説明

流体の特性を決定する方法及び分光システム

本発明は、例えばインビボ血液分析の目的で、流体の特性を決定することを可能にする。まず、流体が流れる関心ボリュームの位置が、対物レンズを利用することによって光学的検出ステップによって決定される。好適には、光学的検出ステップは、イメージングステップである。次に、対物レンズは、対物レンズの焦点を関心ボリュームに至らせるように移動される。この位置において、光学分光ステップが実施される。これは、光学分光を実施するための測定ビームが最適な効率のために光軸に沿って進むという利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学分光法の分野に関し、特に、分析目的での光学分光技法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分析目的での光学分光技法の使用はそれ自体、従来技術から知られている。国際公開第02/057758 A1号及び同第02/057759 A1号パンフレットは、患者の毛細血管を流れる血液の組成を生体内(インビボ)で非侵襲的に分光分析するための分光分析装置を記載している。毛細血管は、監視装置によって撮像され、励起ビームが、分光分析を実施するために毛細血管に向けられる。例えば、近赤外放射線が、ラマン散乱の励起のために使用される。ラマン散乱された放射線は、血液特性を決定するめに分光器によって分析される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インビボの血液分析は、従来技術の血液分析と比較して多くの利点を有する。従来技術の血液分析では、血液が例えばニードルを用いて腕から抜き取られ、血液サンプルが化学分析室において分析される。運搬及び分析には、相当な時間を要し、その時間は、2日乃至救急の状況では概して20分とさまざまである。対照的に、インビボの血液分析は、患者にとっての痛み及び感染症のリスクなく、即座に及且つ連続的に血液の特性を監視することを可能にする。
【0004】
従って、本発明の目的は、生物学的な管状構造を流れる流体の特性を非侵襲的に決定するための改善された方法、特に、患者の皮下の毛細血管を流れる血液をインビボで非侵襲的に分析するための改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、流体の特性を決定する方法を提供する。まず、流体が流れる関心ボリュームの位置が、光学的検出ステップによって決定されることを必要とする。これは、光学対物レンズによって行われる。好適には、イメージング方法が、関心ボリュームの位置を決定するために用いられ、例えば血液が流れる血管の位置を決定するためのパターン認識技法が用いられる。
【0006】
適切なイメージング方法は、直交偏光スペクトルイメージング(OPSI)、共焦ビデオマイクロスコピー(CVM)、光学コヒーレンストモグラフィ(OCT)、共焦レーザスキャニングマイクロスコピー(CLSM)及びドップラーに基づくイメージングを含む。対応するイメージング技法は、それぞれ、国際公開第02/057759号パンフレット並びに未だ公開されていない欧州特許出願第03100689.3号及び同第03102481.3号(特許出願人整理番号PHNL030251及びPHNL030944)明細書に開示されており、これらはすべて、参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする。
【0007】
光学的検出によって決定される関心ボリュームの位置は、対物レンズの光軸上に必ずしも位置するわけではない。この状況において、対物レンズは、対物レンズの焦点が関心ボリューム内に位置付けられるように移動される。
【0008】
次に、光学分光ステップが、関心ボリュームにおける流体の特性を決定するために実施される。このために、測定ビームは、対物レンズの光軸に沿うように向けられ、関心ボリューム内に焦点を合わせられる。これは、光学分光ステップが、最適な効率及び精度をもって実施されることができるという利点を有する。これは、レーザビームがその光軸に沿ってすすむとき、すなわち光学収差が最小であるとき、対物レンズが最善に機能するという事実による。更に、戻り放射線の収集の効率も最適である。
【0009】
このようにして、本発明は、流体の特性を決定するための非常に効率的で且つ正確な光学分光を実施するために、相対的に安価な対物レンズを使用することを可能にする。インビボ血液分析のアプリケーションに関する限り、本発明は、それが、光学的検出ステップののち、皮膚を移動させる必要なく、選択された血管内に測定ビームの焦点を合わせることを可能にするので、特に有利である。これは、最適な衛生のために完全に密封される測定ヘッドのコンパクトなデザインを可能にする。皮膚の移動が必要とされないので、測定は、患者にとっての最適な快適さをもって、迅速に実施されることができる。
【0010】
本発明の好適な実施例によれば、測定ビームのカバレージは、対物レンズ開口部より大きく、すなわち、対物レンズは、「過剰に満たされる(overfilled、過剰に覆われる、オーバーフィルされる)」。これは、対物レンズ開口部が測定ビームのカバレージ内にあるまま、対物レンズの焦点を関心ボリューム内に位置付けるように、対物レンズを移動させることを可能にする。これは、対物レンズのみが移動され、測定ビームが静止したままであるという利点を有する。
【0011】
本発明の他の好適な実施例によれば、対物レンズに結合される反射光学素子が、対物レンズのより大きな移動を可能にするために使用される。この例では、測定ビームは、それが、対物レンズの光軸に沿って対物レンズ開口部に測定ビームを向ける反射光学素子に当たるとき、対物レンズの光軸に対して垂直な方向を有する。
【0012】
これは、対物レンズ開口部のオーバーフィリングと組み合わせられることができる。この例において、反射光学素子は、オーバーフィリングによって提供される許容範囲が、関心ボリューム内に焦点を位置付けるのに十分ではないときのみ、対物レンズと共に移動される。この実施例は、オーバーフィリングの程度が最小になりえ、ゆえに利用可能なレーザパワーが効率的に使用されるので、特に有利である。
【0013】
本発明の他の好適な実施例によれば、対物レンズに結合される反射光学素子に測定ビームを向けるために回転される他の反射光学素子が使用される。このようにして、測定ビームを静止した状態に保ちつつ、対物レンズの2次元の大きな移動が可能にされる。
【0014】
本発明の好適な実施例によれば、光学ディスクドライブの光学ピックアップユニット及び光路が、対物レンズを移動させるための安価な且つコンパクトな機構として使用される。同じピックアップユニットが、毛細血管上に対物レンズの焦点を合わせるためにも使用されることができる。
【0015】
毛細血管が十分に高密度に分布していない場合、ピックアップユニットを任意の種類の1次元の移動ステージと組み合わせることが有利である。こうして、反射光学部品の助けを借りて、大きい矩形領域が、カバーされることができる。
【0016】
本発明の好適な実施例によれば、光学的検出ステップは、関心ボリュームの位置を追跡するために反復的に実施される。対物レンズは、焦点が関心ボリュームの動きに追従するように、移動される。これは、特に、例えば手術中に血液組成を監視する場合のように、より長い時間間隔にわたって流体の特性を監視する場合に有利である。
【0017】
本発明の他の好適な実施例によれば、共焦ラマンスペクトロスコピーが使用される。ラマン励起レーザからの光は、対物レンズを通じて検出ボリュームに向けられ、ラマン散乱された放射線は、分光分析のために同じ対物レンズによって収集される。本発明は、自然ラマン分光法に制限されず、他の光学分光法も使用されることができることに留意されたい。
【0018】
これは、(i)誘導ラマン分光法及びコヒーレントアンチストークスラマン分光法(CARS)を含む、ラマン散乱に基づく他の方法、(ii)特に赤外線吸収分光法、フーリエ変換赤外線(FTIR)分光法及び近赤外線(NIR)拡散反射分光法のような赤外分光法、(iii)特に蛍光分光法、多光子蛍光分光法及び反射率分光法のような他の散乱分光法、並びに(iv)光音響分光法、偏光測定(ポラリメトリ)及びポンプポローブ分光法のような他の分光法、を含む。本発明に適用するための好適な分光技法は、ラマン分光法及び蛍光分光法である。
【0019】
本発明の以下の好適な実施例は、添付の図を参照することによってより詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、例えば患者の皮下の毛細血管を流れる血液のような、生物学的な管状構造を流れる流体の特性を決定するために使用されることができる装置100を示している。装置100は、共焦ラマン分光のためのラマン分光システム102及びイメージングシステム104を有する。
【0021】
ラマン分光システム102は、レーザ光源101及びスペクトロメータ103を有する。ラマン戻り放射線は、分光システム102のダイクロイックミラー105によって、スペクトロメータ103に向けられる。
【0022】
イメージングシステム104は、入射イメージング光ビーム106を与える光源107を有する。イメージング光ビーム106は、偏光ビームスプリッタ109及びダイクロイックミラー115を通じて、対物レンズ108に向けられる。
【0023】
光源107のイメージング光ビーム106は、例えばCCDカメラ111のようなイメージングシステム104によって受け取られる戻り光118を生じさせる。使用されうるカメラの他のタイプは、CMOS及びフォトダイオードアレイカメラ等である。更に、イメージングシステム104は、位置検出の目的でコンピュータプログラム132を走らせるプロセッサ130を有する。
【0024】
ラマン分光システム102のレーザ光源101は、入射レーザ光ビーム113を供給し、入射レーザ光ビーム113は、ダイクロイックミラー115上で反射され、対物レンズ108の対物レンズ開口部に向けられる。入射レーザ光ビーム113の幅134は、対物レンズ108の対物レンズ開口部の幅136より大きい。
【0025】
対物レンズ108は、機械的にアクチュエータ138に結合されている。例えば、アクチュエータ138は、対物レンズ108をxy平面内で移動させるためのモータ駆動される機械的な移動ステージである。アクチュエータ138によって、焦点は、関心ボリューム内にx、y及びzの3次元で位置付けられる必要がある。関心ボリューム内でz方向に焦点を位置付けることは、通常、フォーカシングと呼ばれる。更に、アクチュエータ138は、x、y平面内の移動に加えて、フォーカシングのためにz方向に対物レンズを移動させるためにも使用される。代替例として、アクチュエータ138は、圧電素子又は電気機械的な移動ステージである。
【0026】
ラマン分光システム102、イメージングシステム104及びアクチュエータ138は、コントローラ122に結合されている。コントローラ122は、装置100のすべての動作を制御する制御プログラム124を有する。
【0027】
装置100によってインビボ血液分析を実施するために、患者は、対物レンズ108下に、皮膚114を有する身体部分を配置する。皮膚114は、多くの血管112を有する。
【0028】
装置100がアクティブにされると、制御プログラム124は、イメージングシステム104に制御信号を出す。それに応じて、光源107は、対物レンズ108を通してCCDカメラ111によって皮膚114のピクチャを撮るために、イメージング光ビーム106を供給する。ピクチャは、血管112の少なくとも1つを検出するために、プログラム132によって分析される。このようにして、分光血液分析を実施するための検出ボリューム110が決定される。ここで考察される例において、検出ボリューム110は、対物レンズ108の光軸140上にない。
【0029】
検出ボリューム110の位置は、プログラム132から制御プログラム124に通信される。制御プログラム124は、対物レンズ108の光軸140から検出ボリューム110までの距離を決定する。対物レンズ108の実際の位置を決定するために、コントローラ122に同様に結合される位置センサ(図示せず)が設けられることができる。しかしながら、対物レンズ108の位置の変化を検証するためにイメージングシステム104を使用することが好ましい。このようにして、帰還回路が設けられる。
【0030】
検出ボリューム110の位置と光軸140との間の距離を決定したのち、制御プログラム124は、検出ボリューム110上に光軸140を位置付けるように対物レンズ108をxy平面内で変位させるために、アクチュエータ138に制御信号を出す。このようにして、対物レンズ108の焦点142は、検出ボリューム110内で移動される。これは、対物レンズ108が、光軸140と検出ボリューム110との間の距離144移動されたあとの図2に示されている。
【0031】
xy平面における対物レンズ108の移動が、入射レーザ光ビーム113の幅134によって制限されることに留意すべきである。これは、レーザ光源101及びダイクロイックミラー105及び115を静止した状態に保つことを可能にする。
【0032】
対物レンズ108が、光軸140を検出ボリューム110に至らせるように距離144移動されたのち、制御プログラム124は、ラマン分光システム102に制御信号を出す。それに応じて、ラマン分光システム102は、レーザ光源101から入射レーザ光ビーム113を供給し、入射レーザ光ビーム113は、対物レンズ108の光軸140に沿って、検出ボリューム110に向けられる。
【0033】
対物レンズ108の対物レンズ開口部に当たらない入射レーザ光ビーム113の部分は、スペクトロスコピーのために使用されない。このような状況は、対物レンズ108の「オーバーフィリング(over filling)」とも呼ばれる。対物レンズ108の対物レンズ開口部に当たる入射レーザ光ビーム113の部分は、光軸140に沿って、検出ボリューム110内の焦点142に向けられる。
【0034】
これは、対物レンズ108の対物レンズ開口部の幅136を有するラマン戻り光ビーム117を生じさせる。ラマン戻り光ビーム117は、ダイクロイックミラー115及び105を介して、スペクトロメータ103によって受け取られる。スペクトロメータ103は、ラマン戻り光ビーム117の分光分析を実施する。このようにして、検出ボリューム110を流れる血液の1又は複数の特性が決定される。
【0035】
図3は、対応するフローチャートを示している。ステップ300において、イメージング方法が、例えば血液分析を実施すべき検出ボリュームのような、関心ボリュームの位置を決定するために実施される。イメージングは、光学対物レンズによって実施される。
【0036】
ステップ302において、対物レンズは、対物レンズの焦点が関心ボリュームに至らせられるように、動かされる。ステップ304において、ラマン分光又は別の光学分光法が、対物レンズを通して測定ビームを関心ボリュームに向け、測定ビームによって生じさせられる関心ボリュームからの戻り放射線を対物レンズによって収集することによって、実施される。
【0037】
図4は、本発明の原理に従って、関心ボリュームの光学的検出及び光学分光の両方のために使用される対物レンズの拡大図である。図1及び図2の素子に対応する図4の素子は、300を加えた同様の参照数字によって示されている。
【0038】
対物レンズ408は、対物レンズ開口部407を有する。対物レンズ開口部407は、幅436を有する。対物レンズ408は、光軸440及び焦点442を有する。
【0039】
対物レンズ408は、まず、光学的検出ステップによって関心ボリュームの位置を決定するために使用される。関心ボリュームの位置は、図1の例示によって既に説明したように、光軸440上に位置していない。
【0040】
後続の光学分光ステップを実施するために、対物レンズ408は、焦点442を関心ボリュームに移動させるために、方向446又は反対方向448に移動される。ここで考察される好適な実施例において、この移動は、測定ビーム413の範囲、すなわち測定ビーム413の幅434によって制限される。対物レンズ408は、測定ビーム413によってオーバーフィルされる。言い換えると、測定ビーム413は、対物レンズ開口部407の幅436より大きい幅434を有する。
【0041】
測定ビーム413の方向は、光軸440に平行である。結果として、対物レンズ開口部407に当たる測定ビーム413の部分もまた、光軸440に平行であり、ゆえに焦点442に向けられる。そこから、戻り放射線が、対物レンズ408によって収集され、分光分析のためにスペクトロメータに送られる。
【0042】
図5は、同様の素子が、100を加えた図4と同様の参照数字によって示される代替実施例を示している。図5の実施例において、入射レーザ光ビーム513は、対物レンズ508の光軸540に対して垂直な方向を有する。入射レーザ光ビーム513は、光学素子515によって、光軸540の方向に反射される。図1、図2及び図4の実施例と同様に、入射レーザ光ビーム513の幅534は、対物レンズ508の対物レンズ開口部507の幅536より大きい。
【0043】
対物レンズ508の対物レンズ開口部507が、完全に入射レーザ光ビーム513のカバレージ内にあるままである限り、入射レーザ光ビーム513及び光学素子515が静止した状態のまま、対物レンズ508が、方向546及び548に移動されることができる。対物レンズ508が、焦点542を関心ボリュームに至らせるために、より大きい距離移動される必要があるとき、光学素子515は、対物レンズ508と共に動かされ、その一方、入射レーザ光ビーム513の位置は変化しないままである。このようにして、対物レンズ508の方向546及び548への大きい移動が、可能にされる。例えば、光学素子515は、プリズム又はミラー(図1及び図2の実施例のダイクロイックミラー115を参照)である。
【0044】
図6は、ピックアップユニット650の上面図を示している。ピックアップユニット650は、対物レンズ608をもっている。ピックアップユニット650は、対物レンズ608を方向646及び648並びに方向652及び654に制御可能に移動させるアクチュエータ638を有する。入射レーザ光ビーム613の位置は固定されている。
【0045】
上記で考察された実施例のように、レーザ光ビーム613の幅654は、対物レンズ開口部607の幅636より大きい。このように、対物レンズ608の方向646及び648への移動は、入射レーザ光ビーム613による対物レンズ開口部607のカバレージによって制限される。対物レンズ608の方向646及び648への移動の制限は、図6の破線によって示されている。
【0046】
図7は、ピックアップユニット650の側面図を示している。ピックアップユニット650は、入射レーザ光ビーム613を対物レンズ608のレンズ656に向ける反射光学素子615をもっている。これは、反射光学素子615と共に対物レンズ608を方向652及び654に一層大きい距離移動させることを可能にし、その一方、入射光ビーム613の位置は変化しないままである。更に、レンズ656は、フォーカシングのために垂直に移動されることができる。
【0047】
ピックアップユニット650を実現する1つのやり方は、例えばCDプレーヤのような光学ディスクドライブにおいて使用される光学ピックアップユニットによる。
【0048】
対物レンズ608の方向646又は648への一層大きい変位が要求される場合、付加の反射光学素子658が、図8に示すように利用されることができる。反射光学素子658は、旋回アーム(図8に図示せず)に回転可能に取り付けられる。代替例として、図7に示すすべての光学素子が、光学アラインメントを最善に維持するために、旋回アームに取り付けられる。反射光学素子658の回転によって、反射されるレーザ光ビーム613の方向は、方向646又は648(図6参照)において変化され、従って、対物レンズ608が、それに対応してこれらの方向に移動されることができる。
【0049】
図9は、分光装置900の代替実施例のブロック図を示している。分光装置900は、スペクトロメータ903、表示ユニット960及びプログラム962を具えるベースステーション902を有する。
【0050】
ベースステーション902は、光ファイバ966及び968によって、測定ヘッド964に結合されている。
【0051】
測定ヘッド964は、光源907、カメラ911及びプログラム932を具えるイメージングシステム904を有する。イメージングシステム904は、アクチュエータ938に結合され、アクチュエータ938は、xy平面において対物レンズ908を移動させるために、対物レンズ908に機械的に結合されている。更に、測定ヘッド964は、光ファイバ966を通じて受け取られる入射測定ビームを対物レンズ908に向けるとともに、対物レンズ908によって収集される戻り放射線を、スペクトロメータ903に送るために光ファイバ968に結合させる光学素子970を有する。
【0052】
動作中、患者は、測定ヘッド964を自分の皮膚上に配置する。イメージングシステム904の光源907は、イメージング光ビーム(図1のイメージング光ビーム106を参照)を供給し、イメージング光ビームは、光学素子970によって、対物レンズ908を通して皮膚914に向けられる。
【0053】
カメラ911によって、皮膚914のピクチャが撮られ、そのピクチャは、血管を検出し、血管の1つの範囲内の検出ボリュームを選択するために、プログラム932によって分析される。イメージングシステム904は、アクチュエータ938を制御して、xy平面内で対物レンズ908を移動させることにより、対物レンズ908の焦点を、プログラム932によって決められた検出ボリュームに至らせる。
【0054】
光ファイバ966を通じてベースステーション902から受け取られる測定ビームは、光学素子970によって、対物レンズ908に向けられる。対物レンズ908の対物レンズ開口部を通る測定ビームの部分は、対物レンズ908の光軸に沿って進み、検出ボリューム内に焦点を合わせられる。
【0055】
これは戻り放射線を生じさせ、戻り放射線は、対物レンズ908によって収集され、光学素子970によって光ファイバ968に結合される。ベースステーション902内のスペクトロメータ903によって受け取られる戻り放射線は、検出ボリュームを流れる血液の1又は複数の特性を決定するために、分析される。この分析は、プログラム962によって実施される。分析の結果は、ディスプレイ960に表示される。
【0056】
血管の関心ボリューム内にレーザビームの焦点を合わせるように、対物レンズ及び皮膚を相対的に移動させるために、対物レンズではなく皮膚を適切な機構によって移動させることも可能であることに留意すべきである。
【0057】
ある場合には、対物レンズ及び皮膚の相対的な移動が、まったく必要とされない。例えば、測定ヘッドは、皮膚表面に相対的に近い相対的に太い血管を有する身体部分上に配置されることができ、従って、位置付けしなおすことが必要とされない。このような測定は、口腔内で便利に実施されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の分光システムの実施例のブロック図。
【図2】図1の分光システムの動作を示す図。
【図3】本発明の方法の好適な実施例を示すフローチャート。
【図4】測定ビームのカバレージ内で横方向に対物レンズを移動させるために、対物レンズをオーバーフィルすることを示す図。
【図5】対物レンズの一方向へのより大きい移動を可能にするために、対物レンズに結合される反射光学素子を示す図。
【図6】光学ピックアップユニットの上面図。
【図7】図5の光学ピックアップユニットの側面図。
【図8】回転可能に取り付けられる反射光学素子を有するピックアップユニットを示す図。
【図9】ベースステーションに結合される測定ヘッドのブロック図。
【符号の説明】
【0059】
100 装置、101 レーザ光源、102 ラマン分光システム、103 スペクトロメータ、104 イメージングシステム、105 ダイクロイックミラー、106 イメージング光ビーム、107 光源、108 対物レンズ、109 偏光ビームスプリッタ、110 検出ボリューム、111 CCDカメラ、112 血管、113 入射レーザ光ビーム、114 皮膚、115 ダイクロイックミラー、117 ラマン戻り光ビーム、118 戻り光、122 コントローラ、124 制御プログラム、130 プロセッサ、132 プログラム、134 幅、136 幅、138 アクチュエータ、140 光軸、142 焦点、144 距離、405 対物レンズ、407 対物レンズ開口部、413 測定ビーム、434 幅、436 幅、440 光軸、442 焦点、446 方向、448 方向、508 対物レンズ、513 入射レーザ光ビーム、515 光学素子、550 光軸、546 方向、548 方向、534 幅、536 幅、542 焦点、607 対物レンズ開口部、608 対物レンズ、613 入射レーザ光ビーム、615 反射光学素子、636 幅、638 アクチュエータ、646 方向、648 方向、650 ピックアップユニット、652 方向、654 方向、656 レンズ、658 反射光学素子、900 装置、902 ベースステーション、903 スペクトロメータ、904 イメージングシステム、906 スペクトロメータ、907 光源、908 対物レンズ、911 カメラ、914 皮膚、932 プログラム、938 アクチュエータ、960 表示ユニット、962 プログラム、964 測定ヘッド、966 光ファイバ、968 光ファイバ、970 光学部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の特性を決定する方法であって、
対物レンズによって関心ボリュームの位置を決定するために光学的検出ステップを実施するステップと、
前記対物レンズの焦点が前記関心ボリュームに位置付けられるように、前記対物レンズを移動させるステップと、
測定ビームによって前記関心ボリュームにおける前記物質の前記特性を決定するために光学分光ステップを実施するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記測定ビームのカバレージが、対物レンズ開口部より大きく、
前記対物レンズが、前記測定ビームに垂直な方向に移動される一方、前記対物レンズは、前記測定ビームの前記カバレージ内にあるままである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物質が、生物学的な管状構造を流れる流体であり、前記方法が、
前記光学的検出ステップを反復的に実施することによって、前記生物学的な管状構造の動きを追跡するステップと、
前記焦点が関心ボリュームにあるままであるように、前記対物レンズを移動させるステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光学的検出ステップが、イメージング方法によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ラマン分光法、蛍光分光法、弾性散乱分光法、赤外分光法又は光音響分光法が、前記光学分光ステップを実施するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記物質が血液であり、前記関心ボリュームが血管内に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
関心ボリュームの位置を決定するために、対物レンズを有する光学的検出素子を制御するステップと、
前記対物レンズの焦点が前記関心ボリュームに位置付けられるように前記対物レンズを移動させるために、前記光学的検出素子を制御するステップと、
測定ビームによって前記関心ボリュームにおける物質の特性を決定するために、光学分光素子を制御するステップと、
を実施するプログラム手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記プログラム手段は、第2の反射光学素子からの前記測定ビームを第1の反射光学素子に向けるように該第2の反射光学素子を制御し、それによって、前記第1の反射光学素子は、前記測定ビームを対物レンズ開口部に向け、前記測定ビームは、前記測定ビームが前記第1の反射光学素子に当たるとき、前記対物レンズの光軸に垂直な方向を有する、請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
物質の特性を決定する分光システムであって、
関心ボリュームの位置を決定するために光学的検出を実施する対物レンズと、
前記対物レンズの焦点が前記関心ボリュームに位置付けられるように、前記対物レンズを移動させる手段と、
測定ビームを供給するように構成され、前記関心ボリュームにおける前記物質の前記特性を決定する光学分光手段と、
を有する分光システム。
【請求項10】
前記対物レンズを移動させる前記手段が、機械的素子、電子機械的素子及び/又は圧電素子を有する、請求項9に記載の分光システム。
【請求項11】
ベースステーション及び測定ヘッドを更に有し、前記ベースステーション及び前記測定ヘッドは、前記ベースステーションから前記測定ヘッドに前記測定ビームを送り、前記測定ヘッドから前記ベースステーションに戻り放射線を送る少なくとも1つの光ファイバによって結合されており、前記測定ヘッドは、前記測定ビームを前記対物レンズ開口部に向ける光学的手段と、前記対物レンズを移動させる手段と、有する、請求項9に記載の分光システム。
【請求項12】
前記測定ビームのカバレージが、対物レンズ開口部より大きい、請求項9に記載の分光システム。
【請求項13】
前記対物レンズの光軸に垂直な方向を有する前記測定ビームを、前記対物レンズ開口部に向けるための第1の反射光学素子を更に有する、請求項9に記載の分光システム。
【請求項14】
前記測定ビームを第1の反射光学素子に向けるための、回転可能に設置される第2の反射光学素子を更に有する、請求項9に記載の分光システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−508097(P2007−508097A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534902(P2006−534902)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052110
【国際公開番号】WO2005/037094
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】