浄化装置、浄化方法、排出ガス浄化システム、及び浄化構造体の製造方法
【課題】排出ガスの浄化が可能であり、効率良く浄化が行われる浄化装置を提供する。
【解決手段】イオン導電性を有する固体電解質1と、この固体電解質1の一面側と他面側とにそれぞれ設けられた第1電極3と第2電極4とを有する浄化構造体30を備えている。浄化構造体30は多孔質であり、未燃焼微粒子を含む排出ガスを第1電極3側から第2電極4側へ通すことによって微粒子を第1電極3側に捕集する。この第1電極3側は、捕集した微粒子を、固体電解質1によって第1電極3側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部である。第1電極3と第2電極4とは固体電解質1と同じ素材を含んでいる。
【解決手段】イオン導電性を有する固体電解質1と、この固体電解質1の一面側と他面側とにそれぞれ設けられた第1電極3と第2電極4とを有する浄化構造体30を備えている。浄化構造体30は多孔質であり、未燃焼微粒子を含む排出ガスを第1電極3側から第2電極4側へ通すことによって微粒子を第1電極3側に捕集する。この第1電極3側は、捕集した微粒子を、固体電解質1によって第1電極3側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部である。第1電極3と第2電極4とは固体電解質1と同じ素材を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼器から排出される未燃焼微粒子(ディーゼル微粒子)や窒素酸化物の浄化を行う浄化装置、浄化方法、ディーゼル微粒子及び窒素酸化物を含む排出ガスを浄化する排出ガス浄化システム、及び浄化構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、国民の生活や企業活動を支えている物流の主役は、トラックによる輸送とされており、トラックは経済活動にとって不可欠なものとなっている。トラックの動力となるディーゼルエンジンは他の熱機関に比べて熱効率が高く、省エネルギーや地球温暖化に有効である。しかしディーゼルエンジンは窒素酸化物(NOx)や微粒子状物質(PM)といった大気汚染物質を大量に排出しており、環境問題においてトラックが少なからず影響を与えている。そこで、環境負荷の小さいディーゼルエンジン及びその周辺機器を普及させ、経済活動を維持し、さらに発展させていく取り組みが必要とされている。
【0003】
現在、ディーゼルエンジンから排出されるNOxやPMを浄化する浄化方法として知られるものに、フィルターを用いるPM浄化方法や触媒によるNOx浄化方法がある。
また、固体電解質を用いた排出ガス浄化システムとして、固体電解質の両面に触媒を含む電極を積層し、その固体電解質のカソード側に窒素酸化物を含む燃焼ガスを供給し、窒素酸化物の分解過程で生じる活性酸素を、固体電解質を通して強制的に排除することにより、窒素酸化物の分解除去を可能とする方法がある(例えば特許文献1)。しかし、これはPMを浄化するものではない。
【0004】
【特許文献1】特開平9−299748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のPM浄化方法はフィルターに堆積した微粒子をいかにして除去し、再生させるかが課題である。連続再生型システムの1つである連続再生式トラップは排出ガス中のNOをNO2に酸化させ、このNO2によりフィルターに捕集した微粒子を酸化させるものがある。しかし、排出ガス温度が250℃に達しない場合は微粒子の酸化が起こらないほか、別途NOの浄化装置が必要となる。また、DPNR(Diesel Particulate‐NOx Reduction system)は多孔質セラミックフィルターにNOx吸蔵還元触媒を担持させたものであり、NOx吸蔵時に生成する酸素ラジカルによりPMを酸化させ、定期的かつ瞬間的に燃料噴射量を増加させ、その際に排出されるCO、HCにより吸着させたNOxを還元する方法がある。しかし、この方法は繊細かつ正確な燃料噴射制御が求められ、耐久性悪化、コスト高、燃費の悪化等の問題点を有している。
さらに、今後制定されるディーゼルエンジンの排出ガス基準を満たすためには、従来知られている浄化方法では不十分である。
【0006】
この発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、排出ガスの浄化が可能であり、効率良く浄化が行われる浄化装置、浄化方法、排出ガス浄化システムを提供し、さらに、この浄化装置及び排出ガス浄化システムに利用する浄化構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するためのこの発明の浄化装置は、酸素イオン導電性を有する固体電解質と、この固体電解質のうち、燃焼器から排出される未燃焼微粒子を堆積させる一面側がアノード側となるよう当該固体電解質の両面間に電圧を印加させる印加手段とを備えたことを特徴としている。
このような構成の浄化装置によれば、印加手段により固体電解質の両面間に電圧を印加することで、酸素イオンをカソード側からアノード側へ固体電解質を通して供給することができる。そして、アノード側に堆積させた微粒子中の固形炭素質微粒子を酸化させて炭素酸化物とすることができる。例えば、固体電解質のカソード側の面を大気側(大気開放側)とし、アノード側の固体電解質の面を、微粒子を含む排出ガス側とすることにより排出ガスの浄化を行うことができる。なお、燃焼器から排出される未燃焼微粒子は、例えば、ディーゼル機関、ガソリン機関(直噴式のガソリン機関)、ボイラーや工業炉から排出されるものがある。
【0008】
また、この発明の浄化装置は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側とにそれぞれ設けられた第1電極と第2電極とを有する浄化構造体を備え、この浄化構造体は、燃焼器から排出される未燃焼微粒子を含む排出ガスを前記第1電極側から前記第2電極側へ通すことによって当該微粒子を当該第1電極側に捕集することができる多孔質であり、前記第1電極側は、捕集した前記微粒子を、前記固体電解質によって当該第1電極側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部であることを特徴としている。
この構成によれば、浄化構造体が多孔質であるため、未燃焼微粒子を含む排出ガスをこの浄化構造体に通すことによって、当該微粒子を第1電極側に捕集することができる(フィルタリングすることができる)。そして、第1電極側において、捕集した前記微粒子中の固形炭素質微粒子を、固体電解質によって与えられた酸素イオンにより酸化させて炭素酸化物とすることができる。
【0009】
前記浄化装置において、前記第1電極と第2電極との内の少なくとも一方は前記固体電解質と同じ素材を含んでいるのが好ましい。これによれば、分解反応は電極と固体電解質との界面で生じるため、電極材料に固体電解質材料を混合させることで反応活性点を増やすことができ、排出ガス中の成分の分解を促進できる。
【0010】
さらに、前記第1電極は銀を含んでいるのが好ましい。これによれば、銀は酸素吸着能を有するため、第1電極において固形炭素質微粒子を酸化させる(分解する)活性点が多数存在することとなる。これにより、固形炭素質微粒子の酸化に、酸素イオンを効率よく用いることができ、高い分解率を得ることができる。
【0011】
また、前記浄化装置において、前記浄化構造体は、当該浄化構造体の機械的強度を高めるための支持体を更に有しているのが好ましい。
これによれば、支持体により浄化構造体の機械的強度を高めることができるため、浄化構造体を構成する他の部材である電極や固体電解質の厚さを薄くできる。すなわち、浄化構造体の機械的強度を高めるために電極や固体電解質を厚くする必要がない。このため、排出ガスが電極や固体電解質を透過する際の抵抗を低減でき、また、固体電解質を薄くすることから、小さい印加電圧により酸素イオンを導電することができる。
【0012】
また、この浄化装置において、前記支持体は、前記第1電極又は前記第2電極と積層した状態で設けられており、前記支持体は、前記排出ガスを通すことができる網構造又は多孔質構造であるのが好ましい。
これにより、浄化構造体に支持体を一体として含めることができ、浄化構造体の機械的強度が高まる。そして、支持体は網構造又は多孔質構造であるため、排出ガスを透過させることができ、支持体の存在によって排出ガス中の固形炭素質微粒子と窒素酸化物との同時浄化を妨げることがない。
【0013】
さらにこの発明の浄化方法は、酸素イオン導電性を有する固体電解質の両面間に電圧を印加させ、カソード側からアノード側へ酸素イオンを供給し、この酸素イオンにより前記固体電解質のアノード側に存在するディーゼル微粒子を酸化させることを特徴としている。この浄化方法によれば、固体電解質の両面間に電圧を印加させることにより、アノード側に堆積するディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子を酸化させて炭素酸化物とすることができる。例えば、固体電解質のカソード側の面を大気側(大気開放側)とし、アノード側の固体電解質の面を、ディーゼル微粒子を含む排出ガス側とすることにより排出ガスの浄化を行うことができる。
【0014】
また、この発明の浄化方法は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る多孔質からなる固体電解質の当該一面側から他面側へ未燃焼微粒子を含む排出ガスを通すことにより、当該微粒子を当該一面側に捕集し、捕集したこの微粒子を、前記固体電解質によって前記一面側に与えられた前記酸素イオンにより酸化させることを特徴としている。
この方法によれば、未燃焼微粒子を含む排出ガスを、多孔質である固体電解質に通すことによって、当該微粒子をその一面側に捕集することができる。そして、捕集した微粒子中の固形炭素質微粒子を一面側において酸化させて炭素酸化物とすることができる。
【0015】
また、この発明の排出ガス浄化システムは、燃焼器から排出される未燃焼微粒子及び窒素酸化物を含む排出ガスを通過させる排気流路と、この排気流路の一部に設けられている排出ガス浄化装置と、を備えた排出ガス浄化システムであって、前記排出ガス浄化装置は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、を有する浄化構造体を備え、この浄化構造体は、前記排気流路からの排出ガスを前記第1電極側から前記第2電極側へ通すことによって前記微粒子を当該第1電極側に捕集することができる多孔質であり、前記第1電極側は、捕集された当該微粒子を、前記固体電解質によって当該第1電極側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部であり、かつ、前記第2電極側は、前記浄化構造体を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元する還元部であることを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、排気流路を流れる排出ガス中に含まれる未燃焼微粒子と窒素酸化物との両者をそれぞれ浄化構造体の一面側と他面側とにおいて同時に浄化することができ、これらの低減が可能となる。排出ガス浄化装置に流れてくる排出ガスを、多孔質からなる浄化構造体を通すことで、未燃焼微粒子を浄化構造体の第1電極側において自動的に捕集することができる。つまり、流れてくる排出ガスを浄化構造体においてフィルタリングすることで未燃焼微粒子を捕集できるため、当該微粒子を捕集するための別のエネルギー源を不要とできる。そして、浄化構造体の第1電極側において、捕集した未燃焼微粒子中に含まれる固形炭素質微粒子を酸化させ二酸化炭素とすることができる。さらに、第2電極側において、浄化構造体を透過した排出ガス中に含まれる窒素酸化物を窒素ガスに還元できる。
【0017】
また、この発明の浄化構造体の製造方法は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、機械的強度を高めるための多孔質からなる支持体と、を有する浄化構造体の製造方法であって、前記支持体の一面側に電解質スラリーを被覆し、これを焼成して前記支持体上に固体電解質を得て、多孔質である前記支持体の他面側から電極スラリーを前記固体電解質の裏面まで浸透させ、かつ、当該固体電解質の表面に電極スラリーを被覆し、これを焼成して前記固体電解質の両面に電極を得る。
これによれば、先に固体電解質を焼成してから、電極を焼成する製造方法であるため、電極の材料の融点が固体電解質の焼成温度よりも低い場合に効果的である。つまり、固体電解質を焼成するための高い温度で、当該固体電解質と電極とを同時に焼成すると、電極を構成する金属が凝集してしまうおそれがあるが、この製造方法によればこれを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のようにこの発明によれば、微小なエネルギーの注入により効率的にディーゼル微粒子の酸化、窒素酸化物の還元、これら同時の処理を行うことが可能であり、高いレベルでの排出ガスの浄化を達成できる。従って、この浄化装置、浄化方法、排出ガス浄化システムをディーゼル機関の排出ガスの浄化に適用すれば、ディーゼル機関の高い熱効率を維持させたまま排気の浄化が可能となり、環境保護に役立つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳述する。
図1はこの発明の実施の一形態に係る浄化装置を示すモデル図である。この浄化装置は、例えば排出ガスに含まれるディーゼル微粒子を浄化するためのものであり、ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子(微粒子状物質:Particulate Matter)Mを浄化することができる。具体的には、固形炭素質微粒子Mに含まれる炭素を酸化させて浄化を行う装置である。さらにこの装置は、このディーゼル微粒子中の炭化水素質微粒子の処理も行える。図1に示している装置は、酸素イオン導電性を有する固体電解質1と、この固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2とを備えている。
【0020】
図1に示す固体電解質1はパネル状であり、その一面10に第1電極3を積層させ、その他面11に第2電極4を積層させている。固体電解質1は例えば燃料電池に用いられているものが適用でき、固体電解質1の両端側に電位差を与えることで酸素イオンを移動させることができる。また、第1電極3、第2電極4は通常電極として用いられる材質が利用され、板状としているが、第1電極3および第2の電極4のいずれも気体(酸素)の透過性を有するよう多孔質電極としている。
【0021】
印加手段2は通常用いられている直流電源とすることができ、電圧を可変とするものが好ましい。印加手段2は、固体電解質1の一面10側に設けた第1電極3がアノードとなり、他面11側に設けた第2電極4がカソードとなるよう固体電解質1の両面間に電圧を印加させる。印加手段2により印加される電圧は固体電解質1の電気特性、及び雰囲気温度により設定される。例えばイットリウム安定化ジルコニアの場合、雰囲気温度350℃のもと10ボルト以下である。
【0022】
この浄化装置は例えばディーゼル機関から排出される排出ガスを流すための排気流路(図示せず)に設けることができ、固体電解質1の一面10側がこの排気流路内に面するよう設けられ、この一面10側が排出ガス側Gとなる。そして、固体電解質1の他面11側が大気側(大気開放側)Aに面するよう固体電解質1は設けられる。固体電解質1のアノード側となる一面10側にはディーゼル微粒子を堆積させる堆積面12が形成されており、図1においては第1電極3の外面が堆積面12となる。なお、第1電極3の外面とは固体電解質1との接面の反対側の面である。
【0023】
そして、この浄化装置による浄化方法は、固体電解質1の一面10側の堆積面12にディーゼル微粒子を堆積させ、印加手段2により所定の電圧を固体電解質1の両面間に印加させることにより、カソード側からアノード側へ酸素イオンを供給させる。そして、この酸素イオンによりアノード側の堆積面12に存在するディーゼル微粒子を酸化させることにより行われる。つまり、カソード側である大気側Aに含まれる酸素をアノード側である排出ガス側Gへ酸素イオンとして供給する。これにより、ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mに含まれる炭素が一酸化炭素、二酸化炭素に連続的に酸化(C+O2→CO2、2C+O2→2CO)され、固形炭素質微粒子Mが浄化(分解)される。なお、固体電解質1中の矢印は酸素イオンの移動方向を示している。
【0024】
以上のように、酸素イオン導電性を有する固体電解質1と、この固体電解質1のうちディーゼル微粒子が堆積される一面側がアノード側となるよう当該固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2とを備えた浄化装置によれば、固体電解質1の両面間に印加手段2により電圧を印加させることで、酸素イオンをカソード側からアノード側へ固体電解質1を通して供給させることができ、アノード側に堆積させたディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化させて炭素酸化物とすることができる。例えば、固体電解質1のカソード側の面を大気側(大気開放側)とし、アノード側の固体電解質1の面を、ディーゼル微粒子を含む排出ガス側とすることにより排出ガスの浄化を行うことができる。
【0025】
図2に示す浄化装置は、図1の浄化装置の第1電極3を省略したものであり、その他の構成は同様である。つまり、固体電解質1の他面11側にのみカソード側とされる電極4が設けられている。この浄化装置はディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mが導電性を有することを利用したものであり、固体電解質1の一面10を直接、ディーゼル微粒子に含まれる固形炭素質微粒子Mの堆積面12としたものである。そして、一定量のディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)が固体電解質1の一面10に堆積し印加手段2により通電が開始されることにより、大気側Aのカソード側から排出ガス側Gのアノード側へ酸素イオンの供給が行われる。
【0026】
つまり、この浄化装置は、印加手段2と接続されるリード線13が固体電解質1の一面10側に接続されている。そして、固体電解質1の一面10側にディーゼル微粒子が堆積し、堆積したディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mとリード線13とが接触すると、印加手段2により電圧の印加が開始されて、固形炭素質微粒子M自体をアノードとし、通電がされる。これにより固体電解質1の両面間に所定の電位差を生じさせ酸素イオンの供給が行われる。つまり、一定量のディーゼル微粒子が堆積面12に堆積すると、その浄化が自動的に開始される。そして、前記リード線13は固体電解質1の一面10側にリング状や網目状等に設けられている。これにより固体電解質1の一面10側の堆積面12に部分的に堆積したディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mが、このリード線13に接触すると、浄化される。
【0027】
このように、固体電解質1の他面側にカソード側とされる電極が設けられ、固体電解質1の一面側にディーゼル微粒子が堆積すると当該ディーゼル微粒子に印加手段2により通電がされて当該ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子M自体をアノードとさせる構成とすることにより、固体電解質1の一面側に一定量のディーゼル微粒子が堆積すると、ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mは導電性を有するため、通電が開始されてカソード側から酸素イオンの供給が開始される。これにより、固体電解質1の一面側の固形炭素質微粒子Mを含むディーゼル微粒子の浄化が自動的に開始される。従って、固体電解質1のアノード側とされる面に電極を不要とできコストダウンが可能となる。さらに、ディーゼル微粒子が一定量堆積した状態となって浄化が必要な際に自動的に通電がされるためランニングコストの低減が図れる。
【0028】
図3に示す浄化装置は、図1(図2)に示した浄化装置によるディーゼル微粒子の処理と、酸化触媒を用いた窒素酸化物の処理とを同時に連続して行うものである。処理する窒素酸化物はディーゼル微粒子と共に排出ガスに含まれている。この浄化装置は、図1に示す浄化装置の固体電解質1の一面10側に吸着材5と酸化触媒6とを設けたものである。つまり、この装置は、酸素イオン導電性を有する固体電解質1と、固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2と、固体電解質1の一面10側に設けられて窒素酸化物を吸着させる吸着材5と、固体電解質1の一面10側に設けられる酸化触媒6とを備えている。
【0029】
固体電解質1は図1に示すものと同様であり、印加手段2は、固体電解質1のうちディーゼル微粒子が堆積される一面10側がアノード側となるよう電圧を印加させるものである。この装置においては、固体電解質1の一面10側に設けられる第1電極3を、酸化触媒6を含む多孔質電極により構成するのがよい。例えば第1電極3を多孔質とした白金や銀とすることができる。つまり、第1電極3を酸化触媒6として併用している。そして、図3において、この第1電極3(酸化触媒6)の上に網状に窒素化合物の吸着材5を積層させている。なお、吸着材5としてはアルカリ土類金属やアルカリ金属とでき、例えばバリウムを含むものとできる。図3に示す吸着材5は層状に形成されている。
【0030】
図3に示すこの浄化装置による浄化方法は次のとおりである。まず、図1(図2)と同様に、固体電解質1の両面間に印加手段2により電圧を印加させ、カソード側からアノード側へ酸素イオンを供給する。そして、この酸化イオンにより、固体電解質1のアノード側の堆積面12に存在するディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化(2C+O2→2CO)させて一酸化炭素を含む炭素酸化物とする(矢印a)。この固形炭素質微粒子Mを有するディーゼル微粒子は排出ガス中に含まれるものであり、固体電解質1の一面10側の堆積面12に堆積されている。なお、この堆積面12は酸化触媒6を有する第1電極3の外面及び吸着材5の外面となる。
【0031】
そして、ディーゼル微粒子と共に排出ガス中に含まれる一酸化窒素を固体電解質1のアノード側において酸化触媒6により酸化(NO+O2→NO2+O*)させて二酸化窒素とする(矢印b‐1と矢印b‐2)。この酸化の際に利用される酸素は主に排出ガス中に含まれる酸素である。そして、この二酸化窒素を吸着材5に吸着させる。さらに、吸着した二酸化窒素を、固形炭素質微粒子Mを酸化させて得た一酸化炭素によって還元(2NO2+4CO→N2+4CO2)し、二酸化窒素を窒素としかつ一酸化炭素を二酸化炭素とする(矢印c)。以上のように、排出ガス中に含まれるディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)と窒素酸化物(一酸化窒素)が窒素と二酸化炭素とに連続的に浄化される。
【0032】
また、ディーゼル微粒子の堆積面12に存在する酸化触媒6によりディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mの酸化が促進される。また、一酸化窒素が二酸化窒素へ酸化(NO+O2→NO2+O*)する際に(矢印b‐1)生成される活性酸素(O*)により固形炭素質微粒子Mの酸化が促進される。
【0033】
このように、酸素イオン導電性を有する固体電解質1と、この固体電解質1のうちディーゼル微粒子が堆積される一面側がアノード側となるよう固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2と、固体電解質1の一面側に設けられて窒素酸化物を吸着させる吸着材5と、固体電解質1の一面側に設けられた酸化触媒6とを備えた構成によれば、固体電解質1の両面間に印加手段2により電圧を印加することにより、酸素イオンをカソード側からアノード側へ固体電解質1を通して供給させることができ、アノード側に堆積させたディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化させ、一酸化炭素を含む炭素酸化物とすることができる。さらに、酸化触媒6により排出ガスに含まれる一酸化窒素を酸化させて二酸化窒素とすることができ、さらに、この二酸化窒素を吸着材5に吸着させることができる。そして、吸着材5に吸着した二酸化窒素を、前記ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化させて得た一酸化炭素により還元して窒素ガスとし、その一酸化炭素を二酸化炭素とすることができる。従って、ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mと窒素酸化物との両者を同時に浄化させることが可能となる。例えば、固体電解質1のカソード側の面を大気側(大気開放側)とし、アノード側の固体電解質1の面を、ディーゼル微粒子を含む排出ガス側とすることにより排出ガスの浄化を行うことができる。
【0034】
さらに、この浄化装置の印加手段2は、印加電圧の極性を周期的に反転させる切り換え手段を有している。つまり、アノード側であった第1電極3をカソード側とし、カソード側であった第2電極4をアノード側に切り換え、この切り換えを連続して行わせている。図4は第1電極3がカソード側とされ第2電極4がアノード側とされた状態であり、これにより、排出ガス側Gである固体電解質1の一面10側で発生した活性酸素(O*)を強制的に大気側Aである固体電解質1の他面11側へ戻すよう作用させる。
【0035】
これは、活性酸素により窒素、一酸化窒素が再合成(N2+2O*→2NO、NO+O*→NO2)されるのを抑制するためであり、これによりディーゼル微粒子と一酸化窒素の同時浄化をバランスよく行わせることができる。つまり、吸着材5に吸着させた二酸化窒素を還元して窒素に生成したにもかかわらず、この窒素を再度活性酸素により酸化させて窒素酸化物となることを抑制している。この印加手段2が有する切り換え手段は電気的な手段により構成させることができ、排出ガス側Gの活性酸素量に応じてその周波数及び切り換え時間を変更可能とさせることができる。
【0036】
このように、印加手段1が、印加電圧の極性を周期的に反転させる切り換え手段を有している構成によれば、極性を反転させて固体電解質1の他面側(大気側)をアノード側とすることにより、排出ガスに含まれる一酸化窒素を吸着材5に吸着させる際に生ずる活性酸素のうち過剰な活性酸素をカソード側へ移動させることができる。これにより、浄化を意図する側となる固体電解質1の一面側において、吸着材5に吸着させた二酸化窒素を還元して得た前記窒素ガスを、再度活性酸素により窒素酸化物となることを抑えることが可能となる。
【0037】
次に、図5はディーゼル機関からの排出ガスの浄化を行う浄化システムを示す模式図であり、この排出ガスにはディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)及び窒素酸化物(一酸化窒素)が含まれる。この浄化システムは、ディーゼル機関(ディーゼルエンジン)15の排気口と接続されて排出ガスを排出させる排気流路7と、この排気流路7の一部に設けられる排出ガス浄化装置8とを備えている。また図5に示す排気流路7は排気管により構成されており、この排気管の途中に排出ガス浄化装置8が有する排出ガス浄化室16が設けられている。そして、この排出ガス浄化室16の内部に複数の固体電解質1が設けられている。固体電解質1は図3に示すものと同様である。
【0038】
排出ガス浄化装置8は制御装置17と接続され、制御装置17は印加手段2及び印加手段2の印加電圧の極性を周期的に反転させる前記切り換え手段が設けられており、浄化装置8の動作を制御している。さらに浄化装置8は帯電装置18を有しており、帯電装置18は排出ガス中に含まれるディーゼル微粒子を帯電させ、ディーゼル微粒子を固体電解質1の堆積面12(図3参照)に堆積させる。
【0039】
この排出ガス浄化装置8は、複数の固体電解質1を備えており、各固体電解質1において、図3に示す浄化装置と同様に、固定電解質1の一面10側に設けられて窒素酸化物を吸着させる吸着材5と、固体電解質1の一面10側に設けられた酸化触媒6と、固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2とを備えている。なお、印加手段2は複数の固体電解質1に対して共通化させている。各固体電解質1は酸素イオン導電性を有しており、一面10側が排気流路7からの排出ガスと接触するよう設けられかつ他面11側が大気中の酸素と接触するよう設けられる。印加手段2は、固体電解質1の一面10側に設けた第1電極3をアノード側としてかつ他面11側に設けた第2電極4をカソード側とするように固体電解質1の両面間に電圧を印加させている。なお、排出ガス浄化装置8が有する固体電解質1、吸着材5、酸化触媒6、印加手段2は図1〜図4により説明したものと同様であり、例えば、印加手段2は印加電圧の極性を周期的に反転させる切り換え手段を有している。
【0040】
図6は図5の浄化システムが備えている排出ガス浄化装置8の要部構成図であり、この浄化装置8は複数の固体電解質1を有する。図5と図6において、排気流路7に接続させた排出ガス浄化室16内に、複数枚(図6では7枚)の平板パネル状の固体電解質1が相互隙間を持って対面状となるよう重ねられて配設されている。なお、固体電解質1は交互に裏返されて積層状となり、隣り合う固体電解質1,1の一面10,10同士又は他面11,11同士が対面するよう配設される。そして、各隙間には棒状のスペーサ部材19が設けられており、これら複数枚の固体電解質1により固体電解質層20が形成されている。この固体電解質層20が排出ガス浄化室16内に設けられている。
【0041】
そして複数枚の固体電解質20の各隙間でかつスペーサ部材19,19間に排出ガス用流路21又は空気用流路22が形成される。つまり、固体電解質層20の積層方向の一方側(図6の下部)から順に、排出ガス用流路21と、空気用流路22とが交互に形成される。なお、隣り合う固体電解質1,1の一面10,10間が排出ガス用流路21となり、隣り合う固体電解質1,1の他面11,11間が空気用流路22となる。
また、排出ガス用流路21を構成する隙間のスペーサ部材19の向きと、空気用流路22を構成する隙間のスペーサ部材19の向きとを、同方向としたり(図示せず)又は所定の角度で向きを変えたりすることができる。図6においては、空気用流路22を構成する隙間のスペーサ部材19が排出ガス用流路21のスペーサ部材19に対して90°向きを変えて設けられている。これにより、排出ガスの流れ方向(矢印g方向)に貫通する排出ガス用流路21と、排出ガスの流れ方向に直交する方向(矢印a方向)に貫通する空気用流路22とが交互に形成される。そして、排気流路7から流れてきた排出ガスはそのまま直線的に排出ガス用流路21に送られ、空気用流路22を排出ガス浄化室16の外部の大気側Aと連通させ、空気が空気用流路22に送られる。これにより、排出ガス用流路21を排出ガスが通過することにより、排出ガス中に含まれるディーゼル微粒子が排出ガス用流路21に面する固体電解質1の一面10側の堆積面12に堆積されて酸化され、かつ排出ガス中の窒素酸化物が還元される。
【0042】
図7は排出ガス浄化装置8の変形例であり、排気流路7内を流れてきた排出ガスの流れ方向(矢印g方向)に貫通する断面矩形の筒状の排出ガス浄化室16内に、筒状とした固体電解質1が複数設けられている。固体電解質1は大気側Aとなる他面11側が内側面となるよう筒状として構成され、筒状とされた固体電解質1の外周面が排出ガス側Gとする一面10側となり、かつ、堆積面12となる。そして、筒状の固体電解質1の軸方向が排出ガスの流れ方向(矢印g方向)に直交する方向(矢印a方向)とされており、これら固体電解質1は相互隙間を有するよう排出ガス浄化室16内に設けられている。
これにより、筒状の固体電解質1の内部が大気側Aと連通し、筒状の固体電解質1の内部に空気が通過可能となる。そして、排気流路7から流れてきた排出ガスが筒状の固体電解質1,1間の隙間を流れ、この隙間を通過する排出ガスに含まれるディーゼル微粒子が、筒状の固体電解質1の外周面側の堆積面12に堆積されて酸化され、かつ排出ガス中の窒素酸化物が還元される。
【0043】
図6と図7に示す排出ガス浄化装置8において、排出ガス浄化室16内に導入された排出ガス中のディーゼル微粒子を帯電装置18(図5参照)により帯電させ、固体電解質1の堆積面12にディーゼル微粒子を積極的に捕集させている。つまり、排出ガスが排出ガス浄化装置8に流入する上流部に帯電電極を設け、固体電解質1の堆積面12側の電極3(図3参照)をグランドレベルとさせることにより電界が形成されてディーゼル微粒子を帯電させ、帯電させたディーゼル微粒子を効率よく固体電解質1の堆積面12に集塵させている。
【0044】
また、図7に示す排出ガス浄化装置8は、筒状の固体電解質1の堆積面12となる外周面が排出ガスを部分的に遮断するよう配設されているため、外周面に排出ガスが直接的に吹き付けられ、排出ガス中のディーゼル微粒子はその慣性力により固体電解質1の外周面に効率よく捕集される。さらに、排出ガス浄化室16内に排出ガスを浄化可能とする固体電解質1しか存在しないため、ディーゼル微粒子が他の部分に堆積して流路を塞ぐおそれがなく、排出ガス中のディーゼル微粒子の濃度が高い場合に効果的である。
【0045】
図8と図9は排出ガス浄化装置8のさらに別の変形例であり、この浄化装置8の固体電解質1は断面U字形に成形され、固体電解質1は開口部から奥部へ伸びる側壁23と奥部の突き当たり状の奥壁24とから構成されている。そして、側壁23が排気流路7から流れてきた排出ガスの流れ方向(矢印g方向)と平行となる向きとなり、奥壁24が排出ガスの流れ方向に直交する面を有するよう、複数の固体電解質1が排出ガス浄化室16内に設けられている。そして、断面U字形とされた固体電解質1はその内側面が図3に示した一面10側の堆積面12であり、固体電解質1の外側面が大気側Aとなる。なお、断面U字形の固体電解質1は周状の側壁23と奥壁24とを有する有底円筒状に形成したものとできる。さらに、断面U字形とした固体電解質1は隣り合う固体電解質1と連結壁部材25により連結されており、連結させた固体電解質1により、排出ガス浄化室16を、排出ガス側Gの空間と大気側Aの空間とに区画している。
【0046】
さらに、断面U字形とした固体電解質1の内側にパイプ状の排気導管26を固体電解質1の内側面と隙間をもって挿入し、排気流路7から流れてきた排出ガスは排気導管26により固体電解質1の奥壁24側へ誘導される。誘導された排出ガスは固体電解質1の奥壁24に衝突し、その後、排気導管26の外周面と固体電解質1の側壁23内面との間を流れ、固体電解質1により浄化された排出ガスは排出ガス浄化室16の外部へと排出される。なお、連結させた複数の固体電解質1により区画した排出ガス浄化室16の大気側Aの部分に、空気の吸入口27及びその排出口28が設けられている。
【0047】
さらにこの排出ガス浄化装置8においても図8に示すように、帯電装置18によりディーゼル微粒子を帯電させ、固体電解質1の堆積面12にディーゼル微粒子を捕集させている。この場合前記排気導管26を帯電電極とし、固体電解質1の堆積面12側の電極3(図3参照)をグランドレベルとすることにより、排気導管26の外周面と固体電解質1の内側面との間に電解を形成する。そして、この間を排出ガスが通過する際に、排出ガス中のディーゼル微粒子が帯電され、帯電したディーゼル微粒子は固体電解質1の堆積面12に効率よく集塵される。そして、堆積面12に堆積したディーゼル微粒子が浄化される。
【0048】
図9に示す排出ガス浄化装置8による浄化方法について説明すると、排気流路7から流れてきた排出ガスはまず排気導管26内を流れる。排気導管26を通過した排出ガス中のディーゼル微粒子はその慣性力により固体電解質1の奥壁24における堆積面12に捕捉される。排出ガスはさらに排出導管26と固体電解質1との間を流れ、これらの間において帯電装置18により帯電したディーゼル微粒子は、帯電装置18により形成された電界により、固体電解質1の側壁23における堆積面12に捕集される。つまり、この排出ガス浄化装置8は、排出ガスの慣性力による固体電解質1の奥壁24における慣性捕集作用と、帯電装置18による電気捕集作用とを有している。そして、粒子径の大きなディーゼル微粒子は慣性捕集が効果的であり、粒子径が小さいものに対しては電気捕集が効果的となり、この2つの作用により様々な粒子径のディーゼル微粒子を効率よく捕集することができる。
【0049】
次に、この発明に係る浄化装置のさらに別の実施形態について、図10により説明する。この浄化装置は図1〜図4に示した浄化装置の変形例である。
図10は浄化装置を示すモデル図であり、この装置においてもディーゼルエンジンから排出された排出ガスを浄化することができるものであり、排出ガスに含まれるディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子M、及び、窒素酸化物を浄化することができる。
この浄化装置は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質1と、この固体電解質1の一面10側と他面11側にそれぞれ設けられた第1電極3と第2電極4とを有する浄化構造体30を備えている。
【0050】
固体電解質1はパネル状であり、その一面10に第1電極3を積層させ、他面11に第2電極4を積層させて、浄化構造体30を構成している。固体電解質1は例えば燃料電池に用いられているものを適用でき、固体電解質1の両端側に電位差が生じることによってイオンを移動させることができる。なお、この固体電解質1は、結果として第1電極3側へ酸素イオンを与えることができるものであれば、固体電解質1中を移動するイオンは酸素イオンに限らない。
【0051】
そして、この浄化構造体30は、浄化を行う排出ガスのうちディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)を除き窒素酸化物を含むガスを透過させることができるように、多孔質としている。つまり、浄化構造体30のうちの固体電解質1が多孔質であり、かつ、第1電極3と第2の電極4が多孔質電極である。浄化構造体30を多孔質とすることにより、ディーゼル微粒子を含む排出ガスを第1電極3側から第2電極4側へ通す(矢印F)ことによって、ディーゼル微粒子を第1電極3側に捕集する(フィルタリングする)ことができる。
【0052】
そして、図1に示した浄化装置と同様に、電位差が生じている固体電解質1によって第1電極3側へ与えられた酸素イオンにより、捕集したディーゼル微粒子の固形炭素質微粒子Mを酸化させる。
また、浄化構造体30を透過した排出ガスには窒素酸化物が含まれており、この窒素酸化物は後述するが第2電極4側において還元される。つまり、この浄化構造体30において、第1電極3側が、固形炭素質微粒子Mを酸化させる酸化部となり、固体電解質1を挟んで反対側(裏面側)である第2電極4側が、浄化構造体30を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元する還元部となる。つまりこの浄化装置は、浄化構造体30の一面側において固形炭素質微粒子Mの浄化が可能であり、同時に他面側において窒素酸化物の浄化が可能となる。
この場合、固体電解質1中において酸素イオンを移動させることにより、第1電極3側である酸化部においては、未燃焼微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化させて炭素酸化物とすることができると同時に、第2電極4側である還元部において、固体電解質1により酸素イオンを第2電極4側から第1電極3側へ移動させることによって、浄化構造体30を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元して窒素ガスとすることができる。このように、排出ガス中の固形炭素質微粒子Mと窒素酸化物との同時浄化(同時分解)が可能となる。
【0053】
この浄化構造体30には、このような浄化処理を行わせるために設けられている制御手段31が接続されており、制御手段31は、図1の浄化装置に示したものと同様である印加手段2を有している。さらに説明すると、制御手段31は、第1電極3側がアノード側となるよう電圧を印加させることができる前記印加手段2と、これと並列となるように抵抗器が設けられて全体として閉回路を構成することができるバイパス回路部34とを備えている。さらに、制御手段31は、印加手段2により両電極3,4間に電圧を印加させている状態と、両電極3,4間において印加を止めて前記閉回路を構成している状態とに切り換え可能とする切換制御部35とを備えている。
つまり、ディーゼルエンジンの運転条件によって排出ガスの温度が異なるが、排出ガス温度が低い場合、印加手段2により第1電極3側がアノード側となるよう両電極3,4間に電圧を印加させることで、固体電解質1中においてイオンの移動を可能とし、前記同時浄化を可能としている。
しかし、エンジンの負荷などが大きくなって排出ガス温度が高くなる場合、浄化構造体30の第1電極3側において固形炭素質微粒子Mの酸化が行われやすくなり、固体電解質1を燃料電池として動作させることができる。これにより、外部から(印加手段2により)電気エネルギーを供給することなく、固体電解質1内においてイオンの移動が可能となって前記同時浄化が行われる。つまり、排出ガス温度が高くなって固体電解質1内のイオン導電率が高い場合、前記切換制御部35が両電極3,4間をバイパス回路部34でつないだ状態として、固体電解質1を含み外部電圧を作用させていない閉回路を構成させることで、固体電解質1内においてイオンの移動を可能としている。
【0054】
そして制御手段31は、排出ガスの温度を測定する温度センサ(図示せず)と接続されており、温度センサの出力に応じて切換制御部35が切り換え動作するよう構成されている。つまり、排出ガスの温度が低い場合に両電極3,4間に電圧を印加させている状態とし、温度が高い場合に閉回路を構成している状態となるように自動的に切り換えている。これにより電力消費を抑えエネルギー効率を高めることができる。また、これら状態の切り換えは、温度センサによって排出ガスの温度を検出する手段によるもの以外であってもよく、固体電解質1が前記同時浄化を行わせることができる程度にイオン導電機能を有する燃料電池として作動できるか否かの検出によって行えばよい。
【0055】
そして、この浄化装置により行われる排出ガスの浄化方法は、多孔質からなる固体電解質1の一面10側から他面11側へディーゼル微粒子を含む排出ガスを通すことにより、ディーゼル微粒子をその一面10側に捕集させる。そして、固体電解質1の両面間に所定の電位差を生じさせることによって、一面10側に酸素イオンを与えるように、固体電解質1の他面11側から一面10側へイオンを移動させ、一面10側において捕集したディーゼル微粒子を、このイオンにより酸化させる。図10においては、固体電解質1の他面11側に存在する酸素あるいは窒素酸化物中の酸素原子を、酸素イオンとして固体電解質1内で移動させ、この酸素イオンを一面10側である第1電極3側に供給している。これにより、捕集したディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mに含まれる炭素が二酸化炭素に連続的に酸化(C+O2→CO2)され、固形炭素質微粒子Mが浄化(分解)される。そして、得られた二酸化炭素は、上流側から流れてくる排出ガスと共に浄化構造体30を透過して、下流側である第2電極4側へ流れ、浄化構造体30よりもさらに下流側へと排出される。
【0056】
さらに、浄化構造体30を透過した排出ガスに含まれている窒素酸化物は、第2電極4側(還元部)において浄化処理される。
図11は、第2電極4側において窒素酸化物が浄化されるメカニズムを説明する図であり、浄化構造体30の第2電極4側(カソード側)にセリア又はセリア酸化物が担持されている。
この還元部において行われる浄化方法は次のとおりである。セリア(セリア酸化物)は希薄運転状態ではCeO2が安定した状態となる(Ce2O3+1/2O2→2CeO2:セリアによる酸素吸蔵効果)。しかし、印加手段2によって電圧を印加させることにより、第2電極4側では酸素を放出し希薄運転状態でCe2O3を安定状態で保つことができる(2CeO2+2e−→Ce2O3+O2−)。この際に酸素イオンが発生しており、この酸素イオンを固体電解質1によって第1電極3側へ移動させ、この酸素イオンは固形炭素質微粒子Mの酸化に用いられる。そして、セリアがこの状態で窒素酸化物(NO)を還元することができる(Ce2O3+NO→2CeO2+1/2N2)。
【0057】
図12は、第2電極4側において窒素酸化物が浄化される別のメカニズムを説明する図であり、浄化構造体30の第2電極4(カソード側)に、窒素酸化物を吸着させる吸着材5が担持されている。吸着材5は図3の浄化装置におけるものと同様でありアルカリ土類金属又はアルカリ金属であり、具体的には、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムがある。このうち安定性などの性質やコスト面で好ましいのは、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、カリウムである。さらに、第2電極4には、図3と同様に酸化触媒6が担持されている。酸化触媒6としては白金や銀があり、また、多孔質からなる第2電極4自身を白金や銀を含むものや、多孔質からなる第2電極4自身を白金や銀で構成し、酸化触媒6とすることができる。
そして、吸着材5としての酸化バリウムは第2電極4側にある二酸化炭素との反応により安定した状態(炭酸バリウム)となる(BaO+CO2→BaCO3)。
【0058】
この還元部において行われる浄化方法は次のとおりである。浄化構造体30を透過した排出ガスには一酸化窒素と酸素が含まれており、第2電極4側において、一酸化窒素は酸化触媒6により酸化(NO+O2→NO2+O2−)されて二酸化窒素となる。この際に酸素イオンが発生しており、この酸素イオンを固体電解質1によって第1電極3側へ移動させ、この酸素イオンは固形炭素質微粒子Mの酸化に用いられる。
そして、この二酸化窒素及び排出ガス中に含まれていた二酸化窒素を吸着材5に吸着させ(BaCO3+2NO2+O→Ba(NO3)2+CO2)、印加手段2によって電圧を印加させることにより、二酸化窒素の還元が行われる(Ba(NO3)2+2e−→BaO+N2+2O2+O2−)。
なお、図11と図12の形態において、第2電極4側で生じた酸素イオンを固体電解質1によって第1電極3側へ強制的に移動させることができるため、還元して得た窒素が窒素酸化物へ再合成されるのを抑制することができる。
以上のようにこの浄化方法は、一酸化炭素などの還元物質を用いる方法ではなく、電気化学的に還元する方法である。
【0059】
また、それぞれの実施形態において、印加手段2による電圧の印加を常時一定電圧として作用させてもよいが、制御手段31の働きによって、電圧の印加状態を周期的に変化又は変動させてもよい。例えば、電圧を印加させている状態と印加させていない状態とに周期的に変化させることができる。つまり、浄化構造体30の第1電極側3にある程度の量の固形炭素質微粒子Mが堆積してから、所定時間だけ電圧を印加させて前記浄化処理を間欠的に行わせるようにしてもよい。
【0060】
以上のようなこの発明の浄化装置によれば、排出ガスの圧力により排出ガスを強制的に第1電極3側から流入させ第2電極4側へ排出させる。浄化構造体30は多孔質であるために排出ガス中のディーゼル微粒子などの粒子状物質(固形炭素質微粒子M)は第1電極3側に捕集される。つまり、浄化構造体30のフィルタリング効果によって排出ガス中の微粒子は第1電極3側に自動的に捕集される。これにより、電気集塵機を用いて電極表面にディーゼル微粒子を集塵させる必要がなくなり、装置の低コスト化、小型化が図れる。そして、第1電極3側において微粒子が捕集除去された排出ガスは、浄化構造体30を透過し第2電極4側へ流出する。そして、例えば図12に示したようにアルカリ土類金属による窒素酸化物の吸蔵および、第2電極4での反応による窒素酸化物還元作用によって、排出ガスに含まれている窒素酸化物は吸蔵されて分解される。
この際に生じた酸素イオン(活性酸素)は、電圧が印加された固体電解質1を介して第1電極3側へ強制的に排除される。これにより、第2電極4側においてNOxの再合成が抑制されると共に、第1電極3側に捕集した微粒子の酸化を促進させ、窒素酸化物と固形炭素質微粒子Mの同時浄化が可能となる。
【0061】
なお、従来浄化装置として知られているDPNRは、セラミックフィルターにNOx吸蔵還元触媒を担持させたものであるが、通常NOxの排出量に対して固形炭素質微粒子Mの排出量が多くなる。そのため、還元剤を排出ガス中に添加させる必要があり、その添加装置を排気系に設けるなどの構成が別途必要となる。しかし、この発明の浄化装置によれば、固形炭素質微粒子MとNOxの浄化は、浄化構造体30の一面と他面のそれぞれにおいて独立して行わせるため、排出ガス中の固形炭素質微粒子MとNOxのバランスに依存せず、両者独立して処理することが可能であり、還元剤の添加は不要となる。従って、この発明の浄化装置は構成を簡素化かつコンパクトにできるため、既存の自動車への後付けも可能となる。
【0062】
さらに、排出ガス中には硫黄が含まれているが、この硫黄は窒素酸化物の還元処理において悪影響を及ばすおそれがある。しかし、ディーゼル微粒子中にこの硫黄が含まれている場合、この発明の浄化装置は、硫黄を含んだディーゼル微粒子を浄化構造体30の第1電極3側に捕集し、その裏面側である第2電極4側において窒素酸化物の還元が行われるため、窒素酸化物の還元電極上には硫黄を含んだ微粒子が堆積することがなく、そのため硫黄による影響を抑えることができる。
【0063】
以上図1〜図4に示した浄化装置に用いられている固体電解質1、及び、図10に示した浄化装置に用いられている多孔質からなる浄化構造体30についてさらに説明すると、使用する固体電解質1としては、従来知られているイットリウム安定化ジルコニア(ジルコニア系電解質YSZ)、セリア系固体電解質(SDC)、又は溶融炭酸塩型のもの等があり、ジルコニア系電解質の場合350℃以上の高い排気温度においては十分な酸素イオンの供給が可能となる。そして、排気温度が高温(例えば350℃)の場合だけではなく、低い場合(例えば250℃〜300℃)や、250℃以下においても効果的に酸素イオンの供給によるディーゼル微粒子の酸化(燃焼)を行わせるために、固体電解質1の形状、厚さを変更することでイオン伝導度を向上させることができる。
なお、以上において説明した酸素イオン導電性を有する固体電解質1は、一般に高温で酸素イオン伝導度が高くなり酸素イオンの移動が容易となるが、逆に低温では困難となる。仮に低温の固体電解質1に強制的に高い印加電圧をかけると、固体電解質1中を構成する酸素が強制的に移動するため電解質1の劣化が生じてしまう。
そこで、固体電解質1を加熱して固体電解質1の温度を330℃〜370℃程度に保つように構成したり、又は排出ガス側Gのガス温度を330℃〜370℃程度に保つよう構成したりするのが好ましい。そして、印加手段2による印加電圧を1ボルト〜10ボルトと低くすることにより固体電解質1が劣化するのを防ぎ、かつ効率良く十分な速度で酸素イオンの供給を行う。
【0064】
次に、図10で示した浄化構造体30の具体的な仕様について説明すると、浄化構造体30は全体として、ディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)を通さないでその一面側に捕集する(フィルタリングする)ことができ、かつ、これを除く排出ガスを一面側から他面側へ透過させることができるように連続状の無数の孔からなる網目状組織の多孔質としている。
ディーゼル微粒子の分解極となる第1電極3は、その厚さが1μm以上で5mm以下とするのがよく、好ましくは5μm以上で50μmである。この厚さが薄すぎるとディーゼル微粒子の捕集率が低下するおそれがあり、また、厚すぎると圧力損失が大きくなるおそれがある。多孔質である第1電極3における孔(空洞)の平均孔径は0.5μm以上で100μm以下とするのがよく、好ましくは1μm以上で10μmであり、気孔率は10%以上で80%以下とするのがよく、好ましくは40%以上で60%以下である。これらの値が小さすぎると圧力損失が大きくなるおそれがあり、大きすぎるとディーゼル微粒子の捕集率が低下するおそれがある。
固体電解質1は、その厚さが1μm以上で5mm以下とするのがよく、好ましくは10μm以上で500μmである。この厚さが厚すぎると圧力損失が大きくなるおそれがある。多孔質である固体電解質1における孔(空洞)の平均孔径は0.5μm以上で100μm以下とするのがよく、好ましくは1μm以上で30μmであり、気孔率は10%以上で80%以下とするのがよく、好ましくは40%以上で60%以下である。これらの値が小さすぎると圧力損失が大きくなるおそれがあり、大きすぎると単位面積あたりのイオン導電率が小さくなるおそれがある。
窒素酸化物の分解極となる第2電極4は、その厚さが1μm以上で5mm以下とするのがよく、好ましくは5μm以上で50μmである。この厚さが厚すぎると圧力損失が大きくなるおそれがある。多孔質である第2電極4における孔(空洞)の平均孔径は0.5μm以上で100μm以下とするのがよく、好ましくは1μm以上で30μmであり、気孔率は10%以上で80%以下とするのがよく、好ましくは40%以上で60%以下である。これらの値が小さすぎると圧力損失が大きくなるおそれがある。
また、第1電極3における平均孔径と気孔率の双方又は一方は、固体電解質1及び第2電極4よりも小さくなるようにしてもよい。つまり、第1電極3におけるディーゼル微粒子の捕集率を維持しつつ、固体電解質1と第2電極2において流れる排出ガスの圧力損失を小さくしている。
【0065】
浄化構造体30において、第1電極3側でディーゼル微粒子が捕集された排出ガスを効率よく透過させるために、当該浄化構造体30における圧力損失を小さくするのが好ましい。これは、圧力損失が大きいとエンジン出力の低下や燃費の悪化の原因となるからである。そして、この発明における浄化構造体30における圧力損失の適正値は、前記厚さ、平均孔径及び気孔率に依存する他、ディーゼル微粒子の堆積状態及び排出ガスの流量によって異なるが、ディーゼル微粒子が堆積していない状態(新品の状態)で20kPa以下であるのが好ましい。また、圧力損失を小さくするために前記気孔率等を大きくしすぎて第1電極3側でのディーゼル微粒子の捕集率を低下させることのない程度の多孔質とする必要があり、第1電極3側におけるディーゼル微粒子の捕集率は90%以上とすることができる多孔質とするのが好ましい。
【0066】
この多孔質からなる浄化構造体30の製法について説明すると、固体電解質1及び電極を多孔質とする方法は従来知られている方法が適用できる。例えば、固体電解質1及び電極3,4を焼成することにより得ることができ、その焼成の際に含有させておいた微小溶融材料(ペレット)を飛散させる方法や、発泡剤を用いる方法などがある。これにより得られる多孔質は、ディーゼル微粒子を除く排出ガスに対して透過性を有するように一面側から他面側へ連続している無数の孔(空洞)によって形成される。
【0067】
浄化構造体30についてより好ましい形態について説明する。第1電極3及び第2電極4はそれぞれ、白金や銀を含むものや、電極を白金や銀で構成するものとできる。特に好ましいのは銀とした場合である。これは、銀は酸素吸着能を有するため、特に第1電極3を銀とすることで、当該第1電極3において固形炭素質微粒子Mを酸化させる(分解する)活性点が多数存在することとなる。これにより、固形炭素質微粒子Mの酸化に、酸素イオンを効率よく用いることができ、高い分解率を得ることができる。
【0068】
また、電極3,4のさらに好ましい形態としては、第1電極3と第2電極4との両者、または、片方は固体電解質1と同じ素材を含んでいるのが好ましい。特に、第1電極3に固体電解質1を含ませて焼成した場合、固形炭素質微粒子Mの酸化反応(分解反応)は第1電極3と固体電解質1との界面で生じるため、電極材料に固体電解質材料を混合させることで酸化のための反応活性点を増やすことができ、固形炭素質微粒子Mの酸化を促進できる。さらに、還元部である第2電極4側に窒素酸化物を吸着させる吸着材5を設けることで、浄化構造体30を通過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を第2電極4側に吸着させ(吸蔵し)、固体電解質1において酸素イオンを第2電極4側から第1電極3側へ移動させることによって、この窒素酸化物を還元することができる。
さらに、第1電極3と第2電極4との両者、または、片方に固体電解質1と同じ素材を含ませることにより、電極3,4と固体電解質1との接合状態が良くなり、浄化構造体30の耐久性を向上させることができる。これは、浄化構造体30を構成する電極3,4と固体電解質1との熱膨張率が大きく異なると、この浄化構造体30は使用状態で温度変化が大きいため、この温度変化により電極3,4が固体電解質1から剥がれてしまうおそれがある。しかし、電極3,4に固体電解質1と同じ素材を含ませ焼成し浄化構造体30を得ることで、固体電解質1と電極3,4とを一体化でき、大きな温度変化が生じても一体的に熱変形することができる。このため、電極3,4は固体電解質1から剥がれにくくなり、浄化構造体30の耐久性を向上させることができる。
また、浄化構造体30の耐久性の向上のために、電極3,4に含ませる素材を固体電解質1と全く同一ではなく、電極3,4の両者又は一方に、固体電解質1と同程度の熱膨張率を有する素材を含ませたものであってもよい。そして、この耐久性向上という観点に、反応促進の観点を含めると、第1電極3と第2電極4との両者、または、片方に固体電解質1と同じ素材を含ませるのが最も好ましい。
このように、第1電極3を、銀と固体電解質1との混合体(銀サーメット)とし、さらに還元部である第2電極4側に窒素酸化物を吸着させる吸着材5を設ける構成が、反応促進の観点及び耐久性向上の観点で特に好ましく、また第2電極4を第1電極と同じとすることで製造も容易となる。そして、吸着材5としては、既に説明したように、アルカリ土類金属又はアルカリ金属であるのが好ましい。
【0069】
また、電極3,4の製造において銀粒子を焼成することで多孔質の銀電極を得ることができるが、銀材料(銀粒子)に固体電解質材料(固体電解質粒子)を混合し、これを焼成することで、銀と固体電解質1との混合体による多孔質の電極3,4を得ることができる。この際、銀粒子の粒径及び固体電解質粒子を0.01μm以上で10μm以下とするのが好ましく、例えば1μmの銀粒子と0.1μmの固体電解質粒子とを混合すればよい。これらの粒子が細かいほど焼成して得た電極3,4の表面積が大きくなり、反応活性点が多くなり、反応性能(分解性能)を向上させることができる。
【0070】
また、銀材料(電極材料)と固体電解質材料との混合比について説明する。固体電解質材料を多くすると、反応活性点となる銀と固体電解質1との界面が増え、電極における反応性能を向上させることができるが、固体電解質材料を多くし過ぎると、電極としての導電性が低下し、全体としての性能が低下するおそれがある。そこで、固体電解質材料を全体において60vol%以下とするのが好ましく、特に好ましいのは、固体電解質材料を全体において20vol%以上40vol%以下とすればよい。具体的には、固体電解質材料を30vol%とし、銀材料を70vol%とすればよい。
【0071】
次に第2電極4側における吸着材5の混合比について説明する。第2電極4の体積を100%とした場合、バリウムを30vol%以上で40vol%以下とするのが好ましい。そして、バリウムを分散させた状態とするのが好ましい。これは、通常バリウムは酸化バリウム(BaO)粒子の状態で電極4上に担持されているが、バリウムが多すぎると酸化バリウムによる膜が形成され、反応活性点となる固体電解質1と第2電極4との界面が少なくなり、分解性能が低下するおそれがある。なお、バリウムを第2電極4全体に分散させた形態とする場合では、第2電極4の体積を100%とした場合、バリウムを100vol%とすることも考えられる。
【0072】
図15は、この発明の浄化装置によって燃焼機から排出された排出ガスを浄化する試験を行った場合における、当該排出ガスに含まれる固形炭素質微粒子Mの減少率(浄化率)と浄化時間との関係を示すグラフである。この試験の条件は、多孔質からなる浄化構造体30において、固体電解質1をセリア系固体電解質とし、第1電極3を銀電極とし、第2電極4を白金と前記固体電解質との混合体(サーメット)としたものである。第1電極3において、厚さが30μmであり、平均孔径が3μmであり、気孔率が30%である。固体電解質1において、厚さが0.5mであり、平均孔径が5μmであり、気孔率が40%である。また、第2電極4において、厚さが30μmであり、平均孔径が3μmであり、気孔率が30%である。そして、固体電解質1の温度を350℃とし、印加手段2による固体電解質1へ流す電流値を0.3Aとし、浄化構造体30への排出ガスの導入流量を1.0リットル/minとし、固形炭素質微粒子Nの排出濃度を75mg/m3としている。なお、30分間で浄化構造体30に供給される固形炭素質微粒子Mの量は2.25gとなる。
この図15に示している結果によれば、浄化開始から4時間経過時点で94%以上の高い固形炭素質微粒子Mの分解率を得ることができ、さらに7時間経過時点で90%以上の高い分解率を得ることが確認された。
また、他の試験の条件として、固体電解質1をジルコニア系電解質とし、第1電極3を銀とジルコニア系電解質との混合体(サーメット)とし、第2電極4を白金とジルコニア系電解質との混合体(サーメット)とし、その他条件を図15と同様とした場合であっても、図15の場合と同様に高い分解率を得ることができる。そして、第1電極3と第2電極4とに、固体電解質1と同じ素材を含ませていることにより、浄化構造体30の耐久性を向上させることができる。この場合の第1電極3は、銀を70vol%とし、ジルコニア系電解質を30vol%としている。
【0073】
このように、第1電極3に銀電極を含ませることにより、銀は酸素吸着能を有するため、第1電極3において固形炭素質微粒子Mを酸化させる(分解する)活性点が多数存在することとなる。したがって、酸素イオンを効率よく固形炭素質微粒子Mの酸化に用いることができ、高い分解率を得ることができる。また、浄化構造体30における固形炭素質微粒子Mの捕集率を測定するために、浄化構造体30を通過した排出ガスを排出する流路側にフィルター(図示せず)を設けた。つまり、このフィルターにおいて捕集した固形炭素質微粒子Mによる当該フィルターの質量増加から、浄化構造体30での捕集率を測定した。しかし、この試験において、フィルターでの質量増加は確認できず、浄化構造体30における固形炭素質微粒子Mの捕集率は100%であることが確認された。
【0074】
図16は、この発明の浄化装置によって燃焼機から排出された排出ガスを浄化する試験を行った場合における、当該排出ガスに含まれる固形炭素質微粒子Mの減少率と浄化構造体30に流す電流との関係を示すグラフである。この試験の条件として、浄化構造体30は図15における試験のものと同じであり、印加手段2による固体電解質1へ流す電流値をゼロから0.3Aまで増加させつつ一定とした。そして、浄化開始30分後における固形炭素質微粒子Mの減少率を測定した。なお、この試験においても、30分間で浄化構造体30に供給される固形炭素質微粒子Mの量は2.25gである。
この図16に示している結果によれば、銀による触媒作用により電圧印加を行わない場合(電流値がゼロ)であっても、約30%の分解率を得ることができ、0.3Aの電流の印加により97%の高い分解率を得ることが確認された。
【0075】
図17は、この発明の浄化装置によって燃焼機から排出された排出ガスを浄化する試験を行った場合における、当該排出ガスに含まれる窒素酸化物の減少率と浄化構造体に流す電流との関係を示すグラフである。この試験の条件は、多孔質からなる浄化構造体30において、固体電解質1をイットリウム安定化ジルコニアとし、第1電極3を銀とイットリウム安定化ジルコニアの混合体とし、第2電極4を第1電極3と同じである銀とイットリウム安定化ジルコニアの混合体としたものである。第1電極3において、厚さが30μmであり、平均孔径が2μmであり、気孔率が60%である。固体電解質1において、厚さが0.5mであり、平均孔径が5μmであり、気孔率が40%である。また、第2電極4において、厚さが30μmであり、平均孔径が2μmであり、気孔率が60%である。さらに、第2電極4において吸着材5としてバリウムを担持させている。図17の二点鎖線(実施例1)が、第2電極4の全体積を100%としてバリウムを36vol%とした場合であり、一点鎖線(実施例2)が、バリウムを26vol%とした場合である。そして、固体電解質1の温度を400℃とし、浄化構造体30への排出ガスの導入流量を1.0リットル/minとし、窒素酸化物NOxの濃度を450ppmとした。なお、図17の実線(実施例3)は、バリウムを36vol%とし、かつ、排出ガスの導入流量を0.5リットル/minとした場合であり、その他の条件は他の2つと同じである。そして、各条件において、印加手段2による固体電解質1へ流す電流値をゼロから0.3Aまで増加させつつ一定とし、各電流値において、浄化開始1分後における窒素酸化物NOxの減少率を測定した。
この図17に示している結果によれば、各条件(実施例1〜3)とも0.1Aの電流値で80%以上の高い分解率を得ることが確認された。また、実施例2と実施例3とでは、0.05mA(4.9V)の低エネルギーで80%以上の高い分解率を得ることが確認された。
【0076】
図13は、ディーゼル機関からの排出ガスの浄化を行う浄化システムを示す模式図であり、図5に示した浄化システムと同様に、この浄化システムは、ディーゼル機関(ディーゼルエンジン)15の排気口と接続されて排出ガスを排出させる排気流路7と、この排気流路7の一部に設けられる排出ガス浄化装置8とを備えている。排気流路7は排気管により構成されており、この排気管の途中に排出ガス浄化装置8が有する筒状の排出ガス浄化室16が設けられている。この排出ガス浄化室16の内部に前記浄化構造体30が設けられている。
【0077】
この排出ガス浄化装置8は図10に示した浄化装置であり、この浄化装置8が備えている浄化構造体30は、イオン導電性を有して一面10側に酸素イオンを与え得る固体電解質1と、この固体電解質1の一面10側と他面11側にそれぞれ設けられた第1電極3と第2電極4とを有している。浄化構造体30は、排気流路7からの排出ガスを第1電極3側から第2電極4側へ通すことによって排出ガス中のディーゼル微粒子を当該第1電極3側に捕集することができる多孔質とされている。浄化構造体30には、前記制御手段31が接続されている。
そして、前記説明したように、第1電極3側において捕集されたディーゼル微粒子を酸化させ、かつ、第2電極4側において浄化構造体30を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元する。
【0078】
浄化構造体30は、図14に示しているように、有底筒状に形成されている複数本の筒状部32と、この筒状部32の開口部を相互連結している板状部33とを有する構成である。板状部33は、排気流路7を流れてきた排出ガスに対して対面状となるように排出ガス浄化室16の内周面に固定壁として取り付けられており、筒状部32は、パイプ状の排出ガス浄化室16の軸方向(排出ガスの流れ方向)を軸方向としている。そして、筒状部32の内面(内周面と底面)と、この内面と連続している板状部33の表面とを第1電極3側としており、その反対側の面である筒状部32の外面(外周面と端面)とこの外面と連続している板状部33の裏面とを第2電極4側としている。これにより、排出ガス浄化室16に流入した排出ガスは、板状部33の表面及び筒状部32の内面からその反対側の面へ透過し、第1電極3側においてディーゼル微粒子が捕集されて固形炭素質微粒子Mの酸化が行われ、第2電極4側において窒素酸化物の還元が行われ、処理された排出ガスは、排出ガス浄化室16の下流側へ排出される。
【0079】
また、図18はこの発明の浄化構造体30の他の実施形態の断面を示している説明図である。この浄化構造体30は、支持体40を更に有している。支持体40は浄化構造体30の機械的強度を高めるためのものである。これにより、浄化構造体30を構成する他の部材である電極3,4や固体電解質1を薄くできる。すなわち、浄化構造体の機械的強度を高めるために、電極3,4や固体電解質1を厚くする必要がない。電極3,4や固体電解質1を薄くすることができるため、排出ガスが電極3,4や固体電解質1を透過する際の抵抗を低減でき、また、小さい印加電圧により酸素イオンを導電させることができ、省エネルギー化が図れる。
【0080】
支持体40について具体的に説明する。図18において、有底円筒状に形成した第2電極4の外周側に、有底円筒状に形成した固体電解質1が設けられ、この外周に有底円筒状に形成した第1電極3が設けられている。そして、支持体40は有底円筒状(乃至円筒状)に形成した管部材であり、第2電極4の内周側に積層状態として設けられている。これにより、浄化構造体30は、有底筒状に形成されている。支持体40は多孔質であり、第1電極3側から透過してくる排出ガスを矢印で示しているように透過させることができる。この支持体40は、端部の取付部40cと、本体部40dとを有している。本体部40dは第2電極4と積層状態にあり、浄化構造体30が固定壁47に取り付けられる前に単独で存在している状態で、取付部40cは第2電極4と積層状態になく露出状態である。
【0081】
支持体40の材質は、酸化アルミニウム(アルミナ)、ジルコニア、ムライト(3Al2O3−2SiO2系の化合物)、ステンレス鋼等とすることができる。その中でも熱膨張係数が固体電解質1に近いジルコニアとした場合、温度変化が大きい浄化構造体30にとって構造的に好ましく、また、熱膨張係数及びコスト面で酸化アルミニウムとするのが好ましい。また、支持体40の厚さは浄化構造体30の剛性を確保できる最小厚さが好ましい。例えば、浄化構造体30の軸方向長さを130mm以上で170mm以下とし、外径を8mm以上で12mm以下とした場合、支持体40の厚さを1mm以上で2mm以下と設定することができる。また、多孔質である支持体40の孔(空洞)の平均孔径は固体電解質1及び電極3,4の平均孔径以上が好ましく、また、気孔率を40%以上で50%以下とするのが好ましい。
【0082】
図18の浄化構造体30についてさらに説明すると、固体電解質1の内径側にある第2電極4において、浄化構造体30の開口側の端部が径方向外側に対して露出している。つまり、第2電極4はその端部の外周面に露出面を有しており、この露出面に印加手段2のリード線を繋げることができる。これにより、第2電極4が薄くても、第2電極4とリード線とを強固に繋げることができる。また、この第2電極4とリード線との接続部である第2接続部46と、第1電極3と別のリード線との接続部である第1接続部45とは、一つ(一本)の浄化構造体30において、距離を離して設けるのが好ましい。具体的には、第1接続部45と第2接続部46とを浄化構造体30の軸方向両端部にそれぞれ離して設けるのが好ましい。さらに、第1接続部45と第2接続部46とを180°位相を離して設けるのがさらに好ましい。これは、両接続部45,46が接近すると、浄化構造体30においてこれら接続部45,46の近傍で酸素イオンの導電が生じ、これらから離れた部分では、効果的な酸素イオンの導電が生じないおそれがあるためである。しかし、図18のように両接続部45,46を離して設けることでこれを防止できる。
【0083】
また、図18において、第1電極3の外周に集電体として金属網48を設け、この金属網48とリード線とを繋げて第1接続部45としてもよい。これにより、第1電極3の全面に対して電圧を付与することができ、浄化構造体30の全体において酸素イオンの導電が可能となる。金属網48は、第1電極3の外周に設けられているが、排出ガスを透過させることができ、さらに、その排出ガス中の固形炭素質微粒子を金属網48に滞留させないように網の目が粗く設定されている。さらに、支持体40を導電性のある材質としていることで、第2電極4と一体状となる支持体40を、前記金属網と同様に集電体として機能させることができる。つまり、この支持体40にリード線を繋げて第2接続部46としてもよい(図示せず)。
【0084】
なお、支持体40は他の形態であってもよく、図示しないが、例えば支持体を第1電極側(第1電極の外周側)に設けてもよい。しかし、この場合、排出ガス中の固形炭素質微粒子が支持体に滞留しないようにすることが必要であり、例えば支持体を目の粗い網構造とする必要がある。
そして、図13で示した排出ガス浄化装置8の排出ガス浄化室16内において、図18に示すように浄化構造体30を取り付けるための固定壁47が設けられている。この固定壁47に、支持体40の露出状であった取付部40cを固定することで、浄化構造体30を排出ガス浄化室16に取り付けることができる。そして、図示しないが、この取り付け構造により、固定壁47に複数の浄化構造体30を平行に配設することができる。
【0085】
そして、このような多孔質からなる支持体40と、固体電解質1と、この固体電解質1の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極3と第2電極4とを有する浄化構造体30の製造方法について、図19により説明する。なお、図19では、浄化構造体30を円板形状とした場合を例示している。
まず、支持体40の一面40a上にカーボン粒子や樹脂を設け、一面40aにマスキングを施す。そして、この一面40a側に電解質スラリー41を被覆し、これを焼成して支持体40上に固体電解質1を得て、多孔質である支持体40の他面40b側から電極スラリー44を固体電解質1の裏面1bまで浸透させ、かつ、当該固体電解質1の表面1aに電極スラリー43を被覆し、これを焼成して固体電解質1の表裏両面に電極3,4を得る。
【0086】
この製造方向についてさらに説明する。支持体40は多孔質として形成されたものであり、前記のとおり例えば酸化アルミニウムとできる。そして、この支持体40の一面40a上にマスキングを施す理由は、支持体40の平均孔径を大きくした場合(例えば、平均孔径30μmとした場合)、この一面40a上に電解質スラリー41を直接塗布すると、電解質スラリー41が支持体40の中へ入り込んでしまう(浸透してしまう)からである。しかし、前記マスキングを施すことでこれを防止できる。なお、支持体40の平均孔径が小さい場合(例えば3μm以下の場合)、このマスキングは不要である。
固体電解質1を構成するために電解質スラリー41は、電解質粉末(電解質粒子)に、造孔材としての微小溶融材料(ペレット)及びバインダを加え、溶剤により粘度調整を行ったものである。また、電極3,4を構成するための電極スラリー43,44は、電極を構成する金属粉末(銀粒子)、例えば銀粉末に、造孔材としての微小溶融材料(ペレット)及びバインダを加え、溶剤により粘度調整を行ったものである。なお、電極3,4に固体電解質1と同じ素材を含ませるためには、電極スラリー43,44に、電解質粉末(電解質粒子)を加えればよい。
【0087】
支持体40の一面40a側に電解質スラリー41を被覆し、焼成して支持体40上に固体電解質1を得る。ジルコニア系電解質の場合、焼成温度を1300℃〜1400℃としている。これにより、支持体40の上に多孔質の固体電解質1を得ることができる。なお、多孔質である支持体40の製造方法についても、支持体40を構成する金属粉末に、微小溶融材料(ペレット)及びバインダを加え、溶剤により粘度調整を行ったものを焼成することで得られる。
【0088】
そして、多孔質である支持体40の他面40b側に、第2電極4を構成するための電極スラリー44を塗布して、当該電極スラリー44を固体電解質1の裏面1bまで浸透させる。また、固体電解質1の表面1aに第1電極3を構成するための電極スラリー43を被覆する。そして、これを焼成して固体電解質1の表裏両面に電極3,4を得る。電極3,4を銀とした場合、焼成温度を800℃〜900℃としている。この製造方法は、先に固体電解質1を焼成してから、第1、第2電極3,4を焼成する製造方法であるため、第1、第2電極3,4の材料の融点が固体電解質1の焼成温度よりも低い場合に効果的である。つまり、固体電解質1の焼成温度が1400℃であるのに対して、銀からなる第1、第2電極3,4の融点が930℃である場合において、1400℃で固体電解質1と電極3,4とを同時に焼成すると、電極3,4を構成する銀が凝集してしまう。しかし、この製造方法によれば銀が凝集することを防止できる。そして、多孔質で一体状の浄化構造体30を得ることができる。
【0089】
また、この浄化構造体30の第2電極4側に吸着材5としてバリウムを設けるためには、第2電極4のための電極スラリー44に、バリウム(酸化バリウム)を含ませればよい。また、支持体40を有していない浄化構造体30において、第2電極4側に吸着材としてバリウムを設けるためには、焼成した多孔質である第2電極4に、酢酸バリウム水溶液をスプレーや刷毛により塗布し、浸透させればよい。
【0090】
以上の各実施の形態の浄化装置によれば、排出ガス中のディーゼル微粒子にはハイドロカーボン(HC)も含まれており、このハイドロカーボンは固体電解質1による酸素の供給により水と二酸化炭素に酸化(CmHn+(m+n/4)O2→mCO2+n/2H2O)させることができる。
さらに、この発明における浄化装置、浄化方法及び浄化システムは、ディーゼル機関から排出される排出ガスの浄化に留まらず化学合成や燃焼システム等広範囲にわたって適用することができる。また、この発明は図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良く、固体電解質1をパネル形状とする以外にも設置する部位に応じて円筒形状や波型等とすることができる。
【0091】
そして、図1〜図4、図10、及び図18に示す浄化装置はこれ単独により機能させることはもちろん、従来知られている窒素酸化物の浄化装置や、微粒子浄化装置に追加的に付与することもできる。つまり、この発明の浄化システムは構造が簡単で装置をコンパクトにすることができるため、従来の装置ではディーゼル微粒子の酸化が不十分である場合に補助酸化システムとして付加することができる。
さらに、図1〜図4に示した前記浄化装置において、コロナ放電等による電気集塵機となる前記帯電装置を設け、排出ガス中に含まれるディーゼル微粒子を固体電解質1の堆積面12に効率よく堆積させるようしてもよい。
【0092】
以上の浄化装置、浄化方法、及び、排出ガス浄化システムのそれぞれは、ディーゼルエンジンから排出された排出ガスを浄化するものとして説明したが、排出ガスはディーゼルエンジンから排出されたものに限らず、ガソリン機関(直噴式ガソリン機関)、ボイラーや工業炉から排出されたものについても、この発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】この発明の実施の一形態に係る浄化装置を示すモデル図である。
【図2】浄化装置の他の実施の形態を示すモデル図である。
【図3】浄化装置の別の実施の形態を示すモデル図である。
【図4】印加手段が有する印加電圧の極性を反転させる切り換え手段の作用を説明するモデル図である。
【図5】この発明の実施の一形態に係る排出ガス浄化システムの概略を示す模式図である。
【図6】排出ガス浄化装置の要部構成図である。
【図7】排出ガス浄化装置の変形例を示す要部構成図である。
【図8】この発明の他の実施の形態に係る排出ガス浄化システムの概略を示す模式図である。
【図9】図8の浄化システムが有する排出ガス浄化装置を示す要部構成図である。
【図10】浄化装置のさらに別の実施の形態を示すモデル図である。
【図11】窒素酸化物の還元のメカニズムを説明する説明図である。
【図12】窒素酸化物の還元の他のメカニズムを説明する説明図である。
【図13】排出ガス浄化システムの他の実施形態の概略を示す模式図である。
【図14】図13の浄化システムが有する排出ガス浄化装置を示す要部構成図である。
【図15】固形炭素質微粒子の減少率と浄化時間との関係を示すグラフである。
【図16】固形炭素質微粒子の減少率と浄化構造体に流す電流との関係を示すグラフである。
【図17】窒素酸化物の減少率と浄化構造体に流す電流との関係を示すグラフである。
【図18】支持体を備えた浄化構造体の説明図である。
【図19】支持体を備えた浄化構造体の製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1 固体電解質
2 印加手段
3 第1電極
4 第2電極
5 吸着材
7 排気流路
8 排出ガス浄化装置
10 一面
11 他面
16 排出ガス浄化室
30 浄化構造体
31 制御手段
40 支持体
40a 一面
40b 他面
40c 取付部
40d 本体部
41 電解質スラリー
43 電極スラリー
44 電極スラリー
47 固定壁
A 大気側
G 排出ガス側
M 固形炭素質微粒子
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼器から排出される未燃焼微粒子(ディーゼル微粒子)や窒素酸化物の浄化を行う浄化装置、浄化方法、ディーゼル微粒子及び窒素酸化物を含む排出ガスを浄化する排出ガス浄化システム、及び浄化構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、国民の生活や企業活動を支えている物流の主役は、トラックによる輸送とされており、トラックは経済活動にとって不可欠なものとなっている。トラックの動力となるディーゼルエンジンは他の熱機関に比べて熱効率が高く、省エネルギーや地球温暖化に有効である。しかしディーゼルエンジンは窒素酸化物(NOx)や微粒子状物質(PM)といった大気汚染物質を大量に排出しており、環境問題においてトラックが少なからず影響を与えている。そこで、環境負荷の小さいディーゼルエンジン及びその周辺機器を普及させ、経済活動を維持し、さらに発展させていく取り組みが必要とされている。
【0003】
現在、ディーゼルエンジンから排出されるNOxやPMを浄化する浄化方法として知られるものに、フィルターを用いるPM浄化方法や触媒によるNOx浄化方法がある。
また、固体電解質を用いた排出ガス浄化システムとして、固体電解質の両面に触媒を含む電極を積層し、その固体電解質のカソード側に窒素酸化物を含む燃焼ガスを供給し、窒素酸化物の分解過程で生じる活性酸素を、固体電解質を通して強制的に排除することにより、窒素酸化物の分解除去を可能とする方法がある(例えば特許文献1)。しかし、これはPMを浄化するものではない。
【0004】
【特許文献1】特開平9−299748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のPM浄化方法はフィルターに堆積した微粒子をいかにして除去し、再生させるかが課題である。連続再生型システムの1つである連続再生式トラップは排出ガス中のNOをNO2に酸化させ、このNO2によりフィルターに捕集した微粒子を酸化させるものがある。しかし、排出ガス温度が250℃に達しない場合は微粒子の酸化が起こらないほか、別途NOの浄化装置が必要となる。また、DPNR(Diesel Particulate‐NOx Reduction system)は多孔質セラミックフィルターにNOx吸蔵還元触媒を担持させたものであり、NOx吸蔵時に生成する酸素ラジカルによりPMを酸化させ、定期的かつ瞬間的に燃料噴射量を増加させ、その際に排出されるCO、HCにより吸着させたNOxを還元する方法がある。しかし、この方法は繊細かつ正確な燃料噴射制御が求められ、耐久性悪化、コスト高、燃費の悪化等の問題点を有している。
さらに、今後制定されるディーゼルエンジンの排出ガス基準を満たすためには、従来知られている浄化方法では不十分である。
【0006】
この発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、排出ガスの浄化が可能であり、効率良く浄化が行われる浄化装置、浄化方法、排出ガス浄化システムを提供し、さらに、この浄化装置及び排出ガス浄化システムに利用する浄化構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するためのこの発明の浄化装置は、酸素イオン導電性を有する固体電解質と、この固体電解質のうち、燃焼器から排出される未燃焼微粒子を堆積させる一面側がアノード側となるよう当該固体電解質の両面間に電圧を印加させる印加手段とを備えたことを特徴としている。
このような構成の浄化装置によれば、印加手段により固体電解質の両面間に電圧を印加することで、酸素イオンをカソード側からアノード側へ固体電解質を通して供給することができる。そして、アノード側に堆積させた微粒子中の固形炭素質微粒子を酸化させて炭素酸化物とすることができる。例えば、固体電解質のカソード側の面を大気側(大気開放側)とし、アノード側の固体電解質の面を、微粒子を含む排出ガス側とすることにより排出ガスの浄化を行うことができる。なお、燃焼器から排出される未燃焼微粒子は、例えば、ディーゼル機関、ガソリン機関(直噴式のガソリン機関)、ボイラーや工業炉から排出されるものがある。
【0008】
また、この発明の浄化装置は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側とにそれぞれ設けられた第1電極と第2電極とを有する浄化構造体を備え、この浄化構造体は、燃焼器から排出される未燃焼微粒子を含む排出ガスを前記第1電極側から前記第2電極側へ通すことによって当該微粒子を当該第1電極側に捕集することができる多孔質であり、前記第1電極側は、捕集した前記微粒子を、前記固体電解質によって当該第1電極側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部であることを特徴としている。
この構成によれば、浄化構造体が多孔質であるため、未燃焼微粒子を含む排出ガスをこの浄化構造体に通すことによって、当該微粒子を第1電極側に捕集することができる(フィルタリングすることができる)。そして、第1電極側において、捕集した前記微粒子中の固形炭素質微粒子を、固体電解質によって与えられた酸素イオンにより酸化させて炭素酸化物とすることができる。
【0009】
前記浄化装置において、前記第1電極と第2電極との内の少なくとも一方は前記固体電解質と同じ素材を含んでいるのが好ましい。これによれば、分解反応は電極と固体電解質との界面で生じるため、電極材料に固体電解質材料を混合させることで反応活性点を増やすことができ、排出ガス中の成分の分解を促進できる。
【0010】
さらに、前記第1電極は銀を含んでいるのが好ましい。これによれば、銀は酸素吸着能を有するため、第1電極において固形炭素質微粒子を酸化させる(分解する)活性点が多数存在することとなる。これにより、固形炭素質微粒子の酸化に、酸素イオンを効率よく用いることができ、高い分解率を得ることができる。
【0011】
また、前記浄化装置において、前記浄化構造体は、当該浄化構造体の機械的強度を高めるための支持体を更に有しているのが好ましい。
これによれば、支持体により浄化構造体の機械的強度を高めることができるため、浄化構造体を構成する他の部材である電極や固体電解質の厚さを薄くできる。すなわち、浄化構造体の機械的強度を高めるために電極や固体電解質を厚くする必要がない。このため、排出ガスが電極や固体電解質を透過する際の抵抗を低減でき、また、固体電解質を薄くすることから、小さい印加電圧により酸素イオンを導電することができる。
【0012】
また、この浄化装置において、前記支持体は、前記第1電極又は前記第2電極と積層した状態で設けられており、前記支持体は、前記排出ガスを通すことができる網構造又は多孔質構造であるのが好ましい。
これにより、浄化構造体に支持体を一体として含めることができ、浄化構造体の機械的強度が高まる。そして、支持体は網構造又は多孔質構造であるため、排出ガスを透過させることができ、支持体の存在によって排出ガス中の固形炭素質微粒子と窒素酸化物との同時浄化を妨げることがない。
【0013】
さらにこの発明の浄化方法は、酸素イオン導電性を有する固体電解質の両面間に電圧を印加させ、カソード側からアノード側へ酸素イオンを供給し、この酸素イオンにより前記固体電解質のアノード側に存在するディーゼル微粒子を酸化させることを特徴としている。この浄化方法によれば、固体電解質の両面間に電圧を印加させることにより、アノード側に堆積するディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子を酸化させて炭素酸化物とすることができる。例えば、固体電解質のカソード側の面を大気側(大気開放側)とし、アノード側の固体電解質の面を、ディーゼル微粒子を含む排出ガス側とすることにより排出ガスの浄化を行うことができる。
【0014】
また、この発明の浄化方法は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る多孔質からなる固体電解質の当該一面側から他面側へ未燃焼微粒子を含む排出ガスを通すことにより、当該微粒子を当該一面側に捕集し、捕集したこの微粒子を、前記固体電解質によって前記一面側に与えられた前記酸素イオンにより酸化させることを特徴としている。
この方法によれば、未燃焼微粒子を含む排出ガスを、多孔質である固体電解質に通すことによって、当該微粒子をその一面側に捕集することができる。そして、捕集した微粒子中の固形炭素質微粒子を一面側において酸化させて炭素酸化物とすることができる。
【0015】
また、この発明の排出ガス浄化システムは、燃焼器から排出される未燃焼微粒子及び窒素酸化物を含む排出ガスを通過させる排気流路と、この排気流路の一部に設けられている排出ガス浄化装置と、を備えた排出ガス浄化システムであって、前記排出ガス浄化装置は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、を有する浄化構造体を備え、この浄化構造体は、前記排気流路からの排出ガスを前記第1電極側から前記第2電極側へ通すことによって前記微粒子を当該第1電極側に捕集することができる多孔質であり、前記第1電極側は、捕集された当該微粒子を、前記固体電解質によって当該第1電極側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部であり、かつ、前記第2電極側は、前記浄化構造体を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元する還元部であることを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、排気流路を流れる排出ガス中に含まれる未燃焼微粒子と窒素酸化物との両者をそれぞれ浄化構造体の一面側と他面側とにおいて同時に浄化することができ、これらの低減が可能となる。排出ガス浄化装置に流れてくる排出ガスを、多孔質からなる浄化構造体を通すことで、未燃焼微粒子を浄化構造体の第1電極側において自動的に捕集することができる。つまり、流れてくる排出ガスを浄化構造体においてフィルタリングすることで未燃焼微粒子を捕集できるため、当該微粒子を捕集するための別のエネルギー源を不要とできる。そして、浄化構造体の第1電極側において、捕集した未燃焼微粒子中に含まれる固形炭素質微粒子を酸化させ二酸化炭素とすることができる。さらに、第2電極側において、浄化構造体を透過した排出ガス中に含まれる窒素酸化物を窒素ガスに還元できる。
【0017】
また、この発明の浄化構造体の製造方法は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、機械的強度を高めるための多孔質からなる支持体と、を有する浄化構造体の製造方法であって、前記支持体の一面側に電解質スラリーを被覆し、これを焼成して前記支持体上に固体電解質を得て、多孔質である前記支持体の他面側から電極スラリーを前記固体電解質の裏面まで浸透させ、かつ、当該固体電解質の表面に電極スラリーを被覆し、これを焼成して前記固体電解質の両面に電極を得る。
これによれば、先に固体電解質を焼成してから、電極を焼成する製造方法であるため、電極の材料の融点が固体電解質の焼成温度よりも低い場合に効果的である。つまり、固体電解質を焼成するための高い温度で、当該固体電解質と電極とを同時に焼成すると、電極を構成する金属が凝集してしまうおそれがあるが、この製造方法によればこれを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のようにこの発明によれば、微小なエネルギーの注入により効率的にディーゼル微粒子の酸化、窒素酸化物の還元、これら同時の処理を行うことが可能であり、高いレベルでの排出ガスの浄化を達成できる。従って、この浄化装置、浄化方法、排出ガス浄化システムをディーゼル機関の排出ガスの浄化に適用すれば、ディーゼル機関の高い熱効率を維持させたまま排気の浄化が可能となり、環境保護に役立つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳述する。
図1はこの発明の実施の一形態に係る浄化装置を示すモデル図である。この浄化装置は、例えば排出ガスに含まれるディーゼル微粒子を浄化するためのものであり、ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子(微粒子状物質:Particulate Matter)Mを浄化することができる。具体的には、固形炭素質微粒子Mに含まれる炭素を酸化させて浄化を行う装置である。さらにこの装置は、このディーゼル微粒子中の炭化水素質微粒子の処理も行える。図1に示している装置は、酸素イオン導電性を有する固体電解質1と、この固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2とを備えている。
【0020】
図1に示す固体電解質1はパネル状であり、その一面10に第1電極3を積層させ、その他面11に第2電極4を積層させている。固体電解質1は例えば燃料電池に用いられているものが適用でき、固体電解質1の両端側に電位差を与えることで酸素イオンを移動させることができる。また、第1電極3、第2電極4は通常電極として用いられる材質が利用され、板状としているが、第1電極3および第2の電極4のいずれも気体(酸素)の透過性を有するよう多孔質電極としている。
【0021】
印加手段2は通常用いられている直流電源とすることができ、電圧を可変とするものが好ましい。印加手段2は、固体電解質1の一面10側に設けた第1電極3がアノードとなり、他面11側に設けた第2電極4がカソードとなるよう固体電解質1の両面間に電圧を印加させる。印加手段2により印加される電圧は固体電解質1の電気特性、及び雰囲気温度により設定される。例えばイットリウム安定化ジルコニアの場合、雰囲気温度350℃のもと10ボルト以下である。
【0022】
この浄化装置は例えばディーゼル機関から排出される排出ガスを流すための排気流路(図示せず)に設けることができ、固体電解質1の一面10側がこの排気流路内に面するよう設けられ、この一面10側が排出ガス側Gとなる。そして、固体電解質1の他面11側が大気側(大気開放側)Aに面するよう固体電解質1は設けられる。固体電解質1のアノード側となる一面10側にはディーゼル微粒子を堆積させる堆積面12が形成されており、図1においては第1電極3の外面が堆積面12となる。なお、第1電極3の外面とは固体電解質1との接面の反対側の面である。
【0023】
そして、この浄化装置による浄化方法は、固体電解質1の一面10側の堆積面12にディーゼル微粒子を堆積させ、印加手段2により所定の電圧を固体電解質1の両面間に印加させることにより、カソード側からアノード側へ酸素イオンを供給させる。そして、この酸素イオンによりアノード側の堆積面12に存在するディーゼル微粒子を酸化させることにより行われる。つまり、カソード側である大気側Aに含まれる酸素をアノード側である排出ガス側Gへ酸素イオンとして供給する。これにより、ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mに含まれる炭素が一酸化炭素、二酸化炭素に連続的に酸化(C+O2→CO2、2C+O2→2CO)され、固形炭素質微粒子Mが浄化(分解)される。なお、固体電解質1中の矢印は酸素イオンの移動方向を示している。
【0024】
以上のように、酸素イオン導電性を有する固体電解質1と、この固体電解質1のうちディーゼル微粒子が堆積される一面側がアノード側となるよう当該固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2とを備えた浄化装置によれば、固体電解質1の両面間に印加手段2により電圧を印加させることで、酸素イオンをカソード側からアノード側へ固体電解質1を通して供給させることができ、アノード側に堆積させたディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化させて炭素酸化物とすることができる。例えば、固体電解質1のカソード側の面を大気側(大気開放側)とし、アノード側の固体電解質1の面を、ディーゼル微粒子を含む排出ガス側とすることにより排出ガスの浄化を行うことができる。
【0025】
図2に示す浄化装置は、図1の浄化装置の第1電極3を省略したものであり、その他の構成は同様である。つまり、固体電解質1の他面11側にのみカソード側とされる電極4が設けられている。この浄化装置はディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mが導電性を有することを利用したものであり、固体電解質1の一面10を直接、ディーゼル微粒子に含まれる固形炭素質微粒子Mの堆積面12としたものである。そして、一定量のディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)が固体電解質1の一面10に堆積し印加手段2により通電が開始されることにより、大気側Aのカソード側から排出ガス側Gのアノード側へ酸素イオンの供給が行われる。
【0026】
つまり、この浄化装置は、印加手段2と接続されるリード線13が固体電解質1の一面10側に接続されている。そして、固体電解質1の一面10側にディーゼル微粒子が堆積し、堆積したディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mとリード線13とが接触すると、印加手段2により電圧の印加が開始されて、固形炭素質微粒子M自体をアノードとし、通電がされる。これにより固体電解質1の両面間に所定の電位差を生じさせ酸素イオンの供給が行われる。つまり、一定量のディーゼル微粒子が堆積面12に堆積すると、その浄化が自動的に開始される。そして、前記リード線13は固体電解質1の一面10側にリング状や網目状等に設けられている。これにより固体電解質1の一面10側の堆積面12に部分的に堆積したディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mが、このリード線13に接触すると、浄化される。
【0027】
このように、固体電解質1の他面側にカソード側とされる電極が設けられ、固体電解質1の一面側にディーゼル微粒子が堆積すると当該ディーゼル微粒子に印加手段2により通電がされて当該ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子M自体をアノードとさせる構成とすることにより、固体電解質1の一面側に一定量のディーゼル微粒子が堆積すると、ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mは導電性を有するため、通電が開始されてカソード側から酸素イオンの供給が開始される。これにより、固体電解質1の一面側の固形炭素質微粒子Mを含むディーゼル微粒子の浄化が自動的に開始される。従って、固体電解質1のアノード側とされる面に電極を不要とできコストダウンが可能となる。さらに、ディーゼル微粒子が一定量堆積した状態となって浄化が必要な際に自動的に通電がされるためランニングコストの低減が図れる。
【0028】
図3に示す浄化装置は、図1(図2)に示した浄化装置によるディーゼル微粒子の処理と、酸化触媒を用いた窒素酸化物の処理とを同時に連続して行うものである。処理する窒素酸化物はディーゼル微粒子と共に排出ガスに含まれている。この浄化装置は、図1に示す浄化装置の固体電解質1の一面10側に吸着材5と酸化触媒6とを設けたものである。つまり、この装置は、酸素イオン導電性を有する固体電解質1と、固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2と、固体電解質1の一面10側に設けられて窒素酸化物を吸着させる吸着材5と、固体電解質1の一面10側に設けられる酸化触媒6とを備えている。
【0029】
固体電解質1は図1に示すものと同様であり、印加手段2は、固体電解質1のうちディーゼル微粒子が堆積される一面10側がアノード側となるよう電圧を印加させるものである。この装置においては、固体電解質1の一面10側に設けられる第1電極3を、酸化触媒6を含む多孔質電極により構成するのがよい。例えば第1電極3を多孔質とした白金や銀とすることができる。つまり、第1電極3を酸化触媒6として併用している。そして、図3において、この第1電極3(酸化触媒6)の上に網状に窒素化合物の吸着材5を積層させている。なお、吸着材5としてはアルカリ土類金属やアルカリ金属とでき、例えばバリウムを含むものとできる。図3に示す吸着材5は層状に形成されている。
【0030】
図3に示すこの浄化装置による浄化方法は次のとおりである。まず、図1(図2)と同様に、固体電解質1の両面間に印加手段2により電圧を印加させ、カソード側からアノード側へ酸素イオンを供給する。そして、この酸化イオンにより、固体電解質1のアノード側の堆積面12に存在するディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化(2C+O2→2CO)させて一酸化炭素を含む炭素酸化物とする(矢印a)。この固形炭素質微粒子Mを有するディーゼル微粒子は排出ガス中に含まれるものであり、固体電解質1の一面10側の堆積面12に堆積されている。なお、この堆積面12は酸化触媒6を有する第1電極3の外面及び吸着材5の外面となる。
【0031】
そして、ディーゼル微粒子と共に排出ガス中に含まれる一酸化窒素を固体電解質1のアノード側において酸化触媒6により酸化(NO+O2→NO2+O*)させて二酸化窒素とする(矢印b‐1と矢印b‐2)。この酸化の際に利用される酸素は主に排出ガス中に含まれる酸素である。そして、この二酸化窒素を吸着材5に吸着させる。さらに、吸着した二酸化窒素を、固形炭素質微粒子Mを酸化させて得た一酸化炭素によって還元(2NO2+4CO→N2+4CO2)し、二酸化窒素を窒素としかつ一酸化炭素を二酸化炭素とする(矢印c)。以上のように、排出ガス中に含まれるディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)と窒素酸化物(一酸化窒素)が窒素と二酸化炭素とに連続的に浄化される。
【0032】
また、ディーゼル微粒子の堆積面12に存在する酸化触媒6によりディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mの酸化が促進される。また、一酸化窒素が二酸化窒素へ酸化(NO+O2→NO2+O*)する際に(矢印b‐1)生成される活性酸素(O*)により固形炭素質微粒子Mの酸化が促進される。
【0033】
このように、酸素イオン導電性を有する固体電解質1と、この固体電解質1のうちディーゼル微粒子が堆積される一面側がアノード側となるよう固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2と、固体電解質1の一面側に設けられて窒素酸化物を吸着させる吸着材5と、固体電解質1の一面側に設けられた酸化触媒6とを備えた構成によれば、固体電解質1の両面間に印加手段2により電圧を印加することにより、酸素イオンをカソード側からアノード側へ固体電解質1を通して供給させることができ、アノード側に堆積させたディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化させ、一酸化炭素を含む炭素酸化物とすることができる。さらに、酸化触媒6により排出ガスに含まれる一酸化窒素を酸化させて二酸化窒素とすることができ、さらに、この二酸化窒素を吸着材5に吸着させることができる。そして、吸着材5に吸着した二酸化窒素を、前記ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化させて得た一酸化炭素により還元して窒素ガスとし、その一酸化炭素を二酸化炭素とすることができる。従って、ディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mと窒素酸化物との両者を同時に浄化させることが可能となる。例えば、固体電解質1のカソード側の面を大気側(大気開放側)とし、アノード側の固体電解質1の面を、ディーゼル微粒子を含む排出ガス側とすることにより排出ガスの浄化を行うことができる。
【0034】
さらに、この浄化装置の印加手段2は、印加電圧の極性を周期的に反転させる切り換え手段を有している。つまり、アノード側であった第1電極3をカソード側とし、カソード側であった第2電極4をアノード側に切り換え、この切り換えを連続して行わせている。図4は第1電極3がカソード側とされ第2電極4がアノード側とされた状態であり、これにより、排出ガス側Gである固体電解質1の一面10側で発生した活性酸素(O*)を強制的に大気側Aである固体電解質1の他面11側へ戻すよう作用させる。
【0035】
これは、活性酸素により窒素、一酸化窒素が再合成(N2+2O*→2NO、NO+O*→NO2)されるのを抑制するためであり、これによりディーゼル微粒子と一酸化窒素の同時浄化をバランスよく行わせることができる。つまり、吸着材5に吸着させた二酸化窒素を還元して窒素に生成したにもかかわらず、この窒素を再度活性酸素により酸化させて窒素酸化物となることを抑制している。この印加手段2が有する切り換え手段は電気的な手段により構成させることができ、排出ガス側Gの活性酸素量に応じてその周波数及び切り換え時間を変更可能とさせることができる。
【0036】
このように、印加手段1が、印加電圧の極性を周期的に反転させる切り換え手段を有している構成によれば、極性を反転させて固体電解質1の他面側(大気側)をアノード側とすることにより、排出ガスに含まれる一酸化窒素を吸着材5に吸着させる際に生ずる活性酸素のうち過剰な活性酸素をカソード側へ移動させることができる。これにより、浄化を意図する側となる固体電解質1の一面側において、吸着材5に吸着させた二酸化窒素を還元して得た前記窒素ガスを、再度活性酸素により窒素酸化物となることを抑えることが可能となる。
【0037】
次に、図5はディーゼル機関からの排出ガスの浄化を行う浄化システムを示す模式図であり、この排出ガスにはディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)及び窒素酸化物(一酸化窒素)が含まれる。この浄化システムは、ディーゼル機関(ディーゼルエンジン)15の排気口と接続されて排出ガスを排出させる排気流路7と、この排気流路7の一部に設けられる排出ガス浄化装置8とを備えている。また図5に示す排気流路7は排気管により構成されており、この排気管の途中に排出ガス浄化装置8が有する排出ガス浄化室16が設けられている。そして、この排出ガス浄化室16の内部に複数の固体電解質1が設けられている。固体電解質1は図3に示すものと同様である。
【0038】
排出ガス浄化装置8は制御装置17と接続され、制御装置17は印加手段2及び印加手段2の印加電圧の極性を周期的に反転させる前記切り換え手段が設けられており、浄化装置8の動作を制御している。さらに浄化装置8は帯電装置18を有しており、帯電装置18は排出ガス中に含まれるディーゼル微粒子を帯電させ、ディーゼル微粒子を固体電解質1の堆積面12(図3参照)に堆積させる。
【0039】
この排出ガス浄化装置8は、複数の固体電解質1を備えており、各固体電解質1において、図3に示す浄化装置と同様に、固定電解質1の一面10側に設けられて窒素酸化物を吸着させる吸着材5と、固体電解質1の一面10側に設けられた酸化触媒6と、固体電解質1の両面間に電圧を印加させる印加手段2とを備えている。なお、印加手段2は複数の固体電解質1に対して共通化させている。各固体電解質1は酸素イオン導電性を有しており、一面10側が排気流路7からの排出ガスと接触するよう設けられかつ他面11側が大気中の酸素と接触するよう設けられる。印加手段2は、固体電解質1の一面10側に設けた第1電極3をアノード側としてかつ他面11側に設けた第2電極4をカソード側とするように固体電解質1の両面間に電圧を印加させている。なお、排出ガス浄化装置8が有する固体電解質1、吸着材5、酸化触媒6、印加手段2は図1〜図4により説明したものと同様であり、例えば、印加手段2は印加電圧の極性を周期的に反転させる切り換え手段を有している。
【0040】
図6は図5の浄化システムが備えている排出ガス浄化装置8の要部構成図であり、この浄化装置8は複数の固体電解質1を有する。図5と図6において、排気流路7に接続させた排出ガス浄化室16内に、複数枚(図6では7枚)の平板パネル状の固体電解質1が相互隙間を持って対面状となるよう重ねられて配設されている。なお、固体電解質1は交互に裏返されて積層状となり、隣り合う固体電解質1,1の一面10,10同士又は他面11,11同士が対面するよう配設される。そして、各隙間には棒状のスペーサ部材19が設けられており、これら複数枚の固体電解質1により固体電解質層20が形成されている。この固体電解質層20が排出ガス浄化室16内に設けられている。
【0041】
そして複数枚の固体電解質20の各隙間でかつスペーサ部材19,19間に排出ガス用流路21又は空気用流路22が形成される。つまり、固体電解質層20の積層方向の一方側(図6の下部)から順に、排出ガス用流路21と、空気用流路22とが交互に形成される。なお、隣り合う固体電解質1,1の一面10,10間が排出ガス用流路21となり、隣り合う固体電解質1,1の他面11,11間が空気用流路22となる。
また、排出ガス用流路21を構成する隙間のスペーサ部材19の向きと、空気用流路22を構成する隙間のスペーサ部材19の向きとを、同方向としたり(図示せず)又は所定の角度で向きを変えたりすることができる。図6においては、空気用流路22を構成する隙間のスペーサ部材19が排出ガス用流路21のスペーサ部材19に対して90°向きを変えて設けられている。これにより、排出ガスの流れ方向(矢印g方向)に貫通する排出ガス用流路21と、排出ガスの流れ方向に直交する方向(矢印a方向)に貫通する空気用流路22とが交互に形成される。そして、排気流路7から流れてきた排出ガスはそのまま直線的に排出ガス用流路21に送られ、空気用流路22を排出ガス浄化室16の外部の大気側Aと連通させ、空気が空気用流路22に送られる。これにより、排出ガス用流路21を排出ガスが通過することにより、排出ガス中に含まれるディーゼル微粒子が排出ガス用流路21に面する固体電解質1の一面10側の堆積面12に堆積されて酸化され、かつ排出ガス中の窒素酸化物が還元される。
【0042】
図7は排出ガス浄化装置8の変形例であり、排気流路7内を流れてきた排出ガスの流れ方向(矢印g方向)に貫通する断面矩形の筒状の排出ガス浄化室16内に、筒状とした固体電解質1が複数設けられている。固体電解質1は大気側Aとなる他面11側が内側面となるよう筒状として構成され、筒状とされた固体電解質1の外周面が排出ガス側Gとする一面10側となり、かつ、堆積面12となる。そして、筒状の固体電解質1の軸方向が排出ガスの流れ方向(矢印g方向)に直交する方向(矢印a方向)とされており、これら固体電解質1は相互隙間を有するよう排出ガス浄化室16内に設けられている。
これにより、筒状の固体電解質1の内部が大気側Aと連通し、筒状の固体電解質1の内部に空気が通過可能となる。そして、排気流路7から流れてきた排出ガスが筒状の固体電解質1,1間の隙間を流れ、この隙間を通過する排出ガスに含まれるディーゼル微粒子が、筒状の固体電解質1の外周面側の堆積面12に堆積されて酸化され、かつ排出ガス中の窒素酸化物が還元される。
【0043】
図6と図7に示す排出ガス浄化装置8において、排出ガス浄化室16内に導入された排出ガス中のディーゼル微粒子を帯電装置18(図5参照)により帯電させ、固体電解質1の堆積面12にディーゼル微粒子を積極的に捕集させている。つまり、排出ガスが排出ガス浄化装置8に流入する上流部に帯電電極を設け、固体電解質1の堆積面12側の電極3(図3参照)をグランドレベルとさせることにより電界が形成されてディーゼル微粒子を帯電させ、帯電させたディーゼル微粒子を効率よく固体電解質1の堆積面12に集塵させている。
【0044】
また、図7に示す排出ガス浄化装置8は、筒状の固体電解質1の堆積面12となる外周面が排出ガスを部分的に遮断するよう配設されているため、外周面に排出ガスが直接的に吹き付けられ、排出ガス中のディーゼル微粒子はその慣性力により固体電解質1の外周面に効率よく捕集される。さらに、排出ガス浄化室16内に排出ガスを浄化可能とする固体電解質1しか存在しないため、ディーゼル微粒子が他の部分に堆積して流路を塞ぐおそれがなく、排出ガス中のディーゼル微粒子の濃度が高い場合に効果的である。
【0045】
図8と図9は排出ガス浄化装置8のさらに別の変形例であり、この浄化装置8の固体電解質1は断面U字形に成形され、固体電解質1は開口部から奥部へ伸びる側壁23と奥部の突き当たり状の奥壁24とから構成されている。そして、側壁23が排気流路7から流れてきた排出ガスの流れ方向(矢印g方向)と平行となる向きとなり、奥壁24が排出ガスの流れ方向に直交する面を有するよう、複数の固体電解質1が排出ガス浄化室16内に設けられている。そして、断面U字形とされた固体電解質1はその内側面が図3に示した一面10側の堆積面12であり、固体電解質1の外側面が大気側Aとなる。なお、断面U字形の固体電解質1は周状の側壁23と奥壁24とを有する有底円筒状に形成したものとできる。さらに、断面U字形とした固体電解質1は隣り合う固体電解質1と連結壁部材25により連結されており、連結させた固体電解質1により、排出ガス浄化室16を、排出ガス側Gの空間と大気側Aの空間とに区画している。
【0046】
さらに、断面U字形とした固体電解質1の内側にパイプ状の排気導管26を固体電解質1の内側面と隙間をもって挿入し、排気流路7から流れてきた排出ガスは排気導管26により固体電解質1の奥壁24側へ誘導される。誘導された排出ガスは固体電解質1の奥壁24に衝突し、その後、排気導管26の外周面と固体電解質1の側壁23内面との間を流れ、固体電解質1により浄化された排出ガスは排出ガス浄化室16の外部へと排出される。なお、連結させた複数の固体電解質1により区画した排出ガス浄化室16の大気側Aの部分に、空気の吸入口27及びその排出口28が設けられている。
【0047】
さらにこの排出ガス浄化装置8においても図8に示すように、帯電装置18によりディーゼル微粒子を帯電させ、固体電解質1の堆積面12にディーゼル微粒子を捕集させている。この場合前記排気導管26を帯電電極とし、固体電解質1の堆積面12側の電極3(図3参照)をグランドレベルとすることにより、排気導管26の外周面と固体電解質1の内側面との間に電解を形成する。そして、この間を排出ガスが通過する際に、排出ガス中のディーゼル微粒子が帯電され、帯電したディーゼル微粒子は固体電解質1の堆積面12に効率よく集塵される。そして、堆積面12に堆積したディーゼル微粒子が浄化される。
【0048】
図9に示す排出ガス浄化装置8による浄化方法について説明すると、排気流路7から流れてきた排出ガスはまず排気導管26内を流れる。排気導管26を通過した排出ガス中のディーゼル微粒子はその慣性力により固体電解質1の奥壁24における堆積面12に捕捉される。排出ガスはさらに排出導管26と固体電解質1との間を流れ、これらの間において帯電装置18により帯電したディーゼル微粒子は、帯電装置18により形成された電界により、固体電解質1の側壁23における堆積面12に捕集される。つまり、この排出ガス浄化装置8は、排出ガスの慣性力による固体電解質1の奥壁24における慣性捕集作用と、帯電装置18による電気捕集作用とを有している。そして、粒子径の大きなディーゼル微粒子は慣性捕集が効果的であり、粒子径が小さいものに対しては電気捕集が効果的となり、この2つの作用により様々な粒子径のディーゼル微粒子を効率よく捕集することができる。
【0049】
次に、この発明に係る浄化装置のさらに別の実施形態について、図10により説明する。この浄化装置は図1〜図4に示した浄化装置の変形例である。
図10は浄化装置を示すモデル図であり、この装置においてもディーゼルエンジンから排出された排出ガスを浄化することができるものであり、排出ガスに含まれるディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子M、及び、窒素酸化物を浄化することができる。
この浄化装置は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質1と、この固体電解質1の一面10側と他面11側にそれぞれ設けられた第1電極3と第2電極4とを有する浄化構造体30を備えている。
【0050】
固体電解質1はパネル状であり、その一面10に第1電極3を積層させ、他面11に第2電極4を積層させて、浄化構造体30を構成している。固体電解質1は例えば燃料電池に用いられているものを適用でき、固体電解質1の両端側に電位差が生じることによってイオンを移動させることができる。なお、この固体電解質1は、結果として第1電極3側へ酸素イオンを与えることができるものであれば、固体電解質1中を移動するイオンは酸素イオンに限らない。
【0051】
そして、この浄化構造体30は、浄化を行う排出ガスのうちディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)を除き窒素酸化物を含むガスを透過させることができるように、多孔質としている。つまり、浄化構造体30のうちの固体電解質1が多孔質であり、かつ、第1電極3と第2の電極4が多孔質電極である。浄化構造体30を多孔質とすることにより、ディーゼル微粒子を含む排出ガスを第1電極3側から第2電極4側へ通す(矢印F)ことによって、ディーゼル微粒子を第1電極3側に捕集する(フィルタリングする)ことができる。
【0052】
そして、図1に示した浄化装置と同様に、電位差が生じている固体電解質1によって第1電極3側へ与えられた酸素イオンにより、捕集したディーゼル微粒子の固形炭素質微粒子Mを酸化させる。
また、浄化構造体30を透過した排出ガスには窒素酸化物が含まれており、この窒素酸化物は後述するが第2電極4側において還元される。つまり、この浄化構造体30において、第1電極3側が、固形炭素質微粒子Mを酸化させる酸化部となり、固体電解質1を挟んで反対側(裏面側)である第2電極4側が、浄化構造体30を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元する還元部となる。つまりこの浄化装置は、浄化構造体30の一面側において固形炭素質微粒子Mの浄化が可能であり、同時に他面側において窒素酸化物の浄化が可能となる。
この場合、固体電解質1中において酸素イオンを移動させることにより、第1電極3側である酸化部においては、未燃焼微粒子中の固形炭素質微粒子Mを酸化させて炭素酸化物とすることができると同時に、第2電極4側である還元部において、固体電解質1により酸素イオンを第2電極4側から第1電極3側へ移動させることによって、浄化構造体30を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元して窒素ガスとすることができる。このように、排出ガス中の固形炭素質微粒子Mと窒素酸化物との同時浄化(同時分解)が可能となる。
【0053】
この浄化構造体30には、このような浄化処理を行わせるために設けられている制御手段31が接続されており、制御手段31は、図1の浄化装置に示したものと同様である印加手段2を有している。さらに説明すると、制御手段31は、第1電極3側がアノード側となるよう電圧を印加させることができる前記印加手段2と、これと並列となるように抵抗器が設けられて全体として閉回路を構成することができるバイパス回路部34とを備えている。さらに、制御手段31は、印加手段2により両電極3,4間に電圧を印加させている状態と、両電極3,4間において印加を止めて前記閉回路を構成している状態とに切り換え可能とする切換制御部35とを備えている。
つまり、ディーゼルエンジンの運転条件によって排出ガスの温度が異なるが、排出ガス温度が低い場合、印加手段2により第1電極3側がアノード側となるよう両電極3,4間に電圧を印加させることで、固体電解質1中においてイオンの移動を可能とし、前記同時浄化を可能としている。
しかし、エンジンの負荷などが大きくなって排出ガス温度が高くなる場合、浄化構造体30の第1電極3側において固形炭素質微粒子Mの酸化が行われやすくなり、固体電解質1を燃料電池として動作させることができる。これにより、外部から(印加手段2により)電気エネルギーを供給することなく、固体電解質1内においてイオンの移動が可能となって前記同時浄化が行われる。つまり、排出ガス温度が高くなって固体電解質1内のイオン導電率が高い場合、前記切換制御部35が両電極3,4間をバイパス回路部34でつないだ状態として、固体電解質1を含み外部電圧を作用させていない閉回路を構成させることで、固体電解質1内においてイオンの移動を可能としている。
【0054】
そして制御手段31は、排出ガスの温度を測定する温度センサ(図示せず)と接続されており、温度センサの出力に応じて切換制御部35が切り換え動作するよう構成されている。つまり、排出ガスの温度が低い場合に両電極3,4間に電圧を印加させている状態とし、温度が高い場合に閉回路を構成している状態となるように自動的に切り換えている。これにより電力消費を抑えエネルギー効率を高めることができる。また、これら状態の切り換えは、温度センサによって排出ガスの温度を検出する手段によるもの以外であってもよく、固体電解質1が前記同時浄化を行わせることができる程度にイオン導電機能を有する燃料電池として作動できるか否かの検出によって行えばよい。
【0055】
そして、この浄化装置により行われる排出ガスの浄化方法は、多孔質からなる固体電解質1の一面10側から他面11側へディーゼル微粒子を含む排出ガスを通すことにより、ディーゼル微粒子をその一面10側に捕集させる。そして、固体電解質1の両面間に所定の電位差を生じさせることによって、一面10側に酸素イオンを与えるように、固体電解質1の他面11側から一面10側へイオンを移動させ、一面10側において捕集したディーゼル微粒子を、このイオンにより酸化させる。図10においては、固体電解質1の他面11側に存在する酸素あるいは窒素酸化物中の酸素原子を、酸素イオンとして固体電解質1内で移動させ、この酸素イオンを一面10側である第1電極3側に供給している。これにより、捕集したディーゼル微粒子中の固形炭素質微粒子Mに含まれる炭素が二酸化炭素に連続的に酸化(C+O2→CO2)され、固形炭素質微粒子Mが浄化(分解)される。そして、得られた二酸化炭素は、上流側から流れてくる排出ガスと共に浄化構造体30を透過して、下流側である第2電極4側へ流れ、浄化構造体30よりもさらに下流側へと排出される。
【0056】
さらに、浄化構造体30を透過した排出ガスに含まれている窒素酸化物は、第2電極4側(還元部)において浄化処理される。
図11は、第2電極4側において窒素酸化物が浄化されるメカニズムを説明する図であり、浄化構造体30の第2電極4側(カソード側)にセリア又はセリア酸化物が担持されている。
この還元部において行われる浄化方法は次のとおりである。セリア(セリア酸化物)は希薄運転状態ではCeO2が安定した状態となる(Ce2O3+1/2O2→2CeO2:セリアによる酸素吸蔵効果)。しかし、印加手段2によって電圧を印加させることにより、第2電極4側では酸素を放出し希薄運転状態でCe2O3を安定状態で保つことができる(2CeO2+2e−→Ce2O3+O2−)。この際に酸素イオンが発生しており、この酸素イオンを固体電解質1によって第1電極3側へ移動させ、この酸素イオンは固形炭素質微粒子Mの酸化に用いられる。そして、セリアがこの状態で窒素酸化物(NO)を還元することができる(Ce2O3+NO→2CeO2+1/2N2)。
【0057】
図12は、第2電極4側において窒素酸化物が浄化される別のメカニズムを説明する図であり、浄化構造体30の第2電極4(カソード側)に、窒素酸化物を吸着させる吸着材5が担持されている。吸着材5は図3の浄化装置におけるものと同様でありアルカリ土類金属又はアルカリ金属であり、具体的には、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムがある。このうち安定性などの性質やコスト面で好ましいのは、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、カリウムである。さらに、第2電極4には、図3と同様に酸化触媒6が担持されている。酸化触媒6としては白金や銀があり、また、多孔質からなる第2電極4自身を白金や銀を含むものや、多孔質からなる第2電極4自身を白金や銀で構成し、酸化触媒6とすることができる。
そして、吸着材5としての酸化バリウムは第2電極4側にある二酸化炭素との反応により安定した状態(炭酸バリウム)となる(BaO+CO2→BaCO3)。
【0058】
この還元部において行われる浄化方法は次のとおりである。浄化構造体30を透過した排出ガスには一酸化窒素と酸素が含まれており、第2電極4側において、一酸化窒素は酸化触媒6により酸化(NO+O2→NO2+O2−)されて二酸化窒素となる。この際に酸素イオンが発生しており、この酸素イオンを固体電解質1によって第1電極3側へ移動させ、この酸素イオンは固形炭素質微粒子Mの酸化に用いられる。
そして、この二酸化窒素及び排出ガス中に含まれていた二酸化窒素を吸着材5に吸着させ(BaCO3+2NO2+O→Ba(NO3)2+CO2)、印加手段2によって電圧を印加させることにより、二酸化窒素の還元が行われる(Ba(NO3)2+2e−→BaO+N2+2O2+O2−)。
なお、図11と図12の形態において、第2電極4側で生じた酸素イオンを固体電解質1によって第1電極3側へ強制的に移動させることができるため、還元して得た窒素が窒素酸化物へ再合成されるのを抑制することができる。
以上のようにこの浄化方法は、一酸化炭素などの還元物質を用いる方法ではなく、電気化学的に還元する方法である。
【0059】
また、それぞれの実施形態において、印加手段2による電圧の印加を常時一定電圧として作用させてもよいが、制御手段31の働きによって、電圧の印加状態を周期的に変化又は変動させてもよい。例えば、電圧を印加させている状態と印加させていない状態とに周期的に変化させることができる。つまり、浄化構造体30の第1電極側3にある程度の量の固形炭素質微粒子Mが堆積してから、所定時間だけ電圧を印加させて前記浄化処理を間欠的に行わせるようにしてもよい。
【0060】
以上のようなこの発明の浄化装置によれば、排出ガスの圧力により排出ガスを強制的に第1電極3側から流入させ第2電極4側へ排出させる。浄化構造体30は多孔質であるために排出ガス中のディーゼル微粒子などの粒子状物質(固形炭素質微粒子M)は第1電極3側に捕集される。つまり、浄化構造体30のフィルタリング効果によって排出ガス中の微粒子は第1電極3側に自動的に捕集される。これにより、電気集塵機を用いて電極表面にディーゼル微粒子を集塵させる必要がなくなり、装置の低コスト化、小型化が図れる。そして、第1電極3側において微粒子が捕集除去された排出ガスは、浄化構造体30を透過し第2電極4側へ流出する。そして、例えば図12に示したようにアルカリ土類金属による窒素酸化物の吸蔵および、第2電極4での反応による窒素酸化物還元作用によって、排出ガスに含まれている窒素酸化物は吸蔵されて分解される。
この際に生じた酸素イオン(活性酸素)は、電圧が印加された固体電解質1を介して第1電極3側へ強制的に排除される。これにより、第2電極4側においてNOxの再合成が抑制されると共に、第1電極3側に捕集した微粒子の酸化を促進させ、窒素酸化物と固形炭素質微粒子Mの同時浄化が可能となる。
【0061】
なお、従来浄化装置として知られているDPNRは、セラミックフィルターにNOx吸蔵還元触媒を担持させたものであるが、通常NOxの排出量に対して固形炭素質微粒子Mの排出量が多くなる。そのため、還元剤を排出ガス中に添加させる必要があり、その添加装置を排気系に設けるなどの構成が別途必要となる。しかし、この発明の浄化装置によれば、固形炭素質微粒子MとNOxの浄化は、浄化構造体30の一面と他面のそれぞれにおいて独立して行わせるため、排出ガス中の固形炭素質微粒子MとNOxのバランスに依存せず、両者独立して処理することが可能であり、還元剤の添加は不要となる。従って、この発明の浄化装置は構成を簡素化かつコンパクトにできるため、既存の自動車への後付けも可能となる。
【0062】
さらに、排出ガス中には硫黄が含まれているが、この硫黄は窒素酸化物の還元処理において悪影響を及ばすおそれがある。しかし、ディーゼル微粒子中にこの硫黄が含まれている場合、この発明の浄化装置は、硫黄を含んだディーゼル微粒子を浄化構造体30の第1電極3側に捕集し、その裏面側である第2電極4側において窒素酸化物の還元が行われるため、窒素酸化物の還元電極上には硫黄を含んだ微粒子が堆積することがなく、そのため硫黄による影響を抑えることができる。
【0063】
以上図1〜図4に示した浄化装置に用いられている固体電解質1、及び、図10に示した浄化装置に用いられている多孔質からなる浄化構造体30についてさらに説明すると、使用する固体電解質1としては、従来知られているイットリウム安定化ジルコニア(ジルコニア系電解質YSZ)、セリア系固体電解質(SDC)、又は溶融炭酸塩型のもの等があり、ジルコニア系電解質の場合350℃以上の高い排気温度においては十分な酸素イオンの供給が可能となる。そして、排気温度が高温(例えば350℃)の場合だけではなく、低い場合(例えば250℃〜300℃)や、250℃以下においても効果的に酸素イオンの供給によるディーゼル微粒子の酸化(燃焼)を行わせるために、固体電解質1の形状、厚さを変更することでイオン伝導度を向上させることができる。
なお、以上において説明した酸素イオン導電性を有する固体電解質1は、一般に高温で酸素イオン伝導度が高くなり酸素イオンの移動が容易となるが、逆に低温では困難となる。仮に低温の固体電解質1に強制的に高い印加電圧をかけると、固体電解質1中を構成する酸素が強制的に移動するため電解質1の劣化が生じてしまう。
そこで、固体電解質1を加熱して固体電解質1の温度を330℃〜370℃程度に保つように構成したり、又は排出ガス側Gのガス温度を330℃〜370℃程度に保つよう構成したりするのが好ましい。そして、印加手段2による印加電圧を1ボルト〜10ボルトと低くすることにより固体電解質1が劣化するのを防ぎ、かつ効率良く十分な速度で酸素イオンの供給を行う。
【0064】
次に、図10で示した浄化構造体30の具体的な仕様について説明すると、浄化構造体30は全体として、ディーゼル微粒子(固形炭素質微粒子M)を通さないでその一面側に捕集する(フィルタリングする)ことができ、かつ、これを除く排出ガスを一面側から他面側へ透過させることができるように連続状の無数の孔からなる網目状組織の多孔質としている。
ディーゼル微粒子の分解極となる第1電極3は、その厚さが1μm以上で5mm以下とするのがよく、好ましくは5μm以上で50μmである。この厚さが薄すぎるとディーゼル微粒子の捕集率が低下するおそれがあり、また、厚すぎると圧力損失が大きくなるおそれがある。多孔質である第1電極3における孔(空洞)の平均孔径は0.5μm以上で100μm以下とするのがよく、好ましくは1μm以上で10μmであり、気孔率は10%以上で80%以下とするのがよく、好ましくは40%以上で60%以下である。これらの値が小さすぎると圧力損失が大きくなるおそれがあり、大きすぎるとディーゼル微粒子の捕集率が低下するおそれがある。
固体電解質1は、その厚さが1μm以上で5mm以下とするのがよく、好ましくは10μm以上で500μmである。この厚さが厚すぎると圧力損失が大きくなるおそれがある。多孔質である固体電解質1における孔(空洞)の平均孔径は0.5μm以上で100μm以下とするのがよく、好ましくは1μm以上で30μmであり、気孔率は10%以上で80%以下とするのがよく、好ましくは40%以上で60%以下である。これらの値が小さすぎると圧力損失が大きくなるおそれがあり、大きすぎると単位面積あたりのイオン導電率が小さくなるおそれがある。
窒素酸化物の分解極となる第2電極4は、その厚さが1μm以上で5mm以下とするのがよく、好ましくは5μm以上で50μmである。この厚さが厚すぎると圧力損失が大きくなるおそれがある。多孔質である第2電極4における孔(空洞)の平均孔径は0.5μm以上で100μm以下とするのがよく、好ましくは1μm以上で30μmであり、気孔率は10%以上で80%以下とするのがよく、好ましくは40%以上で60%以下である。これらの値が小さすぎると圧力損失が大きくなるおそれがある。
また、第1電極3における平均孔径と気孔率の双方又は一方は、固体電解質1及び第2電極4よりも小さくなるようにしてもよい。つまり、第1電極3におけるディーゼル微粒子の捕集率を維持しつつ、固体電解質1と第2電極2において流れる排出ガスの圧力損失を小さくしている。
【0065】
浄化構造体30において、第1電極3側でディーゼル微粒子が捕集された排出ガスを効率よく透過させるために、当該浄化構造体30における圧力損失を小さくするのが好ましい。これは、圧力損失が大きいとエンジン出力の低下や燃費の悪化の原因となるからである。そして、この発明における浄化構造体30における圧力損失の適正値は、前記厚さ、平均孔径及び気孔率に依存する他、ディーゼル微粒子の堆積状態及び排出ガスの流量によって異なるが、ディーゼル微粒子が堆積していない状態(新品の状態)で20kPa以下であるのが好ましい。また、圧力損失を小さくするために前記気孔率等を大きくしすぎて第1電極3側でのディーゼル微粒子の捕集率を低下させることのない程度の多孔質とする必要があり、第1電極3側におけるディーゼル微粒子の捕集率は90%以上とすることができる多孔質とするのが好ましい。
【0066】
この多孔質からなる浄化構造体30の製法について説明すると、固体電解質1及び電極を多孔質とする方法は従来知られている方法が適用できる。例えば、固体電解質1及び電極3,4を焼成することにより得ることができ、その焼成の際に含有させておいた微小溶融材料(ペレット)を飛散させる方法や、発泡剤を用いる方法などがある。これにより得られる多孔質は、ディーゼル微粒子を除く排出ガスに対して透過性を有するように一面側から他面側へ連続している無数の孔(空洞)によって形成される。
【0067】
浄化構造体30についてより好ましい形態について説明する。第1電極3及び第2電極4はそれぞれ、白金や銀を含むものや、電極を白金や銀で構成するものとできる。特に好ましいのは銀とした場合である。これは、銀は酸素吸着能を有するため、特に第1電極3を銀とすることで、当該第1電極3において固形炭素質微粒子Mを酸化させる(分解する)活性点が多数存在することとなる。これにより、固形炭素質微粒子Mの酸化に、酸素イオンを効率よく用いることができ、高い分解率を得ることができる。
【0068】
また、電極3,4のさらに好ましい形態としては、第1電極3と第2電極4との両者、または、片方は固体電解質1と同じ素材を含んでいるのが好ましい。特に、第1電極3に固体電解質1を含ませて焼成した場合、固形炭素質微粒子Mの酸化反応(分解反応)は第1電極3と固体電解質1との界面で生じるため、電極材料に固体電解質材料を混合させることで酸化のための反応活性点を増やすことができ、固形炭素質微粒子Mの酸化を促進できる。さらに、還元部である第2電極4側に窒素酸化物を吸着させる吸着材5を設けることで、浄化構造体30を通過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を第2電極4側に吸着させ(吸蔵し)、固体電解質1において酸素イオンを第2電極4側から第1電極3側へ移動させることによって、この窒素酸化物を還元することができる。
さらに、第1電極3と第2電極4との両者、または、片方に固体電解質1と同じ素材を含ませることにより、電極3,4と固体電解質1との接合状態が良くなり、浄化構造体30の耐久性を向上させることができる。これは、浄化構造体30を構成する電極3,4と固体電解質1との熱膨張率が大きく異なると、この浄化構造体30は使用状態で温度変化が大きいため、この温度変化により電極3,4が固体電解質1から剥がれてしまうおそれがある。しかし、電極3,4に固体電解質1と同じ素材を含ませ焼成し浄化構造体30を得ることで、固体電解質1と電極3,4とを一体化でき、大きな温度変化が生じても一体的に熱変形することができる。このため、電極3,4は固体電解質1から剥がれにくくなり、浄化構造体30の耐久性を向上させることができる。
また、浄化構造体30の耐久性の向上のために、電極3,4に含ませる素材を固体電解質1と全く同一ではなく、電極3,4の両者又は一方に、固体電解質1と同程度の熱膨張率を有する素材を含ませたものであってもよい。そして、この耐久性向上という観点に、反応促進の観点を含めると、第1電極3と第2電極4との両者、または、片方に固体電解質1と同じ素材を含ませるのが最も好ましい。
このように、第1電極3を、銀と固体電解質1との混合体(銀サーメット)とし、さらに還元部である第2電極4側に窒素酸化物を吸着させる吸着材5を設ける構成が、反応促進の観点及び耐久性向上の観点で特に好ましく、また第2電極4を第1電極と同じとすることで製造も容易となる。そして、吸着材5としては、既に説明したように、アルカリ土類金属又はアルカリ金属であるのが好ましい。
【0069】
また、電極3,4の製造において銀粒子を焼成することで多孔質の銀電極を得ることができるが、銀材料(銀粒子)に固体電解質材料(固体電解質粒子)を混合し、これを焼成することで、銀と固体電解質1との混合体による多孔質の電極3,4を得ることができる。この際、銀粒子の粒径及び固体電解質粒子を0.01μm以上で10μm以下とするのが好ましく、例えば1μmの銀粒子と0.1μmの固体電解質粒子とを混合すればよい。これらの粒子が細かいほど焼成して得た電極3,4の表面積が大きくなり、反応活性点が多くなり、反応性能(分解性能)を向上させることができる。
【0070】
また、銀材料(電極材料)と固体電解質材料との混合比について説明する。固体電解質材料を多くすると、反応活性点となる銀と固体電解質1との界面が増え、電極における反応性能を向上させることができるが、固体電解質材料を多くし過ぎると、電極としての導電性が低下し、全体としての性能が低下するおそれがある。そこで、固体電解質材料を全体において60vol%以下とするのが好ましく、特に好ましいのは、固体電解質材料を全体において20vol%以上40vol%以下とすればよい。具体的には、固体電解質材料を30vol%とし、銀材料を70vol%とすればよい。
【0071】
次に第2電極4側における吸着材5の混合比について説明する。第2電極4の体積を100%とした場合、バリウムを30vol%以上で40vol%以下とするのが好ましい。そして、バリウムを分散させた状態とするのが好ましい。これは、通常バリウムは酸化バリウム(BaO)粒子の状態で電極4上に担持されているが、バリウムが多すぎると酸化バリウムによる膜が形成され、反応活性点となる固体電解質1と第2電極4との界面が少なくなり、分解性能が低下するおそれがある。なお、バリウムを第2電極4全体に分散させた形態とする場合では、第2電極4の体積を100%とした場合、バリウムを100vol%とすることも考えられる。
【0072】
図15は、この発明の浄化装置によって燃焼機から排出された排出ガスを浄化する試験を行った場合における、当該排出ガスに含まれる固形炭素質微粒子Mの減少率(浄化率)と浄化時間との関係を示すグラフである。この試験の条件は、多孔質からなる浄化構造体30において、固体電解質1をセリア系固体電解質とし、第1電極3を銀電極とし、第2電極4を白金と前記固体電解質との混合体(サーメット)としたものである。第1電極3において、厚さが30μmであり、平均孔径が3μmであり、気孔率が30%である。固体電解質1において、厚さが0.5mであり、平均孔径が5μmであり、気孔率が40%である。また、第2電極4において、厚さが30μmであり、平均孔径が3μmであり、気孔率が30%である。そして、固体電解質1の温度を350℃とし、印加手段2による固体電解質1へ流す電流値を0.3Aとし、浄化構造体30への排出ガスの導入流量を1.0リットル/minとし、固形炭素質微粒子Nの排出濃度を75mg/m3としている。なお、30分間で浄化構造体30に供給される固形炭素質微粒子Mの量は2.25gとなる。
この図15に示している結果によれば、浄化開始から4時間経過時点で94%以上の高い固形炭素質微粒子Mの分解率を得ることができ、さらに7時間経過時点で90%以上の高い分解率を得ることが確認された。
また、他の試験の条件として、固体電解質1をジルコニア系電解質とし、第1電極3を銀とジルコニア系電解質との混合体(サーメット)とし、第2電極4を白金とジルコニア系電解質との混合体(サーメット)とし、その他条件を図15と同様とした場合であっても、図15の場合と同様に高い分解率を得ることができる。そして、第1電極3と第2電極4とに、固体電解質1と同じ素材を含ませていることにより、浄化構造体30の耐久性を向上させることができる。この場合の第1電極3は、銀を70vol%とし、ジルコニア系電解質を30vol%としている。
【0073】
このように、第1電極3に銀電極を含ませることにより、銀は酸素吸着能を有するため、第1電極3において固形炭素質微粒子Mを酸化させる(分解する)活性点が多数存在することとなる。したがって、酸素イオンを効率よく固形炭素質微粒子Mの酸化に用いることができ、高い分解率を得ることができる。また、浄化構造体30における固形炭素質微粒子Mの捕集率を測定するために、浄化構造体30を通過した排出ガスを排出する流路側にフィルター(図示せず)を設けた。つまり、このフィルターにおいて捕集した固形炭素質微粒子Mによる当該フィルターの質量増加から、浄化構造体30での捕集率を測定した。しかし、この試験において、フィルターでの質量増加は確認できず、浄化構造体30における固形炭素質微粒子Mの捕集率は100%であることが確認された。
【0074】
図16は、この発明の浄化装置によって燃焼機から排出された排出ガスを浄化する試験を行った場合における、当該排出ガスに含まれる固形炭素質微粒子Mの減少率と浄化構造体30に流す電流との関係を示すグラフである。この試験の条件として、浄化構造体30は図15における試験のものと同じであり、印加手段2による固体電解質1へ流す電流値をゼロから0.3Aまで増加させつつ一定とした。そして、浄化開始30分後における固形炭素質微粒子Mの減少率を測定した。なお、この試験においても、30分間で浄化構造体30に供給される固形炭素質微粒子Mの量は2.25gである。
この図16に示している結果によれば、銀による触媒作用により電圧印加を行わない場合(電流値がゼロ)であっても、約30%の分解率を得ることができ、0.3Aの電流の印加により97%の高い分解率を得ることが確認された。
【0075】
図17は、この発明の浄化装置によって燃焼機から排出された排出ガスを浄化する試験を行った場合における、当該排出ガスに含まれる窒素酸化物の減少率と浄化構造体に流す電流との関係を示すグラフである。この試験の条件は、多孔質からなる浄化構造体30において、固体電解質1をイットリウム安定化ジルコニアとし、第1電極3を銀とイットリウム安定化ジルコニアの混合体とし、第2電極4を第1電極3と同じである銀とイットリウム安定化ジルコニアの混合体としたものである。第1電極3において、厚さが30μmであり、平均孔径が2μmであり、気孔率が60%である。固体電解質1において、厚さが0.5mであり、平均孔径が5μmであり、気孔率が40%である。また、第2電極4において、厚さが30μmであり、平均孔径が2μmであり、気孔率が60%である。さらに、第2電極4において吸着材5としてバリウムを担持させている。図17の二点鎖線(実施例1)が、第2電極4の全体積を100%としてバリウムを36vol%とした場合であり、一点鎖線(実施例2)が、バリウムを26vol%とした場合である。そして、固体電解質1の温度を400℃とし、浄化構造体30への排出ガスの導入流量を1.0リットル/minとし、窒素酸化物NOxの濃度を450ppmとした。なお、図17の実線(実施例3)は、バリウムを36vol%とし、かつ、排出ガスの導入流量を0.5リットル/minとした場合であり、その他の条件は他の2つと同じである。そして、各条件において、印加手段2による固体電解質1へ流す電流値をゼロから0.3Aまで増加させつつ一定とし、各電流値において、浄化開始1分後における窒素酸化物NOxの減少率を測定した。
この図17に示している結果によれば、各条件(実施例1〜3)とも0.1Aの電流値で80%以上の高い分解率を得ることが確認された。また、実施例2と実施例3とでは、0.05mA(4.9V)の低エネルギーで80%以上の高い分解率を得ることが確認された。
【0076】
図13は、ディーゼル機関からの排出ガスの浄化を行う浄化システムを示す模式図であり、図5に示した浄化システムと同様に、この浄化システムは、ディーゼル機関(ディーゼルエンジン)15の排気口と接続されて排出ガスを排出させる排気流路7と、この排気流路7の一部に設けられる排出ガス浄化装置8とを備えている。排気流路7は排気管により構成されており、この排気管の途中に排出ガス浄化装置8が有する筒状の排出ガス浄化室16が設けられている。この排出ガス浄化室16の内部に前記浄化構造体30が設けられている。
【0077】
この排出ガス浄化装置8は図10に示した浄化装置であり、この浄化装置8が備えている浄化構造体30は、イオン導電性を有して一面10側に酸素イオンを与え得る固体電解質1と、この固体電解質1の一面10側と他面11側にそれぞれ設けられた第1電極3と第2電極4とを有している。浄化構造体30は、排気流路7からの排出ガスを第1電極3側から第2電極4側へ通すことによって排出ガス中のディーゼル微粒子を当該第1電極3側に捕集することができる多孔質とされている。浄化構造体30には、前記制御手段31が接続されている。
そして、前記説明したように、第1電極3側において捕集されたディーゼル微粒子を酸化させ、かつ、第2電極4側において浄化構造体30を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元する。
【0078】
浄化構造体30は、図14に示しているように、有底筒状に形成されている複数本の筒状部32と、この筒状部32の開口部を相互連結している板状部33とを有する構成である。板状部33は、排気流路7を流れてきた排出ガスに対して対面状となるように排出ガス浄化室16の内周面に固定壁として取り付けられており、筒状部32は、パイプ状の排出ガス浄化室16の軸方向(排出ガスの流れ方向)を軸方向としている。そして、筒状部32の内面(内周面と底面)と、この内面と連続している板状部33の表面とを第1電極3側としており、その反対側の面である筒状部32の外面(外周面と端面)とこの外面と連続している板状部33の裏面とを第2電極4側としている。これにより、排出ガス浄化室16に流入した排出ガスは、板状部33の表面及び筒状部32の内面からその反対側の面へ透過し、第1電極3側においてディーゼル微粒子が捕集されて固形炭素質微粒子Mの酸化が行われ、第2電極4側において窒素酸化物の還元が行われ、処理された排出ガスは、排出ガス浄化室16の下流側へ排出される。
【0079】
また、図18はこの発明の浄化構造体30の他の実施形態の断面を示している説明図である。この浄化構造体30は、支持体40を更に有している。支持体40は浄化構造体30の機械的強度を高めるためのものである。これにより、浄化構造体30を構成する他の部材である電極3,4や固体電解質1を薄くできる。すなわち、浄化構造体の機械的強度を高めるために、電極3,4や固体電解質1を厚くする必要がない。電極3,4や固体電解質1を薄くすることができるため、排出ガスが電極3,4や固体電解質1を透過する際の抵抗を低減でき、また、小さい印加電圧により酸素イオンを導電させることができ、省エネルギー化が図れる。
【0080】
支持体40について具体的に説明する。図18において、有底円筒状に形成した第2電極4の外周側に、有底円筒状に形成した固体電解質1が設けられ、この外周に有底円筒状に形成した第1電極3が設けられている。そして、支持体40は有底円筒状(乃至円筒状)に形成した管部材であり、第2電極4の内周側に積層状態として設けられている。これにより、浄化構造体30は、有底筒状に形成されている。支持体40は多孔質であり、第1電極3側から透過してくる排出ガスを矢印で示しているように透過させることができる。この支持体40は、端部の取付部40cと、本体部40dとを有している。本体部40dは第2電極4と積層状態にあり、浄化構造体30が固定壁47に取り付けられる前に単独で存在している状態で、取付部40cは第2電極4と積層状態になく露出状態である。
【0081】
支持体40の材質は、酸化アルミニウム(アルミナ)、ジルコニア、ムライト(3Al2O3−2SiO2系の化合物)、ステンレス鋼等とすることができる。その中でも熱膨張係数が固体電解質1に近いジルコニアとした場合、温度変化が大きい浄化構造体30にとって構造的に好ましく、また、熱膨張係数及びコスト面で酸化アルミニウムとするのが好ましい。また、支持体40の厚さは浄化構造体30の剛性を確保できる最小厚さが好ましい。例えば、浄化構造体30の軸方向長さを130mm以上で170mm以下とし、外径を8mm以上で12mm以下とした場合、支持体40の厚さを1mm以上で2mm以下と設定することができる。また、多孔質である支持体40の孔(空洞)の平均孔径は固体電解質1及び電極3,4の平均孔径以上が好ましく、また、気孔率を40%以上で50%以下とするのが好ましい。
【0082】
図18の浄化構造体30についてさらに説明すると、固体電解質1の内径側にある第2電極4において、浄化構造体30の開口側の端部が径方向外側に対して露出している。つまり、第2電極4はその端部の外周面に露出面を有しており、この露出面に印加手段2のリード線を繋げることができる。これにより、第2電極4が薄くても、第2電極4とリード線とを強固に繋げることができる。また、この第2電極4とリード線との接続部である第2接続部46と、第1電極3と別のリード線との接続部である第1接続部45とは、一つ(一本)の浄化構造体30において、距離を離して設けるのが好ましい。具体的には、第1接続部45と第2接続部46とを浄化構造体30の軸方向両端部にそれぞれ離して設けるのが好ましい。さらに、第1接続部45と第2接続部46とを180°位相を離して設けるのがさらに好ましい。これは、両接続部45,46が接近すると、浄化構造体30においてこれら接続部45,46の近傍で酸素イオンの導電が生じ、これらから離れた部分では、効果的な酸素イオンの導電が生じないおそれがあるためである。しかし、図18のように両接続部45,46を離して設けることでこれを防止できる。
【0083】
また、図18において、第1電極3の外周に集電体として金属網48を設け、この金属網48とリード線とを繋げて第1接続部45としてもよい。これにより、第1電極3の全面に対して電圧を付与することができ、浄化構造体30の全体において酸素イオンの導電が可能となる。金属網48は、第1電極3の外周に設けられているが、排出ガスを透過させることができ、さらに、その排出ガス中の固形炭素質微粒子を金属網48に滞留させないように網の目が粗く設定されている。さらに、支持体40を導電性のある材質としていることで、第2電極4と一体状となる支持体40を、前記金属網と同様に集電体として機能させることができる。つまり、この支持体40にリード線を繋げて第2接続部46としてもよい(図示せず)。
【0084】
なお、支持体40は他の形態であってもよく、図示しないが、例えば支持体を第1電極側(第1電極の外周側)に設けてもよい。しかし、この場合、排出ガス中の固形炭素質微粒子が支持体に滞留しないようにすることが必要であり、例えば支持体を目の粗い網構造とする必要がある。
そして、図13で示した排出ガス浄化装置8の排出ガス浄化室16内において、図18に示すように浄化構造体30を取り付けるための固定壁47が設けられている。この固定壁47に、支持体40の露出状であった取付部40cを固定することで、浄化構造体30を排出ガス浄化室16に取り付けることができる。そして、図示しないが、この取り付け構造により、固定壁47に複数の浄化構造体30を平行に配設することができる。
【0085】
そして、このような多孔質からなる支持体40と、固体電解質1と、この固体電解質1の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極3と第2電極4とを有する浄化構造体30の製造方法について、図19により説明する。なお、図19では、浄化構造体30を円板形状とした場合を例示している。
まず、支持体40の一面40a上にカーボン粒子や樹脂を設け、一面40aにマスキングを施す。そして、この一面40a側に電解質スラリー41を被覆し、これを焼成して支持体40上に固体電解質1を得て、多孔質である支持体40の他面40b側から電極スラリー44を固体電解質1の裏面1bまで浸透させ、かつ、当該固体電解質1の表面1aに電極スラリー43を被覆し、これを焼成して固体電解質1の表裏両面に電極3,4を得る。
【0086】
この製造方向についてさらに説明する。支持体40は多孔質として形成されたものであり、前記のとおり例えば酸化アルミニウムとできる。そして、この支持体40の一面40a上にマスキングを施す理由は、支持体40の平均孔径を大きくした場合(例えば、平均孔径30μmとした場合)、この一面40a上に電解質スラリー41を直接塗布すると、電解質スラリー41が支持体40の中へ入り込んでしまう(浸透してしまう)からである。しかし、前記マスキングを施すことでこれを防止できる。なお、支持体40の平均孔径が小さい場合(例えば3μm以下の場合)、このマスキングは不要である。
固体電解質1を構成するために電解質スラリー41は、電解質粉末(電解質粒子)に、造孔材としての微小溶融材料(ペレット)及びバインダを加え、溶剤により粘度調整を行ったものである。また、電極3,4を構成するための電極スラリー43,44は、電極を構成する金属粉末(銀粒子)、例えば銀粉末に、造孔材としての微小溶融材料(ペレット)及びバインダを加え、溶剤により粘度調整を行ったものである。なお、電極3,4に固体電解質1と同じ素材を含ませるためには、電極スラリー43,44に、電解質粉末(電解質粒子)を加えればよい。
【0087】
支持体40の一面40a側に電解質スラリー41を被覆し、焼成して支持体40上に固体電解質1を得る。ジルコニア系電解質の場合、焼成温度を1300℃〜1400℃としている。これにより、支持体40の上に多孔質の固体電解質1を得ることができる。なお、多孔質である支持体40の製造方法についても、支持体40を構成する金属粉末に、微小溶融材料(ペレット)及びバインダを加え、溶剤により粘度調整を行ったものを焼成することで得られる。
【0088】
そして、多孔質である支持体40の他面40b側に、第2電極4を構成するための電極スラリー44を塗布して、当該電極スラリー44を固体電解質1の裏面1bまで浸透させる。また、固体電解質1の表面1aに第1電極3を構成するための電極スラリー43を被覆する。そして、これを焼成して固体電解質1の表裏両面に電極3,4を得る。電極3,4を銀とした場合、焼成温度を800℃〜900℃としている。この製造方法は、先に固体電解質1を焼成してから、第1、第2電極3,4を焼成する製造方法であるため、第1、第2電極3,4の材料の融点が固体電解質1の焼成温度よりも低い場合に効果的である。つまり、固体電解質1の焼成温度が1400℃であるのに対して、銀からなる第1、第2電極3,4の融点が930℃である場合において、1400℃で固体電解質1と電極3,4とを同時に焼成すると、電極3,4を構成する銀が凝集してしまう。しかし、この製造方法によれば銀が凝集することを防止できる。そして、多孔質で一体状の浄化構造体30を得ることができる。
【0089】
また、この浄化構造体30の第2電極4側に吸着材5としてバリウムを設けるためには、第2電極4のための電極スラリー44に、バリウム(酸化バリウム)を含ませればよい。また、支持体40を有していない浄化構造体30において、第2電極4側に吸着材としてバリウムを設けるためには、焼成した多孔質である第2電極4に、酢酸バリウム水溶液をスプレーや刷毛により塗布し、浸透させればよい。
【0090】
以上の各実施の形態の浄化装置によれば、排出ガス中のディーゼル微粒子にはハイドロカーボン(HC)も含まれており、このハイドロカーボンは固体電解質1による酸素の供給により水と二酸化炭素に酸化(CmHn+(m+n/4)O2→mCO2+n/2H2O)させることができる。
さらに、この発明における浄化装置、浄化方法及び浄化システムは、ディーゼル機関から排出される排出ガスの浄化に留まらず化学合成や燃焼システム等広範囲にわたって適用することができる。また、この発明は図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良く、固体電解質1をパネル形状とする以外にも設置する部位に応じて円筒形状や波型等とすることができる。
【0091】
そして、図1〜図4、図10、及び図18に示す浄化装置はこれ単独により機能させることはもちろん、従来知られている窒素酸化物の浄化装置や、微粒子浄化装置に追加的に付与することもできる。つまり、この発明の浄化システムは構造が簡単で装置をコンパクトにすることができるため、従来の装置ではディーゼル微粒子の酸化が不十分である場合に補助酸化システムとして付加することができる。
さらに、図1〜図4に示した前記浄化装置において、コロナ放電等による電気集塵機となる前記帯電装置を設け、排出ガス中に含まれるディーゼル微粒子を固体電解質1の堆積面12に効率よく堆積させるようしてもよい。
【0092】
以上の浄化装置、浄化方法、及び、排出ガス浄化システムのそれぞれは、ディーゼルエンジンから排出された排出ガスを浄化するものとして説明したが、排出ガスはディーゼルエンジンから排出されたものに限らず、ガソリン機関(直噴式ガソリン機関)、ボイラーや工業炉から排出されたものについても、この発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】この発明の実施の一形態に係る浄化装置を示すモデル図である。
【図2】浄化装置の他の実施の形態を示すモデル図である。
【図3】浄化装置の別の実施の形態を示すモデル図である。
【図4】印加手段が有する印加電圧の極性を反転させる切り換え手段の作用を説明するモデル図である。
【図5】この発明の実施の一形態に係る排出ガス浄化システムの概略を示す模式図である。
【図6】排出ガス浄化装置の要部構成図である。
【図7】排出ガス浄化装置の変形例を示す要部構成図である。
【図8】この発明の他の実施の形態に係る排出ガス浄化システムの概略を示す模式図である。
【図9】図8の浄化システムが有する排出ガス浄化装置を示す要部構成図である。
【図10】浄化装置のさらに別の実施の形態を示すモデル図である。
【図11】窒素酸化物の還元のメカニズムを説明する説明図である。
【図12】窒素酸化物の還元の他のメカニズムを説明する説明図である。
【図13】排出ガス浄化システムの他の実施形態の概略を示す模式図である。
【図14】図13の浄化システムが有する排出ガス浄化装置を示す要部構成図である。
【図15】固形炭素質微粒子の減少率と浄化時間との関係を示すグラフである。
【図16】固形炭素質微粒子の減少率と浄化構造体に流す電流との関係を示すグラフである。
【図17】窒素酸化物の減少率と浄化構造体に流す電流との関係を示すグラフである。
【図18】支持体を備えた浄化構造体の説明図である。
【図19】支持体を備えた浄化構造体の製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1 固体電解質
2 印加手段
3 第1電極
4 第2電極
5 吸着材
7 排気流路
8 排出ガス浄化装置
10 一面
11 他面
16 排出ガス浄化室
30 浄化構造体
31 制御手段
40 支持体
40a 一面
40b 他面
40c 取付部
40d 本体部
41 電解質スラリー
43 電極スラリー
44 電極スラリー
47 固定壁
A 大気側
G 排出ガス側
M 固形炭素質微粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン導電性を有する固体電解質と、
この固体電解質のうち、燃焼器から排出される未燃焼微粒子を堆積させる一面側がアノード側となるよう当該固体電解質の両面間に電圧を印加させる印加手段と、
を備えたことを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側とにそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、を有する浄化構造体を備え、
この浄化構造体は、燃焼器から排出される未燃焼微粒子を含む排出ガスを前記第1電極側から前記第2電極側へ通すことによって当該微粒子を当該第1電極側に捕集することができる多孔質であり、前記第1電極側は、捕集した前記微粒子を、前記固体電解質によって当該第1電極側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部であることを特徴とする浄化装置。
【請求項3】
前記第1電極と第2電極との内の少なくとも一方は前記固体電解質と同じ素材を含んでいる請求項2に記載の浄化装置。
【請求項4】
前記第1電極は銀を含んでいる請求項2又は3に記載の浄化装置。
【請求項5】
前記浄化構造体は、当該浄化構造体の機械的強度を高めるための支持体を更に有している請求項2又は3に記載の浄化装置。
【請求項6】
前記支持体は、前記第1電極又は前記第2電極と積層した状態で設けられており、前記支持体は、前記排出ガスを通すことができる網構造又は多孔質構造である請求項5に記載の浄化装置。
【請求項7】
酸素イオン導電性を有する固体電解質の両面間に電圧を印加させ、カソード側からアノード側へ酸素イオンを供給し、この酸素イオンにより前記固体電解質のアノード側に存在するディーゼル微粒子を酸化させることを特徴とする浄化方法。
【請求項8】
イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る多孔質からなる固体電解質の当該一面側から他面側へ未燃焼微粒子を含む排出ガスを通すことにより、当該微粒子を当該一面側に捕集し、捕集したこの微粒子を、前記固体電解質によって前記一面側に与えられた前記酸素イオンにより酸化させることを特徴とする浄化方法。
【請求項9】
燃焼器から排出される未燃焼微粒子及び窒素酸化物を含む排出ガスを通過させる排気流路と、この排気流路の一部に設けられている排出ガス浄化装置と、を備えた排出ガス浄化システムであって、
前記排出ガス浄化装置は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、を有する浄化構造体を備え、
この浄化構造体は、前記排気流路からの排出ガスを前記第1電極側から前記第2電極側へ通すことによって前記微粒子を当該第1電極側に捕集することができる多孔質であり、前記第1電極側は、捕集された当該微粒子を、前記固体電解質によって当該第1電極側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部であり、かつ、前記第2電極側は、前記浄化構造体を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元する還元部であることを特徴とする排出ガス浄化システム。
【請求項10】
イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、機械的強度を高めるための多孔質からなる支持体と、を有する浄化構造体の製造方法であって、
前記支持体の一面側に電解質スラリーを被覆し、これを焼成して前記支持体上に固体電解質を得て、多孔質である前記支持体の他面側から電極スラリーを前記固体電解質の裏面まで浸透させ、かつ、当該固体電解質の表面に電極スラリーを被覆し、これを焼成して前記固体電解質の両面に電極を得ることを特徴とする浄化構造体の製造方法。
【請求項1】
酸素イオン導電性を有する固体電解質と、
この固体電解質のうち、燃焼器から排出される未燃焼微粒子を堆積させる一面側がアノード側となるよう当該固体電解質の両面間に電圧を印加させる印加手段と、
を備えたことを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側とにそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、を有する浄化構造体を備え、
この浄化構造体は、燃焼器から排出される未燃焼微粒子を含む排出ガスを前記第1電極側から前記第2電極側へ通すことによって当該微粒子を当該第1電極側に捕集することができる多孔質であり、前記第1電極側は、捕集した前記微粒子を、前記固体電解質によって当該第1電極側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部であることを特徴とする浄化装置。
【請求項3】
前記第1電極と第2電極との内の少なくとも一方は前記固体電解質と同じ素材を含んでいる請求項2に記載の浄化装置。
【請求項4】
前記第1電極は銀を含んでいる請求項2又は3に記載の浄化装置。
【請求項5】
前記浄化構造体は、当該浄化構造体の機械的強度を高めるための支持体を更に有している請求項2又は3に記載の浄化装置。
【請求項6】
前記支持体は、前記第1電極又は前記第2電極と積層した状態で設けられており、前記支持体は、前記排出ガスを通すことができる網構造又は多孔質構造である請求項5に記載の浄化装置。
【請求項7】
酸素イオン導電性を有する固体電解質の両面間に電圧を印加させ、カソード側からアノード側へ酸素イオンを供給し、この酸素イオンにより前記固体電解質のアノード側に存在するディーゼル微粒子を酸化させることを特徴とする浄化方法。
【請求項8】
イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る多孔質からなる固体電解質の当該一面側から他面側へ未燃焼微粒子を含む排出ガスを通すことにより、当該微粒子を当該一面側に捕集し、捕集したこの微粒子を、前記固体電解質によって前記一面側に与えられた前記酸素イオンにより酸化させることを特徴とする浄化方法。
【請求項9】
燃焼器から排出される未燃焼微粒子及び窒素酸化物を含む排出ガスを通過させる排気流路と、この排気流路の一部に設けられている排出ガス浄化装置と、を備えた排出ガス浄化システムであって、
前記排出ガス浄化装置は、イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、を有する浄化構造体を備え、
この浄化構造体は、前記排気流路からの排出ガスを前記第1電極側から前記第2電極側へ通すことによって前記微粒子を当該第1電極側に捕集することができる多孔質であり、前記第1電極側は、捕集された当該微粒子を、前記固体電解質によって当該第1電極側へ与えられた酸素イオンにより酸化させる酸化部であり、かつ、前記第2電極側は、前記浄化構造体を透過した排出ガスに含まれる窒素酸化物を還元する還元部であることを特徴とする排出ガス浄化システム。
【請求項10】
イオン導電性を有して一面側に酸素イオンを与え得る固体電解質と、この固体電解質の一面側と他面側にそれぞれ設けられた第1電極と第2電極と、機械的強度を高めるための多孔質からなる支持体と、を有する浄化構造体の製造方法であって、
前記支持体の一面側に電解質スラリーを被覆し、これを焼成して前記支持体上に固体電解質を得て、多孔質である前記支持体の他面側から電極スラリーを前記固体電解質の裏面まで浸透させ、かつ、当該固体電解質の表面に電極スラリーを被覆し、これを焼成して前記固体電解質の両面に電極を得ることを特徴とする浄化構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−119618(P2008−119618A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307372(P2006−307372)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
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