説明

流量測定装置及び流量制御装置

【課題】流量測定装置10や流量制御装置100においてコンパクト性を損なうことなく、流量測定精度を向上させる。
【解決手段】
測定対象流体が流れる流体抵抗部材3と、対象流体が導かれる感圧面に貼り付けられた抵抗素子2Bの電気抵抗値の変化から流体抵抗部材3の上流側圧力を測定することが可能であるとともに抵抗素子2Bの温度による電気抵抗値の変化から前記感圧面の温度を測定することが可能な上流側圧力センサ21と、流体抵抗部材3を流れる対象流体の温度を測定可能な位置に配置された温度検知手段8と、上流側圧力センサ21で測定された上流側流路の圧力及び前記流体抵抗部材の圧力−流量特性に加えて、上流側圧力センサ21で測定された圧力センサ温度及び温度検知手段8で測定された流体抵抗部材3における対象流体温度に少なくとも基づいて、当該対象流体の流量を算出する流量算出部9とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体プロセスで用いられる材料ガス等の流量を圧力に基づいて測定する流量測定装置及びこれを用いた流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の流量測定装置や流量制御装置では、流体抵抗部材を設けて、その前後の圧力から流量を算出する(半導体プロセスなどでは、下流側が真空チャンバに接続されているときなどのように、下流側圧力が低い場合は、上流側の圧力だけでも流量を精度良く算出できる)。
【0003】
そのために、例えば内部に流路を形成したマニホールドブロックである1つの共通のボディユニットを形成し、そのボディユニットに前記流体抵抗部材や圧力センサを取り付け、一体化したものが知られている。
【0004】
流量をより正確に算出するには流体の温度も必要となる。例えば、抵抗素子を用いたタイプの圧力センサであれば、温度で抵抗素子の電気抵抗値が変わり測定値に誤差が出るため、圧力センサでの温度を計測することで、その誤差を補正したより正確な圧力を測定することができる。また、流体温度が粘性等に影響を及ぼすため、流体抵抗部材での流体温度がわかれば、より正確に流量を算出することができる。
【0005】
そこで、従来は、例えば図12に示すように、温度センサをボディユニットに取り付け、温度センサの示す温度を前記流体抵抗部材及び圧力センサでの温度とみなして前記流量を算出するようにしている。
【0006】
一方、機器のコンパクト化や簡素化が求められてきている近年の状況下、流量測定装置あるいは流量制御装置の前後に取り付けられる開閉弁などが、空圧式から電磁式に変えられ、しかもより接近させて配置されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平2−55123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本願発明者による鋭意検討の結果、電磁式の開閉弁等からの通電時の発熱が原因で、このような開閉弁が流量測定装置や流量制御装置に近接配置されると、圧力センサや流体抵抗部材の温度が時間的に変動し、しかもその各所で温度が異なるような現象が生じることが判明した。
【0009】
そうすると、従来のように、1箇所で温度を測定していても、その温度が実際の圧力センサでの温度あるいは流体抵抗部材での温度を示しているとは限られなくなり、測定誤差につながる恐れがある。かといって、単純に温度センサを増やせば、コンパクト化等の要求に応えられない。
【0010】
本発明は、本願発明者によって初めて判明した上述の課題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、この種の流量測定装置や流量制御装置においてコンパクト性を損なうことなく、流量測定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明に係る流量測定装置は、測定すべき対象流体が流れる流体抵抗部材と、前記流体抵抗部材における上流側の対象流体が導かれる感圧面を有し、当該対象流体の圧力を前記感圧面の歪みに連動して変形するように設けられた抵抗素子の電気抵抗値の変化から測定する圧力測定モード及び前記抵抗素子の温度による電気抵抗値の変化から当該圧力センサの温度を測定する測温モードでの動作が別々又は同時に可能な上流側圧力センサと、前記流体抵抗部材を流れる対象流体の温度を測定可能な位置に配置された温度検知手段と、前記圧力測定モードで測定された上流側流路の圧力及び前記流体抵抗部材の圧力−流量特性に加えて、前記測温モードで測定された上流側圧力センサ温度及び前記温度検知手段で測定された前記流体抵抗部材における対象流体温度に少なくとも基づいて、当該対象流体の流量を算出する流量算出部とを備えていることを特徴とする。
流量算出部での算出パラメータに前記流体抵抗部材が有する圧力−流量特性をさらに用いてもよい。
【0012】
このようなものであれば、仮に電磁式開閉弁等からの通電時の発熱が原因で、圧力センサや流体抵抗部材の温度が時間的に変動し、しかもその各所で温度が異なっていたとしても、圧力センサの温度と流体抵抗部材を流れる対象流体の温度とを個別に測定して、それら各測定温度を対象流体の流量算出における算出パラメータとしているため、極めて精度の高い流量を算出できる。
【0013】
また、圧力を測定するための抵抗素子を圧力センサの温度を測定する手段として共用しているため、コンパクト性を損なうこともない。
【0014】
対象流体の温度を測定する前記温度検知手段は、流体抵抗部材の近傍に設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明の効果が特に顕著に発揮される構成としては、前記対象流体の流れる内部流路が形成された長手方向を有するボディユニットをさらに具備し、前記流体抵抗部材が前記内部流路を分断するように前記ボディユニットに取り付けてあるとともに、前記ボディユニットの長手方向と平行な面に設定した部品取付面に、前記上流側圧力センサが、その感圧面が前記部品取付面に略垂直でなおかつ前記長手方向に略平行となるように取り付けてあるものを挙げることができる。
【0016】
なぜならば、このような構成であると、感圧面が起立しているので、感圧面を寝かせたものと比べて流体抵抗部材が設けられた内部流路から離れるため、流体抵抗部材と感圧面との温度差が大きくなりがちで、従来のような1つの温度センサでは誤差が大きくなるが、本発明によれば、かかる誤差を確実に低減して高い精度での流量測定が可能になるからである。
【0017】
温度検知手段を流体抵抗部材にできるだけ接近させて、かつコンパクト性を維持するためには、前記流体抵抗部材が、前記ボディユニットの部品取付面に開口させた凹部に嵌め込んだものであり、前記上流側圧力センサが、内部に感圧面を形成した本体部材を具備したものであり、前記凹部の開口を前記本体部材で封止するとともに該本体部材における開口封止面の直上に前記温度検知手段を内蔵させているものであることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明は、前記流体抵抗部材が、対象流体を層流状態で流すものに好適に適用される。
【0019】
下流側の圧力センサにも、同様の機能を持たせれば、より正確な流量測定が可能になる。具体的には、前記流体抵抗部材における下流側の対象流体が導かれる感圧面を有し、当該対象流体の圧力を前記感圧面の歪みに連動して変形するように設けられた抵抗素子の電気抵抗値の変化から前記流体抵抗部材の下流側流路の圧力を測定する圧力測定モード及び前記抵抗素子の温度による電気抵抗値の変化から当該圧力センサの温度を測定する測温モードでの動作が別々又は同時に可能な下流側圧力センサをさらに具備し、前記流量算出部が、前記圧力測定モードで測定された下流側流路の圧力及び前記測温モードで測定された下流側圧力センサ温度にさらに基づいて当該対象流体の流量を算出するようにしておけばよい。
【0020】
また、本発明に係る流量測定装置を利用して流量制御装置を構成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上に述べたように本発明によれば、差圧式の流量測定装置やこれを利用した流量制御装置において、コンパクト性を損なうことなく、流量測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態における流量制御装置の流体回路図
【図2】同実施形態における流量制御装置の全体斜視図。
【図3】同実施形態における流量制御装置の内部構造を示す縦断面図。
【図4】同実施形態における流量制御装置の平面図。
【図5】同実施形態における圧力センサの内部構造を示す横断面図。
【図6】同実施形態における流量制御装置の分解斜視図。
【図7】同実施形態における流量調整弁の内部構造を示す部分断面図。
【図8】同実施形態における流量調整弁の内部構造を示す部分断面図。
【図9】同実施形態における流体抵抗部材を凹部に収容した状態での内部構造を示す部分断面図。
【図10】同実施形態における抵抗素子を感圧面に貼り付けた状態を示す図。
【図11】同実施形態における抵抗素子の接続等価電気回路図。
【図12】本発明の他の実施形態における圧力センサの内部構造を示す部分断面図。
【図13】従来の流量制御装置を示す全体斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る流量制御装置100は、例えばガスパネルに搭載されて半導体製造装置の材料供給ラインの一部を構成するもので、図1に流体回路図、図2に全体斜視図を示すように、流量制御対象である流体が流れる内部流路1aを有するボディユニット1と、前記内部流路1a上に設けられた流量調整弁4と、この流量調整弁4よりも下流側に設けられ、当該内部流路1aを流れる流体の質量流量を測定する流量測定装置10と、この流量測定装置10による測定流量が予め定めた目標流量になるように前記流量調整弁4を制御する制御回路6とを具備している。以下に各部を詳述する。
【0024】
ボディユニット1は、図2に示すように、長細い直方体形状をなす例えば金属製のものである。このボディユニット1における長手方向と平行な1つの面は、部品取付面1cとして設定してあり、この部品取付面1cのみに、前記流量調整弁4や圧力センサ21、22などの部品が取り付けられるように構成してある。また、この取付面1cの反対側の面を、当該ボディユニット1をパネルなどに固定するための固定面としている。なお、長手方向と平行な他の2面(以下、側面と言う)には何も取り付けないようにして、複数のボディユニット1の側面同士を密着乃至近接させて配置できるように構成してある。
【0025】
内部流路1aは、ボディユニット1の長手方向における一端部から他端部に向かって延びるもので、より具体的には、図3に示すように、その流体導入口1d及び流体導出口1eが、前記ボディユニット1の長手方向に直交する両端面にそれぞれ開口するように構成してある。そして、前記部品取付面1cと直交する方向から視たときに(以下、平面視とも言う)、流体が長手方向と略平行に流れていくように構成してある。
【0026】
流量調整弁4は、図3、図6、図7に示すように、弁座部材42と弁体部材41とからなる柱状をなすものであり、前記部品取付面1cにおける流体導入口1d側の一端部に鉛直に取り付けられている。この流量調整弁4の最大幅寸法は、前記部品取付面1cの幅寸法(長手方向と直交する方向の寸法)よりも小さいか又は同一に設定してあり、図4に示すように、この流量調整弁4をボディユニット1に取り付けた状態で、流量調整弁4がボディユニット1よりも幅方向に突出しないように構成してある。
【0027】
この流量調整弁4を構成する部材のうち、前記弁座部材42は、図6、図7等に示すように、その頂面中央部に円環状の座面42aを突出形成した概略柱状をなすものである。また、前記弁座部材42には、一端が該弁座部材42の頂面中央部(具体的には弁座面42aの内側)に開口するとともに他端が該弁座部材42の底面中央部に開口する流体導入路42bと、一端が該弁座部材42の頂面周縁部(より具体的には弁座面42aよりも外側)に開口するとともに他端が該弁座部材42の底面周縁部に開口する流体導出路42cとが貫通させてある。
【0028】
この弁座部材42は、前記部品取付面1cの一端部に開口させた有底凹部1fに嵌め込まれる。この有底凹部1fは、前記内部流路1aを分断する位置に設けてある。具体的には、該有底凹部1fの底面中央部に、分断された内部流路1aのうちの上流側内部流路1a(1)の終端が開口させてあり、該有底凹部1fの底部側周面には、下流側内部流路1a(2)の始端が開口させてある。
【0029】
しかして、この構成により、有底凹部1fに弁座部材42を嵌め込んだ状態において、前記流体導入路42bの他端が、有底凹部1fの中央に開口する上流側内部流路1a(1)の終端にシール部材SL2を介して連通し、また、前記流体導出路42cの他端が、弁座部材42の底面周縁部から側周面底部にかけて有底凹部1fの内周面との間に隙間があることから、前記下流側内部流路1a(2)の始端に連通するようにしてある。
【0030】
一方、前記弁体部材41は、図3、図7、図8に示すように、内部が気密状態となるように構成した筐体411と、この筐体411の内部に収容した柱状をなす積層圧電素子412とを具備している。
【0031】
筐体411は、長尺筒状をなすハウジング411aと、このハウジング411aの一端面を気密に閉塞する弾性変形可能な薄肉板状のダイヤフラム部材411bと、前記ハウジング411aの他端面を気密に閉塞する閉塞部材411cとを具備したものである。
【0032】
ハウジング411aは、前記有底凹部1f上を覆うように部品取付面1cに取り付けられる円筒状の一端側要素411a.1と、この一端側要素411a.1に連結されるブロック体状の他端側要素411a.2とからなるものである。
【0033】
ダイヤフラム部材411bは、図7に示すように、内側に向かって突出する突起411b.1を中央に有した弾性変形可能な薄板であり、前記一端側要素411a.1と一体に成形されている。
【0034】
閉塞部材411cは、図8に示すように、ハウジング411aの他端面を閉塞するように取り付けた円板状をなす部材本体411c.1と、この部材本体411c.1の中央に貫通させた雌ねじ孔に螺合する進退桿たる調整ネジ411c.2と、その螺合部分を取り囲むように部材本体411c.1の内面に取り付けた気密保持部材411c.3とを具備したものである。なお、前記部材本体411c.1には、圧電素子駆動用の端子Tが気密に貫通させてあり、いわゆるハーメチック構造となっている。前記気密保持部材411c.3は、軸方向に弾性伸縮する筒状のベローズ部411c.31と、このベローズ部411c.31の底部分に気密に接合された柱状部材411c.32とからなる。
【0035】
前記柱状部材411c.32は、調整ネジ411c.2と積層圧電素子412の間に介在するものであり、調整ネジ411c.2を螺進退させることによって、柱状部材411c.32を介して積層圧電素子412の軸方向の位置を調整することができるように構成してある。なお、柱状部材411c.32の先端面と積層圧電素子412の基端面とは接着してある。
【0036】
そして、前記ハウジング411aの一端面をボディユニット1の部品取付面1cにシール部材SL1を介して取り付けることにより、ボディユニット1に形成した前記有底凹部1fの開口を該一端面で封止するとともに、弁座面42aにダイヤフラム部材411bを対向させ、前記圧電素子412の伸縮によってダイヤフラム部材411bと弁座面42aとの離間距離が変わって、このダイヤフラム部材411bが弁体41aとして機能するようにしてある。
【0037】
流量測定装置10は、図1に示すように、内部流路1a上に設けた流体抵抗部材3と、該流体抵抗部材3aの上流側及び下流側の流体圧力をそれぞれ計測するための一対の圧力センサ21、22と、前記流体抵抗部材3を流れる対象ガスの流量を算出する流体算出部たる流量算出回路9とを具備したものである。各部を詳述する。
【0038】
前記流体抵抗部材3は、図6、図9に示すように、複数の矩形状薄板31〜35を積層させた直方体状をなすものであり、内部を流れる流体が層流状態で流れるように構成してあることから層流抵抗素子とも言うべきものである。この流体抵抗部材3における各薄板又は一部の薄板には、、図6に示すように、積層させたときに重なり合って積層方向に貫通する連通路3cとなる貫通孔3bと、前記連通路3cに内方端が連通し外方端が長手方向と直交する側面に開口するスリット3dとが設けてあり、前記薄板31〜35を積層させたときに、スリット3dによって抵抗流路3aが形成されるようにしてある。このような構成によれば、スリット3dの形状や本数を異ならせることによって流路抵抗を調整することができる。
【0039】
一方、ボディユニット1の部品取付面1cにおける長手方向中央部には、図3、図5、図6、図9に示すように、内部流路1aを分断するように矩形状の凹部1hが設けてある。そして、この凹部1hに、前記流体抵抗部材3が、幅方向には隙間無く、ボディユニット1の長手方向には隙間を有して嵌り込むように設計されている。また、この凹部1hの底面中央には、この凹部1hで分断された内部流路1aのうちの上流側内部流路1a(2)の終端が開口する一方、有底凹部1fにおける長手方向の底面縁部には、下流側内部流路1a(3)の始端が開口するように構成してある。
【0040】
しかして、この流体抵抗部材3が凹部1hに嵌まり込んだ状態では、前記連通路3cの底側の一端が上流側内部流路1a(2)の終端にシール部材SL3を介して接続され、抵抗流路3aの外方端が下流側内部流路1a(3)の始端に連通する。つまり、上流側内部流路1a(2)は、連通路3c及び抵抗流路3aを介して、下流側内部流路1a(3)に接続される。
【0041】
圧力センサ21、22は、図2〜図6等に示すように、扁平な形状をなす本体部材2Aと、その本体部材2A内に内蔵した圧力検知用抵抗素子2Bとを具備するものである。そして、この扁平な本体部材2Aを、その面板部(扁平面)が部品取付面1cに垂直でなおかつボディユニット1の長手方向と略平行、すなわち平面視、流体の流れ方向と略平行となるように、該部品取付面1cに取り付けてある。また、圧力センサ21、22の厚み寸法は、図4等に示すように、部品取付面1cの幅方向寸法よりも小さいか又は同一に設定してあり、取付状態で圧力センサ21、22がボディユニット1よりも幅方向に突出しないように構成してある。
【0042】
前記本体部材2A内には、図5に示すように、前記面板部と平行な一面2b1を、弾性変形するダイヤフラム璧2A1で形成した薄い円板状をなす流体充填室2bと、この流体充填室2b及び圧力導入口2a1を連通する流体導入路2cとが形成してある。前記圧力導入口2a1は、ボディユニット1に対する取付面2aに開口させてある。流体導入路2cは、流体充填室2bの側面、すなわち前記一面2b1に垂直な面に開口しており、かつ流体導入路2cの延伸方向は、前記一面2b1に対して平行又は若干斜めに設定してある。
【0043】
前記抵抗素子2Bは、ここでは4本の等価なものを用いており、ここでは図5、図10に示すように、前記ダイヤフラム壁2A1の裏面に並列に貼り付けてあるが、これに限られず表裏に貼るなど、既知の種々の貼り方にして構わない。これら4本の抵抗素子2Bは、例えば図11に等価電気回路図を示すように、ブリッジ回路を構成するように接続されており、これら抵抗素子2Bのうち、真ん中の2本である2B(2)、2B(3)がブリッジ回路での対向する抵抗となるように構成してある。
【0044】
そして、同図に示すように、ブリッジ回路での隣り合う抵抗素子2Bの接続点のうち、対角に位置する接続点T1、T2に、別に設けた定電流源Iから一定電流を流し、もう一方の対角に位置する接続点T3、T4間の電圧を圧力指示電圧Vpとして取り出せるようにしてある。なお、この圧力指示電圧を取り出す、あるいは出力するときが圧力測定モードである。
【0045】
このような構成であると、圧力が作用していない状態では、感圧面である前記一面2b1は変形していないので、ブリッジ回路の平衡が保たれており、圧力指示電圧は0であるが、感圧面2b1が流体圧力を受圧して変形すると、例えば抵抗素子2B(2)、2B(3)は伸びてその抵抗値が伸び分だけ増す一方で、抵抗素子2B(1)、2B(4)は縮んでその抵抗値が縮んだ分だけ減るのでブリッジ回路の平衡が崩れて、変形に応じた圧力指示電圧Vpが発生する。
【0046】
ところで、この圧力指示電圧Vpは、同一圧力であったとしても温度によって変化する。抵抗素子2Bの電気抵抗値が温度によって変化するからである。そこで、この実施形態では、前記ブリッジ回路を利用して温度をも測定できるようにしている。具体的には、抵抗素子2Bの抵抗値が温度によって変化することを利用して、定電流源が接続されている接続点間の電圧を温度指示電圧Vtとして取り出せるようにしてある。すなわち、この温度指示電圧Vtは、抵抗素子2BのT1、T2間でみたときの合成抵抗値を間接的に示すものであり、この合成抵抗値が温度に依存して変化することから、温度指示電圧Vtが温度を示す値となる。そして、この温度指示電圧を取り出す、あるいは出力するときが測温モードである。しかして、前記合成抵抗値は圧力にはほとんど依存しないので、圧力に拘わらず温度を独立して測定することができる。
なお、具体的な抵抗素子としては、シリコン等で形成されたMEMSやピエゾ素子を挙げることができ、温度測定機能の観点からはMEMSがより好ましい。
【0047】
ところで、かかる一対の圧力センサ21、22のうちの上流側の圧力センサ21は、ボディユニット1の部品取付面1cにおける長手方向中央部に取り付けてあり、下流側の圧力センサ22を、前記部品取付面1cにおける長手方向他端部に取り付けてある。
【0048】
特に前記上流側圧力センサ21は、ボディユニット1に取り付けることによって、その取付面2aが前記凹部1hの開口を環状シール部材SL4を介して気密に封止するとともに、凹部1h内の流体抵抗部材3を、凹部1hの底面との間で押圧挟持するように構成してある。このことにより、流体抵抗部材3を専用の蓋等でシールする必要がなくなり、部品点数の削減や組み立ての簡単化を促進して低コスト化を図ることができる。
【0049】
また、この状態において、流体抵抗部材3における連通路3cが上流側圧力センサ21の圧力導入口2a1に接続され、抵抗流路3aよりも上流側の内部流路1a(2)が前記連通路3cを介して上流側圧力センサ21に連通されるように構成してある。
【0050】
一方、抵抗流路3aよりも下流側の内部流路1a(3)は、ボディユニット1の長手方向に沿って延伸し流体導出口1eに至るとともに、その途中で分岐した分岐流路1iによって、下流側圧力センサ22に圧力導入口2a1に接続されるようにしてある。
【0051】
さらにこの実施形態では、前記流体抵抗部材3を流れる流体の温度を計測する温度検知手段8を設けている。この温度検知手段8は、例えばサーミスタや測温抵抗体などであり、前記上流側圧力センサ21の本体部材2Aに埋めこんである。より具体的には、図9、図3に示すように、前記本体部材2Aにおける取付面2aから薄肉壁W(厚み0.1mm程度)を介した位置に埋めこみ、この温度検知手段8が薄肉壁Wを介して流体抵抗部材3と対向するように配置してある。
【0052】
前記流量算出回路9は、物理的には、CPU、メモリ、I/Oチャネル、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、その他のアナログ乃至デジタル電気回路で構成されたものであり、ここでは、圧力センサ21、22や流量調整弁4を覆うようにボディユニット1に取り付けた図2に示すカバー体7に収容してあるが、カバー体7やボディユニット1に付帯させず、これらと別体に設けてもよい。なお、図2には、流量算出回路9は示していない。
【0053】
この流量算出回路9は、前記圧力センサ21、22及び温度検知手段8と電気的に接続されており、前記圧力指示電圧Vp、温度指示電圧Vt及び温度検知手段8からの温度測定値を受信できるように構成してある。
そして、前記メモリに格納したプログラムにしたがってCPUやその他周辺機器が協働することにより、この流量算出回路9が、以下のような機能を発揮するように構成してある。
【0054】
すなわち、圧力センサ21、22から出力される圧力指示電圧Vpをそれぞれ取得して補正前圧力値を算出するとともに、温度指示電圧Vtを取得して圧力センサ温度を算出し、前記補正前圧力値を圧力センサ温度で補正して最終結果である圧力を算出する機能である。なお、最終結果である圧力は、圧力指示電圧Vp及び温度指示電圧Vtから直接求めてもよい。
【0055】
具体例を以下に挙げる。
まず、温度指示電圧Vtから温度Tを求める。これは例えば以下の所定式で求める。
T=e(Vt)
eは所定の関数(例えば1次式)
【0056】
次に温度Tにおいて、圧力を変化させたときに、真の圧力Pと圧力指示電圧Vpとの関係式を、フィッティング等により求める。
P(T)=f(Vp,a,b,c,d,・・・)
fは所定の関数(例えば3次式)
〜d,・・・は、フィッティング等によって得られた所定の係数
【0057】
これを複数(例えばn)の温度で測定し、以下の式を得る。
P(T)=f(Vp,a,b,c,d,・・・)
kは1〜nまでの整数
【0058】
次に、a〜a(=a)を温度Tをパラメータとした関数g(T)で表す。この関数gは、例えば、Tの複数次式である。
a=g(T)
同様にしてb〜b、c〜c、d〜d、・・・をそれぞれ温度の関数h(T)、i(T)、j(T)・・・で定める。
【0059】
すなわち、圧力Pは、圧力指示電圧Vp及び温度指示電圧Vtをパラメータとする関数kで表すことができる。
P=f(Vp、g(T)、h(T)、i(T)、j(T)・・・)=k(Vp、Vt)
したがって、このようにして求めた関数kと圧力指示電圧Vp及び温度指示電圧Vtとから圧力Pを算出できる。
【0060】
次に、上述して算出された上流側の圧力と下流側の圧力に加え、メモリに記憶させた流体抵抗部材3の有する圧力−流量特性及び温度検知手段8からの温度測定値に基づいて、前記流体抵抗部材を流れる流量、すなわち内部流路1aを流れる流量を算出する機能である。
【0061】
具体的には、流れが層流のとき、Hagen Poiseuilleの法則(式1)から、管路、すなわち流体抵抗部材の両端に発生する差圧は、体積流量に比例し、その比例係数には流体の粘性係数が含まれる。なお、ここでの圧力−流量特性とは、例えば下記式(1)におけるr及びLで定まる係数である。
Q = π・r^4・Δp /(8ηL)・・・式(1)
ここで、
r;流体抵抗部材の流路半径
η;流体の粘性係数
L;流体抵抗部材の流路長さ
Δp;差圧
【0062】
しかして粘性係数は、流体温度、すなわち前記温度検知手段8からの温度測定値に依存するから、この温度測定値によって正確な粘性係数を求め、体積流量(又はこれに密度を乗じて質量流量)を算出するように構成してある。
その他、例えば複数の温度、複数の圧力での各流量を予め実験で求めてメモリに記憶させておき、実際に測定された温度及び圧力での流量を、前記実験値からフィッティング等により補間して算出するようにしてもよい。
【0063】
制御回路6は、物理的には、前記流量算出回路9と同基板に設けてあり、CPU、メモリ、I/Oチャネル、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、その他のアナログ乃至デジタル電気回路を前記流量算出回路9と共用している。そして、メモリに格納したプログラムにしたがってCPUやその他周辺機器が協働することによって、この制御回路6が、前記流量調整弁4を制御し、前記流量算出回路9で算出された内部流路1aの流体流量を、外部から指示した設定流量となるように調整する機能を発揮するようにしてある。
【0064】
具体的には、オペレータや外部の他の機器から設定流量が与えられると、この制御回路6はその設定流量と前記流量算出回路9で算出された流量との偏差を算出し、その偏差に基づいて、前記算出流量が設定流量に近づくように、流量調整弁4に対して前記積層圧電素子412を伸縮させる指令信号を出力する。このようにして、弁座面42aと弁体41aとの離間距離を変動させ、この流量調整弁4を流れる流体、つまりこの内部流路1aを流れる流体の流量を調整する。
【0065】
しかして、このような構成であれば、仮に電磁式開閉弁等からの通電時の発熱が原因で、圧力センサ21、22や流体抵抗部材3の温度が時間的に変動し、しかもその各所で温度が異なっていたとしても、圧力センサ21、22の温度と流体抵抗部材3を流れる対象流体の温度とを個別に測定して、それら各測定温度を対象流体の流量算出における算出パラメータとしているため、極めて精度の高い流量を算出できる。
【0066】
また、圧力を測定するための抵抗素子2Bを圧力センサ21、22の温度を測定する手段として共用しているため、コンパクト性、すなわち幅の狭さを損なうこともない。
【0067】
特にこの実施形態では、圧力センサ21、22を、その感圧面2b1がその取付面2aに対して垂直に起立するように構成するとともに、これら圧力センサ21、22を、平面視、流体の流れ方向と感圧面2b1とが平行となるように、部品取付面1cに直列させて取り付けて、感圧面2b1を大面積にして高感度を維持しながらも幅方向の寸法を小さくし、平面視、細長い形状にしている。そのため、圧力センサ21、22が、感圧面を寝かせたものと比べて流体抵抗部材3が設けられた内部流路1aから離れることとなり、流体抵抗部材3と感圧面2b1との温度差が大きくなりがちとなる。しかしながら、本実施形態によれば、上述したように、圧力センサ21、22の温度と流体抵抗部材3を流れる対象流体の温度とを個別に測定しているので、かかる誤差を確実に低減して精度の高い流量測定が可能になる。
【0068】
さらに、温度検知手段8を、流体抵抗部材3を封止する上流側圧力センサ21の本体部材2Aに埋めこんで、流体抵抗部材3にできるだけ接近させているので、対象流体のより確実な温度を検知できる。また、その埋め込み位置が前記本体部材2Aの言わばデッドスペースに設定してあるので、コンパクト性を損なうこともない。
【0069】
その他の付随的な効果としては、流量調整弁4と流体抵抗部材3とが、ボディユニット1における前記部品取付面1cに並んで設けられているので、その間を接続する内部流路1aの容積を可及的に低減できることも挙げられる。したがって、流量の検知と流量の制御との時間ずれを低減でき、流量制御装置100の制御応答性を大幅に改善することが可能になる。
【0070】
さらに、流量調整弁4に関して言えば、ダイヤフラム部材411bが、圧電素子412をハウジング411aに気密に封止するための封止部材と流量を調整する弁体としての機能を兼備するため、部品点数を削減でき、小型化や省スペース化を図ることが可能になる。また、ハウジング411aの一端面にダイヤフラム部材411bを一体に成形するとともに、他端面には気密保持部材411c.3を設けているのでハウジング内の気密性を確実に保つことができる。さらにこの気密保持部材411c.3を介して調整ネジ411c.2により圧電素子412を押引できるように構成しているので、ハウジング内の気密性を保ちながら、圧電素子412の位置をも調整できる。
【0071】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、上流側圧力センサの圧力測定値は、下流側圧力センサに比べて、流量測定精度に大きく関与しているため、上流側圧力センサだけに測温モードを付与して、温度補正による圧力値を算出するようにしても良い。
【0072】
流量や圧力−流量特性は、理論式ではなく、実験等から定めても良いし、流体抵抗部材が臨界ノズルなどの場合は上流側圧力センサの圧力測定値のみから流量を算出しても良い。また、差圧だけでなく(上流圧のn乗)−(下流圧のn乗)や、(下流圧のm乗)*(上流圧−下流圧)*k乗、あるいはそれら組み合わせなど、実機でのフィッティング可能な種々の式や値等から流量を算出しても良い。
【0073】
圧力センサ21(22)において、対象流体に接するダイヤフラム璧2A1(感圧面2b1)に直接抵抗素子を貼り付けず、図12に示すように、前記ダイヤフラム璧2A1の変位が、非圧縮性流体FDを介して第2のダイヤフラム2A2に伝達されるように構成し、この第2のダイヤフラム2A2に抵抗素子2Bを貼り付けてもよい。このようなものであれば、抵抗素子2Bが対象流体の温度変化の影響を受けにくくなり、より精度の高い測定が可能になる。抵抗素子2Bは非圧縮性流体FD側に貼り付けても良い。
【0074】
流量測定装置単体でもかまわない。状況によっては、上流側圧力センサを省き、下流側圧力センサだけで構成しても良い。
さらに言えば、複数のボディユニットをそれらの側面(長手方向に平行な面)同士が密着乃至近接するように配置して、複数の流路が並列するようにしてもかまわない。
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0075】
100・・・流量制御装置
10・・・流量測定装置
1・・・ボディユニット
1a・・・内部流路
21・・・上流側圧力センサ
22・・・上流側圧力センサ
2b1・・・感圧面
3・・・流体抵抗部材
6・・・制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定すべき対象流体が流れる流体抵抗部材と、
前記流体抵抗部材における上流側の対象流体が導かれる感圧面を有し、当該対象流体の圧力を前記感圧面の歪みに連動して変形するように設けられた抵抗素子の電気抵抗値の変化から測定することが可能であるとともに、前記抵抗素子の温度による電気抵抗値の変化から当該圧力センサの温度を測定することが可能な上流側圧力センサと、
前記流体抵抗部材を流れる対象流体の温度を測定可能な位置に配置された温度検知手段と、
前記上流側圧力センサで測定された上流側流路の圧力及び前記流体抵抗部材の圧力−流量特性に加えて、前記上流側圧力センサで測定された上流側圧力センサ温度及び前記温度検知手段で測定された前記流体抵抗部材における対象流体温度に少なくとも基づいて、当該対象流体の流量を算出する流量算出部とを備えていることを特徴とする流量測定装置。
【請求項2】
前記温度検知手段が、流体抵抗部材の近傍に設けられている請求項1記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記対象流体の流れる内部流路が形成された長手方向を有するボディユニットをさらに具備し、
前記流体抵抗部材が前記内部流路を分断するように前記ボディユニットに取り付けてあるとともに、
前記ボディユニットの長手方向と平行な面に設定した部品取付面に、前記上流側圧力センサが、その感圧面が前記部品取付面に略垂直でなおかつ前記長手方向に略平行となる姿勢で取り付けてあることを特徴とする請求項1又は2記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記流体抵抗部材が、前記ボディユニットの部品取付面に開口させた凹部に嵌め込んだものであり、
前記上流側圧力センサが、内部に感圧面を形成した本体部材を具備したものであり、
前記凹部の開口を前記本体部材で封止するとともに該本体部材における開口封止面の直上に前記温度検知手段を内蔵させている請求項1乃至3いずれか記載の流量測定装置。
【請求項5】
前記流体抵抗部材が、対象流体を層流状態で流すものである請求項1乃至4いずれか記載の流量測定装置。
【請求項6】
前記流体抵抗部材における下流側の対象流体が導かれる感圧面を有し、当該対象流体の圧力を前記感圧面の歪みに連動して変形するように設けられた抵抗素子の電気抵抗値の変化から前記流体抵抗部材の下流側流路の圧力を測定することが可能であるとともに前記抵抗素子の温度による電気抵抗値の変化から当該圧力センサの温度を測定することが可能な下流側圧力センサをさらに具備し、
前記流量算出部が、前記下流側圧力センサ測定された下流側流路の圧力及び下流側圧力センサ温度にさらに基づいて当該対象流体の流量を算出することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の流量測定装置。
【請求項7】
請求項3記載の流量測定装置と、前記ボディユニットに取り付けた流量調整弁と、前記流量測定装置による測定流量が予め定めた目標流量になるように前記流量調整弁を制御する制御回路とを具備していることを特徴とする流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−3022(P2013−3022A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135765(P2011−135765)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】