説明

流体混合器、流体混合輸送路および流体混合方法

【課題】
物理的に質の異なる流体を含む輸送流体を流体輸送路に複数の筒状ノズルを設けるだけで均質化して混合することができる流体混合器および流体混合輸送路あるいは流体混合方法を提供することにある。
【解決手段】
この発明は、流体輸送管の内部に複数の筒状ノズルを配置して複数の筒状ノズルの前後の筒状ノズルにより相互にサイクロン流を逆方向に旋回させることで、物理的に質の異なる流体を混合して輸送流体を均質化して輸送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体混合器、流体混合輸送路および流体混合方法に関し、詳しくは、物理的に質の異なる流体を含む輸送流体を流体輸送路に複数の筒状ノズルを設けるだけで均質化して輸送することが可能であって、特に、半導体製造装置の反応炉に安定的な原料ガスを供給することができ、しかもガス供給源から反応炉までの輸送路を短縮することができるような流体混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術では、砒素等のイオン注入ドーピングのための原料ガスをアルシンあるいは水素などにより希釈することが行われている。このような場合にガス混合器が使用されて原料ガスの希釈が行われる(特許文献1)。
CVD装置等の半導体製造装置のプロセス材料となる液体原料は気化器により気化されてガス化されてCVD装置等の反応炉に送出される。気化器に設けられる霧化器では有機金属材料の原料液をキャリアガスにより霧化(ミスト化)して複数の原料液のミストを螺旋溝を通してサイクロン混合して液体原料をガス化することが行われている(特許文献2)。
【0003】
さらに、半導体製造の分野では逆方向に捩れた捻れ部材を連続的に配置して混合するガス輸送路もある。これに類するものとして、半導体関係の分野とは別に、石油等の流体を流す輸送路において密度の相違する流体を混合して均質化して輸送する多相流体混合装置が公知である(特許文献3)。これは、輸送路の内部に旋回路を形成する捻れプレートを設けて捻れプレートを通すことにより旋回する流体の流れを発生させて密度の相違する流体を混合して均質化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−543563号公報
【特許文献2】特開2003−268552号公報
【特許文献3】特開2001−162150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるものは、単に配管路で物理的に質の異なる2系統のガスをT字管で合流させることで混合するものである。このようにT字管で2系統のガスを合流混合したとしても物理的に質の異なるガスが管に流れるときには輸送管内のガスの流れが層流となるので、輸送ガスは、管壁面側と管中心側とで濃度の異なる混合状態になり易く、安定的な原料ガスを反応炉等に供給するには安定的な原料ガスとしては十分なものになっていない問題がある。
特許文献2のように原料液のミストとキャリアガスを混合する方法は、輸送管に長い複数の螺旋溝を形成する必要がある。しかも、最近では、高誘電率材料、低誘電率材料、低抵抗材料、強誘電体材料などの温度制御条件が厳しい低蒸気圧材料の液体原料(固体原料は溶剤に溶かして液化)の原料ガスをキャリアガスと混合して輸送する。そのため、螺旋溝によるサイクロン輸送によるガス混合は、螺旋溝を長く採ることが要求され、その上、混合ガスが螺旋溝の壁面で温度変化を起こしやすい。これにより原料が再凝縮されてフレーク、パーティクルが発生する問題がある。
【0006】
さらに、特許文献3のような捻れプレート等により混合されたガスを半導体製造技術で使用することも考えられるが、また、半導体技術の分野では、捩れた捻れ部材を連続的に配置して混合することも行われているが、輸送管内部で捻れプレート等により生成される旋回流(サイクロン流)は強い旋回流とはならないために十分な均質混合を求めるには、その分、輸送管の距離を長くせざるを得ない。そのため、ガス供給源から反応炉までの輸送路を短縮することが難しくなる。
なお、次世代半導体製造において、原料の再凝縮によるフレーク、パーティクルの発生を抑制するために、また、より安定的な原料ガスを反応炉に供給するためにガス供給源から反応炉までの輸送路の短縮は要請される事項の1つである。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、物理的に質の異なる流体を含む輸送流体を流体輸送路に複数の筒状ノズルを設けるだけで均質化して混合することができる流体混合器および流体混合輸送路あるいは流体混合方法を提供することにある。
また、この発明の他の目的は、半導体製造装置の反応炉に安定的な原料ガスを供給することができ、しかもガス供給源から反応炉までの輸送路を短縮することができる流体混合器および流体混合輸送路あるいは流体混合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するためのこの発明の流体混合器および流体混合輸送路の特徴は、流体輸送管と、この流体輸送管の内部に固定されこの流体輸送管の内径より小さい外径と開口した底部とを有しその筒軸が流体輸送管の管軸方向に沿って配置されその頭部が閉塞され物理的に質の異なる流体を含む輸送流体を外側あるいは内側に吹出す吹出口がその側面に形成された複数の筒状ノズルとを備えている。そして、複数の各筒状ノズルの吹出口から吹出す輸送流体が流体輸送管の円形内壁面に斜め方向から当たることであるいは筒状ノズルの円形内壁面に斜め方向から当たることでサイクロン流が生成されるものであって、複数の筒状ノズルは、所定間隔で配置され、サイクロン流の回転方向が逆方向になるように前後の筒状ノズルの吹出口が配置されているものである。
また、この発明の流体混合方法の特徴は、複数の各筒状ノズルから吹出す前記の輸送流体を流体輸送管の円形内壁面に斜め方向から当ててあるいは筒状ノズルの円形内壁面に斜め方向から当ててサイクロン流を生成しかつ前後の筒状ノズルから吹出す輸送流体のサイクロン流の回転方向が逆方向になるように前後の筒状ノズルの吹出口を配置するものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、この発明にあっては、流体輸送管の内部に複数の筒状ノズルを配置して複数の筒状ノズルの前後の筒状ノズルにより相互にサイクロン流を逆方向に旋回させることで、物理的に質の異なる流体を混合して輸送流体を均質化して輸送する。
これにより、輸送管に距離の長い複数の螺旋溝や捩れた捻れ部材を設ける必要がなく、流体輸送管において強いサイクロン流を生成する混合器を簡単にしかも管長を短いものとして形成することができる。しかも、流体輸送管路として混合器を造ることができるので、特に、半導体製造の分野ではガス供給源から反応炉までの輸送路を短縮することができる。
その結果、物理的に質の異なる流体を含む輸送流体を流体輸送路に複数の筒状ノズルを設けるだけで流体輸送管路において流体を混合して均質化して輸送することが可能となり、例えば、半導体製造装置などにあっては、反応炉に安定的な原料ガスを供給することが可能でかつガス供給源から反応炉までの輸送路を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)は、この発明の複数の筒状ノズルを用いる流体混合器を適用した一実施例のガス混合輸送路の管断面説明図、図1(b)は、流体混合器における3個の各筒状ノズルの吹出口位置での横断面説明図である。
【図2】図2(a)は、サイクロン流を生成する筒状ノズルについての説明図、図2(b)〜(d)は、その円筒ノズルの正面図、縦断面図、そして横断面図である。
【図3】図3(a)は、この発明の複数の筒状ノズルを用いる流体混合器を適用した他の実施例のガス混合輸送路の管断面説明図、図3(b)は、流体混合器における3個の各筒状ノズルの吹出口位置での横断面説明図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、その筒状ノズルの正面図、縦断面図、そして横断面図である。
【図5】図5は、この発明の複数の筒状ノズルを用いる流体混合器を適用したさらに他の実施例のガス混合輸送路の管断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1(a)において、10は、ガス混合輸送管路であって、1はそのガス混合器である。ガス混合器1は、ガス合流管2と輸送管3の間に配置されている。ガス合流管2は、例えば、液体原料ガス4aと希釈ガス4bを受けてこれの合流ガスをガス混合器1へ混合ガス4cとしてと流す。あるいは、このガス合流管2は、ガス化されたあるいはミスト化された液体原料ガス4aとキャリアガス4b等の不活性ガスからなる反応ガスの合流管となっていて、半導体処理装置へその混合ガスを原料ガスとして流す輸送管に当たる。
ガス合流管2は、T字型の管路を形成していて、直進方向に液体原料ガス4aが供給され、直角方向から希釈ガス4bあるいはキャリアガス4bが供給される。交叉するT字路の内部でこれら物理的に質の異なる2系統のガスが合流して混合ガス4cとしてこれらのガスがガス合流管2を経てガス混合器1へと送出される。
ここでは、ガス混合器1とガス合流管2、そして輸送管3の管内径は等しく、20mmφ〜30mmφ程度のものである。
ここで、物理的に質の異なるとは、液体原料ガスと希釈ガス、液体原料ガスとキャリアガスなどのように異なる物質である場合と、液体原料のミストと完全に気化された液体原料ガスなど、質量,粒径等が相違する場合も含む意味である。
ガス合流管2から輸送管3へと流れる混合ガス4cは、ガス合流管2では2系統のガスが混ざり合ってはいるが、それらが層流となってガス混合器1へ輸送される。しかし、ガス混合器1を経て輸送管3へと流れ出る混合ガス4(以下ガス4)はサイクロン流(旋回流)となっている。これにより混合ガスは均質化され、しかも、ガス4が流れる管中心部と管周辺部との温度差もなく、サイクロン効果により均一な温度でガス4が輸送されることになる。
【0011】
ガス混合器1は、ガス合流管2と輸送管3との間において溶接点S1,S6においてこれらに溶接接合されて設けられている。
ガス混合器1は、管本体5と、この管本体5の内部に所定間隔で固定された3個の筒状ノズル6,7,8とからなる。各筒状ノズル6,7,8の外径は、管本体5の内径より小さく、10mmφ〜15mmφ程度である。
なお、筒状ノズル6,7,8における所定間隔は、ガス4のサイクロン流としての流れが後段の筒状ノズルまで維持できる間隔であれば任意に選択することが可能である。逆にたとえ、相互に頭部と底部とが接触する程度に近くても、前段におけるガス4のサイクロン流が後段に伝達される距離が維持されていればそれでもよい。
ところで、このガス混合器1は、両側にエッジフランジ(縁辺突起部)を設けて、ガス合流管2と輸送管3とに同様なエッジフランジ(縁辺突起部)を設けてエッジフランジを介してボルト結合等により押圧固定してガス合流管2と輸送管3からなる輸送管路の間にガス混合器1を設けてもよい。
【0012】
ガス混合器1は、筒状ノズルが設けられた3個の筒状ノズル管51と2個の接続管52とが交互に接続されて溶接線S2〜S5で結合されることで構成されている。筒状ノズル管51にはノズル固定円板53が管を塞ぐ節としてあらかじめ溶接固定されている。ノズル固定円板53には各筒状ノズル6,7,8の外径に対応する孔54がノズル固定円板53の中心よりも偏心した位置に開けられている(図1(b)参照)。そこで、管本体5は、筒状ノズル管51の管と2個の接続管52とにより構成される。
それぞれ筒状ノズル6,7,8は、3個の筒状ノズル管51のノズル固定円板53のそれぞれの孔54に挿入されて溶接固定される。これにより3個の筒状ノズル管51が形成され、これらの筒状ノズル管51のそれぞれが2つの接続管52を挟んで交互に配置されて溶接されている。
【0013】
筒状ノズル6,7,8には、それぞれ吹出口6a,7a,8aがその側面にそれぞれ設けられている。それぞれの筒状ノズル6,7,8の頭部6b,7b,8bは、半球状に形成され、閉塞している。
図1(a)では、吹出口6a,8aを実線で示し、吹出口7aを点線で示してある。図1(b)に示すように筒状ノズル6と筒状ノズル8とは、吹出口6a,8aが同じ位置にあって、筒状ノズル6が設けられた筒状ノズル管51と筒状ノズル8が設けられた筒状ノズル管51とは同じ構造になっている。これに対して図1(b)に示すように筒状ノズル7の吹出口7aの位置は、吹出口6a,8aとは相互に反対方向に配置されるように異なった位置にある。
すなわち、実線で示す吹出口6a,8aは図面表側に向いていて、点線で示す吹出口7aの位置は、図面裏面側に向いていてガス4の吹出し方向が異なっている。
なお、図1(a)においては、説明の都合上、筒状ノズル6は部分断面図としているが、筒状ノズル7,8はそれぞれ断面図としてはいない。
各吹出口6a,7a,8aは、短径(最短直径)が3mmφで長径(最長直径)が10mmφ程度の長孔である。
【0014】
図1(b)に示すように筒状ノズル6〜8の各筒軸(筒の中心)は、筒状ノズル管51の管本体5の中心に対して偏心した位置に配置されている。
この円筒ノズルの構造について筒状ノズル6を一例として図2(a)〜(d)を参照して説明する。なお、図2(a)は、サイクロン流を生成する筒状ノズルについての説明図、図2(b)〜(d)は、その円筒ノズルの正面図、縦断面図、そして横断面図である。また、説明の都合上、図2(a)においては筒状ノズル6だけを示し、筒状ノズル7,8が省略されている。
筒状ノズル6は、図2(b)に示すように、円板部材61と、この円板部材61からガス4の輸送方向に筒状ノズル管51の管本体5の軸方向に沿って突出し、頭部が半球状に閉塞されたノズル部62とからなる。
ノズル部62には、側面に吹出口6aが設けられていて、吹出流が横方向(ノズル部62の筒軸方向ではなく、これに対してほぼ直交する面の方向)に噴射される。ノズル部62の底部の開口は円板部材61の開口に連通していて筒状ノズル6の底部は開口63となっていて、この開口63にガス4cを受ける。
【0015】
図2(a),図2(c),図2(d)に示すように、筒状ノズル6の筒軸の位置は、吹出口6aが筒状ノズル管51の円形内壁面53に近い位置に配置されるように筒状ノズル管51の管軸の位置(その中心線O)よりも円形内壁面51b側に所定量(=Δd,図2(d)参照)だけオフセットしている。
これにより各筒状ノズル6の側面に設けられた吹出口6aは、それぞれに図2(a)に示すように、ガス吹出し位置においては円形内壁面51b近傍に位置しかつその開口方向がガス4の吹出し位置に対応する円形内壁面51bに対応するように配置されている。
その結果、ガス4は、筒状ノズル6の横方向(輸送管路の管軸に対してほぼ直角方向)から円形内壁面51bに沿って吹出されるので、生成される、ガス4のサイクロン流は、その波形空間周期が短く、強いサイクロン流となる。なお、サイクロン流の強さは、ガス4の流速と吹出口6aと開口径にも関係しているが、吹出口6aが開口63よりも小さくなっていて、筒で絞られてガス4が噴射されることで、螺旋溝や捩れた捻れ部材に比してより強いものとなる。
以上のことは、筒状ノズル7,8の各吹出口7a,8aについても同様であり、吹出すガス4が筒状ノズル管51の円形内壁面51bに斜めから当たってサイクロン流となるように筒状ノズル6の側面に長円形に穿孔されている。なお、各吹出口6a〜8aは、長楕円形であってもよい。
【0016】
また、図2(c)に示すように、円形内壁面51b側に吹出口をオフセットさせることで、吹出したガス4の流れのうち逆流しようとする流が筒状ノズルの外壁面と円形内壁面51bとの間に流れ込む。このことでこの領域の圧力が上がり、これに対して逆流しない吹出流が流れるより広い空間の圧力は低くなるので吹出す空間の圧力差により吹出すガスの流れがガス4の吹出し位置に対応する円形内壁面51bにおいて接線方向に向かい円形内壁面51bに沿うように曲がる。
特に、図2(d)に示すように、吹出口を接線Tに対してθ傾けることで吹出すガスの流れが円形内壁面51bに沿い易くなり、サイクロン流を生成し易くなる。これにより、筒状ノズル管51の円形内壁面51bに吹出流が当たるとき当たる位置での接線Tに対する吹出流の傾斜が小さくなる上に、単に斜めから円形内壁面51bに当ててサイクロン流を生成する場合よりも効率よくサイクロン流の生成ができる。
もちろん、前記のオフセットは、筒状ノズル管51の円形内壁面51bに各筒状ノズル6〜8のそれぞれの外壁面が接触するものであってもよい。
【0017】
図1(b)は、3個の筒状ノズル6,7,8の吹出口位置での横断面説明図である。筒状ノズル6と筒状ノズル8の吹出口6a,8aと筒状ノズル7の吹出口7aとは、縦側の中心線Ovを挟んで対称に配置されている。そのためガス4を吹出すこれらの方向が逆方向となり、筒状ノズル管51の円形内壁面に斜めから当たって、前者はガス進行側からみて反時計方向の回転となり、後者が時計方向の回転となる。
図1(a)に戻り、このサイクロン流について説明すると、筒状ノズル6の吹出口6aから吹出すガス4は、図1(b)に示すように吹出口6aが縦側の中心線Ovの左側に位置しているので、管内壁面左側において筒状ノズル管51の円形内壁面51bに斜めから当たって円形内壁面51bに沿って移動して反時計方向に旋回するサイクロン流となる。そして、そのサイクロン流となったガス4は、接続管52を通り、次の筒状ノズル7へと至る。筒状ノズル7では、図1(b)に示すように吹出口7aが縦側の中心線Ovに対して吹出口6aと対称となる管内壁面右側に位置しているので、サイクロン流となったガス4は、管内壁面右側において筒状ノズル管51の円形内壁面51bに斜めから当たって円形内壁面51bに沿って移動して前記とは逆に時計方向に回転するサイクロン流となる。
【0018】
さらに、筒状ノズル8では、図1(b)に示すように吹出口8aが吹出口6aと同様に管内壁面左側に位置しているので、管内壁面左側において筒状ノズル管51の円形内壁面51bに斜めから当たって円形内壁面51bに沿って移動するので、サイクロン流となったガス4は、前記の筒状ノズル7の場合とは逆に時計方向に旋回する。
これにより、前後の筒状ノズル6,7の吹出口6a,7a、そして筒状ノズル7,8の吹出口7a,8aの関係は、それぞれにサイクロン流の回転方向が逆転される配置になっている。
その結果、物理的に質の異なるガスを含むガス4は、流れる方向が2回反転されることになり、この逆転の旋回により均質化される。しかも、ガス合流管2を層流となって流れたガス4cは、ガス混合器1を経ることで筒状ノズルの吹出口8aから輸送管3にサイクロン流となって流れ出る。
【0019】
図3(a)は、この発明の複数の筒状ノズルを用いる流体混合器を適用した他の実施例のガス混合輸送路の管断面説明図、図3(b)は、流体混合器における3個の各筒状ノズルの吹出口位置での横断面説明図である。
図3(a)に示すように、11は、図1(a)のガス混合器1に対応するガス混合器であるが、各筒状ノズル12,13、14がそれぞれ図1(a)に示す筒状ノズル6,7,8とは異なり、管本体9内においてガス4の流れる方向に対して図1(a)とは逆向きに管本体9内に固定されている。しかも、その筒形状にあっては、その筒長さが短く帽子状のものになっていて、各筒状ノズル12,13、14の筒軸は、ガス合流管2と輸送管3の軸に一致するように、オフセットされることなく、管本体9の軸に一致して中央に配置されている。
その理由は、筒状ノズルの外側から内側に流体を吹出して筒状ノズルの内側にある円形内壁面に斜めから当ててサイクロン流を生成するからである。
【0020】
図3(a)の筒状ノズル管91は、図1(a)の筒状ノズル管51に対応しているが、先端部に筒状ノズルが一体的に形成された管となっている点で相違している。そこで、筒状ノズル管91の筒状ノズル側を頭部とすると、この頭部側とこれに対して後ろ側となる筒状ノズル管91の管端部とが接続管92に接続されて3つの筒状ノズル管91が接続管92を介して溶接固定されることで、筒状ノズル12,13,14を備えるガス混合器11が形成されている。なお、この場合、接続管92を省いて、前段の筒状ノズル管91の後側の管端部と筒状ノズル管91の頭部とを直接接続することも可能である。
ここでの接続管92は、図1(a)の接続管52に対応している。また、筒状ノズル22を有する筒状ノズル管91の前端部には、他の接続管92より少し長い接続管92が接続され、溶接箇所S7〜S13でそれぞれの管を接続する。
【0021】
筒状ノズル12,13,14は、図1(a)の筒状ノズル6,7,8とは異なり、それぞれに3個の吹出孔が設けられている。
これについて筒状ノズル12を一例として図4を参照して以下説明すると、図4(c)に示すように筒状ノズル12の側面には3個の吹出孔12a,12b,12cが設けられている。
図4(b)の断面図に示すように、吹出口12a,12b,12cは、筒状ノズル12の筒軸に直交する面に沿ってかつ筒状ノズル12の円形内壁面に接線方向で接続するように外周側面において筒状ノズル12の外周に対して等間隔になるように外周側面に対して斜めに穿孔された3個の孔である。
図4(c)の筒状ノズル12に例で示すように、各孔の接線方向での内部との接合は、筒状ノズル12の内径が10mmφのときには筒状ノズル12の筒軸に直交する面内で接続箇所に立てた法線Nに対して傾斜角θがθ=60°程度の傾斜になる。
【0022】
図4(a)に示すように、筒状ノズル12は、帽子状のノズル部121とこの帽子の鍔部となるフランジ部122とからなる。フランジ部122は、図2(a)の円板部材61に対応する円板部材となっていてその厚さが1mmであり、筒状ノズル管91の管内径を15mmφとし、管厚を1mmとすると、外径が17mmφの円板となる。筒状ノズル12の最大外径は12.0mmφである。
各吹出口12a,12b,12cは、フランジ部122の表面から2.5mm〜5mmの高さ位置に形成されている。フランジ部122の表面から孔径の倍以上、吹出口の位置が離れていないと、筒状ノズル12の円形内壁面にガス4の吹出流が十分に当たらなくなるからである。
【0023】
フランジ部122に結合する位置での筒状ノズル12の外径は、筒状ノズル管91の内径の1/2の径よりも大きく、筒状ノズル12の帽子状の頭部は半球状に閉塞されている。その高さは12mmであり、吹出口12a,12b,12cの孔径は、例えば2.0mmφであって、これは、1.0mmφ〜5mmφの範囲から選択される。
なお、筒状ノズル管91の内径は、筒状ノズル12の外径より大きく、筒状ノズル12の内径は、筒状ノズル管91の内径と等しいか、これより小さいものであればよい。
以上のことは、筒状ノズル13,14も同様の構造になっているが、図3(b)に示すように、吹出口12a,12b,12cあるいは吹出口14a,14b,14cと吹出口13a,13b,13cとは図1の実施例の縦側の中心線Ovを挟んだ対称配置と同様に、中心線Ovを中心に反転した状態で相互に対称関係の孔配置になっている。
すなわち、筒状ノズル12の吹出口12a,12b,12cおよび筒状ノズル14の吹出口14a,14b,14cは、それぞれガス4の進行方向側からみてガス4が筒状ノズル12,14の内部に時計方向に流入するように側壁面に対して斜めに穿孔されている。これに対して筒状ノズル13の吹出口13a,13b,13cは、これとは穿孔方向が逆になっていて、ガス4が筒状ノズル13の内部に反時計方向に流入するように側壁面に対して逆方向に斜めに穿孔されている。
これにより、物理的に質の異なるガスを含むガス4は、図1の実施例と同様に流れる方向が2回逆転されることになり、この逆転の旋回を経て均質化される。
【0024】
図5は、図1の筒状ノズル7のように吹出孔の位置を筒状ノズル6,8の吹出孔に対して対称配置することなく、同じ構造の2個の円筒ノズル16との間に吹出口の穿孔方向の異なる1個の円筒ノズル16aを配置してこれら3個のうち真ん中の円筒ノズル16aの方向をガス4の流れに対して他の円筒ノズル16とは反対方向(逆方向)に向けたものである。
ガス混合器15は、ガス合流管2と輸送管3との間において溶接点S14,S19においてこれらに溶接接合されて設けられている。そして、それぞれに円筒ノズル16,16aを有する3個の筒状ノズル管51aと2個の接続管52a,52bとが交互に接続されて溶接線S15〜S18で結合されることで構成されている。なお、接続管52aは、接続管52bよりもその長さが長い。
2個の筒状ノズル16と1個の筒状ノズル16aの筒軸は、ガス合流管2と輸送管3の軸に一致するように、オフセットされることなく、筒状ノズル管51aの管と2個の接続管52a,52bの管とからなる管本体の軸に一致して中央に配置されている。
なお、図1(a)に示したように、53は、筒状ノズル管51aのノズル固定円板であり、54は、固定円板53に設けられた筒状ノズル16あるいは筒状ノズル16aの外径に対応する孔である。
【0025】
ガス混合器15は、図3(a)のガス混合器11に対応するガス混合器であるが、2個の筒状ノズル16と1個の筒状ノズル16aは、図1(a)のガス混合器11の円筒ノズル6と同様に長い筒状の円筒ノズルである。これらのうち最初と最後の筒状ノズル16は、その吹出孔17a,18a,19aが筒状ノズル16の筒軸に沿って筒側面に縦に穿孔されている。これら吹出孔17a,18a,19aは、図3(b)の吹出孔12aと同様な小さな孔が3個縦に配列されたものである。図では見えていないが、図3(a)に示す実施例の吹出孔12b,12cと同様に円周方向に穿孔された吹出口17b,18b,19bと吹出口17c,18c,19cとがあるが図では見えていない。
すなわち、吹出口17a,18a,19a〜吹出口17c,18c,19cは、筒状ノズル16の筒軸に直交する面に沿ってかつ筒状ノズル16の円形内壁面に接線方向で接続するように外周側面において筒状ノズル16の外周に対して等間隔になるように外周側面に対して斜めに穿孔された円周方向の3個の孔がそれぞれに設けられている。
その結果として、吹出孔17a,18a,19a〜吹出口17c,18c,19cとは、それぞれ図3(b)の筒状ノズル12あるいは筒状ノズル14の断面図に示すものと同様な関係にあって、筒状ノズル16には、3×3で合計で9個の吹出孔が設けられている。
【0026】
ガス混合器15の最初と最後の間に配置された筒状ノズル16aは、筒状ノズル16に対して頭の方向が反転されてガス混合器15内部に設けられ、吹出孔20a,21a,22aが筒状ノズル16aの筒軸に沿って筒側面に縦に穿孔されている。これら吹出孔20a,21a,22aは、逆方向に穿孔された図3(b)の吹出孔13aと同様な小さな孔が3個縦に配列されたものである。
吹出孔20a,21a,22aの穿孔方向は、筒状ノズル16aの頭部を180°回転させて筒状ノズル16の方向に合わせると分かるように点線部の孔影の方向が筒状ノズル16とは逆となっている。これは、接線方向において吹出孔17a,18a,19aとは逆方向に穿孔されているからである。
図では、筒状ノズル16aの頭部が前後の筒状ノズル16に対して反転しているので吹出孔20a,21a,22aの接線に沿う穿孔方向が一致している。そして、サイクロン流が筒状ノズル16では筒の外側へと吹き出し、筒状ノズル16aでは筒の内側へと流入することで、サイクロン流の方向が逆になる。
図では見えていないが、図3(a)に示す実施例と同様に円周方向に穿孔された20b,21b,22bと吹出口20c,21c,22cとがあって、筒状ノズル16aにも3×3で合計で9個の吹出孔が設けられている。
ここでは、前後の筒状ノズル16の吹出口から外側に向かって吹出すガス4が図示するようにガス進行方向からみて反時計方向に回転するサイクロン流となる。これに対して真ん中の円筒ノズル16aの向きが前後の円筒ノズル16とは逆になり、その吹出口が逆方向となっているので、これに流入するガス4の流れが図示するように、反対方向となる。すなわち、ガス進行方向からみて反時計方向に回転するサイクロン流が生成される。これにより生成されるガス4のサイクロン流の向きが前後の円筒ノズル16とは逆になり、その結果としてガス4のサイクロン流が円筒ノズルを通過するごとに反転することになって、ガス混合が行われる。
なお、真ん中の円筒ノズル16aの向きは、反転させることなく、筒状ノズル16と同一の方向に配置してもよいことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明してきたが、実施例における各筒状ノズルの吹出口の数は、1個か、それ以上であればよく、また、3個よりも多くてもよい。
また、実施例では、ガス混合器にサイクロン流を生成する3個の筒状ノズルを設けているが、筒状ノズルの数は複数個あればよく、また、3個以上のものを設けてもよいことはもちろんである。
さらに、実施例では、半導体製造技術におけるガス混合器として2系統のガスを混合する例を挙げているが、この発明の混合対象は、ガスに限定されるものではなく、液体を含む流体一般に適用できることはもちろんである。したがって、適用される技術分野は半導体技術分野に限定されるものではない。
また、実施例におけるガス混合器は、T字型のガス合流管の後段に設けているが、混合器の手前は、ガス合流室であっても、あるいは気化器等の機器の流入口、あるいは出力口などであってもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0028】
1,11…ガス混合器、2…ガス合流管、3…輸送管、
4…ガス、5,9…管本体、
6,7,8,12,13,14…筒状ノズル、
10…ガス混合輸送管路、51、91…筒状ノズル管、52,92…接続管、
53…ノズル固定円板、54…孔、61…円板部材、
62,121…ノズル部、122…フランジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体輸送管と、この流体輸送管の内部に固定されこの流体輸送管の内径より小さい外径と開口した底部とを有しその筒軸が前記流体輸送管の管軸方向に沿って配置されその頭部が閉塞され物理的に質の異なる流体を含む輸送流体を外側あるいは内側に吹出す吹出口がその側面に形成された複数の筒状ノズルとを備え、
複数の各前記筒状ノズルの吹出口から吹出す前記輸送流体が前記流体輸送管の円形内壁面に斜め方向から当たることであるいは前記筒状ノズルの円形内壁面に斜め方向から当たることでサイクロン流が生成されるものであって、前記複数の筒状ノズルは、所定間隔で配置され、前記サイクロン流の回転方向が逆方向になるように前後の前記筒状ノズルの前記吹出口が配置されている流体混合器。
【請求項2】
前記筒状ノズルの筒軸は、前記流体輸送管の管軸に対して前記流体輸送管の内壁側に所定量オフセットし、前記輸送流体は、この流体の吹出し位置に対応する前記流体輸送管の円形内壁面の円周に沿うように前記筒軸の方向に対して横方向に吹出される請求項1記載の流体混合器。
【請求項3】
物理的に質の異なる流体はガスあるいはミストであり、前記底部には前記輸送流体のすべてが流れ込み、前記所定量のオフセットは、前記流体輸送管の円形内壁面に前記筒状ノズルの外壁面が接触するものである請求項2記載の流体混合器。
【請求項4】
前記筒状ノズルの筒軸は、前記流体輸送管の管軸に一致するように配置され、前記吹出口は、前記筒状ノズルの外壁側面に対して斜めに穿孔され、前記輸送流体は、前記筒状ノズルの円形内壁面の円周に沿うように前記筒軸の方向に対して横方向に吹出される請求項1記載の流体混合器。
【請求項5】
前記吹出口は、前記筒状ノズルの筒軸に直交する面に沿ってかつ前記筒状ノズルの円形内壁面に接線方向で接続するように穿孔され、複数個設けられている請求項4記載の流体混合器。
【請求項6】
前記筒状ノズルの外径は、前記流体輸送管の内径の1/2の径よりも大きく、前記筒状ノズルの頭部が半球状に閉塞されて前記筒状ノズルが筒長さが短く扁平した帽子形状になっている請求項5記載の流体混合器。
【請求項7】
前記複数の筒状ノズルは3個である請求項1の流体混合器。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項記載の流体混合器が設けられた流体混合輸送路。
【請求項9】
その頭部が閉塞され流体輸送管の管路を流れる物理的に質の異なる流体を含む輸送流体が吹出す吹出口がその側面に形成され前記輸送流体が開口したその底部に流れ込むように複数の筒状ノズルを前記流体輸送管の管軸方向に沿って前記流体輸送管の内部に所定間隔で配置し、
複数の各前記筒状ノズルから吹出す前記輸送流体を前記流体輸送管の円形内壁面に斜め方向から当ててあるいは前記筒状ノズルの円形内壁面に斜め方向から当ててサイクロン流を生成しかつ前後の前記筒状ノズルから吹出す前記輸送流体の前記サイクロン流の回転方向が逆方向になるように前後の前記筒状ノズルの前記吹出口の位置を配置する流体混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−30207(P2012−30207A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174212(P2010−174212)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(591073430)創研工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】