説明

浮遊立体表示装置システム

【課題】撮影した画像を浮遊立像させ、該浮遊立像の前後左右の姿を裸眼で見ることができかつ直接に触れることのできる小型の装置を提供することである。
【解決手段】放物面を形成する鏡を上下に対設しそれぞれの中心部に開口部を有する放物面鏡と、該放物面鏡下部に配設され、下部放物面鏡開口部より放物面鏡内に一部を突出させた平板状のスクリーンと、該スクリーンを包囲するように周設され、一部に開口部が形成された円筒状の円筒部と、前記スクリーンと前記円筒部とを連結させて回転する回転ドラムと、該回転ドラムの回転軸を中心とする同一円周上に均等間隔で配設した複数のプロジェクターと、撮影画像の画像歪補正処理及び同時再生処理をするコンピューターとを含む手段からなる浮遊立体表示装置システムを構成することにより実現できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示された映像を、空間浮遊状態でかつ裸眼で見ることができ、多方面から同時観察できて、見る方角によって表示された映像の異なる側面を見ることができ、立体視を可能にした浮遊立体表示装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーンの回転軸を中心として、ほぼリング状に多角錘ミラーが配列され、また、多角錘ミラーの上方に、回転軸の延長軸を中心とする同一円上に4個のプロジェクターが配置され、該プロジェクターから多角錘ミラーに投影映像が出射され、これが多角錘ミラーで反射されて回転するスクリーンに投影され、これにより異なる方向から見ると異なる側面が見られる立体映像が形成される技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数の多角錘ミラーを隣り合わせて配置し、該ミラーのそれぞれに同一物体の異なる方向から見た平面実像を反射させ、該多角錘ミラーそれぞれによる該映像の鏡像が同一の軸上に生ずるように、該平面実像に対する該多角錘ミラーの位置及び向きを設定した立体像表示装置に関する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
レーザー光の焦点で空気中の酸素や窒素の分子をプラズマ発光させて空間に発光したドットをつくるもので、空間の任意の位置に自在に発光させることにより、立体画像の動画を実現させた技術が発表されている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−10852号公報
【特許文献2】特開2008−224748号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】独立行政法人産業技術総合研究所プレス・リリース「空間立体描画(3Dディスプレー)技術の高性能化実験に成功」2007年7月10日発表
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術は、全周から観察できるが大掛かりな据置タイプの装置であるので、例えば教育の場での講義や医療の場での手術方法の検討などで装置を使用する場に移動させるような場合には容易には使用できないし、また装置内部の回転中のスクリーン上に投影されるので映像に手を近づけることができないという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献2の技術は、小型化され全周からの観察が可能であるが、観察者は逆多角錘ミラーを通して虚像を見ることになり目線が上向きとなり、かつ直接像を見ることができず、視線上に多角錘ミラーが介在しているので隔離感が生じ、かつ像に触れることができないという問題があった(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
非特許文献1の技術は、装置が大掛かりとなり機動性に欠け、離れた空間における表示のため近くで観察できず、点(ドット)で表現するため高精細な映像を作成することが難しいという問題があった(例えば、非特許文献1参照)。
【0010】
そこで、本発明の目的は、観察者の近くで、カラー表示の映像が立像し空中に浮いた状態が確保でき、該浮遊立像の全周360°を周りながら見ていくと立像の前後左右の姿を裸眼で見ることができ、かつ小型の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、放物面鏡の内部の底面中央部に静止物体を載置すると放物面鏡の上部開口部に前記物体の浮遊立体像が結像することから、前記物体を映像に置き換えることができれば放物面鏡の上部開口部に動画などの浮遊立体表示ができるのではと着想し本発明を開発するに至った。
【0012】
本発明において、「放物面鏡」とは放物面を有する鏡を上下に組み合わせたものを意味し、「上部放物面鏡」とは本発明でいう放物面鏡の上側のものを意味し、「下部放物面鏡」とは本発明でいう放物面鏡の下側のものを意味する。
【0013】
本発明において、「開口部面」とは開口部が形成する平らな面を意味する。
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項1にかかる浮遊立体表示装置システムの発明は、放物面を形成する鏡を上下に対設しそれぞれの中心部に開口部を有する放物面鏡と、該放物面鏡下部に垂設され、下部放物面鏡開口部より放物面鏡内に一部を突出させた平板状のスクリーンと、該スクリーンの前記放物面鏡内に突出しない部分を包囲するように周設され、一部に開口部が形成された円筒状の円筒部と、前記放物面鏡下部に配設され、前記放物面鏡開口部中心軸の延長線上に回転軸を有し前記スクリーンと前記円筒部とを連結させて回転する回転ドラムと、該回転ドラムの回転軸を中心とする同一円周上に均等間隔で配設した複数のプロジェクターと、複数の撮影画像を入力し該撮影画像の画像歪補正処理及び同時再生処理をするコンピューターと、を含む手段からなることを特徴とする。
【0015】
請求項2にかかる浮遊立体表示装置システムの発明は、請求項1の発明において、円筒部に形成された開口部が前記回転ドラムの回転軸を中心にした対称位置に設けられた2つの四角形状の開口部であり、前記開口部の開口幅が調整可能機構を有することを特徴とする。
【0016】
請求項3にかかる浮遊立体表示装置システムの発明は、請求項1または2の発明において、平板状のスクリーンの面が前記円筒部の開口部面と平行な位置関係で配設され、前記スクリーンの表裏両面が反射面であることを特徴とする。
【0017】
請求項4にかかる浮遊立体表示装置システムの発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、複数のプロジェクターからの映像の上端が前記スクリーンの放物面鏡内に突出させた部分の上端近傍に投影されるように、前記複数のプロジェクターが同一角度で斜め上向きに設置されることを特徴とする。
【0018】
請求項5にかかる浮遊立体表示装置システムの発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明において、コンピューターに、スクリーンの反射面に投影された映像の上端から下端までの縮尺を一致させる画像歪補正処理プログラムを組み込んだことを特徴とする。
【0019】
請求項6にかかる浮遊立体表示装置システムの発明は、請求項1乃至5のいずれかの発明において、コンピューターに、Wをプロジェクターのレンズ中心位置からスクリーン上の映像上端までの距離、Rをプロジェクターのレンズ中心位置からスクリーン上の映像下端までの距離とすると、W値、R値を入力し記憶する手順、撮影画像を取り込み原画として記憶する手順、縮小率であるR/Wを算出する手順、記憶した原画の下端の横寸法を取得し、原画下端の横寸法を基準とし、原画上端の横寸法を前記原画下端の横寸法にR/Wの縮小率を乗じた横寸法に縮小する手順、縮小した上端と縮小しない下端間における原画の縮尺を漸変させて台形型原画を作成する手順を実行する画像歪補正処理プログラムを組み込んだことを特徴とする。
【0020】
請求項7にかかる浮遊立体表示装置システムの発明は、請求項1乃至6のいずれかの発明において、コンピューターに同一被写体を複数の少なくとも4つの異なる方向から撮影した映像を記憶する手順、該記憶した少なくとも4つの映像を同時に再生する手順を実行させるための同時再生プログラムを組み込んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明は、観察者の近くで、映像を空間に浮遊させて結像させることができ、浮遊立像をその周囲を周りながら見ていくと立像の前後左右の姿を直接に裸眼で見ることができ、かつ手も触れられるという効果を奏する。
【0022】
また、スチールカメラやビデオカメラで撮影されたカラーの実写映像、またはコンピューター・グラフィックで作られたカラーの多方向映像を空間に浮遊させて結像させることができるという効果を奏する。
【0023】
装置が小型化されているので、どこでも容易に移動でき使用したい場所で浮遊立像を見ることができるという効果を奏する。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1と同じ効果を奏する。さらに、円筒部が回転しながら、該円筒部に設置された開口部が開口部幅によりプロジェクターからの光路を制限するので、1つのスクリーンに投影される映像が常に鮮明さを保持できるという効果を奏する。
【0025】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明と同じ効果を奏する。さらに、表裏2面の反射板によりプロジェクターから投影される映像を反射するので、一度に2つのプロジェクターからの映像を反射できるという効果を奏する。
【0026】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、浮遊立像を高い位置で結像させるという効果を奏する。
【0027】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、浮遊立体像の上下方向で縮尺を同一にすることができるという効果を奏する。
【0028】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかの発明と同じ効果を奏する。
【0029】
請求項7の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、同一被写体を複数カメラで撮像した画像を同時再生処理することができるので、浮遊立像を同一被写体の立像として視認できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一般的な放物面鏡の原理説明図である。
【図2】本発明の浮遊立体表示装置システムの概要説明図である。
【図3】放物面鏡の概要の模式図で、(a)が一般的な放物面鏡で、(b)が本発明の放物面鏡である。
【図4】実施例1の浮遊立体表示装置システムのブロック図である。
【図5】回転ドラムの斜視図である。
【図6】回転ドラムの回転軸における縦断面図である。
【図7】スクリーンへ投影された外形輪郭図である。
【図8】プロジェクターからスクリーンへの投影角度関連図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態と作用について説明する。
【0032】
まず、図1により、本発明による浮遊立体表示装置の原理について説明する。
【0033】
一般的な放物面鏡1は、平行光を入射すると光を一点に集める性質がある。図1に示すように放物面鏡1中に静止物体2を載置すると入射した外光により静止物体2の像は放物面鏡1内で反射を繰り返し集光した結像3を結ぶ。
【0034】
放物面鏡1内に載置した静止物体2の上下方向と、浮遊する結像3の上下方向とは同じである。また、観察者の視点4から該結像3を斜め方向より見ると結像3を浮遊させた状態で放物面鏡1の全周方向からみることができ、これにより静止物体2の立体視ができる。
【0035】
本発明の放物面鏡10を組み込んだ浮遊立体表示装置システムは、一般的な放物面鏡1の原理を組み込んだ発明であり、静止物体2という実物体の代わりに、物体や人の被写体を撮影した静止画または動画の映像という虚像を用いることにより、前記被写体の立体視を可能とするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
浮遊立体表示装置システムは、図2または図4に示すように、放物面鏡10と、円筒部11及びスクリーン13とを含む構成からなる回転ドラム5と、少なくとも正面、背面、右側面及び左側面用の4台のプロジェクター35、36、37及び36と、コンピューター7と、を含む構成からなる。
【0037】
さらに、前準備として実写映像を浮遊立像とさせる場合には、被写体を撮影する少なくとも正面、背面、右側面及び左側面から撮影する4台のカメラ31、32、33及び34を使用する。また、前準備としてコンピューターグラフィックで作成された映像を浮遊立像とさせる場合には、少なくとも正面、背面、右側面及び左側面の画像をコンピューターグラフィックで作図する。
【0038】
一般的な放物面鏡1は、図3(a)に示すように上部開口部25があり下部中央部には開口部のない閉じられた底面となっているのに対し、本発明に使用する放物面鏡10は、図3(b)に示すように、上部放物面鏡23には上部開口部25が、下部放物面鏡24には下部開口部26が設けられている。
【0039】
図5または図6において、回転ドラム5は、回転ドラム5の中心にモーター16によって回転する回転軸15、該回転軸15に取り付けられた平板状のスクリーン13、該回転軸15と連結された円筒部11、及びモーター16を含む構成となっている。
【0040】
スクリーン13は、前記回転軸15に垂直に取り付けられ、黒色に塗布され、反射面を表裏両面に有した平板状のものである。
【0041】
また、スクリーン13の横方向の幅は、下部放物面鏡24の下部開口部26から放物面鏡10内に挿入される部分については下部開口部26の直径より小さい幅とし、放物面鏡10内に挿入されない部分については円筒部11内径よりも小さい幅とする。
【0042】
スクリーン13の上端の高さは上部放物面鏡23と下部放物面鏡24との境の高さより低くてかつ前記境の高さに最大限近い高さとする。ここで、スクリーン13の上端の高さが上部放物面鏡23と下部放物面鏡24との境の高さに近いほど上部開口部22から高い位置に浮遊立体像を結像させることができるが、上部放物面鏡23と下部放物面鏡24との境の高さ以上になるとその高さ以上の部分について像が形成されないからである。
【0043】
また、スクリーン13の下端の高さはプロジェクター6から投影される映像の下端より低い高さとする。
【0044】
円筒部11は、図5または図6に示すように、円筒形状の筒であり、周壁には回転軸15を中心にした対称位置に2つの開口部12を設け、該開口部12の開口面は前記スクリーン13の面と平行の位置関係にあり、下部において回転軸15と連結している。
【0045】
円筒部11の開口部12は、その幅寸法をスライド構造などで可変できるようになっており、スクリーン13の一面に投影される映像が複数のプロジェクター6から投影によって不鮮明にならないように開口部12幅寸法を調整する。
【0046】
円筒部11と連結した回転軸15はモーター16と連結しているので、モーター16の駆動により円筒部11とスクリーン13とは一体となって回転する。
【0047】
図6に示すように、円筒部11の上部近傍の外壁には、回転軸16を中心軸とした円周上に均等配置させた横触れ防止用コロ17が3箇所外接させた状態で配設されている。これにより、回転時の円筒部11の横揺れを抑制することができ、映像の揺れを防止する効果がある。
【0048】
また、円筒部11を回転させるための駆動方法は、円筒部11の下部において回転軸15をモーター16で回転させる方法、または円筒部11の外周の上部においてモーターにより回転する駆動用コロを外接させて回転させる方法などがあり駆動方法は限定されない。
【0049】
図2に表すように、プロジェクター6から光が光路8のように回転ドラム5に向けて出射された光が、通過を制限する円筒部11の開口部12を通過し、その通過した光がスクリーン13によって反射され、放物面鏡10内に光が入射する。
【0050】
プロジェクター6から回転ドラム5への光路8を説明する。正面、背面、右側面及び左側面用の4つのプロジェクター35、36、37及び38からそれぞれ異なる映像の光が回転ドラム5の円筒部11に向けて出射され、これらの4方向からの光のうち、回転ドラム5に設置された2つの開口部12が回転しながら瞬間的には常に正面及び背面、または右側面及び左側面の2方向から入射する光のみ通過させるという制限をする。
【0051】
したがって、前記円筒部11の開口部12は回転することによって、正面、背面、右側面及び左側面の方向から常に投影されるプロジェクター6からの光を、瞬間的には正面及び背面方向からの光と、右側面及び左側面方向からの光とを交互にスクリーン13上に入射させるというサイクルを繰り返している。
【0052】
回転ドラム5の回転数は、プロジェクター6から投影されるフレームの送り速度とスクリーン13の反射面の数とによって、1フレームがスクリーンに投影されるように決定される。
【0053】
まず、映像の送り速度について説明する。人などの動きをなめらかに投影することができる映像の送り速度は、20〜30フレーム/秒であり、これはテレビの映像の送り速度と略同一である。これに基づき、プロジェクターからの映像の送り速度を30フレーム/秒とする。
【0054】
そして、回転ドラム5の1回転で両面反射面を有するスクリーン13で2フレームを同時に反射できるので、回転ドラムの回転数は、フレームの送り速度30フレーム/秒をスクリーンの反射面数である2枚で除して求める。
【0055】
前記円筒部の開口部12を通過したプロジェクター6から投影された映像の光が、垂直に設置されたスクリーン13によってプロジェクター6からの入射角と同一の反射角で放物面鏡10内に反射され、放物面鏡10内で反射を繰り返して集光した結像が放物面鏡10上部開口部25に浮遊立像9となる。該浮遊立像9を観察者の視点4の方向などから見ることができ、スクリーン上の映像14の上下方向と放物面鏡10上部開口部に現われた浮遊立像9の上下方向は同一である。
【0056】
次に、プロジェクター6について説明する。プロジェクター6は装置を小型化するために短焦点のものが好ましく、また輝度は浮遊立像9の明るさと比例関係にあるので求める浮遊立像9の明るさになるように輝度を有するものを選択する。
【0057】
プロジェクター6は、正面、背面、右側面及び左側面の少なくとも4つのプロジェクター35、36、37及び38から構成され、回転ドラム5の回転軸15を中心とした同一円周上に均等間隔で配設されている。このとき前記プロジェクター35、36、37及び38は、スクリーン13の上方に投影できるように水平に対して上向き角度で設置する。
【0058】
これは、放物面鏡10の中心部に近い位置に投影するほど上部放物面鏡23の上部開口部25からより高い位置に結像し浮いた状態となるからであるが、過度な角度をつけるとスクリーン上の映像14の上部と下部との焦点差が拡大するため像の鮮明さが失われる。
【0059】
複数のプロジェクター6とスクリーン13との間隔は、結像する像の位置と大きさが下部放物面鏡24の下部開口部26から挿入させたスクリーン13に投影される像の位置と大きさに比例することから、可能な限り大きくしたいが、スクリーン上へ浮遊立像させたい範囲の映像がより鮮明に映し出されることなどの要件を考慮して複数のプロジェクター6とスクリーン13との間隔を決める。
【0060】
また、図8に示すようにプロジェクター6を水平に対して上向き角度αで設置するため、図7に示すように、原画20をスクリーン13上に投影すると縮尺調整前の画像21のように上下方向での縮尺が、上方にいくほど縮尺が大きくなるという逆台形歪が生じるので、以下の計算式によって前記逆台形歪を補正する。
【0061】
図8において、Aはプロジェクターレンズ、Xはスクリーン13上における投影可能範囲、WはプロジェクターレンズAからスクリーン13上端までの距離、LはプロジェクターレンズAからスクリーン13中心までの距離、RはプロジェクターレンズAからスクリーン13下端までの距離、αはプロジェクター6とスクリーン13の角度、βはプロジェクターレンズA中心からの像の広がりである。
【0062】
プロジェクターレンズAとスクリーン13への垂線の距離は、L×COS(α)と表される。
【0063】
プロジェクターレンズAからスクリーン13下端までの距離Rと、プロジェクターレンズAとスクリーン13への垂線の距離L×COS(α)の関係を表すと下記数式(1)または(2)のようになる。
【0064】
【数1】

【0065】
プロジェクターレンズAからスクリーン13上端までの距離Wと、プロジェクターレンズAとスクリーン13への垂線の距離L×COS(α)の関係を表すと下記数式(3)または(4)のようになる。
【0066】
【数2】

【0067】
式(2)及び(4)により、WとRの比は、下記式(5)または(6)で表される。
【0068】
【数3】

【0069】
WとRの比は歪であるから、W/Rの逆数であるR/Wの値で原画を補正した図8に示すような縮尺調整後の画像22を作成すればよい。
【0070】
次に、コンピューター7について説明する。コンピューター7には、台形歪に対する補正の画像処理手順と、複数映像の同時再生処理手順を記憶させておく。
【0071】
台形歪に対する補正の画像処理手順は、手順1でW値、R値を入力し記憶し、手順2で撮影画像を取り込み原画として記憶し、手順3で縮小率であるR/Wを算出し、手順4で記憶した原画の下端の横寸法を取得し、原画下端の横寸法を基準とし、原画上端の横寸法を前記原画下端の横寸法にR/Wの縮小率を乗じた横寸法に縮小し、手順5で縮小した上端と縮小しない下端間における原画の縮尺を漸変させて台形型原画を作成することを実行させるためのプログラムをコンピューターに組み込んでいる。
【0072】
同時再生手順は、手順1で少なくとも正面、背面、右側面及び左側面用の4台のカメラ31、32、33及び34から撮影した画像をコンピューターにそれぞれ別個のファイルに保管する。ここで、手順1の前準備として、4台のカメラ31、32、33及び34で撮影した映像のそれぞれのファイルにおけるスタート時の時間的タイミングを一致させるように編集をしておく。
【0073】
手順2でそれぞれ別個に保管されていたファイルを同時に再生することを実行するためのプログラムをコンピューターに組み込んでおり、正面、背面、右側面及び左側面用それぞれのプロジェクター35、36、37及び38に送信することができる。
【0074】
したがって、コンピューター7は、少なくとも4台以上のカメラからのそれぞれの撮影画像を入力し、これらを原画として保存後に、台形歪に対する補正の画像処理を行い、その後、複数映像の同時再生処理を行う。
【0075】
これらの画像歪補正処理及び同時再生処理が行われた映像がコンピューター7から少なくとも4つのプロジェクター6へ出力される。
【0076】
カメラは、正面、背面、右側面及び左側面用と少なくとも4台を使用し、被写体としての同一物体又は同一人物の静止画又は動画を、被写体を中心とした略円周上で撮影し、その撮像された画像をSDカードメモリなどの記録媒体によってコンピューター7に入力する。
【0077】
次に、本発明の使用について説明する。
【0078】
まず、正面、背面、右側面及び左側面用に少なくとも4台のカメラを準備し、該カメラにより、被写体としての同一物体又は人物の静止画又は動画を、被写体を中心とした略円周上で均等間隔を空けた位置から撮影し、該撮像された画像をSDカードメモリなどの記録媒体によってコンピューター7に入力する。
【0079】
コンピューター7は、正面、背面、右側面及び左側面の位置に配置した4台のカメラからの撮像をそれぞれ別のファイルに原画として保存し、その後、台形歪に対する補正の画像処理を行った。
【0080】
それからコンピューター7によって複数映像の同時再生処理を行うが、この同時再生処理後は、自動的に放物面鏡10の上部開口部25に立像を浮遊させるまでのプロセスが進行する。
【0081】
コンピューター7による台形歪に対する補正の画像処理や複数映像の同時再生処理ができた映像を、コンピューター7から、正面、背面、右側面及び左側面用に配設されているプロジェクター35,36,37及び38に送信する。
【0082】
4台のプロジェクター35,36,37及び38からの投影される映像がスクリーンに向けて上向き角度をもって同時に出射される。
【0083】
出射された光は、所定の回転速度で回転する回転ドラム5に配設された円筒部11の開口部12から入射したときのみ、前記円筒部と一体となって回転するスクリーン13の表裏面に存する反射面に投影される。
【0084】
垂直に設置されたスクリーン13の反射面に入射した光は、スクリーン13反射面に対する入射角と同一の出射角で反射され放物面鏡10内に入射する。
【0085】
放物面鏡10内に入射した光は、放物面鏡10内での反射を繰り返して最終的に放物面鏡10の上部開口部25に立像を浮遊させる。
【0086】
次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例により限定されるものでない。
【実施例】
【0087】
放物面鏡10は、直径28インチ、高さ8インチ、開口部径6インチのものを準備した。
【0088】
回転ドラム5は、直径16cm、高さ16cm、幅0.4cm、開口部の大きさ11cm×8cm(最大幅)、黒色に塗装し、材質をセラミックで製作した。
【0089】
プロジェクター6は、型式KG−PL105S(加賀コンポーネント株式会社製)を使用した。
【0090】
プロジェクター6から30フレーム/秒の映像を投影させること、及び前記プロジェクター6からの映像が2枚の反射面を有するスクリーン13に投影されることから、回転ドラム5の回転数を15回転/秒、900rpmとした。
【0091】
プロジェクター6の水平に対する上向き角度を12度とした。これはスクリーン13のより上部に投影させるために上向き角度を大きくしたいことと、上向き角度が大きすぎるとスクリーン13上に投影された映像の上部と下部との焦点差が大きくなることとのバランスを検討して決定した。
【0092】
図8において、プロジェクターレンズAからスクリーン13上端までの距離Wを27cm、プロジェクターレンズAからスクリーン13中心までの距離Lを25cm、プロジェクターレンズAからスクリーン13下端までの距離Rを23cmとした。
【0093】
そして、W値とR値をコンピューター7に入力し、コンピューター7により、23cm/27cmから台形歪補正率0.85が求められた。
【0094】
以上の準備後に、正面、背面、右側面及び左側面用に配置した4台のカメラ31、32、33及び34で人物を撮影し、コンピューター6に入力した。
【0095】
コンピューター7によって、撮影した画像をカメラ31、32、33または34ごとにそれぞれ用のファイルに保管し、画像の下端を基準として上端を台形歪補正率0.85によって補正する画像処理が実行された。
【0096】
そして、以下のプロセスが自動で実行された。それぞれのファイルの保管された画像を同時再生処理するとともに、それぞれの画像を4台のプロジェクター35、36、37及び38に30フレーム/秒の速度で送り、前記4台のプロジェクター35、36、37及び38から回転ドラムのスクリーン13に向けて投影された。
【0097】
900rpmで回転する円筒部11の開口部12を通過した光は、垂設されたスクリーン13上に投影され、該スクリーン13反射面に入射した光は、スクリーン13反射面に対する入射角と同一の出射角で反射され放物面鏡10内に入射した。
【0098】
放物面鏡10内に入射した光は放物面鏡10内で反射を繰り返した後、放物面鏡10の上部開口部25に約10cmの人物立体像を結像させた。該人物立体像を浮遊させた放物面鏡の周囲を回りながら、正面、背面、右側面及び左側面から立像状態を確認することができた。
【符号の説明】
【0099】
1 放物面鏡
2 静止物体
3 結像
4 観察者の視点
5 回転ドラム
6 プロジェクター
7 コンピューター
8 光路
9 浮遊立像
10 放物面鏡
11 円筒部
12 開口部
13 スクリーン
14 スクリーン上の映像
15 回転軸
16 モーター
17 コロ
20 原画
21 縮尺調整前の画像
22 縮尺調整後の画像
23 上部放物面鏡
24 下部放物面鏡
31 カメラA
32 カメラB
33 カメラC
34 カメラD
35 プロジェクターA
36 プロジェクターB
37 プロジェクターC
38 プロジェクラーD
A プロジェクターレンズ
X 投影可能範囲
W プロジェクターレンズからスクリーン上部までの距離
L プロジェクターレンズからスクリーン中心部までの距離
R プロジェクターレンズからスクリーン下部までの距離
α プロジェクターとスクリーンの角度
β プロジェクターレンズ中心部からの広がり角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放物面を形成する鏡を上下に対設しそれぞれの中心部に開口部を有する放物面鏡と、該放物面鏡下部に垂設され、下部放物面鏡開口部より放物面鏡内に一部を突出させた平板状のスクリーンと、該スクリーンの前記放物面鏡内に突出しない部分を包囲するように周設され、一部に開口部が形成された円筒状の円筒部と、前記放物面鏡下部に配設され、前記放物面鏡開口部中心軸の延長線上に回転軸を有し前記スクリーンと前記円筒部とを連結させて回転する回転ドラムと、該回転ドラムの回転軸を中心とする同一円周上に均等間隔で配設した複数のプロジェクターと、複数の撮影画像を入力し該撮影画像の画像歪補正処理及び同時再生処理をするコンピューターと、を含む手段からなることを特徴とする浮遊立体表示装置システム。
【請求項2】
円筒部に形成された開口部が前記回転ドラムの回転軸を中心にした対称位置に設けられた2つの四角形状の開口部であり、前記開口部の開口幅が調整可能機構を有することを特徴とする請求項1に記載の浮遊立体表示装置システム。
【請求項3】
平板状のスクリーンの面が前記円筒部の開口部面と平行な位置関係で配設され、前記スクリーンの表裏両面が反射面であることを特徴とする請求項1または2に記載の浮遊立体表示装置システム。
【請求項4】
複数のプロジェクターからの映像の上端が前記スクリーンの放物面鏡内に突出させた部分の上端近傍に投影されるように、前記複数のプロジェクターが同一角度で斜め上向きに設置されることを特徴とする請求項1乃至3にいずれかに記載の浮遊立体表示装置システム。
【請求項5】
コンピューターに、スクリーンの反射面に投影された映像の上端から下端までの縮尺を一致させる画像歪補正処理プログラムを組み込んだことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の浮遊立体表示装置システム。
【請求項6】
コンピューターに、Wをプロジェクターのレンズ中心位置からスクリーン上の映像上端までの距離、Rをプロジェクターのレンズ中心位置からスクリーン上の映像下端までの距離とすると、W値、R値を入力し記憶する手順、撮影画像を取り込み原画として記憶する手順、縮小率であるR/Wを算出する手順、記憶した原画の下端の横寸法を取得し、原画下端の横寸法を基準とし、原画上端の横寸法を前記原画下端の横寸法にR/Wの縮小率を乗じた横寸法に縮小する手順、縮小した上端と縮小しない下端間における原画の縮尺を漸変させて台形型原画を作成する手順を実行する画像歪補正処理プログラムを組み込んだことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の浮遊立体表示装置システム。
【請求項7】
コンピューターに同一被写体を複数の少なくとも4つの異なる方向から撮影した映像を記憶する手順、該記憶した少なくとも4つの映像を同時に再生する手順を実行させるための同時再生プログラムを組み込んだことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の浮遊立体表示装置システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−150213(P2011−150213A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12829(P2010−12829)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(500105137)株式会社ミウラ (2)
【Fターム(参考)】