説明

流量計測装置及び流量計測方法並びに界面判定装置及び界面判定方法

【課題】超伝導物質に超伝導遷移を起こさせることが可能な温度を有する流体の流量計測装置を提供する。
【解決手段】流量計測装置は、流体Fの温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体Rと、複数の超伝導体Rのそれぞれに対応して設けられており、管路10に流体Fが流れた状態において対応する超伝導体Rを加温する複数のヒータHとを備え、複数のヒータHからの加温量をそれぞれ異ならせて複数のヒータHが対応する超伝導体Rを加温することにより複数の超伝導体Rを常伝導にした後、流体Fにより冷却された複数の超伝導体Rの中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体Rを判定し、この判定がされた常伝導から超伝導に遷移している超伝導体Rにおいて、加温量が最も大きいヒータHにより加温された超伝導体Rが、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた熱量Q2を基にして流体Fの流量を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液体水素のような低温液化ガスの流量を計測する流量計測装置及び流量計測方法並びに界面判定装置及び界面判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流量計の一つとして熱線式流量計が知られている。熱線式流量計としては、流路内に挿入された酸化物高温超伝導セラミックス材料からなる線材と、該線材中を流れる電流の値を測定する電流計と、を備えたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−101051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低温液化ガスは容易に気化するので、上層が気体、下層が液体である気液混合流体の状態で流れていることがある。この状態で低温液化ガスの流量(液体の流量)を計測した場合、低温液化ガスの気体の流量が含まれて計測されるので、流量を正確に計測することができない。
【0005】
本発明の目的は、超伝導物質に超伝導遷移を起こさせることが可能な温度を有する流体の流量を計測することができる流量計測装置及び流量計測方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、上層が気体、下層が液体である気液混合流体について、気体と液体の界面の位置を判定することができる界面判定装置及び界面判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面に係る流量計測装置は、流体が流れることができる管路と、前記管路内に配置されており、前記流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体と、前記複数の超伝導体のそれぞれに対応して設けられており、前記管路に前記流体が流れた状態において対応する超伝導体を加温する複数のヒータと、前記複数のヒータからの加温量をそれぞれ異ならせて、前記複数のヒータが対応する超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にした後、前記流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を判定する遷移判定部と、前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体において、加温量が最も大きいヒータにより加温された超伝導体が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして前記流体の流量を演算する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
Q2=Q1+CsΔTs
Q1は前記加温量が最も大きいヒータにより加温された超伝導体に与えられた熱量、Csはこの超伝導体の熱容量、ΔTsはこの超伝導体が加温により常伝導にされてから前記遷移判定部による判定時までにこの超伝導体の温度が低下した量を表す。
【0009】
この構成によれば、超伝導体が流体により冷却されて常伝導から超伝導に遷移した時に、その超伝導体から奪われた熱量Q2が流体の流速に依存すること利用して、流量を計測する。したがって、超伝導物質に超伝導遷移を起こさせることが可能な温度を有する流体の流量を計測することができる。次に記載する流量計測装置も同様のことが言える。
【0010】
本発明の第2の局面に係る流量計測装置は、流体が流れることができる管路と、前記管路内に配置されており、前記流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が異なる複数の超伝導体と、前記管路に前記流体が流れた状態において前記複数の超伝導体を加温するヒータと、前記ヒータが前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にした後、前記流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を判定する遷移判定部と、前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体において、最も小さい前記超伝導遷移温度を有する超伝導体が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして前記流体の流量を演算する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
Q2=Q1+CsΔTs
Q1は前記ヒータでの加温により前記最も小さい前記超伝導遷移温度を有する超伝導体に与えられた熱量、Csはこの超伝導体の熱容量、ΔTsはこの超伝導体が加温により常伝導にされてから前記遷移判定部による判定時までにこの超伝導体の温度が低下した量を表す。
【0012】
上記構成において、前記流体は上層が気体、下層が液体である気液混合流体であり、前記複数の超伝導体は前記気液混合流体が流れる方向に沿って前記管路の内周面に配置されており、前記複数の超伝導体を一組として、複数の組が前記管路の周方向に並べて配置されており、前記遷移判定部は、前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定をし、前記流量計測装置は、前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定部をさらに備えており、前記演算部は、前記界面判定部で判定された界面より下に位置する超伝導体における前記熱量Q2を基にする前記気液混合流体の液体の流量の演算及び、前記界面判定部で判定された界面より上に位置する超伝導体における前記熱量Q2を基にする前記気液混合流体の気体の流量の演算の少なくとも一方を実行する、ようにすることができる。
【0013】
この構成によれば、気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定しているので、判定された界面の位置を基にして気液混合流体の流量を気体と液体に分けて演算することができる。
【0014】
本発明の第3の局面に係る流量計測方法は、流量計測の対象となる流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体が配置されている管路に前記流体が流れている状態であって、前記複数の超伝導体のそれぞれへの加温量を異ならせて、前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にする加温ステップと、前記加温ステップ後に前記流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を判定する遷移判定ステップと、前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体において、前記加温ステップでの加温量が最も大きい超伝導体が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして前記流体の流量を演算する演算ステップと、を備えることを特徴とする。
【0015】
Q2=Q1+CsΔTs
Q1は前記加温ステップでの加温量が最も大きい超伝導体に与えられた熱量、Csはこの超伝導体の熱容量、ΔTsはこの超伝導体が前記加温ステップでの加温により常伝導にされてから前記遷移判定ステップによる判定時までにこの超伝導体の温度が低下した量を表す。
【0016】
この方法によれば、超伝導体が流体により冷却されて常伝導から超伝導に遷移した時に、その超伝導体から奪われた熱量Q2が流体の流速に依存すること利用して、流量を計測する。したがって、超伝導物質に超伝導遷移を起こさせることが可能な温度を有する流体の流量を計測することができる。次に記載する流量計測方法も同様のことが言える。
【0017】
本発明の第4の局面に係る流量計測方法は、流量計測の対象となる流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が異なる複数の超伝導体が配置されている管路に前記流体が流れている状態であって、前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にする加温ステップと、前記加温ステップ後に前記流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を判定する遷移判定ステップと、前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体において、最も小さい前記超伝導遷移温度を有する超伝導体が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして前記流体の流量を演算する演算ステップと、を備えることを特徴とする。
【0018】
Q2=Q1+CsΔTs
Q1は前記加温ステップにより前記最も小さい前記超伝導遷移温度を有する超伝導体に与えられた熱量、Csはこの超伝導体の熱容量、ΔTsはこの超伝導体が前記加温ステップでの加温により常伝導にされてから前記遷移判定ステップによる判定時までにこの超伝導体の温度が低下した量を表す。
【0019】
上記方法において、前記流体は上層が気体、下層が液体である気液混合流体であり、前記気液混合流体が流れる方向に沿って前記管路の内周面に配置された前記複数の超伝導体を一組とし、複数の前記組が前記管路の周方向に並べて配置されており、前記遷移判定ステップは、前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定をし、前記流量計測方法は、前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定ステップをさらに備えており、前記演算ステップは、前記界面判定ステップで判定された界面より下に位置する超伝導体における前記熱量Q2を基にする前記気液混合流体の液体の流量の演算及び、前記界面判定ステップで判定された界面より上に位置する超伝導体における前記熱量Q2を基にする前記気液混合流体の気体の流量の演算の少なくとも一方を実行する、ようにすることができる。
【0020】
この方法によれば、気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定しているので、判定された界面の位置を基にして気液混合流体の流量を気体と液体に分けて演算することができる。
【0021】
本発明の第5の局面に係る界面判定装置は、上層が気体、下層が液体である気液混合流体が流れることができる管路と、前記気液混合流体が流れる方向に沿って前記管路の内周面に配置されており、前記気液混合流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体と、を備えており、前記複数の超伝導体を一組として、複数の前記組が前記管路の周方向に並べて配置されており、さらに、前記複数の超伝導体のそれぞれに対応して設けられており、前記管路に前記気液混合流体が流れた状態において対応する超伝導体を加温する複数のヒータと、前記複数のヒータからの加温量をそれぞれ異ならせて、前記複数のヒータが対応する超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にした後、前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定する遷移判定部と、前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、複数の組のそれぞれにおいて判定する。気体と液体では比熱が異なるので、常伝導から超伝導に遷移している超伝導体が異なる。したがって、常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較することにより、気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定することができる。以下に記載する界面判定装置、界面判定方法も同様のことが言える。
【0023】
本発明の第6の局面に係る界面判定装置は、上層が気体、下層が液体である気液混合流体が流れることができる管路と、前記気液混合流体が流れる方向に沿って前記管路の内周面に配置されており、前記気液混合流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が異なる複数の超伝導体と、を備えており、前記複数の超伝導体を一組として、複数の前記組が前記管路の周方向に並べて配置されており、さらに、前記管路に前記気液混合流体が流れた状態において前記複数の超伝導体を加温するヒータと、前記ヒータが前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にした後、前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定する遷移判定部と、前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定部と、を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の第7の局面に係る界面判定方法は、流量計測の対象となる上層が気体、下層が液体である気液混合流体が流れる方向に沿って管路の内周面に配置された、前記気液混合流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体を一組とし、複数の前記組が管路の周方向に並べて配置された前記管路に前記気液混合流体が流れている状態であって、前記複数の超伝導体のそれぞれへの加温量を異ならせて、前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にする加温ステップと、前記加温ステップ後に前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定する遷移判定ステップと、前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の第8の局面に係る界面判定方法は、流量計測の対象となる上層が気体、下層が液体である気液混合流体が流れる方向に沿って管路の内周面に配置された、前記気液混合流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が異なる複数の超伝導体を一組とし、複数の前記組が管路の周方向に並べて配置された前記管路に前記気液混合流体が流れている状態であって、前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にする加温ステップと、前記加温ステップ後に前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定する遷移判定ステップと、前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明において、気液混合流体の温度とは気液混合流体の液体部分の温度を意味している。
【発明の効果】
【0027】
本発明の流量計測装置及び流量計測方法によれば、超伝導物質に超伝導遷移を起こさせることが可能な温度を有する流体の流量を計測することができる。
【0028】
本発明の界面判定装置及び界面判定方法によれば、上層が気体、下層が液体である気液混合流体について、気体と液体の界面を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流量計測装置の使用状態の一例を示す図である。
【図2】上記流量計測装置に備えられる管路、超伝導体及びヒータの配置関係を示す図である。
【図3】上記流量計測装置に備えられる超伝導体の電気抵抗と温度の関係を示すグラフである。
【図4】上記流量計測装置の構成を示すブロック図である。
【図5】上記流量計測装置に備えられる超伝導体及びこれに流れる電流を測定する電流計並びにヒータ及びこれを発熱させるための電流回路を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る流量計測方法を説明するフローチャートである。
【図7】上記流量計測装置に備えられる複数の超伝導体の超伝導遷移温度がそれぞれ同じ場合に複数の超伝導体のそれぞれについて、常伝導から超伝導に遷移したか否かを示す図である。
【図8】上記流量計測装置に備えられる複数の超伝導体の超伝導遷移温度がそれぞれ異なる場合に複数の超伝導体のそれぞれについて、常伝導から超伝導に遷移したか否かを示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る流量計測装置に備えられる管路、超伝導体及びヒータの配置関係を示す図である。
【図10】上記第2実施形態において、流体が流れる方向に沿って配置された複数の超伝導体を一組として、複数の組が管路の周方向に並べて配置された構造を平面に展開した図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る流量計測方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。まず、本実施形態による流量の計測に用いる理論を説明する。
【0031】
超伝導体が配置されている管路に流量計測の対象となる流体(例えば液体水素)が流れている状態において、超伝導体を加温することにより、超伝導体の温度をその超伝導体の超伝導遷移温度Tcよりも大きくして、超伝導体を常伝導にする。このときに超伝導体に与えられた熱量をQ1とする。常伝導状態の超伝導体が流体により冷却されて超伝導体の温度が超伝導遷移温度Tcより小さくなれば、超伝導体は常伝導から超伝導に遷移する。この遷移により超伝導体から奪われた熱量をQ2とすれば、Q2は以下の式で表される。
【0032】
Q2=Q1+CsΔTs
Csは超伝導体の熱容量である。ΔTsは超伝導体の温度の低下量であり、詳しくは加温により常伝導にされてから超伝導遷移の判定時までに超伝導体の温度が低下した量を表している。加温により常伝導にされた超伝導体の温度をTsとすれば、Ts−ΔTs<Tcが成立した場合、超伝導体の電気抵抗値が0となり、超伝導となる。
【0033】
Q2は流体の流速に依存するので、Q2から流体の流速が分かる。したがって、流体が流れている管路の径と流速から流量を計測することができる。
【0034】
図1は本発明の第1実施形態に係る流量計測装置20の使用状態の一例を示す図である。流量計測装置20は、流量計測の対象となる流体が流れることができる管路10と、流量計測に必要な制御、演算等を実行するパソコンPCとを備える。流量計測装置20は、タンク2とタンク4をつなぐ輸送管6を流れる流体(例えば液体水素)の流量を計測する。輸送管6は、水平方向に延びて上流側のタンク2につながる輸送管6Aと、水平方向に延びて下流側のタンク4につながる輸送管6Bに分けられている。輸送管6Aと輸送管6Bの間には、水平方向に管路10が配置されている。上流側のタンク2に入っている液体水素は、輸送管6A、管路10、輸送管6Bを流れて、下流側のタンク4に入れられる。
【0035】
図2は流量計測装置20に備えられる管路10、超伝導体R−1〜R−12及びヒータH−1〜H−12の配置関係を示す図である。符号のハイフン及びその次の数字は省略して記載することがある。例えば、超伝導体R−1〜R−12のそれぞれを区別する必要がなければ、超伝導体Rと記載することがある。
【0036】
管路10の両端にはフランジ12が形成されており、管路10はフランジ12の箇所で輸送管6Aと輸送管6Bにそれぞれ連結される。輸送管6を流れる流体Fは、完全液体又は略完全液体の状態である。輸送管6Aから流れてきた流体Fは矢印Dで示すように、管路10を通り、輸送管6Bへ導かれる。
【0037】
管路10の測定点Pにおいて、12個の超伝導体R−1〜R−12が管路10の内周面14に沿って環状に配置されている。超伝導体Rはその表面が管路10の内周面と同一の高さで管路10の側壁に埋め込まれている。図示はしていないが、隣り合う超伝導体Rどうしの間には、これらを電気的に絶縁する断熱性の部材が介在している。このような部材としては、FRP(Fiber Reinforced Plastics)を例示することができる。
【0038】
超伝導体Rとしては、その固有の超伝導遷移温度Tcが流量計測の対象となる流体Fの温度と略等しい範囲内であって、超伝導遷移温度Tcが流体Fの温度よりも高いものが選ばれる。超伝導遷移温度Tcが流体Fの温度より小さければ、流体Fによる冷却では超伝導体Rが常伝導から超伝導に遷移しないからである。
【0039】
例えば図3に示すように、流体Fが温度20Kの液体水素であれば、超伝導体Rとして、超伝導遷移温度Tcが温度23KであるNb3Geを用いることができる。超伝導遷移温度Tcが温度39KであるMgB2を用いることもできる。
【0040】
図2に示すようにヒータH−1〜H−12は、超伝導体R−1〜R−12のそれぞれに対応して設けられており、この実施形態ではヒータH−1〜H−12が管路10の側壁に埋め込まれた状態で超伝導体R−1〜R−12のそれぞれに接触して配置されている。ヒータHは超伝導体Rと同様に環状に配置されている。ヒータH及び超伝導体Rは管路10の側壁に埋め込まれているが、流体Fの流れに対してヒータH及び超伝導体Rの物理的抵抗が問題にならなければ、ヒータH及び超伝導体Rを内周面14から突出した状態で配置してもよい。
【0041】
管路10に流体Fが流れた状態において、ヒータHは対応する超伝導体Rを加温する。例えば、超伝導体R−3はヒータH−3で加温される。ヒータHは液体水素等の低温液化ガスの温度領域で動作可能な電気抵抗素子であり、材料がステンレス、マンガニン等からなる。なお、超伝導体Rが発熱する性質を有していれば、超伝導体RとヒータHを兼用することができる。このような超伝導体Rとして、MgB2を例示することができる。
【0042】
図4は、本発明の第1実施形態に係る流量計測装置20の構成を示すブロック図である。流量計測装置20は、温度センサS、超伝導体R及びヒータHと、バス22で相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)24、インターフェース26、ROM(Read Only Memory)28、RAM(Random Access Memory)30、表示部32及び操作部34と、を備える。CPU24、インターフェース26、ROM28、RAM30、表示部32及び操作部34は図1のパソコンPCに備えられている。
【0043】
12個の温度センサS−1〜S−12のそれぞれは、流量の計測中に対応する超伝導体R−1〜R−12の温度を測定する。例えば、温度センサS−1は超伝導体R−1の温度を測定する。温度センサSは液体水素、液体ヘリウム等の低温液化ガスの温度を測定できるものであり、材料がマンガニン、ルブレン等からなる熱電対が用いられる。温度センサSはインターフェース26に接続されており、温度センサSから出力された温度の測定信号はインターフェース26に入力する。
【0044】
超伝導体R−1〜R−12のそれぞれに対応させて、電流計41−1〜41−12が設けられている。ヒータH−1〜H−12のそれぞれに対応させて、電流回路43−1〜43−12が設けられている。例えば超伝導体R−1とヒータH−1で説明すれば、図5に示すように、電流計41−1は超伝導体R−1に流れる電流を測定する。電流計41−1はインターフェース26と接続されている。電流計41−1で測定された電流値はインターフェース26に送られる。
【0045】
電流回路43−1はヒータH−1を発熱させるための回路である。電流回路43−1はインターフェース26と接続されている。ヒータH−1の発熱を制御するための信号がインターフェース26を経由して電流回路43−1に送られる。
【0046】
CPU24は流量を計測するために必要な制御を、流量計測装置20を構成する上記ハードウェアに対して実行する。
【0047】
ROM28はフラッシュメモリ等により実現されており、流量の演算に必要なデータベース及び流量計測装置20の動作に必要なソフトウェア等を記憶している。RAM30には上記ソフトウェアの実行時に発生するデータが一時的に記憶される。RAM30はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等により実現される。
【0048】
表示部32はLCD(Liquid Crystal Display)等により実現されており、流量計測装置20を用いて計測された流量等が表示される。操作部34には流量計測装置20の操作に必要となるキーが備えられている。
【0049】
後で説明する演算ステップを実行する演算部、界面判定ステップを実行する界面判定部は、いずれもCPU24、ROM28及びRAM30により実現される。また、加温ステップ及び遷移判定ステップを実行する遷移判定部は、CPU24、ROM28、RAM30、ヒータH及び電流回路43により実現される。
【0050】
流量計測装置20を用いた流量の計測方法、言い換えれば本発明の第1実施形態に係る流量計測方法について図2及び図6を用いて説明する。図6はこの方法を説明するフローチャートである。
【0051】
超伝導体R−1〜R−12はそれぞれ同じ超伝導遷移温度Tcを有する。管路10に流体Fが流れている状態において、以下のステップが実行される。
【0052】
[加温ステップST10]
ヒータH−1〜H−12が対応する超伝導体Rを加温することにより、超伝導体R−1〜R−12を常伝導にする。ヒータH−1〜H−12からの加温量(言い換えればヒータH−1〜H−12からの出力エネルギー)をそれぞれ異ならせているので、超伝導体R−1〜R−12のそれぞれに与えられる熱量は異なる。ヒータHからの加温量はヒータHに流す電流量又はヒータHの抵抗値により変えることができる。
【0053】
[遷移判定ステップST11]
加温ステップST10後に流体Fにより冷却された超伝導体R−1〜R−12の中で、常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を判定する。超伝導体Rに流れる電流は図4に示す電流計41により測定されており、超伝導体Rに流れる電流の値が∞である超伝導体Rが常伝導から超伝導に遷移したと判定される。
【0054】
図7は超伝導体Rのそれぞれについて、常伝導から超伝導に遷移したか否かを示す図である。縦軸は各超伝導体Rの温度を示しており、横軸は各超伝導体Rの位置を示している。加温ステップST10で説明したように、超伝導体R−1〜R−12を常伝導にする際に与えられた熱量は異なっている。図7では超伝導体R−1〜R−12のそれぞれに与えられた熱量をQ1−1、Q1−2、・・・、Q1−12とすれば、Q1−1<Q1−2<・・・<Q1−12にされている。超伝導体R−1〜R−12の中で、超伝導体R−1〜R−4までが常伝導から超伝導に遷移しており、超伝導体R−4に与えられた熱量よりも大きい熱量が与えられた超伝導体R−5〜R−12は常伝導のままである。
【0055】
[演算ステップST12]
常伝導から超伝導に遷移した超伝導体R−1〜R−4において、常伝導にするために超伝導体R−1〜R−4のそれぞれに与えられた熱量は、Q1−1<Q1−2<Q1−3<Q1−4の関係を有する。本実施形態では最も大きい熱量Q1−4が与えられ超伝導体R−4を用いて流体Fの流量が演算される。すなわち、遷移判定ステップST11で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体R−1〜R−4において、加温量が最も大きいヒータH−4により加温された超伝導体R−4が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして流体Fの流量を演算する。
【0056】
Q2=Q1+CsΔTs
Q1は加温量が最も大きいヒータH−4により加温された超伝導体R−4に与えられた熱量Q1−1、Csはこの超伝導体R−4の熱容量、ΔTsはこの超伝導体R−4が加温により常伝導にされてから遷移判定ステップによる判定時までにこの超伝導体R−4の温度が低下した量を表す。
【0057】
上述したように、Q2は流体Fの流速に依存しているので、Q2を基にして流体Fの流量を求めることができる。本実施形態ではQ2と流量の関係を予め図4に示すROM30に格納しておき、上記式で求められたQ2に対応する流量を表示部32に表示する。
【0058】
以上の説明では、超伝導体R−1〜R−12の超伝導遷移温度Tcがそれぞれ同じであるが、これらの超伝導体Rの超伝導遷移温度Tcがそれぞれ異なっていてもよい。これについて、図7及び図8を用いて説明する。図8は、超伝導体R−1〜R−12の超伝導遷移温度Tcがそれぞれ異なる場合に超伝導体R−1〜R−12のそれぞれについて、常伝導から超伝導に遷移したか否かを示す図であり、図7と対応する。縦軸は各超伝導体Rの温度を示しており、横軸は各超伝導体Rの位置を示している。
【0059】
まず、図7を参照して、超伝導体R−1〜R−12の超伝導遷移温度Tcがそれぞれ同じ場合は、ヒータH−1〜H−12からの加温量をそれぞれ異ならせて、超伝導体R−1〜R−12を常伝導にしている。各超伝導体Rの温度の上昇量が違うので、超伝導体R−1〜R−12の中には常伝導から超伝導に遷移したものと常伝導のままのものとがある。
【0060】
これに対して図8に示すように、超伝導体R−1〜R−12の超伝導遷移温度Tcがそれぞれ異なる場合、超伝導体R−1〜R−12のそれぞれの超伝導遷移温度をTc−1、Tc−2、・・・、Tc−12とすれば、Tc−1>Tc−2>・・・>Tc−12にされている。ヒータHの加温量は同じにされているが、超伝導遷移温度Tcがそれぞれ異なるで、図8では超伝導体R−1〜R−12のうち、超伝導体R−1〜R−4までが常伝導から超伝導に遷移しており、超伝導体R−4の超伝導遷移温度Tc−4よりも小さい超伝導遷移温度を有する超伝導体R−5〜R−12は常伝導のままである。なお、超伝導遷移温度Tcは超伝導体Rを構成する材料の組成を変えることによって、異ならせることができる。
【0061】
超伝導体Rの超伝導遷移温度Tcがそれぞれ異なる場合は、演算ステップST12は次のように実行される。遷移判定ステップST11で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体R−1〜R−4において、最も小さい超伝導遷移温度Tc−4を有する超伝導体R−4が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして流体Fの流量を演算する。
【0062】
Q2=Q1+CsΔTs
Q1はヒータHの加温により、最も小さい超伝導遷移温度Tc−4を有する超伝導体R−4に与えられた熱量を表している。Csはこの超伝導体R−4の熱容量を表している。ΔTsはこの超伝導体R−4が加温により常伝導にされてから遷移判定ステップST11による判定時までにこの超伝導体R−4の温度が低下した量を表している。
【0063】
超伝導体Rの超伝導遷移温度Tcがそれぞれ異なる場合は、超伝導体Rのそれぞれの加温量を同じにできる。したがって、超伝導体Rのそれぞれに対応してヒータHを設ける必要はなく、一つのヒータHにより超伝導体R−1〜R−12を加温することができる。
【0064】
なお、図7に示すように超伝導体Rの超伝導遷移温度Tcのそれぞれが同じ場合、超伝導体R−1〜R−12のそれぞれに与えられた熱量の関係を、Q1−1<Q1−2<・・・<Q1−12にしている。これにより、超伝導体Rの並ぶ順番にしたがって、熱量Q1の大きさを連続的に変化させている。同様に、図8に示すように超伝導体Rの超伝導遷移温度Tcのそれぞれが異なる場合、超伝導体R−1〜R−12のそれぞれの超伝導遷移温度の関係を、Tc−1>Tc−2>・・・>Tc−12にしている。これにより、超伝導体Rの並ぶ順番にしたがって、超伝導遷移温度Tcの大きさを連続的に変化させている。
【0065】
しかしながら、超伝導体Rのそれぞれに与えられる熱量Q1が異なっていれば、又は超伝導体Rの超伝導遷移温度Tcがそれぞれ異なっていれば、超伝導体Rの並び方に関係なく、流量の計算に用いるQ2を求めることができる。
【0066】
第1実施形態によれば、超伝導体Rが流体Fにより冷却されて常伝導から超伝導に遷移した時に、その超伝導体Rから奪われた熱量Q2が流体Fの流速に依存すること利用して、流量を計測している。したがって、超伝導物質に超伝導遷移を起こさせることが可能な温度を有する流体Fの流量を計測することができる。
【0067】
図2に示すように、第1実施形態では超伝導体R−1〜R−12が管路10の内周面14に沿って環状に配置されているが、測定点Pに超伝導体Rが配置されていればよい。例えば超伝導体R−1〜R−12は、流体Fが流れる方向Dに沿って管路10の内周面14に配置されていてもよい。この配置は次に説明する第2実施形態で利用されている。また、流体Fの流れに対する超伝導体Rの物理的抵抗が問題とならなければ、超伝導体Rを管路10の断面の径方向に配置することも可能である。
【0068】
図9は本発明の第2実施形態に係る流量計測装置に備えられる管路10、超伝導体R−1〜R−12及びヒータH−1〜H−12の配置関係を示す図である。第2実施形態は、上層が気体G、下層が液体Lである気液混合流体Fについて、気体Gと液体Lに分けて流量を計測する流量計測装置及び流量計測方法である。
【0069】
超伝導体R−1〜R−12は、流体Fが流れる方向Dに沿って管路10の内周面14に配置されている。これを一組として、複数の組が管路10の周方向に並べて配置された構造にされている。図10は上記構造を平面に展開した図である。上記一組とは、一行の超伝導体R−1〜R−12を指している。ヒータH−1〜H−12も同様の構造を有する。Y1は環状に配置されている超伝導体Rにおいて、環の一番上を示しており、Y2は環の一番下を示している。
【0070】
超伝導体R−1〜R−12は超伝導遷移温度Tcがそれぞれ同じであり、超伝導体R−1〜R−12のそれぞれに与えられる熱量の関係は、第1実施形態と同様にQ1−1<Q1−2<・・・<Q1−12である。図10中の斜線で示している超伝導体Rは、常伝導から超伝導に遷移したものを示している。その他の超伝導体Rは、常伝導のままである。
【0071】
液体Lが流れている領域は超伝導体R−1〜R−5までが常伝導から超伝導に遷移している。これに対して、気体Gが流れている領域は超伝導体R−1〜R−2までが常伝導から超伝導に遷移している。これは同じ物質でも気体Gと液体Lでは比熱が異なることから導き出せることである。よって、常伝導から超伝導に遷移している超伝導体Rを比較することにより、気液混合流体Fの気体Gと液体Lの界面Sの位置を判定することができる。
【0072】
第2実施形態に係る流量計測方法について、第1実施形態と異なる点を主にして、図9、図10及び図11を用いて説明する。図11はこの方法を説明するフローチャートである。管路10に流体Fが流れている状態において、以下のステップが実行される。
【0073】
[加温ステップST20]
加温ステップST20は加温ステップST10と同じである。
【0074】
[遷移判定ステップST21]
常伝導から超伝導に遷移している超伝導体Rを、複数の組(一組とは図10の一行の超伝導体R−1〜R−12を指している)のそれぞれにおいて判定する。言い換えれば、常伝導から超伝導に遷移しているか否かの判定を、図10の行列状に配置された超伝導体Rの全てについて実行する。
【0075】
[界面判定ステップST22]
遷移判定ステップST21で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体Rを比較することにより、気液混合流体Fの気体Gと液体Lの界面Sの位置を判定する。
【0076】
[演算ステップST23]
気液混合流体Fの液体L、気体Gのそれぞれについて流量を演算する。液体Lの流量の演算には、界面判定ステップST22で判定された界面Sより下に位置する超伝導体Rにおける熱量Q2が用いられる。すなわち、界面Sより下に位置する超伝導体Rでは、加温量が最も大きいヒータHにより加温された超伝導体Rについて、それらの超伝導体Rの中から判断される。第2実施形態では超伝導体R−5が該当し、超伝導体R−5における熱量Q2を基にして流量が求められる。
【0077】
一方、気体Gの流量の演算には、界面判定ステップST22で判定された界面Sより上に位置する超伝導体における熱量Q2が用いられる。すなわち、界面Sより上に位置する超伝導体Rでは、加温量が最も大きいヒータHにより加温された超伝導体Rについて、それらの超伝導体Rの中から判断される。第2実施形態では超伝導体R−2が該当し、超伝導体R−2における熱量Q2を基にして流量が求められる。演算により計測された流量の値は図4の表示部32に表示される。なお、目的に応じて液体Lの流量だけ演算してもよいし、気体Gの流量だけ演算してもよい。
【0078】
以上説明したように第2実施形態は、気体Gと液体Lでは比熱が異なる点に着目したものである。
【0079】
第2実施形態は第1実施形態と同様の効果を有する。さらに第2実施形態によれば、遷移判定ステップST21で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体Rを比較して気液混合流体Fの気体Gと液体Lの界面Sの位置を判定しているので、界面Sの位置を基にして気液混合流体Fの流量を気体Gと液体Lに分けて演算することができる。このため、低温液化ガスが気液混合流体Fの状態で管路10に流れていても、気体Gを除いた気液混合流体Fの流量(液体Lの流量)を計測することができるので、低温液化ガスの流量(液体の流量)の計測精度を向上することができる。
【0080】
なお、第2実施形態は、超伝導体R−1〜R−12の超伝導遷移温度Tcがそれぞれ同じ場合で説明したが、これらの超伝導体Rの超伝導遷移温度Tcがそれぞれ異なっていてもよい。
【0081】
第2実施形態は、気液混合流体Fについて、気体Gと液体Lに分けて流量を計測する流量計測装置及び流量計測方法であるが、気体Gと液体Lの界面Sの位置を判定するので界面判定装置及び界面判定方法でもある。界面判定装置及び界面判定方法として利用し、気液混合流体Fの流量を計測する必要がなければ、演算ステップST23の機能を省略することができる。
【符号の説明】
【0082】
F 流体(気液混合流体)
R−1〜R−12 超伝導体
H−1〜H−12 ヒータ
S−1〜S−12 温度センサ
G 気体
L 液体
S 界面
D 矢印(流体の流れの方向)
P 測定点
Y1 環状に配置されている超伝導体Rにおいて、環の一番上を示す
Y2 上記環の一番下を示す
PC パソコン
2、4 タンク
6、6A、6B 輸送管
10 管路
12 フランジ
14 内周面
20 流量計測装置
22 バス
24 CPU
26 インターフェース
28 ROM
30 RAM
32 表示部
34 操作部
41−1〜41−12 電流計
43−1〜43−12 電流回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れることができる管路と、
前記管路内に配置されており、前記流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体と、
前記複数の超伝導体のそれぞれに対応して設けられており、前記管路に前記流体が流れた状態において対応する超伝導体を加温する複数のヒータと、
前記複数のヒータからの加温量をそれぞれ異ならせて、前記複数のヒータが対応する超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にした後、前記流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を判定する遷移判定部と、
前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体において、加温量が最も大きいヒータにより加温された超伝導体が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして前記流体の流量を演算する演算部と、を備えることを特徴とする流量計測装置。
Q2=Q1+CsΔTs
Q1は前記加温量が最も大きいヒータにより加温された超伝導体に与えられた熱量、Csはこの超伝導体の熱容量、ΔTsはこの超伝導体が加温により常伝導にされてから前記遷移判定部による判定時までにこの超伝導体の温度が低下した量を表す。
【請求項2】
流体が流れることができる管路と、
前記管路内に配置されており、前記流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が異なる複数の超伝導体と、
前記管路に前記流体が流れた状態において前記複数の超伝導体を加温するヒータと、
前記ヒータが前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にした後、前記流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を判定する遷移判定部と、
前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体において、最も小さい前記超伝導遷移温度を有する超伝導体が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして前記流体の流量を演算する演算部と、を備えることを特徴とする流量計測装置。
Q2=Q1+CsΔTs
Q1は前記ヒータでの加温により前記最も小さい前記超伝導遷移温度を有する超伝導体に与えられた熱量、Csはこの超伝導体の熱容量、ΔTsはこの超伝導体が加温により常伝導にされてから前記遷移判定部による判定時までにこの超伝導体の温度が低下した量を表す。
【請求項3】
前記流体は上層が気体、下層が液体である気液混合流体であり、
前記複数の超伝導体は前記気液混合流体が流れる方向に沿って前記管路の内周面に配置されており、
前記複数の超伝導体を一組として、複数の組が前記管路の周方向に並べて配置されており、
前記遷移判定部は、前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定をし、
前記流量計測装置は、前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定部をさらに備えており、
前記演算部は、前記界面判定部で判定された界面より下に位置する超伝導体における前記熱量Q2を基にする前記気液混合流体の液体の流量の演算及び、前記界面判定部で判定された界面より上に位置する超伝導体における前記熱量Q2を基にする前記気液混合流体の気体の流量の演算の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の流量計測装置。
【請求項4】
流量計測の対象となる流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体が配置されている管路に前記流体が流れている状態であって、
前記複数の超伝導体のそれぞれへの加温量を異ならせて、前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にする加温ステップと、
前記加温ステップ後に前記流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を判定する遷移判定ステップと、
前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体において、前記加温ステップでの加温量が最も大きい超伝導体が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして前記流体の流量を演算する演算ステップと、を備えることを特徴とする流量計測方法。
Q2=Q1+CsΔTs
Q1は前記加温ステップでの加温量が最も大きい超伝導体に与えられた熱量、Csはこの超伝導体の熱容量、ΔTsはこの超伝導体が前記加温ステップでの加温により常伝導にされてから前記遷移判定ステップによる判定時までにこの超伝導体の温度が低下した量を表す。
【請求項5】
流量計測の対象となる流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が異なる複数の超伝導体が配置されている管路に前記流体が流れている状態であって、
前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にする加温ステップと、
前記加温ステップ後に前記流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を判定する遷移判定ステップと、
前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体において、最も小さい前記超伝導遷移温度を有する超伝導体が、常伝導から超伝導に遷移した時に奪われた下記式で表される熱量Q2を基にして前記流体の流量を演算する演算ステップと、を備えることを特徴とする流量計測方法。
Q2=Q1+CsΔTs
Q1は前記加温ステップにより前記最も小さい前記超伝導遷移温度を有する超伝導体に与えられた熱量、Csはこの超伝導体の熱容量、ΔTsはこの超伝導体が前記加温ステップでの加温により常伝導にされてから前記遷移判定ステップによる判定時までにこの超伝導体の温度が低下した量を表す。
【請求項6】
前記流体は上層が気体、下層が液体である気液混合流体であり、
前記気液混合流体が流れる方向に沿って前記管路の内周面に配置された前記複数の超伝導体を一組とし、
複数の前記組が前記管路の周方向に並べて配置されており、
前記遷移判定ステップは、前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定をし、
前記流量計測方法は、前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定ステップをさらに備えており、
前記演算ステップは、前記界面判定ステップで判定された界面より下に位置する超伝導体における前記熱量Q2を基にする前記気液混合流体の液体の流量の演算及び、前記界面判定ステップで判定された界面より上に位置する超伝導体における前記熱量Q2を基にする前記気液混合流体の気体の流量の演算の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項4又は5に記載の流量計測方法。
【請求項7】
上層が気体、下層が液体である気液混合流体が流れることができる管路と、
前記気液混合流体が流れる方向に沿って前記管路の内周面に配置されており、前記気液混合流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体と、を備えており、
前記複数の超伝導体を一組として、複数の前記組が前記管路の周方向に並べて配置されており、さらに、
前記複数の超伝導体のそれぞれに対応して設けられており、前記管路に前記気液混合流体が流れた状態において対応する超伝導体を加温する複数のヒータと、
前記複数のヒータからの加温量をそれぞれ異ならせて、前記複数のヒータが対応する超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にした後、前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定する遷移判定部と、
前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定部と、を備えることを特徴とする界面判定装置。
【請求項8】
上層が気体、下層が液体である気液混合流体が流れることができる管路と、
前記気液混合流体が流れる方向に沿って前記管路の内周面に配置されており、前記気液混合流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が異なる複数の超伝導体と、を備えており、
前記複数の超伝導体を一組として、複数の前記組が前記管路の周方向に並べて配置されており、さらに、
前記管路に前記気液混合流体が流れた状態において前記複数の超伝導体を加温するヒータと、
前記ヒータが前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にした後、前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定する遷移判定部と、
前記遷移判定部で判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定部と、を備えることを特徴とする界面判定装置。
【請求項9】
流量計測の対象となる上層が気体、下層が液体である気液混合流体が流れる方向に沿って管路の内周面に配置された、前記気液混合流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体を一組とし、
複数の前記組が管路の周方向に並べて配置された前記管路に前記気液混合流体が流れている状態であって、
前記複数の超伝導体のそれぞれへの加温量を異ならせて、前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にする加温ステップと、
前記加温ステップ後に前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定する遷移判定ステップと、
前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定ステップと、を備えることを特徴とする界面判定方法。
【請求項10】
流量計測の対象となる上層が気体、下層が液体である気液混合流体が流れる方向に沿って管路の内周面に配置された、前記気液混合流体の温度よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が異なる複数の超伝導体を一組とし、
複数の前記組が管路の周方向に並べて配置された前記管路に前記気液混合流体が流れている状態であって、
前記複数の超伝導体を加温することにより前記複数の超伝導体を常伝導にする加温ステップと、
前記加温ステップ後に前記気液混合流体により冷却された前記複数の超伝導体の中で常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を、前記複数の組のそれぞれにおいて判定する遷移判定ステップと、
前記遷移判定ステップで判定された常伝導から超伝導に遷移している超伝導体を比較して、前記気液混合流体の気体と液体の界面の位置を判定する界面判定ステップと、を備えることを特徴とする界面判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−42235(P2012−42235A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181378(P2010−181378)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】