説明

消毒用組成物

本発明は、消毒用組成物、特に、望ましくない微生物であって特にサラダ、鶏肉、カットフルーツのような食物製品上、および病院環境中に存在する微生物を駆除するための消毒用組成物に関する。少なくとも1つのフラボノイドと、少なくとも1つの界面活性剤とを含んでなり、酸性であることを特徴とする消毒用組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒用組成物、特に、表面上の望ましくない微生物、例えば細菌、カビ類、および酵母を駆除するための消毒用組成物であって、表面を消毒するかまたは表面上の望ましくない微生物の個体数を有用な程度まで減少させるための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、消毒用組成物、特に、表面上の望ましくない微生物、例えば細菌、カビ類、および酵母を駆除するための消毒用組成物であって、表面を消毒するかまたは表面上の望ましくない微生物の個体数を有用な程度まで減少させるための組成物に関する。望ましくない微生物は、例えば、サラダ、鶏肉、カットフルーツおよび調理加工済み野菜のような食物製品上や;病院内の表面、織物類、及び備品類(限定するものではないが、備品類には例えば、道具類、移植材料、トレイ、生理用品、内視鏡およびカテーテルが挙げられる)の上に存在する可能性がある。
【0003】
特に生鮮食品産物を洗浄するための、また医療施設において使用するための、改善された消毒用組成物が広く必要とされている。そのような組成物は、所望の処理条件下での消毒に有効であり、処理される産物または物品を損傷しないように適度に低刺激性であり、摂取される可能性のある量では無毒であり、かつ規制当局により使用が許可されている容易に入手可能な構成材料から簡単に製造される必要がある。
【0004】
サラダ(レタス、クレソン、ハナダイコンなど)のような製品を洗浄するための既知の消毒用組成物は、低濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液またはフラボノイド系組成物のいずれかを含み、そのようなフラボノイドは一般に熟していない柑橘類果実の抽出物から得られる。医療状況では、塩素系組成物、ペルオキシ系組成物およびビグアナイド系組成物を含む多くの組成物が使用されてきた。
【0005】
既知の組成物に関する問題は、その組成物が細菌などの微生物の駆除に不十分な効果しかなく、したがって処理された製品を消毒しないこと、およびその組成物が、徹底的にすすぎを行わなければ例えば食物の表面を汚染する可能性のある有害な添加剤を含む場合があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、先行技術の少なくとも1つの問題を解決する消毒用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つのフラボノイドと、少なくとも1つの界面活性剤とを含んでなり、酸性であることを特徴とする消毒用組成物が提供される。
フラボノイドはポリフェノールのサブクラスであり、フラボノイドにはフラボノール(例えば、ケルセチン)、フラボノン(例えば、ナリンギン、ヘスペリジン)、および/またはフラボン(例えば、ルチン)が挙げられる。
【0008】
界面活性剤は、抗菌物質として作用するか、または抗菌作用増強の促進剤として作用する界面活性剤であることが好ましい。すなわち、前記界面活性剤はフラボノイドの抗菌作用を増大させることができる。2つ以上のそのような界面活性剤が消毒用組成物中に存在していてもよい。
【0009】
界面活性剤は、第1の態様の組成物全体の0.1〜20重量%を構成することが可能であり、2〜5重量%を構成することが好ましい(2つ以上存在する場合は界面活性剤の全重量)。
【0010】
1つの適切な界面活性剤は、一般構造:
【0011】
【化1】

を有するベタインであり、上記構造式中、Rは分岐鎖または非分岐鎖のアルキル基であり、任意選択で置換されているが好ましくは非置換型である。Rは、4〜24個、好ましくは8〜20個、最も好ましくは10〜16個の炭素原子を有するアルキル基であることが好ましい。ラウリルベタイン(LAB)は特に好ましい界面活性剤である。
【0012】
1つの適切な界面活性剤は、一般にポリソルベートと呼ばれるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。使用可能なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルには、下記すなわち:
ポリオキシエチレン‐(20)‐ソルビタントリステアレート(慣用名ポリソルベート65)
ポリオキシエチレン‐(20)‐ソルビタントリオレアート(慣用名ポリソルベート85)
ポリオキシエチレン‐(4)‐ソルビタンモノラウレート(慣用名ポリソルベート21)
ポリオキシエチレン‐(20)‐ソルビタンモノステアレート(慣用名ポリソルベート60)
ポリオキシエチレン‐(4)‐ソルビタンモノステアレート(慣用名ポリソルベート61)
ポリオキシエチレン‐(20)‐ソルビタンモノオレアート(慣用名ポリソルベート80)
ポリオキシエチレン‐(5)‐ソルビタンモノオレアート(慣用名ポリソルベート81)
が挙げられる。
【0013】
ポリオキシエチレン‐(20)‐ソルビタントリステアレートが特に好ましい。
使用することが可能であろう他の界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性の部類の界面活性剤が挙げられる。
【0014】
第1の態様の組成物は好ましくは液体である。好ましくは、第1の態様の組成物は溶媒を含む。
水は第1の態様の組成物の好ましい溶媒である。水は、適切には、第1の態様の組成物中の溶媒として、第1の態様の組成物の重量の少なくとも50%の量で、好ましくは少なくとも60%の量で、かつ好ましくは第1の態様の組成物の重量の90%以内、好ましくは80%以内として存在することができる。水が第1の態様の組成物中に存在する場合は、軟水または脱イオン水であることが好ましい。
【0015】
第1の態様の組成物について酸性であると記載することにより、本発明者らは、組成物がそれ自体酸性であってもよいし、また酸性の処理用組成物の前駆物質であってもよいことを示している。
【0016】
第1の態様の組成物はそれ自体として使用可能であるが、水で希釈されて処理用組成物を形成する濃縮組成物(本発明の第2の態様として以下に述べる)として調合されることが好ましい。好ましくは、濃縮組成物は撹拌または剪断を伴って希釈される。特に撹拌または剪断を伴う場合は、濃縮組成物を使用時または使用直前に希釈することが最高水準の有効性をもたらすことが判明する。濃縮組成物は、例えば洗浄機または自動皿洗い機の中に濃縮組成物を供給することによって;またはバケツもしくはシンクの中で水に濃縮組成物を加えることによって;または水流中に濃縮組成物を注入することによって;または水で固められた(water-set)表面もしくは水湿潤性となる表面の上に濃縮組成物を噴霧することによって;または濃縮組成物を別個の供給源から供給された水と共に(例えば二重キャニスタ式トリガ作動スプレー装置を使用して)同時噴霧することによって、希釈されてもよい。
【0017】
好ましくは、第1の態様の組成物は、前記組成物の2重量%水溶液のpHが7未満、好ましくは6未満、好ましくは5未満程度まで酸性である。より好ましくは、pHは2〜4、より好ましくは2〜3、最も好ましくは2.1〜2.5である。
【0018】
好ましくは、第1の態様の組成物は、濃縮組成物として供給された場合、および2重量%水溶液として希釈された場合に、微生物コロニー数の10減少をもたらす(log105)。このことは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびエンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)のうち少なくとも1つに、好ましくは少なくとも2つに、好ましくは少なくとも3つに、最も好ましくは4つ全てに当てはまることが好ましい。このような定義のために、BS EN1276:1997の試験プロトコールを引用可能である(以下を参照)。界面活性剤を含まないそのような組成物は、2重量%水溶液として希釈された場合、第1の態様の希釈された組成物によって10程度まで駆除されるそれぞれの微生物に対して、10未満の減少をもたらす可能性がある。
【0019】
殺菌活性は、所与の細菌株が組成物の調製試料に加えられたときの生存細菌細胞数の減少として計算される。殺菌活性の評価のために使用されたプロトコールの詳細な説明は、「化学的消毒剤および防腐剤‐食品分野、工業分野、家庭内および施設内において使用される化学的消毒剤および防腐剤の殺菌活性評価のための定量的懸濁液試験‐試験方法および要求事項(フェーズ2、ステップ1)(Chemical Disinfectants and Antiseptics - Quantitative Suspension Test for the Evaluation of Bactericidal Activity of Chemical Disinfectants and Antiseptics used in Food, Industrial, Domestic, and Institutional Areas - Test Method and Requirements (Phase 2, step 1))」と題された英国規格BS EN1276:1997において利用可能である。要するに、少なくとも10の殺菌活性を備える組成物とは、前記組成物が、所与の参照用菌株に属する生存細菌細胞の数の少なくとも10減少をもたらすことを意味する(BS EN1276:1997の第3.3節)。これらのプロトコールについては、下記に述べる実施例においてさらに詳述する。同じプロトコールがカビ類および酵母のような他の微生物について使用されてもよい。
【0020】
好ましくはフラボノール(例えばケルセチン)、フラボノン(例えばナリンギン、ヘスペリジン)およびフラボン(例えばルチン)から選択された、単一のフラボノイドが存在していてもよい。第1の態様の組成物は、好ましくはフラボノール(例えばケルセチン)およびフラボノン(例えばナリンギン、ヘスペリジン)、ならびに好ましくはさらにフラボン(例えばルチン)から選択された、少なくとも2つのフラボノイド、好ましくは少なくとも3つのフラボノイドを含むことが好ましい。
【0021】
フラボノイドは、好ましくは柑橘類果実から得られる。
好ましくは、フラボノイドは、第1の態様の組成物全体の少なくとも0.001重量%、好ましくは少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.04重量%を構成する。これらの数字は、複数のフラボノイドが存在する場合は合計重量を示す。
【0022】
好ましくは、フラボノイドは、第1の態様の組成物全体の最大で10重量%、好ましくは最大で2重量%、好ましくは最大で1重量%、好ましくは最大で0.5%を構成する。これらの数字は、複数のフラボノイドが存在する場合は合計重量を示す。
【0023】
第1の態様の組成物の、特にその希釈形態における酸性度は、フラボノイドの抗菌活性に関するフラボノイドの活性に少なくとも部分的に関与すると考えられる。本出願人は、フラボノイドのキノン型/フェノール型の間の平衡が、最も高い抗菌活性を示す状態を生じるように酸性条件下で好都合にシフトすると考えている。
【0024】
消毒用組成物は、少なくとも1つの有機酸であって好ましくはアスコルビン酸、クエン酸、乳酸およびリンゴ酸のうち1つ以上から選択された有機酸を含むことが好ましい。組成物のpHは、乳酸、最も好ましくはL(+)乳酸の添加を介して所望の範囲内に維持されることが好ましい。
【0025】
有機酸は、好ましくは第1の態様の組成物全体の少なくとも3重量%かつ最大で25重量%を構成する。
本発明の第2の態様によれば、水、少なくとも1つのフラボノイド、および少なくとも1つの界面活性剤を含んでなり、酸性であることを特徴とする、使用準備が整った処理用組成物(以下本明細書中では処理用組成物と称する)が提供される。処理用組成物は、第1の態様の組成物を希釈剤と混合することにより生産されてもよい。
【0026】
好ましくは、第1の態様の組成物が、処理用組成物の最大で5重量%を供給する。より好ましくは、第1の態様の組成物が、処理用組成物の最大で2重量%、例えば処理用組成物の最大で1重量%を構成する。別の定義においては、適切には、10〜200部、好ましくは20〜100部、好ましくは40〜60部の水に対して1部の第1の態様の組成物が存在すると言うこともできる(重量比)。第1の態様の組成物の構成材料に関して上述した比率は、直前に述べた希釈の定義に従って縮小可能である。例えば、フラボノイドは0.001〜10重量%の量で第1の態様の組成物中に存在しうることが述べられている。このことは、希釈された処理用組成物中のフラボノイドの割合が、その最も広い定義において5×10−6重量%〜最大で1重量%となりうることを意味している。
【0027】
希釈剤は好ましくは水である。希釈剤が水である場合、第2の態様の処理用組成物を希釈の8時間以内に、好ましくは4時間以内に使用することが望ましい。
使用時の処理用組成物のpHは好ましくは酸性であり、好ましくはpH6未満、好ましくはpH5未満、好ましくは2〜4、最も好ましくはpH2〜3である。上述のように、第1の態様の濃縮組成物の2重量%水溶液を用いて形成された処理用組成物は、好ましくはpHが7未満、好ましくは6未満、好ましくは5未満である。より好ましくは、そのpHは2〜4、より好ましくは2〜3、最も好ましくは2.1〜2.6である。
【0028】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様の組成物を製造する方法であって、
a)溶媒を酸性化する工程、および
b)界面活性剤およびフラボノイドを溶媒と混ぜ合わせる工程
を有し、好ましくは前記方法の全体にわたってフラボノイドが酸性条件下にあることを特徴とする方法が提供される。
【0029】
溶媒は、好ましくは水を、好ましくは第1の態様に関して上記に定義された量で含む。
フラボノイドは常に酸性条件下にあることが好ましい。
本発明の第4の態様によれば、第2の態様の処理用組成物を製造する方法であって、第1の態様の組成物を水中に溶解させる工程を含む方法が提供される。
【0030】
本発明の第5の態様によれば、ある場所の望ましくない微生物を駆除する方法であって、その場所またはその近辺に第1または第2の態様の組成物を送達する工程を含む方法が提供される。その場所は、消毒を必要とする食物製品の表面上であってもよい。その場所は、病院内で見られるもののような、消毒を必要とする表面、織物類、または備品類の上であってもよい。前記方法はさらに、微生物の駆除と同様に洗浄および脱脂をもたらし得る。
【0031】
駆除すべき細菌には、緑膿菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびエンテロコッカス・ヒラエ、またはこれらの混合物が挙げられる。
駆除すべき細菌には、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
駆除すべき細菌には、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、セレウス菌(Bacillus cereus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter Jejuni)が挙げられる。
【0033】
駆除すべき細菌には、シュードモナス属、黄色ブドウ球菌(S. Aureus)、MRSA、クロストリジウム属、クロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)、またはこれらの混合物が挙げられる。そのような細菌は、医師の診療所、病院および介護施設を含む医療環境において特に懸念されている。
【0034】
駆除すべき酵母およびカビ類には、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が挙げられる。
第1の態様の組成物は、2重量%水溶液として希釈された場合、好ましくは上述の微生物のうちいずれかに対して少なくとも10の抗菌活性(コロニー数の減少)を有し、好ましくは緑膿菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびエンテロコッカス・ヒラエ各々に対して少なくとも10の抗菌活性を有し、好ましくは上述のすべての微生物に対して少なくとも10の抗菌活性を有する。
【0035】
場所またはその近辺は、処理用組成物が送達された後に、極性溶媒、例えば水で十分にすすがれることが好ましい。
本発明の第6の態様によれば、第1または第2の態様の組成物を用いて処理された食物製品を含む消毒された食物製品が提供される。
【0036】
本発明の第7の態様によれば、食物を洗浄するための第1または第2の態様の組成物の使用方法が提供される。
本発明の第8の態様によれば、表面を消毒するための第1または第2の態様の組成物の使用方法が提供される。
【0037】
本発明の第9の態様によれば、医療施設または介護施設における第1または第2の態様の組成物の使用方法が提供される。
本発明の第10の態様によれば、洗浄方法における第1または第2の態様の組成物の使用方法が提供される。洗浄には、硬表面の洗浄(例えば床、タイル、衛生陶器、および調理台)、および洗濯が挙げられる。洗濯に使用される場合、第1または第2の態様の組成物はすすぎ段階で洗濯機に適切に添加されればよい。第1の態様の組成物である場合は、前記組成物は使用前には希釈されず、洗濯機内で希釈されることが好ましい。
【0038】
本明細書中に記載された本発明のいずれの態様のいずれの好ましい特徴も、全体として本発明の特徴であり、かつ任意の他の態様の好ましい特徴と見なされるべきである。
組成物の構成材料の量が記載される場合、その量は、別途記載のない限り、組成物の総重量の百分率としてその構成材料の重量百分率を示している。
【0039】
以下の実施例は限定的なものではない。それらは本発明の実施の単なる具体例として提示されている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実施例
前述の、以下により詳細に述べるBS EN1276:1997プロトコールに従って比較試験を行うためにいくつかの組成物が調製された。そのような比較試験は、ある構成材料が本発明によるフラボノイド含有組成物に添加されたときの抗菌効果の改善を実証する。
【0041】
実施例1
実施例1a−濃縮組成物
種々の異なる消毒用組成物候補が比較を目的として調製された。下記の表は、各候補組成物について濃縮組成物中の成分の相対量を示している。
【0042】
各候補組成物は、水中に酸成分を溶解し、続いて界面活性剤および最後にバイオフラボノイドを溶解することにより調製された。
【0043】
【表1】

成分量はすべて、組成物全体の重量%として表示されており、以下を除き希釈されていない個々の成分に関するものである:
− 乳酸(商品名Purac FCC80またはPurac Sanilacとして販売されているL(+)乳酸の80重量%水溶液)。表示の量は供給時の材料について述べている。
【0044】
− 混合バイオフラボノイド(以下本明細書中ではMBF)は、フラボノイドを含有する構成材料であってフラボノール(例えば、ケルセチン)、フラボノン(例えばナリンギン、ヘスペリジン)またはフラボン(例えばルチン)のうち少なくともいずれかを含んでいる。混合バイオフラボノイド構成材料は、0.4%の前記フラボノイドを含んでいる。表示の量は供給時の材料について述べている。
【0045】
− ベタイン組成物。30重量%水溶液としての、ラウリルベタインの調合物であり、例えば、商標MACKAM LABとしてマッキンタイア・グループ・リミテッド(Mclntyre Group Limited)から入手可能。表示の量は供給時の材料について述べている。
【0046】
− 試験用に選択された単一のバイオフラボノイドは、約50重量%のナリンギンを含有しており、以下本明細書中ではSBFと呼ばれる。表示の量は供給時の材料について述べている。
【0047】
クエン酸、リンゴ酸、乳酸、MBFおよびSBFはすべて市販されている。
これらの材料のうちの一部は後の実施例において使用され、同じ情報が当てはまる。
実施例1b−処理用組成物
実施例1aで述べた濃縮組成物を使用して比較試験を行なうために、各濃縮組成物は水で希釈され、各濃縮組成物の2重量%水溶液として処理用組成物が得られた。
【0048】
実施例1c−微生物試験
各処理用組成物は、その抗微生物効果を証明するために微生物試験に供された。
すでに述べたように、そのような試験のために使用されたプロトコールはBS EN1276:1997に基づいており、BS EN1276:1997は、試料およびアッセイがどのように準備されるか、ならびに、どのように殺菌活性が(または外挿法により他の抗微生物活性が)計算されるかについて説明している。これらのプロトコールの概要について以下に概説する。
【0049】
消毒用組成物は、BS EN1276:1997によれば、消毒が医学的に示されている区域および状況を除いた食品分野、工業分野、家庭内および施設内で使用される化学的消毒剤および防腐剤製品であって、手の衛生用以外の生体組織について使用される製品を除いたものに関して、その組成物が緑膿菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびエンテロコッカス・ヒラエの参考菌株に属する生存細菌細胞の数の少なくとも10減少をもたらす場合に、殺菌活性を有するものとして記載されている。
【0050】
試験対象の微生物の試験用懸濁液は、各処理用組成物A〜Hの調製試料に添加される。この混合物は20℃±1℃で5分±10秒間維持される。次に試料は膜濾過に供され、次いで生存微生物コロニー数が測定され、生存数の減少が計算される。
【0051】
試験プロトコールのさらなる詳細は、2002年9月17日に発行された文書BS EN1276:1997において得られる。そこには、生存細菌細胞数の減少を、従って試料が活性試験に合格であるか不合格であるかを確認するのに必要な計算についても概説されている。この試験プロトコールの下では、試料は減少が10未満である場合にアッセイに不合格であると見なされる。
【0052】
この具体的実施例においては、試験対象の処理用組成物は、緑膿菌ATCC 15442、大腸菌ATCC 10536、黄色ブドウ球菌ATCC 6538、エンテロコッカス・ヒラエATCC 10541およびネズミチフス菌ATCC 13311に対して試験された。
【0053】
下記の表は、上記の細菌の「対数殺菌力(log kill)」を詳述している。対数殺菌力は、上述の試験プロトコールにより、生存細胞数の減少におけるlog10として定義される。表中の記号A〜Hは、実施例1aの濃縮組成物とは異なり、希釈された処理用組成物を示している。
【0054】
【表2】

結果は、単一のバイオフラボノイド材料がベタイン界面活性剤および有機酸と共に使用される場合に著しい改善を示すが、混合バイオフラボノイド、ベタイン界面活性剤および有機酸が存在する場合に特に良好な成績が得られることを示唆している。
【0055】
実施例2
実施例1の組成物Fは、1重量%および0.5重量%水溶液の希釈についても試験された。いずれの試料も抗菌活性試験に合格し、高希釈物が適切であることが示唆された。
【0056】
組成物Fは本発明の好ましい実施形態を代表し、先行技術に対して多くの利点を有している。第1の利点は、消毒用組成物が非常に有効であるにもかかわらず消毒される製品を損傷しないように比較的低刺激であるということである。さらに、そのような組成物は事実上無毒であり、そのため食物製品の消毒後のすすぎの必要性が大きく低減される。そのようなすすぎの必要性は、高希釈における上記組成物の有効性から、さらに低減される。
【0057】
界面活性剤を含めることによっても、存在するフラボノイドの有効性が増大し、そのため必要なフラボノイドがより少なくなる。この結果、よりコスト効率が良く、かつ消毒用組成物の製造時にも有益である。さらに、高希釈でそのような組成物を使用するという選択肢は、その消毒用組成物の信頼性を損ねる可能性を有するある種の構成材料の析出の可能性も軽減する。
【0058】
実施例3
以下の濃縮組成物は、上記成分を使用して上述の方法で調製された。
水 69%
クエン酸 5%
リンゴ酸 10%
乳酸 4%
MBF 2%
ベタイン組成物 10%
これは水中で2重量%の濃度に希釈されてpH範囲2.1〜2.6の処理用組成物を生じ、以下のように、広範囲の微生物に対してBS EN1276:1997のプロトコールを使用して試験された。
【0059】
【表3】

実施例4
実施例1において上述されているように、BS EN1276に従って試験するために濃縮組成物が調製および希釈された。
【0060】
濃縮組成物は以下のとおりであった。
水 77%
クエン酸 10%
リンゴ酸 5%
乳酸 4%
MBF 2%
ポリソルベート65 2%
濃縮組成物は水中で2重量%の濃度に希釈され、pH約2.1〜2.6の処理用組成物が得られた。
【0061】
試験結果は以下のとおりである。
【0062】
【表4】

注記
本明細書に示された結果の考察から、抗菌活性には以下の要素が重要であると考えられる:
− バイオフラボノイド内のキノン/フェノール平衡。これはpHの作用であると考えられる。
【0063】
− 微生物細胞壁への浸透(界面活性剤によって影響を受けると考えられる)
− ベタイン界面活性剤が使用される場合、同剤の等電点(様々なpHにおけるプロトン化状態)。これはpHの作用であると考えられる。
【0064】
− 有機酸の存在
− 成分の相対濃度
− 全体的な希釈率。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフラボノイドと、
少なくとも1つの界面活性剤と
を含むとともに、酸性であることを特徴とする消毒用組成物。
【請求項2】
2重量%水溶液として希釈されたときに少なくとも1つの標的微生物に対して微生物コロニー数の10減少をもたらす濃度である一方、界面活性剤を含まない同じ組成物は、2重量%水溶液として希釈されたときに同じ標的微生物に対して10未満の減少をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2重量%水溶液として希釈されたときに組成物のpHは2〜4、好ましくは2〜3であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
フラボノイドは好ましくはフラボノール、フラボノンおよびフラボンから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
0.001〜10重量%のフラボノイドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
アスコルビン酸、クエン酸、乳酸およびリンゴ酸から選択される少なくとも1つの有機酸をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
界面活性剤は組成物全体の0.1〜20重量%を構成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤はベタイン界面活性剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ベタイン界面活性剤は、一般構造:
【化1】

を有し、ここで、Rは、任意選択で置換された、分岐鎖または非分岐鎖の4〜24個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
界面活性剤は、ポリソルベート、例えばポリソルベート65を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法であって、
c)溶媒を酸性化する工程、および
d)界面活性剤およびフラボノイドを溶媒と混合する工程
を有し、
好ましくは前記方法の全体にわたってフラボノイドが酸性条件下にあることを特徴とする方法。
【請求項12】
水、少なくとも1つのフラボノイド、および少なくとも1つの界面活性剤を含むとともに、酸性であることを特徴とする使用準備が整った処理用組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の使用準備が整った処理用組成物を調製する方法であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載の消毒用組成物を水に溶解させることからなる方法。
【請求項14】
ある場所の微生物を駆除する方法であって、前記場所またはその近辺に、請求項1〜10および12のいずれか1項に記載の組成物を送達することからなる方法。
【請求項15】
駆除すべき微生物は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)のうち1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
駆除すべき微生物は、シュードモナス属、黄色ブドウ球菌(S. Aureus)、MRSA、クロストリジウム属、クロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)のうち1つ以上を含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
駆除すべき微生物は、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、セレウス菌(Bacillus cereus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter Jejuni)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のうち1つ以上を含む、請求項14、15または16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜10および12のいずれか1項に記載の消毒用組成物または処理用組成物を用いた処理により消毒された食物製品、医療用品または洗濯製品からなる、消毒済みの食物製品、医療用品または洗濯製品。
【請求項19】
表面を消毒するための、請求項1〜10および12のいずれか1項に記載の組成物の使用方法。
【請求項20】
食物を洗浄するための、請求項1〜10または12のいずれか1項に記載の消毒用組成物の使用方法。

【公表番号】特表2011−516411(P2011−516411A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548193(P2010−548193)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050193
【国際公開番号】WO2009/106889
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(509148979)スティーブンソン グループ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】STEPHENSON GROUP LIMITED
【Fターム(参考)】