流高電圧として出力されるケースについて説明する。
【0014】
次に動作について説明する。
まず、ファン2が外部の気体1を供給口4から取り込み、通気路3を介して電離室5内に導く。
この電離室5内には、複数の金属針電極7と、この金属針電極7と対向して配置された金属平板接地電極8とが、金属針電極7と金属平板接地電極8との間隔(ギャップ長)を数mmに保持して設けられている。ここで、昇圧変換器22によって作られ、パルス変換器23によってパルス化された数kVの負極性直流パルス高電圧を金属針電極7に印加すると、金属針電極7の先端近傍に、高い電界がかかり、コロナ放電が起こる。
【0015】
そして、この放電中の電離室5内に酸素分子を含有している気体1が導かれると、気体1に含まれる酸素分子等と電子が付着することにより、酸素分子等が負イオン化するとともに、酸素分子が電子と衝突解離することにより、オゾンが生成されて、オゾンと負イオンの双方が含まれたオゾンを含むイオン化気体10が発生することになる。
【0016】
加えて、本実施の形態では、パルス変換器23により金属針電極7に印加される負極性直流パルス高電圧のパルス周波数を制御しているので、放電時に流れる電流が低減され、オゾンの生成量が抑制される。
なお、オゾンは酸化力が強くオゾン濃度が高くなると、人体に有害であるとともに、構成物体の材料を腐食する虞れがあるため、イオン化気体10中のオゾン濃度は安全であるとされている作業基準値の0.1ppm以下になるように制御する必要がある。また、このようなオゾンを含んだ気体を食品保存などに適用する場合、実験によれば、オゾン濃度が0.05ppmを越えると、食品そのものを変質・変色させてしまうことがわかり、オゾンを含んだ気体を使用する際には、オゾン濃度は0.05ppm以下にしなければならないことが明らかになった。
【0017】
そのため、本実施の形態では上記のようにしてオゾンの生成量を抑制し、低濃度(0.05ppm以下)のオゾンを含んだイオン化気体10を生成し、これを微生物が繁殖している物体14に供給している。通常の場合は、空気を供給気体1としているので、低濃度のオゾンを含んだイオン化空気10が供給される。
また、このときのイオン化空気10中のイオン濃度は、微生物が繁殖している物体14の状態にもよるが、実験によれば、空気中に通常存在するイオン濃度(数10〜100個/cm3 程度)の数百倍程度にする必要があり、この濃度域に達すると増殖を防止される微生物(細菌類)が現れてくる。しかし、好ましくはその1000倍以上のイオン濃度、すなわち104個/cm3以上にするのが、様々な微生物の増殖を防止するのに有効である。従って、104個/cm3以上の高濃度のイオンを含むイオン化気体を供給するようにしている。
以上のように、微生物が繁殖(付着)した物体14表面に対してイオンおよびオゾンが継続して供給されることになるので、イオンとオゾンの相乗効果により、どちらか一方では微生物の繁殖を抑制できない濃度域でも、微生物の増殖を抑えられることになる。
【0018】
ここで、放電時に流れる電流を制御することにより、イオン化気体10中のオゾン濃度を低濃度に維持しながら、負イオンのみを大量に発生できることを実証するために実施した一実験例について説明する。
図2は印加電圧のパルス周波数と負イオンおよびオゾン発生量との関係を示した特性図である。実線の特性曲線はパルス周波数と負イオン発生量との関係を、破線の特性曲線はパルス周波数とオゾン発生量との関係を示している。この実験例は、長さ1cmの金属針電極7を5mm間隔で5本配置し、この金属針電極7と、幅1cm、長さ3cmの金属平板接地電極8のギャップ長を10mm、金属針電極7に印加される負極性直流パルス高電圧のゼロピーク電圧を8kV、両電極間を通過する空気の風速を約1m/sとし、供給する空気の温度を20℃、湿度を60%として測定したものである。
【0019】
この図2からわかるように、パルス周波数が増加するにつれて、オゾン発生量は一次関数的に増加するが、負イオン発生量はほぼ一定となることが確認された。
例えば、パルス周波数を500Hzとした場合、ガス流量50L/minの空気中のオゾン濃度を0.03ppmに維持しながら、負イオン濃度を3×106 個/cm3 にすることができる。
このように、パルス周波数を制御することにより、オゾン濃度を低濃度域に保ちながら、負イオン濃度を高められることが分かる。
【0020】
なお、上記実験例では金属針電極7の針の本数を金属平板接地電極8の面積3cm2 当たり5本としたが、さらに本数を増加させれば負イオンの発生量を増加させることは可能である。しかし、同時にオゾンの発生量も増加するため、パルス周波数を低下させる必要がある。
【0021】
また、上記実験例では、直流パルス高電圧のゼロピーク電圧を8kVとし、ギャップ長を10mmとしたが、ある程度の範囲(コロナ放電領域)内であれば、印加電圧をさらに高めたり、または、ギャップ長をさらに短くすることにより、負イオンの発生量を増加させることができる。しかし、この際同時にオゾン発生量も増加するので、パルス周波数を低下させる必要がある。さらに、上記領域を越えて印加電圧をさらに高めたり、または、ギャップ長をさらに短くすることは短絡を生じさせ、非常に危険である。
【0022】
また、本実験例では風速が約1m/sの空気を両電極7,8間に流したが、空気の風速を0.1〜3.0m/sの範囲において変化させた場合、負イオン発生量は風速が大きくなる程増加する。しかし、通気路3に流れる空気流量が増加するため、空気中のオゾン濃度は低下するので、パルス周波数を増加させる必要がある。
【0023】
次に、低濃度のオゾンを含んだイオン化気体10によって微生物の繁殖が抑えられることを実験例を用いて説明する。
【0024】
【表1】

【0025】
表1は微生物が繁殖する物体14として、寒天培地に人工的に植え付けたバクテリア(黄色ブドウ球菌)を保持したシャーレを用意し、負イオンとオゾンを含んだ混合ガス処理の効果を調べたものである。ここで、シャーレに供給するオゾンを含んだイオン化空気10中の負イオン濃度は約106 個/cm3 とした。この際、電離室5内の電極間に印加する電圧は約15kVとした。
なお、微生物が繁殖する物体(シャーレ)14に供給する空気1の温度は20℃、湿度は80〜90%とし、負イオン濃度約106個/cm3で、オゾン濃度 0.03ppmのオゾンを含んだイオン化空気10で3日間連続的に処理した。
比較項目として、負イオンおよびオゾンともに発生させずに20℃の空気で処理した場合、負イオン濃度約106 個/cm3 で、オゾン濃度0.002ppm以下の20℃のイオン化空気で処理した場合、およびオゾン濃度0.05ppmで、負イオン濃度約102 個/cm3 以下の20℃のオゾン化空気で処理した場合を加えた。
【0026】
実験結果は、表1に示したように、イオンおよびオゾンを発生させずに20℃の空気で処理した場合、3日後のバクテリアのコロニー数は約900個/シャーレであり、負イオン濃度約106個/cm3でオゾン濃度0.002ppm以下の20℃のイオン化空気で処理した場合、3日間の処理直後のバクテリアのコロニー数は約100個/シャーレとなり、微生物の増殖抑制効果はみられたが、イオン処理を停止すると、バクテリアのコロニー数は約700個/シャーレに達し、イオン処理では、十分な微生物増殖防止効果が得られないことがわかった。また、オゾン濃度0.05ppmで負イオン濃度約102個/cm3以下の20℃のオゾン化空気で処理した場合、3日後のバクテリアのコロニー数は約800個/シャーレとなり、オゾン処理によりバクテリアの増殖は若干抑えられるが、その効果はあまり無いことが分った。
【0027】
一方、温度20℃、負イオン濃度約106個/cm3、オゾン濃度0.03ppmのオゾンを含んだイオン化空気10で処理した場合、3日後のバクテリアのコロニー数は0個/シャーレとなり、完全に増殖が抑制される効果が得られた。
また、オゾンを含んだイオン化空気10で処理した寒天培地を、処理を止めて、そのまま室温(約20℃)に放置した場合、バクテリアの再増殖はほとんど認められなかった。
【0028】
以上のように上記実験結果によると、寒天培地に植え付けたバクテリアで、オゾンを含んだイオン化気体10の方が、イオン化気体単独あるいはオゾン単独の場合に比べて、オゾンと負イオンの相乗効果により、微生物の増殖を防止する能力を大きくできるとともに、バクテリアを死滅させることができることが認められた。
【0029】
なお、表1では、好気性の球菌である黄色ブドウ球菌を用いて、低濃度のオゾンを含んだイオン化気体の効果を示したが、他の細菌、例えば形態が違う緑膿菌、大腸菌やサルモネラ菌等の好気性の桿菌についても同様の効果が得られた。
また、胞子を形成する好気性の桿菌であるバチルス(Bacillus)属細菌等や、真菌類であるカビ等についても同様の効果が得られ、増殖を抑制することができると考えられる。
【0030】
本実験例では、オゾン濃度を約0.03ppm、負イオン濃度を約106個/cm3とした場合のオゾンを含んだイオン化空気処理についての微生物増殖抑制効果を示したが、微生物が繁殖している物体14に供給されるオゾンを含んだイオン化気体10中の負イオン濃度およびオゾン濃度は、物体14表面に存在している微生物の種類や処理方法等によって変更することが好ましい。
【0031】
なお、上記実施の形態では、オゾンと負イオンを含んだイオン化気体10を用いて処理した場合についての効果を示したが、昇圧変換器22とパルス変換器23よって正極性の直流パルス高電圧を作り出し、電離室5内の金属針電極7に正極性の直流パルス高電圧を印加して正イオンとオゾンを生成し、そのオゾンと正イオンを含んだイオン化気体10を微生物が繁殖する物体14に供給するようにしても同様の効果が得られるが、負イオンの方が正イオンに比べて微生物の繁殖を防止する効果が大きい。
【0032】
また、昇圧変換器22とパルス変換器23よって交流パルス高電圧を作り出し、電離室5内の金属針電極7に交流パルス高電圧を印加して、負イオン、正イオンおよびオゾンを生成し、そのオゾンと正および負のイオンを含んだイオン化気体10を微生物が繁殖する物体14に供給するようにしても同様の効果が得られるが、イオン化気体10中に負イオンと正イオンが同等量含まれていると、正イオンと負イオンが再結合して、イオンの消滅が早くなり、微生物の繁殖を防止する効果が小さくなる。したがって、気体10中には単極性のイオンのみを発生させるようにすることが望ましい。
【0033】
また、上記実施の形態では、処理期間中イオン濃度およびオゾン濃度を一定に維持して処理を行うものについて示したが、処理期間中、パルス周波数の値を変更するようにして、イオン濃度は高濃度に保ちながら、オゾン濃度だけを変化させて、微生物が繁殖する物体14を処理するようにしてもよい。
【0034】
さらに、また、上記実験例では電離室5において、金属針電極7と、これと対向して配置される金属平板接地電極と8を設けた場合の例を示したが、図3に示したように、電離室5には径が0.1〜0.2mm程度の複数の金属細線24と、この金属細線24と対向して配置される金属格子状接地電極25を設け、この金属細線24に負極性の直流パルス高電圧を印加させたときに起こる放電においても同様の効果があった。図3(a)は本発明の実施の形態1の微生物繁殖防止装置の変形例を示す構成図で、同図(b)は金属細線24部分を示す断面模式図である。
【0035】
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2による微生物繁殖防止装置を示す構成図であり、図において、26は入力電源21から供給される交流電圧を直流電圧に変換する整流器、27は直流電圧を蓄えるコンデンサ、28は直流電圧をパルス化するパルス発振器、29は直流パルス電圧を昇圧するパルストランスである。ここで、パルス発生器はコンデンサ27、パルス発振器28、パルストランス29で構成されている。なお、入力電源21から供給される電圧が直流電圧である場合は、整流器26は必要ない。
【0036】
次に動作について説明する。
まず、ファン2が外部の気体1を供給口4から取り込み、通気路3を介して電離室5内に導く。
この電離室5内には、複数の金属針電極7と、この金属針電極7と対向して配置された金属平板接地電極8が、金属針電極7と金属平板接地電極8との間隔(ギャップ長)を数mmに保持して設けられている。
【0037】
入力電源21から整流器26に交流電圧が供給され、そこで交流電圧が直流電圧に変換される。変換された直流電圧はコンデンサ27に蓄えられるとともに、パルス発振器28によってパルス化され、直流パルス電圧となってパルストランス29に供給される。パルストランス29で作られた直流パルス高電圧が金属針電極7に印加されると、金属針電極7の先端近傍に、高い電界がかかり、コロナ放電が起こる。
【0038】
従って、酸素分子を含有している気体1が放電中の電離室5内に導かれると、気体1に含まれる酸素分子等と電子が付着することにより、酸素分子等が負イオン化するとともに、酸素分子が電子と衝突解離することにより、オゾンが生成されて、オゾンと負イオンの双方が含まれたオゾンを含むイオン化気体10が発生することになる。
【0039】
そして、パルス発振器28により、金属針電極7に印加される負極性直流パルス高電圧のパルス周波数を制御しているので、放電時に流れる電流が低減されて、オゾンの生成量が抑制される。
なお、上述したように、オゾンは酸化力が強くオゾン濃度が高くなると有害であるため、イオン化気体10中のオゾン濃度は作業基準値の0.1ppm以下になるように制御されている。
【0040】
このようにして低濃度のオゾンを含んだイオン化気体10を生成し、これを微生物が繁殖している物体14に供給する。通常の場合は、空気を供給気体としているので、低濃度のオゾンを含んだイオン化空気10が供給される。
而して、微生物が繁殖した物体14表面に対してイオンおよびオゾンが継続して供給されることになるので、イオンとオゾンの相乗効果により、どちらか一方では微生物の繁殖を抑制できない濃度域でも、微生物の増殖を抑えられることになる。
なお、本実施の形態では、直流電圧をパルス発振器28によりパルス化した後、パルストランス29で昇圧して、直流パルス高電圧を作り出しているので、パルス発振器28に耐高電圧のものを使用する必要がなくなり、装置コストが安くなる。
【0041】
実施の形態3.
上記実施の形態2では、直流電圧をパルス発振器28によりパルス化した後、パルストランス29で昇圧して、直流パルス高電圧を作り出すものを示したが、図5の回路図で示したような電気回路を用いて、直流パルス高電圧を作り出すようにしても同様の効果が得られる。図において、30a〜30dは抵抗、31a〜31eはダイオード、32a,32bはコンデンサ、33はサイリスタ、34は昇圧トランスで、これらでパルス発生器を構成している。
【0042】
次に動作について説明する。入力電源21から供給された交流電圧をダイオード31aにより半波電圧に変換し、コンデンサ32bに充電する。コンデンサ32bに電荷が充電されると、コンデンサ32aと抵抗30bから構成されたスイッチ部により、サイリスタ33に信号が送られ、サイリスタ33に電流が流れるようになると、コンデンサ32bに蓄えられた電荷が昇圧トランス34の一次側コイルに流れる。一次側コイルに電流が流れると、二次側コイルに起電力が発生し、交流のパルス高電圧が発生する。その発生した交流パルス高電圧をダイオード31eによって半波整流し、直流パルス高電圧に変換する。
本実施例では、パルストランスを使用する必要がなく、通常のトランスを使用できるため、簡便で装置コストを低減できる。
【0043】
参考例.
上記実施の形態1では、電離室5内の金属針電極7に負極性の直流パルス高電圧を印加するようにして、放電時に流れる電流を制御することによって、オゾン濃度を低く維持しつつ、負イオン濃度をできるだけ高めたイオン化気体10を発生させる場合の例を示したが、図6の構成図に示すように、金属針電極7と対向して配置された金属平板接地電極8上に、セラミック、ガラス、石英等の誘電材料からなる平板状の誘電体9を蒸着または密着により取り付けるとともに、金属針電極7に直流高電圧を印加して、放電時に流れる電流を抑制するようにしても、オゾン濃度を低く維持しつつ、負イオン濃度をできるだけ高めたイオン化気体10を発生させることができ、同様の微生物増殖抑制効果が得られる。誘電体9は放電電流制御手段として作用する。
【0044】
ここで、この参考例における微生物繁殖防止装置で発生するオゾン量が、金属平板設置電極8に蒸着した誘電体9により低減できることを実証するために実施した他の実験例について説明する。
この実験例では、長さ1cmの金属針電極7を5mm間隔で5本配置し、この金属針電極7と、厚さ0.5mm の誘電体9を密着した幅1cm、長さ3cmの金属平板接地電極8のギャップ長を10mm、金属針電極7に印加される負極性直流高電圧のゼロピーク電圧を8kV、両電極間を通過する空気の風速を 約50cm/sとし、供給する空気の温度を20℃、湿度を60%とした。
【0045】
このような条件下でイオンを発生させて、イオン発生量を測定した結果、イオン発生量は 約1×109個/sであり、誘電体9を取り除いた場合のイオン発生量は 約3×109個/sとなり、誘電体9の有無にかかわらず、負イオンの発生量はほぼ同等になることが確認された。
【0046】
一方、放電により同時に発生するオゾンの発生量は、誘電体9が設置されていない場合、約1mg/hrであるが、誘電体9を取り付けることにより、オゾン発生量は約0.01mg/hrに低下した。
以上のように、この参考例によれば、イオン化された気体10のイオン濃度を十分高く維持しながら、オゾンを低濃度に維持できることがわかる。
また、この参考例では、パルス変換器23を使用せずに、誘電体9の厚みを変更して、オゾンの発生量を低減化するとともに、制御しているので、装置構成が簡単で、装置を簡便に安く製作することができる効果がある。
【0047】
実施の形態4.
図7は本発明の実施の形態4による微生物繁殖防止装置を示す構成図であり、図において、35は微生物が繁殖する物体14を収納する空間を有するとともに、電離室5において発生したオゾンを含むイオン化気体10が供給されるイオン供給室である。
【0048】
次に動作について説明する。
まず、ファン2がイオン供給室35内部の気体1を供給口4から取り込み、通気路3を経て電離室5内に導く。
この電離室5内には、複数の金属針電極7と、この金属針電極7と対向して配置された金属平板接地電極8が、金属針電極7と金属平板接地電極8との間隔(ギャップ長)を数mmに保持して設けられている。ここで、昇圧変換器22によって作られ、パルス変換器23によってパルス化された数kVの負極性直流パルス高電圧を金属針電極7に印加すると、金属針電極7の先端近傍に、高い電界がかかり、コロナ放電が起こる。
【0049】
従って、酸素分子を含有している気体1が放電中の電離室5内に導かれると、気体1に含まれる酸素分子等と電子が付着することにより、酸素分子等が負イオン化するとともに、酸素分子が電子と衝突解離することにより、オゾンが生成されて、オゾンと負イオンの双方が含まれたイオン化気体10が生成する。
【0050】
そして、この際、パルス変換器23により、金属針電極7に印加される負極性直流パルス高電圧のパルス周波数を制御しているので、放電時に流れる電流が低減されて、オゾンの生成量が抑制される。
なお、オゾンは酸化力が強くオゾン濃度が高くなると有害であるため、気体10中のオゾン濃度は作業基準値の0.1ppm以下になるように制御されている。
【0051】
このようにして低濃度のオゾンを含んだイオン化気体10が生成し、イオン供給室35内の空間に放出される。通常の場合は、空気を供給気体としているので、低濃度のオゾンを含んだイオン化空気10が供給される。
以上のように、微生物が繁殖した物体14表面およびその物体14を収納している空間に対してイオンおよびオゾンが継続して供給されることになるので、イオンとオゾンの相乗効果により、物体14表面にすでに存在している微生物およびイオン供給室35内の空間に浮遊し、物体14表面に落下して新たに増殖を開始する微生物の増殖を抑えられることになる。
【0052】
次に、低濃度のオゾンを含んだイオン化気体10によって、イオン供給室35内に収納された物体表面に存在する微生物の繁殖が抑えられることを実験例を用いて説明する。
【0053】
【表2】

【0054】
表2はこの実験例の実験結果を示したものであり、実験は微生物が繁殖する物体14として鮪刺身を用い、これをイオン供給室35、この場合は冷蔵庫内に温度0℃、湿度85〜95%の条件で3日間保存し、電離室5で発生したオゾンと負イオンを含んだ空気で連続的に処理したものである。
なお、電離室5内の金属針電極7に約−10kVの電圧を印加して、イオン供給室35内の負イオン濃度は約105個/cm3とし、オゾン濃度は約0.05ppmとした。
【0055】
比較項目として、負イオンおよびオゾンともに発生させずに0℃の空気で処理した場合、負イオン濃度約105個/cm3で、オゾン濃度0.002ppm以下の0℃のイオン化空気で処理した場合、およびオゾン濃度約0.2ppmで、負イオン濃度約102個/cm3以下の0℃のオゾン化空気で処理した場合を加えた。なお、鮪刺身14の表面の一般細菌のサンプリングはスタンプ法により、培地は標準寒天培地を用いた。
【0056】
実験結果は、表2に示したように、イオンおよびオゾンを発生させずに空気で処理した場合、3日後のバクテリアのコロニー数は約1600個/cm2 であり、負イオン濃度約105 個/cm3 でオゾン濃度0.002ppm以下のイオン化空気で処理した場合、3日後のバクテリアのコロニー数は約1000個/cm2 となり、バクテリアの増殖は若干抑えられるが、その効果はあまり無いことが分った。
【0057】
また、オゾン濃度約0.2ppmで負イオン濃度約102 個/cm3 以下のオゾン化空気で処理した場合、3日後のバクテリアのコロニー数は約600個/cm2 となり、バクテリアの増殖はかなり抑えられる。ところが、オゾンで処理した場合、鮪刺身の外観はオゾンの強力な酸化作用により色が赤黒く変色し、品質が著しく低下するという問題が生じた。
【0058】
一方、温度0℃、負イオン濃度約105個/cm3、オゾン濃度0.05ppmのオゾンを含んだイオン化空気10で処理した場合、3日後のバクテリアのコロニー数は約300個/cm2 シャーレとなり、増殖がかなり抑制されるという効果が得られた。また、処理3日後においても、外観の変化がみられず、また腐敗臭も感じられず、ほぼ初期の鮮度を完全に維持することができることが認められた。
【0059】
以上のように上記実験結果によると、低濃度のオゾンと高濃度の負イオンを含んだイオン化空気により、鮪刺身を高濃度のオゾン処理のように変色・変質させることなく、その表面に存在する微生物の繁殖を防止でき、初期の鮮度を維持できることがわかる。
【0060】
上記実施の形態では、処理期間中イオン濃度およびオゾン濃度を一定に維持して処理を行うものについて示したが、処理期間中、パルス周波数の値を変更するようにして、イオン濃度は高濃度に保ちながら、オゾン濃度だけを変化させて、イオンでは連続処理およびオゾンでは間欠処理を行うようにしても、低濃度のオゾンと高濃度の負イオンを含む空気10で連続処理するよりも、微生物増殖防止効果はやや低下するが、ほぼ同様の効果が得られる。
【0061】
実施の形態5.
図8は本発明の実施の形態5による微生物繁殖防止装置を示す構成図であり、図において、36は気体流制御手段で、この場合は金属針電極7と金属平板接地電極8の間の空間に気体1を強制的に流すとともに、気体流路断面を狭め両電極7,8間に流れる気体1の流速を速めるガス流方向制御板である。
【0062】
次に動作について説明する。
まず、ファン2が外部の気体1を供給口4から取り込み、通気路3を経てガス流方向制御板36に導く。
このガス流方向制御板36に導かれた気体1は、ガス流方向制御板36により流れる方向を変更され、電離室5内に設けられた複数の金属針電極7と、この金属針電極7と対向して配置された金属平板接地電極8との間の放電空間に供給される。ここで、昇圧変換器22によって作られ、パルス変換器23によってパルス化された数kVの負極性直流パルス高電圧を金属針電極7に印加すると、金属針電極7の先端近傍に、高い電界がかかり、コロナ放電が起こる。
【0063】
そして、酸素分子を含有している気体1が放電中の電離室5内に導かれると、気体1に含まれる酸素分子等と電子が付着することにより、酸素分子等が負イオン化するとともに、酸素分子が電子と衝突解離することにより、オゾンが生成されて、オゾンと負イオンの双方が含まれたイオン化気体10が生成される。
【0064】
また、この度、金属針電極7と金属平板接地電極8の両電極間に流れる気体1のガス流速と、オゾンおよび負イオンの発生量の関係を実験により調べた結果、ガス流速が早くなるほど、負イオンの発生量は増加するが、オゾンの発生量は変わらないことが確認された。
このことから、両電極7,8間に流す気体1の流速を高めることにより、オゾンの生成量を抑制しながら、気体1中に高濃度の負イオンを発生させることができるようになることが分かる。
【0065】
本実施の形態5においては、放電時に流れる電流を抑制するように構成するとともに、ガス流方向制御板36により金属針電極7と金属平板接地電極8間に流れる気体の流速を速くしているので、オゾンの発生を抑制してオゾン濃度を低濃度に維持しつつ、負イオンの発生量をより良好に増加させることができ、より高濃度の負イオンを含むイオン化気体が得られる。
このようにして生成した低濃度のオゾンおよび高濃度のイオンを含んだイオン化気体10が微生物が繁殖している物体14に供給されると、上記実施の形態と同様、イオンとオゾンの相乗効果により微生物の増殖を抑えられる。
【0066】
なお、ガス流方向制御板36の設置場所は、生成したイオンの衝突による消滅を防ぐという点から、電離室5の上流側に設けるのが望ましい。
【0067】
実施の形態6.
上記実施の形態5では、金属針電極7と金属平板接地電極8間の放電空間に、ガス流方向制御板36により気体1を流すものを示したが、図9の電離室5部分を示す模式斜視図に示したように、電離室5内において、0.1〜0.2mm程度の複数の金属細線24と、この金属細線24と対向して配置された金属格子状接地電極25を設けるとともに、この金属細線24の上流側にガス流方向制御板36を設けて、金属細線電極24近傍のみに気体1が流れるようにし、気体流路を絞って気体1の流速が速くなるようにしても同様の効果が得られる。
また、放電電極を金属細線としていることにより、金属細線近傍に気体1を流す際の圧力損失を小さくすることができ、大風量の気体をながすことができる効果がある。
【0068】
実施の形態7.
図10は本発明の実施の形態7による微生物繁殖防止装置を示す構成図であり、図において、37は一方の通気路内に設置され、ファン2により取り込まれる気体1中のオゾンを分解するためのオゾン分解装置であり、本実施の形態では二酸化マンガン、活性アルミナ等のオゾン分解触媒が用いられている。また、38は一方の通気路と他方の通気路の合流部分に設けられ、オゾン分解装置37を通過する気体1の流量と通過しない気体1の流量の比率を制御し、電離室5に取り込まれる気体中のオゾン濃度を調節するガス流量制御装置である。このオゾン分解装置とガス流量制御装置でオゾン濃度調節手段を構成している。
【0069】
次に動作について説明する。
まず、ファン2およびガス流量制御装置38により、オゾン分解装置37を通過する気体1と通過しない気体1が、ある混合比率で混合されて取り込まれ、通気路3を介して電離室5内に導かれる。
この電離室5内には、複数の金属針電極7と、この金属針電極7と対向して配置された金属平板接地電極8が、金属針電極7と金属平板接地電極8との間隔(ギャップ長)を数mmに保持して設けられている。ここで、昇圧変換器22によって作られ、パルス変換器23によってパルス化された数kVの負極性直流パルス高電圧を金属針電極7に印加されると、金属針電極7の先端近傍に、高い電界がかかり、コロナ放電が起こる。
【0070】
この放電中の電離室5内に酸素分子を含有している気体1が導かれると、気体1に含まれる酸素分子等と電子が付着することにより、酸素分子等が負イオン化するとともに、酸素分子が電子と衝突解離することにより、オゾンが生成されて、オゾンと負イオンの双方が含まれたイオン化気体10が取り出される。
【0071】
この際、オゾン分解装置37とガス流量制御装置38により、電離室5に吸入される気体1中のオゾン濃度が一定に維持されるようにしているので、電離室5ではオゾンを一定量を発生させるようにするだけで、一定濃度のオゾンを含んだイオン化気体10が微生物が繁殖している物体14に供給できる。
これにより、微生物が繁殖する物体14に供給するオゾンを含んだイオン化気体10中のオゾン濃度を制御しやすくなるとともに、高濃度に達すると有害であるオゾンを低い濃度域に維持でき、安全で効率的に微生物の増殖を防止することができる。
【0072】
実施の形態8.
上記実施の形態7では、オゾン分解装置37とガス流量制御装置38により、電離室5に吸入される気体1中のオゾン濃度が一定に維持されるものを示したが、図11の構成図に示したように、電離室5の上流側に、オゾン分解用加熱電線39を設けて、オゾン分解用加熱電線39の温度が一定になるように制御して、気体1中のオゾンが常に一定量分解されるようにして、電離室5に吸入される気体1中のオゾン濃度が一定に維持されるようにしても同様の効果が得られる。
また、部品点数を低減でき、装置の構成が簡単で、制御が容易になる。
【0073】
実施の形態9.
図12は本発明の実施の形態9による微生物繁殖防止装置を示す構成図であり、図において、40は金属針電極7に流れ込む電流値を測定する電流計、41は電流計40からの入力信号を受けて、昇圧変換器22に出力信号を送る制御装置である。
【0074】
次に動作について説明する。
まず、ファン2が外部の気体1を供給口4から取り込み、通気路3を介して電離室5内に導く。
この電離室5内には、複数の金属針電極7と、この金属針電極7と対向して配置された金属平板接地電極8が、金属針電極7と金属平板接地電極8との間隔(ギャップ長)を数mmに保持して設けられている。ここで、昇圧変換器22によって作られ、パルス変換器23によってパルス化された数kVの負極性直流パルス高電圧を金属針電極7に印加すると、金属針電極7の先端近傍に、高い電界がかかり、コロナ放電が起こり、低濃度のオゾンと負イオンが含まれたイオン化気体10が生成される。
【0075】
なお、この実施の形態では、この際に、電流計40により金属針電極7に流れ込む電流値を計測している。そして、電流値が増加傾向にあることが認識されると、電流計40から制御装置41に信号が送られ、制御装置41から昇圧変換器22に信号が送られて、金属針電極7に印加される電圧が低減され、放電時に流れる放電電流が増加して、オゾンの生成量が増加するのを防止できるようにしている。
【0076】
また、電流計40で電流の増減を絶えず測定することは電極の汚れ具合をモニタリングすることになるので、金属針電極7のメンテナンス時期を容易に知ることができるようになる。
さらにまた、異常電流が流れた場合は、金属針電極7に高電圧を印加することを停止でき、火災などが発生するのを未然に防止することができる。
これにより、微生物が繁殖する物体14に供給するオゾンを含んだイオン化気体10中のオゾン濃度を制御しやすくなるとともに、高濃度に達すると有害であるオゾンを低い濃度域に維持でき、安全で効率的に微生物の増殖を防止することができる。
【0077】
実施の形態10.
上記実施の形態9では、電流計40により、金属針電極7に流れ込む電流値を計測し、制御装置41を介して電流計40から昇圧変換器22に信号を送り、金属針電極7に印加される電圧が低減させるようにして、気体1中のオゾン濃度が一定に維持されるものを示したが、図13の構成図で示したように、金属平板接地電極8とアースとの間に、電流計40を設けて、両電極7,8間に流れる放電電流を測定するようにしても同様の効果が得られる。
また、電流計40を高電圧が印加されていない部分に設置しているので、電流計40の仕様を高電圧仕様にする必要がなく、装置コストを低減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るパルス周波数と負イオンおよびオゾンの発生量との関係を示す特性図である。
【図3】本発明の実施の形態1による微生物繁殖防止装置の変形例を示す構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る微生物繁殖防止装置のパルス発生器の構成を示す回路図である。
【図6】本発明の参考例による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【図7】本発明の実施の形態4による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【図8】本発明の実施の形態5による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態6による微生物繁殖防止装置の電離室部分を示す模式斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態7による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【図11】本発明の実施の形態8による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【図12】本発明の実施の形態9による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【図13】本発明の実施の形態10による微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【図14】従来の微生物繁殖防止装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0079】
1 気体、2 ファン、3 通気路、4 供給口、5 電離室、7 金属針電極、8 金属平板接地電極、9 誘電体、10 オゾンを含むイオン化気体、 14 物体、21 入力電源、22 昇圧変換器、23 パルス変換器、24 金属細線電極、25 金属格子状接地電極、26 整流器、27 コンデンサ、28 パルス発振器、29 パルストランス、30a〜30d 抵抗、31a〜31d ダイオード、32a,32b コンデンサ、33 サイリスタ、34 トランス、35 イオン供給室、36 ガス流方向制御板、37 オゾン分解装置、38 ガス流量制御装置、39 オゾン分解用加熱電線、40 電流計、 41 制御装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性粒子発生電極が設けられ、上記電極間に直流電圧を印加することにより起こる放電により、取り込まれた酸素を含む気体をイオン化およびオゾン化する活性粒子発生室と、上記活性粒子発生電極に供給する直流電圧を間欠的にするパルス発生器と、上記活性粒子発生室に上記気体を取り込むためのファンとを備えたことを特徴とする活性粒子発生装置。
【請求項2】
活性粒子発生電極間に印加する直流電圧は、負極性であることを特徴とする請求項1記載の活性粒子発生装置。
【請求項3】
パルス発生器は、パルス発振器及びコンデンサ、パルストランスとから構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の活性粒子発生装置。
【請求項4】
活性粒子発生電極は、金属針電極とこれと対向して配置された金属平板接地電極から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の活性粒子発生装置。
【請求項5】
活性粒子発生電極は、金属細線とこれと対向して配置された金属格子状接地電極から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の活性粒子発生装置。
【請求項6】
活性粒子発生室の上流側に、気体を活性粒子発生電極の放電電極近傍あるいは電極間空隙に導くとともに上記気体の流速を調節する気体流制御手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の活性粒子発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−864(P2007−864A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158734(P2006−158734)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【分割の表示】特願2000−203523(P2000−203523)の分割
【原出願日】平成7年10月24日(1995.10.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】