説明

流量調整器

【課題】不慣れな作業者でも容易に所望の吐出状態が得られるように流量調整を行うことができるコンパクトで簡素な構成の流量調整器を提案すること。
【解決手段】流量調整器は、同一外径の円柱状の上部材2と下部材3を同軸状に接合したものである。上部材2と下部材3には、流量調整器の中心軸線に沿った方向に延びる上部流体通路4と下部流体通路5が形成されている。上部流体通路4の下流端開口13と下部流体通路5の上流端開口14の重なり面積を、上部材2と下部材3の相対回転によって調整し、絞り流量を調整する。上部材2と下部材3の外周面に、調整量確認部を設けて目盛りを付しておくことにより、簡単に規定の絞り流量に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道の蛇口などの流体流出口に取り付けて使用する流量調整器に関し、さらに詳しくは、流体通路の断面積を調整して流体の絞り込み量を調整する流量調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
水道の蛇口などに取り付ける節水器として、節水器内の通水孔の大きさを調整して流体の吐出量を調整するものが用いられている。このような節水器として、特許文献1に開示のものが知られている。特許文献1の節水器は、水流の生じる管内に挿入した本体部に円筒状の通水口を形成しておき、この通水口の内部に、通水用の開口部が形成された水流調整部と流量調整板とを重ねて設置したものである。この節水器は、水流調整部と流量調整板とを相対回転させて開口部の重なり部分の面積(絞り流路の面積)を調整することにより、水流の絞り込み量を調整して、節水器からの吐出流量を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4237025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の節水器は、水流の生じる管内に設置して用いられるため、設置状態では、どの程度水流を絞ってあるのかを確認することはできない。そのため、調整量(水流の絞り込み量)を確認したり流量設定を変更するためには、その都度管内から節水器を取り外さなければならず、手間がかかる。また、管内に設置したまま流量調整を行うことができないので、水の吐出状態を確認しながら微調整を行うことができない。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、容易に流量調整を行うことができるコンパクトで簡素な構成の流量調整器を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の流量調整器は、
第1接合面を有する第1部材と、
当該第1接合面に当接している第2接合面を有する第2部材とを有し、
前記第1部材は、内部を貫通している第1流体通路を備え、当該第1流体通路の下流端が前記第1接合面に開口しており、
前記第2部材は、内部を貫通している第2流体通路を備え、当該第2流体通路の上流端が前記第2接合面に開口しており、
前記第1部材および前記第2部材は、前記第1接合面および前記第2接合面に直交する回転中心線を中心として相対回転可能に接合されており、当該回転中心線を中心とする相対回転位置に応じて、前記第1接合面における前記第1流体通路の下流端の開口と、前記第2接合面における前記第2流体通路の上流端の開口との重なり面積が変化するように形成されており、
前記第1部材および前記第2部材に、前記相対回転位置、もしくは当該相対回転位置に対応する前記重なり面積を外部から読み取り可能な調整量確認部が設けられ、
前記第1部材における前記第1流体通路の上端が開口している部分に、水道の蛇口などの流体流出口に前記第1流体通路の上端を接続するための接続部が設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明は、このように、2つの部材の接合面同士を当接させて接合しただけのコンパクトで簡素な構成であり、第1流体通路と第2流体通路を相対回転させて接合面での流路開口の重なり面積を調整する作業を容易に行うことができる。また、第1部材と第2部材には、絞り流路の面積(接合面における開口の重なり面積)、もしくは、この面積に対応する相対回転位置を外部から読み取り可能な指標が付されているので、不慣れな作業者でもこの指標を頼りにすれば、簡単に規定の絞り量に調整することができる。
【0008】
本発明において、前記第1部材および前記第2部材に、前記回転中心線を中心とする所定の相対回転位置にあるときに係合状態となる係合部を形成し、前記係合状態を実現する前記相対回転位置と、前記調整量確認部に設けた指標に対応付けられている前記相対回転位置とを対応させた構成にすることができる。例えば、前記係合部を、前記第1接合面および前記第2接合面の一方に形成した係合孔と、他方に形成した係合ピン設置孔と、当該係合ピン設置孔内に配置した係合ピンと、当該係合ピンを前記設置孔から突出する方向に付勢している付勢部材によって構成することができる。このようにすれば、指標に対応する相対回転位置に到ったときに2部材が係合した操作感(クリック感)が得られるので、当該相対回転位置に到ったことを操作時の触感や係合音によって確認できる。また、2部材を係合状態から外すときには抵抗が生じるので、不慣れな人でも正確に係合位置に合わせることができる。よって、段階的な調整を容易かつ正確に行うことができる。また、係合位置からずれにくくなるので、不注意などによって調整位置が変化してしまうのを抑制できる。
【0009】
このとき、前記第1部材および前記第2部材を2つの円柱状部材として同軸状に接合し、前記回転中心線を前記円筒状部材の中心軸線とし、前記第1接合面および前記第2接合面の一方を、一方の前記円柱状部材の円形端面に形成された円形凹部の底面とし、他方を、他方の円柱状部材の円形端面に形成された円形凸部の上端面とし、前記円形凹部の内周面と前記円形凸部の外周面に、その一方に周方向に延びる溝が形成され、他方に前記溝内に嵌合した状態で周方向にスライド可能な突起を形成した構成にすることができる。このようにすれば、第1部材と第2部材を、離脱せず、且つ、相対回転可能な状態に接合することができる。
【0010】
また、本発明を、前記第1部材と前記第2部材とを接合した流量調整部と、当該流量調整部に流入する流体、もしくは前記流量調整部から流出する流体の流量を表示するための流体節約喚起部とを有する構成とし、前記流体節約喚起部を、内部に流体通路が形成されているケースと、当該流体通路における流体圧に応じて昇降する昇降部材とを備えた構成とし、前記流体通路が、前記第1流体通路の上流端もしくは前記第2流体通路の下流端に接続されるように、前記第1部材もしくは前記第2部材に前記ケースを接合した構成とし、前記ケースに、前記移動通路部分における前記昇降部材の位置を外部から目視で確認するための位置確認部を設けた構成にすることもできる。このように、流量調整器に流体節約喚起部を組み込んだ構成にすれば、流体の出し過ぎ状態を視覚に訴えることができ、流体節約意識を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流量調整器では、2つの部材の接合面同士を当接させて接合しただけのコンパクトで簡素な構成とすることができ、第1流体通路と第2流体通路を相対回転させて接合面での流路開口の重なり面積を調整する作業を容易に行うことができる。また、第1部材と第2部材には、絞り流路の面積(接合面における開口の重なり面積)、もしくは、この面積に対応する相対回転位置を外部から読み取り可能な指標が付されているので、この指標を頼りにすれば、簡単に規定の絞り量に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した流量調整器の外観斜視図である。
【図2】流量調整器の縦断面図である。
【図3】円形凹部の底面および円形凸部の上端面における流体通路の開口形状の説明図である。
【図4】円形凹部の底面および円形凸部の上端面に形成した係合部の説明図である。
【図5】改変例の流量調整器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した水道蛇口用の流量調整器の実施の形態を説明する。図1は流量調整器の外観斜視図であり、図2は流量調整器の縦断面図である。
【0014】
流量調整器1は、同一外径の円柱状の上部材2(第1部材)と下部材3(第2部材)を同軸状に接合したものである。上部材2と下部材3には、流量調整器1の中心軸線L(回転中心線)に沿った方向に延びる上部流体通路4(第1流体通路)と下部流体通路5(第2流体通路)が形成されている。
【0015】
上部材2の上端面には、上部流体通路4の上端が開口している。上部流体通路4の上端部分は、流量調整器1を取り付けるべき水道の蛇口などの流体流出口の寸法に合わせて一回り径が大きくなっている。この大径部分の内周面には雌ねじ部が形成されているので、取り付け対象の流体流出口の先端部分に形成した雄ねじ部をねじ込み固定して、流体流出口に流量調整器1を取り付けることができる。
【0016】
上部材2の下端面には下向きに開口する円形凹部6が形成されており、この円形凹部6の底面7(第1接合面)に、上部流体通路4の下端が開口している。上部流体通路4の下端側の部分は上端側とは異なる断面形状になっており、上部材2の中心軸線Lから外れた位置を通って延びている。円形凹部6の内側側面における底面7側の部分には周方向に延びる矩形断面の溝8が形成されており、この溝8は円形凹部6の内側側面全体に形成されている。
【0017】
下部材3の下端面には、下向きに突出する円筒状の接続部9が形成されている。この接続部の外周面には雄ねじ部が形成されているので、後述する流体圧表示部を接続できる。また、接続部9に整流部材を接続してもよく、接続部9を省略してもよい。
【0018】
下部材3の上端面には円形凸部10が形成されており、円形凸部10の上端面11(第2接合面)に、下部流体通路5の上端が開口している。下部流体通路5の上端側の部分は、上部材2における上部流体通路4の下端側の部分と同様に、下部材3の中心軸線Lから外れた位置を通って延びている。
【0019】
上部材2と下部材3は、円形凹部6内に円形凸部10を嵌合して、底面7と上端面11とを密着させた状態に接合されている。上部材2と下部材3の中心軸線Lは円形凹部6と円形凸部10の中心を通っており、底面7および上端面11は、この中心軸線Lと直交している。よって、上部材2と下部材3を、中心軸線Lを回転中心として相対回転させることができる。このとき、円形凸部10の外周側面の先端側の部分に形成した周方向に延びる突起12が、円形凹部6の内側側面の溝8に嵌合しており、突起12が溝8内をスライドする。これにより、上部材2と下部材3は、接合状態を維持しながら相対回転可能になっている。
【0020】
図3は、円形凹部6の底面7および円形凸部10の上端面11における上部流体通路4および下部流体通路5の開口形状の説明図である。底面7に形成されている上部流体通路4の下流端開口13は、図3(a)に示すように、底面7の中心から外れた位置に形成されている。本実施形態では、下流端開口13は円形である。一方、上端面11に形成されている下部流体通路5の上流端開口14は、図3(b)〜(d)に示す形状のいずれかとなっている。図3(b)は、大きさの異なる複数の円形開口14a〜14eを、所定の角度ピッチで周方向に並べた形状である。また、図3(c)は、周方向に延びる円弧状開口14fにおける円弧の一端側の幅を小さくし、他端側の幅を大きくした形状である。そして、図3(d)は、扇形状開口14gである。
【0021】
下流端開口13と上流端開口14は、上部材2と下部材3が相対回転したときに、その相対回転位置に応じて、重なり部分の面積が異なるように形成されている。例えば、上流端開口14が図3(b)に示す形状であったときには、図3(b)における円形開口14a〜14eの周方向の配置間隔ずつ相対回転位置を調整することにより、円形開口14a〜14eのいずれか1つと下流端開口13とが完全に重なるように相対回転位置を調整して、重なり面積を段階的に増減することができる。また、上流端開口14が図3(c)あるいは図3(d)に示す形状であったときには、相対回転位置を円弧状開口14fもしくは扇形状開口14gが開口している範囲で連続的に調整することにより、重なり面積を連続的に増減することができる。
【0022】
なお、下流端開口13と上流端開口14の形状は、図3に示すような形状に限定されない。例えば、図3(a)では下流端開口13を1つに設定しているが、複数設けてもよい。この場合には、図3(b)〜(d)に示す上流端開口14を下流端開口13の数および形成位置にあわせて複数形成しておくとよい。また、下流端開口13と上流端開口14の形状を逆にしてもよい。
【0023】
図1に示すように、上部材2と下部材3の外周面には、両部材の相対回転位置を示す調整量確認部15が形成されている。調整量確認部15は、下部材3の外周面の上端縁に設けられた指針15aと、上部材2の外周面の下端縁に設けられた目盛り15b(指標)を備えている。このようにすれば、指針15aが目盛り15bのどの位置を指すかによって、上部材2と下部材3の相対回転位置を把握できる。目盛り15bは周方向の所定の範囲にわたって一定間隔で設けられている。目盛り15bの上側には、重なり面積を増大させる相対回転方向、すなわち、流量を増大させる相対回転方向に向かうほど太くなる図形15cが表示されている。また、目盛り15bは、重なり面積を増大させる相対回転方向に向かうほど数値が大きくなるように付されている。よって、および流量を増大もしくは減少させるときの相対回転方向を直感的に認識できる。
【0024】
このように、本実施形態の流量調整器1は、下流端開口13と上流端開口14の重なり面積を調整することにより、上部流体通路4と下部流体通路5の接続部分を通過する流体の絞り量を調整できる。このとき、目盛り15b上の指針15aの位置から相対回転量を読み取って絞り量を確認しながら調整を行うことができるので、不慣れな作業者でも簡単に規定の絞り量に調整することができる。
【0025】
図4は上部材と下部材の接合面に形成した係合部の説明図であり、図4(a)は一方の接合面に形成した係合孔の平面図、図4(b)は他方の接合面に設けた係合ピンの平面図、図4(c)は係合孔と係合ピンが係合した状態を示す部分断面図、図4(d)は係合孔と係合ピンが係合していない状態を示す部分断面図である。なお、これらの図では、接合面である底面7および上端面11に形成した下流端開口13と上流端開口14を省略している。
【0026】
底面7と上端面11のいずれか一方の面には、複数の係合孔16が一定角度ピッチで周方向に並んで形成されている。そして、もう一方の面には、この係合孔16と嵌合可能な係合ピン17が設けられている。なお、係合ピン17は一箇所だけ設けておいてもよいし、複数設けてもよい。複数設ける場合には、係合孔16と同一の角度ピッチの位置に形成する。係合ピン17は、係合ピン17を設けた接合面(底面7もしくは上端面11)に形成した係合ピン設置孔17aの内部に配置されており、バネ等の付勢部材17bによって接合面から突出する方向に付勢されている。このような係合孔16および係合ピン17を形成すると、係合孔16と係合ピン17が丁度重なる相対回転位置に到ったときに、係合ピン17が設置孔17aから係合孔16内に突出して係合する。よって、特定の相対回転位置(係合位置)に到ったことを触感や係合音で確認できるようになり、相対回転位置の調整を正確かつ容易に行うことができる。
【0027】
ここで、複数の係合孔16を調整量確認部15の目盛り15bに対応付けた位置に形成しておけば、目盛り15bで示した相対回転位置への位置合わせが容易となる。例えば、図3(b)に示す開口形状を用いた場合には、円形開口14a〜14eの各開口が下流端開口13に重なっている各相対回転位置に対応させて、目盛り15bおよび係合孔16を形成しておく。このようにすれば、外部から見えない円形開口14a〜14eと下流端開口13との位置合わせを正確かつ容易に行うことができる。
【0028】
なお、係合孔16と係合ピン17を、円形凹部6の底面7および円形凸部10の上端面11ではなく、円形凹部6の内周面および円形凸部10の外周面に形成してもよい。例えば、径方向外側を向いている突起12の外周面に係合ピン17を形成し、径方向内側を向いている溝8の底面に係合孔16を形成しておいてもよい。
【0029】
(改変例)
上記実施形態の流量調整器1は、絞り流路面積の調整機能のみを有するものであったが、改変例の流量調整器1Aは、上部材2の上端に、流量が大きくなりすぎたときにそのことを目視で把握できるようにするための流体節約喚起部20(流体節約喚起部)を接続し、この流体節約喚起部20を介して流量調整器1と同じ構成の流量調整部21を流体流出口に接続したものである。流量調整器1Aは、流体節約喚起部20を設けたことにより、水などの出し過ぎ状態を視覚に訴えることができ、節水意識を高めることができる。
【0030】
図5は、流量調整器1Aの断面図である。流量調整器1Aは、流体節約喚起部20と流量調整部21とを上下に接続した構成である。以下、流体節約喚起部20の構成の概略について説明する。流体節約喚起部20は、下向きに延びる蛇口の先端などの流体流出口に取り付けるケース22と、このケース22の内部に配置した昇降部材23とを備えている。ケース22は、透明樹脂製の円筒形状の側ケース部24の上下端を上ケース部25および下ケース部26によって封鎖しており、上ケース部25および下ケース部26の中心に、上ケース部25および下ケース部26を上下方向に貫通する流体通路が形成されている。上ケース部25側に形成された流体通路の上端が流体流入口27となっており、下ケース部26側に形成された流体通路の下端が流体吐出口28となっている。流体流入口27は、取り付け対象の水道の蛇口などの流体流出口の先端部分に接続される。また、流体吐出口28が開口している下ケース部26の円筒部分が流体節約喚起部20における上部流体通路4の上端に接続されるように、流体節約喚起部20と流量調整部21とが接合されている。
【0031】
ケース22は、側ケース部24の内側に同軸状に取り付けられた内ケース部29を備えている。内ケース部29は、円錐台部と、その上端面の中央から延びている円筒部とを備えている。円錐台部の概略形状は円錐の上部を底面と平行な面で切断した形状であり、円錐台部の外周面と側ケース部24の内周面との間には隙間が形成されている。円錐台部の上端面における円筒部を囲んでいる部分は、上ケース部25における側ケース部24の内側に同軸状に延びている下向き凸部の先端面と対峙しており、この間には、側ケース部24の内周面から円筒部の外周面まで円盤状に拡がる隙間が形成されている。このように、ケース22の内部には、側ケース部24の内周面に沿って、上ケース部25における下向き凸部の外周面および内ケース部29の外周面との間の隙間が縦につながっており、これらの隙間が上下に延びる移動通路30となっている。この移動通路30に昇降部材23が配置されている。
【0032】
内ケース部29における円錐台部の上端面には円環状の溝が形成されており、この溝の底面から下向きに延びる縦向き通路32が形成されている。縦向き通路32の下端は、円錐台部の下端に形成された下向き凹部と下ケース部26の上面部分との間に形成された円盤状の下部チャンバー内に開口している。円錐台部には、複数の縦向き通路32が、周方向に等角度間隔で形成されている。また、内ケース部29における円筒部の内部に形成された空洞部分は、上ケース部25を貫通する流体通路に接続されており、流体流入口27から円錐台部の下端付近まで直線状に延びる軸線方向通路34となっている。軸線方向通路33の下端部分は上記の下部チャンバーと区画されており、径方向外側に延びる横向き通路34を介して、円錐台部の外周側の隙間(移動通路30の下端部分)に連通している。横向き通路34は、縦向き通路32と交差しないように、円錐台部における縦向き通路32が貫通していない部分を通って形成されている。
【0033】
流体節約喚起部20を取り付けた蛇口などから供給される流体は、流体流入口27を通って軸線方向通路33を下向きに流れ、横向き通路34を通って移動通路30の下端に流入した後、移動通路30を下から上に向かって流れる。そして、円錐台部の上端部分から縦向き通路32に流入して下向きに流れ、円錐台部の下端面に形成された下向き凹部内で合流した後、流体吐出口28から外部に吐出される。
【0034】
移動通路30に配置されている昇降部材23は、円筒状のガイド部の内周面における所定高さの位置に、内側に向かって張り出す円環状の受圧板31を設けたものである。流量が小さく流れの勢いが弱いときは、昇降部材23はその重さによって移動通路30の下端の位置まで降下する。そして、横向き通路34から流体が移動通路30に流れ込むと、上向きに流れる流体からの流体圧が受圧板31に上向きに作用する。よって、この流体圧が昇降部材23に加わる重力よりも大きくなれば、昇降部材23が上昇する。そして、流体圧と重力がつりあう高さまで上昇した地点で昇降部材23が停止する。よって、流量に応じた位置に昇降部材23を移動させることができる。
【0035】
昇降部材23の位置は、透明な側ケース部24を通して外部から確認できる。すなわち、この透明な側ケース部24の部分が、昇降部材23の位置を確認するための位置確認部35として機能する。昇降部材23は、赤色などの目立つ色に着色しておくことが望ましい。また、この部分の側ケース部24に、昇降部材23の昇降位置と流量とを対応付ける目盛り(指標)を付しておけば、目盛りによって、流量が多すぎるか否かを知ることができる。あるいは、昇降部材23に目盛りを付してもよい。このようにすると、流体の出し過ぎ状態を視覚に訴えることができ、流体節約意識を高めることができる。
【0036】
上記の構成では、流体節約喚起部20を介して流量調整部21を流体流出口に接続していたが、流量調整部21を蛇口などに接続して、流体節約喚起部20を流量調整部21の下端に接続してもよい。
【0037】
なお、流体節約喚起部20の昇降部材23の位置によって、流体節約喚起部20を取り付けた蛇口における流体圧を把握できる。よって、このことを利用して、流体圧が異なる多数の蛇口に流量調整器1Aを設置するときの流量調整作業を容易にすることもできる。例えば、流体節約喚起部20における位置確認部35の目盛りを、流体圧に対応して付しておき、流量調整部21における目盛り15bを、各流体圧のときに最適な絞り量となる位置に付しておく。このようにすれば、流体節約喚起部20で読み取った流体圧に応じて、流量調整部21の対応する目盛り線に指針15aを合わせるだけで簡単に流量調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
1、1A 流量調整器
2 上部材(第1部材)
3 下部材(第2部材)
4 上部流体通路(第1流体通路)
5 下部流体通路(第2流体通路)
6 円形凹部
7 底面(第1接合面)
8 溝
9 接続部
10 円形凸部
11 上端面(第2接合面)
12 突起
13 下流端開口
14 上流端開口
14a〜14e 円形開口
14f 円弧状開口
14g 扇形状開口
15 調整量確認部
15a 指針
15b 目盛り(指標)
15c 図形
16 係合孔(係合部)
17 係合ピン(係合部)
17a 係合ピン設置孔(係合部)
17b 付勢部材(係合部)
20 流体節約喚起部
21 流量調整部
22 ケース
23 昇降部材
24 側ケース部
25 上ケース部
26 下ケース部
27 流体流入口
28 流体吐出口
29 内ケース
30 移動通路
31 受圧板
32 縦向き通路
33 軸線方向通路
34 横向き通路
35 位置確認部
L 中心軸線(回転中心線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合面を有する第1部材と、
当該第1接合面に当接している第2接合面を有する第2部材とを有し、
前記第1部材は、内部を貫通している第1流体通路を備え、当該第1流体通路の下流端が前記第1接合面に開口しており、
前記第2部材は、内部を貫通している第2流体通路を備え、当該第2流体通路の上流端が前記第2接合面に開口しており、
前記第1部材および前記第2部材は、前記第1接合面および前記第2接合面に直交する回転中心線を中心として相対回転可能に接合されており、当該回転中心線を中心とする相対回転位置に応じて、前記第1接合面における前記第1流体通路の下流端の開口と、前記第2接合面における前記第2流体通路の上流端の開口との重なり面積が変化するように形成されており、
前記第1部材および前記第2部材に、前記相対回転位置、もしくは当該相対回転位置に対応する前記重なり面積を外部から読み取り可能な調整量確認部が設けられ、
前記第1部材における前記第1流体通路の上端が開口している部分に、水道の蛇口などの流体流出口に前記第1流体通路の上端を接続するための接続部が設けられていることを特徴とする流量調整器。
【請求項2】
請求項1に記載の流量調整器において、
前記第1部材および前記第2部材に、前記回転中心線を中心とする所定の相対回転位置にあるときに係合状態となる係合部が形成されており、
前記係合状態を実現する前記相対回転位置と、前記調整量確認部に設けた指標に対応付けられている前記相対回転位置とが対応していることを特徴とする流量調整器。
【請求項3】
請求項2に記載の流量調整器において、
前記係合部は、
前記第1接合面および前記第2接合面の一方に形成した係合孔と、
他方に形成した係合ピン設置孔と、
当該係合ピン設置孔内に配置した係合ピンと、
当該係合ピンを前記設置孔から突出する方向に付勢している付勢部材とを備えていることを特徴とする流量調整器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の流量調整器において、
前記第1部材および前記第2部材は2つの円柱状部材であって同軸状に接合されており、
前記回転中心線は前記円筒状部材の中心軸線であり、
前記第1接合面および前記第2接合面は、その一方が、一方の前記円柱状部材の円形端面に形成された円形凹部の底面であり、他方が、他方の円柱状部材の円形端面に形成された円形凸部の上端面であり、
前記円形凹部の内周面と前記円形凸部の外周面には、その一方に周方向に延びる溝が形成され、他方に前記溝内に嵌合した状態で周方向にスライド可能な突起が形成されていることを特徴とする流量調整器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の流量調整器において、
前記第1部材と前記第2部材とを接合した流量調整部と、
当該流量調整部に流入する流体、もしくは前記流量調整部から流出する流体の流量を表示するための流体節約喚起部とを有し、
前記流体節約喚起部は、
内部に流体通路が形成されているケースと、
当該流体通路における流体圧に応じて昇降する昇降部材とを備え、
前記流体通路が、前記第1流体通路の上流端もしくは前記第2流体通路の下流端に接続されるように、前記第1部材もしくは前記第2部材に前記ケースが接合されており、
前記ケースに、前記移動通路部分における前記昇降部材の位置を外部から目視で確認するための位置確認部が設けられていることを特徴とする流量調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33133(P2011−33133A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180535(P2009−180535)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000222657)東洋計器株式会社 (39)
【Fターム(参考)】