説明

流れ分配弁

流体の流れを分配するための、固定子(11)と回転子(12)を備えている回転弁(10)が提供されている。更に、その様な回転弁と、その弁に接続されている3つの異なる構成要素又は構成要素群を備えたクロマトグラフィーシステムが提供されている。本発明によるこの回転弁を使えば、3つの構成要素又は構成要素群の内の1つを通る流れの方向は、一定に保たれ、他の2つの構成要素又は構成要素群を通る流れの方向は、変えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁に、より具体的には、液体クロマトグラフィーシステムの様な流れ分配器具内で流体の流れの方向を決めるのに使用される回転弁に関する。
【背景技術】
【0002】
弁は、流体の輸送を伴う装置で広く使用されている。通常は、流体を多数の可能な流路の内の1つに向かわせるために使用される。例えば、研究室で使われる液体クロマトグラフィーシステムの分野では、流路の内径が通常は0.25−2mmであるが、流体を方向決めするのに、しばしば2方向ソレノイド弁が用いられている。その様な弁の一例は、日本の名古屋市のTAKASAGO Electrical社から市販されているMTVシリーズの弁である。
【0003】
ソレノイド弁は、流体圧が比較的高い(例えば、約0.5MPaを超える圧力)用途に用いられる場合は、自ずと限界がある。
更に、それらは、多重流路弁、即ち、同時に使用される2つ以上の入口/出口を備えた弁としては、あまり適していない。
【0004】
その様な用途には、回転弁を使用することが当該技術では広く知られている。一般的に、回転弁は、ここでは固定子と呼ばれる静止した本体を有しており、同固定子は、ここでは回転子と呼ばれる回転する本体と協働する。
【0005】
固定子には、数多くの入口及び出口ポートが設けられている。ポートは、穴を介して、内側固定子面上の対応するオリフィスのセットと流体連通している。内側固定子面は、回転子の内側回転子面と流体密封接触している固定子の内側面である。回転子は、通常、円盤として形成されており、内側回転子面は内側固定子面に押し付けられて、回転的に協働している。内側回転子面には、1つ又は複数の溝が設けられており、同溝は、固定子に対する回転子の回転位置に依って異なるオリフィスと相互接続している。
【0006】
回転弁は、高圧(例えば、30Mpaを超える圧力)に耐えるように設計することができる。それらは、ステンレス鋼、高性能高分子材料、及びセラミックの様な或る範囲の材料で作ることができる。
【0007】
入口/出口の数、並びに回転子又は固定子の溝の設計は、意図する特定の弁の用途を反映している。
一般的な型式の多目的弁は、1つの入口ポート(通常、弁の回転軸に配置されている)と、入口ポートの周りに等距離に配置されている多数の出口ポートとを有している。回転子は、一端が回転中心にある1つの半径方向に伸張する溝を有しているので、常に入口に接続されており、他方の端部は、固定子に対する回転子の角度位置に依って、出口の何れか1つと接続されている。その様な弁は、流れを、入口から一度に1つの何れかの出口へ送るのに有用である。
【0008】
もっと複雑な配置も可能である。例えば、2つ以上の流体が弁を通過できるようにするか、又は流れが、同じ弁を2回以上通過できるようにすることも有用である。この種の様々な状況を解決する弁が設計されてきた。
【0009】
その様な弁の一例は、2重ランダムアクセス3方向回転弁であり、それについては、Nicholsに発行された米国特許第6,672,336号に記載されている。この弁は、第1の流体を出口「A」又は出口「B」の何れかに送り、第2の流体を出口「C」又は出口「D」の何れかに送れるようにするという懸案を、単一の弁で、第1流体の方向を第2流体の方向と無関係にすることができるようにして、解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,672,336号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
流れ分配システムに関して解決しなければならない別の状況は、流れを、3つの構成要素を介して、図1と図2に示すように、交番で送らなければならない場合である。
第1構成要素、第2構成要素、及び第3構成要素は、センサー、クロマトグラフィーカラム、他の弁などの様な、流れを案内する何れかの構成要素(又は一組の構成要素)を示している。
【0012】
各構成要素を通過する流れの方向が、さほど重要で無い場合(又は実際に切り替えが予定されている場合)、この状況は、図3と図4に概略的に示されている従来型の4方向二重経路弁を使って簡単に解決される。
【0013】
しかしながら、図3と図4の解決法では、構成要素の内の1つ、即ち、図面の第2構成要素を通過する流れの方向を変えてはならない場合には、役に立たない。その状況が、図5(図1と同様)と図6に概略的に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
流れの方向が重要である構成要素、即ち、流れ方向に依って異なる特性又は流体への異なる影響を有する構成要素の(液体クロマトグラフィーの分野から取った)例は、非対称形の内側チャンバ、クロマトグラフィーカラム、ボール弁などを備えたセンサーである。
【0015】
従って、第1位置では、流れを、供給源から、第1構成要素、第2構成要素、第3構成要素を通して、出口へ送り、
第2位置では、流れを、供給源から、第3構成要素、第2構成要素、第1構成要素を通して、出口へ送り、
そのときに、流れが、前記第1位置と第2位置の両方で、同じ流れの方向で第2構成要素を通過できるような、単一の弁が必要とされている。
【0016】
この必要性は、本出願の請求項1に記載の流れ分配弁で解決される。
更に、本発明の第2の態様に従って、請求項4に記載のクロマトグラフィーシステムが説明されており、前記クロマトグラフィーシステムは、請求項1に記載の弁を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】3つの構成要素を第1モードで通過する流れの概略図である。
【図2】3つの構成要素を第2モードで通過する流れの概略図である。
【図3】3つの構成要素を従来型の弁を使用して第1モードで通過する流れの概略図である。
【図4】3つの構成要素を従来型の弁を使用して第2モードで通過する流れの概略図である。
【図5】3つの構成要素を第1モードで通過する流れの概略図である。
【図6】3つの構成要素を第2モードで通過する流れの概略図である。
【図7】回転弁の概略側面図である。
【図8】本発明の1つの実施形態による弁への/弁からの入口/出口の概略図である。
【図9】図8に示されている固定子の概略前面図である。
【図10】図8と図9に示されている固定子の内側固定子面のオリフィスの角度分布を概略的に示している。
【図11】図8の固定子の、内側固定子面を示す概略図である。
【図12】図8−11に示す固定子の、隠れているオリフィスとチャネルを示す斜視図である。
【図13】図11に示す内側固定子面の、これも溝端部の位置を示す概略図である。
【図14】本発明の1つの実施形態による回転子の内側回転子面の概略図である。前記回転子は、図8−13に示す固定子と協働するように作られている。
【図15】図14に示す回転子の溝の角度分布を概略的に示している。
【図16】図8−15に示されている本発明の実施形態による弁の第1回転子位置の斜視図である。
【図17】図16に示されている弁の回転子位置の概略前面図である。
【図18】図8−15に示されている本発明の実施形態による弁の第2回転子位置の斜視図である。
【図19】図18に示されている弁の回転子位置の概略前面図である。
【図20】本発明による弁を第1作動モードで使用しているクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図21】本発明による弁を第2作動モードで使用しているクロマトグラフィーシステムの概略図である。
【図22】本発明による弁を使用している、拡張型クロマトグラフィーシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
代表的な回転弁の主要部品を、図7に概略的に示している(ブラケット又は同様の荷重担持又は締結要素は図示せず)。回転弁10は、固定子11と、回転子12と、自体の角度位置を認識するための手段(図示せず)を随意的に設けることができる回転軸13と、通常はギアボックスとモーター(弁を手動で作動させることもできるが)を備えている駆動ユニット14と、を有している。回転子は、固定子に対して、弁の回転軸RA周りに回転させることができる。
【0019】
固定子11は、組み込まれている器具に固定されているが、この固定子11には、流体源、及び弁が協働することになるあらゆる構成要素と流体連通するためのポート(図7には図示せず)が設けられている。ポートは、適切であれば、固定子のどの部分にでも、どの方向にでも、配置することができる。ポートには、毛管又は配管に接続する手段が設けられている。その様な手段は、当業者には周知の従来型Valco継手の様な、どの様な適した型式であってもよい。ポートは、内側固定子面11a、即ち、作動中に回転子12と接触している固定子表面の対応するオリフィスのセットと、チャネルを介して流体連通している。
【0020】
回転子12は、通常、円盤として形成されており、作動中に、内側固定子面11aに押し付けられる面である内側回転子面12aを有している。内側回転子面12aには、1つ又は複数の溝が設けられており、同溝は、固定子11に対する回転子12の回転位置に依り、内側固定子面11aの異なるオリフィスと相互接続する。
【0021】
図8は、本発明の1つの実施形態による流れ分配弁の固定子11の簡単な斜視図を示しており、弁の入口及び出口ポートの配置を図解している。ポートの使用について説明する場合、ここでは「上」及び「下」という用語を用いている。これらの用語は、図面に言及しているだけであって、弁の機能は、それがどのように回されるか又は配置されるかに左右されない。しかしながら、ポートの相互位置(又は、より正確には、ポートを回転子と接続するオリフィスの相互位置)は重要である。而して、本発明の1つの実施形態による固定子11は、弁を全ての所望の周辺構成要素に接続するのに用いられる8個の外側ポート、即ち、第1ポート21a、第2ポート22a、第3ポート23a、第4ポート24a、第5ポート25a、第6ポート26a、第7ポート27a、及び第8ポート28aを有している。
【0022】
ここで、「構成要素」という用語は、クロマトグラフィーカラムの様な単一の装置、又は、多数のインライン弁とモニターの様な相互接続された一組の装置、又は、単に一片の相互接続配管を指す場合もあることに留意頂きたい。
【0023】
図9は、図8に示されている実施形態による固定子11の前面図であり、どの様に弁が周辺構成要素に接続されているかを定義している。流体は、ポンプの様な供給源から、第2ポート22aへ入る。第1構成要素は、弁、モニターセル、保持毛管ループ、又は入口及び出口を有する他の有用な何らかの構成要素でもよく、第1ポート21aと第6ポート26aを介して弁に接続されている。
【0024】
同様に、第3構成要素は、第3ポート23aと第8ポート28aを介して弁に接続されている。第5ポート25aは、第2構成要素の入口に接続されており、第7ポート27aは、第2構成要素から出てくる流れを受け入れる。最後に、第4ポート24aは、流体が(更に別の構成要素、容器へ、又は廃棄口に向けて)弁を出る出口ポートである。
【0025】
第1構成要素と関係付けられている両ポートは、弁の回転子位置に依って、相互に入口/出口としての役割を果たすことに留意頂きたい。同じことは、第3構成要素と関係付けられているポートにも当てはまるが、第5ポート25aは、常に、第2構成要素への出口ポートであり、第7ポート27aは、常に、第2構成要素からの入口ポートである。各ポートは、チャネルを介して、内側固定子面11aに接続されていることにも留意頂きたい。各ポートは、オリフィスに接続されていて、即ち、第1オリフィス21bは第1ポート21aに接続されており、第2オリフィス22bは第2ポート22aに接続されており、第3オリフィス23bは第3ポート23aに接続されており、第4オリフィス24bは第4ポート24aに接続されており、第5オリフィス25bは第5ポート25aに接続されており、第6オリフィス26bは第6ポート26aに接続されており、第7オリフィス27bは第7ポート27aに接続されており、第8オリフィス28bは第8ポート28aに接続されている。図面でははっきりしないが、内側固定子面のチャネルとそのオリフィスは、直径が、通常は、ポート自体より小さい。
【0026】
内側固定子面11aに面して、オリフィスの全体角度分布を図10に示している(明確にするため、この図では固定子溝を省略しているが、図13を参照しながら後で説明する)。本発明のこの実施形態のオリフィスの位置については、2つのグループに分けて説明することができ、上方のグループは、第1、第2、第3、及び第4オリフィス21b−24bを備えており、下方のグループは、第5、第6、第7、及び第8オリフィス25b−28bを備えている。上方のオリフィス21b−24b(ポート21a−24aに対応している)それぞれは、角度αだけ均等に離れており、下方のオリフィス25b−28bそれぞれ(ポート25a−28aに対応している)も同様である。上方と下方のオリフィスのグループ21b−24bと25b−28bは、それぞれ、横と横が、同じ角度βだけ離れている。或る好適な実施形態では、角度αは30°であり、角度βは90°である。しかしながら、α=36°で、β=72°の様な他の角度であってもよい。勿論、全てのオリフィスは、弁の回転軸まで基本的に同じ半径距離Rで配置されている。
【0027】
所望の弁機能を得るために、内側固定子面11aには、オリフィスに加えて、第1固定子溝31と第2固定子溝32が設けられており、前記溝は、図11に示している様に、互いに基本的に平行である(図10には示さず)。第1固定子溝31の一端は、第4オリフィス24bに繋がっており、即ち、第1構成要素の一端と流体連通しており、一方、第2固定子溝32の一端は、第5オリフィス25bに繋がっており、即ち、第3構成要素の一端と流体連通していることに留意頂きたい。
【0028】
この配置は、固定子を前面から見た図12にも示されており、オリフィスと溝は破線で示されている。
各固定子溝31、32は、通常は、オリフィス直径と同じ幅であり、図13に示している様に、最も近いオリフィスからの角度αの角度区画線に対応し、一組のオリフィスに関する弁の回転軸までの同じ半径距離Rの位置で、終結している。
【0029】
図8−13に関連して先に説明した固定子と協働するように作られている回転子の実施形態の内側回転子面12aを、図14に示している。それには、第1回転子溝41、第2回転子溝42、第3回転子溝43、及び第4回転子溝44が設けられている。第1及び第2回転子溝41、42を上方回転子溝とし、第3及び第4回転子溝43、44を下方回転子溝とする。回転子溝41−44は、互いに同じ大きさと形状であるのが望ましく、図15に示されている様に、固定子11のオリフィスに対応するように角度的に分布されていて、即ち、2つの上方回転子溝41、42の最も接近している端部同士は、角度αだけ離れており、2つの下方回転子溝43、44の最も接近している端部同士は、角度αだけ離れており、上方回転子溝セットと下方回転子溝セットは、両方向で角度βだけ離れている。各回転子溝(41−44)は、固定子の2つの隣接するオリフィスを分割する角度αに亘って伸張している。同時に、内側回転子面12aの回転子溝41−44の全ての端部は、内側固定子面11aのオリフィスと同じく、回転の中心から基本的に同じ半径距離Rに配置されている。
【0030】
組み立てられると、内側回転子面12aは、従来のどの回転弁にとっても一般的なやり方(当業者には周知であり、ここでは説明しない)で、内側固定子面11aに押し付けられる。本発明の弁固定子に対する回転子の位置は、図16−19に示している様な、2つの作動回転子位置が考えられる。
【0031】
第1回転子位置では、図16と図17に示している様に、流体は、通常はポンプから、第2ポート22aに入る。流れは、第1回転子溝41を通り、第1ポート21aを出て第1構成要素へ流れ、第1構成要素から第6ポート26aを介して戻ってくる。流体は、そこから、第3回転子溝43を通り、第5ポート25を出て第2構成要素に入る。流体は、第2構成要素から、弁の第7ポート27aに戻り、第4回転子溝44を通り、第8ポート28aを出て第3構成要素へ流れる。流体は、第3構成要素から、弁の第3ポート23aに戻り、第2回転子溝42を通り、第4ポート24aを介して弁を出る。
【0032】
上では説明していないが、ポート21a−28aの何れか1つを通る流体は、勿論、内側固定子面の対応するオリフィス21b−28bも通ることに留意頂きたい。この回転子位置では、内側固定子面11aの固定子溝31と32は、第4及び第5のそれぞれのオリフィス24b及び25bに繋がっている部分以外は、使用されていないことにも留意頂きたい。この様に、これらは、下に説明する様に、第2回転子位置では濯ぐことのできる袋小路を形成している。
【0033】
図18と図19に示されている第2回転子位置は、図示の実施形態では、回転子12を、第1位置から、固定子11に対して反時計回り(固定子の前方から見て)に角度αだけ回転させることにより得られる。
【0034】
第2回転子位置では、流体は、第1回転子位置の場合と同じように第2ポート22aに入る。流れは、第2回転子溝42を通り、第3ポート23aを出て第3構成要素に流れ、第3構成要素から第7ポート27aを介して戻ってくる。流体は、第4回転子溝44を通り、第2固定子溝32を介して(同溝が濯がれ)、第5ポート25aを出て第2構成要素に入る。流体は、第2構成要素から、弁の第7ポート27aに戻り、第3回転子溝43を通り、第6ポート26aを出て第1構成要素に流れる。流体は、第1構成要素から、弁の第1ポート21aに戻り、第1回転子溝41を通り、第1固定子溝31を介して(同溝が濯がれ)、第4ポート24aを通って弁を出る。
【0035】
本発明による回転弁は、最小の弁構成要素を備えた進歩した液体クロマトグラフィーシステムの設計を可能にする。本発明の第2態様によれば、先に説明した回転弁を備えたクロマトグラフィーが提供されている。
【0036】
その様な液体クロマトグラフィーシステムの或る実施形態について、図20と図21を参照しながら説明するが、図では、本発明に関連する主要な構成要素を示しているが、追加のモニタリングセンサー、追加の弁、調整装置などの様な他の構成要素は、システムにとって同様に重要であっても、明確にするために省略している。
【0037】
従って、システムは、先に説明した本発明の弁によれば、流れ分配弁301に接続されているポンプ302の様な主要な液体供給源を含んでいる。従来型の毛管ループ311で例示されている第1試料保持装置が取り付けられている試料注入弁303は、第1構成要素として、流れ分配弁(上記流れ分配弁に関する説明を参照のこと)に接続されている。複数(又は少なくとも1つ)のクロマトグラフィーカラム312、313が接続されている第1選択弁304(明確にするために、2つのその様なカラム312、313だけを図面に示しているが、選択可能なカラムの数は、第1選択弁304の容量によって決まる)は、第2構成要素として接続されている(上記の流れ分配弁の説明を参照のこと)。この実施形態では、第1選択弁は、更に、ここではクロマトグラフィーシステムの制御ユニット(図示せず)に接続されているUVセンサー317として例示されている試料モニタリング装置、及び流路選択弁305と直列に接続されており、これら3つの構成要素全てが、第2構成要素と呼ばれる。第2選択弁306は、ここでは毛管ループ315、316で例示されている一組の選択可能な試料保持装置(即ち、明確にするために、2つのその様なループ315、316だけを図示しているが、選択可能なループの数は、選択弁306の容量によって決まる)を有しており、第3構成要素として流れ分配弁に接続されている(上記の説明を参照のこと)。更に、分離された試料の一部を回収するための、従来のフラクションコレクタの様な回収装置314が、経路選択弁305に接続されている。各構成要素は、システム内で使用される流量に合った内径を有するPEEK毛管の様な、適した配管を使って相互接続されている。
【0038】
容易に理解頂けるように、構成要素が取り付けられている注入弁303は、本発明の流れ分配弁に関する上記説明の「第1構成要素」の一例を示している。同様に、ループが取り付けられている第2選択弁306は「第3構成要素」の一例を示しており、カラム312が取り付けられている第1選択弁304と、UVセンサー317と、流路選択弁305は、一体になって、本発明の流れ分配弁に関する上記説明の「第2構成要素」の一例を表している。
【0039】
試料注入弁303は、GE Healthcare社から市販されているINV−907注入弁の様な従来の試料注入弁でもよい。
注入弁303は、幾つかのの作動位置を取ることができる。第1の「注入(INJECT)」位置では、プロテイン及び/又は他の生物由来成分の入った或る量の液体の様な試料が、通常は、注入弁303に接続されている注射器を使って、第1毛管ループ311に移される。通常は、この位置では、ポンプ302からの流れは、直接、注入弁303を通過し、注入弁出口を介して、流れ分配弁301に流れる。第2の「充填(LOAD)」位置では、毛管ループが、ポンプ302と注入弁出口の間の流れの中に導入される。而して、「充填(LOAD)」位置では、試料は、毛管ループ311から流れ分配弁301へと押し出される。
【0040】
第1及び第2選択弁304、306は、共に、例えば、Valco Instruments社から市販されている6ポートST弁の様な従来の汎用弁であってもよい。その様な弁が、1個はカラム/ループの手前に、そして1個はカラム/ループの後ろに配置されている。
【0041】
流路選択弁305は、通常は、本発明の背景技術で説明した型式の従来の汎用弁である。
最初に、精製するための試料が、注入弁がその注入(INJECT)位置にあるときに、注入弁303の毛管ループ311に導入される。
【0042】
次いで、クロマトグラフィーシステムは、流れ分配弁301が図17に示す第1回転子位置に対応する第1位置に在ることを特徴とする、図20に図解する第1作動モードに設定される。明確にするために、図20の弁301の入口/出口の相互位置は、図17に示す実施形態のものと同じには描かれてはいないことに留意頂きたい。
【0043】
更に、システムの第1作動モードでは、注入弁303は、その充填(LOAD)位置にあり、第1選択弁304は、カラム312の内の1つに直列で繋がるように設定されており、第2選択弁306は、ループの内の1つ、例えばループ315に直列で繋がるように設定されている。
【0044】
使用されている緩衝液は、ポンプ302によって、流れ分配弁301を通して注入弁303へ押し出され、そこで、ループ311の内容物(試料)を注入弁303から押し出して流れ分配弁301へ運ぶ。試料は、流れ分配弁301と第1選択弁304を介して、クロマトグラフィーカラム312の中に充填される。使用されているクロマトグラフィー技法に依って、試料は、直接に、又は異なる緩衝液を使用する後続の段階で、の何れかで、カラムにより成分に分離される。本発明は、どの様なクロマトグラフィー技法にも同様に有用であるが、この図の説明では、分離は1段階で起こると想定されている。
【0045】
分離された成分は、UVセンサー317によって検出される。UV信号は、クロマトグラフィーシステムの制御ユニット(図示せず)によって処理され、流路選択弁305の位置を制御するのに用いられる。この様にして、流路選択弁305は、検出された試料フラクションがフラクションコレクタ314で回収される位置に設定してもよいし、流路選択弁305を通過する液体を、廃液出口319(又は随意の容器)に送ることもできる。しかしながら、検出されたフラクションを、流路選択弁305によって流れ分配弁301に送り返すこともできる。フラクションは、当該弁から第2選択弁306へ送られ、選択されたループ315の中に入れられる。過剰な液体があれば、流れ分配弁301へ送り返され、出口318を介してシステムから放出される。
【0046】
従って、幾つかの異なる分離されたフラクションは、隔離して、選択的にフラクションコレクタ314内か、又は代わりに、第2選択弁306の設定を変えることにより選択される異なるループ315、316内に置くことができる。これは、UV検出器317からのUV信号の分析に基づき、システムの制御ユニットを介して全て自動的に制御される。
【0047】
図21に示されているクロマトグラフィーシステムの第2作動モードは、流れ分配弁301が、図19に示す第2回転子位置に対応する第2位置にあることを特徴としている。図20と同様に、図21の弁301の入口/出口の相互位置も、図19に示す実施形態のものと同じに描かれてはいないことに留意頂きたい。
【0048】
更に、システムの第2作動モードでは、注入弁303は、LOAD位置に在り、第1選択弁304は、他方のカラム313(第1作動モード中に接続されていたカラムとは別のカラム)に直列で繋がるように設定されており、第2選択弁306は、ループの内の1つ、例えば、回収された試料フラクションを保持するループ315に直列で繋がるように設定されている。
【0049】
使用されている緩衝液は、ポンプ302によって、流れ分配弁301を通して第2選択弁306へ押し出され、選択されたループ315に入っている試料フラクションを伴って運ぶ。流れは、流れ分配弁301へ戻り、そこから、第1選択弁304へ進む。
【0050】
第2作動モードでは、第1モードの時とは異なるカラム313が直列に接続されている。従って、試料フラクションは、先の第1作動モード中の分離段階とは異なる分離技法を使って、更に分離される。
【0051】
第1作動モードと同様に、分離されたフラクションはUVセンサー317によって監視されており、UV信号を用いて流路選択弁305を制御し、フラクション及び/又は試料濃度の低い液体は、フラクションコレクタ314、又は何れかの出口319に送られるか、或いは流れ分配弁301へ戻される。
【0052】
この様にして流れ分配弁301に戻されたフラクションは、更に、注入弁302に送られ、この弁に作用することにより、別の精製段階(第1作動モードに従って実行される)で更に処理するのに備えて、毛管ループ311の中に入れられる。代わりに、注入弁302、流れ分配弁301、及び出口318を介して、液体をシステムから放出してもよい。
【0053】
第1又は第2選択弁304、306の様な選択弁が、通常は、内部バイパス位置を含んでいることを考慮すると、多くのその様な弁を直列で接続することもできると理解頂きたい。これは、必要な数のカラム及び/又はループを保持することができるシステムを形成できるようにするが、実際には、その数は、毛管を相互接続することにより生じる背圧又はバンド幅拡大により制限される。
【0054】
図22は、その様なシステムの一例の概略図であり、2つの追加ループ選択弁306’、307と、1つの追加カラム選択弁304’で拡張されている。
図20と図21に示すシステムと比べると、第3選択弁306’が、第2選択弁306の後に直列に配置されている。明確にするため、これらの弁306、306’は、それぞれ1つのループ325、325’を備えているように示されているが、各弁は、例えば、それぞれが5つループのある設計である様に、多くのループを有することもできるものと理解頂きたい。従って、先に説明した第1モードで実行される分離運転中に蓄えることのできるフラクションの数は、容易に拡張することができる。
【0055】
同様に、第4選択弁307が、注入弁303の後に直列に配置されている。明確にするために、この弁307は1つのループ311’ を備えているように示されているが、例えば、5つループのある設計である様に、多くのループを有することもできるものと理解頂きたい。従って、最初に、又は先に説明した第2モードで実行される分離運転中に蓄えることのできるフラクションの数は、容易に拡張することができる。
【0056】
最後に、図20と図21に示すシステムと比べて、第5選択弁304’が、第1選択弁304の後に直列に配置されており、これら両方の弁は、取り付けられているクロマトグラフィーカラム322、322’と関係付けられている。明確にするために、これらの弁304、304’は、それぞれ1つのカラム322、322’ を備えているように示されているが、各弁は、それぞれ5つカラムのある設計である様に、多くのカラムを有することもできるものと理解頂きたい。従って、先に説明した第1又は第2モードで実行される様々なクロマトグラフィー技法の異なる分離に有用なカラムの数は、容易に拡張することができる。
【0057】
この様に、本発明による流れ分配弁を使えば、柔軟性のある自動化された多段階多次元のクロマトグラフィーシステムを、最小数の必要な弁、並びに短い相互接続毛管で設計することができるので、システムの流路により生じる背圧及びバンド幅拡大を減じることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 回転弁
11 固定子
11a 内側固定子面
12 回転子
12a 内側回転子面
13 回転軸
14 駆動ユニット
21a−28a ポート
21b−28b 固定子オリフィス
31、32 固定子溝
41−44 回転子溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れを分配するための、固定子(11)と回転子(12)を備えている回転弁(10)において、
前記固定子(11)は、前記固定子の中に延びる少なくとも8個のポートを備えており、各ポートは、内側固定子面(11a)上の対応するオリフィスで終結しており、第1ポート(21a)は第1オリフィス(21b)で終結し、第2ポート(22a)は第2オリフィス(22b)で終結し、第3ポート(23a)は第3オリフィス(23b)で終結し、第4ポート(24a)は第4オリフィス(24b)で終結し、第5ポート(25a)は第5オリフィス(25b)で終結し、第6ポート(26a)は第6オリフィス(26b)で終結し、第7ポート(27a)は第7オリフィス(27b)で終結し、第8ポート(28a)は第8オリフィス(28b)で終結し、前記内側固定子面(11a)は、前記回転子(12)の内側回転子面(12a)と流体密封方式で接触する前記固定子の面であり、前記内側固定子面(12a)は、前記内側固定子面(11a)に対して、回転軸(RA)の周りに回転方向に可動であり、前記固定子オリフィス(21b−28b)のそれぞれは、前記回転軸(RA)の周りに、共通の半径距離Rに分布されており、
前記第1、第2、第3、及び第4オリフィス(21b−24b)は、第1オリフィスグループを形成していて、そのグループの各オリフィスは、最も近い隣のオリフィスから角度αだけ離れており、前記第5、第6、第7、及び第8オリフィス(25b−28b)は、第2オリフィスグループを形成しており、そのグループの各オリフィスは、最も近い隣のオリフィスから角度αだけ離れており、前記第1オリフィスグループと前記第2オリフィスグループは、互いに、両方向に角度βだけ離れており、
前記内側固定子面(11a)は、前記第4オリフィス(24b)で始まり、前記回転軸(RA)から半径距離Rにあって前記第1オリフィス(21b)から角度αだけ離れている位置で終結している第1固定子溝(31)と、前記第5オリフィス(25b)で始まり、前記回転軸(RA)から半径距離Rにあって前記第8オリフィス(28b)から角度αだけ離れている位置で終結している第2固定子溝(32)とを更に備えている、ことを特徴とし、
前記内側回転子面(12a)は、それぞれ両端が前記回転軸(RA)から半径距離Rにある第1、第2、第3、及び第4回転子溝(41−44)を備えており、前記各回転子溝(41−44)は、前記固定子の2つの隣接するオリフィスを分割する角度αに亘って伸張しており、前記第1と第2の回転子溝(41、42)は、角度αだけ離れていて第1組の溝を形成し、前記第3と第4の回転子溝(43、44)は、角度αだけ離れていて第2組の溝を形成し、前記第1組の溝は、前記第2組の溝と直径方向に反対側に配置されており、
前記固定子(11)と前記回転子(12)は、第1回転子位置と第2回転子位置で協働することができるようになっていて、前記第2回転子位置は、前記回転子を第1位置から角度αだけ回すことにより得られるようになっており、
前記第1位置では、前記第1ポート(21a)と前記第2ポート(22a)は、前記第1回転子溝(41)を介して流体連通し、前記第3ポート(23a)と前記第4ポート(24a)は、前記第2回転子溝(42)を介して流体連通し、前記第5ポート(25a)と前記第6ポート(26a)は、前記第3回転子溝(43)を介して流体連通し、前記第7ポート(27a)と前記第8ポート(28a)は、前記第4回転子溝(44)を介して流体連通し、
前記第2位置では、前記第1ポート(21a)と前記第4ポート(24a)は、前記第1回転子溝(41)と前記固定子溝(31)を介して流体連通し、前記第2ポート(22a)と前記第3ポート(23a)は、前記第2回転子溝(42)を介して流体連通し、前記第5ポート(25a)と前記第8ポート(28a)は、前記第4回転子溝(44)と前記第2固定子溝(32)を介して流体連通し、前記第6ポート(26a)と前記第7ポート(27a)は、前記第3回転子溝(43)を介して流体連通する、ことを特徴とする、回転弁。
【請求項2】
前記角度αは30°であり、前記角度βは90°である、請求項1に記載の回転弁。
【請求項3】
前記角度αは36°であり、前記角度βは72°である、請求項1に記載の回転弁。
【請求項4】
請求項1−3の何れかに記載の弁を備えているクロマトグラフィーシステム。
【請求項5】
請求項1−3の何れかに記載の弁に接続されている3つの異なる構成要素又は構成要素群を更に備えており、前記3つの構成要素又は構成要素群の内の1つを通る流れの方向は、一定に保たれ、他の2つの構成要素又は構成要素群を通る流れの方向は、変えることができる、請求項4に記載のクロマトグラフィーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2010−526976(P2010−526976A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508334(P2010−508334)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000288
【国際公開番号】WO2008/140374
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509088240)ジーイー・ヘルスケア・バイオ−サイエンシズ・アーベー (22)
【Fターム(参考)】