説明

流体圧回路

【課題】エネルギー損失を抑制した油圧回路を提供する。
【解決手段】テレスコシリンダ21のボトム室21aに供給する作動油圧をパイロット圧として再生弁38を作動させる。再生弁38により、パイロット圧に応じたロッド室21bからの戻り油の一部流量をボトム室21aへ再生して再生流量を制御することで、再生回路によりボトム室へと再生する作動油圧にリリーフ弁などにより一定の背圧を付与する場合と比較して、エネルギー損失を抑制できるとともに、戻り油の全量を再生する場合と比較して、スローリターン弁25によりテレスコシリンダ21の延び速度を容易に調整でき、かつ、スローリターン弁25、再生弁38およびチェック弁39による簡単な構成で、再生回路40を安価かつ容易に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロール弁を経た作動流体により作動される流体圧シリンダを備えた流体圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物間などの狭地での作業が可能な作業機械として、例えば図2に示される油圧ショベルAがある。
【0003】
この油圧ショベルAは、下部走行体1、この下部走行体1上に旋回軸受部2を介して旋回可能に設けられた上部旋回体3、この上部旋回体3に搭載されたキャブ4、上部旋回体3上にてキャブ4の側方に作動可能に設けられた作業装置5などを備え、この作業装置5は、上部旋回体3に上下動可能に設けられたブーム6、このブームに回動可能に設けられ多段伸縮機能を有する多段伸縮アームとしてのテレスコピックアーム7(以下、テレスコアーム7という)、および、このテレスコアーム7の先端に作動可能に設けられたアタッチメントとしてのクラムシェルバケット8により構成されている。
【0004】
このような油圧ショベルAのテレスコアーム7は、図3に示される油圧回路により伸縮される。この油圧回路は、図2に示される上部旋回体3に搭載されており、エンジン11、このエンジン11から一定のポンプ馬力を供給されて定馬力制御されタンク12に貯留された作動油を吐出する可変容量型のメインポンプ13、および、このメインポンプ13の吐出ラインに接続されたセンタバイパスライン14とこのセンタバイパスライン14から分岐されたパラレルライン15とに吐出される作動油を制御するコントロール弁16を備えている。
【0005】
また、パラレルライン15中には、コントロール弁16の負荷圧を保持するロードホールド用チェック弁17が設けられるとともに、タンク12に戻り油を逃がすタンクライン18に接続され、また、回路圧力設定用のメインリリーフ弁20が設けられている。
【0006】
さらに、図2に示されるテレスコアーム7を伸縮させる片ロッド型の流体圧シリンダとしてのテレスコピック用シリンダ21(以下、テレスコシリンダ21という)には、片側のみにロッド22aを備えた片ロッド型のピストン22によりボトム室21aとロッド室21bとが形成され、ボトム室21aとコントロール弁16のスプール16aとの間にボトムライン23が接続され、ロッド室21bとスプール16aとの間にロッドライン24が接続され、このロッドライン24中には、メータアウト用の流量制御弁としてのスローリターン弁25が設けられている。このスローリターン弁25は、コントロール弁16を経てロッド室21bに供給される作動油を通過させロッド室21bからの戻り油を止める逆止弁25aと、ロッド室21bからの戻り油の戻り流量を制御する可変絞り25bとを並列に接続して形成されている。
【0007】
そして、この油圧回路では、コントロール弁16のスプール16aの中立状態で、メインポンプ13から吐出された作動油がタンク12に循環し、スプール16aが図3に示される伸び側に切換わると、メインポンプ13から吐出された作動油がボトムライン23を介してテレスコシリンダ21のボトム室21a側に供給されるとともに、ロッド室21b側からの戻り油がロッドライン24のスローリターン弁25およびスプール16aを経てタンクライン18からタンク12に戻されることで、テレスコシリンダ21のロッド22aが伸び、テレスコアーム7が伸びる。
【0008】
また、スプール16aが図3に示される縮み側に切換わると、メインポンプ13から吐出された作動油がロッドライン24を介してテレスコシリンダ21のロッド室21bに供給されるとともに、ボトム室21a側からの戻り油がボトムライン23、スプール16aを経てタンクライン18からタンク12に戻されることで、テレスコシリンダ21のロッド22aが縮み、テレスコアーム7が縮む。
【0009】
このような油圧ショベルAは、テレスコアーム7を地面に対して垂直に伸縮させてクラムシェルバケット8で竪穴Hを掘削するため、その作業能率の良好さから、都市部での構造物の基礎工事、あるいは地下鉄工事などに用いられることが多いが、特に都市部で作業をする場合には、工期を短くすることが重要であるため、作業量の向上が望まれている。
【0010】
しかしながら、上述のような油圧回路では、テレスコシリンダ21の伸び速度を増速すると、テレスコシリンダ21のボトム室21aへの圧油の供給が追いつかず、テレスコシリンダ21が負圧になるおそれがあり、このような負圧が生じると、テレスコシリンダ21のシールが損傷したり、応答遅れを生じたりする。また、テレスコシリンダ21の縮み速度を増速すると、戻り油による配管の圧力損失が増加するなど、テレスコアーム7の伸縮速度を増速することが容易でないという問題がある。
【0011】
また、テレスコアーム7が伸びてクラムシェルバケット8が着地した状態で、テレスコシリンダ21の伸び操作をすると、ボトム室圧がメインリリーフ弁20の設定圧まで上昇し、テレスコシリンダ21が座屈するおそれがあるという問題もある。
【0012】
そこで、テレスコシリンダの伸び動作の際に、ロッド室からの戻り油を、一定圧を保持しながらボトム室に全量再生する再生回路を設けてテレスコアームの伸びを増速するとともに、テレスコシリンダの縮みの際に、ボトム室側からの戻り油をタンクに直接逃がして背圧を低下させるドレン回路を設けてテレスコアームの縮みを増速する油圧回路が知られている。さらに、この油圧回路では、ロッド室側に高い背圧を立ててテレスコシリンダの座屈を防止している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−246490号公報(第3−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された流体圧回路では、テレスコシリンダの伸び動作時に、一定圧を保持しながら戻り油を再生するため、ロッド室側に常に高圧が立ち、テレスコシリンダの伸び時のメインポンプ圧が高くなるから、配管内での流体摩擦などによるエネルギー損失が大きくなってしまうという問題がある。
【0014】
また、戻り油の全量をボトム室側に再生するため、再生によるテレスコシリンダの伸びの増速分がオンオフ的となり、テレスコシリンダの伸び時の速度調整および微操作できないという問題もある。
【0015】
さらには、例えばクラムシェルバケットが岩などに当たってテレスコシリンダが伸びなくなった際などに、座屈防止用のロッド室側の背圧が立たず、ボトム室側の高圧のみが作用してテレスコシリンダが座屈するおそれがある。
【0016】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、エネルギー損失を抑制した流体圧回路を提供することを目的とするものである。また、本発明は、流体圧シリンダの伸び速度を容易に調整できる流体圧回路を提供するものである。さらに、流体圧シリンダの座屈を防止した流体圧回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の発明は、作動流体を制御するコントロール弁と、コントロール弁を経た作動流体により作動される片ロッド型のピストン、このピストンによりロッド側に形成されたロッド室およびピストンを介してロッド室の反対側に形成されたボトム室を有する流体圧シリンダと、ロッド室からの戻り流量を制御する流量制御弁と、ロッド室からの戻り流体の流量制御弁よりも上流側にて分岐され、ボトム室に供給される作動流体の流体圧をパイロット圧として作動し、このパイロット圧に応じた流量制御弁により制御される流体の一部流量をボトム室へと再生する再生弁と、この再生弁とボトム室との間に設けられた逆止弁とを具備した流体圧回路である。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の流体圧回路において、流体圧シリンダのボトム室に連通され、流体圧シリンダのロッド室に発生するロッド室圧の低下に対応して開き動作を可能とする座屈防止用逆止弁と、この座屈防止用逆止弁の開き動作により作動して流体圧シリンダのボトム室に発生するボトム室圧を流体圧シリンダの座屈を防止する所定圧に抑制するリリーフ弁とを具備したものである。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の流体圧回路において、ボトム室とコントロール弁との間からタンクに直接接続された通路と、この通路中に設けられ、コントロール弁を経て流体圧シリンダのロッド室に供給される作動流体の流体圧をパイロット圧として開き動作するロジック弁と、ロジック弁に供給されるパイロット圧を所定圧に設定するバイパス用シーケンス弁とを具備したものである。
【0020】
請求項4記載の発明は、作業機械に作動可能に設けられた作業装置の多段伸縮アームの伸縮に用いるものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、流体圧シリンダのボトム室に供給される作動流体の流体圧をパイロット圧として再生弁を作動させて、このパイロット圧に応じた流量制御弁により制御されるロッド室からの戻り流体の一部流量のみをボトム室へ再生することにより、例えば再生される流体の流体圧にリリーフ弁などで一定の背圧を付与する場合と比較して、エネルギー損失を抑制できるとともに、戻り流体の全量を再生する場合と比較して、流量制御弁により流体圧シリンダの伸び速度を容易に調整でき、かつ、流量制御弁、再生弁および逆止弁による簡単な構成で、回路を安価かつ容易に製造できる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、流体圧シリンダのロッド室圧の低下に対応して座屈防止用逆止弁が開き動作し、この開き動作により作動したリリーフ弁が流体圧シリンダのボトム室圧を流体圧シリンダの座屈を防止可能な所定圧に低下させることで、流体圧シリンダの座屈を確実に防止できるとともに、ロッド室圧が低下するまでは閉じ状態となる座屈防止用逆止弁を設けることで、リリーフ弁を、流体圧シリンダの座屈を確実に防止可能な低圧に設定でき、かつ、座屈防止用逆止弁とリリーフ弁との簡単な構成で、回路を安価かつ容易に製造できる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、ボトム室とコントロール弁との間からタンクに直接接続した通路中に、コントロール弁を経てロッド室に供給される作動流体の流体圧をパイロット圧として開き動作するロジック弁を設けることで、タンクに戻る戻り流体の一部をコントロール弁よりも上流側からバイパス回路によりタンクへと直接逃がして戻り流路を複数とし、流体圧シリンダの縮み動作時の戻り流体のコントロール弁のみでの圧力損失を軽減し、流体圧シリンダの縮み速度を確保できるとともに、バイパス用シーケンス弁によりロジック弁の作動圧を一定に保ち、バイパス回路の動作の安定性を向上でき、かつ、これらバイパス用シーケンス弁、ロジック弁および通路による簡単な構成で、回路を安価かつ容易に製造できる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、流体圧回路を作業機械の作業装置の多段伸縮アームに用いることで、長尺状に伸びる多段伸縮アームの座屈を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を図1に示された実施の形態を参照しながら詳細に説明する。なお、図3で示した従来技術と同一の構成部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、本実施の形態を説明するにあたり、背景技術で用いた図2を適宜参酌する。
【0026】
図1は流体圧回路としての油圧回路を示し、この油圧回路は、図2に示される上部旋回体3に搭載されている。
【0027】
ボトムライン23中には、コントロール弁16を経てテレスコシリンダ21のボトム室21aの間に低圧リリーフ弁31と、戻り油のみを流すチェック弁32とが並列に接続されている。
【0028】
さらに、ボトムライン23のボトム室21a側には、ボトム室21aからの戻り油をタンク12に直接逃がすバイパス回路34と、テレスコシリンダ21の座屈を防止する座屈防止回路35とが設けられている。
【0029】
また、テレスコシリンダ21のロッド室21b側には、ピストン22のロッド22aの落下を防止する落下防止回路36が直付けされている。
【0030】
さらに、ロッドライン24のスローリターン弁25の下流側には、ボトムライン23の低圧リリーフ弁31とバイパス回路34との間に接続される再生通路としての再生ライン37が分岐されている。そして、この再生ライン37とボトムライン23との間には、ロッド室21bからの戻り油をボトム室21a側に再生する再生弁38とボトムライン23からの戻り油を止める逆止弁としてのチェック弁39とがロッドライン24からボトムライン23へ向けて順次設けられ、これら再生弁38、チェック弁39およびスローリターン弁25により、ロッド室21bからの戻り油の大半の流量を、再生ライン37を介してボトムライン23からボトム室21aへと再生する再生回路40が構成されている。
【0031】
また、バイパス回路34は、ボトムライン23のボトム室21aとコントロール弁16との間にて分岐され、センタバイパスライン14を介してタンク12へと直接接続されたドレン用の通路41と、この通路41に設けられたパイロット操作式のロジック弁42と、ロッドライン24のスローリターン弁25の上流側からロジック弁42に導かれるバイパス用パイロット圧ライン43に設けられたバイパス用シーケンス弁44とを備えている。
【0032】
ロジック弁42には、リターンスプリング45が一端側に当接され、ロッド室21bに供給される作動油の油圧、具体的にはスローリターン弁25の入口圧が、バイパス用パイロット圧ライン43を介して他端側に導かれている。
【0033】
そして、このロジック弁42は、バイパス用パイロット圧ライン43を介して導かれたパイロット圧により開き動作可能となっているとともに、このパイロット圧の低下によりリターンスプリング45にて閉じ動作可能となっている。
【0034】
また、バイパス用シーケンス弁44は、バイパス用パイロット圧ライン43を介してロジック弁42に導かれるパイロット圧を所定圧に設定するものである。
【0035】
さらに、バイパス用パイロット圧ライン43と通路41との間には、バイパス用パイロット圧ライン43の残圧を抜くためのオリフィス46が設けられている。
【0036】
そして、座屈防止回路35は、ボトムライン23のボトム室21aとバイパス回路34との間から分岐され、通路41のロジック弁42とオリフィス46との間に接続された接続ライン51に設けられ、ボトムライン23から通路41へ向けて、座屈防止用逆止弁としてのパイロット操作式逆止弁であるパイロットチェック弁53とリリーフ弁54とが順次設けられている。
【0037】
パイロットチェック弁53には、テレスコシリンダ21のロッド室21bに発生するロッド室圧が、ロッドライン24から分岐されたパイロット圧ライン56を介してパイロット圧として導かれ、このパイロット圧が低下した際、すなわちボトム室21aへの作動油の供給が停止した際にのみ、開き動作可能となっている。
【0038】
また、リリーフ弁54は、パイロットチェック弁53の開き動作により作動される低圧リリーフ弁であり、テレスコシリンダ21のボトム室21aに発生するボトム室圧を所定圧に抑制するものである。なお、この所定圧は、テレスコシリンダ21の座屈を防止する圧に設定されている。
【0039】
さらに、落下防止回路36は、ロッドライン24に設けられた落下防止用逆止弁としてのチェック弁61と、このチェック弁61に並列に設けられた落下防止用ロジック弁62と、ロッドライン24から分岐され通路41に接続された接続ライン63に設けられたオーバロードリリーフ弁64とを備えている。
【0040】
チェック弁61は、ロッド室21bからの戻り油を止めるものである。
【0041】
また、落下防止用ロジック弁62には、リターンスプリング66が一端側に当接され、ボトムライン23から分岐されたパイロット圧ライン67が他端側に導かれている。このパイロット圧ライン67は、ボトム室21aに供給される作動油の油圧、具体的には低圧リリーフ弁31の入口圧を落下防止用ロジック弁62へとパイロット圧として導くものである。
【0042】
そして、落下防止用ロジック弁62は、パイロット圧ライン67を介して導かれたパイロット圧により開き動作可能となっているとともに、このパイロット圧の低下により、リターンスプリング66にて閉じ動作可能となっている。
【0043】
さらに、オーバロードリリーフ弁64は、ロッド室21bの負荷圧を設定するものである。
【0044】
また、再生弁38には、リターンスプリング71が一端側に当接され、ボトムライン23から分岐された分岐パイロット圧ライン72が他端側に導かれている。この分岐パイロット圧ライン72は、ボトム室21aに供給される作動油の油圧、具体的には低圧リリーフ弁31の入口圧を再生弁38へとパイロット圧として導くものである。
【0045】
そして、再生弁38は、分岐パイロット圧ライン72を介して導かれたパイロット圧により開き動作可能となっているとともに、このパイロット圧の低下により、リターンスプリング71にて閉じ動作可能となっている。したがって、再生弁38は、ボトム室21a側への再生流量の調整機能、すなわちメータリング機能を有している。
【0046】
次に、上記一実施の形態の作用を説明する。
【0047】
(テレスコシリンダ21の伸び動作)
テレスコシリンダ21、すなわち油圧ショベルAのテレスコアーム7の伸び動作をする場合には、オペレータが図示されない操作レバーなどを操作すると、コントロール弁16のスプール16aが伸び側に切換わる。
【0048】
これにより、メインポンプ13から吐出された作動油がパラレルライン15からロードホールド用チェック弁17を介してボトムライン23に供給され、低圧リリーフ弁31の入口圧がメインポンプ13から供給される流量に略比例し、低圧リリーフ弁31から流出した圧油は、テレスコシリンダ21のボトム室21aに供給され、テレスコシリンダ21のピストン22をロッド室21b側へと押動する。
【0049】
同時に、低圧リリーフ弁31の入口圧がパイロット圧ライン67を介して落下防止用ロジック弁62に導かれ、この落下防止用ロジック弁62が開いてテレスコシリンダ21のロッド室21bの作動油が戻り油としてスローリターン弁25側と再生弁38側とに流れる。
【0050】
この戻り油は、再生弁38にて流量制御されつつ、その一部流量がスローリターン弁25からコントロール弁16を介してタンクライン18からタンク12へと戻されることで、テレスコシリンダ21すなわちテレスコアーム7が伸びる。戻り油の大半の流量が、分岐パイロット圧ライン72を介して導かれた低圧リリーフ弁31の入口圧により開いた再生弁38にてチェック弁39を介してボトムライン23からボトム室21a側へと再生されることで、テレスコシリンダ21すなわちテレスコアーム7の伸びが増速される。
【0051】
したがって、ボトム室21a側への再生流量がスローリターン弁25および再生弁38により調整されることでテレスコシリンダ21の伸び速度の増速分が調整され、かつ、微操作時にはスローリターン弁25からコントロール弁16に流出する流量をコントロール弁16で制御するので、テレスコシリンダ21すなわちテレスコアーム7の伸びの微操作が可能となる。
【0052】
そして、テレスコアーム7が伸び、クラムシェルバケット8が着地してテレスコアーム7の伸長が停止すると、テレスコシリンダ21のロッド室21bのロッド室圧が低下し、このロッド室圧の低下により座屈防止回路35のパイロットチェック弁53が開いてリリーフ弁54が作動し、ボトム室圧が通路41を介してタンク12へと抜かれて低下し、テレスコシリンダ21の座屈が防止される。
【0053】
(テレスコシリンダ21の縮み動作)
テレスコシリンダ21、すなわち油圧ショベルAのテレスコアーム7の縮み動作をする場合には、オペレータが図示されない操作レバーなどを操作すると、コントロール弁16のスプール16aが縮み側に切換わる。
【0054】
これにより、メインポンプ13から吐出された作動油がパラレルライン15からロードホールド用チェック弁17を介してロッドライン24に供給され、スローリターン弁25およびチェック弁61を介してテレスコシリンダ21のロッド室21bに導かれて、テレスコシリンダ21のピストン22をボトム室21a側へ押動する。
【0055】
同時に、スローリターン弁25の入口圧の上昇によりバイパス用シーケンス弁44が開き、バイパス用パイロット圧ライン43を介して導かれたパイロット圧によりロジック弁42が開く。
【0056】
このため、テレスコシリンダ21のボトム室21aからの戻り油が、チェック弁32およびコントロール弁16を介してタンクライン18からタンク12に戻されるとともに、一部の戻り油は開動作したロジック弁42から通路41を介して別回路でタンク12へと直接逃がされ、コントロール弁16のみでの圧力損失が軽減され、メインポンプ圧が低下する。
【0057】
このとき、定馬力制御しているメインポンプ13の吐出流量が、圧力低下に伴って増加するため、テレスコシリンダ21すなわちテレスコアーム7の縮み速度が増速される。
【0058】
また、テレスコシリンダ21のボトム室21aへの作動油の供給が停止すると、低圧リリーフ弁31の入口圧が低下し、この入口圧がパイロット圧として導かれる落下防止用ロジック弁62が閉じることでロッド室圧が保持され、テレスコシリンダ21のピストン22の落下が防止される。
【0059】
次に、上記一実施の形態の効果を列記する。
【0060】
テレスコシリンダ21のボトム室21aに供給される作動油の油圧をパイロット圧として再生弁38を作動させて、このパイロット圧に応じた戻り油の一部流量をボトム室21a側に再生することにより、例えばリリーフ弁などにより作動油圧に一定の背圧を付与する従来の場合と比較して、メインポンプ圧が必要以上に増加することを防止し、エネルギー損失を抑制できる。
【0061】
また、再生回路40により戻り油の大半の流量をボトム室21aへと再生し、一部流量をスローリターン弁25からコントロール弁16を介してタンク12へと逃がすことにより、ボトム室21aへの圧油の供給が追いつかずに負圧が生じることなどを防止でき、このような負圧の発生に伴うテレスコシリンダ21のシールの損傷および応答遅れなどを確実に防止できるとともに、戻り油の全量を再生する従来の場合のようにテレスコシリンダ21の伸びの増速分がオンオフ的となることがなく、再生弁38の再生流量をパイロット圧に応じて微調整でき、コントロール弁16および再生弁38によりテレスコシリンダ21の伸び速度を容易に調整できる。
【0062】
さらに、再生回路40を、スローリターン弁25と、再生弁38と、チェック弁39とで構成することで、この再生回路40を安価かつ容易に製造できる。
【0063】
また、テレスコアーム7の先端に設けられたクラムシェルバケット8が着地した場合、あるいはこのクラムシェルバケット8が岩などに当接してテレスコシリンダ21の伸びが停止した場合など、テレスコシリンダ21のロッド室圧が低下した際に、この低下に対応してパイロットチェック弁53が開き動作し、この開き動作により作動したリリーフ弁54がテレスコシリンダ21のボトム室圧を、テレスコシリンダ21の座屈を防止可能な所定圧に低下させることで、テレスコシリンダ21の座屈を確実に防止できる。
【0064】
さらに、コントロール弁16を経てテレスコシリンダ21のロッド室21bに供給される作動油の油圧をパイロット圧として開き動作するロジック弁42を通路41中に設けることで、テレスコシリンダ21のボトム室21aからコントロール弁16を経てタンク12に戻る戻り油の一部をコントロール弁16よりも上流側からバイパス回路34によりタンク12へと直接逃がして戻り流路を複数とし、テレスコシリンダ21の縮み動作時の戻り油のコントロール弁16のみでの圧力損失を軽減し、定馬力制御されているメインポンプ13の流量を増加させて、テレスコシリンダ21の縮み速度を確保できる。
【0065】
同時に、テレスコシリンダ21のボトム室21aに供給される作動油を低圧リリーフ弁31で所定圧に設定することで、テレスコシリンダ21の動作の安定性を向上できるとともに、テレスコシリンダ21の安定した伸び速度をオペレータの使い易い状態に制御できる。
【0066】
したがって、テレスコシリンダ21の伸縮速度を確保できる。
【0067】
そして、バイパス回路34は、バイパス用シーケンス弁44によりロジック弁42の作動圧を一定に保つことで、動作の安定性を向上できるとともに、これらバイパス用シーケンス弁44、ロジック弁42および通路41による簡単な構成で、安価かつ容易に製造できる。
【0068】
また、座屈防止回路35は、パイロットチェック弁53とリリーフ弁54との簡単な構成により、安価かつ容易に製造できるとともに、テレスコシリンダ21のロッド室圧が低下するまでは閉じ状態となるパイロットチェック弁53を設けることで、リリーフ弁54を、テレスコシリンダ21の座屈を確実に防止可能な低圧に設定できる。
【0069】
さらに、落下防止回路36をロッド室21b側に直付けすることで、ロッド室21b側と落下防止回路36との間に配管が存在せず、配管の破損などによる落下防止回路36の動作不良などを防止できるとともに、テレスコシリンダ21のボトム室21aへの作動油の供給を停止した際には、落下防止回路36によりピストン22のロッド22aの落下を確実に防止できる。
【0070】
そして、落下防止回路36は、チェック弁61、落下防止用ロジック弁62およびオーバロードリリーフ弁64による簡単な構成で、安価かつ容易に製造できる。
【0071】
また、落下防止回路36の落下防止用ロジック弁62、再生弁38およびバイパス回路34のロジック弁42などを、駆動系の油圧をパイロット圧として切換えるので、例えばパイロットポンプからのパイロット圧ライン、あるいは電気信号ラインなどを用いる必要がなく、配管・配線構造を簡略化できるとともに、パイロット圧ラインによる応答遅れも発生しにくくなる。
【0072】
そして、このような油圧回路を油圧ショベルAの作業装置5のテレスコアーム7に用いることで、テレスコアーム7の伸び速度を容易に調整でき、テレスコアーム7の微操作が可能となってテレスコアーム7の操作性が向上するとともに、長尺状に伸びるテレスコアーム7の座屈を確実に防止でき、油圧ショベルAの信頼性を向上でき、かつ、テレスコアーム7による作業量を向上して工期の短縮なども可能となり、作業コストを低減することもできる。
【0073】
特に、テレスコアーム7での作業時には、縮み速度よりも伸び速度の調整が必要となるので、上記のようにテレスコシリンダ21およびテレスコアーム7の伸び速度の調整を可能とすることで、作業性の向上が図れる。
【0074】
なお、本発明の流体圧回路は、流体圧シリンダを備える他の機器に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る流体圧回路の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】同上流体圧回路を備えた作業機械を示す説明側面図である。
【図3】従来例の流体圧回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0076】
5 作業装置
7 多段伸縮アームとしてのテレスコピックアーム
12 タンク
16 コントロール弁
21 流体圧シリンダとしてのテレスコピック用シリンダ
21a ボトム室
21b ロッド室
22 ピストン
22a ロッド
25 流量制御弁としてのスローリターン弁
38 再生弁
39 逆止弁としてのチェック弁
41 通路
42 ロジック弁
44 バイパス用シーケンス弁
53 座屈防止用逆止弁としてのパイロットチェック弁
54 リリーフ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を制御するコントロール弁と、
コントロール弁を経た作動流体により作動される片ロッド型のピストン、このピストンによりロッド側に形成されたロッド室およびピストンを介してロッド室の反対側に形成されたボトム室を有する流体圧シリンダと、
ロッド室からの戻り流量を制御する流量制御弁と、
ロッド室からの戻り流体の流量制御弁よりも上流側にて分岐され、ボトム室に供給される作動流体の流体圧をパイロット圧として作動し、このパイロット圧に応じた流量制御弁により制御される流体の一部流量をボトム室へと再生する再生弁と、
この再生弁とボトム室との間に設けられた逆止弁と
を具備したことを特徴とする流体圧回路。
【請求項2】
流体圧シリンダのボトム室に連通され、流体圧シリンダのロッド室に発生するロッド室圧の低下に対応して開き動作を可能とする座屈防止用逆止弁と、
この座屈防止用逆止弁の開き動作により作動して流体圧シリンダのボトム室に発生するボトム室圧を流体圧シリンダの座屈を防止する所定圧に抑制するリリーフ弁と
を具備したことを特徴とする請求項1記載の流体圧回路。
【請求項3】
ボトム室とコントロール弁との間からタンクに直接接続された通路と、
この通路中に設けられ、コントロール弁を経て流体圧シリンダのロッド室に供給される作動流体の流体圧をパイロット圧として開き動作するロジック弁と、
ロジック弁に供給されるパイロット圧を所定圧に設定するバイパス用シーケンス弁と
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の流体圧回路。
【請求項4】
作業機械に作動可能に設けられた作業装置の多段伸縮アームの伸縮に用いる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の流体圧回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−292091(P2006−292091A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114488(P2005−114488)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】