説明

流量調節バルブ

【課題】小型かつ低コストで、要求される流量調節範囲が大きくとも、微小流量域の正確な流量調節が可能な流量調節バルブを提供すること。
【解決手段】開口部541が形成された弁座54に対して弁体32を離間または接近させることにより、該開口部541を流れる流体の流量を調節する流量調節バルブ1において、前記流量の調節範囲は、出力される流体流量が相対的に小さい微小調節範囲と、出力される流体流量が相対的に大きい多量調節範囲からなり、前記弁体32の移動量に対する流量の変化量は、多量調節範囲よりも微小調節範囲の方が小さいことを特徴とする流量調節バルブ1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調節バルブに関し、更に詳しくは、モータ駆動によって弁体を駆動することで、出力される流体流量を調節する流量調節バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガス燃焼装置の燃料ガス等の流量を調節する流量調節バルブとして、モータを駆動源として弁体を駆動するものが知られている。例えば、特許文献1には、ニードル形状の弁体をステッピングモータの回転動力により所定方向に進退移動させて燃料ガス流量を調節するものが記載されている。このような流量調節バルブでは、駆動源であるモータの回転量を制御し、弁体と弁座に形成された開口部の隙間を変化させることにより燃料ガス流量の調節がなされる。
【0003】
また、特許文献2には、弁体に小流通孔を設けて微小流量域における出力流量を安定させるようにしたボール弁が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−211772号公報
【特許文献2】実開平4−7773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるようなニードル弁を進退移動させて流量を調節する流量調節バルブでは、ガス燃焼装置において求められる流量調節範囲が大きい場合、流体流路である開口部を大きくする必要がある。ところが、このように開口部を大きくすると、微小流量域の正確な流量制御が困難となる問題がある。
【0006】
この場合、ニードル弁を細長い形状として、そのストローク範囲を大きくすることにより、流量調節範囲が大きく、微小流量域の正確な流量調節が可能である。しかし、このような構成とすると、流量調節バルブが大型化し、製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に示されるようなボール弁においては、弁体の開度の僅かな違いで開口面積が大幅に変化するため、このような形式の流量調節バルブであっても微小流量域の正確な流量制御が困難となる問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、小型かつ低コストで、要求される流量調節範囲が大きくとも、微小流量域の正確な流量調節が可能な流量調節バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る流量調節バルブは、開口部が形成された弁座に対して弁体を離間または接近させることにより、該開口部を流れる流体の流量を調節する流量調節バルブにおいて、前記流量の全調節範囲は前記開口部から出力される前記流体の流量が相対的に小さい微小調節範囲と、出力される前記流体の流量が相対的に大きい多量調節範囲とからなると共に、前記流体の流れを遮断する全閉状態は前記流量の全調節範囲の一端側にあり、前記弁体の移動量に対する流量の変化量は多量調節範囲よりも微小調節範囲の方が小さいことを要旨とするものである。
【0010】
この場合、請求項2に記載のように、前記弁体には前記開口部の内壁面と当接する面に溝部が形成されていることが望ましい。
【0011】
また、請求項3に記載のように、前記弁体は少なくとも前記開口部の内壁面と当接する面が弾性部材で形成されていれば好適である。
【0012】
また、請求項4に記載のように、前記弁座は少なくとも前記開口部の内壁面が弾性部材で形成されていればさらに良い。
【0013】
この場合、請求項5に記載のように、前記弁座には前記弾性部材の剛性を低下させるための孔が形成されていることが望ましい。
【0014】
また、請求項6に記載のように、前記弁体を移動させる駆動源はステッピングモータであればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る流量調節バルブによれば、この流量調節バルブにより調節される流量の調節範囲は、流量調節バルブから出力される流量が相対的に小さい微小調節範囲と、相対的に大きい多量調節範囲からなり、微小調節範囲の方が多量調節範囲よりも弁体の移動量に対する流量の変化量が小さくなるように設定されている。そのため、微小調節範囲(微小流量域)における高い流量調節精度を有した流量調節バルブとすることができる。
【0016】
また、前記弁体には前記開口部の内壁面と当接する面に、微小流量域における流体流路となる溝部が形成されているため、簡易な構成で微小調節範囲における流量調節精度を高めることができる。
【0017】
さらに、前記弁体において少なくとも前記開口部の内壁面と当接する面、および/または前記弁座において少なくとも前記開口部の内壁面が弾性部材で形成されているため、弁体と開口部の内壁面との密着性を高めることができ、微小調節範囲において、弁体に形成された溝部以外における流体の通過を完全に遮断することができる。これにより、出力する流体流量を正確に制御することができる。
【0018】
また、前記弁座には前記弾性部材の剛性を低下させるための孔が形成されていれば、上記と同様に、弁体と開口部の内壁面との密着性を高めることができ、微小調節範囲において、出力する流体流量を正確に制御することができる。
【0019】
そして、前記弁体を移動させる駆動源がステッピングモータであれば、別途センサ等を設けることなく、モータの回転量により、弁体の移動量を容易に調節することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る流量調節バルブ1の断面図(流路開状態)であり、図2はその外観斜視図であり、図3は駆動部30およびキャップ50の構成を説明するための分解斜視図である。この流量調節バルブ1は、ガス給湯器に搭載され、燃焼ガス量を調節するためのバルブとして使用されるものである。なお、以下の説明における上下方向とは、図1における上下方向を示すものとする。また、制御される燃焼ガスは、キャップ52の開口部521から流入(入力)し、弁座54の開口部541から流出(出力)する。
【0021】
本実施形態の流量調節バルブ1は、駆動源であるモータ10と、弁体32を進退動させるための駆動部30と、ガス流路を形成する流路部50とを備える。
【0022】
モータ10は、公知のステッピングモータであり、ロータ12およびステータ部20とを備える。ロータ12は、本体ケース80およびガイド82の中央に支持された支軸84に支承され、本体ケース80の小径筒部80aに収納される。ロータ12には、支軸84に遊挿される軸筒部14に円環状のマグネット(永久磁石)16が、軸筒部14の外周両端縁に周設される保持部141に支持された状態で一体的に設けられている。また、ロータ12の出力側には、出力ギヤ18aが取り付けられている。この出力ギヤ18aの回転動力は、回転動力伝達ギヤ18b、18cにより減速され、後述するカムギヤ34に伝達される。
【0023】
そして、このロータ12に対応して、本体ケース80の外周面には、2層のステータ22が配設されたステータ部20が形成されている。各ステータ22は、コイルボビン24に駆動コイル26が巻回されることで形成される。このステータ部20は、その外周面を囲うようにステータケース28に固定され、本体ケース20の小径筒部80aの外側に被着されている。
【0024】
また、このステータ22の各駆動コイル26は、制御基板90の所定の位置に接続されており、この制御基板90が駆動コイル26への通電を制御することにより、ロータ12の回転が制御される。また、ステータケース28には、制御基板90に給電するためのコネクタ92が設けられている。
【0025】
ここで、上記本体ケース80は、その大径筒部80bにカバー94が嵌め込まれ、フランジ部80cをプレート96に当接させて溶接等により固定される。カバー94内には、上述した回転動力伝達ギヤ18b、18cが収納されると共に、回転動力伝達ギヤ18cに噛合されたカムギヤ34の一部が収納されている。またカバー94の外周面には、溝部941が形成されている。この溝部941には、Oリング96aが嵌め込まれており、流量調節バルブ1内を流れるガスの漏出を防止する役割を果たす。
【0026】
駆動部30は、弁体32を上下方向に進退動させるために、モータ10の回転動力を直線動力に変換し、弁体32に伝達するための部材で構築されている。
【0027】
カムギヤ34は、回転動力伝達ギヤ18cから回転駆動力を受けて回転する樹脂製の部材である。その中央には、係合穴341が形成されており、その底面からは軸342が形成されている。また、係合穴341を形成する壁面343には、上下方向に延びた切り欠き343aが形成されている。さらに、係合穴341には、らせん形状の下カム面344が形成されている。
【0028】
カム36は、カムギヤ34に係合する樹脂製で筒状の部材である。カム36の直径は、カムギヤ34の係合穴341の径より若干小さく形成されている。また、外周面には、切り欠き343aと係合する係合片が361が形成されている。そして、底面には、下カム面344と同じ傾斜に形成された上カム面362が形成されている。切り欠き343aに係合片361を係合させて、カム36をカムギヤ34に挿入すると、カムギヤ34とカム36は、下カム面344と上カム面362が所定の間隔を隔てて対向するように位置する。つまり、両者の間に一定幅でらせん状のカム溝部35が形成されることとなる。
【0029】
カムギヤ34およびカム36の間には、スライダ38が取り付けられる。スライダ38は、樹脂製で筒状の部材であり、その外周面下端からは、カム係合凸部381が形成されている。スライダ38をカムギヤ34とカム36の間に組み付けると、カム係合凸部381が上記カム溝部35に係合されることとなる。また、スライダ38の外周面には、長手方向に延在して係合溝部382、および係止孔383がそれぞれ二個所ずつ対向して形成されている。
【0030】
スプリング40は、ガス給湯器使用時に停電や故障等の以上が発生した場合に、ガス流路を封止するために設けられたねじりバネである。このスプリング40は、スプリングハウジング42に収納されると共に、その一端がスプリングハウジング42に固定され、他端がカムギヤ34に固定されている。つまり、カムギヤ34が回転すると、スプリング40に所定のトルクが生じることとなる。
【0031】
スプリングハウジング42は、樹脂製のケース部材である。底面421の中央には、係合穴421aが形成されており、この係合穴421aの内周面からは、スライダ38の係合溝部382と係合する係合突起421bが形成されている。この係合溝部381と係合突起421bが係合することにより、スライダ38の回転方向への動きが規制される。また、スプリングハウジング42にはフランジ部422が形成されており、このフランジ部422には位置決め孔422aが設けられている。この位置決め孔422aをカバー94に形成された位置決め突起941aに係合させて、所定の位置にスプリングハウジング42は固定されることとなる。さらに、外周面には、爪部423が対向した位置に2個所形成されている。また、位置決め凸部424が円周上等間隔に4個所形成されている。
【0032】
弁体32は、後述する弁座54に離間/接近するように駆動される部材であり、流体流路を開閉するための部材である。この弁体32は、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等により形成される弾性部材である。弁体32を拡大した外観斜視図を図4に示す。弁体32は、大きく分けて、鍔部321、円筒部322、円錐部323、および取付部324からなる。円筒部322および円錐部323の一部には、所定の形状の溝部32aが形成されている。また、取付部324は、2つの係止片324aからなる。この係止片324aがスライダ38内に押し込まれることにより弾性変形し、係止片324aが係止孔383に係止されることにより、弁体32はスライダ38に固定されている。
【0033】
流量調節の対象である流体流路を形成する流路部50は、キャップ52、弁座54とから構成されている。
【0034】
キャップ52は、樹脂製で、筒状の部材である。その外周面には、流体流路となる開口部521が円周上等間隔に4個所形成されている。また、開口部521の下方には、係合孔522が対向した位置に2個所形成されている。また、下端には、切り欠き523が円周上等間隔に4個所形成されている。この切り欠き523にスプリングハウジング42の位置決め凸部424を係合させ、係合孔522にスプリングハウジング42の爪部423を係止させることにより、キャップ52は、所定の位置に取り付けられる。一方、開口部521の上方には、溝部524が形成されている。この溝部524には、Oリング96bが嵌め込まれる。このOリング96bにより、流路からガスが漏出してしまうのを防止する。さらに、上端には、段差のある弁座収納口525が形成されている。
【0035】
この弁座収納口525に、これと同形状の段差が形成された弁座54が収納、固定される。なお、弁座54が脱落しないよう、弁座54を収納後、キャップ52の先端に開口部981が形成されたプレート98が取り付けられる。弁座54は、弁体32と同様、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等の弾性部材により形成されている。この弁座54に形成されているガス流路である開口部541は、弁体32の円筒部322より若干小さく形成されている。
【0036】
このように構成される流量調節バルブ1の動作について、図1に加え、図5および図6を参照して説明する。
【0037】
まず、図1は、弁体32が弁座54から離間し、ガス流路が完全に開かれた状態(全開状態)を示している。この状態からモータ10を所定の方向に回転させると、出力ギヤ18aおよび回転動力伝達ギヤ18b、18cを介して、カムギヤ34にモータ10の回転動力が伝達される。
【0038】
これにより、カムギヤ34が所定の方向に回転する。ここで、カムギヤ34の切り欠き343aには、カム36の係合片361が係合されているため、カム36は、カムギヤ34と一体的に回転する。
【0039】
カムギヤ34およびカム36が回転すると、両者の間に形成されたらせん状のカム溝部35が回転する。よって、このカム溝部35に係合されたカム係合凸部381が設けられたスライダ38は、カム溝部35の動きに沿ってらせん状に力を受ける。しかし、スライダ38は、係合溝部382がスプリングハウジング42の係合突起421bに係合されているため、回転方向の動きが規制されている。したがって、スライダ38は、回転方向には動作せず、カムギヤ34の下カム面344に押し上げられて、弁座54方向に直線動作することとなる。
【0040】
これにより、スライダ38に固定された弁体32が弁座54方向に直線動作する。このように、弁体32が弁座54に近づくに従い、ガス流路が弁体32により狭められるため、流量調節バルブ1から出力されるガス量は少なくなる。
【0041】
そして、所定量モータ10を駆動させると、図5に示されるように、弁体32の円筒部322が弁座54の開口部541に嵌り込む。ここで、前述したように、弁座54に形成されているガス流路である開口部541は、弁体32の円筒部322より若干小さく形成されている。よって、弁座54に弁体32を押圧すると、弁体32の円筒部322が、弁座54の開口部541に圧入されながら入り込む。つまり、弾性部材で形成されている弁体32および弁座54は、円筒部322と開口部541の内壁面との間に隙間無く密着するため、ガス流路は、図5において矢印で示される溝部32aを通過する個所に限定される。しかも、溝部32aを通過するガス流路は、図7(a)から図7(c)に示されるように、弁体32が弁座54に近づくにつれて小さくなるため、これに伴い出力されるガス流量も小さくなる。つまり、弁体32の円筒部322と弁座54の開口部541とが密着している状態で、弁体32の位置を変化させることにより、溝部32aを通過する微小なガス流量を調節することができる。
【0042】
このように、本実施形態では、弁体32を弁座54に近づけるに従い、出力されるガス流量を小さくすることができる。ただし、弁体32の移動量に対する出力ガス流量の変化量は、図1のように弁体32が弁座54から離間している状態(出力ガス流量が相対的に多い範囲;多量調節範囲)と、図5のように弁体32の円筒部322が開口部541に嵌り込んでいる状態(出力ガス流量が相対的に少ない範囲;微小調節範囲)とでは異なる。図8に、弁体32の移動量(弁体32と弁座54の距離)に対する出力ガス流量の変化を示したグラフを示す。図示されるように、微小調節範囲においては、ガス流路を溝部32aを通過する個所に限定しているため、多量調節範囲と比較し、弁体32の移動量に対する出力ガス流量の変化量が小さい。
【0043】
したがって、本実施形態に係る流量調節バルブ1によれば、微小ガス流量域における流量調節を正確に行うことができる。また、本実施形態では、駆動源としてのモータ10がステッピングモータであるため、弁体32の位置等を測定するセンサ等を別途設ける必要がなく、容易にガス流量を調節することができる。さらに、ステッピングモータにより弁体32が駆動されるため、駆動原点は全閉状態に位置させることが好ましい。全開状態を原点とすると、誤差によって全閉状態が不完全になる可能性があるからである。
【0044】
なお、上記微小調節範囲において、弁体32の移動量に対するガス流量の変化量は、溝部32aの形状や、弁体32の円筒部322の長さ等により決定される。
【0045】
また、弁体34の円筒部322と、弁座54の開口部541の内壁面との密着度を向上させるため、図9に示されるように、弁座54(開口部541の内壁面を除く)に複数の孔542を形成してもよい。このようにすることで、弁座54がより変形しやすい構造となるため、微小調節範囲における弁体34と弁座54の密着度をさらに向上させることができ、正確な出力流量の制御が可能となる。
【0046】
この微小調節範囲に弁体32が位置している状態から、さらにモータ10を回転させると、図6に示されるように、弁体32の鍔部321と弁座54が当接する。これにより、溝部32aを通過するガス流路も遮断され、ガス流路は完全に遮断される。
【0047】
これに対し、ガス流路の閉鎖状態からガス流路を開放する際には、ガス流路を閉鎖する場合と逆方向にモータ10を回転させる。これにより、スライダ38がカム36の上カム面362により押し下げられる。よって、スライダ38に固定されている弁体32は、弁座54から離間する方向へ移動し、ガス流路を開放する。
【0048】
また、本実施形態に係る流量調節バルブ1は、ガス給湯器に用いられるものであるから、停電時や故障時には、ねじりバネであるスプリング40により、ガスの流れが完全に遮断される構造となっている。具体的には、スプリング40のトルクは、下カム面344もしくは上カム面362と、カム係合凸部381との摩擦力等を考慮して、モータ10のホールディングトルク(励磁状態におけるモータの静止(保持)トルク)より小さく、ディティントトルク(無励磁状態におけるモータの静止(保持)トルク)より大きくなるよう設定されている。
【0049】
つまり、モータ10を駆動し、弁体32を弁座54から所定距離離間させて位置させた場合、スプリング40には、弁体32を閉鎖させる方向にカムギヤ34を回転させる所定の大きさのトルクが生じる。しかし、この時モータ10には、スプリング40のトルクによって、カムギヤ34を閉鎖方向に回転させることができないホールディングトルクが生じているから、弁体32が閉鎖方向に移動することはない。
【0050】
しかし、停電や、リード線の断線等により、モータ10への給電が停止され、モータ10が無励磁状態となった場合、スプリング40のトルクはモータ10のディティントトルクに勝るため、カムギヤ34は閉鎖方向に回転させられる。このように、非常時には、瞬時に弁体32が弁座54に密着し、ガスの流れを遮断することで、ガス漏れ等による事故を未然に防止する。
【0051】
このように、本発明の一実施形態に係る流量調節バルブ1によれば、この流量調節バルブ1により調節される流量の調節範囲は、弁体32の円筒部322が開口部541に嵌り込んでいる状態であって、相対的に出力される流量が小さい微小調節範囲と、弁体32が弁座54から離間している状態であって、出力される流量が大きい多量調節範囲からなり、微小調節範囲の方が多量調節範囲よりも弁体32の移動量に対する流量の変化量が小さくなるように設定されている。そのため、微小調節範囲における高い流量調節精度を有した流量調節バルブ1とすることができる。
【0052】
また、弁体32には、開口部541の内壁面と当接する面、すなわち円筒部322に、微小流量域における流体流路となる溝部32aが形成されているため、簡易な構成で微小調節範囲における流量調節精度を高めることができる。
【0053】
さらに、弁体32および弁座54が弾性部材で形成されているため、弁体32の円筒部322と、弁座54の開口部541との密着性を高めることができ、微小調節範囲において、弁体32に形成された溝部32a以外における流体の通過を完全に遮断することができる。これにより、出力する流体流量を正確に制御することができる。
【0054】
また、弾性部材で形成された弁座54に、その剛性を低下させるための孔542が形成されていれば、上記と同様に、弁体32の円筒部322と弁座54の開口部541との密着性を高めることができ、微小調節範囲において、出力する流体流量を正確に制御することができる。
【0055】
そして、本実施形態では、弁体32を駆動する駆動源としてのモータ10がステッピングモータであるため、別途センサ等を設けることなく、モータ10の回転量により、弁体32の移動量を容易に調節することが可能となる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0057】
例えば、本実施形態に係る流量調節バルブ1は、ガス給湯器に使用されるものであることを説明したが、その他のガス器具、例えば、ガスコンロやガスヒータ等のガス燃焼器具に使用可能であることは言うまでもない。
【0058】
また、このようなガス燃焼器具における燃料ガスだけでなく、冷蔵庫の冷媒流量制御等にも使用できる。また、その他の気体、さらには水等の液体の流量を制御する流量調節バルブとしても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る流量調節バルブの断面図(弁体と弁座が離間した状態(多量調節範囲)を示した断面図)である。
【図2】図1に示した弁体開閉装置の外観斜視図である。
【図3】図1に示した弁体開閉装置における駆動部の構成を説明するための分解斜視図である。
【図4】図1に示した弁体開閉装置に設けられた弁体の外観斜視図である。
【図5】弁体の円筒部が弁座の開口部の内壁面と密着している状態(微小調節範囲)を示した断面図である。
【図6】弁体の鍔部が弁座に当接している状態(流路閉鎖状態)を示した断面図である。
【図7】弁体に形成された溝部によるガス流路の大きさが変化する様子を説明するための断面図である。
【図8】弁体の移動量に対する出力ガス流量の変化を示したグラフである。
【図9】弁座に複数の孔が形成されている状態を示した外観斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 流量調節バルブ
10 モータ
30 駆動部
32 弁体
321 鍔部
322 円筒部
323 円錐部
32a 溝部
54 弁座
541 開口部
542 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された弁座に対して弁体を離間または接近させることにより、該開口部を流れる流体の流量を調節する流量調節バルブにおいて、
前記流量の全調節範囲は前記開口部から出力される前記流体の流量が相対的に小さい微小調節範囲と、出力される前記流体の流量が相対的に大きい多量調節範囲とからなると共に、前記流体の流れを遮断する全閉状態は前記流量の全調節範囲の一端側にあり、前記弁体の移動量に対する流量の変化量は多量調節範囲よりも微小調節範囲の方が小さいことを特徴とする流量調節バルブ。
【請求項2】
前記弁体には前記開口部の内壁面と当接する面に溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流量調節バルブ。
【請求項3】
前記弁体は少なくとも前記開口部の内壁面と当接する面が弾性部材で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の流量調節バルブ。
【請求項4】
前記弁座は少なくとも前記開口部の内壁面が弾性部材で形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の流量調節バルブ。
【請求項5】
前記弁座には前記弾性部材の剛性を低下させるための孔が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の流量調節バルブ。
【請求項6】
前記弁体を移動させる駆動源はステッピングモータであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流量調節バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−36346(P2009−36346A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203011(P2007−203011)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】