説明

海洋の生物付着防止コーティング及びこのコーティングを施す方法

【課題】海洋物品に生物が付着するのを防止するコーティング、海洋物品(12)にコーティングを適用する方法に係わる。
【解決手段】海洋の物品(12)の表面に適用する海洋生物付着防止コーティング(10)。コーティング(10)は、自己平滑性、自己硬化性のエポキシ樹脂プライマー接着剤(14)、接着性変性エポキシ樹脂バインダー接着剤(16)及び細粒化された銅ニッケル合金(18)から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋の生物付着防止コーティング及びこのコーティングを施す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水に相当の期間放置する物品、すなわち、例えば、船舶の船体等の海洋の物品は、それらに海洋生物が付着するのを防止するために保護する必要があり、木材からなる船体の場合、トレドワーム(Toredo worm)やキクイムシ(Gribble)等の海中で木に穴を開ける虫によって、それらに穴を開けられるのを防止する必要がある。現在、これは付着防止塗料を海洋物品にコーティングすることで実現されている。
【0003】
初期の付着防止塗料は、有効成分として亜酸化銅(Cuprous-Oxide)を含んでいた。しかし、それらの効果は低かった。より最近の付着防止塗料は、有効成分として亜酸化銅と、スズとトリ−ブチル−スズ(Tri-Butyl-Tin)の両方の合成物(TBTs)を含んでいた。こうした塗料はより高い効果を有したが、人間及び通常の海の環境の両方に対して有毒であり、これらの使用は、甲殻類を含む海洋生物に被害を与えた。TBTsの使用は、現在25メートル未満の全ての船舶で禁止されている。
【0004】
例えば、船舶の船体といった付着防止塗料を有する海洋物品を扱うために、物品は海から運び出さなければならず。既に付着している海洋生物は取り除かなければならないし、付着防止塗料が施される前に、塗布された部分はきれいにこすり落とさなければならない。この処理は理想的には、毎年実行されるべきであるが、時間の浪費であり、不快で、高価なものである。加えて、全ての処理は、処理される海洋物品内部に機械的なストレスを与える可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の特徴によれば、
コーティングされる表面上に施されるプライマー接着剤、
プライマー接着剤の全面上に施されるバインダー接着剤と、
バインダー接着剤の全面に提供される金属材料と、バインダー接着剤とプライマー接着剤によって、コーティングされる面に金属材料を固着し、
コーティングされた面が海中に沈められたとき、金属酸化層が金属材料の外表面に形成されるような、水に接したとき酸化される1又はそれ以上の金属で構成される金属材料から構成されてなる。
海洋生物付着防止コーティングが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
金属材料は銅で構成しても、銅合金で構成してもよい。金属材料は好ましくは、銅ニッケル合金で構成される。銅ニッケル合金は好ましくは88%の銅と10%のニッケルと、残りの2%は鉄及びマンガンで構成される。
【0007】
金属材料は好ましくは細粒化される。細粒は好ましくは250ミクロン以下の直径を有し、より好ましくは10ミクロンから250ミクロンの間の直径を有する。細粒は好ましくは実質的に球形で、より好ましくはタイプはガス噴霧法によって作製される。
【0008】
プライマー接着剤は、好ましくは自己硬化性接着剤である。プライマー接着剤は好ましくは自己平滑化性接着剤である。プライマー接着剤は好ましくは、エポキシ樹脂系接着剤で、より好ましくは無溶媒性シクロ脂肪族/脂肪族アミン硬化性ビスフェノールA型エポキシ樹脂の2成分で構成される。
【0009】
バインダー接着剤は、好ましくは自己硬化性接着剤である。バインダー接着剤は好ましくは長い硬化時間を有する。バインダー接着剤は好ましくは接着性変性エポキシ樹脂であり、より好ましくは1又はそれ以上のチキソトロープ剤(thixotropic agents)を付加したエポキシ樹脂で構成される。エポキシ樹脂は好ましくは無溶媒性シクロ脂肪族/脂肪族アミン硬化性ビスフェノールA型エポキシ樹脂系で構成される。チキソトロープ剤は好ましくは自由流動型ドライアモルファス材料で構成される。バインダー接着剤は好ましくは金属材料の細粒の直径の2/3以下の厚さの層として設けられる。
【0010】
本発明のさらなる特徴によれば、コーティングされる面に本発明の第1の特徴による海洋生物付着防止コーティングを設ける方法が提供され、その方法は、
表面にプライマー接着剤の層を設け、
プライマー接着剤を硬化させ、
プライマー接着剤の層の上にバインダー接着剤の層を設け、そして、
バインダー接着剤の層の上に金属材料の層を設ける。
【0011】
金属材料が細粒化された金属材料である場合、細粒は、好ましくはバインダー接着剤の層にスプレーされ、より好ましくは圧力式のスプレー装置を使用する。細粒はファン又はコーン形状の細粒散布機能を有するスプレーで、好ましくはバインダー接着剤の層にスプレーされる。細粒は好ましくはバインダー接着剤の上に実質的に平滑に散布される。
【0012】
プライマー接着剤は、好ましくは表面にスプレーされる。あるいはプライマー接着剤は、ローラ手段を使用して表面に施される。
【0013】
バインダー接着剤の層は好ましくはバインダー接着剤の薄い層を構成し、より好ましくは、金属材料の細粒の直径の2/3以下の厚さを有する。
【0014】
方法は、プライマー接着剤を施す前に、コーティングされる面の油脂や油のような既に存在するコーティング材料及び/又は汚染物質を洗浄する、付加的な洗浄の工程で構成される。本発明の第1の特徴によれば、
キャリアー膜と、
キャリア膜の一方の表面上に施された第1の接着層と、及び第1の接着層の最上面に施された金属材料層と、その接着剤によってキャリア膜に金属材料が固着され、
コーティングが海中に沈められたときに、酸化金属層が金属材料の外側表面に形成されるような、水に接したとき酸化される1又はそれ以上の金属で構成される金属材料から構成されてなる
海洋の生物付着防止コーティングが提供される。
【0015】
金属材料は、好ましくは銅ニッケル合金で構成される。銅ニッケル合金は好ましくは88%の銅、10%のニッケル、残りの2%は鉄及びマンガンで構成される。
【0016】
金属材料は、好ましくは細粒化され、より好ましくは細粒は10ミクロンから200ミクロンの間の大きさを有する。
【0017】
キャリア膜は好ましくは不透水性材料で構成され、より好ましくは不活性の不透水性材料である。キャリア膜は好ましくは非伸縮性材料である。キャリア膜は、ポリエステルのような合成プラスチック材料で構成される。キャリア膜は、シート又は細長いストリップで形成してもよい。
【0018】
第1の接着層は、好ましくは熱硬化性の接着剤、光学的硬化性の接着剤又は化学的硬化性の接着剤の層で構成される。
【0019】
コーティングは、さらにコーティングされる面にコーティングを固着させるために、キャリア膜の反対に設けられた第2の接着層で構成してもよい。第2の接着層は、エポキシ樹脂又はアクリル接着剤の層で構成してもよい。除去可能なバッキング層は、第2の接着層の全体に提供され、バッキング層は、コーティングされる表面にコーティングを適用する前に第2の接着層を露出するよう除去される。
【0020】
第1及び第2の接着層は、好ましくは海水中で長い期間の浸水に耐久性がある接着剤で構成される。
【0021】
さらなる本発明の特徴によれば、海洋生物付着防止コーティングを製造する方法が提供され、その方法は、
キャリア膜の一方の側に第1の接着層を塗布し、
第1の接着層の最上層に金属材料層を提供し、
第1の接着層及びキャリア膜に金属材料を接着するために金属材料層に圧力を加えるものである。
【0022】
金属材料は、好ましくは細粒化され、細粒は第1の接着層の上に散布される。金属材料の細粒は、好ましくはふるいを通って第1の接着剤層上に散布される。
【0023】
圧力は、好ましくは一対のローラ間をコーティングを通すことによって、細粒化された金属材料層に適用される。ローラーは金属材料の細粒に圧力を与え、それらを第1の接着層に固着させる。
【0024】
方法は、第1の接着層を硬化するため、細粒化した金属材料層を接着剤に固着させるためのさらなるステップで構成してもよい。接着剤は熱硬化、光学硬化、又は化学硬化でもよい。
【0025】
方法は、キャリア膜の反対側に第2の接着層を塗布し、コーティングされる表面にコーティングを固着するためのステップをさらに構成してもよい。方法は、さらに、第2接着層の最上層に、コーティングされる表面にコーティングを適用する前に、第2接着層を露出するため除去される除去可能なバッキング層を設けてもよい。
【0026】
本発明のさらなる特徴によれば、海洋生物付着防止コーティングを製造するための装置が提供される。その装置は、
キャリア膜の一方側に第1の接着層を設けるため操作可能な接着塗布手段、
第1の接着層上に細粒化された金属材料を散布するため操作可能な金属材料塗布手段、
細粒化された金属材料層上に圧力を与え、それによって細粒を第1接着層に圧入するため操作可能な圧力塗布手段からなる。
【0027】
金属材料塗布手段は好ましくは、細粒化された金属材料を貯蔵する貯蔵ホッパー及び第1の接着材層に細粒化された金属を散布する散布ヘッドで構成される。散布ヘッドは、好ましくは、細粒化された金属材料を第1接着層に散布するふるいで構成される。
【0028】
圧力提供手段は、好ましくは一対のローラで構成され、より好ましくは、硬い表面を有する一対のピンチローラーである。圧力提供手段は、さらに好ましくは、ローラーによって与えられる圧力量を適正化するため操作可能な圧力調整手段で構成される。それぞれのローラーの表面は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような汚れ防止材料でコーティングされる。
【0029】
装置はさらに第1の接着層を硬化するため操作可能な接着剤硬化手段で構成される。接着剤硬化手段は、好ましくは圧力提供手段の後に設けられる。接着剤硬化手段は、接着剤を加熱し、それによって接着剤を熱硬化させるため操作可能なオーブンで構成される。
【0030】
あるいは、接着剤硬化手段は、接着剤の重合を引き起こす光学シグナルに接着剤を露出する光学的シグナルを発生させるため操作可能な光源で構成してもよい。光源は、好ましくは、狭いスペクトルバンド幅、好ましくは光学スペクトルの紫外線領域内又は光学スペクトルの赤外線領域内に位置するスペクトル幅を有する光学シグナルを発生させるため操作可能である。
【0031】
あるいは、接着剤硬化手段は、さらにコーティングが1又はそれ以上の触媒化学物質に露出される硬化用チャンバーで構成してもよい。化学物質は、コーティングが硬化チャンバー内で浸漬される液体又はガス内に提供されてもよい。
【0032】
接着剤塗布手段は、さらにキャリアー膜の反対側に第2の接着層を提供するために操作可能でもよい。
【0033】
装置は、さらに第2の接着層の最表面層に除去可能なバッキング層を提供する手段で構成する。バッキング層は、コーティングされる表面にコーティングを提供する前に第2接着層を露出するため除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
発明の実施例が、以下の添付した図面に関して、実施例のみの手段によって、ここに詳細に記述される。
【0035】
図1を参照すると、本発明の実施例1の海洋生物付着防止コーティング10を提供する。コーティング10は、船の船体のような海洋物品12の表面に適用するものである。
【0036】
コーティング10は、プライマー接着剤14、バインダー接着剤16及び金属材料18とからなる。
【0037】
この実施例では、プライマー接着剤14は、コーティングされる面12上の層として塗布される、自己平滑化、2成分、低温硬化(すなわち、自己硬化性)、無溶媒性シクロ脂肪族/脂肪族アミン硬化性ビスフェノールA型エポキシ樹脂の形式をなす。バインダー接着剤16は、この実施例では、樹脂系にチキソトロピーを付与する自由流動性のドライアモルファスを含む無溶媒性シクロ脂肪族/脂肪族アミン硬化性ビスフェノールA型エポキシ樹脂系の形式をなす接着性変性エポキシ樹脂で構成される。この実施例では、プライマー接着剤14は、0〜250μmの厚さを有する。
【0038】
バインダー接着剤16は、プライマー接着剤の全面に薄いフィルムのように適用されることになる。
【0039】
金属材料18は、細粒化した銅ニッケル合金で構成され、それはバインダー接着剤16の上に適用される。ここで使用される銅ニッケル合金18は銅88%、ニッケル10%、鉄及びマンガンからなる残りの2%(重量%)とで構成される。銅ニッケル合金18の細粒は、当業者によく知られているガス噴霧法によって作製される。ここでは詳細は記述しない。細粒は、通常球形で、250μm以下の直径を有する。この実施例では、細粒は、少なくとも150μmの直径を有する。
【0040】
バインダー接着剤16のフィルムは、銅ニッケル合金の細粒18の直径の2/3以下の厚さを有する。この実施例では、バインダー接着剤は、0〜60μmの厚さを有する。
【0041】
本発明の実施例2は、以下に示すように実施例1のコーティング10を施す方法を提供する。
【0042】
方法は、海の外、例えば乾ドック内で海洋物品に施される。この実施例において船舶の船体12の外側表面であるコーティングされる表面は、最初に以前に塗布された現存するコーティング又は塗料、油脂、油及びその他のあらゆる汚染物質を除去するため、徹底的に洗浄される。
【0043】
一旦表面12が清潔になったら、プライマー接着剤14の層が、従来からあるローラーを使用して表面12の上に塗布される。プライマー接着剤14は、代わりに表面12の上にスプレーしてもよい。プライマー接着剤14は、その後、自己平準化及び自己硬化のため放置される。プライマー接着剤は、表面12をシールするために機能し、表面12のあらゆる欠損を覆う。プライマー接着剤14の層は、バインダー接着剤16の優れた接着用下地を提供する。
【0044】
プライマー接着剤14の硬化の後に、バインダー接着剤16の層は、プライマー接着剤14の層の上に塗布される。プライマー接着剤14とバインダー接着剤16の間の化学的な性質による相互作用によって、こうした2つの層の間に強力な接着を形成する。
【0045】
バインダー接着剤16は、従来のローラーを使用して薄いフィルムとして提供される。バインダー接着剤16は、銅ニッケル合金細粒18の直径の2/3以下の厚さを有することとなるように提供される。これは、その領域に施されるバインダー接着剤16の容積の精密な測定とともに、コーティングされる面12領域の精密な測定によって達せられる。
【0046】
バインダー接着剤16は、高密度材料の重さを支えることができる層として提供される。本ケースでは、銅ニッケル合金細粒18が硬化しない状態の間に提供される。バインダー接着剤16は、そこに銅ニッケル合金細粒18を散布するのに十分長い時間を提供するため、長い硬化時間を有する。
【0047】
バインダー接着剤16の塗布に続いて、細粒化した銅ニッケル合金18は、バインダー接着剤16の上に施される。この実施例では、銅ニッケル合金細粒18は、細かい噴霧の細粒18を散布することのできるファン又はコーン形状を有するスプレーを備えた加圧スプレーシステムを使用してバインダー接着剤16の上にスプレーされる。スプレー装置は、接着性のバインダー接着剤16の上に細粒18を「散布」するために、低圧のシステムを使用する。細粒18は、表面12をコーティングしたバインダー接着剤16の全面に渡って実質的に均一に分散される。
【0048】
バインダー接着剤16は、銅ニッケル合金細粒18の散布に続いて、硬化を続けるため放置される。数時間後、バインダー接着剤16をその表面で層に銅ニッケル合金細粒18を固着して、硬く耐久性がある堅牢な表面に重合し、硬化し始める。
【0049】
本ケースでは銅ニッケル合金細粒18である金属材料は、コーティング10の最外層を構成する。コーティングされた海洋物品12は、海に沈めたとき、金属材料18が海水に晒される。
【0050】
図2に図示されたように、コーティング10が海水に沈められると、銅ニッケル合金細粒18の層の外部表面に複合金属酸化物のフィルムを生じさせる水と銅ニッケル合金18との間で化学反応が起こる。酸化フィルム20は、海生生物及び水生のキクイムシにとって生存しにくい環境を作り出す。これによって、コーティングされた海洋物品に生物付着が発生するのを防止することができる。
【0051】
銅ニッケル合金細粒18の球状の性質により、コーティング10の有効露出表面積は、コーティングされた表面12の実際の面積より少なくとも30%広くなる。
【0052】
様々な設計変更が発明の範囲から逸脱しない範囲でなされる。例えば、銅ニッケル合金は、記述されたものとは異なる構成であってもよい。金属材料は、代わりに、銅または異なる銅の合金の細粒で構成してもよい。細粒は記述されたものとは異なる形状のものであってもよい。細粒は記述されたものと異なる直径であってもよく、及び250μm以下の直径のものであってもよい。
【0053】
海洋生物付着防止コーティングは記述されたものとは異なる海洋物品に適用されてもよい。プライマー接着剤は、記述されたものとは異なるタイプの接着剤で構成してもよい。バインダー接着剤は記述されたものとは異なるタイプの接着剤で構成してもよい。
【0054】
記述された実施例は、次に示すように様々な利点を提供する。海洋生物付着防止コーティングは、ガラス強化プラスチック、コンクリート、スチール、アルミニウム、木、熱可塑性プラスチック材料及びセラミックスを含む材料の広い範囲での使用に適している。コーティングは、不揃い又はムラのある表面、例えばボートの船体にコートすることを可能にし、保護のため海洋物品の表面に直接適用される。
【0055】
金属材料の層は堅牢で、金属材料の外表面で形成される酸化被膜は腐食からコーティングを保護する。この発明に係る海洋生物付着防止コーティングは、従来の付着防止塗料のそれより耐用年数が何倍も長く、現在利用できる付着防止塗料と比較しても長い耐久性を有する。コーティングのメンテナンスは、その耐用年限の間、全く必要とされないか、又は最小限でよい。コーティングは堅牢で耐久性のある外部表面を有する海洋物品を提供し、それは、例えば環索で持ち上げたときの軽度の摩耗、直接の接触に対しても抵抗性がある。
【0056】
コーティングは、1年以上の間持続し、一般に環境に優しく、付着に対して効果的な保護を備えたコーティング海洋物品を提供する。コーティングは、不活性で、非有害物質を用いて作製されていて、合成殺傷剤を含んでいない。
【0057】
細粒の粒子形状を有する金属材料の適用によって、コーティングされた海洋物品を曲げることも可能である。
【0058】
コーティングは、コーティングされた表面の面積の大体130%と等しい有効面積を有する生物付着防止表面を有する。
【0059】
図3を参照すると、発明の実施例1は、キャリアー膜22、接着層24及び金属材料層26で構成される海洋生物付着防止コーティング10を提供する。
【0060】
この実施例では、キャリアー膜22は、シート、又は非伸縮不透水性ポリエステル膜の幅広の1本のテープで構成される。キャリア膜22は、コーティング10のコアを形成し、接着層24を支持する。接着層24は、例えばその特性は海中での長期間の浸水によって影響を受けない海中の長い期間の浸水に耐久性のある接着層で構成される。この実施例では、接着剤は、熱硬化性エポキシである。
【0061】
金属材料26の層は、細粒化した銅ニッケル合金の層で構成される。合金内のニッケルに対する銅の比率は、鉄とマンガンに配分される総合金(2%)の僅かな比率を含み、ニッケル1部に対し銅9部の精密な精度に管理されている。細粒は、10μmから200μmの間の大きさを有する。銅ニッケル合金の細粒は、金属材料層26を形成するために、実質的に均一に接着層24に分散される。
【0062】
細粒化された金属から金属材料26の層を形成すれば、コーティング10の適用中及び使用中に、曲げることを可能にし、表面に不揃いな形状を有していても、コーティング10の施される表面の形状に極めて一致させることを可能にする。
【0063】
図6に示された発明に係る実施例2の装置30を使用し、以下に示す本発明の実施例3の方法を使用して、コーティングがなされる。接着剤の塗布装置22は、キャリア膜22の一方の側面に接着剤24の層を塗布する。接着層24を付加されたキャリア膜22は、その後、細粒化された銅ニッケル合金26の層が接着層24の最上面に散布される金属材料塗布手段36に送られる。
【0064】
この実施例では、金属材料塗布手段34は、細粒化された銅ニッケル合金36が貯蔵され、細粒化された銅ニッケル合金を接着層34に散布するふるい38形状の分散ヘッド貯蔵ホッパー36で構成される。
【0065】
一旦、接着層34に散布されると、細粒化された銅ニッケル合金36は、以下のように接着層34に固着される。コーティング10は、硬い表面を有する一対のピンチローラーを通すように送られ、銅ニッケル合金の細粒26は接着層24に押し込まれる。ローラー40は、コーティング10の上に適用される圧力量を、例えば異なる厚さの金属材料層26に合わせて調整可能に取り付けられる。ローラー40は、例えば、PTFEのような汚れ防止コーティングがなされていて、銅ニッケル合金細粒26及び接着剤がローラー40の表面に貼り付くのを防止している。
【0066】
その後、コーティング10は、接着層24を熱硬化させるオーブン42内で高温に加熱され、それによって接着層内に銅ニッケル合金細粒の位置が固定され、キャリアー膜22に接着層24が固着される。
【0067】
異なるタイプの接着剤が接着層に使用され、ことなるタイプの硬化プロセスを必要とするかもしれないことが理解される。例えば、接着剤が光学的に硬化可能で、光源への接着剤の露出が接着剤の重合を引き起こす場合は、オーブン42は、光学スペクトラムの紫外線又は赤外線の範囲内にある狭いスペクトラムのバンド幅を発する光学的シグナルを発生させるよう操作可能な光源によって置き換えられるであろう。あるいは、接着剤が化学的に硬化可能である場合、オーブン42は、コーティング10を1又はそれ以上の触媒化学物質に露出する硬化チャンバーによって置き換えられるであろう。触媒に露出することによって触媒作用により接着剤は硬化される。触媒化学物質は、コーティングを硬化チャンバー内で浸漬させる液体又はガス内に加えられる。
【0068】
使用に際しては、コーティング10は、船舶の船体及びキャリア膜22の一方の何れか又は両方に適用される第2の接着層を用いて船の船体のような海洋物品の外部表面に適用される。それゆえ、金属材料層26はコーティング10の適用に続く最外層をなす。この工程は、例えばドライドッグ内のように、海の外で海洋物品に施される。
【0069】
さらに本発明の別の実施例は、図5に示されるように海洋生物付着防止コーティング50が設けられる。この実施例によるコーティング50は、実質的に以下の変更があるが実質的に第1実施例のコーティング10と同じである。同じ参照番号が関連する部分に用いられる。
【0070】
本実施例によるコーティング50は、追加的に第2の接着層及び除去可能なバッキング層54で構成される。第2の接着層52は、キャリアー層22の反対側に設けられる。第1の接着層24と同様に、第2の接着層52は海中での長期間の浸水に抵抗する接着層で構成される。第1の実施例のコーティング10と対照的に、コーティング50は自己接着性である。
【0071】
除去可能なバッキング層54は、第2の接着層42の最表面層に設けられ、保護される海洋物品の表面に適用されるコーティング50に先だって第2の接着層52を保護する役割を果たす。使用に際して、バッキング層54は除去され、コーティング50が海の外で海洋物品に固着される。
【0072】
上記で記述された製造工程は、第4の実施例のコーティング50を製造するのに用いられるとき、以下のさらなるステップを含む。第2の接着層52は、キャリア膜22の反対側に塗布され、除去可能なバッキング層は第2の接着層の52の最表面層に適用される。第2の接着層52は接着剤の塗布手段32を使用して塗布される。上記で記述された製造方法のステップの前又は後の何れで第2の接着層52及びバッキング層54を施してもよい。
【0073】
図6は、使用中のコーティング50がボートの船体のような海洋物品の外部表面に塗布されたもを示す。
【0074】
コーティング50は、海洋物品が海中にあるときに、細粒化された銅ニッケル合金26が海62に晒されるように海洋物品に施される。海水62及び銅ニッケル合金26の間で起こる化学的な反応の結果によって、複合金属酸化物64のフィルムが細粒化された銅ニッケル合金26の層の外側表面に形成される。酸化フィルム64は海生生物及び海生キクイムシにとって生存しずらい環境を形成し、それによって、コーティングされた海洋物品に生物付着が発生するのを防止する。
【0075】
上記に記載された実施例は、以下のように様々な利点を有する。酸化フィルムは、薄いが耐久性が高く、その堅牢性と腐食に対する相対的な不活性のため、最近の非付着塗料と比較して細粒化された銅ニッケル合金の層は耐用年数が長い。記述した生物付着防止コーティングの1回の適用が長年持続し、毎年の処理の必要もなく、その耐用年限の間、ほとんど又は全くコーティングのメンテナンスをする必要がない。記述されたコーティングは、一般的に環境に優しく、結果としてほとんど又は全く海の環境への汚染がない。
【0076】
様々な設計変更が本発明から逸脱することなく行うことができる。例えば、キャリアー膜22は異なる材料で形成してもよく、また異なる接着剤を記述したものに代えて使用してもよい。金属材料は、記述したものに代わり、異なる金属合金、金属の組み合わせで構成してもよく、また銅ニッケル合金は記述されたものと異なる構成であってもよい。
【0077】
海洋生物付着防止コーティングを製造する装置を参照すると、圧力は、記述されたローラーと異なる配置で使用して適用してもよく、細粒化された金属材料は、記述されたのと異なるメカニズムを使用した接着層に散布してもよい。
【0078】
海洋物品に適用されるコーティングの前に、金属酸化フィルムを金属材料層に存在させるように、コーティングは海中又は希酸性溶液に浸漬して前処理をしてもよい。この前酸化処理は、それの使用に先立って製造工程の一部として、又はそれを使用する前の最終製品に行ってもよい。これは特に海中に周期的にあるいは繰り返し浸水する部分に使用してもよいが、絶えず海中に浸水しない部分にも役に立つであろう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明の実施例に関する海洋生物付着防止コーティングの一部の概略断面図である。示されたコーティングは海洋物品の表面に適用されている。
【図2】図2は、海中に海洋物品を浸水させた後の図1の海洋生物付着防止コーティングの一部の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1に関する海洋生物付着防止コーティングの一部の概略断面図である。
【図4】図4は、図3の海洋生物付着防止コーティングを製造するための装置の概略図である。
【図5】図5は、本発明の実施例2に関する海洋生物付着防止コーティングの一部の概略断面図である。
【図6】図6は、海中に海洋物品を浸水させた後の図4の海洋生物付着防止コーティングの一部の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされる面上に施されるプライマー接着剤、
プライマー接着剤の全面上に施されるバインダー接着剤と、
バインダー接着剤の全面に施される金属材料と、バインダー接着剤とプライマー接着剤によって、コーティングされる面に金属材料を固着し、
コーティングされた面が海中に沈められたとき、金属酸化層が金属材料の外表面に形成されるような、水に接したとき酸化される1又はそれ以上の金属で構成される金属材料から構成されてなることを特徴とする海洋生物付着防止コーティング。
【請求項2】
金属材料は、銅又は銅合金で構成されることを特徴とする請求項1記載のコーティング。
【請求項3】
銅合金は、88%の銅、10%のニッケル、鉄及びマンガンからなる残りの2%から構成されることを特徴とする請求項2記載のコーティング。
【請求項4】
金属材料は細粒化されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコーティング。
【請求項5】
細粒は、250ミクロン以下の大きさであることを特徴とする請求項4記載のコーティング。
【請求項6】
細粒は、実質的に球形であることを特徴とする請求項4又は5に記載のコーティング。
【請求項7】
プライマー接着剤は、自己硬化性及び自己平滑化性であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のコーティング。
【請求項8】
バインダー接着剤は、自己硬化性であることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のコーティング。
【請求項9】
バインダー接着剤は、接着剤の変性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項8のいずれかに記載のコーティング。
【請求項10】
バインダー接着剤は、自由流動型のドライアモルファス材料を含む無溶媒性シクロ脂肪族/脂肪族アミン硬化性ビスフェノールA型エポキシ樹脂系で構成されることを特徴とする請求項9に記載のコーティング。
【請求項11】
バインダー接着剤は金属材料の細粒の直径の2/3以下の厚さを有する層として塗布されることを特徴とする請求項6から10の何れかに記載のコーティング。
【請求項12】
コートされる表面に前記1から11のいずれかに記載の海洋生物付着防止コーティングを施す方法であって、
表面にプライマー接着剤の層を設け、
プライマー接着剤を硬化させ、
プライマー接着剤の層の上にバインダー接着剤の層を設け、そして、
バインダー接着剤の層の上に金属材料の層を設けてなることを特徴とする方法。
【請求項13】
金属材料は、細粒化された金属材料で、細粒は圧力スプレー装置を使用してバインダー接着剤層の上にスプレーされることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細粒はファン又はコーン形状の細粒散布装置を有するスプレーでバインダー接着剤層にスプレーされることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
細粒はバインダー接着剤の全面に実質的に平面に散布されることを特徴とする請求項13又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
プライマー接着剤は、ローラー手段を使用して表面にスプレー又は塗布されることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
バインダー接着剤は、金属材料の細粒の直径の2/3以下の厚さを有するバインダー接着剤の薄いフィルムで構成されることを特徴とする請求項13から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
方法は、追加的にプライマー接着剤を施す前に、コーティングされる面の油脂や油のような既に存在するコーティング材料及び/又は汚染物質を洗浄する洗浄工程で構成されることを特徴とする請求項12から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
添付された図面を参照して実質的に上記に記載された海洋生物付着防止コーティング。
【請求項20】
添付された図面を参照して実質的に上記に記載された海洋生物付着防止コーティングを施す方法。
【請求項21】
キャリア膜と、
キャリア膜の1つの面に塗布された第1の接着層と、
第1の接着層の最表面に提供された金属材料層と、接着剤によって金属材料はキャリア膜に固着され、
コーティングが海中に沈めたときに、金属酸化層が金属材料層の外側表面に形成されるように、水に接したときに酸化する1又はそれ以上の金属で構成されることを特徴とする海生生物付着防止コーティング。
【請求項22】
金属材料は、88%の銅、10%のニッケル、鉄及びマンガンからなる残りの2%から構成されることを特徴とする請求項1記載のコーティング。
【請求項23】
金属材料は10ミクロンから200ミクロンの間の大きさを有する細粒に、細粒化されていることを特徴とする請求項21又は22記載のコーティング。
【請求項24】
キャリア膜は不浸透性材料のシート又は細長いストリップで構成されていることを特徴とする請求項20から23の何れかに記載のコーティング。
【請求項25】
第1接着層は、熱硬化性の接着剤、光硬化性接着剤又は化学硬化性接着剤の層で構成されることを特徴とする請求項20から24のいずれかに記載のコーティング。
【請求項26】
コーティングはさらに、コーティングされる表面にコーティングを固着するために、キャリア膜の反対側に提供される第2の接着層と、コーティングされる表面にコーティングが施される前に、第2の接着層を露出するように除去されるバッキング層であって、第2の接着層全体に提供される除去可能なバッキング層と、で構成されることを特徴とする請求項20から25のいずれかに記載のコーティング。
【請求項27】
第1及び第2の接着層は、海中での長期間の浸水に対して耐久性を有する接着剤で構成されていることを特徴とする請求項26記載のコーティング。
【請求項28】
キャリア膜の一方に第1の接着層を塗布し、
第1の接着層の最上層に金属材料層を提供し、
第1の接着層及びキャリア膜に金属材料を固着するために金属材料層に圧力を加えることを特徴とする海洋生物付着防止コーティングを製造する方法。
【請求項29】
金属材料は、細粒化され、細粒は第1の接着層の全体に散布されていることを特徴とする請求項28記載の製造方法。
【請求項30】
金属材料の細粒に圧力を与え、それを第1の接着層に固着させるローラであって、一対のローラーの間にコーティングを通して、圧力が細粒化された金属材料層に適用されることを特徴とする請求項29記載の製造方法。
【請求項31】
方法は、さらに、熱、光又は化学的に第1接着層を硬化させ、さらに細粒化された金属材料層を接着剤に固着するステップから構成されることを特徴とする請求項29又は30に記載の製造方法。
【請求項32】
方法は、追加的に、コーティングされる表面にコーティングを固定するため、キャリア膜の反対側に第2の接着層を塗布し、コーティングされる表面にコーティングが施される前に、第2の接着層を露出するように除去されるバッキング層であって、第2の接着層全体に提供される除去可能なバッキング層を提供するステップで構成されることを特徴とする請求項28から31記載の方法。
【請求項33】
キャリア膜のあるサイドに第1の接着層を設けるため操作可能な接着塗布手段、
第1の接着層上に細粒化された金属材料を散布するための操作可能な金属材料塗布手段、
細粒化された金属材料の層上に圧力を与え、それによって細粒を第1接着層に圧入するため操作可能な圧力塗布手段とを備えたことを特徴とする海洋生物付着防止コーティングを製造するための装置。
【請求項34】
金属材料塗布手段は、細粒化された金属材料を貯蔵する貯蔵ホッパーと第1の接着層の上に細粒化された材料を散布する散布ヘッドで構成されてなることを特徴とする請求項33記載の装置。
【請求項35】
散布ヘッドは、細粒化された金属材料を第1の接着層の上に散布するふるいで構成されていることを特徴とする請求項34記載の装置。
【請求項36】
圧力提供手段は、ペアーのローラーで、汚れ防止材料がコーティングされたそれぞれのローラ表面を有することを特徴とする請求項33から35記載の装置。
【請求項37】
圧力提供手段は、さらにローラーによって加えられる圧力量を調整する圧力調整手段で構成されていることを特徴とする請求項36記載の装置。
【請求項38】
装置は、さら第1接着層を硬化するため操作可能な接着剤硬化手段で構成されていることを特徴とする請求項33から37の何れかに記載の装置。
【請求項39】
接着剤硬化は、接着剤を暖めるために操作可能なオーブンと、それによって接着剤を熱硬化させ、接着剤の重合を引き起こす光学シグナルに接着剤の光学シグナル露出を発生可能に操作可能な光源、又はコーティングが1又はそれ以上の触媒化学で露出される硬化チャンバーであることを特徴とする請求項38記載の装置。
【請求項40】
実質的に添付された図面に参照され、上記で記載されたものであることを特徴とする海洋生物付着防止コーティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−514035(P2007−514035A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543619(P2006−543619)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005162
【国際公開番号】WO2005/056699
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506194070)エコシー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】