説明

流体通路接続装置

【課題】雌雄のカプラーを損傷する虞がなく、両カプラーを確実に円滑に接続可能であり、両カプラーを自動的に接続可能にした流体通路接続装置を提供すること。
【解決手段】流体通路接続装置30は、静止側のベース部材に付設された雄カプラー81と可動部材20に付設された雌カプラー83とを有し、雌雄のカプラー81,82が接続可能となるように、ベース部材に対して可動部材を位置決めする位置決め機構40と、ベース部材に対して可動部材を固定する為にスプリング64の弾性力でクランプ駆動し且つ油圧シリンダの油圧力でクランプ解除するクランプ機構60とを備え、雄カプラー81は油圧で退入駆動され且つスプリングで進出駆動される接続スリーブ84を有し、その油圧作動室89と油圧シリンダのアンクランプ油室61aとを連通する油路90を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路接続装置に関し、特に第1カプラーが付設されたベース部材に、第2カプラーが付設された可動部材を位置決めする機構及びクランプする機構を設け、クランプ機構に供給する流体圧を活用して第1,第2カプラーを自動的に接続・分離可能にしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、機械加工の技術分野では、ワークパレットに複数の油圧クランプ装置を装備し、それらクランプ装置でワークを固定した状態で、マシニングセンタによりワークを機械加工することが多い。油圧クランプ装置は、油圧力又はスプリングの弾性力でクランプ駆動し、油圧力によりアンクランプするものが多い。上記油圧クランプ装置を設けたワークパレットをベース部材に対して位置決めする機構及び固定するクランプ機構と、ワークパレットに給排する油圧の油路を接続・分離する流体通路接続装置が設けられる。
【0003】
特許文献1には、マシニングセンタのテーブルに着脱可能なワークパレットと、テーブルとに、テーブルに対してワークパレットを位置決めして固定する位置決め固定機構と、流体通路を接続する流体通路接続装置を設けた装置が開示されている。この流体通路接続装置は、テーブル側の雌カプラーとパレット側の雄カプラーとを有し、雌雄のカプラーはスプリングにより閉弁される弁機構を有し、パレット側雄カプラーは、流体圧を封入した状態で雌カプラーから分離される。
【0004】
特許文献2に記載された流体用連結器においては、ほぼ対称な1対のカプラーは、夫々、カプラー先端部に設けられた鋼球を含む逆止弁と、この逆止弁を閉弁側へ付勢するスプリングとを有し、両カプラーを当接させると、両鋼球同士が相反対側へ後退移動して開弁状態となり、流体通路が連通状態になる。
【特許文献1】特開2003−117748号公報
【特許文献2】特開2003−4191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車の部品など、対称な2種類のワークを所定数ずつ順に機械加工するような場合、ワークパレット上の油圧クランプ装置の配置位置をワークピースの種類に応じて変更したい場合が少なくない。この場合、配置位置を変更する必要のあるクランプ装置を装備したクランプユニットをワークパレット上に設け、クランプユニットをワークパレットに位置決めして固定する機構と、クランプ装置に油圧を供給する為の流体通路接続装置も設け、このクランプユニットを移設することで、クランプ装置の配置位置を変更することが考えられる。
【0006】
ワークパレット上のクランプユニットの配置位置を変更する際に、手動によりクランプユニットの位置を変更し、クランプユニットを位置決め固定機構により位置決めしてから固定し、流体通路接続装置を接続することになる。このとき、クランプユニットの位置決め固定前から、流体通路接続装置の雌雄のカプラーの可動接続部材が進出状態になっているような場合には、クランプ装置の移設の際に前記可動接続部材にクランプユニット等を衝突させて破損するおそれがある。
【0007】
しかも、特許文献1,2に記載されたような流体通路接続装置を採用した場合に、雌雄のカプラーを接続する際には、それらの内部の弁機構の弁部材を付勢するスプリングの弾性力と、クランプ装置側に封入され弁部材に作用する流体圧に抗して、雌雄のカプラーを接近方向へ強力に押圧しなければならず、その接続作業に労力と時間がかかる。この場合、クランプユニットの自重と手動の押圧力により、雌雄のカプラーを接続することになるため、クランプユニットの自重の影響を受け易く、設計の自由度を高めにくい。
【0008】
使用後のクランプユニットを移設する際に、雌雄のカプラーが完全に分離しないうちに、クランプユニットの位置決めが解除されたり、固定手段による固定が解除されると、雌雄のカプラーの分離時に雌雄のカプラーの一方又は両方を損傷するおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、雌雄のカプラーを損傷する虞のない流体通路接続装置、雌雄のカプラーを確実に円滑に接続可能にした流体通路接続装置、雌雄のカプラーを自動的に接続可能にした流体通路接続装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の流体通路接続装置は、静止側のベース部材に付設された第1カプラーと、この第1カプラーに接続可能な第2カプラーであって可動部材に付設された第2カプラーとを有し、第1カプラーと第2カプラーとで流体通路を接続・分離可能に構成した流体通路接続装置において、前記第1カプラーと第2カプラーとが接続可能となるように、ベース部材に対して可動部材を位置決めする位置決め機構と、前記ベース部材に対して可動部材を固定する為に弾性部材又は封入圧縮ガスの弾性力でクランプ駆動し且つ流体圧シリンダの流体圧でクランプ解除するクランプ機構とを備え、前記第1カプラーは、軸心方向へ移動可能に設けられ且つ第2カプラーに係合された状態で流体通路を接続する接続部材と、この接続部材を突出方向へ弾性付勢するスプリングと、接続部材を退入方向へ駆動する流体圧を作用させる流体圧作動室とを備え、前記ベース部材に、前記流体圧シリンダのアンクランプ流体室と前記流体圧作動室とを連通する流体通路を設けたことを特徴としている。
【0011】
前記第1カプラーと第2カプラーとを接続する際には、位置決め機構によりベース部材に対して可動部材を位置決めし、クランプ機構によりベース部材に対して可動部材を固定する。クランプ機構は弾性部材又は封入圧縮ガスの弾性力でクランプ駆動し、流体圧シリンダの流体圧でクランプ解除する。前記ベース部材に付設された第1カプラーは、軸心方向へ移動可能に設けられ且つ第2カプラーに係合された状態で流体通路を接続する接続部材と、この接続部材を突出方向へ弾性付勢するスプリングと、接続部材を退入方向へ駆動する流体圧を作用させる流体圧作動室とを備えている。
流体圧シリンダのアンクランプ流体室と前記流体圧作動室とを連通する流体通路を設けたので、クランプ機構をクランプ解除する際に、前記流体通路に油圧を供給すると、最初に接続部材が退入移動して第1,第2カプラーが分離され、その後流体圧が十分に立ち上がってからクランプ機構がクランプ解除する。
【0012】
前記クランプ機構をクランプ状態にするとき、流体通路の流体圧を抜くと、クランプ機構の弾性力は強力であるため最初にクランプ機構がクランプ状態になり、その後流体圧作動室の流体圧が十分に低下してから、接続部材がスプリングの弾性力で突出方向へ移動して雌雄のカプラーが接続状態となる。
【0013】
請求項2の流体通路接続装置は、請求項1の発明において、前記クランプ機構がアンクランプ状態のときは、第1カプラーの流体圧作動室に流体圧が充填されて接続部材が退入位置を維持することを特徴としている。
【0014】
請求項3の流体通路接続装置は、請求項1又は2の発明において、前記クランプ機構をアンクランプ状態からクランプ状態に切換える為に、アンクランプ流体室の流体圧を抜く際には前記弾性部材又は封入圧縮ガスの弾性力でクランプ状態に切換ってから流体圧作動室の流体圧が低下し、接続部材が突出方向へ移動して第1カプラーと第2カプラーとが接続されることを特徴としている。
【0015】
請求項4の流体通路接続装置は、請求項1〜3の何れかの発明において、前記クランプ機構をクランプ状態からアンクランプ状態に切換える為に、アンクランプ流体室に流体圧を供給する際には、前記流体圧作動室の流体圧により接続部材が退入位置に切り換わってからアンクランプ状態になることを特徴としている。
【0016】
請求項5の流体通路接続装置は、請求項1〜5の何れかの発明において、前記接続部材を弾性付勢するスプリングは、クランプ駆動用の弾性部材又は封入圧縮ガスの弾性力よりも弱い弾性力を発生するスプリングであることを特徴としている。
【0017】
請求項6の流体通路接続装置は、請求項1〜5の何れかの発明において、前記可動部材に、流体圧式クランプ装置と着座検知用のエアノズルを設け、前記接続・分離される流体通路として、前記流体圧式クランプ装置の為の2系統の流体圧通路と、エアノズルの為の1系統のエア通路とを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、ベース部材に付設される第1カプラーは、軸心方向に移動可能に設けられ且つ第2カプラーに係合された状態で流体通路を接続する接続部材と、この接続部材を突出方向へ弾性付勢するスプリングと、接続部材を退入方向へ駆動する流体圧を作用させる流体圧作動室とを備えており、クランプ機構の流体圧シリンダのアンクランプ流体室と前記流体圧作動室とを連通する流体通路を設けたので、クランプ機構をクランプ解除する際に、流体通路に流体圧を供給すると、最初に前記接続部材が退入移動して第1,第2カプラーが自動的に分離され、その後流体圧が十分に立ち上がってからクランプ機構がアンクランプ状態になる。そのため、第1,第2カプラーを自動的に且つ確実に円滑に分離でき、アンクランプ時における第1,第2カプラーの損傷を確実に防ぐことができる。
【0019】
そして、クランプ機構をクランプ状態にする為に、流体通路の油圧を抜くと、クランプ機構の弾性力は強力であるため最初にクランプ機構がクランプ状態になり、その後接続部材がスプリングの弾性力で突出方向へ自動的に移動して第1,第2カプラーが接続状態となる。そのため、第1,第2カプラーを自動的に且つ確実に円滑に接続でき、クランプ時における第1カプラーの損傷を確実に防ぐことができる。
【0020】
しかも、位置決め機構を設けたため、ベース部材に対して可動部材を正確に位置決めしてから、第1,第2カプラーを接続するため、第1,第2カプラーの耐久性を高めることができる。また、ベース部材に対して可動部材を固定するクランプ機構を設けたため、ベース部材に対して可動部材を自動的にクランプしたり、アンクランプしたりすることもできる。
【0021】
請求項2の発明によれば、前記クランプ機構がアンクランプ状態のときは、第1カプラーの流体圧作動室に流体圧が充填されて接続部材が退入位置を維持するため、接続部材の損傷防止を図ることができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、クランプ機構をアンクランプ状態からクランプ状態に切換える為に、クランプ機構のアンクランプ流体室の流体圧を抜く際には弾性部材又は封入圧縮ガスの弾性力でクランプ状態に切換ってから流体圧作動室の流体圧が低下し、接続部材が突出方向へ移動して第1カプラーと第2カプラーとが接続される。つまり、クランプ状態になってから第1,第2カプラーが接続状態になるため、クランプ時の接続スリーブの損傷防止を図ることができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、クランプ機構をクランプ状態からアンクランプ状態に切換える為に、アンクランプ流体室に流体圧を供給する際には、流体圧作動室の流体圧により接続部材が退入位置に切り換わってからアンクランプ状態になる。そのため、アンクランプ時における接続部材の損傷防止を図ることができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、前記接続部材を弾性付勢するスプリングは、クランプ駆動用の弾性部材又は封入圧縮ガスの弾性力よりも弱い弾性力を発生するスプリングであるため、クランプ機構をアンクランプ状態に切換えるとき、最初に低い流体圧の段階から接続部材が退入位置に移動して第1,第2カプラーが分離してから、クランプ機構がアンクランプ状態になる。アンクランプ時における第1,第2カプラーの損傷防止を図ることができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、可動部材に、流体圧式クランプ装置と着座検知用のエアノズルを設け、前記接続・分離される流体通路として、前記流体圧式クランプ装置の為の2系統の流体圧通路と、エアノズルの為の1系統のエア通路とを設けた。3組の流体通路接続装置を設けることで、2系統の油圧通路と1系統のエア通路を接続したり、分離したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る「流体通路接続装置」を実施するための最良の形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0027】
図1〜図5に示すように、ワークパレットWPは、ワークピースWを複数のクランプ装置4とクランプユニット3のクランプ装置4Aにより固定した状態で、マシニングセンタに投入してワークピースWの切削加工に供する為のものである。
【0028】
ワークパレットWPは、パレット本体1と、パレット本体1の図1における左側部分に設けられた2つのクランプ取付け部2と、片方のクランプ取付け部2に装着された1つのクランプユニット3と、パレット本体1の図1における右側部分に固定的に設けられた2つのクランプ装置4と、2つのクランプ装置4に対応する2つのワーク支持部5を備えている。
【0029】
図1、図2には、第1ワークピースWが図示されているが、この第1ワークピースWの代わりに第1ワークピースWと異なる第2ワークピースをセットする場合には、クランプユニット3が図1の左上のクランプ取付け部2に装着される。
【0030】
図1、図2に示すように、クランプ装置4は、クランプ本体10と、スペーサブロック11と、出力軸12の上端に固定されたクランプアーム13と、このクランプアーム13の先端部に取り付けられたボルト部材14とを有する。クランプ本体10はスペーサブロック11を介してパレット本体1に固定されている。クランプ本体1は、出力軸12を下方へクランプ駆動するクランプ油室及び出力軸12を上方へアンクランプ駆動するアンクランプ油室とを含む油圧シリンダと、出力軸12がクランプ位置からアンクランプ位置へ移動するときに出力軸12を例えば時計回り方向へ90°旋回させる旋回機構などを有する周知のツイスト式クランプ装置である。
【0031】
ワーク支持部5の中心部には、ワークピースWの着座を検知する為のエアノズルが設けられている。クランプ装置4の油圧シリンダへ油圧を給排する為の油路と、エアノズルへ加圧エアを供給するエア通路は、パレット本体1の内部に形成され、外部の油圧供給源やエア供給源に適宜接続される。上記のクランプ装置4は一例であり、このクランプ装置4の代わりに、ワークピースWを固定可能な種々のクランプ装置を適用可能である。
【0032】
図1〜図6に示すように、クランプユニット3は、厚板状の台板20と、この台板20の上面に固定されたクランプ装置4A及びワーク支持部5Aと、前記クランプ取付け部2を含む流体通路接続装置30であって、パレット本体1と台板20とに設けられた流体通路接続装置30とを備えている。前記ワーク支持部5Aの中心部には、ワークピースWの着座を検知する為のエアノズル5aが設けられている。尚、台板20が「可動部材」に相当し、パレット本体1が「ベース部材」に相当する。
【0033】
クランプ装置4Aは、クランプ本体10Aと、出力軸12Aの上端に固定されたクランプアーム13Aと、このクランプアーム13Aの先端部に取り付けられたボルト部材14Aとを有する。クランプ本体10Aは台板20に固定されている。クランプ本体10Aは、出力軸12Aを下方へクランプ駆動するクランプ油室及び出力軸12Aを上方へアンクランプ駆動するアンクランプ油室とを含む油圧シリンダと、出力軸12Aがクランプ位置(図4参照)からアンクランプ位置(図5参照)へ移動するときに出力軸12Aを例えば時計回り方向へ90°旋回させる旋回機構などを有する周知のツイスト式クランプ装置である。但し、上記の油圧クランプ装置4Aは一例であり、この油圧クランプ装置4Aの代わりに、ワークピースWを固定可能な種々の油圧クランプ装置を適用可能である。
【0034】
図1〜図9に示すように、前記流体通路接続装置30は、パレット本体1に対して台板20を位置決めする1対の位置決め機構40と、パレット本体1に対して台板20を固定解除可能に固定する1対のクランプ機構60と、3つのカプラー機構80とを備えている。次に、前記位置決め機構40について説明する。
図1〜図9に示すように、1対の位置決め機構40は、3つのカプラー機構80の両側に配置され、これら位置決め機構40は同構造ものであるので、1つの位置決め機構40について説明する。
【0035】
図7〜図9に示すように、位置決め機構40は、パレット本体1に装着された支持台41と、台板20の下面に固定されたロケートリング42とを備えている。支持台41は、パレット本体1の取付穴に嵌合された筒状部43と、筒状部43の上端に連なり且つパレット本体1の上面に当接させて固定された円板部44と、この円板部44の中心部分から上方へ延びるテーパ筒部45と、ロケートリング42の中心穴の内周面に形成されたテーパ内周面46と、ロケートリング42の下端に形成された環状の下端基準面47と、円板部44の上面に形成され下端基準面47を受け止めるZ方向基準面48とを有する。
【0036】
テーパ筒部45の外周面は上方ほど小径化するテーパ外周面に形成され、テーパ内周面46はテーパ筒部45のテーパ外周面に密着状に外嵌可能に形成されている。下端基準面47がZ方向基準面48に密着した状態において、テーパ内周面46がテーパ筒部45のテーパ外周面に密着する。尚、テーパ筒部45の径縮小方向への微小弾性変形を介して、テーパ内周面46がテーパ筒部45のテーパ外周面に密着する。これにより、支持台41に対してロケートリング42を水平方向と鉛直方向に高精度に位置決め可能である。
【0037】
次に、クランプ機構60について説明する。
図7〜図9に示すように、クランプ機構60は、支持台41の内側に形成された油圧シリンダ61と、そのピストン部材62と、ボールロック機構63とを有する。
ピストン部材62はシリンダ穴に装着され、環状のバネ収容室には積層された複数の皿バネ64が圧縮状態に装着されてピストン部材62を下方へクランプ駆動している。ピストン部材62の下面側にはアンクランプ油室61aが形成され、このアンクランプ油室61aに油圧を給排するための油路65がパレット本体1に形成され、この油路65は図示外の油圧供給源に接続される。
【0038】
ボールロック機構63は、テーパ筒部45の上端から上方へ延びる円筒部66の複数の保持穴に径方向へ可動に装着された複数の鋼球67と、ピストン部材62のピストンロッド62aの上端寄り部分の外周部に形成された複数の凹部68と、ロケートリング42の中心穴の上部の内周部に形成されたテーパ面からなる環状係止部69とを有する。前記の凹部68は、鋼球67を径方向外側へ駆動する為の傾斜凹部と、この傾斜凹部の下端に連なり且つ鋼球67を径方向内側へ部分的に退避させる為の退避凹部とを有する。
【0039】
図7に示すクランプ機構60は、アンクランプ状態を示し、このとき各鋼球67は退避凹部に部分的に退避し、円筒部66の外周面外へ突出しない。このアンクランプ状態において、台板20を上方へ移動させることができる。図8,図9に示すクランプ機構60はクランプ状態を示し、このとき、各鋼球67は傾斜凹部により径方向外側へ駆動されて環状係止部69に押圧されてクランプしている。尚、環状係止部69の代わりに、各鋼球67に対応する凹溝を形成してもよい。
【0040】
下端基準面47、Z方向基準面48、テーパ内周面46、テーパ筒部45のテーパ外周面に付着する切粉等をエアブローする為に、複数のエアノズル70と、複数のエアノズル71が形成され、複数のエアノズル70へはエア通路70aから加圧エアを供給可能である。複数のエアノズル71へは、エア通路71aとチェック弁72を介して加圧エアを供給可能である。
【0041】
次に、カプラー機構80について説明する。
図7〜図9に示すように、3つのカプラー機構80のうち、2つのカプラー機構80は、クランプ装置4Aのクランプ油室とアンクランプ油室に給排される2系統の油圧通路を接続・分離するものである。残りの1つのカプラー機構80は、ワーク支持部5Aのエアノズル5aへ供給される加圧エアのエア通路を接続・分離するものである。3つのカプラー機構80は同様のものであるため、1つのカプラー機構80について説明する。
【0042】
図7〜図9に示すように、カプラー機構80は、パレット本体1に設けられた雄カプラー81と、台板20に設けられた雌カプラー82とを有する。尚、前記雄カプラー81が「第1カプラー」に相当し、雌カプラー82が「第2カプラー」に相当する。
雄カプラー81は、パレット本体1の装着穴に螺合にて固定されたケース83と、このケース83に軸心方向に昇降可能に装着された接続スリーブ84と、この接続スリーブ84を上方へ弾性付勢する2つの圧縮スプリング85と、接続スリーブ84の上半部の内部に昇降可能に装着された可動弁部材86と、接続スリーブ84の内部に固定されて可動弁部材86を案内する案内部材87と、可動弁部材87を上方へ弾性付勢する圧縮スプリング88とを備えている。尚、前記接続スリーブ84が「接続部材」に相当する。
【0043】
接続スリーブ84の下部はやや大径のピストン部84aに形成され、このピストン部84aに油圧を受圧させる環状の油圧作動室89が形成され、この油圧作動室89は油路90を介して油路65に接続されている。図7に示すように、油圧作動室89に油圧が作用している状態では、接続スリーブ84が下降して図示の状態となり、油圧作動室89の油圧が抜かれると、接続スリーブ84がスプリング85の付勢力で上昇して図8に図示のように突出状態となる。パレット本体1には流体通路91(油路又はエア通路)が形成され、この流体通路91が雄カプラー81の内部通路に接続され、台板20には流体通路91aが形成されている。尚、接続スリーブ84の上端部には、雌カプラー82に挿入接続される接続筒部84bが形成されている。また、可動弁部材86の鍔部の外周部には流体を通過させる為の複数のスリットが形成されている。
【0044】
図7〜図9に示すように、雌カプラー82は、台板20の装着穴に螺合にて固定されたケース100と、このケース100に内嵌させて固定された筒部材101と、この筒部材101の内部に昇降可能に装着された可動筒102と、筒部材101に固定された固定弁部材103と、固定弁部材103と可動筒102の間に装着されて可動筒102を下方へ弾性付勢する圧縮スプリング104とを備えている。カプラー機構80が分離状態のとき、図7に図示のように可動筒102が下方限界位置まで下降して固定弁部材103と可動筒102に設けたシール部材105とで流体通路を閉じている。
【0045】
図9に示すように、雄カプラー81の接続スリーブ84が上昇位置(突出状態)になり、接続スリーブ84の接続筒部84bが雌カプラー82に挿入されると、可動筒102が上昇して雌カプラー82の弁部が開弁すると共に、雄カプラー81の弁部が開弁して、雄カプラー81内の流体通路と雌カプラー82内の流体通路が接続される。
【0046】
以上説明した流体通路接続装置30の作用、効果について説明する。
第1ワークピースWを固定する際には、図1に示す位置にクランプユニット3を取り付けた状態で使用する。第1ワークピースWの切削加工の終了後に、第2ワークピースを固定するために、クランプユニット3を鎖線で図示した左上の位置に取り付ける場合を例にして説明する。最初、図9に示すように、1対のクランプ機構60は皿バネ64の弾性力によりクランプ状態になっており、アンクランプ油室61aの油圧は抜かれている。
【0047】
まず最初に、流体通路91に供給している流体を抜いて、3つのカプラー機構80を分離しても、流体が漏れないようにする。次に、クランプ機構80をクランプ状態(図9参照)からアンクランプ状態(図7参照)にするために、油圧供給源を操作して油路65に油圧を供給すると、アンクランプ油室61aと油圧作動室89に油圧が供給され、油圧作動室89の油圧により接続スリーブ84が退入位置に切り換わり、その後アンクランプ状態になる。
【0048】
このアンクランプ状態になるとき、ピストン部材62が上昇し、鋼球67が凹部68に部分的に退避して円筒部66の外周面よりも内側へ引っ込み、ピストン部材62の先端で台板20の凹穴20aの壁面を押圧することで、テーパ筒部45のテーパ外周面とテーパ内周面46との密着を分離する(図7参照)。
【0049】
そして、接続スリーブ84を弾性付勢するスプリング85は、クランプ駆動用の皿バネ64よりも格段に弱いスプリングであるため、油路65の油圧が上昇するときその途中時点で、接続スリーブ84が下降した退入位置(図8参照)に切り換わり、その後にクランプ機構60がアンクランプ状態(図7参照)になる。クランプ機構60がアンクランプ状態にある間は、雄カプラー81の油圧作動室89に油圧が充填されて接続スリーブ84が退入位置を維持する
【0050】
次に、クランプユニット3を図1の左上のクランプ取付け部2へ移動させるが、そのクランプ取付け部2においても油路65と油室61aと油圧作動室89に油圧が供給されている。そのため、クランプ機構80のピストン部材62は上昇したアンクランプ位置にあり、接続スリーブ84は退入位置にある。そこで、クランプ取付け部2の上方からクランプユニット3を下降させ、図7に示すようにセットする。次に、クランプ機構80をアンクランプ状態からクランプ状態に切換える為に、油路65の油圧を抜くと、図8に示すように、アンクランプ油室61aの油圧が抜かれ、強い皿バネ64の弾性力によりピストン部材62が下降してクランプ状態になる。
【0051】
このとき、クランプ機構80が急速にクランプ状態になるが、ピストン部材62の下降動作によって生じる残圧が油路65と油圧作動室89に生じるため、接続スリーブ84が図8に図示のように退入位置を保持し、その後油路65と油圧作動室89の油圧が十分低下すると、接続スリーブ84がスプリング85の弾性力で上昇し、接続スリーブ84の接続筒部84bが雌カプラー82に突入し、雄カプラー81の弁と雌カプラー82の弁が開いて、図雄カプラー81と雌カプラー82とが接続状態になる。
【0052】
位置決め機構40により、パレット本体1に対して、クランプユニット3の台板20を水平方向と鉛直方向に正確に位置した状態で、クランプ機構60によりクランプ状態にし、その状態で流体通路接続装置30の雌雄のカプラー81,82を接続するため、スプリング85の付勢力が強力でなくとも、接続スリーブ84を雌カプラー82に円滑に挿入可能となり、雌雄のカプラー81,82の小型化が可能となるうえ、雌雄のカプラー81,82を無理なく正規の状態に接続することができ、雌雄のカプラー81,82の耐久性を高めることができる。
【0053】
クランプ機構60をクランプ状態にするとき、最初にクランプ状態に切換ってから雌雄のカプラー81,82が接続状態になるため、雌雄のカプラー81,82の損傷防止を図り、耐久性を高めることができる。クランプ機構60をアンクランプ状態にするとき、最初に雄カプラー81の接続スリーブ84を退入位置に切換えて、雌雄のカプラー81,82を分離状態にしてから、クランプ機構60をアンクランプ状態にするため、雌雄のカプラー81,82の損傷防止を図り、耐久性を高めることができる。
【0054】
雌雄のカプラー81,82は、それらの内部および流体通路91の流体の圧力を抜いた状態で接続したり、分離したりする構成であるため、雌雄のカプラー81,82の内部のスプリング類の小型化、つまり雌雄のカプラー81,82の小型化を図り、雌雄のカプラー81,82の接続・分離の円滑化を図ることができる。
【実施例2】
【0055】
この実施例では、実施例1と同じ構成要素に同一符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。図10に示すように、この流体通路接続装置30Aにおけるクランプ機構60Aは、環状のガス封入室64Aに封入された封入圧縮窒素ガス(例えば、ガス圧約7〜10MPa)の弾性力によりピストン部材62Aを下方へ付勢するように構成されている。このガス封入室64Aに圧縮窒素ガスを充填する為に、ピストン部材62Aのピストンロッド部には、ガス通路74,75が形成され、このガス通路74の上端部分には圧縮窒素ガス充填用チャージ弁76が装着されている。ガス封入室64Aに封入された圧縮窒素ガスはシール部材64a,64bによりシールされている。このクランプ機構60Aでは、積層された皿バネを省略できるため、構成が簡単化する。この流体通路接続装置30Aは、前記実施例1の流体通路接続装置30と同様の作用、効果を奏する。
【実施例3】
【0056】
この実施例では、実施例1と同じ構成要素に同一符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。図11、図12にに示すように、この流体通路接続装置30Bのカプラー機構80Bでは、雌カプラー81Bがパレット本体1に付設され、雄カプラー82Bが台板20に付設されている。尚、雌カプラー81Bが「第1カプラー」に相当し、雄カプラー82Bが「第2カプラー」に相当する。
【0057】
前記雌カプラー81Bは、ケース110と、このケース110内に昇降可能に装着された接続スリーブ111(これが「接続部材」に相当する)と、接続スリーブ111の上半部の内部に相対移動不能に装着された弁部材112と、この弁部材112と接続スリーブ111の間に昇降可能に装着されて上端部にシール部材113を支持する可動筒部材114と、弁部材112に対して可動筒部材114を上方へ付勢するスプリング115と、バネ受けリング116と、このバネ受けリング116を受け止めるストップリング117と、接続スリーブ111をケース110に対して上方へ付勢するスプリング118と、接続スリーブ111のピストン部111aの環状上面に油圧を作用させる環状の油圧作動室119などを備えている。油圧作動室119は、前記油圧シリンダ61のアンクランプ油室61aに油圧を給排する油路65に連通接続されている。
【0058】
雄カプラー82Bは、ケース120と、このケース120の内部に昇降可能に装着された可動弁部材121と、ケース120の上部の内部に装着されたバネ受け兼案内部材122と、このバネ受け兼案内部材122と可動弁部材121の間に装着されて可動弁部材121を閉弁側へ付勢するスプリング123などを備えている。前記ケース120の先端部分には、雌カプラー81Bの接続スリーブ111の上端部に内嵌可能な接続筒部120aが形成されている。
【0059】
前記クランプ機構の油圧シリンダのアンクランプ油室の油圧を抜くと、油路65の油圧が低下し、油圧作動室119の油圧が低下するため、図12に示すように、接続スリーブ111が上昇して雌カプラー81Bが雄カプラー82Bに接続される。この流体通路接続装置30Bは、前記実施例1の流体通路接続装置30と同様の作用、効果を奏する。
【0060】
次に、前記実施例1,2,3を部分的に変更する例について説明する。
[1]クランプユニット3に装備するクランプ装置としては、前記のクランプ装置4A以外の種々の形式、構造の油圧駆動型クランプ装置やエア駆動型クランプ装置を採用可能である。流体通路接続装置30は、3系統の流体通路を接続するものに限定されず、1系統の流体通路を接続するものでもよく、3系統以上の流体通路を接続するものでもよい。
【0061】
[2]前記実施例の流体通路接続装置30,30A,30Bでは、位置決め機構40とクランプ機構60,60Aを一体的に構成してあるが、これらは別個に構成してもよい。2組の位置決め機構40に限定される訳ではなく、1組の又は3組以上の位置決め機構を設けてもよい。同様に、2組のクランプ機構60,60Aに限定される訳ではなく、1組の又は3組以上のクランプ機構を設けてもよい。
【0062】
[3]前記実施例では、台板20に油圧クランプ装置4Aと、着座検知用のエアノズル付きのワーク支持部5Aを装備したものを例として説明したが、台板20の上に装備するものはクランプ装置やワーク支持部に限定されるものではなく、油圧や加圧エアなどの加圧流体を必要とする種々の装置や機器であってもよい。
【0063】
[4]前記雌雄のカプラー81,81B,82,82Bの構造は一例を示すものであり、同様の機能を有する種々の構造のカプラーを採用することも可能である。
[5]その他、当業者であれば、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例に係るワークパレットの平面図である。
【図2】図1のワークパレットの正面図である。
【図3】クランプユニットと流体通路接続装置の一部切欠き縦断正面図である。
【図4】クランプユニット(クランプ状態)の平面図である。
【図5】クランプユニット(アンクランプ状態)の平面図である。
【図6】クランプユニットと流体通路接続装置の一部切欠き縦断正面図である。
【図7】流体通路接続装置(アンクランプ状態、カプラー分離状態)の縦断図である。
【図8】流体通路接続装置(クランプ状態、カプラー分離状態)の縦断図である。
【図9】流体通路接続装置(クランプ状態、カプラー接続状態)の縦断図である。
【図10】実施例2に係る流体通路接続装置の図7相当図である。
【図11】実施例3に係るカプラー機構(カプラー分離状態)の縦断図である。
【図12】実施例3に係るカプラー機構(カプラー接続状態)の縦断図である。
【符号の説明】
【0065】
1 パレット本体(ベース部材)
3 クランプユニット
5a エアノズル
20 台板
30 流体通路接続装置
40 位置決め機構
60,60A クランプ機構
61 油圧シリンダ
61a アンクランプ油室
64 皿バネ(クランプ駆動用スプリング)
65 油路
80,80B カプラー機構
81,82B 雄カプラー
82,81B 雌カプラー
84,111 接続スリーブ
85 スプリング
89,119 油圧作動室
90 油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止側のベース部材に付設された第1カプラーと、この第1カプラーに接続可能な第2カプラーであって可動部材に付設された第2カプラーとを有し、第1カプラーと第2カプラーとで流体通路を接続・分離可能に構成した流体通路接続装置において、
前記第1カプラーと第2カプラーとが接続可能となるように、ベース部材に対して可動部材を位置決めする位置決め機構と、
前記ベース部材に対して可動部材を固定する為に弾性部材又は封入圧縮ガスの弾性力でクランプ駆動し且つ流体圧シリンダの流体圧でクランプ解除するクランプ機構とを備え、 前記第1カプラーは、軸心方向へ移動可能に設けられ且つ第2カプラーに係合された状態で流体通路を接続する接続部材と、この接続部材を突出方向へ弾性付勢するスプリングと、接続部材を退入方向へ駆動する流体圧を作用させる流体圧作動室とを備え、
前記ベース部材に、前記流体圧シリンダのアンクランプ流体室と前記流体圧作動室とを連通する流体通路を設けたことを特徴とする流体通路接続装置。
【請求項2】
前記クランプ機構がアンクランプ状態のときは、第1カプラーの流体圧作動室に流体圧が充填されて接続部材が退入位置を維持することを特徴とする請求項1に記載の流体通路接続装置。
【請求項3】
前記クランプ機構をアンクランプ状態からクランプ状態に切換える為に、アンクランプ流体室の流体圧を抜く際には前記弾性部材又は封入圧縮ガスの弾性力でクランプ状態に切換ってから流体圧作動室の流体圧が低下し、接続部材が突出方向へ移動して第1カプラーと第2カプラーとが接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体通路接続装置。
【請求項4】
前記クランプ機構をクランプ状態からアンクランプ状態に切換える為に、アンクランプ流体室に流体圧を供給する際には、前記流体圧作動室の流体圧により接続部材が退入位置に切り換わってからアンクランプ状態になることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の流体通路接続装置。
【請求項5】
前記接続部材を弾性付勢するスプリングは、クランプ駆動用の弾性部材又は封入圧縮ガスの弾性力よりも弱い弾性力を発生するスプリングであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の流体通路接続装置。
【請求項6】
前記可動部材に、流体圧式クランプ装置と着座検知用のエアノズルを設け、
前記接続・分離される流体通路として、前記流体圧式クランプ装置の為の2系統の流体圧通路と、エアノズルの為の1系統のエア通路とを設けたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の流体通路接続装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−192054(P2009−192054A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36181(P2008−36181)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(596037194)パスカルエンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】