説明

消色可能な発色体粒子、画像形成用トナー、画像形成用インクおよび消色可能な発色体粒子の製造方法

【課題】高い発消色性能を有する発色体粒子を提供する。
【解決手段】消色可能な発色体粒子は、呈色性化合物と、水溶性の顕色剤と、水不溶性のバインダーと、を含有することを特徴としている。前記顕色剤の溶解度は、0.26g/100mL以上、55.8g/100mL以下、消色可能な発色体粒子。前記顕色剤と、前記バインダーの溶解度パラメータの差は、2.8以上、6.2以下、消色可能な発色体粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消色可能な発色体粒子、画像形成用トナー、画像形成用インクおよび消色可能な発色体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術の分野において、ドライトナー(ケミカルトナー)の普及が進んでおり、近年、これらのトナーの製法を応用して消去可能な発色体粒子を製造することが検討されている。
【0003】
トナーの製法のひとつである懸濁重合法は、主原材料であるモノマーからトナーサイズのポリマー粒子を合成して、それをトナーとして利用する製法であるが、反応系内に呈色性化合物と顕色剤を供すると、発色消色機能を失った有色分解物を生成したり、合成反応が不十分になって粒子の形成そのものが妨害されたりする問題があった(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また別の方法である乳化重合凝集法は、トナーよりも小さな粒子を予め合成した後、それらを水中で凝集または融合させてトナーサイズの粒子を得る方法である。凝集、融合させる系内に、呈色性化合物と顕色剤からなる発色体を含む粒子を供することが出来ればトナーを製造できるが、カプセル化において芯物質となる粒子を作製できないのと同じように、この製法に供することが出来るトナーよりも小粒径で、且つ、高い光学濃度を有する粒子を作製できなかった(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】日本画像学会誌 第46巻 第4号 : 255−260(2007)
【特許文献1】特開2007−279714公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、高い発消色性能を有する発色体粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による消色可能な発色体粒子は、呈色性化合物と、水溶性の顕色剤と、水不溶性のバインダーと、を含有することを特徴としている。
【0007】
また、本発明による消色可能な発色体粒子は、請求項1に記載の消色可能な発色体粒子において、前記顕色剤の溶解度が、0.26g/100mL以上、55.8g/100mL以下、であることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明による消色可能な発色体粒子は、請求項1または2に記載の消色可能な発色体粒子において、前記顕色剤と、前記バインダーの溶解度パラメータの差は、2.8以上、6.2以下、であることを特徴としている。
【0009】
またさらに、本発明による消色可能な発色体粒子は、請求項1に記載の消色可能な発色体粒子において、前記顕色剤は、リンゴ酸であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明による消色可能な発色体粒子は、請求項1に記載の消色可能な発色体粒子において、さらに、親水性粒子を含有することを特徴としている。
【0011】
またさらに、本発明による消色可能な発色体粒子は、請求項7に記載の消色可能な発色体粒子において、前記親水性粒子は、前記発色体粒子に対して、0.5体積%以上、8.0体積%以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い発消色性能を有する発色体粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本発明の消色可能な発色体粒子は、呈色性化合物と、顕色剤と、バインダーを有している。
【0015】
呈色性化合物は、ロイコオーラミン類、ジアリールフタリド類、ポリアリールカルビノール類、アシルオーラミン類、アリールオーラミン類、ローダミンBラクタム類、インドリン類、スピロピラン類、フルオラン類等の電子供与性有機物が用いられる。具体的には、クリスタルバイオレットラクトン(以下、CVLと表記する)、マラカイトグリーンラクトン、2-アニリノ-6-(N-シクロヘキシル-N- メチルアミノ)-3-メチルフルオラン、2-アニリノ-3- メチル-6-(N-メチル-N- プロピルアミノ)フルオラン、3-[4-(4-フェニルアミノフェニル)アミノフェニル]アミノ-6- メチル-7- クロロフルオラン、2-アニリノ-6-(N-メチル-N- イソブチルアミノ)-3-メチルフルオラン、2-アニリノ-6-(ジブチルアミノ)-3-メチルフルオラン、3-クロロ-6-(シクロヘキシルアミノ)フルオラン、2-クロロ-6-(ジエチルアミノ)フルオラン、7-(N,N- ジベンジルアミノ)-3-(N,N-ジエチルアミノ)フルオラン、3,6-Bis(ジエチルアミノ)フルオラン−γ-(4'-ニトロ)アニリノラクタム、3-ジエチルアミノベンゾ[a]-フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7- キシリジノフルオラン、3-(4-ジエチルアミノ-2-エソキシフェニル)-3-(1-エチル-2- メチルインドール-3-イル)-4-アザフタライド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタライド、3-ジエチルアミノ-7-クロロアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ベンゾフルオラン、3,3-Bis(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタライド、3,6-ジメチルエソキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メソキシ-7-アミノフルオラン、DEPM、ATP,ETAC、2-(2-クロロアニリノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノール、N-(2、3- ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、N-ベンゾイルオーラミン、ローダミンBラクタム、N-アセチルオーラミン、N-フェニルオーラミン、2-(フェニルイミノエタンジリデン)-3,3-ジメチルインドリン、N-3,3-トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、8’- メトキシ-N-3,3- トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、3-ジエチルアミノ-6- メチル-7- クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7- メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-6- ベンジルオキシフルオラン、1,2-ベンツ-6- ジエチルアミノフルオラン、3,6-ジーp- トルイジノ-4,5- ジメチルフルオラン- フェニルヒドラジド−γ- ラクタム、3-アミノ-5- メチルフルオラン等が例示される。これらは1種または2種以上を混合して用いることが可能である。呈色性化合物を適宜選択すれば多様な色の発色状態が得られることからカラー対応も容易である。
【0016】
顕色剤としては、水溶性で呈色性化合物2に対して顕色作用があるものが用いられる。ここで水溶性とは、薬局方における「溶質1gまたは1mLを溶かすのに要する溶媒量」が1000mL未満のものをいう。顕色剤は、水に対する溶解度が0.26g/100mL以上、55.8g/100mL以下であることが好ましい。0.26g/100mLに満たないと、発色体粒子の光学濃度が水および温水に浸漬したとき低下し易くなり好ましくない。また、55.8g/100mLを超えると、大気中の湿気で変質し易いため顕色剤の品位管理が難しくなって好ましくない。
【0017】
具体的には、リンゴ酸、フェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、ベンゾフェノン類、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類等が挙げられ、これらを1種または2種以上混合して用いる。この中でも特に好適な材料を具体的に記載すると、リンゴ酸、没色子酸、及び没色子酸メチル、没色子酸エチル(以下、EGと表記する)、没色子酸n−プロピル、没色子酸i−プロピル、没色子酸ブチルなど没色子酸エステル、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチルなどジヒドロキシ安息香酸及びソノエステル、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,6−ジヒドロキシアセトフェノン、3,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノンなどヒドロキシアセトフェノン類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(以下、2,4-DHBPと表記する)、4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4‘−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4‘−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4‘−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどヒドロキシベンゾフェノン類、2,4’−ビフェノール、4,4’−ビフェノールなどビフェノール類、4−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4‘−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(ベンゼン−1,2,3−トリオール)]、4,4‘−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(1,2−ベンゼンジオール)]、4,4’,4‘’−エチリデントリスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレントリス−p−クレゾールなど多価フェノール類が挙げられる。
【0018】
バインダーは、水不溶性であることが求められる。ここで水不溶性とは、溶媒を大量に浸漬しても溶かすことができないことをいう。薬局方では溶質1gまたは1mLを溶かすのに要する溶媒量が1000mL以上のとき、「ほとんど溶けない」とし、実質的に不溶性とみなす。溶解度で述べる場合、バインダーは0.1g/100mL以下であることが好ましい。
【0019】
また、バインダーと顕色剤の溶解度パラメータ(以下、SP値と表記する)は値が近いほど相溶性が高い。バインダーと顕色剤のSP値の差は2.8以上、6.2以下であることが好ましい。SP値の差が2.8に満たないと、相溶性は高いものの水および温水に浸漬したときに粉体の光学濃度が低下し易くなるため、好ましくない。また、6.2を超えると、大気中の湿気で変質し易いため顕色剤の品位管理が難しくなって好ましくない。
【0020】
このようなバインダーとしては、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、及びスチレンの共重合体が好適な材料として挙げることができる。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4一ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert一ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n一オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、P−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン及び3,4−ジクロルスチレン等がある。好適な共重合樹脂には、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−クロロスチレン共重合体、スチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ブタジエンゴム等がある。
【0021】
ここで本発明の発色体粒子の製造方法について述べる。呈色性化合物と、顕色剤およびバインダーを溶媒に混入し、溶解液を作製する。次に、この溶解液を気相中に噴霧して液滴を形成する。その後この液滴から溶媒を分離し、消色可能な発色体粒子を形成し発色体粒子を回収する。
【0022】
気相のガス種としては特に制約されるものではないが、液滴の引火、爆発を回避する上では、酸素濃度が5%以下に管理されることが好ましい。また、ガス種としては、不燃性ガスまたは希ガスが好ましく、具体的には窒素ガス、炭酸ガスや、希ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどの単体または2種以上の混合ガスを主体とすることがより好ましい。
【0023】
噴霧の方法としては特に制約されるものではないが、具体的には、二流体ノズル、超音波ノズル、ピエゾ式ノズル、サーマルヘッド式ノズル、静電噴霧ノズルなどが利用できる。さらに好ましくは二流体ノズルと静電噴霧ノズルが好適である。
【0024】
本発明の画像形成用トナーは、一般に言われるケミカルトナーの製法に準じるものである。すなわち、乳化重合凝集法の場合、予め乳化重合で樹脂粒子を作成した後、それら樹脂粒子が分散している水または温水を主成分とする溶媒中に発色体粒子を分散させてから、樹脂粒子と発色体粒子を凝集させることでトナーを形成することができる。必要に応じて、さらに外殻を形成することも可能であり、また、所望の添加剤を同時に凝集させることも可能である。
【0025】
本発明の画像形成用インクは、一般的な顔料インクの製法に準じるものである。すなわち、発色体粒子を顔料に見立てて水中に分散し、各種添加剤を加えることで完成する。分散に際しては、発色体粒子だけでなく、界面活性剤,分散安定剤などを水に添加し、ホモジナイザー、ボールミルなどの分散機を利用する。水は蒸留水またはイオン交換水を使用する。添加剤は、前述の界面活性剤と分散安定剤以外に、pH安定化剤、保湿剤、にじみ防止剤などを添加する。
【0026】
なお、呈色性化合物と水溶性の顕色剤と、水不溶性のバインダーに加えて、発色体粒子に親水性粒子を含有させると、水に対してぬれ性の高い発色体粒子を提供できることを発見した。これまで、呈色性化合物と顕色剤とバインダーを溶解した液体を噴霧して得られる発色体粒子は水に対するぬれ性が高くなく、水中での分散性が低下し、インク作製が困難になる場面があった。そこで、親水性粒子を発色体粒子に対して、0.5体積%以上、8.0体積%以下含有することで、ぬれ性を改善させインク適性の向上を図った。
【0027】
ここで「親水性粒子」とは、水との相互作用が大きく、親和性が大きい物質である。具体的にはシリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルク、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、が挙げられ、好ましくはシリカが用いられる。親水性粒子が発色体粒子に対して、0.5体積%より小さいと、発色体粒子のぬれ性の改善効果が不十分であって好ましくなく、8.0体積%を超えると、発色体粒子が白色化し、インクの顔料として好ましくない。
【0028】
また、親水性粒子を含有する発色体粒子を分散した液体を噴霧した場合、各種材料の拡張係数の違いに起因した内部形状が顕在化すると考えられる。すなわち、噴霧後に形成される液体(以下、液滴と表記する)は、自由表面となる液滴の表面から溶媒の蒸発が起き、徐々に固化していくとともに、拡散の遅い材料ほど液滴の表面側に取り残され、各種材料は液滴の内部から表面に従っていわゆる傾斜構造を形成すると考えられる。この考えに基づくと、親水性分子は拡散が遅いため、液滴の表面に偏在しやすく、少量の添加量によってもぬれ性の改善効果が得られる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
呈色性化合物としてロイコ色素CVL(山田化学製)、顕色剤として2,4-DHBP(関東科学製)、EG(関東化学製)、DL−リンゴ酸(三共化成製)、バインダーとしてポリスチレン(G320C;東洋スチロール製)を表1に示した組成比で溶媒に溶解した。なお、溶媒はアセトン(70%)、トルエン(30%)の混合溶媒とし、全量が1.25mg/100mLになるように溶解させた。溶解した溶解液は、スプレードライヤー(B−290;柴田化学製)を利用して窒素雰囲気中に噴霧し発色体粒子を得た。噴霧温度は55℃から60℃の間で制御した。
【表1】

【0030】
得られた発色体粒子において発色を維持する能力を評価するための加速試験を実施した。発色体粒子を分散剤(バイロナールMD−1200;東洋紡製)に分散させた後、70℃の温水に15分間浸漬し、光学濃度を測定した。
【0031】
なお、発色体粒子の発色を維持する能力は、式1に示す発色維持率を指標とし評価を行った。
【0032】
[式1] 発色維持率 = 退色後の粉体の光学濃度 / 退色前の粉体の光学濃度
ここで、粉体の光学濃度とは反射率の逆数の常用対数を求めた値である。
【0033】
図1に顕色剤の溶解度と発色維持率の関係を示す。顕色剤として不溶性の2,4-DHBPを使用したときは発色維持率は50%以下に低下したが、水溶性のEG、DL−リンゴ酸を使用したときは、発色維持率が高いことが確認された。水に対する溶解度では、0.26mg/100mL以上、55.8mg/100mL以下の顕色剤が発色維持率において好ましいと判断できる。
【0034】
図2にバインダーと顕色剤のSP値の差と発色維持率の関係を示す。SP値の差が2.8以上、6.2以下であると発色維持率が高いことが確認された。すなわち顕色剤とバインダーの相溶性が下がるため、バインダーの熱物性に対する影響が少なく、水および温水に接したとき、バインダー内部にある発色体を維持し易く、結果的に発色維持率が高くなると考えられる。
【0035】
図3に顕色剤の溶解度と発色体粒子のガラス転移温度(以下、Tgと表記する)の関係を示す。バインダー単体のTgは101℃と一定であるのに対して、高い溶解度の顕色剤を用いた場合は、発色体粒子のTgの低下が少ないことが確認された。Tgの低下が大きいと、バインダーが比較的低温でガラス転移以上の温度に達することを意味しており、この領域ではバインダー内部で色素と顕色剤のような低分子成分が移動し易くなる。トナー製造時に温水に浸したとき、色素と顕色剤が解離し易く、最後に得られるトナーの光学濃度が低下してしまう。また、水性インクにしたときも同様に、室温環境下であっても、色素と顕色剤が徐々に解離して、長期間、発色体粒子の光学濃度を維持することが困難になる。
【0036】
図4に顕色剤が2,4-DHBPおよびEGである発色体粒子の断面の電子顕微鏡写真を示す。図4に示すように、非水溶性であって、Tgの低下が大きかった2,4-DHBPは全体的にコントラストが同じである。これは、水溶性の顕色剤がバインダーに相溶していることを示唆している。一方、水溶性であって、Tgの低下が小さかったEGは発色体粒子の内側と外側でコントラストの異なる島部が形成されている。これは、顕色剤がバインダーに相溶してないことを示唆している。
【0037】
(実施例2)
呈色性化合物としてロイコ色素CVL(山田化学製)、顕色剤としてEG(関東科学製)、EG(関東化学製)、バインダーとしてポリスチレン(ST120;三洋化成工業製)、親水性粒子としてシリカ(AEROSIL200;アエロジル製)を表2に示した組成比で溶媒に溶解した。なお、溶媒はアセトン(70%)、トルエン(30%)の混合溶媒とし、全量が1.25mg/100mLになるように溶解させた。溶解した溶解液は、スプレードライヤー(B−290;柴田化学製)を利用して窒素雰囲気中に噴霧し発色体粒子を得た。噴霧温度は55℃から60℃の間で制御した。
【表2】

【0038】
得られた発色体粒子においてぬれ性を評価するための試験を実施した。
【0039】
ぬれ性の評価は次のように行った。まず純水10mLに1mgの発色体粒子を添加した。次に泡立てないように発色体粒子に水を浸透させて、発色体粒子が全量沈降したかどうか目視で観察した。全量沈降したところで、水の表面張力を測定した。表面張力の測定手段は表面張力試験器(デュヌイ氏)精密型(伊藤製作所製)を用いた。
【0040】
図5に、親水性粒子の量と発色体粒子沈降時の水溶液の表面張力を測定した図を示す。
【0041】
親水性粒子を含まない場合は、水溶液の表面張力は45.8dyn/cmであったが、親水性粒子を0.5体積%、5.0体積%、8.0体積%、30体積%含んだ場合は、水溶液の表面張力は50.5dyn/cmに増加した。
【0042】
また、表3に発色体粒子が分散した分散液の1時間後の発色維持率を測定した値を示す。表3に示すように、親水性粒子を30体積%含んだ水溶液は完全に白色化し、所望の光学濃度は得られなかった。
【表3】

【0043】
図6に親水性粒子を5.0体積%含有する発色体粒子の断面の電子顕微鏡写真を示す。図6からわかるように発色体粒子の外周部にコントラストの暗い部分があった。図6における中央部1、中央部と外周部の境界近傍2、外周部3の3箇所において、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)を用いて親水性粒子の分布を求めた。図7に発色体粒子3箇所(上記1乃至3)における親水性粒子の含有量(体積%)を示す。図7から外周部3に親水性粒子が多く偏在していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】顕色剤の溶解度と発色維持率の関係図。
【図2】バインダーと顕色剤のSP値の差と発色維持率の関係図。
【図3】顕色剤の溶解度と発色体粒子のTgの関係図。
【図4】顕色剤を2,4-DHBP、EGとしたときの発色体粒子の顕微鏡写真。
【図5】親水性粒子の添加量と発色体粒子の沈降した水溶液の表面張力の関係図。
【図6】親水性粒子を5.0体積%含有する発色体粒子の顕微鏡写真。
【図7】発色体粒子における観察場所別の親水性粒子の含有量。
【符号の説明】
【0045】
1 発色体粒子の中央部
2 発色体粒子の中央部と外周部の境界近傍
3 発色体粒子の外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呈色性化合物と、
水溶性の顕色剤と、
水不溶性のバインダーと、
を含有することを特徴とする消色可能な発色体粒子。
【請求項2】
前記顕色剤の溶解度は、0.26g/100mL以上、55.8g/100mL以下、であることを特徴とする請求項1に記載の消色可能な発色体粒子。
【請求項3】
前記顕色剤と、前記バインダーの溶解度パラメータの差は、2.8以上、6.2以下、であることを特徴とする請求項1または2に記載の消色可能な発色体粒子。
【請求項4】
前記顕色剤は、リンゴ酸であることを特徴とする請求項1に記載の消色可能な発色体粒子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の消色可能な発色体粒子を用いることを特徴とする画像形成用トナー。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の消色可能な発色体粒子を用いることを特徴とする画像形成用インク。
【請求項7】
さらに、親水性粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の消色可能な発色体粒子。
【請求項8】
前記親水性粒子は、前記発色体粒子に対して、0.5体積%以上、8.0体積%以下であることを特徴とする請求項7に記載の発色体粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−77376(P2010−77376A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320941(P2008−320941)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】